あやめ速報-SSまとめ-

女「知ってるよー、外が暗いんだもん」

男「普通は寝る時間だということも知っているか」

女「夜だもんねー」

男「また眠れないのか」

女「うん」

男「家でおとなしくしてろよ」

女「眠れない時は遊ばなきゃ損でしょー」

男「勝手に遊んでろ」

女「ひとりで遊ぶのはつまらないよ」

男「別の人と遊べ」

女「この時間みんな寝てるよ！」

男「俺だって寝たいんだよ！」

男「仕方がない。とりあえず中に入れ」

女「深夜に可愛い女の子を家に招き入れてなにをするつもりなの」

男「ぶっとばすぞ」

女「お邪魔しまーす！！」

男「静かにしろ」

女「何時だと思ってるんだ」

男「深夜だぞ」

女「そうだぞ」

男「わかったならいい」

女「ここが男くんの家……」

男「もう何度も来てるだろ」

女「一人暮らしにはもったいないお家だね」

男「一緒に暮らすか？」

女「ジュース飲んでいい？」

男「勝手に冷蔵庫開けんな」

女「わー、私が好きなジュースだ」

男「オレンジジュースが好きだね君は」

女「100%のやつ」

男「パッケージに果物の断面をかいていいのは100%だけなんだぜ」

女「ニュースしかやってない」

男「勝手にテレビつけんな」

女「深夜って面白い番組やってないよね」

男「なにかDVDでも見る？」

女「コンビニ強盗が女の子を誘拐して人を殺す映画がいい！」

男「あー、あれね」

女「何度も見てるけどね」

男「俺も好きだよ、あれ」

男「こんな時間だし音量控えとこう」

女「いつもこんな時間に悪いね」

男「慣れた」

女「迷惑かな。嫌かな」

女「この映画みたいに嫌なやつがみんないなくなればいいのにね」

男「嫌なやつを殺していくのは気持ちいいだろうね」

女「やっぱ今のなし、だめ」

男「なんで？」

女「殺される」

男「別に君のこと嫌だとは思っていないさ」

テレビ「ﾊﾞｷｭｰﾝ」

女「ひいぃ、怖い怖い」

男「怖いなら見なきゃいいのに」

女「ホラーって怖いのに見たくなるよね」

男「これ、ホラーなのかな」

テレビ「ﾊﾞｷｭｰﾝ」

女「ひいいいいい！」

男「ほらー」

男「あ、もうすぐ日が変わる」

女「あけおめ」

男「はいはい、メリークリスマス」

女「クリスマスじゃないぞ」

男「正月でもない」

女「今っていつだよ」

男「今は今さ」

男「映画も終わった」

女「もうこんな時間か」

男「帰りなさい」

女「眠く無いのに」

男「起きる時間になっちゃうよ」

女「そんなの人それぞれだもん」

女「散歩いこ、散歩」

男「外寒いじゃん」

女「一人で行っちゃうぞー」

男「いってらっしゃい」

女「ほんとに行っちゃうぞー」

男「はやく行けよ」

女「こんな可愛い子を深夜に一人で外に出させる気かバカヤロー」

男「それは確かにバカヤローだな」

女「ばーかばーか」

男「ばーかばーか」

男「結局外に出てしまった」

女「深夜に出歩くのってなんかいいよね」

男「不良みたいだね」

女「ああん？」

男「微妙だな」

女「昔はこの時間に目が覚めると、
　　起きているのは世界に自分だけなんじゃないかって思ったよ」

男「あー、わかるそれ」

女「いまは夜更かししてもわくわくしないよね」

男「だから俺は別に夜更かししたくないんだ」

女「私も」

女「あ、星が綺麗」

男「晴れてるな」

女「小さい時、こうやってよく星を見てたよね」

男「見てたっけ」

女「わかんない」

男「適当かよ」

女「もし見てたらロマンチックじゃん」

女「あっ」

男「どうした急に走って」

女「じゃーん」

男「クワガタ……？」

女「電灯のところにいました」

男「……」

女「じゃーん」

男「返してこい」

男「確かこの先に行くと川だったな」

女「この時期に泳ぐのは寒いって」

男「この時間は行くだけでも危ないね」

女「暗くて溺れちゃうよね」

男「いや、泳がないって」

男「やっぱり寒いな」

女「手をつないであげよう」

男「お前の手も寒いんだが」

女「寒いもの同士なんだから手をつなごう」

男「意味がわからん」

男「えっと、ここは商店街か」

女「わー、どこも閉まってる」

男「あたりまえだ」

女「なんか、こういうのいいね」

男「わかるよ」

女「昼間は賑やかなのに……ね！」

男「わかるわかる」

男「あ、ここが肉屋か。暗いと全然わからん」

女「うぎえー」

男「ど、どうした」

女「お腹すいた」

男「うぎえーってなに」

女「あ、ここの本屋さん。小さい時よく来てた」

男「俺も」

女「今じゃやってないんだね」

男「昼間はやってると思うよ」

女「そうなの！？」

男「潰れたわけじゃないから」

女「シャッター閉まってるのに」

男「夜だからね」

男「結構歩いたね」

