悪魔のリドルSSです。
兎晴です。エロあります。
二人が一緒に住んでいる設定で、年齢を20歳にしていますのでキャラ崩壊などが気になる方はご注意ください。
携帯電話の着信音が鳴った。
伊介「電話?」
カウンター席の隣に座った伊介が、晴の手元をちらりと見た。
さらにその奥に座る春紀も伊介に身を寄せて晴へ視線を向ける。
黒組を卒業してからも晴は時々メンバーと会う事があった。
晴「ううん。メールだけ。お店の外にいるって」
差出人は東兎角だ。
仕事を済ませて帰るところだからと、いちいち前置きをしているのが兎角らしい。
普通に迎えに来たと正直になればいいのに。
「じゃあそろそろお開きね♥」
残り少なくなっていたカクテルを一気に飲み下し、伊介は席を立った。
それに合わせて春紀も席を立つ。
「晴ちゃん、大丈夫?飲み過ぎてない?」
春紀は椅子を降りる晴に手を差し出した。
晴「ありがとう、春紀さん」
その手を取って地に足を付けると視界がふわりと揺れた。
バランスを崩すほどではなくて、二度三度まばたきをすればすぐに違和感は消えた。
伊介「あんた、そんな事やってたら東に殺されるわよ」
春紀「そんなの気にするタイプかよ」
晴がしっかりと立ち上がったのを確認してから春紀は晴の手を離した。
その時ににっこりと人懐っこい笑顔を見せる彼女に心が和む。
暗殺業から足を洗った春紀からは幸せそうな雰囲気が出ていて、それは隣に立つ伊介の存在があるからだと晴は知っていた。
伊介「バカね。あーいう普段は無愛想なヤツが一番嫉妬深いんだから」
春紀「一番は伊介様じゃね?」
伊介「殺す♥」
二人のやり取りを横目に会計を済ませて外へと出る。
晴「兎角さん」
入口の脇に立つ兎角の姿を見て思わず笑みがこぼれた。
いつものように手を握ろうとして、後ろからの声に思わず動きを止める。
春紀「おう、東。久しぶり」
兎角「ああ」
春紀「相変わらずの無愛想だな!」
楽しそうに笑いながら春紀は兎角の肩をばしばしと叩いた。
兎角はそんな春紀に顔をしかめていたが、迷惑そうにするわけでもなく言葉を交わしている。
そういえば兎角は春紀を気に入っている節があったから内心は嬉しいのかもしれない。
二人の様子を眺めていると唐突に背中をぽんっと押された。
伊介「ほら、ちゃんと彼女連れて帰りなさいよ」
そのままの勢いで晴は兎角の胸にすっぽりと収まってしまう。
兎角「なんだ、彼女って」
伊介「それでしょ?」
からかうように笑って晴を指差すと、伊介は一歩兎角へ詰め寄った。
兎角「酒臭い」
兎角が呟くと伊介の眉がぴくりと揺れた。
兎角は嫌悪したわけではなく率直な感想を言っただけなのだろう。
しかし伊介はそうは受け取らなかったようだ。
伊介「なによ、酒も飲めないガキのくせに♥」
兎角「年齢は問題ない」
伊介「そういう意味じゃなくて。お酒、飲んだことないんでしょ♥」
兎角が黙り込む。
食べ物に無頓着な兎角の事だから興味がないだけなのだろう。
春紀「ほら伊介様、いちいち絡まないの」
険悪な空気になる前に春紀が伊介の腕を引いた。
春紀「悪いね。酒癖良くなくて」
兎角「いや。いつも世話になっている」
兎角は晴の頭に手を乗せて、ぐしぐしと雑に撫でた。
今はもういがみ合う理由もなくて、兎角の対応は穏やかなものだった。
むしろ危害さえ加えなければ下手なボディガードよりよほど役に立つからと、積極的に晴を預けるほどだ。
幾つか言葉を交わして二人と別れ、家路につく。
兎角「犬飼のやつ、何か勘違いしてないか」
晴「してたね」
きっとあの二人は晴と兎角が恋愛関係にあると思っている。
兎角は出会った頃からそんなものに興味はなさそうだったから、晴もあまり意識をしてそれを進めようと思った事はなかった。
煌々と明かりの灯るコンビニの前を通り過ぎてから、晴はふと思い立って足を止めた。
