※関連
最初: 美琴「す・・・好きです!!付き合ってください!!」上条「何やってんだ、御坂」
前回: 上条「始まった・・・」美琴「大覇星祭・・・」垣根「アナウンスは俺」心理「やめて」【前編】
上条「えっと・・・後は全部出る予定ないな」
美琴「うん、私も二人三脚まで」
今、競技場では二人三脚の表彰が行われている
上条達は惜しくも二位だった
美琴「ま、仕方ないわよ」
上条「そうだな・・・この後はどうする?」
美琴「とりあえず、いったん観客席に行きましょう」
美鈴「美琴ちゃーん!惜しかったねぇ!」
旅掛「あぁ!でも、美琴が一番輝いてたぞ!」
美琴「・・・分かったからうるさい」
観客席に戻った美琴は早速、親バカの洗礼を受けていた
涙ぐみながら、ほお擦りして来ようとする美鈴を押さえながら、美琴が尋ねる
美琴「えっと・・・みんなはこれからどうするの?」
心理「私は垣根がアナウンス終わらせるまでは待っておくわよ」
ショチトル「私は、ヒマだからエツァリとふらつく予定だ」
19090「ミサ・・・わ、私はテっくんと買い物です!」
テクパトル「削板は白井を待つんだっけ?」
削板「あぁ、風紀委員の臨時支部にでも行ってみる!」
上条「そっか・・・母さんは?」
詩菜「明日から刀夜さんも来るらしいから、今日は早くホテルに帰るわよ」
うふふ、と笑いながら詩菜が答える
つまり、明日からはもっとめんどくさいことになるのだ
不幸だ、と上条がため息をつく
美琴「お母さん達は?」
美鈴「そうだなー・・・どうしよ、パパ?」
旅掛「あれだ、今日は早くホテルに帰って母さんとお楽しみだ!」
上条「あぁもう!そういうこと言わないでくださいよ!」
旅掛「はははは!まだまだ青いな上条君!」
上条「青いとかの問題!?ていうか俺の母さんも一応いるわけで!」
旅掛「気まずい空気になるのは御免だって!?甘いな、そんなことでうろたえていたら世の中・・・」
上条「普通はうろたえますから!てかなんで母さんはニコニコ笑ってるだけなんだよ!?」
詩菜「あらあら、賑やかでいいじゃない」
上条「良くねーよ!みんななんか手助けしてくれ!」
エツァリ「いえ、自分もあまりそういうことにはツッコめないので」
上条「変態が自覚を持った瞬間を目の当たりにしてしまいましたよ!?」
心理「はぁ、早く垣根と・・・」
上条「えぇ!?なんか心理さんは乙女モード!?」
ショチトル「行こうか、エツァリ」
エツァリ「え、えぇ」
上条「まさかの試合放棄!?」
削板「俺も行ってくるな」
上条「お前もかブルータス!!」
テクパトル「・・・気まずい空気はヤバいぞ」
19090「じょ、女性の前でその発言はいただけませんよ?」
上条「・・・」
まともだ
この二人はまともだ、と上条は泣きそうになる
旅掛「はははは!君達だって夜はお楽しみしたりするだろ?」
テクパトル「そういう問題じゃない!」
上条「そうだそうだ!旅掛さん、アンタちょっとおかしいぞ!」
旅掛「何を甘いことを言っている!?世の中おかしなことだらけだ!」
テクパトル「名言じゃないから、それ!」
美鈴「おー、テクパトル君カッコイイー」
旅掛「な、ミサカキラー!?」
テクパトル「ちげぇ!俺には心に決めた彼女がいるんだ!」
19090「//」
旅掛「な、なんだこのバカップルは!?」
美鈴「若い!若すぎて眩しいよパパ!」
美琴「・・・はぁ、当麻、さっさと帰ろう」
上条「あ、あぁ」
美琴と上条が手を握りながら去ろうとする
旅掛「あぁ待った待った!さっきのは冗談だよ!」
上条「・・・じゃあ、本当はどんな予定だったんですか?」
旅掛「いや、なに」
旅掛がニヤリと笑う
旅掛「妹達のこと、美鈴に話しておきたくてさ」
上条「!」
テクパトル「それは!」
二人が旅掛を睨みつける
美鈴「?妹達ってなに?」
美琴「・・・お父さんは知ってたんだ」
美琴が、少しうつむきながら言う
秘密を知られてしまったのだ
それも、心配をかけたくないはずの親に
上条「た、旅掛さん・・・」
テクパトル「・・・だが、いつかはどうせ知られることだな」
旅掛「・・・そうだ、それにこれは美鈴も知っておくべき問題なんだ」
テクパトル「・・・少し、場所を変えよう」
先程までの、陽気な空気は変わっていた
心理定規も削板も
ただ、少し心配そうな顔で見つめていた
上条「・・・ここでいいですか」
旅掛「あぁ」
一同は、人気のない公園に来ていた
美鈴「?ねぇ、一体・・・」
テクパトル「19090号」
テクパトルが、19090号を呼ぶ
19090「・・・はい」
その顔の特殊メイクを剥がす
もちろん、下からは美琴そっくりの顔が現れる
美鈴「・・・え?」
上条「美鈴さん、その・・・」
美琴「お母さん、落ち着いて聞いて」
美琴が上条の言葉を遮る
このことは
この問題は
彼女の口から告げなければいけない
美琴「この子は・・・私の遺伝子から作られたクローンなの」
美鈴「・・・この子が?」
美琴「・・・正確には、この子達・・・かな」
美鈴「・・・達?」
美鈴が驚いたようにつぶやく
美琴「・・・20003人、作られたらしいの」
美鈴「そ、そんなに!?」
美琴「・・・今は、9972人だけ生きてるの」
美鈴「・・・の、残りは?」
美琴「・・・殺されたわ、実験で」
美琴が唇を噛み締める
美鈴「殺された・・・?」
美鈴は事態を理解できなかった
まったく
まったく、理解できなかった
美琴「・・・一方通行に、殺されたわ」
美鈴「あ、一方通行って・・・さっきいた・・・」
美琴「・・・でも、今はあいつも妹達を守ってる・・・それに、あいつの恋人も妹達の一人よ」
美鈴「ちょっと待って、どういうことかわかんないわ・・・」
美琴「・・・私のクローンが実験のせいでたくさん死んで・・・そのクローンは今世界中に散らばっているってことよ」
美鈴「・・・パパは知ってたの?」
旅掛「あぁ、一応な」
旅掛がため息をつく
美鈴「・・・そこの子は、何人目なの?」
19090「・・・19090人目です」
美鈴「・・・ちょっと待ってね・・・美琴ちゃんは、そんな問題を一人で抱えてたの?」
美琴「ううん、一人じゃないわ」
美琴が首を振る
少し苦笑しながら
美琴「・・・当麻が助けてくれたの」
美琴「私のことを、体を張って」
美琴「・・・だから、一人じゃなかったわ」
美鈴「・・・上条くん、ホント?」
上条「・・・はい」
美鈴「・・・テクパトルくんも、知ってたんだ」
テクパトル「・・・はい」
美鈴「・・・知らなかったのは、私だけか」
美鈴が笑う
とても悔しそうに
教えてもらえなかったのが悔しいのではない
ただ、自分だけが蚊帳の外にいたことが悔しかった
でも
美鈴「美琴ちゃんは、もうそれは解決させたことなんだよね?」
美鈴は尋ねた
自分の娘を信じていたから
美琴「うん、済ませたことよ」
美鈴「・・・なら、私がとやかく言うことじゃないかもね」
上条「・・・美鈴さん」
美鈴「薄情かもしれないけどさ、私は美琴ちゃんが今笑ってるなら一安心なんだよ」
旅掛「お、さすが美鈴だな」
嬉しそうに旅掛が笑う
彼も、少し前までは同じ悩みを抱えていたのだ
今の美鈴の気持ちはよく分かる
テクパトル「・・・だから、俺にとって二人は・・・」
旅掛「義理の両親、か」
テクパトル「・・・あぁ」
19090「・・・あ、あの」
美鈴「・・・ね、あなたは名前はあるの?」
19090「・・・」
テクパトル「まぁ一応、呼び名はあるよ」
上条「え、そうなのか?」
テクパトル「深くは追求するな」
はぁ、とテクパトルが息を吐く
美琴「・・・ねぇ、お母さん」
美鈴「ん、なに?」
美琴「その・・・妹達のこと、黙っててゴメン」
美琴が頭を下げる
美琴「・・・私・・・」
美鈴「心配かけたくなかったんだよね」
美琴「!」
驚いて、美琴が顔を上げる
美鈴は笑っていた
美鈴「ママに心配かけたくないなんて、出来た娘で幸せだよ!」
美琴「・・・ありがと」
美鈴「ほれほれー!泣きそうならママの胸に飛び込んできなさい!」
美琴「窒息しそうだから・・・」
遠慮しとく、と言おうとした
でも、美琴は気づいた
美鈴の目尻に涙が浮かんでいるのに
彼女だって辛いのだ
娘に心配されるなんて、親からしたら情けないのだろう
だったら
今くらい、甘えてもいいのではないか
美琴「・・・ありがとね、お母さん」
ぎゅっ、と美琴が美鈴に抱き着く
美鈴「おーよしよし!」
旅掛「・・・ほら、お前もだよ」
19090「・・・え?」
美鈴「そうそう、美琴ちゃんの妹なんでしょ?だったら私達の娘でもあるんだから!」
ニコニコ、と美鈴が笑う
妹達に親はいないはずだった
それでも
美鈴「おいで!」
19090「・・・はい!」
19090「お母さん!」
美鈴は
19090号にとって、母親だった
かけがえのない、母親だった
テクパトル「・・・よかったな・・・」
上条「・・・いいのか?親のポジション奪われちまうけど」
テクパトル「本当の親が一番さ」
テクパトルが苦笑する
もしかしたら、妹達は美鈴を望むかもしれない
それでもよかった
テクパトル「家族ってのは・・・いいな」
テクパトルに家族はいない
気がついたら組織にいたから
家族、というものがほしかった
当たり前の、家族が
美鈴「ん、なになに?テクパトルくんも抱きしめてほしそうな顔してるね!」
テクパトル「い、いや!俺は遠慮しておく!」
旅掛「そ、そうだそうだ!男の子をその豊満なボディーで抱きしめるなんて・・・」
美鈴「えー、でも義理の息子になるんだよ?」
テクパトル「なおさらアウトだから!」
美鈴「なんなら上条くんも!」
上条「俺も遠慮しておきます!」
美鈴「なにー!」
美琴「あはは!当麻焦ってる!」
19090「テっくんも冷や汗かいてますね」
上条「あぁもう!」
上条が空を見上げる
家族ってのはいいなぁ、なんて思いながら
上条「不幸だー!」
垣根「じゃ、アナウンス、後はよろしくー」
後続のアナウンスに引き継ぎ、いったん垣根が放送席を出る
ぐぐ、と体を伸ばすと節々がポキポキ、と音を鳴らした
半日座りっぱなしに近かったのだ
肩も凝っているようだ
心理「あら、終わったの?」
後ろからいきなり声をかけられる
少しだけ、体が跳ねてしまう
垣根「んだよ・・・びっくりしたじゃねぇか」
心理「あら、ごめんなさい」
クスクスと心理定規が笑う
心理「・・・吹寄さんはいないのね」
垣根「なんであいつといなくちゃなんねーんだよ」
心理「仲良しじゃない」
少しふて腐れたように心理定規が答える
ヤキモチだろうか
普段の彼女からしたら、あまり考えられないような発言だ
垣根「はぁ・・・俺はお前以外の女には興味ねぇんだよ」
垣根が心理定規の唇を奪う
周りの生徒達が驚いたように顔を赤くする
心理「・・・あら、素敵」
垣根「こんだけ大人数の前で堂々と言えるんだ、俺の愛情もわりといいもんだろ?」
垣根が笑う
彼は、心理定規だけを愛しているのだ
それだけは、はっきりとしていた
心理「・・・愛してるわよ」
垣根「愛なんて言葉にするもんじゃねぇよ、行くぞ」
心理定規の手をひきながら、垣根が歩く
やはり、歩幅が違うのに二人はずっと並んで歩いていた
心理(言葉にしないんじゃなくて、言葉に出来ないのよね)
歩幅が違うのに、二人は一緒だった
心理(あなたは不器用だもの)
少し嬉しそうに、心理定規が笑う
それをヘンな目で垣根は見つめていた
垣根「なんか、気味が悪いぞ・・・」
心理「あら、失礼ね」
一方「・・・なァ、早く帰ろうぜ」
一方通行は参っていた
番外「うわぁ!ゲコ太のお面だよ!」
一方「聞けよ」
先程から屋台を見ては歓声を上げている、この恋人に
どれくらいの時間、二人で歩き回っただろうか
その間、ずーっとゲコ太グッズを見ているのだ
一方通行も別にゲコ太が嫌いなわけではない
好き、というわけでもないが
一方「こンなに見せられたら・・・嫌いになりそォだ」
番外「うわ、そしたら別れるもんね!」
一方「ご自由に」
番外「え、ウソウソ!怒った?」
一方「怒ってねェよ」
一方通行がため息をつく
いつまでこんな面倒に付き合わされるのだろうか
一方「俺は早く座りたいンだよ」
番外「よし!じゃあこれに決めた!」
一方「聞けよ」
番外「あー!!可愛い!!」
ぎゅっ、と番外個体がゲコ太のお面を抱きしめる
一方(・・・何がいいンだかなァ)
一方通行には、本当にわからない
夏の眩しい陽射しの中
ずっと暗闇で過ごしてきた一方通行は
その眩しさに、ただただため息をついていた
美琴「・・・お母さん達はもうホテルに帰るの?」
美鈴「うん、お楽しみだし」
テクパトル「・・・そういうこと普通に言わないでくれよ・・・」
旅掛「君達だって・・・」
テクパトル「さっき聞いた!」
旅掛「あれ、そうだっけ?」
美琴「はぁ・・・ホテルに帰るのよね?」
美鈴「うん、美琴ちゃん達は?」
上条「俺達は・・・テクパトル達と買い物でもしようかなって」
旅掛「お、兄弟の仲を深めるのか」
上条「なんでそう急ぐんですか・・・」
旅掛「ははは!いいじゃないか!」
旅掛「ちょっと義兄さん!うちの嫁に手を出さないでくださいよ!」
旅掛「げへへ、いいだろ別に、ちょっとだけだからさぁ!」
旅掛「ふざけんな!アンタにはもううんざりだ!」
旅掛「あぁ!?お前、義兄の頼みがきけないってのかぁ!?」
旅掛「みたいにならなくて済むしな!」
上条「なるつもりはありません」
美鈴「じゃ、美琴ちゃん、えっと・・・」
19090「・・・」
そっと、19090号が美鈴に近寄る
19090「美月です、みなさんには内緒にしてますが」
美鈴「おー、彼氏との秘め事なんて憧れるね」
ニコニコ、と美鈴が微笑む
美鈴「じゃ、また明日」
美琴「うん、またね」
19090「またです!」
旅掛「仲良くな!」
美鈴と旅掛がその場を去る
残された義兄弟は、しばしポツンと立っていた
