僕の幼馴染はもういない
しかし彼女は確かにいたのだ
でももう会えることはない
悲しんではいけない
彼女は風になったのだ
僕はそう言い聞かせて顔を上げた
元スレ
男「幼馴染みはもういない…」
http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1309096069/
ことの始まりは中学1年生の6月の中頃だった
新しい中学校生活にも慣れて、多くの友達が出来た頃だった
そろそろ夏休みということもあり期待を胸に膨らませていた
そんな僕に良くない知らせが入った
小さい頃からずっと一緒だった幼馴染がここ1週間学校に来てないという
偶然クラスの女の子から聞いた
彼女とは物心がついた頃から一緒にいた
家も目と鼻の先にある
小学校まではよく一緒に遊んだり下校したりした
中学校に上がってからはクラスが別になったのもあり
何だか照れくさくなって一緒に下校しなくなった
僕は部活をやっていなかったが
彼女は茶道部に入っていて忙しかったのもある
それでも、顔合わせれば喋りもしたし
偶然登校が重なれば一緒に学校に行った
彼女は大人しく静かな性格でおっとりとしていた
真面目で成績も優秀であった
友達は少なくはなかったし誰かいじめられたり等は信じられない
そんな彼女が学校に来ていないという
彼女の性格から考えてサボったり不登校は考えられなかった
病気でもしたのだろうか
心配になりその日の放課後に彼女の家に寄ることにした
彼女の家に着いた
インターホンを押すとき少し照れくさかったが
別にそんなに恥ずかしがるような仲ではなかったので僕はインターホンを押した
ベルの音が鳴り響いて少し経つと、彼女のお母さんが出てきた
あら、男くんと笑うって出てきたおばさんは何だかやつれている気がした
あの、幼馴染はと僕が言いかけると
うん、上がってとおばさんは言った
何だかとても妙な雰囲気だった
階段を上がって彼女の部屋に向かう
何だか彼女の家は静かだった
いつもと何かが違うわけではない
だが、何かが違うのだ
彼女の部屋の前に着いた
彼女の部屋もまた静かに感じられた
僕はノックをした
が、返事も何も返って来なかった
幼馴染、入るよと一言声をかけてからドアを開けた
彼女の部屋は依然に来た時と変わっていなかった
だが、彼女の様子は違った
部屋の隅で体育座りをしていた
何だか震えているようにも見えた
幼馴染?と僕が声をかけると少し遅れて
男くん?と聞き返してきたのでうん、そうだよと答えた
答えたと当時に彼女は僕に抱き着いてきた
抱き着いて僕の胸で彼女は泣いていた
彼女はそんな大胆なことする人じゃなかったし
何せ泣いているのだ、驚かないはずがない
が、ただならぬ空気を僕は感じたのか
僕は無意識に彼女を抱きしめていた
彼女はひたすら僕の胸で泣いていた
しばらくして彼女は泣きやんだ
落ち着いた?と僕が尋ねるとうんと答えた
答えたあと、彼女は驚いたように僕から離れた
彼女の顔は真っ赤だった
えっと…ごめんねと俯き気味に彼女は言った
気にしてないよと僕は返した
しばらく沈黙が続いた
沈黙を先に破ったのは彼女だった
ありがとう
うんと僕は返した
ねえ、学校の話聞かせて
彼女はそう言った
学校って僕の?と聞くと彼女は黙って頷いた
僕はここ1週間学校で楽しかったことおかしかったことを話した
彼女は黙って笑って頷いて聞いていた
その後の彼女はいつも通りで彼女と楽しく雑談をした
おばさん同様やつれている気はしたが
元気そうでほっとした
でも、学校に来ない理由は聞けなかった
彼女が来れないということはよほどだろう
彼女は学校に通っていた頃のことを楽しそうに話していた
彼女は行きたくないのではなく行けないのだと悟った
気が付いたら7時を回っていた
家までは5分とかからないが、そろそろ夕飯の時間だ
長居しては彼女の家にも迷惑がかかると思い、僕は帰ろうとした
いつもなら彼女はまたねと笑顔で僕を送ってくれた
しかし今日は違った
僕が帰ろうとした時、彼女はとても悲しそうな顔をした
そして彼女から出た言葉は泊まっていかない?だった
僕は少し驚いたが、別に泊まることなど初めてではなかったので