兎角「晴?」
晴「ねぇ、買い物していっていいかな」
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兎角は風呂上がりにリビングに戻った瞬間、ドアの前で立ち尽くし怪訝な顔をしていた。
その原因はテーブルに並べた缶や瓶のせいだ。
兎角「なんだこれは」
晴「お酒とおつまみだよ」
兎角「言い方が悪かった。なんのつもりだ」
さっき買ったばかりの物だが、今日飲むなんて思わなかったのだろう。
疲れた声を出した後に兎角が軽く咳払いをする。
晴「兎角さんと飲みたくて」
にっこりと笑って返すがやはり兎角は眉をひそめたままだ。
恐らく彼女は酒自体に興味もないし、今まで触れる機会もなかったのかもしれない。
兎角「酒なんて何が良いんだか」
そう言いながら晴の隣に腰掛け、酒を手に取る。
カクテルやサワーがどんな物なのかも兎角はきっと知らない。
無理に飲ませるつもりはなかったが突っぱねるような態度も見られない。
兎角「飲むのか」
じっと晴の目を見ながら彼女が何かを考えている事は分かった。
兎角「さっき飲んだばかりだろ」
晴「そんなには飲んでないし、もうほとんど抜けちゃったから大丈夫」
兎角は晴の頰に触れてその熱さを確かめた。
酔っていると思われたのだろう。
兎角「時々上機嫌で帰ってくる事があるよな。あれは酔ってるからなのか」
上機嫌と言われると語弊がありそうだが、少し饒舌になるくらいだ。
それから少しばかり甘えたような態度でスキンシップをしてしまうくらいだろうか。
兎角は考えるように数秒俯いて顔を上げた。
兎角「少しくらいなら」
その答えを聞いて、晴は自分でも驚くほどに胸が踊った。
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兎角の飲み方は慎重だった。
少し口に入れてゆっくりと飲み下す。
表情が変わらないせいで、酒が美味しいのか不味いのかもうかがい知れない。
晴「……どう?」
晴が聞くと、兎角は視線だけを晴に向けた。
兎角「どうって……」
グラスに視線を戻して、兎角は小さな声で「よく分からない」と答えた。
アルコールの苦味が気に入らなかったようで、兎角はもう一度酒を口に含んで眉をしかめた。
兎角の無愛想は知っているけれど、酒を飲んでも変わらないのかと思うと笑みがこぼれる。
兎角「どうした?」
晴「お酒飲んでも兎角さんって無愛想なんだなって」
冗談交じりに伝えると兎角が沈黙した。
いつもなら呆れたような顔をして「ほっとけ」などと返してくるはずなのに、今回はただ無言で手元の酒に視線を落としている。
晴「兎角さん?」
傷付けただろうか。
もう付き合いも長くなって遠慮がなくなっているのは自覚していたけれど、配慮の足りない発言だったかもしれない。
そんな不安に駆られて兎角の顔を覗き込んで、晴は気が付いた。
晴「酔ってる?」
顔が赤い。
きっと兎角は酒に弱いタイプなのだ。
兎角の手を取ってみるとその熱が伝わってくる。
兎角「なんだかふわふわする」
兎角の目は赤く充血してわずかに潤んで見えた。
心配になって身を寄せると、兎角は晴の腕に自分の腕を絡ませてきた。
いつもは晴からするくらいで、こんな風に触れてくる事なんて今までにはなかった。
しかし態度は相変わらず。
無愛想なまま酒を口に含んでは飲み下している。
無意識なのだろうか。
今の雰囲気はどこか柔らかい。
珍しい空気に嬉しくなった晴は自分のグラスを取って口に運んだ。
テーブルに並んだ肴に手を伸ばし、二人で何でもない話を二言三言交わしてまた酒に口を付ける。
そんな事がなぜかたまらなく楽しくて、そして嬉しかった。
酒が回って顔が熱くなってきた頃、兎角の吐く息が短く切れている事に気が付いた。
晴「大丈夫?」
