1 : 以下、名... - 2015/09/12 18:36:40.42 fTJA3Q5qo 1/55

・登場人物名有りです。
・人によりグロ、エロ、非道徳的などと感じられる描写や表現があるかもしれません。
・実在する人物や団体、何らかの思想信条等とは一切関係ありません。

元スレ
【オリジナル】JK「怪獣退治」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1442050600/

2 : 以下、名... - 2015/09/12 18:38:37.57 fTJA3Q5qo 2/55

JK(……あ……)

JK(通信機に着信……)

JK(緊急招集……)

JK(授業中なのに……)

JK(また仕事かぁ……)

JK(どれどれ、通信の中身は……)

JK(通信機の画面をこっそり、見…)ゴソ

JK(“こっそり”? 何遠慮してんだろ、あたし)

JK(いーんだよ別に、仕事なんだから)

JK(禁止されてる授業中のケータイやスマホいじりやってるんじゃないんだから)

JK(堂々と見ていーんだよ)

JK(で、通信は…)

JK(“駿河湾に出現 静岡県に上陸 被害甚大”)

JK(……)

JK(行かなきゃ、だけど……)

JK(何気にメンドいなぁ)

JK(……でも)

JK(でも今の英語、予習やってないし…)

JK(お昼御飯の後だから割と本気で眠くて、マジメに授業受ける気なんて全っ然ないし…)

JK(ちょうどよかったのかも。仕事を言い訳にして途中でバックレちゃえ)

JK「すいませーん、先生」

3 : 以下、名... - 2015/09/12 18:40:04.52 fTJA3Q5qo 3/55

教師「ん。何だ? 小野寺」

JK「すいません、急に仕事が入っちゃったみたいで…」

教師「ん、ああそうか。分かった」

JK「あのー、すぐ行かなくちゃなんで…」

教師「ああ、気にしないで行ってこい」

JK「はい。今日はそのまま帰ります」

JK(急いで帰り支度して……)ゴソゴソ

男子生徒A「小野寺、またか」

男子生徒B「今度はどこで起きてるんだ」

JK(……)

JK「ごめん。あたしそーゆーの何も喋れないから」ゴソゴソ

男子生徒B「あっそうか、わりい。後でニュース見るわ」

JK「うん。じゃあすいません、小野寺悦子は帰りまーす」

女子生徒A「えっちゃん気を付けてね」

女子生徒B「頑張って小野寺さん」

女子生徒C「えっちゃんカッコいい。ケガしないでね」

男子生徒A「頼んだぞ小野寺」

男子生徒B「小野寺悦子、出撃! 頑張れよ!」

JK「みんなありがと。行ってきまーす」

4 : 以下、名... - 2015/09/12 18:43:04.93 fTJA3Q5qo 4/55

JK(ってなわけで授業バックレ成功~♪)

JK(……でも)

JK(でもこの後、家に帰れるわけじゃないんだよね)

JK(この後あたしを待ってるのは仕事なのですよ。し・ご・と)

JK(誰もいない廊下を通って…)タタタッ

JK(誰もいない下駄箱で靴を履く)

JK(こんなふうに早退すんのって何回目だろ)

JK(朝、学校へ着いてすぐに招集されたこともあったなぁ)

JK(さて、今日はどこから飛ぼうかな)

JK(人が見てない所……)

JK(別に、見られてもいーんだけど)

JK(いつも何となく隠れる所を探しちゃうんだよね)

JK(あ。あのトラックの陰にしよう)

JK(カバンをしっかり背負って……)


バシュッ



5 : 以下、名... - 2015/09/12 18:44:50.70 fTJA3Q5qo 5/55

JK(静岡県……ビミョーに遠いかなぁ)

JK(こんな理由で全国をまわることになるなんて思わなかった)


ギュゥゥウウン…


JK(こーやって空を飛んでる間が一番気持ちいい)

JK(雲の間を自分の体がどんどんすり抜けてく)

JK(あたしはこの超能力を、自分を真ん丸なバリアで包むことで使える)

JK(だから空を飛んでる時、雲や周りの空気はあたしの体へ当たってない)

JK(でも何だか、自分が風を切って飛んでるみたいな気がする。髪が風になびいてる気がする)

JK(空を飛んでる間が一番気持ちいい)


ギュゥゥウウン…


JK(でも、今でもたまに思うんだよね)

JK(これでホントに良かったのかな、って)

JK(この能力使って仕事することを引き受けて、ホントに良かったのかな、って)

6 : 以下、名... - 2015/09/12 18:46:41.32 fTJA3Q5qo 6/55

JK(だけどもしそーしなかったら、こんな超能力に意味なんてなかった)

JK(機械とか道具とか全然使わないで、生身で空を飛べる能力なんて)

JK(“飛行機乗らないで外国行けるからいーじゃん”って言った友達がいたなぁ)

JK(でもそんなことしたらあたしが外国に着いた時、そこの人たち驚いちゃうよ)

JK(制服着た日本人の高校生がいきなり空から降って来るなんて)

JK(それに、そーゆーのは不法入国っていうんじゃなかったっけ?)

JK(結局あたしは、仕事を引き受けることを選んだ)

JK(超能力を使ったこの仕事を引き受けることを、選んだ)

JK(でも仕事を引き受けることで、仕事以外のいろんなものも引き受けることになっちゃった)

JK(仕事以外の、いろんなものも……)

JK(……さーて)

JK(今回もその仕事を始めるとしますかぁ)

JK(ヘッドセットを着けて…)

JK(通信機を腰へ装着、ヘッドセットに接続…)

JK「特駆隊司令部、聞こえますかぁ。司令直属特任隊員、小野寺悦子でーす」

8 : 以下、名... - 2015/09/12 18:49:59.16 fTJA3Q5qo 7/55

オペレーターA「こちら自衛隊、特定特殊生物駆除部隊司令部。小野寺特任隊員の音声通信を受信」

オペレーターB・C「「小野寺特任隊員の音声通信受信を確認」」

オペレーターA「該通信を最優先に指定、確立作業開始。小野寺特任3佐、そのままお待ちください」

JK『はーい』

オペレーターB「通信防護及びノイズ除去システムを作戦モードで適用」

オペレーターC「バックアップ回線を構築……3回線が成立」

オペレーターB「各通信関連システム稼働状況及び送受信状況は共に良好。確立作業完了」

オペレーターA「通信を確立しました。こんにちは、小野寺特任3佐。今回もよろしくお願いします」

オペレーターB・C「「こんにちは、小野寺特任3佐。よろしくお願いします」」

JK『こんにちはー。こっちこそよろしくお願いしまーす。で、田所博士いますかぁ』

田所「わしだ。田所だ」

JK『博士。あたしでーす』

田所「うむ。悦子君、いつも急にすまないな」

JK『だって急なのが普通だし。予告してから現れてくれたヤツなんて今までいなかったし』

田所「そうだな。それで君は今、現場へ向かってくれとるかね」

JK『取りあえず富士山目指してまーす。方向、これでいーですよね?』

田所「かなり大雑把だが、間違ってはおらんの」

JK『今どんな感じですかぁ』

田所「状況は深刻だ。避難計画の発動が間に合わなかった地域の民間人に死傷者が出た」

JK『えー? ひどい。でも今回も、本隊の人たちが先に行ってるんだと思うけど』

田所「無論、特定特殊生物駆除部隊の本隊は既に展開しとる」

JK『山本さん、ちゃんとやんなきゃ駄目じゃん』

田所「ところが自衛隊も被害を受けとるのだ。戦闘機が2機撃墜された」

JK『えっ。ひょっとして今度のはいつもよりヤバい?』

田所「通常兵器は今回もほぼ通用せん。山本司令をはじめ本隊は懸命に任務へ当たっとる」

9 : 以下、名... - 2015/09/12 18:51:57.80 fTJA3Q5qo 8/55

JK『目標はどういう感じのヤツですかぁ』

田所「爬虫類に似た形状の直立二足歩行型。体高約50メートル」

JK『いつものタイプじゃん』

田所「だが遠隔攻撃能力を持っとる。これで自衛隊機が落とされたのだ」

JK『攻撃能力? どんな?』

田所「眼に相当する部分から光線状のものを出す。これは極めて高圧、高温な性質と推測される」

JK『高圧、高温……』

田所「直撃を受けた戦闘機の機体は粉々になった。一部は燃えたり溶けたりせず瞬時に蒸発」

JK『ちょっと怖そう。でもその能力、おかしくない? 目からビームなんて何だかベタ』

田所「悦子君、相変わらずだの。しかしふざけとる場合ではない。この怪光線は脅威だ」

JK『だってベタ過ぎじゃないですかぁ。多分そのビーム、出る時に“ピー”って音立てるんでしょ』

田所「よく分かるな、君」

JK『だってお約束じゃないですかぁ』

10 : 以下、名... - 2015/09/12 18:54:31.45 fTJA3Q5qo 9/55

田所「いいかね悦子君、この光線を絶対に受けてはいかん」

JK『当たったらどうなっちゃいます?』

田所「君のバリアでも無力化される可能性があるかもしれん」

JK『分かりました。気を付けまーす』

田所「相手の眼に注意しなさい。頭部正面へ不用意に行くことは絶対に避けるべきだ」

JK『了解でーす』

田所「現場の詳細な位置についてはデータを参照するように」

オペレーターA「小野寺特任3佐、作戦地図データを通信機へ送付済みです。御確認ください」

JK『どれどれ……あ、来てまーす』

田所「以上だ。今、山本司令と話をするかね」

JK『山本さんの指示を聞くのは前線本部へ着いてから、攻撃を始める直前にしまーす』

田所「分かった。何かあったらこの司令部にいる山本司令やわしをすぐに呼び出しなさい」

JK『はーい』

11 : 以下、名... - 2015/09/12 18:59:27.03 fTJA3Q5qo 10/55

JK(やっと富士山のとこまで来た)

