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一方通行「フラグ・・・ねェ」【1】
一方通行「フラグ・・・ねェ」【2】
一方通行「フラグ・・・ねェ」【3】
一方通行「フラグ・・・ねェ」【4】
2スレ目
一方通行「フラグ・・・・・・なのかァ?」 風斬「そうですよ!」【1】
一方通行「フラグ・・・・・・なのかァ?」 風斬「そうですよ!」【2】
一方通行「フラグ・・・・・・なのかァ?」 風斬「そうですよ!」【3】
一方通行「フラグ・・・・・・なのかァ?」 風斬「そうですよ!」【4】
3スレ目
一方通行「フラグ・・・・・・じゃねェだろ」 エイワス「まだそんな事を言っているのか」【1】
――ロンドン・ランベス とある駐車場
垣根「あー、おらどけどけ、邪魔だ邪魔」グイッ
風斬「すごい人だかりですね・・・・・・」
一方通行「何事だよこりゃァ」
ガブリエル「hkotho客jhrtohjrt」
エイワス「シートでも被せておくべきだったか。 まさかここまで集客してしまうとは」
一方通行「あァそォか、これケータリング式に偽装させてるから、
それでコイツら集まってきてンのか」
エイワス「構わん、発進させてしまおう」
一方通行「何人か轢いちまうかもしンねェ」
垣根「いいじゃねえか、蹴散らしちまえよ」ハハ
風斬「駄目ですよ! そんなことしたら」
一方通行「いやホントにするわけねェだろ・・・・・・」
ガブリエル「jgogje出発bkfgmntr」キャッキャッ
エイワス「・・・・・・ふ」
一方通行「あァ?」
エイワス「いや。 さぁ、出発だ」
垣根「あの船、どの辺に停めたっけ」
風斬「この辺の海岸を目指せばすぐ見つかると思いますけど」
一方通行「流されてたら笑えるな」ブロロロロロ
風斬「でも、本当に楽しかったですね」
垣根「当分、シスターは見たくねえけどな」
エイワス「魔術についての知識が豊富になってよかったじゃないか」
ガブリエル「kgoreh私bmhbrth人気者jgerojh」ウフフ
風斬「天使さんも沢山お友達が出来てよかったですね」
ガブリエル「vmrgrj満足gjegjhd」コクコク
一方通行「ここ曲がンのか?」
エイワス「あぁ。 あとはそのまま道に沿って行けば海岸へ辿りつける」
垣根「次はロシアか、長かったな」
風斬「何が長かったんですか?」
垣根「あ? いや・・・・・・、あれ? 何が長かったんだろうな」
一方通行「ワケわかンねェこと言ってンじゃねェよ」
ガブリエル「nkljyroh露西亜hkrtjh」ワクワク
エイワス「だが入国は難しいかもしれないな。 各々、戦闘準備も怠るなよ」
風斬「せ、戦闘って・・・・・・」
垣根「んな大袈裟な事にゃならねえだろ」
一方通行「どォかな、俺はそォなっても構わねェけどよ」
――ロンドン とある海岸
風斬「あー! ありましたよ、私達の船!」
垣根「ハハッ、健気に俺達を待っててくれたってわけだ。
なんか愛着湧いてくんなぁ」
一方通行「カスタムエンジンぶっ放しで行くのか?」
エイワス「まぁ、急ぐに越したことはないだろう。 少し遊びすぎたかな」
垣根「誰のせいだよ」
一方通行「確かに遊びすぎたが、まァ無駄では無かっただろ」
エイワス「ほう・・・・・・?」ニヤニヤ
垣根「んだよ、テメェにしちゃ珍しい物言いだな」
風斬「そんなことありませんよ、私も無駄じゃなかったと思います」
ガブリエル「jhrtjhoo同意jbgrtkjhti」
一方通行「・・・・・・チッ、妙なこと口走っちまった」
エイワス「一方通行、車庫入れを頼むぞ」
垣根「あー、じゃあ車庫開けてく・・・・・・あ?」
風斬「あれ、開いてますね」
一方通行「どォせオマエがやっといたンだろ」
エイワス「いいや、私ではないな」
一方通行「何?」ブロロロロロ
垣根「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、よし、いいぞ一方通行。 止まれ」
一方通行「ン」ガタン
風斬「天使さん、手を」スッ
ガブリエル「hoehj感謝nmmth」ガシッ
垣根「はぁ、また船に揺られる旅が始まるのか。 釣りしよーぜ」ガチャン
一方通行「一人でクジラでも何でも釣ってろカス」バタン
エイワス「・・・・・・さて、どういうつもりなのやら」
一方通行「あァ?」
風斬「それにしても、朝はやっぱり冷えますね」フー
ガブリエル「jvgjerg平気vgreghj」ギュー
風斬「きゃあっ! もうっ、驚かさないでください」ギュー
垣根「そこの天使、百合ってねえで甲板行くぞ」
一方通行「とりあえず寝直そ・・・・・・」クァー
風斬「どれくらいでロシアに到着するんですか?」
エイワス「ニ、三日もあれば着くんじゃないか?」
垣根「・・・・・・なぁ」
一方通行「あン?」
垣根「この船、やたら綺麗じゃねえか?」
風斬「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 言われてみればそんな気もしますね」
一方通行「新品だろ、この船は」
――メガヨット・『アライアンス』号 甲板
一方通行「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
垣根「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
風斬「わぁー・・・・・・、見渡すかぎりピッカピカですね」
ガブリエル「gjrighjih清掃jtuhjj業者bmrmho」ナルホドー
エイワス「そんなものは雇っていないよ、ミーシャ」
一方通行「確かにこりゃおかしいな、明らかに人の手で清掃されてやがる」
垣根「エイワスがやったってんじゃねえなら、誰がやったんだよ?
その辺のイギリス人が善意でやってくれたのか?」
風斬「それは無いと思いますけど・・・・・・」
一方通行「この様子じゃ他の所も全部清掃されてやがンな、一体、」
ガチャ
一方通行「?」クル
レッサー「あ、お疲れ様でーす!」
垣根「は?」
風斬「え、誰・・・・・・?」
ガブリエル「ihtphis微弱jgritjhtb魔力jhgeriogj」
一方通行「・・・・・・こい、つ、は・・・・・・」
エイワス「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」ハァ
レッサー「お待ちしてましたよ皆さん、長旅でお疲れでしょう?
ゆっくりと休んでくださいね」ニヒヒ
垣根「誰だよコイツ」
風斬「さ、さぁ・・・・・・」
ガブリエル「hktrhoj宜敷khrthkh」
レッサー「おぉ、やはり間近で見ると迫力ありますね」
一方通行「て、めェ・・・・・・、ここで何してやがる?」
レッサー「おや、一方通行さん。 お久しぶりですね」
垣根「知り合いか?」
一方通行「知り合いっつうか・・・・・・」
エイワス「・・・・・・。 彼女の名はレッサー、魔術結社予備軍『新たなる光』の構成員だよ」
風斬「『新たなる光』?」
レッサー「自己紹介くらい自分でさせてくださいよ。 初めまして、レッサーです。
今日からお世話になりますので、よろしくお願いしまーす♪」ペコッ
一方通行「寝言は寝て言えよ尻尾野郎」
レッサー「そんな邪険にしないでくださいよ、私はあなた達のためにここへ来たんですから」
垣根「どういう意味だよ」
レッサー「ふふふ、私もですね、あなた達に貢献しようと思いまして。
雑用でも何でもやらせていただこうかと」
一方通行「じゃァ今すぐ海へ飛び込んで来い」
レッサー「そんな冷たくしなくてもいいじゃないですか!」
エイワス「我々に雑用など必要ない。 悪いことは言わないから今すぐ消えたまえ」
レッサー「う、そ、そんなぁ・・・・・・」
垣根「何のつもりか知らねえが、邪魔だよテメェ」
風斬「そ、そこまで言わなくても・・・・・・」
一方通行「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
エイワス「全く・・・・・・、手間を増やすな。 我々はこれでも多忙なんだ」ドバァッ
レッサー「ひっ! つ、翼!? あなたも天使なんですか!?」
エイワス「残念ながら君に対しては全く興味が湧かない。 早々に・・・・・・」
一方通行「待てよ、エイワス」
エイワス「・・・・・・。 何かな、一方通行」
レッサー「うぅ・・・・・・」ビクビク
一方通行「何も殺すことはねェだろォが」
エイワス「殺す? いやいや、私はただお帰り願おうと、」
一方通行「今更どンなヤツが来よォが関係ねェだろ。 もォコイツも連れていくぞ」
レッサー「!」パァァ
垣根「マジで言ってんのか?」
一方通行「いいだろ? 風斬」
風斬「あ、一方通行さんがそういうのでしたら、私は構いませんけど・・・・・・」
エイワス「彼女が我々にとって必要な存在だとは思えないのだが?」
一方通行「それはオマエが決める事じゃねェ、俺が決める事だ」
エイワス「・・・・・・。 それも、リーダー命令かね?」
一方通行「あァ、コイツも連れて行く」
垣根「ま、別にどうでもいいけどよ」
レッサー「あ、ありがとうございます! さすがは私が見込んだ男!」
一方通行「図に乗ンじゃねェぞ、オマエがまだガブリエルを無理やり利用しよォって
考えてンなら、今すぐ粉々にしてやるからな」
レッサー「肝に銘じておきましょう」
エイワス「・・・・・・やれやれ、リーダーの我儘にも困ったものだ」
一方通行「うるせェ」
レッサー(ふふ、上手くいきました。 これで一方通行の中の私の好感度を上げておけば、
必ずイギリスのために働いてくれるよう仕向けられるはず・・・・・・!)
エイワス「そう上手く行くといいがね」
レッサー「えっ」ギクッ
エイワス「まぁ、とりあえず非礼を詫びよう。 先程はすまなかったねレッサー。
私はドラコ=アイワズと言う者だ」
レッサー「よろしくお願いします。(何だか分かりませんが、この方にはあまり関わらない方が
良さそうですね・・・・・・)」
風斬「私は風斬氷華です、よろしくお願いします、レッサーさん」
レッサー「はい。 あ、私のことは気軽にレッサーとお呼びください」
垣根「俺は垣根帝督だ」
レッサー「あなたは魔術師なんですか?」
垣根「そう見えるか? 俺も風斬も魔術師じゃねえ、学園都市の者だ」
レッサー「そうですか、よろしくお願いします。
(気のせいでしょうか、この垣根という方、ほんのわずかですが・・・・・・)」
ガブリエル「gjothjts宜敷nmtykjt」ヌゥ
レッサー「ひゃあっ!!? び、びっくりした・・・・・・、
よろしくお願いしますね」
一方通行「俺は自己紹介の必要ねェよな?」
レッサー「えぇ、把握していますので」
垣根「どこで知り合ったんだよお前ら」
一方通行「オルソラ達と買い物行ったときに会ったンだよ。
・・・・・・それだけだ、あとは何にも無かった」
エイワス「・・・・・・ふ」
風斬「それにしても、どうして私達の船に?」
レッサー「いやー何だか照れちゃうんですが、私、実はですね・・・・・・」
垣根「?」
レッサー「その買い物途中に出会った一方通行さんに、一目惚れしちゃいまして」
一方通行「」
風斬「」
垣根「一目惚れだぁ?」
一方通行「ガブリエル、コイツ海にたたき落としてこい」
ガブリエル「mhyjoytj御意jkupkonmf」ヒョイ
レッサー「なな、何でですかちょっと! 離してください~!」バタバタ
風斬「駄目ですよ天使さん、降ろしてあげてください!」
ガブリエル「yjuorjhreh了解jhoifjhrtohm」ポイ
レッサー「ぎゃふっ」ドスーン
エイワス「一目惚れ、か。 全く、上条当麻の時から君は懲りていないのだな」
レッサー「(な、なんでそこまで知ってるんですかこの人!!?)
やだな~本当ですよ、本当に好きになっちゃったんですから!」
一方通行「やっぱ殺しとくンだったかなコイツ・・・・・・」
レッサー「ふふっ、それで私も皆さんに同行しようかなと思ったわけです。
皆さんっていうか、一方通行さんにですけど」
垣根「お前ナンパでもしたんかよ?」
一方通行「俺がそンな人間に見えンのか」
レッサー(むふふふ・・・・・・・・・・・・・・。 天使はもう手に入りそうにありませんが、そうでなくとも
この一方通行なら十分すぎる戦力です。 イギリスに大きく貢献出来るはず・・・・・・)
エイワス「相変わらずモテモテだな、一方通行」
一方通行「その減らず口を塞がれてェか?」
エイワス「オルソラ=アクィナスがとった行動のように、かね?」ニヤ
一方通行「ッ!! ぐ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」ワナワナ
風斬「・・・・・・?」
レッサー「えいっ」ギュッ
一方通行「お、オイ、腕絡めてくンじゃねェよ!」
風斬「な・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
レッサー「ご安心を! 私、あなたに相応しいような女になってみせますから!」ムギュー
ガブリエル「jopjoptyjo強敵bndbgernb」グルルル
エイワス「落ち着きたまえミーシャ、いつものことだろう」
一方通行「それどォいう意味だよ!」
風斬「むぅ~・・・・・・」プクー
垣根「ハハッ、大変だなぁ第一位様はよ」
一方通行「他人事のように言いやがって・・・・・・」
垣根「他人事だろうが」
エイワス「それにしても、君はフラグを乱立させるだけでちっとも攻略しないのだな」
一方通行「あァ?」
エイワス「今現在までに、君がどれだけ攻略ルートを増やしていったのか、
君は自覚しているのか?」
垣根「攻略ルート?」
一方通行「またくだらねェ事言いやがって・・・・・・」
エイワス「そしてたった今、レッサーという攻略ルートが新たに生まれた」
レッサー「もしかして一方通行さん、女たらしなんですか?」
一方通行「よっぽど殺されてェみたいだなァオマエ」
風斬「その攻略ルート、今あるもの全て教えていただきたいのですが」
一方通行「目が笑ってねェぞ風斬」
エイワス「そうだな。 ミーシャ=クロイツェフ、風斬氷華、私、垣根帝督、
番外個体(ミサカワースト)、キャーリサ、オルソラ=アクィナス、アンジェレネ、
アニェーゼ=サンクティス、カテリナ、アガター、その他モブシスター、そしてレッサー・・・・・・。
こんなところではないかな」
一方通行「なンか色々おかしいの混ざってるぞ。 ていうか一人として
認めねェよそンなの!!」
垣根「何か俺の名前入ってなかったか?」
風斬「な、なんて数・・・・・・」
ガブリエル「hkrthkosda苦難jkothjot」
一方通行「オイ風斬! こンなヤツの戯言に耳を貸すンじゃねェぞ」
風斬「え、は、はい・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」ジトー
一方通行「ホントにわかってンのかよ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
エイワス「いやーここまで増えると私も処理が追いつかなくなってしまうな、ふふふ」
一方通行「ていうかオマエがその攻略ルートとやらに入ってンのがおかしいンだよ」
エイワス「何を言う、あれだけの条件を満たしているんだ、フラグくらい立つさ」
一方通行「何もしてねェだろォが俺は・・・・・・」
レッサー「・・・・・・キャーリサって、第二王女の? あんな大物にまでフラグ立ててるんですか?」
一方通行「フラグ・・・・・・じゃねェだろ」
エイワス「まだそんな事を言っているのか」
一方通行「フラグフラグ言いたいだけなンじゃねェだろォなオマエ」
エイワス「全く、上条当麻や浜面仕上ですら永遠のパートナーを見つけ、幸福に満ちた人生を
送っているというのに、君がそんな心構えでどうするんだ」
一方通行「知った事か!!」
垣根「そういう経験とか無いだろうしな、こいつ」
一方通行「放っとけ」
エイワス「さて、君はどこから攻略していくつもりかな?」
一方通行「しねェよクソボケ!! 大体何で人外まで混じってやがンだ!?
人ならともかく化物の攻略なンざあり得ねェだろ!」
エイワス「問題発言だな一方通行、人外などとは心を通わせられない、と?」
一方通行「ったり前だ・・・・・・、あ」
風斬「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
一方通行「あァいや・・・・・・、別にそォいうわけじゃねェっつうか・・・・・・」
風斬「い、いえ、私は気にしてませんから・・・・・・」シュン
一方通行「いや、違うンだよ風斬」
エイワス「で、人外がなんだって? 一方通行」
一方通行「・・・・・・、まァ、相手が誰だろォが問題はねェンだけどよ・・・・・・」
垣根「相変わらず風斬だけには優しいなお前は」
風斬「ほ、本当ですか?」
一方通行「仮の話だ、オマエだって俺なンかとフラグ立ってるなンて言われて
イヤじゃねェのかよ」
風斬「わ、私は・・・・・・」
一方通行「まァ、そォいう事だ」
垣根「死にやがれこの鈍感野郎が」
一方通行「何か言ったか」
レッサー「まぁまぁ。 あなた達の事情はよくわかりませんが、ここは一つ、
最も手頃で身近な私から攻略していくということで」
一方通行「いつオマエが身近な存在になったンだ。 そして自分のことを
手頃だなンて言うンじゃねェよ」
レッサー「え・・・・・・、はぁ」キョトン
エイワス「ほら、それだよ」
一方通行「何がだ」
風斬「と、とりあえず出発しませんか? いつまでもここにいるのもなんですし」
垣根「本当だぜ、くだらねえ」
ガブリエル「kgthkrotjh出発khtpyoijy」
レッサー「あ、じゃあ私、錨を上げてきますね!」
一方通行「オマエ一人で出来るわけねェだろォが、俺も行く」
エイワス「では私はエンジンを入れてくる。 各自、ラウンジで待機していてくれ」
【次回予告】
『星の欠片は今、誰かが迷彩術式みてェなのを施してるって話だったよなァ?