美鈴が妹達のことを、受け止めてくれた
それはとても嬉しかった
だが、彼女は苦しまないだろうか
背負わせてしまったのではないだろうか
話してよかったことなのか
テクパトル「でも、隠し続けることはできなかっただろうな」
上条「そうだな」
ただ
美鈴のことを信じるしかなかった
美鈴「はぁ・・・まさか美琴ちゃんにあんなことがあったとはね」
美鈴はポツリとつぶやいていた
旅掛「学園都市は少し前までかなりえげつなかったからな」
美鈴「・・・パパは知ってたんだよね」
旅掛「俺は一応、学園都市の統括理事会とも絡んでるからな」
旅掛が当たり前のように答える
だが、それはどれほど危険なことなのだろうか
美鈴「・・・なんなんだろ、この気持ち」
旅掛「辛いのは分かるさ」
美鈴「うん・・・でも・・・」
殺された妹達は
みんな、今の妹達のように幸せだったのか
美鈴が会ったのは、美月という妹達だけだ
だが、彼女は本当に幸せそうに見えた
恋人がいて、友達がいて
もしも、死んだ妹達もそうだったなら
とても、辛いことだ
美鈴「・・・でも、私がどうこう言っても仕方ないか」
旅掛「・・・俺達は美琴の親だ、味方でいてやることは出来る」
ただ、手を差し延べるのは
上条にしか出来ないことだった
いつも美琴のそばにいられる彼にしか
美鈴「けどね、ちょっと嬉しかったのもあるよ」
旅掛「なんで?」
美鈴「話してくれたってことは信用してくれたんだし」
美鈴「それに、娘が増えたからね」
一気にたくさん、と美鈴が笑う
旅掛「・・・それできこうと思ってた」
美鈴「あ、私も」
二人が顔を見合わせる
少し冷や汗をかきながら
旅掛・美鈴「引き取れるの?」
上条「・・・で」
テクパトル「買い物に来たわけだが」
二人の男は溜め息をついていた
訪れたのは
女性用の下着売り場
周りの若い女の子達がヘンな目で見てくる
「うわー、この人たち覗き?」みたいな目で
上条(・・・居づらい・・・)
テクパトル「だからって一緒に入るのもな・・・」
上条「だよなぁ・・・」
いくら恋人のためとはいえ、そこに入る勇気はなかった
周りには下着だらけ
しかも、広告なんかも貼り付けてある
男としては、一瞬くらいはチラ見してしまうこともある
それをツッコまれるのもイヤだった
上条「・・・女の子って、下着にこだわるのかな?」
テクパトル「・・・19090号は結構こだわってるぞ」
上条「へぇ・・・」
テクパトル「着心地がどうだ、とかセクシーさがどうだ、とか・・・」
上条「そういえば美琴も言ってたな・・・」
テクパトル「正直、汗を吸うためのものなのにな」
上条「ですよねー」
まったく、男にはわからない世界だ
かといって、下着が適当でいいというわけでもない
そういうことをするとき、やはり可愛い下着を着けていてくれたら嬉しいものだ
だからこうして買い物に付き合っている
上条「・・・大覇星祭っていっても、ヒマなヤツたのほうが多いからな・・・」
テクパトル「そうだな・・・」
たくさんの学生達が買い物をしている
大抵は、親と一緒に回っているらしい
美琴「ごめーーーん!!!待ったーーーー!?」
上条「あ、おかえり」
19090「つ、つい可愛い下着に目が・・・」
テクパトル「いや、仕方ないさ」
ははは、と男二人が笑う
内心では、どんな下着を買ったのかかなり気になっている
だが、それを表には出さない
上条「じゃあ・・・次は何するか?」
テクパトル「あ、他のミサカたちも呼んでいいか?」
美琴「もちろん」
美琴がうなずく
そういえば、最近少し妹達に構ってあげていない
少しくらいは姉としても構うべきだろう
テクパトル「よかった、近くにいたみたいだ」
テクパトルが携帯を見ながら言う
メールの返事で、「スグニイクヨ」と返ってきた
なぜか、怖い感じだったが
20000「もう!!テっくんったら、ミサカのマ○コがないといけないのね!」
テクパトル「すまん、帰ってくれ」
20000「ひでぇ」
御坂妹「お姉様とは久々の買い物ですね、とミサカは喜びます!」
美琴「うん、何か買いたいものはある?」
10033「そうですね・・・とミサカは思案します」
17600「あ、じゃああれだあれ」
テクパトル「ん、なんだ?」
17600「まずは、下着から」
テクパトル「」
上条「」
男達の憂鬱は、再び始まる
上条「はぁ・・・次は俺たちの下着な」
美琴「え、あ、うん・・・」カァッ
テクパトル「・・・俺たちが味わった苦しみを思い知れよ・・・」
20000「ふへへ!!テっくんは巨根だから、サイズがなかなかないんだよね!!」
テクパトル「黙れ!!」
19090「た、たしかに少し大きいですが・・・//」
御坂妹「うわー、その発言はひきますよ、とミサカは若干19090号から距離を置きながら・・・」
テクパトル「ちょっと待て!!」
10033「・・・へぇ、テっくんはやはり巨根なんですね、とミサカも若干テっくんから距離を置きます」
14510「ちょっと敬遠したいですね、とミサカもうなずきます」
テクパトル「なんだよ!?小さかったら小さかった文句言う・・・」
20000「はぁ!?セロリたんナメんな!!」
14510「そうですよ!!」
10033「許しませんよ!?」
17600(終わってるなこいつら)
上条「と、とにかく・・・」
美琴「・・・と、当麻の下着を見るのよね?」
上条「あ、あぁ」
テクパトル「じゃ、行こうか」
19090「は、はい!」
一同は、男性の下着売り場へ行く
上条「おー、結構混んでるな・・・」
美琴「たしか、学園都市の中にしかないデザインもあるのよね・・・」
上条「そうそう、外の人たちはこういうときにしか買えないからな・・・」
最近は、外との行き来も規制は柔らかくはなってきている
とはいえ、わざわざ下着を買うためだけのやってくる物好きはいない
大覇星祭のついでに、という客で溢れかえっているのだ
テクパトル「俺はボクサーパンツ見てくるな」
上条「あ、俺も」
美琴「当麻って、いつもはトランクスじゃないっけ?」
上条「あぁ、でもたまには変えてみようかなってさ」
テクパトル「気分転換にもなるからな」
19090「へぇ・・・男性も意外とこだわるんですね、とミサカは驚きます」
美琴「そりゃ、やっぱりね」
御坂妹「ミサカたちはセクシーさなどを求めますが、男性は何を求めるのですか?とミサカはたずねます」
テクパトル「うーん・・・俺は伸縮性かな」
上条「へぇ、どうして?」
テクパトル「筋トレするからさ」
10033「あぁ・・・伸縮性がないと破けそうですね、とミサカは苦笑します」
美琴「なるほど・・・実用性を考えているのね・・・」
19090「ですが、たまには趣向を変えてみてはどうですか?」
テクパトル「そうは言ってもな・・・」
テクパトルが顎に手をやる
テクパトルは普段、ほとんど毎日筋トレをしている
わざわざ筋トレのときだけボクサーパンツに着替えるのもおかしな話だ
テクパトル「そうだな・・・19090号はトランクスのほうがいいか?」
19090「ふぇっ!?」
14510「これまた大胆な質問ですね・・・とミサカは驚愕を隠せません」
20000「テっくんの変態ー」
17600「お前が言うな」
テクパトル「・・・いや、女の子はボクサーはいやなのかなってさ」
美琴「どうなんだろ・・・ただ、ラインが強調されるわよね」
上条「あー、たしかにな」
上条がうなずく
テクパトル「じゃ、たまにはトランクスにするかな・・・上条はボクサーだよな?」
上条「あぁ」
上条が下着を見ていく
赤、黒、青などさまざまな色がそろえられている
上条「美琴はどれがいいと思う?」
美琴「私は・・・これかな」
美琴が手に取ったのはキャラ物だった
上条「・・・それは、遠慮しておく」
美琴「えっ!?」
テクパトル「上条、黒がいいんじゃないか?」
上条「あ、そうだな」
美琴「えっ!?」
御坂妹「お姉様、ねばりますね・・・」
美琴「・・・ゲコ太柄可愛いのに・・・」
上条「可愛さは求めてないからな・・・」
テクパトル「はぁ・・・しかし、混んでるな・・・」
上条「あぁ・・・混みすぎだ」
美琴「ねぇ、次はどこ行く?」
19090「そうですね・・・」
20000「あ、あれ見ようよ」
17600「・・・ふざけたこと言ったらぶっ放すからな」
20000「違うよ」
テクパトル「なんか見たいものでもあるのか?」
20000「家電」
テクパトル「・・・なんで?」
20000「いやぁ、オーディオプレーヤーがほしくてさ!!」
20000号がニコニコと笑う
上条「あぁ・・・音楽聴くのか?」
20000「たまにね」
美琴「ふーん・・・どんなの?」
20000「えっとね・・・テっくんのCD勝手に借りて聞く」
テクパトル「お前か・・・いっつも棚にゴチャゴチャにして直すのは」
上条「テクパトルは洋楽聞くんだっけ?」
テクパトル「あぁ、出身も違うしな」
19090「では、見に行きましょう!」
テクパトル「・・・へぇ、家電って結構種類があるんだな・・・」
上条「あぁ・・・あ、テレビだ」
美琴「・・・当麻の部屋のはそんなに大きくないわよね」
上条「仕方ないだろ!!貧乏なんだよ!!」
上条が頭を抱える
どうせ、常盤台の寮は豪華な内装がされているのだ
10033「あ、これですか?」
20000「そうそう、安いのでいいから買ってよー」
テクパトル「・・・なぁ、俺が買うのか?」
20000「うん」
19090「・・・テっくん、どうしますか?」
テクパトル「はぁ・・・しゃあねぇな」
テクパトルがその中からわりと人気な商品を手にとる
20000「サンキュー!!」
上条「いいなぁ・・・俺はそんな金もないよ・・・」
はぁ、と上条が溜め息をつく
無能力者の彼にはほとんど奨学金は出ない
そのため、毎日の生活費でほとんどが消えるのだ
美琴「私も買おうかな・・・」
上条「あぁもう!!これだから節約を知らない人は!」
テクパトル「さて・・・」
御坂妹「そろそろ帰りますか?とミサカは問いかけます」
テクパトル「ん、そうだな」
上条「もうこんな時間か・・・」
上条が時計に目をやる
時刻は、19時だった
美琴「明日も朝は早いし、解散ね」
テクパトル「じゃあ、またな」
上条「あぁ、また」
一同が解散する
美琴「明日は母さんにみんなを会わせたいな」
上条「あ、それいいな」
そんな会話をしながら、二人は寮へと戻った
初春「はぁ・・・やっと仕事も終わりですね」
黒子「・・・疲れましたの・・・」
こちらの二人は、風紀委員の仕事を終えたところだった
かなり疲れがたまっている
これがあと6日も続くと思うと、気が参ってしまう
黒子「あら、軍覇さんですの」
削板「よーー!!!仕事終わったかーーー!!??」
初春「・・・彼氏さんのお迎えですか、いい身分ですね」
黒子「な、なんか今日の初春は怖いですの」
削板「お疲れ様・・・大変だな」
黒子「いえ、好きでやっていますから」
黒子が苦笑する
大覇星祭のプログラムが終わるまで、ずっと仕事は続くのだ
初春「はぁ・・・私も誰か迎えに来てくれないですかね・・・」
初春がぼそりとつぶやく
素敵な王子様が迎えに来てくれたらなー、なんて思ってたら
垣根「いよぅ!!!」
来た
めんどうなヤツが
初春「あれ、なんか声がした気がしましたが気のせいでしょうか、いいえ、こだまでしょうか、いいえ、誰でも」
黒子「現実を見なさいな」
垣根「おーっす、白井、お疲れ」
黒子「垣根さんはなぜここに?」
心理「ヒマだからって来たのよ・・・」
垣根の後ろから心理定規が現れる
めんどくさそうに、溜め息をつきながら
黒子「あら、ですがもう仕事は終わりましたの」
垣根「んなこたぁわかってんだよこの」
初春「帰ってください」
垣根「」
垣根「・・・いや、とにかくヒマだからなんかしようぜ」
黒子「いいですけれど・・・」
初春「イヤです、帰ります!!」
垣根「あ、帰ったら殺すからな」
初春「」
削板「おいおい、えげつないぞ!!」ハハハ
初春「笑ってないで止めてください!!」
黒子「初春、諦めますの」
心理「ごめんなさいね、うちのバカが」
初春「」
初春「白井さん、なんでこの人が」
心理「あら、いまさら?」
初春「はっ!また私の本体を!?」
心理「違うわよ・・・」
垣根「こいつ、俺の彼女だし」
初春「」
初春「・・・二人とも、私を殺そうとしたカップルですね」
心理「あら、ひどい言い様ね」
初春「本当じゃないですか!!」
黒子「あら、垣根さんはいつもバイオレンスですの」
初春「おかしいです、白井さん!!」
削板「?黒子はおかしいのか?」
黒子「さぁ、わかりませんの」
初春「おかしいです!!風紀委員は風紀を乱す物を取り締まるのが目的ですよ!?」
垣根「じゃあまずはお前の本体を取り締まらないとな」
初春「こ、これは風紀を乱しません!!」
心理「そう?かなり気になるけど・・・」
初春「なりません!!!」
垣根「・・・いや、でもそれってなんなんだろうな」
垣根がぽつりとつぶやく
黒子「・・・そういえば、たしかに知りませんの」
心理「あら、黒子はもう長い付き合いじゃないの?」
黒子「そうですけど、知らないですの」
削板「へぇ・・・気になるな」
初春「・・・な、なんでみなさんジリジリとにじり寄ってくるんですか・・・?」
垣根「問題とは、解決するべきだ」
黒子「そうですの」
削板「俺の根性も、知りたがっている!!!!」
心理「私も、気になるから」
初春「や、やめてください!ひっぱらないで・・・」
初春「っぎゃーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
暗闇が迫る夏の夕方
一人の哀れな少女の悲鳴がこだました
一方「・・・もォこンな時間か」
一方通行は一人、溜め息をついていた
時刻は22時
他のいつものメンバーはどうしているだろうか
ほとんど別行動だったのでわからない
