1 : 以下、名... - 2015/04/21 18:35:00 q76kDgdg 1/1043
モンハンSSです。
>>1はP2Gから始めました。
多少、公式とルールの違う箇所があると思いますが
「こまけぇこたぁいいんだよ!」の精神で見ていただけると嬉しいです。
申し訳ありませんが、不定期更新です。あしからず……
それでは始めます。
元スレ
狩人「目指すは伝説級ハンター!」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1429608900/
狩人「目指すは伝説級ハンター!!」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1436793760/
ふもと村 集会所
ガヤ ガヤ
狩人「…………」
狩人(……ここはふもと村の集会所)
狩人(集会所とは、食堂も兼ねているが)
狩人(少々手ごわいモンスター等を他のハンターと共同で受注する事ができる場所だ)
狩人(…………)
狩人(ここには『村つき』と呼ばれるハンターや)
狩人(流れのハンター、依頼主の旅商人や村人の憩(いこ)いの場でもあったりする)
狩人(運営はハンターズギルドが行っている)
狩人(…………)
狩人(今の俺は駆け出しのペーペー)
狩人(もちろんハンターランク(以下HR)は最下級の 1 ……)
狩人(いずれはここを利用する様になるだろうけど)
狩人(他のハンターがどんなものなのか、見ておきたくてここに来た)
狩人(あれが、あの姿が、未来の自分なんだと……!)
??「……あの」
狩人「はひっ!?」
??「あなたもハンターなんですか?」
狩人「え? ああ、はい! そうです!」
狩人「もっとも、昨日この村に着いたばかりのド新人ですけどね……」 ハハハ…
狩人「名前は狩人、って言います」
??「へえ、奇遇ですね!」
??「私も先週ここに来たばかりなんですよ!」
??「あ、自己紹介がまだでしたね」
??「私、少女って言います。 よろしくね!」
狩人「ああ、よろしく!」
狩人「……で、少女はここの仕事、受けるつもりなの?」
少女「うん。 そのつもり」
少女「狩人は?」
狩人「あ……えと……俺は」
少女「HR1でもキノコ狩りとかは一人でできるよ?」
少女「ちょっと量が多くなるけどね」
狩人「…………」
少女「私も最初は怖かったんだけど、やってみれば案外大した事ないよ?」
少女「何なら今から一緒に付き合ってあげようか?」
狩人「!」
狩人「そ、そうだな……」
狩人「よ、よし! やってみる!」
少女「うんうん。 じゃ、クエスト受注してくるね」
スタ スタ スタ…
狩人「…………」
狩人(思いがけず、クエストへ行く事に)
狩人(しかも割と可愛い女の子ハンターと!)
狩人(緊張するなぁ……)///
狩人(よし! ここはひとつ俺の才能の片鱗を見せてやるぞ!)
少女「お待たせ!」
少女「武器は私と同じ片手剣でいいの?」
狩人「ああ、問題ないよ!」
狩人「どんと来いさ!」
少女「うふふ、なぁに? 急に張り切って」 クスッ
少女「じゃ、装備や持ち物に問題がないのなら」
少女「掲示板に貼ってある受注クエストの張り紙にサインしてね」
狩人「ほいほい……これでいい?」
少女「うん!」
少女「それじゃ雪山へキノコ狩りに出発ー!」
狩人「おー!!」
パァ~フォ~
―――――――――――
少女「…………」
狩人「ご、ごめん! 少女!」
狩人「ま、まさかただの鹿があんなに強いなんて思わなくて!」
少女「う、うん。 まあ……そういう時もあるよね」
少女(ガウシカに喧嘩売って3乙とか……無いでしょ)
少女「狩人、今日は調子が悪いみたいだから」
少女「また今度一緒に行こうね!」
少女「じゃ!」
狩人「あ……」
狩人「…………」
????「はっはっはっ!」
????「どうやらお前さん、振られたらしいな!」
狩人「……ほっといてください」
????「まあガウシカに負けるようじゃ、言わずもがな、だな!」
狩人「だからほっといてくださいって!」
????「まあ落ち着けって」
????「俺はイケメンって名前だ」
イケメン「お前みたいな新人は大事にしなくちゃな」
狩人「はあ……」
イケメン「そこで、だ」
イケメン「俺がいろいろと基本を教えてやってもいいぜ?」
狩人「え?」
イケメン「もちろんタダじゃないがな」
イケメン「もう一度キノコ狩りのクエを受注してこい」
イケメン「で、そのクエの報酬を全額俺にくれるのなら」
イケメン「ガウシカとの戦い方だけでなく、他の小型モンスターの対処法も教えてやるよ」
狩人「…………」
狩人「そういう事なら……お願いします」
イケメン「ようし。 契約成立だ」
イケメン「じゃ、頑張って行こうぜ!」
狩人「はい!」
パァ~フォ~
―――――――――――
雪山
狩人「では、教えてもらえますか?」
イケメン「まあまあ慌てなさんな」
イケメン「先に手分けしてキノコを集めておこう」
イケメン「そうすりゃ残った時間をフルに訓練へ使える」
狩人「なるほど。 確かにそうですね」
イケメン「そうだな……せっかくだし」
イケメン「ひとつ競争しないか?」
狩人「競争?」
イケメン「どっちがより多くキノコを集められるか勝負しないか?って事だよ」
狩人「え? でも俺、まだここのマップにも慣れていませんし……」
イケメン「なら、ハンデをくれてやるぜ?」
狩人「ハンデ?」
イケメン「そうだな……キノコ6つ分、お前さんにハンデとしてやるよ」
狩人「6つも!?」
狩人「……いくらなんでもそれじゃ俺が勝っちゃいますよ?」
イケメン「ほう……なら、何も問題はないよな?」
狩人「……わかりました」
狩人「受けて立ちます!」
イケメン「その息その息♪」
イケメン「じゃ……お先に!」
狩人「あ! ずるいですよ!」
―――――――――――
狩人「よし……これで10個目だ!」
狩人「ハンデと合わせれば16個。 いくらなんでも勝てるな!」
狩人「BC(ベースキャンプ)に戻ろう」
―――――――――――
狩人「……ふう」
狩人「…………」
狩人「イケメンはまだか」
狩人「…………」
―――――――――――
狩人「…………」
狩人「……もうすぐ日が暮れる」
狩人「いくらなんでも遅すぎる」
狩人「…………」
狩人(……まさか)
狩人(モンスターの乱入!?)
狩人(…………)
狩人(もし……そうだったら)
狩人(俺の実力じゃ話にならない)
狩人(急いで戻って、ギルドに応援を呼ばないと!)
―――――――――――
ふもと村 集会所
狩人「す、すみません!」
受付嬢「はい?」
狩人「あ、あの! イケメンってハンターが」
狩人「たぶんモンスターの乱入に襲われたみたいで!」
受付嬢「ああ、そのハンターなら、とっくに戻って報酬を受け取ってますけど?」
狩人「…………」
狩人「……は?」
受付嬢「そういう契約をあなたと交わしたと承っておりますので」
受付嬢「こちらはお支払いしていますが……」
狩人「そ、それは! 確かにそうですが……!」
受付嬢「それよりも依頼内容のキノコの納品はどうなっているのでしょうか?」
狩人「!!」
狩人「え……と」
受付嬢「……依頼の半分足らずですね」
狩人「で、ですが! こちらにも事情が!」
受付嬢「残念ですが。 クエストは失敗したとみなします」
受付嬢「先払いした報酬は、あなたが支払ってください」
狩人「」
受付嬢「この命に従えないのなら」
受付嬢「あなたには少々怖い思いをしてもらう事になります」
受付嬢「よろしいですね?」
狩人「」
こうして……
俺の集会所デビューは
くそみそで、クソッタレな感じで
幕を閉じた……
17 : 以下、名... - 2015/04/21 18:49:51 q76kDgdg 17/1043ちょっと間抜けで不器用な新米ハンターの物語です。
それでは、また。
―――――――――――
数日後の午後
ふもと村 村長宅前
村長「はい、ご苦労様」
村長「これが報酬だよ」
狩人「どうも」
村長「明日もよろしくね」
狩人「もちろん頑張ります」
狩人「じゃ……」
狩人「…………」
狩人(あれから数日過ぎて……ようやく落ち着いてきた)
狩人(ギルドに立て替えてもらったお金は)
狩人(ギルドに支給してもらった初期装備の武器をいくつか売って何とかした)
狩人(…………)
狩人(何だか本末転倒で、申し訳ない気もするが……)
狩人(改造しようが、ホコリを被ろうが、好きにしていいと言われていたので)
狩人(売っても問題ないだろう)
狩人(…………)
狩人(あのイケメンとかいうハンターは流れ者で)
狩人(そういう連中は、何も知らない新人をカモにする事はよくあるのだとか……)
狩人(…………)
狩人(嫌なことは早く忘れて、次の仕事に集中しよう)
―――――――――――
数日後の午前
雪山
ギュアッ! ギュアッ!
狩人「くっ……! このっ!」
ブンッ ブンッ!
狩人(くそぉ……どうして当たらないんだよッ!)
ギュアッ! ギュアッ!
狩人「わ、わああああっ!!」
―――――――――――
ふもと村
狩人「」
救助アイルー「じゃ、確かに届けたニャ」
ガラガラガラ…
村長「…………」
―――――――――――
村長「大丈夫かい?」
狩人「……ええ、おかげ様で何とか」
村長「……時に」
村長「3乙はこれで何回目かな?」
狩人「……5回目です」
村長「……私も長いことハンターを見てきたけど」
村長「ギアノス5匹狩猟にこんなに手間取るハンターは始めてだよ」
狩人「…………」
村長「キツい言い方になるけど」
村長「もっとしっかりしてくれないと困る」
狩人「…………」
狩人「……すみません」
村長「本当に頼むよ……」
テク テク テク…
狩人「…………」
―――――――――――
狩人の家
ドサッ…
狩人「……疲れた」
狩人「…………」
狩人(村長さんが怒るのも当然だ……)
狩人(村付きハンターは、ハンターズギルドに依頼してハンターを派遣するが)
狩人(そのハンターの住まいなどは、維持費も含めて村が支払わなくてはならない)
狩人(簡単に言えば、村がモンスターに対する用心棒を雇っているという事)
狩人(…………)
狩人(その用心棒がそこら辺の下っ端モンスターに手こずっていりゃ)
狩人(金返せ、とも言いたくなるわな……)
狩人「はあ……」
―――――――――――
翌日の朝
村長宅前
狩人「おはようございます」
村長「おはよう」
村長「今日はいつものキノコ狩りかい?」
狩人「ははは……はい」
狩人「また契約金稼ぎしてきます」
村長「そうかい」
村長「めげないのは、いい事だね」
狩人(契約金か……)
狩人(これが意外とバカにできない)
狩人(依頼の多くは契約料が発生する)
狩人(不測の事態に備え、救出ネコタクがいざという時、助け出す為の契約料なのだが……)
狩人(…………)
狩人(そして一回乙する度に、賞金を3分の1ずつ取って行き……)
狩人(3回乙するとクエストは失敗となる)
狩人(まあこれはハンターが無茶をしない様に、という配慮でもあるが)
狩人(そして……クエスト失敗となれば賞金を出している依頼者は丸損)
狩人(採取クエなら目的のブツは手に入らず、出したお金がパァ……)
狩人(狩猟目的なら金を出したのにモンスターは生きたまま……)
狩人(村長さん、マジすんません……)
―――――――――――
数日後の午後
ふもと村 広場
狩人(よし……そろそろ契約金が払えるくらいは溜まった)
狩人(キノコ狩りのついでに見かけたギアノスを相手に訓練もした)
狩人(一匹ずつ相手にするなら……何も問題はない)
狩人(今度こそ……!)
??「あ……」
狩人「!!」
狩人「……少女」
少女「……久しぶり」
狩人「あ、ああ……久しぶり」
少女「…………」
少女(防具……ギルドから支給されたマフモフスーツのまま)
少女(苦労しているみたいね)
狩人「…………」
狩人(あれは……ギアノス……じゃないな?)
狩人(ギアノスよりもっと強い青色している……そのウロコや皮を使った鎧)
少女「…………」
狩人「…………」
少女「じゃ、私……行くね?」
狩人「……ああ」
スタ スタ スタ…
狩人「…………」
狩人(彼女……)
狩人(順調みたいだな……)
狩人(…………)
―――――――――――
狩人の家
狩人「…………」
狩人「明日は……どうする?」
狩人「思い切って武器を変えてみるか?」
狩人「…………」
狩人(いや……やっと慣れてきたところだし)
狩人(片手剣でギアノスを倒せるようになってきたんだ)
狩人(これで行こう)
狩人(…………)
狩人「明日も頼むぞ、相棒」
俺は、ハンターナイフの手入れを始めた。
31 : 以下、名... - 2015/04/23 15:22:20 xrmDDe1k 30/1043
※注
公式はどうなっているのか知らないのですが
>>1の解釈で、ハンターが払う契約料はネコタクへの契約料、という事になっています。
ゲームで3分の1ずつ減っていくのは、救出ネコタクの使用料と解釈。
また、賞金は依頼者が負担していますが、これとは別に
ギルド側にも仲介料が発生していて、簡単にまとめると
ギルド側 依頼者から仲介料を徴収(儲け)。 集会所の運営費を負担
救出ネコタク 契約料、及び救出(命懸け)ごとに賞金のお金
ハンター 契約料を負担 依頼達成で賞金がハンターの儲け
依頼者 ギルドへの仲介料と賞金の負担 クエ達成がメリット
と、なっております。
32 : 以下、名... - 2015/04/23 15:25:06 xrmDDe1k 31/1043というところで今日はここまで……
依頼者不利すぎな気もするけど、こんな感じです。
それでは、また。
―――――――――――
翌日の午前中
雪山
ギュアッ! ギュアッ!
狩人「でやああああああああっ!!」
ザシュッ! キュウウウゥゥ…
狩人「よし、次っ!」
ガブッ!!
狩人「ぐっ……! このぉっ!」
ザシュッ!