その術式を使ってるヤツが、ガブリエル本人である可能性はあるか?』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』のリーダー・一方通行(アクセラレータ)
『――――、』
―――――――――――『天使同盟』の構成員・ミーシャ=クロイツェフ
『確か・・・・・・神の右席の支配力が強まったロシア成教の魔術師達が第三次世界大戦直前に
サーシャ=クロイツェフの身柄を確保しようと動いたはずだ』
―――――――――――『天使同盟』の構成員・エイワス
『何かイギリスの時とは違って、面倒くせえ事になりそうだな』
―――――――――――『天使同盟』の構成員・垣根帝督
『やっぱり天使さんも、元の場所へ帰りたいですもんね?』
―――――――――――『天使同盟』の構成員・風斬氷華
『恐らくその元『殲滅白書』所属の魔術師達は、"エリザリーナ独立国同盟"にいるはずです』
―――――――――――魔術結社予備軍『新たなる光』の構成員・レッサー
――――――――――――――――――――――
レッサー「なるほど、それで『天使同盟(アライアンス)』というわけですか」
一方通行「何回黒歴史を晒せばいいンだよ俺は」
風斬「ちなみにレッサーはベツレヘムの星の欠片について何か知りませんか?」
レッサー「私も第三次世界大戦時はロシアの真っ只中にいまして、実際に
ベツレヘムの星も間近で見ています」
一方通行「オマエもあン時ロシアにいたのか」
レッサー「私、一度あなたをお見かけしてるんですけどね」
一方通行「どこで?」
レッサー「あなたが黒い翼を生やして上条当麻と戦ってた時です」
風斬「そ、そんなことが・・・・・・?」
一方通行「・・・・・・チッ、あの時か」
垣根「こういう話になると俺は置いてけぼりなんだよな」
レッサー「あなたは戦時中、学園都市にいたんですか?」
垣根「あぁ、脳みそだけな」
レッサー「?」
一方通行「それで、星の欠片について何か知ってるのか」
レッサー「残念ながら詳しいことまでは。 しかし私は星の内部でサーシャ=クロイツェフに会ってます」
一方通行「何か手掛かりになるよォな事を言ってたか?」
レッサー「確か・・・・・・、右方のフィアンマが『神の力(ガブリエル)』を召喚する際、
サーシャ=クロイツェフの肉体を利用し、天空の環境をフィアンマの望むように
変化させた、とか何とか・・・・・・」
風斬「やっぱりサーシャさんも、天使さんの召喚と深い関わりを持ってたみたいですね」
垣根「だが今のが星の欠片を見つける手掛かりになるのかよ?」
一方通行「フィアンマはサーシャ=クロイツェフを素体として、ガブリエルを召喚した・・・・・・」
エイワス「『御使堕し(エンゼルフォール)』を元に組み込んだ術式でな」
一方通行「ならサーシャ=クロイツェフとガブリエルが"ライフリンク"で繋がっている可能性は?」
レッサー「ライフリンク?」
垣根「サーシャってヤツが今も生きているから、ミーシャがこの世界に居られるって事か?」
一方通行「星の欠片関連の情報を全く無視した、
もォひとつの可能性についての憶測に過ぎねェがな。 どォなンだよ?」
エイワス「・・・・・・さぁ。 だが可能性としてはあり得る話だ」
一方通行「・・・・・・」
エイワス「ミーシャ=クロイツェフ、大天使の目的はあくまで元来の位階へ戻ることだ。
彼女に直接聞けば、星の欠片などあっという間に見つかるのだろうがね」
垣根「じゃあ教えろよミーシャ。 言葉じゃなくても紙にでも書いてくれればいいからよ」
ミーシャ「――――――――――、」
風斬「文字はさすがに書けないんじゃ・・・・・・」
レッサー「ていうか普通に天使と接してるんですね、あなた達・・・・・・」
一方通行「・・・・・・なァ、エイワス」
エイワス「どうした?」
一方通行「星の欠片は今、誰かが迷彩術式みてェなのを施してるって話だったよなァ?」
レッサー「何ですかそれ」
エイワス「恐らく、としか言えないがな。 その可能性が高いというだけだ。
そうでなければとっくに私かアレイスターが発見しているよ」
一方通行「その術式を使ってるヤツが、ガブリエル本人である可能性はあるか?」
ガブリエル「――――、」
垣根「何だと?」
風斬「天使さんが・・・・・・?」
レッサー「え? え?」キョロキョロ
エイワス「・・・・・・。 それこそ、本人に聞いてみるのが一番なのではないのかね?」
一方通行「どォなンだよ」
ガブリエル「――――――――――」フルフル
一方通行「本当に違うのか?」
ガブリエル「――――――――――」
垣根「待てよ、何で帰りたがってる本人が玄関を隠すような真似すんだ?」
風斬「そ、そうですよ。 それじゃ本末転倒っていうか・・・・・・」
エイワス「風斬氷華。 君はミーシャと相対したとき、彼女の言葉を部分的に解読したな?」
風斬「は、はい。 あの時はまだ天使さんの言葉がほんの少し理解できていたので」
垣根「マジか? その時こいつ、なんて言ってたんだよ?」
風斬「多分ですけど、――――むぐっ!?」
ガブリエル「――――――――――」ギュー
一方通行「オイ、何で風斬に抱きつくンだ」
レッサー「て、天使のハグ・・・・・・」
エイワス「ふふ」
ガブリエル「――――――――――」
風斬「て、天使さん。 もう分かりましたから離してください!」ジタバタ
一方通行「・・・・・・まァいい。 とにかくロシアへ行きゃァなンか分かるだろ」
レッサー「それにしても、またロシアですか」
垣根「あんな広い土地からどうやって『殲滅白書』の連中を見つけ出すか、だな」
レッサー「『殲滅白書』・・・・・・、サーシャ=クロイツェフが所属しているロシア成教の内部組織ですね」
エイワス「元、だがな」
一方通行「どォいう事だ?」
エイワス「確か・・・・・・神の右席の支配力が強まったロシア成教の魔術師達が第三次世界大戦直前に
サーシャ=クロイツェフの身柄を確保しようと動いたはずだ」
風斬「そ、それで・・・・・・?」
エイワス「その時に同じく『殲滅白書』に所属していたシスター、ワシリーサがロシア成教を離脱。
サーシャ=クロイツェフの逃亡に助力している。
恐らくその時にサーシャもロシア成教の所属から外れていると思われる」
垣根「おい、それじゃサーシャは今ロシアにゃいねえんじゃねえのか」
レッサー「・・・・・・、ふふん。 それは心配いらないでしょう」
垣根「あ?」
レッサー「恐らくその元『殲滅白書』所属の魔術師達は、"エリザリーナ独立国同盟"にいるはずです」
一方通行「・・・・・・、またあそこか」
エイワス「ふふ、そういう事だ。 あの国は大戦時、恐ろしく規模のでかい
争乱の中心になっていたからな。 今回も、例外ではないさ」
垣根「国の中に国があるのかよ?」
風斬「ええと、どう言えばいいんでしょうか」
レッサー「エリザリーナ独立国同盟とは、ロシア政府のやり方に納得できなくなった者が
集まって独立した小国の集まりで形成された国です」
エイワス「あの独立国同盟は『殲滅白書』の本拠地から最も近い国だ。
まだ戦争のほとぼりが冷めてない今も、彼女たちはそこにいる可能性が高い」
垣根「あぁ、なんか聞いたことあるような気がするな」
風斬「もしかして、今もロシア成教と戦ってたりするんでしょうか・・・・・・?」
一方通行「フィアンマの野望が砕けた今、連中がサーシャを狙う必要は無くなってンだろ。
もォ『殲滅白書』に戻ってるンんじゃねェのか?
まァ魔術結社には詳しくねェから、そォ簡単に戻れるのかどォかは知らねェけどよ」
垣根「何かイギリスの時とは違って、面倒くせえ事になりそうだな」
エイワス「そうかね? 私はわくわくしてきているよ」
一方通行「どの辺がそンなに面白そォなンだよ」
エイワス「恐らくだが・・・・・・、我々の星の欠片を巡る旅は、今回で終わりを迎える」
風斬「!」
垣根「ロシアで星の欠片が見つかる確証でもあんのか?」
エイワス「そうではないが・・・・・・、なんとなくそんな気がしてね」
一方通行「オマエのなンとなくはほぼ決定事項だろォが」
レッサー「あらら、何だか早くも解決な流れなんですか?」
ガブリエル「――――――――――」
風斬「よ、良かったですね天使さん。 星の欠片が見つかりますよ!」
ガブリエル「――――――――――」コクン
一方通行「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
垣根「思ったんだけどよ」
風斬「何ですか?」
垣根「ベツレヘムの星の欠片を見つけて、それでどうすんだ?」
レッサー「そんなの、事情をよく知らない私でも分かりますよ。
ミーシャ=クロイツェフを元の位階に戻さなきゃならないじゃないですか」
垣根「あー、やっぱそうなのか。 位階ってのがよくわかんねえんだけど」
一方通行「まァ・・・・・・そォいう事だよなァ」
ガブリエル「――――――――――」
風斬「やっぱり天使さんも、元の場所へ帰りたいですもんね?」
ガブリエル「――――――――――、」
垣根「何だよ、反応悪いな」
一方通行「・・・・・・オマエ、もしかして帰りたくねェのか?」
ガブリエル「――――――――――」
エイワス「どうやら彼女には、帰る前にまだやり残している事があるのだそうだよ」
風斬「やり残している事・・・・・・?」
一方通行「なンだよそりゃ」
エイワス「そこまでは私にも・・・・・・」
垣根「まさか、クソ生意気な人類共に一発ドカンと天罰でも下そうって考えてんのか?」ケラケラ
風斬「そ、そんな事するわけないじゃないですか!」
一方通行「出来るって事実が怖ェンだけどな」
レッサー「それで、やり残している事というのは?」
一方通行「言ってみろ、俺達に出来ることならなンでもやってやる」
垣根「ハハッ、カッコイーなぁ一方通行ちゃん、惚れちゃいそうだぜえ」
一方通行「そのセリフ、何故だかクッソ気に入らねェンだけど」
風斬「今の私達なら多分、天使さんのやりたい事をやらせてあげられますよ?」
ガブリエル「――――――――――」
ガブリエル「hjorthr無理vnefrighi」
一方通行「なンつった?」
エイワス「我々には叶えられない事、だそうだ」
垣根「あぁ? 俺達を見くびってんのかこのクソ天使」
一方通行「じゃァ何がしたいンだよ大天使様は」
ガブリエル「――――――――――」
ガブリエル「korthor秘密pkukasdg」キュピン
垣根「今ウインクしたか?」
レッサー「私にもそう見えました・・・・・・」
エイワス「どうやら『ヒ・ミ・ツ』みたいなニュアンスの事を言っているようだな」
一方通行「ンだよ秘密って・・・・・・」
ガブリエル「nmfgbmth謝々gjigge私rthir以外vedgrg不可能jghiruh」
レッサー「お、おお、何かめっちゃ喋ってますね。 ノイズのせいで
何一つ理解できませんが」
エイワス「彼女以外には出来ないことらしい」
垣根「何だそりゃ。 天使にしか出来ないことって何だよ」
風斬「もしかして他のお友達を呼ぼうとしてるんですかね?」
一方通行「他ァ?」
エイワス「『神の力(ガブリエル)』以外の天使というと代表されるのは・・・・・・、
『神の如き者(ミカエル)』、『神の薬(ラファエル)』、『神の火(ウリエル)』
堕天使から『光を掲げる者(ルシフェル)』、学園都市から『ヒューズ=カザキリ』。
この辺りだろうか?」
垣根「おいおい、そんなもんが一気に俺達のとこに来たらとんでもねえ事になるぞ」
一方通行「そォなったらもォ世界は終わりだな。 いろンな意味で」
風斬「というか私は別にそこへ当てはめなくていいじゃないですか・・・・・・」
レッサー「え、あなたも天使なんですか?」
風斬「あ、まぁその・・・・・・人工天使、という感じです」
一方通行「毎回同じ説明するのも面倒だよな」
風斬「あはは・・・・・・、私は気にしていませんから」
レッサー「ほぇ~、驚きです! 人が天使を作っちゃうなんて!」
風斬「あの、でも一応人として接してくれれば嬉しいな」
レッサー「あ、いいんですか? じゃあそうします」
一方通行「ま、少なくともそンな事がしてェわけじゃねェンだろ?」
ガブリエル「jkotjoha当然fhsduiofherg」コクン
垣根「おいドラコ、お前ミーシャの言葉通訳出来るんだから聞けよ」
エイワス「・・・・・・それが私にも教えられない内容らしくてね。
一体どのような事なのか、気になって夜も眠れないよ」
一方通行「寝る必要が無いだろオマエは」
レッサー「あの、ドラコさんはどういった存在なんですかね?
さっき翼を生やしていましたが」
エイワス「・・・・・・。 "ドラゴン"」
レッサー「ドラゴン・・・・・・? 伝説の竜ですか?」
エイワス「ま、その認識で構わないよ。 私のことを深く知ろうとしない方が良い」
レッサー「は、はぁ・・・・・・」ゴクリ
風斬「でもそれならもう話は終わりじゃないですか」
垣根「あ?」
風斬「私達でベツレヘムの星の欠片を見つけて、天使さんがやりたい事をやるのを見届けた後に
元の位階へ戻ればいいんですから」
一方通行「・・・・・・、そォいう事だな」
ガブリエル「――――――――――」
エイワス「・・・・・・そう、上手くいくといいがな」
垣根「お前にしちゃ珍しい発言だな。 自信がねえのかよ?」
エイワス「うん」
一方通行「オマエに自信があろォがなかろォが俺達のやることに変わりはねェよ」
風斬「そうですね。 今はとりあえず、ロシアへ向かうとしましょう」
レッサー「エリザリーナ独立国同盟へ行くんですよね?」
一方通行「そォだな、そこで『殲滅白書』の連中を探せばいい」
レッサー「それなら私がご案内しましょう! 一応エリザリーナさんにも顔はきくはずなんで」
一方通行「エリザリーナっつったら、あの俺より痩せ細ってる女だろ?」
垣根「お前より痩せてるだと? 骨格模型でもいるのかその国は」
一方通行「うるせェな」
レッサー「その人が独立国同盟の実質的なリーダーです。 名前も冠しているでしょ?」
風斬「じゃあその人に頼めば協力してくれるかもしれませんね」
レッサー「そのとおり。 どうです? 私がいて良かったでしょう!」フフン
一方通行「俺も会ったことあるぞ」
レッサー「えっ」
垣根「じゃあレッサーはいらねえな。 お前はロシアに着いたらお別れって事で」
レッサー「じょ、ジョーダンじゃないです! 私は一生、一方通行さんに着いていきますからね!」
一方通行「それこそ冗談じゃねェっつうの」
エイワス「だが、今のロシア自体の状況も気になるところだな」
風斬「どういう事ですか?」
一方通行「大戦からまだそンな時間経ってねェから、独立国同盟周辺も厳戒態勢かもしれねェって事か?
ふン。 だけどなァ・・・・・・、」
レッサー「ご安心ください! 隠密行動は得意ですので、私が素晴らしい入国ルートを確保し、
事が起きないよう慎重な入国が出来るよう尽力してみせましょう!!」
垣根「隠密? 慎重?」
レッサー「だって、そういうことでしょう?」
一方通行「ハッ、オマエやっぱ『天使同盟』ってモンが分かってねェな」
風斬「さっき知り合ったばかりじゃないですか、無茶言わないであげてください」
レッサー「な、何ですかその蔑むような目は」
一方通行「おい。 ロシアに着いたら・・・・・・もォ大丈夫だろ?」
エイワス「ふふ、怖いな君たちは」
レッサー「?」
垣根「厳戒態勢だろうが何だろうが知ったことかよ」
風斬「え、まさか・・・・・・」
一方通行「すンなり入国させてくれるってンなら俺達も素直に通る。 だがな、」
エイワス「我々は何としてでも星の欠片の手掛かりを掴みたい状況だ」
レッサー「もしかして・・・・・・、やっちゃいます?」
一方通行「当然、強行突破の一択だろォが」ニヤリ
風斬「ええー・・・・・・、あれだけ事を慎重に運びたいって言ってたのに」
一方通行「そろそろ一発暴れてみたくなっちまった」
垣根「その方が手っ取り早いしな」
ガブリエル「joupjfgo特攻sgabdlbhmlth」
レッサー「・・・・・・私、もしかしてとんでもない連中と関わってますか?」
風斬「あはは・・・・・・」ハァ
――メガヨット『アライアンス』号 レジャー施設内
レッサー「せっかくなんで、船の中は大体掃除しておきましたよ!」
風斬「こんな誰も使ってないようなレジャー施設までピカピカになってる・・・・・・」
一方通行「まずこンなところがあった事すら知らなかったな」
垣根「ていうか何で掃除するんだよ?」
レッサー「快く皆さんに受け入れてもらえるよう、頑張ったんじゃないですか!
