男「はははは、なにを言うマイシスター」
女「いえあのだから、私は先輩の妹じゃなくて…」
男「こんなにかわいい娘が、俺の妹じゃないわけない!」
女「ふぁ!?」
男「俺を手紙で呼び出しながらも、時間を指定してなかったことを思い出し
昼休みから今までずっと体育館裏で待ち続け、北風にさらされて、ちょっと
凍えながら一人たたずみ、俺の姿を確認した途端、子犬のように走り寄って来る!」
女「え? ああ、その、だって…先輩をお待たせするわけにはいかないですし」
男「萌え!! こんなかわいい萌えキャラが俺の妹以外のなんだというんだ!!」
女「もっ…モエですか?」
元スレ
女「ち、違います! 私、妹じゃありません!」
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1285516512/
男「さぁ、いつものように『お兄ちゃん』と呼んでごらん?」
女「あ、はい…お兄ちゃん?………ええと、いつもそんな風に呼んでないのですが?」
男「………なんだい、我が妹よ!」
女「いえあの、先輩が呼べと」
男「な、なんだって!! 特に理由もなく、俺のことを『お兄ちゃぁん』と甘い声で呼んだというのか!?」
女「はぁ…はい、まぁ、そうですけど」
男「『うふふ、呼んでみただけ』ってことか…? なにそれ、お前はお兄ちゃんを萌え殺したいのか!!」
女「そ、そんな滅相もありませんっ! 私はただ先輩に告白を……そ、そだ! せ、せんぱい、私、あの」
男「ノンノン! お・に・い・ちゃ・ん」
女「ふぁ?」
男「もしくは、『にぃにぃ』と囁いてくれてもいいぞ」
女「ええと、にぃにぃ?」
男「ふぁぁぁんたすてぃぃっく!!」
男「いかん…いかんぞ……体育館裏とはいえ、神聖な学び舎でそんな…」
女「にぃにぃ?」
男「だ、ダメだ…それは破壊力が強すぎる………俺の防御力では耐え切れん
できれば、予期しない状況で昔使ってた呼称がポロリと出てしまった的な
シチュエーションで呼んでくれ…そして、呼んだあとに『あ、やっちゃった』みたいな
感じで頬を赤く染めて欲しい」
女「は、はぃ、がんばります…」
男「うん、『にぃにぃ』は当面禁止だな…ここぞ、というときに使ってくれ」
女「はぁ…そ、それでその先輩」
男「お兄ちゃん」
女「お、お兄ちゃん」
男「ふむ…二人きりじゃないときは『兄さん』って呼ぶようなバランスがあると、なお良いかもしれない」
女「………あ、あの、話を進めてもいいですか?」
男「なんだい? お兄ちゃんは、妹の頼みならなんだって聞いちゃうぞ? 現金? 土地? それとも株かい?」
女「い、いいえっ、そういうんじゃなくて! というか、お金とかいりませんからっ!」
男「なんだと……つまり、誕生日プレゼントにブランド物のなにかが欲しいと」
女「言ってませんっ!! ていうか、聞いてくださいっ!!」
男「む…そうか。よし、お兄ちゃんはお前の発言を逐一完全に聞いているぞ! さあ、何でも言いなさい!」
女「わ………わ、私と…その」
男「うんうん」
女「つ、つつつつつつ付きっ…付き合ってください!」
男「…ふむ」
女「………ぁの」
男「…残念だが」
女「…ぁ」
男「現代日本では、兄妹で結婚はできないんだ…お兄ちゃん、嬉しいけど、お前の気持ちには応えられないよ」
女「だ、だから、妹じゃないって言ってるじゃないですかぁぁぁぁぁっ!!!」
女「はぁ…っ…はぁっ…」
男「女の子が、そんな大声を出すものじゃないぞ」
女「………だ、だれのせいで」
男「ふむ、しかしなんだな。妹にここまで慕われているというのも悪くない。 むしろグッドだ」
女「あ、あの、先輩? 私はですね、先輩とは知り合ったばかりの赤の他人…っていうか、
その、赤の他人じゃない関係になりたくはあるんですけど」
男「よし。 お兄ちゃん嬉しいから、帰りにクレープとかおごっちゃうぞ!」
女「え? やったぁ!」
男「うんうん。 イチゴでもバナナでも好きなトッピングを存分に頼むがいい!」
女「わぁい! うーん、なににしようかなぁ………じゃなくて、先輩!?」
男「おいおい、他人行儀な…二人きりのときは『お兄ちゃん』って呼んでもいいんだぞ?」
女「呼びませんよ!?」
男「そうかー素直じゃない妹にはクレープはおごれんなー」
女「お兄ちゃん! バナナチョコが食べたいです!」
女「はむっ」
男「どうだ? うまいか?」
女「はい、おいしいです、お兄ちゃん――って、違うでしょ!」
男「なんだ? もしかして、お兄ちゃんのベリーベリーミックスの方が良かったか?
