弟「兄ちゃん、晩御飯の時間だよ」
弟「……」
弟「あのさ、いい加減やめようよ」
弟「ほら、みんな変な目で見てるよ」
弟「ねえってば」
弟「無視しないでよ」
弟「……」
弟「また来るからね」 スタスタ
女「あの子、また電柱に話しかけてる……」
元スレ
弟「兄ちゃんが自分は電柱だって言い張って家の前の歩道にずっと立ってる……」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1424755862/
友「退屈ー、次数学だし。なんか面白い話ない?」
女「面白いかどうかは分からないけど、最近近所の子がよく電柱に話しかけてるよ」
友「変なの。その子おかしいんじゃないの?」
女「そうかな」
友「そうだよ。そういう変な子と関わっちゃダメだよ」
女「そんな事言っちゃダメだよ。きっと悪い子じゃないと思うし」
友「女はすぐにそうやっていい子ぶるんだから」
女「そんなんじゃないってば」
男「女さん、また一人でしゃべってる……」
男「でね、女さんってばいつも一人でしゃべってるんだよ」
男「周りの子達もドン引きしててさ、クラスから浮いちゃってるんだよね」
男「でも全然平気そうなんだ。不思議だよね」
男「僕、最近なんだか女さんのことが気になっちゃって」
男「これが恋なのかなぁ」
男「どう思う、ママ?」
男「やっぱりママもそう思う?」
男「僕、ママ以外の人を好きになるのって初めてだよ」
男「これが恋かぁ」
男「僕、女さんと仲良しになりたいなぁ。ママも応援してくれるよね?」
男「ありがと、ママ。ママならそう言ってくれると思ってたよ。ふふふ、楽しみだなぁ」
姉「……この家、凄い匂いね。道路にまで腐臭がするなんて、死体でも置いてあるのかしら?」
『腹部』
『ホチキスの針、5本』
『+カッターでお絵かき』
『結果→出血、30分ほどで止まる』
『胃』
『塩水、1リットル』
『雑草、50グラム』
『砂、100グラム』
『結果→嘔吐、茶色だった』
『最近反応が大人しくてつまらない』
『自殺でもさせてみたら面白いかも』
『どの自殺方法がいいか考えてみる』
『これが上手くいけばこれからはこの方法で殺ろう』
弟「……」 パタン
弟「兄ちゃん」
兄「なんだ?」
弟「え……?」
兄「そんなに驚いた顔をしてどうした?」
弟「なんで、返事……」
兄「お前があんまりしつこいから返事してやったんじゃないか。まったく、今の俺は電柱なんだぞ」
弟「う、うん……ご……ごめん……ご、ごめんね」
兄「まあいいさ。俺はお前の兄ちゃんだからな。困った事があったらなんでも俺に言うんだぞ」
弟「……実は、あの……あの、僕……嫌な事、されてて……それで……」
兄「兄ちゃんにも経験あるぞ。そういう奴にはな――」
友「へー、電柱ってしゃべるんだ」
友「ねえねえ知ってる?」
弟「……」 グシュ
友「死ぬのって痛いんだよ?」
弟「……」 グシュ
友「練習で殺される身にもなろうよ」
弟「……」 グシュ
友「腸もはみ出してるしさー」
弟「……」 グシュ
友「まあいいけど、せめて埋めてあげてよね」
弟「うん」 グシュ
友「なんだ、聞こえてるんだね」
弟「……」 グシュ
男「うわっ、子供が猫を殺してるよ……最近は物騒だなぁ」
『デート10日目』
『16:13 女さん帰宅』
『17:11 居間点灯』
『17:30 トイレ点灯、50秒後消灯』
『18:39 女さんの母、帰宅』
『20:02 女さんの父、帰宅』
『20:37 風呂場点灯』
『20;39 シャワーの水音』
『20:40 鼻歌、女さんだ』『シャンプー』『泡立つ』『水音』『ごしごし』『水』『女さん』『女さん』『女さん』『女さん』『女さん』『女さん』『女さん』
『00:21 女さんの部屋、消灯』
女「ふぁ~あ。……おやすみなさい」
女「あの、しつこいです」
女「やめてくれませんか?」
女「用件はわかりましたから」
女「……」