清掃は心も綺麗にしてくれます!」
エイワス「素晴らしい忠誠心だ。 感動したなー」
レッサー「そんな棒読みで言われてもちっとも説得力ありません」
ガブリエル「gjigjeirg感謝csafehitnh」ムギュッ
レッサー「うぶっ!? れ、礼には及びませんから、英国にために・・・・・・ぐ、ぐるじぃっ」バタバタ
一方通行「そのまま鯖折りしちまえ」
垣根「ちょうどいいじゃん。 ドラコ、ロシア到着までまだ時間あんだろ?」
エイワス「最高船速で進めているが、少なくともあと一日近くは掛かるかもしれない。
状況にもよるだろうけどな」
垣根「ちょいとここで遊んでいかねえ? せっかくの豪華クルーザーなんだしよ」
一方通行「また面倒くせェ事言い出したぞ、ていとくンが。
なンでこンなくだらねェ施設ではしゃがなきゃなンねェんだよ」
風斬「あ、でも私も遊んでみたいなー、なんて・・・・・・」
一方通行「しょォがねェな」
垣根「しょうがねえのはお前の頭だクソボケ」
【次回予告】
『何を読んでるんですか?』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』の構成員・風斬氷華
『やめておきたまえ。 例えAIM拡散力場の集合体である君でも、
これには耐えられないかもしれない』
―――――――――――『天使同盟』の構成員・エイワス
『あぁ、エロ本か』
―――――――――――『天使同盟』の構成員・垣根帝督
『魔術師にしか読めないような本なのか』
―――――――――――『天使同盟』のリーダー・一方通行
『そ、それを近づけるなぁ~~~っ!!!』
―――――――――――魔術結社予備軍『新たなる光』の構成員・レッサー
そこからは各自、自由行動となった。
一方通行、ミーシャ=クロイツェフ、風斬氷華、垣根帝督、レッサーの五人は
船に設けられたレジャー施設で暇を潰すことにした。
そこにはカラオケ、ダーツ、ビリヤード、ボウリング、小規模のゲームセンター、ショットバー
映画館、ラスベガスのカジノを収縮したかのような賭博場、etc。何でもござれの施設となっている。
「どォ考えても船に収まりきるよォな規模じゃねェだろこれ」
一方通行は呆れたようにため息をつく。これだけの施設があると、船に最低限必要な設備が
整えられないのではないかと思ったが、どうせまたエイワスが上手い具合に調節しているのだろう。
そしてそんなエイワスはカジノコーナーに隣接するように設けられているショットバーで
カクテルを片手に読書をしていた。
何でも読みたい書物が溜まっていたらしく、今のうちに消費しておきたいという理由で
皆と遊ぶ事を断っていた。
「オマエが作ったのか? その酒」
「大したものだろう? 人間、やれば何でも出来るものだな。
って、『オマエは人間じゃねェだろ』、だったか? ふふ」
どうやらエイワスは偉く上機嫌らしい、一方通行に対する返事がいつもと少し違う。
バーのカウンターにはエイワスがいつの間にか集めたのだろう書物が丁寧に重ねられていた。
「これらを集めるのは大変だったのだよ。 稀少価値の高い物だからね」
そう言って表紙の方を向けて見せびらかしてくるエイワス。
何やらタイトルのような文字が書かれているが、一方通行には読み取れなかった。
「このタイトルの文字は私が書き加えたものだから、"見ても問題はないよ"」
「どォいう意味だよ?」
すると他のメンバーも興味を持ったのか、バーの方へと近づいてきた。
「何を読んでるんですか?」
風斬が興味本位で中身を覗こうとしたが、エイワスがそれを拒否する。
「やめておきたまえ。 例えAIM拡散力場の集合体である君でも、
これには耐えられないかもしれない」
「あぁ、エロ本か」
垣根が何か言い出した。
が、エイワスの言葉を聞いて一方通行も同じことを思ったのは内緒である。
「ほうほう、ドラコさんはそういう如何わしい本を皆の前で堂々と読むタイプなのですね」
ふむふむ、と何を納得したのか、レッサーが首を縦に振る。
だが、そもそもエイワスがそんな本を読むようなタイプには見えない。
「ふふ、からかわないでくれたまえ。 成人雑誌などに興味はないよ。
雑誌の写真で女性の裸を見るくらいなら、私は実際に目に焼きつける」
それを聞いて風斬とレッサーとミーシャが一歩後ずさった。
一方通行はミーシャにツッコミを入れようと思ったが、今更なのでやめておく。
「マスター、私にも一杯カクテルをくださいよ」
「いいだろう。 やはりこういう事は他人に腕を振るうのが一番だからな」
「まさかそれも炊飯器で作ったンじゃねェだろォな」
レッサーがカクテルを要求し、エイワスはカウンターの裏へと回った。
さすがにカクテルまで炊飯器で作るという事はないようだ。というかそれは逆に手間が掛かるだろう。
エイワスはカクテルを作成するためのシェイカーの部品をを手に取り、手慣れた様子で組み立てていく。
いつの間に着替えたのか、エイワスの服装がよくバーテンダーが着るような黒いベストに白のシャツ、
蝶ネクタイ、ハーフエプロンのフル装備となっていた。
「女はネクタイじゃなくて蝶ネクタイだよな大体」
垣根が割とどうでもいい知識を披露する。
「私は今は女性だからな」
「い、今はって・・・・・・?」
耳を貸すな、と一方通行はレッサーに忠告する。
やがてシェイカーを組み立て終わり、レッサーにカクテルの種類の要望を聞くと
彼女は「お任せで」と、少し生意気なオーダーした。
素早い手つきで酒と材料をシェイカーに入れ、シャカシャカと振り始めた。
眩しいほどに輝く長髪と、整いすぎている顔立ち、そして馬鹿げているくらいにスタイル抜群の肢体で
カクテルを作る様に、一同はしばし見惚れてしまっていた。
「何だか・・・・・・格好いいですね」
「・・・・・・認めねェぞ、俺は」
こいつはその辺でバーでも開けばいいとまで思った一方通行だが、決して口にはしない。
「待たせたなレッサー。 これは私のオリジナルだ」
エイワスはマドラーをカラン、とグラスに添えレッサーの前に置く。
それは宝石のように輝き、透き通った金のカクテルだった。
「ほほー、すんごく綺麗ですねこれ。 何を使ってるんですか?」
「企業秘密だ」
「どこの企業だよ」
何で材料を言わないのか不思議に思ったが、怖くてとても聞けなかった。
では、とレッサーがゆっくりカクテルを口にする。
「! 美味しいです! 素人なので詳しい評価はできませんが、
甘味と苦味がいい具合にマッチングしてますね!」
彼女の表情を窺う限りでは、どうやら本当に美味しいらしい。
口にした瞬間に爆発したり、背中から翼が生えたりなどという仕掛けが施されているのではないかと
怪しんでいた一方通行だが、そんな事が起きる様子も無かった。
「好評なようで嬉しいよ。 良ければ君たちもどうかね?」
「いや、俺はいい」
「わ、私も遠慮しておきます」
「昨日の今日だしな、俺もいいわ」
昨晩、『必要悪の教会(ネセサリウス)』の女子寮で散々飲んだくれた三人はエイワスの申し出を断る。
特に風斬の場合、"あの酒"をブレンドされたりでもしたら終わりだ(一方通行が)。
「hitohjorh私b,rgnyokjoy要求jbhjhn」
カウンターを手でバシバシと叩きながら、ノイズの混じった声で何かを訴えるミーシャ。
ファミレスで注文する際に押すスイッチのクセが未だに残っているようだ。
エイワスは了解した、と言って再びシェイカーを取り出した。
どうやらミーシャもカクテルを要求したらしい。
すぐに彼女にも金のカクテルが手渡され、それをクイッと煽る。
「kgetohjr美味cnsvghrg」
「光栄だな」
ミーシャのカクテルを作り終えたエイワスは、満足気な表情を浮かべながらカウンター席へと戻った。
読んでいた書物を手に取り、自作のカクテルを僅かずつ口に含みながら続きを読んでいく。
「あれ? 本じゃないものも積んでありますけど」
ふと、風斬がそんなことを言い出した。
エイワスがカウンターに積んでいる書物を見てみると、確かに妙な物も置いてある。
巻物のような物だったり、石版のような形をしたものもあり、宝石の欠片のような物まである。
「なんだよこれ? これに何か書いてあんのか?」
「読むなよ」
手に取ろうとした垣根の動きをビシッと止めるエイワス。
その様子を見て一方通行と風斬はますます意味がわからなくなる。
「何で俺達は読ンじゃいけねェンだよ? これは一体なンだ?」
「原典」
瞬間、エイワスの隣にいたレッサーが口から思いっきりカクテルを吹き出した。
「げ、げげげ、げげ・・・・・・!!?」
エイワスの言葉に動揺を隠せないでいるレッサー。
言葉が上手く出て来ず、某妖怪アニメのオープニングを歌い出したかのような声が出てしまう。
「原典・・・・・・って、何だそりゃ?」
一方通行達が思っている事を垣根が代弁した。
"原点"かと思ったが、どうやら書きは"原典"らしい。
「いわゆる魔道書、というやつだよ。 魔導書にはそれの写本、偽書があるが、
私が集めた物は全て原典(オリジン)だ」
魔道書。
よくファンタジー物の漫画やゲームなどにも出てくるワードだ。
魔術に関してはまだ詳しくない一方通行や垣根でも、それは分かる。
「魔術に関する知識がたくさん書きこまれている本なんですか?」
「そうだ。 原典自身の力を広める者に協力するという特徴を持った、
言うなれば生きている書物、だな」
「そ、それを近づけるなぁ~~~っ!!!」
一体どうしたというのか、レッサーは慌てて席から立ち上がると
すぐ近くにあるビデオポーカーマシンの裏に隠れてしまった。
「どォしたンだよオマエ」
「げ、原典っていうのはですねぇ・・・・・・!!」
ひーひー言いながら声を出すレッサー。マシンの陰からこっそりとこちらを覗いている。
そして改めて、原典についての説明を始めた。
「原典っていうのはですね、その内容が異世界の法則で書かれているものなんです!
普通の人間なんかがその内容に目を通すと、それだけで廃人になってしまうようなシロモノなんですよ!」
「は、廃人・・・・・・!?」
レッサーの言葉に顔を青ざめる風斬。思わず積まれている原典の山から身を離す。
「魔術師にしか読めないような本なのか」
「魔術師ったってちょっと鍛えた魔術師とかでもアウトです!
私もあと少し視線を横に動かしてたらこの世からアディオスしてましたよ!」
一方通行の疑問に大声で答えるレッサー。彼女とて相当な実力を持つ魔術師であることを
知っている一方通行だが、そんな彼女でも廃人になってしまう恐れがあるという。
「確かに内容を読むのはまずいが、ほんのわずか、チラッと見るくらいなら
死にたくなるような頭痛と胃袋が飛び出しそうになる吐き気を催すくらいで、
別に何も問題はないぞ?」
「大問題じゃないですかそれ!!!」
レッサーはぎゃーぎゃーと喚きながらエイワスに激昂する。
「原典はそのページを自ら魔方陣へと変えて、半永久的に活動することが出来るのだが、
出来損ないの魔道書だとすぐに無へと帰してしまう。 そしてもちろん、原典を
執筆した魔術師も原典のいわゆる『毒』にアテられ、執筆中に死んでしまうという事も
多々あるのだよ」
逆にそこまで言われると少し読んでみたいという知的好奇心が湧いてくるが、
あのエイワスが抑止したほどだ。恐らくレッサーが言った事は全て事実なのだろう。
「一方通行、海原光貴という人間を知っているだろう?」
「あのいけ好かねェクソ野郎がどォした」
「彼も実は魔術師でね、暗部抗争の時にショチトルというアステカの魔術師から
『暦石』という原典を引き継いでいる」
「・・・・・・あの野郎が魔術師だってのは分かってたが、ふン。 そォいうことか、
あン時の『ブロック』が呼んだ外からの武装兵の謎の自殺は、その『暦石』とかいう原典の仕業だな」
「察しが良いな。 その通りだ」
二人の会話に全く着いていけず、首を傾げる風斬。
垣根もブロックや暗部抗争については知っているが、魔術師が混じっていたのは知らなかったようだ。
「ま、魔術書を読んでその中身を伝える魔術師の事を、魔導師と呼びます」
「魔導師? なんかちょっとグレードアップした感じだな」
「これから会う事になるであろうエリザリーナも、確か魔導師だったような記憶があるな」
中身を見ると凄腕の魔術師でもダウンしてしまうという程の物なのに、
その中身の知識を教えていく魔術師までいるのか、と一方通行は適当に感心する。
ということはあの病的に痩せ細ったエリザリーナという女は、相当な魔術師なのではないだろうか。
「ンじゃ海原って、もしかして魔術師の中じゃかなりレベル高いのか?」
「中の下、といったところだな。 彼が原典を引き継げたのは、ショチトルを救うという
強い信念があったからこその所業なのかもしれない。 あぁ、ちなみに海原光貴の中の
魔術師、つまり彼の名はエツァリという。 今度会ったらそう呼んでみたまえ、
きっと驚愕の表情を見せてくれるだろうな」
「エツァリ? あァ、そォいやそンな事を言ってた気がするな。
そのショチトルとかいう女がいる病院で。 ちょっと思い出せてきた」
くつくつと笑うエイワス。実際、学園都市でまた出会ったら呼んでみようか、彼の名を。
「で、そんな地雷みてえなヤバい本をこんだけ集めて、しかもそれを
カクテル片手に優雅に読み漁ってるお前は一体何なんだよ」
誰もが思う疑問をまたも代弁する垣根。
と言っても既に『まぁ、どうせエイワスだし』みたいな雰囲気になっているのはどうなのだろうか。
「私は平気だよ。 こうしてのんびりと酒を嗜みながら読む原典というのも
またオツというものじゃないか」
「く、狂ってやがる・・・・・・」
いつもと違う口調で驚愕するレッサー。目を見開き、ブルブルと体を震わせている。
「実は私も、原典を執筆したことがあってね」
「えっ、あなたがですか・・・・・・?」
とんでもない事実を、なんてこともないようにカミングアウトするエイワス。
これを魔術サイドの人間が見聞きしたら大変なことになるのではないだろうか?