仕方ないなぁ、半分こしてやろう」
女「わぁい♪――って、違います!」
男「…そうか? 遠慮しなくてもいいぞ? 他に食べたかったら、ホクホクポテトバロンでもなんでも」
女「ほ、ホントですか!? じゃあ、ちょっと――って、ナチュラルに甘やかさないで下さい!」
男「なにを言う? お兄ちゃんは、お前をドロドロに甘やかすために存在してるんだぞ? ほら、口にチョコついてる」
女「あ、すいません、どうも……って、あの、そもそも私は妹じゃなくて」
男「お前が妹じゃなくてなんだと言うのか?」
女「だから……い、今はまだ同じ学校の後輩です」
男「そうだ…それも我が妹の一面、人間誰しもいろんな面を持って生きているものだ」
女「はぁ…そうなんですか」
男「例えば、そこの交番の彼だって、今は警察官だが、家に帰ればお父さんであったり、誰かの息子だったりするだろう?」
女「はい、そうですね」
男「そう、お前は学校では俺の後輩かもしれない………しかぁしっ! 家では俺の妹であることを否定できまい!!」
女「な、なるほど…?」
男「つまり、お前は、俺の妹なんだ」
女「そ、そっかぁ…私って、先輩の妹だったんですね――って、家が全然違うじゃないですか!」
男「そんなたかが数キロ…宇宙的に見れば誤差だ」
女「違うご町内ですよ! もっと視野をローカルに持ってください!」
男「兄とは、妹より常に視線を高くして、妹を危険から守ってるものだからな…」
女「…え、なにそれかっこいい……じゃなくて、先輩、私は」
男「さて、近ごろは日が暮れるのも遅くなったなぁ……そろそろ帰ろうか?」
女「あ、そうですね……って、一緒に帰るんですか!?」
男「どうした?」
女「あ、いえ、あの、こんな時間に失礼するのは、ちょ、ちょっと、駅前まで行ってきます!!」
男「…はぁ? なんでまた?」
女「や、やっぱり、ご家族の方に迷惑じゃないかなとか? その、最初が肝心らしいですし、
菓子折りの一つでも持ってこなきゃダメですよね!? すいません全然気がつかなくて
今すぐ行ってきますので! あ、あのご家族の方は甘い物とか平気でしょうか?
もしも、なにかアレルギーとかがあれば教えていただけると助かります! というか、
こういうときって、お菓子とかじゃなくて、コンブとかアワビの干物とかだったりするんでしたっけ?
どうしよう…乾物屋さん開いてるかな…ええと、先輩近くに乾物屋さんってありますか?」
男「……そういうのいいよ。気にしなくていい。俺の家族は、妹一人…お前だけだよ」
女「ふぇ?」
男「さ、冷えてきたし。ウチに入ろう」
女「は、はぁ…?」
男「ただいまー。 さあ、マイシスター! そんなところでぷるぷるしてないで入りなさい!」
女「お、おじゃまします…」
男「はははは。 帰ったときは『ただいま』だろ?」
女「は、はぁ…た、ただいま帰りました…」
男「うん、おかえり」
妹「んだよ…クソ兄貴か。遅かったな」
女「ひゃぅっ」
男「うるさいぞ土人。いつ帰ってこようが俺の勝手だろう」
妹「あーはいはい………って、ハァ!? あんた、何連れて帰ってきてんだ!?
