僕は誰かの膝の上で眠っていたようだ。
ぼんやりとした光が眼球の奥に届く。
「阿良々木さん、お目覚めですか?」
「ん?」
「私が分かりますか?」
「八九寺?」
「正解です」
「あれ?僕なんでこんな所で寝てたんだ?」
「まだ記憶が戻ってないのでしょうか?」
「記憶?」
「少しづつ説明しますから、よく聞いてください」
「あ、うん」
「まずはですね―――阿良々木さんは死んでいます」
「はぁ?悪い冗談だな、夢でも見ているのか僕は」
「現実逃避する気持ちは分かりますが、阿良々木さんはもう死んでいるのです」
八九寺がうっすらと涙を浮かべる。
「あはは。八九寺、手の込んだイタズラは止めようぜ、今なら全部許してやるから」
「嘘でも―――いたずらでもありません」
元スレ
阿良々木「何の真似だ」***「ふっ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1282212719/
「何で僕が死ななきゃならないんだよ!」
「そ、それは……私にも分かりません。ただ、一昨日道端で阿良々木さんを見つけ介抱していたのです」
「死んだ証拠ってあるのかよ?」
「では、その証拠を見せましょうか?」
「証拠?」
「ええ、証拠です」
僕は八九寺言われるまま立ちあがる。
「阿良々木さん、まずはそこの電柱に思いっきりパンチを入れてください」
「手が折れるだろ!」
「折れません」
「じゃあ、お前が見本見せろよ」
「いいですよ。瞬きせずしっかり見ていてください」
「どうせ、『うぎゃー!手がいたい!』と叫ぶだけだろ」
「いきますよ」
八九寺は電柱に向かい、パンチを繰り出す。
その手はまるでそこに何もないかのように空を切る。
「触ろうと思わなければ、触れないんですよ」
こちらを見て、少し自慢げに話す。
「では、阿良々木さんもどうぞ」
「もしそうなったら……僕は―――」
「死んでいるという事になります」
「あはは、馬鹿だな。僕が死ぬ理由なんてないじゃないか」
何気に僕は電柱に手を掛ける。
が、その手は何も支えられず、僕の体は横を向く。
「ほら、ね」
「こんな事って……」
「阿良々木さん、現実を受け止めてください」
「待ってくれよ」
「まだまだ話す事が沢山ありますから」
「こんなの嘘だろ」
「あ、ちなみに『立つ』と思ったので地面の上に立てますが、潜ろうと思えば土の中でも壁の中でも入れます」
「いや僕が死ぬ理由なんてないじゃないか。それに死んだ覚えは無い」
「あのですね、阿良々木さん。死んだ時のショックで記憶が無い事は多々あるんです。」
「かく言う私も、最初は車に轢かれた事なんて覚えていませんでした」
「くっ……」
何故か涙があふれ出た。
「とりあえずこうしていても仕方がないので行きますよ」
「どこに?」
「いいですから」
八九寺に手を引かれ、向かった先は自宅。
「阿良々木さん、玄関をよく見てください」
「ん?えっと……」
『忌』の紙が貼ってあった。
「えっと、斎場はこの先のようですね」
「八九寺、行かなきゃならないか?」
「阿良々木さんが、自分を見たくないなら行かなくても良いです」
「……」
「でも、行けば忘れている記憶が蘇るかも知れませんよ?」
「ちょっと考えさせてくれないか?」
「まぁ、別に構いませんが」
僕は行くべきか、行かざるべきか考えた。
そもそも死んだ事すら信じられないのに。
「阿良々木さん、葬儀は12時からですよ。急がないと……」
「五月蠅い!」
「ひぃ!」
「ちょっと待ってくれ」
「はい……」
僕は関係の無い八九寺に怒りをぶつける。
なんかダサいな。
そもそも何で死んだ?
病気?事故?あれ?本当に何にも思い出せないぞ
いつまで生きていたんだ?
最後に会ったのは誰だ?
何も思い出せない。
もしかして葬儀に来ている学友を見れば思い出すか?
「よし、八九寺行くぞ」
「やっとその気になりましたか」
「僕は自分の記憶を取り戻す」
「あ、言っておきますけど、万が一記憶が戻っても成仏できる訳じゃありませんから」
「は?」
「地縛霊とか浮遊霊になっている阿良々木さんはこの世界に未練があるんで、それが断ち切れるまではあの世には行けませんよ?」
「へぇ……流石経験者だな」
「えへっ」
「えへっ!じゃねーよ」
「とりあえず急いで行きましょう。みんなの話を聞けば死んだ理由も分かるでしょう」
「ああ」
八九寺と斎場に着いたのは、12時少し前だった。
喪服に包まれた人々が集まっている。
「阿良々木さん、こんな事言うの失礼ですが―――あまり制服の人いませんね」
「ああ、僕は学校では影が薄いというか、恐れられてたからな」
「馬鹿が伝染るからですね」
「何!」
「違うのですか?くくく」
「ちょっと人と違っただけだよ」
「ここで話していても仕方ありません。中に入りますよ」
八九寺は堂々と中に入る。
僕は八九寺の後ろに―――隠れる様に入る。
「大丈夫、誰にも見えませんから」
「でも、羽川にお前は見られるだろ?」
「心配要りませんよ。羽川さんは私の事、怪異だと思ってませんし」
「そっか」
僕は変に納得してしまう。
多分、気弱になってるからだろうな。
で、悲しい雰囲気の中に足を踏み入れる。
自分のモノクロ写真が飾られた祭壇はいい気がしない。
「あら、阿良々木さん。結構イケメン写真ですね」
「まぁな、元がいいからな」
「そこは謙遜してください」
「はい」
祭壇の前には家族がいた。
みんな暗い顔をしている。
「阿良々木さん、自分を見てみますか?」
「いや……いい」
重い空気が会場内を包む。
「なぁ八九寺、お前はどう思う?」
「何がですか?」
「僕が死んだ理由」
「さぁ、分かりかねます。でも、みんなの話を聞けば分かるんじゃないですか?」
「そうか」
「あ、戦場ヶ原さんですよ」
戦場ヶ原は黒いワンピースを着、椅子に座り暗い顔をしている。
その横には羽川。
反対側には神原がいた。
一列後ろに千石の姿もあった。
その他に何人かの友人がいた。
僕は彼らの後ろに立ち、様子を伺う。
「なぁ、阿良々木殺した奴、まだ捕まってないんだろ?怖いよね」
「通り魔って話じゃん」
「そうそう、新聞にも載ってたしな」
「でも、噂だけど―――体の一部が切り取られてたって」
「マジかよ?」
「詳しい事は分からないんだけどね」
噂にしても怖すぎる。
というか、僕は事故ではなく、殺されたのか。
その犯人は未だ捕まっていない。
「阿良々木さん」
「なんだよ」
「これが現実です」
「ああ、言われなくてもな」
坊主が経を読み、焼香され、滞りなく行われた。
出棺の時間になり、僕が入った棺が運び出される。
「最後のお別れを―――」
アナウンスの後、棺の蓋が開けられ皆が花を入れる。
そこに横たわっていたのは、紛れもなく『僕』だった。
「阿良々木君……色々ありがとう」と羽川が花を添える。
「暦お兄ちゃん……さようなら」と千石。
「先輩、向こうで待っていてくれ。いつか私も……」そこで声を詰まらせる神原。
「ねぇ阿良々木君。今なら冗談でしたと言って起きても良いのよ?ねぇ、阿良々木君……」
戦場ヶ原が棺の横で大粒の涙を零す。
「阿良々木君!起きてよ!」
周りがますます重い空気に包まれる。
「阿良々木君……ねぇ、阿良々木君!起きてよ!ねぇったら!私を置いて行かないでよ!」
その場で泣き崩れる戦場ヶ原。
羽川がそっと手を差し伸べ、棺に倒れ掛かる戦場ヶ原をなだめ、神原と二人して抱きかかえた。
戦場ヶ原の声が、会場に嗚咽を呼ぶ。
『御出棺です』
寝台車に僕の身体が収められた棺が載せられ、扉が閉まる。
長いクラクションを鳴らしながら、車は動き出し視界から消えた。
「なぁ、八九寺。僕はこれから犯人を探そうと思うんだけど、その前に色々と知りたい事がある」
「はい。なんでしょうか?」
「この世界の生き方」
「死んで生きるというのは変な話ですが、この世界にもルールはあります」
「じゃあ、まずはそれを教えてくれないか」
「いいですよ」
僕は斎場をあとにした。
近くの公園に到着し、八九寺とベンチに腰掛ける。
少し冷静になったのだろうか?
今まで見て来た事を理解できた瞬間、体の震えが始まった。
やっと受け入れた現実。
さっきまではまるで他人事のように感じていたが、今自分の事であると感じ震えが止まらない。
八九寺の声が耳に入るが、何も話せなかった。
涙が落ちる音と嗚咽だけがその空間を支配した。
少しして落ちつきを取り戻す。
そして―――何か体が熱い。
「今日、暑くないか?」
「恐らく―――今、阿良々木さんの本体が焼かれているのだと思います」
「マジかよ」
「一応、多少の感覚の繋がりはありますからね」
「そうなんだ」
「ですから、さっきの話のどこか切られた所も痛い筈ですが」
「ああ、それなら―――いや、いいわ。やめておく」
「え?」
「あまり人に言える様な所じゃない」
「はぁ……何となくそれでわかった様な気がします。とりあえず今は、少しゆっくりしましょう」
どのくらいの時間そうしていたんだろう?
正直、こっちの世界は時間の概念が無い様な気がする。
朝昼夜、それだけを感じる程度。
「阿良々木さん、落ちつきました?」
「ああ」
「では、まずは生き方というか暮らし方ですが……」
「頼む」
「頼む?人に教わる態度じゃないですね」
「何!?」
「今日から私を『先生』と呼びなさい」
「なんでそんなに上から目線なんだよ!」
つい、パンチが出てしまった。
「痛い!」
「あれ?」
「ど、どうかしましたか?」
「霊は霊を触れるのか?」
「ええ、意識せずとも触れますよ。同一世界の存在ですから」
「へぇ」
「では、大事な事だけまずは教えます」
「ああ」
「まず、テリトリーがあるので、他の霊のエリアには立ち入らない」
「エリア?」
「そうです。要は家の様なものです」
「そっか」
「あと、無暗矢鱈と人間と交わらない」
「うーん、それはどういう意味?」
「干渉しないと言う事です」
「ああ、お前が俺達を遠ざけようとしたアレか!」
「そうです。中には見える人がいますからね」
「分かった」
「あと、物を触るのは必要最小限で」
「触れるのか?」
「ええ、触れますよ」
「どうやって?」
「練習して」
「練習?」
「ええ、呼吸するように。無意識で」
「他は?」
「無いです。練習あるのみ」
「分かった」
「ここに石を置きますから掴んでください」
「わかった」
が、何度やっても手は空を切る。
「もっと集中して。でも意識しては駄目」
何度やってもダメ。
「阿良々木さん、今どこに座ってます?」
「ベンチ」
「そこに座ろうと意識してます?」
「いや、ベンチに腰掛けただけ」
「それと同じで、無意識の動作をするんですよ」
「なんか難しいな」
「まぁ、馬鹿には出来ませんよ」
「何!」
「やーい!阿良々木さんの馬鹿ぁ!ベェー!」
「この野郎!」
走って逃げる八九寺。
つい、僕は目の前にあった石を掴み、投げつける。
石は八九寺のリュックに当る。
「阿良々木さん、石を人に投げるなんて危ないじゃないですか!」
「え?ああ、ごめん。というか、投げた?」
「みたいですね」
分かった様な分からない様な。
それから何度か、どのくらいだろう何度か日が昇り、日が沈む。
ずっと公園で石投げの練習をしていた。
「かなり投げられますね。もう100回中99回は投げていますよ」
「流石に疲れたし、お腹が……あれ?あまり減ってない?」
「ええ、霊になったら基本的にお腹は空きません」
「お前、前に『私はお腹が減りました』って言ってなかったか?」
「そういう気分と言うか、アイスが欲しかっただけと言うか…」
「お前!騙したな」
「にひひw」
すっかり騙されていたな。でもこの世界、八九寺がいるからこそ、僕の精神は保たれている。
万が一、一人だったら……
「では阿良々木さん、阿良々木さんのエリア確保に行きますか?」
「ん?」
「殺された場所ですよ」
「え?ここじゃ駄目なの?」
「基本的には死んだ場所がエリアですから」
「そっか。で、場所はどこ?」
「さぁ?それが分かれば良いんですけど」
「じゃあ、動きようがないじゃないか」
「いえ、普通に自分で彷徨うか、何か情報を探せばいいんじゃないですか?」
「情報ねぇ」
「一番てっとり早いのが警察です」
「警察?」
「事件ですからね。私も警察で調べましたよ」
「どうやって?」
「どもこうも、行って見るだけ」
「まて、不法侵入で―――ああ、そうか」
「にひ、そういう事です」
「じゃあ、善は急げだ。行こうか」
僕らは警察署に行き、中を徘徊する。
「なんか不思議だな。誰もこっちを見もしない」
「ん?そんな事無いですよ」
「君たち、どこに行くんだい?」
一人の警官から声が掛かる。
「うわぁ!」
「驚かなくても良い。俺は君たちと同じだからな」
「阿良々木さん、心配しなくても大丈夫です。この人も霊ですから。
所長の悪行を掴んでリークしたら、左遷で……
悔しくてトイレで拳銃自殺された方ですから」
「はぁ……」
「まぁ、一つよろしく頼む。で、今日は何の用だね?」
「こちらの阿良々木さんの殺害現場に付いて調べようと」
「ああ、1週間ぐらい前のあれか。あれなら誰でも知ってるさ。**ビル。閉鎖になった学習塾跡。知ってるかい?」
「知ってるも何も、よく行ってました」
「で、殺された」
「そうなんだ……」
「本官さん、阿良々木さんは事件前後の記憶が無いんですよ」
「それは大変だな。多分、行けば戻るんじゃないのかな?」
「そう、ですか……」
結構親切だなこの人。
「じゃ、気をつけて行ってきな。阿良々木暦君」
「はい」
「結構有名みたいですね。フルネームで呼ばれて」
「ああ、みたいだな」
僕と八九寺は警察を出て、学習塾跡へ向かう。
ところどころで、八九寺が人と挨拶をする。
「あれは皆、霊ですよ」
「へぇ。でも良いのか声かけて」
「挨拶ぐらいはこの世でもありますから」
「そっか」
「それに大事な情報元なのですよ」
「何の?」
「まぁ色々―――」
「色々ねぇ」
「ええ、色々です」
小一時間歩いて、僕らは学習塾に到着した。
「入りましょう」
「あれ?前は開いてたドアが板で塞がれてる」
「ああ、事件後閉じられたんでしょう」
「どうする?」
「どうもこうもありませんよ。入りますよ」
八九寺はそのままドアをすり抜けて入る。
ああ、そっか…
僕も続いて、ドアをすり抜ける。
「なんか不思議な感覚だな」
「物体が目を横切る時、一瞬ブラックアウトしますからね」
「だな」
「さて……上がりますよ」
「お、おう」
階段を上がり、忍野がいた部屋に入る。
床には白墨で書かれた僕サイズの絵があった。
「ここですね」
「ここだな」
「何か思い出しました?」
「全然」
「そうですか。まぁそのまま居ればそのうちに」
「分かったよ」
「じゃ、また遊びに来ますから」
「帰るのかよ?」
「ええ、一人の方が何か思い出すんじゃないでしょうか?」
「そっか」
八九寺はそのまま、床に潜り、消えてしまった。
霊ってのは結構便利なものだな。
さて、何から始めようか?