いいの?と聞き返した
彼女は黙って頷いた
僕は一度家に帰り、お風呂を済ませ服を着替えて彼女の家に戻った
いつもなら夕食を済ませていくのだが
彼女が夕飯を作ると言ったので食べなかった
家族は特に何も咎めなかった
もう何度も泊まっているし何より明日は休日だ
テストも終わったばかりだったので特に止める理由もなかろう
僕は再び彼女の家に戻った
やはり何か彼女の家は変だ
とても寂しい風を感じる気がした
おばさんは悪いね、男くんと言った
いえ、僕も楽しいですからと笑って答えた
彼女は台所で料理をしていた
もう少しで出来るから
エプロンをしていた彼女の姿は可愛かった
将来、良いお嫁さんになるんだろうなと思った
彼女の料理はとても美味しかった
彼女にその気持ちを伝えたらとても喜んでいた
そのあと再び部屋に戻り、また雑談を続けた
そろそろ眠くなってきたので
眠いから布団を出して良い?と彼女に尋ねた
もう何度も泊まっているので僕用の布団の場所を知っている
ちなみに当然のごとし僕の家にも彼女用の布団がある
だが、彼女から出た言葉はこれだった
一緒に寝ない?
僕は耳を疑った
えっと…幼馴染の布団で?
枕を抱えた彼女は黙って頷いた
僕ももう中学生だ
男女が1つの布団で寝る意味くらい知っている
どうしたらいいのか分からなかった
ねえお願いと彼女が催促した
僕は今彼女と一緒に布団の中にいる
ドキドキしたし顔が茹でタコになるんじゃないかというくらい熱かった
とてもじゃないが、彼女の方を向いて寝れなかった
ふいに彼女が後ろから抱き着いてきた
声をあげそうなくらいびっくりしたが、すぐに落ち着いた
彼女の体が震えているのだ
僕はまた抱き着き返した
彼女の荒れた呼吸も治まり、震えも治まったようだった
それから何分したのかは分からないが
彼女の静かな寝息が聞こえてきた
僕もまた気付いたら寝ていた
翌朝、起きたのはおばさんが起こしに来た時だった
一緒に寝ている僕らをみてあらあらと笑った
僕、何もしてないですよと慌てて弁解した
そうとおばさんはまた笑った
こんな幸せそうな娘の顔を見たのはいつぶりかしら
少し悲しそうな顔でおばさんは言った
確かに彼女は幸せそうな顔で寝ていた
結局、彼女が起きたのは夕方だった
特に寝坊とかする子じゃなかったので驚いた
僕はその間、家から持ってきた携帯ゲーム機で遊んでいた
起きた彼女の顔はとてもすっきりしていた
ごめんね、退屈だったよねと寝起きに言った
僕は首を横に振った
それと…ありがとう
僕は首を1度、縦に振った
僕はその日の夕方、家に帰った
結局、彼女が学校に来ない理由は分からなかった
今思い返すと予想外の彼女の行動に驚いてばかりだった
様子が変ではあるが、元気そうであったので大丈夫であろう
これをきっかけに学校に来てくれれば良いと思ったが
きっとそんな簡単な問題ではないだろう
そんなことを布団で考えていたら夢の中に落ちて行った
翌日、友達と遊びに行って帰ってくるとおばさんが来ていた
おばさんと母さんは何か喋っていたようで母さんは泣いていた
もしかして、僕何か悪いことしましたかと話に割って入ったあと
僕は昨日彼女と寝たことを思い出し
もしかしてそのことかと冷や汗が出た
しかしおばさんは男くんは何も悪くないのよと
むしろ感謝してるくらいだと言われた
僕は何が何だか分からなかった
翌日、彼女のクラスに行ってみたがやはり学校には来ていなかった
部活のしていない僕は放課後することなどなかったので
また彼女の家に行くことにした
彼女は僕が行くととても喜んだ
そして彼女はやたら学校での話を聞きたがった
ときおり悲しい顔をしているのが気になったが、楽しく喋っていた
この日から僕は放課後、彼女の家に寄るのが日課になっていた
毎日楽しく雑談等をした
しかし彼女は一度も学校には来なかった
とある雨の日のこと
いつも通り彼女の家に行こうとすると今日は先客がいた
女子が3人ほど、彼女の家の前でおばさんと話していた
三人共テニスだかバドミントンのラケットを背負っているので運動部の子だろうか
しばらくして女子たちは彼女の家から離れて行った
その時、少し女子たちの会話が聞こえた
幼馴染ちゃんどうしたんだろうね?