そういえばレッサーはもろに魔術サイドの人間だが。
「ちょっと待て、もしかして・・・・・・『法の書』、とかいうやつか?」
「おや、知っていたのかね?」
「あれマジだったのかよ!?」
オルソラから聞いた話が真実だと知り、さすがの一方通行も驚きを隠せなかった。
魔術師であるレッサーはもういつ泡を吹いて倒れてもおかしくなさそうな様子だ。
「あぁ、いや、違うな。 正確には私が執筆したのではない。
私が"アレイスター・クロウリー"という魔術師に『法の書』の内容を伝え、
アレイスターがそれを基に『法の書』を執筆した、が正しいな」
その言葉に、ミーシャを除く四人は今度こそズッコケた。
「あ、アレイスター・クロウリー・・・・・・、守護天使エイワス・・・・・・」
頭を抱えながらブツブツと何かを考えているレッサー。
「いやはや、何だか自慢しているみたいで申し訳ないな」
「エイワス・・・・・・。 ドラコ=アイワズ・・・・・・。 さっき聞いた『ドラゴン』というのが
ドラコだとして、アイワズ・・・・・・、エイワ、あ、」
「気付いたかね。 では改めて、私はエイワスという者だ、以後宜しく」
うわああああああああああああああッッ!!!、と絶叫あげながらカジノコーナーを
狂ったように爆走するレッサー。一般人が原典を読んだらあぁなってしまうのだろうか。
風斬がその様子を見かねて、心配そうな顔でレッサーを追いかける。
こうして魔術結社予備軍『新たなる光』に所属するレッサーという名の魔術師は、
この世に存在する魔術師の中で三番目に『法の書』の原作者に出会った魔術師となった。
他にドラコ=エイワス(しかも本物の)だと知る魔術師は、アレイスターとローラ=スチュワートしかいない。
ステイル=マグヌスにもエイワスだと名乗っているが、まさか『法の書』を伝えた本物の守護天使だとは
認識していないだろう。
他にも色々な魔術師と出会っているが、ドラコ=アイワズがエイワスだと気付いた魔術師は
誰ひとりとしていない。
つまりレッサーは、エイワスが本物だと知っただけで魔術師としての格が超特Aクラスに昇格したのだが、
彼女はその事実を認識できているだろうか。
「ぶっちゃけるなー、お前」
「いいのかよ? 俺達は助け舟なンざ出してやれねェぞ? 出す気もねェけど」
「いいのだよ、こうしたら多少は世界が面白い方向に動くかもしれない。
些細すぎるきっかけではあるがね」
何事も無かったかのように原典の続きを読み出すエイワス。
レッサーが座っていた隣の席に座っているミーシャに至っては、置いてあったスナック菓子をボリボリと食べ、
シェイカーに残っていたカクテルをグビグビと飲みながら原典を片手に持ち平気で読み込んでいる。
「魔術師が死ぬ思いで執筆した原典が、ガキが漫画読むときと同じように読まれてるンだが?」
「ふふふ、これだから君たちの"観察"はやめられないんだ」
「しかし、学園都市の統括理事長様がまさか魔術師だったとはな・・・・・・あのクソ野郎」
垣根がアレイスターに悪態をついていると、突然ピリリリと、味気ない着信音が鳴った。
一方通行が携帯を見てみるが、自分のではないようだ。
「あぁ、すまない。 私だ」
言って、懐から携帯を取り出すエイワス。
何が悲しくてこんなやつに電話しなきゃならないんだろう、と
電話をかけた相手にほんの少し同情する一方通行だった。
「もしもし、私だが」
『エイワス』
「ふむ、君か。 どうかしたのか?」
電話先の相手は今話題の魔術師、アレイスター・クロウリーだった。
『いや、なんとなくだが。 とんでもない事を君が口走っているのではないかと
悪寒が走ってね。 君に電話してみたのだが』
「ふふ、面白いことを言う。 君にも悪寒を感じることがあるのかね」
さすがは世界最強にして最悪の魔術師、あまりにも察しが良すぎるその電話に
エイワスも愛想笑いを浮かべるしかない。
『他の者に余計な情報を渡したりしていないだろうな?』
「もちろんだよ、"余計"な情報など一切口外していない」
世界一信用できない言葉だった。
『それとなぜか学園都市宛に最新技術を用いた炊飯器数十個を、
イギリスへ輸出するよう要求されているのだが、これについては君は何か知らないか?』
「よろしくー」
そう言ってエイワスは一方的に電話を切ってしまった。
その顔は、どこか満足そうだった。
「誰からの電話だったんだ?」
「古い親友だよ」
「それアレイスターじゃねェのか」
そんなやり取りをしている内に、風斬がレッサーを連れて戻ってきた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・私、やっぱりとんでもない連中に着いていってますよね」
「そ、そんなことないですよ。 ただエイワスさんがちょっとおかしいだけで、」
「なんという言い草。 同じ『ドラゴン』仲間じゃないか」
同じ『ドラゴン』仲間という言語の意味がもう分からないレッサー。
原典を読んでもいないのに頭が割れそうだった。
「どォする? 今からでも船を降りるか? 垣根がイギリスまで送るぞ?」
「何で俺だよ」
はっきり言って、『天使同盟(アライアンス)』はそんじょそこらの魔術師が着いていけるような組織ではない。
黄泉川愛穂達のように逆に何も知らない者か、またはアレイスターやローラのように
ラスボスを張れるような存在でないと、一緒に過ごす事すら叶わない集団なのだが―――。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、いえ」
レッサーは静かに、しかし力強く言葉を発する。
「私は諦めたりしません!! 原典を漫画感覚で読んでるあなたがいようと、
人工天使がいようと! 天使クラスの人間がいようと! 私は英国のために・・・・・・、
ってその天使まで菓子食いながら原典読んでるしいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!」
レッサーは髪の毛を乱暴に掴みながら絶叫した。
【次回予告】
『これがその『法の書』か?』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』のリーダー・一方通行(アクセラレータ)
『今『法の書』ってバチカンだかどこだかの図書館に厳重に保管されているんじゃなかったですっけ?』
―――――――――――魔術結社予備軍『新たなる光』の構成員・レッサー
『ふーん。 ちょっと見せてみ』
―――――――――――『天使同盟』の構成員・垣根帝督
『そこすら理解出来ない君は、所詮科学サイドの人間だということだ』
―――――――――――『天使同盟』の構成員・エイワス
「これがその『法の書』か?」
様々な形の原典が置いてある中、それだけが本らしい本の形をしていたので
一方通行は適当に手に取って訪ねてみる。
「そうだ。 もちろんそれもれっきとした原典だぞ」
「ちょっと待ってください。 詳しいことは知りませんが、
今『法の書』ってバチカンだかどこかの図書館に厳重に保管されているんじゃなかったですっけ?」
レッサーがふと、そんな事を言い出した。
それを聞いた『天使同盟』の一同は早くもその疑問に対する答えを導き出せている。
「パクったンだろ」
「人聞きの悪い事を言わないで欲しいものだな。 ちょっと拝借しただけだよ」
「泥棒の典型的な言い訳だな」
なんとエイワスはバチカンの図書館に足を運び、わざわざ持ってきたのだという。
いつの間にそんなことをしていたのかは定かではないが、それを追求する気にはなれない一同だった。
「拝借って・・・・・・、『法の書』は写本も沢山あるんですから、それを読めばいいじゃないですか!!」
「『法の書』をアレイスターに伝えたのは私だぞ? その私がなぜ写本などを読まなければならない。
写本にも偽書にも、真実の内容は記載されていないというのに。 そんなものに価値はないよ」
『法の書』の原典の価値は一方通行達にはわからないが、
今頃バチカンの図書館は大騒ぎになっているのではないだろうか。
「その点は心配いらない。 これの写本を代わりに置いてきているからね」
その言い様だと、やはり拝借などではなく無断で持ってきているようだ。
魔術サイドが崩壊するような騒ぎにならなければいいのだが。
「うむ・・・・・・。 この『法の書』の、この辺りのページなら
読んでも大丈夫だと思うぞ」
エイワスは『法の書』のページを適当にパラパラと捲り、そんなことを言い出した。
そもそも原典のページを適当にパラパラと捲るなどという行為自体が異常なのだが
レッサーはもうツッコミ疲れたのか、その様子を見ても浅くため息をついただけだった。
それにしても魔導書に『このページなら読んでも大丈夫』などという概念があるのかどうか、甚だ疑問ではあるが。
「ふーん。 ちょっと見せてみ」
そう申し出たのは垣根だ。あれだけ原典についての危険性を聞かされておきながら、
エイワスの安全を保証されているとはいえ簡単に読んでみようとする辺り、
度胸があるのか、ただ無謀なだけなのか。
それとも、他に何か理由でもあるのか。
「や、やめたほうがいいと思いますよ・・・・・・?」
レッサーが忠告する。風斬もそれに同意し、うんうんと頷いている。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、・・・・・・痛ッ」
しばらく指定された『法の書』のページを凝視していた垣根が、
こめかみに手を添え、ほんのわずかにフラついた。
「オイ」
「問題ねえよ」
一方通行が垣根に声をかけるが、彼は構わずページの内容を読み続ける。
眉間にしわをよせ、真剣な面持ちで『法の書』と睨み合っている。
その様子を見てレッサーは驚愕していた。
「凄いですね・・・・・・、一瞬で廃人になっちゃうかと思ってましたけど。
『法の書』だからでしょうか?」
「いや・・・・・・、ていうか全然内容が理解できねえ」
やがて『法の書』をパタンと閉じ、ふぅと息を吐く垣根。
「内容が理解できてしまったら、君は魔術界でも一躍有名人になれるぞ」
「『汝の欲する所を為せ、それが汝の法とならん』・・・・・・。
"テメェの好きなようにやりたい放題やりやがれ"って意味じゃねえよなまさか」
「ンだそりゃ。 どンだけ投げやりなンだよアレイスターは」
「そうではない。 そしてそこすら理解出来ない君は、所詮科学サイドの人間だということだ」
「チッ」
忌々しそうに舌打ちをし、カウンター机の上に『法の書』を放り投げる。
そんな垣根帝督の表情は、気のせいかどこか悔しそうで――――。
エイワスは一方通行と風斬にも薦めてみるが、二人は断った。
一方通行は原典などに興味はないと言った感じで、風斬は単純に恐れているようだった。
「原典という物は、読んだ者がその内容を広めようという気持ちを持ったときに、その力を貸す」
原典の特徴の一つを、誰も聞いていないのに語り始めるエイワス。
「ですけど、逆に原典から得た知識を自分だけのものにしようと隠したり、
知識の伝達の拡大を妨害したりする人間には牙を剥くと言われています」
レッサーが説明に補足を付け足した。書物が人間に牙を剥くとはどういうことなのか。
「一方通行。 潮岸の部屋に見慣れぬ者の死体があったことを覚えているかね?」
「あったっけなそンなの・・・・・・。 何か潮岸の側近みてェなヤツがいた気はしたが」
「彼はテクパトルといって、『翼ある者の帰還』という中米最大の魔術組織に所属していた
魔術師なのだがね。 彼は自身が持っていた『月のウサギ』という原典に殺害されているのだよ」
「ふゥン」
興味なさげに返事をする一方通行。あの部屋に来たときは潮岸の方しか見てないし、
その直後に今目の前にいる『ドラゴン』が現れたのだ。
いちいち部屋で倒れている者の確認など、しているわけがない。
「あぁ、そういえば海原光貴はその時に『月のウサギ』も入手していたのではなかったかな?
ふふ、彼も意外に面白い人間だな。 そこから価値を見出すことは到底出来ないがね」
一人でなにかブツブツ言っているエイワスだが、誰もその言葉に耳を貸さない。
「じゃあ原典が人を殺すという逸話は本当だったんですね」
「そ、そんな恐ろしい本がこんな所に・・・・・・しかもこんなに沢山」
納得するレッサーの横でガタガタと体を震わせている風斬。
そんなものを平気で読み込んでいるエイワスとミーシャの異常性がさらに際立っていた。
「原典ってのは全部で何冊くらいあるんだ。 ここにあるので全部か?」
垣根がエイワスに尋ねる。やはり、どうも彼は魔術の話になるとよく食いついてくる傾向にあるようだ。
もしかしたら自分でも魔術を行使し、魔術師になりたいとでも思っているのだろうか。
「十万三千冊」
「じゅっ・・・・・・!?」
思わず絶句する一同。こんな人を殺してしまうような本が、この世には十万三千冊もあるらしい。
「邪本悪書も合わせると、それくらいだな」
「そンなにあるのかよ。 何冊かはブックオフとかに投げ売りされてンじゃねェだろォな」
「写本ならばそういった古本屋にもあるかもしれないな。 写本や偽書なら君たちのような者が
読んでも害はないから、気が向いたら探して読んでみてはいかがかね?
もっとも、原典でない限りその価値は著しく下がってしまうが」
興味ねェよ、と一方通行は一蹴した。魔道書ではないが、彼もかつて魔術を行使し、
打ち止めという一人の少女を救っている。
あの時は救うことに夢中で気にしなかったが、魔術を使ったときの体のダメージは半端ではない。
話を聞いてその知識を頭に収めておくぐらいならいいが、わざわざ原典を探し出してまで
魔術に関する知識を得ようとはとても思えなかった。
一方通行がそんなことを考えている時に、エイワスは垣根に声をかけた。
彼にしか聞こえないような声量で、
「垣根帝督」
「あ?」
「『禁書目録(インデックス)』、という言葉を覚えておくといい。
"アレ"は今も学園都市に存在しているだろう」
「禁書目録・・・・・・?」
「君の『その気持ちと決意』が本物だとするのなら、禁書目録に接触してみる価値はあるだろう。
学園都市に帰ったら探してみればいい。 もっとも、"無事に帰ることが出来たら”の話ではあるがね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
エイワスは垣根帝督にそう言った。
それはあの日、エイワスが一方通行に告げた言葉とほぼ同じものだった。
禁書目録。
のちに垣根帝督も、一方通行と同じように禁書目録を求めることになる。
だが一方通行と違う点は、垣根帝督が魔術に執着しているところと、その理由。
そして、垣根帝督はインデックスという一人の少女に出会う事になるのだが、
その出会いは全てが手遅れになってしまった時だった。
それはまだ、少し先の話になる。
――――――――――――――――――――――
「み、皆さん。 そろそろ何かして遊びましょうよ!
ほら、天使さんも。 いつまでもそんな本読んでないで!」
突然、風斬が皆にそう呼びかけた。
それだけでこのレジャー施設の空気が一転した気がした。
皆、どこか暗い面持ちで佇んでいたのが原因だろうか。
だが無理もない。原典という魔術の深い部分についてあれだけ話を聞かされたのだ。
これでテンションが上がる人間がいたら、その人間はきっと魔術師としての素質があるに違いない。
「そうだな、そういえばそんな話だったよな」
「私、こう見えても結構ダーツとか得意なんですよ! ベイロープとかとよく
張り合ってたりしてましたねー。 誰か勝負しませんか?」
「それより俺は寝てェンだがな」
「hkyojhtoht駄目hitotrjorb」
こうしていつもの空気に戻すことが出来、風斬はホッと息を吐く。
これだけ豪華なレジャー施設だ、とてもロシアに着くまでに全てを遊びつくすことは出来ないだろう。
一応言っておくが、ここはクルーザーの中である。
「ボウリングしようぜ、ボウリング」
と、垣根が提案してきた。ボウリング場はカジノコーナーから少し先にあり、
そこには六つほどのレーンが並んでいた。ちゃんとピンまでの距離も公式と同じ長さになっており、
様々な色と重さのボールがズラリと揃えられている。
「ボウリングなンてやった事ねェな」
「お前、寂しい学園生活を送ってきたんだな」
「オマエも大して変わンねェだろォが豚野郎」
某ネズミとネコのように喧嘩をしている二人は放っておいて、
風斬とミーシャ、レッサーはボウリング場へと足を運ぶ。
「ボウリングかぁー、こう、ボールを投げてピンを倒せばいいんですよね?」
風斬が明らかに慣れていない仕草でボールを放るジェスチャーをした。
どうやら彼女もボウリングは初体験のようだ。
「分かってんなら話は早いですね。 ミーシャもルールは把握していますか?」
「jgerogro十柱戯gjok把握gktoguthj」
コクリと頷いて見せるミーシャ。こういう簡単な会話なら何とかなるらしい。
というか、彼女はどこでボウリングを知ったのだろうか。
レッサーは早速ボールリターンに備え付けられておる機材を操作し、
天井にでぶら下がっているモニタに映るスコア表を作っていった。
「順番はどうします? おーい、そこの犬猿コンビさん達」
「誰が犬猿だマセガキ。 順番なンざどォでもいい」
「俺、一番がいいな。 だがその前に何回か投げさせろ」
はいはい、とレッサーは機材に設けられているキーボード状のボタンをピッピッと操作し、
ピンセッターを動かして六つのレーン全てにピンをセットしていった。
「知ってました? ボウリングって元々は宗教儀式の一つでして、」
「あァ、聞いてねェしどォでもいい」
レッサーがボウリングの起源を説明しようとしたところを、一方通行が面倒くさそうに制止した。
彼女は頬をプクーッと膨らませて機嫌を損ねてしまったようだ。
そしてボール選び。垣根と風斬は慎重にボールを吟味している。
これは重い、これは軽すぎるなど、独り言を呟きながらボールの具合を確認している二人を横目に、
一方通行とミーシャ、レッサーは既に手に馴染むボールを選んでいた。
「これですね! このボールが最適です。 色もピンクっぽくて可愛いし」
「色でアベレージ上げれるンなら皆マイボール持ってンだろォが」
「kghrohjoh決定bjihjijh」
三人はそれぞれボールを選ぶと、適当な席へつく。
レッサーは機材を弄り、ピンセッターを動かして全てのレーンにピンをセットした。
「左端のレーンは練習用にしようぜ。 とりあえず一回投げてみるか」
垣根は選んだボールを持っていの一番に左端にあるレーンへと向かっていく。
風斬もようやくボールを選び終え、そそくさと一方通行の隣を陣取った。
「む・・・・・・、」
「?」
レッサーがなぜか風斬の方をジトーっと見ているが、風斬にその理由は分からない。
「オマエ、アベレージはいくらなンだ」
「二百十八くらいだったかな」
「なぬーっ!!? 凄い腕前じゃないですか!!」
垣根の言葉を聞いて驚きの表情を見せるレッサー。
