1 : 以下、名... - 2015/04/11 08:21:24 vFIv6iik 1/17

とある小さな喫茶店の、とある昼下がり──



ワイワイ…… ガヤガヤ……

マスター「……」キュッキュッ…

女店員「このコーヒーカップは……」バタバタ…

客A「HAHAHA……」

客B「ほう……」

客C「……でさぁ」

客D「そりゃ面白い!」



カランカラン……

二人の来客があった。

元スレ
男「フィクションの喫茶店のマスターって絶対只者じゃないよな」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1428708084/

2 : 以下、名... - 2015/04/11 08:23:16 vFIv6iik 2/17

「ちわっす!」

「こんにちは」

女店員「あら、いらっしゃい!」

マスター「やぁ」

「二人とも、元気そうでなにより!」

3 : 以下、名... - 2015/04/11 08:27:11 vFIv6iik 3/17

女店員「ご注文は?」

「ブレンド」

「ボクはカフェオレで」

女店員「は~い」

「お前ってホント好きな、コーヒー牛乳」

「コーヒー牛乳じゃないよ。カ、フェ、オ、レ」

「似たようなもんじゃねぇか」

「全然ちがう」

4 : 以下、名... - 2015/04/11 08:29:07 vFIv6iik 4/17

女店員「お待ちどおさま!」コトッ

「ども」

「ありがとうございます」

「……」グビッ

「……」チビッ

「いやぁ~、やっぱマスターの入れるコーヒーは絶品だわ!」

「ホントだね!」

マスター「お世辞いったって、ツケにはしないよ」

「うぐっ……!」

5 : 以下、名... - 2015/04/11 08:32:00 vFIv6iik 5/17

「……まぁ、あれだ」

「喫茶店を経営するってのも結構大変なんでしょ? マスター」

マスター「まぁね。商売敵も多いしね」

マスター「だけど好きで始めた商売だし、つらいと思ったことはないかな」

「ふうん……」

女店員「マスターったら、今でもコーヒー豆の研究に余念がないのよ。スゴイでしょ」

「熟練しても、決して仕事をおろそかにしないってのは立派だなぁ」

「……」

「ところでさ──」

6 : 以下、名... - 2015/04/11 08:34:30 vFIv6iik 6/17

「ドラマだとか、映画だとか、小説だとか、漫画やアニメだとか……」

「フィクション?」

「そうそれ! フィクション!」

「フィクションに登場する喫茶店のマスターって絶対只者じゃないよな」

「そういわれてみれば、そうかもね」

「実はものすごく強かったり、なにかワケありだったりするよね」

「そうそう」

「喫茶店のマスターは世を忍ぶ仮の姿……みたいなパターンが多いよな」

「もしかして、マスターもそうなんじゃないの?」

7 : 以下、名... - 2015/04/11 08:36:43 vFIv6iik 7/17

マスター「そんなことはないよ」

マスター「オレはしがない、小喫茶店の店主さ」

「ホントかな~?」

「とかなんとかいって、実は凄腕のエージェントだったりして!」

マスター「コーヒーを入れる腕はともかく、そういう腕っぷしはからっきしだね」

マスター「人を殴るどころか、ケンカだってしたことないよ」

8 : 以下、名... - 2015/04/11 08:38:53 vFIv6iik 8/17

「だったら……知らないことはない情報屋、だったりするんじゃないですか?」

「札束を払うとどんなことでも教えてくれる、みたいな」

マスター「情報……?」

「!」ビクッ

「!」ドキッ

マスター「フフフ、情報か……そんなに知りたいかい?」

9 : 以下、名... - 2015/04/11 08:41:13 vFIv6iik 9/17

マスター「なら札束どころか、タダで教えてあげよう」

マスター「オレのコーヒー情報、コーヒー豆だけに豆知識をね!」

マスター「まず、オレが愛用してるコーヒー豆は南米の──」

「わぁ~、ストップ! ストップ!」

「ごめんなさい、ごめんなさい!」

マスター「なんだ……聞きたくないのかい」

女店員「危ないところだったわ……」

女店員「マスターのコーヒー談義が始まると、止まらなくなっちゃうもの」

マスター「これは失敬」