女「直接お話すれば納得してくれるんですか?」
女「そうですか」
女「はい、近い内にそうします」
兄「なんで一人でしゃべってるんだ?」
女「電柱ってしゃべるんですか?」
兄「おっと」
女「今朝電柱さんに話しかけられちゃった」
友「そういう事もあるよねー」
友「よろしくにゃー、おとなりさん」
猫「にゃー」
友「うんうん。この生活も案外悪くないにゃにゃよー」
猫「にゃー」
友「大丈夫にゃー。猫のお友達もすぐにできるにゃーよ」
猫「にゃー」
友「にゃんにゃん」
猫「にゃー」
友「と、御来客だにゃー」
姉「……自殺は名案よね。あなたの時とは違って穴は掘らなくていいもの」
友「そう上手くいくかにゃー?」
姉「こんにちは」
姉「毎日うちの弟の話相手になってくれているそうで、どうもありがとうございますね」
姉「それにしても」
姉「世の中馬鹿ばかりだと思いません?」
姉「電柱に話しかける馬鹿、簡単に騙される馬鹿、存在しないものを信じる馬鹿」
姉「馬鹿は死ななきゃ治らないって言いますけど、死んで治ったのかしら?」
姉「機会があれば一度聞いてみたいものね」
姉「なんて、馬鹿の真似をしてもやっぱり全然面白くないわね」
姉「それじゃ、さようなら」 スタスタ
兄「……」
兄(俺は弟の兄だ)
兄(弟が俺を兄だと言うのだから、弟は俺の弟に違いないのだ)
兄(では、あの女は俺の姉か妹なのだろうか?)
兄(いいや、違う)
兄(あの女は俺を兄とも弟とも言いはしなかった)
兄(なのだから、あの女は俺の姉でも妹でもない)
兄(では俺は、あの女の兄でも弟でもない俺は、弟の兄として何をすべきだろうか)
兄(……)
兄(しかし俺は、電柱だ。電柱なのだ。電柱の俺に何ができると言うのだ)
兄(果たして俺は……兄である前に電柱なのだろうか……電柱である前に兄なのだろうか……)
猫「にゃー?」
猫「にゃー」
女「あ、猫ちゃんだ」 ナデナデ
猫「にゃー」
弟「……ごめんね」
猫「にゃー」
友「やっほー、エンジョイしてるかにゃー?」
猫「にゃー」
兄「何かいるのか?」
猫「にゃー」
姉「……」 スタスタ
猫「にゃー」
男「女さん、もうすぐずっと一緒にいられるよ」
友「やっほー、電柱くん」
兄「……」
友「調子はどう?」
兄「……」
友「君は聞こえない側かな? そうそう、アレ今日みたいよ?」
兄「……」
友「君の弟くんがアレされちゃうアレの日」
兄「……」
友「ダメだった時は仲良くやるから私はそれでいいけど、君はどうなのかにゃー」
兄「……」
友「ま、なるようになるってね。それじゃあねー」
兄「……むぅ」
男(……心臓がドキドキしてる)
男(女さんのお義父さんはさっき帰って来た。お義母さんも家にいる。ついにこの時が来たんだ)
男(僕と女さんが結ばれる日。二人の記念日。みんなが祝福してくれてる!)
男(そうだ、ママにも話さなくちゃ! 今日から女さんと僕とママの三人で暮らすんだ!)
男(ママになんて紹介しようかな? 僕の最愛の人? 将来を誓い合った人? えへへ)
男(女さん、待っててね) ピンポーン
母「はーい」 ガチャ
男「あの、僕、女さんの同級生の男と言います」
母「あら、女に用事? 呼んできた方がいいかしら?」
父「ん、女の友達かい?」
男「実は……お二人にお話があるんです」
父「話?」
男「……娘さんを僕にください!」
姉「弟」
弟「……っ」
姉「そんなに怯えなくてもいいのよ。少しお願いがあるだけなの」
弟「お、お願い……?」
姉「そう、それさえしてくれたらもう絶対に痛い事しないってお姉ちゃん約束するわ」
弟「……本当に?」
姉「ええ。本当よ」
弟「……どんな遊びなの?」
姉「すごく楽しいわよ。きっとみんなビックリするわ。そう、みんなをちょっと驚かせるだけのための遊びよ。おまけに紙と鉛筆だけでできるの」
弟「……お絵かき?」
姉「いいえ、遺書書きよ」
女(なんだか話し声がするけど、誰か来てるのかな?)
