眼鏡「暇ならちょい、放課後に買い物行きたいからさ…」
金髪「……」
眼鏡「き、金髪さんが良ければって! そんな程度の感じで…ハイ…」
金髪「…別にイイケド?」
眼鏡「本当にっ!?」
金髪「勉強会もナシ、予定もナシ、断る理由はひとっつも無いしな」ガタリ
金髪「それに」チラ
眼鏡「な、なに?」
金髪「あんたの頼みだしね。選んで断るなら元の予定の方を断るよ、あたしは」ニヤニヤ
眼鏡「ア、アリガト」カァァ
金髪「くすくす、んで? どこ行くって?」
眼鏡「…ん」ポリポリ
元スレ
眼鏡「つ、付き合ってくれ」金髪「へ?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1441849409/
~~~
眼鏡「……」ドキドキ
金髪「ん~、これとかあんた似合いそうじゃん」
眼鏡「い、いや派手すぎない?」
金髪「見た目地味なんだから服から変えねーと、違う?」
眼鏡「んん、そういうのトンと疎いからさ…何が正しくて悪いのかさっぱりで…」
金髪「だろな、くっくっくっ。黒地の中着にデニム、厚手の白いシャツでも羽織れば完璧なんだろ?」
眼鏡「…よくわかってるようで」
金髪「いっぱしのオシャレ気取りたいなら雑誌ぐらい読みなって、価値観変わるよー」
眼鏡「そんなモンかね」
金髪「まーね」クスクス
眼鏡「…こういった黒縁メガネとかは?」カチャ
金髪「ん。貸してみ、どれどれ」
眼鏡「お、ぉぉ」
金髪「んーー、前髪をこう流して。六十四に分ける、軽くてっぺんサイドを乱してっと」グシャグシャ
眼鏡「おぉおぉ…おおぅ…」
金髪「ほれ完成」ぱっ
眼鏡「ど、どおかね?」
金髪「ぶふっ!」サッ
眼鏡「あーハイハイハイ、わかってますって。えーえー分かりますとも…」
金髪「いやね、アレだね、なんつーか着せられてる感というか、鼻から上が別人っていうか」クスクス
眼鏡「むぐぐ…」グシャグシャ
金髪「んなむくれるなって。あんたが自信なさげなのが悪い、雰囲気から変わらないとダメだね」
眼鏡「そんな話なのかよ…」
金髪「その程度のハナシだって、変にオシャレってモンをお高く捉えてるオタク共が悪い、まずは見つけないと」
眼鏡「見つける?」
金髪「例えばデート初日だとする。恥をかきたくないためにオシャレをしよう、あんたはどうする?」ニヤ
眼鏡「…服を買う」
金髪「その時点で駄目だわ。ハイ、失格」
眼鏡「ど、どうしろと…?」
金髪「予め持ってるもので頑張るんだよ眼鏡、持ってる中着、持ってる上着、ズボンはなんだって良い」
金髪「そしてコンビニで並んでるオシャレ雑誌を読め。持ってるモンで似たような服装をチョイスする」
眼鏡「…それで?」
金髪「選んだら頭にたたっこむ。できたら好きを見て写メる」ビッ!
眼鏡「犯罪だろ…」
金髪「じゃあ覚えろ。そして家に帰って鏡の前でファッションショー開始、実際に着てみる」
眼鏡「そ、それが似合わなかったら?」
金髪「認めろ。これであってる大丈夫、と否定したがる自分を押さえつけば良いの」
眼鏡「んな滅茶苦茶な…」
金髪「最初からデートの時点で無茶苦茶だろ」クスクス
眼鏡「夢も希望もないようなこと言うな、マジで」
金髪「んーん、そうでもない。デートって時点で相手の女の子は『相手のセンス』をある程度把握してるモンよ」
眼鏡「そ、そうなの?」
金髪「男どもは、つーかオタク共は変に展開を裏切りたい風に考えるケドさ。フツーで良い訳、全然」
金髪「一番やっちゃダメなのは雰囲気にあってない、お洒落しちゃってますよーという臭い格好」
眼鏡「うぐっ」
金髪「心当たりあんの?」ニヤニヤ
眼鏡「良いから話を続けて!」
金髪「くっくっくっ、つまりは無理せず持ってるモンで最大限のお洒落をする」
金髪「モチロン自分の価値観を信じちゃダメ、ちゃんと雑誌を読んでセンスを真似する」
金髪「…そして憶えるワケよ」チラリ
眼鏡「ん…」コク
金髪「すると段々と違ったオシャレをしたくなる。自信が持てるワケ、自分の持ち味に」
眼鏡「持ち味?」
金髪「自分の雰囲気に合う服装。バッグ。靴。はたまた靴下までこだわり始める」
金髪「次々に色んなモノが欲しくなって、もっともっと自分に対して自信を持てるようになってく」
金髪「するとどーなる? 最初と違って、さっきの格好もぴったし似合う雰囲気となるってー寸法よ」クスクス
眼鏡「んなまさか…」
金髪「あり得るから大学デビューなんて言葉が流行るんだっつの、まぁ失敗も多いけどね」
眼鏡「…」
金髪「一番なのは感想を言ってくれる人が側にいてくれること、もっと言えばその子はオシャレにうるさい子がベスト」
眼鏡「…女の子?」
金髪「男が好むセンスと違って、女が好むセンスに寄せてくれるしな」
眼鏡「へーぇ…」
金髪「髪型も男がすきそーな奴より、女が良いなって思える方がモテる」
眼鏡「そんな極端に変わる?」
金髪「似合ってればね」ニヤニヤ
眼鏡「…結局それだよ」
金髪「そりゃそーだろ、イケメンがモテるしイケメンが何を着ても超センスよく見えるし」
眼鏡「むぅー…」
金髪「世の中そんな風に回ってる、それがとーぜん、それがフツーなこと」
眼鏡「……」
金髪「でも頑張ることは無駄じゃない」スッ
眼鏡「へ?」
金髪「さっきの黒縁、似合ってたよ眼鏡」カチャ
眼鏡「……」ドキ
金髪「なにかとうじうじ燻ってるヤツより、どーせ駄目だと卑屈なヤツより、ダメだダメだと受け身な男よりも」
金髪「──挫けず前へ前へと進もうとする男の方が、あたしは素直にかっこいいと言えるな」
眼鏡「…目指せ雰囲気イケメン?」
金髪「そのとーり」クスクス
眼鏡「そりゃちっとハードルがな…」ハァ
金髪「失敗怖がっちゃ何も始まんねーよ。ま、頑張る所を間違ったら一気に落ちぶれるケド」
眼鏡「末恐ろしいことを言うな…」ゾクゾク
金髪「大学デビュー、イケイケなサークル参加、堂々パシリ化、無事友達ナシ」
眼鏡「うぉぉぉぉ…」
金髪「でも眼鏡は大丈夫っしょ」ニコ
眼鏡「え、なんで?」
金髪「なんでだと思う?」
眼鏡「……、う、うん…」テレ
金髪「くっくっくっ、素直な方が好まれるのは誰だってそーだろ」ニヤニヤ
眼鏡「…からかうなよ」
金髪「ねぇ眼鏡」ボソリ
眼鏡「うん?」
金髪「…大学、合格できたら良いな。一緒に」
眼鏡「……」ドキ
眼鏡「う、うん…そうだな…うん…」ポリポリ
金髪「ん…」テレ
眼鏡(うぉぉぉ、静まれ。我が鼓動、静寂だ。波紋なき水面の如き静けさで…)
金髪「んでさ、眼鏡」
眼鏡「うィッす!?」ビックゥゥウゥ
金髪「なんだその声」じぃー
眼鏡「な、なんでもない、で、何?」ブンブン
金髪「おう。今日はここに何しに来たワケ? フツーに買い物とか?」