10 : 以下、名... - 2015/04/11 08:43:37 vFIv6iik 10/17

「しっかし、なんで喫茶店のマスターってそういう役割にされがちなんだろうな」

「さぁ……」

女店員「なんででしょうね?」

マスター「……」

マスター「う~ん……多分こういうことじゃないかな?」

マスター「喫茶店っていうのは、静かで落ち着ける場所ってイメージがあるから」

マスター「フィクションにおける、主人公たちの拠点にしやすい」

「ふむふむ」

「うんうん」

11 : 以下、名... - 2015/04/11 08:46:06 vFIv6iik 11/17

マスター「そうなると、なにしろ主人公の拠点を預かってる人物なんだから」

マスター「当人にもなにかしらドラマを持たせた方が、物語は面白くなる」

マスター「それに、自分でいうのもなんだけど」

マスター「喫茶店のマスターってのはどことなくミステリアスな雰囲気があるから」

マスター「そういったところも、『喫茶店のマスター=只者じゃない』ってイメージに」

マスター「つながってるんじゃないかな?」

「なるほどねぇ~」

「いわれてみれば、そうかもしれませんね」

12 : 以下、名... - 2015/04/11 08:48:47 vFIv6iik 12/17

「俺の疑問にこんなに明快に答えてくれるなんて……」

「やっぱり……マスターって只者じゃないんじゃないの?」

「たとえば今話題になってるベストセラー小説……書いたのは実はマスターとか!」

マスター「残念だけど、小説なんか書いてるヒマはオレにはないよ」

「う~ん、だけどマスターは絶対只者じゃないと思うんだけどなぁ……」

「ボクもそう思う」

マスター「買いかぶりすぎだよ、ハハハ」

女店員「マスターは正真正銘、ただのコーヒー好きのおじさんよ」

13 : 以下、名... - 2015/04/11 08:51:00 vFIv6iik 13/17

「おっと、時間だ」

「そろそろ出ようぜ。マスターの正体を暴くのはまた今度だ」スクッ

「オッケー」スクッ

女店員「ありがとうございました~!」

マスター「また来てくれよ」

「もちろん!」

「ごちそうさまでした!」

バタン……



マスター「……」

14 : 以下、名... - 2015/04/11 08:53:06 vFIv6iik 14/17

マスター(女店員ちゃんがいったとおり、オレには正体なんかなにもない)

マスター(只者じゃない、なんてことはまったくない)

マスター(コーヒー好きが高じて35歳で脱サラしただけの)

マスター(しがない喫茶店の店主にすぎない……)



マスター(だけど──)

15 : 以下、名... - 2015/04/11 08:56:00 vFIv6iik 15/17

外──

「ええ~っと、今度の依頼はなんだっけ?」

「おいおい、しっかりしてくれよ」

「中高生をターゲットに荒稼ぎしてる、ドラッグ密売グループの撲滅だよ」

「ごめんごめん。やりがいのない依頼のことは、つい忘れちゃうんだよね」

「ボクもマスターの仕事ぶりを見習わないと」

「さてと、武器はどうする?」

「相手はせいぜいナイフや銃で武装してる50人かそこらだろ? いらねえだろ」

「それもそうだね」

16 : 以下、名... - 2015/04/11 08:59:00 vFIv6iik 16/17

喫茶店──

客A「ワオ! そろそろホワイトハウスに戻らないと~!」

客B「自分も特殊部隊の任務に戻らねば……!」

客C「む……帰還命令か。火星に戻るとしよう」ピピピ…

客D「では大魔術師である我が、みなを目的地まで空間転移させてやろう!」バサァ…

客A「いつもいつも助かりマ~ス」

客A「マスター、ここに四人分のマネー置いておきマ~ス」スッ…

マスター「毎度!」

シュンッ!

四人の客はまとめてどこかに消えてしまった。

17 : 以下、名... - 2015/04/11 09:02:07 vFIv6iik 17/17

女店員「マスター、私も今日は地下格闘技の試合があるので、早退します!」

マスター「ああ、王座防衛、がんばってくれよ」

女店員「はい!」



マスター(──オレの店にやってくる人は、なぜかみんな只者じゃないんだよなぁ……)







END

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