関連
狩人「目指すは伝説級ハンター!」【1】
―――――――――――
数日後の午後
ふもと村 広場
女「ふう……あー今回の仕入れは疲れたぁ」
女「ボッケ村の温泉にでも行ってこようかしら……」
女「…………」
女「狩人はどうしてるかな?」
女「また3乙とか、繰り返して悩んでたりして」 クスッ
女「うふふ♪」
―――――――――――
狩人の家
女「狩人ー? 居るー?」
女「……ん?」
コンナ雑ナ手入レシテ!
テ、テキトウデイイダロ!?
女「…………」
女「はい?」
女「…………」
女「狩人、入るよー?」
狩人「だから、そこは使っていないから……ん?」
少女「そんな調子だからいつまでも……え?」
女「……少女ちゃん?」
少女「……女さん?」
狩人「女、仕入れから帰ってきてたのか」
少女「!」
少女(呼び捨て!?)
女「そう。 で、狩人、どうしてるかなーと様子を……と思ったんだけど」
女「邪魔だった?」
狩人「いやいや、全然邪魔じゃないよ」
少女「…………」
女「ところで何してたの?」
狩人「あー……その」
少女「……ちょっとお世話になったので」
少女「部屋の掃除でもしてあげようとしたら、いちいち文句を言うんです」
狩人「それは少女の方だろ……」
女(……ん?)
少女「どうしてよ?」
少女「こんな雑然とモノが散乱して、きったない部屋!」
少女「徹底して整理整頓しないとダメでしょ?」
狩人「俺は、この状態のままで何の支障もなく暮らしてるんだから」
狩人「このまま掃除すればいいんだよ」
女(…………)
女「……えと」
女「何か、二人とも急に仲良くなったわね?」
少女「……!」///
狩人「……そうですか?」
女(……ほうほう)
女(そういう事ですか)
女「まあ、取り込み中みたいだから」
女「私はこれで。 じゃあね、狩人!」
狩人「え? ……あ、ああ」
スタ スタ スタ…
少女「…………」
狩人「…………」
少女「……私も帰る」
狩人「へ?」
スタ スタ スタ…
狩人「…………」
狩人「何なんだよ……ったく」
狩人「…………」
狩人「…………」
狩人「俺もアイルー雇おうかな……」
狩人「はあ……」
―――――――――――
数日後の午前
雪山
ダンッ! ダンッ! ダンッ!
少女「くっ……!」
ギュアッ! ギュアッ!
狩人「よっと!」(防御姿勢) ガキッ!
狩人「大丈夫か?」
少女「ええ、ありがとう」
狩人「はあっ!」 ズバッ!
―――――――――――
少女「ふう……」
狩人「…………」
狩人(ドスギアノスでも結構時間がかかるな)
狩人(こりゃ……単独で狩りをするのには向いてないかも)
少女「……思ったより時間がかかるわね」
狩人「……そうだな」
狩人「でも、結構使えてる方じゃないか?」
少女「一応、練習はしたから……」
狩人「俺も一度、真似してやってみたけど」
狩人「リロードをついうっかり忘れてしまうんだよなぁ」
少女「私も出来るだけ気をつけているんだけど……」
少女「困った事にボウガンごとで打てる弾丸の種類や装弾数が違ったりするの」
狩人「うひゃあ……」
少女「目的や自分に合うボウガンを選別して、慣れていくしかないわ」
少女「でも、そこに目をつぶれば十分メリットがある武器よ」
狩人「俺はダメだなぁ……そういうの」
狩人「絶対管理できない自信がある」
少女「まあ、その辺りは人それぞれだと思うわ」 クスッ
少女「今後しばらくボウガンでやってみる」
狩人「そうか」
少女「狩人はガンナー武器、使わないつもりなの?」
狩人「う~ん……そう言われると、何か覚えた方がいい様に思えるなぁ」
少女「狩人は弓が向いてると思う」
少女「大剣と同じく溜め攻撃できるし」
狩人「そうなの?」
少女「どういう仕組みかわからないけど」
少女「弓矢は無限に出てくるのも勧める理由の一つ」
狩人「なにそれこわい」
少女「竜人族の秘法だとか何とか……」
狩人「……何か怪しげな雰囲気プンプンするなぁ」
少女「でもリロードの手間はないし、扱いやすさはダントツだと思う」
狩人「なら少女は、どうして使わないんだ?」
少女「……非力で弦を引けないのよ」
狩人「あ……ご、ごめん」
少女「ううん。 あやまらなくていい」
少女「それよりもこれでだいたいの感じは掴めたわ」
少女「ありがとう、狩人」
狩人「いや、別に礼を言われるほどの事じゃ……」
少女「ふふふ」
少女「さて、それじゃそろそろ戻りましょうか」
狩人「そうだな」
狩人(……ガンナー武器か)
狩人(やっぱり何かひとつくらい使えた方がいいんだろうな)
―――――――――――
夕方
ふもと村 広場付近
ガヤ ガヤ
狩人「……ん?」
少女「何か……騒がしいわね?」
女「あ、狩人に少女ちゃん。 お帰り」
狩人「ただいま」
少女「女さん、何か騒がしいみたいですけど……」
女「ああそうか、二人は初めてだっけ」
女「明日、村総出で避難訓練するの。 その準備だよ」
狩人「避難訓練?」
少女「……モンスター対策ですか」
女「うん、正解」
女「5年くらい前かな?」
女「この村、ティガレックスに襲われたの」
狩人「!」
少女「…………」
女「それ以前も訓練はしてたんだけど……長いあいだ平和だったからいい加減でね」
女「ハンターが仕留めてくれたけど、村の住人に犠牲者が出てしまったわ」
女「で、それ以降、ちゃんとしようって事になって」
女「準備も念入りになったの」
狩人「……そうだったんですか」
少女「私たちはどうすれば?」
女「あなたたち村付きのハンターは」
女「基本、襲ってきたモンスターを倒すか、撃退するって事になる」
狩人「ですよね……」
女「でも、ケース・バイ・ケースという気もするわ」
少女「え……」
女「敵わない相手……例えばG級モンスターとかが襲ってきたら」
女「HRの低いハンターじゃ相手にならないし……」
女「ギルドの方でも最近じゃ規定を変えて、村付きハンターにも」
女「一定の撤退権を認め始めているって聞くしね」
少女「何を言ってるんですか!?」
女「!?」
狩人「!?」
少女「私はこの村の住人の為に最後まで戦います!」
少女「たとえ、G級モンスターが相手でも!」
女「そ、そう。 そう言ってくれると、この村の一員として嬉しいわ」
少女「村付きハンターが村を見捨てて逃げるなんて……あってはいけない事ですよ!」
少女「絶対に!」
狩人「…………」
女「……うん。 たぶんそれは正しいし、村付きハンターの契約条項にも書いてあるね」
女「だからこそ、住処だって村が用意しなくちゃならないし」
女「これまでずっと、ギルドが逃げたハンターに制裁を加えていた」
狩人「…………」
女「でもね。 世の中、気合や根性だけで何とかできる訳じゃない」
少女「…………」
女「契約でそうなってるからって、死ぬとわかっている相手に向かって行けなんて」
女「私は言いたくない」
狩人「女……」
少女「…………」
女「もちろん助けて欲しいとは思うし、私たちを見捨てて逃げて欲しくないけど」
女「ハンターが敵わない相手なら、最初からみんなで逃げた方がいいわ」
狩人「…………」
狩人「……俺も」
狩人「できれば戦いたいし、敵わない相手に向かって行って死にたくないです。 でも……」
狩人「この村が無くなるのも嫌だ」
女「……うん。 私はそれでいいと思う」
少女「…………」
女「でね、一応最悪の事を考えて対策は講じてあるの」
狩人「というと?」
女「まずはお金ね」
女「ふもと村は割と交通の要になっていて、経済的には潤ってる方なの」
少女「……村つきハンターが4人も居ますしね」
女「ふふふ、そうね」
女「で、村のみんなで毎年少しずつお金を出し合って、蓄えをしているわ」
女「いざという時は、復興にこのお金を使う予定」
女「管理はギルドに任せて預けているわ」
狩人「なるほど、いい考えですね」
女「それから避難経路の複数化」
女「住人が一斉に同じ方向へ逃げたんじゃ、混乱するし」
女「モンスターが追いかけてきた時、一網打尽にされる危険性がある」
女「5年前は、このせいで犠牲者が出てしまった」
少女「…………」
女「ふもと村では、住んでいる地区ごとに逃げる方向を決めていて」
女「どれか一つ、モンスターに襲われても……」
女「住人全部が犠牲にならない様にしているわ」
狩人「……ひとりも犠牲者が出ない様に頑張ります」
少女「…………」
女「うん、期待してる」 クスッ
女「それから近隣の村同士の連携も呼びかけていて」
女「モンスターだけでなく、自然災害などで被害が出ても」
女「お互いがお互いを助け合うよう協定を結んでいるわ」
狩人「すごい……完璧ですね!」
女「まあ、私が考えたんじゃないんだけどね……」
少女「…………」
女「それじゃ、私、そろそろ行くね?」
狩人「ああ、ありがとう!」
狩人「明日の訓練、俺も頑張るから!」
女「うん!」
スタ スタ スタ…
狩人「いやぁ~……それにしてもいろいろ考えているんだなぁ」
狩人「世の中には頭のいい人が居るもんだ……」
少女「…………」
狩人「少女?」
少女「……え?」
少女「ごめん……聞いてなかった。 何?」
狩人「い、いや、何か様子が変だなって思って……」
少女「そう……」
少女「じゃ、私も帰るわ」
少女「今日はありがとう、狩人」
狩人「あ、ああ……お安い御用さ」
少女「またお願いね」
スタ スタ スタ…
狩人「…………」
狩人(……なんか、元気が無かったな?)
―――――――――――
少女の家
ドサッ…
少女「……ふう」
コックアイルー「あ、おかえりなさい、ご主人様」
コックアイルー「夕飯は何にしますかニャ?」
少女「そうね……」
少女「…………」
少女「お任せにするわ」
コックアイルー「わかりましたニャ!」
タッ タッ タッ…
少女「…………」
少女(……そんな対策)
少女(私の村だって、やってたわよ……!)