JK(もらったデータを使って現場を探す……)


ギュゥゥウウン…


JK(どこかなー)

JK「♪かいじゅーたいじにしめいをかけてー♪」

JK「♪もーえーるまーちにあーとわーずーかー♪」

JK(あ。見えた……あそこだ)

JK(すごい煙……)

JK(街が大火事。例のビームで建物とかを燃やしてるんだろうな)

JK(現場へもっと接近)


ギュゥゥウウン…


JK(こいつか……今回の目標)

JK(こいつもキモいなぁ。トカゲやワニが立ち上がったみたいないつものタイプだけど…)

JK(全身イボだらけ。こーゆーのが超苦手な人ならきっと、話聞いただけで逃げ出すよね)

JK(どうして毎回、こんなガチあり得ない生き物が来るんだろ)

JK(一体誰がこんな生き物を作るんだろ)

JK(……あれ? こいつらって誰かが送り込んでくるんだっけ?)

JK(それとも自然に、どっかから湧いてくるのかな)

JK(あ。それを考えるのはあたしの仕事じゃなかった)

JK(それを考えたり調べたりするのは博士たちの仕事。あたしがそんなことするのは無駄)

JK(いつも何となくこのことを考え始めちゃうんだよね。あたしの悪い癖)

JK(それより、特駆隊の前線本部が近くにあるはず。データだとその場所は……)

12 : 以下、名... - 2015/09/12 19:01:56.49 fTJA3Q5qo 11/55

自衛隊員A「ん?」

自衛隊員B「どうした?」

自衛隊員A「何だアレ?」

自衛隊員B「アレ? アレって何だ?」

自衛隊員C「どうした? 二人とも」

自衛隊員A「空を飛んでる、アレ……」

自衛隊員D「みんなどうした? 空を見て何してるんだ? あ……何だアレ……」

自衛隊員A「俺……頭おかしくなったのかな……」

自衛隊員B「俺もだ……。どうしてあんなものが見えるんだろ……」

自衛隊員C「ああ……。制服を着た、女子高生が……」

自衛隊員D「空を、飛んでるなんて……」

上官「馬鹿もん、お前ら何を言ってる!」

自衛隊員A「はあ。でも…」

上官「あれは“えっちゃん”だ!」

自衛隊員B「えっ…!?」

自衛隊員C「あ、あれが……!?」

自衛隊員D「あれが……“えっちゃん”!?」

上官「通信! 司令部へ報告!」

自衛隊員E「こちら前線本部。小野寺悦子特任隊員を上空に確認。該隊員は本部へ向けて降下中」

自衛隊員A「作戦資料で知ってたけど……実際に見ると……」

自衛隊員B「ああ……。シュールで…」

自衛隊員C「インパクト、あるよな……」

上官「腑抜けたことを言うな! お前ら4人でそこの広場へ正方形を作るように立て!」

自衛隊員D「は…了解! 着陸地点を示すんですね! あ、でも、大きさは…」

上官「一辺が10メートルでいい。早くしろ!」

自衛隊員A・B・C・D「「「「了解!」」」」ダダダダッ

13 : 以下、名... - 2015/09/12 19:06:46.97 fTJA3Q5qo 12/55

JK(あ。おじさんたち、あたしに気付いてくれたみたい)

JK(四角形に立ってこっち見てる。その真ん中へ降りろってことね)

JK(でも……いつもの人たちじゃない。知ってる人が誰もいない)

JK(みんなほかの部隊へ移っちゃったりしたのかな)

JK(特駆隊って自衛隊の中で一番わけ分かんない、大変な仕事してるんだもんね)

JK(転勤したってことだね。その方がいいのかもね)

JK(さーてこの、地上へ降りる時が面倒。人がいなきゃさっさと降りちゃうんだけど)

JK(今はおじさんたちの中へ足の方から降りてくんだもん)

JK(年頃の女子高生にとってはあんまりやりたくないことなわけですよ)

JK(こんな、わざとパンツ見せちゃうようなことは)

JK(足閉じて、スカートを端からしっかり押さえて……)

JK(どうしてあたし、学校の制服着てなくちゃこの能力を使えないのかなぁ)

JK(いつも思うことだけど、つくづく変だし、嫌になる)

JK(もしほかの服でもいーんだったら、もっと丈夫で動きやすいのを博士に作ってもらうのに)

JK(デザインにいろいろ注文つけて、超可愛い専用のコスチュームを……)

JK(あ。おじさんたち、やっぱりあんな顔してる)

JK(おっスカートの中が丸見えなんじゃねーの、って思ってる顔)

JK(ざけんなよオヤジたち。仕事中だろ?)

JK(全員で鼻の下伸ばしやがって。温泉に浸かったサルみたいな顔して見上げてんじゃねーよ)

JK(でもまさか、頭の方から降りるなんてできないから)

JK(もう余計なこと考えてないでとっとと降りちゃおう)


ストン


JK「こんにちはー。特任隊員の小野寺悦子でーす」

14 : 以下、名... - 2015/09/12 19:10:00.93 fTJA3Q5qo 13/55

上官「はッ。お疲れ様であります、司令直属小野寺特任3佐!」ビシッ

JK「はーい。よろしくお願いしまーす」

上官「自分はこのたび前線本部責任者を拝命しました1尉の…!」

JK「じゃあいつもどおり、あたしの学校カバンを司令部に送っといてください」ドサ

上官「は…?」

JK「え? 知らないんですか? 今日のここ、初めての人ばっかみたいだけど」

上官「え、ええ……」

JK「じゃあ山本さんとかからいつものやり方を教えてもらってください」

上官「はい…」

JK「あ。今日は、食べ切れなかったお弁当の残りが入ってますから。ナマモノ有りってことで」

上官「……」

JK「被害がもっと大きくならないようにすぐ始めます。みんなに下がってもらってください」

上官「は、はいッ、了解しました! おい、作戦中止、退避! 小野寺3佐が攻撃を開始される!」

JK(あと、ここから山本さんと話をしとかなくちゃ)

JK(通信、司令部の山本司令直通、っと…)