僕はビルの中を行ったり来たりする。
「ここは神原と戦った部屋だな」
「ここは忍ちゃんがいつも座ってた」
「ここは……」
段々と虚しさが募る。
あーだりぃ、今日はもう寝る。
忍野の様に並べた机に寝ころび、ゴロゴロする。
そのまま、僕は眠ってしまった。
「阿良々木さん、お久しぶりです」
「ん?おお八九寺!寝てたよ」
「どんだけ寝てるんですか?」
「え?」
「1週間ぶりに来たんですけど……ずっと寝てたんですか?」
「1週間?!」
「正確には6日と19時間ですが」
「そんなに!」
「その様子だと、まだ何も思い出してない様ですね」
「ああ……」
八九寺と話していると、外の方で何か気配がした。
階を下り、表に出るとそこには羽川や神原、そして千石がいた。
柵の前で献花していた。
「みんな……」
「あ、でも阿良々木さんの元彼女がいませんね」
「なんだよ元って」
「だってそうじゃないですか」
「そりゃそうだけど」
何か釈然としない。
「戦場ヶ原さんはどうしているんでしょうか?」
「さぁ?」
「逢いたいですか?」
「え?」
「逢いたいなら見に行けば?」
「でも……」
「見るだけならいいんじゃないですか?」
「うん……」
「では、また」
そういと、八九寺は小走りで帰ってしまった。
柵の前で献花し、手を合わせていた3人の話を聞く。
「阿良々木先輩を殺ったのは誰なんだろう?」
「今、警察が調べてるんだよね?」
「遺留品が無くて捜査は難航しているそうよ」
「早く捕まれば良いのに。暦お兄ちゃんの無念を晴らして欲しいよ」
「私たちには何も出来ないよ。それに……一応ここは事件のあった場所だし日も暮れるし帰りましょう」
「また犯人が来たら私が返り討ちにしてやりますよ」
「危ないよ。阿良々木君はああ見えて強かったのに……」
「うん、暦お兄ちゃんは強かったよ」
「そっか……じゃあBダッシュで退散だな」
僕は3人を見送る。
ありがとう、来てくれて。
また僕はそこで突っ立ったまま、幾ばくかの時間を送った。
「さて……」
僕は一度3階に戻り、机の上に寝転がり考え事をする。
そんな風に考え事をしているうちにまた眠たくなってきた。
が、落ちたガラスを踏み割る音で目が覚めた。
「ん?誰か来た?」
その姿をみて僕は驚愕する。
「ん?そこに誰かいるのかい?」
独特の言い回し、勿論何度も聞いている声。
でも、僕は八九寺に言われたように、交わらない様心掛け、恰もそこに居ない振りをした。
「おや?元気なさそうだね。何か悪い事でもあったのかい?」
新しい。
非常に斬新に聞こえるその言葉。
つい、反応してしまう。
「やぁ、誰かと思えば阿良々木君じゃないか」
見えてる?!
それでも僕は何も反応せず、知らない振りをする。
「おいおい、阿良々木君。僕の事を忘れちゃったのかい?」
歩み寄る男。
いや、忍野。
何度となく助けて貰った忍野メメ。
「阿良々木君、少し見ない間に影が薄くなったんじゃないか?」
「どうしたんだい?何も言わなきゃ何も分からない」
「うーん、阿良々木君。死後の世界はどうだい?」
こいつ、全部知ってるんだ。
その瞬間、僕は机から飛び降り、忍野の前に立つ。
「やぁ、やっと意識してくれたね。僕はね、普通の人と違って『見えてるんだよ』阿良々木君」
「そうかい」
「お、やっと喋ったなぁ。忘れられたかと思ったよ」
「で、何の用だ?」
「おいおい、つれないねぇ。何度も一緒に死線を潜り抜けた仲なのに」
「別にお前と戦場に行った事はねぇよ!」
「ま、冗談はさておき―――阿良々木君、一応僕は容疑者なんだ」
「はぁ?」
「知っての通り、長い間ここ住んでいたからね」
「ふーん」
「で、今から出頭。勿論、君が殺された時、別の場所に居てアリバイはある」
「そっか」
「それに、僕が阿良々木君を殺める理由が見つからない」
「まぁな」
「で、とりあえず―――どうする?」
「どうって?」
「阿良々木君はこの先、どうしたいんだい?」
「犯人を見つける」
「ほう、勇敢だねぇ。もしそれが怪異でも?」
「今回僕が死んだのは怪異がらみだと?」
「いや、まだ確定はしてないんだけどね。怪異なら―――力になってもいい」
「人間だったら?」
「何も出来ないさ。出来て説教ぐらいだろう」
「ふーん」
「じゃ、とりあえず行ってくるわ。また数日したら来るからさ」
忍野はそう言って、部屋から出て行ってしまった。
僕を殺したのは誰なんだ?
ますます分からなくなってしまった。
まさか、怪異?
ぼんやり考えながら僕はまた眠ってしまった。
数日して、忍野が再びやってきた。
「久しぶりだな」
「やぁ。元気そうで何より。それより阿良々木君、痛かっただろう?」
「何がだよ」
「何って……コホン」
忍野は小さく一つ咳ばらいをし、話を続ける。
「警察で取り調べ中に色々と耳に入った情報を整理したら、死因が判明してね」
「僕はどんな風に殺されたんだ?」
「基本的に絞殺」
「絞殺?」
「そう。それから……一部切断と、心臓への直接攻撃」
「色々と酷いな」
「色々酷くないと阿良々木君は死なないだろ?」
「まぁある程度やらないと再生するからな」
「呼吸を止められちゃ、流石にヤバい。殆ど仮死状態での心臓への攻撃でトドメ」
「そして性器除去」
「いうなー!」
「で、一つ言えるのはこれは怪異の仕業ではない」
「そうなんだ」
「阿良々木君、何か対人関係で恨まれてないか?」
「別に僕は……」
「まぁ、君がそういうなら大丈夫だろう。ただ、今回の件僕には何も出来ないんでこれでお暇するよ」
「え?」
「前に言っただろ?人間相手じゃ説教するのが関の山だって」
「ああ」
「それと、今回の件は結構阿良々木君のウィークポイントを知っている人間だろう」
「それって……」
「そう多くは無い。それを阿良々木君は知りたいかい?僕は知りたくないねぇ」
「でも―――」
僕の言葉を遮るように、忍野は語りつづける。
「この町での思い出は、既に美化されているんだよ。面白い高校生達と面白く過ごした、とね」
「じゃあ何も手助けしてくれないんだ」
「そういう事。冷たい様だけど、逆に言えば僕にはそれしか出来ないって事なんだよ」
「……」
「ここから先は阿良々木君次第。真実を知り、復讐するもよし、このまま知らずに彷徨うもよし」
「そうかい……分かったよ」
「そうそう、一つだけ力になれるが?」
「なんだよ」
「今すぐ成仏したいってのなら協力はする。これだけは勝手にって訳にもいかないからね」
「いや、それはいい。僕には知る権利がある」
僕は即答した。
「くくく、あはは!阿良々木君らしいや」
「笑うなよ」
「だって、そんな真顔で言われちゃ笑うしかないだろ」
「チッ……」
「知る事で不幸になるかもしれない。それでもってんなら頑張りなよ阿良々木君」
「ああ」
「じゃ、僕はこれで失礼するよ。もしその気になったら僕を探せばいい、成仏させてあげるよ、タダで」
「ああ、その時は頼む」
「じゃ」
軽く手を上げ、忍野は去っていった。
珍しく挨拶らしい物を残して。
僕は忍野が去った後、何か思い出せないかと色々と思考を張り巡らす。
最後の記憶は何だろう?
大したイベントもなく、学校帰りに何かあったとしか考えられない。
と、そこに八九寺がやってきた。
「阿良々木さん、何か思い出しました?」
「いや、全然。全くと言って心当たりがない」
「そうですか。とりあえずまたあの人の所に行きましょう」
「あの人?」
「警察署ですよ」
「ああ、あの本官さんか」
八九寺に誘われ、また歩いて警察署に向かう。
「こんにちは」
「やぁ、お嬢ちゃん。それから阿良々木暦君」
「なんかフルネームで呼ばれていますね」
「だな」
「今日はどうしたんだい?」
「やはり何も思い出せなくて」
「そうか。先日は参考人が取り調べられていたが、シロだったみたいだな」
「忍野ですね」
「なんだ、知り合いかい?」
「ええ、何度か助けて貰ってます」
「へぇ……何となく悪人の風貌だったが」
「ああ見えて、結構いい人なんですよ」
「そうか。そりゃ悪い事を言った」
「いえ……」
「で、今日は?」
「本官さん的に、今回の事件はどう思われますか?」
「どうとは?」
「その殺し方とかで……」
「ああ、まぁ私怨の線が濃厚だろう。通り魔的な殺人だと部位切除なんてありえないし」
「ですよねー。と言う事で、阿良々木さんは誰かに恨まれていたと」
「阿良々木暦君、その辺に付いてどうだい?」
「正直、人に恨まれる様な事は無いと思います」
「へぇー」
「まぁ自分で言うのも何ですが、人畜無害な方です」
「そうか。しかし、人ってのは自分が何とも思わない事を恨んだりするものだ」
「でも……正直、あまり友人も多くなくて―――」
「ああ、悪い。それ以上は言わなくていい」
「あ、はい、すみません」
「あとは……女性関係」
「女性関係はドロドロですよね、ドロロギさん」
「なんでそこで噛むんだよ!」
「いえ、ここまで噛まずに頑張ってきたと褒めて欲しいです」
「じゃ、今のはワザとなんだな!」
「勿論です!」
「言い切られた!」
「ほう、結構ドロドロなんだ?」
「そんな事ないです」
「でも、お嬢ちゃんの言うのと話が違うじゃないか?」
「本官さん、僕には彼女がいまして……他の人と遊んだりはしていません」
「ふーん」
「何だよ八九寺」
「その割に、私に抱きついたり、羽川さんとキスしようとしたり、神原さんと腕組んで歩いたり色々してますよね?」
「ほぉ、それは興味深い話だ」
「ちょ、それは全部誤解だ。お前とはじゃれ合ってるだけだし、羽川のは僕がからかわれ、神原のは戦場ヶ原公認だ。というか、何で知ってる!?」
「情報網を舐めないで下さいよ」
「一応理由はあると言う訳だ」
「ええ、あります」
「が、それは当事者間の話であって、第三者にはそうは見えない」
「え?」
「例えば、君がその神原さんだっけ?と腕を組んで歩いていた。それを見た第三者は―――」
「ドロロギさんが浮気していると思う訳ですね」
「お嬢ちゃん、ご名答。小さい割に利口だね」
「見た目は子供、頭脳は大人ですから」
「で、話は戻るが―――」
「戻るんですか!」
「落ちつけよ八九寺。誰もが突っ込んでくれる訳じゃない」
「フンッ!」
「いいかな?」
「あ、はい」
「浮気していると思う訳だ。ここで考えられるのが―――」
1 浮気ぽい男→軽蔑される
2 彼女に言いつけてやる→尾ひれ背ひれが付いて話が大きくなり誤解が生まれる
「軽蔑されても殺されはしないよね、普通」
「はい」
「この線で考えるなら、阿良々木暦君に彼女がいるのに、他の女性と仲良くしていると
いう話が彼女に伝わり、彼女が阿良々木暦君に憤慨し、殺害したという線はどうだろう?」
「あー……ないとは言い切れない話です」
「まぁ、それが普通だろうね。これだと、犯人は一人しかいない」
「戦場ヶ原さんです。犯人は!」
「何で決めつけるんだよ!八九寺!」
「今の理論だと戦場ヶ原さんでビンゴじゃないですか!」
「でも、葬儀の時の戦場ヶ原を見ただろ?」
「でも、お花を供えにきませんでしたよ?」
「あと、あいつ一人で僕を倒すなんて無理だろ?」
「それは……色仕掛けで!」
「お前は変なとこだけ大人だな、おい」
「まぁまぁ、そう思うなら一度彼女を観察してみたらどうだい?」
「阿良々木さん、そうしましょう」
「でも……」
「ウジウジしないで行きますよ」
僕は背中(腰)を八九寺に押され、警察署を後にする。
本官さんは笑顔で見送ってくれた。
「ここが戦場ヶ原さんの家ですか?」
「ああ」
「何やら古風でサイケデリックなお家ですね」
「色々理由があんだよ」
「じゃ、私ここで待ってますから」
「え?一緒に来ないのか?」
「人の家を覗く趣味は阿良々木さんだけで十分です」
「のぞくって……まぁ、そうなるんだろうけど」
「では、どうぞご自由に」
「あー、わりぃ八九寺。とりあえず風呂に入ってないかだけ見てきてくれ」
「あなたって人は!入浴中ならどうする気なのですか!」
「いや、あいつの場合、裸で出てくるんでこっちが困る」
「???」
「な?頼むよ。いや、お願いします、八九寺様」
「仕方が無いですね、これっきりですよ」
八九寺はスッと壁に頭を突っ込み、瞬時に戻す。
「大丈夫です、そこに座っています」
「そっか。ちょっと行ってくる」
僕はゆっくり壁を抜け、戦場ヶ原の部屋に侵入する。
戦場ヶ原は部屋の隅で体育座りをしていた。
足元には小さな写真立て。
廻り込んで覗くと、それは僕の写真だった。
足元には小さなシミが幾つも出来ている。
「…君…で…ったの?」
小さな声で写真に話しかける戦場ヶ原。
良く聞きとれない。
僕は戦場ヶ原の横に同じように座る。
「阿良々木君、何で死んじゃったの?」
ポタポタと涙が落ちる音が響く。
かれこれ僕が死んでから数週間は経っている。
戦場ヶ原はずっとこんな調子なのだろうか?