少女(…………)
少女(みんな……いざという時はわがままで、身勝手で……)
少女(誰ひとりとして、訓練通りに動かなかった……近隣の村も手のひらを返した)
少女(…………)
少女(信頼していたハンターは真っ先に逃げ、それが引き金になった)
少女(ギルドに制裁を加えられた事が……唯一いい出来事)
少女(…………)
少女(……ギルドが制裁を止めたら、もっと犠牲が増えるだけよ)
―――――――――――
ロートルの家
ロートル「ほう? 女ちゃんが説明してくれたのか」
狩人「はい」
ロートル「俺の仕事が無くなったな」 クスッ
狩人「いや、そんな事はないですよ」
狩人「実は聞きたい事があって……」
ロートル「ほう?」
狩人「明日の訓練の俺の役割と……」
狩人「村付きハンターの契約についてです」
ロートル「訓練については、そんなにやる事はない」
ロートル「俺たちの役割は、住民が逃げる時間を稼ぐって事の再確認という感じだ」
ロートル「で、村付きハンターの契約って?」
狩人「女に聞いたんですけど……」
狩人「逃げたハンターに制裁を加えなくなりつつあるとか」
ロートル「ああ、それならとっくに制裁条項は改変されているぞ」
狩人「そうなんですか?」
ロートル「以前は問答無用で逃げた村付きハンターをギルドが粛清していたが」
ロートル「そうする事で困った出来事が起こったんだ」
狩人「というと?」
ロートル「例えばだ」
ロートル「このふもと村はまだ比較的襲われにくい村だが」
ロートル「中には襲われやすい村や、危険地帯に近いところに村があった場合」
ロートル「危険性は格段にアップする」
狩人「はい」
ロートル「そういうところに送られるハンターは、優秀な奴が多いが」
ロートル「それでも限界があるし、誰もが命を投げ打って戦ってくれるわけじゃない」
狩人「そうですよね……」
ロートル「そこでギルドは粛清を思いつくわけだが」
ロートル「そうなると引退を宣言するハンターが続出した」
狩人「!」
ロートル「最初は村の移転を望んだのだが、そんな事いちいち聞いてられるほど」
ロートル「優秀なハンターが居る訳じゃない」
ロートル「当然、却下していたが、命を大事にしたいハンターは」
ロートル「やむを得ず、引退を選ぶようになった、というわけだ」
狩人「…………」
ロートル「こうなるとハンターの居ない危険地帯の村々は どんどんと人が住まなくなり」
ロートル「ギルドとしても、探索の拠点や中継点を次々失うという事態に陥った」
ロートル「加えて、いままで安全だった土地にまでモンスターが現れる様になり」
ロートル「人間の活動領域まで狭くなるという事に繋がりかねなくなった」
狩人「…………」
ロートル「そして、ギルドは粛清を止め、一定の条件下で撤退を認め」
ロートル「粛清ではなく、罰則金、という形を取る事にしたんだ」
狩人「そうだったんですか……」
ロートル「規定では古龍及びG級個体は、HRに関わらずどんなハンターでも逃げてもよし」
ロートル「上位及び下位モンスターの場合はHRによって罰則金の支払い」
ロートル「と、大まかに定められている」
狩人「……G級は逃げてもよし、ですか」
ロートル「……酷なようだがな」
ロートル「G級モンスターってのは、本当に化物だ」
ロートル「ギルドが認めているG級ハンターですら」
ロートル「戦う相手が『何か』わかっていて、下準備をしていないと」
ロートル「まともに戦う事すら出来ない怪物なんだよ」
狩人「…………」
ロートル「……とまあ、こんな感じだ」
狩人「あ……はい」
狩人「ありがとうございます、よく分かりました」
―――――――――――
数日後の朝
狩人の家
狩人「ふああああ……」
狩人「…………」 ムニャ ムニャ…
狩人「…………」
狩人「……さて、起きるか」
狩人「井戸……顔を洗いに行かないと……」
狩人「ふあぁぁ……」
バシャ バシャ
狩人「ふう……」 フキフキ
狩人「…………」
狩人(避難訓練は滞りなく終了した)
狩人(ロートルさんの言う通り、俺たちハンターの出番はそれ程なく)
狩人(村の住人総出で訓練を行っていた)
狩人(…………)
狩人(モンスターが村に出現と同時に特殊な半鐘が鳴らされ)
狩人(それぞれの地区の住人が、それぞれの避難道へと逃げ混んでいく)
狩人(G級かどうかは関係なく、モンスターが現れたら、即、逃げる)
狩人(それが基本姿勢の様だった)
狩人(…………)
狩人(……それもそうか)
狩人(ハンターでもない、一般の人にとって)
狩人(G級個体だろうが、ドスギアノスだろうが)
狩人(危険度は変わらないわけだしな……)
狩人(…………)
狩人(……俺は、どこか)
狩人(ハンターという仕事を軽く考えていたのかもしれない……)
狩人(…………)
―――――――――――
集会所
ガヤ ガヤ
狩人「…………」
狩人(……ダメか)
狩人(掲示板に依頼貼ったけど、誰も来てくれない)
狩人(今日は少女も居ないし)
狩人(かと言ってロートルさんやソロさんに頼むには内容が低いし)
狩人(…………)
狩人(しょうがない……ひとりで行くか) ハア…
パァ~フォ~
―――――――――――
密林 BC(ベースキャンプ)
狩人「さて、着いた」
狩人「依頼内容は……ゲリョス……と」
狩人「初めて戦う奴だから、誰かと来たかったが……しょうがない」
狩人「おろしたてのフルミナントソード(大剣)もあるし、気をつけて戦おう。 うん」
狩人「さて、出発するか」
―――――――――――
ザッ ザッ ザッ…
狩人「!」
狩人(居た! 多分あいつだ!)
狩人(紫色の外皮に変わった感じのトサカ……硬そうだな、あれ)
狩人(それに尻尾……なんかフルフルみたいに多少は伸び縮みするのかもしれない)
狩人(テールアタックには気を付けないと……)
ドスッ… ドスッ… ドスッ…
狩人(大きさはフルフルと同じか、ちょい小さいくらいか)
狩人(尻尾に気をつけて間合いを考えよう)
狩人(よし……ペイントボールを当てて) グッ
ブンッ! ヒュ―――…… ベチャッ!
狩人(うし、ペイント成功!)
狩人(戦闘開始だ!)
ギュワアアアアアア――!
ペッ!
狩人「!?」
狩人(何か吐き出した!!)
狩人「くっ……!」 回避!
ドベチャッ!
狩人「うへぇ……何だこれ? 気持ち悪い紫の液体 吐き出したぞ……」
狩人「何か分からないけど、絶対当たらない方がいいな」
狩人「……ん?」
ガンッ! ガンッ! ガンッ!!
狩人「何だ? トサカを火打石みた――」
ビ カ ァ ッ !!
狩人「うわああああああああっ!?」
狩人「目、目が……目がああああっ!!」
ドスッ ドスッ ドスッ!
狩人「っ!」
狩人(この音! 近づいてきてる! ヤバイッ!!)
狩人「く、くそっ!」
コケッ
狩人「ぎゃふんっ!」
ベチャッ!
狩人「うわあああっ!? こ、これ、さっきの紫のやつか!?」
バゴォッ!!
狩人「ぶべらっ!」
―――――――――――
ふもと村 集会所
狩人「」
救助アイルー「毎度どうもニャ」
受付嬢「ご苦労様」
流れハンター「……またあいつか」
流れハンター「今度は何にやられたんだ?」
ハンター(女)「確か……ゲリョスって聞いたけど」
ハンター(女)「この前はドスゲネポスに3乙してたよ」
色黒ハンター「これだけ3乙してて生き残ってるのも ある意味すごいな」
色黒ハンター「組みたいとは、これっぽっちも思わないけどな……」
―――――――――――
狩人の家
ドサッ…
狩人「…………」
狩人「……疲れた」
狩人「…………」
狩人(あのトサカの閃光……真面目に厄介だ)
狩人(二回目は大剣で防ぐ様にしたけど)
狩人(今度はテールアタック……しかも何だよ、あの伸び縮みは)
狩人(最後はあの液体……救助アイルーが毒だって言ってたな……)
狩人(いずれにしてもコテンパン……)
狩人(そしてまた契約料稼ぎしないと、依頼が受けられない)
狩人「はあ……」
狩人「…………」
狩人(……やっぱり、少女に聞いてから挑むべきだったかなぁ)
狩人(…………)
狩人(……何か、割のいい採取クエ)
狩人(ないかなぁ……)
狩人(はあ……)
―――――――――――
ロートルの家
ロートル「割のいい採取クエ?」
狩人「はい……虫がいいのはわかっていますけど」
狩人「もうキノコや鉱石じゃ追いつかなくて……」
狩人「何かありませんか?」
ロートル「ふむ……割のいい、ね……」
狩人「…………」
ロートル「…………」
ロートル「……狩人は、忍耐力のある方か?」
狩人「え? 忍耐力?」
ロートル「まあ一度やってみて、合わなければ止めればいいか」
ロートル「森丘に行った事はあるか?」
狩人「ええ、ドスランポス狩りに行きましたから……」
ロートル「あそこのBC(ベースキャンプ)設置場所近くに」
ロートル「黄金魚が釣れる池があるんだ」
狩人「黄金魚? それに釣り?」
ロートル「釣りをやった事は?」
狩人「……無いです」
ロートル「まあ、経験は無くてもエサで何とかなるが……」
ロートル「釣れるまで我慢しないといけないからな」
狩人「で? 黄金魚って売れるんですか?」
ロートル「一匹500z(ゼニー)になる」
狩人「」
狩人「ちょ!? 一匹500z(ゼニー)!?」
狩人「キノコの採取クエ一回分程度の報酬を一匹で貰えるんですか!?」
ロートル「ああ」
狩人「いい事を聞きました!」
狩人「さっそく明日にでも……」
ロートル「あー待ってくれ、狩人」
狩人「はい?」
ロートル「さっきも言ったけどな、釣るまで忍耐力がいる」
ロートル「高い魚だけになかなか釣れないんだ」
狩人「……そうですか」
ロートル「そこでエサなんだが……『黄金ダンゴ』というものを使えば」
ロートル「結構食いついてくれるぞ」
狩人「どうやって手に入れるんですか?」
ロートル「ツチハチノコと釣りフィーバエか、釣りホタルを混ぜるとできる」
狩人「なるほど、ツチハチノコと釣りフィーバエ……ん?」
狩人「ツチハチノコって、聞いた事ないんですけど?」
ロートル「あれは蜂の巣箱とか、ハチミツ採取でたまに取れるんだよ」
狩人「え……そうだったんですか」
狩人(蜂の巣なんて無視してたな……)
ロートル「もし、持ってないのならストアの女ちゃんに聞いてみるといい」
ロートル「少々高いが、買う事もできるぞ」
狩人「分かりました!」
狩人「黄金ダンゴ……ツチハチノコと釣りフィーバエか、釣りホタルですね」
狩人「とにかくやってみます!」
ロートル「ああ、頑張ってみてくれ」
―――――――――――
翌日の午前中
ふもと村 広場 ストア前
狩人「女!」
女「ひえっ!?」
女「か、狩人?」
女「どうしたの? 薮から棒に……」
狩人「ツチハチノコ! ツチハチノコを売ってくれ!」
女「……あ~、黄金魚か」
狩人「そう!」
女「ちょっと待ってね……」 ゴソ ゴソ…
女「はい」
狩人「おお……これがツチハチノコか」
狩人「一匹いくら?」
女「150z(ゼニー)」
狩人「高ぇ!?」
女「そりゃあ黄金魚の買取価格が一匹500z(ゼニー)だもの」
女「必然的に高くなるわよ」
狩人「これは予想外だった……」
女「どうする? またにする?」
狩人「…………」
狩人「2匹、くれ」
女「毎度♪」
―――――――――――
森丘 BC(ベースキャンプ)
狩人「……くそっ」
狩人「調合に一回失敗した……」
狩人「…………」
狩人「なぁに! それでも黄金魚一匹釣れば200z(ゼニー)儲けだ!」
狩人(フツーに採取すれば良かったって思うな、俺!) ←若干涙目
狩人「さあっ! 釣るぞー!!」
ポチャン
狩人「♪~」
狩人「♪♪~」
―――――――――――
狩人(…………)
狩人(…………)
狩人(…………)
狩人(…………)
(浮き)プカ プカ
狩人(…………)
狩人(…………)
狩人(…………)
狩人(……まあ、なかなか 釣れないって聞いてるし)
―――――――――――
狩人(…………)
狩人(…………)
狩人(…………)
狩人(…………)
(浮き)プカ プカ
狩人(…………)
狩人(…………)
狩人(…………)
狩人(…………)
(浮き)プカ プカ
狩人(…………)
―――――――――――
狩人(…………) イライラ
狩人(…………) イライラ
狩人(…………) イライラ イライラ
(浮き)プカ プカ
狩人(…………) イライラ イライラ
狩人(…………) イライラ イライラ
狩人(…………) イライラ イライラ イライラ イライラ
(浮き)プカ プカ
狩人「だ―――――――――――!!」
狩人「やってられっか―――――――――――!!」
狩人「もう夕方じゃねーかよ……」
狩人「何で釣れないんだよぉ……」
狩人「普通に採取クエやってれば良かった……」
―――――――――――
集会所
ロートル「おお、狩人」
ロートル「黄金魚は釣れたか?」
狩人「一日粘ったけど、ダメでした……」
ロートル「そうか……釣れる時は釣れるんだけどな」
狩人「はあ……」
ソロ「黄金魚だって?」
狩人「あ、ソロさん」
狩人「頑張ったんですけど……釣れませんでした」
ソロ「そうか……洗いは試したか?」
ロートル「ん? 洗い?」
狩人「洗いって何ですか?」
ソロ「普通に魚を釣って、黄金魚が出てくるのを待つ方法だ」
ソロ「黄金魚は臆病な魚でな。 他の魚がたくさんいると出てこないが」
ソロ「普通の魚を釣って減らすと出てくる事があるんだよ」
狩人「」
ロートル「そ、そんな方法があったのか!」
ソロ「ああ」
ソロ「それから黄金ダンゴは、黄金魚を見かけてから使わないと意味がない」
ソロ「他の魚は食いつかないし、黄金魚がいない時に使っても徒労に終わる」
狩人「」
ロートル「な、なんだって!?」
ソロ「知らなかったのか? ロートル」
ロートル「……ああ、今初めて知ったよ」
狩人「…………」
ロートル「何て言うか……すまん、狩人……」
狩人「……イエ。 マタアシタガンバリマス。 ハハハ」
トボ トボ トボ…
ソロ「……どうやら やらかしたみたいだな。 ロートル」
ロートル「……今度、飯でもおごって お詫びしておくさ」
俺が何したって言うんだ……畜生
あ……晩飯食うの忘れた。
何か……ホントにダメダメな一日だったな
もう寝よう……
腹がぐうぐう鳴ってたけど
何かする気力はもう無く……
俺はそのまま眠りについたのだった……
345 : 以下、名... - 2015/05/19 19:55:36 uA9ELKXw 319/1043
※補足説明
ツチハチノコですが、P2Gでは、村施設の蜂の巣箱のみで採取できます。
フィールドにある蜂の巣では取れません。それから行商婆さんからしか買えません。
あと調合は釣りホタルのみです。
今回のお話で『 洗い 』なるテクニックが出てきましたが
これは>>1が勝手に名付けた技名で、公式でも何でもありません。
3以降は、黄金ダンゴを投げ入れると黄金魚だらけになりますが
P2Gでは、マジに黄金魚を確認してから使わないと意味が無く
>>1も狩人と同じく無為に時間を過ごし……ゲフンゲフン。
最後にP2Gで黄金魚はz(ゼニー)ではなく『ポッケポイント』という
今で言う『旅団ポイント』みたいな扱いの架空貨幣のみに交換されます。
蛇足ですが、>>1の周りで『ポッケポイント』稼ぎ方法No.1は
訓練所クエをヤリまくる事でしたが……>>1は黄金魚釣りが大好きで
マカルパ装備買って、釣りまくりました。
何で4や4Gもそうしてくれなかったのかなぁ……『旅団ポイント』稼ぐの地味に辛い。
以上です。
―――――――――――
半月後の午前中
集会所
ガヤ ガヤ
少女「…………」 ムスッ…
ソロ「……何だか機嫌が悪そうだな、あの娘」
ロートル「ここに居るという事は、あの日じゃないだろうし」
ロートル「狩人と同じく、狩りが上手く行っていないのかもしれん」
ソロ「そういえばガンナー武器を使い始めた、とか聞いたな」
ロートル「ああ」
ロートル「たぶんそういう事なのだろう」
少女「…………」 ムスッ
少女(……まったく、狩人ったら)
少女(一体何を一生懸命になっているのよ)
少女(…………)
少女(私との狩りより大事なことなの……?)
