【関連】
暦「うそつきー!」 戦場ヶ原「あらあら仕方が無いわね」
神原「阿良々木先輩!BダッシュのBはBLのBだ!」
忍「お前さん、開いておるぞ?」
暦「僕は、お前を選んだ!」
暦「終わった……」
元スレ
暦「うそつきー!」 戦場ヶ原「あらあら仕方が無いわね」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1283509215/
410 : VIPに... - 2010/09/13 15:50:42.60 E3ih1RQo 1/68今回ギャグパートになるかもしれない><
なるべく、物語になるように頑張るんで、少しお時間ください
あいつらも出したいし―――僕はキメ顔でそう言った
412 : VIPに... - 2010/09/15 09:22:50.73 VFWRRJEo 2/68注意事項
今回も99%趣味で書きまみた!
誤字脱字もワザと書きまみた!
原作設定とか無視して書きまみた。
あと舞台は……直江津は上越市なんだけど、アニメ版では三鷹駅や千葉のモノレールが出るので、関東と言う事で書きまみた!
その辺の設定は賛否両論あると思いますが、生温かく批評してください―――と、僕はキメ顔でそう言った。
では、始めまみた。
「キナバルさん」
「おーい、八九寺ちゃん、私の名前を間違ってるぞ!いつの間に私はフィリピンの山になったんだ?」
「えへへ、かみまみた」
「かみまみた?」
「かみまみた」
「なんだそれは?」
「ちなみに、フィリピンではなく、マレーシアです。……はぁ、阿良々木さんが懐かしいです」
「うわ!何か私じゃ不満なのか?」
「いえ、そういう訳ではなく。その……噛んだときのツッコミ具合やノリ具合が違うと言うか……」
「まぁ、阿良々木先輩は凄かったからな」
「ええ、本当に。あれだけの人は稀ですよ」
「今頃、関西地方でドーナツ食べているのでしょう」
「だろうなぁ」
「関西ってどんなところなのでしょうか?」
「私が聞いた限りでは、大阪の何とかという街で石を投げると、3回中1回は芸人に当るらしい」
「ええ!そうなのですか!」
「ああ、何せ芸人の街だからな。なんとかカ月という所があってだな。何カ月なのかは知らないが」
「それって『なんば花月』じゃないですか?」
「え?そうなのか?なんだ八九寺ちゃん、知ってるんだ?」
「いえ、花月は関東にもありますから」
「花鳥風月を略して花月か、今度の薄い本のタイトルに使おうか?」
「いえ、花月は『花と咲くか、月と陰るか、全てを賭けて』って意味ですよ」
「私より詳しいではないか!」
「いえ、花月の事だけ知ってます。関西は行った事も無いので、よく分からないのです」
「ふーん。他に、お店の5軒に1軒はたこ焼き屋かお好み焼き屋らしい」
「なんか街の中がソース臭そうですね」
「阪神が優勝したらみんなが飛び込む何とかという川は、ソースが流れているらしい」
「え?それって水が汚いだけでは?」
「いや、ソースなんだって。それを汲んで使うらしい」
「神原さん、ソース提示して貰えます?」
「あ、それはネットで」
「ネットの情報なんて鵜呑みにしちゃダメですよ」
「そうなんだ」
「そうです」
「―――」
「……」
沈黙。
「なぁ、八九寺ちゃん。とりあえず、暇だし、関西に行かない?」
「え?」
「春休みだし。するが事ない!」
「何を言ってるんですか!この『こねこのひ○ぎ』がアップしていないじゃないですか!?」
「ああ、まぁそうなんだが。息抜きと言うか、そう!取材!取材に行こう」
「取材?」
「ああ、大阪には日本橋と言う所があってだな、そこに乙女ロードなるものがあるらしい」
「うは、それは興味深いですね」
「そうだ!にほんばしに行こう!」
「あ、ちなみに大阪の日本橋は「にっぽんばし」ですよ?」
「そうなの?」
「ええ」
「じゃあ、荷物詰めて行こう!」
「足はどうするんですか?」
「足はここにある!」
「いえ、そういう意味ではなく」
「走れば丸3日で行ける!」
「私は無理です!」
「冗談だ!心配するな、ちゃんと車を用意するから」
「そうなのですか?」
「ああ、大丈夫。ピポパっと」
『あ、神原です。実はですね、―――という訳なのですが?え?OK?では明日』
「OKだよ」
「誰に電話したのでしょうか?」
「え?私の最愛の人だ」
「それって……戦場ヶ原さん?」
「正解!八九寺ちゃん、鋭いね」
「いえ、それ以外に考えられませんから」
「酷いな。まるで友達が居ないみたいじゃないか、私に」
「え?」 「え?」
「まぁ、ここまでクラスメイトらしき人は出ましたが……」
「やだな、八九寺ちゃん。こう見えても直江津高校のスターだったんだぞ!」
「まだ過去の栄光に縋っているんですね」
「グサッ!死んだ!」
「死なないで~お姉さま!」
「大丈夫!阿良々木先輩の精子を授かったから私は不死身だ!」
「!!ええ!何?今なんと?」
「やだな、冗談だよ。真に受けずにツッコミいれてよ」
「はぁ。笑えない冗談でしたよ?」
「そう?なかなか素晴らしい冗談だと思ったのだが?」
「では、明日。明日、戦場ヶ原さんの前で言ってみてください」
「すみません、私がわるぅございました。まだ死にたくないです」
「ですよね~キャキャ」
「取り敢えず、明日に向かって寝よう!寝るのが一番だ!」
「ええ、そうしましょう!」
「今日もBL本の布団で爆睡だ!」 「爆睡だ!」 zzz…...
翌朝
「おはよう」
「おはようございます、戦場ヶ原先輩!」
「すみません、無理言って」
「いいのよ、別に。私も大学の入学式まで暇だったし」
「戦場ヶ原さん、お世話になります」
「ええ、御遠慮しないで。このチンチクリンの可愛い小動物さん」
「はっう!」
「戦場ヶ原先輩は八九寺ちゃんには優しいな」
「ええ、優しさ95%(当社比)で構成されている私には当たり前の事よ?」
(なんかまちがってますぅ!)
