男「え、いやあの、どちらさまですか」
女「これから死のうって人に私が誰かなんてどうでもいいじゃないですか」
男「ふむ」
元スレ
男「あぁ、死にてえ……」 女「死にましょう!」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1420435801/
女「さあ死にましょう!」
男「え、えっと」
女「どうせいつか死ぬんです!さあ!」
男「いや、死にたいって言ってもな、口癖のように言っているだけだ」
女「人間はいつもそうですよね」
男「本当に死ぬ気なんかないぞ」
女「意気地なしなんですね……」
男「なんか違う」
女「悔しかったら死んでみろ!」
女「ここ数日ずっと死にたいって言っていたじゃないですか」
男「もしかして数日前から後をつけてきてるのはお前か」
女「ばれましたか」
男「ずっと気配を感じていたからな」
女「独り言多かったですよ」
男「ストーカーめ」
女「大体なんで死にたいなんて言っていたんですか?」
男「彼女が死んだんだ」
女「そりゃ死にたくもなりますね」
男「そうだろそうだろ」
女「どうぞ」
男「俺意気地なしだからなぁ……」
女「彼女さんの事は好きだったんですか?」
男「あたりまえでしょう」
女「好きな人が死んだわけですか」
男「そうなんです」
女「そりゃ死にたくもなりますね」
男「本当に良い人だったよ」
女「ご冥福をお祈りいたします」
男「向こうで独りだと寂しいだろうなあ……」
女「死にます?」
男「やっぱり俺も死のうかなあ……」
女「それがいいですよー」
男「よほど俺に死んで欲しいんだなお前」
男「やっぱりお前が誰か気になる」
女「私は今死んだ方がお得だっておすすめしてるだけなんだけどなぁ」
男「お得?」
女「いま死んだらあなた天国に行けますよ」
男「は?」
女「いまがお得です」
男「そりゃ死んだら天国に行くだろ」
女「やだなぁ、地獄の場合もありますって」
女「あなたが天国に行くにはこのタイミングしかないんです」
男「なんかの宗教かよ……」
女「違いますって」
男「じゃあお前誰だよ」
女「死神です」
男「死神て」
女「あー!信じてませんね!!」
男「なら証拠を見せてみろ」
女「えーっと、ほら、これ!」
男「なんだそれ」
女「地獄のパスポートでーす」
男「地獄のパスポートて」
男「でっかい鎌とか持ってないの?」
女「私か弱いから小さい鎌なんですよ……」
男「その小さい鎌は?」
女「小さいから落っことしちゃいました」
男「仮にお前が死神だとして何が目的だ」
女「あなたの魂を回収することですね」
男「俺を殺すのか」
女「そういうのは駄目なんですよねー、死んだところを回収しないと」
男「まわりくどいな」
女「いつも苦労してるんですよまったく」
男「いま死ぬと天国に行ける……とは?」
女「おっ、興味を持ってきましたか!」
男「君が商売上手なものだから」
女「えへへ」
女「単刀直入に言いますね、あなたはこのままだと地獄に堕ちる運命なんです」
男「えぇ、地獄ってあの」
女「鬼とかがいるところです」
女「あなたは彼女を失った悲しみでこの先自暴自棄になります」
男「なりそう」
女「いろんな人に迷惑をかけるんです」
男「かけそう」
女「そんなことしちゃだめです」
男「ごめん」
女「そういうことをすると死後、地獄に堕ちちゃうんです」
男「死神は未来がみえるのか」
女「少しだけ」
男「その運命って変えられないのか?」
女「とても難しいですね」
男「そんなの聞いたら地獄に行かないように努力すると思うけれど」
女「そんなに簡単じゃないんですよ、地獄に堕ちてもいいやーって思っちゃうんです」
男「うーむ」
女「そんなあなたにグッドニュース」
男「聞くしかないな」
女「いま死ぬと天国行き!」
男「怪しーい」
女「ほんとですってばぁ!」
男「うわっ、つばとんだ」
女「ごめんなさい」