―――――――――――
BC(ベースキャンプ)
狩人「」
狩人「……はっ!?」
救助アイルー「気がついたかニャ」
狩人「ここは……BC」
狩人「という事は……1乙しちまったのか」
救助アイルー「そういう事だニャ」
狩人「けど、3匹はやったはず……」
狩人「あと2匹やれば、クエストクリアだ!」
救助アイルー「…………」
救助アイルー「なあ、新人ハンターさん」
狩人「ん?」
救助アイルー「あんた……こんな調子で、この先やっていけるのかニャ?」
狩人「…………」
狩人「……んな事、わからねーよ」
救助アイルー「まあ俺らはギアノス程度で、こんなに稼がせてもらってありがたいけど」
救助アイルー「あんた、こんなこと繰り返していたら」
救助アイルー「体の方が先に参ってしまうニャ」
狩人「…………」
救助アイルー「俺から言うのも何だけど……」
救助アイルー「武器を鍛えてからとか、防具を買い揃えてからとか」
救助アイルー「もうひと工夫してから挑戦した方がいいと思うニャ」
狩人「……契約金稼ぐので精一杯なんだよ」
狩人「とてもじゃないが、そんな余裕は……」
救助アイルー「狩りに行くのを一回我慢すりゃ」
救助アイルー「簡単な武器の改造くらいはできるはずニャ」
狩人「…………」
狩人「でも……他のハンターは、そんな事しなくてもこのクエをクリアしている」
救助アイルー「…………」
狩人「やっぱり俺……才能無いのかな」
救助アイルー「いいや。 それは絶対に無いニャ」
狩人「え……」
救助アイルー「ギルドがあんたをハンターと認めているのなら」
救助アイルー「少なくとも最低限の才能は持ち合わせていると判断しているニャ」
狩人「…………」
狩人「……慰めなんて」
救助アイルー「そんなつもりは無いニャ」
救助アイルー「ギルドに認められるハンターってのは」
救助アイルー「現存するすべての種類の武器を、ある程度使えないと許可が降りないニャ」
救助アイルー「あんたは、大剣やランス、ガンランスの重量武器を振えるけど」
救助アイルー「普通の人は持って歩く事すら出来ないニャ」
狩人「…………」
救助アイルー「ハンターになれる」
救助アイルー「それだけで、十分才能は持ち合わせているニャ」
狩人「…………」
救助アイルー「……それに」
狩人「それに?」
救助アイルー「力尽きたハンターを救助するのは」
救助アイルー「俺たちだって命懸けニャ」
狩人「…………」
救助アイルー「ハンターが乙しなければ」
救助アイルー「俺たちは何の苦労もなく、契約料が手に入るニャ!」
狩人「……おいおい」
救助アイルー「んじゃ……俺はそろそろ行くニャ」
救助アイルー「健闘を祈るニャ」
タッ タッ タッ…
狩人「…………」
―――――――――――
その日の午後
ふもと村 村長宅前
村長「おお、狩人!」
村長「どうにかギアノス5匹狩猟できたみたいだね!」
狩人「ええ」
村長「……?」
村長「どうしたんだい? あまり嬉しそうじゃないみたいだが……」
狩人「一回乙しましたしね……素直に喜べませんよ」
村長「……そうかい」
狩人「それじゃ……今日はもう休みます」
村長「ああ、お疲れ様」
―――――――――――
狩人の家
狩人「…………」
救助アイルー「武器を鍛えてからとか、防具を買い揃えてからとか」
救助アイルー「もうひと工夫してから挑戦した方がいいと思うニャ」
狩人「…………」
救助アイルー「ハンターになれる」
救助アイルー「それだけで、十分才能は持ち合わせているニャ」
狩人「…………」
狩人(工夫……か)
狩人(…………)
狩人(才能を言い訳にして愚痴るのは)
狩人(誰にだってできる)
狩人(有名なハンターだって……最初から何もかも出来たんだろうか?)
狩人(……そんなわけ無いよな)
狩人(…………)
狩人(きっと……)
狩人(俺の知らないところで、何か努力をしていたんだろう)
狩人(…………)
―――――――――――
翌日の朝
村長宅前
村長「おや? 狩人」
村長「今日も早いね」
狩人「おはよう、村長さん」
村長「ああ、おはよう狩人」
狩人「採取クエ、あるかい?」
村長「もちろんあるけど……ギアノス狩猟で疲れているんじゃないのかい?」
狩人「大丈夫。 それよりも目的ができたんでね」
狩人「しばらくお金を貯めようと思う」
村長「そうかい」
村長「まあ疲れていないのなら、こちらとしては断る理由はないよ」
村長「薬草、鉱石、お馴染みのキノコと」
村長「選り取りみどりだ」
狩人「どれどれ……」
狩人「割が良さそうなのは鉱石か」
狩人「じゃ、これを」
村長「ほいほい」
村長「じゃ、頑張ってね」
狩人「ああ」
パァ~フォ~
―――――――――――
雪山
カーン… カーン…
狩人「ふう……また鉄鉱石か」
狩人「マカライト出ないな」
カーン… カーン…
―――――――――――
ギュアッ! ギュアッ!
狩人「ギアノス……邪魔だな」
狩人「はあっ!!」
―――――――――――
狩人「ふう……」
狩人「よし、依頼の量は確保できたな」
狩人「戻ろう」
ギュアッ! ギュアッ!
狩人「またかよ……」
狩人「!?」
狩人(何だコイツ……異様にでかいし、あのトサカに足の鉤爪)
狩人(…………)
狩人(まさか……!)
グアアッ!!
狩人「くそっ!!」
―――――――――――
BC(ベースキャンプ)
狩人「はあっはあっ……」
狩人「どうにか……逃げ切ったぜ……」
狩人(…………)
狩人(あれは、たぶんギアノスを束ねるリーダー)
狩人(ドスギアノス……)
狩人(並のギアノスより攻撃力も耐久力もかなり上だとか)
狩人(幸い仲間を呼ばれなくて、何とか逃げ切れた……)
狩人(…………)
―――――――――――
ふもと村 村長宅前
村長「え? ドスギアノスを見かけたって?」
狩人「ああ」
村長「そうかい……この前少女が倒したばかりだったんだが」
村長「また出たみたいだね」
狩人「…………」
村長「ともかくご苦労さん」
村長「また少女に討伐依頼出しておくよ」
狩人「…………」
狩人「なあ、村長さん」
村長「ん?」
狩人「俺に……やらせてもらえないか?」
―――――――――――
加工店
職人「おう狩人」
狩人「職人さん、できてますか?」
職人「ああ、できてるぜ」
スラァ…
職人「ハンターカリンガだ」
狩人「どうも」
職人「素材と金さえもらえれば、どんどん強くしていけるからな」
狩人「ああ、頑張るよ」
狩人「…………」
狩人(結局……ドスギアノスは狩らせてもらえなかった)
狩人(…………)
狩人(おまけにふて腐れる間もなく、少女があっさりとドスギアノス狩ってくるし)
狩人(真面目に肩身が狭い……)
狩人(…………)
狩人(ともかくだ。 武器も強化したし)
狩人(例のギアノス5匹狩猟クエをそつなくこなせる様になれば)
狩人(俺にもやらせてもらえるだろう)
狩人(当座の目標はドスギアノス!)
狩人(頑張るぞ!)
―――――――――――
数日後の午前
雪山
狩人「これで……最後!」
ズバッ! クウウウウゥゥゥ…
狩人「はあっはあっ……よし!」
狩人「ついに1乙もしなかったぞ!」
狩人「あはははははは!!」
狩人「…………」
狩人「おっと、剥ぎ取りしないと……」
狩人「…………」
狩人(それにしても武器の強化が、これほど効果的だったなんて)
狩人(あんなに苦労してたギアノスだったのに……)
狩人(あっさり狩れる様になった)
狩人(もちろんあいつらの動きに慣れた、というのも大きいだろうけど)
狩人(…………)
狩人(さて、そろそろ帰るか)
―――――――――――
ふもと村 村長宅前
村長「やあ、おかえり。 狩人」
狩人「どうも、村長さん」
村長「最近、順調だね」
狩人「はは、武器を新調しましたから」
村長「そうかい」
村長「それなら、そろそろ大きいの行っておくかい?」
狩人「!」
狩人「ドスギアノスですか!?」
村長「あー残念だけど違うよ」
村長「ドスファンゴだ」
狩人「ドスファンゴ……ファンゴのボスですか」
村長「ある意味ではドスギアノスより厄介だよ」
村長「攻撃力が高くて、普通の人がまともに食らうと即死もあり得る」
狩人「……なるほど。 確かに手強そうですね」
狩人「じゃあ回復薬とか、調達し終えたら」
狩人「やります」
村長「ああ、わかった」
―――――――――――
狩人「…………」
狩人(……ストアで売っているの買えばいいんだけど節約しないとな)
狩人(明日いっぱいは、薬草とアオキノコ採取に使うとして)
狩人(その次の日は休養に回そう)
狩人(その翌日が……決戦の日だ!)
狩人(…………)
狩人(……そうだ。 少し余裕も出来てきたし)
狩人(武器もだけど、防具の方も新調できないか見てみよう)
加工店
職人「よお、狩人」
狩人「どうも、職人さん」
狩人「それなりに素材とお金が貯まりましたんで」
狩人「武器もですけど防具でも何が作れるか、見てもらえますか?」
職人「おう、いいぞ」
―――――――――――
狩人「防御力でバトルシリーズ……でも全部は作れない」
狩人「その点、ハンターシリーズは揃えられる……か」
職人「まあその辺りは好みだと思うぜ?」
職人「何が何でも全部揃えなきゃならん、という事はねぇ」
職人「この段階じゃ、そんなに性能差はないからな」
狩人「そう言われても……迷いどころだなぁ」
狩人「う~ん……」
職人「…………」
狩人「……よし」
狩人「ハンター装備一式買います!」
職人「ああ、わかった」
職人「2~3日待っててくれ」
狩人「では3日後に取りに来ます」
―――――――――――
二日後の午後
ふもと村 広場
女「ただいまー」
村人「やあ、女ちゃん。 おかえり」
村人「今回の仕入れは、ずいぶん長かったね?」
女「帰る途中の街道で、ティガレックスが出てね」
女「討伐されるまで足止め食っちゃったのよ……」
村人「そう……そりゃ災難だったね」
女「で? こっちの方もハンターが何人か引退したそうじゃない」
女「大丈夫なの?」
村人「ああ、それなら新人だけど2人来てくれたから」
女「へえ。 さすがギルドね」
女「仕事が早い」
村人「本当に良かったよ、2人で」
村人「ハズレだけだったら、えらい事になってたよ……」
女「ん? ハズレ?」
―――――――――――
女「あはは! ガウシカに3乙!?」
女「本当にハンターなの!?」
村人「まあ、今は多少マシになったけど」
村人「少し前までギアノス相手に何度も3乙繰り返してたよ」
女「……うわぁ」
女「そりゃ確かにハズレだわ……」
女「で、もう一人はどんな感じ?」
村人「見た目は女ちゃんと代わらないくらい可愛い女の子なんだけど」
村人「こっちは順調に狩猟クエをこなしているよ」
女「ふーん」
女「…………」
―――――――――――
少女の家
女「こんにちはー」
少女「はい? どなたですか?」
女「初めまして。 私、女って言います」
女「あそこのストアの仕入れ担当で、今日帰ってきたので」
女「新しいハンターさんに挨拶を……と思って」
少女「あ、これはご丁寧に」
少女「私、この前ここに来た、ハンターの少女って言います」
少女「よろしく」
女「よろしくね♪」
女「なんか順調に強くなってるって、聞いてるよ?」
少女「最近はちょっと伸び悩んでいるんですけどね……」
女「ふーん? そうなの?」
女「ま、頑張ってね!」
少女「はい。 頑張ります」
女(ふむふむ、なかなか感じのいい娘ね)
女(確かに当たりって感じだわ)
女(さて、ハズレの方はどんな感じかな?)
―――――――――――
狩人の家
女「こんにちはー」
女「…………」
女「あれ?」
女「こんにちはー?」
女「…………」
女「居ないのかな?」
……グォー ……グォー
女「…………」
女「あれまあ……窓を開けっ放しにして、のんきに寝てるわ」
女「さすが、ハズレハンターね」
女「…………」
女「挨拶は、また後でいっか」
―――――――――――
狩人「ふああああ……」
狩人「…………」
狩人「あー……よく寝た」
狩人「…………」
狩人(今日は休養日だけど……)
狩人(日課の素振りや、薪割りをしておかないとな)
―――――――――――
狩人「……ふう」
狩人「こんなものだろう」
狩人「…………」
コンニチハー
狩人「ん? 誰か来た」
狩人「はーい」
狩人「誰ですか?」
女「お、今度は起きてた」
狩人「は?」
女「あはは! 何でもない!」
女「初めまして。 私は広場前のストアで仕入れを担当している、女って言います」
女「新しいハンターさんに挨拶しておこうと思って、来ました」
狩人「そうなんですか」
狩人「初めまして。 この前、派遣されてきたハンターの狩人です」
女「よろしくね」
狩人「はい、よろしく」
女「私もたまに店番してるから、たくさん買ってくれると嬉しいな!」
女「じゃ!」
狩人「…………」
狩人「可愛い人だったなー」
女「…………」
女(んふふ)
女(外見だけなら、十分合格ね)
女(外見だけなら)
女(…………)
女(でも……)
女(いつまでもハズレのままじゃ)
女(こちらとしては困るのよねー……)
女(…………)
―――――――――――
翌日の午前中
村長宅前
村長「やあ、狩人。 来たね」
狩人「はい」
村長「おっ……武器だけじゃなく」
村長「防具も新調したのかい」
狩人「ええ。 今日の為に」
村長「気合入ってるね」
村長「じゃ、ドスファンゴ狩猟、頑張ってくれ」
狩人「行ってきます!」
パァ~フォ~
―――――――――――
雪山
狩人「さて……ドスファンゴ」
狩人「待ってろよ……!」
ヒュウウウウウ……
狩人「ううっ……寒いな」
狩人「マフモフじゃないから寒さが堪えるぜ……」
狩人「早いとこ済ませないと」
―――――――――――
狩人「はあっ……はあっ……」
狩人「くそっ……!」
狩人「寒くて……動きにくくなってきた……」
ブモー!!
狩人「!!」
狩人「現れたな……ドスファンゴ!!」
ズシャ…! ズシャ…!
ドドドドドドドドッ!
狩人「来たな……そんな直線的な攻撃、軽く避けられるぜ!」
狩人「どうだ!」
狩人「!?」
ドゴォッ!!
狩人「ぐはっ!!」
狩人(……かわしたと思ったら)
狩人(次の攻撃がこんなに早く来るなんて……!)
ドドドドドドドドッ!
狩人「うわああああああああっ!!」
狩人「く、くそっ」
ドドドドドドドドッ!
狩人「寒くて……動けな……」
ドゴォッ!!