JK「山本さん? あたし。今、前線本部」

15 : 以下、名... - 2015/09/12 19:13:13.66 fTJA3Q5qo 14/55

山本『お姫様、毎度の御足労に痛み入ります』

JK「その変な喋り方、こーゆー時はマヂやめてって前から何回も言ってんだけど」

山本『ああすまんな。いつも御苦労さん、えっちゃん』

JK「すぐ始めるよ。ここの人にも言ったけど全員下がってもらって」

山本『既に指示済みだ。俺たちに何か手伝うことはあるか?』

JK「多分ないよ。いつもどおりだよ」

山本『そうか。だが今回の目標はいつもどおりではない。眼から破壊的な光線を発射する』

JK「さっき博士から聞いた。戦闘機が2機やられちゃったって」

山本『ああ、我が部隊は優秀なパイロットを二人も失った。お前は目標の頭部の向きに注意しろ』

JK「うん。博士も相手の顔の正面へ行くなって言ってた」

山本『俺たちは目標にえっちゃんから気を逸らせるための攻撃をしようか?』

JK「いーけど、飛び回ってるあたしに弾とかミサイルとか当てちゃ嫌だよ」

山本『保証はできん。お前の速さは我々の適応能力を超えている。流れ弾が行く可能性はある』

JK「どうせバリアで防ぐけど。弾が無駄になるからやめといた方がよくない?」

山本『じゃあまた結局、俺たちに出番は無しか。例によってお姫様の御活躍を見守るしかないか』

JK「ブーたれないでよ、大人のくせに。必要なことがあったら言うよ。それまでじっとしてて」

山本『了解。以上だ』

16 : 以下、名... - 2015/09/12 19:16:03.53 fTJA3Q5qo 15/55

上官「小野寺特任3佐、前線本部の我々も退避すべきでしょうか」

JK「それは…それもいつもどおりでいいと思いますけど」

上官「は…」

JK「だから、大丈夫だと思いますけど。ヤツがこっちの方へ来なければ」

上官「はッ。分かりました」

JK「じゃあ行きます。全員、あたしから離れてください」

自衛隊員F「小野寺特任3佐!」

JK「え?」

自衛隊員F「撃墜された機に乗っていたパイロットの一人は、自分の知合いでした!」

JK「……」

自衛隊員F「お願いします! 何としても目標を駆除してください! お願いします!!」

JK「……」

上官「おい貴様、慎め! 私情を露わにするとは何事だ!」

自衛隊員F「はッ。しかし自分たちは、自分は、何としてもあの怪獣を…!」

上官「黙れ! 慎めと言ってるんだ! 3佐も困惑しておられる!」

JK「……分かりました。とにかく、あたしから離れて」

上官「全員離れろ! 3佐が離陸される!」


バシュッ



17 : 以下、名... - 2015/09/12 19:18:34.93 fTJA3Q5qo 16/55

JK(……あーあ)

JK(……あんなこと言われてもなぁ)

JK(……重いだけなんだよね)

JK(……これが)

JK(……これが、この仕事を引き受けるってことなんだよね)

JK(あたし最初、山本さんからこう言われたっけ)

JK(“この仕事を引き受ければ、それ以外のいろいろなものも引き受けることになる”)

JK(……いろいろなものって、こーゆー重さのことなんだよね)


ギュゥゥウウン


JK(さーて……目標の背後にまわった)

JK(どう攻撃しようかな)

JK(バリア最強の状態で、思いっ切り胴体へ体当たりでもしようか。大穴開けてやろうか)

JK(でも一発でとどめを刺すのは無理かも……胴体の堅さが分からないし)

JK(普段どおりまず腕とかに仕掛けて、様子を見よう)

JK(よし行くぞ……スピード全開!)


ギュゥゥゥウウウウウウウ…


JK(ヤツがあたしへ気付いた…!?)

怪獣「ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンン」

18 : 以下、名... - 2015/09/12 19:21:07.37 fTJA3Q5qo 17/55

JK(ひゃー、うるせー! すごい鳴き声!)

JK(あっ。ヤツがこっち振り返る)

JK(その正面へ行ったらヤバい!)


ピー


JK(おっと…!!)


ギュゥゥゥウウウウン


JK(危ねー、間一髪! ギリギリで躱したよ)

JK(あれが目からビームか。あんなの出す怪獣なんて今までいなかった……)

JK(テキトーに近付くとこいつが気付いて振り返っちゃう)

JK(どうすればいーんだろ。やっぱり後ろからこっそり…)

JK(でもその“こっそり”をどうやるかが問題だよね)

JK(とにかくもう一回、背後へ……)

JK(……尻尾……)

JK(こいつ、尻尾デカっ)

JK(これ、使えないかな。この端っこへ近付くくらいなら気付かれないかも)

JK(ここを攻撃してみて、あたしのバリアがどのくらい体へダメージ与えられるか調べ…)

JK(あ。あれ…?)

JK(尻尾の近く、地面……)

JK(何か動いた……?)

JK(何だろ。目の錯覚じゃないよね)

JK(あっ…!?)

JK(あれ、あれって…!)

JK(人だ!!)

JK(人がいる!!)

19 : 以下、名... - 2015/09/12 19:24:37.88 fTJA3Q5qo 18/55

JK(どうして!?)

JK(どうして避難してないの!?)

JK(どうして避難させてないの!?)

JK(何やってんだよ自衛隊のオヤジたち!)

JK(通信! 司令部…!)