「それはそうと、神原。あなた、最近、前にも増して元気じゃない?何かいい事有った?」
「ええ、神原さんは阿良々木さんの精液飲んで元気だそうです」
「そう……それは良かったわね」
「八九寺ちゃん!なんて事を!殺されてしまうじゃないか!」
「も、勿論、今のは冗談ですからね?」
ガチャガチャ
「あの、戦場ヶ原先輩。何をされているのでしょうか?」
「ドライブって聞いたので、タイヤを外すのよ」
「え?パンクでもしたのですか?」
「神原。タイヤ外したら、あなたをここに括りつけて走るわ」
「ひー!勘弁してください!死んでしまいます」
「あら?そうなの?そんな事で死んでしまうの?私はあなたの冗談で心が殺されたわ」
「この通り!土下座してお詫びいたします」
「そう。なら、仕方が無いわ。今回は許すわ。その代り、そんな冗談、今後は、無しよ」
「アイアイサー!マム」
「うん、いい子ね。では行くわよ」
「レッツゴーです」
ちなみに私の車の中は土足厳禁。二人とも脱ぎなさい」
「え?全裸ですか?先輩?」
「別に全裸になりたければ、どうぞ」
「神原さん、普通は土足厳禁の場合、靴を脱ぎますよ?」
「神原はさっきの罰として全裸」
「勘弁してください」
「そう。仕方が無いわね。ちなみに車内で全裸でも捕まらないのよ?」
「え?本当に?」
「嘘よ。でもシートベルトをしていれば、道交法では捕まらないわ。公然わいせつ罪に問われるけど」
「へー、えへへ。今度の本のネタにさせていただきます」
「相変わらず本を作っているのね。売れてるの?」
「ええ、まぁ。私名義は商業誌で、八九寺ちゃん名義で薄い本を裏技的に出しています」
「ふーん。次回作は何かしら?」
「薄い方は『こねこのひ○ぎ』ですよ、えへへ」
「○には何が入るのかしら?」
「え?あの、それは……先輩、楽しみにしていてください!」
「もしその丸の中が『た』なら分かってるわね?神原」
「あはは、やだな。『た』なんて入りませんよ。丸の中は「つ」ですよ。な、八九寺ちゃん」
「あれ?今朝見たら『た』が入っていましたよ?」
「やっぱりタイヤ外すわ。今度は、あなたが外しなさい、神原」
「いや、やめて!ごめんなさい!没ネームにしますから!」
「ちなみに、内容はどんなのかしら?」
「えっと……」
「戦場ヶ原さんの性格変更して、小心者にする話です!」
「ふーん……」
「例えば?」
「クラスのある男子に助けられて、お友達になったのですが、実はその男が非常にチャラくて、戦場ヶ原さんにお礼の代わりに体を迫るという話です」
「あー!八九寺ちゃん!言っちゃダメ!って遅かった……」
「神原。その先はどうなるのかしら?」
「えっと……いえ、まだネームの段階で……」
「いいから、言いなさい!」
「あの、まぁその……毎日、家に連れ込まれてズッコンバッコンされちゃうという話ですよ」
「私がいいなりになると思って?」
「いえ、だからそこは……性格を改変して、従順な……漫画の世界だけの話と言うかなんというか」
「従順な奴隷ですよ、戦場ヶ原さん」
「はちくじゅちゃん!」
「噛みましたね?緊張しているのでしょうか?」
「あたりまえだ!」
「神原。脱ぎなさい」
「え?」
「あなた、全裸でサンルーフから上半身出して立っていなさい」
「あの、戦場ヶ原さん、それは私や運転手の戦場ヶ原さんも変な目で見られますよ?」
「それもそうね。じゃ、タイヤを外す刑ね」
「それも勘弁してください」
「私がいいと言うまで、タイヤローテーションしなさい」
「まるでロシアの拷問だ!」
「墓穴掘りましたね、神原さん!」
「冗談はさておき、関西に向かって何かいい事あるのかしら?」
「さぁ?とりあえず、阿良々木先輩に会いに行こうと」
「ふーん、そう。分かったわ。では、出発しましょう」
「ちなみに私は後ろで寝ていますので、到着したら起こしてください」
「ところで、戦場ヶ原先輩。関西って行った事有ります?」
「ええ、修学旅行で行ったわ、大阪・奈良・京都に。中学の時だけどね」
「ふーん、どうでした?」
「大阪の川がソースで吃驚したわ!」
「ですよね!……ちなみに車では?」
「今日が初めて。去年の7/7で18歳になったので、秋から教習所に通ったわ」
「ふーん、まだ若葉マークですね」
「ええ。車の運転も今日が初めてだし……」
「危険すぎます!」
「あら?チンチクリンの可愛い小動物さん、起きたの?関西はまだよ?」
「今寝たら、一生目覚められない気がしました!それと、私の名前は八九寺真宵です!」
「そう、真宵ちゃんね。車は大丈夫よ、教習所でも『君は天才的に上手いね』と言われたわ」
「先輩!それって、教官の頬に何か添えていたとか?」
「あら?神原、今日は察しがいいわね」
「何を添えたのか聞きたくない!」
「ところで、関西ってどっちかしら?」
「ナビに入れたらどうですか?」
「ごめんなさい。私、使い方知らないわ」
「私も無理です」
「八九寺ちゃんは……あら?ツッコミ入れてもう寝てる。やっぱり子供だね」
「あそこに道路標識、緑色だから高速道の案内ね」
「あれに乗ればいいのですか?」
「そうね」
「戦場ヶ原先輩は凄いな」
「コホン、これぐらいお茶の子さいさいよ。何せ、関西の『関』が入っていたわ」
「関東にも関西にも関は入ってますよ?先輩」
「本当に神原は馬鹿ね。江戸と大坂の行き来に関所を越えたから、どっちも関が付くのよ。関東と関西、関の東と西」
「ほう?」
「だから、関を越えれば大阪に行くに決まってるじゃない」
「おお、流石戦場ヶ原先輩だ!では、行きましょう!」
標識 【関越自動車道】
関西
「忍、次はどこに行く?」
「暦君、京都に行こう」
忍は、以前『普通言葉』と言った僕の話を了承し、堅苦しい言葉使いを止めた。
『お前様』が『暦君』に、『我があるじ様』が―――、そこは内緒にしておこう。
たまに戻る事もあるのだが……
「京都か。ミスド以外にも色々見られそうだな」
「そうだよね。とりあえず清水寺は外せないし」
「あと、東寺とか西尾なんとかさんが行ってた立命館大学なんてのもあるよな、近くに銀閣寺もあるし」
「へーそうなんだ。ちなみに、私の調べた情報では作者の出身校も京都なんだって」
「それ誰情報?」
「さぁ?一応、手元のカンペに書いてある通り言ってみた」
「いつ貰ったの!?」
「え?さぁ?気がついたら握ってた」
「握ってたからって読むのか?」
「握ってたから、上下に動かしました!っておい、なんじゃこりゃ!」
忍は訳のわからないメモを丸め、ゴミ袋に放り捨てた。
「しかし、関西って凄いよな」
「凄いよね」
「大阪の川がソース色だったよ」
「ていうか、あれソースちゃうん?」
「おい忍、関西弁になってるよ!」
「え?マジかいな!そら、あかんわ、こまるがなぁ」
「頼む、普通言葉で」
「くくく、戯言だよ、戯言。たまには戯れをしないとさ」
「びっくりするやんか、急に忍が関西弁で喋ったら僕はこまりまっせ?」
「おい、暦君。それも関西弁や!」
「そやなー」
本当に毎日が楽しかった。
何が楽しいって、好きな人とずっと一緒に居て、笑いながら過ごせる事が。
勿論、家を出てから喧嘩もした。
でも、そんな事を忍と出来る事が嬉しかった。
たぶん、忍もしかりかと。
「なぁ暦君、どこから行く?私はドーナツ食べたいんだけど」
「ああ、じゃあ、ちょっと検索してくれる?」
「オッケー!ちょっと待っててね」
そういうと、忍は僕の携帯を受け取り、検索開始。
忍にも1台携帯を買ってやろうかと言ったが、
「そんなもん要らんわ。一緒に行動するのに何故要る?逸れても直ぐに探せ出すわい」
と強気な発言をしていた。
「暦君、早速店が見つかったよ」
「ん?どこ?」
「寺町六角上ル ショップ」
「なんか、凄い名前だな」
「寺町筋と六角通りの交差を上ったところだって」
「ふーん。あ、あそこが六角通りだ」
僕は駐車場に車を入れ、歩いている人に道を尋ねる。
「すみません、ここから寺町筋ってのは、どっちにいけば?」
「ほんの少し歩きますけどぉ、なんてことおまへん距離どすえ。こっち向いて行きはったらよろしいかと」
僕は、あまりにベタベタな京都弁に少しふきだしかけた。