女「とにかくまあきいてください」
男「きこうじゃないか」
女「いまの段階ならあなたの人生は総合的に悪くないんです」
男「そうかなぁ」
女「他人に迷惑をかけていないという点では評価が高いですよ」
男「というよりあまり他人と関わっていなかったからなぁ」
女「そんなあなたならいま死んだら天国に行けるはずです」
男「話はわかった」
女「どうしますか、死にますか!?」
男「少し考えさせてくれよ」
女「一日待ちましょう」
男「たった一日かよ」
女「あなたの死後の行き先が天国なのは実は明日までなんです」
男「えぇ」
女「あなたの人生が悪くないとはいっても決して良くもありません」
男「わかってるけども」
女「逆に他人のためになることも全然していませんのでね」
男「やっぱ他人には親切にしておくべきだったなぁ」
女「それであなた、いま家族に黙って家を出ていますよね」
男「電車で遠くにきてしまっている」
女「それはよくない、非常によくないです」
男「よくないかぁ」
女「家族はとても心配していますよ」
男「そうかもなあ」
女「あなたが彼女さんの後を追うのではないかと思った家族は警察に捜索届を出したようです」
男「えぇーっ、もう出されたのか」
女「お友達などにも知られて大掛かりな捜索が始まっているようです」
男「みんなに迷惑かけちゃったなぁ」
女「地獄に堕ちろ!」
女「せっかく天国に行けるはずだったあなたのポイントは下がる一方です」
男「それで明日には地獄行きの運命に……」
女「取り返しがつかなくなりますね」
女「あなたはとてもラッキーなんですよ」
男「どこがー」
女「死神の私がランダムに選んだあなたにお得な情報を与えているんですから」
男「死神って魂を回収する相手をランダムで決めるのかよ……」
女「いや、えっと」
女「会社みたいなものなんですよ」
男「会社?」
女「何人もの死神が上司に一定期間ごとに魂を持っていくノルマをかせられるんです」
男「大変なんだなぁ」
女「まったくもう、本当に大変なんですからね」
男「それでなんで俺は選ばれたんだ」
女「ノルマのために現世をふらふらしていたらあなたを見つけたんです」
男「ほう……?」
女「死にそうな人をさがしていたんです」
男「俺は死にそうだったのか」
女「いえ、120歳まで生きそうなくらい幸せにみえました」
女「その時のあなたは彼女さんとイチャイチャしながら街を歩いていました」
男「それって……」
女「一昨日のことですね」
男「彼女が死んだ日……」
女「あなたたちは本当に幸せそうでした」
男「うん、幸せだった」
女「そんなあなたたちを見て思ったんです」
男「羨ましいなあって」
女「違います、二人とも死んでしまえって」
男「えっ、ひど」
女「死神は人間のカップルなんか羨ましくありません」
男「彼氏とかいる?」
女「死ね、死んでしまえ!」
女「そのすぐ後でした、あなたの彼女さんが交通事故で亡くなったのは」
男「……」
女「もちろん、私がなにかしたわけじゃありませんよ」
男「わかってるよ」
女「けれども直前で心の中で死ねとつぶやいたのがなんだか申し訳なかったんです」
男「それで俺についてきてたのか……」
女「せめてものお詫びにあなたが死ぬときは天国に連れて行ってあげようと思ったんです」
女「人が死ぬと体から魂が離れます」
男「ふむ」
女「それを回収して私達は上司に持っていくんです」
男「その後で生前の評価に応じて行き先が決まるのか」
女「はい、私も具体的な事は専門じゃないのでわからないのですが」
男「それでいま俺が死ねば天国に行けると」
女「それは確実です」
男「それじゃあ話を戻すが一日待ってくれ」
女「わかりました」
男「それじゃあ」
女「家に帰るんですか?」
男「いまさら帰れねー」
女「ばーか」
男「死神ちゃんはやっぱりついてくるのかな?」
女「あなたが死ぬまでは」
男「恋人みたいだな」
女「殺しますよ」