確かにアベレージ二百十八ともなると、もはやプロの領域に達している。
「学園都市最強のボウラーでも目指してンのかオマエは」
「スゲーだろ? あ、言っておくがお前ら、自分の番で魔術とか能力使うのは禁止だからな」
「分かりました」
そうして制限を付けたところで、垣根は練習としての第一投を始める。
「そらっ」
垣根の投げたボールがなめらかにレーンを走っていく。
彼の投げた玉はいわゆる『カーブ』と呼ばれるもので、『フック』よりも鋭く曲がり、
球威が凄まじいものになるというものだ。
カコォーン!!と、気持ちの良い音をたててピンが倒れた。
見事なストライクだ。
「すごーい! 全部倒れましたよ!」
「ま、こんなもんだろ」
パチパチと拍手をして驚く風斬に対し、垣根はさも当然といった表情を浮かべている。
「次、お前行けよ」
「ふン」
くっだらねェ、とでも言わんばかりに面倒くさそうに腰をあげる一方通行は、左手にボールを持っている。
ボウリング未経験、そして能力の使用を禁止された彼が投げたボールは――。
「きゃー! 凄いです、一方通行さんもストライクですね!」
完璧と言わざるを得ない投球フォームと球筋で、均等に並べられたピンを蹴散らした。
右手で杖をついているためバランスが取りにくいはずなのだが、そこはさすがである。
自分がストライクを取ったわけでもないのに、風斬は笑顔で喜んでいる。
「お前、本当に未経験なのかよ?」
「ボウリングなンざこンなモンだろ。 ボールの重さ、指の入れ方、その指と腕にかける力具合、
レーンの状態、投げる際の腕の角度、これらを全て計算して投げりゃストライクを取れねェ方が
おかしいンだ。 所詮ゲーム、娯楽だろ、ボウリングなンて」
プロボウラーが聞いたらボールを思い切り投げられそうな言葉を吐く一方通行。
彼が言った理論は、学園都市最高の頭脳を持つ彼だからこそ成せる業なのではないだろうか。
「むむ・・・・・・、これはなかなか白熱しそうですね」
レッサーが眉をひそめ、ぶつぶつと何かを呟いている。
「hktohjo次vnisgierg私hitpyjikrpjh」
ミーシャが投球を申し出た。言葉はわからないが、恐らくそういう事を言っているのだろう。
彼女は手に選んだボールを持っていた。
ただし、それは両手にであり、しかも各五本の指をフル装備でボールの穴に入れている。
何かを勘違いしているようだ。
「オイ、ボウリングで使う球は一個だけだよアホ天使」
「khfthithjs不覚jiyojytoh了解gjkergrhb」
一方通行に指摘され、『あ、そうなの?』、といった仕草でボールをラックに戻していくミーシャ。
そしてラインの前まで立ち(そういうルールは知っているらしい)、ボールを構える。
「バカおい待て、それじゃ野球だろうが。 下から投げるんだよ、こう、こうやって!」
メジャーリーガーのようなフォームで投げようとするミーシャを止め、
垣根がジェスチャーを混じえて正しい投球フォームを伝授した。
そしてようやくスタートラインに立った大天使、ミーシャ=クロイツェフの第一投。
音が、しなかった。
「あ?」
「?」
一同がレーンを見てみると、確かにミーシャの投げたボールはピンに向かって直進している。
球筋が曲がることもなく、綺麗な『ストレート』で間違いなくゴールを目指していた。
ただ、"ボールがレーンと接触していない"。
「ハハッ、大砲じゃねえんだから――、」
垣根がそれを見て失笑しようとした時、ボールは止まった。
ガズン!!!と、ボールはピンデッキには入らず、その数センチ上の部分へめり込んでいた。
その衝撃でピンがカラカラと音を立て、偶然も手伝い全てのピンが倒れてしまった。
「hktohjrho嬉々iojhyojnfg」
「そォいうゲームじゃねェからこれ」
きゃっきゃと小さく飛びながら喜びを表すミーシャ。
風斬は呑気に賞賛の拍手を贈っている。
「天使がボウリングをするなんて・・・・・・」
「何かおかしいか?」
「え?」
「あん?」
ここで『天使同盟』と"その他"との認識の違いが顕になった。
天使を知っている者がこんな場面を見たら確かに驚くだろうが、『天使同盟』では
そんなことは日常茶飯事と言ってもいい。
天使だって、ファミレスで食事を取り、酒を浴びるように飲み、人間とデートをし、
風呂に入り、ゲームで遊び、魚釣りをする。
少なくとも、我らが『天使同盟』のミーシャ=クロイツェフはそんな天使なのだから。
「何が我らだ、何が」
地の文にまでツッコミを入れ始めた一方通行は呆れたようにため息をつき、
ボールリターンから戻ってきた自分のボールを取りに行った。
「お前らも早く投げろよ」
「あ、私はいいです。 ぶっつけ本番でやってみます」
「私も結構ですよ。 それより早く勝負しましょう! 何だか燃えてきました」
垣根は風斬とレッサーに練習を促すが、二人は本番で勝負に挑む事にしたようだ。
風斬も未経験らしいが、一球も投げずに本番に取り組むとはなかなか度胸のある事をする。
ミーシャはスイーッとレーンの上をスケートのように滑り、ボールを取りに行く。
ガターの上を歩け、と一方通行が注意するが、飛んでいったほうが早いような気がしないでもない。
「垣根さんは上手すぎますから、ハンデキャップとして垣根さん以外の方はチームを組みましょう」
レッサーがそんな事を提案してきた。
垣根としてはそれでもいいらしい。よほどボウリングの腕に自信があるのだろう。
「では一方通行さん、私と――、」
「なら俺は風斬と組む。 俺一人でも十分そォだが」
「は、はい! よろしくお願いします」
チッ、と密かに舌打ちをするレッサー。
一方通行は風斬とペアを組むことにした。風斬の実力は未知数だが、期待は出来そうもない。
ということで、
「じゃ、じゃあミーシャさん・・・・・・、私とペアを組みましょうか」
「hjrtihjerigh宜敷fjirfhrugb」
一方通行とペアになれない事を残念がっている様子だったミーシャだが、
それでも彼女はレッサーと組む事となった。投球フォームさえちゃんとすれば
ミーシャはなかなかのスコアをたたき出してくれるかもしれない。
若干引き気味ながらも、レッサーはミーシャを受け入れた。
順番は垣根帝督→レッサークロイツェフペア→風斬通行ペアで決まった。
「罰ゲーム的なものが欲しいな」
「え、えぇ~・・・・・・」
垣根の提案に、露骨に嫌そうな顔をする風斬。
彼は前のババ抜きの時にも罰ゲームを提案し、それで自滅したことを覚えていないのか。
だがそこはやはり高アベレージ保持者。自分が負ける事など微塵も考えていないのだろう。
「ではこうしましょう! 優勝した人、ペアは敗北者に絶対命令権を行使出来るのです!」
レッサーの案に更に顔を青くする風斬。
垣根は『いいなそれ、決まりだ』と醜悪な笑みを浮かべている。
「安心しろ、勝てば官軍ってなァ。 俺達が勝ったら垣根とレッサーを船から突き落とす」
「お前俺のこと嫌いすぎじゃねえ?」
「ぜ、絶対負けられません!!!」
ますますヒートアップするレッサー。目から炎が出てもおかしくない気合の入り方だ。
それも当然、負けたら行き着く先は北極海かも知れない。
つまり、負けたら死ぬというボウリングをやるにしては少々過激すぎる罰ゲームだった。
「天使さんは勝ったらどうします? 誰にでも命令出来るんですって」
風斬がミーシャに尋ねる。
「gjrthjri私hjruhyrih勝利frufh暁gjgh貴方hkrthj私hjtyjhr結婚jfrhgueejg」
何を言っているのかさっぱりわからないが、ミーシャは一方通行に指をさしている。
恐らく勝ったらデートでもしろ、という具合の願いなのだろう。
はいはい、と一方通行は適当に了承した。
というか風斬通行ペアが勝ったら垣根とレッサーを海に突き落とすという残虐非道な罰ゲームを
風斬がちゃっかり了承している辺りはどうなのか。
「あぁ、俺からの罰ゲームは勝った時決めるから。 お前ら覚悟しとけよ」
「いいでしょう」
垣根の言葉にレッサーが頷く。
そして全てのルールを確認し終え、なんとも混沌としたボウリング大会が幕を開けた。
【次回予告】
『ベツレヘムの星の欠片を発見した』
―――――――――――学園都市統括理事長・アレイスター・クロウリー
『これで、軍杯は君に上がったというわけだ。 『天使同盟』もここまでか』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』の構成員・エイワス
「・・・・・・懐かしいな」
一方通行達がボウリングで盛り上がっている頃、エイワスは魔導書の一つ、
『法の書』を片手にバーのカウンターで酒を飲んでいた。
エイワスという存在が酒を飲んだところで何の意味もないのだが、
そういう意味のない、無駄なことにこそ価値がある、というのがエイワスの持論だ。
聖守護天使という雲の上の領域にまで辿り着いた者にしか分からない価値観なのだろうか。
エイワスは『法の書』のページを捲り、金のカクテルが入ったグラスをテーブルに置く。
『法の書』。
一九〇四年、アレイスター・クロウリーが魔術的要素を含む召喚儀式を繰り返していた頃に、
エイワスが『声』を通してアレイスターに伝えたメッセージを筆記した魔道書。
今、エイワスが手にしている『法の書』は、バチカンの図書館に保管されていた
まぎもれない本物の原典である。
そんな魔道書を読み、懐かしいと口にするエイワスの真意は定かではないが、
その表情はどこか遠くの景色を見据えるような、憂いげな表情にも見える。
と、その時。エイワスの懐から先程と同じ味気ない着信音が鳴り響いた。
このタイミングでエイワスに電話を掛けてくる人物など、一人しかいない。
エイワスは一度だけ、ボウリングを楽しんでいる一方通行達の方へ目をやると、
すぐに視線を戻し懐から携帯電話を取り出して応答ボタンを押した。
『私だ、エイワス』
「ふふ、分かっているよ。 アレイスター」
相手は、魔術師アレイスター・クロウリー。
電話で会話をしているとは思えないほどクリアな音質で聞こえる彼の声。
ついさっきも電話を掛けてきているが、間違いなく"本物"のアレイスターである。
「君がこうして頻繁に連絡を取ってくるのも珍しいじゃないか。
何か愉快な情報でも私に教えてくれるのかね?」
微笑を浮かべながら期待もしていないような声で尋ねるエイワス。
『ベツレヘムの星の欠片を発見した』
一瞬。
ほんの一瞬だが、確実に。エイワスの肩がピクン、と動いた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
『まさかこんなにも早く発見出来るとは思わなかったのだけどね。
いや、それこそ時間の問題だったが、それにしても想定していた時期よりだいぶ早かった。
彼女、ミーシャ=クロイツェフが施している術式に、僅かな間だが大幅な乱れが発生したようだ。
その乱れを感知し、漏れた魔力を辿っていったらこうもあっさり見つかってしまったよ。
天使の魔力というのは他とは違う独特の色と重みがあるからね、僅かでも漏れれば発見は容易かった』
ベツレヘムの星の欠片の発見までの経緯を、スラスラと説明していくアレイスター。
エイワスはそれをただ黙って聞いている。いや、黙って聞くしか手立てはない。
そしてゆっくりと、エイワスは口を開く。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そうか。 おめでとう、アレイスター・クロウリー。
まさか今までずっと探していたのか? 君もよほど天使を恐れているのだな」
『らしくないじゃないかエイワス。 私がそんな安い挑発に乗ると思っているのかね?
星の欠片を夢中になって探していたのはあなたも同じじゃないか』
返す言葉もない。実際、その通りだった。
アレイスターは恐らく何らかの魔術包囲網を限界まで張っていたのだろう。
そう、現在ベツレヘムの星の欠片が存在する『あの場所』まで。
エイワスもそこまではしないが、それでも探していた。
一方通行達『天使同盟』が様々な魔術師と交流をしている時も、
彼らと他愛のない馬鹿な話をしている時も、彼らが就寝している時などは特に念入りに。
終いにはミーシャ=クロイツェフ本人に星の欠片の居場所を聞き出すという、
それこそエイワスらしくない方法を用いてまで。
――――――――――――――――――――――
『ベツレヘムの星の欠片は、今どこにある?』
『―――――――――――――――――、』
――――――――――――――――――――――
あの時、『必要悪の教会(ネセサリウス)』の女子寮で彼女に星の欠片の居場所を尋ねたが、
結局聞き出すことは出来なかった。
天使としての、いや、ミーシャ個人としての意地なのか、
それとももはや教えるまでもないという意味だったのか。
あの時のミーシャの心は、エイワスですら崩すことは叶わなかった。
『まったく、苦労した。 捜索隊を使って探させるわけにもいかないし、
何より天使の存在を学園都市にまで気付かれるわけにはいかなかったからな。
本当に久々だったよ、自分自身でここまで働くのはね』
何にせよ、先手は打たれてしまった。
アレイスターの口調には、もうかつての焦燥していた様子は微塵も感じられない。
ミーシャの顕現、『天使同盟』の結成、イギリス清教との協定。
様々なアクシデントが発生し、じわりじわりと追い詰められていたアレイスターだったが、
ついに『天使同盟』の一歩先を越える事に成功した。
いや、先手を打ったどころの話ではない。
これでチェックメイト。今この瞬間を持って、『天使同盟(アライアンス)』は終焉を迎える事になる。
「これで、軍配は君に上がったというわけだ。 『天使同盟』もここまでか」
若干名残惜しそうな声色で、エイワスはそう言った。
それもそうだ、星の欠片がアレイスターに見つかってしまったのだ。
あとは星の欠片に残っているミーシャを顕現する為の力が詰まった『門の柱』を破壊すれば
それで終わり。ミーシャは消滅し、元の位階へ還る事となるだろう。
いや、彼女の気持ちを考慮すると、これは強制送還とでも言うべきだろうか。
もっとも、星の欠片を破壊できるのならエイワスにわざわざ連絡などせず。
さっさと破壊してしまえばいいはずなのだが。
『軍配、か。 本当に残念だが、まだ私はそれを手にすることが出来ないのだよ』
「・・・・・・ふふ。 やはり星の欠片は、」
『その通りだ。 あなたも予想している場所にあった』
そう。アレイスターはベツレヘムの星の欠片を発見したものの、
手を出せずにいた。破壊することが出来ないのだ。
問題はその星の欠片がある"場所"だった。エイワスの予想はどうやら的中していたらしい。
そこに星の欠片があるとするなら、少なくともエイワスにはどうすることも出来なかった。
アレイスターなら学園都市の技術を用いてどうにか出来たかもしれないが、
『星の欠片については私のほうが早く着手出来たようだが、やはりあなたが余計な横槍を入れていたな』
「気付くのが遅いよアレイスター。 まぁ、星の欠片探索に気を裂いていたのもあるのだろう。
君がそうすると予想して、私も隙を見て"掌握"させてもらったのだがね」
エイワスがとある細工をし、予想された場所にベツレヘムの星の欠片があった場合、
アレイスターがそれを先に発見してしまうことを考慮し先回りをしておいたのだ。
これで、ベツレヘムの星の欠片がある場所が確定した。
その事を知っているのはアレイスターとエイワス、そしてミーシャ=クロイツェフだけだが。
『天使同盟』の構成員の中で、エイワスとミーシャだけが、目的を達成したということだ。
『天使同盟』の目的。ベツレヘムの星の欠片の発見。そして―――。
『ところで、あなたはこれからどうするつもりなんだ? ミーシャ=クロイツェフは間もなく
この世から消え、位階へと帰してしまうわけだが』
「どうすればいいのだろうね。 我々のリーダーがとにかく我儘なのだよ。
私も振り回されてしまって困っている。 ふふふ」
逆に問い返すエイワス。『天使同盟』に振り回されているとはよく言ったものだ。
これを一方通行辺りが聞いたら蹴りの一発くらいはもらってもおかしくない。
アレイスターは間もなくミーシャが元の位階へ帰すという。
それはエイワスも、そしてミーシャも分かっている事だった。
あの場所に星の欠片があるとの事だが、アレイスターが手を出す事もなくミーシャを消すには
ある程度の運も必要だったのだ。そしてその運命の天秤は、アレイスターに傾きつつある。
その天秤を『天使同盟』側へと傾けるためにエイワスは星の欠片を探していたのだが、
アレイスターが先に発見したことによりそれは非常に困難となったのだ。
「私がこれ以上出しゃばっても意味はないだろう。 あとは彼らに託してみようかと思っているよ」
エイワスはボウリングに勤しんでいる『天使同盟』のメンバーを見ながら言う。
見た感じ、どうやら勝負は均衡しているようだ。
一方通行はガターを連発する風斬に正しい投球フォームを伝授している。
風斬は頬を赤らめながら一方通行に習ってボールを投げるジェスチャーをしていた。
それを見ているレッサーが自分も負けじと一方通行に教えを乞うている様子も見られる。
ミーシャは自身の能力を行使しようとし、垣根に咎められていた。
こうしてみると、なんとも平和な光景だった。
とてもあと少しで崩壊してしまう組織には思えない。
「やれやれ、君も余計な事をしてくれる。 これからが楽しい所だったというのに」
『楽しいこと? 何を企んでいるのかね?』
「いや、"そっち"の話ではなく、一方通行が今、順調にフラグを建設していっててね。
彼が如何にして攻略ルートを進んでいくのかがとても楽しみだったのに」
『?』
アレイスターにはエイワスが言っている言葉の意味が全く理解出来ない。
もっとも、アレイスターがそんな事を気にする必要などないと、一方通行ですらそう言ってしまいそうだが。
『ずいぶんと入れ込んでいるようじゃないかエイワス。
まさか、「天使同盟」に名残でもあるのか?』
「あるさ。 我々ぐらいのものだろう、"ホルスの時代を潰すことが出来る"のは」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
ホルスの時代。
それは魔術師、アレイスター・クロウリーが目指す次なる新天地。
アレイスターの持論では、オシリスの時代は既に終わっているという。
十字教が蔓延るこの世界は、新たな時代へと移り変わる。
いや、自分が変える、と。
『たかが天使と天使もどきの集まりが、私を否定すると? いや、それ以前に
ホルスの否定はあなたの存在をも否定することになるということを分かって言っているのか?』
「私の存在などさして気にすることでもあるまい。 顕現したくなったらすればいいだけの話だ。
それに、可能性は誰もが秘めているのだよアレイスター。 例えそれが天使でも、天使もどきでも、
そして人間でも、な」
『魔術の、いや今ある世界のほんの一パーセントも理解していない彼らがか?
