後編部分のみ読みたい方は、 >>60 へ
男「いや、そんな事一言も言ってないからな。これからお前が暇かどうか聞いたんだ」
幼馴染「あら、そんな事聞いてどうするつもり?もしかして、予定が無くて暇しているわたしの家にいきなり乗り込んできて、親がいない事を良い事に無理矢理抵抗出来ないわたしの下着を脱がして口に突っ込んで、そのまま無茶苦茶にする気でしょ?」
男「新しくゲーム買ったから、一緒にやろうと思ったんだけど」
幼馴染「なるほど、買ったのはえっちなゲーム。わたしの目の前でえっちなゲームをして、そういう場面ばかり流す算段ね。それから性知識の薄いわたしに『もっとえろい事教えてやるよ』と言って色々な事を手取り足取り教え込むのね。この策士」
男「馴染ってこのゲームやり込んでたろ?だから協力プレイとかしたいなぁって」
幼馴染「……まさか策士を上回る奇術師だったなんて。逆に教えられたい派……つまりえっちでは受けに回りたいって、そういう思惑なのね」
男「って、考えてみりゃ馴染は結構進んでるから初心者と一緒にやるの面倒か。やっぱ止めとく――」
――ぎゅっ
幼馴染「……い、一からキャラ作るから……一緒にやりましょ」
男「あ、あぁ……な、馴染、袖伸びちゃうから、あんま引っ張るなって」
元スレ
幼馴染「あら……わたしとえっちしたいんじゃないの?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1420726553/
【4Gよりも4なのは】
幼馴染「それにしても、今更4を買ったのね。新しい物がもう出ているのに」
男「CMでやってた4Gだろ?俺飽きっぽいからさ、途中で飽きても嫌だし、だったら中古も安いこっちにしようかなって」
幼馴染「なるほど……『俺は飽きが早いから、新品を徐々に調教するよりも、中古の調教済みの方が好みだぜ』と暗に訴えているのね。鬼畜魔人」
男「だってさ、1000円くらいで買えるならそっち選ぶだろ」
幼馴染「……貴方の鬼畜思考は読めているわ。前に所持していた女子の姿を想像し、それを元にキャラを作り、そして――わざと卑猥なモンスターにやられる気でしょう。そして暗転した一瞬の内に何が起こったのかを妄想の肴にし、色んな意味で満足するのよ。1000円の元は取れるわ」
男「……まぁ、一番は馴染がこれしか持ってなかったからなんだけどな。ほら、4なら一緒にやれるだろ?」
――ぼすっ
幼馴染「……い、一緒にヤレるとか……やっぱり貴方はいやらしいわね。……いやらしいわ」
男「どうして鞄で顔を覆ってるんだ」
【その子を選んだ理由】
幼馴染「今日、友に口調を直したらもっと人付き合いが楽になるって言われたの。余計なお世話だけど。余計なお世話なのだけど」
男「お、おう。あぁー……そういや学校にいる時、変な御淑やか口調してたけど、あれの事か?」
幼馴染「友が薦めてきた蔵書を昼休みの間に読み終えて、一字一句逃さず完璧に暗記し、それを復唱していたのよ。5人のヒロインの中で一番違和感のないキャラを選んだつもりだったのだけど、どうだったかしら?」
男(無表情、棒読みでいきなり淑女口調で会話を始めたから、何かの前兆かと勘繰ってしまってたんだが……なんと返すのが正解なんだ)
幼馴染「あら、やっぱり貴方のような鬼畜ドSは純真無垢な子が好きなのね。もしくは生意気な子を自分好みに調教、かしら」
男「あぁー……そうだ、馴染は何でそのキャラ選んだんだ?真似し易いから?」
――ぼすっ
幼馴染「……わたしは読み終わってるから、読んで見ると良いわ。あぁ返すのは明日で良いわよ」
男「な、馴染?なんで顔面に小説押し付けて来るんだよ」
幼馴染「……その巻で主人公に告白する子だからよ……おばか」
【悪戯好き】
幼馴染「あ、そういえば……後で貴方の家に行くから。留守にしないでおいてね」
男「へ?なんか今日あったか?」
幼馴染「小母様と小父様が夜遅くなるから、貴方の夕飯を作ってくれってお願いされたのよ。ついでに明日のお弁当の仕込みも出来るし、貴方が課題をサボらないか見張れるし、一石二鳥だから引き受けたわ」
男「――……一言も聞いてないんだけど」
幼馴染「貴方が遅刻寸前まで惰眠を貪っている間に、小母様から頼まれたのだから当然じゃない。あぁ家族がいないからと袋の鼠になったわたしを駆除しようとするのは駄目よ?無論性的な意味で」
男「いや、確かに遅刻ギリギリまで寝てたけどさ。それでも息子に一言も伝えないのはどうなんだ」
幼馴染「ふふ、わたしは貴方の驚く顔が見れて満足よ。さ、課題もやるから準備しておきなさいね」
男「――……はい」
【女教師とは】
――カキカキ
幼馴染「……………………」ジー
男「ここがx^2だとして、そーいやこれ公式あったな。それを当てはめると……――なぁ」
幼馴染「あら、解けた?それとも分からないところがあったのかしら?」
男「いや違くて、あんまり見られてると集中し難いんだけど……。そういう馴染は課題しなくても良いのか?かなりの量だろこれ」
幼馴染「教える側の人間が、問題の解き方把握してない、なんて思う?きちんと昼休みの間に片付けてあるわよ。もしくは質問に託けて、暗にわたしの服装への不満を訴えているのかしら。女教師役ならタイトスカートだろ、と」
男「……あー、暇ならゲームでもしてて良いんだぞ?ずっと見てても退屈だろ」
幼馴染「それで貴方が集中出来るなら良いのだけど……人って、周りに影響され易いのよ?身近で遊んでる人がいたら、気になって勉強に集中なんて出来る訳ないんだから。それに……退屈なんてしてないから、気にしなくて良いわよ」
男「そっか。それなら良いんだけど……あ、それと馴染、ちょっとここが分かんなくて――」
――カキカキ
…………
……………………カッ
幼馴染「……そういえば、貴方の持っている参考資料的には、女教師はタイトスカートとセットで黒タイツなのよね。忘れていたわ」
男「」ビクッ
【貴方の好物】
男「や、やっと終わった……っていうか明日が提出日なのに、この量の課題出すってどうかしてるだろ」
幼馴染「問題自体は捻られてないし、必要な公式と応用の仕方さえ覚えていれば、遅くても2時間掛からない量じゃない。他の教科は課題も出てないし、生温い方よ。さてと……それじゃぁわたしは夕飯の準備してくるわね」
男「……俺も手伝おうか?」
幼馴染「じゃが芋の皮すら剥けないのに、手伝いも何も無いでしょ。出来るだけ早く作るから、テレビでも観て待ってなさい。あ、それと、料理中のわたしに背後から抱き着くなら、事前に一声掛けること。料理最中にあんな事されたら危ないんだから。裸エプロンなら……そうね、着替えと心構え含めて……30分は欲しいわ。流石にハードル高いもの」
男「しないし裸エプロンも頼まないからな!いやさ、朝飯も馴染に任せっ放しだし勉強も見て貰ったし……なんか手伝えたらなぁって」
幼馴染「あら、わたしは別に見返りなんて期待してないわよ。全部わたしが好きでしている事なんだから。そうねぇ……幼馴染として、あえて言うなら……次のテストで少しでも良い点を取るように努力なさい」
男「……今日の夕飯って何?」
幼馴染「露骨な話題変更ね。まぁ、テスト前は勉強漬けにする予定だから別に良いけど……それと――」
幼馴染「貴方の好きな豆腐ハンバーグにしたからね」ボソ
男「いっ!? いきなり耳元で言うなって!」
幼馴染「ふふっ、相変わらず耳が弱いのね。ふぅ、満足満足。それじゃ、大人しくしてるのよ」
【毎日味噌汁を(ry】
幼馴染「どうかしら?普段通りだと飽きちゃうだろうし、少しばかり趣向を凝らしてみたのだけど」
男「……きのこを入れた?」
幼馴染「近いけど、不正解ね。なら優しい先生が、即興で脳内構築したクイズ形式のヒントを出してあげるわ。――小さい時は皮被り、大きくなって皮が剥け、立派にそそり立つ物ってなんでしょう。最初がタ行で、最後が『コ』の物よ」
男「――あぁ、タケノコか!通りでコリコリしてる筈だ」
幼馴染「豆腐ハンバーグの柔らかい食感に、良いアクセントでしょう?それとコリコリって何だか卑猥な響きよね。他にも麺がシコシコしている、ちゅーちゅーと飲み物を飲む……あら、上級者の貴方はふーふーと息を吹き掛けるだけでも興奮するのかしら?」
男「おぉ、味噌汁も美味いな!なめたけも入ってるし……んー、ずっと飲みたいくらいだ」
――ダンッ
幼馴染「お、おおおおおお……っ!えほっ、えほっ!…………こほん。御代わりいるでしょう?早く御茶碗を寄越しなさい。そ、それと……味噌汁くらい、毎日作るから、安心なさい」
男「おい馴染、俺まだ飯半分くらい残ってるぞ。っていうか派手に咽てたけど大丈夫か?」
【怪奇現象?結局は只の仕掛けじゃない】
『お分かり頂けただろうか?修学旅行中に撮影された男子生徒の集合写真の中に紛れて映る、その黒々とした姿。一番左の生徒の影に注目して頂こう。そう、影に紛れた松崎しげるが紛れ込んでいるのである』キャー
男「なんか最近の心霊特番ってこう……あー作り物だなって直ぐに分かるもの増えたよな」
幼馴染「合成の仕方が海外と比べて安っぽい事が、そう思わせるのでしょうね。海外の映像は良く出来ているもの」
男「……馴染は怖かったりしないのか?」
幼馴染「あら、もしかして少女漫画並みの展開を期待したの?残念な事に、わたしは科学で証明不可能な事は信じない主義なのよ。でもこの場合は業とでも怖がった方が良かったかしら。そうして貴方は怖がって縮こまる無防備なわたしを組み伏せる気ね。それで口を塞ぎながら『ホラー映画以上に怖くて、痛い思いをさせてやるよ』という気に違いないわ。あら鬼畜」
――ぎゅぅぅぅぅ
男「ならがっつりと腕に引っ付くのを止めてくれないか。その……色々当たってるんだが」
幼馴染「貴方は知っているかしら。幽霊は突き詰めればプラズマで説明付くのよ?結局科学で説明出来るちんけな物なんだから。物が揺れるポルターガイストも、電磁波が原因になっているに過ぎないの。ただの幻影錯覚なの」
男「……あー……ホットミルクでも飲んで落ち着くか?俺作ってくるからさ――」
――――ぎゅぅぅぅぅぅぅぅ
幼馴染「い、行っちゃ駄目よ……おーくん、傍にいなさい」
男「あー……はいはい傍にいるからなー?」
(っていうかてんぱった時におーくん言う癖は治ってないのな)
【朝起こすのは基本】
――ジリリリリリリリリリリ……ゴンッ
幼馴染「あら……頑丈な目覚ましを贈って良かったわ。毎朝こんな止め方してたら、普通は機械が持たないわよね」
男「んぅぅ……ぐぅ」
幼馴染「あんなに大音量な目覚ましを枕元で聞いても起きないなんて、どれほど眠りが深いのかしら。寝不足……はないわよね。部屋の電気は1時には消えていたし。……となると、自慰による疲労という可能性も……」
男「すぴぃ……」
幼馴染「1回の自慰は、100mを全力疾走した時と同等の体力を消費する……らしいし。もはや毎日が陸上部レベル……。しかもわたし達の年代だと、日に2回は平均で致すのよね。多い人は3回、4回……惰眠を貪るのも納得ね」
――グググググゥ
幼馴染「でも、そろそろ起きて貰うわよ。貴方の遅刻に巻き込まれる訳にはいかないんだから」
男「うぅ~……なじみん、あとちょっと寝かせてくれ……」
幼馴染「誰がなじみんよ。ほら、早く起きなさいな。朝御飯も冷めちゃうじゃない」
【二人乗り?勿論です、プロですから(幼馴染の)】
幼馴染「まさか寝坊した挙句に、だらだらと朝食を嗜むなんて……相変わらず良い度胸してるわね」
男「悪かったって!今日休みだと思ってたんだよ!」
幼馴染「祝日の休みは来週に振り替えたって、何度もLHRで担任が言っていたじゃない。まさか休日だと早合点し、小躍りした挙句に人の話も聞かずにいた……とか、そんな小学生並みの理由ではないわよね」
男「……あ、馴染!坂道だからしっかり背中に掴まれよ!」
幼馴染「ふふ……話を逸らすのは、相変わらず下手なままね。それより貴方は知ってるかしら?自転車の二人乗りは、列記とした道路交通法違反なのよ。警察に見つかったら注意勧告されて、学校にも連絡がいって……なるほど貴方はそれを狙っているのね。標的は婦警かしら?わざと捕まるような真似をして婦警の注意を引き、あわよくば本物の婦警といやらしい事を致そうという魂胆ね」
――ポムポム
男「……さっきから頭触ってるけど、どうかしたのか?」
幼馴染「後ろの方の寝癖、付いたままだったのよ。でも……やっぱり手じゃ無理ね。学校に着いたら直しなさいな」
男「跳ねてるって言っても……どれくらい跳ねてるんだ?」
幼馴染「――そうねぇ……妖怪が寄り付いてきそうなくらい、かしらね。ね、鬼○郎?」ポム