こんなに憔悴している戦場ヶ原に僕は何もしてやれない。
本物の『無力』を初めて知った瞬間だった。
ぼんやりと同じように座っていたら、携帯が鳴る。
徐に手を伸ばし、画面で発信者を確認し、通話スイッチを押す。
「もしもし……」
電話の相手は神原だった。
戦場ヶ原の耳元に自分の耳を近づける。
「先輩、今度伺ってもいいですか?」
「来なくていいわ」
「でも―――ずっと学校にも来ていませんし」
「行かないわ」
「でも、それじゃ……」
戦場ヶ原は終話スイッチ押し、電話を切る。
こいつ、ずっと学校に行ってないのか。
また膝を抱え、俯く戦場ヶ原。
「戦場ヶ原、もういいから。僕の事はもういいから。な、忘れてしまえよ」
つい、僕は無意識に声を出してしまう。
「阿良々木君?」
聞こえたのだろうか?それとも何か感じたんだろうか?戦場ヶ原は顔を上げる。
「気のせいよね。もうこの世には居ないんだから」
「もっともっとお話ししたかったのに……」
再び俯く戦場ヶ原。
「もうだめかも知れないわ、阿良々木君」
「そろそろ、そっちに行っても良いかな?阿良々木君」
戦場ヶ原、お前は何を言ってるんだ?
戦場ヶ原は立ち上り、卓袱台の前に移動し、僕の写真を卓上に置く。
「ごめんね阿良々木君、本当は貴方の分まで生きようと思ったけど無理みたい」
そういうと戦場ヶ原は愛用のカッターナイフを取り出し、思いつめた顔で刃を押しだす。
そして、その刃を自分の手首に当て、引こうとした。
「ばか!止めろ!戦場ヶ原!」
咄嗟に僕は戦場ヶ原の手を掴み、ナイフを振りおとす。
「え……」
やっちまったー!つい干渉してしまった。
「阿良々木さん……どうするんですか?」
壁から上半身だけ出した八九寺が僕を睨む。
「あれほどまで言ったのに!生きている人とは交わらないって!」
「ごめん、でもこの状況だし……」
「あーあ、あとは知りませんよ。お好きにどうぞ」
そう言い残して、八九寺は体を壁から抜き、消えてしまった。
「阿良々木君?」
「そうだよ、戦場ヶ原。お前が心配であの世にまだ行ってない」
「やだ、なんで?阿良々木君の声が聞こえる」
「僕がここに居るからさ」
僕はそっと戦場ヶ原の手に自分の手を添える。
「阿良々木君……」
泣きながら戦場ヶ原はもう一方の手をその上に添えた。
「ごめん、私。死のうとしてた」
「ああ、分かってる。でも、僕がさせない」
「本当に阿良々木君がいるのね」
「ああ。それに僕はまだやり残した事がある。僕を殺した奴を探さなきゃならない」
「うん」
「だから―――お前は今まで通り笑っていてくれ、そして今までの戦場ヶ原で居てくれ」
「分かった」
「ありがとう、戦場ヶ原。お前が物分かりの良い彼女で良かったよ」
「ばか……」
僕は戦場ヶ原を抱きしめた後、その場を離れた。
表に出ると、八九寺がいた。
「阿良々木さん、責任は最後まで取ってくださいね」
「分かってるよ」
「あそこまでして、今更幻聴なんて解釈、戦場ヶ原さんは出来ませんよ?」
「ああ、分かってる」
「なら良いです。あと、阿良々木さんの声は直接伝わっているので、周りには聞こえません」
「ん?」
「だから第三者がいる所で話さないように。戦場ヶ原さんが変な人に見えますよ?」
「ああ、そうなんだ。誰にでも聞こえる訳じゃないんだ」
「当たり前です。私の時も、戦場ヶ原さんには聞こえなかったでしょ」
「へー、一つ賢くなったよ。有難う、八九寺」
そう言って、僕は八九寺の頭を撫でる。
「べ、別に阿良々木さんの為に教えたんじゃないんだから!」
「ごめん、笑えない。というか似あっていない」
次の瞬間、僕の手は八九寺に噛みつかれた。
不幸だ。
翌朝まで、戦場ヶ原の家の前で時間をつぶす。
朝になり、戦場ヶ原は制服に身を包み、玄関から出てきた。
ちゃんと学校に行くか?それが心配で僕は戦場ヶ原を尾行する。
その心配は無駄となり、戦場ヶ原は登校した。
「さて、ついでだし学校の中でも見て廻るか」
興味本位で学校に足を踏み入れる。
戦場ヶ原の後ろを歩き、教室に入る。
僕が座っていた筈の机はもうなかった。
(普通は花瓶と花だろ!というか、時間が立ち過ぎて撤去か?)
戦場ヶ原は静かに席に着く。
その姿を見て、先に登校していた生徒が驚く。
「戦場ヶ原さん、もう体は良くて?」
「ええ、とっても。今は良い気分よ」
「そう、みんな心配してたのよ」
「ごめんね」
「学園祭の写真出来たけど見る?」
「ええ」
そこには僕と戦場ヶ原のツーショットが1枚あった。
「これ、1枚焼いて貰いたいのだけど」
「あ、うん、別にいいよ。それ貰っておいて」
そう言うと、クラスメイトは冊子から写真を取り出し、戦場ヶ原に渡す。
「ありがとう」
「あのさぁ、ちょっと聞いたんだけど……戦場ヶ原さんって阿良々木君と―――」
「ええ、付き合っているわ」
「噂、本当だったんだ」
「勿論、今でも付きあってるわよ」
おい!戦場ヶ原お前!何言ってんだ!
「五月蠅いわね」
「え?」
「ごめんなさい。こちらの話。誰に聞いたか知らないけど、事実よ」
「そ、そうなんだ。何か意外な組み合わせだよね」
「そう?世界一のカップルよ」
「ああ、う、うんうん。そだね」
クラスメイトはその場を去る。
[ねぇ、どうだった?]
[うん、事実だって。認めてた。でも、ショックだったのか今でも付きあってるとかいってる]
[えーまじー!こわーい!]
[やっぱ阿良々木とか戦場ヶ原って変よね]
お前ら、僕には聞こえてるぞ!
そんなクラスメイトの話など我関せず、戦場ヶ原は貰った写真を見つめ、そして大事そうに鞄に収めた。
「あら?戦場ヶ原さん、おはよう」
「おはよう、羽川さん」
「もう大丈夫?」
「何が?」
「色々と」
「ええ、大丈夫よ」
「そう良かったわ」
「昨日、阿良々木君に逢ったの」
「え?」
「阿良々木君に逢ったの」
「戦場ヶ原さん……ちょっと良いかな?」
羽川の顔が曇る。
戦場ヶ原の手を引き、教室の外へ。
二人は中庭へと向かう。
「ねぇ、戦場ヶ原さん。ショックだったのは分かるけど、そう言う事を言っちゃダメ」
「私は別に嘘や妄想を言ってる訳じゃないわ」
「じゃあ、阿良々木君が生きていると言うの?貴方も見たでしょ?阿良々木君の……」
「見たわよ。でも、阿良々木君は生きてるの」
「それはどういう意味なのかな?」
「昨日私の所へ来たわ」
「ふーん、それで?」
「自殺しようとした私を止めたの」
「え?」
「もう耐えられなくなって、自殺しようとしたわ」
「駄目よ、逃げちゃ」
「逃げたんじゃ無くて、逢いに行きたかっただけよ」
「同じよ」
「別にそんな事はどうでもいいわ。そうしたら、阿良々木君が来て、ナイフを取り上げたの」
「嘘でしょ?」
「本当よ。で、彼はこう言ったわ『犯人を捜し出す』って」
「それは多分、戦場ヶ原さんが疲れてて、幻聴か何か―――」
「ねぇ、羽川さん。羽川さんは怪異って知ってる?」
「怪異?」
「そうよ、怪異。幽霊やお化け、妖怪の類」
「ええまぁ、少しぐらいなら」
「忍野さんも知っているわよね?」
「ええ、まぁ。それと何の関係が?」
「だから、幽霊となった阿良々木君がいるってだけの事よ」
「へ、へぇ……他に何か言ってた?」
「別に何も」
「ほら、犯人の特徴とか?顔を見たとか?」
「さぁ?どうだったかしら?覚えてないわ」
「ハッキリしなさいよ!」
え?何今の?僕はあんな羽川を初めて見たぞ。
「ご、ごめんなさい。少し取り乱したわ。私も犯人の事知りたくてね」
「羽川さんには関係の無い話。これは阿良々木君と、阿良々木君を奪われた私の問題だから」
「そ、そう。でも、警察も捜査しているからあまり、ね」
「話はそれだけ?私、教室に戻るから」
「え、うん、ごめんね、朝から変な話しちゃって」
戦場ヶ原はそういうと、中庭を後にし、教室へ戻る。
僕はその後を追うように歩き始める。
ふと、振り向くと羽川が誰かと電話で話をしていた。
「ええ、そう言う事で。では、夕刻に」
全部は聞こえなかったが、何か真剣な話の様だった。
昼休みまで、校内をうろつく。
行けなくなると、行きたいと言うか寂しく思うのは何故だろう?
所謂、『無い物ねだり』って事か。
しかし、誰にも気づかれないってのはある意味素晴らしいな。
むふふ、女子更衣室も覗き放題だぜ!って……出来るようになるとしたくないのは何故だろう?
人間って、出来ない事を行うと言う事に満足するのかな?
まぁ、そんな事はどうでも良い。
とりあえず、戦場ヶ原を注意して見ておこう。
授業中、戦場ヶ原はたまに写真を取り出しては、写真の中の僕に微笑む。
なぁ、そういう顔は生きている時に見せてくれよな。
しかし、授業ってのは相変わらず暇というか厳しい時間だ。
まぁ、無理に聞く事もないんだけどさ。
他の奴が何をやっているか、ウロウロしながら見て廻る。
(こいつ、ゲームしてやがる)
(こっちは……化粧)
(こいつは弁当食ってるぞ)
結構不真面目な奴が多い。
誰だ、進学校だなんて紹介したやつは!
羽川を見習え……え?何だ?
委員長の中の委員長、成績優秀で真面目な羽川が授業中にメールを打っていた。
流石に驚きだ。
チャイムが鳴り、昼休みになる。
戦場ヶ原は弁当を持って、中庭へ。
僕もその後ろを付いてゆく。
そこはいつか戦場ヶ原とお弁当を交換した場所だった。
「ねぇ阿良々木君、ここ覚えてる?」
(ああ、覚えてるさ)
「今日は懐かしいお弁当を作ってきたよ」
(へー)
戦場ヶ原が蓋を開けると…KOYOMI LOVEと海苔で書かれたお弁当。
ていうか、海苔が蓋にくっ付いて、「K YON LOVE」になっていた。
なんか悔しかった。
「あらあら、海苔がはがれちゃったわ」
「ではいただきます」
「ところで阿良々木君、何故さっきから黙ったままなの?」
え?
「居るんでしょ?というか居なかったら殺す」
居るけどさ、殺せないだろ。
「ずっと感じるんだけど?」
「なんだ分かってたのか」
「ええ、昨日貴方に抱きしめられてから、見えなくてもその存在を凄く感じるわ」
「そうか。じゃあ、朝からずっと……」
「ええ、何となくね」
「そっか」
「それで、何か分かった?」
「いや、全く何も」
「そう」
くすくすと戦場ヶ原が笑う。
「何がおかしい?」
「阿良々木君が馬鹿だから」
「何!」
「多分、気が付いていないのは阿良々木君だけ」
「何にだよ!」
「今言うと面白くないから言わない」
「はぁ?」
戦場ヶ原は黙々とお弁当を食べ始めた。
「戦場ヶ原先輩!」
「あら、神原。どうしたの?」
「さっき、中庭を上から見たら先輩が居られたので、走って来た」
「そう。お茶飲む?」
「いえ、結構です。それより、どうしたんですか?」
「何が?」
「昨日の電話では―――」
「心変わりかな」
「何かあったのですか?」
「何かあったのは策士の自信、の方かしら」
「???」
「今に面白い事が起きるのよ」
「へぇ、その時は御一緒させてくださいね」
「ええ、勿論。貴方がこちら側の人間ならね」
「こちら側?」
「何でもないわ。さて、食事も終わった事だし、私は戻るわね」
「はい」
弁当箱を片付け、戦場ヶ原がベンチを後にする。
それを見送ると、神原はBダッシュで走り去った。
夕刻、僕は一旦学習塾跡に戻る。
戦場ヶ原の言ってた事って何だろう?
まさか、犯人が分かったのか?