…抱きマクラとかそういうのじゃ、飽き足らず…誘拐だぞ!?このバカ兄貴……って、あれ、お前」
男「あーすまないなぁ…マイシスター…このガングロヤマンバ土人はウチに住み着いてる妖怪の一種で」
女「って、先輩、妹さんおられるんじゃないですかっ!!」
妹「…いいんちょ?」
男「こら、土人。発音が悪いぞ。日本語をしゃべれ、日本語を」
女「え………あ、その、時代の最後尾を頑なに突っ切ってるヤマンバっぷりは…きょーちゃん?」
妹「…おい、クソ兄貴、なにてめ、ウチのクラスのいいんちょ拉致しちゃってるわけ? けーさつ呼ぶぞ?」
男「だから、『ちょ』じゃなくて『長』と発音しろ、この原住民。そんなことではジャパンでやっていけないぞ」
女「あ、あの、あのね、ラチとかそういうんじゃなくて…私がついて来ただけで」
妹「ハァ? あんたバカ? なにこの変態クソ兄貴について来てんの? 甘いもん食わされてデブるよ?」
男「…なんだ、我が妹と土人は知り合いだったのか?」
女「はい、きょーちゃんとは同じクラスの友達です………て、あれ、この場合、土人がきょーちゃんの方だよね?」
妹「…そうらしいな。で? なんでウチに来てんの?」
男「俺の妹だからな」
妹「クソ兄貴は黙れ」
男「ふぎゅぅ!? マイシスター! 土人が! 土人が、か弱い俺に暴力をふるうよ! なにも悪いことしてないか弱い俺に暴力をふるうよ!」
女「先輩は黙っててください」
男「ふぎゅぅ!?」
妹「……告白しようとしたら、妹と誤認されて、連れてこられたと」
女「うん、そうなの」
妹「あの、一つ聞いていい? ウチのアレのどこが気に入ったわけ?」
女「え? えーと…ひとめぼれ?」
妹「…いいんちょ、って普通に乙女だよな」
女「そう? そうかな? えへへ、照れるなぁ」
妹「いや、褒めてないから」
女「…褒めてないんだ」
妹「はぁっ……ま、わかったっしょ? アレ、変態だって。やめといた方がいいよ、あんなバカ…って、言われなくても醒めてるか」
女「え?」
妹「いや、百年の恋も醒めるっしょ?……って、あたしに何言わせんだ、あんた」
女「………う、うーん?」
妹「……まぁ、どーでもいいけどさ」
男「女同士の密談は終わったかい!? はははは。お兄ちゃんは妹の交友関係には寛容な方だからね!
土人とはいえ、女の子の会話をジャマしない度量に満ち溢れているのさ!」
女「え、あー…そうですか、どうもです」
妹「いいんちょ、メシまだだろ? 食ってく?」
女「え? いいんですか?」
妹「ああ、今日カレーだし」
男「まぁ、土人が作ったものだから味付けは保証しないけどね」
妹「ハァ? 文句があるなら食うなよ、クソ兄貴」
男「ははっ…文句があるなら出て行ってもいいんだぞ、土人?」
妹「………」
男「………」
女「え、ええと…わ、わーい! カレーうれしいなー! 私カレーダイスキー」
男「そうかそうか! ならば、この兄が大盛によそってあげようではないか!」
妹「………」
妹「いいんちょ? 辛くね? だいじょぶ?」
女「う、うん…か、からいけど……だいじょぶ……ごめ、おみず…」
男「無理をしなくていいんだぞ? 所詮、土人だから、カレーは辛ければ辛いほどいいと思ってるからな」
妹「…ハっ? どっかのクソ兄貴が、もっと繊細な舌持ってりゃ、こんな味付けにしてねーよ」
女「………それって、先輩が辛いの好きだからこんな味にしてるってこと?」
男「え………」
妹「ばっ……バカ? バカなの? いいんちょ、バカだな? バカだろ?」
女「………そ、そんなにバカバカ言わないでよぅ」
男「そ、そうだぞ! バカかもしれんが、たしかにバカかもしれんが、そんなにバカバカ言うことないだろ?」
女「…うぅ…せんぱいまで、バカバカ言うし……からいし…」
女「…うぅ…ごちそうさまでした…」
妹「…おそまつさん」
男「よく頑張ったな。さすが俺の妹だ。さあ、ここにおいで、お兄ちゃんが、甘いモノをあげよう」
妹「クソ兄貴は、皿洗いだろ。働けよ」
男「……すまない、マイシスター。皿をちゃっちゃと洗ったら、すぐにお前にカントリーマァムを食べさせてあげるからね」