―――――――――――
村長宅前
村長「…………」
狩人「」
救助アイルー「……それじゃ」
ガラガラガラ…
―――――――――――
狩人「すみません! 村長さん!」
村長「い、いや……いいんだよ」
村長「君は頑張っていた。 それは確かだから」
女「ちわーす、村長さん」
女「頼まれていた品物届けに……ん?」
女「どうしたんですか?」
村長「あー……うん、何でもないよ」
狩人「…………」
女「…………」
女(……3乙したみたいね)
狩人「ともかく、村長さん」
狩人「もう一度……依頼を受けさせてください!」
狩人「お願いします!」
村長「狩人……そんなに頭を下げなくても大丈夫だから」
村長「ぜひ、再挑戦してくれ」
狩人「ありがとうございます!」
狩人「次は、マフモフで行きますから……」
村長「……ん?」
女「……は?」
女「何でわざわざ防御力の低い装備に戻すの?」
狩人「それが……この装備だと寒くて、すぐ動けなくなったから……」
村長「」
女「」
狩人「……?」
狩人「どうしたんですか?」
女「……ねぇ」
女「BC(ベースキャンプ)にさ、支給品の入った青い箱、あるでしょ?」
狩人「ええ、ありますね」
女「それにさ」
女「ホットドリンクっていう薬があると思うんだけど?」
狩人「ああ、確かに見かけましたけど……それが?」
村長「…………」
女「…………」
女「えと……どうして飲まなかったの?」
狩人「どうしてって……何の薬かわからなかったし」
狩人「まあいっか、って感じで、放っておいただけですけど……」
村長「…………」
女「……はあ」
狩人「???」
女「あのね、新人クン」
女「あの薬……ホットドリンクっていうのはね」
女「一定時間、寒さを緩和する効果があるのよ」
狩人「…………」
狩人「え」
狩人「えええええっ!?」
女「……あきれた。 本当にあなたってハンターなの?」
村長「ま、まあまあ、女ちゃん」
村長「狩人もひとつモノを知る事が出来たんだし、よかったじゃないか」
狩人「…………そうですね」
狩人「次は……ちゃんと飲みますから」
トボ トボ トボ…
村長「…………」
女「…………」
女「ねえ、村長さん」
村長「う、うん」
女「真面目に交代のハンターを要請すべきじゃない?」
村長「……正直を言えば、頭をよぎったけどね」
村長「ハズレだから交代させて、何て通らないと思うよ……たぶん」
女「はあ……本当にとんでもないハズレを掴まされたものだわ」
女「少女ちゃんが唯一希望の星ね」
村長「……まあ、それなりに役には立ってくれてるし」
村長「長い目で見ていこうよ……」
女「はあ……」
狩人の家
狩人「…………」
狩人「何の薬かなぁ……とは思っていたんだけど」
狩人「そんな効果があったなんて……」
狩人(…………)
狩人(……大恥じ、かいちまった)
狩人(…………)
狩人(……もう寝よう)
狩人(…………)
忘れろ……
忘れるんだ……
そう呟きながら
俺は眠りについたのだった……
―――――――――――
数日後の午前
ふもと村 集会所
ガヤ ガヤ
少女「よろしくお願いします」
流れハンター「ああ、よろしく」
ハンター(女)「よろしくね」
色黒ハンター「こちらこそよろしく」
色黒ハンター「これでカニ(ダイミョウザザミ)装備、できるんだっけ?」
少女「はい」
少女「たぶん素材が出揃うかと……」
ハンター(女)「でも噂で聞いてたのと違うね、少女ちゃん」
少女「え?」
ハンター(女)「ガウシカに3乙したとか、ギアノス相手に何度もクエ失敗したとか」
ハンター(女)「ふもと村の新しいハンター、すごいヘタレだって聞いてたから……」
少女「あー……それ私の事じゃないです」
少女「派遣されてきた日が近かったから、よく混同されるんですけど」
少女「狩人って名前のハンターの事ですね」
流れハンター「今の話、本当か?」
流れハンター「よくハンターになれたな……」
ハンター(女)「まあ戦闘センスとかは審査基準にないからね」
色黒ハンター「そんな奴とは組みたくねーなぁ」
ハハハ…
少女「…………」
―――――――――――
雪山
ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!
狩人「ひぎっ!!」
バコッ!!
狩人「ぶべらっ!!」
バチバチバチバチッ!
狩人「gっどんjcdcんhmfjhッ――!!」
―――――――――――
村長宅前
狩人「」
救助アイルー「毎度どうもニャ」
ガラガラガラッ…
村長「……ご苦労様」
―――――――――――
狩人「すみませんっ!」
村長「あー……何度も言うけど、気にしなくていいから」
狩人「でも……」
村長「その分、採取クエで割は取ってくれているよ、君は」
村長「だから大丈夫」
狩人「……そうですか」
狩人の家
ドサッ…
狩人「あー……疲れた」
狩人「フルフル強すぎだぜ……ドスファンゴとは比べ物にならない」
狩人「…………」
狩人(せめて、あの咆哮さえ無くなればなぁ……)
狩人(切り込んでる最中にやられると)
狩人(ダメージが全然入らない)
狩人(…………)
狩人(どうすればいいんだろう……)
少女の家前
狩人「おーい、少女」
シーン…
狩人「…………」
狩人「居ないのか……」
女「あら、狩人」
狩人「あ……女さん」
女「少女ちゃんなら、密林へ遠征に行くって言ってたわよ」
女「一週間くらい帰ってこないって」
狩人「…………」
狩人「……そうですか」
女「それより君、また3乙したんだって?」
狩人「……はい」
女「そう……」
女「まあ、次があるよ」
狩人「ハハ……頑張ります」
女「……ところで少女ちゃんに何の用だったの?」
狩人「!」
狩人「た、大した用事じゃないですよ」
女「…………」
女「……あ」
女「もしかしたら、戦い方を教えてもらおうとしたの?」
狩人「ほ、ホントに何でも無いですから!」
タッ タッ タッ…
女「……図星か」
狩人の家
狩人「はあっ……はあっ……」
狩人「…………」
狩人(……どうすりゃいいんだよ)
狩人(…………)
狩人(思い切って集会所へ行くか……?)
狩人(…………)
狩人(だめだ)
狩人(もうあそこには行きたくない……)
狩人(おまけにヘタレだの3乙ハンターだの噂されてるし)
狩人(馬鹿にされるのがオチだ……)
―――――――――――
ふもと村 集会所
女「こんにちは」
女「食材のお届けに参りました」
受付嬢「ご苦労様です」
女「受取証にサインをお願いします」
受付嬢「はい」
サラサラ…
女「毎度どう……」
女「あ!!」
受付嬢「?」
受付嬢「どうしました?」
女「い、いえ。 何でもないです」
女(教えを請うのなら、ここに来ればいいのに……)
受付嬢「左様ですか」
女「ははは……ただ、狩人ってハンター」
女「いつも村のクエストしかしていないなーと思って」
受付嬢「ああ、あのヘタレハンターですか」
女「え」
受付嬢「ふもと村の武勇伝が入ってきてますからね」
受付嬢「少女さんがいちいち説明していて迷惑そうでした」
受付嬢「まあ、その彼がここに来られるとは思いませんが」
女「…………」
女「……それじゃ」
受付嬢「はい」
―――――――――――
女「…………」
女「……そういう事だったのね」
女「…………」
女「後で様子を見に行ってやるか」
女「美味しいものでも差し入れよう」
―――――――――――
加工店
カーン… カーン…
女「こんにちは」
職人「おう、こんにちは」
女「注文されていた道具と部品です。 サインを」
職人「ありがとう」
サラサラ…
職人「……そうだ、女ちゃん」
女「はい?」
職人「狩人ってハンターの事は知っているかい?」
女「ええ、知ってますけど?」
職人「こんな事、頼むのは筋違いなんだけどな……」
職人「あいつの事、励ましてやってくれねぇか?」
女「え?」
職人「女ちゃんもヘタレだのハズレだのっていう、狩人の噂を聞いてると思うけど」
職人「あいつは、あいつなりに精一杯頑張っている」
女「…………」
職人「もちろん結果が伴わなければ、評価なんてされねぇ……でもよ」
職人「俺ァ……あいつの使い込まれた武器を鍛えているからわかるんだ」
職人「あいつの一生懸命さがよ……」
女「…………」
職人「俺も頑張れって言ってやったけどな」
職人「こんな蒸さいおっさんよりも、可愛い女の子に言ってもらった方が」
職人「ヤローって奴ァ頑張れるもんなんだよ」
女「…………」
職人「どうだい? ひとつ頼まれちゃくれねぇかな?」
女「…………」
女「……そうですか」
女「職人さんの頼みなら、喜んで聞きますよ」
職人「すまねぇな」
女「これからもウチをご贔屓にしてくださいね?」
職人「ちゃっかりしやがって」 ハハハ…
職人「もちろん、そうさせてもらうよ」
女「毎度ありです♪」
―――――――――――
ふもと村 広場
????「ふう……やっと着いたな」
??「…………」
村人「あ!」
村人「ロートルさんに ソロさん!」
村人「お帰りなさい!」
ロートル「ああ、ただいま」
ソロ「……ただいま」
村人「半年もの長期遠征でしたからね……お疲れ様でした」
ロートル「いや、こっちも長い間、村を空けてすまなかった」
ソロ「…………」
ロートル「それよりも……手紙を読んで驚いたんだが」
ロートル「玄人(くろうと)と女戦士が引退したんだってな」
ロートル「一体何があった?」
村人「それが……」
―――――――――――
ロートル「そうか……玄人のやつ、右腕を失ったのか」
ロートル「女戦士は、あの無鉄砲ぶりだったから、いずれ命を失うと思っていたが……」
ロートル「まさかあの玄人がな……」
村人「ええ……私たちも女戦士は意外でも何でも無かったんですが」
村人「あの慎重な玄人さんが、と、驚きを隠せませんでした」
ロートル「じゃあ今、この村のハンターは俺たちだけか……」
ロートル「みんな不安だったろう。 もう大丈夫だ」
村人「あ、いやそれが……新人ハンターですけど」
村人「ギルドがすぐに2人も派遣してくれまして」
ロートル「ほう?」
―――――――――――
ソロ「…………」
ロートル「当たりとハズレ……ね」
村人「まあ少女ちゃんは優秀なんで、安心できました」
村人「けど……もう一人がねぇ」
ロートル「…………」
ロートル「……まあ、みな息災で何よりだ」
ロートル「後で村長のところに顔を出しておくよ」
村人「ええ、きっと村長も喜ぶと思います」
村人「じゃ、また!」
ロートル「ああ」
スタ スタ スタ…
ソロ「…………」
ロートル「…………」
ロートル「……ふふ、ガウシカに3乙、か」
ソロ「…………」
ロートル「なかなか面白そうな奴が入ってきたな」
―――――――――――
狩人の家前
女「…………」
女「こんにちは」
女「…………」
女「また寝てるのかな?」
……ハッ! ……トアッ!
女「ん?」
女「家の裏の方から何か聞こえる」
スタ スタ スタ
女「!」
狩人「はっ! とりゃ!」
ブンブンッ!
狩人「はっ! はっ! はあっ!!」
ブンブンッ! ブウンッ!
女「…………」
女(一生懸命……か)
女(…………)
女「あのー」
狩人「はっ! は……え?」
狩人「! 女……さん」
女「頑張ってるみたいね」
狩人「はは……恥ずかしいところ、見られたな」///
女「女、でいいよ」
狩人「は?」
女「名前。 女って、呼び捨てでいいよ」
狩人「は、はあ……」
ゴソゴソ…
女「これ、差し入れ」つ(弁当)
狩人「え」
女「おっと、勘違いするんじゃないわよ?」
女「狩人ってさ、ちょっと痩せすぎてると思うのよ」
女「だから、これでも食べて、どっしりとしたハンターになりなさい」
狩人「…………」
女「…………」
女「今は……嫌な噂とか広まっちゃってるけど」
女「狩人の事、応援している人も少なからず居るわ」
狩人「…………」
女「私も、今から応援する一人になる」
狩人「!」
女「だから、頑張ってね」
狩人「女さ……あ、いや……」
狩人「女、ありがとう」
女「うふふ、どういたしまして!」
女「じゃ!」
その日は……
とてもいい風が吹いてる気がした。
―――――――――――
翌日の午後
ふもと村 墓地
ザッ ザッ ザッ…
ロートル「玄人」
玄人「……ロートルか。 帰って来たんだな」
ロートル「まだ怪我が治りきっていないと聞いている」
ロートル「こんな所まで出歩くのは、体に良くないぞ?」
玄人「…………」
ロートル「…………」
ロートル「女戦士の墓か?」
玄人「ああ……」
玄人「あいつの好きだったファンゴのジューシィ焼き……供えたくてな」
ロートル「…………」
ロートル「こう言っては何だが……」
ロートル「いずれこうなると思っていた」
玄人「……ああ」
玄人「確かにな」
ロートル「だが、お前が右腕を失う事になるとは思わなかった」
ロートル「何があったんだ?」
玄人「別に何でもない。 よくある事さ」
玄人「何度目かもわからない、雪山に現れたドドブランゴを討伐に行って失敗した」
玄人「それだけだ」
ロートル「…………」
玄人「やり慣れた相手……知り尽くした場所……」
玄人「俺たちは……いつも通りに奴を狩る。 そのはずだった」
ロートル「…………」
玄人「……どこか、油断していたのだろうな」
玄人「たぶん、『当たり前』に慣れすぎていたんだと思う」
ロートル「…………」
玄人「奴にダメージを与え、そして逃げた。 いつも通りのあの場所へ」
玄人「このまま倒すか、それとも捕獲するか?」
玄人「まだ勝ったわけでもないのに、俺たちは帰った後の晩飯を何にするか」
玄人「そんな事まで鼻歌交じりに話していた」
ロートル「…………」
玄人「ところがだ」
玄人「あいつはあそこに居なかった」
ロートル「何?」
玄人「答えは簡単だ」
玄人「奴に与えたダメージを測りそこなったんだ」
ロートル「…………」
玄人「ペイントの効果も消されていたし」
玄人「俺たちは慌てて奴を探した」
ロートル「…………」
玄人「ホットドリンクを使い切ってしまっていたから」
玄人「時間の経過が気になり……」
玄人「……不用意に山頂エリアに入ってしまった」
ロートル「…………」
玄人「俺は不意打ちを受け、右腕を食いちぎられた」
玄人「それを女戦士は庇い立てして、奴と、奴の呼ぶブランゴの群れに飛び込んでいった」
ロートル「…………」
玄人「……俺は痛みで気を失い」
玄人「気がついた時は、ふもと村の集会所……すべて終わった後だった」
玄人「救助アイルーの話だと、全身傷だらけでドドブランゴの頭に太刀を突き刺し……」
玄人「立ったまま、女戦士は死んでいたそうだ」
ロートル「……そうだったのか」
玄人「…………」
玄人「……俺なんか見捨てて逃げれば良かったのに」
玄人「いや、それ以前にホットドリンクが無くなった時点でリタイアしていれば」
玄人「こんな事にならなかったのにッ!!」
ロートル「…………」
ロートル「……お前には家族が居る」
玄人「っ!」
ロートル「女戦士は無鉄砲だったが……情のない奴じゃない」
ロートル「そして、お前の子供達と仲が良かった」
ロートル「きっと……そういう事なのだろう」
玄人「…………」
ロートル「……女戦士はいつも言っていた」
ロートル「家族を持つのが怖い、と」
ロートル「家族を持ってしまったら、きっと一歩を踏み出せなくなって」
ロートル「ハンターとして弱くなる、と」
玄人「…………」
玄人「……馬鹿な奴だ」
玄人「それでいて……こんな事で……命を失いやがって……」
玄人「馬鹿野郎がッ……!」
ロートル「…………」
玄人「ううっ……ぎっ……く…………ああっ……」
玄人「馬鹿……野郎ッ…………何で………死んだんだよ………」
玄人「息子と娘に……何て言ってやりゃいいんだよ……!」
玄人「……うっ……うっ……うああっ……ぎっ……」
玄人「ぐっ……くっ……うあっ…………ひぎっ…………」
ロートル「…………」
ロートル「好きなだけ泣くがいいさ……」
ロートル「気持ちの整理がつくまで……な」
―――――――――――
雪山
ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!