気になって、戦場ヶ原の家へ向かう事にした。
「おじゃましまーす」
別にそのまま通り抜けても良いのだが、律義に扉を叩きすり抜ける。
我ながら馬鹿な行為だと思う。
部屋に入ったが、戦場ヶ原の姿が無い。
「ん?出掛けているのか?」
突然、シャワー室の引き戸が開き、マッパの戦場ヶ原が登場した。
「あら?来てたの?」
ぐはぁ!真正面から全部見てしまった。
「ごめん……」
「別に謝る事は無いわ。彼氏に見られても平気よ私」
「ぼ、僕が平気じゃない」
「あら?取られちゃったのに変化するの?」
「いや、こっちの姿には一応付いてるんだ……」
「ふーん」
「何を考えておられるんでしょうか?せんじょうがはらさん」
「別に。何も。少し確認が必要かなと考えただけ」
「何の確認だよ!」
「そう言うのを女子に言わせるなんて、阿良々木君は変態よね、この変態童貞」
「ぐぁあ!なんて事を言うんだ!」
タンスから下着とシャツを取り出し、戦場ヶ原はそれを身につける。
そして僕の居る辺りに来て、ゆっくり腰を下ろした。
「この辺りに居るのかしら」
ゆっくりと手を伸ばす戦場ヶ原。
「あーごめん。戦場ヶ原に僕は触れないよ」
「そう。じゃあ、阿良々木君が触って」
「分かったよ」
僕は戦場ヶ原の手を軽く握る。
「ごめんね」
「何が?」
「私がさせてあげられなかったせいで、童貞で死なせちゃって」
「べ、別にそんな事気にしてない!」
「そう。そう言ってくれると少し救われた気分になるわ。ねぇ、阿良々木君、他のところ触っても良いのよ」
「他の?」
「好きな所を……」
「おい、戦場ヶ原。それが僕を憐れんだ行為なら今すぐ止めてくれ」
「違うわ、本当に阿良々木君は馬鹿。どうしようもない馬鹿」
「馬鹿馬鹿いうな」
「女心の一つも理解できなくて―――それを女子に言わせようだなんて」
「別に理解できない訳じゃない」
「じゃあ、私が今どう思っているか分かる?」
「それは……」
「ほら、分かってない」
そういうと戦場ヶ原は僕の手を思い切り引き込む。
「これが体ね」
捕まってしまった。
とりあえず、こちらが触ってしまうと向こうからも全部触れるようだ、大事な事は教えておけ、八九寺。
戦場ヶ原の手がゆっくり、僕の身体を確認するように動く。
「ここが顔。ここが耳。ここが首」
「くすぐったいぞ、戦場ヶ原」
「阿良々木君、キスをしましょう」
「え?あ……、うん」
僕はゆっくりと戦場ヶ原の唇に自分のを近づける。
確かに記憶に残る柔らかさがそこに有った。
長い時間、僕達は唇を合わせる。
「ところで阿良々木君、興奮した?」
「え……まぁ、少し」
「ふーん」
こっちを見ているが、戦場ヶ原の手は、少しずつ僕の身体の下の方へ向かう。
腰を過ぎ、太腿に差しかかった手が左折し、僕の中央へ向かう。
「あ、やば」
「ふふ、ねぇ、阿良々木君、さっきの話だけど」
「何?」
「変化しちゃってる?」
「一応……多分」
「そう……」
そういうと、戦場ヶ原は僕の中央、切り取られた筈の所に手を当てる。
「あら?ゴツゴツするわ」
「そういうもんだよ」
「ふーん……ねぇ、阿良々木君、しようと思えば出来るという事ね?」
「どうなんだろう……一応はそういう事になるな。現に今接触出来てるんだし」
「したい?いえ、しますか?」
「何を?」
「それ真面目に言ってる?」
「いや、逃げ口上」
「馬鹿」
「でも、今は駄目だ」
「?」
「決着をつけてから」
「馬鹿な阿良々木君だと、私がおばさんになってしまうわ」
「僕もおじさんだ」
「嘘つき。霊は歳を取らないでしょ?」
「それ誰情報だよ」
「忍野さん」
「例えそうだとしても、僕は戦場ヶ原だけが好きだ」
「嘘。どうせ歳とった私を捨てて、あっちこっちで若い女の部屋に忍び込んでズッコンバッコンする気でしょ?」
「しねぇよ!」
「ふーん……まぁ、信用しましょう。ところで阿良々木君。本当に犯人を見つけたらどうするの?」
「多分、殺す」
「殺すですって!恐ろしい」
「お前!お前が一番使う言葉だろ!」
「そうかしら?」
「そうだ」
「まぁそれはそれで良いわ。その後は?」
「さぁ?忍野探して、成仏させて貰うよ」
「忍野さんなら出来る訳?」
「出来るらしい」
「ふーん。色々凄いわねあの人」
「まあな」
「殺して成仏……何か忘れてない?」
「ああ、あー?んー?はい?」
「その時はHしましょう」
「はい」
僕は小さく返事をした。
「ところで阿良々木君、犯人の目星は付いたのかしら?」
「いや、まだ全然」
「ふーん。今日、学校へ行って正解だったわ」
「犯人は学校の中に居るのか?」
「ええ、勿論。身近な人よ」
「身近……まさか」
「そう、そのまさか。ただ、それだけじゃない。多分、もう一人」
「複数の犯行?」
「ええ、だからキッチリ私が型に嵌めるわ」
「なぁ、その二人って―――」
「羽川翼と神原駿河よ」
何となく話の流れで想像はしていたが、実際にその名を聞くと俄かには信じられなかった。
「動機とかあるんだろうか?」
「さぁ、そんなのは知らないわ」
「じゃ、なんで分かったんだ?」
「見た目は大人、中の人は子供役が多い、その名は名探偵ひたぎ!」
「何の真似だよ。と言うか中の人知り合いかよ!ズボン穿けとか、凶悪化するなって言っておいて!」
「冗談はさておき、今日学校で写真を貰ったわ」
「授業中に見てたやつ?」
「そう」
「見せて」
「はい、これ」
「あはは、文化祭でお化け屋敷やった時のだな」
「そうね。これ見て笑うだけ?」
「え?」
「よく見て」
「ん?んん……あ!」
「そう、ここ。これどう思う?」
「なんか見慣れないと言うか、不自然」
「よね」
「それから、放課後に何枚か見せて貰ったんだけど、その中にこんなのも」
「マジ?」
「これで何となく伏線が見えたのよ」
「伏線から本線に繋ぐとかどこの名探偵なんだよ!」
「だから―――」
「そのネタはもういいから」
「で、朝一番に餌を撒いたら食い付いたわ。あと、昼休みにも……」
「それってやっぱり」
「ええ、二人は繋がっているわ」
戦場ヶ原は朝、クラスメイトに見せて貰った写真の中に、羽川と神原のツーショットを見つけた。
殆ど接点の無い二人が、話し込んでいる写真は不自然だと。
そして、狂言じみた発言に羽川の動揺。
昼休み、偵察に来た神原。という事らしい。
「そもそも神原のいる2年の校舎から、中庭は見えないわ。見えるとすれば、3年の校舎に来ないとね」
「それは、お前が来たと聞いてだろ?」
「誰に聞くの?」
「それは……」
「どうせ、羽川さんがメールをしたんじゃないかしら?」
「そう言えば、授業中にメールしてたな」
「優等生がそこまでしなきゃならないぐらい不安になったって事よ」
「じゃ、二人が犯人だったとして、その動機は?」
「動機?さぁ?羽川さんと神原の利害関係の一致ってところかしら」
「利害関係?」
「互いに欲す者が、者同士でくっ付いている。それを解消させて互いに取る」
「でも、神原は猿の件で諦めたんじゃ……」
「絆されたのよ『戦場ヶ原さん欲しくないの?』ってね」
「でも、僕が死んでしまっては意味が無いじゃないか」
「多分、そこは誤算だったと思うわ。それに死に場所があそこでしょ」
「ん?ああ」
「誰も来ない場所でする事なんて、一つしかないじゃない」
「えっと……」
「性行為よ」
「は?」
「色仕掛けで阿良々木さんを羽川さんが落とす、その証拠を撮り私にリークすれば二人は終わる。神原はそこに付入る」
「でもそれって全部想像だろ?」
「ええ、想像よ。でも女の勘がそうだと告げるの」
「あと一ついいかな?」
「何?」
「神原がお前の事を好きなのは分かった。羽川が僕の事を好きってのは……」
「本当に馬鹿ね。分からないの?」
「全然」
「話にならないわ」
「新学期早々に宣言までされておいて」
「更生だろ?羽川なりの正義感で」
「女が男を更生させる理由に正義感?馬鹿も休み休みに言いなさい」
「違うのか」
「当たり前よ。そこにあるのは愛よ。だからこそ、私は負けないように先手を打った」
「え?ええええ!」
「何よ」
「なんでもありません」
言われてみれば、何となく納得できる話だった。
塾跡にも羽川と神原が千石が来ていた。
神原と千石の繋がりは分かるが、羽川は……そう言えば、あまり関係が無かったような気がする。
でも本当に……羽川や神原が僕を殺したりするだろうか?
「では、これから裏付け作戦を決行します」
「作戦なのか?」
「ええ、作戦なの」
「とりあえず、阿良々木君は神原の所へ行って、何をしているか見てきて」
「分かった」
「そうそう、走ると時間が掛かるから表の自転車乗って行って良いわよ」
「無人で走行する自転車を見て町中が大騒ぎになるだろ!」
「そう、ならダッシュで」
「へいへい」
僕は表に出て、神原の家へ向かう。
「阿良々木さん、また何かやってるんですか?」
途中、八九寺に出会う。
「おお、八九寺。実は―――という話なんだ」
「そうですか。あまり夢中にならない方が良いと思いますよ?」
「何で?」
「世の中、知らない方が良い事もあります」
「でも……」
「万に一つ、そのお二方が本当に犯人だった場合、どうします?復讐するのですか?」
「え……ああ、うん。多分」
「そんな事で良いのですか?今まで仲良くしてきた友達なのに」
「だったら何故友達を殺したりするんだよ!」
「何か理由があったのかも知れませんよ?」
「なら、その理由を聞くまでだ」
八九寺と話しているうちに、だんだんと興奮し、殺されたと言う事実に対して怒りがこみ上げる。
「阿良々木さん、最後通告です。あまり人と交わるのは良くないです」
「大丈夫だよ、この件が片付いたら僕は成仏するんだ」
「そうですか。ではご自由に」
「ああ」
僕は八九寺と別れ、神原の家へ向かった。
何度か来た事のある神原の部屋に侵入する。
相変わらず汚い部屋だ。
BL本に囲まれた布団の上で、神原は寝そべり新刊を読みながら……左手が股間に入っていた。
(こいつに殺されたと思うと無性に腹が立ってきたぞ)
とりあえず、憤りを抑え戦場ヶ原の所へ戻る。
「で、神原は何をしてたの?」
「えっと……上条×土御門ってBL本読んでた」
「読んでただけ?」
「あ、その左手が……」
「左手が?」
「その、なんというか、股間の中に……」
「そう」
僕の話を聞き終わると、戦場ヶ原は携帯を取り出し電話する。
「もしもし神原?私だけど」
「上条さんが攻めなの?受けなの?」
「ふふ、それと左手で弄るのは邪道よ。やるなら右手でしなさい」
「ええ、阿良々木君が教えてくれたわ」
「さぁ?今もそこの部屋の隅で神原を見ているんじゃないかしら?」
プツッ
「これでよし。あとは勝手に繋がって行くだけよ」
神原は直ぐに羽川に電話し、伝えると踏んでいるんだろう。
「あのさ、僕が凄い悪者になってないか?」
「そう?これぐらいで悪いなんて思ったら、人は殺せないわよ?」
「まぁ、そうなんだけど」
「今日はこれでお終。寝るわよ」
「じゃ、僕はこれで」
「は?何を馬鹿な事を言ってるの阿良々木君」
「いや、何も馬鹿な事は」
「今夜、あの二人が私を始末しに来るかも知れないわ」
「……」
「ちゃんとボディーガードしなさい」
「わかったよ」
とりあえず、僕は部屋の隅を陣取り、横になった。
「阿良々木君、こっちで寝てもいいのよ?」
「いや、ここでいい」
「霊になっても遠慮がちなのね」
「ほっとけ」
「もっと童貞みたくがっついてもいいのよ?」
「童貞童貞いうな!」
「じゃ好きにしなさい」
「はいはい」
好きにしろと言われ、結局戦場ヶ原の布団の横で寝た僕がいた。
というか、緊張して全然寝なかったけど。
初めて見た戦場ヶ原の寝顔は結構可愛かった。
翌朝
「さて、昨日の餌にどれぐらい食いついているかしら?」
戦場ヶ原は自信満々だ。
学校に着くや否や、席に座り教室の扉をガン見する。
(そこまで構えなくても)
「こういうのは先手必勝よ。きっと昨日は神原からの連絡で寝られなかった筈よ」
そこに羽川が登校して来た。
「羽川さんおはよう」
「おはよう、戦場ヶ原さん」
「昨日は眠れた?」
「うん、もうぐっすり。何でそんな事聞くの?」
「え……あの何となく」
戦場ヶ原の予測が外れた!
「ふーん。戦場ヶ原さんこそ大丈夫?」
「それはどういう意味?」
「何か考え過ぎて、寝てないんじゃないかなって」
「私は10時過ぎには寝たわ。だから今日も元気よ」
「そう。それは良かったわ。ところで―――」
「何?」
「昨日の話だけど、まだ幻聴が聞こえてたりする?」
「幻聴じゃないわ」
「そう。そう言い張るなら仕方がないよね」
「言い張ってる訳じゃないわ」
「あのね、戦場ヶ原さん。冷たい言い方かも知れないけど、死んだ人間が話しかけるなんて無いのよ?」
「いいえ、あれは阿良々木君です。今もここに居るから」
「あのね戦場ヶ原さん、あまりそういう事を軽々しく口にすると変な人だと思われるわよ?」
「別に変人扱いされようと、事実に変わりは無いわ」
「ふーん。じゃあ阿良々木君がいるって事、証明して見せて」
(おい、大丈夫か?挑発されているように見えるが?)
「阿良々木君、羽川さんの下着を覗いて私に教えて」
(はぁ?そんな事出来るかよ!)