よく見れば顔だけでなく、首や腕の内側、手のひらまで、兎角に白い肌が真っ赤になっている。
兎角「大丈夫だ」
言葉ははっきりしているが視線がぼうっとぼやけていてだいぶ酔いが回っているように見える。
飲ませ過ぎたかもしれない。
晴「少し横になる?気持ち悪くなってない?」
兎角「うん……平気」
手のひらで顔を擦り、いつもより高めの声色で兎角は返した。
そしてグラスを口に運ぼうとする手をそっと制止する。
不思議そうにこちらを見る視線がどことなく幼い。
晴「もうやめておこう?」
これ以上の飲酒は体に障る。
兎角は返事はしなかったがグラスをテーブルに置いた。
眠そうに目をこする兎角の体をソファに横たわらせるとすぐに彼女は目を閉じた。
このまま眠ってしまいそうだったが今は仕方がない。
ソファから落ちないように兎角の体を支えた時、彼女はわずかに声を漏らして身をよじった。
思わず肩や首に視線を向ける。
とくん、と胸がざわついた。
自分も酔っているのかもしれない。
苦しくないように兎角のシャツのボタンを緩め、首を撫でる。
兎角「ん……」
鼻にかかった声が耳の奥に響いた。
また胸がざわついた。
今度はもっと深い部分で。
晴「どうしよ……」
心が落ち着かない。
口の中が乾く。
少しくらいなら。
シャツの裾からそっと手を差し込んで、鍛えられた腹筋に触れる。
硬い。
へそのあたりを撫でると兎角の体がピクリと反応した。
声の代わりに息を吐くのが聞こえた。
くすぐったいだけかもしれない。
兎角の顔を見れば、潤んだ瞳と視線が交わった。
そのまま胸の方へと手を滑らせて肋骨を指でなぞるが兎角は抵抗しない。
もう少し。
欲が出て晴はシャツのボタンをまた一つ外した。
兎角「晴?」
不安げな声。
晴の手に添えられた兎角の手はひどく弱々しい。
いつもの凜とした兎角はここにはいない。
晴「大丈夫」
そう声色を高くして告げると兎角の手は降ろされた。
体が熱い。
息が短くなって、興奮が止まらない。
恐る恐る兎角の鎖骨を撫でて反応を見る。
くすぐったそうに息を吐く仕草が見えた。
嫌がってはいない。
もう一つボタンを外すと、もうそこは胸が覗く部分だった。
下着はつけていない。
見たい。
今まで入浴時に兎角の裸なんていつも見ていたのだからなんてことはないはずだった。
しかし今は状況が違い過ぎる。
熱を持った兎角の体が見たいのだ。
兎角「晴っ……!」
シャツを開こうとすると雰囲気に気付いた兎角が声を上げた。
晴「なにもしないから。少しだけ見せて」
しかし晴はそう言って強引に続ける。
見るだけ。
ゆっくりとシャツを持ち上げて、少しずつ体が開けていく。
白い肌が酔いに赤く染まって、胸が大きく上下している。
汗ばんで湿った肌は余計に晴の脳を痺れさせた。
晴「かわいい……」
やっと覗いた兎角の胸は小ぶりで、引き締まった体にふさわしい綺麗な形をしていた。
何度も見た事はあったが、こんなに色気を感じたのは初めてだった。
直前に言った言葉なんてもう忘れた。
こんな物を目の前にして見ているだけなんてできるはずもない。
晴はその胸に手を当てて何度か揉んだ後に形のいいピンク色の先を指先でなぞった。
兎角「んんっ!」
びくんっと大きく体が跳ねた。
晴「感じちゃったの?」
無意識に口の端が上がる。
声を上げたのが恥ずかしかったのか兎角は口元に手を当ててこちらを見た。
兎角「なにもしないって……」
顔が赤いのはきっと酒のせいだけではなさそうだ。
自分勝手なのは分かっていたがもう理性でとめられそうにはなかった。
シャツのボタンを全て外して肌を晒す。
息が苦しい。
今、自分は兎角を女として見ている。
赤く染まった肌にどうしようもなく欲情していて、これをとめる事は何者にもできないと、そう思った。
兎角の胸をぐっと掴んでその柔らかさを確かめる。
怯えたように震える兎角に思わず息を呑む。