少女(…………)
少女(それとも……誰か私以外のハンターと仲良くなって)
少女(そのハンターと一緒に……?)
少女(…………)
少女(ま、まさか……ね)
少女(…………)
―――――――――――
森丘 BC(ベースキャンプ)
バシャバシャバシャ!
ザバーンッ!
狩人「っしゃあー!」
狩人「大食いマグロキター!!」
狩人「これでマカルパ装備まで後一歩だぜ!!」
狩人(黄金魚のことを職人さんに話したら)
狩人(釣りが格段に上手くなるという装備の情報を聞けてラッキーだった!)
※注 マカルパ装備一式揃えると『釣り名人』というスキルが発動します
狩人「さぁーて、次々……お?」
狩人「…………」
狩人「キター!!」
狩人「黄金魚キター!!」
狩人「黄金ダンゴを付けて……と」
狩人「ウヒヒ♪」
狩人(あー……ここは雑魚モンスターも来ないし)
狩人(コツを覚えたら釣りってメチャクチャ楽しいわー♪)
狩人(行ける……!)
狩人(この分なら、キッチンアイルーだって、オトモアイルーだって雇える様になる!)
ボチャン!!
狩人「はいキター!!」
―――――――――――
昼頃
ふもと村 広場付近
ガヤ ガヤ
女「あら、少女ちゃん」
少女「女さん」
女「どうしたの? 今日は狩りに行かなかったの?」
少女「ええ……欲しい素材のモンスター討伐依頼がなかったので」
女「そう」
少女「じゃ……」
女「…………」
女「あ、ちょっと待って、少女ちゃん」
少女「はい?」
女「お昼はもう済ませた?」
少女「済ませました」
女「そう……んーそれじゃあ」
女「食後のお茶でもどうかな?」
少女「お茶……ですか?」
女「まあぶっちゃけると、それは口実」 クスッ
女「たまには女の子同士、お話でもしない?と思って」
女「どうかな?」
少女「…………」
―――――――――――
ストア裏 女の家
女「どうぞー」
少女「お邪魔します」
女「ちょっと待っててね。 お茶を持ってくるから」
少女「はい」
カチャ カチャ…
少女(…………)
少女(あ……あの服。 とっても可愛い)
少女(…………)
少女(……ハンターの私には必要のない物ね)
女「お待たせ~」
コト…
少女「ありがとうございます」
女「んー硬いなぁ」
少女「え?」
女「そりゃ歳は、ちょ――っとだけ、離れてるけど」
少女「はは……」
女「できれば、もっと気さくに話してくれると嬉しいな♪」
少女「と、言われても……」
女「まあ急には無理よね」 クスッ
ズズッ…
女「でさ、すっぱりズバッと聞くけど」
少女「はい?」
女「少女ちゃんて、狩人のコト好きなの?」
少女「んなっ!?」///
少女「ななな、何を言っ」///
女「わかりやすいなぁ~」
少女「~~~っ!」///
女「別に恥ずかしがる事じゃないよ、少女ちゃん」
女「狩人って、ダメなところたくさんあるけど……」
女「きっと少女ちゃんのコト、大事にしてくれると思うな」
少女「…………」
少女「女さんはどう思ってるんですか?」
女「私? んー……そうねぇ」
女「手のかかる弟、って感じかな」
少女「そうなんですか?」
女「だってダメだのハズレだのっていう噂を聞いて」
女「最初の出会いが3乙仕立ての姿で、まー子鹿みたいな泣きそうな顔してたし」
女「男としての魅力、これっぽっちも感じなかったんだもの」
少女「あはは……」
狩人「……っえくしっ!!」
女「けどね」
女「あいつ、前向きでさ」
女「どこか憎めなくて、応援したくなるのよ」
少女「…………」
女「そういうトコに少女ちゃんもやられたのかな?」
女「何て言うか、母性本能くすぐられた?みたいな?」
少女「私は……」
少女「……正直、よく分かりません」
女「分からない?」
少女「いい人だとは思います。 けど……」
少女「何て言うか……具体的に『どこ』に惹かれたのか」
少女「よく分からないんです」
女(んー♪ 初々しいなぁ♪)
女「そっか……」
女「よく分からないけど、好きなんだ?」
少女「そ、それは……そのっ……はい」///
女「あはは♪」
女「まあ好きになる人なんて、理由なんか無くても出来るものよ」
女「狩人は物件として、イマイチかもしんないけど」
少女「……そうですか?」
女「ごめん、悪気があるわけじゃないのよ?」
女「ただ、あいつ、人を信用しすぎて将来騙されそうな気がするのよねー」
少女(……分かる気がする)
少女(本人も言われた事を疑わずに……とか言ってたしなぁ)
少女「女さんはどうなんですか?」
少女「好きな人、居ないんですか?」
女「私かぁ……職業柄、いろんなモノ見ちゃったからねぇ」
女「少女ちゃんみたいに純粋な『好き』って気持ちになれないのよー」
少女「……もったいないですよ」
少女「女さん、とっても美人なのに」
女「うふふ、ありがと♪」
少女「ソロさんとか、かっこいいし」
少女「ハンターとしても一人前じゃないですか?」
女「んー……ソロさんねぇ」
女「あの人、なんかビビリだし」
女「私と一緒にいたら、ソロさんの方がまいっちゃうんじゃ無いかな?」
少女「ビビリって……」
女「あれ? 気が付いてない?」
女「あの人、誰かと話す時、目を合わせないか伏し目がちで話すの」
女「たぶん人嫌いじゃなく、人に怯えていると思う」
少女「そうなんですか?」
女「もちろん根拠も何もないけど」
少女「…………」
女「でもま、私だって結婚をあきらめてるとかじゃないんだよ?」
女「いい人がいればな、とは思ってるんだけどね……」 ハハハ…
少女「どういう人が好みなんですか?」
女「それがねー……いまいちよく分からないのよー」
女「そりゃね? お金持ってる人とか、経済的に潤っている人なら将来安心だけど」
女「それってなんか違うって思うし」
女「かといって、いくらかっこいい人でもその辺りがズボラなのは嫌だし」
女「だいたい若い人にそんな奴いるか!って話になるじゃない?」
少女「はあ……」
女「今のはちょっとした理想を言っただけだけど……」
女「自問自答しても答えが出てこないのよね」
少女「…………」
女「だから……さ」
女「私、少女ちゃんが羨ましいのかも」
少女「え?」
女「私もさ、少女ちゃんみたいに誰かを純粋に好きなって」
女「その気持ちに正直になって行動できたら……きっと幸せだろうなって」
女「考えちゃうの」
少女「…………」
少女「幸せ……ですか?」
女「うん! だって今の少女ちゃん、以前よりさらに可愛くなったんだもん」
少女「……そうですか?」
女「そうよ? いつもハンターの格好だけど」
女「たまにはさ……」
ファサ…
女「こういう服を来て、狩人の奴をメロメロにしてみたらいいと思うな!」
少女「あ……」
少女「…………」
女「どうしたの? こういう服は嫌い?」
少女「いえ! 嫌いだなんて!」
少女「むしろ好きですよ!」
女「ふふ、でしょでしょ?」
少女「……でも」
女「ん?」
少女「…………」
少女「ハンター生活に必要のないものですから」
女「…………」
女「少女ちゃん」
少女「はい?」
女「何を言ってるの!?」
少女「はひっ!?」
女「こういうものはね、無駄とかじゃないの!」
女「女の子が女の子である為の必需品! 心の潤いを保つ為の清涼剤なのよ!」
少女「は、はあ。 心の……潤い?」
女「自分を可愛いなー♪とか思えるって、とっても大事なんだから!」
女「そうだ! そんなこと言うからにはお化粧とかも知らないでしょ!?」
少女「し、知らないです……」
女「あーもう! 気が付いて良かった!」
女「こうなったら、私が徹底的に女の子の嗜(たしな)みを教えてあげる!」
女「いいえ! 女子力をアップさせてあげるわ!」
少女「…………」
少女(どうしよう……断れそうにない)
―――――――――――
森丘 BC(ベースキャンプ)
狩人「っしゃー! これで黄金魚9匹目!」
狩人「一日で4500z(ゼニー)もの大金を稼げたぜ!」
狩人「…………」
狩人「……ここまで来たら、魚籠(びく:魚を一時保留するカゴの事)をいっぱいにしたいな」
狩人「次、釣れたら帰るとするかな!」
狩人「♪~」
ザッ ザッ ザッ…
?????「……おや? 先客が居たのか」
狩人「え?」
?????「ほほう……随分とお若いの」
?????「隣、いいかな?」
狩人「え? ええ、どうぞ」
?????「ふふ、よっこらせっと……」
ポチャン…
?????「ふう……」
狩人「…………」
狩人(……ここに来た、という事は)
狩人(このお爺さんもハンターって事か……)
?????「…………」
狩人「…………」
ボチャッ! バシャバシャ…
?????「ほっ……もう来たか。 よっと」
スルッ…
狩人「!」
狩人(う、上手い! それもあんなにあっさりと黄金魚を……)
?????「……お前さん、名前は何と言うのかの?」
狩人「え? ……狩人って言います」
?????「ほほう。 お前さんか、最近うわさの3乙ハンターとは」
狩人「……否定はしませんけど」
?????「ほっほっほ」
ポチャン…
狩人「…………」
?????「…………」
狩人「あの……」
?????「何かな?」
狩人「あなたはハンターなんですか?」
ボチャッ! バシャバシャ…
スルッ…
?????「……ああ、いかにも」
狩人「なんていうお名前なんですか?」
?????「そうさな……老ハンターとでも呼んでくれ」
狩人「老ハンター……ですか」
老ハンター「ああ……さて、帰るとするかの」
狩人「え? 今来たばかりじゃないですか?」
老ハンター「ええんじゃ」
老ハンター「ワシのような老いぼれハンターはの」
老ハンター「日々を生き抜く糧があれば、それで十分じゃよ」
老ハンター「もうクックはおろか、ドスランポスすら狩れぬからの」
狩人「それなら……たくさん取って売れば、後が楽になるんじゃないですか?」
老ハンター「確かにな」
老ハンター「じゃが……毎回それができるかどうか分からぬし」
老ハンター「若い連中の邪魔はしたくないからの」
狩人「邪魔だなんて……」
老ハンター「お前さん……狩人と言ったか」
老ハンター「3乙ハンターなどと噂されるからには」
老ハンター「普通のクエで失敗ばかりしておるのだろう?」
狩人「…………」
老ハンター「ええんじゃ。 失敗は若い時にたくさんしておけばええ」
老ハンター「次の成功に繋げるために黄金魚をどんどん釣ればいい」
老ハンター「ワシはの……その邪魔をしたくないんじゃよ」
狩人「老ハンターさん……」
老ハンター「ふふ……無駄話をしてしまったな」
老ハンター「じゃが、無理はするでないぞ?」
老ハンター「3乙ができるのも運が良かっただけかもしれぬ」
老ハンター「再挑戦出来るうちは、1乙で撤退も考えておくとよかろうて」
狩人「……そうですね」
老ハンター「では、機会があれば また会おう。 狩人」
テク テク テク…
狩人「…………」
狩人(……そうだ。 俺は元々契約料が欲しくて黄金魚を釣りに来ていた)
狩人(でも……いつの間にか)
狩人(お金を稼ぐって目的に変わってしまっていたんだ)
狩人(…………)
ヒュッ… (糸)パシッ
狩人「…………」
狩人「終わりにしよう」
狩人「もう目的は達成しているんだから……」
―――――――――――
夕方
ふもと村 広場付近
狩人(とりあえず、当分は安心だ)
狩人(……その前に3乙しないように頑張らないとな)
狩人(…………)
女「狩人!」
狩人「え?」
狩人「女? 何か用?」
女「今あんたの家に……ってそこはどうでもいいわ」
女「とにかく、付いてきて!」
狩人「どこに行くんです?」
女「私の家よ」
狩人「はあ?」
女「いいから!」
―――――――――――
ストア裏 女の家
女「じゃ、ちょっと待ってて!」
狩人「はあ……」
狩人(いったい何なんだ?)