狩人「くっ……!」
狩人(よし! 調べた通り、咆哮は盾で防げるぞ!)
狩人(そして……反撃!)
バコンッ!
狩人「ぶべらっ!?」
バチバチバチバチッ!!
狩人「おgfklぢfm;s、;jvlばshjsッ――!!」
―――――――――――
ふもと村 村長宅前
狩人「」
救助アイルー「毎度ー」
ガラガラガラッ…
村長「どうも」
―――――――――――
狩人「もう少し! もう少しだったんですよ!」
狩人「足を引きずっていたんです!」
村長「うんうん」
村長「次、頑張ろう」
ロートル「やあ、村長」
村長「ああ、ロートルさん」
村長「もう疲れは取れましたか?」
ロートル「だいぶな」
ロートル「俺も歳をとったし、調子を戻すのが大変になってきた」
村長「ははは。 お互い、もう歳はとりたくないですな」
狩人「…………」
村長「ああ、狩人。 すまないね」
村長「こちらは君と同じく、ふもと村の村つきハンターのロートルさん」
村長「この前、長期遠征から帰ってきたんだよ」
ロートル「よろしく」
村長「で、こちらは、最近入ってきた新人ハンターの狩人」
狩人「……よろしく」
ロートル「ほう……君が噂の新人ハンターか」
狩人「……ロクでもない噂ばかりで、がっかりしたでしょうね」
ロートル「がっかりというより、懐かしかったがな」
狩人「は?」
ロートル「それよりも君、また3乙したのか?」
狩人「…………」
ロートル「……気に障ったのなら謝るが」
ロートル「何度も3乙して無事でいられるのは、立派な才能でもある」
狩人「……そうですかね?」
ロートル「まあこれから先、そんな調子のままでいたら」
ロートル「早々と命を散らす事になると思うが」
狩人「…………」
ロートル「村長、狩人は何のクエで3乙したんだ?」
村長「フルフル討伐だよ」
ロートル「フルフルか」
ロートル「あいつじゃ仕方ないところもあるな」
ロートル「狩人、武器は何を使っている?」
狩人「片手剣ですけど……」
ロートル「ほう……となると」
ロートル「咆哮からのテールアタックか、放電でヤられているな?」
狩人「!!」 ギクッ!
ロートル「図星か」
狩人「…………」
ロートル「俺から言えるアドバイスとしては」
ロートル「武器を変えてみる事だ」
狩人「武器を……?」
ロートル「ああ」
ロートル「モンスターと武器の相性ってのがある」
ロートル「フルフル相手だと、片手剣や双剣は間合いが近すぎて」
ロートル「奴の攻撃を喰らいやすい」
ロートル「初見では特にな」
狩人「…………」
ロートル「奴の咆哮や、放電をかいくぐりなら、必殺の一撃を繰り出せる」
ロートル「大剣かガンランス」
ロートル「ハンマーでもいいが、フルフル相手では少し分が悪い」
ロートル「それか、ガンナーになって」
ロートル「奴の射程外の安全圏からチクチクやるのもオススメだ」
ロートル「時間は多少掛かってしまうがな」
狩人「…………」
ロートル「参考になればいいが」
狩人「……ありがとうございます」
狩人「では、俺はこれで……」
スタ スタ スタ…
村長「……何だかあまり嬉しそうじゃなかったな」
ロートル「なぁに」
ロートル「男なら誰でも持っているプライドってやつが、邪魔をするんだよ」
村長「プライド?」
ロートル「たぶん、あいつはこれまでずっと片手剣でクエをこなしていたんだろう」
ロートル「だから、フルフルも片手剣で倒したいんだ」
村長「……楽にモンスターを狩れるなら、そうすべきだと思うがなぁ」
ロートル「これまで培ってきた自信やプライド」
ロートル「そして安定した狩りに対する渇望」
ロートル「それらが、せめぎ合っているんだよ」
村長「…………」
村長「私にはわからない概念だね……」
ロートル「ああ、そうだとも」
ロートル「これはハンターであり、男の子であるからこそ」
ロートル「持ってしまう問題なんだ」 クスッ
―――――――――――
狩人の家
ガサゴソ ガサゴソ…
狩人「…………」つ(バスターソード)
狩人「……大剣、か」
狩人「…………」
狩人(確かに、あのロートルとかいうハンターの言う通りだ)
狩人(咆哮で邪魔されても一撃が強ければ)
狩人(確実にダメージは入っていく)
狩人(…………)
狩人(しかし、ここまでやって、いまさら武器を変えるなんて……)
女「狩人、居るー?」
狩人「あ、女」
狩人「何か用?」
女「いきなりご挨拶ね」
女「また3乙したって聞いたから、陣中見舞いしに来たのに」
狩人「…………」
女「ほらほら、そうやってすぐ気にする」
女「狩人の悪い癖よ」
狩人「……んなこと言われても」
女「まあ、それはいいわ」
女「それよりもさ!」
女「我がふもと村の歴戦の勇者!」
女「ロートルさんと、ソロさんが、長期遠征から帰ってきてるの!」
狩人「…………」
女「お話してみたらいいと思う」
女「きっと狩人の力になってくれると思うな!」
狩人「あー……うん。 たぶんね」
狩人「後で会いに行くよ」
女「……様子がおかしいわね」
女「何か隠してるでしょ?」
狩人「べ、別に何も隠してない」
女「正直に話しなさい」
狩人「…………」
狩人「……ってワケです」
女「そう。 もう知り合っていたのね」
女「せっかく貴重な意見をもらったんだから」
女「その通りにしてみたらいいんじゃない?」
狩人「……そう単純な話じゃないんだよ」
狩人「武器っていうのは、慣れっていうものがあって」
狩人「モンスターとの間合いとか、いろいろ違ってくるんだ」
女「ふぅ~ん」
狩人「ふ~んって……」
女「でもさ」
女「狩人、安定した狩りをしたいんじゃないの?」
狩人「…………」
女「なら、迷う必要、ないと思うけどな」
狩人「…………」
女「…………」
女「……なんか、邪魔みたいだから帰るわ」
女「これ、いつもの差し入れ」つ(弁当)
女「じゃ」
狩人「……ああ」
狩人「ありがとう」
狩人(…………)
133 : 以下、名... - 2015/05/03 11:33:51 /JZXls56 120/1043
※ここでラオシャンロン決戦のBGMを流すといいかもです
―――――――――――
数日後の午前
雪山
ザッ ザッ ザッ
狩人「…………」
狩人(俺は……確かに迷った)
狩人(さすが経験者の意見)
狩人(頷ける言葉だった。 説得力があった)
狩人(…………)
狩人(……でも)
ヒュオオオオオオオォォ……
狩人(俺にだって意地がある)
狩人(ランクは低くても俺だってハンターだ)
ゴフッ ゴフッ ゴフッ…
狩人(この前の戦いだって……負けたけど確かな手応えがあった)
オオオオオォォ……
狩人(……こっちに気がついたな)
狩人(でも……今度は負けない)
狩人(必ず、この片手剣で……俺のやり方で!)
狩人(フルフルを倒すっ!!)
ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!
狩人「ぐっ……!」
狩人(この咆哮から……大抵テールアタック!)
ブウンッ!
狩人「よし! 読み通り!」
狩人「はあああああっ!!」
ザシュッ ザシュッ!
狩人(ここで攻撃を切って、様子見っ!)
グルルル…… バチッ
狩人(よしっ! 放電だ!)
バチバチバチバチッ!!
狩人(これの終わりを見極めて……)
チッ……
狩人(切り込むっ!!)
狩人「でやああっ!!」
ブルルルロロンッ!
狩人「!!?」
狩人(首が伸び――)
バゴォッ!
狩人「あびばっ!!」
……バチッ
狩人「し、しまっ」
バチバチバチバチッ!!
狩人「hgでdsぉにjんhgfぎdxzdsjおッ――!!」
―――――――――――
BC(ベースキャンプ)
狩人「」
狩人「はっ!?」
救助アイルー「気がついたかニャ」
狩人「……1乙したか」
救助アイルー「どうするニャ?」
救助アイルー「ここで、リタイヤという手だってあるニャ」
狩人「…………」
狩人「……さっきのは、まだ見てなかった動きのせいだ」
狩人「今度はアレにも気をつければいいだけ!」
救助アイルー「頑張ってくれニャ」
―――――――――――
狩人「はあああっ!!」
ザシュッ ザシュッ!
グルルル……
狩人(!)
狩人(咆哮か!?) サッ(防御姿勢)
ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!
狩人(っ! よしっ! 読み通りっ!)
狩人「でやあああああああっ!!」
ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!
狩人「ひぎっ!?」
狩人(れ、連発!?)
バコンッ!!
狩人「ぶべらっ!」
バチバチバチバチッ!
狩人「あhgfdぎxylpぎへkjdびzxgkる;ッ――!!」
―――――――――――
BC(ベースキャンプ)
狩人「」
狩人「はっ!」
救助アイルー「大丈夫かニャ?」
狩人「……大丈夫だ」
狩人「咆哮って連発もできるのかよ……」
狩人「だけど、それも覚えたぜ!」
救助アイルー「言っとくけど次、乙したらふもと村へ帰還ニャ」
狩人「……ああ、わかってるさ」
狩人「だけど、もう少しなんだ!」
狩人「必ず仕留めてやるっ!」
救助アイルー「頑張ってくれニャ」
―――――――――――
バコンッ!
狩人「うがぁっ!!」
狩人「はあっはあっはあっ……」
グルルルルル……
狩人(くそっ……! 回復薬、これで最後だ) グビッ
狩人(次の攻撃は……!?)
アオオッ… アオオッ…
狩人(!!)
狩人「足を引きずってる!!」
狩人「もう少しだ!!」
狩人「うおおおおおっ!!」
ザシュッ ザシュッ!
狩人「いい加減にくたばれっ!」
……バチッ
狩人「っ!! やば――」
バチバチバチバチッ!!
狩人「hgだllgjどhjfhvjぐdrでッ――!!」
狩人(…………) ドサッ…
狩人(終わった……たぶんフルフルは、こっちに向かってタックルしてくる)
狩人(これで……3乙、か……)
狩人(…………)
狩人(…………)
狩人(……あれ?)
アオオッ… アオオッ…
バサッ バサッバサッバサッ…
狩人(……!)
狩人(逃げていく……)
狩人「……くっ」 ヨロッ…
狩人「…………」
狩人(……とりあえず助かったけど、どうする?)
狩人(何とか追い詰めたが、回復薬を使い切ってしまった)
狩人(なのにこっちはボロボロ……)
狩人(…………)
狩人「!」
狩人「そうだ!」
狩人「無いのなら、作ればいいんだ!」
―――――――――――
狩人「あった!」
狩人「普段、採取クエしまくってるから、薬草もアオキノコの場所も」
狩人「よく知っている」
狩人「……こんな形で役に立つなんてな」
―――――――――――
狩人「よし、完全回復!」
狩人「あとは……」
グオオオ… グオオオ…
狩人「…………」
狩人(寝込みを襲う形で悪いが)
狩人(決着を付けさせてもらうぜ……!)
狩人「……はああああああああっ!!」
ザシュ ザシュ ザシュッ!
ギエエエエエエエエエエエエッ!!
狩人「うおおおおおおおおおおおおっ!!」
ザシュッ! ザシュ! ザシュ!