男「着いたら直ぐに直すわ……」
【高嶺の花の幼さん】
「今回の学期末テストも学年1位だったんだってよ、幼さん!しかも全科目!」
「模試でも全国トップクラスだったのよね。流石だわぁ~……」
「聞いたか?幼さんの運動テストの結果、歴代で5本指に入るレベルだってよ。何で陸上部入らないのかねぇ、勿体無い」
「顔もスタイルもモデル顔負けだもんな。知ってるか?あのバスケ部の部長の告白、軽く振ったらしいぜ」
「やはり次期生徒会長は彼女しかいないな。今回は自薦のみでなく、他薦制度も導入しようか」
幼馴染「やはり学校でのプレイは多岐に渡るわね。空き教室、保健室、準備室、体育館倉庫、体育館裏、プール、シャワー室、図書館、屋上……あら、わたしとした事がメジャーな所ばかり挙げてしまったわね。マイナーな場所も外せないわね。ドS、鬼畜魔王な貴方としては放送室でマイクON状態生放送公開プレイも捨て難いわよね」
男(なぜ言われてる本人はこんなにも残念なのだろう)
【授業中の思考】
男(他の生徒が寝てるような授業中、幼馴染はどんな事を考えてるんだろうか。例えば古文――)
幼馴染(……源氏物語ってえろいわよね。こう、泥のような物があるわ。兄の婚約者を寝取ったり、それが敵の娘だったりと。敵の娘って事は、最後には軍に慰み者として引き渡す場面もあれば……駄目よ、それじゃ寝取られ物過ぎてくどいもの)
幼馴染(しかも、源氏は22歳……紫の上は14歳。年の差……8……行為に及ぶこと自体が問題な訳で、年の差的にはあまり問題ないのかしら。力で捻じ伏せ屈服させる……響きが力強くて良いわね。無理矢理はあまり好きじゃないけど。愛が無いものね)
男(数学……は流石に真面目だろうな――)
幼馴染(π……安直ね。中学生並みだわ。ω……分からなくはないわね。√45450721=6741.7……まぁ、そうなるわね)先生達「「生徒、幼さんは自分達の授業を良く聞く優等生だ」」
男「駄目だやっぱ!」
【料理も上手】
男(やっと昼休みか。体育とか体動かす科目が無い日だと、なんか長く感じるんだよなぁ。っと、弁当弁当……――、あれ……?おっかしいな、弁当入れた筈なんだけど……あー、そういや遅刻しそうで焦ったから、置いて来ちまったかも)
――コトン
幼馴染「貴方が鞄の中身に手を突っ込んで、女性の体を弄る様に激しく嬲っているのは、これを探しているからかしら?」
男「ん?あー弁当、持って来てくれたのか!」
幼馴染「放置プレイをお弁当に施すまでになっていたなんて……上級者過ぎてわたしには付いていけないレベルだけど。まさか貴方は無機物が擬人化して見える奇病にでも掛かっているのかしら?随分前にそういうゲームをやっていたものね」
男「そこまで知ってるのか……って違う。馴染の弁当が美味いからさ、学食が味気なく感じるんだよな。まぁあの安っぽい感じもたまには良いんだけど……馴染が弁当作ってくれた時に学食行くのもなぁって」
――ペシッ
幼馴染「……もうちょっと、作る回数……増やしてもいいのよ?」
男「いやぁ流石にそれは悪いしな、弁当代も馬鹿にならないだろうし。っていうか馴染、何で教科書顔に当ててるんだ」
【何が始まるんです?食べさせ合いっこだ】
男「なぁ馴染……なんで弁当は持ってきたのに、肝心の箸だけ入ってないんだ。食べられないだろ、これ」
幼馴染「……アラ、ウッカリシテタワ」
男「露骨に棒読みになるなよ。なんか故意に忘れたみたいじゃないか」
幼馴染「でもほら、良く御覧なさい。こちらにきちんと一膳の箸があるわよ。使用済みだけど。使用済みなのだけど」
男「……お前今使ってるじゃないか」
幼馴染「昔の偉人達はとても聡明な頭脳をしていたわ。そして編み出したの、一膳の箸で二人が物を食べられる方法を。合言葉を合図にし、二人で息を合わせ、相手に食べ物を分け与える。人それを『あ~ん』と――」
男「学食で割り箸貰って来るわ。馴染も飲み物いるだろ?ついでに買ってくるよ」
幼馴染「あ……からかい過ぎて、冗談だと思われたのかしら。はむ……結構、恥ずかしかったのだけど」
【食べさせ合いっこだと言ったな?あれは嘘だ】
男「ほら馴染、抹茶オレで良いよな?何時も飲んでるし」
幼馴染「あ……ありがとう。確か100円だったわね。鞄の中に財布があるから――」
男「あぁ良いよ、弁当も作って貰ってるし、お礼だと思って受け取って置いてくれ。まぁこれぐらいじゃ足りないだろうけど。――って、あれ?馴染、その黒いのって俺の箸じゃないか?」
幼馴染「え?あ、この箸?これは新しく買ったわたしの――」
男「なんだ、あったなら言ってくれれば良いのに。割り箸持ってき損だったな。まぁ良いや、頂きます」ペロ
幼馴染(新しく購入したわたしの箸なのだけど……しかも今さっき使い終えたばかりの使用済みなのよね。というか食べ始める前に箸を一舐めする癖、まだ治ってないのね。まるで行為に及ぶ前に舌なめずりする獣さながら。早く治させないといけないけど……まぁ今日は役得かしら。そうよね、元はといえば御弁当を忘れた彼が悪いのだから――)
幼馴染「まさか全て貴方の計画だったりしないわよね?御弁当箱の中の箸を業と別の場所に置いたりしてないわよね?いや有り得るわ。これがお前の唾液なんだなゲッヘッヘと下衆な笑みを浮かびつつ、使用済みの箸で色々するのね。流石鬼畜魔人」
男「相変わらず平常運転だなおい」
39 : 新人 ◆4jPnOLgqH. - 2015/01/10 00:49:23.67 qP2cMHVc0 16/71これにて終了です。というより書き貯めが尽きたといいますか。
元々長々とする気はなかったので、これくらいがキリが良いと思った次第であります。
沢山のコメ、ありがとうございました。
やっぱり幼馴染は大正義だったんやなって……。
遅くなりましたが投下します。基本的に遅筆なのがネックです。
というか長いことSSから離れてたせいで語呂が絶望的に少なくなってる……ヌッ!
【この後、滅茶苦茶(ry)】
男「そういや結局、課題がきつかったせいでゲーム出来なかったよな。どうする?やるか?」
幼馴染「あら、学校にゲームを持参するなんて不良ね。勉学に必要以外な物以外は学内に持ち込み禁止という校令を忘れたのかしら?」
男「……いや、馴染だって持って来てるじゃんか」
幼馴染「わたしのこれは勉強道具だもの。ほら見てみなさい、カセットは鬼脳トレなんだから。立派な脳の勉強でしょ。脳年齢を若く保つのは大切よ?記憶力、思考能力、想像力、脳年齢が下がれば全て極端に低下するの。想像力なんて、思春期には最も必要不可欠じゃないかしら。それこそ夜のお祭り時間を満喫出来なくなるくらいに。例えば妄想の中で憧れのアイドルをちょめちょめしたり、身近な人をパオーンしたり……現実では出来ないことをね」
男「遂に自分で放送禁止用語を隠し始めたな……」
幼馴染「そういえば男性は身近な人をオカズにし難いと何処かの書物で読んだけど、やっぱり次の日会ったりすると気まずいからかしら?」チラッ
男「なぁ馴染、これ選ぶのはNEWGAMEで良いのか?最初に設定弄った方が良いとかある?」
幼馴染「――ボタン設定は後から選べるから、早く始めちゃいましょう。最初の映像長いし飛ばせないから。わたしもキャラ新しく作らないと……――貴方はわたしの事を妄想してくれてたり……しないのかしらね」
――この後、滅茶苦茶キャラメイクした
【好みの武器は?太刀?それとも――】
男「やっぱり太刀が一番使い易いな。新しい武器は結構操作が難しいし、最初は太刀でやってみるか」
幼馴染「扱い易い分盾が使えないから、相手の動きを見切らなきゃ駄目なのだけど……わたしは援護出来るように後衛武器にしようかしら。ガンナー……は散弾が誤射してしまうから使えないし、オーソドックスに弓にした方が良さそうね」
男「お、ちゃんとネコも仲間になるのか。アイルーって言うんだな、これ……なぁ、馴染、お前のネコの名前――」
幼馴染「あら強そうでしょう?ベネット。なんだか敵にやられても直ぐに平気な顔して帰ってきそうだから付けたの」
『ヤロウオブクラッシャー』トコトコ
幼馴染「大型一筋だから一目散に向かっていくわね。あ、吹き飛ばされた」
男「ベネットぉぉぉぉぉ!?」
幼馴染「そういえば貴方の装備とアイルーで思い出したのだけど、タチとネコって用語、あるわよね。あれって男性同士に適用される用語だと思っていたのだけど、女性同士にも適応されるのね。ちなみに太刀は男性のあれの隠喩で、ネコは女性のあれを指すんですって。工事現場の一輪車から考えられたらしいわ。――あ、何時の間にかベネットが力尽きてたわね、どんまい。主が仇を討つから安心なさい」
男「命が軽い……」
【貴方はどちらかしら?】
幼馴染「唐突なのだけど、わたしの拳の上に貴方の手を乗せて見てくれないかしら」
男「へ?なんでだ?」
幼馴染「興味深い事が分かると本に書いてあったから、実際にやってみたくなったの。さ、早く手を乗せて」
男「まぁ別に良いけど。ほい、これで良いか?」
幼馴染「なるほど……迷い無く拳を乗せるのね。やっぱりわたしの睨んだ通りドエ――いえ、早合点はいけないわね。じゃぁ今度は貴方の爪を見せてくれないかしら。爪で健康状態が分かると書いてあったから」
男「爪から健康……?まぁいいや、はい」
幼馴染「……これまた迷い無く手の甲側から見せてくるのね。確かこの時点で75%確定……やっぱりドS――、……いえ、25%が未確定だわ。100%じゃないと納得出来ないわね……なら質問系だけど、あっちを試しましょうか」
男「なぁ馴染、さっきからこれって何の――」
幼馴染「――ではこれから貴方に全15問の質問をします。特に何も考えず、YESかNOで正直に答えるように。先ず一問目――」
――終了 \デェェェェェェエエエエン/
幼馴染「――……おめでとう、貴方は100%純粋に一転の曇りもなくドSの性格よ。やっぱり鬼畜魔王の称号は伊達ではなかったわね。むしろ質問してるこっちが震えるほどに、綺麗にドSな回答ばかりで困るわ。選択肢のみのテストなら100点ね」
男「さっきから一体何の話だ!?」
【流石のドSだ。鈍感度が違いますよ】
男「なるほど心理ゲームか……いきなり色々やらされて、その上質問攻めされたから何かあったのかと思ったぞ」
幼馴染「でもそのお陰で貴方がドSだという事が白日の元に暴き出されたのよ。というより質問最中にあまりにドSの方の回答しか出ないから、事前に質問の内容を知っていて、わざと答えてると思ったわ」
男「俺もお前が心理本を丸暗記して質問してるとは思わなかったよ……あっ、そうだ。馴染、俺も一つだけ知ってるやつあるんだよ。えーっと……俺が出した拳の上に、顎を乗せてくれるか?」
幼馴染「――……え?えっと……そ、そうよね、わたしも質問したりしたんだから……しなきゃ駄目、よね。――……これで良いかしら?」
男「おう。それから、俺の事をじっと見てくれるか?」
幼馴染「……な、何も躊躇せず言うのね。流石ドS、しかも押せ押せ属性まであるなんて正に――」
男「早くしてくれないと終わらないんだけど」
幼馴染「わ、分かったわ。ちょっとだけ心の準備をさせて……すぅ、はぁ……じゃぁ――」
男「」ジィィィィィィィィ
幼馴染「っ!ほ、ほらちゃんと見たわよ。これで平気よね結果は出たに決まってるわよね御疲れ様」プイッ
男(…………目が合わせたれたのが一瞬だったんだが。これはドMということなんだろうか)
【好感度表示アプリ(壊れる)】
男「なんだこれ……異性からの好感度を数値化するアプリ?アプリを起動してからカメラを異性に向けて下さい。貴方をどれ程好きか数値化します。0~20は他人並み。20~40は友人並み。40~60は親密並み。60~80は恋人並みとなっています……か」
『クラスメイト女子A……13。挨拶をする程度の仲です』
男「まぁあんまり口利いた事ないし、合ってるっていえば合ってるのか。随分ハッキリ言うアプリだな」
『女子B……10。女子C……23。女子D……15。女子E……9。幼馴染……99』\デェェェェェェェェン/
男「なんだ、やっぱり無難な他人並みの数値ばっかりで――……99!? おい、80以降の説明無かったぞ!無いんじゃないのか!?」
幼馴染「あら、いきなり教室内の女子生徒に片っ端から携帯のカメラを向けて、雄叫び上げて、不審者丸出しになってるわよ。まさかそういうゲームで御用達の、何でも言う事を聞くようになる催眠アプリを発見して、意気揚々と試している最中だったのかしら」
男「い、いや、ちょっと面白そうなアプリがあって試してたんだ。でもやっぱりこういう系って当てになんないな、なんか壊れてるっぽいし」