「いいから!」
強い口調がクラス中に響き渡る。
「あの戦場ヶ原さん、とりあえずこの続きは放課後に、ね?」
周りの雰囲気を察した羽川は、戦場ヶ原をなだめる様にそういうと席に着いた。
(お前、熱くなり過ぎだぞ)
戦場ヶ原は羽川の後ろ姿を睨みつけたまま、石の様に動かない。
多分、怒りが頂点付近まで来ているんだろう。
冷静を装っていても、肩が小さく震えていた。
一歩間違えれば―――ここで血を見る事となっていただろう。
あくまでも冷静に、戦場ヶ原をかわした羽川を、僕は少し尊敬し、同時に恐ろしいと思った。
放課後、戦場ヶ原の所に羽川が来た。
「戦場ヶ原さん、少しお話していい?」
「ええ、いいわよ」
「えっと、ここじゃ何だから……いつもの―――学習塾跡に来てくれるかな?」
(!!!何をする気だ?)
「ええ、いいわ。一旦帰って、『準備して』行くわ」
そういうと戦場ヶ原は鞄も持たず席を立ち、小走りで家路に着いた。
「おい、戦場ヶ原。少し冷静になろうぜ」
「私は冷静よ、阿良々木君」
「だったら鞄ぐらい持って帰れよ」
「少しでも早く帰る為、少しでも体力を温存する為には荷物は邪魔よ」
「お前、話し合いに行くんだろ?」
「話し合いなのに、あそこに来いっていう羽川さんは尋常じゃないわ」
「そりゃ確かに、あそこに人を呼び出すのは……」
「口封じをする為よ」
「だったら行かなきゃいいじゃないか」
「ここで逃げるなんて出来ないわ。それに神原も来るだろうし、まとめて決着をつけるわ」
「何を言っても無駄なんだな」
「私は阿良々木君の事を思って!」
「落ちつけよ!」
「パンッ!」
僕は戦場ヶ原を叩いてしまった。
「チッ。こっちが仕返し出来ないからって……」
「ご、ごめん。つい……」
「よく分かったわ。阿良々木君。殺されてまで羽川さんの肩を持つなんて…あの女に乗り換えるつもりだったのね」
「お前、何をいってるんだ!」
「じゃあ、何で、何で叩くのよ!親にだって叩かれた事が無いのに!」
「お前の事を心配しているんだろうが!」
「もういい!その場繕いの言い訳は結構。阿良々木君は天国でも地獄でもどこでも行きなさいよ」
「戦場ヶ原、落ちつけ!」
「触らないで」
「なぁ」
「話しかけないで」
家に到着した戦場ヶ原は、ドアを力いっぱい閉め叫んだ。
「入ってこないで!」と。
仕方が無いので、僕は外で待つ。
「しかし、あいつらも一体何を考えてるんだ?」
「考えても仕方が無い、先に行ってあいつらの様子を伺うとするか」
僕は塾跡へ戻った。
塾跡の扉に貼られた板は、誰かによって剥がされていた。
まぁ、だいたいの想像は付くが……
3階まで上がると、声が聞こえる。
思った通り、羽川と神原がいた。
「ところで羽川先輩、本当に戦場ヶ原先輩は来るだろうか?」
「ええ、必ず来るわ。ただ、結構頭に血が昇ってると思うの。話し合いは無理かも知れないけど」
「力で抑えるにしても、あの人はヤバい」
「分かっています。まずは確実な距離、それから心理戦で抑えるから」
「大丈夫なんだろうか?」
「心配しなくても大丈夫よ。一応助っ人も上に控えているから」
「へー、羽川先輩って裏番みたいだな?」
「違うわよ。ちゃんとした人よ」
(上の階に誰かいるのか。ちょっと見ておこう)
僕はゆっくりと階段を上る。
一番奥の部屋に人の気配を感じ、中に入る。
突然、肩口を掴まれそのまま地面に叩きつけられる。
「誰だ!何の真似だ」
「ふっ」
「お前!」
「すみませんが、そのままお待ちになっていてくださいね」
僕は完全に体を何かに支配され、動けなくなった。
~3F~
「来たみたいよ」
「はい」
「待たせたかしら?」
「いえ、私達もさっき来たばかりだから」
「で、話って何かしら?羽川さん」
「うーん、あのさぁ、戦場ヶ原さんに聞きたいというか、話しておきたい事が―――」
「どうぞ」
「何か勘違いしてない?」
「勘違い?事実でしょ」
「じゃあ、単刀直入に」
「最初からそうしなさい」
「あのね、阿良々木君を殺したの、私達だって思ってない?」
「思ってるわよ。事実そうだし」
「事実ってのはその証拠がいると思わない?」
「貴女達が一緒に居る事が証拠よ」
「あら?何故そう思うの?」
「あなたの胸に聞いてみては?」
「自分では何も覚えが無いんだけど?」
「ふーん、白を切るのね」
「別にとぼけている訳じゃないよ」
「この期に及んで、まだそんな事言うのね。いいわ、今から戦争をします」
「ちょっと!戦場ヶ原先輩!待ってください」
「神原、あなたいつから羽川さんの側に付いたのかしら?」
「わ、私は別に……」
「どうせ、私と阿良々木君の仲を裂こうとしたのでしょ?」
「え?」
「図星でしょ」
「あの……あれ?羽川先輩、私には話が見えない」
「完全な勘違いだからね。そもそも私達が貴方達の仲を裂いてどうする訳?」
「ふん、あなた阿良々木君の事、好きなんでしょ?」
「ええ、そうよ。だからこそ、戦場ヶ原さんを選んだ阿良々木君をずっと応援して来たわ」
「でも、途中で横取りしたくなったんでしょ?」
「やだな、私そんな風に見られてた訳?悪いけど、そこまでして手に入れるほどの人ではないわ」
「羽川先輩の言い方、結構酷いな」
「笑止。そこまで言って生きて帰れるとでも?」
「別に死にに来た訳じゃないからね。それよりも戦場ヶ原さん、あなた阿良々木君が死んだ日、ここに来てたよね?」
「え?」
「そう、やっぱり覚えていないんだ」
「何を言ってるの羽川さん」
「よく思い出して。阿良々木君と―――ここで何をしていたか」
「やめて!私は何もしていない!」
「羽川先輩、これってどういう事?」
「あとで説明するわ、今は追い込むのが先。万が一の時はお願いするわ」
「はい!」
「思いだした?戦場ヶ原さん」
「私は……何も……していません」
「そうよね、何もしていないわね。でも、ここに阿良々木君と一緒に来たよね?」
「……いや、来ていません」
「そう。じゃあ、その前に遡るね。阿良々木君に憤慨してたよね?」
「わ、私、怒ったりしていない!」
「その割に酷く阿良々木君を追い回してたよね?」
「あ、あれは羽川さんが……羽川さんが、私に……いやー思い出させないで!」
「危ない!羽川先輩」
カッターナイフを構えた戦場ヶ原が羽川に襲いかかる。
「すみません、戦場ヶ原先輩」
羽川の前に躍り出た神原が左手で戦場ヶ原を殴る。
そのまま、戦場ヶ原は転がり床に伏せる。
「こんな事したくなかったんだけど……戦場ヶ原さん、全部思いだしたでしょ」
「ううう、私、私……うわぁーん」
戦場ヶ原はそのまま泣き崩れた。
~4F~
「終わったようですね」
「おい八九寺、もういいだろ」
「ええ、もう終わったみたいなのでいいですよ」
僕は解放される。
下の階で行われていた事は、床から無理やり覗かされて把握した。
「なぁ、これって一体どういう事なんだよ」
「まぁ、簡単に言えば、阿良々木君を殺したのはあの二人じゃないって事だよ」
そう言ったのは、忍野だった。
4階に来た僕を八九寺と一緒になって拘束したのは忍野だった。
「僕には話が全然見えないんだが?」
「話ねぇ……そろそろ君が思いださなきゃ」
「じゃ、私はここで待ってますから、どうぞ」
「悪いね、迷子ちゃん。今、迷子ちゃんが出ちゃうと話がややこしくなるからね。そこで待ってくれると助かるよ」
僕は忍野に首根っこを掴まれ、引き摺られ下階へ降りた。
「さてと。反省会場はここかい?」
「忍野さん!」
「結構派手な音がしてたけど、みんな怪我はないかい?」
「私達は……」
「ツンデレちゃんも大した事は無いな。少し口を切っただけだ。さて―――」
忍野は僕を部屋の真ん中に座らせ、その場を支配するかのように話し始めた。
「ここに居る……おっと、委員長ちゃんとゆりっこちゃんには見えないが―――」
「ここにいる阿良々木君が何故死んだか?って事だけど、とりあえず委員長ちゃんが知ってる限りを話して貰おうか」
「はい。あれは阿良々木君が亡くなる前日の話なのですが……」
羽川は落ちついて、そして戦場ヶ原を睨みながら話し始めた。
~回想~
(あら?阿良々木君)
放課後、帰宅途中に阿良々木君が一つ向こうの辻に見えた。
「おーい!阿良々木くーん」という声に彼は反応しなくて、結局そこまで早足で歩く。
辻を曲がった阿良々木君を追いかけたら……阿良々木君が小学女子(高学年)に抱きついて、その胸を撫でまわしていた。
慌てて私は止めに入った。
「何してるのよ!阿良々木君」
「あ、あのその……これはスキンシップというか」
「それは犯罪よ!」
温厚な私も、やはり女性であるが故、性犯罪に対しては厳しい。
「これはいつもの事で……」
「いつもそんないやらしい事をしてるの!?」と、激しい口調で追及する。
そんな風に阿良々木君に尋問していると、その女の子はどこかに行ってしまった。
たしか、前に公園で見た女の子。
「ねぇ阿良々木君、もう二度とそんな変態行為はしないと約束して!」
「すみませんでした」
阿良々木君は俯き、私に背を向けたまま、話に耳を傾ける。
「あのね、阿良々木君。やって良い事と悪い事の分別ぐらいちゃんと持ってよ」
「はい……」
「若いから性欲を持て余すのは分かるけど、例え戦場ヶ原さんと爛れた関係になれないからって、力で劣る小学女子を白昼堂々と襲うなんて考えられない!」
「いや、それとこれとは……別の話で」
そんな話をしている時だったの。
「私がどうかした、羽川さん?」
「戦場ヶ原さん……いつから?」
「ずっと」
「ずっと?えっと、どこからどこまで聞いていたのかな?」
「『うちの』阿良々木君が小学女子を襲ったって話から最後まで」
「そっか」
「羽川さん、警察に言うの?」
「まさか。阿良々木君が改心してくれるならそれで良いんだけど私は」
「そう。あとはこちらに任せて貰います。阿良々木君、少しお話をしましょう」
「……」
戦場ヶ原さんがそういうと、突然阿良々木君は全速力で走って逃げだした。
~ここまで回想~
「一応、そんな感じです」
「阿良々木君、君は大人しそうな顔をしている割に大胆だねぇ、何かいい事があり過ぎたのかい?」
「いや……」
「というか、ここまでの委員長ちゃんの回想は事実かい?というか思いだしたかい?二人とも」
そんな事があった様な…
「はい」と戦場ヶ原は頷く。
ああ、やっぱ有ったんだ。
確かに、そんな事しょっちゅうやってたな、僕。
「で、その後はどうなったのかな?」
「逃げる阿良々木君を戦場ヶ原さんが追って…私も一緒になって走りました」
「ほう、で、阿良々木君は捕まったのかい?」
「いえ、結構な速度だったので……」
「で、百合っ子ちゃんの登場なんだよね?」
「はい!私が新刊の購入の為、走って本屋に向かっていたら、阿良々木先輩が凄い勢いで走っていました」
「ほう」
「それで声を掛けたら、『今、恐ろしい奴らに追われているんだぁ』と叫んでいました」
「恐ろしいってのはツンデレちゃんの事か、阿良々木君、君は駄目な人間だったんだねぇ」
「うるせぇよ」
「おいおい、開き直るなよ。まだそんな時間じゃない」
「一緒に走りながら振り向いたら、戦場ヶ原先輩が居たんで、私は直ぐにUターンして戦場ヶ原先輩の所に行ったんだ」
「そしたら?」
「阿良々木先輩を捕まえてくれって」
「で?」
「勿論、Bダッシュで阿良々木先輩を追いかけましたよ」
「追いついたかい?」
「あまり距離は縮まらなかったんだけど、ちょうど交差点で阿良々木先輩と通りがかった千石撫子さんがぶつかって、すっ転んだ阿良々木先輩を捕獲した」
「へー。阿良々木君、思いだしたかい?」
「正直、そんな事もあった様な気はする」
「百合っ子ちゃん、その後どうなったのかな?」
「とりあえず、戦場ヶ原先輩に身柄を渡しました」
「知ってるのはそこまでかい?」
「えっと……首根っこを掴まれた阿良々木先輩は戦場ヶ原さんに連れて行かれたってところまで」
「その後、何があったんだろうね?」
「さぁ?私はそれ以上知りません」
「阿良々木君、そろそろ自分で思いだしてくれないかな?」
「ああ、今思いだしたよ。何となくだけど」
「そりゃ良かった。これで万事解決だな。で、何があったんだい?」
「あの日……」
~阿良々木回想~
「さっき、羽川さんが言ったのは本当なの?」
「ああ」
「あなたが何をしようと勝手だけど、私に恥をかかせるのは許さないわ」
「……」
「お仕置きをします」
「ええ!」
「黙りなさい。しつけのなっていない犬は放し飼いに出来ないのよ」
そういうと僕は塾跡に連れてこられ、首に縄を掛けられた。
「そこに座りなさい」と戦場ヶ原に強制され、積み上げた机の上に正座させられる。
手は後ろ手に縛られた。それもガチガチに。
体は、亀の甲羅の様に縛られ……
「いい。改心するまでトイレもご飯も無し」
そいうって、羽川はそこから立ち去ってしまった。
僕自身、あまりお腹の空かない体質だったので、そんな事は別に気にもならなかったんだが……
~回想終わり~
「ああ!」
「思いだしたかい?」
「ああ、今全部思いだした」
「言ってごらん」
「ウトウトとしてしまって、そのまま机の上から落ちそうになって、咄嗟に手を出そうとしたが、縛ってあって、バランス崩して机と一緒に崩れ落ちた」
「落ちたら?」
「首の縄が引っ掛かり、首つり状態に……」
「情けないねぇ、阿良々木君」
「言うな!」
「で、そのまま死んだのかい?」