愛しいと思った。
胸が高鳴る。
次の瞬間には、晴は兎角の胸の先に吸い付いていた。
兎角「ぅくっ!」
強い刺激に再び兎角の体が跳ねた。
抵抗する様子はない。
舌先でそこを弄り、その度に兎角が声を堪えて呻くのを楽しんでいた。
もう片方の乳房にも手を当てて先を押し込む。
弾力をもつそれをくりくりと指先で撫でると、兎角の体は素直に反応した。
晴「気持ちいいの?」
兎角は答えない。
何が起こっているのか分かっていないのかもしれない。
それでも晴は先へ進みたかった。
兎角「んっ!?」
腰から手を滑らせて兎角のズボンに手を差し込み、下着に触れる。
何をされるのか気付いた兎角が体をこわばらせた。
晴「大丈夫だよ」
首筋に軽く口付けて舌を当てると少しだけ体が緩んだ。
脚を開かせてその付け根をそっと指でなぞる。
他人の大事な部分に触れるのは初めてで、どうしていいのかなんて晴にも分からない。
ただ興奮と興味に身を任せるだけで、頭は真っ白だった。
体が熱い。
兎角の女性部分に湿り気を感じてさらに思考が進んでいく。
強引にズボンを脱がせて体を起こすと、晴は下着の上から舌を当てた。
兎角「や……め——」
伸ばしてくるその手を掴んで指を絡める。
晴「ごめんね。これ以上はしないから」
直接は触れず、下着を通して指で陰核の辺りを撫でながら割れ目の辺りに舌を這わせる。
石鹸の香りに混じる女の匂いに夢中になっていく。
兎角「ぅっ……んっく……あっ」
肌を晒して、顔を赤く染める兎角の体を見ながら頭がだんだんとぼやけて行くのが分かった。
もっと。
兎角が欲しい。
そう思った次の瞬間には兎角の下半身は全てを晒していた。
自分を少しも抑えられない。
兎角「待っ――」
兎角が制止する間も無く、晴はそこへと口付けた。
初めて見る他人の中心。
真っ赤に充血したそこは生々しく思えたが、兎角の物ならば抵抗はなかった。
指で穴を広げて舌を差し込む。
愛液の生臭さを鼻の奥に感じながらぐりぐりとその中を蹂躙していく。
兎角「あっあっ!ぅんっ!は……るっ!」
何も考えられない。
兎角を抱きたい。
彼女の体が欲しい。
晴「兎角さんかわいいよ……」
陰部を解放すると、兎角は安心したように息を吐いた。
しかしすぐさまそこに指を当てると兎角の体がびくりと震えた。
兎角「晴……?」
愛しくて気が狂いそうだ。
好きで好きでたまらない。
全てに手を触れたい。
晴「ごめんね」
――兎角さんの処女は晴が貰うから
兎角「っあぁ!」
兎角が悲鳴をあげる。
たまらない快感だった。
身をよじって逃げようとする兎角を上から押さえつけ、さらに指を奥へと進ませようとした時、
兎角「晴っ!痛……いっ!!」
兎角の訴えに思考が戻った。
やり過ぎた事に気付いて兎角の頬を撫で、気持ちを落ち着かせるため自分のこわばった肺にゆっくりと空気を送り込む。
晴「兎角さん、力抜いて。ゆっくりするから」
兎角「ぅ……」
兎角の中はとても狭くて、指が強く締め付けられている事に気が付いた。
緊張をほぐすために兎角の体に触れ、下腹部から胸までそっと撫で上げる。
兎角「は……ぁ、ぅ」
指でなぞるだけで兎角の体はぴくりと震えた。
中に入った指を軽く動かすと兎角は眉を歪めて痛みを露わにした。
もうこれ以上は無理かもしれない。
そう考えて体を撫でる手を引こうとした時に、兎角がそれを掴んだ。
晴「兎角さん?」
兎角「もっと触って……」
兎角は晴の手を自分の胸に当て、恥ずかしそうに目を逸らした。
晴「とっ、兎角さん、酔ってるの……?」
口の中に唾液が溜まっている気がして晴はこくりと喉を鳴らした。
兎角「分からない……」
全身がアルコールで赤く染まっている状態で酔っていないなんて事はないだろう。
それでも兎角が求めてくれている事が嬉しくて、晴は行為を続けた。
体に刺激を与えると中が緩んで動きやすくなったが痛みはまだ抜けないようだった。