「あ、ありがとうございます」
「忍、こっちだって」
「暦君、さっき笑っただろ?」
「え?ばれた?」
「私も我慢してたのに!」
「笑えば良かったんじゃない?」
「失礼でしょ!」
「まぁ、確かに。しかし、凄いよな、京都弁」
「ああ、400年前と何ら変わっておらん。儂も驚いた」
本当に驚いたんだな。
忍が素に戻っていた。
「あらら、私とした事が失礼」
「別に気にしてないからいいよ」
「そう。本当に暦君は優しいね」
「普通じゃない?」
「普通かぁ。そんな風に普通だと思って、他の女に接するとやきもち焼くかもよ?」
「あーそれは怖いから、気を付ける」
「うん、よろしい」
「で、目的地が見つかったぞ」
「おお!あれかぁ!」
僕達は早速入店し、好きな物を頼む。
「しかし、忍も飽きないよな」
「何が?」
「ドーナツ」
「当り前よ、こんなに美味しいのに」
「でも毎日食べてたら飽きないか?」
「毎日、暦君の顔見ていたら飽きると言う事でしょうか?というか、私の顔を毎日見て飽きたんでしょうか?」
忍が僕を睨む。
「いや、そんな事は全くないよ、全く」
「そう。なら同じ事よ」
にこやかな顔に戻り、美味しそうにドーナツを頬張る忍。
至福の時ってこういう事を言うんだろうな。
でも、そんな幸せな時間をぶち壊すように―――
「お?やっぱ間違いあらへん、鬼畜兄やんに旧アンダーブレードちゃんやんけ」
その声に振り向くと―――
そこには
影縫余弦と斧乃木余接。
僕の脳裏に嫌な予感が走った。
いや、嫌な事が思い出された。
「なんや、その驚いた顔は。鬼畜なお兄やん、こんな所迄なにしにきたんや?」
「去年の続きをする為か―――僕はキメ顔でそう言った」
「いやいや、ただの観光だし」
「観光?」
「そう。学校出てから忍と二人で旅行しているんだ」
「観光ねぇ。なんやそんな風には見えへんで?なんちゅーか、駆け落ちみたいな感じやな」
「……」
「きっと地元で人には言えない事をした―――僕はキメ顔でそう言った」
「なんもしてねぇよ!」
「ふーん、そうかいな。ま、鬼畜なお兄やんの言う事は信じたるわ」
「そら、おおきに」
「おおきにって……いつから京都におるねん?」
「んー、京都は今日から。昨日までは大阪に居たんだ」
「いつからや?」
「3月の上旬から」
「はぁ?その間、なにしとったんや?」
「ミスドめぐり」
「ぷっ。アホや、こいつら、ほんまもんのアホや」
「全国的にどこのミスドも味は変わらないと思うんだけど―――僕はキメ顔でそう言った」
「それを言われると困るんだけど、まぁ観光も兼ねてね」
「観光なぁ。京都に来た所で、ショボい映画村か寺社仏閣しかあらへんやろ?」
「鬼共が寺社仏閣とは笑える―――僕はキメ顔でそう言った」
「鬼って……まぁ、そうだけど。ただ、踏み入れたところで何も起こらないしな」
「そうか、ほな好きにしいや。その代り、ゆうとくけど、京都で悪さしたらうちらが許さんで?」
「あーそんなの無い無い。本当に観光だし」
「それより、旧アンダーブレードちゃんは、なんでさっきから黙ったままやねん?」
「え?別に何も話す事無いし。何か話した方がいいのかな?」
「なんやおどれ、その話かたは!熱でもあんのか?」
「無いよ」
「無かったら死んでいる!-――僕はキメ顔でそう言った」
「全然キメ顔じゃないし」
「ムカつく―――僕は本気でキメ顔をした」
「まぁまぁ、二人とも喧嘩しないで」
「なぁ、鬼畜なお兄やん、これどういう事や?説明してくれや」
「えっとどこから説明したらいいのかな?」
「まず、なんで旧アンダーブレードちゃんが普通にしゃべっとんねん?」
「僕が勧めた」
「なぬ?鬼畜なお兄やんが勧めたら、普通に話すんか!」
「まぁ、そういう事」
「で、お前ら、どんな関係やねん」
「それはもうご存じでしょう?」
「吸血鬼と眷族、今は逆転しとるけどな」
「まぁ、そういう事」
「ほな、このサイズはなんや?」
「サイズ?」
「このサイズはうちらと戦った時のサイズやろうが?なんで今もそのサイズやねん」
「うーん、なんて言うか、僕が10歳の子連れてウロウロするのも拙いし」
「嘘や。そんなん嘘や。何か隠しとるやろ?」
「こいつら恋仲じゃないか―――僕はキメ顔でそう言った」
「何?恋仲?付きあっとんの?」
「んーまぁ、そういう事になるのかな?」
「おい、おどれ!ちょっとまちぃや!おかしいやろ?」
「ん?何が?」
「なんで、おどれが旧アンダーブレードと付きあっとんねん?彼女おったやろ?」
「あー、あれは別れた」
「何?!」
「それと、悪いんだけど、僕の事は暦、キスショットの事は忍って呼んでくれないかな?」
「何を偉そうに言っている―――僕はキメ顔でそう言った」
「まぁ、さっきから余弦さんが話すというか、驚くたびに他のお客さんが振り向くんで……」
「あ、そりゃすまんな。で、こ、暦よ、おどれと忍が付きあっとる理由は?」
「理由?好きだから」
「すー↑きー↓?」
「ああ、そうだよ。それが何か?」
「本気なんか?」
「そりゃ勿論。なぁ忍」
「う、うん///」
「あかん、旧アン―――忍が照れとる」
「世も末だ―――と僕はキメ顔でそう言った」
「おいおい、そこまでいう?」
「『例外のほうが多い規則』も驚きや!」
「例外って……」
「ほな、あれか!おどれは地元の女に興味なかったんか?」
「まぁ、元彼女も元彼女の後輩も、同級生も、妹の友人も―――妹Aも振った」
「妹振るって……ほんまにおどれは鬼畜やな」
「ちなみに、暦君の子供を身籠った怪異も一匹いますけどね」
「なんやて?」
「あなた達が帰った後、暦君が猫の怪異にやられてね」
「何やられてん?」
「まぁ、その……無理やり性行為」
「はぁ?マジで?」
「うん……で、妊娠してシングルマザー」
「おどれの鬼畜ぶりは知っとったけど、最悪やな。ほんで認知せんと忍とラブラブか?」
「本人の意思だし、仕方が無いよ。それに怪異に認知ってのも……産むのは人間だけど」
「というか、そんなヤバい怪異、始末せなあかんやろ?」
「いや、それは無理。怪異が憑いたと思ったら、怪異が飲まれてた」
「何?」
「だから―――怪異を取りこんで、自在に発現させるというか」
「おどれの妹と―――逆か」
「まぁそんな感じ。これって完全に『例外のほうが多い規則』適用だろ?」
「んー……まぁうちら人間には手出しでけんしな」
「まぁ、そう思うんだったら聞いていない事にしてよ」
僕は去年起こった事を説明した。
「まぁ大体の事情は分かった。そやけど……ほんま、驚きや。腹減ったし、軽くなんか食おか思って入ったら、おるし」
「錯覚を見たかと思った―――僕はキメ顔でそう言った」
「驚いたのは僕らの方だし」
「ちゅーか、昼間やぞ?忍は何ともないんか?」
「まぁ一応、ちょっと大きいから吸血鬼に近いんだけど、最近は日焼け止めもいいのがあるし、短時間なら外を歩いても平気なんだ」
「さよか。まぁ、ええわ。ほんで、いつまで京都おるねん?」
「多分、1週間ぐらいかな?1週間有ったら全店廻れそうだし」
「なんや?全店って」
「あ、ミスド全国全店舗廻るんだ。さっき言わなかったっけ?」
「京都には観光に来たんとちゃうんか?」
「いや、観光はおまけ。本来の目的は―――」
「いやーほんまに参った。おどれら素敵過ぎや。久々に呆れたわ」
「そりゃどうも」
僕の横で、忍は最後の1個に手を掛ける。
「暦君、半分食べる?」
「あ、いいよ、忍が食べなよ」
「暑い、春だと言うのに暑い―――僕はキメ顔で言った」
「うん、それがいい。クールな顔で涼しくしてくれよ」
「ま、そういう事で、僕らはこの後観光するから、そろそろ失礼し―――」
「まちぃ!おどれらこのまま帰して貰えると思っとんのか?」
その言葉に、食べかけのドーナツを置く忍。
余接もまた同じく。
「おい―――」
僕の言葉を遮るように、余弦が京都弁を捲し立てる。
「おどれら観光で来たんはよう分かったわ。京都に来た知人が観光する言うてんのにほっとかれへんな。うちが案内したるわ!」
「へ?」
「君達を京都案内してあげる―――と僕はキメ顔でそう言った」
「えっと…」
(忍、どうする?)