おばさんは大したことないって言ってたけど
今は会えないってどういうことだろう
心配だね
そんなことが聞こえた
僕も今日は会えないだろうと思ったが、何故かおばさんは入れてくれた
彼女の部屋に行くと彼女は隅で泣いていた
日に日に彼女はやつれているのが分かった
やつれている気がするではなく確実にやつれているのだ
どうして会わないの?と尋ねた
少し間をおいて悲しませたくないからと答えた
状況は分からなかったが僕は良いの?と聞いてみた
返事は返って来なかった
代わりにごめんなさいと返ってきた
その翌日から僕は女子たち同様彼女に会えなくなった
何であんなことを聞き返してしまったのだろうと後悔した
女子たちはしばらくすると部活もあるのだろうか
来る回数が徐々に減っていった
僕は毎日通い続けた
そして、夏休みの前日
とうとう再び会わせてもらえることが出来た
彼女の部屋に行った
彼女は僕を見るたびに抱き着いて
ひたすらごめんなさいと謝っていた
彼女は1か月前とは見違えるほどやつれていた
聞くのが怖かった、でももう聞かないわけにはいかないと思った
何があったの?
僕は一度も口にしなかった…いや出来なかったことを初めて彼女に問いた
彼女の口が開いた
聞かなければ良かった
聞きたくなかった
嘘だと言ってほしかった
夢であってほしかった
でもこれは紛れもない事実で逃げられない真実だった
彼女の余命があと2か月もないだなんて
不思議と涙は出なかった
癌だった
若い人の癌は珍しいのだが
かかってしまうと転移が恐ろしく早いのでどうしようもないそうだ
偶然違う病気にかかった時に検査した時に見つかったらしい
あと1か月もすれば病院での生活になるらしい
彼女が学校に行かなくなったのは、友達を悲しませないようにだそうだ
まだ中学校は始まって数か月
そこまで極端に仲が良いわけではないので
関わらなければ彼女はいなかったことになる
優しい彼女らしいなと思った
でもやっぱり1人は嫌なの
彼女は泣きながら言った
僕は黙って彼女を抱きしめた
ごめんなさい
また彼女は謝った
僕はその日家に帰ったあと、母さんに聞いた
知ってたの?