ホラホラ ショウジョチャン!
ヤ、ヤッパリ……ダメデスヨッ!
狩人(……ん? 少女も居るのか?)
狩人(何なのだろう?)
バッ!
少女「ひゃ……」///
狩人「」
女「んふふ~」
女「どう? 狩人?」
少女「…………」///
狩人「…………」
そこに居たのは、いつもの少女じゃ無かった。
綺麗に下ろされた黒髪。
赤を基調とした可愛らしいデザインの長袖服。
普段ズボンだからか、やけに新鮮に見えてしまうスカート姿。
そして……化粧?とかいうやつだろうか?
顔まで違って見える。
それも『可愛い』じゃなく、大人の雰囲気を漂わせている感じで
何故かドキリとさせられてしまう……
狩人「えっと……」///
少女「う、うん……」///
狩人「とても……綺麗だな、少女」///
少女「!」///
女「うんうん♪」
狩人「というか、どうしたんだ? いきなり?」
少女「説明すると長くなるんだけど……」
少女「まあ……気分的なモノだと思って」///
狩人「そっか……女の子だもんな」
狩人「とっても似合ってるよ。 びっくりした」
少女「そ、そう……ありがとう」///
女「…………」
狩人「それでさ、ちょっと聞きたい事があるんだけど」
少女「え?」
狩人「ゲリョスっていうモンスターに手こずっていて……」
少女「ああ、それなら毒対策は必須よ」
狩人「それは身にしみてよくわかったよ……」
狩人「閃光はどう対処すればいいんだ?」
少女「いくつか方法はあるけど……例えば」
狩人「ふむふむ」
女「…………」
少女「って感じかな」
狩人「なるほど、罠を使うのか」
少女「でも気をつけて」
少女「ゲリョスにシビレ罠は通じないから」
狩人「あぶねぇ……思いっきり用意しようと考えてしまった」
少女「もう……」 クスッ
女「…………」
女(……んーこれは)
女(何て言うか、腹が立ってきたかも)
女(…………)
……デ、テールアタックハ
アレキツインダヨナ……
女(…………)
女(……ふふ、でも)
女(少女ちゃん、楽しそうだし)
女(ま、いっか!)
―――――――――――
狩人の家
狩人「は~……疲れた」
狩人「でも少女の説明はわかりやすいし、ありがたい」
狩人「本当に参考になるなぁ」
狩人「…………」
狩人(……少女)
狩人(綺麗だったなぁ……)///
狩人(どうしてあんな格好してたんだろう?)
狩人(ああしていると、やっぱり女の子なんだなって思う)
狩人(普段もけっこう誰彼かまわず声かけられているしな)
狩人(あの格好で出歩いたら、男どもが放っておかないだろうなぁ……)
狩人(…………)
―――――――――――
少女の家
少女「…………」
少女(……狩人、綺麗だって言ってくれた)///
少女(うふふ)///
少女(…………)///
少女(……けど、結局いつもモンスターの話になる)
少女(…………)
少女(まあ……狩人らしいよね) クスッ
少女(…………)
少女(心の潤い……か)
少女(…………)
少女(少しくらいなら……いいかも)///
―――――――――――
翌日の朝
ふもと村 広場付近
女「あら、狩人」
狩人「女? こんな時間に仕入れに行くの?」
女「うん。 今回はすぐ近くの草原村だからね」
女「上手く行けば、日帰りで済ませられると思って」
狩人(草原村……森丘に近い場所にある村だ)
狩人(森丘は俺たち村付きハンターも日帰りができて、非常にありがたい)
狩人「そっか」
女「狩人は? また密林?」
狩人「ゲリョスにリベンジしたいけど……」
狩人「依頼が無かったら雪山のクエにしようと思ってる」
女「そう。 やっぱり少女ちゃんと行くの?」
狩人「少女には世話になってるけど、いつも一緒ってわけじゃないよ」
狩人「できれば他のハンターと組んで、色々と慣れていきたいし……」
女「そういうのも少女ちゃん込みでやればいいんじゃない?」
狩人「それが……少女の奴」
狩人「他のハンターを待とうとすると、早く行こうって急かすんですよ」
狩人「どうせ待ってても誰も来ないって、グサリと突き刺す事も言うし……」
女(……少女ちゃん。 意外と独占欲が強いのね……)
女「ふ、ふぅん。 そうなんだ」
女「まあ、そういう事なら狩人の自由にすればいいかな」
女「怪我をしないようにね」
狩人「ああ、頑張るよ」
狩人「女も気をつけてな」
女「うん!」
女「それじゃ、またね!」
―――――――――――
雪山
狩人「ふう……」
狩人(……ゲリョスは依頼されてなかった)
狩人(ドスファンゴ討伐依頼を受けて、雪山にいる)
狩人(今なら難なく倒せるだろうけど油断は禁物)
狩人(心して取り掛かろう)
狩人(…………)
狩人(とか言いつつ、ツチハチノコ(ハチミツ)や鉱石採取しておこうとか思ってるし)
狩人(まあとにかく、油断はしないで取り組もう。 うん)
―――――――――――
夕方
ふもと村 集会所
狩人(ふう、無事に終わって返って来た)
狩人(採取でちょいと時間を食ったが……)
ガヤ ガヤ
狩人(……ん?)
狩人(妙にざわついているな?)
狩人(何かあったのか?)
狩人「あのー」
受付嬢「はい?」
狩人「妙な雰囲気ですけど……何かあったんですか?」
受付嬢「それがですね……」
受付嬢「このふもと村に近い草原村がティガレックスに襲われたそうなんです」
狩人「え!?」
受付嬢「現在、詳しい情報を集めているところでして」
受付嬢「ギルド観測所に問合わせているのですが、詳細はわかっていません」
狩人「…………」
狩人「なんて……事だ……」
普段、人の住む集落にモンスターは襲いかかったりしない。
だが、縄張りを追われたり、ものすごい飢餓状態に晒されたりすると
猟区外へ来てしまったりする……
ティガレックスは、特にそれが顕著なモンスターで
厄介な事に『轟竜』と呼ばれるほど強く
気が荒い事でよく知られている飛竜だ。
たまに小さく、下位モンスターと認定される時もあるが
大抵は上位扱いの大型肉食モンスターに分類される。
女……どうか、無事でいてくれ……!
―――――――――――
遡る事、数時間前
草原村 正面入口
女「こんにちは」
草原村人「やあ、女ちゃん」
草原村人「今日はこんなに早く来たのか。 珍しいね」
女「ええ、日帰りで済ませられるかと思って」
草原村人「なるほど」
草原村人「それじゃ、俺は野良仕事に出るから」
女「はい」
女「さて、まずは縫製の品物ね」
―――――――――――
女「どうもーふもと村ストアの女です」
草原店主「ああ、女ちゃん。 いらっしゃい」
女「こちらが頼まれていたドンドルマ産のゼニマスの干物になります」
女「他にも野草やきのこ類の乾物も入ってますよ」
草原店主「ありゃりゃ……こんなに早く届くとは思ってなかったなぁ」
草原店主「こりゃ物々交換だけじゃ済まないね」
草原店主「ちょっと待っててくれ、お金を取ってくるから」
女「はい、ごゆっくり~」
女「…………」
女「……ん?」
チクショウ… チクショウ…
アイツメ…… オレノナワバリ アラシヤガッテ……!
ユルサナイ…… ユルサナイ…… ゼッタイユルサナイ……!
アンナヤツ ハライッパイナラ ナンナクコロセル
クイタイ…… クイタイ……
クッテ クッテ クイマクッテ
アイツヲブチノメス!!
女「あ……あ……」
ヒュ―――――……
女「まさか……そんな……」
草原店主「お待たせ、女ちゃん……ん?」
草原店主「どうしたんd」
ド ズ ン ッ !!
草原店主「」
ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!
草原店主「う、うわあああああああああああああっ!!?」
草原住民「ティ、ティガレックス!?」
草原住民「に、逃げろ! 逃げろ――!!」
草原女「いやああああああああっ!!」
草原子供「ままぁ――!!」
草原男「ハ、ハンターは!? ハンターを呼べぇぇぇぇっ!!」
ワー ワー ギャー ギャー
ドズッ! グチャ!! ドゴォッ!!
女(逃げないと……逃げないとっ!)
女(………っ!)
女(あ、足が……すくんで……!)
グルルル……
女「ひっ……!」
ド ガ ア ッ !!
―――――――――――
ふもと村 集会所
ロートル「狩人! 良かった、ここに居たか」
狩人「ロートルさん!」
ロートル「近隣の村がティガレックスに襲われた話は聞いたか?」
狩人「はい、たった今」
ロートル「よし」
ロートル「今、村長が村の住民に呼びかけて、救援に向かう準備をしている」
狩人「!」
ロートル「手の空いている者、総出で事に当たるのだが」
ロートル「相手はあの轟竜ティガレックスだ」
ロートル「安全の為、俺は先発隊として草原村に向かうが、狩人」
ロートル「できれば、お前にも手伝ってもらいたい」
狩人「」
狩人「ええ!?」
狩人「で、でも、俺のHRはまだ低くて上位モンスターとは……」
ロートル「それはわかっている。 ティガとは俺が戦うが」
ロートル「狩人には、救援隊の護衛を行ってもらいたい」
ロートル「夜間だし、道中にはランポスが時々出る」
ロートル「やってくれないか?」
狩人「…………」
狩人「分かりました」
狩人「俺でいいのなら、やります」
ロートル「クエ帰りで疲れているところ、すまん」
ロートル「少女にも頼んであるから、彼女に必要な物を聞いて準備してくれ」
ロートル「終わったら広場へ集合だ」
ロートル「ソロには念の為、ふもと村に残ってもらう」
狩人「分かりました。 準備でき次第、広場へ行きます」
ロートル「頼むぞ」
タッ タッ タッ…
狩人「…………」
狩人「急がないと!」
―――――――――――
少女「狩人!」
狩人「少女!」
少女「ロートルさんから話は聞いたわね?」
狩人「ああ」
少女「これ、必要なものをメモに書いてまとめておいたわ」つ(メモ)
狩人「……え?」
少女「全部は無理でも、集められるものは できるだけ持って行きなさい」
少女「いい? ほら、早く受け取って!」つ(メモ)
狩人「あ、ああ……」つ(メモ)
少女「時間はまだ少しあるわ。 焦らずにね! じゃ……」
タッ タッ タッ…
狩人「…………」
―――――――――――
広場
ガヤ ガヤ
少女「狩人!」
狩人「すまん! 待たせたか?」
少女「いいえ、大丈夫よ」
村人「えー、お集まりの皆さん、忙しいところ集まっていただき感謝します」
村人「今回の救援隊、臨時リーダーを務める事になった、村人です」
村人「まだ詳細はわかりませんが、多数の負傷者が出ているみたいです」
村人「手当の心得がある人は、重点的に……」
狩人「ロートルさんは?」
少女「とっくに出発したわ」
少女「上位ハンターの足なら、かなり早く草原村に着けると思う」
狩人「そうか……」
狩人「こっちはどれくらいに着ける?」
少女「そうね……たぶん夜中すぎくらいかしら?」
狩人「……思ったよりかかるな」
少女「しょうがないわ。 夜の上、ポポ荷車に一般の人たちの足だから……」
狩人「…………」
少女「……どうしたの?」
狩人「ん? いや、何でもないよ」
少女「?」
…………
いつか打ち明けないといけない事が俺にはある。
だけど……今は、時間がない。
不安を抱えたまま、俺は
救援隊と共にふもと村を出発した。
406 : 以下、名... - 2015/05/26 19:30:59 5Z0nmV8A 375/1043
※注 それぞれの装備
ロートル(HR 6)
武器:双剣
防具:ゲリョスS装備一式
狩人(HR 2)
武器:大剣(フルミナントソード)
防具:フルフル装備一式
少女(HR 3)
武器:ライトボウガン
防具:ガンナー用ザザミ装備一式
―――――――――――
夜
街道
ザッ ザッ ザッ…
狩人「…………」
狩人「……思ったより暗くないな」
少女「今夜は雲も少ないし、半月だけど月明かりもあるからね」
少女「それよりも狩人」
狩人「ん?」
少女「どうして大剣を持ってきたの?」
狩人「え……そりゃあティガがこっちに来るかも知れないと思って」
少女「確かにその可能性はあるわ」
少女「でもこういった場合のモンスターは」
少女「用事が済めば、大抵もとの住処に戻っていくものなの」
狩人「用事?」
少女「……お腹いっぱいになったら、と言った方がいいかしら?」
狩人「…………」
少女「それに草原村の村付きハンターが倒している可能性も高いと思う」
少女「一度人間のテリトリーに入り込んだモンスターは、味をしめて」
少女「また同じように村を襲う事がよく知られているから……必ず倒さないといけない」
狩人「…………」
狩人「詳しいな」
少女「……だから今回に限り」
少女「私たちは救援隊の護衛に専念すべきよ」
少女「相手にするのは小型のものを主と考えて武器を選ぶべきだったと思う」
狩人「……すまん」
少女「ううん……ティガの遭遇に備えるのは悪くないわ」
少女「でも今回、目的は『モンスターを倒す事』じゃ無いという事」
少女「大剣を振るうのなら、周りに気をつけてね」
狩人「ああ」
少女「それから……」
少女「こうやって、私たち護衛がひと固まりにまとまって歩くも良くないわ」
狩人「! ……そうだな」
狩人「俺は左の方を歩く」
少女「ええ、任せるわ」
少女「お互い、頑張りましょう」
―――――――――――
草原村
アア…… ウウ……
ミズヲ……ミズヲクレ……
ロートル「これは……酷いな」
ロートル「誰か! 村長は居ないか!?」
ロートル「代理の責任者でもいい!」
ロートル「ふもと村の村付きハンター、ロートルだ!」
ロートル「今、救援隊がこちらに向かっている!」
ザワッ!!