(いいんじゃない?戦争しようって言ってるんじゃないし)
「何をボソボソ話しとんや?」
「いえ、ではお言葉に甘えて」
「よっしゃ!ほな行こか!」
「どこに?」
「観光や。まずは新撰組の屯所跡やろ、それから本能寺な」
えらくまた、コアな場所だった。
「というか、ショボイ映画村と寺社仏閣だけと違うの?」
「それは、追い返したろ思ってゆうただけや。ええとこナンボでもあるで」
「あっと、その前に車を」
「何?車で来てんのか?」
「ええ、車で旅してます」
「ほな、今の時間やったら嵐山行こか!桜は2分咲きやけどな」
僕らはミスドを出て、駐車場へ向かう。
が、駐車場の場所が分からなくなってしまった。
「どこに置いたんや?」
「六角通り」
「ここもや。何筋や?」
「えっと……分からない」
「どっちから来てん?」
「それが……多分、こっちかな?」
「ほな、歩いたら分かるやろ」
15分歩いて、逆方向だったと分かった時、京都の二人から殺気が出ていた。
「あのー本当にすみません」
「しゃーない、京都はややこしいからな」
「ちなみに、余弦さんの話し方って京都弁というか、先日まで居た大阪の泉州弁にちかいですね」
「!!」
「それはふれてはイケない事―――僕はキメ顔でそう言った」
「すみません、聞いてない事にしてください」
「なんも聞こえてへんわ!」
やれやれ、先が思いやられそうだ。
某所
「あの……戦場ヶ原先輩、新潟は関西なのでしょうか?」
「さぁ?」
「というか、道を間違えていませんか?」
「間違い?この私が間違うなどありえないわ」
「す、すみません」
「ちなみに、ナビの使い方は分かったのかしら?」
「えっと、一応説明書は読みました」
「じゃあ、さっさと入力しなさい」
「どこの住所を入れましょう」
「大阪府って入れなさい」
「市は?」
「大阪」
「区は?」
「大阪」
「有りません」
「壊れているのかしら?」
「何区を入れればいいんだぁ!」
「えっと、お話中すみません」
「何、迷うちゃん」
「名前が残念賞です!」
「ごめん、噛んだ」
「わざとですね!」
「かめはめは!」
「わざとじゃないのかどうだかすら分かりません、というか戦場ヶ原さんって面白いですね」
「おもしろいですね?」
「……何か気に障る事を言いましたか?」
「逃げて、八九寺ちゃん!」
「こんな車内で逃げる場所なんてないです!」
「おもしろい、尾もしろい、尾も白い!あの猫、あの時〆ておくべきだったわ!」
「こ、こわれましたぁ!」
「先輩!と、とりあえず新大阪駅を場所の名前で入れました!行きましょう」
「おもしろい、おもしろい……」
「先輩!戦場ヶ原先輩!」
「はっ!何?神原?」
「よかった戻ってきた。新大阪までのナビ、はいりましたー」
「新大阪って新東京市と同じような物なのかしら?」
「さぁ?よく分からないのですが……」
「案外、地下から巨大ロボットが―――」
「またお話中すみません。ロボットとかいうと叩かれますよ?」
「誰に!誰がぁ!」
「戦場ヶ原先輩、落ちついて!」
「で、あとどれぐらいなのかしら?」
「えっと……555km、7時間です」
「7時間!」
「どうされました?」
「これは試練ね。何故600kmしか離れていない大阪に向かって300km走ったのに、残距離が555kmな訳?」
「それは、戦場ヶ原さんが道を―――」
「あーあーあー!今日はいい天気ね、そう思わない?神原」
「先輩、もう家に帰りましょうか?」
「駄目よ、帰らないわ。行くわよ」
「無理しなくていいですよ……」
「ちなみに、富山って標識が有るけど、大阪のそばに富山があるの?」
「さぁ?でも、一応ナビではこっちですよ?」
「神原、機械に頼りすぎじゃない?」
「え……?」
「大阪のそばに富山が有る訳ないじゃない。そのナビは私達に試練を与えているのよ」
「はぁ……」
「だから正解はこっちよ」
「多分、それ死亡フラグですよ?」
「真宵ちゃん、あなたまで!」
「いいから、ナビに従え!このツンバカ!」
「ツンバカ……ちょっと車から出て貰えるかしら?」
「出ちゃだめ!ここ高速道路上だし!」
大阪まで555km
現在地 新潟県長岡市【北陸自動車道上】
嵐山
「ここが嵐山や!デートスポットやで!」
「なんか、ただの田舎だね」
「忍、折角案内してもらったのにそういう言い方は……」
「旧―――忍は風情があらへんな。この侘び寂びを感じ取れんか?」
「というか、寂れてるって感じしかしないけど?」
「はぁ、これやから金髪近眼はアカンねん」
「誰がメガネっ子よ!」
「忍の眼鏡姿も案外似合うんとちゃうか?鬼畜―――彼氏もそういうの好きそうやし」
「いや、僕は眼鏡属性ないから」
「なんや、ないんか」
「ええ、全く」
「おかしいな、普通は眼鏡属性が有る方が本は売れるんやで?」
「あんたは、どこの神原だよ!」
「暦の周りにもおるやろ?メガネっ子」
「ああ、居たけど。居たけど、需要が無い事に気付いてコンタクトにしてたよ」
「わかってへんなぁ、その子」
「僕にはそこまで眼鏡に拘る方がわかんねぇよ!」
「なんや、ほな、うちが教え込んだろ」
「え?」
「余接、忍と散策しておいで」
「お姉さん、なんで私が鬼と一緒に行かなくては?―――と僕はキメ顔でそう言った」
「ええから、ええから。ここからは大人の話や」
「ほほー、大人の話とな?儂も参加できるであろう?」
「ええから、いってこいや!ちゅーか、ハク付けて儂ッ子に戻んなや!」
「儂ッ子……そんなのあるの!?」
「なんや、暦君。おどれ知らんのか?僕っ子を超える『儂ッ子』を」
「しりませんでした」
「一部では熱狂的なファンがおるんやで」
「へぇ……世の中色々あるんだな」
「せや、そやからうちが色々と教えたろってゆうてんねん」
「あー、なんか嫌な予感がした」
「だよねー。やっぱ暦君と一緒に居るから」
「チッ」
「あー!今舌打ちした!僕に何する気だったんだ!」
「まぁ、忍の彼氏、食うたろか思ってな」
「食うって……」
「あんたに暦君は渡さないしー」
「なんか、その言い方むかつくなぁ」
「そもそも、小僧―――忍野と同じ歳なのに暦君に手を出すなんて……無理があるでしょ?あの人と同世代は……」
「男女の中に年齢なんてあるかい!」
「そう思ってるのは、おばさんだけ」
「何!だれがおばはんじゃ!」
「ちなみに暦君、夜になると私の血を吸うのよね。『小さい方がいいから』って」
「!!!」
「おい、暦。お前やっぱり鬼畜やな。鬼畜なお兄やんに逆戻りじゃ、ぼけぇ!」
「ロリコンは怖い―――僕はキメ顔でそう言った」
「決めんな!」
で、なんだかんだと言われながらも、嵐山を見て廻る。
「ちなみに、この橋が渡月橋や。カップルで渡っている時に振り向いたら別れるというジンクスがあるんや」
「ふーん」
僕らは橋を渡り始める。
「おい、暦」
後ろから余弦が話しかける。
「はい?」
僕は振り向かず返事をした。
「なぁ、忍よ」
「何?」
「ちょー、お前らこっち向けよ!」
「やだ」
「なんでやねん!振り向けって!」
「さっきの橋の都市伝説聞いて振り向けるか!」
「鬼の分際で、ジンクス信じるなや」
「陰陽師がジンクス信じて行動すんな!」
「ちっ!」