JK「山本さん!? モニターで見てるでしょ!?」

JK「どうしてこんなとこに人がいんのよ! どうして避難させてないのよ!」

山本『ああ見てるぞ。民間人だな』

JK「“民間人だな”じゃないでしょ! 何やってんだよ!」

JK「1、2…3人もいる! 固まって座り込んでる!」

JK「大人の男の人と、男の子二人!」

山本『おそらく父親とその子供だ。父親が子供たちを抱き締めて、3人でえっちゃんを見上げてるな』

JK「どうすんのよ! あたし、あの人たちの所に降りる!」

山本『何だと?』


ギュウウウ…


山本『おい、降りてどうするんだ』

JK「だって放っとけないじゃん!!」


ストン


JK「……」

20 : 以下、名... - 2015/09/12 19:28:06.43 fTJA3Q5qo 19/55

父親「……あ、あ……」

JK「……」

子供A「……“えっちゃん”……」

父親「え?」

子供A「えっちゃんだ……」

子供B「うん。このおねえちゃんは“えっちゃん”だ」

JK「……」

父親「……え、“えっちゃん”?」

子供A「うん。ぼく、しってるよ。このおねえちゃんは、えっちゃんだ」

子供B「ぼくもしってる。ゆうめいなんだよ。怪獣とたたかう、えっちゃんだ」

子供A「ゆうめいなえっちゃんだ。空をとんで、怪獣をやっつけてみんなを守ってくれるんだ」

子供B「怪獣はみんな、えっちゃんが空をとんでやっつけてくれたんだ」

父親「……そ、そういえば……怪獣と戦う、特別な能力の女性自衛隊員がいる、って…」

JK「……」

父親「でも、この子は……女子高生……?」

子供A「お父さん、えっちゃんがきてくれたんだよ」

子供B「えっちゃんが空をとんできてくれた。だからもうだいじょうぶだよ」

父親「あの……君、いえ、あなたが、“えっちゃん”ですか……?」

JK「世間の人たちもあたしをそう呼んでるみたいですね」

父親「……」

JK「そうです。あたしが“えっちゃん”。普通の高校生ですけど、超能力ってものを持ってます」

父親「……」

JK「怪獣が現れた時に、その能力を使って自衛隊の仕事を手伝ってます」

父親「……そ、そうですか。よかった……」

JK「3人ともどうして、こんな所に…」

父親「どうか、この子たちだけでも…」

21 : 以下、名... - 2015/09/12 19:30:12.23 fTJA3Q5qo 20/55

山本『えっちゃん』

JK「何?」

山本『お前は今、地上に降りた』

JK「何? 見れば分かるでしょ」

山本『だが、この後どうするんだ?』

JK「……」

山本『降りた後、どうするつもりだったんだ?』

JK「……それは」

山本『まさかその3人を背負ったり抱えたりして、飛ぶつもりなのか?』

JK「それは……そんなこと、できっこないでしょ」

山本『えっちゃんの超能力はお前自身の周囲に展開されるバリアと不可分だ』

JK「……」

山本『それによってお前は自分の身体へ何の影響も受けずに、例えば超高速で空中を移動できる』

JK「分かってるよ……」

山本『だがそのバリアの中に、お前以外の生命体は存在できない』

JK「分かってるよ。どうして今、そんな分かり切ったこと言うのよ」

22 : 以下、名... - 2015/09/12 19:33:54.25 fTJA3Q5qo 21/55

山本『ああ、分かり切ったことだ。田所博士が何度も実験したからな』

JK「このバリアの中にいられるのはあたしの体に普段からある菌、常在菌だけって博士が言った」

山本『そうだ。それ以外の生物は全て即死する。何度、どんな生命体で実験しても同じだった』

JK「……」

山本『お前のバリアはその中に取り込まれたものを滅ぼす』

JK「……」

山本『そして外から触れるもの、触れようとするものを拒絶し、崩壊させる』

JK「……山本さん、さっきから何よ。何喋ってんのよ」

山本『お前を完璧に守り、攻撃手段にもなる。攻守共に無敵だ』

JK「何ごちゃごちゃ喋ってんのよ。こうしてる間もデカい尻尾が近くを動いてるっていうのに」

山本『ああ、非常に危険な状況だ。だがお前はそこで何をするつもりなんだ?』

JK「そうだよ! 山本さんの言うとおりだよ! あたしだってそんなこと分かってるよ!」

山本『……』

JK「あたしの能力は今、この人たちを助けてあげられない! でもどうすればいいの!?」

山本『……』

JK「この3人のことガン無視しろっての!? ここに人がいるのに目標を攻撃しろっての!?」

山本『……』

JK「答えてよ! 山本さんたちの責任でしょ!? あたし今ここで、何をどうすればいいの!?」

23 : 以下、名... - 2015/09/12 19:35:52.68 fTJA3Q5qo 22/55

山本『えっちゃん。田所博士から目標について説明がある』

JK「……」

山本『落ち着いて博士の話をよく聞け』

JK「……」

田所『悦子君。今回の個体について行動パターンを解析した』

JK「……何か分かりました?」

田所『攻撃などの大きな刺激があった方向へ必ず体の前面を向ける。そして必ずそちらへ移動する』

JK「じゃあ…」

山本『えっちゃん。重武装戦闘ヘリコプター4機をそこへ急行させた』

JK「うん、分かってる。来てるね」

山本『俺の合図で全機が目標の北北西へ集結、5秒後に一斉射撃を開始する』

JK「そうすれば、こいつは……ここからそっちへどんどん離れていく…」

山本『そうだ。我々はその3人を避難させられない。だから逆にその場へずっといてもらう』

JK「目標の方をここから移動させるんだね。ここにいても大丈夫になるように」

山本『そのとおりだ。お前は3人へ絶対にその場から動くなと伝えろ』

JK「でも山本さん、待って」

山本『何だ』

JK「ヘリがビームに…またパイロットの人が…」

山本『ヘリの乗員たちには可能な限り目標からの攻撃を避けろと指示してある。当たり前のことだ』

JK「うん」

24 : 以下、名... - 2015/09/12 19:38:58.92 fTJA3Q5qo 23/55

山本『だが国民の命を確実に守るためなら、我々自衛官の命が失われるのは問題ではない』

JK「……」

山本『これもまた当たり前のことだ。全ての自衛隊員はこの意識の下で任務を遂行している』

JK「……」

山本『まして現状況では子供がいる。我々はその子たちを何と引換えにしても必ず救出する』

JK「……カッコつけちゃって」

山本『大規模火力を使った局所集中攻撃になる。お前はバリアで3人を砲弾の破片などから守れ』

JK「了解。この人たちの上空に浮いて盾になる」

山本『いいか。合図から5秒後だ』

JK「3人とも聞いて! 絶対に、何があってもここから動かないで!」

山本『攻撃開始!』


バラバラバラバラバラバラバラ…


JK(ヘリが集まってきた……)


ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
シュバッ ズドドドオオオン
ババババババババババババババババババババ
シュバッ シュバッ ズドドドドドオオオオオオン
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド


JK(きっかり5秒後に機関砲、ロケット弾、ミサイル撃ちまくり始めた)

JK(その破片とかがこっちへ落ちて来る……)

父親「ひぃっ! あ、危な…!!」

JK(バリア展開)


ガンッ バシッ ドガッ


子供A「すごい! ぜんぶはねかえしてる!」

子供B「うん、すごい! えっちゃんがぼくたちを守ってくれてる!」

25 : 以下、名... - 2015/09/12 19:42:52.75 fTJA3Q5qo 24/55

JK(目標が動き始めた)

JK(ここから尻尾が遠ざかってくれた……)

JK(これでここは大丈夫。ミサイルの破片とかも、もうあんまり飛んで来ない)

JK(もう少しあたしがバリアでこの人たちを守ってればひと安心)

JK(あ。でも…)

怪獣「ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンン」


ピー


ドガアアアアアン


JK(1機やられた!)

JK(ヘリの人たち、もう逃げて! これ以上そいつの正面にいちゃ駄目!)


バババババババババババババ
シュバッ シュバッ ズドドドオオオン
ドドドドドドドドドドドドド



26 : 以下、名... - 2015/09/12 19:43:57.01 fTJA3Q5qo 25/55

JK(ホバリングしながら後退してまだ撃ちまくってる)

JK(もうやめて! 今度はあたしの番!)

JK「山本さん、ヘリに下がってもらって! あたしもう行けるから!」


ピー


ドガアアアアン


JK「またやられた! 早く!」

山本『まだだ。お前は構わず飛べ』

JK「何言ってんのよ!」

山本『ヘリは最後の1機まで目標の注意を引き付け続ける』

JK「あっ。あたし…」

山本『分かったなら早く飛べ。背後から攻撃してこの怪獣を確実に駆除しろ』

27 : 以下、名... - 2015/09/12 19:45:27.38 fTJA3Q5qo 26/55

子供A「えっちゃん!」

JK「え?」

子供B「あの怪獣をやっつけて!」

子供A「あの怪獣はぼくたちのお母さんをふみつぶしたんだ!」

子供B「かたきをうって! えっちゃん!!」

JK「……」

父親「この子たちの、母親は……私の妻は…」

JK「……」

父親「家ごとあの怪獣に踏み潰されたんです」

JK「……」

父親「でも私たちはもう大丈夫です。あの怪獣と戦うために来たのなら…」

JK「はい」

父親「もう私たちを気にせず行ってください。守ってくれてありがとうございました」

JK「分かりました」

父親「……」

JK「お父さん、その子たちと一緒に今すぐあたしから離れてください」

父親「は、はい」

子供A「えっちゃん!」

JK「うん」

子供B「えっちゃん! がんばって!!」

JK「うん。あたしが、えっちゃんがお母さんの仇を討ってあげる。じゃあ行ってくるよ!」


バシュッ



28 : 以下、名... - 2015/09/12 19:47:14.99 fTJA3Q5qo 27/55

JK(あれ…?)

JK(あたしさっき、同じようなこと言われなかったっけ?)

JK(それで“重い”とか思ってなかったけ?)

JK(まあいいや)

JK(どっちも、重いことは変わらない)

JK(……バリア強化しつつ、目標へ接近……スピード上昇)

JK(どっちも重いことに変わりはない) 

JK(パイロットの人の命も、あの子たちのお母さんの命も)

JK(どっちも重い。でも、あたしは)


ギュゥゥウウン…


JK(その、重さを)


ギュゥゥゥウウウウウウン…


JK(この、仕事を)


ギュゥゥゥウウウウウウウウウウウウン…


JK(両方とも、引き受けるって決めたんだ!)

JK(バリア最強! 目標の後頭部へ全速!)

JK(頭をぶっ潰して目からビームなんて永久に出せないようにしてやる!)