眼鏡「………ぇと…」
金髪「ん?」
眼鏡「…色々と買いたいものが、ええ、あると言いますね、ええ…」ボソボソ
金髪「……」
金髪「…買いたいもの?」
眼鏡「う、うん」
金髪「誰に?」
眼鏡「誰に!? ほ、ホワイ!? 何故誰に!?」
金髪「自分用だとは絶対におもわねーからだよ」ジィー
眼鏡「…………プレゼントように」ダラダラダラ
金髪「友達じゃねぇよな」
眼鏡「と、友達にですよ?」
金髪「じゃあ女か」
眼鏡「え、ええ」コクコク
金髪「でも女の友達なんていねーだろ」
眼鏡「居るともさっ!? ぜーんぜん居るね、うん!」
金髪「そりゃ失礼なこと言ったな、じゃ誰だ?」
眼鏡「……」ダラダラ
金髪「名前は?」
眼鏡「……」
眼鏡「…イインチョですね、ハイ」
金髪「……」
眼鏡「う、うん?」
金髪「はぁ~……」グテー
金髪「気分削がれた、やる気なくなった、帰る」くるっ
眼鏡「ま、待って! ホントに待って!」
金髪「……」ズンズンズン
眼鏡「色々と本気でっ、うん、ここに俺を置いて行かないで下さい…!」
金髪「……。はぁ」
眼鏡「無理無理、こんなおしゃれな所一人で居られないから…っ」
金髪「じゃあ訊くけど」
眼鏡「は、はいッ!」
金髪「なんで委員長にプレゼント?」
眼鏡「…参考書選びを手伝ってもらいました」
金髪「何時?」
眼鏡「一昨日の勉強会が無くなった時です!」
金髪「……。どうしてあたしを連れてきた?」
眼鏡「こ、ここに一人でこれる自信がなかったことと…」
眼鏡「…隠れて女の子のためにプレゼント買うのが、色々と、ダメかなと」ボソリ
金髪「………」じぃー
眼鏡「そ、それが全てです! ええ、本当に! …ハイ…」
金髪「そうか、わかった」コク
眼鏡「ほ、本当に?」
金髪「じゃあ帰るわ」クルッ
眼鏡「ちょー! ちょと、ちょっと待ってくれッ! 俺の話を聞いてくれ!」ガシッ
金髪「……」
眼鏡「だ、騙して連れてきたようで申し訳ない気持ちもあるし…本気で謝りたいと思ってる…っ」
眼鏡「でも! 頼れるのは金髪さんしか居なかったから、俺にとって気軽に喋れるのは金髪さんだけしか…」
金髪「……」
眼鏡「居ないからであって…つまりは、そう…」
眼鏡「──俺は金髪さんじゃないと駄目なんだ」
金髪「……」パッ
眼鏡「あ…」
金髪「眼鏡」
眼鏡「う、うん…」
金髪「あ、あんたね…ほんっと場所ってモンを考えて言いなよ…ッ」ぷるぷる
眼鏡「へっ?」
「クスクス」
「ねぇ聞いた? 今の…」
「凄いね、ドラマみたい」
眼鏡「だッ…がッ…!?」キョロキョロ
金髪「クッサイこと大好きなのは知ってるケドさ~ァ…!」カァァ
眼鏡「ご、ごめん…ナサイ…」カァァ
金髪「あーもうイイ! わかったわかった、とにかくここから出るよっ!」がしっ
眼鏡「お、おう」グイッ
金髪「んっとにさー! なんなんだよ全く…っ」ブツブツ
眼鏡「……ん…」テレ
~~~
金髪「ん。ここまで来れば、大丈夫か」ストン
眼鏡「……」
金髪「なに突っ立ってんの、早く座りなって」
眼鏡「ウ、ウッス」ストン
金髪「はぁ~疲れた…嫌になるよまったくさ…」
眼鏡「ご、ごめんな」
金髪「謝られても困るんですケド」ケッ
眼鏡「…なんでも奢る」
金髪「ハイ、じゃあ許しまーすとかなると思ってんの」
眼鏡「……」
金髪「全然ダメだ、腹の虫が収まらない。何度も言うケドそっこー帰りたい気分」
眼鏡「…どうして」
金髪「あン?」
眼鏡「ど、どうしてそんなに怒るんだ…?」
金髪「……」
眼鏡「……」チ、チラリ
「好きだから」ボソッ
眼鏡「んっ!?」
金髪「それが理由」
眼鏡「え、えと聞き間違いじゃなかったら今、」わたわた
金髪「何度だって言ってあげるよ」
金髪「…好きだから怒る、だからこんな嫌な気分になる」チラ
眼鏡「っ……そ、そうなんですか」カァァ
金髪「そう」フィ
眼鏡「そ、それは申し訳ないこと…したというか…スンマセン…」
金髪「……」
金髪「眼鏡はあたしのこと、好き?」
眼鏡「ふえええっ!?」ビクッ
金髪「好きかって訊いてンの」
眼鏡(い、いきなりそんなこと訊く!? 表情見えないから冗談なのかもわからん…ッ)ドッドッドッ
金髪「どうなの」
眼鏡「ううっ…えっと、その、まぁ…」
金髪「まあ?」
眼鏡「うぐッ!?」
金髪「そっか、それなら仕方ないか」ガタリ
眼鏡「あ…」
金髪「今日は帰る。明日また学校で」スタ
眼鏡「…っ…」
「す、好きだよ! 超大好き!」ガタッ
金髪「…っ…!」ビクッ
眼鏡「これでもかってす、好きだし!? 他の女子とか比べようもないぐらいラブリーだしッ!?」
眼鏡「ここ最近なんて好き過ぎて夢に出てきてヤバイもん! どうしようもなくなってるねまったく!?」カァァァ
眼鏡「だから大好きだ! うん!」
金髪「…眼鏡…」くる
眼鏡「う、うん!」
金髪「オマエ、殺すぞ…?」カァァァア
眼鏡「へェッ!?」
金髪「あのなァ…ほんっとにさァ…」ぷるぷる
クスクス スゴーイ なんかの撮影? ガヤガヤ
金髪「もう帰るっ!」バッ
眼鏡「だァー!? 本当にスミマセンでしたーっ!」
金髪「離せ離せ離せ他人、あんたとは他人だから!」ズンズンズン
眼鏡「本当にごめんなさいッ」
金髪「もうここで買い物なんて出来ないッ! 恥ずかしくて一生できないッ!」ポロポロ
眼鏡「え? 俺と一緒に来れば平気じゃない…?」
金髪「バカかお前はーッ!!」ブン
眼鏡「あぶッ!?」
~~~
眼鏡「…ということがありまして」
委員長「まあ」
眼鏡「ええ、スミマセン、お返しを送るのが遅れそうで…」
委員長「良いんだよ? そんなに気にしないでも、困るのは眼鏡くんでしょ?」
眼鏡「で、でも、結構参考書を選ぶのに手間をかけてくれたみたいだし…」
委員長「んーん、変に重く捉えないで欲しいな。単純に私が欲しかったこともあるし、」
委員長「それが貴方と金髪さん、二人の役に立つことなら別に平気だもの」ニコ
眼鏡(そ、それが大分俺にとって凄いことなんだけど…)ポリポリ
委員長「でも大丈夫? 凄く腫れちゃってるね、頬」ちょんちょん
眼鏡「あ痛っ!?」ズキン
委員長「わ! ご、ごめんなさいっ」
眼鏡「う、うん。大丈夫だから、ちょっとヒリヒリする程度だし」
委員長「にしても綺麗に腫れたね、すごい」
眼鏡「実に良いスナップだったからね…」
委員長「みたいだね」クスクス
眼鏡「………」
委員長「どうかしたの?」
眼鏡「うん、ちょっとね。金髪さんを怒らせちゃったなって、悪いことだと分かってたんだけど」
眼鏡「ああまで怒られるとは予想もつかなくてさ。駄目だな、やっぱり」ポリポリ
委員長「まあね。他の女の子のために買い物、そんなことに誘われたのかって怒られるのも当然だよ」
眼鏡「…ん」