「また舌打ちする……」
そんな馬鹿な事をしながら僕達は嵐山を廻る。
まぁ、一応観光地なので遊ぶ事は出来た。
「ほな帰ろか」
「市内まで送りますよ」
「あ、ええよ。うちら電車で帰るし。おどれらも行きたいとこ有るんやろ?」
「まぁ、特には」
「ないんか?」
「ほな、うち来いや。泊めたるわ」
「私達の寝ている所、覗く気でしょ?」
「そんな悪い趣味あるかいな!人の親切は素直に受けとき」
「はぁ……」
ということで、僕達はまた京都市内へ。
「ここがうちの家や」
雰囲気通りの家だった。
所謂「旧家」って感じで、蔵まであり、静かな佇まい。
「おどれらは、そっちの離れ使いや」
余接に案内された離れは、外観こそ古い建物だが、中は現代風の普通の部屋だった。
「ラブホ程のギャップはない―――僕はキメ顔でそう言った」
「何に例えてんだよ!」
「いつもはどこで泊まった?―――と僕はキメ顔でそう言った」
「まぁ、車の中かな。忍は影の中。まぁたまにはゆっくりベッドで寝る事もあるけど」
「ふふ、やっぱり、その日はやるんだろ?―――と僕はキメ顔でそう言った」
「そんな事、キメ顔で言われても返事出来ねぇよ!」
なんだかんだ言いながら、余弦も余接も親切だ。
「おどれら、晩飯どうすんねん?なんか食いに行くか?」
「あー、えっと、ここって住所はどこですか?」
「左京区やけど?」
「下鴨神社ってのは近いですか?」
「出町を少し上がったほうやな。歩いて20分ぐらいや」
「おお、じゃあ晩飯は結構です、行きたい所があって」
「なんや?なんかええ店でもあるんか?」
「ええ。前から行ってみたい店があって」
「何ちゅう店や?」
「猫ラーメン」
「!!!お前、なにもんや?」
「え?」
「あのラーメンを知ってるのは地元の人間でも少ないんやで?」
「そうなんですか」
「ほな、今晩の飯はうちがおどれらに奢ったるわ」
「いや、泊めて貰ってる上にそこまでされても……」
「あほ。据え膳食わぬは男の恥ゆうやろ?」
「はぁ」
僕達は歩いて、猫ラーメンを目指す。
「あのな、暦」
「なんですか?」
「玄関は直ったんか?」
「そりゃ直しますよ」
「親、驚いてへんかったか?」
「一応驚いては居ましたが―――当て逃げって事で保険で直ったみたいですが」
「さよか!そりゃよかった!これで枕高くして寝られるわ」
「ていうか、気にしてたんなら謝りに来いよ!」
「おどれの親に何ちゅうねん。『娘はん、怪物やから退治に来たったら玄関壊れたで』とでも言うんか?」
「まぁ、それでも良かったと、今では思うよ」
「なんでや?」
「うちの親、少々の事では動じないって分かったし」
「なんぞあったんか?」
「まぁ、その、忍と結婚するって言ったら『そうか』『お幸せに』って言われた」
「ははは!鬼畜の親はアホか!上手い事出来とんな」
「だから、別に言っても問題なかたっと思いますよ。というか、もしかしてあの人達も怪異かもって思う時があるんだ」
「ほぅ、おもろい話や。今度生八つ橋もって遊びに行くわ」
「僕が居る時なら問題ないよ」
「さよか」
そんな他愛も無い事もない話をしているうちに、猫ラーメンに到着。
先客が居た。
ボサボサ頭のおっさんに、僕が眼鏡を掛けたような人、どうみてもこいつ怪異だろ?って奴と、あと女性。
女性は何となく戦場ヶ原ぽい人だった。
先客の食事が終わり、僕達が座る。
メニューは、ラーメンかチャーシューメンのみ。
「忍は何にする?」
「チャーシューメン」
「ほな、うちらも」
「じゃ、チャーシューメン4つ」
店主は黙々と作業に掛かる。
数分後、4つのチャーシューメンが出される。
一口、スープを啜る。
「うま!」
僕より先に忍が感想を漏らす。
「ああ、これは凄いわ」
「せやろ?隠れた名店なんやで」
「へぇ……」
「店名に少し難があるけどー」と忍が呟く。
「猫か?猫の出汁使ってるからしゃーないわ」
「え?」
「うそや、うそ。上品なトリガラスープ、猫でこの味、出せるかいな」
「あの猫だと黒いスープが出そうだよね」
「―――飯が不味くなるから、その話は止めよう」
「ごめん」
しかし、本当に美味かった。
これだけの為に京都に来たと言っても損はしない味だった。
「ちなみに、ここ食った後、何とか一品とか行ってみ、スープとは何ぞ?という疑問が湧くぞ」
「何とか一品?」
「いわせんなや」
「すみません」
ラーメンを食べた後、鴨川を歩いて帰る。
「ちょっと遠回りだけど、気持ちええやろ?」
「ええ、本当に良いですね」
「本当は大学も京都にしたかったんやけど、神道系の大学は東京か三重にしかないからな」
「へぇ」
「そんで行った先に、忍野君がいたんや」
「そうなんだ」
「夏休みにはこっちへ来て、よく遊んだよ。あの離れも忍野君が寝泊まりしとったんやで」
「ふーん」
「ところで、忍野君は今、どこにおるんやろな?」
「えーっと……多分、静岡」
「なんでしっとんねん?」
「いや、こっちに来る途中、ヒッチハイクするサイケデリックなアロハを着たオッサンを拾ったら、忍野だった」
「ほんまか!そりゃ面白い事聞いた!暦、明日、静岡いこか!」
「え?」
「忍野君に会いに行くで」
「ええー!僕らまだ京都を廻ってないのに」
「無期限の旅やろ?遠回りせえや」
「は、はぁ」
旅は道連れとは言うが……酷い顔ぶれになってしまった。
車内で喧嘩が起きない様に祈るばかり。
運転中に喧嘩されたら、ガードレールにぶち当たって献花されるだろう。
翌朝、僕達は東に向かって走り出した。
某所
「はっ!眠っていた……すみません、戦場ヶ原先輩、つい眠ってしまいました」
「ええ、いいのよ。運転は一人でするものだから」
「えっと……今、どの辺でしょうか?」
「さぁ?」
「さぁ?…とは?」
「このナビ、何度も私に命令するから電源を切ったわ」
「……」
「ちょっと電源入れていいでしょうか?」
「いいけど」
ポチッ
「5kmサキ、ミギホウコウデス」
「ね、五月蠅いでしょ?」
「これは、ボイスナビゲーションと言いまして……」
「私は誰にも指示されないわ」
「いや、それだとナビの意味がぁ」
「ムニャムニャ―――もう着いたのですか?」
「おはよう、八九寺ちゃん」
「おや、まだ走行中ですか」
「うん……」
「ナビは……三ケ日?」
「うん……」
「質問していいですか?」
「ええ、いいわよ真宵ちゃん」
「どうして一晩中運転して、静岡に居るんですか!」
「疑問形になってないわよ?」
「いや、そういう問題じゃないと思われます」
「五月蠅いから―――ナビが五月蠅いから切ったらここに来てたのよ」
「はぁ……戦場ヶ原さんって本当に馬鹿ですね」
「ピキッ!」
「何今の音!飛び石?」
「神原さん、驚かなくても大丈夫です。戦場ヶ原さんがブチ切れた音ですから」
「いやいや、そっちの方が怖い!」
「もういいです、鰻食べて帰りましょう」
「いやよ、行くのよ大阪に」
「行ったところで、本当に阿良々木さんは居るんでしょうか?」
「え?」
「阿良々木さんは、全国を旅しているのですよ?もう岡山とか鹿児島とか、若しくは沖縄かも知れません」
「おお、成程。流石、八九寺ちゃん、頭いいな。ドライバーとは大違いだ」
ザクッ!