出来るだけ指を動かさないようにして中の状態を確かめる。
一応は濡れているしさっきよりは穴が開いて圧迫感も落ち着いている。
兎角「ぅくっ……」
しかし動かすとやはり痛いらしい。
指には兎角から流れ出た愛液が絡んでいる。
兎角の体も心配だったがそれよりも興味と性欲が勝る。
ゆっくりと指を前後に動かすと兎角の手に力が入った。
晴「兎角さん、好きだよ。だからごめんね。止められないの……」
息が乱れる。
膣内の温かさに溶けてしまいそうだ。
自分の性器には触れてもいないのになぜかとても気持ち良かった。
きっとどうしようもないくらいに濡れているだろう。
兎角「あぅっ、んっ!」
兎角の声をもっと聞きたい。
アルコールの混じった吐息が晴に届いて、それだけで酔いが増していきそうだった。
兎角の体に触れていたくて強く抱きしめ、首や胸を撫でながら乳首に吸い付いた。
兎角「んんっ!」
反応がいい。
舌で転がすとさらに声が上がった。
もう片方の乳房に目を向けると、兎角は自分で先をいじっていた。
兎角「は、る……こっちも、んっ。触って……」
兎角の指先で形を変えるそこに引き寄せられるように指を当てる。
兎角が触っていた時の動きを真似て、指で先を曲げたり爪の先で擦った。
兎角「あっ、あっ、ぅんっ、ふあ」
兎角の声に快感が混じり始めると、中の締め付けが緩くなった。
ひくひくと肉壁が痙攣し始める。
晴「気持ち、いい?」
顔を上げて彼女を見ようとしたがすぐに首に腕を回されて抱き締められたせいで動けない。
照れているのだ。
目の前にある胸に舌を這わせると兎角の体がぴくんと跳ねて力が緩んだ。
体を起こして上から兎角の体を見下ろす。
上気した体に惹きつけられて目が離せない。
体の美しさももちろん、色付いた目や興奮に上下する胸の動きも、吐く吐息さえも全てに心が反応する。
兎角「あ!ぅうっ!」
気付けば兎角に入れた指が動き出していた。
中を傷付けないように配慮はしているがもう彼女の反応には構っていられる余裕はなかった。
奥からさらさらとした体液が溢れ出てくる。
それが指に絡んで卑猥な水音を立てた。
指の動きに合わせて兎角の体が震えている。
晴「兎角さん……兎角っ」
胸が張り裂けそうで、息苦しい。
今の兎角は女の子だった。
目を潤ませて、半開きの口からは喘ぎ声が漏れ続けている。
乱れた姿にどうしようもなく心が喚く。
こんなにも兎角を好きな事に気付いて涙が溢れそうだ。
もっと強く求めようと手元を見て息を呑んだ。
晴「血、出てる……」
うっすらと血が混じり体液がピンク色に染まっている。
膜の一部が破れたようだ。
初めての証に心が沸き立ったが、同時に彼女の体が心配になった。
晴「兎角さん、大丈夫?」
汗ばんだ体と乱れた息、紅潮した顔を見て限界を悟った。
指を抜いて兎角を抱き締める。
兎角の体温で気持ちが溶けていきそうだ。
それに合わせるように彼女も背中に腕を回してきた。
力ない抱擁に愛しさが溢れる。
離れたくなくて、数分ほどそのままでいると兎角から寝息が立ち始めた。
酒と疲れのせいだろう。
このままの姿でいると体が冷えてしまうかもしれない。
そう考えながらも頭の中にもやがかかったようにぼんやりと意識が薄れ始めた。
もう少しこのまま兎角のぬくもりを手放したくない。
ちょっとだけだと思っていたのにいつの間にか晴の意識は途切れていた。
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いつもより寝心地が悪い。
寝返りがうてなくて背中がびりびりと痛んだ。
うっすらと目を開けると部屋が昼間のように明るくて、眩しさにもう一度目を閉じる。
うつ伏せになった体の下に温かいものを感じて少しずつ覚醒していく。
――確か、昨夜は……いや、今は何時?