委員長「買いに行くって知ってて止めなかった私も、私だけど」ニコニコ
眼鏡「い、いやいや」ブンブン
委員長「眼鏡くんは優しいね」
眼鏡「…っ…」ビクッ
委員長「うん?」
眼鏡「前に人に言われたことがあるんだけど、優しいだけじゃ駄目らしいよ、色々と」
委員長「うん。勿論そうだよ、だけど優しいのが眼鏡くんの取り柄みたいなものじゃないかな?」
眼鏡「…でも」
委員長「簡単に人の感性や、自己を変えることは難しいよ。高校生となれば安易に変われない」スッ
眼鏡「…っ」ビクッ
委員長「まだ私たちは子供だけど。お酒も飲めない小さな大人のなりかけだけどね、眼鏡くん」
委員長「──君の優しさは私にとって、十分、素敵なコトだって思えてる」ニコ
眼鏡「…それ、委員長がドSだったことを周りに言わなかったこと言ってる…?」
委員長「んふふ」ニマー
眼鏡「…ですよね、あれは単に怖かったからだし、言っても信用されないだろうってことだけで…」
眼鏡「それに、委員長は誰にも言わなかったと言うけどさ」チラ
委員長「うん? 言ってないんでしょ?」キョトン
眼鏡「…金髪さんはその事知ってたじゃん、だから優しさでも何でもないって」
委員長「くすくすくす」
眼鏡「な、なに? 何か変なこと言った?」
委員長「いや、言うんだなって思って、金髪さんがどうして知ってたのか…」
委員長「あたしがドSってコトね。最後までうやむやにするつもりなのかなって思ってたのに」クスクス
眼鏡「いや、何時か言おうって思ってたよ、うん」
委員長「強引に聞き出された?」ニマー
眼鏡「ううん、俺が言おうって思った。委員長こえーって、良い話題になるかもってさ」
委員長「こりゃ正直ものだ。私の事言ったとき笑ってたでしょう、金髪さん」
眼鏡「…爆笑だったよ、ごめん」
委員長「ふふ、だろーね。ま、全然いいけどね。多少は見破られてた感あったし、元からさ」カタン
眼鏡「怒ってない?」
委員長「怒るもんですか。バレてしまうようなことする私が悪い、教室でヤる私が悪いの」
眼鏡「…そっか」
委員長「……」じっ
眼鏡「…?」
委員長「やっぱり君は優しいよ、眼鏡くん」
眼鏡「な、なんでさ?」
委員長「素敵だと思う、そういうの高校生で持てるものじゃないよ、きっとね」
眼鏡「…話が見えないんだけど」
委員長「どうして今日は謝ってくれたの?」ニコ
眼鏡「え? だ、だからお礼を買いそびれたから、その事について謝ろうと…」
委員長「そうだね」コク
委員長「でも金髪さんはその事実を知ったら、もっと怒っちゃうよ?」
眼鏡「へっ?」
委員長「わからない? 金髪さんは怒ったんだよ、【私へのプレゼント】だから怒ったんだよ?」
眼鏡「………」
委員長「そこまで鈍感じゃないよね、君は。ちゃんと把握して今、ここに居る筈だ」ニマー
眼鏡「…それは」
委員長「けどそれを私は優しい人だって言ってあげる。怒らないし、貶したりもしない」
眼鏡「……」
委員長「それが眼鏡くんなんだよ、それが正しい眼鏡くんのあり方なんだよね」ガタリ
眼鏡「委員長…」
委員長「今になって悪い事してる気分になっちゃった?」ニマ
眼鏡「うっ…」
委員長「──放課後の教室、誰も居ない静かな場所で二人っきり」スタスタ
眼鏡「い、委員長?」
委員長「謝るには最高のシチュエーション、誰にも聞いてほしくないから選んだ時間帯」ボソ
眼鏡「っ…!?」ビクッ
「どうして怖くないの?」
眼鏡「だ、だってそれは…」
「襲われないと思った?」
眼鏡「い、いやいや! しないでしょ委員長は!」
「どうしてそう言い切れるのかな? 本当の私を知ってる、君なのに…」フゥー
眼鏡「っ~~~!?」ビクビク
「…こんなにも近づいちゃった」
眼鏡「い、委員長ぉ…?」
「あと少しで届いちゃうよ。ほら、もうちょっとで…」スッ
眼鏡「委員長ぉー!?」
委員長「はい、なんですか?」ニコ
眼鏡「ご、ご冗談はほどほどにお願いします…!!」
委員長「ふふっ、なにを?」
眼鏡「色々と…! あ、あんま女の子に耐性が無いもんで冗談の範疇がワカリマセンッ!」ダラダラダラ
委員長「少なくとも女の子は、冗談でここまで近づかないよ?」ニマー
眼鏡「委員長!」
委員長「ふふっ」クスクス
眼鏡「…本当にさぁ…」ガクリ
委員長「怒ってもいいんだよ? 全然構わないし、むしろ怒らせるように動いてるつもりなのに」
眼鏡「…だから言ったじゃんか、怒っていいのか分からないんだって」
委員長「優しいね、だから君はすぐに油断しちゃうんだろうなぁ」
眼鏡「どういう意味…?」
委員長「どんな相手でも信用しようと思ったら、二人っきりでも油断する…かな?」トントン
眼鏡「うっ」
委員長「普通は最初から、そんな展開を作らないよ。そういう雰囲気に持って行かないようにする」
委員長「でも君は信じちゃう。相手がしないと言ったから、そうなるきっかけを残してしまう」ニマー
眼鏡「…最低じゃない、それ?」
委員長「ううん、別に?」キョトン
眼鏡「委員長にとっては、だろ」
委員長「んふふー! なんだ分かってるじゃない、私のこと」ニママ
眼鏡「色々と知ってるからね…」
委員長「でも君は油断する」ぴっ
眼鏡「…う、うっす」コクコク
委員長「ダメだよー? こんな私なんだから、人のモノ奪って盗んで壊して悦ぶ人間なんだから!」
眼鏡「……そうだとしても」
委員長「うん?」
眼鏡「お、俺は委員長を信じるよ。信じたい、って思ってる」ボソリ
委員長「……」
委員長「それは、どうして?」
眼鏡「なんつーか、変な理由だけどさ」ポリポリ
委員長「うん、何?」ニコ
眼鏡「悪い子じゃないなぁ~とか、別に嫌な子じゃないよなっとかさ」
眼鏡「嫌いになることもない、信用出来ないと思ってても信じたいって思える人」
眼鏡「と言った感じは多少あるけど、本当の意味では、」
眼鏡「まぁ、つまりは、懺悔してるっつーかね」
委員長「…懺悔?」
眼鏡「う、うん。委員長は俺にとって恐怖の対象源だった、マジで恐ろしくて死ぬほど怖かった」
眼鏡「でもさ、その怖い理由を知っちゃったら逆に、あぁ申し訳ない態度を取っちまったなと思えてきて…」
委員長「……」
眼鏡「多分、色んな人にも理由があるんだよな。怖い理由が、近づけない雰囲気の理由が」
委員長「かもね」
眼鏡「でも知った後だと単純に怖がれない。だから、委員長相手だとどうしても、強く出れない」
委員長「同情してるの?」
眼鏡「いやいやっ! むしろ尊敬してるんだこれでもっ!」ブンブンブン
眼鏡「──……俺、凄く弱いやつなんだ。だから、強い意志を持ってる人がかっこよく見える」
委員長「……」
眼鏡「怖い理由に相当の覚悟があった」
眼鏡「例え認められないものでも、やり通そうって覚悟がある人は凄いと思える」