女「いえ、あの、私もお手伝いします」
妹「いーんだよ。 あいつ皿洗いくらいしかできねーんだから」
男「そんなことないぞ! 風呂掃除だってできる! 換気扇だって掃除できる!」
妹「あー…わかったから。そういうのいいから、早く皿洗えよ」
男「く、くそう! 覚えてろよ!」
女「…ええと、楽しいお兄さんだね?」
妹「ハァ? それマジで言ってんの?」
女「あー…ごめん」
妹「べつに。あたしもあいつのこと兄とか思ってないし」
女「あ、あー……そう?」
妹「んだ?てめ、いいんちょ、しばき倒すぞコラ?」
女「うわーこわいこわい」
妹「………ったく、少しは怖がれっつーの」
女「むりだよ。友達だもん」
妹「…あんた、入学したときからそうじゃん」
女「んー…ということは、入学したときから友達だったんだよ」
妹「ハァ? わけわかんね」
女「ははっ…わけわかんないねー」
女「そういえば、ご両親は? 遅いの?」
妹「いや、死んだ」
女「あ、そうなんだ………って、え……あ、ごめん」
妹「別にいいし。いちお、保護者は叔父ってことになってる」
女「その叔父さんは?」
妹「他のとこに女作って住んでんじゃね?」
女「…そなんだ」
妹「って、結構遅くなったけど、だいじょぶ? あんたこそ、親に連絡入れないでいいの?」
女「あ、うん。いいの。ウチは死んでないけど、居ないから」
妹「あ、そーなん?………えっと、ごめん?」
女「ううん。私も気にしてないから」
妹「…そっか」
妹「かなり暗いんだけど…いいんちょ、駅の向こう側だっけ?」
女「うん。大丈夫、一人で帰れるよ」
妹「いいって、クソ兄貴に送らせ――るのも危険か」
男「なにを危惧してるのかわからないけど、マイシスター、お風呂が沸いたよ! さ、暖かい内に入りなさい!」
女「え? で、でも、替えの下着とかパジャマとか持ってきてないですし」
妹「ハァ? 何バカ言ってんの? バカなの?」
男「はぁ…土人はこれだから困る。俺の妹が俺の家の俺が洗った風呂に入ってなにが悪いというんだ?」
妹「…まさか、泊めるつもりじゃ」
男「意味がわからない。兄妹は一つ屋根の下で暮らすものだろう! そこに愛はあるのかい!?」
妹「ハァ!? いやなにそれ、わけわかんないし……バカだバカだとは思ってたけど、そこまでバカか!?」
女「ええと、それじゃ…きょーちゃん、悪いんだけど下着とか借りてもいい?」
妹「いいけど――って、あんたも何考えてんの!?」
女「ええと、お泊りダメ?」
妹「だ、ダメ…っていうか、あんたいいの? このバカ、変態だよ? 妹のパンツを
手洗いするような変態クソ兄貴だよ? そんなやつの前に洗濯物出しちゃダメだって!」
男「仕方ないだろ。タグにそう書いてあるんだから」
女「大丈夫。ちゃんと洗濯物は袋とかに入れて見つからないようにしとくから」
男「あれ? お兄ちゃん意外と信用ない?」
妹「…あるわけねーだろ」
女「じゃ、すいません、先にお風呂いただきますね」
男「うむ」
妹「いや、『うむ』じゃねーよ、なについて行こうとしてんだよ?」
男「妹の背中を流すのも兄のつとめ…だからな!」
妹「わけわかんねーし。ていうか、なにそれ? なに握り締めてんの?」
男「スク水だが、なにか? 妹と風呂といえばスク水だろう」
妹「…ああそう、なるほどね――って、わかるかボケェっ!!!」
男「ひぎぃっ!!!」
妹「ふぅー…いい湯だった」
女「………」
妹「いいんちょ? どうしたん?――ま、まさかクソ兄貴になにかっ」
女「…わかってはいたけど」
妹「ハァ? な、なにされた? あの変態…」
女「こんなにサイズが違うなんて…」
妹「…ああ、下着……そりゃそうだろ」
女「…なんとかなるかなーって思ったんだけどなぁ…」
妹「いや、ならねーよ…なると思ったときの心理状態を疑いてーよ…」
女「それに…メイク落としたら、きょーちゃん、普通に美人さんだし」
妹「は、ハァ? てめ、な何言ってんだこの?」
女「………なんか、れっとーかん…」
男「はははは。気にするなマイシスター!」
女「せ、せんぱい!?」