JK「山本さん!!」

山本『各機撃ち方やめ。撤退、緊急離脱!』

JK「うらぁあああああああああああああ!!」


グバァァアアアッ



29 : 以下、名... - 2015/09/12 19:49:35.24 fTJA3Q5qo 28/55

オペレーターA「小野寺特任隊員が目標後頭部を直撃」

オペレーターB「目標の頭部、滅潰。欠損」

オペレーターC「生命反応、急速に減衰」

オペレーターB「目標は該地点にて倒れ、横臥します」


ズズゥゥウウウン…


オペレーターB「各部位が動作を停止……全体の動作停止を確認」

オペレーターC「時刻1410(ひとよんひとまる)、生命反応消失」

オペレーターA「科学調査班及び救急救命班、出動準備」

科学調査班・救急救命班『『了解。出動準備完了』』

オペレーターA「時刻1410から900秒の観察時間経過後に出動指示予定。それまで待機せよ」

科学調査班・救急救命班『『了解。出動指示あるまで待機』』

山本「小野寺3佐は?」

オペレーターA「小野寺特任隊員の通信機が発出する作動信号を継続して受信。通信機は正常に作動」

オペレーターA「信号発出位置の探索を開始……確認。位置特定に成功しました」

山本「どこだ」

オペレーターA「該地点から北へ8200メートル、山林の中です」

山本「えっちゃん。聞こえるか」

JK『……うん……』

山本「よくやった。だが勢い余って、すいぶん遠くまで行っちまったな」

JK『……空が……綺麗だね……』

山本「呑気だな。無事か?」

JK『多分……。ケガも、痛い所もないよ……』

山本「今何してる」

JK『何も……。大きい木のてっぺんへ降りた。広い枝の上で横になって、空を見上げてたとこ』

30 : 以下、名... - 2015/09/12 19:51:23.49 fTJA3Q5qo 29/55

山本「やっと今モニターがえっちゃんの姿を捉えた。お前、そんなに高い所にいて平気なんだな」

JK『高所恐怖症だったら、生身で空なんか飛べないよ……』

山本「それもそうか」

JK『山本さん。あの子たちは……親子は……』

山本「心配するな。怪獣が息を吹き返す可能性がないことを確認してから、救急班が向かう」

JK『うん……』

山本「どうだ、自力で戻って来られるか?」

JK『……ううん……』

山本「……」

JK『……無理……悪いけど……』

山本「そうか」

JK『あたし…』

山本「何だ」

JK『今まで、こんなに……絶対、全力で、駆除しなきゃって思ったこと、なかった……』

山本「……」

JK『……何だか、疲れちゃった……』

山本「そうか。だが…」

JK『うん、分かってる……。いつもどおり、司令部で…』

山本「……」

JK『山本さんと博士と、3人で……反省会だよね……』

山本「ああ」

JK『……お願い……』

山本「ああ、人員輸送ヘリを迎えに行かせる。そのまま寝てろ」

JK『……うん……ありがと……』

山本「眠っちまってもいいぞ。ただし地面へ落ちるなよ」

JK『……うん……』

31 : 以下、名... - 2015/09/12 20:02:10.76 fTJA3Q5qo 30/55

JK「♪~」

山本「あっという間に御機嫌になったな、お姫様」

JK「だって博士がアイスくれたもん♪」シャクシャク

田所「ほっほっほっ。疲れた時には甘い物が一番だからの」

山本「ジャージ着て、首からタオル下げて……まるで風呂上がりの修学旅行生だな」

JK「お風呂上がりはそのとおりじゃん。シャワー浴びた後なんだから」

山本「しかも博士の安楽椅子を占領して。ここは司令部の博士専用の部屋だ。少しは遠慮しろ」

JK「やっぱ田所博士は優しいなぁ。ちゃんとアイス用意して待っててくれた」シャクシャク

山本「まるでそれに比べて俺が優しくないみたいな言い方だな」

JK「はぁ? 自分が優しいなんて思ってたの? あたしをこき使ってばっかいるくせに」

山本「甘えるな、俺はお前の直属の上司だ。お前をこき使うのは俺の重要な役目の一つだ」

JK「偉そーに。それならそれで、お疲れ様くらい言えないの?」

山本「あー、おつかれさん」

JK「何その、最後に(棒)って付いてそうな言い方。やっぱり全然優しくない。やり直し」

田所「まあまあ二人とも。早く仕事を終わらせてしまおう」

山本「そうですね、相手は子供です。失礼しました」

JK「ふん」シャクシャク

田所「では悦子君からどうかね」

山本「お前、今回は言いたいことが山ほどあるだろうな」

JK「ふん。そう思うならその中身を当ててみてよ」シャクシャク

山本「それは何といってもまず、駆除実施区域に民間人が避難しないでいてしまったことだ」

32 : 以下、名... - 2015/09/12 20:04:21.04 fTJA3Q5qo 31/55

JK「一体何があったのよ。そこの人は無理矢理、一人残らず避難させられちゃうはずなのに」シャクシャク

田所「強制避難計画だな。怪獣が現れた場合にのみ自衛隊の指揮により発動される」

JK「それが発動された後、逃げ遅れた人がいないか捜索までかけられるんでしょ」

山本「えっちゃんの言うとおり、本来ならそこは無理矢理、人っ子一人いなくさせられるはずだ」

田所「あの一家はなぜその網の目から漏れたのか、又は、どうやって網の目をくぐり抜けたのか…」

JK「え? 博士、わざとあの子たちがあそこにいたのかもってことですか?」

山本「田所博士は、その可能性はあくまで排除できないとおっしゃっている」

JK「もしそうでもあたし今さら、あの子たちがそんなことした事情なんてキョーミない」シャクシャク

山本「そうだな。あの状況が発生するのを許してしまった我々の事情のみ、検証の必要がある」

JK「そんで結局、何があったの?」シャクシャク

山本「我々特駆隊と、地元の警察、消防、自治体との連携に問題があった」

JK「じゃあ……やらかしちゃったのは前線本部ってこと?」

山本「そのとおりだ。該区域の関係諸機関に対する指示が十分ではなかった」

33 : 以下、名... - 2015/09/12 20:06:36.09 fTJA3Q5qo 32/55

JK「大体さぁ、前線本部に知らない人しかいなかったじゃん?」シャクシャク

山本「えっちゃんと顔見知りの隊員たちは後方へ配置転換になっている」

JK「新しい責任者のおじさんが、マジメなのはいーんだけど何だかトロい人でさ」シャクシャク

山本「……」

JK「あたし、初っ端から調子狂っちゃった」シャクシャク

田所「ほう。悦子君も辛辣な意見を口にするようになったの」

JK「このくらい言わせてくださいよぉ。あたしだってもう何回も現場に出てんですから」シャクシャク

山本「人的資源の高効率管理という観点では、特定の配置を長期継続させるのは非合理なのだ」

JK「何言ってんのかさーっぱり分かんないんだけど」シャクシャク

山本「極端に言えば、いつでもどこでも誰でも、同じ仕事をできるようにしておくということだ」

JK「……」

山本「だから、今まで後方にいた隊員たちにも前線を経験させている」

JK「……大人っていろいろ考えてるフリして、やっぱり何も考えてないんだね」

山本「ん? どういうことだ」

JK「だって、“いつでもどこでも誰でも同じ仕事を”? そんなの無理に決まってんじゃん」

34 : 以下、名... - 2015/09/12 20:08:31.08 fTJA3Q5qo 33/55

山本「ふむ。詳しく説明してもらおうか」

田所「山本司令。これはなかなか斬新な意見が聞けそうだな」

山本「ええ、自分もそう思います」

JK「何よ二人ともニヤニヤして」

山本「いいから話してみろ、お姫様。お姫様の御高見を自分は心から賜りたく存じます」

田所「わしも悦子君の考えを聞きたい。大人が発想しないような内容かもしれんからな」

JK「二人とも、あたしがガキだからってナメてんでしょ」

山本「いいから話してみろと言ってるんだ」

JK「じゃあ言うよ? だってそんなこと、まず、ここにいるこの3人がもう無理じゃん」

田所山本「「……」」

JK「この3人の代わりを、誰ができるの?」

田所山本「「……」」

JK「いつ、どこで、誰が、この3人の仕事を代わりにできるってのよ」

田所「……ほっほっほっ。これは、また…」

山本「……くくく。ええ、そうですね」

JK「何よ二人とも。どうして笑うのよ」

田所「悦子君。ずいぶんわしらのことを買いかぶってくれるのう」

山本「まあ一応、礼を言っておこうか。お前は今、博士と俺を褒めてくれたんだな」

JK「褒めるも何も、だってそーじゃない? この3人の代わりなんていないでしょ」

JK「まず田所博士」

35 : 以下、名... - 2015/09/12 20:09:46.86 fTJA3Q5qo 34/55

JK「難しいことよく分かんないけど、特殊生物研究とか超常現象研究っていうのがあるんでしょ?」

JK「博士はそれを研究してる人の中で、この国、ううん、世界で一番すごいんでしょ?」

JK「今まで何十年もその研究してきて、『未確認生物総合研究所』の所長」

JK「もちろん怪獣についても超詳しい。今まで駆除がうまくいったのは全部、博士のお陰」

JK「怪獣が現れたらいつも落ち着いて、すぐにその特徴とかを調べてくれる」

JK「もし博士がいなかったら、山本さんも本隊の人たちもあたしもすっごく困る」