草原村人「救援!? 本当か!?」
ロートル「ああ、今、こちらに向かっている」
ロートル「おそらく夜中くらいに着くだろう」
草原村人「おお……!」
ロートル「村長は? それとここの村付きハンターにも話を聞きたい」
草原村人「わかりました。 案内します」
ロートル「頼む」
―――――――――――
ロートル「」
ロートル「何だと!? 仕留め損なった!?」
草原ハンター「すまん……」
草原ハンター「あと一歩というところだったんだが……逃げられた」
ロートル「くっ……」
ロートル「どっちに逃げたかわかるか?」
草原ハンター「ペイントもしていなかったし、うろ覚えだが」
草原ハンター「たぶん……北の方角だと思う」
ロートル「っ!!」
草原ハンター「ここはアプトノスばかりで、奴の好物のポポが少ないからな……」
草原ハンター「おそらく雪山にでも行ったのだろう」
ロートル「……わかった」
ロートル「後の事は俺たちに任せて休んでてくれ」
草原ハンター「すまん……」
ロートル「…………」
ロートル(こうしてはいられない……草原ハンターは優秀な上位ハンター)
ロートル(満足な準備ができなかったとしても……)
ロートル(ただのティガに遅れを取るハンターではない)
ロートル(それが仕留め損ねた……間違いなく上位クラスか、それ以上のティガだ!)
ロートル(狩人たちの救援隊に襲いかかったら……!)
ロートル(くそっ!!)
ダッ!!
―――――――――――
アアアアアアアア……
イタイ イタイ イタイ
ジャマサレタ…… チイサイ イタイノ フリマワシテ
ユルサナイ ユルサナイ…
オレノナワバリアラシタ ヤツモ チイサイノモ
ユルサナイ
ポポクッテ タクサンクッテ コロシテヤルッ
スコシヤスンデ コロシテヤルッ!
……ン?
クンクン……
…………
ポポダ! ポポノニオイガスル!
ポポクッテ タクサンクッテ アイツモ チイサイノモ
ブチノメシテヤルッ!!
―――――――――――
街道
ザッ ザッ ザッ…
狩人「…………」
少女「…………」
狩人(今のところ、静か……だな)
少女(このまま順調であって欲しいわね……)
ヒュ―――――……
狩人(何事も起きてくれるなよ……)
少女(……草原村まであとどのくらいかしら)
ド ズ ン ッ !!
少女「」
狩人「」
村人「」
救援隊一同「」
ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!
村人「う、うわああああああああああああっ!?」
ワー! ニゲロー! クワレルッ!
少女「くっ! み、みんな! 落ち着いて!」
ドスッドスッドスッ!
少女「ひっ!」
狩人「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
ドガァ!!
ギュアアアアアアッ……!!
狩人「はあっはあっはあっ……大丈夫か!?」
少女「狩人! ……ごめん、助かったわ」
オオオ…… イタイ……
ココニモ
チイサイ イタイノ フリマワス チイサイノ イル
……ジャマスルナ
グルルル…
狩人「はは……すげぇ迫力だな……」 ブルブル…
少女「一番起きて欲しくない事が、起きてしまったわね……」
狩人「……どうする? 俺たちでやれるか?」
少女「…………」
少女「…………」 カチャ カチャ…
少女「……私に考えがある」 ジャキン!
ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!
狩人「くそっ、またきた!」
少女「くっ……!」
ポポ クウノ……
ジャマスルナッ!!
ドスッドスッドスッ!
狩人「!」
狩人(俺狙いか!)
狩人(ちっ……避けられそうにない!)
狩人「くそっ!!」(防御姿勢)
ガシィッ!!
狩人「がっ……!!」
狩人「ぐっ……くっ……」 ビリビリビリビリッ!!
狩人(……受け流すよう角度つけて防御したのに)
狩人(それでもダメージが入って……くそっ!)
狩人(こんなの少女がまともに食らったら……!)
ダンッ! ダンッ! ダンッ!
狩人「! 少女! やめろ!」
狩人「ガンナー装備のお前じゃ……!」
ギィアアアアアアッ……!!
クウウウウウゥゥゥ…… zzz
狩人「!?」
狩人「な、何だ? 寝ちまったのか?」
少女「狩人!」
狩人「少女、一体何をしたんだ?」
少女「全部を説明してる時間がないから、必要な事だけ言うわ」
狩人「……わかった」
少女「とりあえず眠らせただけ。 すぐ起きる」
狩人「!」
少女「でも逃げた人たちは、少なくともこのティガに追いかけられる事はもうない」
少女「ティガの狙いは、おそらく荷車を引いてたポポ」
狩人「! じゃあ俺たちはポポを囮にして逃げ……」
少女「……たぶんダメ。 私たちはティガの視界から逃れられない」
狩人「!!」
少女「で、これからどうするか、だけど……」
少女「狩人、罠は持ってきた?」
狩人「ああ、この前の残りの落とし穴罠を持ってきた」
少女「今すぐ、そこに仕掛けて」
狩人「わかった」
カチャ カチャ…
少女「……ここからは、イチかバチかよ」
少女「あのティガを……捕獲する」
狩人「!!」
捕獲! その手があったか!
罠を仕掛け、その際に浸透性の高い特殊な麻酔をかけ
モンスターを生け捕りにするやり方だ。
ただ……それにはいくつかの条件が前提になる。
理屈は分からないが、今、少女がティガに撃った
睡眠系のモノとは全く別系統の麻酔らしく
モンスターが罠にハマり
それに気を取られている内に仕掛けないと効果は望めない。
もう一つ……これが相当に厄介なのだが
モンスターを死なない程度に弱らせる必要があるという事。
この見極めが非常に難しく、モンスターが足を引きずるとか
そういう明確なサインがあれば仕掛けやすいのだけど……
それを見ずに捕獲をしようとすると、失敗するリスクも高くなってしまう。
狩人「足を引きずっていたのか!?」
少女「見てないわ」
狩人「…………」
少女「でも……ティガの体はどこも傷だらけ」
少女「草原村のハンターと相当やりあった証拠でもある」
狩人「…………」
少女「……けど、こうなる可能性を私、低く見てたから」
少女「前の残りで たまたま持ってた麻酔弾は、たったの二発……」
少女「ギリギリ一回分しかない」
狩人「……そうだな」
少女「失敗したら、あとは死に物狂いで戦うのみよ」
少女「私たち下位の装備でどこまでやれるか……でも」
狩人「ああ……わかっている」
狩人「最後の最後まで……あがいてやるさ!」
グルルル…
少女「……起きたみたいね」
狩人「……その様だな」
ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!
狩人「くっ……!」
少女「うっ……!」
少女「まずは私たちを囮にして、罠に誘い込むわよ!」
狩人「わかった!」
ズシャァッ!!
狩人「!?」
少女「!?」
しかしティガの方は、それを見越してか
その巨大でたくましい右腕を振るい、地面をえぐり
そのままの勢いを付け、巨大な土の塊を
こちらに向かって押し出してきた……!
狩人「あんな攻撃ありかよっ!?」(防御姿勢)
少女「くっ……!」(しゃがみ姿勢)
ドガァッ!!
狩人「ぐおっ……!!」 ビリビリビリビリッ!
少女「狩人!」
防御ごと俺は後ろへ弾き飛ばされ、尻もちをつく……!
狩人「……くそったれっ!」
少女「もう一発くるわ!」
狩人「うおおおおおっ!」
しかし大剣を出しっぱなしじゃまともに動けない!
背中に背負う暇も もちろんない。
やむを得ず、俺は地面を転がるようにティガの土投げ?を回避する!
ゴウッ!!
狩人「あ、あぶねぇ……!」
巨大な土の塊が俺の頭のすぐ隣を通り過ぎていった。
狩人「少女、大丈夫か!?」
少女「はあっはあっはあっ……」
少女の息が荒い……
俺だってまともに喰らえば、死ぬかもしれないあの攻撃……
通常の半分しかない防御力であるガンナー装備の彼女は
避けられなければ間違いなく即死だ。
その緊張は極限にまで達しているだろう……
狩人「ちくしょう! この野郎! 早く俺を食いに来い!」
狩人「このチ○カス! デベソ! ええと……腐れマ○コ!」
俺は、大剣を背中にしまいつつ
思いつく限りの悪口を大声で言い、ティガの気を引く。
ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!
狩人「!!」
想いが通じたのか
俺に向かって突進してくるティガ!
狩人「くっ……そおおおおおおおっ!!」
きびすを返し、罠の落とし穴へと誘うため全力で俺は走った!
頭で分かっていても正直、生きた心地がしねぇ!
狩人(少女! あとは任せるぞ!)
少女「……!」 スチャッ…
少女はライトボウガンを構え
罠の上あたりに照準をつける……!
少女(お願い……! 大人しく捕獲されて!!)
ズ ボ ッ !!
ギィアアアアアアアアッ!
狩人・少女「かかった!」
ドウッ! ドウッ!
ビシッ! バシッ!
少女「よし! 命中!」
狩人「……!」
だが……喜んだのも束の間
ティガは相変わらず、罠から脱出しようともがいている!
失敗だ……まだ、捕獲できるほど弱っていないんだ!
少女「……そ……そん……な」
狩人「くっそおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
ダッ!!
少女「狩人!!」
……この時の俺は
はっきり言えば、やけくそになっていた。
深い考えがあってティガに向かって行ったわけじゃない。
ただ……どうせ死ぬのなら
ティガの野郎に一矢報いてやる!というような
そういう気持ちで大剣を振り下ろしただけ。
それだけだった。
ドガァ!!
狩人「ちくしょおおおおおっ!」
ザクッ!! ズガァッ!!
狩人「死んでたまるかっ……死んでたまるかぁっ!!」
ドズッ!! ズシャアッ!!
狩人「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
ザシュッ!!
少女「……え?」
クウウウウウゥゥゥ…… zzz
狩人「はあっ……はあっ……はあっ」
狩人「はあ……はあ……」
狩人「…………」
狩人「……え?」
スピー…zzz スピー…zzz
狩人「…………」
少女「…………」
狩人「……寝ている?」
少女「……捕獲できた?」
狩人「…………」
少女「…………」
狩人「何で……?」
少女「さっきの狩人の攻撃で、捕獲できる状態になった……のかも?」
狩人「…………」
少女「…………」
狩人「はああああああああああああっ……」 ドサッ…
少女「ふう……」 ストンッ…
狩人「…………」
少女「…………」
狩人「…………」
少女「…………」
狩人「……くくっ」
少女「……ぷっ」
狩人「はははは……」
少女「ふふふふ……」
アハハハハハハ……!