委員長「…それは、」
眼鏡「あ、うん? 何?」
委員長「本当の私を知る前。ただのクラスメイトとして好きになったときも、感じた?」
眼鏡「え”ッ!?」
委員長「嫌なら良いんだ、答えなくても」ニコ
眼鏡「……か、感じたよ。だからす、…スキになったと思う」カァァ
委員長「こらこら照れないの。脈あるのかと思っちゃうから、ブ~だよ?」
眼鏡「スンマセン」
委員長「ふぅ。そっか、ありがとう色々と教えてくれて」ニコ
眼鏡「い、いや、俺の方こそ色々と言っちゃって…」
委員長「んーん、大丈夫」
眼鏡「…そっか」
委員長「でもアレだなぁ、やっぱりお返しが欲しくなってきちゃったかも」
眼鏡「へ?」
委員長「だって謝りたいんでしょ? 過去に怖がってしまったことについてさ」ニマー
眼鏡「そ、そうだけど。それとコレは別の感じじゃなかったか、今の会話…」
委員長「ぜーんぜん、私は一緒だと思うけどなぁ」ニマニマ
眼鏡「ええー…」
委員長「だからね、眼鏡くん。待ってるよ私、ちゃんとね」クス
眼鏡「え、何を?」
委員長「君の覚悟を、君が選ぶ最高の選択だよ」ぴっ
眼鏡「ふむぐっ」
委員長「どんなに苦しくても、どんなに大変でも今は悩んで答えを出さなくちゃダメな時」
委員長「眼鏡くんは考え続けなきゃいけない。そして答えを、どんなに醜くて最低な答えだとしてもね」
眼鏡「………」ドキ
委員長「でも、そんな最低でダメで最悪な答えでも──私は信じてあげるよ」スッ
委員長「おめでとう。貴方は無事、此方側の人間に晴れて成れました! ってね」ニマ
眼鏡「…委員長…」
委員長「答えは君次第! もう始まってるんだよ、とっくに【君の奪い合い】はね」
眼鏡「…っ」ビクッ
委員長「だから敢えて君に伝えておこうと思う」
委員長「安易に二人きりになるようにしないで、今度こそ襲っちゃうよ?」
眼鏡「…、もしかして参考書買いに行った時もやばかった感じ…?」
委員長「あそこ書店、ホテル街近いの知ってた?」ニマー
眼鏡「き、肝に銘じます!!」
委員長「はぁーあ、なんら疑いもなく着いて来たから毒気が抜けてね~」
眼鏡「わかりました! ほんっとスンマセンした!」コクコク
委員長「分かればよろしい。では、次なる一手を考えるだけだね、うんうん」
眼鏡「ちゅ、忠告したのにまだ何かするつもりなのか…っ?」
委員長「ふふ、嫌っても良いよ?」
眼鏡「…っ…」ビクッ
委員長「それに金髪さんをちゃんと選んでいい、むしろせーかいだね」
委員長「でもね、正解が何時だって正しい訳じゃないよね?」
眼鏡「…ぇ…」
委員長「【優しい】【優しい】、眼鏡くん?」ニマッ
眼鏡「…………」
委員長「ふふふ」
眼鏡「…俺は、どうしたら良いんだろうな本当に」ギュッ
委員長「そうだね。見つけないとね、一番の答えを」
眼鏡「…ああ、そうだ答えを見つけないと」
委員長「応援してるよ、心から」
眼鏡「……」
委員長「私は何時だって正直な自分で、貴方の前に居てあげる」
委員長「貴方はこれから沢山のことを天秤にかけなくちゃいけない」
委員長「良いことだから、良い。悪いことだから、駄目」
委員長「…そんな価値観がめちゃくちゃになるぐらいに、沢山のモノを」
委員長「けれどその中で私一人、私だけはきっと貴方の【中心】で居てあげる」スッ
委員長「──いっぱいいっぱいモテちゃってる眼鏡くん、私はスキだよ」ボソ
眼鏡「……っ…」
委員長「それじゃあ今日は帰るね、また学校で」スッ
眼鏡「俺は…っ」
委員長「…」ピタ
眼鏡「…俺は最低な奴かな」
委員長「最低だよ」
眼鏡「…だよな」
委員長「最低で優柔不断で、一人の女の子が良いと断言できない人だと思う」
委員長「──貴方の好きって言葉は、本当は軽いかもしれないね」
眼鏡「…ッ…」
委員長「でもお互い様なんだよ」
ガラリ
眼鏡「え…?」
委員長「皆皆、誰だって他人を一番にしない。自分を一番にする、それが当然のこと」
眼鏡「それはどういう…」
委員長「私も、そして金髪さんも。そしてあの子も」
委員長「まだ子供だもん。自由に生きていっぱい恋をして、沢山傷つけ合うんだ」
眼鏡「委員長…?」
委員長「あぁ、ごめんね。変に喋ろうとすると説教臭くなっちゃう、うんうん、単純に言えばよかった」
「……誰もが幸せな、そんなハーレムってあり得ると思う?」
眼鏡「…へ…?」
委員長「またね」フリフリ
眼鏡「いいんちょ、」
ガラリ ピシャ
眼鏡「…皆、自分が一番か」
眼鏡(否定なんて出来無い。元から金髪さんを奪うと決めたあの日から、俺は最低な奴だ)
眼鏡「例え相手に認められたものだったとしても…」
眼鏡(諦めるべきだったのか? 彼女の恋を見ないふりして、飛び付いてしまえばよかったか?)
眼鏡「馬鹿か…」
眼鏡(惚れっぽいとしても、長続きしない。そんなの、ごめんだ…俺が好きなのは…ずっとずっと…)
委員長「ふぅ」
委員長「なーんか優しくなりすぎてるなぁ、私」すたすた
委員長「あんな眼鏡とか、あんなオタクとか、あーんなフツメンギリギリな奴に何やってんだろ」
ゾクゾク
委員長「まぁ、好きだから仕方ないか。本気にもなるよね、うんうん」
委員長「ふふっ、だあい好きだよお~眼鏡くぅん…」ニマニマ
スタスタ スタッ スタッ ぴょんぴょん!
委員長「ふんふーん♪」ドキドキ
~~~
眼鏡「…なんでお前が居る」
友「友が故にな」こくこく
眼鏡「先に帰ってると思ってたぞ、雨降ってるし」バサッ
友「待ってた」
眼鏡「…俺を?」
友「他にいると?」
眼鏡「居ねぇか」スタ
友「ん」ひょい
眼鏡「ちょ、コラ! お前傘はっ?」
友「今見つけた」チョンチョン
眼鏡「そりゃ俺の傘だろ!」
友「…入る?」テレ
眼鏡「なぜ照れる、つかさ、お前ひさっしぶりに話しかけてきやがったなオイ」
友「気にしててくれたの?」キョトン
眼鏡「き、気にするわッ! あの日、あの食堂で言い放った時からずっと無視してくれやがって…!」
友「話しかけづらかった、と思われ」スッ
眼鏡「なに?」
友「困ると思った。眼鏡ちんに我から話しかけたら、嫌だと思ったから」シュン
眼鏡「いやな、放って置かれる方がかえって困るからな…? あれだけのこと言っておいてさ、うん」
友「これからは大丈夫?」
眼鏡「大丈夫かどうかは、まぁわからん。金髪さんがすっげー嫌そうにしてるけど…」
友「あ。それはモーマンタイ、我超平気」フンスー
眼鏡「お前なぁ…」
友「嫌われる方が慣れてる。好まれたほうが、苦手」
眼鏡「……、悲しいこと言うなよ」
友「それが我よ」フンススゥ
眼鏡「そーかい、嫌われて良いなら話しかけてこい」
友「黙れ小僧ッ! お前に我を守れるかッ!」しゃー!