『99……常時貴方の事を想っており、もはやその想いは熟練夫婦並みです』
【心の準備くらいさせて】
男「ご馳走様でした。馴染の弁当も良いけど、こうやって屋上で陽に当たりながらパンをゆっくり食べるのも良いな」
幼馴染「また惣菜パンばかり食べて……栄養が偏るわよ?炭水化物に比例して、野菜も適度に取らないと」
男「いや、流石に購買に行ってまでサラダ買うのもなぁって。っていうか馴染はそれだけで午後乗り切れるのか?お前、昔から小食だけど、サラダにサンドイッチだけって食べなさ過ぎだぞ。具合でも悪いのか?」
幼馴染「……良く見てくれてるのね。大丈夫よ、午後は運動系の授業もないし。それに知ってるでしょう?わたし、あまり食べ過ぎると戻しちゃうのよ」
男「そりゃそうだけど……まぁあれだ、あんまり無理するなよ。調子が悪かったら、言ってくれれば力になるし」
幼馴染「あ、あら……優しいわね。でもわたしには貴方の考え方がするっとまるっとエブリシング御見通しよ。わたしの好感度を上げて、最後はこの屋上で青空プレイにしけ込もうというのでしょう?ここまで行くと奇術師ね」
男「お、おい、俺はお前の事を本気で心配して――」
――ムニッ
幼馴染「こ、こっちを向いては駄目よ……絶対に。む、向いたら貴方のことを嫌い……には絶対にならないけど、軽くつねるから。それと……いきなり嬉しい事言わないで。せめて心の準備をさせなさい10分くらい。はぁ……頬が熱いわ」
男「な、馴染、何で寄り掛かって来てるんだ?っていうか頬を指で突かれると痛いんだけど……」
【トイレに行きたい?結構。なら益々漏らしたくなりますよ】
幼馴染「貴方は知っているかしら。相手と回避する方向が被り、それに反応して両者共に更に回避しようとするという悪循環。今のわたし達の状況を、正式名称で連続回避本能というのよ。最近までこの現象に名称があるなんて思いもしなかったわ」
男「へぇ……それはそれとして、出来れば避けてくれると助かるんだが」
幼馴染「10回以上避ける方向が被っているものね。もしかして密かに御手洗を我慢しているわたしを無理矢理引き止めて、この場で漏らさせる気かしら。幾ら鬼畜とはいえ公共の場で相手の失禁を誘うのはどうかと思うわ。せめて個室で、なら……んっ……ちょ、ちょっと不味いわ」
男「お、おい大丈夫か?」
幼馴染「……わ、わたしは左に避けるから……貴方は右に避けて」
男「お、おう。それじゃぁ……せーの――」
――ドンッ
幼馴染「な……何故、わたしと同じ方に来るのかしら……っ。んぅ……で、でちゃぅ」
男「いやお前から見て右に避けるのかと思って!ちょ、ちょっと我慢しろよ馴染!この抱き着いたままの体勢なら、立ち位置を反転させて――」
幼馴染「あの……離れないでくれるかしら。今、貴方の脚がわたしの……その、そこから離れると……絶対に漏れちゃうから」
男「……ど、どうすりゃ良いんだ?」
幼馴染「この状態のまま……お手洗いまで、連れて行って……」
【処女雪の響き】
――ガラガラ……コロコロ
――――カランカランッ
「おめでとう!銅賞の、冬のゲレンデにカップル様一泊二日御招待!」
幼馴染「……個人的には銀賞の温泉旅行の方が良かったのだけど。とはいえ近場だし、こちらの方が行き帰りは楽よね。それに……カップル限定なのが銅賞な理由かしら。それにしても、商店街の福引にしては物凄く奮発したものね」
幼馴染(雪……前に少しだけ降ったけど、この辺りはあまり積もらないものね。クリスマスに降ったら素敵なのだけど……いえ、クリスマスには色々なホテルで沢山の雪(隠喩)が降ってるわね)
幼馴染「ホテルで降る雪はともかくとして……スキーなんて一度も経験ないけど、スキー道具は向こうで貸し出ししてくれるのよね。行くとしたら……スキーウェアとかを買わないといけないのかしら。スキーウェア……ネットなら安く買えるかも」
――――プルルルル ガチャ
男『馴染、どうかしたのか?』
幼馴染「よく小説で見る処女雪って響き、卑猥よね。ただ他の人に踏まれていないだけの雪なのに、特別に見えてしまうわ。それはそうと、これから貴方の家に行くから、スキーに行く計画を立てましょう。必要な物も見繕わなきゃいけないし、早い方が良いもの。一泊二日だそうから予定が開いてる日も確認しておいてね。それじゃ、また30分後に」
男『え、どういう事だ!? 処女雪!? スキー!? っていうか一泊二日って何!?』
【カップル様仕様となっております】
男「買い物先で福引き券を貰って、商店街の福引きで銅賞を当てて、それがスキー場に一泊二日券だった……と」
幼馴染「あの電話で伝えたでしょう?スキーに必要な物を見繕って、二人の予定が開いてる日を確認するって。……スキーウェアって思った以上に安いのね。でも、一応駅の近くのデパートにも値段を見に行った方が良いかしら」
男「いや全然伝わってなかったぞ……っていうかスキーの話するなら処女雪の件要らなかったんじゃ……」
幼馴染「あら、開口一番で聞き手の興味を引き付けるのは基本よ?処女雪はインパクトもあるし、相手が喰いついて来るじゃない。ドSの貴方ならば"処女"という単語だけで涎垂ものでしょう……それに加えて雪が降り積もった場面の描写付き。処女雪と言っただけで、そのフレーズを出した女の子の初めてを雪の上で奪うシチュエーションまで想像可能よね」
男「インパクトあり過ぎて、その後の話が全く見えなかったんだが」
幼馴染「この紙によると……事前にこのペンションに予約を取るようね。スキー場では、このチケットがリフト券としても使えるみたい。ペンション……ホテルには泊まった事があるけど、ペンションはないわね。スキー場から少し奥まった場所にある――、という事はわたしが貴方に襲われて助けを求めても、救助は一切来ない訳ね……貴方はそれを見越して……やはり策士ね」
男「これがそのペンションか?……へぇ、温泉もついてて良い所じゃないか。っていうかカップル用なんだな、このチケット」
――ガタタッ
幼馴染「か、カップルという大儀名分を手に入れた貴方は……わたしに青空の下でいやらしい事をしまくる気なのね……い、いやらしいわ」
男「馴染……何で炬燵の中に潜り込んでるんだ?」
【お見通しの馴染さん】
男「まさかスキー場まで行く手段がバスのみなんてなぁ。まぁ久々に乗れて新鮮だけどさ」
幼馴染「大抵は商店街で事足りるし、遠方に行くならバスよりも電車を使った方が早いし。バスを使う事自体が限られてしまうものね。男の人の資料では良く舞台として重宝されるのに。痴漢モノや逆痴漢モノ、あとは停車したバス内で無理矢理――」
男「ほら馴染、見てみろよ。雪山が見えてきたぞ」
幼馴染「あら……綺麗ね。ねぇ、あっちには小さな家が結構あるわ。あそこの近くがペンションかしら……それとも別荘地かしら。あの周辺だけでクリスマス当日にどれ程カップル達の雪(隠喩)が降り注いだのか……少し興味あるわね」
男「あそこでスキーか。久し振りだから楽しみだな。……あー、なんか着く前に小腹減って――」
幼馴染「はい、御握りを作って来ておいたから食べなさいな。ちょっと小さいけど……右から鮭におかか、梅紫蘇にツナマヨよ」
男「お、ありがと。むぐ……うわ、このツナマヨ美味いな。ちゃんと具から作ってあるし」
幼馴染「貴方、ツナマヨ好きよね。わたしは梅紫蘇を貰うわね……ふふ、こういうの、ピクニック気分と言うのかしらね」
男「なんかバスに乗ってると変に腹が減ったりするよな……うっ、なんか吐き気が――」
幼馴染「はいこれ。乗り物酔いが起こった後でも飲める酔い止めらしいわ。わたしのお茶あげるから、早く飲みなさい。え?きつい……?あぁもう……少しだけでも横になる?はい、膝枕してあげるから、横になりなさいな……もう、子供の頃から変わらないわね」
【気に入ったのは――色だ】
男(ようやくバス酔いが治まった……ほんと乗り物酔いし易いんだよなぁ俺。そういや子供の頃も馴染に看病されてたっけ。っていうか馴染、着替えに結構時間掛かってるな。化粧とか買い物とか……なんで女子ってこんなに時間かかんだろ)
――ポンポン
幼馴染「ごめんなさい、待たせちゃったかしら」
男「ん?あぁ馴染か。いや、そこまで待ってないけど、俺の倍くらい掛かってるから、何かあったのかなって心配しただけだ。――っていうかその……スキーウェア、似合ってるな。何であんま悩まずにパッと決めたやつを、そんなに着こなせてるんだ」
幼馴染「あら、即決した訳ではないわよ?ちゃんとネットで綿密に下調べをして――……途中にえっちなサイトを覗きながら……、それから貴方と買いに行ったんだもの。あの小さな御店にサイズも丁度で、希望した色の物があったのは予想外だったけど。えっちなサイトで観た御店の内装にそっくりだったし……少し驚いたわ。それに……この色、貴方好きでしょう?」
男「あぁー……確かに俺の好きな色だけどさ。でも何でそれを選んだんだ?馴染の好きな紫のやつもあったのに」
――ペシッ
幼馴染「さて、先ずスキー道具を早く借りに行かないと。あ、そのチケット無くしては駄目よ?リフト券なんだから」
男「だったらなんで俺への目隠しに使ってるんだ……?」
幼馴染「――貴方の好きな色のわたしを、見て欲しいからよ……鈍感」
【何所で足のサイズを知った?】
幼馴染「貴方はスキー板にも色々と種類がある事を知っているかしら。先ずわたし達が使用する一般的な物をオールラウンドというの。ゲレンデ……圧雪された場所での用途に優れ、操作性を重視した物よ。正に初心者用のスキー板ね。次にオールマウンテン、これは板が全体的に大きい物ね。ゲレンデ外……雪山とかの柔らかい場所で使うみたい。沈まないようにね」
男「へぇ、スキー板にも外で使う用とかあるんだな。一種類だけかと思ってた」
幼馴染「貴方は横広のスキー板と聞いて、それを床代わりにわたしを雪の中で押し倒す場面を想像をしているのね。とても鬼畜。流石にスキー板を下に敷いたとはいえ、真冬の空の下で行為に及ぼうとするのは危険よ。凍傷や風邪をひいてしまうわ」
男「って事は……あの棒みたいなのも種類とかあるのか」
幼馴染「棒……あぁストックの事ね。あれは基本的に素材によって値段が決まるだけで、種類とかは無いわよ。ストック……貴方なら『この棒でお前の初めてを散らせてやるぜ』と下衆な笑いを浮かべながら振り回すのね」
男「お、馴染、先に靴のサイズとかをこの紙に書いておいてくれってさ。確か馴染の靴のサイズって24だよな」カキカキ
幼馴染「……?何故貴方は、わたしの靴のサイズを知っているのかしら」
男「そりゃ登校前に玄関で何時も靴見てるし、嫌でも分かるさ」
幼馴染「……そういう変なところばっかり、勘が鋭いんだから。もっと鋭くなるべき所があるでしょうに」
【余裕の滑りだ。スキー板が違いますよ】
幼馴染「確かスキー板をくの字にすれば、ブレーキが掛かるのよね……す、ストックは使わないのかしら?」
男「大丈夫だって、その体勢にしとけば滅多な事が無い限り進まないから。それに止まる時にストックを使うのは危ないぞ。ストックに引っ張られて後頭部から転んだりするし、止まるならくの字を維持するだけで良いんだ」
幼馴染「止まっている為とは言え、常時内股は結構足にくるわね。まさか貴方はわたしに業と内転筋を鍛えさせて、素股の練習をさせ――」
男「おい馴染、そろそろ滑らないと。止まってるだけじゃ上達しないだろ」
幼馴染「人がまだ恐る恐る挑戦してる最中だというのに急かすなんて、流石鬼畜魔人ね。……板を平行にすれば前に進むのでしょう?」
男「そうそう、そうやってスキー板を真っ直ぐに――おい待て何で俺の方向に向かって突っ込んで来るんだ、待って、止まれ!うわー!」
――キキィ……ドンッ
幼馴染「ら、ラッキースケベなんて非現実特有の産物だと思い込んでいたけど、本当に存在したのね……んっ」
男「おい馴染、なんか目の前真っ暗なんだけど。なんだこの柔らかいの、雪か?」
幼馴染「――……御尻だけど、わたしの御尻なのだけど。あんまり揉みしだかないでくれるかしら。その……感じてしまうから」
【その後2時間ほど練習を続けた結果――】
幼馴染「上級者コースもそこまで急な訳ではないのね。所々にあるポールは、間を潜れという事かしら」
男「中級者コースからしてみれば大分急な坂になってるけどな……無理にポールは潜らんでも良いし、スピードは付け過ぎるなよ」
幼馴染「この2時間で大体のコツは掴めたから平気よ。それにしても急な坂道を上から眺めていると、若干上島竜兵の気持ちが分かるわね。押さないでと、つい言ってしまいそうになるわ。あぁこれは『押して』の意ではないから勘違いしないように。そして貴方はその心身共に危機的状況を利用して、スキー板で満足に身動きが取れないわたしに、背後から悪戯する訳ね。ドSここに極まれり」