一方(どうせイチャイチャしてンだろォけどな)
実際、そうなのだ
番外個体は、彼の横で寝ている
昼間にはしゃぎすぎて疲れたのだろう
打ち止め「よーし!!これでアナタに甘えられる!!ってミサカはミサカはダイブしてみたり!!」
一方「ロリの胸やべェ(ロリの胸やべェ)」
打ち止め「正直な人なんだね、ってミサカはミサカは若干距離を置いてみる!」
一方「置くなァ!!」
打ち止め「うわぁ、変質者だよ!!ってミサカはミサカは叫んでみる!!」
黄泉川「なに!?どこじゃん!?」
打ち止め「あ、違うよ、ってミサカはミサカは苦笑してみたり!」
黄泉川「なんだ、驚かせないでほしいじゃん」
黄泉川が部屋へと帰る
一方「お前な・・・」
打ち止め「ははは!!アナタを手玉にとったよ!!ってミサカはミサカは胸を張ってみる!」
一方「ねェくせに」
打ち止め「その胸がいいっていうアナタは変質者だね!ってミサカはミサカは言い返してみたり!!」
一方「はァ!?ロリは正義なンですゥ!!」
二人がにらみ合う
最近は、いっつもこんな感じだ
ただし、今日はストッパーの役割である番外個体が寝ている
そのため、その言い争いは二時間以上続くことになった
エツァリ「・・・おや、朝ですか」
エツァリがベッドからを起こす
もはや全裸なのはデフォだ
ショチトル「うーん・・・眩しい朝日だ・・・」
エツァリ「寝起き早々、ロマンチストですね」
ショチトル「ん、おはよう」
エツァリ「・・・早くしないと、競技が始まってしまいますね・・・」
競技開始まで、一時間しか残っていない
ショチトル「急がないとな」
適当に朝食を作り、二人は準備を済ませる
エツァリ「では、いただきます」
ショチトル「いただきます」
ショチトル「今日は、第一種目から上条が出るんだよな」
エツァリ「えぇ、たしか・・・大玉ころがしでしたっけ?」
ショチトル「なんでも、今回の大玉はかなり重いらしいな」
食事を取りながら二人が日程を確認する
ちなみに、大玉の大きさは20kgを越えるらしい
毎年毎年すんなりと決着がつきづぎて面白くないから、重くしたらしい
けが人が出そうなのが心配だ
ショチトル「・・・しかし、なかなかユニークな競技が多いよな」
エツァリ「えぇ・・・盆踊りとかありますよ」
パンフレットをめくっていくと、写真つきで解説がされている
学生が盆踊りを体育服で踊るなんて、シュールな光景だ
エツァリ「カバディなんて誰がやるんですか」
ショチトル「そんなのもあるのか」
エツァリ「えぇ・・・」
ショチトル「・・・さて、行こうか」
準備を済ませ、二人が家から出る
すぐそこの大通りは、学生達で賑わっている
エツァリ「・・・始まりますね、二日目が」
ショチトル「あぁ」
空の陽射しは、昨日よりも強くなっていた
垣根「野郎共!!目は覚めてるかーーー!!!」
一同「いぇーーー!!!!」
競技場では、すでに垣根が前説をしていた
もちろん、吹寄もいる
吹寄「本日の第一種目は、大玉ころがしになっています、選手の方は競技場脇に集合してください」
垣根「なお、今年の大玉は20kgを越える重さとなっております!!」
一同「おーーーー!!!!!!!!!!!」
垣根「さぁ、男と男がぶつかり合う!!」
垣根「女と女が乳繰り合う!!」
吹寄「それはないから!!!」
垣根「さぁ、選手達!!準備はいいかーーーー!!!!????」
上条「はぁ、なんで重くしたんだよ・・・」
土御門「絶対けが人増えるにゃー・・・」
青ピ「ボク、乗られるなら女の子がいいわ」
■■「何の話か。まったくわからない」
上条「・・・でも、紅組は昨日の時点では勝ってるんだよな」
土御門「にゃー、このまま行けば俺たちの勝ちは確実だぜぃ」
たしかに、初日でかなりの差がついていた
■■の意外な活躍のおかげでもある
■■「私を褒めて」
青ピ「でも、油断はできないからなぁ・・・」
上条「そうだな・・・」
上条「・・・あ、入場だ」
上条たちが立ち上がる
今回の競技はかなり危険なため、ある程度時間を確保されている
急ぎすぎる必要だないため、余裕が出来るのだ
詩菜「あらあら、当麻さんが入場してきたわね」
美鈴「おー、凛々しいですね!」
観客席には、もちろん一同がいた
心理「でも、怪我をしなければいいわね」
削板「そうだな・・・危険そうだ」
テクパトル「・・・いや、そもそもつっこみどころが違うぞ」
ショチトル「・・・美琴、緊張してるのか?」
美琴「え、な、なんでよ!?」
エツァリ「彼に勝ってほしいんですよね?」
美琴「わ、私と当麻は敵同士よ!!」
旅掛「ははは!!本当はがんばってほしいんだろ!」
美琴「う、うるさいわね!!」
美鈴「あれれーん?顔が真っ赤だよ?」ニヤニヤ
詩菜「あらあら」ニコニコ
美琴「うーっ!!!」
ショチトル(可愛いな)
旅掛「あ、始まるぞ!!」
美琴「!!」
一同が競技場を見つめる
たしかに、今回の大玉は素材がそもそも違うようだ
なぜか、金属製だ
エツァリ(あれ、自分の知っている大玉と違います)
心理(絶対、死人が出るわよ)
上条「はぁ・・・怖いな・・・」
上条が大玉の表面に触れる
今までのは、触ったらプニプニとしていたはずだ
これは、叩いたらこちらが手を怪我しそうなほどの固さだ
土御門「・・・これの下に轢かれたら・・・」
青ピ「怪我ですめばええけどなぁ」
■■「轢かれたら。注目される?」
上条「いや、そういう問題じゃないぞ・・・」
はぁ、と上条が溜め息をつく
この種目で勝てば、さらに紅組は有利になる
だが焦りは禁物だ
垣根「さぁみなさん!!とうとう、選手達が出揃いました!!」
吹寄「選手のみなさん、位置についてください!!」
選手が、スタートラインに並ぶ
つい、緊張で口が渇く
上条(・・・落ち着け・・・)
ふと、観客席に目をやる
美琴が、両手を合わせて上条を見ている
上条(美琴・・・)
上条(よし、やるしかない!!)
垣根「大覇星祭!!怒涛の二日目!!!」
吹寄「いよいよ始まります!!」
垣根「では!!」
垣根・吹寄「スタート!!!!!!!!!!!!!!」
審判員が旗を上げる
土御門「うぉぉぉぉぉ!!!」
青ピ「お、思ったより重いなぁ!!」
上条「くそ・・・うぉぉぉぉ!!!」
■■「私は。力持ち」
土御門「カミやん、気をつけろ!!」
上条「へ?」
いきなり、横から雷撃が飛んできた
忘れてはいけない、これは大覇星祭だ
能力使用も許可されている
上条「おわっ!!」
反射的に右手を伸ばす
彼の右手に当たった雷撃は、打ち消されてしまう
土御門「よし、今のうちに!!」
雷撃を打ってきた相手はポカンとしている
上条「行くぞ!!」
青ピ「小萌先生のためやーー!!」
美琴「あ、当麻たちが一位だ!!」
美鈴「あれー?応援してないんじゃなかったの?」
美琴「うるさいから、少し黙ってて!!」
美鈴「パパー!!美琴ちゃんにうるさいって言われたーー!!」
旅掛「おーよしよし!!!」
心理「少し黙っててください」
旅掛・美鈴「はい」
ショチトル「だが、あまり差はないな・・・」
削板「相当重いんだろうな」
エツァリ「えぇ・・・周りも必死に追いかけてますね」
テクパトル「あ、上条が狙われてる」
美琴「私の当麻になんてことすんのよ!!!」キーッ!
19090「お、落ちついてください・・・」
垣根「さぁさぁ!!あと半分は残ってますよ!!」
吹寄「選手のみなさん!諦めないで!!」
垣根「あなたの肌!!」
吹寄「あぁもう!!真剣にやれ!!」
垣根「おーっと!!三位の選手達が転倒しました!!」
吹寄「きゅ、救護班!!」
美鈴「うわー・・・痛そう・・・」
美琴「一人、おなかにもろのっかってたわね」
心理「吐くんじゃない?」
削板「あれは吐くな」
テクパトル「あぁ、絶対吐く」
19090「吐かないほうがおかしいです」
ショチトル「おえーーー」
エツァリ「なんなんですかこの流れは」
上条「・・・くそ、足が攣りそうだ・・・」
土御門「カミやん!右!!」
上条の右から、今度は土の塊のようなものが飛んでくる
上条「あぁもう!!」
右手を伸ばし、それを打ち消す
さきほどからこの繰り返しだ
なかなか、リードを広げられない
上条「・・・青ピ、走れるか?」
青ピ「カミやん、ボクぁ小萌センセのためならなんでもできるんやで?」
きらり、と歯を光らせながら青ピが答える
■■「私も。いけそう」
上条「土御門」
土御門「あぁ、わかった」
あいにく、上条たちの中には能力者はいない
上条(だとしたら、俺たちができるのは・・・)
能力者たちが演算しているすきに、走ること
上条(くそ・・・そんなことしかできないのか・・・)
少し悔しいが、仕方ない
土御門「走るぞ!!」
青ピ「行くでぇ!!」
四人が、必死にスパートをかける
まだ、そんな距離ではない
周りの選手達は驚いたような顔で見つめている
美琴「え、まだ四分の一以上あるのに・・・」
美鈴「もうスパート?」
旅掛「体力もたないんじゃないか?」
心理「あら、でも差をつけるのは大切よ」
上条「おぉぉぉ!!」
土御門「よし、少し差が開いたぞ!!」
青ピ「このまま行くで!」
■■「私は、風」
垣根「おーっと!!差が開いていきます!!」
吹寄「これは、面白くなってきました!!」
美鈴「あれ、意外といいペースじゃない?」
美琴「ホントだ!がんばれー!!!」
削板「これはいいペースだな!!」
ショチトル「ラスト50mだな!!」
テクパトル「あ、上条こけた」
美琴「当麻ーーー!!!!」
上条「いてて・・・」
土御門「いやぁ、まさか50m手前でこけるとはにゃー」
青ピ「しかも、石にけつまづいてやで?」
■■「かっこ悪い」
上条「あぁ!!とにかく早く行くぞ!!」
やけになりながら、上条が大玉を押す
そして
垣根「一位は!!上条選手達です!!」
一同「おーーー!!!!」
上条「やった・・・やったぞ!!」
土御門「なんだ、俺たちも結構やれるじゃないかにゃー」
青ピ「いやぁ、女子がボクに注目してるわぁ・・・」
■■「私も。注目されたい」
美琴「やった!!見た、見た!?」
旅掛「さすが俺の認めた息子だ!!」
詩菜「あらあら、もう認められてるのね」ウフフ
美鈴「おー、やるねぇ」
削板「感動した!」
テクパトル「そのセリフは・・・ダメだ」
19090「?」
上条「はぁ・・・力が抜けるな・・・」
土御門「でも、今度の盆踊りは俺たちも出るんだぜぃ?」
青ピ「あぁ、そやねぇ」
上条「?盆踊り?」
土御門「あれ、聞いてないのかにゃー?」
土御門が首を傾げる
土御門「あれだにゃー、点数はつかないんだぜぃ?」
上条「あぁ、そりゃそうだろ」
青ピ「つまり、好きな子と踊れるんだぜぃ?」
上条「・・・え?そうなのか?」
上条が観客席の美琴を見つめる
美琴「あ、あれ・・・私のこと見てる?」
旅掛「くーっ!!熱いねぇ!!」
美琴「う、うるさい!!」
上条「そうか・・・じゃ、踊ろうかな」
垣根「次は、自由参加の盆踊りです!!」
吹寄「自分が組みたい人と、自由に踊れます!!」
垣根「みんな!!踊る阿呆にならねぇか!?」
一同「おーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!」
まだまだ続く大覇星祭
二日目の盛り上がりも、これからだ
上条「美琴ー!」
競技場から、上条が美琴を呼ぶ
幸い、美琴達は一番前に座っているため簡単に声が届くのだ
美琴「ん、なに?」
上条「一緒に踊らないか?」
美琴「ど、どうしてもっていうなら踊ってあげてもいいわよ!」
美鈴「またまたー!ホントはすごく楽しみなくせに!」
美琴「う、うっさいわね!いいでしょ別に!」
旅掛「あぁ!娘が旅立っていく!」
美琴「なに大声で恥ずかしいこと言ってんのよ!」
ぎゃーぎゃー、と御坂家が騒ぐ
エツァリ「では、自分達も行きますか?」
ショチトル「一般参加もいいみたいだからな」
テクパトル「じゃ、俺達も」
19090「は、はい!」
心理「・・・垣根、踊ってくれるかしら」
詩菜「あらあら、若いっていいわねぇ」
削板「俺は相手がいないから見ておくよ!」
ははは!と削板が笑う
黒子は今、風紀委員の仕事中なのだ
美琴「じゃ、行ってくるわね」
美鈴「いってらっしゃい!」
一同が競技場へ入る
心理定規だけは、少し外れて放送席へ向かう
垣根「あれ、なんだよ?」
心理「盆踊りなんて別にアナウンスすることないでしょ?」
垣根「そりゃそうだろ」
音楽を掛けて踊るのだ
それを遮るようなことなどするわけがない
心理「だ、だったら・・・一緒に踊らない?」
少し顔を赤くしながら、心理定規が問い掛ける
垣根「うーん・・・お前は踊りたいのか?」
心理「・・・ダメなの?」
垣根「いや、俺は踊りたいからさ」
垣根が立ち上がる
垣根「吹寄、頼んだぜー」
吹寄「楽しんできなさい」
垣根「じゃ、行くぞ」
心理定規の手を引いて、垣根も列に混じる
周りにはカップルやら、夫婦やらがたくさん並んでいた
上条「あ、いたいた!」
垣根「おっす、みんな近くで踊るか?」
美琴「うん、そうしましょ」
テクパトル「なんか、楽しいな」
エツァリ「おや、一方通行さんですね」
エツァリが人混みの中に一方通行を見つけた
あまりこういう雰囲気には馴染んでいない
一カ所だけ、明らかに空気が違ったのだ
一方「・・・なァ、なンで俺はこンなとこにいるンだ?」
番外「当たり前じゃん、踊るためだよ」
一方「いや、盆踊りなンてわざわざカップルで踊るもンじゃねェだろ」
一方通行がため息をつく
なぜフォークダンスではなく盆踊りなのか
それが一番の疑問だった
上条「おーい、一方通行!」
一方「あァ?なンだ、お前らもいたのかよ」
ショチトル「まさかお前がいるなんてな」
ニヤニヤ、とショチトルが笑う
一方「仕方ねェだろ・・・」
美琴「番外個体のため?」
美琴も冷やかすように言う
一方「悪いかよ・・・」