母さんは黙って頷いた
そっかと僕は部屋に戻った
その日は夕飯も食べなかったし、風呂も入らなかった
ただひたすら布団で泣いていた
翌日は家から1歩も出なかった
ほとんど部屋から出なかった
1人で気持ちの整理つけたかった
不思議と悲しみは徐々に消え、これからどうすべきかという思考に変わっていた
母さんが時折心配して顔を出したり、ご飯を持ってきてくれた
大丈夫?と聞かれた
うんと頷き
一番つらいのは彼女とその家族だから
母さんは少し驚いた顔をしてからそうねと答えた
でも貴方もその家族に近い存在またそれ以上の存在なのよと母さんは言った
翌日の朝、僕は彼女の家に行った
彼女とおばさんはいつも通り僕を迎えてくれた
僕は彼女にいくつかの質問をした
睡眠のこと、食事のこと、自由時間のこと
睡眠に関しては寝れないことが多いらしい
食事もやはりあまり喉を通らないらしい
自由時間もひたすら怯えているそうだ
うんと僕は顔を上げた
どうせなら今の人生を楽しまなきゃ
今のうちに寝たいだけ寝てしまえば良い
今のうちに美味しいものいっぱい食べてしまえば良い
今のうちにたっぷり遊んでしまえば良い
そんな生活してたらもったいないよ
僕は精一杯の笑顔で言った
彼女は無表情のまま、涙を流していた
そしてありがとうと笑った
その日を境に僕らは毎日遊んだ
お金はおばさんと母さんが奮発してくれた
海、遊園地、観光地いろんな所に行った
彼女の家族と一緒に旅行も行った
僕は極力彼女と一緒にいるようにした
何かは教えてくれなかったが1人でいる時間を潰す方法も見つけたようだった
日に日にやつれがなくなって行った
このまま元気になってくれないだろうかと思った
でも現実は非情だった
夏休み最後の日
僕らは近くの遊園地に遊びに行った
僕はとあるサプライズを用意していた
遊園地に入り口に着いた
そこにいたのは彼女の家に来た女子たちだった
えっ?と彼女は声を上げて驚いた
幼馴染ちゃん転校するんだって?
水臭いじゃん
転校したって友達じゃん?あたしら
彼女は泣いていた
この日は僕はひたすら彼女たちについて行くだけだった
彼女たちはとても楽しそうだった
閉演時間ぎりぎりまで遊んだ
そして別れの時間が来た
はい、これ電話番号
私も
私のもあるよ
連絡してね
彼女は笑顔で頷いた
そして女子たちと別れたあと、僕は平手打ちをくらった
彼女の気持ちを踏みにじったのだ
覚悟はしていた、覚悟はしていたがやはり痛かった
バカ!と怒鳴られてもう1回くらった
何で!何で!彼女は泣きながら叫びながら僕の胸を叩いた
彼女が怒ったのは初めてみた
君が気を使う必要なんてないんだよ
そう僕が答えた
彼女はしばらく黙って
ありがとう
そう言ってその場で倒れた
僕はすぐに救急車を呼んだ
どうやら相当無茶をしていたらしい
あと持って1週間だと聞かされた
とうとうこの時が来てしまった
病院でぐったりとしている彼女は今にも消えそうな声で言った
最後に1つだけお願いがあると言った
私が逝くとき、必ずそばにいて
僕は逝ったらダメだと答えた
そうだねと彼女は笑った
自分はどんな顔していたのか分からなかった
この日、家に帰ったあと家族ととある相談をした
学校を1週間休ませてほしいと頼んだ
彼女の最後を見届けるためだ
しかし、家族はそう簡単に承諾してはくれなかった
何せテストが近いこの時期に1週間も休むのだ
テストの点は内申点に響く
そして内申点はまた高校受験に響く
高校受験はまた将来に響く
親が一筋縄で許すとは思ってはいなかった
気持ちは分かるが自分の将来がだなと父さんが言った
僕はここで彼女のそばにいられなかったら人間として失格だ
学歴うんぬん以前に人間としてダメになる
僕は強気で言った
大人しい僕が親にここまで反抗するのは初めてかもしれない
休んでる間必死に勉強するよとさらに押した
しかしだな…と父さん
母さんのあなた!がトドメを刺した
分かったと父さんは頷いた
ありがとうと両親に感謝した
おばさんに頼んでもしもの時はすぐに家に電話してもらうよう頼んだ
そして…3日後にもしもの時が来てしまった
おばさんから電話があるとすぐに病院に向かった
急いで彼女の病室に向かった
幼馴染!僕はらしくない大声をあげて病室に入った
約束…守ってくれた…とても弱弱しい声で彼女は言った
何言ってるんだ!僕は約束破る気で来たんだぞ!だって君は今日死んだりなんかしない!