妹「なにナチュラルに人の部屋に入ってきてんだよこのクソ兄貴」
男「さ、これを使いなさい。今しがたコンビニで買ってきたよ」
女「…あ、これ…下着?」
男「サイズがわからなかったからね、とりあえず、一通り買ってきたよ」
女「………なんかこれ、柄が全部、水色と白のボーダー…」
男「しましまは男のロマンだから」
妹「てか、この柄、コンビニで売ってるっけ?」
男「……売っているとも!!」
女「そ、そんな豪語されても」
妹「…ま、いいけどさ」
男「あとはパジャマだが」
女「あ、パジャマはきょーちゃんにジャージでも借りるので」
男「ノンノン! これを着てくれ!」
妹「!?」
女「………ワイシャツ?」
男「そう……俺の、お兄ちゃんのワイシャツだ…」
女「先輩のワイシャツですか? くんくん」
妹「においを嗅ぐなよ…」
男「それを着て、明日の朝俺を起こしてくれ。お兄ちゃん、妹がそれを着て
起こしてくれないと起きることができないから」
女「はぁ…そうなんですか。がんばります」
妹「納得すんなよ…」
女「ということは、普段はきょーちゃんが、これを着て起こしてるんですね」
妹「そ、そんなことあるわけないだろ!!」
男「そうだぞ。 土人がそんな格好してても全然嬉しくないし……な…って、土人、いつもの土着宗教メイクはどうした?」
妹「え? あ、そ、そりゃ、風呂に入ったらメイク落とすし?」
男「そ、そうか………なんか久しぶりだな」
女「かわいいですよねー。メイクしない方がいいのに。ていうか、髪も、肌も戻した方が似合うと思いませんか?」
妹「は、ハァ? な、なに言ってんの? つか、クソ兄貴の前でそういうこと言わないでくれる?」
女「それは…ええと『恥ずかしいからお兄ちゃんの前で褒めないでよ』ってこと?」
妹「言ったか? あたしが何時何分何秒地球が何回回ったときにそんなこと言った?」
女「えと、21時38分40秒くらい…地球がだいたい50億回くらい回ったときかなぁ」
妹「うぅっ…」
男「え、ええと、じゃ、じゃあ、そういうわけだから! 明日の朝は頼んだぞ! マイシスター!!」
女「ごめんねーベッド借りちゃって」
妹「いいけど…つか、ホントにそれ、寝巻にすんの?」
女「え? うん。洗濯してあるけど、なんか先輩のにおいがしていいかなって」
妹「うわぁ………マジでアレに惚れてんだ…」
女「うん、まじまじ」
妹「正直ひく」
女「そう? いい人だし、おもしろい人じゃない…ていうか、きょーちゃんこそ、それ、パジャマ?」
妹「……そうだけど?」
女「学校指定のジャージが?」
妹「…そうだけど?」
女「じゃあ、このベッドの隙間に落ちてた先輩ときょーちゃんの両方の匂いがするワイシャツは…」
妹「きゃぁーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!」
女「お、落ち着いて、落ち着いて? 近所迷惑になっちゃうよ? 先輩、心配して見に来ちゃうよ?」
妹「え、あ……う…ち、ちが、違う……そう、違うのっ」
女「ええと、『たまたま着るのがなくて、クソ兄貴のクソワイシャツをクソ寝巻代わりにしてただけだから!』…みたいな?」
妹「そうそれ! つか、あたし、そんなにクソクソ言ってねぇっ!」
女「ええと…じゃあ、タンスに入ってるショーツの半分以上がボーダーなのは?」
妹「……あ、あたしの趣味」
女「へぇ、兄妹共通の趣味なんだね~」
妹「そ、そうだけど? 悪い?」
女「仲良いんだね、兄妹」
妹「べ、別に、仲良くなんかないし! つか、見ててわかったっしょ?」
女「…仲良いんだね、兄妹」
妹「……な、仲良くないしぃ」
女「……はぁ、先輩の過干渉がイヤになって誤った高校デビューをしてしまったと?」
妹「だ、だって、ウぜーってもんじゃないし、わかるだろ!?」
女「うーん?」
妹「なにそのわかるんだけど同意しかねるみたいな顔」
女「だって、私、甘やかされるの嬉しいし。私一人っ子だから、うらやましいなぁって思うけど」
妹「そーっすか。言っとくけど、あたし一時期体重80あったからな? アレに付き合ってると同じ目に会うぞ?