「いや、結構頑張ってた。忍が出てくると思ったが、実は……夕暮れ時に、どこかに行ってしまってた」
「どうせドーナツ屋だったんだろうねぇ」
「多分」
「で、どうした?」
「そのまま転がって机を全部倒せば外れると思って一回転した」
「で?」
「状況は悪くなり、完全に宙釣りの状態になってしまった。意識が朦朧として……最後の力で机を蹴っ飛ばしたら、そのまま下に落ちた」
「そこで助かったんだろ?」
「いや、何か鋭利な物があって、それが心臓にドスンと刺さった」
「へ?」
「刺されたんじゃ無く?」
「ああ、机の下の辺りで―――いや、机の上に有ったんだろう。白い先の尖った杭の様な……」
「おお」
「何が『おお』だよ」
「いやー、それって僕が忘れていった護身用の杭だわ」
「は?」
「いやね、忍ちゃんが万が一暴れた場合にと思って置いてあったんだが、どこに置いたか忘れちゃってね」
「お前―――」
「いやー、まさか阿良々木君が自殺するのに使っちゃうとは、恐れ入ったよ」
「おい、僕は自殺した訳じゃない!」
「あの杭じゃ刺さったら即死だろう。何せ対吸血鬼用の武器だ。回復する事もないだろうし」
「ああ、そこで僕の記憶は飛んだよ」
「で、夜遅くツンデレちゃんが阿良々木君を迎えに来たら死んでいたと。言う事だよね、ツンデレちゃん」
「はい」
「なんて事は無い、これは結局事故なんだよ。誰も殺しちゃいない」
「で、その動かなくなった阿良々木君を見て怖くなって一目散に逃げた。本当なら警察に言うべきだったのに」
「普段、強がってる割にそう言う所では弱気になる、有りがちな事だよ。気が動転しちゃってるしね」
「なぁ、忍野。お前の過失はどうなんだよ」
「おいおい、阿良々木君。それはお門違いだよ。別に僕は君が死ねば良いと思って置いた訳じゃない。事故なんだよ」
「でも、何か納得出来ない」
「それは責任転嫁ってもんだ。君が迷子ちゃんに手を出さなきゃこんな事にはならなかった。ツンデレちゃんも傷つける事もなかった」
「くっ」
「さて、そういう事で……阿良々木君、君はどうする?」
「どうって?」
「このまま彷徨うのか、それとも成仏するのか」
「私は……出来る事なら成仏するべきだと思います」と羽川がいう。
「ま、妥当だな。ツンデレちゃんはこのまま阿良々木君が憑依したような状態で良いのかい?」
「お任せします」
「そうかい。満場一致ってことで阿良々木君はあの世へGOだな」
「と言う訳だ、阿良々木君。どうだい?成仏するかい?」
「ああ」
「よし、そうと決まれば早い方がいい。とりあえず直ぐに準備しよう」
手際良く、忍野は準備をする。
羽川と神原は気落ちした戦場ヶ原を家に送り届けた。
「なぁ阿良々木君、最後に一言だけ言っておくよ」
「なんだ?」
「忍ちゃんの事は心配しなくてもいいよ。吸血鬼になんてのはこの世に幾らでも居るからね。それと同じで、忍ちゃんに血を飲ませる事が出来る人間も山ほどいる」
「それが?」
「忍ちゃんの事が気になって成仏出来なかったら大変だからね」
「そうか。ありがとう」
「じゃあ始めるよ」
忍野は何かの儀式を始める。
僕の意識は段々と薄れる。
何故か今までの幸せだった事だけが走馬灯のように脳裏を駆け巡る。
そして、僕は消えた。
「よし、これで終わり」
「ご苦労様でした」
「迷子ちゃんも一緒に成仏したらどうだい?」
「嫌ですよ、あの世でまたセクハラされます」
「そうだよね。このまま成仏させずにいたら、性奴『霊』にさせられてたね」
「ガクブルですよ、それ」
「あはは。まぁ、今回の件、ツンデレちゃんには悪かったが……」
『万事上手くいって良かったよ』
「あ、そうそう彼女は良いんですか?」
「ああ、ラスボスは関わらない方が良い」
「でも……」
「なぁに阿良々木君もその件には気が付かず、成仏したし、黙っていればいいよ」
「いいんですか」
「ああ。その方が良い。それこそ、阿良々木君のナニを切って持ち帰ったのがラスボスって知れたら……流石のあの3人の精神が崩壊しかねない」
「私、びっくりしましたよ。阿良々木さんがここに連れてこられて、死んじゃって……その一部始終みて落胆してたら、あの人登場で、切っちゃうんだから」
「まぁ、死んじゃってるし、記念に取ったってぐらいだろう」
「ええ!」
「別に恨みとかそんなんじゃないよ。愛情の違った形だよ。あの人じはヤンデレってのに分類できるほどの変人だから」
「ヤンデレとか私には理解出来ません」
「出来ないのが普通さ。普通じゃないからラスボスさ」
「そうですか」
「正直、阿良々木君はあの子と一緒になれば一番幸せだったと思うよ」
「そうですか?」
「ああ、そりゃそうさ。しんだ形見に体の一部持っていてくれるなんてそうそういないよ」
「ああ、怖すぎます」
「それに……迷子ちゃんがされた様な仕打ちも彼女なら喜んで受け入れただろうよ」
「あ、ははは……」
「路上で[ピー]とか[ピー]しろって言われたら、恐らく―――ね?」
「歪んでます」
「ああ、歪んでる。世の中ってのは全部歪んでるんだよ。君が知らないだけで―――君の周りも歪んでるかもよ?」
「ひー!」
「それじゃこれで僕はお暇するよ」
「ええ、お気を付けて」
おわり?
「さて、邪魔者はいなくなったしこれから本当の反省会をしようか」
「流石に今回の件は疲れましたよ」
「まさか、戦場ヶ原さんの所に阿良々木君が現れるなんて思ってもみなかったし」
「ああ、あれは誤算だったね。でも、その誤算も修正して策略にする委員長ちゃんは何者だい?」
「ただの高校生ですよ」
「いや、羽川先輩は裏番を超える、ハイスクールフィクサーだな」
「本当はぶち切れた戦場ヶ原さんに阿良々木君を痛めつけて貰って、そのまま亡き者にする予定が、事故死という形になってしまいましたが……」
「まぁ、委員長ちゃんの機転のお陰だよ」
「まぁ、これも3人の利害関係が一致という事で出来た作戦ですからね」
「ああ、本当に君達といるとワクワクしちゃうよ」
「本当にワクワクしましたよね」
「ま、どれもこれも阿良々木君が悪いんだけどね」
「ですよね」
「僕はね、何も性欲の処理の為に忍ちゃんを置いて行った訳じゃないんだよ。なのに阿良々木君と言えば」
「小学生としたいと思うと絶食させてたんでしょ?」
「ああ、JC・JKはたんまり飲ませて……」
「そこまでするならツンデレちゃんとやってしまえって話なんだよな」
「でも戦場ヶ原さんがさせなかったんでしょ?」
「何故なんでしょうか?」
「さぁ?世の中知らない方が良い事もある」
「私だったら……そこまでされるぐらいなら許しちゃうかも」
「忍野さんは結局、阿良々木から忍ちゃんを取り戻す為だったんですよね?」
「いや、違うよ。本当は……貝木からした借金の返済に困ってね。ツンデレちゃんを嵌めて壺を買わせるか、忍ちゃんを渡すかって事だったんだよ。ていうか死んだら呼び捨てかい!」
「えへへ。でも忍野さんも酷いですね。」
「そういう百合っ子ちゃんは?」
「そりゃ勿論、戦場ヶ原先輩の奪還です」
「本当に好きだねぇ、君は」
「戦場ヶ原先輩の為なら何でも出来ますよ」
「ほー、それは興味深い」
「どうせなら阿良々木を殺して、数年塀の向こうに居てくれれば良かったんですけど」
「おいおい」
「ほら塀の向こうって、色々されるんでしょ?仕込み終わった先輩が出所。知人は誰も居ない。そこに私が登場。最高のシチュエーションじゃないですか?」
「結果的に心の支えが無くなった戦場ヶ原さんにつけ入るチャンスよね?」
「ええ、もう昨日はお泊りして手を握って寝ましたから、ひひひ」
「おーい、神原さーん、かえっておいでー!」
「あ、すみません。今後の事を妄想してました」
「それよりも……羽川先輩はどうして今回の―――」
「そりゃ、私を選ばないからよ」
「え?」「え?」
「別に戦場ヶ原さんだからという事じゃなくて、私じゃないって事よ」
「うわ、何か怖い」
「クラスで浮いた存在だった彼に手を差し伸べたのは誰?」
「羽川先輩」
「いつも放課後に一緒にいたのは誰?」
「羽川先輩」
「パンチラみせてあげたのは誰?」
「羽川先輩」
「おまけに貯金まで使って、身の回りの世話をしたのは誰?」
「委員長ちゃん」
「なのに、あの馬鹿は落ちて来た戦場ヶ原さんに気取られて……」
「あの委員長ちゃん?」
「阿良々木の分際で!阿良々木の分際で!阿良々木の分際で!阿良々木の分際で!阿良々木の分際で
阿良々木の分際で!阿良々木の分際で!阿良々木の分際で!阿良々木の分際で!阿良々木の分際で!
阿良々木の分際で!阿良々木の分際で!阿良々木の分際で!阿良々木の分際で!阿良々木の分際で!……」
「は、羽川先輩!」
「え?何」
「わかりましたから!」
「あ、ごめんね、つい。でもそんな選択眼の無い人間は死ねば良いのよ。神原さんにも迷惑かけてさ」
「いやー、委員長ちゃんがそこまで彼を嫌ってるとは思いもよらなかったよ」
「死んで清々したわ」
「……」
「これで終わると思うな阿良々木」
「え?」
「やっぱり、身内までちゃんと処分しなきゃ気が済まないじゃない?」
「うわぁ、委員長ちゃん凄く怖いよ」
「敵に回したくないな」
「そう思う?」
「ええ、とっても」「ああ、凄く」
「なのに、戦場ヶ原さんって、私に挑むんだから(ニコ)」
「怖いよ、先輩」
「中に潜んでるのが白く見えたよ、委員長ちゃん」
「ま、そう言う訳だし、きっちり落とすわよ」
「ま、頑張って。僕はこれで街を出るから。武勇伝、楽しみにしておくよ」
「わ、私は戦場ヶ原先輩とラブラブしてきます!」
「ええ、それじゃ皆秘密厳守でね」
おわり
ヴァルハラの場合
私、神原駿河はショックから立ち直れない戦場ヶ原先輩の面倒を見ている。
もうかれこれ3カ月。
「先輩、朝ですよ」
「あ、うん……」
ヴァルハラコンビ復活、そう言っても過言ではない。
ただ昔と違うのは―――主導権は私にある。
食事から入浴、着替えまで、放っておくと何時間たっても進まない先輩の為に私が身の回りの世話をしている。
だから先輩は今、私の家に下宿している。
え?お前の部屋は汚い?
そんな事は無い、愛する戦場ヶ原先輩の為に自室は非常に綺麗だ。
陰毛一本落ちていないぞ!
毎日、朝の5時に起きて、部屋の掃除をしている。
今までこんな簡単な事が出来なかった自分を恥ずかしく思うぞ。
そして、先輩を起こすと私の一日は始まる。
「さぁ、起きてシャワーして、着替えて」
「今日はこの下着をはいてください」
下着すらはけない先輩は可愛すぎる。
用意してあげなきゃ、そのまま登校するからな、今の戦場ヶ原先輩は。
以前、うっかり出し忘れたら、登校中に
「すーすーするわ」
とスカートの裾をまくりあげて見せた時は焦った。
なので、今はチェックシートで確認しながらやる。
最近、食事は自分で摂ってくれるようになったが、以前は口前まで運んでいたぐらいだ。
学校に行けば、先輩と同じクラスに羽川さんが居るから一安心。
あとは、放課後にお迎えに行くだけ。
周りは「羽川保育園」だの「神原託児所」だの言ってるが、私達は何も気にしていない。
全部、私達が望んだ結果だからな。
この腕も、この先輩も全部望んで手に入れた。
家に帰ったら、まず入浴。
その後は夕食。
宿題や明日の準備をしたら、私の奉仕時間はそれで終わり。
あとは私が奉仕される時間。
戦場ヶ原先輩にメイド服を着せる。
これが先輩専用のパジャマだ。
パジャマと言ってもその機能は発揮される事は無い。
そう、プレイのあとは着ずに寝るからな。
「ひたぎ、こっちに来い」
呼び捨てにする事で、全ての立場が入れ替わる。
「はい、お嬢様」
この時点で私はグチョグチョに濡れている。
BL本など、戦車の前の拳銃に同じ。
いや、BL本が核兵器なら、メイド奉仕の戦場ヶ原先輩は流星衝突だ。
地球が砕け散るぐらいの威力がある。
正に、地球にダンクシュート。そんな感じだ。
そんな先輩に私は命令する。
「下着を脱がせなさい」
言われるがままに、私の下着を脱がせる先輩。
「まずはその舌で溢れ出た汁を綺麗にしてくれないか?」
「はい、お嬢様」
先輩は非常に従順である。
どんな要求でも実行する。
裸でコンビニへ行けと言えば、本当に行ってしまうからな。
「お前の舌で私を逝かせなさい」
「はい、お嬢様」
先輩は一生懸命に奉仕する。
私はそんな先輩を見ているだけで逝ってしまう。
「次は私がお前に色々してやろう。今日は何が良い?」
私の問いに、先輩は恥じらいながらも大胆な事を言う。
「あの…バイブで責めてください」
「よし、分かった」
私はバイブを取り出し、先輩に押し当てる。
「は、はうっ……」
「どうした?気持ちいいのか?」
「はい……」
「今日はどっちに入れて欲しい?」
「お、お嬢様のお好きなように」
「では今日は後ろだ!」
私は自分の愛液でバイブを濡らし、先輩のアナルにあてがう。
バイブはウネリながら、先輩のアナルへ突き進む。
「ひぃ!」
既に開発が済んだ先輩のアナルは、難なくバイブを吸い込む。
「あ、あ、いいです。いきそうです」
「我慢しろ」
「無理です」
快感に堪える先輩の歪んだ顔で私はまた軽く逝ってしまう。
「ああ、でちゃう―――」
先輩は失禁し、その場で腰をピクピク震わせる。。
「お楽しみはまだまだこれからだ」
お互いにバイブで責めあう。
「昨日は私が先に逝かされたからな。今日は先に逝かせるから」
「わ、私も……が、がんばります」
激しく互いを責め続け―――今日は私が勝った!