男「っていうか本当に2時間くらいで俺より上手くなるんだもんなぁ。運動神経が良いと、物覚えも良いのかねぇ」
幼馴染「腰の捻り方と脚の動かし方さえ掴めば、佃煮の作り方を覚えるより容易いわよ」
男「何故佃煮だ」
幼馴染「あら、醤油に砂糖の目安がアバウトだから、以外に作るの難しいのよ、佃煮。それに……貴方と一緒に滑りたいもの。ずっと教えてばかりで退屈だったでしょう?」
男「いや、何時も馴染に勉強とか教えて貰ってるしな。その恩返しもあるし……その、まぁ……普段見れない、躓いて転んでる馴染も可愛かったしな」
――ドサッ
幼馴染「ひ、人が痛がっていたところを可愛いなんて……やっぱり貴方はドSね……き、鬼畜だわ」シュー
男「おい馴染、いきなり雪に顔面突っ込むのはどうかと思うんだけど――雪解けてる!?」
【食べさせ合いっこリターンズ】
男「冷めた体を暖めるには、やっぱりうどんだよな。きつねうどんがやっぱり定番――」
幼馴染「貴方、昔からうどん好きね。年越しの時も変にうどんに拘るし。わたしは細いから啜り易いし、匂いが楽しめるから御蕎麦の方が好きだけど。そういえば……はい、貴方かき揚げ好きよね。午後もスキーで動くのだから、今の内に食べちゃいなさいな」
男「……かき揚げ食わないのに、何でかき揚げ蕎麦頼んだんだ」
幼馴染「普段貴方が食べてる量からして、うどん一杯では物足りないでしょう。とはいえ追加で一杯は食べ過ぎだし、かき揚げ一個で十分だもの。それとも必要以上に食べて、自分が肉食系男子とアピールしたいのかしら。この有り余る食欲でお前をスキー最中に後ろから襲ってやるぜと」
男「馴染は蕎麦だけで足りるのか?朝飯だってあんまり食ってなかったし」
幼馴染「わたしは元々小食だって知っているでしょう?御蕎麦だけで十分よ。それに……再挑戦、してみたいし」サクッ
幼馴染「ほら、早く口を開いて。かき揚げを箸で摘んでいるの、結構疲れるんだから」
男「……へ?いや、普通にうどんに入れてくれれば――」
幼馴染「そ、そう、わたしがこんなに恥ずかしがってるのに、鬼畜閻魔の貴方は更にその上の恥辱を欲しがるのね……。もしくは先人達の教えにならって、この行為を忠実に再現しろという事かしら……。なら――はい……あ、あ~ん」
男「いや馴染、御膳で顔を隠しながらかき揚げを近づけられても――あつっ!? 馴染、頬、頬に当たってるって!二人羽織みたいになってるって!」
【リフトの上で】
幼馴染「リフトって、何度乗っても慣れないわね。考えてみて、足にスキー板を着けたままで身動き取れずに空中ブランコさせるのよ。ベルト無しで。かなりの鬼畜が編み出した移動法に違いないわ。加えて、スキー場では使用必至な移動手段……策士ね。きっと女性が空中で震える様を眺めながら、ワイン片手に高笑いを浮かべていたのでしょうね」
男「下を見ないようにしたらどうだ?変に意識すると逆に怖くなるぞ」
幼馴染「貴方は分かるかしら。このスキー板を動かすと底に地面がない喪失感を。下を眺めると人の姿が半分以下まで縮小されている絶望感を。そうよね、貴方は高所恐怖症という難病を抱えていないものね。この恐怖を感じないなんて……とても羨ましいわ」
男「あぁ~……そういえば馴染、高い所苦手だったもんな。リフト乗る時も無表情だったから、別に平気なんだと思ってたよ」
幼馴染「あら、本当の恐怖に支配されると人は硬直して、思考も停止するのよ?やっぱりリフトなんて人の乗るものじゃ――」
――ガタンッ
男「おっと。あれ……リフト止まったか?」
『お客様、申し訳御座いません。只今リフトの降り口で怪我人が出た為、一時リフトを停止させて頂いています』
男「うわ怪我人か。確かにリフト降りる時って慣れないと転んだりするし――……なぁ馴染、もう平気だって。ほら、止まっただけだから」
幼馴染「な、何の事かしら。わたしが貴方の袖を掴んでいる事に関して述べているなら、検討違いよ。これは貴方が落ちないように掴んでいるんだもの。そう、つまり今のわたしは貴方の命綱になっているの。鬼畜魔人の貴方は、弱っている状態のわたしを襲って好き放題しようと思っていたのでしょう。わたしにはお見通しよ」ギュッ
【ご注文は雪上プレイですか?】
男「まさか一日で全コース制覇するとは……しかも最終的にプロ顔負けのカーブまで決めてたし。もういっそボードにも挑戦しりゃ良かったのに」
幼馴染「確かに、スノーボードにも興味はあったけど、貸し出しが別料金だし、一から始めるとなると時間も掛かるし……。わたしは貴方と一緒に全コース回れただけでも満足よ。さて、もう終了時間近いし、道具を返却しに行きましょうか」
男「そうだな。スキー止めた途端に滅茶苦茶寒くなってきたし、早くペンションに行こうか」
幼馴染「それは暗にペンションをホテルに喩えているのかしら。文に直してみると、『早くホテルに行こうか』……とても自然ね。しかもさり気無く相手を気遣う態度を交えつつ言うことで、後々披露する様々な鬼畜プレイを連想させない紳士振りをアピールするとは。そして容易く一本釣りしたわたしに、貴方は想像し得ない程のドSプレイを強要する訳ね。あら、鬼畜邪神」
男「ペンションにはどうやって行くんだ?迎えにバスか車を遣してくれるんだっけ?」
幼馴染「徒歩よ」
男「……え、徒歩?いやあの、確かペンションって結構距離があったような――」
幼馴染「まさか不況の波がこんな辺境の地にまで影響を及ぼしているなんて。昔は送迎バスもあったみたいなのだけど……。とはいえ徒歩30分と書いてあるし、軽い運動だと思えば平気よ。ただちょっと雪道を征くという北国さながらの事態が待っているけども。はっ……つまり貴方はこれを想定していたのね。ご注文は遭難かまくらプレイ?それとも雪上プレイかしら。どちらも生死に関わるけど」
男「まぁ無いならしょうがないよな。馴染って風邪引き易いし、出来ればバスとかで移動したかったんだけどさ」
――バシッ
幼馴染「で、出来るだけ早くペンションに辿り着いて、早々にわたしへいやらしい事をしたいのね……い、いやらしいわ……」
男「なぁ馴染、スキー板をそんなに強く顔面に当てたら、痛いと思うんだけど」
【ゲームでよくある迷いマップ】
『拝啓、母さん。雪国はやはり、僕には厳しいわけで。肌に痛いわけで。踏みなれてない雪の感触が慣れないわけで』
男「いかん、北の国から手紙を送ったような口調になってしまった。どう考えても雪道を30分以上歩いてるよな、これ」
幼馴染「人の測りなんて宛てにならない物の典型よね。駅前から徒歩5分って記載されているのに10分以上掛かったとか日常茶飯事だし。道標があるだけマシかしら。最近のゲームだと、こういう森マップでわざと迷わせてプレイ時間を引き延ばそうとするわよね」
男「あー……あるな。攻略法分からないで、更に運が悪いと小一時間さ迷い歩く事になるやつ」
幼馴染「貴方はそんな中で、わたしを無数に触手を生やした植物の元へ誘うのね。そして植物に長時間玩具にされ弄ばれるわたしを見て呟くのよ。『やっぱり触手物だとモノ足りないなぁ』と。流石、鬼畜邪神。自分で仕込まないと犯った気がしないのね」
男「お?なぁ馴染、あの建物じゃないか?俺達の泊まるペンションって」
幼馴染「……あら、そうね。もう少し歩くと思ったのだけど……少し、残念だわ」
男「――馴染、そろそろ腕にくっ付くの止めないか。っていうか何時の間に引っ付いてたんだよ。ほら、ペンションも見えたし、歩き難いだろ」
――ピト
幼馴染「わたしの運動神経を見縊っているのかしら。このくらい、感覚を掴めば訳ないわ。そう、むしろ自然よ。だからこのまま行きましょう。ほら、チケットにもカップル様って書いてあるし……そう見せないと駄目でしょう?ね、貴方」
男「……普通のカップルは貴方なんて呼び方しないぞ。っていうかそれ夫婦の呼び方じゃないか?っていうか馴染、さっきからお前の体、ほっかいろみたいに暖かいんだけど。熱でもあるんじゃないのか」
【サスペンスでお約束のやつ】
男「森の中って聞いてたから、どんな辺境の地だと思ってたけど……窓から見えるのが雪だけっていうのも良いもんだな」
幼馴染「あら本当、森と雪だけね。小説の舞台みたいだわ……主にサスペンスの」
男「あー、殺人事件が起こる山荘って、こんな感じだよな。元々通行手段が限られてて人が呼べない上に、犯人が電話線切ったり」
幼馴染「探偵がいる場合と、いない場合で展開も大分異なるわね。いると一人殺された時点で殺人終了の場合が多いじゃない、金田一然り、コ○ン然り。いない場合だと、そのまま犯行続行で死人が増えるのよね。犯人の犯罪理由にもよるけど……っ、そういうことね。つまり通行手段が限られていて救助も期待出来ず、電話線を切った場所で、じわじわとお前を精神的にも肉体的にも責め立ててやる、と」
男「あ、そういやペンションって決まった時間に夕飯なんだよな。6時30からだっけ」
幼馴染「そうね。そういえば、ホテルとペンションの明確な違いよね、宿泊者全員揃って食事って」
男「ホテルだと好きな時間に食べられるもんな。レストラン行ったり、ルームサービスで運ばれて来たり」
幼馴染「ルームサービスで食事が運ばれて来たと思いきや、運んできた物が振動する棒だったり、卑猥なモノばっかりだったりするのね。そして何時の間にか部屋のライトがピンク色に変更されてて、貴方は運ばれてきた玩具を一通りわたしに試すのね。サプライズ主義かしら」
男「それじゃそろそろ時間だし、行こうか。馴染も腹減ってるだろ、時々腹擦ってたし」
幼馴染「……相変わらず、変なところで鋭いのよね……貴方は」
【天然たらしの称号を(ry】
男「な、ナイフとフォークか……これって思いっ切りテーブルマナーが必要なやつだよな。サラダもあるし……」
幼馴染「サラダというよりは前菜、オードブルの方が正しいわね。食欲をそそる為に色鮮やかに盛り付けている物の事よ。この場合のサラダは、血液をアルカリ性にする事も兼ねてるのかしら。肉料理で血液が酸性になってしまうし」
男「別にそこまでの事は考えてないと思うけど、多分」
幼馴染「なるほど、つまり性欲をそそる為には色鮮やかな下着を着用すれば良いのね……この場合、赤とか黒とか紫?いや、むしろ鮮やかというくらいだから、虹色のように多数の色を併用した物が良いのかしら。個人的には悪趣味な気がするのだけど」
男「……ナプキンって膝に敷くんだっけ?」
幼馴染「あら、別にフルコース方式だからって絶対にマナーを守らなきゃいけないなんて事ないわよ。折角こういう所に来たんだもの。楽しみながら食べなきゃ勿体無いじゃない。最低限さえ守れてたらそれで良いのよ。食器は外から使って、スープは音を立てない、とか」
男「そのスープを音を立てずに飲むのがきついんだけどさ……」
幼馴染「コツさえ掴めば簡単よ。スープを啜る、ではなくスプーンごと咥えるの。そうすれば余程の事がない限り音は出ない筈だから。それと咥えるって言葉、結構卑猥よね。あまり日常生活で使わない言葉だし……なるほど、貴方はわたしに咥えるを言わせたかった訳ね」
男「あ、そうだ馴染、無理して食べるんじゃないぞ。お前こういう時、無理して食べて気持ち悪くなったりするだろ。勿体無いんなら俺が食べるから、ちゃんと言うんだぞ。なんか量も多いみたいだしな……サラダにスープ、魚に――」
幼馴染「……貴方って……天然たらしの才能、あるわよね」
【貴方の癖】
男「こんな山奥の温泉か……風情はあるんだろうけど、まさか外の石階段を登らされるとはな……おぉ寒っ」
幼馴染「でも言い方を変えれば、この石階段を登り切るだけで温泉に浸かれるのよ。肩凝り、腰痛、疲労、冷え性に効果があるらしい温泉に。ここまで遠出しておいて、ペンション内のお風呂に浸かって帰るなんて……癪じゃない。癪だわ。さ、冷え切る前に早く登りましょうか」
男「極寒の中で石階段登るとか、修行みたいじゃないか……」
幼馴染「食後の腹ごなしだと思いなさいな。寒い方が脂肪も燃焼し易いし、部屋で寝ているよりは断然健康的よ。それに温泉といえば……様々なネタの宝庫じゃない。純愛から陵辱モノまで様々な場面で活躍出来る正に背景の鑑。その温泉に行くのだから……貴方に温泉の中、他の御客が入ってくるかも知れない危機状態で嬲られるかも知れない訳ね」
男「しかし温泉かぁ、久し振りだなぁ。前に温泉に入ったのは……馴染と子供の頃に行った温泉旅行以来か」
幼馴染「あら、随分昔の事きちんと覚えているのね。もう温泉旅行は9年4ヶ月と10日前の事なのに。という事は、混浴の温泉で見たわたしの幼児状態も鮮明に記憶しているのかしら。幼少期のわたしは、貴方のオカズになっているのね」