眼鏡「守らん」ぐいっ
友「えー」
眼鏡「…だが、まぁ、一緒に帰るぐらいは許して貰えるだろ」
友「……」
眼鏡「……なんだ見つめるなよ、どうした」
友「なんでもないよ」ふるふる
眼鏡「そうか、じゃあ入れ」
友「相合傘いやじゃない?」
眼鏡「イヤじゃない。気にするな」
友「そか」
眼鏡「おう」
~~~
友「今日は眼鏡ちんやさしい」コクコク
眼鏡「俺は何時だって優しい男だろ」
友「そうなの?」
眼鏡「巷で有名だな」
友「我のトモダチやべーな」
眼鏡「ああ、やばい」
友「でも今日はもーっとやさしいですな」コクコク
眼鏡「…傘に入れて貰ったことが?」
友「一理ある」
眼鏡「なんだ一理って、じゃあ答えはなんだよ」
友「我のこと嫌いになってないから」
眼鏡「…気にするな」
友「気にする」
眼鏡「忘れろ。俺も忘れるから、それが一番だろ」
友「忘れない、忘れたくない」
眼鏡「駄目だ、忘れろ。委員長にも金髪さんにも一緒に謝ってやるから」
友「……」じっ
眼鏡「…あれは冗談だったって言えば済む話だ」
友「冗談だと思ってる?」
眼鏡「……」
友「じゃあ駄目なことだと思ってる?」
眼鏡「ああ、思ってる」
友「そか」コク
友「なら良い。ありがと」ニヨニヨ
眼鏡「わかってないな、お前は…」
友「わかってるよ?」
眼鏡「いや分かってないね、全然わかってない」
友「眼鏡ちんよりはわかってるつもり」
眼鏡「ッ……お前は一体何がしたいんだよッ!!」ばっ!
ヒラリ カタン ザァアアアア…
友「眼鏡ちん?」
眼鏡「はぁッ…はぁッ…俺はちゃんと考えてた、なのにお前が滅茶苦茶に…ッ」
友「……」
眼鏡「はぁ…はぁー…すまん、ごめん、マジですまない」スッ
友「ん」
眼鏡「何を言ってるんだ俺は、違う、気にするな」ふるふる
友「ごめんなさい」ペコ
眼鏡「…良いってば」
友「土下座でも何でもする、ごめんなさい本当に」
眼鏡「おい、やめろって、しなくていいから!」グイッ
ザァァァァ…
友「しなくていいの?」キョトン
眼鏡「意外そうな顔するなよ、つか、土下座はやめてくれ…」
友「ん」コクリ
眼鏡「…わかってくれたか」
友「わかってるし、最初から知ってた」スタスタ
眼鏡「…え?」
友「眼鏡ちんがこうなるって」ヒョイ
眼鏡「ど、どういう意味だ?」
友「……」スッ
眼鏡「友…?」
友「つらい? たいへん? もうこんなのいやだ?」
眼鏡「…っ…」
友「こうなるならモテないほうが良かった?」
眼鏡「…かもな」
友「眼鏡ちんは超優しいって知ってる」コクコク
友「…知ってたからトモダチなれたんだもん」
眼鏡「ん…」
友「でもオトコなら一度は体験したいコト」ニヨニヨ
眼鏡「バカ言え。例え二次元で羨ましいと思えても、リアルじゃ笑えてくるぐらい大変だ…」
友「我わからんよ?」
眼鏡「そーいうモンなの!」
友「了解した」ビシッ
眼鏡「んで、何が言いたいんだお前は…」
友「暗い話はしたくない、そーいうのいいんちょ向きだから」コクコク
眼鏡「ま、まさかお前…聞いてたのか…?」
友「ザ・気配消し!」ムフー
眼鏡(とことん覗き見、聞き耳に縁のある人だな委員長…)
友「とりま、我が言いたいのはひとつだけ」
眼鏡「な、なんだよ」
友「いっつはーれむ」フンスー!
眼鏡「走って逃げて帰るぞ、お前をここに置いて」
友「全力で追いかけるよ?」
眼鏡「…じゃ逃げない、耳塞ぐ」パシン
友「じゃ傘を放す」ぱっ
ザァァァァ…
眼鏡「……」
友「二人このまま風邪を引く」コクコク
眼鏡「わかった、降参ッ! ハイハイ降参しました、話だけ聞きますともッ!」ヒョイ
友「うむ!」
眼鏡「…なんだよ友、あんまり馬鹿げた話はしないでくれ」
友「夢物語にするのか現実にするのか眼鏡ちん、貴方次第ですわよ」
眼鏡「……」
友「我、出来ると思う。ハーレム、皆幸せ超らぶはっぴー」
眼鏡「出来無い」
友「なぜ?」
眼鏡「みんな自分が一番だからだ。自分一人幸せになりたい、そう望んでる」
友「へー」
眼鏡「お、お前もそうだろーが」
友「うん」コク
眼鏡「…だろうが」
友「でも嫌じゃないから多分、やっちゃ駄目だと思う」
眼鏡「はい?」
友「一人だけ幸せ。超欲しいけどそれは駄目なことじゃない」
眼鏡「お前ね、いやに自信たっぷりに言うけどさ…」
友「好き」
眼鏡「…へ?」
友「眼鏡ちん好きよ? 大好き、らぶゆーちゅっちゅっ」
眼鏡「おまっ」
友「それに巨乳のお姉様付いてくるよ?」
眼鏡「い、いらないですぅー! アホか! ばーかばーか!」
友「ヘタレ…」
眼鏡「常識的に言ってんだよッ! こっちは!」
友「最初から無い。我を選ぶなら全て非常識」コクコク
眼鏡「だから…!」
友「怖いなら逃げればいい」
眼鏡「…ぇ…」
友「嫌なら来ればいい。我のもとに、我とお姉様の元に」
友「辛くなったら許しを請いに、静寂を欲しに、酒池肉林を求めに」
友「全てを忘れて、捨て去って、それでも姉弟は待ってる」
眼鏡「……、お前」
友「ほら迷った」フススゥ
眼鏡「うぐゥ!」
友「我が選ばれる未来もあり得る。超嬉しい、でも嬉しいから選んじゃダメ」
眼鏡「なんだよそれ…」
友「微妙に辛くて嫌なこと。大変故に返ってくる幸せも大変美味、そんな展開がある」
眼鏡「はぁ、それがハーレムって…?」
友「一番ダメ、だからイイ」
眼鏡「お前はさ、本当に凄いと思うよ。なにがどうなってるんだ頭のなかは」
友「眼鏡ちんのことが沢山つまってる?」
眼鏡「ど、堂々言える神経がどーなってるか知りたいんだっての!」
友「何も難しい話してない」コクコク
眼鏡「十分伝わってるけど…あのな、無理なモンは無理なんだよ」
友「ん」
眼鏡「ハーレムなんて三次元じゃ無理。みんな素直に割り切れない、許されないことだ」
眼鏡「…大人になったらもしかしたら、んな関係もあったりするやもしれん」
友「漫画の読みすぎ」
眼鏡「お前が言うかね!? た、確かにその通り、リアルじゃあり得ない、やっちゃいけない」
友「……」
眼鏡「例え大人になってもだ! だから、お前は良いと捉えても……皆が駄目だ、許さないって」
友「眼鏡ちんも? ハーレムはやっちゃだめって思う?」
眼鏡「…お、男だ。そりゃ経験してみたいなぁとは、思う」ボソボソ
友「うむうむ」
眼鏡「でもリアルじゃ只のアホだろ。我儘過ぎる、何時か殺されても仕方ない」
友「我の好物知ってる?」
眼鏡「…なんだ突然」
友「言ってみ」
眼鏡「…唐揚げ? 鶏関係?」
友「イグザクトリー」
友「我、チキン超好き。愛してやまない」フンスゥ
眼鏡「そ、それが?」
友「眼鏡ちん超チキン」びしっ