ぱっと目を見開く。
目前には眠る兎角の顔。
思わず声を上げそうになってすぐに口を噤んだ。
晴「やっちゃいました……」
小さく呟いて体を起こして自己嫌悪に陥る。
兎角をこんな姿にしたのは紛れもなく自分だ。
彼女の晒された肌に恥ずかしくなって思わず目を逸らす。
まだ兎角が起きる様子はない。
服を拾い上げて兎角を起こさないようにそっと着せていく。
晴「起きない、よね……」
心臓が破裂しそうなくらいにどくどくと脈打つ。
兎角が目を覚ました時になんて言えばいいだろう。
酔った勢いで酷いことをしてしまった。
謝る以外になにをすればいいのか。
あわよくば兎角の記憶から消えてしまっていればいいのにと考えて頭を振る。
そんな事を願うのは最低だ。
シャツのボタンに手を掛けながら、赤く滲んだ花を見つけた。
慣れない口付けで残した跡。
指先でそれをなぞる。
嬉しかった。
自分の痕跡が兎角に残っている。
ひとつずつボタンを掛け合わせながらその跡を隠していく。
乱れた服を整えると、まるで何事もなかったかのように思えた。
しかし心はまだ落ち着かない。
罪悪感で胸が潰れそうだ。
そこから少し逃げたくて晴は立ち上がった。
とりあえずは兎角の体に掛けるものを用意したい。
兎角に背を向けた瞬間、服の裾を引かれてどくんっと鼓動が大きくなった。
反射的に振り返ると兎角と視線が交わった。
――起きてる?なんで……
今まで考えた言い訳や想定が一気に真っ白になる。
兎角「どこに行くんだ……」
寝起きの声で放たれた言葉はまるで子どものようだった。
彼女の澄んだ瞳を見ていると、言い訳なんかより心配の方が先立ってしまう。
晴「体、大丈夫?」
兎角「ああ。もう酒は残ってないと思う……」
半身を起こして兎角は深呼吸をした。
晴「兎角さん、お酒に弱いんだね」
晴が気になったのは酒の事ではなかったが、そう言われてはこうやって笑って返すしかない。
後ろめたさが胸の奥に渦巻いて声が裏返りそうだった。
兎角「そうかもな」
頭をくしゃっと掻いて兎角はため息をついた。
そのまま顔を隠すように俯く。
どう声を掛けていいか分からなくて、晴も俯いてしまう。
ほんの数秒しか経っていないのにひどく気まずい。
兎角はごそごそと膝を抱えて頭を埋めた。
兎角「忘れて……」
消え入りそうな声で呟いた後、耳が赤く染まったのが見えた。
晴は胸の奥で蕾が開くみたいに真っ白い光が溢れ出すのを感じた。
晴「好きですっ」
次の瞬間には思わず叫んでいた。
その声に驚いた兎角が顔を上げ、目を丸くして晴を見た。
膝をついて兎角に視線を合わせる。
晴「ずっと好きでした」
顔が熱い。
心臓がうるさくて、さらには耳鳴りがする。
たった一言だけなのに頭に中がそれでいっぱいになって、ごちゃごちゃと幾何学模様が刻まれる。
物事を考えるスペースなんて残っていない。
もしかしたら、今何を言われても聞こえないんじゃないかとすら思えた。
それなのに。
「よく、分からない」
澄んだ声が突き抜ける。
顔を真っ赤に染めて、視点は定まらなくて、きっと無意識に手を重ねている。
それはもう好きだと言っているのと同じだ。
晴「じゃあ教えてあげるね?」