ズズンッ…
狩人「はあっはあっ……!」
狩人(ここで反撃してくるっ!) サッ(防御姿勢)
…………
狩人「…………」
狩人「…………」
狩人「…………あれ?」
狩人「…………」
狩人「…………」
狩人「…………」 …ツンツン
狩人「…っ!」 ササッ!(防御姿勢)
狩人「…………」
狩人「…………」
狩人「……動かないな」
狩人「死んだふりか?」
狩人「…………」
狩人「……いや」
狩人「そうじゃない」
狩人「…………」
狩人「…………」
狩人「……倒した?」
狩人「俺が……しかも片手剣で……」
狩人「フルフルを……倒した」
狩人「…………」
狩人「…………」
149 : 以下、名... - 2015/05/03 11:45:58 /JZXls56 136/1043
※ここでP2G勝利BGMを流すといいかもです。
【 目的を達成しました 】
狩人「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
狩人「ざまああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」
狩人「みろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
狩人「はあっ……はあっ……はあっ……」
狩人「はあ……はあ……」
狩人「…………」
狩人「……うう……うっ……ああああっ……」
狩人「倒した……倒したんだ…!………うあっ……」
狩人「この俺が……うくっ……ダメとか……ハズレとか……言われてた、俺がっ!」
狩人「ひぐっ……くっ……ぐうっ……ひぎっ……」
狩人「よがっだ……うううっ……よがっだぁ……あがっ……」
狩人「たおっ……倒したんだぁ……えぐっ……えぐっ……」
狩人「うああっ……ひぐっ……うぐっ……うああっ……」
狩人「いひひっ……ぐっ……ぐくっ……はっ……」
俺は……この日の事を
一生忘れないだろう。
この日の喜びを
達成感を
涙の味を
……浮かれて剥ぎ取り忘たけど。
―――――――――――
その日の夕方
村長宅前
村長「おめでとう、狩人」
狩人「あはは……ま、かろうじて、ですけどね」
村長「それでも成功は成功さ」
村長「よく頑張ったね。 今日はゆっくり休むといい」
狩人「ええ、そのつもりです」
女「狩人」
狩人「女」
女「……結局、片手剣で行ったのね」
狩人「……ああ」
女「ロートルさんの意見を聞いていれば」
女「そんなにボロボロにならずに済んだだろうに」 クスッ
狩人「いいだろ、別に」 クスッ
狩人「俺には俺のやり方があるんだよ」
ロートル「……そうか」
ロートル「それは余計な事を言ったな」
狩人「! ……ロートルさん」
狩人「すみません、せっかくの意見を無視して」
ロートル「気にするな」
ロートル「お前さんの言う通り、それぞれのやり方ってのがある」
ロートル「どれが正解か、なんてのは」
ロートル「クエを達成できるか、できないか、というシンプルな物かもしれん」
狩人「…………」
ロートル「ともかく、フルフル討伐成功おめでとう」
狩人「ありがとうございます」
ロートル「……それでな」
ロートル「疲れているところ悪いんだが……頼みたい事がある」
狩人「はい?」
ロートル「これから……君と少女の前任者」
ロートル「この村のハンターだった奴の見送りをするのだが」
ロートル「ぜひ、君も彼を見送りに来て欲しい」
狩人「はあ……それはいいですけど」
狩人「着替えてから……」
ロートル「あいつも元ハンターだ」
ロートル「そんな事は気にしないだろう」
狩人「…………」
狩人「じゃあ、すぐ行きます」
ロートル「女ちゃん、悪いけど」
ロートル「少女を呼んできてくれないか?」
女「え?」
女「あ、はい。 いいですよ」
ロートル「すまないな。 頼む」
―――――――――――
ふもと村 入り口付近
ロートル「待たせたな」
玄人「いや、そうでもない」
狩人「…………」
少女「…………」
玄人「……君たちが新しいハンターか。 若いな」
ロートル「だが二人共、有望株だと俺は思う」
玄人「そうか……ロートルがそう言うのなら、安心だ」
狩人(……有望、ねぇ) ハハハ…
少女(…………)
玄人「……君の防具、その焦げ跡」
玄人「フルフルか?」
狩人「さすがですね……その通りです」
狩人「何とか倒せました」
玄人「そうか」
玄人「…………」
玄人「見ての通り、俺は右腕を失った」
玄人「今の俺の姿は……未来の君達の姿かもしれない」
狩人「…………」
少女「…………」
玄人「そうならないよう……ひとつだけ忠告したくてな」
狩人「忠告……ですか」
玄人「ああ……」
玄人「…………」
玄人「狩りの最中に飯の話をし出したら、危ない、と思え」
狩人「…………は?」
少女「…………?」
ロートル「…………」
玄人「いいか? 狩りの最中に飯の話をするんじゃない」
玄人「さもないと……俺の様になる」
狩人「……何だかよくわかりませんけど」
狩人「心がけます」
少女「……同じく」
玄人「そうか」
玄人「これで……俺の言いたい事は終わりだ」
玄人「わざわざ来てくれてありがとう」
狩人「いえ……」
少女「…………」
玄人「ロートル、ソロ」
玄人「この村を頼む」
ロートル「ああ。 故郷でも達者でな」
玄人「時間はかかるだろうが……嫁さんと子供を食わすくらい何とかするさ」
玄人「じゃ……元気で」
ロートル「ああ……」
ソロ「……また会おう」
『狩りの最中に飯の話をするな』
その言葉の本当の意味を知るのは
少し先の事だったけど……
去って行く、引退ハンターの後ろ姿は
俺の心にとても印象強く残った。
162 : 以下、名... - 2015/05/03 12:00:16 /JZXls56 149/1043というところで、今日はここまでです。
今回は、狩人のこだわりみたいに書きましたけど
モンハンやってると、使い慣れた武器で出会った強敵に勝ちたいな……
と思う、プレイヤー心理を少しでも表現できたらな、と思って書きました。
みなさんも経験ありませんか? 思い入れのある武器で倒したい、と思った事。
では、また。
―――――――――――
数日後の朝
ふもと村 集会所
流れハンター「……え? ソロが帰ってきているのか?」
色黒ハンター「ああ」
色黒ハンター「何日か前、長期遠征から戻ったらしい」
流れハンター「ソロ……どんなクエも常に一人で片付けるプロフェッショナル……」
色黒ハンター「大剣使いは多いが……」
色黒ハンター「あいつほど使える奴は数えるくらいしか居ないだろう、という話だ」
流れハンター「!」
流れハンター「おい……噂をすれば」
色黒ハンター「ああ……」
ソロダ…… アイツガ……
ザワ…… ザワ……
ソロ「…………」
ソロ「このイャンクックのクエを頼む」
受付嬢「はい。 かしこまりました」
流れハンター「……イャンクックか」
色黒ハンター「たぶん、軽い調整なんだろうよ」
流れハンター「ああ、たぶんな」
流れハンター「噂じゃシェンガオレンを初見で倒した、ってのがあるし」
色黒ハンター「マジかよ!? 俺、あれを初めて見たときは足がすくんだぜ……」
―――――――――――
雪山
狩人「……はああああああっ!!」
ブウウウンッ!! ザクゥッ!
ギエエエエエエエエッ……
狩人「よし、ここで……タメ3!」
狩人「……はあっ!!」
ドガァッ!!
アオオオッ…
狩人「…………」
狩人「……もう足を引きずり出した」
狩人「…………」
狩人(……俺が初めてフルフルを倒してから半月が過ぎた)
狩人(それから俺は、3度目になるフルフル討伐を行っている)
狩人(フルフルは繁殖力が強く、一度出現すると、度々出る様になるらしい)
狩人(こうなると、出なくなるまでかなり時間が掛かるそうなのだが)
狩人(フルフル素材目当てのハンターや商人が集まり、ふもと村は活気が溢れている)
狩人(女は、フルフルバブル到来と言っていた)
狩人(…………)
狩人(……何となく釈然としないが)
狩人(俺としても武器や防具の素材が欲しいわけで、今現在、絶賛討伐中なのである)
狩人(…………)
狩人(そして)
狩人(俺の方も意識改革を始めた)
狩人(最初は、扱いづらかった大剣だったが……)
狩人(ロートルさんにコツを教えてもらってからは、いい感じである)
狩人(大剣は出したら仕舞う、出したら仕舞う、の繰り返し……)
狩人(出しっぱなしの時に感じていた移動の遅さは、これでだいぶ解消できた)
狩人(…………)
狩人(……これから先、モンスター素材で作れる武器や防具は)
狩人(どうあがいても出現する時期や数で制限される)
狩人(上を目指すのなら、様々な武器を使いこなせた方が都合がいい)
狩人(…………)
狩人(……グウの根も出ないほど正論だ)
狩人(この前のことも……)
狩人(…………)
―――――――――――
その日の昼頃
ふもと村 村長宅前
村長「もうフルフルを討伐したのかい!?」
狩人「ええ」
狩人「試しにロートルさんの言う通りにしてみたら」
狩人「あっさり狩れました」
村長「ほう……」
村長「でも、嬉しそうじゃないね?」
狩人「…………」
狩人「……何ていうか」
狩人「意地張って片手剣で頑張ってやり遂げたのに」
狩人「同じ相手が、別の方法でこんなにあっさり狩れる様になると……」
狩人「あの時の苦労は何だったんだ?という気持ちになってしまって……」
村長「ふむ……」
狩人「ああ、すみません、村長さん」
狩人「愚痴ってしまって……」
村長「いや……そんな事はないよ」
村長「でもね、狩人」
狩人「はい?」
村長「私はハンターじゃないから、違うかもしれないけど……」
村長「間違いも経験の内だと思うんだ」
狩人「間違いも経験の内……」
村長「うん」
村長「言いたくはないけどね……私だっていろんな間違いをやったものだよ」
村長「そのせいで、いろんな人たちに迷惑をかけたものだ」
狩人「村長さんが?」
村長「ああ……」
村長「だけど、その経験があるおかげで」
村長「今の私があり、村長としてやっても行けていると思う」
狩人「…………」
村長「あの時の間違い経験が、思わぬ形で役に立ったりするしな」
村長「無駄かどうかなんて、最後までわからないよ」
狩人「村長さん……」
村長「ははは……ちょっとらしくない話をしてしまったね」
村長「ともかく、フルフル討伐ご苦労様」
村長「旨いものでも食べて、ゆっくり休むといい」
狩人「はい。 そうします」
―――――――――――
少女の家
少女「じゃ、今日からお願いね」
コックアイルー「ガッテン承知だニャ!」
コックアイルー「ご主人様の身の回りのお世話を精一杯させてもらうニャ!」
少女「頼りにしてるわ」
少女「ふう……」
少女(ようやく、キッチンアイルーを雇える様になった)
少女(これで家の事は安心ね)
少女(…………)
―――――――――――
ギャオオオオオッ!!
オトウサンッ
オカアサンッ
早ク逃ゲルンダッ 船ヲ出セッ
ギャアアアア……
―――――――――――
少女(っ!) ビクンッ!
少女(…………)
少女(……もう逃げない)
少女(私は立ち向かう)
少女(その為にハンターになったのだから)
少女(…………)
少女「……ふう」
少女(…………)
少女「気分転換でもするか……」
少女「う~ん……」
少女「…………」
少女「……集会所でご飯でも食べよう」
広場
少女「……あ」
狩人「……おっ、少女」
少女「…………」
狩人「…………」
少女「……武器」
少女「変えたんだ」
狩人「え? あ、ああ」
狩人「慣れるまでちょっとかかったけどね」
少女(……ちょっと、か)
少女「そう」
少女「フルフル、だいぶ狩れるようになったんだね」
狩人「お陰様でね」
狩人「防具の方も何とかなりそうだよ」
少女「そう」
少女「私、これから集会所でご飯食べようと思ってるんだけど……」
少女「良かったら一緒に行く?」
狩人「……いや、自分の家で食べるつもりだから」
少女「そう……じゃ、また」
狩人「ああ、まt」
ロートル「……いかんな、狩人」
狩人「!?」
少女「ロートルさん」
ロートル「レディからのせっかくのお誘いだ。 受けておけ」
狩人「い、いや、でも……」
ロートル「何だ? お前、女の子と付き合った事が無いのか?」
狩人「べ、別に、そういう訳ではっ」///
ロートル「なら、問題ないだろう?」
ロートル「メシってのは、大勢で囲んでワイワイ言って食うから、美味いんだ」
ロートル「おまけに可愛い女の子を見ながらだ」
ロートル「格別だろうぜ!」
少女「……味は変わらないと思いますけど」
ロートル「いいじゃないか、気分だよ、気分!」
ロートル「ふもと村、村付きハンターの交流会も兼ねて、昼飯と行こう!」
集会所
ガヤ ガヤ…
ロートル「本当はソロの奴も呼びたかったんだけどな」
ロートル「あいつ、今日に限ってクック狩りなんぞに行きやがった」
狩人「……はあ」
少女「今の時期に?」
少女「森丘はシーズンが終わってるから……密林あたりですか?」
ロートル「おう、正解だ」
ロートル「繁殖期が済んで、はぐれたのが毎年何頭か密林に現れるんだが」
ロートル「今年は多いと聞いている」
少女「…………」
狩人「詳しいんだな、少女」
少女「このくらいの事、ハンターなら常識よ」
少女「狩人も講義を受けたでしょ?」
狩人「……あーいうの苦手なんだよ」
ロートル「という事は、寝てた口か?」
狩人「……黙秘します」
ロートル「ははは! 気にするな」
ロートル「ハンターは、そういう奴も多い」
狩人「そうですか……」
少女「それよりもレイアとレウスの方が気になります」
少女「そろそろのはずですが、観測所ではまだ確認されていなと……」
ロートル「……ふむ」
ロートル「ところで……興味本位で聞くが」
ロートル「お前さん達は、どうしてハンターになった?」
少女「!」
狩人「俺は……以前からハンターに憧れてまして」
狩人「ラオシャンロンを倒したハンター達の凱旋を見て」
狩人「あんな風になれたらなぁ……と」///
ロートル「ほう……」
狩人「現実は厳しいですけどね……」 ハア…
ロートル「ははは。 いや……笑うのは失礼だな」
ロートル「頑張って夢を叶えればいい」
狩人「ははは……」///
ロートル「で? 少女は?」
少女「…………」
少女「……別に話すほどの事では無いです」
少女「ハンターになれば、いい稼ぎになりますし」
ロートル「そうか……俺と同じだな」
狩人「同じ?」
ロートル「俗に言う『でもしかハンター』なんだよ、俺は」
少女「…………」
狩人「でもしかハンター?」
ロートル「ハンター『しか』できない。ハンターに『でも』なるか」
ロートル「そんな最後の選択として、ハンターになった人間なんだよ、俺は」
狩人「え……」
ロートル「大した学もない。才能もない」
ロートル「大きな声じゃ言えないが、ハンター試験だってギリギリで受かった」
狩人「そ、そうなんですか?」
ロートル「ああ、そうだとも」
ロートル「俺は大剣とか重量武器が苦手でな」
ロートル「当時、ハンターが不足していた事もあって、お情けで合格させてもらったんだよ」
少女「…………」
狩人「へぇ……なんか意外ですね」
ロートル「そうか? まあ俺みたいな食いつめでハンターになる奴は結構いる」
ロートル「逆に、俺と同じ境遇でハンターになれない奴も大勢見てきた……」
ロートル「そういう連中は、モンスターと命懸けで戦う俺たちの苦労を知らないが」
ロートル「羨ましい、とか思ってるのかね……」
狩人「…………」
少女「…………」
ロートル「おっと、つまらん話になったな」
ロートル「年を取ると、どうも説教臭くなっていかん」
狩人「いえ……」
ロートル「じゃあ、話を変えるが」
ロートル「お前さん達、浮いた話をまったく聞かないけど」
ロートル「いい相手の一人や2人、居ないのか?」
少女「……流れ者のハンターとか言い寄って来て困っています」
ロートル「ははは! まあ、少女は可愛いからな」
ロートル「狩人、お前はどうなんだ?」
ロートル「ストアの女ちゃんと仲がいいって聞いてるぞ?」
狩人「……時々差し入れをしてくれるだけですよ」
狩人「何となくですけど、向こうは出来の悪い弟か何かだと思ってるんじゃないかなぁ……」
ロートル「おいおい、二人共あっさりしてるなぁ」
ロートル「たまには一夜の花でも咲かせて、憂さ晴らしした方がいいと思うぞ?」
少女「何焚きつけてるんですか?」
少女「うかつな事をしてハンター業引退とか、シャレにならないですよ」
狩人「…………」
狩人(一夜の花を咲かせるって、どういう意味??)