女「そんなことより、今夜どうするんですか」
男「野宿だああ!」
女「どこかあてがあるんですか」
男「そこの喫茶店を進んだ先に公園がある」
女「公園……」
男「大きい土管が転がってるからその中に入ろう」
女「狭いですね」
男「ほら、はやく入りなよ」
女「仕方ないですね、離れられないので」
男「恋人みたいだな」
女「あなたは彼女と土管で寝てたんですか」
女「もっと奥に行ってください」
男「これが限界」
女「体が密着してしまいます」
男「あたたかいな」
女「変なこと考えないでくださいよ、ばーか」
男「俺には好きな彼女がいるのでそんなこと考えません、ばーか」
女「雨が降ってきましたね」
男「ナイス土管!」
女「うーむ、むかつく」
男「一晩この雨にうたれていたら死んでいたな」
女「それは困ります」
男「あれ、死んだ方がいいんじゃないのか?」
女「一日待つ約束なので」
男「真面目なんだな」
女「オマケに可愛い」
男「しかし彼氏はいない」
女「やっぱり死ね」
男「ジョークだよ」
女「そんなに言うならあなたが彼氏になります?」
男「残念、俺にはもう彼女がいます」
女「ジョークですよ」
男「おい、起きろ朝だぞ」
女「はっ、寝てしまった!」
男「死神でも寝るんだな」
女「寝顔を見られてしまった」
男「可愛かった」
女「くそー!殺してえ!!」
女「今日はどこに行くんですか」
男「死ぬかどうかを考えるためにある場所に行かなきゃいけない」
女「その場所とは」
男「俺と彼女の思い出の場所でーす」
女「行きたくないなあ」
男「バスに乗るのなんて久しぶりだ」
女「遠足みたいですね」
男「死神も遠足するのか」
女「大人になると仕事を始めますけど基本的に死神は普通に生活してますからね」
男「死神の世界だとバナナはおやつに入ってた?」
女「バナナはあんまり好きじゃないです」
男「そ、そうか」
女「リンゴの方が好きです」
男「えるしっているか」
男「着いた」
女「長かったですね」
男「ここはどこでしょうか」
女「馬鹿にしないでください、わかります」
男「ですよね」
女「しゅいぞくかん」
男「噛んだ」
女「噛んでない」
男「この水族館で彼女と初めてのデートをしたんだ」
女「素敵ですね」
男「彼女がサメを好きだったんだ」
女「私も好きですよ、かっこいい」
男「いつか彼氏と来るといいよ」
女「まったくこの人は本当にいちいち」
男「ジンベイザメやっぱりでかいな」
女「かっこいい……」
男「水槽が割れたら食べられちゃうな……」
女「大丈夫です、私の方が強いので」
男「心強い」
男「ん?あいつは……」
女「誰ですかあのイケメンは」
男「ちょっとした知り合いかな」
イケメン「もしかして男か?こんなところで奇遇だな」
イケメン「ん!?てめえ……もしかしてその子、お前の女か?」
男「ちげーよ」
女「失礼な」
イケメン「そうか、それならいいんだけどよ」
男「彼女が死んですぐに相手を変えるわけがないだろう」
イケメン「それをきいて安心した」
男「彼女を守ってやれなくて悪い」
イケメン「俺に謝ってどうする」
男「……」
イケメン「子供をかばって死ぬなんて彼女らしいじゃねーか」
男「俺がついていながら……」
イケメン「彼女は俺じゃなくてお前を選んだんだ、最後まで幸せだっただろうよ」
男「イケメン……」
男「あ、お連れの美女は?」
美女「はじめまして」
イケメン「いやいや!こいつとは全然そういう関係じゃないぜ」
美女「姉です」
男「あれ?お前に姉ちゃんなんていたっけ」
女「……」
イケメン「そんなことよりも、こんなところで会ったのもなにかの縁だ」
男「おう?そうだな」
イケメン「お前には話しておこうと思う」
男「なんだ?」
イケメン「ここでは話しずらいから外に出よう」
男「なんだ、話って」
イケメン「へへ、悪いな、実は俺の方が先に彼女のとこに行きそうなんだ」
男「え?それってどういうことだ?」