……あのクソ兄貴が毎日カントリーマァムを食わせたせいで…今の体重になるまでどれだけ…」
女「いやーそれは、お兄さんに甘えきってたきょーちゃんも悪いでしょ?
それに体重が増えたくらい、先輩はどうでもよさそう」
妹「『丸々と太った俺の妹も丸くてかわいい』とほざきやがった…」
女「それが、ちょっと方向性を間違ったメイクと改造をしただけで…『こんなの俺の妹じゃないっ!』と」
妹「……まるで見てきたようにモノを言うな」
女「時間おしてるしねぇ…」
妹「これくらいファッションじゃん? いいだろ?」
女「ええと、女性の視点から見ても人外かなーって思う」
妹「フォローなし!?」
女「あー…なるほど、『お兄ちゃんなら変わり果てた私でも受け入れてくれる』って信じてたんだね」
妹「……そ、そういう風にみえる?」
女「いやでも、これショック大きいよ? 茶髪と日焼けならともかく…あのメイクはねー」
妹「やっぱダメ?」
女「ていうか、あれ、自分でカワイイと思ってやってるの?」
妹「そんなわけないじゃん」
女「だよね」
女「よろしい! 私に任せて!」
妹「…なにを?」
女「きょーちゃんと先輩を仲直りさせてあげる!」
妹「………マジ?」
女「うん! まじまじ! 仲直りしたいんだよね?」
妹「あ、あたしは……まぁ…それなりに………でも、兄貴は」
女「ううん、先輩だって、仲直りしたいに決まってるよ。だって、
あそこまで“妹”を求めるのって、やっぱり、きょーちゃんのことが好きなんだよ」
妹「そ、そうかな?」
女「うん! 任せて、未来の義妹のためにがんばっちゃうよ!」
妹「………義妹?」
女「うん?」
妹「え?…マジでアレと結婚とかしたいわけ?」
女「もち」
妹「えーっとさ、いいんちょ? やめときなって…身内が言うのもなんだけど、変態だし変態だし変態だよ?」
女「ふぅん」
妹「いや、『ふーん』って、あんたマジメに」
女「きょーちゃんが『あたしのお兄ちゃんを取らないで!』って言うなら考えてあげる」
妹「は、ハァ?」
女「言わない?」
妹「ハァ? い、言うわけないだろ? 何考えてんの? マジありえないし」
女「ふーん、そう。 じゃあ、頑張ろうね! 未来の義妹!」
妹「…あたしは、あんたが、なんでそこまであのクソ兄貴に惚れてるのか聞きたい」
女「うーん…話してもいいけど………時間が押してるからなぁ…」
男(むぅ…遅いっ……もう夜が明けて随分経つというのにマイシスターは何をしているのか…)
男(まさか…俺の部屋に来るまでの間に酔っ払いの運転するダンプカーにっ……心配だ…)
男(……ん?…足音が)
女「せんぱい? 起きてますか?」
男(来たな…マイシスター………ふふふ、お兄ちゃんたる者、そう簡単には起きんぞ…覚悟しておけ…)
女「失礼しますー…わ、まだ寝てる。寝てるよ」
男「ぐーぐー」
女「…なんていうか、ウソっぽい寝息だよね」
男「んぐっ…ぐーぐー」
女「さ、そろそろ、起こさなきゃ…ね?」
妹「お、お兄ちゃん…起きて」
男「ぐーぐー」
妹「お兄ちゃんっ……起きないと遅刻するからっ…」
男「うー…あと5ふんー…ぐーぐー」
妹「…きゃぅっ…お、お兄ちゃん? こっ…この手はなぁに?」
男「………そこに妹の尻があれば、さわってしまう……兄とは罪深いものだな…ぐーぐー」
妹「っ!!!………お、お兄ちゃん? 起きよ? なんか、あたし、右手がうずうずするっていうか…」
男「ふっふっふ…お兄ちゃんを起こしたければ、いつものように布団ダイブをしてくるがいいよ…ぐーぐー」
妹「……いいけど、あたし、体重減ったって言ってもそこそこあるよ?」
男「はっはっは…お兄ちゃんはお前の重さくらい受け止められ……って」
妹「じゃあ、行くよ! お兄ちゃん!」