JK「無駄な攻撃ばっかしちゃって、その間に被害がどんどん大きくなるかもしれないんだよ」

36 : 以下、名... - 2015/09/12 20:11:14.63 fTJA3Q5qo 35/55

田所「ふむ。それを言うなら山本司令も同じだ」

田所「常に冷静な山本司令が頂点におるから、この特定特殊生物駆除部隊の全体が機能する」

田所「わしについても、山本司令がうまく使ってくれとるからここの仕事が何とか務まっとるのだ」

田所「悦子君とわしは自衛官ではない。外部からここへ雇われとる人間だ」

田所「外部の人間、しかも高校生である悦子君と老人のわしを扱うのは、気苦労の多い仕事だろう」

田所「だが山本司令はわしら二人をうまく使ってくれとる。さらに部隊全体を統率しとる」

田所「その上で、作戦指揮を冷静にこなしとる」

田所「こうしたことが可能な人材は自衛隊の中でも稀有なのではなかろうか」

37 : 以下、名... - 2015/09/12 20:12:51.59 fTJA3Q5qo 36/55

山本「えっちゃん。お前の言うとおり、お前に代わりがいないことは間違いないな」

山本「お前は超能力者だ。地球上を隈なく探してもこんな能力を持つ者はほかにいないだろう」

山本「特定特殊生物の駆除作業に関してもそうだ。通常兵器は多くの場合、役に立たない」

山本「お前の超能力だけが怪獣の息の根をとめられる。お前は駆除において代わりがいない存在だ」

山本「我々は駆除が開始されてお前からの通信を最初に受信した際、確立作業というものを行なう」

山本「さらに複数のバックアップ回線を構築する。なぜこんな、ある意味面倒なことをするのか」

山本「それは、お前との通信が駆除作業の生命線だからだ。作戦遂行の根幹に関わることだからだ」

山本「お前は代わりのいない切り札だから、我々には通信を確実に維持する作業が不可欠なのだ」

JK「……じゃあ、さ」

山本「何だ」

JK「この3人はお互いに、代わりをできる人がいないって思ってるってこと?」

田所「まあそうなるかもしれんな」

JK「それならやっぱり無理じゃん」

山本「“いつでもどこでも誰でも、同じ仕事をできるようにしておく”ことが、か」

JK「うん」

38 : 以下、名... - 2015/09/12 20:15:40.04 fTJA3Q5qo 37/55

田所「だから、なのだよ。悦子君」

JK「“だから”?」

山本「そうですね、田所博士。だから、です」

JK「何? どういう意味?」

田所「確かに我々3人の役割を代わりにできる人材はおらんかもしれん」

田所「しかしだからこそ、それ以外の役割を代わりにできる人はたくさんいた方がいいのだよ」

田所「我々3人と同じように、代わりをできる人がいない仕事ばかりだったらどうなると思う?」

田所「この仕事はこの人しかできない、そんなことばかりだったらどうなると思う?」

田所「例えば司令部が攻撃を受けて、何人もの犠牲者が出たとしよう」

田所「犠牲となった者の代わりをできる人がいなかったら、司令部は直ちに機能不全となるだろう」

田所「確かに我々3人の代わりはおらんかもしれん」

田所「だがそれは、ほかの役割も代わりがいなくていい理由にはならんのだよ」

JK「……」

山本「博士が指摘されたとおりだ」

山本「この3人の代わりがいないからといって、組織全体が同様であっていいはずがない」

山本「むしろ、この3人だけが例外であるべきなのだ」

山本「ほかのほとんどの職種には、代替となる人材が必要だ」

山本「常日頃より様々な職種について理解を深め、突然の欠員発生へ万全の準備をすべきなのだ」

山本「無論、極めて専門性の高い役割についてはこの限りでない。例えば航空機の操縦士がそうだ」

山本「こうした職種に関しては人員の確保や育成に多くの労力、時間、そしてコストが必要となる」

山本「その役割に就くのがごく限られた少数の者だけになるのはやむを得ない」

山本「だから今回、何人ものパイロットを失ったことは我が部隊にとって非常に痛手だ」

山本「だがその種の役割以外については、代替となる人材が多ければ多いほどいい」

山本「こうした理由で今回の配置転換が行なわれ、隊員たちはそれまでと違う役割を経験している」

山本「そして、今後も同様の配置転換はある。不慣れな隊員が最前線にいることはあり得る」

山本「えっちゃんには迷惑をかけたかもしれない。だがこれは組織の維持に必要なことなのだ」

39 : 以下、名... - 2015/09/12 20:17:46.51 fTJA3Q5qo 38/55

山本「こうした事情を理解してくれないか、えっちゃん」

JK「……分かったよ。でもさ…」

山本「何だ」

JK「そーゆーことなら先に言っといてほしかったなぁ」

山本「そうだな」

JK「前線が今までと違う人ばっかで慣れてないかもしれないからヨロシク、ってさ」

山本「ああ。俺はそれについてえっちゃんに謝らなければならない。すまなかったな」

JK「それにあのおじさんたち、全員であたしが着陸する時やらしー目で見やがって」

山本「いやらしい目?」

JK「地面へ降りてく時、下から見上げるんだよ。…こんなの説明させないでよ」

田所「悦子君の降下中、地上にいる隊員たちがスカートの中を覗こうとしたということかの」

山本「ああそんなことか。下らん」

JK「下らないって何よ。こーゆーのは女の子にとって大問題なんだけど」

山本「お前こそ、“おじさん”とは少しひどくないか?」

JK「どこがひどいのよ」

山本「前線本部へ新たに着任した隊員たちはまだ30歳前後の者ばかりだったと思うが」

JK「30ならとっくにおじさんでしょ。じゃあ“お兄さん”って言えっての? 無理ありまくり」

40 : 以下、名... - 2015/09/12 20:19:29.73 fTJA3Q5qo 39/55

田所「悦子君、服装に関しては辛抱してほしい。君はあの制服を着ていなければ能力を使えんのだ」

JK「分かってますけど……いろんな服で実験したから」

田所「実験では、高校の制服以外を着用すると超能力を全く発揮できなかった」

JK「ねぇ博士。せめて見せパンでも大丈夫ってことになりませんか?」

田所「それも試したではないか。上から下まで完全に普段と同一の必要があるのだよ」

JK「まったく……どうして仕事のたびに、大勢の人から生パン見られなくちゃならないのよぉ」

山本「こんな子供の下着を見たがる心理のほうが俺には不可解だ」

JK「何それ。ガキの薄汚いパンチラなんか見たがるな、ってことかよ」

山本「汚いに決まってるだろ、下着なんだから」

JK「現役女子高生の貴重な生下着なのに。レアな生下着だぞ? もっと有難がれ! 有難く拝め!」

山本「お前は他人にパンツを見られたくないのか、見られたいのかどっちなんだ」

JK「……」

41 : 以下、名... - 2015/09/12 20:21:50.40 fTJA3Q5qo 40/55

田所「それにしても、部外者のわしが言うのは問題あるだろうが……野崎亨子2尉」

野崎「はい、何でしょう。どんなことでもおっしゃってください、田所博士」

田所「こうしたことは部隊の、自衛隊の綱紀に関わるのではないかね」

野崎「そのとおりです。私が所属する総務課としては決して看過できない問題です」

JK「あっ。りょーこさん、何とかしてくれるの?」

野崎「そうですねえ……部隊全体に、3佐が未成年であることを再認識するよう通達を出そうかしら」

田所「悦子君の服装は現状維持しかない。だから周囲がもっと配慮するように、ということだの」

野崎「今、考え付く措置はこのくらいですけど。更に効果的な方法を課内で早急に検討します」

JK「やっぱりょーこさんは頼りになるなぁ。りょーこさんありがとー」

野崎「いえいえ、いいんですよ」

山本「フッ。怪獣駆除作業の反省会がパンチラ対策会議になるとは思わなかったな」

JK「あぁ? 文句あんの?」ジロ

山本「……」 

JK「そーゆー態度だから山本さんは優しくないっていうんだよ。女の子に全っ然優しくない」

田所「しかし山本司令、このことに関する記録は部隊全体で共有されるだろうから…」

山本「はい」

田所「野崎2尉らが採る措置の内容によっては、隊員の行動に影響があるのではないかね」

山本「ええ。些細なことではありますが自分も気に留めておく必要があるでしょう」

JK「え?」

山本「どうした」

JK「“このことの記録”? “部隊全体で共有”? 何のこと?」

山本「今聞いたとおりだ」

JK「分かんないから訊いてんの」

42 : 以下、名... - 2015/09/12 20:24:24.69 fTJA3Q5qo 41/55

山本「……おい、えっちゃん」

JK「うん」

山本「まさかお前は、野崎亨子2尉がこの反省会へ毎回必ず同席する理由を分かっていないのか?」

JK「え? いきなり何?」

山本「いいからその理由を言ってみろ」

JK「それは……りょーこさんは…」

野崎「…」ニコ

JK「総務課ってとこで、あたしの担当をしてくれてるから…」

野崎「ええ、もちろんそれも理由ですけど。駆除作業後のケアのためです」

山本「それだけか?」

JK「……」

山本「野崎がずっと彼女の前にある端末を操作し続けているのは、何のためだと思ってるんだ?」

JK「え? 端末? ……あっ!?」

野崎「…」ニコ