19090「な、なんかイヤそうなオーラが出ていますね・・・」
心理「似合ってないわね、この雰囲気」
垣根「お前が両手上げて盆踊りやるとか笑えるな」
一方「うるせェ・・・」
上条「あ、入場みたいだぞ」
軽快な音楽が掛けられる
少し早足で、一同が競技場に入る
吹寄「出場されるみなさん!これからは点数のつかない時間です!」
吹寄「なので、思い切り楽しんでください!」
垣根「ちっ、ベタなアナウンスしやがって」
ショチトル「いや、あれが普通だからな」
美琴「でも昔の大覇星祭じゃ考えられなかったわね・・・」
上条「いろいろ変わったんだろ」
輪に並び、準備を終えながらそんな話をする
テクパトル「アレイスターがあんな調子だしな」
19090「でも、こういうほうが楽しいです!」
テクパトルの手を握りながら19090号が言う
心理「たしかに、こういうのも悪くはないわね」
垣根「さて、そろそろ始まるぞ」
音楽が流れ始める
祭などでも使われる曲だ
決まった振り付けはないので、みんなやりたいように踊り出す
中にはわざとふざけて踊っている生徒もいる
上条「美琴、手繋ごうか」
美琴「う、うん//」
エツァリ「ショチトル、自分達もどうですか?」
ショチトル「ん、いいぞ」
テクパトル「19090号、一緒に踊ろうか」
19090「で、では・・・//」
それぞれのカップルが手を繋いで踊り出す
心理定規も、垣根の目を見つめる
垣根「なんだよ、握られたいのか?」
心理「・・・別にそういうわけじゃないわよ」
垣根「じゃ、構ってほしいのか?」
心理「あら、よく分かってるじゃない」
垣根「はぁ、分かったよ」
垣根が心理定規を抱き上げる
いわゆるお姫様抱っこだ
テクパトル「だ、大胆だなおい」
上条「観客席から歓声が上がってるのはなぜ?」
心理「・・・素敵ね」
垣根「ははは!シャルウィーダンス!」
垣根が心理定規を抱き上げたまま、クルクルと回り出す
美鈴「あ、垣根くんが回ってる」
旅掛「なんか楽しそうでいいなぁ・・・」
削板「おぉ、みんな結構上手いじゃないか!」
実際は、振り付けがないので上手い下手はないのだが
テクパトル「はい、お姫様」
19090「お、お姫様なんて//」
上条「美琴、抱きしめていいか?」
美琴「う、うん//」
もはや、盆踊りではなくなっている
やりたいようにいちゃつくためのイベントになっていた
吹寄(はぁ・・・こうなるとは思っていたけど)
吹寄はただ一人、放送席でため息をついていた
あまり、厳格な彼女にはこういうのは合わない
でも
吹寄(みんなは・・・楽しそうね)
参加している人達はみんな笑っていた
いやいややらされているのではなく
ただ、楽しんでいる
吹寄(・・・この笑顔を見たかったのよね)
今まで、ずっと実行委員をやってきて
上条や土御門や青ピのようなやる気のない生徒達に手を焼かされてきた
どうすれば、彼等のような生徒は楽しんでくれるのか
それだけを考えていた
吹寄(私の性格では、みんなを楽しませるのは無理だったのかもね)
盆踊りは終盤に差し掛かっている
吹寄(・・・いつまでも続けばいいな)
こんな、たくさんの笑顔が
吹寄はたまらなく好きだった
上条「あー・・・終わったな・・・」
美琴「あっという間だったわね・・・」
心理「じゃあ、私達は観客席に戻るわね」
テクパトル「垣根、アナウンスがんばれよ」
垣根「あいよ」
ショチトル「次は美琴達のリレーだっけ?」
美琴「うん、応援してね」
上条「了解!」
一同が解散する
垣根は放送席へ帰ってきていた
垣根「ただいまー」
吹寄「・・・もはやここにいるのが当たり前とでも言いたげね」
垣根「・・・?なんか元気ないな」
吹寄「・・・楽しかった?盆踊り」
垣根「あぁ、最高だった」
ニカリ、と垣根が笑う
本当にいい笑顔だった
吹寄「・・・やっぱり私は、実行委員には向いてないのかもしれないわ」
垣根「はぁ?なんで?」
吹寄「・・・あんなふざけた企画は考えつかないもの」
垣根「ふーん」
吹寄「・・・みんなが楽しめることを、ふざけていると思ってしまうもの」
垣根「そりゃ自然だろ、楽しいことなんて周りから見たらただの馬鹿騒ぎだぜ?」
吹寄「だとしても、実行委員失格よ」
はぁ、と吹寄がため息をつく
垣根のような素人のほうが大覇星祭を盛り上げているのだ
実行委員としてのプライドは崩れていた
こりゃ慰めてやんねーとな、と垣根が苦笑する
垣根「でもよ、結局盆踊りをやるって最終的な判断を下したのはお前らだろ?」
吹寄「・・・私だけじゃないもの」
垣根「でもよ、みんなはお前にも感謝してるはずさ」
垣根が観客席や競技場を見る
すでに次の競技の準備が進められている
アナウンスを始めるまで、あと少ししかない
垣根「お前は、みんなの笑顔を見て・・・それでもやっぱりくだらない企画だったと思ったか?」
吹寄「・・・みんなの笑顔は素敵だったわ、みんなが楽しんでて嬉しかった」
吹寄「・・・あの上条が、自分から参加するなんて信じられなかったわ」
吹寄「みんなは、ああいう楽しい企画を求めていたのね」
垣根「はぁ・・・お前よ、終わったことでいちいちクヨクヨしてんじゃねぇよ」
垣根がマイクのスイッチに手を触れる
そろそろ競技が始まるのだ
そのスイッチを入れる前に一言だけ
吹寄に言う
垣根「今からは、お前が笑わせてやれよ」
吹寄「・・・」
キーン、と少しハウリングがする
マイクのスイッチが入ったのだ
垣根「さぁ、みなさん!今度は学校対抗のリレーです!」
垣根「注目はなんといっても常盤台選抜!」
垣根「電撃姫、御坂美琴!」
垣根「心理を操る、食蜂操折!」
垣根「二人の超能力者の走りに刮目せよ!」
おー!と、観客席から歓声が上がる
垣根「吹寄さん!実行委員として一言どうぞ!」
垣根が吹寄の顔を見つめる
少し驚いたような顔をしている吹寄の足を、ちょんとつつく
吹寄「あ、み、みなさん」
普段の吹寄なら、怪我に気をつけて、とかルールをしっかり守って、なんて言っていただろう
でも今は違う
観客席の人々は笑っている
選手達さえ、楽しんでいるのだ
彼女の求めていた大覇星祭が、そこにはあった
マイクを握り締め、吹寄が叫ぶ
吹寄「盛り上がっていきましょう!!」
わー!と声が上がる
上条「・・・吹寄・・・」
心理「垣根が何か言ったのね」
クスクス、と心理定規が笑う
そうでもない限り、あの堅物の吹寄があんなことを言うとは思えなかった
テクパトル「・・・でもいいんじゃないか?」
上条「あぁ・・・普段の大覇星祭のときのあいつより、よっぽど自然体だよ」
上条は笑っていた
彼は普段の吹寄制理を知っている
彼女はたしかに真面目な性格だ
だが、ただお堅いのではない
もちろん、ふざけたり騒いだりしていたら注意をしてくる
たまにうっとうしいとさえ感じてしまう
でも、彼女だって本当はただの女子高生だ
時折、歳相応の弱さや幼さを見せることだってある
そんな吹寄のほうが、上条は好きだった
上条(気取ってるなんてらしくねぇもんな)
吹寄が必死に盛り上げようとしている
なら、彼も盛り上がらなければならない
上条「美琴!がんばれ!」
競技場にいる美琴に声援を飛ばす
本当に、楽しかった
美琴(と、当麻が応援してくれてる!)
美琴の胸は高鳴っていた
絶対にいいところを見せてやる、と高鳴っている胸に誓う
食蜂「ねぇ、聞いてる?」
美琴「な、なによ!今必死に当麻の声援聞いてるんだからジャマしないで!」
食蜂「必死すぎよ御坂」
はぁ、と食蜂がため息をつく
彼女は美琴の手前の順番だ
つまり、美琴にバトンを渡す番である
食蜂「とりあえず、出来る限りバトンパスでのタイムロスは無くしたいのよねぇ」
美琴「そうね・・・」
美琴が点数板を見つめる
白組なかなりの差で負けていた
美琴「・・・ここで勝つことが一番大事ね」
食蜂「そういうこと、始まるわよ」
第一走者がスタートラインに立つ
観客席からは声援が響いている
垣根「さぁ!選手のみなさん、用意はいいですか!?」
吹寄「では、位置について!」
選手が屈む
クラウチングスタートの体勢だ
一瞬だけ、競技場がしん、と静まり返る
心理「始まるのね」
上条「あぁ」
一方(・・・なンか御坂家の母親が番外個体と普通に話してンだけど)
エツァリ「・・・」
ショチトル「緊張するな」
テクパトル「!始まった!」
審判員が旗をあげる
一斉に、選手がスタートを切る
最初はほとんど差がつかない
しかし、後半になるにつれて差が開いてくる
一人200M走り、それが40人いる
そのためかなりの時間が用意されていた
美琴「・・・よし、今は一位ね」
食蜂「差も結構あるし、いいんじゃない?」
食蜂がニコリと笑う
美琴「・・・でも相手の次の走者、たしか昨日短距離で・・・」
食蜂「あ、一位だったヤツね」
二人がうなずく
そんな細かいことを覚えているあたりは、さすが超能力者といったところか
美琴「・・・とりあえず一位をキープしてくれてたら大丈夫よ」
食蜂「一位でバトン渡したらお礼に抱いて」
美琴「アンタ頭おかしくなったの?」
食蜂「冗談よ、緊張ほぐさないと」
美琴「・・・アンタが言うと冗談に聞こえないわよ」
食蜂「失礼ねぇ」
食蜂が立ち上がる
そろそろ彼女の番なのだ
美琴「・・・がんばってよ」
食蜂「あら・・・嬉しい」
そう言ってから食蜂がラインに立つ
現在、常盤台は一位を走っている
問題は、食蜂がどれだけ差を開けるかだ
次の美琴とのツートップで出来る限り差を開けなければならない
美琴(・・・食蜂にバトンが渡ったわね)
食蜂はああ見えてかなり運動神経がいい
心理系の能力者は普通は体力がないのだが
彼女はどうも例外らしい
美琴「っと、次は私よね」
美琴がラインに並ぶ
そこに立っただけで、歓声や声援が重圧に感じてしまう
美琴(落ち着きなさい・・・御坂美琴!)
自分の心に言い聞かせる
今するべきは、ただ目の前の道を走ること
食蜂は相変わらずいい走りをしている
観客席からも、声援が上がっていた
垣根「おっと!!食蜂選手、どんどん差を広げていきます!!」
吹寄「これはなかなかに素晴らしいペースです!!」
アナウンスの実況だけで、美琴は状況を把握する
今は、まっすぐ前だけを見ている
後ろを見て確認することはしない
食蜂「はぁ・・・はぁ・・・御坂!」
食蜂がバトンパスゾーンに入ってきたようだ
美琴「よし!」
美琴がバトンを受け取る
食蜂はかなり差を広げたらしい
二位の選手でさえ、半周以上の差がついていた
上条「すっげぇ・・・かなり速いんじゃないか?」
19090「さすが常盤台ですね・・・」
削板「しかし、二位もがんばってるなぁ・・・」
旅掛「あ、美琴にバトンが渡った!」
美鈴「がんばれ美琴ちゃん!」
詩菜「あらあら、がんばってるわねぇ」
美琴「うぉぉぉらぁぁぁぁ!」
美琴は全速力で走っていた
その走りに、周りの選手も呆気に取られる
もちろん、彼女の運動神経自体もいいのだが
今はそれ以上のなにかがあった
上条「美琴!がんばれ!」
愛している人の声援というのは、こんなにも心強いものなのか
美琴は走りながらそんなことを考える
垣根「速い!だがまだ速さが足りない!」
吹寄「どっちよ!御坂選手、どんどん差を広げます!」
半周の差が、もはや一周になろうとしている
かなりのスピードを保ったまま、美琴は次の選手にバトンを渡した
エツァリ「お見事!」
ショチトル「さすが美琴だな!」
旅掛「うぉぉ!美琴ぉぉぉぉぉぉ!」
美鈴「カメラ!カメラはぁ!?」
上条「落ち着いて!カメラを探して!」
テクパトル「お前も落ち着け」
観客席のボルテージもマックスだった
結局
そのまま、常盤台はぶっちぎりで一位だった
最終的には二位と三周差という驚異の記録だった
垣根「一位は常盤台選抜チーム!やはり二人の超能力者の走りは盛り上がりましたね!」
吹寄「みなさん、もう一度全ての選手に盛大な拍手を!」
一同「いぇー!!」
観客席から拍手が巻き起こる
美琴「やった!やったわよ当麻!」
美琴がぴょんぴょんと跳ねながら観客席に手を振る
上条も負けじと大きく手を振る
上条「おめでとう!すごかったぞ美琴!」
美琴「えへへ//」
美琴が顔を赤くしながら頭をかく
暑い日差しの下では
少し熱いカップルがイチャイチャを繰り返していた
美鈴「さて・・・もう午前には出場予定はないんだっけ?」
美琴「えっと・・・うん、そうなるわね」
観客席に帰ってきた美琴は、今日の予定を伝えていた
旅掛「でもまだ昼飯には早いからなぁ・・・」
上条「とりあえずもう少し観戦しませんか?」
美鈴「それがいいかもね」
美鈴が苦笑する
競技場では今、応援合戦が行われている
正直、一番退屈な種目と言っていいかもしれない
いや、しれなかった
垣根「ほらほらぁ!紅組の団長!声が小さい!」
垣根「速さが足りない!」
それでもなんとか垣根と吹寄が盛り上げていた
吹寄「さぁ!白組はどう対抗するでしょうか!?」
垣根「あーっと!白組の旗が倒れた!勝利フラグが折れちゃったよこれ!」
吹寄「そんな失礼なことを言うな!」
アナウンスを聞いてクスクスと笑う観客も多かった
上条「やっぱり盛り上げる人ってのはいないといけないんだなぁ・・・」
19090「ミサ・・・私もアナウンスしてみたいです!」
テクパトル「いや、やめておけ・・・」
番外「私もしたいな」
詩菜「あらあら、いつかやってみたらどうかしら?」
上条「いや、機会がないからな」
旅掛「ははは!結婚式のスピーチとかどうだい!?」
美琴「け、結婚式!?」
19090「ふにゃぁぁぁぁ!」
上条(あぁもう可愛いなぁ)
テクパトル(結婚式か・・・いいな)
ショチトル「あ、応援合戦終わった」
エツァリ「次は・・・玉入れですね」
削板「お、これは盛り上がりそうだな!」
上条「玉入れかぁ・・・」
そういえばオリアナは玉入れのポールを利用してたっけ、なんて上条が昔のことを思い出す