男「相変わらず馴染は記憶力良いな、日付まで覚えてるのか。まぁ結構楽しかったし……馴染と行った事だから、忘れてないよ」
――コンッ
幼馴染「……わ、わたしとイッた事、なんて……や、やっぱり貴方は、想像でわたしを嬲っているのね……いやらしいわ」
男「なぁ馴染、洗面器を顔に当ててると危ないぞ。前見えないだろ」
【男湯?残念だったな、トリックだよ】
男「おぉ、意外に広いんだな。湯気のせいで向こうまで見えないし。っていうかこの寒い時期に長い石階段登ってまで温泉浸かる奴いるのかねぇ。帰り道で湯冷めしそうだな……あぁ~良い湯だ。疲労とかに効くっていうのも、あながち嘘じゃないのかも……」
――ザパッ
男(ん?もしかして他の客も入ってきたのか。温泉貸し切りだって喜んでたんだけど……まぁこういう所での出会いも貴重だよな。ここらで溢れ出るコミュ力を活かして、他の客と有意義な語り合いでもしてみるか。独り言だけだと物寂しいし)
男「お先してますー。いやー流石に冬は冷えます――」
幼馴染「あら、貴方の他人行儀な話し方なんて久方振りに聞いたわ。もしや他人を装って、わたしを油断させようという算段かしら。そして油断し警戒を解いたわたしに組み付き、温泉で色々致す気なのね。ただ湯船の中で致すと汁とか入って衛生上良くないと思うの。やっぱり後々の御客の為を思うと、寒くても湯船の外で犯るべきよね。それと……貴方は何時まで口を開けているのかしら」
男「な、馴染っ!? お前なんで男湯に入って来てるんだよ!」
幼馴染「その反応だと、貴方はペンションのサイトで確認しなかったのね。ここの温泉、脱衣所は別々でも中は混浴なのよ。もしくは既知な事を隠し、やっぱりわたしを油断させる気なのかしら。流石、鬼畜の孔明の通り名は伊達ではない訳ね」
男「そんな通り名初めて聞いたぞ……っていうかここ混浴だったのかよ」
幼馴染「事前の下調べは何をするに置いても重要よ。旅行に行くだけなら兎も角、貴方は鬼畜な要求を迫るのだから、穴場を調べるのに越した事はないわ。それと……あまり視姦プレイをされると流石に恥ずかしいから、背を向けてくれるかしら。バスタオル姿で入浴は行儀が悪いし」
【良いか?押すなよ!絶対に(ry】
――カポーン
幼馴染「ふぅ……やっぱり温泉は良いわね。この体に染み渡る感じ……御風呂では味わえないもの。長い階段を、寒い中上って良かったでしょう?」
男「まぁ確かに気持ちいいけどさ……なぁ馴染。やっぱりさ、俺ここ等辺にいるから、お前は誰か入って来ても見えないように奥の方に――」
幼馴染「お気遣いは有難いけど、他の御客は温泉に来ないそうよ。今日、雪が降る予報があったから、本当は入浴出来ないらしいの。ただ少しオーナーと交渉して、温泉を貸切にして貰ったわ。その代わり、降雪があったら直ぐにペンションに戻る約束だけど」
男「相変わらず、こういう交渉事は滅茶苦茶得意なんだな……。でもほら、他人の男子が近くにいたらゆっくりし辛いだろうし、馴染も嫌だろ?」
幼馴染「…………じゃないわ」
――チャポン
幼馴染「……他人なんかじゃ、ない。貴方を起こして、一緒の物を観て、聴いて……ずっと一緒にいたの。もう貴方がいない日なんて、想像出来ないわ」
男「お、おい馴染……近過ぎじゃないか?っていうか俺の背中触ってるだろ」
幼馴染「他人、なんて言った罰なんだから、大人しくなさいな。……こうして触ると、やっぱりわたし達とは違うわね。広くて大きくて……硬い。あ、『大きくて硬い』というのは、いやらしい意味で言った訳はないわよ。確かに卑猥な単語に聞こえるけど、貴方の正面は見ていないもの。だから浴場だけに欲情して、突然振り返ってわたしを抱き締めたり、あまつさえ温泉プレーにしけ込もうなんてしては駄目よ。絶対に……駄目よ?絶対だから……ね?」
【月が綺麗ですね】
幼馴染「背中合わせで温泉に浸かるというのも、乙なものね。鬼畜な貴方的に、わたしという椅子の寄り掛かり心地は如何かしら」
男「いや、これどう考えても駄目だろ。馴染に寄り掛かれる訳ないし」
幼馴染「あら、ドSな貴方なら体重掛けて、わたしを溺れさせる一歩手前まで追い込み、それから意識絶え絶えのわたしを無茶苦茶にするとか、そんな事を想像しているのでしょう。それで『やっぱり息苦しい方が、中の締りは良いな』と鬼畜の限りを尽くすのね。えろいわ」
男「……雪、降りそうにないな。ほら上見てみろよ馴染、星が良く見えるぞ」
幼馴染「降雪の予報が出ていたのだけど……天気予報が外れて良かったわ。雪が降っていたら、こんなに綺麗な星空、見れなかったものね。あ、貴方は見えるかしら、あの赤い光の星。あれがオリオン座……冬の大三角形の一つよ。まさかこんな山奥で見れるなんて思わなかったわ」
男「おぉ、あれが……まぁ星座なんてよく分かんないんだけどさ。でも、本当に星が綺麗だよなぁ」
幼馴染「――……わたし、死んでも良いわ」
男「へ?いきなり何言ってんだ馴染。そんなに大三角形見れて嬉しかったのか?」
幼馴染「…………貴方には帰った後にわたしが所持している夏目漱石の小説を一通り読破させるわ。覚悟しておきなさいな」
【桃型のチョコレート】
幼馴染「唐突だけど、今年貰うのはどんなチョコが良いかしら。有名どころのトリュフ、ガナッシュ、ザッハトルテは作ってしまったし、ホローチョコ……ロシェ、プラリネ……そろそろレパートリーが底を尽きそうなのよね」
男「バレンタインで、送る相手に希望を訊くのか?」
幼馴染「毎年あげているのにサプライズも何も無いでしょう?それに、あげるなら貴方に喜ばれた方が良いもの。去年のボンボンは御酒が強過ぎて不評だったし……やっぱり色を好む貴方としては、全身にチョコを掛けた方が良いのかしらね。ただ熱過ぎると火傷してしまうし、程度が難しそうね。いえ、むしろ火傷しそうなほど熱されたチョコを掛ける方が貴方としては快感かしら」
男「あー……そういやさ、馴染って昔不器用だったのに、バレンタインに作ってきた桃型のチョコ、良く出来てたよな」
幼馴染「桃型の……チョコ?桃――あ」
男「味も焦げたのか苦かったけど、あれくらい王道な物の方がチョコって感じがして美味し――」
――ペシッ
幼馴染「そうよね、やっぱりレシピを完璧に模倣しても、市販品と同じになるだけだもの。思いっ切り独創性に富んだチョコを作ってあげるわ」
男「な、馴染。何で顔にチョコのレシピ本を押し付けてくるんだ……?」
幼馴染「桃、じゃなくて……ハートよ、お馬鹿」
【行きは良い良い】
男「……め、滅茶苦茶寒いな。湯冷めするとかそういう次元を超えてるぞ」
幼馴染「行きは良い良い帰りは恐い、なんて言葉もあるでしょう。急いで長い石階段を転げ落ちるよりも、寒い思いしてでも地道に降りた方が安全よ。もしかして寒いから裸で温め合おうぜと暗に誘っているのかしら。そして温め合うだけでは済まない状況に持っていく気ね。もはや軍神並みだわ」
男「階段の上りよりも下りの方が長く感じるって、早々無いよな……うぅ寒っ」
幼馴染「貴方、昔から冷え性だものね。はい、ほっかいろ。持っておけば多少は温かくなるでしょうし、握っておきなさいな。あぁ、ハンカチから取り出したり、あまり揉んでは駄目よ。逆に熱が逃げてしまうから、そのまま握っておくのが一番良いわ」
男「いや、でもそうしたら馴染が寒いだろ」
幼馴染「わたしは冷え性持ちでもないし、我慢すれば良い話よ。貴方は凍傷なんて起きたら目も当てられないし、素直に貰いなさいな。――まさかこうしてごねてるのも貴方の策略かしら。時間を稼ぎ、冷たくなったわたしの体に、熱々のほっかいろを直に当てて擬似SMをする気なのね」
男「……そうか。ほい馴染、手を繋いでいけば良いんだよ。ほら、温かいだろ」
――ギュッ
幼馴染「……こ、こうして何気なくボディータッチをする辺り……貴方は助兵衛大魔神の素質があるわよね。でも……ふふ、温かいわね」
【ヤキモチ……?】
幼馴染「そういえば貴方、スキー場で女の人に話し掛けられていたわよね。それも二人に、親密そうに、腕を組まれたりして。わたしが話し掛けた途端に散っていたけど……もしや乱交パーティーのお誘いでも受けていたのかしら」
男「二人の女の人――あぁ、あれか。なんか話し掛けられたんだよな。滑り方上手いですねとか言ってた」
幼馴染「……これ以上無いほど典型的な逆ナンパの話し掛け方ね。それで……何故、貴方はあんなに鼻の下が伸び切っていたのかしら。もしや2対1というハードな一夜を想像していた訳ではないでしょうね。貴方の想像している鬼畜プレイをしたら、普通の女子は壊れてしまうわよ」
男「別に伸びてないって。馴れ馴れしくされたから面倒に思ってたくらいだし。『連れ』がいるんですって言っても信用してくれなかったし。ただ馴染が話し掛けてきたら直ぐに離れてったんだよ。舌打ちまでしてたし……感じ悪いよなぁ」
幼馴染「そ、そう。連れ……ね。まぁ、貴方の言っている『連れ』と、わたしの思っている『連れ』の意味は違うんでしょうけど」
男「……?まぁ何にせよ馴染が話し掛けてくれて助かったよ。馴染以外にあんまりベタベタされても困るだけだしな」
――ベシッ
幼馴染「……それはベタベタ触るという意味と、ローション等の粘液の効果音を掛けているのね……いやらしいわ」
男「なんで土産の温泉饅頭を顔に当ててるんだ……?」
【カラフルジュース】
男「お、見ろよ馴染。冷蔵庫の中にジュース入ってるぞ。丁度喉渇いてたんだよな」
幼馴染「客室に備え付けの冷蔵庫の飲み物って、割高じゃないかしら。値段書いてないし、下にある自販機で買った方が良いと思うけど」
男「まぁ宿泊代が只なんだし、これくらい贅沢しても良いだろ。ほら、瓶なんて久し振りに見ただろ」
幼馴染「……一本ずつだけよ。ジュースくらいと舐めてたら一本400円でした、がザラなんだから。――なるほど、わざと高級な物ばかり飲んで、明日の会計時に所持金が足りずに、わたしを店側に差し出す気なのね。とても鬼畜」
男「なんかカラフルだな。白に赤……緑。こっちはコーラか。ラベルが無いなんて珍しいな」
幼馴染「あら、本当に色豊かね。ほら、この緑色って貴方が買っていた紫蘇コーラに似ているじゃない?あれ凄かったわよね。色んな意味で記憶に残るというか、あそこまでいくと味以上にインパクト重視というか。……貴方と間接キス出来て後悔したのなんて、あれが始めてだったし」
男「紫蘇コーラはやめてくれ。今でも味思い出せるんだ……う、吐き気が」
【酔ったのが男の場合】
男「じゃぁ俺はこのコーラっぽい奴を貰うな。栓抜きとか使うのも久し振りだし……よっと」
幼馴染「わたしはこの赤いので良いわね、色も綺麗だし。でもこの色だと何味かしら。苺、さくらんぼ、木苺にクランベリー……色々あるわね。少しだけ匂いを……ん?この独特の匂いは……アルコール?あら、これ御酒じゃないの。ねぇ貴方、これ御酒で――」
男「んぐんぐ……ぷはぁ!やっぱ美味いわコレ!」
幼馴染(顔が物凄く赤くなってるわ。真っ赤ね。セルアニメならR230、G57、B57は間違いなく使用してる顔色。今わたしが所持している赤い液体よりも濃いし。彼ってこんな御酒に弱かったかしら。あぁ、運動したからアルコールが回り易くなってたのね)
男「なぁ馴染、俺がいっつも馴染の言動に困ってるの知ってるか?いきなり下ネタとか言われると困るんだよ、しかも平然としてるし」
幼馴染「あの……貴方、近いけど、近いのだけど。それと凄く御酒の匂いがするのだけど。ほら、今貴方酔っ払っているのよ。わたしを背中から抱き締めてるのを解いてくれないかしら。……嬉しいけど、雰囲気とかもあるし……貴方も水を飲まないと――」
――ギュゥゥゥゥゥゥ
幼馴染「ひゃ……あ、貴方?あまり抱き締められるのは……――」
男「ぐぅ……すぅ……」
幼馴染「…………本当に貴方は、ムードも何も無いわね。知っていたけど、知っていたけども。でも、どうしようかしら……この状況。凄く強く抱き締められてるから、抜け出せないし。もしかして朝までこのままかしらね。役得……なのかしら。体勢的には辛いけど」
【酔ったのが幼馴染の場合】
幼馴染「……ストロベリー、かしらね、この色からして。ふふ、こういう物も旅行の醍醐味ではあるわよね。飲食店ではあまり見かけないし。味は……ん、結構美味しいじゃない。こういう瓶ものってもう少し安っぽい味かと思ったけど、中々いけるわね」
男「だろ。懐かしいよなぁ……ん?この味って、ジュースじゃなくて……酒じゃないか?」