兎角の手を握り返し、顔を上げた彼女の唇を奪う。
軽く重ねてすぐに離れると動揺する兎角の顔がはっきりと見えた。
晴「晴の事、好き?」
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兎角「珍しい面子だな」
半個室の扉を開いて顔を覗かせたのは兎角だ。
晴と向かい合うのは伊介。
その隣にはしえながいる。
晴が腰を浮かせて奥へと移動すると、兎角は空いたスペースにごく自然に腰かけた。
晴「何か飲む?」
兎角「お茶で良い」
メニューを差し出す晴を片手で制止すると伊介があからさまに不満そうな顔を見せた。
伊介「酒でも入れて少しくらい無愛想直したら?」
兎角「うるさい」
半眼で睨む兎角を見ながら酔った状態の彼女を思い出す。
今と大差ない事を思い出して苦笑いをするが兎角は気付かない。
ただし、少し積極的になるところも知っている。
しえな「一ノ瀬。酒回ってる?」
晴「あ、うんっ、ちょっと――」
しえなに言われて顔が赤くなっている事に気が付き、それを隠すために俯くと兎角が覗きこんできた。
兎角「大丈夫か?お前、そんなに酒に弱くはないだろう」
目の前に迫る澄んだ瞳と、頬に触れた冷たい手。
そんな事をしてくるからまた顔が熱くなるのだと思いながら彼女の手をそっと押しのける。
誰にも気付かれないようにわずかに手を握り返してくるところも胸が高鳴る原因だ。
伊介「仕方ないからあんた飲みなさいよ」
つまらなそうにじろりと兎角を睨んだ後、伊介は標的をしえなに変えた。
しえな「ボクはあんまり飲まないって最初に言っただろ」
伊介「いいから飲め♥」
酒の入ったグラスを口元に押し付けてしえなを羽交い絞めにする。
何とか抵抗しようとするが見るからに非力そうなしえなが格闘タイプの伊介に敵うはずもなく、結局無理矢理酒を飲まされていた。
兎角「あんまり騒ぐな」
伊介「あんたが飲まないからよ」
あまり関わりたくないと思ったのか、兎角はため息をついて椅子に背を預けた。
晴「飲まないの?」
自分のグラスをちらりと兎角に寄せる。
すると彼女は困ったように眉を下げて見せた。
兎角「晴。お前までそんな事を言うのか」
この反応が見たくてわざとそう言ってみたのだが、本当に予想通りで口元が緩んでしまう。
晴「帰ってからだったら?」
肩をくっつけて声を潜めると、兎角は正面に座る二人をちらりと見た。
小競り合いに集中した伊介としえなにはきっと聞こえていない。
兎角「構わないけど」
落ち着いたトーンの声。
冷静そうに目を伏せて、相変わらずの無表情だったが今の彼女は何かを隠そうとしている。
テーブルの下でずっと握られていた手は急に熱くなって、わずかに力が込められていた。
その仕草は、飲むだけじゃ終わらない、そう予感させた。
終わり
87 : ◆P8QHpuxrAw - 2015/11/01 23:13:21.59 2XgrhxEk0 70/70
終わりました。
そんなに長くもないのにだいぶかかってしまってすみません。
お付き合い頂きまして本当にありがとうございました。
次の話も進めていますので、また気が向いたら見てやってください。