美琴「・・・あれ、佐天さんと・・・」
上条「?■■?」
競技場には
二人の日の目を見ない女が立っていた
■■「佐天。私達は。今こそ目立つべき」
佐天「おう!!」
■■「玉入れは。たしかに人でごった返してる」
佐天「でも、そこで目立てれば!!」
■■「これからは。どんなところでも目立てる」
二人がニヤニヤと笑う
不気味だった
垣根「さぁ!!そろそろ始まりますよ!!」
吹寄「選手の皆さん、準備はいいですか!?」
一同「おおーーーーー!!!!!!!!!!!!!」
■■「まずは。しっかりと観客席に近いところへ行く」
佐天「ふむふむ・・・」
■■「私達も。見てもらう」
佐天「うんうん!!!」
■■「!!始まった」
垣根「さぁ!!思う存分はじけろ!!!」
一同「おらぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!」
選手が球を手に持つ
能力が飛び交っている中を、二人はすり抜ける
幸い、小柄な二人は目立っていないようだ
■■「いや。目立たないとダメ」
■■が、能力の打ち合いの中へと向かう
佐天「ちょ、ちょっと■■さん!!」
■■「私は。行く」
そのとき
■■の頭に球が命中した
■■「あいた」
佐天「ほら!!いわんこっちゃない!!」
上条「・・・あいつら、何してるんだ?」
観客席で、上条は首を捻っていた
美琴「なんか、目立つのがなんとかとか言ってるわね」
ショチトル「必死だな」
エツァリ(わかりますよ、その気持ち)
一方「くっだらねェ」
テクパトル「というか、あの二人は能力ないのか?」
上条「えっと・・・■■のはなんていうか・・・」
美鈴「うんうん」
上条「役に立たないんだ」
心理「あら、そうなの?」
美琴「佐天さんは能力ないわよ」
番外「そりゃ、苦労するね」
詩菜「まぁまぁ、楽しんでるからいいじゃない」ニコニコ
■■「よし。球をゲット」
佐天「えっと・・・あのポールが一番近いです!!」
佐天がポールを指差す
そこまでたくさんの球が入ってるわけでもなく、入れやすそうだ
■■「ダメ。それでは、普通すぎて目立てない」
佐天「?じゃあどうするんですか?」
■■「待ってて」
■■が向かったのは
放送席の前だった
垣根「?なんかこっちに向かってきてる」
吹寄「なにかあったのかしら?」
二人が少し驚いたような顔をする
■■「えっと、そっちのあなた」
垣根「ん、俺は垣根だ」
■■「じゃあ。垣根」
垣根「なんだよ」
■■「あなたは。かなり目立ってる」
垣根「はぁ?」
何言ってんだこいつ、と垣根が顔をしかめる
いきなりそんなことを言われても意味がわからない
■■「球よ」
垣根「あぁ」
■■の手には、紅の球が握られている
垣根「いや、で?」
■■「球よ。いい?」
■■「ここが。あなたの帰る鞘よ」
■■がおもいきり振りかぶり
垣根の顔に、球を投げつけた
上条「な、なにやってんだ!!??」
美琴「うわ・・・垣根の顔・・・引きつってる・・・」
心理「目立ちたいがために命を捨てたわね」
番外「あーあ、こりゃまずいよ」
美鈴「お!!ケンカか!?」
旅掛「ははは!青春にはつき物だ!!」
19090「と、止めてください!」
垣根「・・・おい、お嬢さん」
■■「あ。なんか。その呼び方素敵」
佐天「あ、あわわわわ・・・ごめんなさい!!」
垣根「謝るのはてめぇじゃねぇだろうが」
垣根が佐天をにらむ
完全にキレている
吹寄「垣根、落ち着きなさい・・・」
垣根「こんなことされて落ち着いてられるか・・・ははは。こりゃ傑作だぁ!!」
■■「さ。目立てたし帰ろう」
■■が佐天の手を引く
垣根「ちょっと待てやぁ!!てめぇ、このまま帰れるとでも・・・」
■■「振り向かないほうが。いいと思う」
垣根「・・・は?」
佐天「え?」
■■「私は。いつもあなたの後ろにいる」
垣根「・・・は、はぁ?」
佐天「な、何言ってるの■■さん?」
■■「死にたくないなら」
■■が垣根を睨む
■■「振り向くな」
垣根「いや、そのネタ覚えてるヤツいねーよきっと」
■■「謝るから。許して」
垣根「はぁ?なら謝れよさっさと」
■■「ごめんなさい」
垣根(うわ、真顔うぜぇ・・・)
■■「じゃあ。私は競技に戻る」
■■が球入れに戻る
佐天「あ、待ってー!」
垣根「・・・なぁ、俺っていじめられてるの?」
吹寄「貴様はむしろいじめる側だから安心しなさい」
垣根「あぁ・・・わかった」
垣根がうつむく
ちょっと泣きそうな顔だ
吹寄「さぁ、アナウンスを・・・ってもうそろそろ終わるわね」
垣根「なにぃ!?」
垣根「け、結果発表!!」
■■に振り回されただけで、球入れは終わった
あれ、俺がボケ役なのにな、と垣根は涙ぐむ
吹寄「では、球をカウントしましょう!!!」
エツァリ(女性が球、と言うと興奮するのは自分だけでしょうか?)
テクパトル(とりあえず土に還れ)
吹寄「さぁ!!結果が出ました!!」
垣根「勝利したのは!?」
■■(私達だったら。嬉しい)
佐天(勝てるかなぁ・・・)
さだのり(勝てればいいなぁ)
エツァリ(なにかヘンなのが混じってましたね)
垣根「白組!!」
吹寄「おめでとうございます!!」
わー!!と、白組の選手達が喜ぶ
■■「負けてしまった」
佐天「だって、■■さん垣根さんにケンカ売っただけじゃないですか・・・」
■■「予想外」
垣根「はぁ、次の種目は?」
吹寄「えっと・・・長距離選抜ね」
垣根「そのあとは・・・能力合戦?」
吹寄「それも新しく出来たのよ」
吹寄が説明する
吹寄「なんでも、能力に自信がある人がその美しさを競うんだって」
垣根「能力の美しさぁ?」
マイクを通して、垣根の素っ頓狂な声が響いた
垣根「・・・美しさか・・・」
吹寄「自由参加だし、垣根も出たら?」
垣根「ははは・・・見せてやるよ・・・」
垣根が放送席から立ち上がる
その瞳には、炎が宿っていた
垣根「俺がメルヘンだ!!!!!!」
上条「・・・長距離はなんか盛り上がりに欠けたな・・・」
美琴「うん、なんかそこまで白熱もしなかったわね・・・」
ショチトル「後半はグダグダだったもんな」
テクパトル「しかし、みんながんばってたな」
削板「あぁ!!光る汗は美しい!!」
一方「・・・次はなンだ?」
番外「えっとね・・・」
美鈴「あ、これ美琴ちゃんは出られるんじゃない?」
美琴「なになに・・・能力合戦?」
旅掛「へー、初耳だな」
詩菜「あらあら、新しく出来た競技らしいわね・・・」
上条「へぇ・・・」
一同が説明を読んでいく
最初は興味津々だったが、呼んでいくうちにイヤな予感がしてくる
上条「こ、これ・・・」
美琴「へぇ、面白そう!!」
一方「俺も出てやるかァ」
削板「これは、根性があるな!!のった!!!」
テクパトル「おいおい・・・」
19090「超能力者はかなり有利ですね・・・」
エツァリ(というか、放送席で垣根さんが準備運動してるんですが)
吹寄「さぁ!!次の種目は能力合戦!!」
吹寄「自分の能力の美しさを見せ付けたい方はどうぞご参加ください!!」
我先に、と学生が競技場へ押し寄せる
美しさとレベルは関係ない
そう希望を持った学生のようだ
美琴「さーて、見せてあげるわよん♪」
上条「ほどほどにな・・・」
吹寄「では、みなさん!!」
吹寄「最初は予選から行われます、第一組目は・・・」
吹寄がメンバーを読み上げる
その中には美琴の名前があった
美琴「よし、やってやるわ!!」
美鈴「美琴ちゃーん!!!!がんばれぇぇぇぇぇ!!!!!」
旅掛「カメラもってこい!!!」
上条「な、なんかヤな予感が・・・」
吹寄「では・・・」
吹寄「スタート!!」
ついに始まった能力合戦
美しさを競う競技
ただ、みんなは知らない
超能力者の美的感覚は狂っているのだ
そんなこと、誰も知らない
垣根「さーて・・・俺は未元物質を使える」
垣根は一人つぶやいていた
彼の能力を使えば、太陽光をありえない方向に曲げられる
つまり、プリズムのような現象を起こせるのだ
垣根(よし、俺がメルヘンを教えてやる!!)
垣根が翼を広げる
それだけでも、観客席から声援が上がる
垣根(ははは・・・俺の一位は決まったかな)
垣根が笑いながら横を見る
そこには、一方通行がいた
垣根(な、なんだこれは!?)
垣根は目を疑った
そこにあったのは
信じられないほど強烈なインパクトのオブジェだった
一方「あひゃひゃひゃ!!!愉快なオブジェじゃねェか!!!」
一方通行は笑っていた
彼の能力を使い、金属をありえない形に捻じ曲げている
まるでそれは、地獄から這い上がろうとする人間達のようだった
観客席からは驚きと賞賛の声が上がっている
番外「すっげぇ!!なんかわかんないけどかっこいい!」
ショチトル「本当に理解できないけどな」
垣根「ま、まさか・・・それが美しさだとでも言うのか!?」
一方「あァ、俺の考える美しさだ」
一方「そして、世界もそれを認めなきゃなンねェ」
一方「俺の美的感覚に、酔いしれるンだよ」
一方「わかるか?回りの美的感覚に合わせようとしてるしてる時点でてめェの負けだ」
一方「これが、一方通行だ」
垣根「・・・ば、ばかな・・・」
垣根がよろめく
こんなインパクトのある能力を見せられては勝ち目がない
垣根「くそ・・・」
膝をついた垣根
その後ろで、突然激しい音がした
垣根「な、なんだ!?」
そこでは
削板「ははは!!俺の光を受けろ!!」
削板が自分の周りで閃光を破裂させていた
エツァリ「あ、あれはなんの意味が?」
テクパトル「わからないが・・・綺麗だな」
美鈴「おー!!七色に光ってる!」
詩菜「あらあら、花火みたいね」ニコニコ
旅掛「へぇ、オシャレだな」
垣根「おいおい・・・なんだよこの派手さ・・・」
一方「こ、こンなので何になるンだよ・・・」
削板「お前らもなかなかやるが・・・」
削板「俺の勝ちだ!!」
垣根「ふ、ふざけんな!!」
一方「・・・つゥかよ・・・」
一方通行が削板の左に目をやる
一方「オリジナルは何やってンだ?」
垣根「はぁ?」
美琴は、周りの電気系統の製品を操っている
さまざまな光を上手く使い、イルミネーションにしていた
美琴(ふんふーん♪)
垣根「な、なんだ?」
削板「ゲコ太の・・・絵?」
一方「まさか・・・わざわざイルミネーションでゲコ太かよ・・・」
番外「すっげぇ!可愛い!!」
19090「カメラカメラ!!」
上条「すっげぇな・・・」
美琴「ふふーん、見た?私の能力のすごさ」
一方「はっ・・・いいじゃねェか・・・」
垣根「俺だって負けないぜ・・・」
削板「熱さなら俺がピカイチだ!」
美琴「へぇ・・・やろうっての」
四人の超能力者のバトル
美しさは誰が一番か
観客席は湧いている
上条「やっぱ、超能力者はすげぇな・・・」
心理「えぇ、周りの選手達もやる気なくしてるわね・・・」
ショチトル「これは・・・美しすぎて、優劣がつけられないな」
テクパトル「一方通行のは少しおかしいだろ・・・」
19090「で、ですが・・・インパクトは十分です!」
美鈴「これは誰が勝ってもおかしくないね!!」
詩菜「面白い企画ねぇ」ウフフ
旅掛(でも、能力の美しさなのかこれ?)
吹寄「さぁ!!四人の中から優勝者が決まってしまうのか・・・」
吹寄のアナウンスが突然止まる
垣根「あ?どうしたんだ?」
一方「さァ」
美琴「あ、あの人」
競技場の真ん中に、ただ一人ポツンと立っている選手がいた
上条「あ、あれは・・・」
テクパトル「あれ、えっと・・・」
上条「■■・・・」
美鈴「?知らない子だな・・・」
■■だけが、他の選手と違いやる気を残していた
■■(ふふふ、目立ってる)
美琴「ちょ、ちょっと!!」
■■「何?」
美琴「ア、アンタ・・・能力使ってないわよね?」
■■「うん。使ってない」
美琴「い、いや・・・使いなさいよ」
■■「どうして?」
美琴が溜め息をつく
能力の美しさを競う競技で、能力を使わないなんて話にならない
■■「・・・私の能力は。普段では使えない」
美琴「はぁ?じゃあどうして・・・」
■■「見ていて」
■■が競技場の真ん中へ向かう
観客席は、何が始まるのかという期待の空気に包まれている
上条「あいつ・・・能力意味ないのに・・・」
心理「あら、そうなの?」
詩菜「まぁまぁ、どうするのかしら」
垣根「おいおい、何するんだ?」
一方「どォせただのイカれたヤツだろ」
削板「まぁ、俺の優勝は決まりだな!!」
三人も、余裕をかましていた
それも当然だろう
彼らの能力はかなり観客を楽しませている
この中以外で優勝が出るなんてありえないのだ
■■「・・・みなさん」
■■が両手を広げる
何の能力もない
そんな彼女に出来るのは、いったいなんなのだろうか
■■「この中に。無能力者は。どれくらいいるの?」
マイクなんて使っていない
なのに、なぜか彼女の声は響いていた
■■「どれくらい。いるのかしら」
観客席の学生が手を上げる
かなりの数だ
上条だって、その一人である
もちろん、美鈴や旅掛や詩菜
エツァリやテクパトル、ショチトルだってそうだ
■■「ありがとう」
■■が頭を下げる
■■「見ての通り。私も無能力者」
えっ、と驚きの声があちこちで上がる
それも仕方ない
能力のない人間が参加するような種目ではないのだから
■■「能力は。私にはない」
■■が真っ直ぐと観客席を見つめる
■■「でも。私は生きている」
■■「私を助けてくれたのは。無能力者だった」
上条(■■・・・)
心理(あら、なんか素敵な雰囲気ね)
■■「そんな私は。この世界が好き」
■■「私は無能力者だけど。美しい世界で生きてる」
■■「能力の美しさは競えない」
■■「でも。知っていてほしい」
■■「無能力者の人生だって。美しさを持っているの」
垣根(な、なんだこの演説・・・)
美琴(心に響くわ・・・)
一方(こいつ・・・精神系の能力者じゃねェよな・・・?)