ロートル「別に引退まで考える事は無いだろう?」
ロートル「結婚して家族を持ったハンターも大勢いる」
少女「女性は出産で、体の耐久力が著しく衰え」
少女「復帰するまでに相当な時間を必要とします」
少女「そのまま引退の道を選択する女性ハンターが、大勢を占めていますが?」
ロートル「う……」
狩人(すげぇ……ロートルさんが言いくるめられている)
ロートル「ははは……こりゃまいったね」
ロートル「どうやら少女は、ハンターにただならぬ思い入れがあるみたいだな」
少女「一般論を言っただけです」
狩人「そ、そういえば」
狩人「さっき話に出た、レイアとレウスってモンスター」
狩人「ロートルさんは、どんな風に狩っているんですか?」
ロートル「お! それを聞いてくるか」
ロートル「もちろん話してやるぞ」
ロートル「俺が最初に奴らと出会ったのは……」
―――――――――――
広場
少女「それじゃ、ここで……」
ロートル「ああ、楽しかったぞ」
狩人「ありがとう」
スタ スタ スタ…
ロートル「…………」
狩人「…………」
狩人「じゃ、俺もここで……」
ロートル「狩人」
狩人「はい?」
ロートル「これで、多少は集会所に行きやすくなったか?」
狩人「!」
狩人「…………」
狩人「……ええ、まあ多少は」
ロートル「そうか」
ロートル「採取クエは、集会所の方が割がいい」
ロートル「支給品も4人分手に入るしな。 いい小遣い稼ぎになる」
狩人「……え?」
狩人「あれって持って帰ってもいいんですか?」
ロートル「応急薬とか、支給専用の物はダメだが」
ロートル「それ以外は自由だ」
ロートル「新米の内はホットドリンクとか作り辛いし、ギルドのささやかな贈り物だろう」
狩人「知らなかった……俺、余ったものはあの箱に戻していましたよ」
ロートル「……今時珍しいくらい律儀な奴だな」
ハハハ…
―――――――――――
狩人の家
狩人「ふう……」
狩人「集会所の採取クエか……」
狩人「…………」
狩人(よし)
狩人(雪山にもだいぶ慣れたし、そろそろ他の地域にも行ってみたい)
狩人(採取クエは、下見も兼ねられるから、お得でもある)
狩人(……ひとりで行くのなら、受領するとき我慢すればいいだけ)
狩人(フルフル防具ができたら、さっそく行ってみよう)
―――――――――――
数日後の朝
ふもと村 集会所
少女「……あ」
少女「狩人……」
狩人「おはよう、少女」
少女「おはよう」
少女「フルフル防具、もう完成したんだ」
狩人「思ったより早く出来たよ」
少女(……羨ましい)
少女「何を狩りに行くの?」
狩人「いや……密林ってところのキノコ集めに行くつもり」
少女「そう」
狩人「少女は?」
少女「解禁になったリオレイアを狩りに行くわ」
狩人「そっか。 俺が言うのもなんだけど……」
狩人「頑張ってくれ」
少女「大丈夫よ」
少女「何人かでやるから」
狩人「なら……心配ないか」
少女「ええ」
狩人「…………」
狩人「なあ、少女」
少女「何?」
狩人「いつか……モンスターは何でもいいけど」
狩人「一緒に狩猟クエ、行かないか?」
少女「…………」
少女「そうね……いつか、ね」
狩人「ああ……いつか、でいい。 でも約束だ」
狩人「迷惑かけないよう、それまでに腕を上げておく」
狩人「じゃ!」
タッ タッ タッ…
少女「…………」
その日……
周りの視線やヒソヒソ話が、多少気になったけど
俺は、堂々と胸を張って、集会所の採取クエを受注した。
―――――――――――
数日後の夕方
ふもと村 集会所
ガヤ ガヤ
狩人「え? 雪山が入山規制?」
受付嬢「はい」
受付嬢「現在、雪山には非常に強いフルフルの個体が確認され」
受付嬢「ギルド観測所はこの個体を『G級』と認定」
受付嬢「このG級個体を討伐するまで、入山を規制しております」
狩人「G級かぁ……」
狩人「…………」
狩人(G級……)
狩人(通常は古龍とか呼ばれる、来ただけで村や町が崩壊する様な)
狩人(天災に近いダメージをもたらすモンスターの事を指すが)
狩人(モンスターも経験を積み、非常に厄介な存在になる事がある)
狩人(そういうモンスターは異様に大きかったり)
狩人(通常のものより動きが素早かったり、未知の行動を取るものが多い)
狩人(そいうものが現れた場合、俺みたいなHRの低いハンターは戦うこともできない)
狩人(そういった犠牲を減らすため、時たまこういう規制が行われるのだ)
狩人「……そうですか」
狩人「解除には、どのくらいかかりそうですか?」
受付嬢「早ければ一週間、という所でしょうか……」
狩人「分かりました」
受付嬢「はい」
ロートル「お、狩人」
ロートル「帰ってきてたのか」
狩人「ロートルさん」
ロートル「G級規制の事は聞いたか?」
狩人「G級規制?」
ロートル「G級個体出現による進入規制の略称だよ」
狩人「ああ……はい、たった今聞きました」
ロートル「今回のフルフルを生み出してるのはおそらくそいつだろうな」
狩人「という事は、ツガイで居るんですか?」
ロートル「フルフルは雌雄同体と言われてる」
ロートル「詳しくは知らんが、一匹で増える事ができるそうだ」
狩人「そうなんですか……」
ロートル「それくらいは不勉強な俺でも知っている事だが……まあいい」
ロートル「晩飯は済ませたか?」
狩人「まだです」
ロートル「なら、俺と食わないか?」
狩人「ええ、いいですよ」
ロートル「よし、決まりだ」
ソロ「…………」
狩人「……こちらのハンターは?」
ロートル「俺たちと同じ、このふもと村の村つきハンターのソロだよ」
ソロ「……よろしく」
狩人「ああ、はい。 よろしくお願いします」
ロートル「ま、堅苦しい挨拶はその辺りでいい」
ロートル「俺の家に行くぞ」
狩人「え? ここで食べないんですか?」
ロートル「不服か?」
狩人「い、いえ……」
ロートル「ははは! 安心しろ!」
ロートル「俺が料理を作るわけじゃないから」
ロートル「さ、行くぞ」
ロートルの家
台所アイルー「お待たせしましたニャ、旦那さん」
ロートル「おう」
ゴトッ
狩人「」
ソロ「…………」
ロートル「ほら、どんどん食え。 遠慮はいらんぞ?」
ソロ「……いただきます」
狩人「す、すごい量ですね……」
狩人「あ……いただきます」
ロートル「ははは!」
ムシャ ムシャ
ロートル「うん、美味いな! 上出来だ!」
ロートル「どうだ? お気に召したか?」
ソロ「……ああ、美味い」
狩人「ええ、とっても美味しいです」
狩人「……ところで」
ロートル「ん?」
狩人「あのアイルー、雇っているんですか?」
ロートル「ああ、そうだが?」
ロートル「村長から話を聞いていないのか?」
狩人「話?」
ロートル「……そうか」
ロートル(村長の奴……狩人がアイルーを雇えるほど稼ぐとは、思っていないという事か)
ロートル「まあ、いずれ話してくれると思うが」
ロートル「アイルーにもギルドがあってな」
狩人「はい」
ロートル「さっきの台所アイルーみたいなのを仲介してくれる」
ロートル「通称ネコ婆さんってのを紹介してくれるんだ」
狩人「そうなんですか」
ロートル「毎月の給金はいるが、かなり役に立ってくれるぞ」
ロートル「掃除、洗濯、炊事、薪割りから風呂焚きまで」
ロートル「ありとあらゆる雑用をしてくれる」
狩人「それはいいですね……羨ましい」
ロートル「ははは! まあな」
ロートル「それと……おーい、ゴゴマル!」
ヒョコ
ゴゴマル「何ですかニャ? 旦那?」
ロートル「すまんが、ちょっとこっちに来てくれ」
ゴゴマル「はいニャ!」
トテテテテ
ロートル「こいつはオトモアイルーといって」
ロートル「クエストに付いて来てくれるアイルーだ」
狩人「ええー!?」
ロートル「村で扱ってるクエは単独行動だから、こいつの存在はでかいぞ?」
ロートル「頼りになる相棒だ!」
ゴゴマル「ニャハハ……テレますニャ、旦那!」///
ロートル「ははは!」
ロートル「ゴゴマル、もう行っていいぞ」
ゴゴマル「はいニャ!」
トテテテテ…
狩人「…………」
ロートル「……ま、ここだけの話」
ロートル「使える様になるまでが、大変なんだけどな……」
狩人「は、はは……」
ソロ「…………」
ロートル「おい、ソロ」
ロートル「お前も何か話せよ」
ソロ「……いや、俺は……別に」
ロートル「狩人に親近感湧いてんだろ? ソロ!」 クヒヒ!
ソロ「ロ、ロートル!!」///
狩人「へ?」
ロートル「どうした、ソロ?」 ニヤニヤ
ソロ「その話はするなと言っただろう!?」
ソロ「わざわざ恥をかきに来た訳じゃないんだぞ、俺は!!」
狩人(……意外と喋る人なんだな)
ロートル「まあまあ、落ち着け、ソロ」
ロートル「そう言うと思ったから、俺の家にしたんだよ」
ロートル「お前だって同じ村付きのハンターとは、仲良くしたいだろう?」
ソロ「……別に……俺は……」
ロートル「一人でクエに出るの辛くて、オトモアイルーの方を先に選んだくらい」
ロートル「寂しがり屋なんだから、狩人くらいには素直にな」
ソロ「ロ―――トルッッッ!!!」///
ロートル「ははは!」
狩人「…………」 唖然…
ロートル「おっと。 完全に置いてけぼりだよな」
ロートル「まあ……簡単に言うと、だ」
狩人「はあ……」
ロートル「ソロもお前と同じく……最初は失敗ばかりで」
ロートル「ハズレだのダメハンターだの言われていたんだよ」
狩人「え」
狩人「ええー!?」
ソロ「…………」///
ロートル「今でこそ『大剣のソロ』とか『孤高のスレイヤー』とか」
ロートル「ご大層な二つ名で呼ばれたりしているが」
ロートル「真相はいろいろ言われるのが嫌で」
ロートル「集会所でも常に一人でクエをこなしていたら」
ロートル「いつの間にかそう呼ばれる様になったってだけなんだよ!」
狩人「そ、そうなんですか……」
ソロ「…………」///
ロートル「……ま」
ロートル「さすがにそれを見かねて、俺もある日」
ロートル「ソロに声をかけ、何とか集会所クエに同行したんだが」
ロートル「まあ……酷かったな」
ソロ「…………」
狩人「酷い?」
ロートル「常に遠慮して、おどおどしてて……」
ロートル「モンスターじゃなく、俺にビビっていた」
ソロ「…………」
ロートル「そんな態度に俺も最初、辟易していたが」
ロートル「モンスターと対峙する当時のソロの動きは、今の俺から見ても」
ロートル「一流の動きだと思う」
狩人「そうなんですか……」
ソロ「…………」
ロートル「…………」
ロートル「俺は、な」
ロートル「嫉妬したよ」
狩人「……え?」
ロートル「確かに俺は長い間、この仕事を続けてきたが」
ロートル「ハンターとしては二流だ」
ロートル「いや、本当はもっと下かもしれん」
ソロ「……そんな事はない」
狩人「……ロートルさんが二流以下なら、俺はどうなるんですか」
ロートル「ははは!」
ロートル「……話がそれたが」
ロートル「要は、今の噂をそんなに気にするなって事と」
ロートル「いつか、ソロの奴と一緒にクエに出てやってくれって」
ロートル「言いたいだけなのさ」
狩人「お、俺が……ですか?」
ソロ「…………」
ロートル「まあHRとか腕の差は、今はいかんともしがたいだろう」
ロートル「けど、将来ずっと単独行動するのは……命がいくつあっても足りなくなる」
ソロ「…………」
狩人「…………」
ロートル「お前たちは、出だしでつまづいた同士」
ロートル「そういう意味では気後れすることは少ないし、気兼ねもしないで済む」
ロートル「今すぐ、とは言わないが……」
ロートル「できれば最低限二人でクエに挑む様になって欲しい」
ロートル「長年……この仕事を続けてきた経験者の答えとして、な」
ソロ「ロートル……」
狩人「ロートルさん……」
ロートル「ま、最初の一歩として今日の飯を計画したわけだが」
ロートル「どうだ? お互いの第一印象は?」
ソロ「……言えるか」
狩人「……気後れするなってのが、そもそも無理ですよ」
ロートル「だろうな! ははは!」
ソロ(……だんだん腹が立ってきた)
狩人(……人生楽しそうだな)
ロートル「んじゃ、交流第二弾として」
ロートル「女の子の話でもするか!」
ソロ「……帰る」
狩人「気持ちは分かりますけど! 俺一人にしないでください!」
ロートル「ははは!」
この後もロートルさんのペースで食事会は進み
終始、ソロさんは怒鳴っていた。
……でも
ソロさんには悪いけど
俺はちょっと嬉しかった。
自分みたいな奴が他にも居るんだと
そんな人も凄腕ハンターになれるんだと、わかって……
ただ、嬉しかった。
―――――――――――
半月後の午前中
ふもと村 集会所
狩人「…………」
狩人(さて、ドスランポスやドスゲネポス、ドスガレオスも)
狩人(三乙を何度かしてしまったが、問題なく倒せる様にはなった)
狩人(……依頼主さんの突き刺さる様な視線は痛かったけど)
狩人(…………)
狩人(やはり、誰かとクエに出た方が失敗は少ないんだろうな)
狩人(…………)
狩人(とは言っても、俺と組んでくれるハンターが居るだろうか……)
狩人(……ん?)
DQNハンター「へー! 少女って名前なんだ!」
DQNハンター「いい名前だな!」
少女「どうも」
アフロ「レイア狩りのコツなら、俺たちが教えてやるぜ?」
少女「いりません」
アフロ「硬いこと言うなよ、少女ちゃん」
狩人(…………)
狩人(……なんか、変なのに絡まれてるみたいだな)
狩人(助け舟……出したほうがいいか?)
少女「!」
狩人(あ……こっちに気がついた?)