眼鏡「やまかしいわ!」
友「だから超すき…」テレテレ
眼鏡「はぁッ!? なんだそりゃ、いやまて、なんか一番その発言が腹が立つかも知れん…!」ピクピクッ
友「チキン具合がハーレム作るのに向いてる、超ベリーグット」ぐっ
眼鏡「あのなぁ…ッ」
友「眼鏡ちんは金髪つぁんが大好き」ニコ
眼鏡「──……なんだよ、急に」
友「我も知ってるしいいんちょも知ってる」コクコク
友「一番すき、今も金髪つぁんがトップだと思われ」
眼鏡「…それが?」
友「本当に一番すき? 聞いてみたかった、眼鏡ちんに」
眼鏡「……」
眼鏡「…好き、だよ」ポリポリ
友「そか」ニコ
眼鏡「ん…」
友「じゃあ訊ける?」
眼鏡「え?」
友「───金髪つぁんに、自分が一番すきか訊ける?」
眼鏡「…………」
友「教えてみ」ホレホレ
眼鏡「……ぁ…」ビクッ
友「くす」
「ほらチキンだ」ボソ
眼鏡「っ…!」
友「我は好きよ、眼鏡ちんのこと」
眼鏡「…言うなって」
友「んーん、言う」
友「一番すき。誰に訊かれてもそう答える、それにいいんちょも」コクコク
眼鏡「……」
友「でも金髪つぁんはわかんね」
眼鏡「……」
友「だからハーレム。怒らせたくないなら、逆に怒らせる。眼鏡ちんに興味をもっともっと引き付ける」
眼鏡「…ぇ…あ…それで、ハーレム?」
友「という建前」コク
眼鏡「………」ズーン
友「でもハッキリ出来るよ、眼鏡ちん」
眼鏡「なにがだよ…」
友「好きか嫌いか、駄目か良いか、すべてひっくるめてバッチリ幸せ」
眼鏡「極論だな、相変わらず」
友「それが我! 眼鏡ちんのトモダチ!」
眼鏡「…は、馬鹿だろお前」
友「でも幸せ! なにが駄目?」
友「むしろ駄目だから超イイコト! ばっちしオーケー!」
眼鏡「……」
友「てのが我の提案、うん、断っていいよ?」
眼鏡「言い切った後にそれかよ、いやまぁ、お前らしいけどさ」
友「選ぶのは眼鏡ちん」
眼鏡「…ちゃんと選ぶって」
友「どんな答えでも我、ずっとトモダチ……」
眼鏡「うん?」
友「……でありたい、です」
眼鏡「……」
友「こ、断っていいよ」
眼鏡「そう怯えるなってば。うん、俺は別に気にしない」
眼鏡「確かにハッキリ訊けないよ、金髪さんに俺が一番好きかって」
(だってそれは俺の頑張りだから、好きな彼女の為だから)
眼鏡「…今はそれが良い、訊かないほうが十分なんだって」
友「……」
眼鏡「優柔不断だよな。こんな──気持ちなら訊けばすっきりするのに、でも駄目だ」
眼鏡「怖い。本当にチキンだ、最初から知ってるのに言葉にして知るのが…凄く怖い」
友「…好きだから?」
眼鏡「好きだから。俺が好きになった彼女は、違う人のために頑張る姿だった」
眼鏡「…でも届きそうだと思った、その瞬間、彼女の何もかもが欲しくなってしまった」ズキン
友「ん」
眼鏡「馬鹿だな、ガキすぎる。金髪さんに言い切ったあの時の俺に、謝りたい」ギュッ
友「……」
眼鏡「すると周りの人達がやけに俺に優しくしてくれる。弱みを見せてくれたり、仲良くなったり」
眼鏡「かっこいいなと思ったりした。あーこれじゃ好きになっちゃうな、とかさ」
友「我も?」
眼鏡「…お前もだ、はっきりと俺に対する気持ちを言ってくれた。それはカッコ良かったよ」
友「ん…」テレテレ
眼鏡「あ~……」
眼鏡「なんだろうな、ははっ、意味が分からん。俺、こんなにも馬鹿だったっけ?」
眼鏡「面目ねぇー……俺、ちょっと情けなさに泣きそうだわ、なにやってんだろ、だぁー……」
友「………」
眼鏡「好きになるって、こんなにも面倒だったっけか……」スタスタ
ザァァァァ…
眼鏡「…今の俺じゃ、友に対してなんの約束も出来ねえよ、守れる自信がない」
友「そか」
眼鏡「だから言えない。気にすることも出来ない、滅茶苦茶だ」
友「うん」
眼鏡「…ハーレムか」
友「……」
眼鏡「友。お前の言うハーレムになれば、こんな気持もスッキリ出来んの?」
友「出来る」コク
眼鏡「誰もが悩まずに? 誰ひとりとして辛くならずに?」
友「それは無理」
友「…けど皆でそれを乗り越える」
眼鏡「ははっ、そりゃけったいな事で…」
眼鏡(まるで夢物語だ…誰もが他人を信じて、大丈夫だって自分に言い聞かせる…)
眼鏡「みんな辛けりゃ、辛くないってか」
友「少なくとも我はそう出来る」
眼鏡「…凄いな、お前」
友「凄くない」
友「…そう信じさせてくれた眼鏡ちんが凄い」
眼鏡「神かよ、俺って」
友「ひとりぼっちだった我を救ってくれた。なら神で良い」コクコク
眼鏡「そりゃどーも…」スタスタ
友「ど、どこ行くの?」わたわた
眼鏡「帰る」スタスタ
友「か、傘はっ?」
眼鏡「使っていい。明日帰してくれ、濡れて帰りたい」
友「……」
眼鏡「またな、友」フリ
友「…ん…」フリフリ
眼鏡「……」ニコ
ザァァァァ…
友「眼鏡ちん…」
友(くっさいセリフ吐いて帰った、超かっこええ……)キラキラキラキラ
~~~
金髪「んで何、それが理由?」
友「ん」コク
金髪「あいつバカなんだな…」
友「あの背中は忘れられない、超クールだった」フンスゥ
金髪「あんたも馬鹿だな、ゲイだし」
友「違うのよ? 男好きノン、眼鏡ちん好きラブ!」
金髪「あぁ? それがキモいって何度言えば分かるワケ?」
友「イイヨーゾクゾクするよー」ニヨニヨ
金髪「ああッ!?」
委員長「ハイハイハイ、喧嘩はそれまで」パンパン
金髪「コイツ絶対にあたしのこと馬鹿にしてンだろ…ッ」
友「嫌いよ? でも好きー!」
委員長「良いから大人しく、事情を知ってるの友くんだけなんだから」
金髪「…んでどーすんの」
委員長「お見舞い行かないの? 彼、風を引いちゃったんでしょ?」
友「眼鏡ちんの家を知ってるの、我だけ?」
金髪「あたしは知んない」
委員長「んー、知らないなぁ」
友「じゃあ行こう、みんなでゴーですな」フンスゥ
金髪「住所だけ教えろ、二人だけで行く」
友「…いつからそんな仲良くなったいいんちょ?」キョトン
委員長「どーだろ?」ニマー
金髪「チッ」
友「皆で行ったほうがよろしくないですかな?」
金髪「…自分一人だけで行くって、そう思わなかったワケ?」
友「それじゃ意味がないですよね?」
金髪「……………」プルプル
委員長「はいはーい! わかりました、じゃあ今日は三人で行っちゃおー!」
友「おぉー!」
金髪「…ちょっと」
委員長「ん?」
金髪「それでイイのか委員長は、アイツ絶対に良からぬこと考えてんぞ…!?」ボソボソ
友「?」
委員長「良いも悪いも、友くんが教えてくれなきゃ見舞いにも行けなかったんだよ?」
金髪「うっ…」