削板(くそ・・・涙が・・・)
■■「私は。この世界が」
■■「人生が。美しいと信じている」
一瞬の沈黙の後
「おおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
観客席から割れんばかりの拍手が鳴る
上条「すげぇ!!お前はもう■■なんかじゃない!!■■だ!!」
エツァリ(結局聞こえませんね)
ショチトル「くそ・・・泣かせやがる・・・」
テクパトル「・・・俺、あの子が優勝だと思う」
19090「・・・はい」グスン
美鈴「かっけぇよ!!アンタ!!!」ウルウル
旅掛「俺は今!!猛烈に感動している!!!」
詩菜「まぁまぁ、これはこれは・・・」
番外「・・・すごいね、拍手がまだ続いてる」
垣根「・・・ウ、ウソだろ・・・?」
一方「なンだよ・・・俺の負け・・・だと?」
吹寄「拍手の通りです!!」
吹寄「能力の垣根を越えて、見事優勝に輝いたのは!!!」
吹寄「■■■■選手です!!!」
観客席からの、声援と拍手
■■は、それを全身で受け止めていた
美琴「・・・アンタ、すごいわね」
■■「ありがとう」
削板「演説、感動したぜ!!」
垣根「・・・その演説が、お前の能力か?」
■■「そんなわけ。ない」
一方「・・・まさか無能力者にまた負けるなンてな」
■■「なに、簡単なこと」
一方「なにがだよ?」
■■「観客席には。ただでさえ無能力者が多い」
削板「そりゃ、親や外部のヤツもいるからな」
■■「それに。大半の学生は。強い能力者を妬んでる」
美琴「・・・そうかもね」
■■「それなら。簡単な話」
垣根「だから、なにがだよ?」
■■「この競技に。明確な判定基準はない」
■■がつぶやく
たしかに、得点制ではない
そのため、拍手が大きかったり、盛り上げられれば優勝だ
■■「もうわかるでしょ?」
垣根「・・・お前・・・」
■■「そう。ただでさえ無能力者の私は。彼らを味方につけやすい」
■■「そのうえ。あんな演説をすれば」
美琴「・・・無能力者やその親の支持も得られるわね・・・」
■■「それに。これからも私は。誇り高き無能力者と思われる」
一方「・・・」
■■「あなた達は。勝ち負けだけを見ていた」
■■「人々の心。そして。将来のこと」
■■「あなた達はそれを見ていなかった」
■■「ただ。勝つか負けるかだけを見ていた」
■■「人の心を動かすには。その人々の次元に立たなければいけない」
■■「能力の美しさを競うなんて前提」
■■「大衆の拍手の前では。ないに等しい」
■■「つまり。あなた達がしていたのは競技で」
■■「私がしていたのは洗脳」
■■「それだけ」
■■が不敵に微笑む
超能力者は震えていた
一方「そ、そそそそそそそンなことあの短時間で考えたのかよ・・・」
垣根「え、ええええええええええげつねぇ・・・」
削板「こ、ここここここここ根性が・・・た、足りない!」
美琴「そ、そそそそそそそうよ!!卑怯よ!!」
■■「卑怯。今あなたはそう言った」
■■「でも。大衆からしたら。能力者のほうが卑怯なの」
■■「能力で地位を得て。能力で人をねじ伏せて」
■■「そちらのほうが卑怯」
■■がまた笑う
もはや、その笑みにはいつものおっとりした感じはなかった
ただ、勝者の貫禄だけがあった
■■「誰が卑怯で誰が正しいか」
■■「あの少しのパフォーマンスでは。観客にはわからない」
■■「私の策略も。彼らに勇気を与えた」
美琴「そ、そうだけど・・・」
一方「・・・えげつねェ・・・」
垣根「怖いなおい・・・」
■■「まぁ。私の勝ちは決まった」
■■が表彰台へ向かう
そういえば、彼女は二人三脚でも優勝していた
まったくノーマークの無名の選手
そんな選手が、次々と記録を作っていく
これほどのサクセスストーリー
無能力者にも、希望を与えるだろう
上条「すげぇな・・・」
心理「まさか、無能力者が勝つなんてね・・・」
ショチトル「すげぇ、そこでファンクラブ作るとか言ってるぞ」
テクパトル(・・・いきなり人気が出るのも大変だよな・・・)
エツァリ(ストーカーとか・・・大丈夫なのでしょうか・・・)
19090(あなたが言うことではありません・・・と美月は心の中でツッコみます)
美鈴「すごいね・・・副賞はペア旅行だって」
詩菜「まぁまぁ、誰と行くのかしら」ニコニコ
旅掛「ははは!!彼氏に決まってるさ!!」
番外(でも、彼氏いなさそうな顔・・・)
19090(・・・りょ、旅行・・・)カァッ
テクパトル(なんで顔を赤くする?)
上条「あ、おかえり」
美琴「・・・負けた・・・」
上条「仕方ないって・・・ほら、あんな演説されたらみんな味方するしさ!!」
一方「・・・あいつ、えげつねェぞ」
上条「?あ、あぁ・・・たしかに少しな」
削板「少しなんてもんじゃない・・・」
三人が溜め息をつく
垣根「・・・さぁ!!次は、パン食い競争です!!」
吹寄「選手のみなさん、競技場へどうぞ!!」
美琴「あ、私が出る番だ」
上条「お、がんばってな」
美鈴「美琴ちゃんはまたトップかもなー」ニヤニヤ
旅掛「ははは!!そうだなぁ!!」
美琴「プレッシャーかけないでよ!!」
垣根「パン食い競争は、参加校から二人ずつ、選手が選ばれています!」
吹寄「さぁ、みなさん!!自分の学校の代表に大きな声援を!!」
観客席から、がんばれー!!と声が上がる
中には、わざわざ手作りした応援グッズを持った生徒もいる
美琴(うわ・・・緊張する・・・)
食蜂「あぁ、御坂も代表だったわねぇ」
美琴「げ・・・」
食蜂「まぁ、私の跳躍力なら別にパンの高さは関係ないんだけどねぇ」
美琴「・・・アンタと組むのね・・・」
美琴が溜め息をつく
本当にイヤそうだった
美琴「・・・どうでもいいけど、しっかりしなさいよね」
食蜂「あ、知ってる?なんでこの競技二人が選抜なのか」
美琴「知らないわよ・・・どうせ、二人の合計タイムを競うとか・・・」
食蜂「それが違うのよねぇ」
ニヤニヤ、と食蜂が笑う
美琴「じゃあ、何で・・・」
食蜂「二人三脚しながら、パン食い競争するのよ」
美琴「」
美琴「え、アンタと二人三脚?」
食蜂「うん」
美琴「」
食蜂は、思考停止した美琴の足にヒモを巻きつける
なぜだろうか、かなり密着させるように
上条「あ、あれ?なんで足を結ぶんだ・・・?」
心理「あら、二人三脚でパン食いするらしいわね」
上条「はぁ!?」
ショチトル「おー、何かに目覚めそうだな」
エツァリ「そうですね・・・」
テクパトル「・・・しかし、やりにくいんじゃないか?」
19090「そうですよね・・・」
美鈴「うん、これは大変そう・・・」
旅掛「そうだな、簡単にはいかないな・・・」
詩菜「まぁまぁ、当麻さんったら顔を真っ青にして・・・」
上条「み、認めない!!美琴が俺以外の人と二人三脚なんて!!」
番外「落ちついて!」
美琴「・・・ちょ、ちょっと・・・くっつきすぎ・・・」
食蜂「んぁぁっ・・・はぁ・・・」
美琴「な、なに興奮してるのよ!?」
食蜂「い、いいから・・・始まるわよ・・・んっ!!」
美琴「アンタはもう始まってんじゃない!!」
美琴が必死に離れようとする
もちろん、結ばれているので離れられないが
垣根「さぁ!!では!!」
吹寄「位置について!!」
垣根・吹寄「スタート!!!!!!!!!!!!!!!」
とうとう、パン食い競争が始まる
美琴の横ではなぜか食蜂が体をくねらせている
食蜂「あ、始まったの・・・?」
美琴「アンタ・・・気持ち悪い・・・」
美琴と食蜂が走る
いがみ合ってはいるものの、二人の息はぴったりだった
食蜂「よし、もうすぐパンね!」
美琴「アンタ・・・なんか、少し顔赤いわよ?」
食蜂「いいから!!」
食蜂がペースを速める
周りの選手はまだ、二人に追いつけない
食蜂「・・・御坂、どうする?」
パンは一つ
どちらか一人が食べれればいいのだ
美琴「・・・私が食べるわ」
食蜂「オーケー・・・わかったわ」
二人が同時にジャンプする
垣根「おっと!!常盤台選抜、早くもパンゾーンへ突入・・・」
吹寄「御坂選手が必死にパンを食べようとします!!」
垣根「あ、咥えました!!」
上条(美琴の口をあけた姿って・・・エロいよな)
テクパトル(早いな・・・もうゴールに向かってる)
そのまま、二人はゴールした
食蜂「はぁ・・・もう離れちゃうのね」
美琴「うわーーーん!!当麻ぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!」
すぐに美琴は観客席に向かう
上条「美琴!!あとで抱きしめるから!!」
美琴「絶対ね!!」
垣根「では、次の種目に移ります!!」
次の競技が淡々と進められる
美琴はすぐさま観客席に帰り
他のパン食いに出ていた選手達も競技場から出て行く
そんな中
食蜂「・・・私、嫌われてるの?」
一人だけ、ポツンと立っていた
食蜂(・・・はぁ、仕方ないわね)
食蜂が溜め息をつく
食蜂(・・・でも、冷たくされるのもいいわね・・・)
ジュルリ、と食蜂が舌舐めずりをする
大覇星祭二日目
まだ、午前である
その午前を最も楽しんだのは、もしかしたら食蜂かもしれなかった
上条「さて・・・午後はもう出る予定はないか」
詩菜「あらあら、ちょうどいい時間ね」
詩菜が時計を確認しながらつぶやく
美琴「えっと・・・お義父さんが来るんですよね?」
詩菜「えぇ、そうよ」
旅掛「なっ!美琴ったらもう上条さんと知り合いか!?」
美琴「私からしたらお父さんが知り合いなほうが・・・」
美鈴「たしか外国で知り合ったんだっけ?」
旅掛「あぁ、世界は狭いよな!」
旅掛ががははと笑う
世界を旅する中で、まさか娘の彼氏の家族と出会うなんて
普通では考えられない確率だろう
心理「じゃあ・・・私達はどうする?」
テクパトル「そうだな・・・ジャマじゃないならみんなと一緒がいいんだけど」
一方「そォだな・・・はぐれなくて済むしな」
番外「あとで一々連絡取るのも面倒だからねー」
削板「俺はまた風紀委員の支部に行ってくるよ」
心理「私もあとで垣根と合流するわ」
上条「じゃあ二人は別行動か」
美琴「じゃ、あとでね」
美琴達が刀夜との待ち合わせ場所へ向かう
わりと競技場から近い場所での待ち合わせだったらしい
そこまで移動しなくて済んだのはありがたかった
上条「えっと・・・まだ来てないみたいだな」
詩菜「あらあら、私との時間を守らないなんて、まぁまぁ」
詩菜が頬に手を当てながらニコニコと笑う
その目が笑っていないのはすぐに分かったが
美鈴「あれだなー・・・久々に会う気がする」
旅掛「そりゃ近くに家があるって言っても父親は海外飛び回ってるからな」
美鈴「私と上条さんはよく会いますけどね」
詩菜「えぇ、近くに住んでますから」
旅掛「ふーん」
旅掛がそうなんだ、と首を傾げる
そういうパイプがあれば上条と美琴の将来も安泰だろう
上条「あ、来た来た!」
上条が指差した方向から、刀夜が顔を真っ青にして走ってくる
刀夜「悪い母さん!ちょっと道に迷って・・・」
刀夜が必死に頭を下げる
しかし、相変わらず詩菜の顔はひきつっていた
完全に怒っている
詩菜「あらあら、刀夜さんったら遅れてきたと思ったら言い訳なんて」
刀夜「ち、違うんだよ母さん!さっき知らない女性に道を尋ねたら違う道を教えられ」
詩菜「あらあらまぁまぁ、女性にわざわざ尋ねたのねぇ」
地雷を簡単に踏んでしまう
その場の誰もが、やはり親子だなと思った
詩菜「どうせ女性と話し込んで遅れたんじゃないかしら?」
刀夜「か、母さん・・・」
美琴「お義父さん、お久しぶりです!」
あまりにもたじろいでいる刀夜が哀れだったからか
美琴が横から助け舟を出した
刀夜「おぉ美琴ちゃん!少し見ない間にさらに綺麗に」
詩菜「あらあら、当麻さんの恋人にも手を出そうというのかしら」
上条「・・・父さん、それはフォローできねぇ」
刀夜「あぁ!違うんだ!」
旅掛「いやぁ!上条さん久しぶり!」
刀夜「あ、御坂さん!よかった、助けて・・・」
旅掛「美琴にちょっかい出すのはいただけませんなぁ!」
刀夜「だ、だから違う・・・」
テクパトル「はぁ、とりあえずどっかのレストランにでも行きましょうよ」
これ以上は埒があかないと判断したのか
ため息混じりにテクパトルが仲裁に入る
美鈴「ん、そうだね・・・早く行かないと満席になっちゃうから」
ショチトル「それに立ち話もなんだろう」
19090「ミ・・・わ、私も座りたいです!」
テクパトル「そういうわけだ、移動してからでもいいだろ」
美琴「・・・そうね」
上条「悪かったな、少し熱くなりすぎた」
上条と美琴はどうにか引き戻せた
ただ、未だに旅掛と詩菜は刀夜を睨んでいる
旅掛「上条さん、そりゃ女性に興味があるのは否定しない!」
刀夜「いやいや、そもそも私は・・・」
旅掛「だからって自分の息子の彼女に・・・」
美鈴「ねぇパパ」
旅掛「ん、なんだ?」
呼び掛けられて旅掛が振り返る
そこでは美鈴が青筋を浮かべていた
え、なぜ?と旅掛もたじろいでしまう
美鈴「へぇ、パパは未だに女の子に興味があるんだ、へぇ、ふーん」
旅掛「おいおい違う!俺は美鈴だけが・・・」
美鈴「どうせウソなくせに!」
先程までは責める側だった旅掛
それがなぜか急に責められる側になっている
夫婦関係は複雑だ
テクパトルはその日、新たな知識を手に入れた
旅掛「はぁ・・・涼しいな」
番外「涼しい・・・」
一方「落ち着くな・・・」
エツァリ「えぇ」
一同は近くのレストランに入っていた
そうやって涼んでいればどうにか先程までの話をごまかせられる
はずだったのだが
美鈴「・・・パパのバカ」
詩菜「刀夜さんったら」
刀夜「ち、違うんだよ母さん!」
旅掛「気を直してくれよ・・・」
やはり、簡単にはごまかせなかった
そんな少しぎくしゃくしてしまった夫婦を、一同は遠巻きに見つめていた
上条「・・・美琴、俺達は絶対にケンカしないようにしような」
美琴「うん、約束ね?」
ショチトル「夫婦って難しいんだなぁ・・・」
番外「ミサカはああいうのはめんどくさいタイプだな」
一方「くっだらねェ・・・ドリンク取ってくる」
テクパトル「俺も・・・19090号は何がいい?」
19090「あ、ミサカは紅茶を」
テクパトル「了解」
一方通行とテクパトルが席から外れる
美琴「・・・19090号とテクパトルはあんまりケンカしないわよね」
19090「?そういえば・・・あまり大きなケンカはしないですね」
番外「うらやましいなぁ・・・テクパトルは真面目だけど物腰は柔らかいもんね」
上条「ケンカになりそうになったら先に謝るタイプっぽいよな」
エツァリ「えぇ・・・我々の中では一番常識人かもしれませんね」
ショチトル「変態だけどな」
美琴「アンタが言わないの・・・番外個体と一方通行はケンカするの?」
番外「うん、しょっちゅうするよ」
水を飲みながら番外個体がうなずく
番外「この前は夕飯のおかずのことでケンカしたもん」
上条「そ、そんなことでかよ・・・」
ショチトル「?オカズはエロ本とかじゃないのか?」
美琴「そっちじゃないわよ・・・でも夕飯のおかずとか一方通行と話し合うのね」
19090「ちょっと意外ですね」
番外「いやぁ、あの人結構食べるの好きだから」
番外個体がケロリと答える
だがそれは俄には信じがたい話だった
何しろ一方通行はちゃんとご飯食べてる?と思うくらい痩せているのだ
それが、実は食べるの大好きなのだなんて言われても信じられない
美琴「・・・あいつって栄養失調とかで倒れそう・・・」
一方「・・・誰が倒れるって?」
後ろからいきなり一方通行の声がする
美琴「うわ!か、帰ってきてたの?」
テクパトル「はぁ・・・義姉さん、今のは地雷だぞ」
一方「俺が食うの好きだったら悪いのか?あァ?」
ショチトル「いや、お前は痩せすぎだから信じられないってだけさ」
テクパトル「まぁたしかに痩せてるが・・・はい、紅茶」
19090「あ、ありがとうございます」
19090号が紅茶を受け取る
気を遣ってくれたのか、アイスにされている