JK「まっまさか、その機械であたしたちの話を書いてるの!? 話の中身を記録してるの!?」

野崎「専用の電算機で3人の音声を文字に変換しています。この会議の議事録を作っているんです」

JK「じゃ、じゃあ、今の話も…!?」

野崎「もちろん」

JK「やめて! あたしのパンツの話なんか! そんな話書くのやめて!」

野崎「そう言われましても」

JK「あたしのパンツなんてそんなどーでもいー話、書くのやめて!」

山本「お前はパンチラが大問題と言ったりどうでもいいと言ったり、どっちなんだ」

JK「……」

43 : 以下、名... - 2015/09/12 20:27:03.60 fTJA3Q5qo 42/55

山本「おいえっちゃん。お前は今までこんなこと、分かってると思っていたが」

JK「うぅ……」

山本「お前は今まで一体、この3人が毎回何のために反省会を開いてると思っていたんだ?」

田所「この集まりは実際の作戦行動を振り返り、次の作戦行動へ向けた教訓を洗い出すものだ」

山本「我が部隊における高度な意思決定会議の一つなんだ。したがって当然、議事録が作成される」

野崎「その中で特に重要と判断された部分は、部隊全体で内容が共有されます」

山本「俺は今まで、こんなことは説明しなくても分かってると思っていたが」

JK「……でも、パンツは……パンツの話は……」

山本「パンツパンツうるさいな。今後それを見られたくないなら黙って野崎に任せておけ」

野崎「3佐」

JK「何……?」

野崎「我が部隊の各部署は議事録内容を検討し、必要があればそれに関した通達や命令を出します」

JK「うん……。例えば今みたいな話の場合、だよね」

野崎「先ほど博士がおっしゃいましたけど…」

JK「……」

野崎「それは隊員たちの行動、ひいては駆除作業に影響するくらい重要なものなんです」

JK「……」

野崎「もちろん内容が通達されたり、命令が発出されたりする際は表現などに配慮をしますから」

JK「うん」

野崎「3佐はこれからも普通にお話を続けてください。議事録のことを気にしないで」

JK「はーい……」

44 : 以下、名... - 2015/09/12 20:29:11.66 fTJA3Q5qo 43/55

田所「話を元に戻すがの、山本司令」

山本「はい」

田所「今回の避難の件について何らかの処分などが…」

山本「前線本部の責任者を更迭します。この後の会議で部隊の幹部たちに処分案を諮ります」

田所「ふむ。やむを得んの」

JK「責任者のおじさんがこーてつ?」

山本「ああ」

JK「鉄がどうかしたん?」

山本「その鋼鉄ではない。更迭、つまりその職から外すのだ。辞めさせるのだ」

JK「えっ」

山本「さっきも言ったが、地元との連携ミスは前線本部の不手際によるものだったのだ」

JK「だってそんな、責任者になってすぐなのに…」

山本「事態が起こった責任を明確にする必要がある。そして責任者は、その責任を取るためにいる」

JK「たった1回、やらかしただけで…」

山本「それにこの事案では3人もの民間人、そのうち二人もの子供が危険に晒された」

JK「そーなっちゃうと何だかあのおじさん、可哀想だなぁ……」

山本「えっちゃんは何も気にしなくていい。お前はお前の仕事をしてほしい」

JK「それは分かってるけど……」

山本「これが、組織なのだ」

45 : 以下、名... - 2015/09/12 20:30:35.48 fTJA3Q5qo 44/55

山本「信頼関係と、個々人の確実な仕事。組織はこれらがあって成り立つのだ」

田所「全員がお互いを信頼し、期待しあう。そして全員が信頼、期待どおりの仕事をする」

山本「そうやって成り立つのが、組織なのだ」

JK「…ってことは、信頼、期待どおりの仕事ができなかったら…」

田所「最悪の場合、そういう人物には組織を去ってもらうしかなかろうな」

山本「責任者の隊員には元いた後方支援の部署へ行ってもらう予定です」

JK「……」

山本「えっちゃん」

JK「うん」

山本「お前も、いうまでもなく特駆隊という組織の一人だ。信頼、期待しあう組織の一員なんだ」

JK「うん」

山本「だからお前も組織の中で、お前の仕事を確実にこなしてほしいんだ」

JK「分かった。あたしは、あたしの仕事を……」

山本「ああ」

46 : 以下、名... - 2015/09/12 20:32:19.11 fTJA3Q5qo 45/55

JK「博士……」

田所「何かね」

JK「アイス、御馳走様でした……」

田所「いや。お粗末様でした」

JK「……」

山本「……えっちゃん」

JK「うん」

山本「何も気にせず、言っていいぞ」

JK「え…? 何の話?」

田所「うむ。悦子君、話してみなさい」

JK「田所博士も、何ですか……?」

山本「えっちゃん」

JK「何よ……」

山本「博士と俺が気付かないとでも思ってるのか?」

JK「だから、何の話よ……」

田所「悦子君、言いたいことがあるのだろう?」

JK「……」

山本「目が普段とは違う輝き方をしている」

JK「……」

山本「何か言いたそうな表情だ。俺たちが分からないとでも思ってるのか?」

JK「……だって……」

田所「何かね」

JK「……あたしはあたしの仕事をする、っていう話が……」

山本「……」

JK「……でもやっぱり、あたしはあたしの仕事をすればよくて……」

47 : 以下、名... - 2015/09/12 20:34:25.53 fTJA3Q5qo 46/55

山本「何だ? えっちゃんらしくないな」

田所「君は口ごもるような性格ではなかったはずだがの」

山本「大きい声でハッキリ喋れ。いつもみたいに」

JK「……そんなこと言われたって……」

山本「俺たちのような大人にも平気でズケズケとものを言う。自分の意見をストレートに話す」

田所「初対面の人物にもそれほど物怖じせん」

山本「これはお前の数少ない長所の一つじゃなかったか」

JK「……山本さん…さっきからちょっと、ひどくない……?」

山本「えっちゃんは普段、俺へ言いたいことを言っている。俺も同じことをしているんだが」

JK「……」

田所「悦子君」

JK「はい……」

田所「どんなことでも話してみなさい」

JK「……博士に訊きたいことが、あって……でも訊いても、二人とも怒らない……?」

田所「まだ話の内容が分からんのに、怒るかどうか判断できるはずないがの」

JK「……そうですね……当たり前ですね」

田所「……」

JK「じゃあ言います。……ねぇ博士」

田所「うむ」

48 : 以下、名... - 2015/09/12 20:36:08.22 fTJA3Q5qo 47/55

JK「あたし、怪獣を見るたびにこう思っちゃうんです」

JK「“どうして毎回こんなガチあり得ない生き物が来るんだろ”って」

JK「“一体誰がこんな生き物を作るんだろ”って」

JK「“こいつらって誰かが送り込んでくるのかな、それともどっかから湧いてくるのかな”って」

JK「でも、そう思った後にすぐ気付くんです」

JK「“こういうことを考えるのはあたしの仕事じゃなかった”って」

JK「“それを考えたり調べたりするのは博士たちの仕事。あたしがそうするのは無駄”って」

JK「今、あたしはあたしの仕事をする、っていう話をして…」

JK「自分がいつもこう考えることを、思い出しちゃったんです」

JK「あたし、怪獣を見るたびにこんなこと気にしてて…」

JK「でもあたしはあたしの仕事だけすればいい。ほかの人の仕事を気にする必要なんかない」

JK「だからあたしが今、博士へこんなこと訊いちゃいけないかもしれない」

JK「お前はお前の仕事だけ気にしてろ、って怒られるかもしれない」

JK「だけどやっぱり気になっちゃうんです。何回も同じこと考えちゃうんです」

JK「だからもう、思い切って訊いちゃいます」

JK「ねぇ博士」

JK「怪獣って、どうして来るんですか?」

JK「どこから、来るんですか?」

JK「次は、いつ来るんですか?」

JK「どうすれば、来ないようになるんですか?」

49 : 以下、名... - 2015/09/12 20:38:20.73 fTJA3Q5qo 48/55

田所山本「「……」」

JK「……やっぱり……」

田所山本「「……」」

JK「……やっぱり、怒った……」

田所山本「「……」」

JK「二人ともやっぱり、怒った……。話せって言うから、喋ったのに……」

田所「……いや。怒ったりなど、しとらん」

山本「……そう見えたのなら、謝る」

JK「じゃあ…」

山本「確かに、お前はお前の仕事をすればいい。ほかの仕事のことを気にする必要はない」

田所「だが悦子君が今わしへ訊いたのは、誰もが疑問に思うことだ」

山本「怪獣が、なぜ来るのか」

田所「どこから、来るのか」

山本「いつ、来るのか」

田所「来ないようにする方法は、何か」

JK「……」

田所「誰もが疑問として考える。考えるな、という方が無理だ」

JK「はい……」

山本「だが我々は、怪獣が我が国へ襲来し始めてから現在に至るまで…」

JK「……」

田所「一向に、これらの疑問に対する答えを見付け出せとらん」

50 : 以下、名... - 2015/09/12 20:40:05.49 fTJA3Q5qo 49/55

田所「わしはこの問題に関して防衛省から研究を委託されとる」