とりあえず助かった、という安堵感と
いまいち腑に落ちない達成感を感じた俺と少女は
その場にヘタリこみ……
何故か、笑いがこみ上げて
止まらなくなったのだった。
―――――――――――
数時間後の夜明け前
草原村 臨時集会所
ロートル「……それにしても驚いたぞ」
ロートル「まさかあのティガを捕獲している、なんてな」
狩人「……俺たちの手柄じゃないですよ」
少女「ここの……草原村のハンターがダメージを与えてくれてなかったら」
少女「私たちは生きて、ここにいませんでした」
ロートル「そうか……だが、とっさの判断としては正しかったと思うし」
ロートル「運も実力の内、という言葉もある」
ロートル「お前たちは立派に仕事をした。 誇っていいと思うぞ」
狩人「ははは……」
少女「草原村……だいぶ酷い状況みたいですね」
ロートル「ああ……」
ロートル「死傷者はおよそ50人」
ロートル「死者は20人を下らないそうだ」
少女「…………」
狩人「……そうですか」
ロートル「ともかく、疲れているだろう」
ロートル「不幸中の幸い、侵入ティガはお前達が捕獲してくれた。 安心して休んでくれ」
少女「そうですね……」
狩人「そうします……」
―――――――――――
仮設テント
女「!」
女「狩人! 少女ちゃん!」
狩人「女!?」
少女「女さん!」
狩人「無事だったか……良かった」
女「うん……生きた心地しなかったけどね」 ブルルッ…
女「それにしてもあのティガ、捕獲したんだって?」
女「すごいじゃない!」
狩人「ははは……」
少女「普通に相手をしていたら、たぶん私たち死んでいますよ……」
女「なら、なおさらすごいじゃない!」
狩人「それがなぁ……さっきロートルさんにも言ったんだが」
狩人「ここ……草原村のハンターが、かなり追い詰めていてくれたから、なんだよ」
女「あー……なるほど、そういう事か」
女「でも、それでも十分すごいよ」
狩人「俺一人じゃ間違いなく死んでたと思う」
少女「それは私も同じよ。 狩人が居なかったら、きっと死んでたわ」
少女「ロートルさんも言ってたけど、運が良かった」
女「そっか……」
女「おっと、ここには休みに来たんだよね?」
狩人「ああ」
少女「本当に疲れました……」
女「ごめん、また後で話をしましょう」
女「ゆっくり休んでね。 あ、女の子はこっちのカーテンの向こう側ね」
少女「はい」
―――――――――――
狩人「…………」
狩人(……横になったらすぐ眠れると思ったが)
狩人(作業をする周りの声とか、音とかが気になってなかなか寝付けない)
狩人(…………)
狩人(……あれがティガレックスか)
狩人(ものすごい衝撃の攻撃だった)
狩人(…………)
狩人(上位に上がったら……あんなのを相手にしないといけないんだな)
狩人(…………)
あの時の重い衝撃の感触……
今も手に残っている。
憧れていたハンターの姿が
どこか、遠のいてしまった気がした……
―――――――――――
同日の昼頃
仮設テント付近
狩人「ふあ……」
狩人「……ふう」
狩人(…………)
狩人(腹が減ったな……)
狩人(…………)
狩人(……こんな状況だけど、飯を頼むか)
―――――――――――
仮設食堂
ガヤ ガヤ
狩人「いい匂いだ……」
狩人「あのー……俺も何かもらっていいですか?」
草原村人「ああ、構わないよ」
草原村人「お? あんた、ふもと村のハンターか!」
狩人「ええ」
草原村人「あんた達が、あのくそったれティガに止めを刺してくれたんだってな」
草原村人「かたきをとってくれてありがとう。 感謝してる」
狩人「いえ……」
草原村人「さあ、大したもんはないが、遠慮なく食ってくれ!」
―――――――――――
狩人「ふう……満腹だ」
狩人「…………」
狩人「これから……どうすればいいのかな?」
狩人(勝手に帰るわけにはいかないだろうし)
狩人(ここの復興を手伝う?)
狩人(う~ん……)
狩人(…………)
狩人(とりあえず、ロートルさんを探そう)
狩人(……ん?)
狩人「!!」
タッ タッ タッ
狩人「あの!」
草原男「ん? なんだい?」
狩人「その荷車で運ばれている人って……」
草原男「ああ……さっき息を引き取ったんだ」
草原男「腹の傷が深かったし……相当な爺さんだしな」
狩人「…………」
俺は……この人に見覚えがあった。
狩人「老ハンターさん……」
草原男「老ハンター? 違うよ、そんな名前じゃない」
草原男「こいつはグランドって名前で、老いぼれたお荷物ハンターだよ」
狩人「……え?」
草原男「昔は名うてのハンターだった様だが……」
草原男「いつまでも村付きハンターを止めなくてな」
草原男「村としても昔の恩があるし……面と向かって引退しろとは言い辛くてな」
草原男「他に身寄りもなく、ズルズルと居着いてて困ってたんだ」
狩人「…………」
草原男「たまに採取クエを受注して、細々とやっていたみたいだが」
草原男「それだけじゃねぇ……」
狩人「…………」
狩人「……埋葬するんですか?」
草原男「ああ、無縁墓地に他の遺体とまとめてな」
狩人「…………」
―――――――――――
夕方
草原村 共同墓地
ザッ… ザッ…
少女「狩人、探したわよ」
女「こんなところに居たの」
狩人「……ああ」
ロートル「墓を作っていたのか?」
狩人「はい。 ……うんしょっ、と」
(大きめの石)ドサッ…
狩人「ふう……」
ロートル「知り合いだったのか?」
狩人「そうですね……でも、深くは知りません」
狩人「少し話をした程度なんです」
ロートル「……なのに墓を作ってやったのか」
狩人「はは……その通りです」
狩人「自分でも何故、そうしたのか……分かりません」
ロートル「…………」
女「名前は何ていうの?」
狩人「グランド、という名前だって」
ロートル「グランド? ……知らないな」
狩人「そうですか……ロートルさんでも知らないハンターなんですね」
ロートル「ハンターだって?」
ロートル「しかし……草原村の村付きハンターは、草原ハンターしか知らないが」
狩人「……もう一人居たんです」
狩人「採取クエで細々と生計を立てていた老人の村付きハンターが」
ロートル「…………」
少女「…………」
女「…………」
ロートル「……同情か?」
狩人「多分違います」
ロートル「ほう?」
狩人「……もちろん詳しい事情なんて知りませんけど」
狩人「最後の最後まで現役ハンターとして、今日まで生き残ってきた」
狩人「……そうそうできる事じゃないと思います」
女「狩人……」
狩人「そんな彼が、敬意も払われず葬られるなんて……」
狩人「なんか……嫌でした」
少女「…………」
ロートル「…………」
ロートル「そうか……」
ロートル「なら、この墓標には、お前が名を刻んでやれ」
狩人「え!?」
ロートル「きっとグランドとやらも、それを望むだろう」
狩人「い、いや……俺は……その、字が汚いし不器用なので」
ロートル「じゃあ、俺も手伝おう」
ロートル「自慢じゃないが俺の字は綺麗だと、よく言われるんでな」
ロートル「それの上をなぞって刻むといい」
狩人「!」
狩人「ええ、お願いします、ロートルさん」
ロートル「なに……俺も同じハンターとして、このハンターを弔(とむら)ってやりたい」
ロートル「その手伝いができるのなら光栄だ」
少女「…………」 クスッ
女「…………」 クスッ
―――――――――――
狩人「ふう……」
ロートル「なんだ、不器用とか言ってたわりに上手く刻めたじゃないか」
狩人「ははは。 クエより神経使ったかもしれません」
ロートル「ははは! ……では、我々の村へ帰るとするか」
狩人「はい!」
俺たちハンターと、女は
グランドさんの墓に一度手を合わせたのち
様々な村からの救援隊到着の姿を見届け
草原村を後にしたのだった……
―――――――――――
深夜
ふもと村 ソロの家
ソロ「……そうか、G級のティガだったのか」
ロートル「ああ……詳しく調べてみないと、とは言っていたが」
ロートル「ギルド観測所の職員は、ほぼ間違いない……とな」
ソロ「ふふ……お互い先をこされたな」
ロートル「半日近くG級とやりあった、草原ハンターを褒めてやれよ」 クスッ
ハハハ…
ソロ「……で?」
ソロ「こんな夜中に俺の家を訪ねた理由はなんだ?」
ロートル「……ああ、それなんだが」
ロートル「一つ、腑に落ちない事がある」
コポコポコポ…
ロートル「…………」 グビッ
ロートル「ふう……」
ソロ「…………」
ロートル「……今回のティガ」
ロートル「どこから飛来したと思う?」
ソロ「……通常なら火山か砂漠のあたりだと思うが」
ロートル「それは俺も考えた」
ロートル「しかし……ティガは跳躍して滑空するタイプの飛竜だ」
ロートル「飛行距離はレイアやレウスより短いが……」
ロートル「火山や砂漠からの飛来なら直接雪山まで行けるのに」
ロートル「なぜ森丘に近い草原村に降りたんだ?」
ソロ「ふむ……猟区からすれば不自然さはないと思うが」
ソロ「たまたま降りただけかもしれないし……」
ソロ「腹が減ってとりあえず、という意味合いで草原村に降りただけかもしれん」
ソロ「森丘は今、リオ夫婦のシーズンだから近づきたくなかったので手前で降りたとか」
ロートル「ありえそうな仮説だな」
ロートル「だが、森丘に奴の好物のポポはいない」
ロートル「ティガが直接目指すのに森丘は不自然だと思う」
ソロ「……何が言いたい?」
ロートル「…………」
ロートル「あくまで推測だが」
ロートル「雪山まで直接行けないくらい弱っていた、と仮定したらどうだ?」
ソロ「バカな……」
ソロ「確かにそれならしっくりくるが、G級のティガだったのだろう?」
ソロ「そんな奴を飛行距離まで短く、弱らせる事ができるモンスターなんて……」
ソロ「!!」
ロートル「……俺の言いたいことがわかったか?」
ソロ「い、いや、しかし……」
ソロ「いくらなんでも」
ロートル「こう言ってはなんだが……」
ロートル「G級ティガなのに優秀とはいえ、準備不足の草原ハンターが渡り合えた」
ロートル「G級ハンターでもない、俺たちと同じ上位ハンターのな」
ソロ「…………」
ロートル「となると……これはそう考えるしかない」
ロートル「あのG級ティガは……」
ロートル「『何か』にコテンパンにされて住処を追い出されたんだ」
ソロ「……G級ティガをボコれて」
ソロ「さらに砂漠か火山に出没するモンスターとなると……」
ロートル「G級のグラビモスやディアブロス」
ロートル「もしくは……古龍」
ロートル「テオ・テスカトル……だな」
―――――――――――
数日後の午前中
ふもと村 集会所
狩人「え? 受け取っていない報酬?」
受付嬢「はい」
受付嬢「狩人様と少女様が共同で捕獲した、G級ティガレックスの報酬です」
狩人「」
少女「」
ザワッ……!
狩人「ちょ、ちょっと待ってください!」
受付嬢「はい?」
狩人「あれは俺たち、ほとんど何もしていなんですよ!?」
狩人「偶然襲われたから最後に罠張って、捕獲しただけで……」
狩人「報酬を受け取るべきなのは、数時間かけてダメージを与えた」
狩人「草原ハンターさんですよ!」
少女「それにG級!?」
少女「あのティガって、G級だったんですか!?」
受付嬢「落ち着いてください、順を追って説明しますので」
狩人「…………」
少女「…………」
受付嬢「まず、ギルドの仕組みとして」
受付嬢「今回のティガレックスは、ギルド観測所により正式にG級と認定されました」
受付嬢「また、今回の捕獲は『緊急クエスト』と同義として扱われます」
狩人「…………」
少女「…………」
受付嬢「次に報酬ですが」
受付嬢「先ほどあなた方が言っていた通り」
受付嬢「草原ハンターさんが主にダメージを与えていたとしても」
受付嬢「捕獲したのはお二人の手柄であり、お二人が居なければ」
受付嬢「G級ティガによる被害は拡大の恐れがありました」
狩人「…………」
少女「…………」
受付嬢「ですので、ギルド規定による『緊急クエスト』報酬は」
受付嬢「草原ハンター、狩人、少女の3名による共同捕獲と判断し」
受付嬢「報酬のお金・モンスター素材、それぞれを」
受付嬢「三等分で支払うのが妥当、と判断しています」
狩人「そ……そうなんですか」
少女「……いまいち釈然としませんが」
受付嬢「もっと胸を張ってください」
受付嬢「何度も言いますが、今回の討伐はお二人が居なければ」
受付嬢「早期解決しなかったんです」
受付嬢「あなた方に救われた人は、お二人の想像以上に多いと思ってください」
狩人「……はあ」
少女「…………」
……パチ パチパチパチ
狩人「え?」
少女「!」
ソウダゼ、ヨクヤッタンダ! ムネヲハレ!