それはさすがに驕りというものだよ、エイワス』
「無知は時に、森羅万象をも喰らう牙と化す」
一方通行が、風斬氷華が、垣根帝督が、ミーシャ=クロイツェフが。
時代というあまりにも大きな要素を変える事が出来るとエイワスは豪語する。
「少なくとも私はそう思うがね。 だが残念ながら、肝心の一方通行が
その気になってくれなくて困っている。 まぁ、その気にならずとも
ミーシャ=クロイツェフに関わっていれば嫌でもその気にならざるを得ないのだがね」
『一方通行はまだ完成していない。 九月三〇日にようやくAIM拡散力場の数値設定が終わり、
大戦時に天使としての力が芽生え始めたばかりだ。
未完成の道具はおとなしくしていてもらわないと困るのだよ』
「勝手に自分の玩具を使って遊ぶな、と?」
『玩具ではない。 一方通行はステップを踏むための、私の大事な財産だ。
一方通行だけじゃない、ヒューズ=カザキリも、幻想殺し(イマジンブレイカー)も、な』
この会話を一方通行達が聞いていたらどう思うのだろうか。
少なくとも、エイワスもアレイスターも無事では済まないかもしれない。
だが彼らはまだ、この二人に手を出せる領域に達していない。
そう、今はまだ。
「ふむ、幻想殺しか。 そういえばそんなものもあったな。
『天使同盟』に夢中で失念していたよ」
『大戦時に私の手から離れたときは肝を冷やしたものだが、
無事に手中へ戻ってきてくれて本当に良かったよ』
一方通行が『天使同盟』として活動しているその"表"で、もう一人の主人公もまた、
学園都市で暮らしている。
上条当麻。『幻想殺し(イマジンブレイカー)』という異能の力なら何でも打ち消せる
特異な右手を持つ少年だ。
彼はこれまで、幾度と無く"救った"。
それは人であり、国であり、世界でもある。
第三次世界大戦で、彼は一人の少女を救うためにその拳を振るった。
見事に神の右席最後の一人、『右方』のフィアンマを打ち倒し、インデックスと呼ばれる少女を
救ってみせたのだ。
そして彼はミーシャ=クロイツェフ出現時、ベツレヘムの星にあるミーシャの儀式場の
『門』を司る柱を破壊し、ミーシャ討伐の一端を担っている。
その際、彼は数十本とあるその柱を幻想殺しで破壊していき、
結果としてミーシャは戦場から退くことになったのだが、
その時に何本か、壊されていない柱があったのだ。
それが、ミーシャ=クロイツェフが現在もこの世へ顕現出来ている原因。
それも、ミーシャ=クロイツェフが現在もこの世へ顕現出来ている理由。
つまり『天使同盟』とは、ある意味上条当麻のおかげで、上条当麻のせいで、
結成されたと言っても過言ではないのだ。
その後、彼は紆余曲折を経てベツレヘムの星とともに北極海へ墜落。
行方不明となっていたが、ある日ひょっこりとインデックスの待つ学園都市の学生寮へと帰ってきたのだった。
「上条当麻が学園都市へ、いや、君の元へ戻ってきたのも、
私には君が手回しをしたのだとしか思えないのだが?」
『否定も肯定もしないが、"あれ"が起きたのは間違いなく上条当麻の意思によるものだ。
彼は自らの意思で学園都市に戻ってきたに過ぎないよ』
否定も肯定もしない、という言い回しがいかにもアレイスターらしい。
エイワスはそれを聞いてくつくつと笑みをこぼした。
「一つ聞くが、君はまだ幻想殺しを君の都合で動かすことが出来ると思っているのかね?」
『質問の意味がわからないな』
エイワスは何でもないように、さらりと説明する。
「言ってしまうが、あれはまた違う理由で君という巨大な"敵"の存在に気付いているぞ。
このまま『プラン』を進めたら、明確に上条当麻は君という存在に気付き、戦うだろう」
『想定の範囲内だが?』
「その時に戦うのは上条当麻だけではない。 彼が築いた多くの絆が、君に牙を剥く」
『同じことを言わせるなよエイワス。 想定の範囲内だと言っている』
「ではそこに、想定の範囲外の要素を持つ存在が加わったらどうなるかね?」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
「もう分かっているのだろう? アレイスター」
『それが、それこそが「天使同盟」だとでも言いたいのか?』
「ふふ、宣言しよう。 上条当麻が君と相対する事はない。
あったとしても、それは遠い未来の話になるだろう」
エイワスは少し間を置いて、そしてアレイスターにこう告げた。
「君の『プラン』は、我々『天使同盟』によって崩壊する」
沈黙。
アレイスターもエイワスも、そこから言葉を発しない。
学園都市に住む、学園都市の深い部分を知る者や、
アレイスター・クロウリーの動きを少しでも知っているものなら、誰でも一度はその考えが頭をよぎる。
『プラン』の破壊。
エイワスが宣言したそれは、まさにアレイスターが望む時代の破壊を意味していた。
しばらく沈黙が続いた。時間にしたら十秒も経っていないだろうが、
それでも二人にとってはそれが永遠にしら感じられた。
その沈黙を、エイワスは目を閉じてただ楽しむ。
やがて、最初に口を開いたのはアレイスターだった。
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・聞くが、あなたは正気を保てているのか?』
「正気? そんなもの、とっくに捨てている。 正気で『天使同盟』の構成員は務まらんよ」
天使の属性が覚醒しつつある一方通行。科学によって作られた人工天使、風斬氷華。
学園都市の第二位を誇る超能力者、垣根帝督。『水』を司る大天使、ミーシャ=クロイツェフ。
エイワスの言うとおり、このような存在で構成された組織に身を置くとなると、
確かに正気を保つのは難しいかもしれない。
そんな『天使同盟』が、アレイスター・クロウリーの膨大な『プラン』を崩すという。
『興味深いな。 その方法を知りたいものだが』
「色々とあるが、一つは明確だ。 君自身がそれを吐露しているじゃないか」
『?』
「天使。 この世に居られるとまずいのだろう?」
くく、と笑いながらエイワスは言う。
テーブルに置かれた金のカクテル入りグラスを手に取り、それを飲んで更に続けた。
「私の見解では、君の『プラン』は天使が存在しようともまだ修正できる範囲内なのだがな」
『分かっているくせに無知のふりをするなよ、エイワス』
わずかに、怒りの色が混じった声だったような気がする。
エイワスはアレイスターの声を聞いて更に笑みを深くした。
「何百年かかると思っている、といったところか? まぁそうだな。
ただでさえ、君の『プラン』には亀裂があちこちに生じている」
『必要な材料は揃っている。 あとは実が成るのを待つだけだ。
ミーシャが消え去れば巨大なイレギュラー因子は無くなる。 私はただその時を待てば、』
「そこだよ、アレイスター」
その言葉を待っていたとでも言わんばかりに割って入るエイワス。
『何?』
「その、"ミーシャが消え去れば"という部分。 そこが一番重要な所だ」
『何の話だ?』
「ミーシャ=クロイツェフが消え去る。 その事実を、彼らが黙って受け入れるとでも思っているのか?
ミーシャ=クロイツェフが消えゆく瞬間まで、彼らがただ指をくわえて見ていると思っているのか?」
『おかしな事を言うじゃないか。 「天使同盟」が何をしてくれると言うんだ?』
「彼らは恐らく、いや、絶対と言っていい。 ミーシャをこの世へ留め続けるだろう」
アレイスターは今度こそ耳を疑った。
『天使同盟』がミーシャ=クロイツェフをこの世に顕現させ続ける。
何の理由があってそんな事をするのか、アレイスターはまるで理解出来ないでいた。
『何の得があってそんなことをするんだ?』
「損得で彼らは彼女を守るのではない。 これは君には何世紀経っても理解出来ないだろうな。
私ですら、理解は出来ても肯定は出来ないのだから」
理由なんていらない。理由なんかなくとも、彼ら『天使同盟』はミーシャを必ず守るのだと
エイワスは断言する。
『あなたが愉快な時間を長く楽しみたいがために、一方通行達にそう仕向けるだけじゃないのか?』
「初めはそう思っていた、そのつもりだった。 だがね、どうやらもうその必要も無くなったようだ」
アレイスターは知らない。
『天使同盟』が学園都市を離れた時に何をしているのかまでは、彼は把握出来ていない。
「信じがたい事だが。 アレイスター、覚悟しておいたほうがいい」
ミーシャ=クロイツェフが、人間とどれだけの交流をしてきたか。
ミーシャ=クロイツェフが、どれだけ人間の事を知ったのか。
「君がミーシャ=クロイツェフを消すという意思を見せ続けるというのなら、
『天使同盟』は何を捨ててでも君と戦うだろう」
アレイスターがこのまま引き下がるとも思えない。
もはや学園都市での戦いは、約束されたようなものだった。
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、ふ』
短く、アレイスターは笑ってみせた。
『・・・・・・面白い。 あなたの真似ではないが、これは非常に興味深いよ、エイワス』
「だろう? だから私は彼らを観察し続けていると言っているのだよ。
君のシークレットチーフを今すぐ辞退してもいいという気さえ湧いてくる」
『おや。 今のは君が私のシークレットチーフだと認める発言かな?
所詮一学説なのだと思っていたが』
「私がシークレットチーフだろうが君がその『窓口』だろうが、
そうでなかろうがどうでもいい。 そこに価値はありはしないよ」
『まったく、相変わらず食えないなあなたは』
「さて、何のことやら」
間もなく起こるであろう戦いが楽しみであるかのように、互いにくすくすと笑う。
『今にして思うが、この状況はかの「黄金夜明(S∴M∴)」の設立を思い出させるな』
「それは光栄だ。 かつてアンナ=シュプレンゲル設立した魔術結社か。
『天使同盟』がそれに匹敵すると? さすがに過大評価ではないかと思うがね」
『匹敵くらいしてもらわないと、私を止める事など不可能だよ。
本当にそうなってしまったら私のプランに新たな道が開ける』
「君に『天使同盟』は渡したくないな。 あれはやはり、私の玩具でないと」
遥か昔、シークレットチーフの『窓口』としての役割を全うしていた女性、アンナ=シュプレンゲル。
そのアンナが設立した、近代西洋魔術の始まりとも言われる伝説の魔術結社、『黄金夜明(S∴M∴)』。
アレイスターは『天使同盟』の結成が、それと似通っているという。
そして、それに匹敵するほどの力を手にしろという発言。
アレイスターは、覚悟を決めたようだった。
【次回予告】
『科学と魔術が交差するとき、物語は始まる――――――』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』の構成員・エイワス
『あなたに会えて良かったと、改めて思うよ。 待っているぞエイワス』
―――――――――――世界最強最悪の魔術師・アレイスター・クロウリー
『私も、私の人生の大半をかけて積み重ねていったプランのために、
もう一度だけ"外"に出るしかなさそうだな』
アレイスターは現在、窓のないビルと呼ばれる場所にある『容器』に入っている。
大戦終了時、彼はフィアンマを粛清するために『容器』から"外"へ出た。
いや、"外"に出るという表現は間違っているだろう。
彼は今も一人で、そして複数の場所に存在するのだから。
そんな数学の概念をぶち壊すような領域にまで達しているのが、この二人。
「出迎えてくれるかね?」
『歓迎しよう、「天使同盟(アライアンス)」。 私の、敵』
アレイスターは認める。『天使同盟』は、敵。
敵なんだけど時に味方をしてくれる、とか。敵だけど時には優しい、だとか。
そんな濁りは一切無い。
この瞬間、『天使同盟(アライアンス)』はアレイスター・クロウリーと真っ向から敵対した。
『あなたが相手となると、私も今まで通りでというわけにはいかないな』
「最強の魔術師にそこまで言われるとはな。 恐れ多いよ、くく」
賭けるものは、『天使』と『時代』。
エイワスが一方通行達の意見など全くの無視で決めたこと。
だが、聞くまでもなく一方通行達はアレイスターと衝突する事を確信している。
そしてそれを観察し、結果を見届ける事こそが、エイワスにとって最高の至福なのだ。
『オシリスの時代がお気に入りか、エイワス』
「いいや、私は時代などに執着したりしないよ。 時代などと大仰な言い方をするが、
世界は結局大した変化を見せてくれないじゃないか。 これではつまらない」
『相変わらず規模の大きい我儘だな。 ではホルスの時代を迎える可能性を潰してまで、
あなたは一体何が見たいんだ』
「そうだな・・・・・・」
しばし間を空けて、エイワスは言った。
「科学と魔術が交差するとき、物語は始まる――――――」
アレイスターは黙っている。彼もその言葉は知っているから。
そしてエイワスがそこから何を言い出すのか、ただ黙って待っていた。
そして、
「―――――そこに我々『天使同盟』という要素が加わったらどうなるか。
その先の時代が見てみたいものだな」
『ふ、はは』
こらえきれないと言った様子で笑うアレイスター。
『私にもっと感情というものがあれば、腹を抱えて笑い転げているよエイワス。
その言い様だと、結局あなたは時代に執着している事になるのではないかな?
それに天使は魔術のカテゴリに含まれる存在だろう』
「違う、天使ではなく、あくまで『天使同盟』だ」
『どう違うというのか、説明してほしいな』
「我々にとっては天使すらパーツの一部に過ぎない。
確かに一方通行の言うとおりだな。 『天使同盟』は組織ではない」
では何なのか、とアレイスターが尋ねる前にエイワスは答えた。
「時代だ。 現に、『天使同盟』は科学と魔術が交差している。
ならばここから先の未来の物語は、我々が紡ごうじゃないか」
『く、ふふ。 ははは、ははははははは』
今度こそ、アレイスターは笑って見せた。
誰にも聞かせたこと無い、誰にも見せたことのないような表情で。
一方通行(アクセラレータ)という人間が。
とある地下街の飲食店で。
酒を飲み、半ば酔った勢いで。
何の気無しに結成した"仲良しクラブ"が。
時代、だと?
『これは・・・・・・くくくく。 エイワス、その冗談はどこで習った?』
「君が先程の言葉を、かつて学園都市設立の際に言った時、かな」
"科学と魔術が交差するとき、物語は始まる―――――"。
エイワスは挑発するように答えた。アレイスターはほんの少しだけ閉口し、
『真剣味が足りない気がするが』
「私は"マジ"だぞ? アレイスター」
エイワスが持つ携帯電話から、アレイスターから発せられる笑い声とは思えないような音が漏れている。
『気に入ったよエイワス。 とても愉快で、大胆で、醜く、愚かで、』
そして、
『そして。 少し、羨ましい』
ごく僅かではあるが、アレイスターの『人間』の部分が垣間見えたような気がした。
「学園都市で、また会おう。 アレイスター・クロウリー」
『待っているよ。 だが出来る限り早く向かった方がいいと思うがね。
私は待つが、ベツレヘムの星の欠片は待ってはくれないぞ?』
「"その時"が来れば、ミーシャ=クロイツェフが教えてくれるだろう」
そしてその時が来たら、それがこの『天使同盟』の世界放浪の旅の終わりの時。
その時、残された『天使同盟』はどう動くのか。
『次はロシアだったか。 だがあなたはベツレヘムの星の欠片の行方が分かっている。
行く意味がないのでは?』
「もはや旅をする理由は変わりつつある。 星の欠片などそれに比べたら微々たるものだ。
それは私や君より、彼らが一番よく分かっていると思うぞ?」
『そうか。 余計なお節介だったかな』
「心配はいらない。 "必ず向かうからそのつもりで"、な」
聞き様によっては、それはまるで死刑宣告。
聞き様によっては、それはまるで降伏宣言。
もう、これ以上の会話は必要なかった。
『あなたに会えて良かったと、改めて思うよ。 待っているぞエイワス』
「茶菓子の用意を忘れないでくれたまえよ、アレイスター」
その言葉を最後に、通話は切れた。
次に『天使同盟』が向かうは、かつての戦場、ロシア連邦。
結論から言うと、そこが『天使同盟』のベツレヘムの星の欠片を巡る、最後の国となった。
――――――――――――――――――――――
「っしゃあああああああああああああああ!!! 見たかコラ!!
こういう状況の中でストライクをとれてこその超能力者だ!!
もう俺の勝ちは揺るぎねえなぁ一方通行!!?」
突然、ボウリング場に大声が響き渡った。垣根帝督の声だ。
エイワスがアレイスターと勝手に盛り上がっている頃、『天使同盟』とプラスアルファによる
ボウリング大会もいよいよ佳境。最高の盛り上がりを見せていた。
「チッ、垣根の野郎。 あンだけ追いつめられておきながらのストライクか。
こりゃいよいよ持ってマジに行かなきゃ第一位の名は返上だなァ」
ボウリングに第一位の名だの超能力者がどうだのは全く関係ないと思われるのだが、
今の彼らにそんな言葉は右から左だ。
ここまでの経緯を簡単に説明しよう。
最初は意外にも、レッサーとミーシャ=クロイツェフのペアがリードしていた。
投げ方のコツを掴んだミーシャがたまにストライク、悪くても七本以上という好投を見せ、
スコアを四ゲーム目くらいまでマークで埋めていた。
相棒のレッサーも同じような成績を築き、垣根帝督や風斬通行ペアから差を離していっていた。
だがゲーム中盤、風斬氷華が真価を見せ始める。
彼女は序盤、ガターを連発し、風斬通行のペアのスコアは悲しいくらい伸び悩んでいた。
頼りの一方通行もイマイチで、たまにストライクはとるものの、ガターをしてしまったりと
コンディションに波があった。なんか「理屈じゃねェ・・・・・・!!」とか言ってた。
だが、風斬は途中、断腸の思いで一方通行から(手取り足取り)伝授してもらった投球フォームを変え、
よく小さな子どもがやるような下からコロコロと転がすような投げ方に変えた。
これが功を奏したのか、風斬がストライクを量産。風斬通行ペアのスコアは一気にトップまで上り詰める。
そしてアベレージ二百十八というプロボウラー並の実力を持つ垣根帝督はというと、もう最悪だった。
なぜか自分が投げる瞬間、床が水浸しになっていたり、なぜか自分が投げたボールが不自然なまでに
ガターするコースへと球筋を変えたり、終いにはピン直前まで進んだボールが、自分の足元に戻ってきたりと
散々なスタートとなってしまっていた。
『お前らぁ!! 何か能力使ってんだろ!! バレバレなんだよクソボケが!!!』
『お、おやおや、何の事だかさっぱりですね~~・・・・・・』
口を尖らせて口笛を吹き、明後日の方を向くレッサーだが、さすがにバレてしまった。
"自分が投げる番に能力の使用は禁止"という垣根が加えたルールの穴を突かれてしまっていたのだ。
しかしガチのゲームになってからも垣根の調子は今ひとつだった。
自分が言った罰ゲームの重圧が思った以上にズシンとのしかかり、スコアを伸ばせないでいたのだ。
しかしそこは高アベレージ保持者、垣根帝督。
中盤から現在の終盤にかけての追い上げが凄まじく、ついに単独トップへ躍り出たのだった。
以上、説明終わり。
――――――――――――――――――――――
「俺のゲームはこれで全部終了だな。 まぁまぁのスコアだが・・・・・・。
ま、これで俺の勝ちは決まったも同然だ」
嬉しさのあまり、さっきと同じような事を言う垣根。
実際のそれぞれのスコアはなかなかに均衡しているのだが、彼には勝利の確信があるようだ。
「ま、まだ決まったわけじゃないでしょう!! 私とミーシャがストライクをとれば
逆転大勝利なんですからね!!」
「roepweopff気合yighjsdgj根性zcghfrg」
レッサーとミーシャが自分に喝を入れ、ボールを持つ。
ちなみにレッサークロイツェフ、風斬通行は一ゲームのニ投を一人ずつが担当し、
先攻が七本を倒し、後攻が残り三本を倒せばスコア、といった具合になっている。
ストライクが出た場合は通常通り次のフレームへ進む。
そしてレッサークロイツェフのラストフレーム、ここはミーシャ→レッサー→ミーシャの順で
投げる事になった。ストライクが出ればの話だが。
しかしここで二人が全てストライクを取らないと罰ゲーム決定となってしまうのだから気が抜けない。
(ベイロープ、フロリス、ランシス・・・・・・。 私は今、英国の命運をかけた
戦いに挑んでいます・・・・・・。 そう、ボウリングで!!!)
ベイロープ辺りが聞いたら何やってんだ、とぶっ飛ばされそうな事を心の中で思うレッサー。
罰ゲームを避けるために垣根帝督に勝つか、風斬通行ペアに勝つか、ではダメなのだ。
そう、どちらも倒さなければ罰ゲームは執行される。
特に風斬通行ペアが勝ったりしたら終わりだ。一方通行は自分を海へ叩き落すと言っている。
一方通行の恐ろしさをレッサーは知っている。その身で実際に体験している。
あの男は、やる。 自分を必ず海へ叩き落す。
確信があった。あの顔はやる顔だ。罰ゲームだしそんなマジにならなくても・・・・・・とか、
そんな言い訳は一切通用しない顔だ。
有言実行が擬人化したような男、それが一方通行なのだと彼女は決めつけている。
先攻のミーシャがボールを持ち、レーンへと向かっていく。
(こんなところで朽ちるわけにはいかない・・・・・・、私は必ず勝ってみせます!!