「はぅ!痛い!」
「それはそうよ、あなたの頭にボールペン刺したんだから」
「死ねます!あと5ミリ深かったら致命傷です!」
「あなた達に馬鹿にされた私は、既に死んでいるわ」
「ごめんなさい」
「ここで、大きくハンドルを切って道連れにしてやろうかしら?とも思ったわ」
「本当にごめんなさい」
「ところで、阿良々木君がどこに居るか調べなさい神原」
「はい……」
ピポパ
「もしもし、阿良々木先輩ですか?お久しぶりです。えっと今どのあたりを旅されていますか?―――ええ、ええ。ええ!マジですか……また電話します」
「どこって言ってた?」
「静岡……」
「神原、ここはどこかしら?」
「三ケ日です」
「真宵ちゃん、三ケ日は何県かしら?」
「静岡です……」
「ほらごらんなさい、私のする事に間違いは無いのよ!」
早朝、余弦に叩き起こされ、太陽が昇る前に出発したので、運転しながらも眠い。
「何故あんな早い時間に出たんですか?」
「あのな、京都は直ぐに道が混むんや。夜討朝駆けせんと渋滞に巻き込まれるやろ?」
「はぁ……」
「うちは渋滞が大嫌いなんや、なんかイライラするやろ?」
「まぁ、そうですね」
「そやから、ダッシュで出たんや」
「成程」
「そやから見てみぃ、8時の時点でもう静岡や!」
確かに、殆ど渋滞無くここまでやってきた。
忍と余接はまだ睡眠中。
余弦は運転する僕を気遣ってか、横で延々と話す。
少し五月蠅いぐらい。
運転中に電話がなった。
「もしもし?おお、神原!久しぶりだな。え?今?今は静岡だよ。丁度愛知から静岡に入ったところ。浜松に向かってるんだ、ん?ああ、またな」
「誰からだ?」
「後輩。今どこに居るかって聞かれた」
「あれやな、みんなおどれが居なくなってさみしなっとる頃やな」
「そうかな?何か企んでいるとしか思えないんだけど」
「それはそれでおもろいやんけ」
「まぁ、それはそれでいいんですけど、忍野がどこに居るか知ってるんですか?」
「しらん」
「ええ!」
「そやけど大丈夫、どうせどこぞの廃墟を塒にするからな、わはは」
余弦は大笑いしながら、携帯を取り出し何かを検索し始める。
「多分、ここやな……」
「分かるんですか?」
「まぁ、長い付き合いやしな。忍野君はああ見えて、寂しがり屋さんやから、人里離れたところには住まへん。コンビニとか風呂屋のある所を好む。かと言って、大通りに面した所も結界が張りにくいから、寄らん」
「へぇ、何か凄いですね。というか、余弦さんって結構忍野好きなんですね」
「ぼ、ぼけぇ!何寝ボケた事言うとんねん!///」
僕はその時、ああこの人は忍野が本当に好きなんだなと直感した。
「追いかけて20年ってところでしょうか?」
「アホ、まだ忍野君と知りおうて15年や!うちを何歳やおもっとんのや?」
(と言う事はこの人、33歳か……結構若く見えるな)
「若く見えるからといってときめくでないわ!」
目を覚ました忍がポソリと言う。
「あい、いや、そんなときめくなんて」
「お前様と儂は繋がっておる事を忘れるでないぞ」
「はい……」
忍が「儂ッ子」になった。
言いかえれば、怒ってるって事なんだよな……
「へぇ感覚の共有か。イク時は一緒に逝けていいね―――僕はキメ顔でそう言った」
「ぶっ!てめぇ!突然起き上って突然とんでもない事いうな!そんな姿で!」
「ひひひ―――僕はエロ顔で笑った」
このガキめ!本当に侮れんわ。
で、余弦に言われた所をナビに入れ、目的地に向かう。
三ケ日
「で、阿良々木君は浜松に向かうのね」
「はい、そう言っていました」
「では、私達も行くわよ」
「一応、ナビに場所を―――」
「不要よ。ここから先、私の勘だけで行くから」
「それは―――」
「戦場ヶ原さん、何度自殺するつもりですか!」
「あら、あなた達。私の勘を疑うの?」
「いえ、そういう訳ではないのですが―――」
「いい事神原。私が阿良々木君を見つけると念じれば、向こうから現れるわ」
「いや、去って行った人の事をそう力説されても……」
「危ない!神原さん!」
ブスッ!
「ひ、ひ、ひたいれす……」
「神原さん!口にシフトノブが刺さってます!というか、シフトノブに突っ込まされましたね」
「真宵ちゃんもあまり私を舐めない方がいいわよ?」
「は、はい……」
「では、念じます。阿良々木暦来い!」
―――沈黙。
「あはは、そう簡単に阿良々木先輩が現れる訳―――」
「あっ」
「どうした八九寺ちゃん」
「あの、その、右を見てください」
「あら!」
「うわー!」
「阿良々木さん!」「阿良々木先輩!」「阿良々木君!」
「うぉ!」
左の車に戦場ヶ原、神原、八九寺が見える。
八九寺が見えるのは久しぶりだな。
って事は、まだ帰りたくないって事なんだろうな。
そりゃそうだ、忍と楽しくやってるのにまた東に向いて走ってるんだからな。
なんて考えていると、忍はニコニコしている。
あー、本当にすっかり忘れてた。
感覚の共有、痛みだけじゃないもんな。
あながち、余接の云う所の……ま、それはいいか。
とりあえず、戦場ヶ原の車を追い抜き、走行車線へ入る。
バックミラーに映る戦場ヶ原の顔が怖い。
ピッタリ背後について―――もう少し車間距離を開けて欲しいぞ!