ウマイコト、ヤリヤガッテ! ワー! ワー!
狩人「は、ははは……」///
少女「~~~っ」///
受付嬢「ふふふ」
受付嬢「それでは報酬です。 どうぞ受け取ってください」
ドサドサッ!
受付嬢「134000z(ゼニー)とG級ティガレックスの素材になります」
狩人「じゅうさんまっ……!?」
少女「G級ティガの素材……」 ゴクリ…
ロートル「おー……それが報酬か」
ロートル「G級素材……羨ましいな」
狩人「ロートルさん」
少女「私たち下位なのに……いいんでしょうか?」
ロートル「ああ、受付嬢さんの言う通り、どこに断る必要もない正当な報酬だ」
ロートル「もらっておけ」
ロートル「草原ハンターの奴も今頃もらって、驚いている事だろう」
狩人「こ、こんな大金……初めて受け取ります」 ガクブル
少女「……狩人、言っておくけど」
少女「たぶん素材を全部売ったら、それの4~5倍の金額になると思うわ」
狩人「」
ロートル「まあG級素材を売る奴なんて、滅多にいないけどな」
狩人「……何て言うか」
狩人「G級って、本当にすごいんだなって、改めて思いました……」
少女「同じく……」
ロートル「そうか」 クスッ
ロートル「で、だ。 話を変えるが……二人に頼みたい事がある」
狩人「はい? 何ですか?」
ロートル「俺とソロは、しばらくふもと村を離れたいと思うんだ」
狩人「しばらく……というと?」
ロートル「期間はわからん」
ロートル「ある『目的』を達成するまで帰らないつもりだ」
ロートル「それまで、ふもと村の事をお前たちに任せたい」
少女「!」
狩人「ある目的?」
ロートル「今回はもしかしたら、早く済むかもしれんが……」
ロートル「まあ、何かあったら手紙をくれ。 砂漠村を拠点にするから」
狩人「はあ……」
少女「…………」
ロートル「じゃあな、狩人、少女」
ロートル「無理せず、強くなれよ」
スタ スタ スタ…
狩人「……?」
少女「…………」
少女「ねえ、狩人」
狩人「ん?」
少女「今日は休みにしない?」
狩人「はあ?」
少女「たまにはいいでしょ?」
少女「とにかく決まり」
狩人「は?」
少女「……ちょっと話したいことがあるの」
少女「もらった報酬を家に置いたら、私の家に来て」
少女「じゃ……」
狩人「あ……」
狩人「…………」
狩人(何なんだ?)
―――――――――――
少女の家
コックアイルー「いらっしゃいませだニャ!」
狩人「あ、ああ……」
コックアイルー「どうぞ、お入りください」
コックアイルー「ご主人様がお待ちですニャ」
狩人「お邪魔します」
―――――――――――
狩人「……キッチンアイルー雇ってたのか」
少女「ええ。 報酬が安定して来た時に、ね」
少女「狩人も大金が手に入ったんだし、一人くらい雇ってみたらいいわ」
少女「本当に助かるから」
狩人「さっそく村長さんに聞いてみるよ」
少女「うん」
狩人「それで……話って?」
少女「…………」
少女「……さっきのロートルさんの話」
少女「どう思った?」
狩人「どうって言われても……何か突然だな、としか」
少女「そうね」
狩人「何が言いたいんだ?」
少女「…………」
少女「狩人、そろそろランクアップのクエ、受注できるんじゃない?」
狩人「え? ……ああ、その通りだけど」
狩人「対象となるモンスターが出現するまで待ってくれって言われてる」
少女「うん。 私もそうだった」
狩人「で? それがどうかしたのか?」
少女「…………」
少女「……ロートルさんと、ソロさんってさ」
少女「HR6だよね」
狩人「ああ」
少女「その上を目指す、としたら何になる?」
狩人「そりゃあG級しかないじゃ……」
狩人「……ん?」
少女「…………」
狩人「そういやG級に上がるのって……どんなモンスターを狩るんだろう」
少女「さあ……それは私にも分からないけど」
少女「G級モンスターって、たまにしか出現しないよね」
狩人「……あんなのがポコポコ出たら困る」
少女「確かに」 クスッ
少女「でも……それってさ」
少女「G級に上がる為の対象モンスターにも言えないかしら?」
狩人「…………」
狩人「……あ」
少女「そうなると当然、そのモンスターを目当てにした者同士の奪い合いになる」
少女「報酬や素材目当てのハンターも多いけど」
少女「G級猟区に存在する鉱石目当てでG級ハンターになりたいハンターも多いわ」
少女「高値で取引されているから」
狩人「……ロートルさん達が後者だとは思いたくないが」
狩人「G級ハンターになるのが予想以上に大変そうなのはわかった」
少女「うん」
狩人「それで、今回のロートルさんの行動とどう繋がるんだ?」
少女「…………」
少女「……たぶん、だけど」
少女「もしかしたら、ロートルさん達……」
少女「G級に上がるための対象モンスターの情報を掴んだのかもしれない」
狩人「!」
少女「その辺りの詳しい事は分からないけど」
少女「いずれにしても命懸けである事は間違いないわ」
狩人「…………」
狩人「……この村を任せるって」
少女「……うん」
少女「そういう意味だと思う」
狩人「…………」
狩人「だ、大丈夫さ」
狩人「必ずまた会おうって言ってたし」
少女「そうね」
少女「でも……ある程度は覚悟しておいた方がいいと思うわ」
狩人「…………」
狩人「……そう……か」
狩人(…………)
狩人(……G級、か)
狩人(…………)
狩人(いや、ロートルさん達の心配なんて)
狩人(下位の俺がしてもしょうがない)
狩人(俺は、俺の出来る事をして)
狩人(少しでも彼に近づける様、努力するべきだ)
狩人(……そうとも)
狩人(まずは自分の心配をしないとな……)
狩人(…………)
―――――――――――
村長宅前
狩人「村長さん」
村長「お? 狩人か」
村長「聞いたよ、莫大な報酬をもらったんだってな」
狩人「はは……なんか申し訳ない気もしましたけど」
村長「ははは。 で、何か用かい?」
村長「まさか採取クエの受注じゃないよね?」
狩人「ええ」
狩人「実は、アイルーを雇いたいと思いまして」
村長「あっ……! すまん狩人、そういえばその事を言ってなかったね」
狩人「いえ……」
村長「では、アイルーの仲介をしてくれる、通称ネコ婆さんという人を紹介するよ」
村長「こっちに来てくれ」
狩人「はい」
―――――――――――
村長「この人だよ」
ネコ婆さん?「初めまして、狩人さん」
狩人「」
村長「どうかしたのかい?」 ニヤニヤ
狩人「……その」
狩人「もっと、お年を取った人を想像していたので……」
村長「だよねぇ」 ニヤニヤ
村長「少し前まで、本当にお婆さんな人がやってたんだけど」
村長「この前、お孫さんが代替りしてね」
村長「ネーコ、という名前なんだ」
ネーコ「改めて。 通称ネコ婆さんをやっている、ネーコです」 ニコッ
狩人「ど、どうも……」///
狩人(何て言うか、ものすごく可愛い女の子だ……)///
狩人(女や少女も十分可愛いし、綺麗だけど……この娘は格別だなぁ)///
村長「じゃ、後は彼女にいろいろ聞くといい」
村長「ネーコちゃん、お願いするね?」
ネーコ「はい、村長さん」
村長「じゃ……」
スタ スタ スタ…
ネーコ「それでは、狩人さん」
ネーコ「仲介をする前に、簡単な説明をしますね?」
狩人「あ、はい。 ネーコさん」
ネーコ「ネーコでいいですよ」 クスッ
狩人「そ、そうですか……」///
狩人「それなら俺も狩人、でいいよ」///
ネーコ「いえいえ、お客様には節度を持って対応しないといけないので」
狩人「そ、そうか……」///
ネーコ「で、説明ですが」
ネーコ「まず仲介するにあたり、仲介料が発生します」
ネーコ「これはアイルーの報酬とは別にいりますのでご了承ください」
狩人「はい」
ネーコ「次に」
ネーコ「アイルーを雇う際に保証金を預からせていただきます」
狩人「保証金?」
ネーコ「はい」
ネーコ「これは無責任なハンター様の雇用と解雇を防ぐ目的があり」
ネーコ「また、ハンター様の引退や死亡に際し、雇用したアイルーに対する手当てとして」
ネーコ「私が責任を持って預からせていただきます」
狩人「……ハンターの引退や死亡」
ネーコ「そうです」
ネーコ「雇用主であるハンター様は、突然いなくなる可能性があり」
ネーコ「失業したアイルーが路頭に迷わないよう必要な処置として」
ネーコ「ご了承ください」
狩人「…………」
ネーコ「……厳しい事を言うようですが」
ネーコ「彼らは次の仕事を待つ期間や、故郷に帰る為の資金がどうしても必要になります」
ネーコ「それらをハンターに望むのは間違っているのでしょうか?」
狩人「……そ、それは」
狩人「俺にはわからないよ……けど」
狩人「幾らになるのか分からないが、高くつくな……と思ってしまって」
ネーコ「それは否定しませんが……」
ネーコ「しかし、この制度ができるまで」
ネーコ「大勢のアイルーたちが泣き寝入りをしていたのも事実なんです」
ネーコ「ハンターの気まぐれや、ささいな間違いで突然不当解雇されて……」
ネーコ「中には名前が気に入らないとか、寝相が気持ち悪いとか」
ネーコ「そんな理由だってまかり通っていたんです」
狩人「…………」
狩人「……わかったよ」
ネーコ「ありがとうございます」
狩人「で、いくらくらいになるのかな?」
ネーコ「それでは料金のご説明をさせていただきます」
狩人「…………」
ネーコ「まず、キッチンアイルー、オトモアイルー共に」
ネーコ「ランク分けされています」
ネーコ「当然ですが、上に行けば行くほど、料金も高くなります」
狩人「……ですよね」
狩人「おすすめは、やっぱり高い方なんですか?」
ネーコ「即戦力が欲しいのなら、そうですね」
狩人「料金が安い方を選ぶハンターも居るんですか?」
ネーコ「そこはハンター様の事情も絡みますので、十人十色です」
狩人「う~ん……」
狩人「ちょっと疑問なんですけど」
ネーコ「はい」
狩人「安い方は、ずっと安いままなんですか?」
ネーコ「基本的にはそうですけど……アイルーが給金に不満を持った場合」
ネーコ「私が仲介して交渉する事もあります」
ネーコ「それでハンター様との合意が得られない場合は」
ネーコ「辞める事もあるとお考え下さい」
狩人「そうですか」
ネーコ「では、詳しい料金ですが」
ネーコ「ランクは大まかに3段階あり」
ネーコ「C、B、Aの順に料金も高くなります」
狩人「はい」
ネーコ「Cランクは仲介料200z(ゼニー)と保証金が1500z(ゼニー)」
ネーコ「月々の給金は500z(ゼニー)です」
狩人「…………」
ネーコ「Bランクは仲介料500z(ゼニー)と保証金3500z(ゼニー)」
ネーコ「月々の給金は1000z(ゼニー)です」
狩人「…………」
ネーコ「Aランクは仲介料1000z(ゼニー)と保証金7700z(ゼニー)」
ネーコ「月々の給金は2100z(ゼニー)となります」
狩人(高ぇ……)
ネーコ「いかがなさいますか?」
狩人「…………」
狩人「……ちょっと待ってくださいね」
ネーコ「はい」
狩人(最後のAランクって、普通のクエ2回分くらいが毎月かかるのか……)
狩人(しかも仲介料や保証金とか、すごい値段)
狩人(……今なら払えるけど、ちょっと躊躇するな)
狩人(…………)
狩人(安い方はどうなんだろ?)