ちゃんとシュガーもつけられていた
番外「ほら、こういう細かい気配りができる人が好かれるんだよ?」
19090号の目の前にある紅茶を見ながら番外個体が一方通行に言う
一方通行はあまりそういった気配りをしないのだ
一方「うるせェな・・・俺はそォいう柄じゃねェよ」
上条「柄じゃなくてもやられたら嬉しいんじゃないか?」
エツァリ「というより、普段はしないような人がするとかえって破壊力が増しますよ」
ショチトル「うむ、そうだな」
一方「はァ?何言ってンだお前ら・・・」
怪訝そうな顔をしながら一方通行がコーヒーを飲む
番外「うわ、またコーヒー・・・」
テクパトル「・・・ちょっと不健康じゃないか?」
一方「あァ?コーヒーは体にいいンですゥ」
19090「で、ですが飲み過ぎはよくないですよ?」
美琴「そうよ、体壊したらおしまいじゃない」
一方「壊さねェよ、俺は」
鼻で笑いながら一方通行がまたコーヒーを口に含む
よくもまぁ飽きないものだ
エツァリ「はぁ・・・テクパトルと一方通行さんは正反対の性格をしていますよね」
テクパトル「そうか?内面のどす黒さは結構似てるんじゃないかな」
美琴「自分で言うことじゃないわよね?」
ショチトル「でも、たしかに根本は似てそうだな」
ショチトルがうなずく
テクパトルも一方通行も誰かを傷つけてきたということは同じだった
一方「・・・そォいえば、番外個体は19090号より後の個体なんだよな」
番外「ん、そうだよ?」
一方「なら俺にとって上条とテクパトルは義理のアニキかァ」
しみじみとしながら一方通行がつぶやく
その瞬間、ほかのみんなは吹き出してしまった
美琴「そ、そんなしみじみしながら言わないでよ・・・」
テクパトル「くそ・・・お、お前に義兄さんなんて言われるとこを想像したら・・・」
上条「ま、毎年暑中見舞いとかにハガキ届いたりして・・・」
19090「ミ、ミサカは義姉さんですか・・・」
クスクス、と四人が笑う
一方通行の義理の家族とは、かなり面白そうだ
番外「ほら、笑われてるよ?」
一方「ちっ・・・こっちは真面目に言ってンだよ」
テクパトル「あぁ、悪い悪い・・・」
目元の涙を拭いながら、テクパトルが謝る
美琴「でもそっか・・・思えば私達は義理の家族になっちゃうのよね」
上条「いつものメンバーの実に半分が家族か・・・」
19090「賑やかでよさそうではないですか!」
ショチトル「いいな、私も仲間に入れてくれ」
エツァリ「いえ、無理ですよ普通に考えて」
テクパトル「・・・それは結婚したらの話だよな」
当然のことをテクパトルが確認する
それを聞いた女三人は顔を真っ赤にした
番外「ミ、ミサカと一方通行は子供何人くらいがいいかな!?」
19090「テっくん!その、子作りは結婚からある程度してからがいいです//」
美琴「と、当麻に毎日弁当作って・・・えへへ//」
上条「な、ちょっと待て三人とも!」
テクパトル「あぁもう!ミサカDNAはなんでこんなにも想像力豊かなんだよ!?」
一方「はァ・・・こンな家族なンざ愉快で愉快で仕方ねェだろォな」
くだらなそうに一方通行が吐き捨てる
エツァリ「ですがたしかに楽しそうですね」
ショチトル「あぁ、正月とか一カ所に集まったりしてな」
テクパトル「あ、みんな注文したか?」
19090「はい、みなさんしたはずですよ」
美琴「・・・でも、やっぱり結婚したらあぁなるのかな」
美琴が四人の親達を見つめる
夫婦喧嘩の真っ最中だった
美鈴「・・・パパのウソつき、昨日は美鈴だけが好きだ、美鈴は可愛いって言ってたのに」
旅掛「いやいや!俺は美鈴以外の女を抱いたことはない!と自負している!」
美鈴「そこは断言できなきゃ意味ないの!」
詩菜「あらあら、刀夜さんったら今も窓の向こうの女性に気を奪われてるわね」
刀夜「ち、違うんだ!ちょっとオシャレな服だったから母さんにも似合うだろうな、と・・・」
詩菜「まぁまぁ、そんなウソでごまかせているつもりなのかしら?」
刀夜「信じてくれよ母さん・・・」
はぁ、と刀夜がため息をつく
隣から、旅掛が辛そうな視線を送っている
仕方ないことだ
尻に敷かれている夫の運命とでも言うべきか
いくら結婚して、金を握っているとは言っても
所詮、恋する女には勝てないのだ
旅掛「なぁ美鈴・・・今晩もしてやるから、な?」
美鈴「ふーん・・・体が目的なんだ」
美鈴がつん、とそっぽを向く
だが少し、その横顔は赤くなっている
もう一押しだ、と旅掛が責める
旅掛「美鈴、愛してる」
美鈴「・・・ホント?」
旅掛「ははは!お前と出会ってからずっと俺は愛してるんだよ!」
美鈴「・・・パパ大好き!」
美鈴が旅掛に抱き着く
刀夜(なるほど・・・わざわざ長々と並べると言い訳じみてしまう・・・)
刀夜(あんな風に、短めでベタにまとめたほうがいいのか・・・)
刀夜が詩菜を見つめる
刀夜「母さん、愛してる」
詩菜「あらあら、その愛してる妻を裏切ったのはどこの誰かしら?」
逆効果だったようだ
詩菜は今にも刀夜に飛び掛かりそうな勢いだった
勘違いしてはいけない、謝罪というのは段階を踏んで行うものだ
いきなり愛してるなんて、ふざけているようにしか聞こえない
刀夜「はぁ・・・不幸だ」
刀夜がため息をつく
刀夜「母さん、勘違いなんだよ・・・」
詩菜「あらあら、でも女性に尋ねたのは事実なんでしょ?」
ニコニコ、と笑いながら詩菜が尋ねる
この笑みは中々のくせ者だった
刀夜「母さん、私は母さんだけを愛しているんだ」
詩菜「・・・まぁまぁ、素敵な台詞」
またニコニコと詩菜が笑う
ただし、今度の笑顔は本当に嬉しいときのものだ
刀夜「だから、許してほしいんだ」
詩菜「あらあら、この一回だけですよ?」
刀夜「ありがとう母さん!」
どうにか上条家の問題もおさまったらしい
いつものほのぼのとした雰囲気に戻っていた
美琴「よかった、仲直りできたみたいね」
テクパトル「あぁ・・・ホント、夫婦ってのは大変だな」
上条「はぁ、めんどくさいだろうなぁ・・・」
19090「ですが、それが幸せになることもあるのでは?」
番外「そのめんどくさいことも幸せだって思えるなら、最高の夫婦だよね」
一方「・・・はァ、俺にはわからねェな」
エツァリ「そうですか?一方通行さんも本当はあんな夫婦に憧れていそうですけど」
一方「・・・ケンカ売ってンのかてめェ」
エツァリ「おやおや、思ったことを正直に言ってみただけですよ」
ショチトル「一方通行、悪気はないから許してやってくれ」
一方「はァ・・・くだらねェ」
一方通行がコーヒーを取りに行く
上条「うわ、もう四杯目だよな・・・?」
美琴「もはや中毒ね・・・」
テクパトル「そうだな」
三人が苦笑する
上条(・・・平和だなぁ)
レストランの外では、たくさんの学生が行き来している
学生達はとても忙しそうに見えた
黒子「忙しいですの」
黒子は初春と相変わらずパトロールをしていた
今日は二日目なため、外からやってくる来客は昨日ほど多くない
だが、昨日一日で中の雰囲気に慣れたため、犯罪を働いたり迷惑行為をしてしまったりする人が増えるのだ
そのため、昨日以上にパトロールに力を入れている
とはいっても、次から次へと違反者が見つかるわけではない
大抵はヒマなのだ
違反者だって、風紀委員の腕章を見せれば一発で事情を理解する
最近はわりとスキルアウトの活動も鎮静化しているため、初春のような風紀委員にはありがたかった
初春「忙しくて当たり前ですよ、白井さん」
黒子「とは言いましても・・・こんな意味のないパトロールをさせられていては、こちらの身がもちませんの」
ジリジリと照り付ける陽射し
この炎天下の中をずっと歩き回っているのだ
一般人と違って好きに休憩を取ることもできない
誰かしらが熱中症になるのでは、と不安になってしまう
初春「意味がなくても、仕事だからしなきゃいけないんです!」
黒子「本音はどうなんですの?」
初春「始末書は御免です!」
黒子「はぁ・・・わたくしもですの」
こんな過酷労働も強制である
ならなんで風紀委員になったんだよ、という声もありそうではあるが
黒子「あら、軍覇さんですの」
黒子が愛しい彼氏を人混みの中に見つけた
初春「ちっ・・・もっと暑くなりそうですね」
黒子「今の舌打ち、一生忘れませんの」
削板「あー!いたいた、黒子!」
黒子「はいはい・・・どうされましたの?こんな暑い中」
削板「いやぁ、まさかまだパトロール中なんてな!」
黒子「昼間もずっとですのよ・・・」
削板「お疲れ様、これ飲み物と軽い弁当」
黒子「あら、ありがとうございますの!」
削板「そっちのウイーハルさんのもあるからな!」
初春「・・・私、外国人に見えるんですか?」
削板「?というか人外?」
初春「その飲み物と弁当に、あなたの命は救われましたね」
ため息をつきながら、初春が削板から袋を受け取る
スポーツドリンクと、おにぎりが入った少し小さなお弁当だった
黒子「ですが軍覇さん、よくここが分かられましたの」
削板「いやぁ・・・最初は支部に行ったけどいなくてさ!」
初春「え、支部からここまでかなり遠いですよ?いつから探しはじめたんですか?」
削板「?昼休みちょっと前から」
初春「うわぁ・・・速すぎますね」
黒子「わ、わざわざ探してくださったんですの?」
削板「あぁ、黒子に会いたかったからな!」
黒子「//」
初春「私が今言いたいことを、世界の大半は思っているはずです」
削板「?世界の大半はそろそろ水をやらないと、なんて思ってるのか?」
初春「そんなこと思って・・・ってうわぁ!」
初春が何気なく本体に手を伸ばす
すると、この暑さで少し萎れていた
黒子「もうすぐお別れですの」
初春「これが枯れたら死ぬみたいな言い方やめてください!」
削板「え、そうだったのか!?」
初春「あなたはテストでよくある、この時の筆者の気持ちに答えよ、みたいな質問が苦手な人ですね!?」
削板「つまり、何が言いたいんだ?」
初春「台詞から相手の気持ちを察してください!」
削板「おぉ!もしかして今、怒ってるのか?」
初春「それくらいはわかるんですね・・・じゃなかった!」
初春が近くの公園に入る
水道水を本体に当ててやると、すぐにみずみずしさを取り戻した
黒子「しっかし・・・冗談はおいておきますが、それは一体なんなんですの?」
初春「?何がですか?」
削板「頭の上のそれだよ、能力に関係あったりするのか?」
初春「・・・これは、私の命を表しているんです」
黒子「冗談はおいておきますが、って台詞から察してくださいな」
初春「それが、私にもわからないんですよ」
削板「え?」
初春「気がついたら生えてた、みたいな・・・あはははは」
初春が愉快そうに笑う
だが、二人は固まっていた
ザムザが朝目覚めたら体が虫になっていたように
ウイーハルさんも朝目覚めたら、勝手に頭に花が生えていたのか
顔を洗おうと鏡を見たとき、さぞかし驚いただろう
季節の花なのだ
そしてそれ以前に、頭になぜか花が生えているのだから
もうその日はショックで眠れなかっただろう
陽が昇っている日なんかは大変だろう
四六時中頭の上で光合成が行われているのだ
デンプンには困らないだろうが
削板「・・・お前も大変なんだな」
初春「?はい?」
黒子「その・・・もしよかったら今度、缶ジュースくらいは奢りますの」
初春「は、はぁ」
初春は何が何やら、といった感じでうなずく
黒子と削板は、それを哀れむような目で見ていた
炎天下の中
こちらのやや純粋な三人は、公園で突っ立っていた
テクパトルは激怒した
何度、こんな激怒を繰り返しただろう
あの後、19090号を連れて他のみんなから離れた
ミサカたちを探すために
近くにいたらしく、すぐに彼女達は見つかった
垣根もなぜかいた
心理定規もついでにいた
では、いったい彼は何に激怒したのか
垣根「はいはーい、垣根印の弁当だよー」
バカが、商売を営んでいることに、だ
テクパトル「・・・おい」
垣根「はい、一つねー」
御坂妹「毎度ですー、とミサカは覚えたてのあいさつを・・・」
テクパトル「ちげぇよ!!」
心理「あら、二人ともいたのね・・・」
はぁ、と心理定規が溜め息をつく
彼女は完全に付き合わされているだけらしい
テクパトル「・・・なんでお前らは協力してるんだよ・・・」
10033「いえ、お小遣いのためです、とミサカは正直に答えます」
垣根「売り上げの半分をこいつらに分けてやるんだよ」
テクパトル「買収かよおい!!」
20000「テっくん、大声で売春とか言うなよ」
テクパトル「買収だ!!」
19090「ですが・・・そのお弁当、おなかを壊しそうな名前ですね・・・」
垣根「えー?意外と美味いんだぞ?」
心理「安心して、作ったのは私だから」
テクパトル「・・・この量を?」
テクパトルは驚愕した
心理「・・・垣根が、昨日いきなり言い出したのよ」
14510「一儲けしてやる、と言ってましたよ、とミサカはテっくんに教えます」
17600「金がほしかったのさ」
20000「お金って、素敵やん?」
テクパトル「わかりにくいボケをするな・・・」
こんなやり取りの間も、学生が何人か弁当を買っていく
大抵が女子学生だが
垣根「ははは、イケメンって罪だよなぁ」
テクパトル「自分で言うな」
心理「ともあれ、なかなかの売り上げよ」
御坂妹「ミサカたちも、お小遣いが増えます」
ニヤニヤ、とミサカ一同が笑う
守銭奴だ、とテクパトルが溜め息をつく
テクパトル「・・・にしても、よくもまぁ・・・」
心理「こんなヘンな名前の弁当を買うわよね・・・」
二人が信じられない、というような顔をする
そこらへんは、好奇心が働くのだろうか
学生達の若さは、さまざまな形で現れる
学生っていいな、とテクパトルは思っていた
上条「はぁ・・・どうしようかなぁ」
上条はつぶやいていた
今彼は、レストランの外にいる
理由は簡単
他のみんなを待っているのだ
体育服を乾かしながら
不幸だった
まさか、美琴が立ち上がったときにその足が偶然テーブルに当たり
そして偶然、自分の飲んでいた麦茶が体育服にダイブしてきたなんて
不幸としか言い様がなかった
上条「はぁ・・・でも涼しい」
水を頭から被るのと同じで、意外と気持ちよかったりもする
ジュースだったらベタベタして気持ち悪かっただろうが
美琴「あ、当麻」
上条「ん、美琴か」
レストランの中から美琴だけが出てきた
手にはなぜかゲコ太ステッカーがあった
上条「・・・あの、それは?」
美琴「いいでしょ!!なんか大覇星祭期間中限定で一人一枚もらえるんだって!!」
上条「・・・でも一枚でいいのか?」
美琴「お父さんとお母さんにももらってもらうのよ!」
自分の親を人数稼ぎに使うなよ・・・と上条が溜め息をつく
美琴「・・・乾きそう?」
上条「あぁ、このかんかん照りですよ?すぐ乾きますって」
上条が苦笑する
九月とは思えないほどの陽射しだ
年々、暑くなってきているのではないか
温暖化がどうだのと騒がれるのも判る気がする
上条(しかし、ちょっとシミが気になるよな・・・)
麦茶の薄い茶色がおもいっきり染み付いている
泥だらけになれば正直変わらないのだが
上条「ところで、美琴はなんで出てきたんだ?まだ支払い終わってないだろ?」
美琴「でも、中にいてもヒマじゃない」
レストランの中を指差しながら美琴が言う
涼しいことは涼しいのだが、人が多すぎる
なんとなく、暑苦しく感じてしまうのだ
上条「あぁ・・・たしかにやることないもんな」
美琴「でしょ?だから来たのよ」
当麻と話してるほうが楽しいし、と美琴が笑う
上条「はぁ・・・青春だ」
美琴「?なに言ってるの?」
上条「いやいや、上条さんがまさかこんな素晴らしい青春を送れるなんてね・・・」
遅れてきた青春だった
美琴「・・・あ、あれ当麻の先生じゃないの?」
上条「あ、本当だ」
上条が小萌先生を見つける
小萌「もう、なんであなたはいっつもタバコを吸っているんですか!?」
ステイル「仕方ないだろう、ニコチンは正義だ」
小萌「悪です!!!」
おかしい
上条(あれ、幻覚かな?)