そして『天使同盟(アライアンス)』を必ずやこの手中に収めてみせる!!)
目を閉じ、全ての雑音を遮断して集中するレッサー。
今の彼女には何の妨害も効果がない。もはや菩薩の域へ突入している。
(心頭滅却すれば火もまた涼し。 我こそは救世主(メシア)なり・・・・・・)
超適当な言葉を並べ、自分の世界へと入っていく。
そして彼女が目を開け、ミーシャの様子を見てみると、
「oeftcsvmerg失敗bvngrgheritygi」
ミーシャ=クロイツェフは見事なまでに美しいガターをぶちかましていた。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!!!!!!
ふっざけんじゃねえええぞおおこのクソ天使があああああああああッッ!!!」
ズドドドドとミーシャの元へと走り、彼女の腹に渾身のドロップキックを入れるレッサー。
そのままマウントをとり、大粒の涙を流しながら拳を振るう。
「ミーシャあああああああああッ!! あなたがッ、泣くまで、殴るのをやめませんッ!!!」
ビシッ、ズドッ、と生々しい音がボウリング場に響く。
ミーシャにダメージは全く無いらしく、とりあえず落ち着けよと言った様子でレッサーをなだめている。
「あーあ、これでお前らはとりあえず罰ゲーム決定な」
ひひひと笑う垣根。もうレッサーとミーシャがゲームを続ける必要が無くなった。
彼女たちは罰ゲーム決定だ。合掌。
「あ、一方通行さん・・・・・・」
「安心しろよ、俺達が負けるわけねェ」
不安そうに見つめてくる風斬を励ます一方通行。
彼らも最後のフレームで全てストライクを出さなければ敗北が決定してしまう状況だった。
最初に投げるのは一方通行。後半で安定したスコアを築いており、信頼性は高い。
「コケろ」
「三下のやり口だな」
煽ってくる垣根を軽くいなす一方通行。集中力が高い証拠だ。
風斬が両手を組んで祈っている。天使が天使に祈りを捧げている図だった。
その時、風斬の背後に何者かの気配がした。
風斬が振り返ってみると、魔導書を読み終えたのかエイワスがそこにいた。
「あ、エイワスさん。 もう読み終わったんですか? 魔道書」
「いや、こちらのほうが見ていて面白そうなのでね。 ちょっと見学をしに来た」
さっきまで自分が居た場所の空気とは、まるで違った。
アレイスターの会話を経て、エイワスもある種の覚悟を決めたばかりなのだが、
彼らはどうだろう。事情を知らないとはいえ、こんなにも和やかな空気を作り出している。
「ふふ、やはり君たちはとても面白いな。 眩しいほどの価値がある。
楽しみにしていたまえアレイスター、これはなかなかに手強いぞ」
「?」
エイワスが何か言っているが、風斬の耳には届かない。
そうしている内に一方通行はボールを持ってレーンの前へと立っていた。
ここで一方通行がストライクをとれなかったら、罰ゲーム決定だ。
「無理に決まってる。 お前がこの重圧に勝てるわけがねえ」
「外野は黙ってろ」
なおも煽り続ける垣根。悲しいくらいに器の小さい男がそこには居た。
垣根帝督の名誉のために言っておくが、これはあくまでもお遊びであって、
本来彼はこんなに小さい男ではない。
「一方通行さん・・・・・・!!」
「なるほど、状況は理解出来た。 さて・・・・・・」
風斬とエイワスは一方通行を見守る形に入っている。
レッサーとミーシャもまた、マウント状態のまま一方通行の方を見ている。
一方通行の手から、運命の一投が放たれた。
皆、呼吸するのを忘れ、ただ転がっていくボールだけを目で追っている。
エイワスは紙に何かを書いていた。どういう意図があるのだろうか。
そして、
震えすら来るような、気持ちの良い音がボウリング場を巡った。
「おらああああああああああああ!!!! 見たか垣根ェェェェ!!!!!!
これが第一位、これが学園都市最強、これが一方通行だクソッたれえええええええ!!!」
「・・・・・・ッッ!!」
垣根の表情に焦燥の色が浮かぶ。
一方通行は見事、十フレームの一投目をストライクで飾る事が出来た。
喜び方が垣根そっくりなところが笑える。
「きゃー!! やったあ、一方通行さん!!」
風斬が一方通行の元へと駆け寄る。彼女は思わず一方通行を抱きしめそうになったところで
急ブレーキをかけた。
「あ、あ、えっと、その、やりましたね!」
「ったりめェだ。 俺を誰だと思ってやがる」
してやったりといった顔で風斬に応じる一方通行。
こういう時はやはり第一位でも、無邪気な表情を見せるものらしい。
その様子を見てエイワスがニヤニヤと笑みを浮かべる。
だが、
「・・・・・・まだ終わってねえだろ。 なあ、風斬?」
垣根に言われてビクッと体を硬直させる風斬。
そう、まだ勝負は終わっていない。
【次回予告】
『風斬、俺はオマエを一生愛する事を誓う』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』のリーダー・一方通行(アクセラレータ)
『あ、あう・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 あ、あにょ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
―――――――――――『天使同盟』の構成員・風斬氷華
『テメェ、そりゃ卑怯だろうが一方通行!!』
―――――――――――『天使同盟』の構成員・垣根帝督
『そういう事なんですね!? お二人はもう、そういう・・・・・・!!』
―――――――――――魔術結社予備軍『新たなる光』の構成員・レッサー
「うむ、次に風斬氷華がストライクをとらないと、結局敗北してしまうな」
「いたのかよオマエ」
余計なプレッシャーをかけるエイワスの存在に気付いた一方通行。
風斬はみるみる顔が青くなっていった。
「わ、私が次にストライクをとらなきゃ・・・・・・、・・・・・・はぁ・・・・・・」
風斬は過度の重圧で呼吸が乱れていた。
AIM拡散力場で構成されている彼女の全身の輪郭がさっきからブレている。
このまま消えてしまうかと思われるくらい、安定していなかった。
「一方通行、これを」
「あン?」
エイワスが一方通行に何かを手渡す。それは先ほどエイワスが何かを書いていた紙だった。
風斬は自分のボールを震えている手で危なげなく持ち、レーンへ向かっていく。
「こうなったら垣根さんも道連れです!! 風斬さん、ファイトー!!」
「テメェ、俺が勝った暁にゃ世にも恐ろしい罰ゲームにしてやるからな!」
もう負けが決まっているレッサーがヤケクソ気味に風斬を応援する。
それに乗って、ミーシャもノイズまみれの声で風斬にエールを送った。
その声援ですら、風斬にはプレッシャーとしてのしかかっていた。
一方通行はエイワスが渡してきた紙に書いてある内容を読み、首を傾げていた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、なンだよこりゃ?」
「彼女がボールを投げる前に、そこに書いてあるセリフを言ってあげるんだ。
そうすれば、誓ってもいいが君たちは勝者になれる」
「なンで俺がこンな事言わなきゃなンねェンだよ」
「垣根帝督に敗北してしまってもいいのか? 風斬氷華まで酷い目に遭うかも知れないぞ?
それに彼女は今、君のためを思って投げようとしている。
その気持ちに応えてあげるのも、リーダーとしての努めではないのかね?」
エイワスの言葉にしばし沈黙する一方通行。
「だがなァ、こンなふざけたセリフ。 風斬が気ィ悪くしたらどォすンだ」
「この鈍感通行め。 だから君は鈍感通行なのだよ鈍感通行。
風斬氷華は気を悪くしたりなどしないよ」
「三回言いやがったな? 三回言いやがったなオマエ。 覚えてろよ。
どこがどォ鈍感だっつうンだよ」
チッ、と舌打ちをした一方通行は、レーンの前で呆けきっている風斬の元へと向かった。
そして彼女の隣に並ぶと、一方通行は紙に書かれているセリフをほぼそのままで伝える。
「風斬、」
「は、はひっ。 な、何でしょう一方通行さん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ここでオマエがストライクをとってくれたら。 風斬、俺はオマエを一生愛する事を誓う」
空気が凍った。
別にミーシャが力を使って場を凍らせたわけではない。
ただ、空気が凍ったのだ。
「テメェ、そりゃ卑怯だろうが一方通行!!」
「あァ? 何がだよ」
キョトンとした顔で垣根に聞き返す一方通行。
レッサーはというと頬に両手を当て、きゃーきゃー喚いている。
「ななななな何ですか今の!!? どういうことなんですか!!?
そういう事なんですね!? お二人はもう、そういう・・・・・・!!
くっ、これはますます一方通行さんを陥落させるのが困難に・・・・・・!!」
「pjvwefertgj否定ccgyhjtihj」
意味不明の言葉を連発するレッサーの頭に、ミーシャが何か言いながらチョップを連打している。
力加減を間違えてレッサーの頭を粉砕しなければいいのだが。
「あ、あう・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 あ、あにょ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そしてそんなセリフを言われた本人、風斬氷華は赤より赤い顔をしていた。
彼女の頬に生卵を乗せるだけで目玉焼きが出来上がってしまうのではと思えるくらい、
風斬の顔は発熱していた。
「オイ、どォした風斬。 やっぱ怒っちまったか?」
もはや幻想殺しにも負けず劣らずの鈍感っぷりを発揮する一方通行。
三回では言い足りないのではないだろうか。
「お、怒ってにゃ・・・・・・、怒って・・・・・・ないでひゅ。 あ、う・・・・・・」
ろれつが回らないのか、風斬は言葉を上手く出せないでいるようだ。
風斬の全身が、比喩でも何でもなく赤く染まっていく。
今の彼女なら通常の三倍の速度でボールを投げることが出来るかもしれない。
「まァとにかく、頑張ってくれ。 そしてこれが終わったら言わせてくれ。
"オマエと一緒にペアを組ンで、本当に良かった"、ってなァ」
もちろんエイワスから渡されたカンペのセリフである。
しかしそのセリフが風斬にトドメを差した。
彼女の目は、ヒューズ=カザキリの時のそれと化していた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 風斬氷華、行きます」
ホワイトベースから射出される時のようなセリフを言い、風斬は構える。
もう心配はいらない、彼女には一方通行がついている。
ストライク以外、とれる気がしない。
――――――――――――――――――――――
「クソッ!! おい離せミーシャ、テメェ!!」
「うわああああん! やだやだ、まだ死にたくありませーん!!!」
垣根とレッサーは二人揃ってミーシャに担がれていた。
二人が激しく抵抗するが、彼女は全く動じない。
「無駄だ。 オマエらはおとなしくシャチのエサにでもなるンだなァ」
一方通行は口元を裂いたように広げ笑っている。罰ゲーム執行の準備だ。
結局、あの後に風斬はストライクをとり、ボウリング大会は風斬通行ペアが勝利を収めた。
その時垣根が何か抗議してきたが、当然一方通行は聞く耳を持たない。
ミーシャに二人を捕獲するよう命じ、現在の状況になっているというわけだ。
「・・・・・・まさか、本当にやったりしませんよね?」
「どうだろうな。 私としては面白いものが見れそうで楽しみなのだが」
風斬が心配そうに彼らの様子を見る隣で、ニヤニヤと笑っているエイワス。
一方通行が執行する罰ゲームは、垣根とレッサーを海に突き落とすというなんとも非道な内容だ。
ただでさえ今この船は規定速度をオーバーして爆走している、そんな状況で海に落ちてしまえば
垣根はともかくレッサーは本当に死んでしまうかもしれない。
「何でミーシャは罰ゲームの中に含まれてないんですか!」
「コイツを海に落としたって何の意味もねェだろ」
納得いきません!、と猛抗議をするレッサーをガン無視して、
一方通行はミーシャに命ずる。「甲板に行って二人を落としてこい」、と。
「zycrrcxkswis御意nabymzutkeum」
「一方通行テメェ! 化けて出てやるからなぁ!!」
「枕元にでもどこにでも立ってやがれ。 眉間を銃でぶち抜いてやる」
そしてミーシャと垣根、レッサーはレジャー施設から甲板へと向かっていった。
残っているのは一方通行、風斬、エイワスの三人だ。
「あ、一方通行さん。 本当にやっちゃうんですか・・・・・・?」
「ンなわけねェだろ。 その辺はガブリエルにも言ってある。
二人を担いだまま適当に水面ギリギリを飛ンで来いってなァ」
「なるほど。 君なら本当に海に落とすと思っていたのだが」
「垣根はマジで落としていいとも言ってある」
垣根が不憫としか思えない発言をする一方通行だが、罰ゲームを最初に提案したのは垣根だ。
その辺りを考慮するとやはりこれも垣根の自業自得・・・・・・と言えなくもない、か。
「まだロシアには着かねェンだよな?」
「それが思った以上に順調に航行出来ていてね、もうあと半日もあれば到着するかもしれない。
いや、それよりもう少し早く到着出来るかもしれんな」
「あ、じゃあそろそろ上陸準備をしておいたほうがいいですね」
どうやら予想より早くロシアへ到着するらしい。
それを聞いた一方通行は大きなあくびをして、
「じゃァ俺はそれまで寝ておく。 着いたら起こせ」
そう言って二人に背を向け杖をついて歩いていく。
そんな彼を見て、風斬は思わず声をかけてしまう。
「あ、あの、一方通行さん」
「ン?」
「あの・・・・・・、その・・・・・・さっきの、って・・・・・・」
頬を赤らめモジモジしている風斬は、何か言いたそうな雰囲気で一方通行をチラチラと見る。
彼は少し考えて、すぐにその様子の原因に気付いた。
「あァ、さっき俺が言ったあのくっせェセリフか」
コクコクと頷く風斬。さっき言った臭いセリフとは、エイワスが一方通行に渡してきたカンペの内容だ。
そのカンペの存在を知らない風斬からしたら一方通行の真意が気になるのは当然といったところだろう。
だが彼は、
「気に触っちまったよォならすまなかったな。 ありゃなンでもねェよ」
あっさりと言い放ち、その場をあとにした。
「・・・・・・ですよね。 所詮あれは私を励ますために・・・・・・」
「ただ励ますだけなら、あんな言葉じゃなくてもいいと思うがね?」
「え・・・・・・?」
そう言ってきたのはエイワスだ。
しょんぼりしている風斬に向かってエイワスは更に続ける。
「風斬氷華。 これはチャンスかもしれないぞ?」
「ど、どういう意味ですか?」
「彼もまさか、全くの無意識であんな事を言ったりはしないだろう。
いくら鈍感とはいえ、君の目の前で言った言葉だぞ、これがどういう意味か分かるか?」
「・・・・・・?」
無意識だからとか鈍感がどうとか以前に、あれはエイワスが一方通行に半ば無理やり言わせたセリフだ。
それを他人事であるかのように平気で考察する(フリをする)エイワスは、ただ風斬をからっているだけである。
「脈アリだよ、脈アリ」
「!」
ドキッ、と鼓動が脈打つ風斬。脈打つ心臓など彼女には無いが、心はある。
「い、いやでも・・・・・・一方通行さんが私なんかに・・・・・・。
そんな、あり得ませんよ」
「自分に自信を持つんだ、風斬氷華。 ・・・・・・ふむ、気がつけばもうこんな時間か。
ふふふ、夜は時に人を狂わせる」
「え、そ、それって・・・・・・」
ボウリングに熱中していたためか、もうすっかり真夜中になっている事に風斬は気付いていなかった。
――――――――――――――――――――――
ボウリング大会も終わり、風斬は自分の部屋へ戻っていた。
夜遅くまでやっていたせいもあり、若干疲れている。
「はふぅ・・・・・・」
ぼすん、とベッドに寝転がる。一体どこで入手してきたのか、
素人から見てもこのベッドに使用されている素材は全てが最高級品であると分かる。
数えるのが面倒なほどの部屋があるというのに、それら全てに備え付けてあるのだろうか。
エイワスは妙なところに力を入れるからよく分からない。
(それにしても・・・・・・、ビックリしたなぁ。 あの時の彼の言葉)
一生愛する。
あれは一方通行が自分をやる気にさせてくれるためにかけてくれた言葉なのだろうか。
だとしたら余計プレッシャーになってしまうのだが、それももう過ぎたことだ。
例えそれが冗談だったとしても、フリだったとしても、
(一生愛する・・・・・・。 ・・・・・・きゃー!)
馬鹿みたいにふわふわな羽毛布団をくるませ、ゴロゴロとベッドの上を転がる風斬。
ここだけ見ると、彼女がとても人工天使だとは思えない。ただの純情な乙女だ。
風斬は部屋で一人の時にはしゃぐタイプなのか、ふふふ・・・・・・とさっきからニヤニヤしっぱなしだ。
しかし同時に、少しだけ後悔もしていた。それは彼女が『天使同盟逢引計画』の事を思い出していたからだ。
あの時の彼女は頭に超がつくほど積極的だった。今思い出しても顔から火が出そうだ。
そしてあの時、どうしてもっと押していかなかったのだろうとほんの少し公開していた。
皆と船に乗った時にエイワスが言っていたが、確かに一方通行は色んな女性と交流している。
最初の方は特に気にすることもなかったが、最近それが更に加速していってるような気がする。
このまま自分が何もアクションを起こさないでいると、もしかしたら彼はいずれ誰かと・・・・・・、
「うぅ~・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
枕に顔を埋めて唸る。そんな風斬の様子は普通の恋する女の子のそれと全く変わりなかった。
『ふふふ、夜は時に人を狂わせる』。
エイワスが妙なことを言い出したせいもあり、なかなか眠る事が出来ない。
あんな事を言われてしまっては嫌でも意識してしまうというものだ。
しかしロシア到着はもう間もなくだという。そろそろ準備をして寝ていなければならない。
やがて風斬はゆっくりと体を起こし、荷物をまとめようとした。
その時、
「?」
こんこん、と誰かが風斬の部屋のドアをノックした。
この船に乗っている人数は極少数。誰なのかを予想するのは非常に簡単だ。
このタイミングだとおそらくエイワスだろう。
一方通行は自分の部屋で寝ると言っていたし、垣根とミーシャ、レッサーは
夜の海を仲良く空中散歩しているはずだ。
「はい、誰ですか?」
それでも風斬は一応ノックをしてきた人物に応答する。
少し引っかかる部分があったからだ。
エイワスならノックなどせず、いや、ドアから入るという行為すらせず
そのまま部屋の中へとワープでもなんでもしてくるのではないか?