「戦場ヶ原先輩、もう少し車間距離を」
「誰かに割りこまれたらどうするの?」
「しかし、この状態はF1みたいになってます!」
「いいのよ、テールツーノーズで」
「私はツインテールです!ツーテールでは有りません!」
「何をお馬鹿なボケをしているの、このチンチクリン」
「!」
「驚いている暇があるなら、窓から箱乗りになって行き先を聞きなさい」
「無理です><」
「本当に役に立たないチンチクリンね。神原、サンフールが開いたわよ」
「わっかりました!」
「ん?うわぁ、神原の奴、サンルーフから上半身出してるぞ!」
「あはは、本当ね、暦君」
「何か言ってるのか?」
「さぁ?聞いてみようか?」
「おい、危ないって」
「大丈夫よ」
「なーにー?」
「どこいくのー?」
「なーにーきこえなーい?」
「だーからー、どこいくのー?」
「えー?なにー?ぜんぜんきこえないんだけどー」
「ど、こ、に、い、く、ん、で、す、か、?」
「あー。おしののところ」
「えー?なにー?わからなーい」
「お、し、の」
「はーあー?」
僕は携帯を取り出し、戦場ヶ原に電話する。
「はい」
「おい、そっちの五月蠅いのをひっこめろ、電話で用件言えばいいだろ?」
「あら、久々に電話してきたと思ったら、そんな事言うのね」
「何を言えば良いんだよ!」
「『僕を追って来てくれたのか』とか」
「何故そういわなければならない」
「別に」
「取り敢えず、次の出口で出るから付いてこい」
「わかりました」
「おい、忍。電話で話したから中に入れ」
「あー面白かった。久々に弾けたわ」
「弾け過ぎだ、事故でも起きたらどうする?」
「それぐらいで死にはしないわよ」
「そういう問題か?」
「どういう問題?」
「ったく。もういいよ」
「へへへ」
僕達は目的地付近の出口で降りる。
少し走り、コンビニの駐車場に車を止め、晴れて?旧友と再会する。
「やぁ、久しぶりだな」
僕は旧友に挨拶をする。
余接と余弦は、僕達を後目にコンビニに入り、買い物。
「で、神原。お前ら何やってんの?」
「実は、大阪に行こうと思ってたんですよ」
へぇ、大阪ってのは静岡を東向きに走らなきゃいけないのか?と僕は神原に聞く。
「いや、まぁ色々ありまして……」
何か非常に説明しにくそうだ。
「よぉ、八九寺。元気そうだな」
「阿良々木さん、お久しぶりです」
「本当に久しぶりだな。会いたかったぞこの野郎―――」
次の瞬間、忍のローリングソバットを食らい、コンビニの駐車場に突き刺さる僕。
額に伝わるジャリジャリ感が早朝からの眠気を払拭する。
「いってー!何すんだよ!」
「お前様こそ、何をしようとしたんじゃ!」
「あ、いや……挨拶を……」
「昔とは違う事を理解しておるか?」
「はい……」
また怒られた。
「あらあら、結局阿良々木君は『尻に敷かれる』のね」
戦場ヶ原。
「というか、なんでお前まで居るんだよ」
「私?私は二人の保護者よ」
「保護者ねぇ……差し詰め、春休みする事も無くて神原と八九寺の戯言に付き合ったんだろ?」
「違うわよ―――」
「で、お前が運転して、道に迷ったってところか?」
言い切ったところで、戦場ヶ原のひざ蹴りを食らい、後方に飛ばされ、後頭部で再びジャリジャリ感を堪能する。
「お前!酷いな!」
「酷いのは阿良々木君よ。私、車内でもこの二人に虐められていたのよ……」
半泣きの顔で僕に縋り、子ヤギの様な目で何かを訴える。
「はいはい、そこまで」
流石に、今度は僕に落ち度が無かったのか、僕と戦場ヶ原の間に忍が割って入る。
「人の彼氏に何をちょっかい掛けておるか」
「人?鬼でしょ」
「ほう。蟹女が言うのぅ」
「蟹……」
「蟹女、人の男を食らう気か?蟹だけに、カニバリズムか?」
「ふふふ、誰が面白く言えと言ったのよ」
戦場ヶ原が不気味な笑いを浮かべる。
冗談だと思うが、何か怖い。
というか、何か起こる!?
「先輩、それは何か新しいお祭りなのか?それとも音楽なのか?」
「多分、カーニバルで流す音楽の事なのですよ」
「へー、八九寺ちゃんは本当に何でも知ってるな」
「ええ、不詳八九寺真宵、知らない事は有りません。知ってる事が全てです」
色々間違ってるよ!フルネームなのに、どこの誰だか分からなくなってる!
「で、迷ったところで電話してきたのか?」
「まぁ、そんな所です、阿良々木先輩」
「どこに行くつもりだったんだ?」
「大阪です。阿良々木先輩が居るかと思って」
「はぁ?僕らは昨日まで京都に居たんだぞ?先に連絡ぐらいよこせや!」
「いやー、他に大阪の日本橋やソース川見ようって事で」
「ソース川か……」
「見られましたか?先輩」
「ああ、見たぞ。あれは本当にソースが流れてる」
「!!」
「ん?どうした八九寺?」
「川にソースなんて流れません」
「いや、本当にソースだって。なぁ、忍」
「うん、ソースだったよ」
「というか、何ですか、その話し方。変ですよ?もしかして阿良々木さんに調教されたんですか?」
八九寺、お前はそういう事を言わない方がいいぞ?
「このちっちゃい子、面白い事言うね」
忍は八九寺に近寄り、耳元で呟く。
「人間より、怪異の方が美味いと知っておるか?」
あー、やっちゃったよ。
で、言われた八九寺はベソをかきながら僕の所に逃げてくる。
「だーかーらー、なんでお前等は僕の所に来るんだよ!」
「え?そりゃ今でもみんな阿良々木さんが好きだからに決まってますよ」
「ええ、今でも阿良々木君の事が好きよ」
「うん、そうだ!あらららさんが好きなんです!」
八九寺、今ものすごく良いところなんだけど、なんで噛むかな?
「えへ、照れ隠しです」
「照れるぐらいなら、いうな!」
「まぁ、冗談はさておき、阿良々木君の事情もあるから忍ちゃんと一緒になったのは仕方無いけど、本当にみんな、あなたが好きなのよ。嬲っても死なないし」
こえーよ、戦場ヶ原。
そんな風に、久しぶり?に出会えた事を喜び騒いでいたら――買い物に来た人に注意されてしまった。
「なんだい君達?朝早くからコンビニの駐車場で騒いで、何かいい事でも……」
サイケデリックなアロハにボサボサの金髪と無精ひげ、首からクロスをぶら下げ、草履。
紛れも無く、忍野だった。
「あ!忍野!」
「はて?誰だい君は?」
「お前、もう僕の名前も顔も忘れたのかよ!」
「んー、ちょっと思い出すから待っていてくれるかな?」
「思いだすも何も……」
「いやー、僕は物忘れが酷い方でね。すぐに人の名前とか顔とか忘れちゃうんだよ」
「ほんの数週間前に会っただろ?」
「ああ、思いだした。信号待ちの車の中で彼女とチューしてた運転手君だな」
一同絶句。
「あの阿良々木さん、日中から何をされているのでしょうか?」
「阿良々木先輩、エロは夜だけにしろ」
「阿良々木君、私が教えたベロチューが役に立って良かったわね」
「暦君、それ誰としたのかな?ピキピキ!」
絶句の後にそれかよ!
ていうか、そんな事してねぇ!忍、お前が分かってるだろ!