上条が一度目を擦る
そして、もう一度小萌先生のほうを見つめる
小萌「まったく!!だいたい、あなたはまだ未成年・・・」
ステイル「あぁ、インデックス、来たのかい」
イン「うん!!クレープいっぱい買ったんだよ!!」
小萌「シスターちゃん!!シスターちゃんからも言ってください!!」
やっぱりおかしい
美琴「ね、ねぇ・・・あの人、ステイルよね?」
上条「違う!!きっと違う!!心が叫んでる!!」
美琴「お、落ちついて・・・」
上条「そうだ、きっとステイルのそっくりさんだ!!!」
ステイル、と大きな声で上条が言ったからだろう
当の本人が上条のほうを見つめる
ステイル「・・・また君か、上条当麻」
上条「うわぁ!!このそっくりさん、俺のこと知ってるよ!!??」
ステイル「何を言っている、僕は本物だ」
上条「・・・なんでいるんだよ」
上条がげっそりとした顔でつぶやく
こんな暑苦しい日に、暑い魔術を使う男には会いたくなかった
ステイル「いや、招待されたんだよ」
上条「誰にだよ・・・」
ステイル「インデックスにさ」
上条「本当かよ・・・」
イン「うん!ステイルもきっと喜んでくれると・・・」
上条「あぁもう!!イヤですよなんでこの魔術師がここにいんの!?」
ステイル「大声でわめかないでくれ、季節はずれのセミか君は」
上条「うっぜぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!」
上条が叫ぶ
それほどまでに、招かれざる客だった
美琴「でもインデックスも喜んでるじゃない」
小萌「そうですよ上条ちゃん!!」
上条「俺の悲しみは加算されないの!?ねぇ!?」
ステイル「さっきから君は挙動不審だな」
上条「お前のせいだよ!!」
上条がまた頭を抱える
大体、インデックスと小萌先生の二人のロリに囲まれている大男、という絵面自体が恐ろしい
上条「はっ!まさかお前ロリコン・・・」
ステイル「・・・僕はまだ14だ」
ステイルが溜め息をつく
明らかに年齢詐称っぽいが本当なのだ
刀夜「おーい、当麻・・・って、おや、君は・・・」
イン「あ、当麻のお父さんなんだよ!!」
上条(うわぁ、まためんどくさいことに・・・)
美鈴「あれれ?どっかで会ったこと・・・」
イン「あ!!とうまの鼻に手を突っ込もうとした人!!」
美琴「お、お母さんそんなことしてたの!?」
美鈴「あれー?したっけそんなこと?」
旅掛「お、なんだなんだ?大男だ」
ステイル「初対面でその呼び方は失礼じゃないか?」
ショチトル「・・・おや、そっちはシスターか」
一方「あァ?お前かよ」
イン「あ、白い人!!」
一方「・・・一方通行だ・・・」
番外「おー、なんかカオスな雰囲気だね、そっちは誰?」
小萌「私は上条ちゃんの担任なんです!!」
詩菜「あらあら、いつも当麻さんがお世話になってます」
ペコリ、と詩菜がおじぎをする
刀夜「あ、私は当麻の父です」
小萌「あぁ、お世話になってますです!」
小萌も丁寧にお辞儀をする
刀夜「息子は成績は・・・」
上条「あぁぁぁぁ!!!!!!!!!!そろそろ俺が出る競技が始まる・・・」
イン「?次は女子中距離なんだよ?」
ステイル「上条当麻、君はそういう趣味か?」
上条「くそ!!完全記憶能力なんていらねぇやい!!」
非常に面倒な状況になっている
とりあえず、小萌はすぐにその場から去ったが
エツァリ「・・・あなたはイギリス清教の方ですか」
ステイル「へぇ、君はこちら側かい」
エツァリ「元、ですがね」
上条「うわぁ・・・なんだよこの雰囲気・・・」
旅掛「すげぇな、2mはあるよこの子」
上条「そこですか!?」
美琴「・・・とりあえず、ステイルも今日から来たの?」
ステイル「あぁ、昨日の夜にこちらに到着してね」
イン「今日から参加なんだよ!!」
上条「はぁ・・・」
美鈴「あ、私達はいったん別行動にしようか?」
美琴「え、なんで?」
旅掛「子供達の交流も必要だろ、うん!!」
詩菜「まぁまぁ、そちらの方は今日から参加なのでしょう?」
刀夜「しっかりと仲良くするんだぞ、当麻」
上条「あ、あぁ」
実はこの大男に焼かれかけたことがあるんです、とか
実は一度殺されかけました、とかは口が裂けても言えない
小萌がいなくなったからか、ステイルが堂々とタバコを吸い出す
ステイル「はぁ、ニコチン万歳」
一方「あァ?お前未成年だろォが」
番外「おー、さすが黄泉川にしつけられただけあるね」
一方「あいつはうるせェからな・・・」
ステイル「だがね、ニコチンのない世界は恐ろしいぞ?」
イン「ステイル、それは問題発言かも」
美琴「当麻は将来タバコ、吸わないでね?」
上条「・・・」
なんなんだろう、この空間は
魔術とか科学とか、そんな垣根はない
垣根はないのだが
ステイル「ところで、上条当麻、君は次は何の種目に出るんだい?」
上条「・・・次はムカデ競争」
ステイル「へぇ、君が転ぶのが楽しみだ」
美琴「い、陰湿すぎるわよアンタ!!」
少しくらいは、垣根がほしかったりもする
垣根「なになに?俺がほしいの?」
上条「うわぁ!」
突然背中から声を掛けられる
そこにはなぜかリンゴ飴を咥えた垣根とその仲間達がいた
テクパトル「リンゴ飴うめぇな・・・」
19090「テっくんは本当に好きですね・・・」ニコニコ
御坂妹「おや、そちらはいつぞやのシスターですね、とミサカは確認を取ります」
イン「あ、クールビューティー!」
心理「あら、そっちの大男はなに?」
美琴「インデックスの友達・・・って心理定規はインデックスも知らないんだっけ?」
イン「よろしくなんだよ、メジャーハート!」
心理「こちらこそ・・・なんか変わった格好の子ね」
イン「?あなたのほうが変わってるかも」
心理「あら、ただのドレスじゃない」
20000「うっへへ!!これを露出狂と・・・」
心理「あぁ?」
20000「すいません」
上条「はぁ・・・なんか濃いメンバーになったな・・・」
ステイル「それはそうと、その飴はなんだい?」
テクパトル「リンゴ飴だ、くれてやる」
テクパトルがステイルにリンゴ飴を渡す
ステイル「へぇ、大きいね」
イン「私もほしいんだよ!!」
テクパトル「っと、これからなんか競技はあるのか?」
一方「上条はねェンだよな?」
上条「あぁ・・・美琴は?」
美琴「私もないわよ、しばらくは」
エツァリ「では・・・何をしましょうか?」
垣根「あれだ、一緒にアナウンスするか?」
一同「しねーよ」
上条「はぁ・・・暑いな」
大覇星祭、まだまだ二日目
美琴「ステイルは初めて見るの?」
ステイル「あぁ、そうだね」
イン「とっても楽しいんだよ!!」
テクパトル「なんだ、そいつはイギリス清教か」
ステイル「君もこっち側かい」
上条「なんだ、この空間は・・・」
もう、めんどくさいを通り越していた
ただただ、さらに波乱が幕を開けそうで
上条は少し怖かった
大覇星祭が始まってから何度叫んだだろう
彼はまた、それを叫んだ
上条「不幸だーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!」
垣根「あー、アナウンスだりぃ」
放送席で言ってはいけないことを、いとも簡単に垣根は口にした
吹寄「・・・ほら、そろそろ昼休みは終わりよ」
垣根「あいよ・・・」
あれから、上条たちはいったん解散した
ステイルとインデックスを新たに加え、観客席で集合しているのだ
垣根「お、そろそろか・・・」
垣根がマイクのスイッチを入れる
キーン、とハウリングがしてからマイクテストを行う
垣根「吹寄のおっぱい」
吹寄「・・・」
無言で吹寄が垣根を殴る
なぜか、観客席からは歓声が上がっていたが
垣根「さぁ!!二日目の午後の部、始まりますよ!!」
吹寄「まず最初は、組体操です!!」
上条「?組体操か・・・」
美琴「これ、黒子が出るのよ」
上条「へぇ、白井か」
一方「あ、来たンじゃねェか?」
競技場に黒子が入ってくる
黒子(・・・わたくし、なんでこんな地味な種目に・・・)
黒子は心の中で毒づいていた
どうせなら、もっと能力をおもいきりぶっ放せる種目が良かったのだ
黒子「はぁ・・・」
美琴「黒子ーー!!!」
削板「がんばれよーーーー!!!!!!!!!!!」
黒子「!!」
観客席から、二人の愛する人の声が聞こえた
黒子「が、がんばりますの・・・!」
一人静かに闘志を燃やす
相手の学校は・・・
初春「あ、白井さんです!!」
佐天「・・・よりにもよって常盤台と勝負なんて・・・」
黒子(初春と佐天さんの学校ですのね・・・)
勝てる自信はあった
しかし、油断は禁物だ
■■が能力の美しさ勝負で勝ったように
もしかしたら、能力だけでは叶わないかもしれないのだ
黒子(・・・組体操ではやはり、息が合っているかどうかが試されますの)
婚后「はぁ・・・どうして私が・・・」
黒子「婚后さん」
婚后「あら、なんですの、白井さん?」
黒子「この勝負、油断は禁物ですの」
黒子が静かに述べる
自然と、常盤台選抜の空気も変わる
テクパトル「お、真剣な雰囲気になったな」
19090「・・・これは、なかなか面白そうですね・・・」
ステイル「組体操とチアリーディングは何が違うんだい?」
イン「応援を目的にしているか・・・とかかな?」
上条「さぁ・・・どうなんだろ?」
エツァリ「チアでやるか、ブルマでやるかですよ」
番外「死ね変態」
エツァリ「」
垣根「さぁ!!では選手のみなさん!!用意はいいですか!?」
吹寄「怪我には気をつけてください!!」
黒子「始まりますの・・・」
婚后「えぇ・・・」
初春「絶対に負けません!!」
佐天「■■さんにだってできたんだ・・・私だって!!」
静かな闘志がぶつかり合う
垣根「スタート!」
その掛け声と共に、音が流れる
普通なら「白鳥の湖」やら「エリーゼのために」みたいな優雅な雰囲気の曲であるだろう
だが選曲は垣根だ
なぜか「ソーラン節」が流れ出す
黒子(え、れ、練習でしていた曲と違いますの!!)
婚后(こ、これでは踊れませんわ!)
初春「さ、佐天さん・・・」
佐天「落ちついて、初春」
佐天が初春に手を伸ばす
もう一人の生徒とも手を繋ぐ
佐天「まずは扇からしよう」
初春「は、はい!!」
佐天に従い、扇を組む
黒子「ま、まさか・・・」
黒子は驚いていた
佐天や初春だって、内心では驚いているはずだ
なにせ、こんな曲が流れているのだから
しかし、二人は次々と技を披露している
黒子「こ、婚后さん!!」
黒子「行きますの!!」
黒子が婚后の手を握る
だが、この二人は以心伝心というには遠すぎた
婚后「な、何をしますの!?」
黒子「ま、まずはピラミッドを!!」
婚后「ピラミッドは6人必要ですわ!!それよりもサボテンのほうが・・・」
黒子「サボテンじゃインパクトに欠けますの!!」
978 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/10 18:55:52.06 VKLAi5gd0 686/686とりあえず新スレはこちら
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1312969940/
しっかし、大覇星祭だけで3スレくらい使いそうなペースだ、まずい
続き: 18スレ目 上条「引き続き!」美琴「大覇星祭!」垣根「アナウンスも俺!」心理「もうイヤ・・・」
※編集中です。近日中に公開します。