幼馴染「貴方は飲まないの?美味しいわよ、これ。飲むと喉が熱くなる感覚がして、その感じが御腹まで降りてくるの。頭が軽くなった気がして……あら、貴方何時の間に分身の術を見につけたの?二人……いえ、三人かしら。四人にも見えるわ。なるほど、分身して客室の一間で擬似乱交プレイを致そうという魂胆ね。まさかその為に分身の術まで習得するなんて……ふふ、えっちぃわねぇ」
男「し、しな垂れかかって来るなって。ほら、これ酒だからあんま飲んだら――」
幼馴染「ふふ……ぺろ。ん、この甘いジュースに貴方の仄かな汗の味が合うわ。まさか自分から肴になるなんて、良い心意気ね。まさかわたしにこのジュースを飲ませて、貴方の汗を舐める事まで計画の上だったのかしら。相変わらず、策士なんだから」
男「おいくすぐったいって!そ、それに色んな所当たってるぞ!」
幼馴染「当ててる、のよ。それよりも、ねぇ気付いてるかしら。わたしが貴方にえっちぃ事を言う訳……それはね――」
男「そ、それは……?」
幼馴染「…………くぅ」
男「……おい、寝るのかよ。ちょっと待て、何時も俺、お前の下ネタ気になってるんだぞ。何でそこで寝るんだおい」
【酔ったのが男だったら・次の日】
男(……寒い。なんか背中も腰も痛いし……あぁ、俺座った状態で寝てたのか。何かジュース飲んでからの記憶が曖昧だけど、我ながら器用なもんだ)
男「布団抱えたまま座って寝るとはなぁ。頭も痛いし……って、そういやあれ酒だったのか」
幼馴染「そうね、ジュースと勘違いして一本飲み干していたわ。その上貴方、結構な絡み酒体質なのね。恐れ入ったわ。まさか一晩中、貴方に抱かれたまま過ごす事になるなんて、思いもしなかったもの。そういえばこの体勢、あすなろ抱きというらしいわ。知ってた?」
男「――……何で俺、お前を抱いてるんだ?」
幼馴染「さっき言ったじゃない、絡み酒体質ねって。貴方から抱き着いて来て、挙句わたしの頭に顎を乗せて熟睡してたのよ。しかも寝たままで強く抱き締めてくるから抜け出せないし。実は正気を保ってて、わざとわたしを抱き枕扱いしてたのではないかしら?兎に角、もう起きなさいな。ペンションは朝御飯も時間が決まっているんだから、遅れたりしたら朝食抜きに――ひゃっ」
――ドサッ
男「お、おい馴染、大丈夫か?多分座ったままだったから脚痺れてたんだろ……ごめんな」
幼馴染「いえ別に……ふふ、離れようとしたら逆戻りね。脚の痺れが治るまで、もう少し貴方の抱き枕でいる事にするわ。それと、匂いは嗅いでは駄目よ。抱かれていたせいで汗掻いたから、嫌な匂いがするだろうし……そんな匂い、貴方には、あまり嗅がれたくないもの」
男(なんか、馴染って体の線細いのに柔らかいな。それに髪から香水とは違う、微かに良い匂いがして……嫌な匂いなんかじゃない。凄く安心する。なるほど、だから座った体勢のままで寝てられたのか。俺の心の中限定で抱きなじみんと名付けよう)
【酔ったのが幼馴染だったら・次の日】
男「馴染、馴染……本当に離れないな。服掴まれてるし……何で違うベッドに寝かしつけたのに、こっちの布団に潜り込んでるんだよ。しかも乗り掛かられてるから下手に退かせないし……どうするか。っていうか寝惚けて野郎のベッドに潜り込むとか……他の奴にやったら襲われるぞ」
幼馴染「くぅ……ふふ、おーくん……」
男「睫毛長いよなぁ。髪もサラサラだし……そういや、こうして撫でるのも久々だ。野郎じゃ同じシャンプー使っても、こうはならないな。っていうかお前は無防備過ぎだ。普通、浴衣一枚で野郎に抱き着くかよ……あぁ~、寝られるかな俺。無理そうなんだけど――」
――――――
――――
――
男「ぐぅ……すかぁ……」
幼馴染「とかなんとか言って……熟睡してるじゃないの。酔った勢いで添い寝したは良いけれど、添い寝した途端に酔いが醒めちゃうし。ねぇ貴方……誰にでも、こうする訳じゃないのよ?こうして無防備になるのも、貴方だけ。添い寝するのも、貴方とだけ、なんだから」
幼馴染「でもここまでさせて、全く手を出す様子が無いのも考え物よね。普通なら、浴衣を剥ぐくらいまでいくと思うのだけど。わたしに魅力が無いのかしら。好みのタイプじゃないとか……鋼の理性?それとも――……大切に、してくれているのかしら」
――ギュッ
幼馴染「すぅ……胸部から発せられる匂い、これが男性ホルモンの香りなのかしら。男性は嗅げないのよね……頭がくらくらする、この香り。ふふ、貴方の体……少し硬いけど、大きくて安心する。腕枕に憧れていたけど、胸枕というのも良いものね。安心して眠れそう……」
【酔ったのが幼馴染だったら・次の日(ギャグ注意)】
幼馴染「……まったく、もう……貴方は、本当に……すぅ……」
男(別々のベッドで寝た筈なのに、何故か馴染が俺のベッドの中で寝ていた。俺は丁度今し方まで熟睡していたので、理由は分からん。ただ馴染と一緒に寝ると、俺は昔から悩まされる事がある。寝相も良く、歯軋りも無い馴染だが――)
幼馴染「あら……貴方、具志堅用高に……試合、挑まれたの……?ふふ、貴方なら……平気よ。青い具志堅が、攻めて来ても……」※寝ています
男(その人に挑戦挑まれるなんて先ず無いし、多分試合をしたら1ラウンドで俺は死ぬと思う)
幼馴染「15、らうんど……戦い抜くなんて……まるで、貴方は、ろっきーね……。それに……勝って、しまうなんて」※寝ています
幼馴染「……まさか、優勝商品が……松崎しげるの選りすぐり、全国日焼けサロンツアー……だなんて。そんなに、焼けて帰って……くるなんて。しかも、中途半端に……焼いたせいで……顔が、貴方の顔が――……阿部寛張りに、濃くなってしまっているじゃない……」※寝ています
――――――
――――
――
幼馴染「……んぅ。あら、もう朝――……え?何でわたし、貴方と一緒のベッドで寝て――」
――ガシッ
男「なぁ……馴染。夢の事って記憶に残らないって言うけどさ、今回ばかりはお前の記憶力を最大限利用して思い出してくれないと困るんだ。俺は具志堅用高に勝って、松崎しげると日焼けサロンツアーに行って、阿部寛張りに顔が濃くなって、叶姉妹に弟子入りして……どうなったんだ?」
幼馴染「あ、貴方、何の事を言っているのかしら……?あの、肩を掴まれて……か、顔が近いのだけど……?」
【帰りのバスの中で】
男「11時台のバスに間に合ってよかったな。これ乗れなかったら次は1時間後だったし」
幼馴染「貴方が悠長に朝食を食べてたから、危うく乗り損ねるところだったけど。歩いてる途中で脇腹痛いとか言い出す始末だし。まさかわざとバスに乗り遅れて、それをわたしのせいにして、バス停の場所でわたしを散々甚振る気だったのね。相変わらず鬼畜だわ」
男「朝飯食べて雪道を徒歩30分は……流石にきつかったしなぁ。昨日あんまり眠れなかったし……うぇっぷ」
幼馴染「あら、あんなに目一杯朝御飯食べて運動して、それからバスに乗車したら酔うんじゃないかと思っていたけど、案の定だったわね。はい酔い止めの薬。ペンションで水筒に御茶を淹れて貰って来たから、これで飲みなさいな」
男「おぉ、ありがと。しかし福引きのスキー旅行だったけど、色々やったなぁ。スキーに初のペンションに温泉に……どうだ?銅賞の元は取れたか?」
幼馴染「あら、別に元を取る事なんて考えてないわよ。銅賞が当たって、確かに幸運ではあったけど、貴方がいなければ意味がないし。貴方とこうしてスキーをして、一緒の場所に泊まって、同じバスに乗って帰れて……十分過ぎるもの。お土産も買えたし、ね」
男「そっか。まぁ俺も馴染と一緒に滑れたり出来て、楽しかったし……また行きたいな」
――ギュッ
幼馴染「あ、あら、また一緒にイキたいな、なんて卑猥ね。……でも、貴方もそう思っていてくれたなら、わたしも嬉しいわ。――……え?寝不足とバス酔いで本気で気持ち悪い?まったく、雰囲気も何も無いんだから。また膝枕してあげましょうか?」
【恋愛小説】
『あの10万部を売り上げた小説原作、遂に待望の実写化。切ない片想いが、日本に涙を巻き起こす』
幼馴染(あら、この小説映画化するのね。随分昔に読んだ作品だけれど、映画……実写化、ね。どうなのかしら。文字から人物、場面を想像しながら読む派のわたしとしては、正直実写化は苦手なのだけど、原作は結構面白かったし)
男「へぇ、これってかなり前に馴染が読んでた小説のやつだよな。映画化したんだ」
幼馴染「この作者の最新作がドラマ化して評判が良かったから、以前の書籍も評価されたのでしょうね。随分販売部数も伸びているようだし」
男「なんというか、一片の曇りもなく純愛モノみたいだな。なんか馴染がこういう系読んでるって意外だな」
幼馴染「貴方はわたしが普段どんなジャンルの作品を熟読してると思っているのかしら……。いえ、訊かなくても分かるわ。人の趣向を決め付けた挙句に、鬼畜な貴方はこう思っている筈よ……『お前は陵辱モノのえっちな小説を読んで、自己投影してるんだろ』と」
男「いやさ、馴染って推理小説とか読んでるイメージだったから、ちょっと意外だったんだ」
幼馴染「……そうね。わたしに恋愛小説なんて似合わないものね。確かに推理モノの方が読み込み甲斐があって好みだけど、わたしだって――」
男「別に似合ってない、なんて言ってないだろ。ただ馴染が、カバーで隠した恋愛小説を読んでるんだと思うと……なんか可愛いな」
――ベシッ
幼馴染「か、可愛……っ。あ、貴方は時々、推理小説のトリック以上に予想外の発言をするわね……前にも言ったけど、心の準備をさせなさいな」
男(何で馴染は小説を顔に当ててるんだろう……まぁそれよりも、馴染はさっきの映画観たいのだろうか。もう公開してるし、次の休みにでも――)
【男が到着前の馴染さん】
幼馴染「急に日曜日に駅前で待っていてと言われたけど……何か用事でもあるのかしら。今日発売の漫画、もしくはゲームの購入?それともゲームセンター、カラオケに一緒に行こう……かも。ふふ、我ながら色気も何もない考えね」
幼馴染(でも、逆に色気がある考え方って――夜景の見えるホテルで食事、からのほろ酔い状態で最上階近くの部屋で……とか。むぅ……安直な恋愛小説の読み過ぎね。思考が貧相になっているわ。大体、御酒でこの前酷い事になったばかりじゃない……役得だったけど)
幼馴染「まぁ普段は彼と家でのんびりしているだけだし、一緒に外出出来るだけでも上々、よね。行っても夕飯の御買い物くらいだったし」
幼馴染(――……そういえば、これも所謂デート、なのかしら。彼の家でなく、外で待ち合わせ……それだけ、それだけなのだけど。服は……前に彼が褒めてくれた服。結構視線を感じたし、気に入ってくれた……のよね。髪も、日頃から念入りに手入れをしているし。化粧……普段からあまり化粧はしないし、今日も薄い化粧だから、自分で鏡を見ても違いが分からないのよね)
幼馴染「彼は、ただ遊びに行くだけと思っているのかしら。それとも……――」
男「おーい馴染!ごめん、待たせちゃったか!?」
幼馴染「こういう場合、わたしは今来たところよ、というのが正解なのかしら。それとも少し早目に来ていたと報告して、貴方に――『我慢出来ない卑しい雌豚だな。今日は買い物に行くつもりだったが、予定を変えてSM道具盛り沢山のホテルで調教プレイにするか』と言われた方が良いのかしら。貴方は予定をアグレッシブに変更出来る肉食系男子な上に、鬼畜なのね」
男(あー、一応約束の10分前の方が良いかなと思ってたんだけど、もっと早く来た方が良かったな)
【それとも、わたし?】
幼馴染「それで今日は何所に行く予定なのかしら。何時ものように、不良の巣窟と言われるゲーセンに、か弱いわたしを一人放り込むか、もしくは常連になるまで通い、監視カメラの位置まで把握したカラオケ店で、死角に隠れてわたしに色々致す気かしら」
男(外見は誰もが振り返るほど良いのに、口にしてる事を聞いたら誰もが視線を背ける……こういうのを残念美人というのだろうか)
男「いや、今日はゲーセンでもカラオケでも無いんだよ。えっと……確か13:50からだったよな。とりあえず何所かで昼飯にしようか」
幼馴染「あ……ふふ、そういう事ね。確かに時間も良い頃合いだし、行きましょうか」
男(一応サプライズにしようと思って、チケットも予約しておいてたんだが、何故だろう。馴染の笑顔を見てると、全部ばれているような気がする)
幼馴染「さて、とは言っても何所が良いかしら。この辺飲食店ばかりだし、悩み出すとキリが無いから、選択肢が多いのも考え物ね。貴方は……何が食べたい?取り合えず大きい枠で言えば、和食?洋食?中華?それとも……わたし、かしら」