委員長「行きたくないのかなー? 眼鏡くんの家、どんな感じなのか知りたくないのかなー?」ニマニマ
金髪「…あんたさァ」
委員長「そんなに怖い? 眼鏡くんを取られるかもってさ」
金髪「何?」
委員長「彼を嫌うのは、そういうことでしょ? 貴女は趣味や価値観で人は嫌わない、そう私は思ってるけれど?」
金髪「……」
委員長「【私】の意見だから真に受けないていいよ」クスクス
金髪「…大した度胸だよ、ほんっとに」くるっ
金髪「おい友」
友「友ちんで結構よ」
金髪「やっぱ嫌いだわコイツ!」バッ
委員長「ま、まーまー落ち着いてー」
金髪「うぬぐぐ、はぁ~…わかったから眼鏡の家に行くよ、三人でさ」ガックシ
友「いえすっ!」
委員長「それじゃあ、途中で買い物してからレッツゴーだね!」
~~~
友「ここよ」コクコク
委員長「普通のお宅だね」ガサリ
金髪「どーでも良いけど、あんたそれ全部お見舞い品なワケ?」
委員長「え? こういうのは沢山あったほうが喜ぶかなって…」
金髪「恩着せがましく感じる」
委員長「ウッソ!」
友「こんちわー」ピンポーン ピンポーン
委員長「ま、待って友くん! 私ちょっと色々と不安になってきてる…!!」
金髪「今からごちゃごちゃ考えても仕方ないっしょ、諦めろ」
委員長「うぅ~っ」
友「……」ピンポーン
友「んー…」ガサガサ
金髪「なに勝手に人んちのポスト漁くってんだ…」
友「キー発見」ピカリン
金髪「おまっ!?」
委員長「わーすごい」パチパチ
金髪「何が凄いんだよ…立派な不法侵入だろ…」
友「おじゃましまーす」ガチャ
金髪「だぁーッ!? ほんっとお前は勝手だよな!? オイって!」
委員長「ま、待ってみんな…! 荷物が意外と重いから! 早く歩けないよ!」
~~~
友「居ない。部屋かも」
金髪「二階?」
友「うむ。兄様の隣の部屋」コクコク
金髪「へぇー兄貴居るんだ、知らなかったわ」トントントン
友「……」じぃー
金髪「な、なんだよ。あんたも早く上がって来いって」
友「ごちゃごちゃ言うには慣れるの早い、不法侵入なのに」じぃー
金髪「うっせ! 良いから早く会いに行くぞ、会っちまえば不法侵入にならん」ズンズン
友「アイヨーアルヨー」トントントン
金髪「えーっと、ここ?」
友「そこ」コク
委員長「だ、だからみんな早いってば…はぁ…はぁ…」
金髪「おーい、眼鏡ぇーみんなでお見舞い来てやったぞー」コンコンコン
友「…」
金髪「出ないな、寝てる?」
委員長「ふぃー…もう開けちゃえば?」
金髪「ばっか、もし盛ってたらどうするんだよ」
友「ありえる」コクコク
金髪「だろ? ヘッドホンしてパソコンを前に、こう、こう、だよな?」シュッシュッ
友「眼鏡ちん左利き派」コクコク
金髪「ひだりききは?」キョトン
友「右より左が嫁」
委員長「色々と言い合う割に仲いいよねあなた達…」
金髪「アッハッハッハ! やべッ、ツボった! なにそれ、んなのあるわけ…っ!?」プルプル
友「冗談よ?」
金髪「そーだったとしてもだ、くっくっくっ、やべぇ想像したら笑けてくるわ…!」
委員長「もういいよ、私が勝手に開けちゃうからね」コンコン
委員長「──眼鏡くん? 委員長だけど、ドアを開けるね」ガチャ
キィ…
委員長「おじゃましまーす…」ソロリ
金髪「オナってる姿見る気マンマンな開け方だ」ニヤニヤ
委員長「ち、違うよ! 寝てるかもしれないからだよ!」カー
友「ビッチ見せかけてムッツリ?」
委員長「どういうこと友くん!?」
金髪「おっ? なんだ普通にベッドで寝てんじゃん、ほら」
友「眼鏡ちーん」トテトテ
委員長「…あれ? なんか膨らみがおかしくないかな?」
金髪「え?」
友「……」
委員長「あ」
眼鏡「う、うーんッ」ダクダクダク
友姉「すやすや…」
金髪「この人…だ、誰ですか…?」フルフル…
委員長「誰だろう? もしや眼鏡君の彼女だったり?」
金髪「ふぇっ!?」ビクッ
友「我の姉」
金髪「…姉貴? え、なんでじゃあ寝てんの? 一緒に?」
委員長「お姉さんなの?」
友「……」ズシャッ
友「ふらいんぐぷれーすっ」トン!
友姉「すや──ふがぁごォッ!?」ドスンッッ
友姉「なにっ!? えっ!? なにが起こっちゃったの!?」
友「なにをしてる」
友姉「…あー……」
友「しかもそれ我のカツラ、我のコスプレ、我の格好!」ゴゴゴゴゴゴゴ
友姉「いやねっ? 違うのよ、色々と説明しなきゃ行けないことあってね?」チラリ
金髪「わ、マジで姉貴さんだわ」
委員長「………」じぃー
友姉「あー…あ! も、もしかしてみんなこれから乱」
友「フン!!」ドスッ
友姉「あ痛っ!? やめて弟よ、脇腹は弱いのひぃんッ!?」ビクン
~~~~
友姉「スミマセンデシタ」
金髪「リアルで土下座する人はじめて見た…」
友「ここでなにしてた」フンスー
友姉「お見舞いを頼まれましてね、ええ、ハイ」
委員長「誰にですか?」
友姉「眼鏡君の兄貴ね、一緒の大学なのよ」タハー
金髪「うそくせぇ…」
友姉「いやマジでマジで! 嘘言ってないよ? 冗談じゃなく引くぐらい弟ラブな兄貴なの!」
委員長「ほんと?」チラリ
友「ほんと」コク
友姉「よ、用事がある兄貴の為に私が頼まれたってことなのさ! 確認とっても良いよ!」
金髪「じゃあ何でコスプレしてんスか…?」
委員長「それと何で一緒に寝てたんですか?」
友「我のコスプレどうやって見つけた? 隠してたのに!」
友姉「ほぁー! だめ、駄目よ! 一気に聞いちゃお姉さん頭悪いんだから! 1つずつにして!」
友「もう一生お姉様なんて呼んであげない」ムッスリ
金髪「…普段お姉様とか呼ばせてるんスか…?」ドンビキ
委員長「えぇ…」
友姉「君たちさ、初めて会った時と変わって全く容赦無いよね! 理由はわかるけどさ!」
眼鏡「うっ…ううん…」
友「……。なんでコスプレ?」
友姉「ほ、ほら眼鏡君お姉ちゃんのこと苦手だからさ、パッと見気づかれないような格好したの」
友「なんで一緒寝てた」
友姉「…ノリで?」
友「フン!」ズン
友姉「ひぅっ!」
金髪「はぁ~~~~………」
金髪「もういい、なんか色々と疲れた、帰るわ」くる
委員長「え、帰っちゃうのっ?」
金髪「これ渡しておいて、別にあたしの名前を出さなくてもいいから」グイッ
委員長「で、でも」チラリ
友「帰ってもいい? 後悔ない?」
金髪「なんの? あたしは単にお見舞いをしに来ただけだしな」
友「でも眼鏡ちん寝てる」
金髪「……」
金髪「一つ言っとくケド、あたしはやらないからね」
友「?」
金髪「あんたが望んでる、眼鏡の取り合いみたいなコトだよ」チラ
友「……」