男「え? な、なに、なんでおま………ぐぶふぉっ!!!!!」
女「完璧なエルボードロップだったね! 決まったね!」
妹「ありがと。 なんかもう、殴りたくて仕方なかった」
男「げほっ……おい土人…貴様、兄妹の朝のスキンシップを妨害するとはいい度胸…
……って、め、メイクはどうしたぁっ!?」
妹「なにそれ?」
男「なにそれって、あの、民俗学的に何らかの価値が見出せそうな土着信仰に基づく
謎のフェイスペインティングだよ!」
妹「やめた。飽きた」
男「飽きた…って、おま、い、一度やると決めたことは最後までやり通せって
お兄ちゃんいつも言ってるだろ!――って、あ、ちが」
妹「…うん、そうだったね、お兄ちゃん」
男「え」
妹「ね、お兄ちゃん…あたし……あたしさ、また、お兄ちゃんの、妹になってもいいかな?」
妹「…肌ももう焼かないし、髪も…とりあえず黒く染めようかなって思うんだけど」
男「お前…」
妹「あたし、戻れるかな? お兄ちゃんの妹に」
男「………バカ」
妹「あ…そ、そうだよね…今さら何言ってんだろ、あたし…」
男「お前が、俺の妹じゃなかったときなんてないよ」
妹「……おにいちゃん」
男「お前が土人の顔してても、お兄ちゃんに反抗的なことしても…ずっと、俺はお前のことを
妹だと思ってたさ」
妹「あ、あたしも、お兄ちゃんがパソコンの絵に話しかけてても、抱きマクラと食事とってても
お兄ちゃんのことお兄ちゃんだって、ずっと思ってた」
男「………おいで、マイシスター」
妹「お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃぁんっ!」
女「はい、そんなとこで…ちょっと待ったーーー!」
男「え」
妹「…?」
女「『今、大事なとこなんだけど』っていうのは、わかります。もち、わかってます。
でも私も大事なお話があるんです、先輩」
男「俺?」
女「はい。先輩、好きです」
妹「なっ!?」
女「…私と、お付き合いしてくれませんか?」
男「………え」
女「ふぅ…やっと、言えたぁ…」
妹「あ、あんた…このタイミングで?」
女「うん、ようやく、妹は私じゃないって、先輩に認めてもらえたしね。 ですよね、先輩」
男「あ、ああ…ごめんな、その、いろいろと」
女「いえいえ。それで、先輩、私、告白したんですけど?」
男「あ、うん…そうだな……いや、俺さ、両親いないし…妹の面倒も見なきゃいけないからさ…悪いんだけど」
女「にぃにぃ♪」
男「ふぁぁぁぁぁぁぁぁぁぅっ!?」
女「にぃにぃ…私も、にぃにぃといっしょがいいです」
男「うぁ…うぁうぁ…」
妹「ちょっ…いいんちょ?」
女「ねぇ…にぃにぃ…いいですよね? 私ももう妹みたいなものですし。ね? にぃにぃ?」
男「い、いいかも」
妹「って、このクソ兄貴! なに言ってんの!!」
女「ふっふー悔しかったら、きょーちゃんも『にぃにぃ』って呼んだらいいじゃない?」
妹「え?……に、にぃ…って、言えるか! そんなん言えるか!」
男「うーん、きょうもいいあさだなぁ…マイシスターズ!」
妹「え、なに複数形にしてるの? 『お兄ちゃんの妹は一人だけ』じゃなかったの? ていうか、いいんちょ、それでいいの?」
女「今は、まぁ、いいかなぁ…ほら、どうせ兄妹は結婚できないし。最後に勝つのは私かなぁって」
妹「……結婚するしないは、お兄ちゃんの自由だけど?」
女「ふぅん…お兄ちゃんの幸せより自分のワガママをとるんだ。きょーちゃんって、やっぱりかわいいね」
男「こらこら、二人とも平和な朝に争うのはやめないか…ごらん、きょうもカラスが生ゴミを」
妹「お兄ちゃんは黙ってて!」
女「にぃにぃは黙っててください」
男「ふぎゅぅ!?」
おしまい