「忍野、悪い冗談は止めろよ」
「いやー悪い悪い。阿良々木君、久しぶりだねぇ。何かいい事有ったかい?というか、状況見る限り、『男』ななったみたいだねぇ」
「―――朝から何の話してんだよ!」
「それより、忍野はこの辺に住んでるのか?」
「ああ、そこのインターの裏に廃校になった小学校があってね」
「お前、学校とか塾とか好きだな」
「ああ?まぁ、色々事情があるんだよ」
「そうか。ところで今日は忍野に用があって来た」
「僕に用事?何かまたややこしい事でも起こしたのかい?」
「いや、僕達は特に何も関係ないんだけど―――」
「関係ないのに来たのかい?」
「というか用がある人がいるようで」
「用がある人?」
バサッ
コンビニの袋が落ちる音で忍野が振り向く。
「あ―――」
忍野絶句。
「忍野君!」
余弦がコンビニのドアから走り、忍野に抱きつく。
「おいおい、みんな見てるのに、破廉恥だな君は」
「なにゆうてんの!ずっとほったらかして!」
「いやー悪いね、色々と毎日が面白過ぎて」
「そんなにおもろいんか?毎日が?」
「ああ、飽きないねぇ。バランスを取るのは」
「ほんまに……この人は」
「で、今日は用って何だい?」
「連れに来た」
「あはは、面白い事を言うねぇ、君は」
「いい加減、おちつかへんの?」
「うーん、なんていうか―――」
「それともうちの事、嫌いなんか?」
「いやぁ、今でも―――今日はギャラリーが多いからその話はまたにしよう」
「いやや、今日返事聞くまでうちは離さんで」
「おいおい……」
あんな困った顔の忍野を見るのは初めてだった。
というか、ギャラリーと呼ばれた僕らは駐車場の隅で一列になって座っていた。
「なぁ、余接。あの二人はどういう関係なの?」
「あの二人は、恋仲。婚約までしてた―――僕はキメ顔でそう言った」
「ふーん、忍野さんが婚約ねぇ。それって詐欺じゃないの?」
戦場ヶ原は本当に詐欺って言葉が好きだな。
「いや、相思相愛。しかし、職業に難がある―――僕はキメ顔でそう言った」
「職業?」
「お姉さんは陰陽師、それも始末する方の。片や忍野さんはネゴシエータ―――と僕はキメ顔でそう言った」
「ああ、そう言えば前にそんな事言ってたな」
「そう。だから一緒にいると辛い―――と忍野がキメ顔で言った事を僕がキメ顔で説明した」
「ふーん……で、あの二人に未来は?」
「さぁ?あの人は退治とか好まないから、お姉さんが辞めるか忍野が辞めるか―――僕はキメ顔でそう言った」
「まぁどっちも生甲斐みたいなものだしな」
「じゃ、あとは大人の二人に任せて帰るか」
と立ちあがると、僕の裾を掴む余接。
「ここで帰られたら、帰りの電車賃が無いので困る―――僕はキメ顔でそう言った」
「無賃で旅するな!」
とりあえず、忍野と余弦の話し合いが終わるまで待つとするか。
僕らはコンビニでジュースやお菓子を買い、また一列に並んで座り、ギャラリーに徹する。
で、3時間。
「まだやってるよ……」
「15年越しの関係なので、3時間で結論が出るとは思えない―――僕はキメ顔でそう言った」
「ま、それもそうだな」
忍は日差しが強くなって、影に逃げ込む。
八九寺と神原は車で昼寝。
戦場ヶ原に至っては、駐車場の隅で筋トレをしていた。
それ以上強くなって何と戦う気だ?
「このままじゃ埒が明かないだろうし、どうする?」
「お任せします―――僕はキメ顔でムニャムニャ……」
「寝てるのか!寝ながら返事すんなや!」
で、待つ事5時間。
結局、一日の大半をコンビニの駐車場で過ごす。
そろそろ空が陰りを見せる頃、二人の話が終わったようだ。
「でぇ、お前らどうすんの?」
「あー、阿良々木君、今回は僕の負けだよ」
「お?ついに観念して京都で大人しく暮らすのか?」
「どうして君はそう短絡的なのかねぇ」
「え?」
「別に結婚する訳じゃない。一緒に行動するだけさ」
「ふーん……それでお前はいいの?」
「仕方が無いさ。男たるもの、時には覚悟を決めないと―――」
と言いながらも忍野は何か嬉しそうだった。
「やれやれ、やっと元の鞘に戻ったか―――と僕はキメ顔でそう言った」
「なんだ、起きてたのか」
「ああ。あの二人、本当に世話が焼けて困る―――と僕はキメ顔で」
「何をさっきからブツクサゆーとんねん、ほな行くで」
余接の頭をグリグリと撫でながら余弦が声を掛ける。
「えっと、どこに?」
「みんなで、パーっと遊びに行くで」
「ええ!」
「いつも貧乏な忍野君が50万も持ってたから、みんなで遊びにいこ!」
というか、500万の金が1年足らずで50万かよ!
どんな生活してんだよ!
「で、どこに行くんですか?」
「せやなー、どこいこか?うなぎ三昧するか?浜松やし」
「蟹」
駐車場の片隅で筋トレをしていた戦場ヶ原が皆を見据えて言う。
「蟹を食べに行くわ」
「おお、蟹かぁそらええな。ここから北陸まで4時間でいけるやろ」
「おいおい、僕は蟹が嫌いだって知ってるだろ?ツンデレちゃん」
「だからよ、だから蟹なのよ」
「嫌がらせかい?」
「ええ、あなたの仕込んだ50/50のゲームの仕返しをしなくっちゃね」
「なんや、このお嬢ちゃんに恨みこうとんか?」
「あー、もしかしてそうかも」
「忍野さんのせいで、忍野さんのせいで……」
「ツンデレちゃん、あれはバランスを取っただけだよ。全てのバランスをね」
「ふん!」
「ほんまに忍野君はバランス派やな」
「一番楽しいんだよ見てて。均衡を保った状態が、ほんの少しの重みや動きででバランスを崩す瞬間がね」
僕はその時初めて、忍野の本性を垣間見た気がした。
ネゴするなんて嘘っぱちだと言う事が。
「じゃ、別れて車に乗って」
で、ここからまた大変。
僕と忍はセット。余弦と余接はセット、そこに忍野。
全部で8人(人でいいのか?)
僕と忍の車に神原と八九寺を乗せると、戦場ヶ原の車にあの3人。
が、戦場ヶ原がそれでは困るというので、神原と余接を交換しようとしたら、余接が拒否。
最初の乗員に忍野を足すと、僕の車が5人で窮屈。
で、結局この話し合いにまた4時間。
本当にこいつら馬鹿だ!
今回のオチというか、おとしまえ。
結果、忍野が僕の車に。
戦場ヶ原の車は、元の3人。
忍は残念がら10歳の状態に戻し、後部座席で忍野と余接と座らせる。
勿論、忍野が真ん中。
二人が喧嘩しないようにと云うか、忍野が逃げない様に。
僕はカーナビに目的地を入れる。
勿論、戦場ヶ原の車にも。
で、出発して4時間後。
「もしもし、阿良々木先輩?今どこですか?え?到着した?速いですね!」
「お前等はまだか?」
「それが……気付いたら家の前です」
「はぁ?」
「なんでだよ!」
「その……戦場ヶ原先輩が『眠い』そうです」
やれやれ……本当に勝手な奴だ。
というか、どいつもこいつも僕も自分勝手、自分中心。
自分中心の癖に他人が好き。
本当に馬鹿ばかりだ。
こんな愛される馬鹿は世間に知らしめた方がいいな。
僕も神原に倣って、本を書こうか?
今まで有った事を物語風に。
「ばかものがたり」
少しタイトルに難があるな。
「ばけものがたり」
うん、これがいい。
そうしよう。
ちなみに、メインは余弦と忍野の恋物語、売れるかな?
売れたら印税で何買おう?
家とか船とか車とか?
考えただけで笑いがこみ上げてきた。
「イヒ」
おわり
488 : VIPに... - 2010/09/16 10:55:13.93 MzG2xoAo 68/68あとがき
これまで沢山の声援や指摘、本当にありがとうございました。
読んで貰えて本当に嬉しいです。
私の化物語はこれで一旦おしまいです。
まだまだ容量はありますが、1000行くまでに500KB越えそうなので、次回作は新スレにて。
今回のお話とは全く違うシチュエーションで下書きに入りました。
少しエッチだけど純粋な、とある姉妹をモチーフに、兄物語なんてのもいいかなと。
他に四畳半SSなんかも考えていますので、また縁が有ればお読みください。
以下、レスへの返答にて候