男(冗談で言ってるのは分かるけど、上目遣いと今日の服装のせいで破壊力がやばい。露出は少ないんだけど……黒タイツから見える細い脚とか、鎖骨……あの混浴温泉に行った時に少し見てしまった馴染の体を思い出してしまって色々な意味でやばい)
男「それさ……馴染って言ったら、どうなるんだ?」
――ペシッ
幼馴染「が、外食といえば、あまり食べる事のない中華の方が良さそうね。和食も洋食も作れるし、中華は意識しなければ作らないもの。さ、早く行きましょうか。中華といえば、あっちにバーミソンがあったわね。バーミソンにしましょう、そうしましょう」
男「馴染、ポーチを顔に当てながら歩くと危ないぞ。前見えないだろ」
【鈍感は罪である】
幼馴染「あら、映画館……どういう風の吹き回しかしら。貴方、普段ならDVDで観るだけで十分と言っているのに」
男「まぁ、観たい映画があったんだよ。映画館で観るなんて久し振りだしな」
幼馴染「そういえば映画館には年中ポルノ映画を流しているポルノ映画館というものがあるのよね。つまり貴方はわたしをポルノ映画鑑賞会に連れていく気ね。そして2、3、4時間とポルノ映画を見せ続けて、体力をすり減らし、精神的に発情、疲弊して抵抗出来ないわたしに、ポルノ映画以上の事をするのね」
男「映画さ、予約してあるんだ。とりあえずチケット貰ってくるから、待っててくれ」
幼馴染「……?彼が予約するほど観たい作品なんてあったかしら。今上映中の映画は、仮面ライバー3号、アメリカンなスナイパー、ストロボエッヂ――」
幼馴染(――……あ、これって前にわたしが言っていた実写映画……ふふ、そういう事ね。目が泳いでいたから、何か隠し事をしているとは思っていたけど。わたしの言っていた事、覚えていてくれたのね……。あら……頬が熱いわ。それに心臓も……もぅ、一緒にいるだけでも胸が苦しいのに……)
男「馴染、チケット買って来たぞ。中央の席取れたし、やっぱり予約の方が良いな。焦らなくて良いし――なぁ馴染、なんか顔赤くないか?」
――ギュッ
幼馴染「あ、赤くなんて……なっていないわ。さ、早く行きましょう。広告を観る事も映画の醍醐味の内なんだから」
男「そんなに焦らなくても映画は逃げないって。っていうか馴染、なんで俺の服の袖をずっと掴んでるんだ……?」
【後輩系幼馴染は好きですか?】
『ほら先輩、早く起きて下さい。後輩の幼馴染に目覚まし役を頼むって、どんな先輩ですか』
男(基本的に幼馴染が主人公に片想いしてる話なんだな。とはいえ絶望的に主人公が鈍感なせいで、幼馴染の子の好意に全く気が付かないっていう。しかし主人公、流石に鈍感過ぎじゃないか?ここまでしてくれる幼馴染に無反応とは。普通朝起こしてくれたり、昼飯作ってくれたりしないだろ)
『本当に先輩は仕方が無いですね。ほら、膝枕してあげますから、休んでて下さい』
男(――……この幼馴染の子、馴染と結構似てるな。雰囲気とか、する事とか……っていうかこの子がする事、大半は馴染がしてるんだよ。っていうかこうして馴染の横顔をマジマジと見るのも久々だな。長い睫毛、高い鼻……映画の主演の子よりも綺麗に見える)
――ポスッ
『どうかしましたか、先輩?もしかして、わたしに見惚れていましたか……?」
幼馴染「あら……どうかした?もしかして、わたしの腕を下に敷いて肘掛を両方使いたいのかしら?王様のように座りたいのね、正にドSの鑑……ね」
男「あ、すまん……!肘掛け使ってると思わなくて――」
幼馴染「別に、駄目なんて言っていないわ……。良いのよ、そのまま……肘掛けを使って。貴方の、大きい手に包まれてると……安心出来るから」
男(映画館で手を握るのってカップルくらいだよな。いやでもこれは馴染の手の上に、手を重ねてるだけだ。というか暗いから分からないけど、馴染が頬染めて微笑んでるのは……やばい。手が小さくて、少し冷たくて……女の子、なんだな)
【迷子の迷子の馴染さん】
幼馴染(駅の反対側、随分変わったものね。確かさっきの道には古本屋や喫茶店があった筈なのだけど……コンビニとファミレスになってたわね。やっぱり今の時代で生き残れる店舗は、チェーン店が殆どよね。古本屋で珍しい本を購入して、喫茶店で読み耽っていた頃が懐かしいわ)
幼馴染「さて……ここはどの辺りなのかしら。一応住宅地、よね。こんな場所来た事ないし……」
幼馴染(こういう時に限って携帯を忘れて来るんだから……彼の忘れ物には気が付くのに。まぁ一番の理由は、携帯を全く使わないからだけれど。常時携帯するほど依存していないし、アプリをするくらいなら携帯ゲーム機で十分だし。でもこういう時に地図くらい欲しいわね)
――ワンワン
幼馴染「……?あら、わんこ。ふふ、人懐っこい子ね。あまり犬種には詳しくないけれど、ピンと立った耳に、丸まった尻尾の外見からして……柴犬。白い柴犬……お父さんね。貴方も喋ったりするのかしら?ねぇお父さん、わたし迷子になっているのだけど、駅までの道教えてくれる?」
――キュゥーン?
幼馴染「そういえば、お父さんは北海道犬だったわね。しかも元人間だったような……。でも困ったからって無理に道案内を頼むのは駄目ね。ん?貴方、首輪着けているじゃない。飼い犬だったのね、道理で懐っこい訳だわ。さて貴方の御名前は……――」
『じょせふぃーぬ』
――ワンッハッハッ
幼馴染「……外人、なのね。もしくは近頃のキラキラネームというやつかしら」
【犬に話し掛ける馴染さん】
男(前の勉強中に馴染に言われた女教師モノのやつ、最近買って隠しておいたやつだったんだが……何で馴染は俺の隠し場所を直ぐに発見するんだろう。ベッドの下、本棚に表紙を変えて紛れ込ます、机の引き出しを二重底に改造する――多分、全滅だ。割りと分かり難いと思うんだが、何故だ)
男「最近だとエロ本を買う為に、こんな駅裏の本屋にまで来なくちゃいけないんだもんなぁ。とはいえ近くのコンビニで買う訳にもいかないし」
――ジャナイカシラ
――――ワンッ
男「なんか聞き慣れた声が……いや聞き間違いだ。馴染がこんな所にいる訳がない。確か馴染は今日、駅近くの図書館に行くって言ってたぞ」
幼馴染「お父さん、女の子だったのね。我ながら、とても紛らわしい発言になってしまったわ。ってそれは置いておいて、どうしようかしら。道を聞こうにも人はいないし、お父さんは喋れないし。適当に歩いて更に道に迷ったら困るし、軽く積んでいるわね」
男(マジで馴染だったのかよ。しかも道に迷ってるみたいだな……もしや携帯忘れたのか。とはいえ今出て行くのは不味い……主にこの袋の中身が。馴染目聡いからなぁ。多分下手に隠そうとすれば、暴かれるだろうし。というか迷子にしては犬と暢気に戯れてるのな)
幼馴染「お父さん、こんな住宅地であろうと、一歩道を間違えば裏道に入ってしまうのよ。そして薄暗い中で、下衆な笑みを浮かべた獣達に遭遇してしまうの。正に絶体絶命ね。抗う術も持たずに好き放題にされて、最後は裸に引ん剥かれて路上に放置されたり……あまり好きな類じゃない想像だわ。止めましょう」
男(道の端に屈んで、白い犬の肉球を揉みながら話し掛けている。何だろうかあの状況。しかし犬に話し掛けてる馴染は、なんか穏やかな顔をしてるな)
【対魔忍な馴染さん】
男(しかし本当にどうするかねぇ。参考書買ったって嘘付くか?なんか一瞬でばれそうだな、参考書とか問題集なんてほぼ買う事ないし)
男「くっ、ゴミ箱に捨てて証拠隠滅……出来ない!ならば本をズボンとパンツの間に隠すか?……うわ、試しにやってみたけど不自然だな、これ。よくヤの付く人が刺されても良いようにこうしてるけど、ジャソプレベルの分厚さでもナイフは防げないだろ」
幼馴染「あら、貴方はこんな場所で怪しげな紙袋片手にナニをしているのかしら。もしや犬と戯れてるわたしを観察し、獣姦される想像をしていた、とか。更に自分も獣のように盛り、そのプレイに割り込もうと画策していたのね。獣な上に鬼畜なんて、人類を超越しているわ」
男「いっ!? な、馴染!? 何時の間に俺の背後に――っていうか心臓に悪いから止めろ!」
幼馴染「慣れた視線は感じていたのだけど、親しげに声を掛けて人違いだった時、校内を全裸で歩く以上の恥辱に苛まれそうだったから、裏を掻く事にしたの。一応足音が最低限消せるように動いたのだけど、如何かしら。貴方的には、そんな動きをする者は対魔忍と呼びたくなるのかしらね」
――ワンッ
幼馴染「ふふ、わんわん。お父さんが、その貴方の後生大事に抱えている紙袋の中身が気になる、ですって。さて、一体ナニ系の物が入ってるんでしょうね」
男(色気のある含み笑いが滅茶苦茶怖い。というか確実に紙袋の中身、検討付いてるだろ)
幼馴染「まぁ貴方も健全な男子だし、咎めるつもりは全く無いけれど。さてと、わたし達はそろそろ帰るから、お父さんも自分の家に帰りなさいな。……人懐っこくて可愛い子だったわね。でもジョセフィーヌは……やっぱり自分の可愛い子には、まともな名前をあげたいわね。それと貴方、紙袋が破けているせいで、本の題名が丸見えよ。もしやわたしにタイトルを見せる事で、そういう事をしてやるよと暗に訴えているのかしら」
男(……げっ。あの袋隠そうとした時に……み、見られた)ガクリッ
【品揃えには自信があります】
男「ふぃー……馴染、そろそろ休憩しようぜ。流石に疲れた……」
幼馴染「あら、勉強始めてからもう二時間経っていたのね、気付かなかったわ。最初は一時間集中力が続けば上々と考えていたけど、頑張ったのね。だからといって勉強した分、わたしを御休憩に持ち込もうとするのは駄目よ。精魂疲れ果て……もとい勉強する時間が無くなってしまうもの」
男「馴染はよく集中力続くよなぁ。そうだ、休憩ついでに菓子でも持ってくるから、待っててくれ」
幼馴染「あ、貴方、別に気を使わなくても――……本当に、そういうところは気が回るのだから。落差が激しいのよね、変に鈍感だったり鋭かったり」
幼馴染(そういえば彼の部屋、最近マジマジと観察する機会無かったけれど……ふふ、ほとんど変わっていないわね。勉強机も本棚もベッドも……子供の時からサイズこそ変わっているけど、配置は一緒。何か拘りがあるのかしら)
幼馴染「子供の頃はよく、彼と一緒にベッドで夜中までゲームしたり、話をしたり……わたしがゲームをし出したのも、彼と共通の趣味が欲しかったからなのよね」
――ゴトッ
幼馴染「……流石にこういう場所の隠し場所は変えて欲しかったのだけど。ベッドのマットレスの下に隠すなんて、とても古典的ね」
幼馴染(あら、最近は受け気味の本も揃え始めたのね。前に覗いた時よりも品揃えが充実しているようだし……どれが彼の本当の趣向なのかしら。まぁそれが簡単に分かれば苦労しないのだけど。今度から攻め気味にいった方が彼に喜ばれるのかしら」
幼馴染「ふふ、初めて彼の(性の)参考書を見た時の衝撃は凄かったわね。我ながら、秘境に辿り着いた探検家のような気分だったわ」
【エロい霧が濃くなってきましたね……】
幼馴染「まったくもう、少し見過ごすと直ぐに布団を干すのをサボるのだから……ほら、匂いが残ってしまっているじゃない。それに干さなければ汗を吸い込んじゃって、ベタベタしちゃうのよ。匂いも取れ難くなっちゃうし……ベタベタって意味深な言葉よね」
男「学校行くギリギリまで寝てるから、干すタイミングが中々無いんだよなぁ。そんなに匂い付いてるか?」
幼馴染「あら、わたしに貴方の匂いが染み付いた布団を嗅いで欲しいのかしら。随分と高尚な趣味を持ち始めたのね」
男「まぁ馴染、大掃除手伝ってくれてありがとな。そうだ、お礼ついでに駅前で買ってきたプリンがあるんだよ。持ってくるから待っててくれ」
幼馴染「……もしかして、買っていてくれたのかしら。となると、わたしに大掃除手伝って貰う事が前提だったという事になるけれど。彼一人だと物を捨てられないし、細かく汚れていくから……最終的に手伝う事になるから、最初から頼って貰えて、結果的に良かったわね」
幼馴染(彼の使っている布団……本当に匂いが染み付いているわね。はっ……だ、駄目よ、顔を埋めては……流石にそれは変態ちっくだもの)
幼馴染「とりあえずマットレスも干さないと……あら、何かしら……これ。本……『幼馴染を責めて見た』……?何かしら、これ。随分可愛らしい絵柄ね、少し肌色が多くて、表紙の子が縛られているけれど。少し分厚くて……漫画、なのかしら」
――少女斜め読み中……
幼馴染「さ、催眠薬に媚薬まで盛って、ま、正に臨戦態勢ね。でも幼馴染の子は主人公を好いている訳だし、ここまでしなくても……え、御尻に何を入れているの……?浣腸液……?それも4本も……!? 一本でも御腹が大変な事になるのに……しかも何かの玩具で栓までするなんて……!」
――ガチャッ
男「馴染ー。御茶と紅茶だったらどっちが良い?やっぱり御茶か?」