田所「そしてわしの研究所やこの特定特殊生物駆除部隊とともに調査などを行なってきた」

田所「しかし現時点で、ほとんど成果を上げることができとらん」

田所「怪獣の襲来がたび重なるものとなり、被害や損害を受けた人々の数は増える一方だ」

田所「それとともに、事態の根本的な究明と解決を求める世論も強まっとる」

田所「だがわしはこの研究の責任者として、ほぼ全く、その声に応えられとらん」

田所「最近では一向に成果の上がっていないことに対して、マスコミが攻撃を始めたな」

田所「“被害が出続けているのに防衛省や政府は何をやっているのか”」

田所「“事態を解決できない研究に血税を投入するな”」

田所「これがマスコミの主張だ。世論もこの方向へ傾き始めとる」

田所「わしは、ごく自然で、当然の言い分だと思う」

田所「わしのやっとることは、今の段階では税金の無駄遣い以外の何物でもない」

田所「わしは悦子君をはじめ、この国にいる全員に対して大変、申し訳ない気持ちでおる」

JK「そんな……だって博士がやらなかったら誰がやるんですか?」

山本「さっきの話と同じだな。博士以外にこの研究を主導できる人はいない」

田所「だが結果を出せとらんのは事実だ。わしは責任を痛感しとる」

山本「田所博士。博士ばかりの責任ではありません。司令の自分にも責任があります」

田所「うむ……」

51 : 以下、名... - 2015/09/12 20:42:18.72 fTJA3Q5qo 50/55

JK「……でも」

田所「……」

JK「でもね……博士」

田所「何かね」

JK「あたし、何となくですけどこう思うんです」

田所「どう思うかね」

JK「こんなこと、そんなに長く続かないって思うんです」

田所「ふむ」

JK「怪獣が襲ってくるなんて、こんなこと、そんなに長く続くはずないって思うんです」

山本「えっちゃん、そう思う根拠は?」

JK「根拠? そんなのないよ」

山本「……」

JK「ただ何となくそう思うだけ」

JK「こんなこと、そんなに長く続かない」

JK「いつかきっと、怪獣なんて現れなくなる日が来る」

JK「あたしが超能力なんて使わなくなる日が、きっと来る」

JK「その日が来るのって、そんなに先のことじゃないと思う」

52 : 以下、名... - 2015/09/12 20:43:26.40 fTJA3Q5qo 51/55

JK「そうなったらあたし、超能力者じゃなくて普通の女の子に戻る」

JK「普通の女の子、普通の女子高生に戻って、ちゃんと高校を卒業する」

JK「大学なんか行かなくていい。あたしの頭じゃそんなの無理」

JK「普通に就職して、普通に結婚して…」

JK「普通に子供を産む。普通のお母さんになる」

JK「そうやって、普通の家庭を作る。普通の人生を送る」

JK「そうできるようになる日が、きっと来る」

JK「博士。あたし、根拠なんてないけど、何となくそう思うんです」ニコ

田所「うむ、そうだな。早くその日が来るといいな」

野崎「素敵なお話ですね、3佐」

JK「うん。ありがとーりょーこさん」ニコ

53 : 以下、名... - 2015/09/12 20:46:40.71 fTJA3Q5qo 52/55

山本「御気分の切替えがずいぶん早いですな、お姫様」

JK「山本さんがあたしへその変な喋り方しなくなる日が、きっと来る」

山本「まあこれもえっちゃんの数少ない長所の一つだな」

田所「悦子君が持つこの明るい積極的な性格に、わしらはかなり助けられとる」

JK「そーですか? あたし、普通にしてるだけですけど」

田所「それがいいのだよ。自然体でいてくれとるのがいいのだ」

山本「今も、思ったことを俺たちへそのまま言っただけだろう?」

JK「うん、そう。こーなればいいな、って」

田所「そうした真っ直ぐな性格で自然にしてくれとるのがいいのだよ」

山本「ではお姫様のお陰で、未来について前向きな話となりましたし…」

田所「うむ。この話題で会を締めくくろうかの」

JK「あっ、反省会終わり? やったー! やっと帰れる!」

野崎「では3佐、制服に着替えて仕度をしてください」

JK「はーい♪」

野崎「またヘリでおうちまで送らせますから」

JK「はーい♪」

山本「博士、中央会議室に皆を集めますので…」

田所「了解した。資料をそろえ次第すぐ行く」

JK「大人たちはまだ仕事?」

田所「いつもどおりに、悦子君が参加する反省会はここまでだ」

山本「この後は部隊の幹部による、今回の戦闘についての会議が行なわれる」

54 : 以下、名... - 2015/09/12 20:48:34.33 fTJA3Q5qo 53/55

JK「あ。でも…」

山本「ん? どうした」

JK「もし怪獣が来なくなったら、さ」

山本「ああ」

JK「大人たちは困るの?」

山本「困る? どういうことだ」

JK「だって山本さんたち、仕事なくなっちゃうじゃん。博士は自分の研究所があるけど」

山本「なくなるはずがないだろう」

JK「どして?」

山本「無論、怪獣が出現しなくなればこの特駆隊は用済みになる。解散だ」

山本「だが我々の仕事は特定特殊生物の駆除だけではない」

山本「自衛隊の任務は我が国の防衛だ。そのためにやることは幾らでもある」

野崎「何者かが攻めて来なくても仕事はあります。災害派遣だってそうですよ?」

JK「あっそうか。地震とか大雨とか火山が爆発した時とかに活躍するよね」

野崎「特駆隊がその役割を終えて解散すれば、私たちは別の配属先へ行く。それだけのことです」

山本「えっちゃん。お前は他人の将来について心配する暇があったら自分の心配をしろ」

JK「へ? 何を心配すんの?」

山本「お前はさっき、普通に結婚して普通に子供を産むと言っていたが…」

JK「うん」

山本「結婚や子供を作るのは一人ではできないんだぞ? 相手はどうするんだ?」

JK「……」

55 : 以下、名... - 2015/09/12 20:50:09.43 fTJA3Q5qo 54/55

山本「相手の男はどうするんだ? 見付けられるのか?」

JK「……そ、それは……」

山本「野崎」

野崎「はい、司令」

山本「こいつみたいなガサツな女でも一応、学校でモテたりするのか?」

野崎「まっ。司令ったら何てことを言うんでしょう」

田所「ほっほっほっ。これも一種のセクハラだの」

山本「総務はこいつに関して学校での各種状況も分かっていると思うが」

野崎「もちろん把握してますけど……あまりプライベートなことはお話しできません」

山本「まあ普段の様子から察するに、付き合ってる男なんていないようだが」

JK「いいでしょ別に……今はいなくても」

山本「だが野崎、万が一の場合には情報の提供をくれぐれもお願いする」

JK「“万が一の場合”?」

山本「えっちゃんに男ができるという、万が一の場合だ」

野崎「まっ。司令ったらまた、何て言い方をするんでしょう」

山本「万が一そうした状況が起こった場合、作戦の遂行に影響するかもしれんからな」

JK「ひどい! まるであたしは彼氏を作っちゃ駄目みたいじゃん!」

山本「駄目とは言わない。ただ、男ができた嬉しさのあまりお前が舞い上がっちまうのが心配だ」

田所「ほっほっほっ。駆除作業の時、物理的に舞い上がるのは結構だがの」

山本「今日は男とデートの約束があるから緊急招集は無視、なんてことをされたらかなわん」

JK「……そんなのするわけないじゃん」

山本「まあとにかくえっちゃんは、他人ではなく自分の将来を心配しろ」

56 : 以下、名... - 2015/09/12 20:52:18.61 fTJA3Q5qo 55/55

JK「ふ、ふん。今は彼氏がいなくたって、大人になったらそんなのすぐ作ってみせる!」

山本「ほう。宣言したな」

JK「あたしには夢があるんだもん!」

山本「夢?」

田所「ほう。未来の夢か」

野崎「どんな夢ですか? 3佐」

田所「聞かせてもらいたいものだの。未来を担う若者の夢を」

JK「あたしは将来、絶対に稼ぎのいい男を見付けてみせる」

JK「そんでその男と結婚して、旦那に働かせて楽に生活する」

JK「あたしは将来、専業主婦になるんだもん」

山本「楽に生活? 専業主婦には家事という重要な仕事があるぞ」

JK「もちろん家事をするよ。子供を産んだら育児もあたしの仕事」

JK「あたしはそーやって、働いて稼いできてくれる旦那を支えるんだよ」

JK「そーやってあたしは普通の家庭を作って、普通の生活をするんだよ」

野崎「3佐が専業主婦志向なんて意外ですね」

田所「だが悪くない夢だの。安定志向、堅実志向だの」

JK「あたし、今こんなことしてるのが考えられないくらい、普通の生活を送るのが夢なんです」

JK「自衛隊の仕事をしてたことが嘘みたいに思えるくらい、普通の生活をするんです」

JK「でも子供が大きくなったら、思いっ切りドヤ顔してこう自慢するんです」

JK「“お母さんはね、今は普通のお母さんだけど、高校生の時はすごい活躍してたんだよ”って」

JK「“お母さんは正義の味方だったんだよ”って」

JK「子供は、“何をする正義の味方だったの?”って訊いてくると思うんです」

JK「そしたらあたしはまた思いっ切りドヤ顔して、こう答えるんです」

JK「“怪獣退治”って」

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