狩人(下手な掃除や不味いメシ作られたりするのかな……)
狩人(う~ん……)
ネーコ「…………」
狩人「…………」
狩人「じゃあ……Bランクのアイルーを見せてもらえますか?」
ネーコ「はい。 こちらになります」つ(一覧表)
狩人「どれどれ……」
狩人「…………」
狩人「……あの」
ネーコ「はい、何でしょう?」
狩人「こんな事を聞くのはおかしいかもしれないけど」
狩人「選ぶ時の基準とかあります?」
ネーコ「……それはハンター様のお心しだいです」
ネーコ「キッチンアイルーならば、好物の料理が得意なアイルーを選んだり」
ネーコ「オトモアイルーなら、自分の戦闘スタイルと相性のいい」
ネーコ「アイルーを選択すればいいと思います」
狩人「なるほど」
狩人(……って言われてもなぁ)
狩人「う~ん……」
ネーコ「…………」
狩人「……じゃあ」
ネーコ「はい」
狩人「このアイルーをお願いします」つ(指差し)
ネーコ「ありがとうございます」
ネーコ「オトモアイルーはいかがですか?」
狩人「それはまた今度でいいです」
ネーコ「わかりました」
ネーコ「では、仲介料と保証金あわせて4000z(ゼニー)いただきます」
狩人「はい」
―――――――――――
ネーコ「……はい、確かにいただきました」
ネーコ「それでは……板前アイルーさーん」
板前アイルー「ニャ!」
ネーコ「たった今、こちらのハンター様が あなたと雇用契約を結びました」
板前アイルー「ニャ! 旦那、あっしは板前アイルーって名のケチな野郎ニャ!」
板前アイルー「遠慮なくこき使ってくれニャ!」
狩人「お、おう。 よろしくな」
板前アイルー「頑張るニャ!」
ネーコ「それでは狩人さん、板前アイルーさん」
ネーコ「仲良く頑張ってくださいね」
―――――――――――
板前アイルー「ニャ! ここが旦那の住処かニャ?」
狩人「ああ、そうだよ」
板前アイルー「やりがいのありそうな職場だニャ!」
板前アイルー「炊事・洗濯・掃除、全部お任せニャ!」
狩人(……ちょっと暑苦しい奴だな)
狩人「おっと、掃除についてなんだけどな」
板前アイルー「ニャ?」
狩人「俺の部屋は、このままの状態で掃除してくれ」
板前アイルー「このままでかニャ?」
狩人「乱雑に思えるだろうけど、これで俺は使いやすいんでな」
板前アイルー「わかったニャ!」
狩人「それじゃ、仕事にかかってくれ」
板前アイルー「ニャ!」
―――――――――――
板前アイルー「旦那!」
狩人「ん? なんだ?」
板前アイルー「夕食は何にするニャ?」
狩人「もうそんな時間か……そうだな」
狩人「やっぱり肉料理だな」
板前アイルー「注文、ガッテン承知だニャ!」
板前アイルー「では、食材を買ってくるので、20z(ゼニー)欲しいニャ」
狩人「え……あ、そうか」
狩人「そりゃ食材が無いと作れないな……ちょっと待っててくれ」
ゴソゴソ…
狩人「はい、20z(ゼニー)」
板前アイルー「はい! 確かにいただきましたニャ!」
板前アイルー「では! 行ってきますニャ!」
狩人「おー」
―――――――――――
板前アイルー「お待たせしましたニャ!」
狩人「…………」
プ~ン…
狩人「…………」
狩人「……何か嗅いだ事のないニオイだな」
板前アイルー「あっしの特製肉料理だニャ!」
板前アイルー「ささっ! 冷めない内にガッツリ行くニャ!」
狩人(……何か嫌な予感がするが)
狩人「じゃあ……いただきます」
モグッ…
狩人(お? 意外と味は悪くないな)
ムシャムシャ…
狩人(まあそこそこって感じだけど……)
―――――――――――
狩人「ごちそうさま」
板前アイルー「どうでしたかニャ?」
狩人「ああ、何か不思議な……」
ゴロ…
狩人「……ん?」
ゴロゴロゴロ……
狩人「ヴッ!?」
ピーゴロゴロゴロ……
狩人「bhszこhさrlんgy!?」
ダダダダダダッ!! バタンッ!
板前アイルー「ニャ?」
――――――――――――――――――――――
お見苦しい描写の為、割愛します。
しばらくお待ちください。
――――――――――――――――――――――
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お見苦しい描写の為、割愛します。
しばらくお待ちください。
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お見苦しい描写の為、割愛します。
しばらくお待ちください。
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狩人「……お前……毒でも……入れたのか?」
板前アイルー「すまねぇ旦那……ちょいと冒険しすぎたみてぇだニャ」
狩人「冒険……って……うっ……」
板前アイルー「ま! たまにはこんな事もあるニャ!」
板前アイルー「笑って許して欲しいニャ! 旦那!」
ニャハハハハハハ!
狩人「…………」
狩人(……これ)
狩人(解雇しても十分いい理由だよな……?)
狩人(…………)
狩人(……でも4000z(ゼニー)も払ってるしなぁ)
狩人(納得いかねぇ……)
―――――――――――
翌日の朝
狩人の家前
狩人「――というわけで」
狩人「俺は今日、休む……」
少女「……それは災難だったわね」
少女「まあ仕方ない、か……」
狩人「おう……すまんな」
少女「ううん。 クエから帰ったら、お腹に優しいもの持ってくるわ」
少女「じゃ!」
―――――――――――
昼頃
狩人「ふう……どうにか落ち着いてきた」
狩人「…………」
狩人(とりあえず、ネーコに文句の一つも言わないと気が収まらん)
狩人(……我ながら人間ちっちゃい気もするが)
狩人(酷い目に合わされたんだし)
狩人(アイルーの入れ替えくらいには応じてくれるかもしれん)
狩人(ダメもとで文句くらい言ってもいいだう)
狩人「……出かけるかな」
―――――――――――
ネーコの家付近
狩人「……ん?」
狩人「…………」
狩人(どうやら出かけるみたいだな)
狩人(…………)
狩人(どうする? また今度にするか?)
狩人(…………)
―――――――――――
ふもと村 墓地
狩人「…………」
狩人(……何で墓地に?)
狩人(しかもこんな昼間から……)
ザッ… ザッ…
狩人(!?)
狩人(墓を掘り始めた!?)
狩人(白昼堂々と墓荒らしか!?)
狩人(…………)
狩人(ともかく、止めないと!)
ダッ!
狩人「お、おい! ネーコ!」
ネーコ「え?」
ネーコ「ああ、狩人さん」
ネーコ「どうかなさいましたか?」
狩人「それはこっちのセリフだ」
狩人「真昼間から墓荒らしなんて……何をしているんだ?」
ネーコ「墓荒らし? ……ああ」
ネーコ「これは墓荒らしではありませんよ」
狩人「はあ? どう見ても……」
ネーコ「……これを見てください」つ(つつみ)
狩人「は? ……何ですか、これ?」
ネーコ「あるアイルーの尻尾です」
狩人「!?」
ネーコ「時々あるんです」
ネーコ「雇っていただいた ハンター様の事が忘れられなくて」
ネーコ「遺言に亡くなったハンター様のお墓に埋めて欲しい、というアイルーが……」
狩人「…………」
ザッ… ザッ…
ネーコ「ふう……故郷が遠くて、体の一部分でもいいから、と」
ネーコ「このアイルーは、言い残して亡くなったんだそうです」
狩人「…………」
ネーコ「狩人さん、周りのお墓……見てみてください」
ネーコ「ところどころ、お墓の脇に小さなお墓があるでしょう?」
狩人「……ありますね」
狩人「あそこなんて、3つもある」
ザッ… ザッ…
ネーコ「……これでよし。 あとは……」
(小さな墓標)トン…
ネーコ「これで……あっちでも一緒です」
ネーコ「きっと……」
狩人「…………」
狩人「……あれ?」
ネーコ「どうしました?」
狩人「名前が……墓標に名前が無いけど?」
ネーコ「ああ、それは……故事にならって、そうしているんです」
狩人「故事?」
ネーコ「ポッケ村に伝わる……ある歴戦ハンター様の晩年のお話です」
ネーコ「……という事で」
ネーコ「それ以降、ハンター様のお墓に寄り添うアイルーのお墓に」
ネーコ「名前を刻まない事が、ポピュラーになったんです」
ネーコ「最近は名前を刻む事も多いんですけどね」 クスッ
ネーコ「今でもそのハンター様のお墓と、アイルーのお墓はポッケ村に残っていて」
ネーコ「事情を知っている人は、そっと花を手向(たむ)けるそうです」
狩人「……そうですか」
ネーコ「それで……狩人様は、私に何かご用だったのですか?」
狩人「!」
狩人「あー……その……何でもないです」
狩人「たまたまネーコを見かけたんで……」
ネーコ「そうですか」
ネーコ「それでは、私はこれで」
狩人「あ、ああ……」
テク テク テク…
狩人「…………」
狩人(……何か気が削がれてしまったな)
狩人(…………)
狩人「はあ……」
狩人「…………」
狩人「まあ、悪気があったわけじゃないだろうし」
狩人「板前アイルーにもう冒険はするなって、言えばいいか……」
狩人「はあ……」
―――――――――――
数日後の朝
ふもと村 集会所
狩人「ガノトトスが出現した!?」
受付嬢「はい。 ようやく出現しました」
狩人「やっと出たかぁ……長かった」
少女「狩人?」
狩人「あ、少女!」
狩人「聞いてくれ! ガノトトスがやっと出たんだ!」
少女「そう。 ランクアップ対象モンスターが出たのね」
少女「けど……」
狩人「ん?」
少女「密林だと一週間かかるから」
少女「私たち二人一緒に出かけるのは、まずいわね……」
狩人「あー……」
狩人「い、いや、まあ……そりゃ心配かもしれないだろうけど」
狩人「俺もそれなりに腕を上げたんだし……ひとりでも何とかなるさ」
少女「そう……」
少女「じゃ、せめてガノトトスの弱点を教え……」
ハンター(女)「あら、ガノトトス狩りに行くの?」
ハンター(女)「あたしで良かったら手伝おうか?」
狩人「え」
少女「え」
娘ハンター「あ、あの!」
娘ハンター「よ、良かったら私も……」///
狩人「」
少女「」
露出女「ちょいと待ちな」
露出女「そんな小娘とじゃなく、あたいとどうだい?」
露出女「いい仕事して見せるぜぇ~?」
狩人(何て格好を!?)///
少女(ボーン装備……あれで戦う女の子が居るなんて)
少女(って! 問題はそこじゃない!)
少女(どうして女の子ハンターばっかり寄ってくるの!?)
狩人「え、ええと、俺、3乙ばっかしているんですけど……」
ハンター(女)「でも一皮むけたんだよね」
ハンター(女)「何しろG級ティガをやっつけたんでしょ?」
娘ハンター「私、いろいろ教わりたくて……」///
娘ハンター「あ、後でG級ティガのお話も聞かせてくださいね?」///
露出女「一人のメスとしちゃあ、実力もだが……」
露出女「運のいいヤローにツバつけときたいんだよ♪」
狩人「」
少女「」
ワー ワー ギャー ギャー
狩人「……どうすりゃいいの?」
少女「知らないっ!」
少女「その人達と一緒に行けば!?」 フンッ!
狩人「…………」
弱点の事、まだ聞いてないんですけど……
と、言いたかったが
雰囲気がそれを許してくれなかった……
―――――――――――
砂漠村 集会所
ロートル「…………」
ソロ「ロートル」
ロートル「ソロ。 そっちはどうだ?」
ソロ「噂話程度だが……焼け焦げたアプケロスをよく見かけるようになっている」
ソロ「ハンターやメラルー・アイルーの仕業にされているみたいだ」
ロートル「こっちも同じだ」
ロートル「目撃した場所は?」
ソロ「砂漠のあるエリアに集中している」
ロートル「よし、これも同じ」
ロートル「砂漠地帯で決まりだな……」
ソロ「ああ」
ロートル「…………」
ソロ「…………」
ソロ「古龍殺し(エルダーキラー)は無条件でG級ハンターに……」
ロートル「前回はアカムトルムを探して半年粘ったがダメだった」
ロートル「今回はモノにしたいな……」
ソロ「そうだな……」
ロートル「…………」
ロートル(今度こそ……今度こそは)
ロートル(G級に……!)
ロートルの目は、一瞬あやしく輝き
そして、グラスの酒を一気に飲み干した……
524 : 以下、名... - 2015/05/30 20:36:33 SchlHai2 489/1043
※補足説明
原作(P2G)のゲームでは、旧猟区と樹海以外、下位でも入れましたが
このスレでは、HRごとに入れる猟区が制限されています。
下位ハンターは、雪山・森丘・密林・砂漠に入れます。
上位から、火山・沼地・塔・樹海にも入れるようになります。
G級は無制限でどの猟区にも入る事ができ、今回のお話でも出てきましたが
貴重な鉱石はG級ハンターしか、取ってくる事ができません。
P2Gで上位からG級に上がるキークエのモンスターは、アカムトルムですが
このスレでは、G級モンスターは希少なため、それ以上に希少な出現率の
古龍モンスター撃破は、例外的に無条件でG級に上がれるとしています。
また、G級モンスターの報酬額は、原作ゲームの約10倍にしています。
これは古龍クラスも同様です。
モンスター素材もその値段で売買されています。
525 : 以下、名... - 2015/05/30 20:37:11 SchlHai2 490/1043
また、今回のお話で出てきた『 故事 』とは
非公式のエピソードでして、知る人ぞ知るお話です。
気になる人は、『名無しのアイルー』で検索してみてください。
ハンカチ必須。
続き
狩人「目指すは伝説級ハンター!」【3】