幼馴染「っ!? お、御茶で良いわ。それと、部屋に入る時はノックした方が良いわよ、マナーだから」
男「いや、ここ俺の部屋なんだけど……っていうか馴染、なんか頬赤くないか?」
【いやぁ、エロ本は強敵でしたね】
男「大掃除が終わった部屋でするゲームは良いな。なんか部屋が広く感じるし」
幼馴染「……まったく、貴方は大袈裟なんだから。あ、その先に血の遺志があるから忘れないようにね。それと、今更だけど仕込み杖は使い辛いわよ。対人戦で輝く武器はCPUに滅法強い法則よね。銃で遠距離から敵を釣るのも良いけれど、他の敵も釣れちゃう事があるから、注意するように」
男「あ、あぁ……なぁ馴染、何でさっきから茶を眺めてるんだ?」
幼馴染「……いえ、別に理由はないわ。気にしないでゲームに集中していて」
幼馴染(まさかこの御茶の中に先程見た漫画のように睡眠薬と媚薬が盛られていたりするのかしら。そして浣腸液を何本も御尻に入れられたり……。いえ、漫画の続きには更にハードな内容のものをあったわ。あれをわたしで試そうと目論んでいたりするのかしら……」
男「なぁ馴染、ここって何を使って行けば良いんだ?敵に鞭を振った方が……いやでも(斧で)叩くって言うのもアリだな」
幼馴染「な、ナニを使ってイケば……!? それに鞭を振るよりも叩くのもあり……!?」
幼馴染(や、やっぱり貴方はそういう事を目論んでいたのね。それも虎視眈々と、ゲームを楽しんでる振りをして横目でわたしが弱るのを待っているのね。正に策士……いえ、鬼畜だわ。そして御茶を無警戒に飲んだわたしに色々致す気なのね……なんて策略家なのかしら)
幼馴染「貴方はドSな上に鬼畜なのね、恐れ入ったわ」
男「え!? 何がだ!? うわっ、驚いてる間にやられたし!しかも敵一杯いるし!ロスト確定かよ……」
【この傘を使おう。二人には二本も要らん】
男「うわ、凄い雨だな。朝方は快晴だったのに……っていうか最近天気崩れ易過ぎないか」
男(こういう時に限って置き傘なんてしてないし、放課後に教室で残ってゲームなんてするんじゃなかったな。馴染も先に帰っちまったし。走って帰るにしても距離あるし、この雨じゃ自転車も使えないからなぁ。コンビニで傘でも買って……そういや500円くらいしたっけ。高過ぎ)
男「やっぱり走って帰るしか……いやでも、こういう時って家に着いた途端に雨が止んだりするんだよ」
幼馴染「そして雨に濡れ、水が滴った状態のままわたしの家に押し入るのね。わたしを押し倒して『お前で暖を取ってやる』とか言うのだわ。それから服まで乱暴に剥ぎ取って、まるで暖を取る物のようにわたしを扱うのね。ほぼ奴隷扱い……相変わらずの鬼畜具合で安心したわ」
男「……あれ、馴染、帰ったんじゃなかったのか?」
幼馴染「えぇ、一度帰宅したわ。けれど突然降り出したから、傘を持って戻ってきたの。貴方、置き傘もしていなかったでしょう?この雨では自転車も使えないし、コンビニの傘は高価だから絶対に購入しない。以上から、貴方が途方に暮れてると判断したの」
男「なんか当たり過ぎてて恐いんだけど。っていうか馴染、傘……なんか一つしか無くない?」
――――――
――――
――チーン
幼馴染「――…………アラ、ウッカリシテタワ」
男「おいそれ前にも聞いたぞ。しかも傘一つしか無いんじゃ結局降られるじゃんか。あ~やっぱりコンビニで傘買うしかないのかよ」
幼馴染「あら、傘が一つでも二人共雨を凌げるのよ。折角少し大きめの傘を持ってきたのだから、御高い傘を買う必要なんて無いじゃない」
【抱き付くのは高難易度だけれど】
幼馴染(相合傘……憧れてはいたけれど、実際に実行してみると結構濡れてしまうわね。肩が大分濡れてるし、家に帰ったら着替えないと。我ながら、もっと大きい傘を持ってくれば良かったかしら。でも彼とこうして近付けるのは捨て難いわね、悩みどころだわ)
男「馴染、もっと寄った方が良いぞ。濡れちゃうだろ」
幼馴染「あら、わたしは大分寄っているつもりなのだけど。もしや近付くというより、俺に抱き付いて感触を楽しませろと言っているのかしら。一応雨の中とはいえ人目があるというのに、羞恥プレイを強要するなんて流石鬼畜ね……ねぇ貴方、もっと貴方の方に傘を寄せても良いのよ?」
男「お前風邪ひき易いんだから、濡れたら不味いだろ。折角濡れずに帰ったのに、俺迎えに来たせいで風邪ひいたなんて笑えないし」
幼馴染「それで貴方が濡れていたら駄目じゃないの。ほら、肩がびしょ濡れじゃない……傘、二本持ってきた方が良かったわね」
男「でも馴染が来てくれなきゃ家まで走るしかなかったからな。肩までしか濡れてないなら良い方だろ」
幼馴染「…………だ、抱き付くのは……難易度が高いけれど……」
――ギュッ
男「へ?な、馴染、何で腕組んで来るんだ?」
幼馴染「こ、これなら食み出る面積が少し減るでしょう。肩も濡れずに済むし、貴方もわたしに羞恥プレイをさせられるから一石二鳥じゃないかしら。それと、貴方は絶対にわたしの方を見ては駄目よ?見たら……そうね、次起こす時に瞼の上から瞳を舐めるわ。それが嫌なら見ないこと」
男「なんだその奇妙な起こし方。驚いて目を開けたら舌が入って大惨事な未来が見えるんだが」
【心機一転してみましょう】
幼馴染「……ん、減塩味噌って中々使い辛いわね。薄味のような気がするけれど、あまり入れ過ぎると減塩の意味が無くなってしまうし。鮭はまだ……焼けてないみたい。ふふ、香ばしい良い匂いだわ。わざわざ隣町の魚屋まで遠出した甲斐があったわね」
幼馴染(卵焼きに砂糖を入れてっと。そういえば関東では砂糖だけど、関西では甘味を付ける為にみりんを入れるのよね……試してみようかしら)
――ピピピピピッ
幼馴染「さて、ご飯も炊けたことだし、そろそろ彼を起こしに行こうかしら。このままだと遅刻してしまうし」
『桜が徐々に開花し、もう4月という事を感じさせられますね。世間では入学、入社シーズン真っ只中ですが――』
幼馴染(……もう4月なのよね。とすると、あの日から10年、か……早いものね。彼は覚えている――訳ないわよね。こういう事は忘れている性質だし)
『新しい出会い、新しい立場、役割が待っていますね。入学、入社がない人も、4月という心機一転の時期、何かを頑張ってみては如何でしょうか』
幼馴染「何かを……頑張る、か。最近のニュースは随分と難易度の高い事を言うのね」
【10年前の出来事】
幼馴染(そういえば今日はえいぷりるふーる……お母さんが、絶対に一つ嘘をつかなきゃ、閻魔様に舌を抜かれちゃう……って言ってた。嘘……嘘……でももう放課後だし、相手がいないし……どうしよう。嘘つけなきゃ……閻魔様に、舌、抜かれちゃう)
男「あれ馴染ちゃん、もう放課後なのに教室に残ってどうしたの?」
幼馴染「あら、おーちゃん……一緒に帰ろうと思って待ってたんだけど――」
幼馴染(そうだ、おーちゃんなら嘘を言っても……許してくれるかも。確か、今年一番になる、嘘じゃないと……今年一番……)
幼馴染「おーちゃん、わたし……おーちゃんの事……す、好きじゃ……ない。むしろ、嫌い……かも」
男「――……?あぁ、そういうことね。えぇっと、じゃぁ俺も馴染ちゃんの事、好きじゃないかな」
幼馴染「…………へぅ」ガーン
男「へっ?い、いや馴染ちゃん、ほらエイプリルフールでしょ!? 嘘だよ嘘!馴染ちゃんの事大好きだから!」
~~現在~~
幼馴染(彼の事を友達じゃなくて、異性として好きだと気付いた理由が、嫌いって言われたからというのも珍しいわよね。我ながらお子ちゃまだわ。最初に嘘を付く為に嫌いと言ったのはわたしなのに……その後、必死で慰めてくれて……決定打だったわね。それから、何時の間にか彼がわたしを名前で呼ぶようになって、夜更かしが多くなって寝坊癖が付いた彼を起こしに行くようになって――)
男「ぐぅ……すかぁ」
幼馴染「今に……至るのよね。起こして貰えるからって、ギリギリまで熟睡してるんだから。まったくもぅ……ほらっ、そろそろ起きなさいな」
【読心術とは】
男「そうだ馴染、子供の頃に俺達がよく行ってた公園あるだろ。あそこさ、取り潰されちゃうみたいなんだよな」
幼馴染「……遊具が特徴的だった公園よね。前に通り掛った時に工事の張り紙がされていたから、改修工事かと思っていたのだけど。学校とは反対側だし、行かなくなってから随分経つわね。少子化で、子供もインドアな遊びばかりになっているし……仕方ないのかしら」
男「それでだ、放課後になったらさ、久々に行ってみないか?潰されちゃう前に、行っておきたいんだよ」
幼馴染「そうね、あそこの遊具は隠れられる場所が多いものね。コンクリートマウンテンの中にわたしを誘き寄せ、暗がりで好き放題したり、ザイルクライミングで擬似的な縛りプレイをしたり、ジャングルジムに入れて身動きが取れない状態のわたしに色々致す気なのね。公園鬼畜魔」
男「公園が潰される前に、もうコンビニの建設予定があるなんてなぁ。世知辛いというか、コンビニ無双というか」
幼馴染(でも、貴方と初めて出会って、良く遊んだ公園だったのに……無くなってしまうのね。全然足を運ばなくなったというのに……寂しい気がするわ)
男「やっぱり馴染と初めて会った場所だし、無くなるのは寂しいよな」
――バシッ
幼馴染「あ、貴方は遂に読心術まで身につけたのかしら。それでわたしの心を読んで、身も心も堕落させる気なのね。とても鬼畜だわ」
男「馴染、顔面にいきなり教科書ぶつけるのは痛いと思うんだが」
【鋭いのか鈍感なのか】
幼馴染「取り壊し予定日は……1ヶ月後。随分と性急じゃない。コンビニの建設が控えてるからかしらね」
男「確かに住宅地近いし、立地としては良いもんな。ここ等辺公園どんどん減ってるし、子供が来ないなら公園にしてる意味ないしさ。だからって潰しまくるのは……だから子供のインドアが進むんだよ。まぁ俺もゲームが趣味だし、他人の事言えないけど」
幼馴染「貴方が子供の頃は、読書が趣味のわたしを強引に連れ出していたのに。今では休みに部屋で一緒にゲームくらいだものね、正にインドアの鑑」
男「公園で集まって携帯ゲーム機で対戦はアウトドアに入る……訳ないわな。そういやさ、馴染って昔、よくこのブランコ漕ぎながら本読んでたよな」
幼馴染「……そういう事は覚えているのね。ふふ、子供の頃はこのブランコ、高過ぎて足が浮いていたけれど……簡単に着いてしまうわ」
男「そりゃ何時までもあのままじゃないからな。身長だって伸びてるし、今でも脚が着かなかったら恐いだろ。只でさえ馴染は脚長いし、それにその……昔と違って綺麗になってるしな。なんというか、昔より笑うようになったというか」
――キィ……キィ
幼馴染「……笑うようになった事には気付くのに、その理由には全くと言っていいほど気付かないのね。本当に勘が鋭いのか、鈍感なのか判断に困るわ」
幼馴染「ねぇ貴方……今朝、心機一転、何かを頑張ってみましょうとニュースで言っていたの」
男「はは、4月とはいえ、いきなり言われると困るよな。俺達の学校って学年上がってもクラスはそのままだし、別に何かが変わる訳でもないしさ。進学か就職かも考えなきゃいけないけど、直ぐって訳じゃないし……なんか自分で言うのもなんだけど微妙な時というか」
幼馴染「……それを聞いて、わたしが今頑張ろうとしている事はなんでしょう。もし正解したら……そうね、御褒美をあげるわ」
男「頑張ろうとしてる事……?あぁ、生徒会長になるとかか?なんか今年から他薦も取り入れられるらしいし」
幼馴染「不正解。あ、ちなみに一回間違える毎に貴方の持っている参考書(意味深)の題名を一個上げるわ。では一個目――」
男「やめい、なんだその罰ゲーム!じゃぁえっと……」
――――――
――――
――
幼馴染「メイド嫁……ふぅ。これで26冊目ね。逆にここまでいくとわざと間違えているか勘繰ってしまうレベルなのだけど」
男「……っていうか全部タイトル覚えてるんだな。しかも最近買ったやつまで……何で隠し場所分かってるんだよ」
幼馴染「そうね、言うならば長年付き合ってきた幼馴染の勘、かしら。……じゃぁ、最後にヒントをあげるわ」
幼馴染「わたしが何時も何故えっちな事を貴方に言うか、分かる?」
男「……あ~……っていうかそれが何を頑張るかのヒントなのか?気にはなってたけどさ」
幼馴染「それが分かったら……多分正解も分かるでしょうね」
幼馴染「ふふ……貴方は『想い人と二人切りだと気恥ずかしくて、誤魔化す為、適当にえっちな会話をしていたら癖になっていた女の子』と、『いつも貴方との事を妄想していて、今まで言っていた事は貴方にならされても良いと思っている子』、どっちが好きかしら」
END