先輩は痙攣しながら放心している。
そんな先輩に跨り、私は最後の仕上げをする。
「今日はお前が負けたから罰ゲームな」
そう言いながら、先輩の顔に尻を落とし、放尿する。
「お、美味しいです」
咽びながら、私の尿を飲み干す先輩。
今度は脱糞してやりたいという衝動に駆られるが、流石に部屋が汚れる。
これは別の機会にしておこう。
「よし、今日はこれで寝るぞ」
私達の美しい時間が終了する。
「先輩……」
「何、神原」
「先輩は私の事好き?」
「ええ、好きよ。一番好き」
寝る前の挨拶、この一言で私は全ての罪を被れる。
ただ、いつも残念に思うのが……
猿の手に願った3番目は―――自分にペニスを生やす事にすれば良かったと思う。
あ、そうそう、羽川先輩に色々聞かれたが、あの人は鬼だ!
「あら?結構普通のプレイなのね。私なら―――んー、多分半死まで追い込んじゃう」
あの人は絶対にSだ。それも凶悪なぐらいの。
阿良々木先輩の妹さん、火憐ちゃんは結構酷い事をされているらしい。
おっと、その辺の詳しい事は私からは言えない。
聞きたい人は羽川先輩(真黒)に聞けばいいと思う。
ヴァルハラ終わり
黒猫のタンゴ
阿良々木が死んでからも私の行動は止まる事を知らない。
何がそうさせる?
簡単な事よ。
自分の生い立ちを知りながら、平気で自分の家族の事をペラペラしゃべった阿良々木。
なお且つ、私でなく戦場ヶ原さんを選んだ阿良々木。
阿良々木が私を選ばなかったのは、あの家庭に問題があると思うの。
そんな家庭、崩壊した方がいいじゃない。
だから私は……
「こんにちは」
「あ、羽川さん。今日も兄ちゃんの為に……ううう」
「火憐ちゃん、お兄ちゃんは本当にいい人だったよね」
(自分で言って反吐が出そうね)
「羽川さんは何でそんなに―――死んじまった兄ちゃんの事を気にかけてくれてるの?」
「お兄ちゃんの事じゃないわよ。私が気にしているのは火憐ちゃん達の事よ」
「え?」
「突然お兄ちゃんを失くしちゃって、悲しんでないかなって」
「わ、私は大丈夫だよ!」
「本当?本当に?辛い事があったら私に―――私で良かったら相談してね」
「羽川さん……」
「火憐ちゃん、私の事本当の姉と思っていいのよ」
「う、ううう……『ねーちゃん!』」
「うん、いい子いい子」
(けっ、このクソガキ、ちょっと甘い顔したら靡きやがった)
「あのね、勉強とか学校の事とか困ったら相談してね」
「うん、わかったよ姉ちゃん」
そんな風に阿良々木の仏壇に手を合わせに行って数週間後の話
「こんにちは」
「あ、姉ちゃん!」
「今日は私が頑張ってご飯作るからね」
「羽川さん、本当にいいの?」
「ええ、お気になさらず。お母さん」
「暦は本当に良い友達をもっていたわね……」
「お母さん、泣かないでください」
「あの子が死んだのに、私達にこうまでしてくれるなんて」
「阿良々木君には生前、私がお世話になりっぱなしでしたし、火憐ちゃん達も自分の妹みたいに思えて」
「そう言ってくれると嬉しいわ。羽川さんが暦の彼女だったら……あの子の人生も変ったでしょうに」
(気付くのがおせぇーんだよ、ババァ)
「いえ、そんな私が暦君の彼女だなんて」
「姉ちゃんが彼女だったら、私達も嬉しかったよ。ねぇ月火ちゃん」
「あ、うん」
「そう?嬉しいわ、そう言って貰えると」
「じゃあ、羽川さんお願いしますね」
「ええ。心配なく行ってください。妹さん達の面倒は私が見ますから」
「じゃあ、お姉ちゃんの言う事をちゃんと聞くのよ?」
「はーい!」「はい!」
ババァは3日ほど、法事やらで実家へ帰った。
さて、こいつらをどうしてやろうかしら?
「姉ちゃん、今日は何?」
「うーんとね、今日はカレーにしよっか?」
「やった!カレーだ!」
「月火ちゃん、今日はカレーだぜ!」
(馬鹿みたいに騒いで。貴方達の食べるカレーには美味しいお肉が入るのよ)
「羽川さん、手伝おうか?」
「ん?大丈夫よ。月火ちゃん」
「そう。それよりも宿題とか大丈夫?」
「あーまだやってない」
「そう。なら先に済ませておいで」
「はーい」
(クソガキども、邪魔しないでよ)
「さて。おーい!ご飯出来たよ~」
「お、すげー!なんか御馳走だ!」
「カレーだけかと思ったら、チキンとか。これは凄いよ」
「たっぷり召し上がれ」
「「いっただっきまーす」」
「はい」
火憐はガツガツと私が出したカレーを貪る。
月火は2~3口食べた所で手が止まる。
「あれ?月火ちゃんどうしたの?」
「別に。なんか急にお腹の調子が悪い感じ。ごめんなさ、ご飯いいです」
「あら?何か嫌いなものでもあった?好き嫌いは駄目だよ?」
「あ、そうじゃないんだ、そんなのじゃ」
(このガキ、気付いて?)
「じゃ、月火ちゃんの分も私が食べてあげるよ!」
「あ、うん……あまり食べすぎないように」
「こんなに美味しいのに食べないなんて勿体無いよ」
(ふふふ)
「ねーちゃんお代わり!」
「はい。沢山あるからね」
「ねーちゃんは食べないの?」
「あ、食べるよ。でも少し片づけもあるからね」
「今度は一緒に食べてよ」
「うん、いいよ」
(ばーか、お前等と同じ飯なんか食える訳ないじゃない、気持ち悪い)
「ごちそうさまでしたー!」
「はい。じゃあ、お風呂にはいっておいで」
「あ、うん。わかった」
(あいつ、あんなカレーよく食べたわね。野良犬の肉を入れたってのに)
~2F妹部屋~
「ねぇ火憐ちゃん、今日のご飯変じゃなかった?」
「え?すげー美味しかったよ」
「なんか変な臭いしなかった?お肉とか」
「そう?全然そんな感じはしなかったよ」
「そっか。私の気のせいなら良いんだけど」
「何?そんな事で食べなかったの?」
「うん……」
「ねーちゃんが訳のわからない物入れたりするもんか!」
「うん、そうだと思うんだけど」
「明日の朝、私がお腹壊したら食材が傷んでたのかも知れないけど」
コンコン
「はーい」
「お邪魔するね」
「ねーちゃん」
「これ、食後のデザート。駅前でケーキ買って来たんだ」
「ありがとう」
「月火ちゃんもケーキぐらいなら食べられるでしょ?」
「あ、うん……」
「じゃ、食べたらお風呂入ってね」
「わかった!ねーちゃん」
(ちっ、あの下のガキ、気が付いてた。ちょっと作戦変更しなくっちゃ)
~1F居間~
「ねーちゃん、風呂入ってくる」
「一緒に入ろうか?火憐ちゃん」
「え?ええー!」
「女同士だし、恥ずかしがる事ないじゃない」
「えっと、うん……いいけど」
「月火ちゃんは?」
「月火ちゃんとは一緒に入らないな。何故か風呂だけはいつも別なんだ」
「そう」
(チャンス!)
「じゃ、先に入ってて。すぐに行くから」
「分かったよ」
さて、どうしようかしら?
ガラッ
「おじゃましまーす」
「うわ、でけぇ!」
「え?何?」
「いや、ねーちゃんの胸凄いなと思って」
「いやん、照れるじゃない。そんなに見ないで」
「兄ちゃんは毎日それを見て興奮してたんだろうか?」
「阿良々木君はそんな人じゃないわよ」
「そうかな?」
「そうよ。それに私の胸見てたら、怖い彼女にお仕置きされるしね」
「ええ!あの人怖いの?」
「ええ、怖いよ。凄く怖い。私なんて怖くて言葉選んじゃうからね」
「へーそうなんだ。兄ちゃん、なんであんな人と付き合ってたんだろう?」
「何でだろうね?」
「なんでだろ?」
「男女の仲って、よく分からないわ」
「ふーん」
「じゃ、火憐ちゃんこっちきて。体洗ってあげる」
「え、いいです……自分で洗いますから ブクブク」
「遠慮しないの。私、姉妹がいないからいつも一人だったんだよね。一度は妹の身体とか洗ってあげたかったの」
「そっか……よし、ねーちゃん洗ってくれ!」
「はい、いいよ」
ボディーソープを手のひらに取り、それを泡だてる。
その泡を火憐の身体に塗りつける。
「ねーちゃん、くすぐったいよ」
「あら?いつもこうしないの?」
「いつもはタオルでゴシゴシと」
「駄目よ。あまり強く擦ると肌が傷むのよ」
「へー」
「こうやって、泡でゆっくり汚れを落とすの」
「姉ちゃんは何でも知ってるな」
「何でもは知らないわよ。知ってる事だけ」
(本当にこの兄妹は……馬鹿なセリフまで一緒だなんて。まぁ、そんな事どうでも良いいんだけど)
「えへへ、でもなんか気持ちいいな」
ゆっくり、背中から腰へ、腰から太腿へと手を滑らす。
太腿に到達した左手を一旦上げ、腰回りからお腹にかけてゆっくり円を書きながら体を洗う。
少し緊張しているみたいね。
じゃ、今度は右手で―――
太腿から離した右手を腋の下に入れ、そこから前へゆっくりとゆっくりと指先で軽く押しこむように滑らせる。
(結構いい形じゃない、サイズはまだ残念だけど)
「ね、ねーちゃん、ちょっとくすぐったい」
「ん?どこがくすぐったいのかな?」
腹部を摩っていた左手も上げ、両手で少し残念なこれらか育つであろう乳房を揉みしだく。
「ん、ん……」
「はぁはぁ、ねーちゃん……なんかそこ洗われるとなんか変な気分」
「力を抜いて、リラックスして」
「うん」
初めての経験に少し戸惑っている火憐。
少し意地悪してあげようか?
私は、その先端にある少し硬くなった乳頭を摘まむ。
「はぅ!」
耳元で息を吹きかけながら、背中に私の乳房を押し当てる。
そして、乳房をもむ。
流石に中学生には厳しいかしら?
火憐は体を硬直させながら小刻みに震える。
「ねぇ、火憐ちゃん。ここは自分で弄ったりしているのかな?」
私の右手が股間に滑りこむ。
一瞬、ビクッ!としたが、動く指先に石鹸の泡とは違う滑りを感じる。
「あら?もう濡れてきた?」
「も、もう、や、やだ」
「駄目よ、ここまで来たら私も止まらないから」
人差し指を第一関節まで入れる。
その瞬間、足を硬く閉じようとする。
「火憐ちゃん、綺麗ね。だから、私にもっとよく見せて」
真っ赤な顔をした火憐は小さく頷き、ゆっくりと股を開く。
「あら、まだ全然生えてないじゃない」
恥ずかしそうに頷く火憐。
(中3で生えてないって…これは剃毛プレイが出来なくて残念ね)
ゆっくりとその割れ目を開くように指先で押す。
零れる吐息。
「ねぇ火憐ちゃん、鏡を見て」
私は火憐の太腿を担ぐ形で押し上げる。
後ろに倒れそうになる体を支えると、ぷっくりと膨らんだ割れ目が鏡に映し出される。
「いや!」
「誰にでもあるのよ、女の子なら」
「でも……」
足を下ろし、私は執拗に割れ目を責める。
時折、壁に向かい、薄黄色い汁が飛ぶ。
「あれ?出ちゃってる?」
「わ、わかんない……」
「じゃ、もう少しはっきり出るまで頑張りましょうね」
私はもう止まらない。
人を虐める事がこんなにも気持ちいいなんて、少し戦場ヶ原さんの気持ちがわかった気がする。
でも―――私はそれぐらいじゃ満足しない。
この子が壊れるまで、私は……
膨らんできた恥豆を摘まむと、火憐は小さな吐息を零しつつ、そのまま放尿してしまう。
「あら?潮だと思ったら、おしっこだったのね」
「は、はずかしいょ」
「恥ずかしい?」
「うん」
「駄目よ、これぐらいで恥ずかしがってちゃ。火憐ちゃんにはもっと凄い事を教えるからね」
「え?」
「幸せと言うか―――女の喜びを」
そう言い、私は火憐にキスをする。
反吐が出そうだったけど。
ぼやっとした顔の火憐は阿良々木そっくり。
(犯しがいがあるわね)
放心状態の火憐の髪の毛を掴み、こっちを向かせる。
「さぁ、火憐ちゃん。今度は火憐ちゃんがお姉ちゃんに色々やってみて」
「はい」
彼女の眼はもう死んだ魚同然、とても綺麗な濁った色、美しいグレー。
そのまま私の胸を吸わせる。
まるで赤ちゃんの様。
それでも段々と舌で乳首を転がし始める。
(結構素質あるじゃない)
「じゃ、つぎは―――ここを」
私は火憐の頭を押さえつけ、開いた股間に押し込む。
「ゆっくり舐めるのよ」
ピチャピチャという音を出しながら、火憐は舐める。
「ねぇ火憐ちゃん、お姉ちゃんの事好き?」
「はい」
「そう、私も火憐ちゃんの事大好きよ」
褒めると舌使いが激しくなる。
このままだと、私が逝かされちゃうわ。
「上手ね。でも今日はこれで終わり。続きは今度ね」
(さて、火照った体を自分で何とか出来るかしら?)