もう分かっていた
彼女はダメだということが
認めたくなかった
夢だと言ってほしかった
死んだらダメだ!
僕は気づいたら泣いていた
私…もう…大丈夫だから…
幼馴染?
ありがとう
ピーという音が病室に響いた
彼女が亡くなってから3日が経った
あれから学校には行ってない
彼女が亡くなった実感がなかった
でも彼女はいない
何もする気が起きなかった
ただひたすら呆けている毎日が続いた
でも今日は違った
おばさんが訪ねてきた
僕宛てに預かっていた物があったそうだ
ごめんね私たちのせいでと言いながらそれを受け取った
それは原稿用紙で作られた簡単な本だった
おばさんはありがとうと言って帰って行った
やはり酷くやつれていた
たった1人の愛娘を亡くしたのだ、当たり前だろう
僕はその本を開いた
気付いた頃から彼はいた
恋愛小説のような出会いはなかった
気付いたら自然と私の横にいた
気付いたら彼は私にとってかけがえのない存在になっていた
…………
………
……
…
小説だった
それも僕と彼女の小説だった
僕は泣きながらそれを一心不乱に読んだ
覚えてること忘れてしまっていること
彼女との思い出がすべて蘇ってくるようだった
病気が発覚して時の彼女の恐怖も書かれていた
とても見ていられる気分ではなかったが現実から目を背けるわけにはいかなかった
全て読み終わると1番最後のページに4枚の手紙がホチキスでついていた
3枚は女子たち宛てで1枚は僕宛てだった
これを貴方が読んでいるころには私はもうすでにいないということですね
えへへ、ありきたりかな?一度やってみたかったんだ
病気が発覚してからは絶望の毎日だった
暗い闇に包まれた感覚だった
でもそこから連れ出してくれたのは男くんだよ
夏休み毎日が楽しかった
病気なんて嘘なんじゃないかってくらい
でもね、日に日にやっぱり自分の体がおかしくなっていくのが分かってたんだ
どうしようもないんだなあって思ったよ
でも、不思議と怖くなかったよ
男くんがいたからね
男くんは自分のことが二の次でとても優しいよね
きっと良いお父さんになるよ
…許されるなら私がお母さんになりたかったな
でも私はなれないから良い人見つけてね!
楽しい毎日をありがとう
大好きだったよ男くん
また、逢えたらいいね
それじゃあ…バイバイ
P.S.女子たちに手紙渡しておいてね
僕は声を出して泣いた
もう涙が出ないんじゃないかってくらい泣いた
本当に彼女はいないのだ
その現実を知った
確かに彼女はいた
だが、もういないのだ
翌日、僕は学校に行った
母さんや父さんにもう大丈夫なのか?と聞かれた
もう大丈夫だよ
幼馴染のためにもいつまでもうじうじしてられない
強がってなんかいないと言ったら嘘になる
母さんは何も言わずに行ってらっしゃいと一言だけ僕に言った
学校に着いたらすぐに幼馴染のクラスに向かった
女子たちに声をかけ、すべてを話した
そして手紙を渡した
女子たちは泣いた
そしてこう言った
ありがとう
そして今、彼女が亡くなって1か月が経った
僕は今までにどれだけ"ありがとう"と言われただろう
それが言われたいがために動いたわけではないし
そんなものは欲しくなかった
彼女が生きていてほしかった
ただそれだけだった
よくドラマや漫画で
誰々は死んでなんかいない!何故なら俺の中で生き続けるからだ
というのがあるが、あんなの絶対嘘だ
実際、彼女は亡くなっているし、僕の中にあるのは彼女との思い出だけ
彼女なんかいやしない
そう、いやしないんだ
そう言って僕は彼女の墓に花を添えた
僕の幼馴染はもういない
しかし彼女は確かにいたのだ
でももう会えることはない
悲しんではいけない
彼女は風になったのだ
僕はそう言い聞かせて顔を上げた
立ち去ろうとした時、軽い風が吹いた
その時、"ありがとう"と聞こえた気がした
おしまい