女「あ、コンビニ」

男「24時間営業か。偉大だな」

女「私たちみたいだね」

男「24時間はごめんかな」

男「深夜のコンビニってお客さんいないんだね」

女「私たちだけだ」

男「こんな時間だもんなぁ……」

女「ふたりっきりだね」

男「ちょっと待って、店員さんが見てる」

女「アイスくおーぜ」

男「この時間にか」

女「美味しいからね」

男「美味しいなら仕方ないね」

女「美味しい」ﾍﾟﾛﾍﾟﾛ

男「もっときれいに食べな」

女「次はどこに行こうかな」

男「まだどこか行くのか」

女「夜はまだまだこれからだぜー」

男「もう1時半なんだが」

女「そこに公園があります」

男「あるね」

女「うえええい」

男「おい待て、走るな……あ、戻って来た」

女「カップルがいた」

男「よしよし可哀想に」

女「むー、私は公園に行きたい気分なのに」

男「仕方がないね」

女「この先にも公園があったはず」

男「マジかよ」

女「行くぞ！」

女「先に確認してきて」

男「えっ、なんで」

女「さっきみたいなことしてるの見たくないから」

男「さっきなにを見たんだ……」

男「見てきた」

女「どうだった？」

男「カップルどころか誰もいないぜ」

女「うえええい、突撃いいい！」

男「ブランコか。懐かしいな」

女「こうやって小さい時、靴を飛ばして遊んだよね、えいっ」

男「そんなことしたっけ」

女「とってきて」

男「まだ眠くない？」

女「うーん、いつも通り」

男「眠くないのね」

女「すべり台で遊んだら眠くなるかも」

男「いくらでもすべってこい」

女「うえええい」

男「すべり台逆走すんな」

女「なんで？」

男「危ないじゃん」

女「私は自己責任のもと、すべり台に逆らっています」

男「あとは他の人に迷惑がかかるからかな」

女「今はいないよ」

男「君が怪我したら俺が迷惑だ」

女「告白？」

男「違うかな、ちょっと」

女「ちぇー」

女「なんで眠くないんだろう」

男「昼間寝てるからじゃない？」

女「そうでもないんだよなぁ」

男「不思議だね」

女「24時間なにかできるっていいけどね」

男「ひとりは嫌だな」

女「うん。これからもよろしく」

男「もうすぐ丑三つ時だね」

女「お化けが起きる時間だ」

男「入れ替わりで寝とこう」

女「みんなそういう考えだから、お化けを見る人って少ないのかも」

男「見なくていいかな、俺は」

男「なんで墓地に来てるの……」

女「運動会にまじろうと思って」

男「わけわからん」

女「……怖いね」

男「マジでなんできたの」

女「お墓は昼間にくるべきだね」

男「夜だと怖いもんね」

女「今度昼間に一緒にこようね」

男「わざわざくる必要はないんじゃないかな」

女「最近、よく男くんのとこに訪ねてくじゃん？」

男「週2くらいで深夜に訪問してくるよね」

女「私が……こない時さ」

男「うん？」

女「どうやって寝てるの」

男「えぇー……普通に、すやーって」

女「うーん、わかんないな」

男「どうやって寝るかなんか考えたことなかったな」

女「私もすやーってしようとしてるんだけど」

男「眠れないのか」

女「私、お母さんと2人暮らしだったんだよ今まで」

男「そうだったね」

女「だけどお母さんが死んじゃってさ」

男「えっ」

女「今はひとりぼっちなんだよね」

女「1人になったらなんだか夜が不安になって眠り方を忘れてしまった」

男「なるほど……」

女「だから1人暮らしなのにすやーって寝れる男くんが羨ましい」

女「夜は悲しい」

男「いつも楽しそうだけど」

女「ふたりだから」

男「そうか嬉しいな」

女「だから、これからも一緒に夜に遊んでください！」

男「告白かな？」

女「違うかな、少しね」

女「ねーねー、逆上がりってできる？」

男「唐突だな」

女「逆上がりが見たい」

男「残念ながらできない」

女「私もできない」

男「どのみち、この公園には鉄棒がないな」

女「ほんとだ、ないじゃん。ばんざーい」

男「さすがにそろそろ帰ろうか」

女「もうすぐ朝だしね」

男「朝なら寝れる？」

女「うーん、眩しいとわからない」

男「眠れない日はどうするの？」

女「たおれる」

男「深刻な睡眠不足だね」

女「また明日遊ぼうね」

男「明日も深夜にくるのか」

女「もう一度言うけどさ、これからも夜に一緒に遊んでね」

男「一緒に遊ぶんじゃなくて、一緒に寝るんじゃだめかな」

女「えっ」

男「ふたりなら寝れるでしょ？」

女「……告白？」

男「そうさ」

女「……じゃあ、明日寝に行くよ」

男「すやーってできるといいね」

女「おやすみなさい」

男「おやすみなさい」

女「あ、そうだ」

男「ん？」

女「たまにはまた、深夜に散歩しようね」

男「たまにはいいね」

おわり