私達はお風呂から出て、着替えた。
「じゃ、お姉ちゃんは暦君の部屋で寝るからね。早寝しなさいね」
「……はい」
火憐は小さく頷くと、自室へ戻った。
~2F妹部屋~
「火憐ちゃん、お風呂長かったね」
「う、うん」
「何かあったの?」
「べ、別に。お姉ちゃんに洗って貰っただけ」
「ふーん」
「ねぇ、火憐ちゃん。あのさぁこんな事言うと、なんだけど……」
「何?」
「羽川さんって何か信用できないよね?」
「月火ちゃん、何言ってるの?」
「だって……」
「何を理由にそんな事言ってるの?」
「いや、今日のご飯だって…変だったし、さっきお風呂で何かされてない?」
「え?べ、別に何もされてない」
「なら良いんだけどさ、何か羽川さんって信用ならないんだよ、女の勘っていうのかな?」
「月火ちゃん、今度そんな事言ったら許さないからね!」
「あ、火憐ちゃん!」
バタン!
~旧暦部屋~
コンコン
「はい、開いてますよ」
「お姉ちゃん」
「ん?どうしたのかな?」
「入っていい?」
「うん、いいよ。何かお話?」
「あのね、なんか月火ちゃんがお姉ちゃんの事を悪く言うの」
「あらあら」
「お姉ちゃんは悪くないよね?」
「勿論よ。私はいつでも火憐ちゃん達の味方よ」
「うん」
「多分、月火ちゃんは私にやきもちを焼いているんじゃないかな?」
「え?」
「だって今まで二人は仲良しで、ファイヤーシスターズって呼ばれてきたのに、私と火憐ちゃんが仲良くする時間が多くなったでしょ?」
「うん」
「だから、やきもちなのよ」
「じゃぁ、どうすれば?」
「うーん―――そうね、私が月火ちゃんとも仲良くすればいいかな?」
「え。そんなのヤダよ。月火ちゃんと仲良くしたら、火憐とお話してくれなくなっちゃうでしょ?」
「そんな事無いよ。でも月火ちゃんが私を独占しちゃったらどうしましょう?」
「そんなの認めないから」
「え?」
「お姉ちゃんは、私のお姉ちゃんだから。だって、月火はお姉ちゃんの事、今でも『羽川さん』って言うじゃん。お姉ちゃんって認めてないんだよ」
「そう……火憐ちゃんは優しいね。そんな火憐ちゃん大好きよ」
私は火憐の頭を撫でつつ、引き寄せる。
「お姉ちゃんいい匂い」
「火憐ちゃんもいい匂いよ、大好き。同じ姉妹でも火憐ちゃんだけ良い匂いがするよね」
自分でこんな事が出来る人間だったなんて、正直少し驚いた。
案外、私って女優とか出来ちゃう?あはは、こんな事ぐらいで女優になるなんて馬鹿な事を言うのは愚の骨頂ね。
さて、これからどうやってこの二人を裂こうかしら?
「火憐ちゃん、どうする?」
「え?」
「今夜はここで一緒に寝る?」
「んとー……いいの?」
「ええ、火憐ちゃん『なら』大歓迎よ。横に居ても良い匂いがするし」
「じゃ、ここで寝る!」
「じゃ、その前に……月火ちゃんのお風呂まだだし、早く入るように言ってくるね」
「うん」
「いい子にして待っててね」
「うん」
この子はあと少しで落ちる。
今夜たっぷり弄ぶんだから。
阿良々木ってこんな優しさを見せてなかったんだろうね。
~妹部屋~
コンコン
「あ、はい」
「まだ起きてる?」
「羽川さん」
「お風呂入った?」
「まだだけど。学校から帰ってシャワー浴びたし、また明日朝にシャワーするからいいです」
「ふーん。でもたまにはちゃんと湯船に浸かって汗を出さないと、毛穴に老廃物が溜まって汚い肌になるわよ?」
「え?そうなの?」
「ええ。例えばこんな事言うとアレだけど、火憐ちゃんと月火ちゃんじゃ火憐ちゃんの方が綺麗な肌だよ」
「え!火憐ちゃんより私の方が色白だし」
「色の問題じゃないわ、肌理の細かさや艶、張りよ」
「そ、そうなんだ」
「だからね、月火ちゃんもお風呂に入ったらいいよ」
「う、うん……でも何か湯船って苦手なんだよね」
「そう。なら仕方が無いね、臭いままで生きる?」
「え?」
「臭いって言ったのよ。聞こえない?」
「羽川さん……」
「あのね、火憐ちゃんが迷惑じゃない、そんな臭い妹がいると」
「わ、私は臭くないもん」
「それはね、自分の臭いで臭覚が麻痺しているだけ。とっても臭いよ」
「え?え?マジ?」
「よくあなたみたいなのが、よくこの家に居るわね。阿良々木君もさぞ苦労した事よね?」
「べ、別に私、お兄ちゃんに迷惑かけていないし……」
「ふーん、そう思ってるのは自分だけかも?」
「そんな事ないもん!友達にも臭いだなんて言われた事無いし」
「あら?それは『ファイヤーシスターズ』の片割れだからじゃないの?火憐ちゃんの―――虎の威を借る狐―――みたいなものかしら?」
「うそ、そんなの嘘。私は違うもん」
「死んだ阿良々木君も言ってたわ。『火憐は歯磨きしてあげたいが、月火は臭くて無理だ』ってね」
「え?何それ?」
「さぁ?」
「羽川さん、あなた何者なんですか?」
「さぁ?私は私、羽川翼よ。それ以外の何者でもないわ」
「意味分かんない。何か企んでるでしょ?」
「そんな事ないよ、クス」
「ちょっとハッキリいいなさよ」
「ごめん、それ以上話さないで、臭くて耐えられない」
「む!だまって聞いてりゃ、何なのよあんた!」
月火は突然私にケリを入れた。
正直、とても痛かった。
肋骨にひびが入ったかも。
内蔵が破裂してもおかしくないわ……
「ぐ、グェ……」
火憐が気付くようにわざと大きな音を出し、のたうちまわる。
「あんたね、何か変だと思ってたけど、お兄ちゃん殺したの実はあんたでしょ!」
「な、何をい、いってるのかしら……ごほっ」
バンッ!とドアが開いた。
「何事!」
「あ、火憐ちゃん。こいつ、お兄ちゃんをやった犯人なんだよ、きっと!」
「きっと?それどういう意味?」
「あ、その……なんでもいいの!こいつ変でしょ?!」
「月火、変なのはあんたよ。姉ちゃんこんなに苦しんでるけど何したの?」
「蹴り入れた」
「何で?」
「ムカつくから」
「月火、ちょっとこっちに来なさい」
「なんでよ」
「いいから!」
「やだよ、こいつが変なんじゃない!」
パンッ!
「痛い!何すんのよ!」
「あんたね、今日ずっと変だよ?なんで姉ちゃんにそんな事いうのよ?」
「火憐ちゃん、本当に何も思わない?こいつに騙されてるって!」
「あのさ、姉妹だからって何でも信用するとでも思ってるの?」
「え?」
「あんたみたいな臭い奴はどっか行ってしまえよ!」
「臭い……?」
「ああ、とっても臭い!ゲロが出るぐらい!もう私の妹やめて欲しいわ!」
「か、火憐ちゃん―――」
「姉ちゃん、大丈夫?」
「う、うん」
「さ、部屋にもどろうよ。おい、月火!お前姉ちゃんに何かあったらタダで済まさないからね」
(ふふ、蹴り一発我慢すればこうまで荒れるなんて流石阿良々木家ね)
「火憐ちゃん……うわぁぁぁん」
~旧暦部屋~
「姉ちゃん大丈夫?」
「うん、多分平気」
「ちょっと見せて」
「大丈夫よ、もう痛みも無くなってきたし」
「あっ、青くなってる」
「少し内出血したかもね」
「月火め!」
「駄目よ火憐ちゃん、喧嘩は駄目。お願い、私のそばに居て」
「姉ちゃん……」
「火憐ちゃんがそばに居てくれたら平気だから、ね?」
「う、うん。でも大丈夫なの?冷やす?」
「大丈夫よこれぐらい……」
「姉ちゃん……」
「こっちきて。横に居て」
「うん」
火憐は私の布団の中に入ってきた。
「こうして火憐ちゃんがいてくれたら私、安心だから」
「痛かったら言ってよ。病院いこうよ」
「大丈夫!それより火憐ちゃんの身体、柔らかいね」
「は、恥ずかしいよ」
「えへ、触ってたら痛みを忘れそうだよ」
「じゃ触っても良いよ……」
やや残念なこれからの胸を私は撫でまわす。
だんだん気持ちよくなってきたのか、火憐の息遣いが荒くなる。
「ねぇちゃん」
「どうしたの?」
「またさっきみたいに吸っていい?」
「いいわよ」
私はパジャマの胸元を開け、乳房を顕わにした。
遠慮がちに吸いついてきた火憐は、段々と激しく音を立てながら貪る。
痛みを超える快感がやってきた。
「はぅ」
「ね、ねーちゃん?大丈夫?痛い?」
「ううん、火憐ちゃんが優しくしてくれるから声が出ちゃった。痛みは消えそうよ」
「じゃぁ、もっと頑張る」
唾液で胸元が濡れる。
興奮した火憐は、私に断る事もなくその顔を段々とさげていく。
パジャマのズボンに手を掛け、下着ごと脱がされる。
少し抵抗したけど、物凄い力で足を開かされてしまった。
「ねえちゃん、どうやったら気持ちよくなる?」
「う、うんとね……指を入れたり舐めたりしてみて」
言われるがままに、火憐は私のアソコに指を恐る恐る入れる。
「は、はぅ」
「痛かった?」
「ううん、気持ちいいの」
「……」
何か不思議なものを見るかのように火憐は弄る。
段々と私の中から……
「にゃはは!妹よ、お前はなかなか筋がいいにゃ!」
「きゃ!何?」
「しかし、出っ張りがないのが残念だにゃ」
「ひ、ひー」
「逃げなくても大丈夫だにゃ」
火憐を押さえつける。
「今から気持ちいい事するにゃ」
「や、やめろ!」
「それがお前の精いっぱいかにゃ?兄の方が強かったにゃ」
「お前!お前が兄ちゃんを!」
「それは違うにゃ。私は殺していにゃんかいにゃい」
「この化けもの!」
「はんっ、調子に乗るにゃ人間。今から腰が抜けるまでこれで責めるからにゃ」
バイブレータを取り出し、いきなり火憐の割れ目に押し込む。
「いでぇ!」
「痛いか人間。痛いぐらいじゃ死にゃないから心配しにゃくていい」
バイブレーターのスイッチを入れる。
その振動が火憐を襲う。
「あ、はう、いだい……でも、き、もちい……」
「痛いのか良いのかはっきりするにゃ!」
バイブを前後に動かす。
割れ目から鮮血が垂れ落ちる。
「にゃはー!真っ赤だにゃ。ついでにお前から少し力を分けて貰うにゃ」
火憐から力を吸い取り、殆ど動かなくなった火憐に対し声をかける。
「おい人間。もう逝ったかにゃ?死んだかにゃ?」
ピクピクと少し動く火憐。
「にゃかにゃかしぶといにゃ!」
その時、部屋のドアが勢いよく開いた。
「お前!」
「臭いのが来たにゃ」
「火憐ちゃんに何をした!」
手にはアイスピックが握られていた。
「そんな物で殺せると思うのかにゃ?人間……おや?お前、臭いと思ったら人間じゃにゃいな」
「何の話だ!」
「はっはーん。本人は気が付いていないようだが、中に居るのは不味そうな鳥だにゃ」
「いいから、火憐ちゃんを離せ!」
アイスピックを振り回し、猛進する月火。
「化け物同士仲良く出来ないのかにゃ?」
「誰が化け物だ!」
「にゃは!なら、お前から力を貰うにゃ」
猫が鳥に襲いかかる。
「お前、死なない鳥だにゃ」
「何の話だよ!」
「人間、お前傷の治りが早いだろう」
「昔からそういう体質だ!」
「それは違うにゃ!お前の中の鳥の影響だにゃ」
「さっきから何を訳のわからない事を言ってるのよ!」
「さて、話は終わりにゃ。お前のは全て吸いつくしてやるにゃ」
猫が月火に襲いかかる。抵抗するが、いとも簡単に月火は抑え込まれる。
「んにゃ、いただきますにゃ」
吸いつくす。限りなく吸いつくす。
殆ど動けなくなったから、犯してやった。
姉の鮮血混じりのバイブレーターを押し込む。
意識朦朧とした顔が歪む、美しい。
「あはは、痛い?痛いかにゃ?それとも……」
執拗にバイブを動かし、反応を見る。
が、動かなくなった。
「ありゃま?ショックで本体が死んじまったにゃ」
「さて、後始末するにゃ」
二人を自分達の部屋に押し込める。
月火の胸にはアイスピックを差し込む。
勿論、股間にはバイブを刺したまま。
火憐は床に転がし、廃人寸前まで力を吸い取る。
そして翌朝。
勿論、私は警察に電話をする。
夜中に喧嘩をしていたが、静かになったと取り調べで答える。
結局、変態姉妹が行為の最中に喧嘩になり、片方がもう片方を刺殺したという事に。
勿論、生き残った姉は……精神が崩壊している人間扱いを受ける。
そりゃそうよね
「猫が、猫がね月火ちゃんと私を襲ったの」
ふふ、だれがそんな事信じるのかしら?
あーもう少し遊びたかったのに。
本当は二人とも犯した後、油性マジックで胸元に1回100円と書いて、公園に放置する予定だったのにね。
まぁ、兄に続き、娘二人を失くした親なんて紙くず同然。
ちょっとした事で火が付いて、燃えて灰になるだけ。
あーすっきりした!
帰って軽く勉強でもしようかしら?
あ、そうそう黒猫のタンゴってしってる?
阿良々木、阿良々木君が私に黒猫のタンゴを歌ってくれていたなら、こうにはならなかったのに。
イタリアの原曲は「黒猫が欲しい」なのよ。
黒猫のタンゴ
おわり