「……を言ってるんだ!?」
「もう……これ以上……出て行け!!」
「……いやぁぁぁぁぁぁ!?」
「……するんだ!? やめ……」
「あなた、なんで……」
「娘には手を……ぐ……逃げ……」
女「……?」
弟「えぐっ、えぐ……っ」
姉「もう、お姉ちゃんを疲れさせないでくれる?」
弟「う……うぅ……」
姉「最初から素直に書いていれば余計な事をせずに済んだのよ?」
弟「い、痛い……痛いよぉ……」
姉「少し手首を切っただけじゃない。もっと苦しい事、たくさんしてあげたでしょう?」
弟「えぐ……えぐ……っ」
姉「いい? 学校でいじめられていたって書くのよ? どうせ少しくらいいじめられてたでしょう? それを大袈裟に書けばいいのよ」
弟「う……うぅ……っ」
姉「これが終わればもう痛い事や苦しい事なんて何もなくなるのよ? お姉ちゃん応援してるわ。ほら頑張って」
弟「う……うぐ……うぅ……っ」
女「お母さん、どうかしたの?」
女「……お母さん? ……お父さん?」
女「何、どうしたの?」
男「やあ、女さん」
女「こんばんは、男くん」
男「ごめんね、こんな血まみれで」
女「別にいいけど、どうして家にいるの?」
男「実はご両親にお話があって来たんだけど……ごめんね、あんまり話を聞いてくれないから殺しちゃったんだ。あはは!」
女「お父さんもお母さんもここにいるよ?」
男「……? ああ、そっか! 女さんはそういう子だよね! 僕、女さんのそういう所も大好きだよ!」
女「よく分からないけど、あの、男くん。私も話があるの」
男「女さんの話ならなんでも聞くよ、僕」
女「あのね……男くんのお母さんにもう私の所に来ないように言って欲しいの」
男「え?」
女「……男くんがどれだけ私の事を好きか毎日言いに来られても、私、困るの」
姉「さあ、準備できたわよ。ほら、机の上に立って」
弟「う……うぅ……」
姉「大丈夫、全然苦しくないわよ。すぐに脳に酸素がいかなくなって意識なんてなくなっちゃうんだから」
弟「い……いやだ……」
姉「どうしてそんなワガママ言うのかしら?」
弟「僕……僕、死にたくない!」
姉「……」
弟「死にたくないよ……死ぬのは嫌だ……嫌だ……嫌だ!」 ブン
姉「はぁ?」 ゴリッ
弟「うげっ」 ドンッ
姉「そんなナイフで私を殺せるつもりだった? やめてよね、私が何人殺してると思ってるのよ」
弟「……父さん、母さん、友さん……」
姉「あら、よく知ってるのね。ほら、はやくあなたも死になさいよ」 グイッ
弟「やだ、やだ……やだ、やだ、やだ……!」 ジタバタ
姉「さようなら、弟」
女「毎日家の外に潜んで私が何して過ごしてるのか調べてるとか」
女「ノートに私の事ばかり書いて過ごすくらい私の事が大好きとか」
女「いつも教室で私の事ばかり見てるとか」
女「自分に話す事も私の話ばかりで嫉妬しちゃうくらいとか」
女「毎日毎日私の所に来て話されても、私、そういうのちょっとよくわからないっていうか」
女「まだ恋愛とかって興味なくて」
女「あの、だからお母さんに私の所に来ないように男くんから話して欲しいの。……男くん?」
男「さ、さっきから何言ってるの?」
女「だから、男くんのお母さんにもう来ないように言って欲しいの」
男「ま、ま、ママがお前の所に来るわけないだろ!? ママは、ママは僕が、僕が……!!」
女「……お母さんに聞いたら?」
男「え?」
女「だって、男くんの後ろにいるじゃない。ほら」
男「ひ……あ、あ、ああああああああああああああああああああああああああああ!!」 タッタッタッ
女「男くん、どうしたの? 男くん?」
姉「苦しい? 苦しい? ほらあと少し、あと少しで楽になるわよ?」
弟「あ……あ……っ」
姉「あははは、いいわその顔! ねえ、もっと馬鹿な顔してみっともなく死んでくれる?」
弟「たす……け……っ」