だがエイワスも時には普通の人間らしい行動をとるだろう。
そのエイワスにとっては全く無意味な行為にこそ、価値があるとエイワスは言っているのだから。
少しの間を空けて、ノックをしてきた人物が返事をする。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 俺だ、風斬」
「! えっ・・・・・・」
ドクンと、胸が鳴り響いた。頭の中にあるAIM拡散力場の集合体特有の三角柱が、
不自然に音を立てて暴れている。
ノックの主は一方通行だった。
風斬は一瞬、偽者(ていうかエイワス)であることを疑ったが、とりあえず返事をすることにした。
「あ、あ、一方通行さん・・・・・・?」
「あァ」
「ど、どうぞ。 開いてますので・・・・・・」
「じゃ、入るぞ」
ドアが開く音がする。扉はゆっくりと開いた。
そこに見えた姿は、先ほどまで一緒にペアを組み、ボウリングを楽しんだ時の姿のまま。
まぎもれない、本物の一方通行が居た。
「どうした・・・・・・んですか? 一方通行さん」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
話しかける風斬を無視して一方通行は部屋へ入り、ドアを閉めた。
ただし、閉めたのはドアだけじゃない。部屋の鍵もだ。
「あ、あの・・・・・・?」
鍵を閉めるという不自然な行動に少し戸惑う風斬。
別にこれから何が起こるというわけでもないのだが、それでも少しの不安と、
・・・・・・ほんの少しの、期待。
「邪魔が入ると面倒だからな」
「は、はい・・・・・・。 (邪魔・・・・・・?)」
風斬は理解した。恐らく大事な話があってここに来たのだろう。
一方通行の表情がやけに真剣味を帯びている。こういう時は決まってシリアスな
話題を持ち出してくるのが彼だ。
「・・・・・・、隣、いいか?」
「えっ、あ、はい! ど、どうぞ!」
ベッドに腰掛ける風斬の隣に一方通行も座った。思わず顔が赤くなってしまう風斬。
一方通行が座ってきたのはいいが、気のせいかやたら距離が近い。
ちょっと手を動かせば、それだけで彼がベッドに置いている手を触れてしまえるくらいに。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふン」
「?」
「懐かしいな、このシチュエーション。 オマエと俺が二人きりで、隣同士で座ってるなンて状況は、
あのくっだらねェデート計画の時以来じゃねェか」
「あ・・・・・・はい、そうですね」
早速本題を切りだしてくるかと思い身構えていた風斬なのだが、
一方通行らしくもなく、前置きをしてきた。
そしてその前置きが『天使同盟逢引計画』の話なのだからある意味タチが悪い。
あの時に自分がやらかしてしまった行為を思い出すだけで、三角柱が爆散しそうだ。
「あの、あの時は・・・・・・すみませんでした」
「あン?」
「わ、私・・・・・・暴走しちゃって、へ、変なことしちゃったじゃないですか」
あの時風斬は一方通行に手作りのサンドイッチを振舞った。
ふと一方通行の顔を見ると、彼の口にパンくずが付着しており、
それを自分の口で取るという、いわゆるキス未遂のような行為をした事がある。
「・・・・・・あァ、あのサンドイッチの?」
「うう・・・・・・」
苺のように顔を真っ赤にした風斬が表情を隠すようにうな垂れる。
二人の声以外全くの無音であるこの部屋の雰囲気が、更に紅潮を促進する。
「別に気にしてねェよ。 ・・・・・・いや、そう言ったらウソになるな」
「え・・・・・・?」
「気にしてる、今でも」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ますます落ち込む風斬。
それもそうだ、あんなことをされて気にしない人間がいるはずがない。
ましてや一方通行のような性格の男だと、さぞ不愉快な思いをさせてしまっただろう。
もしかして一方通行はその事についての話をしに来たのだろうか?
部屋の鍵を閉めたのも、この話を聞かれないためのせめてもの情け?
だとしたら風斬にとっては、これほど切り上げたいと思う話も事もない。
風斬は顔を上げ、一方通行に改めて謝罪の言葉を送ろうとして、
「嬉しかったからな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 え・・・・・・」
一方通行が割って入った。
今、彼はなんと言った?風斬は自身の聴覚の不具合を確認する。
もしかしたら自身の五感神経に何らかのバグが発生しているのかもしれない。
ここは学園都市から大きく離れた海だ。可能性としては十分あり得る。
だがいくら調べてみても、自分の体に異変は見当たらない。
風斬は確認のために一方通行に尋ねた。
「あの、今、なんて・・・・・・?」
「何度も言わせンなよ。 あン時のオマエの・・・・・・その、
あれが・・・・・・嬉しかったっつうかよォ・・・・・・」
頭をガシガシと掻きながら視線を明後日の方へ向ける一方通行。
だがそれでも彼の透き通るように白い肌が、わずかに紅潮しているのが分かった。
嬉しかった。
あの暴走と言ってもなんら遜色ない行為が、嬉しかったと。
彼は間違いなくそう言った。今度は聞き逃さない。
「ほ、本当ですか・・・・・・?」
「あァ。 俺がオマエにこンな嘘つくかよ」
柔和な笑みでそう言ってくる一方通行。
風斬は彼の顔をじーっと見つめたまま固まってしまっている。
その顔はもちろん赤いままなのだが、それを隠すことを忘れてしまうくらい
彼女には衝撃が走っていた。
「オイ、大丈夫か?」
「はぇ、は、はひっ」
変な声で返事をしてしまう。一方通行がこちらの様子を窺うために顔を近づけてきたのだ。
目を背けることすら勇気のいる行動に思え、なおも一方通行の顔を見続ける風斬。
だがそれも長くは保たず、なんとか声を出そうと頑張った風斬は彼に返事をする。
「そ、そう言ってもらえるとその・・・・・・、嬉しい、です」
どうして自分はこんな事を言っているのかがよく分からない。
ただ風斬は、自分の気持ちを率直に伝えた。オブラートに包むとか、
なんやかんや言ってごまかしてみるとか、そういう事にまで頭が回らなくなってしまっている。
そんな混乱のさなか、一方通行が唐突にこんな事を聞いてきた。
「なァ。 あン時のあれってよォ、俺にキスしよォとしてたのか?」
「はい。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え、えぇっ!!?」
とりあえず話しかけられたら返事をしよう、という考えが裏目に出てしまった。
あの行動を肯定してしまった風斬は慌てて否定に入る。
「ち、ちちちち、違いますよ!! 決してそんな疚しい事は考えてなくてですねその・・・・・・!!」
目を回しながら言葉を紡いでいく風斬。
だが彼女は嘘をついている。正直言って、あの時はそのつもりだった。
抵抗されなければ、唇を重ねようとしていた。
だがあと一歩のところで勇気が出ず、あのような中途半端な結果に終わってしまったわけで。
「違うのか?」
「いやー・・・・・・あのー・・・・・・、はっきりと違うとは言い切れないというかその・・・・・・」
一方通行は正直に己の気持ちを吐露したというのに、自分は何故そんな彼に嘘をついているのか。
だが違わないと言ってしまったら、あの行為を肯定してしまうということになる。
どっちを取っても恥ずかしすぎる選択肢に板ばさみ状態の風斬は、
「・・・・・・。 ・・・・・・、その、つもり。 だったと思います」
若干ごまかしが含まれているが、彼女は自分の気持ちを一方通行に伝えた。
もう恥ずかしすぎて逆にそれが冷静さを取り戻させていた。
顔の紅潮も、さっきよりは収まっている。相変わらず頬は真っ赤だが。
「そォか」
「あの、嫌ですよね・・・・・・、こんな事急に言われて・・・・・・」
「嬉しかったっつってンだろ」
「! あ・・・・・・」
一方通行が杖が装着されている右腕を動かし、その手が風斬の頬を優しく撫でる。
「あ、一方通行さん・・・・・・」
「だがあン時、俺はキスなンざされてねェぞ」
「そ、そうですね・・・・・・」
「だからよ・・・・・・」
一方通行がゆっくり、ゆっくりと風斬の顔に自分の顔を近づけていく。
頭の三角柱がイカれたように動きまくっている。うるさくてしょうがないほどに。
「風斬・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ここだ、と風斬は思った。
今、何らかの妨害。いや、救助が入るならこのタイミングしか無い。
しかし風斬は考え直す。今ここで誰かが入ってきたらそれはそれで嬉しいが、
やはりそれは救助ではなく妨害のカテゴリに当て嵌まるな、と。
だがその考えもすぐに自分で否定することになる。
さっき、一方通行はこの部屋の鍵を閉めてしまっているからだ。
『邪魔が入ると面倒だからな』
彼の言葉を思い出す。
誰かがここに入ると面倒になるというのは、まさか本当にこれのため?
一方通行の顔との距離はもはや残り数センチ。
お互いがほんの少し顔を近づけるだけで、接触してしまう距離だ。
(あ、あ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)
本当に誰も来ないのか?と、風斬はその目だけで辺りをキョロキョロと見回す。
別に一方通行と唇を重ねるのが嫌というわけではない。むしろ望んでいたことだ。
なぜならこれは最初、あのデートの時に自分から仕掛けた行為なのだから。
だがここまでの流れが唐突すぎた。いくらなんでもサプライズ過ぎる。
ここで誰かが割り込んで来れるとしたら、それはもうエイワスしかいない。
というか、今自分の超至近距離に存在する一方通行自体がエイワスの罠なのではとも思う。
普段の一方通行がこんなことをしてくるだろうか?あの鈍感レベル5の彼が、
急に自分の部屋に現れて、気付けばこの状況だ。冷静に考えるとやはりおかしい。
エイワスなら一方通行の姿を真似たホログラム映像などを作り出すことくらい造作もないだろう。
「ま、待ってください!」
グイッ、と体を押されて離れる一方通行。
風斬はギュッと目を閉じたまま顔を伏せている。
「わ、悪ィ。 やっぱ嫌だったか・・・・・・?
俺はオマエの気持ちに気付けたと思って・・・・・・」
「ち、違います! そうじゃないんです! ただ、その・・・・・・」
彼が今さりげなく言った言葉『オマエの気持ちに気付けた』。
その言葉に涙が出そうになる風斬。気付いてくれた嬉しさと、気付かれた恥ずかしさが
心の中をかき乱していく。
「ただ、どうしても信じられなくて・・・・・・。 今の自分の状況が夢なんじゃないかとか、
それと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・ハッ。 エイワス辺りの差し金かなンかだと疑ってンのか?」
コクン、と頷くと彼は苦笑した。
だが風斬の不安はかなりの見当違いだった。
エイワスは今現在、船の甲板に出ていた。
罰ゲームによってミーシャに水面スレスレの空中散歩を体験させられている垣根とレッサーを見て、
一人楽しんでいるのだ。
エイワスが二人の状況を知っているのかどうかは定かではないが、少なくともエイワスは
この件について一切関与していない。
つまり、今風斬の目の前にいる一方通行は紛れもない本物なのだが、
彼女がその真実を知る由もない。
「俺が偽者に見えンのか?」
「え、それは・・・・・・」
「風斬。 俺の目を見てみろ」
言って、一方通行は風斬の目を見据え、風斬もそれに習う。
見れば見るほど、彼の目は綺麗だった。
その紅い瞳は宝石を思わせるような澄んだ目。
思わず見惚れてしまう風斬に、一方通行は優しく微笑みかける。
「ボウリングの時に言ったよな? オマエがストライクをとったら、
俺はオマエを一生愛するってよ」
「はい・・・・・・」
「その言葉、今ここで有言実行しちゃ駄目か・・・・・・?」
「・・・・・・いいえ。 駄目じゃないです」
目の前の一方通行は間違いなく本物だ。風斬は彼の目を見て、今度こそ確信する。
学園都市地下街のすき焼き屋から始まり、色々と頑張ってきた風斬だが、
ついにその努力が報われる時が来たのだ。
「わ、私も・・・・・・、」
風斬は意を決して言葉を発した。
「私も・・・・・・あなたのこと、愛してますから」
二人は顔を寄せ合い、その唇を重ねた。
「ん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
彼の唇は予想以上に柔らかく、気持ちの良いものだった。
頭が蕩けそうになる。全身が脱力していき、体を支えていられなくなった。
風斬はベッドに仰向けで倒れこんでしまう。
「あ・・・・・・、」
「こォして見ると、ホント可愛いなァオマエ」
そう言って一方通行が覆い被さってきた。
そしてそのまま、二人は再び唇を密着させる。
唇と唇で奏でられる艶めかしい音だけが部屋の中を支配していた。
「! んむ・・・・・・」
突然、風斬の口内に違和感が侵入してきた。彼の舌が入ってきたのだ。
急な出来事に風斬は驚いたが、一方通行の舌の動きにすぐに頭がボーッとしてきた。
何も考えられない、頭の中が真っ白になっていくのがわかる。
一方通行の舌が自分の口内にある舌を、歯を、歯茎を、丁寧になぞっていく。
こうしている間も、二人は抱き合っている。
一方通行の体の暖かさが衣服越しに伝わってくるのを感じた。
「・・・・・・っは。 はぁ・・・・・・、はぁ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
随分と長い間キスをしていたような気がする。
二人が顔を離すと、その口元には淫靡な糸が引いていた。
「大丈夫か・・・・・・?」
「は、はい・・・・・・」
一方通行が優しく頬を撫でながら心配してくれた。
それだけで彼女の心は満たされていく。満たされていくどころか、とっくに許容量をオーバーしてしまった。
一方通行は再び風斬と唇を重ねると、そのまま首筋の方へと舌を這わせていく。
彼女から香ってくる甘い匂いに、一方通行は思わず顔を押しつけていた。
「あ・・・・・・! んっ・・・・・・、」
ピクン、と体を震わせる風斬。彼女の息遣いが更に荒々しくなるのが分かる。
鎖骨辺りを刺激すると、風斬は強い力で一方通行を抱きしめた。
彼女の荒い吐息が、一方通行の耳に当たる。こんな些細な事ですら、気持ちがどんどん高揚していった。
「風斬・・・・・・」
「は、ぁ・・・・・・!」
一方通行は風斬の胸にそっと手を置く。信じられないほどの柔らかさがその白い手に伝わってきた。
優しく撫で回していく一方通行の様子を見て、風斬はこう言った。
「あ、一方通行さん・・・・・・」
「なンだ?」
「あの・・・・・・、もっと激しくしても・・・・・・、いいですよ・・・・・・?」
恥じらいながらもニコリと微笑んでそう言ってくる風斬。
その顔や首、そして鎖骨付近は既にじんわりと汗ばんでいる。
一方通行だって一人の男だ。
そんな彼がこのような事を目の前で言われたら、さすがの第一位でも理性のベクトルは制御出来ない。
「風斬・・・・・・!!」
「ひゃっ、ん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!」
一方通行は強引に彼女が着ている服を破っていった。
風斬が着ている服はいつもの制服だった。この状況だとそんな風斬の姿はとても魅力的に見えて――。
「はぁ、はぁ・・・・・・」
「くっ・・・・・・!」
制服は驚くほど簡単に破れ、前面を大胆に公開する形になっていた。
白のブラジャーが一方通行の眼前に出現する。彼女が呼吸をするたびにその豊満な胸とともに揺れていた。
彼女は全身が汗で湿っており、それがまたなんとも言えない艶やかさを演出している。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・もォ後戻りは出来ねェぞ」
「構いません・・・・・・、大好きなあなたとなら」
それ聞き、一方通行はブラジャーの隙間から手を入れ、まさぐっていく。
部屋には風斬の甘い喘ぎ声だけが響いた。
――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――
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――――
――
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・と、いうような展開に持っていける可能性もあるというわけだ。
夜は時に人を狂わせる。 どうだろう風斬氷華、ここは一つその可能性に賭けて、」
「そんなのあるわけないじゃないですか!!! バカーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」
風斬はエイワスに激昂し、顔を真赤にして頬を膨らませながらプンプンと怒ってレジャー施設を出て行ってしまった。
あのような妄想を垂れ流しにされては、女性として怒るのも当然というべきだろう。
エイワスはそんな風斬の様子を見てクスクスと笑っていた。
「やれやれ、そのぐらい積極的にいかないといつまでも経っても振り向いてはもらえないぞ?
まぁそうなれば私は、このもどかしさを何時までも堪能させてもらうまでだがね・・・・・・」
エイワスは片手に金のカクテルが入ったグラスを持ち、一口で飲み干す。
そしてその顔に笑みを貼りつけたまま原典の方に目を向け、続きを読んでいくのだった。
【次回予告】
『私は君たち『新たなる光』の目的などに興味はない。
力を貸して欲しいというなら一方通行に直接頼めばいいのでは?』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』の構成員・エイワス
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・たかが一国のために、こんな大きな力を持った勢力であるあなた達が、
頼み込んだだけで力を貸してくれるわけないじゃないですか・・・・・・』
―――――――――――魔術結社予備軍『新たなる光』の構成員・レッサー
『俺は第三次世界大戦に参加できなかったからな。
それにそろそろ鬱憤も溜まってきてた頃なんだ、嬉しくもなるだろ』
―――――――――――『天使同盟』の構成員・垣根帝督
続き
一方通行「フラグ・・・・・・じゃねェだろ」 エイワス「まだそんな事を言っているのか」【3】