金髪「数週間前に、あんたが食堂で言ったことは冗談だと笑って済ませてやる」
友「英語で分かってなかったのに?」
金髪「そ、そうだったとしてもだよ!」
友「む」
金髪「面倒くせえ風にゴチャゴチャにすんな。眼鏡は眼鏡で、ちゃんと考えてる」
委員長「……」
金髪「つまりはそう、ハーレムだが何だか知らねーけど、あたしを巻き込むんじゃないって話」スッ
友「………」
金髪「あと委員長、あんたもそれでいいワケ?」
委員長「……」ピクッ
金髪「今の状況が望んでた【不正解】だって言うなら文句もねえよ」
金髪「でも一つ言わせてもらうなら、あたしは違うと思う」キィ
パタン
友「……」
委員長「……」
友姉「若いねー」ポヤポヤ
友「黙ってて、お姉様」
友姉「いや若いよ、素晴らしいね。見ててきゅんきゅん来るよ、青臭さにさぁ」
委員長「…じゃあ何が正解だと言うんですか」
友姉「んー?」
委員長「…いえ、すみません」
友姉「元から正解じゃないんだから、結局終わりも正解じゃないんじゃないの?」ニコ
委員長「……」
友姉「ま、君みたいな娘は端から知ってて動いてそうな感じするけどね」
友姉「実にオタサーの姫向きだ。場の中心、空気の掌握、雰囲気操作、どれもバッチ来いじゃない?」
委員長「…わかりますか?」
友姉「私は年上だもん。君より経験がある、沢山ね」
委員長「じゃあ聞かせて下さい。経験豊富なお高く止まってるお姉さんならわかると思われますが」
友姉「おうよ、どんと来い」
委員長「……」
委員長「この状況で一番最低なのは誰ですか?」
友姉「えー? そんなの分かりきってることじゃん、誰だってわかるさ」
友姉「──全部全部、はっきりとさせない【今出て行った】……」
眼鏡「う、うーん…? ほぁ!? あれ!? なんで皆居るんだッ!?」ビクーン
友「あ、起きた」
眼鏡「お前……お前だな! 絶対にポストから鍵を拾っただろ!?」
友「いつも通り」コクコク
眼鏡「何がいつも通りだよ……はぅあッ!? い、委員長まで!?」
委員長「おはよー」フリフリ
眼鏡「その荷物もしかしてお見舞いに…?」
委員長「うんっ」ニコ
眼鏡「そ、そうなんだ…ありがと…」テレ
眼鏡「あと、どうしてお姉さん居るんですか?」スッ
友姉「綺麗に表情使い分けるねーお姉さん泣いちゃうぞー?」ニコニコ
眼鏡「あ、待って。記憶が曖昧だけど確か、家に上がらせた人が居た気が…」
友姉「それ、コスプレしたお姉ちゃんだよ?」
眼鏡「あんた何やってんだ!?」
委員長「それよりも眼鏡くん、ちょっと良いかな」スッ
眼鏡「え、なにっ? ふぃっ!?」ビクッ
委員長「んー」ピト
眼鏡「っ~~~~…!」プシュー
委員長「熱は下がってるかな、顔は赤いけど」ニマー
友姉(あざといね、同姓に嫌われるタイプだ)ヒソヒソ
友(それがいいんちょの持ち味)ヒソヒソ
委員長「聞こえてますよー?」
眼鏡「…も、もう一度訊くけど…本当にお見舞いに来てくれた感じ…?」
委員長「風邪を引いたって聞いちゃったからね」ニコ
眼鏡「そ、そっか」テレテレ
委員長「こーいうのは眼鏡くん的に高ポイントな感じかな?」ニコニコ
眼鏡「うーんッ? ど、どーだろなァー?」
委員長「顔に出てるよね、相変わらず」にまにま
眼鏡「うぅっ…からかわないでくれ…ッ」
友「眼鏡ちん果物いる?」
眼鏡「わ、お前も買ってきてくれたのか…?」
友「こっちが眼鏡ちんバナナで、これが我のバナナ」
眼鏡「…ド下ネタに言葉が出ないんだが…」
友「想像力豊ね、眼鏡ちん」ニヨニヨ
眼鏡「俺のバナナとか言う方が悪いだろ!」
友姉「……。ま、元気になったみたいでよかったよかったー」タハー
眼鏡「え、ええ、何かと面倒見てくれたようで…」
友姉「そりゃ友達の弟だもんね、大事な愛しい弟の友達でもあるから頑張るよ」
眼鏡「そ、そっすか。ありがとうございます、マジで」ペコリ
友姉「……」
友姉「…優しいね」ボソリ
眼鏡「…っ」ピクッ
友姉「ん~~~~ッ!! じゃあお姉さんは帰りますか、弟よいっしょ帰る?」
友「勝手に独りで帰っていいよ?」
友姉「ま! この子ったら冷たいんだから!」ヒェー
友「でも帰る。いいんちょも帰る?」
委員長「私も帰るよ、それじゃあまたね、眼鏡くん」フリ
眼鏡「あ、う、うん」
委員長「あとコレね」スッ
眼鏡「ん?」
委員長「金髪さんからだよ、お見舞い品」ニコ
眼鏡「…そっか、ありがと」
委員長「お礼は元気になって直接言うこと、わかった?」ピッ
眼鏡「お、おう」コクコク
友「我帰る、盟友を去らば」
眼鏡「ありがとな、色々と助かったよ」フリ
友姉「んじゃまたねー!」
パタン
眼鏡「……」ガサリ
眼鏡(マスクに風邪薬、果物と目薬? 色々とあるなぁ…)
眼鏡「………」じーん
眼鏡(ハァゥ!? い、いかん不覚にも感動と嬉しさに! ぐッ、止まれッ!)ギュッ
眼鏡「ッハァーーー……」ガクリ
眼鏡「うん、止まった」ずびび
眼鏡「………」
『…優しいね』
眼鏡「…例え正解じゃなくても、俺にはそれしかないしな…」ボソ
眼鏡(優しくて、最低で、チキン。でもちゃんと好きな娘の為には真っ直ぐ向いて居たい)
(彼女の頑張りを応援するのが俺の強さ。そして最後に奪う、そう決めたんだ)
(だから彼女がどういった選択をしようが、今の俺も先の俺も納得するだけの決心を持つべきだと思う)
(最後に選んだのが俺じゃなくても、そんな答えが待っていても俺は信じなくちゃいけない)
眼鏡「…金髪さんを好きで居て、応援する自分を、最後までずっと」
眼鏡「覚悟を…持たないとな…」
『この状況で一番最低なのは誰ですか』
『──なの分かりきってることじゃん、誰だってわかる──』
『全部全部、はっきりとさせない【今出て』
眼鏡「違うんだ。全然、悪いのは彼女じゃない…」
眼鏡「訊かない俺が悪いんだよ…ちゃんとしないチキンな俺が悪いんだ…」
ポタ ポタポタ…
眼鏡「……」
『つまりはそう、ハーレムだが何だか知らねーけど、あたしを巻き込むんじゃないって話』
眼鏡「あぁ……」スッ
眼鏡(悪いこだって分かってても望んじゃ駄目だったかな)
言って欲しかった、
『この中で眼鏡を、一番好きなのは□□□だ』
そのコトバを。
眼鏡「はぁー……」ポロポロ
眼鏡「ばかだな、うん、凄く馬鹿…」グシグシ
眼鏡「…ぁ…」ガサッ
眼鏡「…せんべいが、入ってる…」
「………」
「…ぱり」
「しょっぱ」
80 : 以下、名... - 2015/09/11 18:25:06.65 rLd+JBHBO 74/276前編おわり
このスレで後編つづきます
ではではノシ
続き
眼鏡「つ、付き合ってくれ」金髪「へ?」【後編】