姉「誰もあなたを助けてなんてくれるわけないじゃない!」
グギ ギ ギギ ギギギ ギギギギギ
姉「……何の音?」
ギギ ギギ ギギギギ ギギギギギギギギギギ
弟「たす……にい……兄ちゃ……っ」
弟「兄ちゃん……っ」
ゴキッ
兄「おうよ」
姉「……え?」
メキメキメキメキッ ドドドドーンッ ガラガラガラッ
女「男くん!」 キョロキョロ
女「どうしたんだろ、あんなに急いで帰っちゃうなんて」
メキメキメキメキッ ドドドドーンッ ガラガラガラッ
女「きゃっ! 今の……」
友「電柱が折れたみたいだね」
女「あ、友ちゃん」
友「あの電柱もなかなかやるにゃー」
女「大丈夫、なのかな。救急車呼んだ方がいいのかな」
友「いいのいいの、どうせ下敷きになったのは人でなしなんだから」
女「え、誰か下敷きになってるの?」
友「ん、そういう話じゃなかった?」
女「電柱さんの話だよ!」
友「あー、その発想はなかったわ」
弟「げほ、げほげほ!」
弟「はあ……はあ……うげっ、げぅ……」
姉「う……うぅ……痛い……痛いぃぃぃ……」
兄「無事か、弟?」
弟「兄ちゃん……」
兄「その様子なら大丈夫そうだな」
弟「僕、あの、僕……」
兄「みなまで言うな。全部分かっている」
弟「……」
兄「所詮俺はただの電柱、俺達は偽物の兄弟だ」
弟「ごめんなさい、僕……」
兄「謝るな、弟よ。俺はお前の兄でいられた時間がたまらなく嬉しかったよ」
弟「……兄ちゃん!」
兄「幸せになれ、弟。それだけが俺の望みだ。……じゃあな」
弟「兄ちゃん? 兄ちゃん? ……兄ちゃん」
友「……春だねー」
女「……春だねー」 ナデナデ
猫「にゃー」
友「……ひなたぼっこ、最高だねー」
女「……そうだねー」 ナデナデ
猫「にゃー」
弟「……あ」
友「にゃー」
女「こんにちは」
弟「……こんにちは」
弟「……お互い、有名人ですね」
女「そうなの?」
友「そりゃそうでしょー。女は両親を殺された少女A、弟くんは姉に殺されかけた少年Aだし」
女「だからお母さんもお父さんも生きてるってば」
友「あんたの生きてるは基準がおかしいんだって」
弟「……知ってると思いますけど、姉さん捕まるみたいです」
友「ああ、私の事もバレたんだっけ」
弟「僕が言いました」
友「気遣わなくていいのに。半身不随に失明でしょ? それだけで十分すぎるよ」
弟「……」
猫「にゃー」
弟「僕……」
友「いいんだよ、全部さ。私もこの子も誰かを恨んでなんていないんだからさ」
弟「……」
弟「多分、会うのはこれが最後だと思います。僕、引っ越す事になりました」
友「そっか」
女「不安?」
弟「少しだけ。でも大丈夫です、僕は絶対に幸せになりますから」
女「うん。なれるよ」
友「頑張りなよ、若人」
弟「はい。……さようなら」 スタスタ
女「……そういえば男くん、最近学校に来ないね。どうしたんだろ」
友「あんたは本当幸せだにゃー」
女「そうかにゃー……あ」 カァァァ
友「にゃー」
猫「にゃー」
女「……にゃー」
おわり
43 : 以下、\... - 2015/02/24 16:05:52.44 +AaC0Csua.net 27/30よく分かんないけど面白かったかも
44 : 以下、\... - 2015/02/24 16:06:30.07 i0KRID860.net 28/30なんとなくわかったような気がするけど友がなんなのかよくわからん
49 : 以下、\... - 2015/02/24 16:08:38.24 k3gq3BeqE.net 29/30>>44
友は姉に殺されて女につきまとってるんじゃね
52 : 以下、\... - 2015/02/24 16:12:37.83 i0KRID860.net 30/30>>49
ああそれ聞いて読み返したらわかった
ありがとう
群像劇風でホラーでシュール
これ映画にしよう(提案)