あかり「蟻さんの巣を潰すの」
元スレ
あかり「たのしいなぁ」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1439041633/
櫻子「もう手を離していいんだよ」
あかり「あかり何も持ってないよぉ」
あかり「しいて言えばアリさんの巣を攻める強圧ホースだけど・・・」
櫻子「赤座あかりという幻想から」
櫻子「もう解き放たれてもいいんだよ」
あかり「・・・え?」
櫻子「この世は山頂からみえる雲海のような幻でしかないから」
だから死んでいいんだよ
あかりちゃん
蟻さんの巣を攻めるあかりちゃんで
もういたくないでしょ
あの日娯楽部を全員刺殺してしまったことも
もうすべて夏の陽炎の記憶の中の
出来事でしかないんだからね
意味もなく
ただプライドの為に
ただ自分の複雑な脳のシナプスの反応故に
何故人はこうまでして
益もない事に注力するのか
全てストリートにかかれた
落書き程に
どうでもいい事象でしか
ないものなのに
あかり「あかりは蟻の巣を攻めたいからせめるのじゃないよぉ」
あかり「攻める理由がないから攻めるんだよぉ」
生きる理由がないから生きる
人間は
本来的になにかを犠牲に自分を成り立たせているのだから
そうやって生きるのが
とても理にかなっていた
理とは全て感情的なものを排しているからこそ
蟻の巣を攻める事にもなるのだ
あかり「娯楽部のみんなも苦しんでたよぉ」
櫻子「どんなふうに?」
あかり「刺突や擦過した傷では死なないの」
あかり「人は血が流れることで死んでいくの」
あかり「自分の命が流れ落ちていくのを」
あかり「壮絶な痛みと体温が抜ける冷たさの中で感じて」
あかり「絶望しながら、ただ死がくるのを待つしかできないんだよぉ」
あかり「呼吸は荒いし目は見開いてるし血がとめどなく流れるし」
あかり「人間の死はみものだよぉ」
どうすればいいのかわからなかった
あかりちゃんはそうすることでしか
表現できなかった
娯楽部をつぶすこと
すべてかんぜんに
そうすることであかりちゃんは
なにか自分の中の自我のどこかの部分が
保たれると信じていた
呆れるほどに
哀れなあかりちゃん
あかりちゃんは
未熟だから
だからそうやって
なんでも壊してしまえば
何か別の部分がよくなると
思ってしまった
日陰に育つ新たに芽吹いた双葉を生かす為に
日陰となった巨木を切り倒してしまう事
全ては
なにが悪いのか
もうあかりちゃんにはわからない
あかり「死んでしまいたいよぉ」
一時はそう思った
全国紙に報道された少女Aと記号化され
クソガキ強制収容施設にいれられてから
何度となく思った
だけだあかりちゃんは遂には死ななかった
あかり「ファックだなぁ」
毎朝空を見て
空の調子に感想を言った
どんな天気でもファックだとしか言わなかった
家族は富山の外に引っ越した
姉は東尋坊で自殺した
父親は会社を首になり白エビを
ひたすら手作業で殻を剥く人になっている
あかり「ファックだよぉ」
あかりちゃんが常に使える為に残してるお金は
500円程度になる小銭の集まりでしかなった
酷い頭痛と腹痛が
ときおりあかりちゃんを襲う
アルコールとドラッグの副作用で
脳や内臓は
これほどもないほどに
痛めつけられていたからだった
あかりちゃんは最早普通の生活を送ることが
出来なかったから
だからアリさんの巣を水で攻撃する事しか
やることがなかった
あかり「ごめんねぇあかりのお脳さん」
あかり「胃さん腎臓さん」
あかり「五臓六腑のみなさん」
あかり「あかりのせいで大変な思いをさせてるねぇ」
あかり「せめてもの償いに一杯おごるよぉごくごく」
あかり「うぐぐ腎臓のあたりがいてぇ・・・」
あかりちゃんは今になって
皆に謝りたかった
血を流してしんでいった皆に謝りたかった
どうせなら死んでいく途中くらいで
謝ればよかったと思っていた
死んでいくのはどうでもよかった
ただ謝りさえできればよかったのにと
あかりちゃんは後悔していた
死んでいくことは
ただの事象にしか過ぎない
そんなものにあかりちゃんは
興味がなかった
だからあかりちゃんは
ここぞという時に
謝って見た
期せずして万引きをして運悪く警備員にみつかり
逃げてる最中だった
あかり「ごめんなさい、京子ちゃん、結衣ちゃん、ちなつちゃん」
あかりちゃんは警備員を金属バッドで返り討ちにし
血にまみれた手で十字を切った
その頬に一筋の滴が流れた
雨だった
あかりちゃんは空を見上げた
曇天は厚く広かった
雨は優しかった
あかり「秋雨だぁ・・・」
長い夏が終わり、秋が始まろうとしていた
あかりちゃんの血で汚れた手を洗い流した
天から降る雨
神がもしいるなら
その手で切った十字に神がこたえたのかもしれない
――だけどもしも神がいたとしても
そんな雨は水道が発達した現代社会では
蛇口からの水で洗い流せるから必要なかった
神はアフリカの土人なのかもとあかりちゃんは一瞬思って
警備員の頭を粉砕してとどめをさした
あかり「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
いつだって
神は見てくれていない
ときおり見てくれてるかもしれないと思っても
どうでもいい事象を引き起こして
さっさと別の方をみている
あかりちゃんが教会で懺悔していても
そこではだれも聞いていなかった
あかり「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
あかり「ごめんなさい結衣ちゃん京子ちゃんちなつちゃん」
あかり「あかりもそれで死ぬから許してね」
あかりちゃんはナイフを手に取る
自身の心臓をとめるために
あかりちゃんはナイフを振り上げて
お団子を切り取った
あかり「お団子たち、あかりがいなくても強く生きてね」
ふたつのお団子は、涙に体を震えさせたのち、そそくさと草むらの中へと消えていった
あかり「それじゃあ死ぬよぉ」
あかりはチオペンタールと、ついで塩化カリウム・スクシニルコリンを
自身の体内にいれる
安らかな安楽死だった
赤座あかり享年13歳
時空が歪められたこの世界で
あかりちゃんは京子ちゃんや結衣ちゃんやちなつちゃんと
同じ年に死ぬことが出来た
赤座あかりちゃんよ永遠あれ