少女「狩人!」
狩人「え? あ、ああ、少女、お待たせ」
少女「ごめんなさい、私、狩人とクエに行く約束してたんで!」
DQNハンター「はああ!?」
DQNハンター「そりゃねーんじゃねーの? 少女ちゃん!」
アフロ「そうだぜ!」
アフロ「それにそいつ……確かふもと村のハズレハンターだろ!?」
アフロ「そんな奴と一緒に行ってもつまんねーって!」
狩人「…………」
少女「あいにくと」
少女「私は狩りをつまるか、つまらないかで、やっているわけじゃないわ」
少女「他を当たって」
DQNハンター「はああああああ!??」
DQNハンター「何それ。 ちょっとカチンと来るんですけどぉ~!?」
アフロ「まあまあ……落ち着けよDQNハンター」
アフロ「いいから、とりあえずあいつ込みで、クエに参加しようぜ?」
アフロ「少女ちゃんもあいつのヘタレっぷりを見たら、俺たちの魅力にメロメロさ♪」
DQNハンター「……ま、俺らの実力なら行けるか」
DQNハンター「ど-よ? ヘタレハンター」
DQNハンター「俺らついて行っても問題ねーだろ?」
少女「……断って、狩人」
狩人「…………」
DQNハンター「何黙ってんだよ?」
DQNハンター「あー、あれか」
DQNハンター「やっぱクエの約束とか、ウソだったわけ?」
アフロ「少女ちゃん、それは俺ら傷つくわ~」
少女「くっ……」
狩人「……えと」
狩人「受付嬢さん、このクエ、お願いします」
受付嬢「はい、分かりました」
DQNハンター「…………」
アフロ「…………」
少女「ちょ、ちょっと……!」
闇間のイャンクック?
場所:密林
時間:昼
内容
はぐれたイャンクックが、また出やがった!
今年はやけに多いぜ!
暗がりだったけど、ちょいと大きい奴だった。
ハンターさん、ちゃっちゃっとやっつけてくれ!
DQNハンター「んだぁ? クックかよ」
アフロ「うわっ! ショボ!」
狩人「ははは、俺、まだイャンクック狩ったことがないので」
狩人「少女にいろいろ教えてもらう、という約束をしてたんです」
DQNハンター「素人かよ……」
狩人「ヘタレなんで」
狩人「こんなクエですが、来てくれますか?」
DQNハンター「…………」
アフロ「…………」
少女(……なるほど、考えたわね)
少女(ここから密林まで約往復一週間)
少女(ただのナンパで、しかもクック狩りなんていう低ランクの標的に付き合うのは)
少女(割に合わないわ)
少女(これならさすがに断る……)
DQNハンター「……ああ、いいぜ」
アフロ「なっ!? マジかよ!?」
狩人「」
少女「」
アフロ(正気かよ、DQNハンター!)
アフロ(確かに少女ちゃん可愛いけど、割に合わねーって!)
DQNハンター(うっせ! ここまでコケにされて引き下がれるか!)
DQNハンター(意地でもあの女の子、モノにする!!)
アフロ(マジかよ……)
少女「…………」
狩人「…………」
少女(……いいの?)
狩人(……もうここまで来たら、乗りかかった船だ)
狩人(クック狩っていないのも事実だし、いい勉強になると思ってやるよ)
少女(そう……)
少女(……ごめんなさい、巻き込んでしまって)
狩人(ははは……いいって)
少女(…………)
狩人(……どうやら俺は)
狩人(最初につまづく運命にあるみたいだな……はあ……)
……まあ、ともあれ
一応誰かとクエに行くことになったんだ。
それなりに喜ぼう。 うん。
はあ……
225 : 以下、名... - 2015/05/09 16:00:49 ii.3hCRY 207/1043
※注 それぞれの装備
DQNハンター(HR 3)
武器:双剣
防具:レウス装備一式
アフロ(HR 3)
武器:ハンマー
防具:レウス装備一式
狩人(HR 2)
武器:大剣
防具:フルフル装備一式
少女(HR 3)
武器:片手剣
防具:ザザミ装備一式
―――――――――――
数日後の午前中
密林のBC(ベースキャンプ)
ザアアアア……
狩人「うへぇ……土砂降りだな……」
DQNハンター「このくらいの雨で何言ってんだ?」
アフロ「ヘタレハンターの噂は、伊達じゃねーって事だろ」
アッハッハッ……
少女「……私たちは」
少女「誰が上でも下でもない、クエのモンスターを狩るという」
少女「共通の目的を持っているハンター同士よ」
少女「今からそんな風に和を乱すのは、良くないと思うわ」
DQNハンター「……へいへい」
アフロ「か、軽いジョークさ」
少女「軽い、ね……」
狩人「いいさ、少女。 俺は気にしてない」
狩人「俺にとっては初めてのモンスターだから緊張もしている」
狩人「ヘタレってのもあながち間違いじゃない」
少女「…………」
少女「そう」
DQNハンター「んじゃ、さっさと片付けに行こうぜ」
アフロ「ヘタレの出番は、無いと思うな!」
―――――――――――
ザアアアア……
少女「……雨、弱くならないわね」
狩人「え? 何か言ったか?」
少女「雨が弱くならないって、言ったの」
狩人「ああ、確かにな」
狩人「おまけに木々が邪魔で、あたりの様子も見えにくいし……」
DQNハンター「これだから素人は困るんだ」
DQNハンター「いいか? 教えといてやるが」
DQNハンター「クックみたいに火を吹く奴らの火炎攻撃は、結構きついが」
DQNハンター「こういう雨の中じゃ威力が半減するんだ」
アフロ「そうそう」
アフロ「だからむしろ、こういう天候は大歓迎なんだよ!」
狩人「な、なるほど……」
少女(…………)
少女(……確かにそれは合っているわ)
少女(でも、こんな見通しのきかない場所で、さらに雨雲のせいで暗く、見えにくくなるのは)
少女(やっぱり歓迎できない)
少女(……何事もなければいいけど)
狩人(…………)
DQNハンター「ちっ……にしても見つからねーなぁ」
DQNハンター「どこに居んだよ……」
アフロ「早く狩って帰って、美味い飯、食いてーな……」
DQNハンター「ああ、そうだな」
DQNハンター「モスのバラ肉煮込みにビールでかっこみたい!」
アフロ「いいねぇ」
アフロ「俺はカニだな!」
アフロ「ザザミソの熱々スープにフラヒヤ麦飯!」
DQNハンター「美味そうだな!」
ギャハハ……
少女「…………」
狩人「……おい、まだ狩りの最中なんだぞ?」
狩人「そんな話をしてる場合じゃ無いだろ?」
DQNハンター「ああん? 軽い常識も知らねード新人が何指図してんだぁ?」
アフロ「飯の話くらい、別にかまわねーだろ」
狩人「…………」
少女「…………」
『狩りの最中に飯の話をするな』
狩人「…………」
少女「…………」
狩人「……少女」
少女「……うん」
狩人「大丈夫……だよな?」
少女「たぶん……クックだし」
狩人「…………」
―――――――――――
ザアアアア……
DQNハンター「おっ?」
DQNハンター「あれじゃね?」
ドスッ… ドスッ… ドスッ…
アフロ「のんきに歩いてやがるな……」
アフロ「でも確かにちょっと大きい感じだ」
狩人「少女?」
少女「ええ、シルエットからイャンクックに思える」
少女「けど……」
狩人「けど?」
少女「…………」
少女「……ごめん、うまく言えない」
少女「何か、違和感があるんだけど……何かしら?」
狩人「…………」
狩人「よし、ともかくペイントボールを……」 ゴソゴソ…
DQNハンター「必要ねぇよ」
DQNハンター「クックくらい、俺の双剣でナマス切りにしてやらァ!」
ダッ!
少女「あ……!」
アフロ「やれやれ……しょうがねぇな!」
アフロ「俺のハンマーの分も残しとけよ!」
ダッ!
狩人「二人して勝手だなぁ……」
狩人「まあいい、ともかくペイン」
ガキィンッ!!
DQNハンター「っ!?」
アフロ「おらぁっ!!」
ガギィィンッ!!
アフロ「んなぁ!?」
DQNハンター「な、何だ? こいつ……硬ぇ!?」
アフロ「バカ! 止まるな!」
コ……コ、コ、コ……!
救助アイルー「っ!?」
救助アイルー「こ、これは……まさか!?」
クワアアアアアア―――――――――――ッ!!
DQNハンター「っ!!」
アフロ「がっ!?」
狩人「……!?」
少女「……っ!!」
狩人「こ……これって……」
狩人「咆哮か!?」
少女「まさか!」
少女「イャンクックがバインドヴォイスを仕掛けるなんて、聞いた事もない!」
救助アイルー「お前ら! 逃げるニャ!」
狩人「!」
少女「!」
バスッ! ビスッ! グチャッ!
DQNハンター「」 ドサッ…
アフロ「え……」
ズガッ! ギュルルルッ……ドズッ!!
アフロ「あ……がああああああああああああああああああああああああああああっ!!?」
アフロ「ひっ……ひぎいいいいいっ!!」
狩人「な……何なんだ!? あれ!?」
狩人「あんな巨体で、めちゃくちゃ早いぞ!?」
救助アイルー「いいから早く逃げるニャ!!」
救助アイルー「お前らじゃ相手にならないニャ!!」
グルルル……
救助アイルー「あいつは……あいつは……!」
救助アイルー「G級個体のイャンガルルガだニャ!!」
239 : 以下、名... - 2015/05/09 16:19:50 ii.3hCRY 221/1043クック先生、雑魚扱いしてすみません。
救助アイルーがガルルガを見聞きしただけで『G級』と判断したのは
何らかの理由でG級のガルルガしかこの地方に飛来しない為、ガルルガ=G級
と判断していると思ってください。
という所で今日はここまでです。
狩人「イャン……ええっ!? G級個体!?」
少女「で、でも! まだ他のハンターが!」
救助アイルー「俺たちは救出のプロだニャ!」
救助アイルー「あいつらの事は、任せておけ!」
救助アイルー「お前らが居ると邪魔ニャ!!」
狩人「……っ」
少女「……行こう、狩人」
狩人「……分かった!」
ダッ!
救助アイルー「行くぞ、野郎ども!」
救助アイルー「G級モンスでも、やる事はいつも通りニャ!」
ニャ… ニャー!!
救助アイルー(……とはいえ)
救助アイルー(クックのつもりで準備していたから、キツい仕事だニャ……!)
―――――――――――
密林 洞窟の一区画
タッ タッ タッ…
狩人「はあっ……はあっ……」
少女「はあっ……はあっ……」
狩人「だ、大丈夫か……少女?」
少女「ええ……何とか……」
クエエエエエエエエエエエエ……
狩人「……あいつら、大丈夫かな」
少女「……わからないわ」
狩人「…………」
少女「…………」
ザアアアア……
少女「雨の音……ここまで聞こえるのね」
狩人「ここは、まだ入口に近い方だからな」
少女「……そうなの?」
狩人「鉱石掘りによく来てるから、知ってる」
少女「…………」
狩人「……ともかく、これからどうすればいい?」
狩人「目的のモンスターはクックじゃなかったし……」
少女「……リタイヤするしかないわ」
少女「救助アイルーの言う通り、あのモンスターがG級なら」
少女「下位装備の私たちじゃ歯が立たない」
狩人「そうなのか……」
狩人「雨だし、暗くてよく見えなかったけど」
狩人「あのハンター達、あっさりやられていた感じだったしなぁ」
少女「…………」
少女「とりあえずBC(ベースキャンプ)に戻りましょう」
少女「救助アイルーも助けたハンターを運ぶには、あそこに行くしかない」
狩人「そうか」
狩人「じゃ、行くとするか」
少女「でも、ちょっと待って」
少女「今来た道を戻るのは、危ないと思う」
少女「あのモンスターが居るかもしれない」
狩人「ああ、それは大丈夫だ」
少女「え?」
狩人「この奥に出口があるんだよ」
狩人「BC(ベースキャンプ)に近い湖岸側に出ている」
少女「そうなの?」
狩人「狭いから、あのモンスターは入って来られないだろうし」
狩人「ドスランポスの通り道みたいになってて、出くわすかもしれないが」
狩人「それでもあのイャン……なんちゃらよりはマシだ」
少女「…………」
狩人「さ、行こうぜ」
少女「う、うん」
―――――――――――
ザアアアア……
狩人「くそっ……土砂崩れか」
狩人「通れなくなってやがる……」
少女「…………」
狩人「すまん、少女……」
少女「……これは仕方無いわよ」
少女「狩人のせいじゃない」
狩人「…………」
狩人「さて、どうするかな……」
少女「他に出入り口は無いの?」
狩人「あるにはあるが……」
狩人「どれもあのG級モンスターに出くわした場所に近い所なんだ」
狩人「おまけに飛竜とかが、巣にした形跡まである所も……」
少女「……居るかもしれないわね」
狩人「くそ……ペイントしておけば」
狩人「大まかな居場所が分かるのに……」
少女「この雨じゃ、それも難しいかも知れないわ」
狩人「…………」
狩人「となると……後はどうすればいい?」
少女「しばらく様子を見るしかないと思う」
少女「せめて、雨が止むか、弱くなるのを待った方がいい」
狩人「そうなれば、モドリ玉を使えそうだな」
少女「ええ」
少女「きっと、救助アイルーが見つけてくれると思う」
狩人「なら……しばらく休もう」
少女「そうね」
少女「…………」
―――――――――――
ザアアアア……
狩人(……いつまで降り続くんだよ、この雨)
少女「…………」
狩人「……腹減ってきたな」
少女「……そうね」
狩人「…………」
ゴソゴソ…
狩人「ほい。 こんがり肉」
狩人「食うか?」
少女「うん」
ムシャ ムシャ
少女「美味しい」
狩人「良かった」
少女「用意がいいわね」
少女「私はかさ張るから、持って行かないわ」
狩人「携帯食料は味気なくてな……」
狩人「食ってもすぐ腹が減るし」
少女「まあ……確かにそうね」
狩人「……っと」
狩人「狩りの最中に飯の話はダメだった」
少女「……あれは別の意味が込められていると思う」
狩人「別の意味?」
少女「推測だけど……油断するなって意味だと思うわ」
狩人「!」
狩人「……油断、か」
狩人「なるほど」
少女「…………」
少女「ねえ、狩人」
狩人「ん?」
少女「あなたって、南部か中央の出身でしょ?」
狩人「え……よくわかったな」
狩人「その通りだよ」
少女「やっぱりね……」
狩人「…………」
狩人「……気のせいか、トゲのある言い方だな」
少女「…………」
少女「この際だから、洗いざらいぶちまけるわ」
少女「ええ。 あなたの事、馬鹿にしたの」
狩人「!?」
少女「そもそも、ハンターになった理由が『憧れ』である時点で」
少女「安全な中央地区か、南部地方の出身だと思ったわ」
狩人「…………」
少女「モンスターなんて、絵本か、物語の中でしか知らない存在で」
少女「ハンターという職業を『かっこいい』とか思っているあたり」
少女「現実を知らない、安全なところで育ったお坊ちゃんの発想よ」
狩人「…………」
少女「それに……ヘタレとか、ハズレとか言われても怒らないなんて」
少女「プライドも何もなく、ハンターとしての気概さえ持っていなかった」
狩人「…………」
狩人「……まあ」
狩人「確かにそれは否定できないな」
少女「…………」
狩人「でも」
狩人「俺に戻る場所はもうない」
少女「……え?」
少女「まさか……私と同じようにモンスターが?」
狩人「いいや」
少女「……どういう意味よ?」
狩人「俺……孤児院出身なんだ」
少女「!」
狩人「…………」
少女「……その割に言葉遣いは綺麗ね」
狩人「少女が孤児院をどう見ているのか知らないが」
狩人「俺たち孤児が最も力を入れて教えられるのは」
狩人「『お行儀よくする事』なんだよ」
少女「……どういう意味?」
狩人「例えば言葉使い」
狩人「孤児院にお金を出してくれる人への挨拶は特に大事だ」
狩人「これで行儀が悪かったら、お金を出して貰えなくなるかもしれないからな」
少女「…………」
狩人「……俺たち孤児に自由はない」
狩人「きちんと挨拶ができなかったり、逆らったりした奴は」
狩人「厳しい罰を受けたって聞いた」
少女「…………」
少女「逃げようって、思わなかったの?」
狩人「俺は……よく言えば素直」
狩人「悪く言えば、何も考えずに言う通りにしていたからな」
狩人「自分の待遇に何の疑問も持たず生活をしていた」
狩人「そうすれば食べ物も出てくるし、たまに美味しいお菓子にもありつけたから」
狩人「むしろ、逆らう奴の方がおかしいって思ってたくらいだ」
少女「…………」
狩人「…………」
狩人「……でも、ある日」
狩人「俺の大好きだった人が、突然連れて行かれた」
少女「…………」
少女「どういう人だったの?」
狩人「……優しい人でね」
狩人「俺たち孤児にとって先輩にあたる、太陽みたいなお姉さんで……」
狩人「気さくな人だった」
少女「…………」
狩人「いつも俺には『素直すぎ』だって注意してたけど」
狩人「もちろんその時の俺に、意味はわかってなかった」
少女「…………」
狩人「その人がある日」
狩人「孤児院にお金を出している人のお屋敷に 住み込みで働く事になった」
狩人「唐突な事で、孤児のみんなは俺も含めてすごくショックだった」
少女「…………」
狩人「俺は……いや、俺たちは連れて行かないで、と、お願いした」
少女「…………」
狩人「その時に返って来た言葉は……」
お前らは食わせてもらってるだけありがたいと思え!逆らうな!
狩人「……だった」
少女「…………」
少女「……そのお姉さんはどうなったの?」
狩人「さあ……」
少女「さあ……って」
狩人「連れて行かれた場所を知らないし」
狩人「探そうとしたら、お金を出していた人は偽名を使ってたみたいで」
狩人「すぐに行き詰まったから……」
少女「…………」
狩人「こういうの、どう言うんだろうな?」
狩人「悔しいけど何もできなくて、ムカムカするっていう感じ」
少女「……絶望……かしら」
狩人「絶望……ね」
狩人「じゃ、その絶望してた俺だったけど」
狩人「そんな時にラオシャンロンを倒して凱旋するハンター達を見たんだ」
少女「…………」
狩人「少女の言う通り、俺は憧れたよ」
狩人「あんなに大きなモンスターにも勝ってしまう強さ」
狩人「自由で、誰の命令にも従わずに行動できる奔放な勇敢さ」
少女「…………」
狩人「俺もあんな風になりたい」
狩人「自分の生き方を自由に決められる様になりたい」
狩人「あそこに立てる様な、強さを持ったハンターになりたいって」
狩人「心の底から思ったんだ」
少女「…………」
狩人「…………」
狩人「……話が長くなったけど」
狩人「少女から見たら、物足りない部分はあるかもしれない」
狩人「だけど、決してふざけた気持ちでハンターになった訳じゃな……」
少女「もういい」
少女「もう……わかったから」
狩人「…………」
少女「…………」
ザアアアア……
少女「…………」
少女「……私は、ね」
狩人「う、うん」
少女「狩人に……」
少女「ただ……嫉妬しているの」
狩人「…………」
狩人「え……嫉妬?」
少女「…………」
少女「私は……ね」
少女「大剣とか重すぎて、使えないのよ」
狩人「…………」
狩人「は?」
少女「なのにあなたは、武器を自由に変えられる」
少女「いつの間にか、単独でフルフルを狩ってこられる様にもなっていた」
少女「羨ましかった……」
狩人「ちょっと待てよ」
狩人「使えないって、どういう事だ?」
狩人「それじゃあ、ハンター試験で落ちてしまうだろ?」
少女「…………」
少女「ロートルさんが言ってたでしょ?」
少女「お情けで合格したって」
狩人「少女もそうだったのか……」
少女「いいえ」
狩人「……は?」
少女「私はロートルさんより酷いわ」
少女「試験官の人にお金を掴ませて、合格にしてもらったのだから」
狩人「!!」
少女「…………」
狩人「…………」
狩人「……何でそこまでしてハンターになろうと思ったんだ?」
少女「…………」
少女「ごめん……言いたくない」
狩人「……そっか」
狩人「…………」
少女「…………」
ザアアアア……
狩人「……どうして、そんなこと俺に話したんだ?」
狩人「バラすつもりはないけど、バレたらまずい事だろ?」
少女「さあ……何でかな」
少女「自分でもよくわからない」
狩人「…………」
少女「…………」
少女「ただ……」
少女「誰かに聞いて欲しかったから……かもしれないわ」
狩人「少女……」
救助アイルー「……ここに居たのかニャ」
狩人「どわぁっ!?」
少女「きゃっ!?」
救助アイルー「なんかいい雰囲気っぽかったけど」
救助アイルー「あんまり余裕もないんで邪魔するニャ!」
狩人「じゃ、邪魔って……」
少女「……今の話、聞いてた?」
救助アイルー「何の事だニャ?」
救助アイルー「俺の仕事はハンターの救助であって」
救助アイルー「探偵じゃないニャ!」
狩人「聞いてたのは否定しないのか?」
救助アイルー「そういう野暮なツッコミ入れるあたり」
救助アイルー「お前は女の子にモテない奴みたいだニャ」
狩人「……いつも世話になってるけど」
狩人「余計なお世話だ」
少女「…………」 クスッ
救助アイルー「さ、あのG級イャンガルルガの位置は把握しているニャ」
救助アイルー「今なら安全にBC(ベースキャンプ)に戻れるニャ」
狩人「わかった」
少女「道案内、よろしくね」
―――――――――――
BC(ベースキャンプ)
ニャァ…… ニャァ……
狩人「…………」
少女「…………」
救助アイルー「……酷い惨状に思えるかもしれないけど」
救助アイルー「俺たちに死んだ奴は居ないニャ」
救助アイルー「G級モンスター相手でこれなら、御の字ニャ」
DQNハンター「」
狩人「……じゃあ、こっちの布をかけられているのって」
救助アイルー「布を剥がすのはおすすめ出来ないニャ」
救助アイルー「頭の中身がこんにちは✩してて、ひどい状態だニャ」
DQNハンター「」
狩人「…………」
少女「…………」
アフロ「…………」 ガタガタガタガタ…
救助アイルー「…………」
救助アイルー(……こっちのハンターは幸いにも怪我で済んだけど)
救助アイルー(別の意味で引退かもしれないニャ……)
救助アイルー「…………」 フウ…
救助アイルー「もう少しで出発の準備が整うニャ」
狩人「あ……何か手伝おうか?」
救助アイルー「これは俺たちの『仕事』だニャ」
救助アイルー「ハンターは、ハンターの『仕事』に集中すればいいのニャ」
狩人「…………」
少女「…………」
アフロ「…………」 ガタガタガタガタ…
―――――――――――
数日後の午後
ふもと村 集会所
ロートル「狩人! 少女!」
ソロ「……無事だったか」
狩人「ロートルさん……それに」
少女「ソロさん……」
ロートル「G級モンスターに出くわして、ハンターに犠牲者が出たと聞いてたから」
ロートル「心配していた」
狩人「俺と少女は直接、戦っていないので……」
少女「あの二人を助けに行こうとしたら、救助アイルーに止められたんです」
ソロ「……それで正解だ」
狩人「! ……ソロさん」
ソロ「犠牲になったハンターは気の毒だが」
ソロ「下位装備なんて、G級モンスターの前では紙切れも同然……」
ソロ「お前たちの判断は間違っていない」
少女「…………」
ロートル「……まあ詳しい話は、また今度聞こう」
ロートル「しばらくゆっくり休むといい」
狩人「……そうします」
少女「同じく……」
―――――――――――
ロートルの家
ソロ「……実は、ギルドから注意を受けていてな」
ロートル「何?」
ソロ「例の場所から逃げ出したG級モンスターが一匹居る」
ソロ「イャンガルルガは、シルエットがクックに似ているから」
ソロ「不確定な目撃情報や怪しい、と思える依頼はそれとなく見ておいてくれと……」
ロートル「……最近、時々クック狩りに行ってたのは、それか」
ソロ「ギルド観測所のモンスター鑑定員も不足気味」
ソロ「こういう事態を防ぎたかったのだろうが……」
ロートル「起こってしまった……か」
ロートル「…………」
ソロ「…………」
ロートル「……あの2人」
ロートル「どうするのだろうな」
ソロ「……ハンターをやっていれば、いずれ出くわす問題だ」
ソロ「遅かれ早かれ、な」
ロートル「…………」
ロートル「……身勝手な事を言うが」
ロートル「あの2人には乗り越えて欲しいよ」
ソロ「…………」
ソロ「……そうだな」
―――――――――――
狩人の家
狩人「…………」
少女「そもそも、ハンターになった理由が『憧れ』である時点で」
少女「安全な中央地区か、南部地方の出身だと思ったわ」
狩人「…………」
少女「ハンターという職業を『かっこいい』とか思っているあたり」
少女「現実を知らない、安全なところで育ったお坊ちゃんの発想よ」
狩人「…………」
少女「なのにあなたは、武器を自由に変えられる」
少女「羨ましかった……」
狩人「…………」
少女「私は……ね」
少女「大剣とか重すぎて、使えないのよ」
少女「試験官の人にお金を掴ませて、合格にしてもらったのだから」
狩人「…………」
少女「自分でもよくわからない」
少女「誰かに聞いて欲しかったから……かもしれないわ」
狩人「…………」
狩人(……いろいろあるんだろうな)
少女「まさか……私と同じようにモンスターが?」
狩人(…………)
狩人(聞いちゃいけない事……なんだろうな)
狩人(…………)
―――――――――――
少女の家
少女「…………」
狩人「俺に戻る場所はもうない」
狩人「俺……孤児院出身なんだ」
少女「…………」
狩人「……俺たち孤児に自由はない」
狩人「きちんと挨拶ができなかったり、逆らったりした奴は」
狩人「厳しい罰を受けたって聞いた」
少女「…………」
狩人「少女の言う通り、俺は憧れたよ」
狩人「あんなに大きなモンスターにも勝ってしまう強さ」
狩人「自由で、誰の命令にも従わずに行動できる奔放な勇敢さ」
少女「…………」
狩人「俺もあんな風になりたい」
狩人「自分の生き方を自由に決められる様になりたい」
狩人「あそこに立てる様な、強さを持ったハンターになりたいって」
狩人「心の底から思ったんだ」
少女「…………」
少女(……同じじゃない)
少女(私と……)
狩人「……どうして、そんなこと俺に話したんだ?」
狩人「バラすつもりはないけど、バレたらまずい事だろ?」
少女「…………」
少女(……本当にその通りよね)
少女(私……バカみたい)
少女(…………)
少女(…………)
少女(ううん……違う)
少女(たぶん、バカなんだわ)
―――――――――――
翌日の朝
狩人の家の前
狩人「ふああああああああ……」
狩人「ムニャムニャ……」
狩人「…………」
狩人「井戸……顔を洗わないと」
―――――――――――
バシャ バシャ
狩人「……ふう」
少女「おはよう、狩人」
狩人「……ん?」
狩人「ああ、少女。 おはよう」
狩人(少女……こんな所まで顔を洗いに来た?)
狩人(……な訳ないよな)
狩人「…………」
少女「…………」
少女「……少し、歩かない?」
狩人「わかった。 付き合うよ」
テク テク テク…
狩人「…………」
少女「…………」
狩人「……静かだな」
少女「そうね」
狩人「そういえば、こんな時間に出歩くの初めてかも」
少女「私も」
狩人「…………」
少女「…………」
テク テク テク…
少女「……ねえ、狩人」
狩人「ん?」
少女「例の……怪我ですんで、生き残ったあのハンター」
少女「引退するって聞いたわ」
狩人「……そうか」
少女「…………」
狩人「…………」
少女「私は続けるつもり」
狩人「!」
少女「一応、目的あるから」
狩人「そっか……」
少女「狩人は?」
狩人「もちろん続けるよ」
狩人「憧れている、あの時のハンターになる為に」
少女「そう」 クスッ
狩人「ははは」
少女「…………」
狩人「…………」
少女「で、さ……」
狩人「うん」
少女「今度、ライトボウガンを練習しようと思うの」
狩人「!」
狩人「ガンナーに?」
少女「もちろん片手剣を捨てるつもりはないわ」
少女「でも、これから先、何が起こるかわからないって事を」
少女「身にしみてよくわかった」
少女「だから……選択肢をできるだけ多くしたいって思ってる」
狩人「…………」
少女「けど……ひとりは不安だから」
少女「狩人に手伝って欲しい」///
狩人「まあ、俺でいいのなら」
少女「…………」
少女「……このニブチン」 ボソッ
狩人「ん?」
少女「何でもない」
ナニオコッテンダ? オコッテナイ
オコッテルジャナイカ オコッテナイ!
ロートル「…………」
ソロ「…………」
ロートル「……どうやら、いらぬ心配だった様だな」 クスッ
ソロ「ああ……その様だ」
ロートル「それにしても」
ロートル「青春だねぇ」
ソロ「……モゲロ」
ロートル「同感だ!」
ハハハ…
爽やかな朝もやの中
俺と少女は、次の狩りを一緒に行く約束をしたのだった。
続き
狩人「目指すは伝説級ハンター!」【2】