イケメン「病気でよ、俺もうすぐ死ぬんだ」
男「嘘だろ……?」
イケメン「彼女を最近失ったお前にそんな空気の読めない冗談を言うと思うか?」
男「じゃあ本当に……」
イケメン「まあ覚悟はできてんだ、そう悲しまないでくれ」
男「……最後に話ができてよかったよ」
イケメン「葬式くらい出てくれよな、それじゃ」
男「あっ、えっと……!」
イケメン「あーそうそう!お前はしばらくこっちくるなよ!」
男「……」
イケメン「彼女を巡る第二ラウンドはしばらく先だ、お前はしっかり生きろ」
男「イケメン……」
イケメン「じゃーな」
男「行ってしまった」
女「あなたももうすぐ死ぬかもしれないって言わなかったんですね」
男「未定、だからな」
女「あなたが地獄に行ったら第二ラウンドはできませんね」
男「彼女がとられる、困った」
男「いやー、それにしてもイケメンにあんな綺麗なお姉さんがいたとはな」
女「年上好きですか?」
男「えっ、いやそういうわけじゃないけれど」
女「ふーん」
女「私は嫌いですねあの美女」
男「おいおい、なんてこと言うんだ」
女「ああいう、しれっとしたところが大嫌いなんですよ」
男「ん?」
女「昔っから……」
男「昔?」
女「あの美女、イケメンさんのお姉さんなんかじゃありませんよ」
男「え、けど姉だって」
女「私の姉です」
男「えぇっ!?」
女「イケメンさん、病気だとか言っていましたね、それでついているんでしょう」
男「あの美女、死神だったのか……」
女「イケメンさんの魂を回収するつもりですね」
女「姉です、だなんてこちらを見ながら……あぁむかつく!」
男「仲が悪いのか」
女「昔から意地悪をしたり自慢をしてくるので嫌いです」
男「自慢ってたとえば」
女「リンゴの皮向きが上手いからってなんなんですか!」
男「お前むけないのか……」
女「いつも姉がリンゴをウサギにしていたのでウサギも嫌いになりました」
男「関係ないウサギかわいそう……」
女「あの様子だと、イケメンさんに自分が死神だということを伝えてたみたいですね」
男「伝えない場合もあるのか」
女「病院とかに張り込んで死んだ人が出たら魂をサッと回収したりとか」
男「それらくじゃん!」
女「みんな同じことを考えるから結局競争になっちゃうんですよ」
男「どこの社会も同じだなあ」
女「むしゃくしゃします!なんか気分が晴れることをしてください!」
男「えっと……じゃあ走ろう!」
女「はい?」
男「次に行く予定の場所はここから近いんだ」
女「だから走ろうってわけですか」
男「ついてこれるかな?」
女「侮らないでください、姉以外にかけっこで負けたことないですよ」
男「よっしゃ、うおおおおおおおおおおおお!」
女「ちょっと、なんで叫ぶんですか!」
男「走りながら叫ぶとなんか青春っぽいだろ!」
女「みんな見てますよおお」
男「青春はまわりを気にしないんだああああああああああああ」
女「うおおおおおおおおおおおお」
男「つ、着いた……ここだ……はぁはぁ」
女「少し…………青春しすぎましたね」
男「お茶持ってるけど飲むか?」
女「いただきますが、もらうばかりでは癪なので代わりに間接キスをあげましょう」
男「いや、紙コップあるけど」
女「はやく出してください!」
女「ところでここはどこですか?」
男「そっちの方向見てみ?」
女「あ、学校」
男「俺と彼女、それとイケメンとかが通っていた高校だ」
女「青春スポットですね」
男「死ぬかどうかを考えるために彼女との思い出の場所をまわろうと思った」
女「さっきの水族館もそうでしたね」
男「何か答えが出ると思ったんだが」
女「出ませんか」
男「よし、中に入ろう」
女「捕まりますよ」
男「もうみんな下校を始めた頃だ」
女「だからって……ねぇ」
男「何食わぬ顔で堂々と行けば案外入れるもんだ」
女「そりゃ私は現役女子高生なみに可愛いですけれど」
男「現役女子高生なみに可愛ければ大丈夫」
女「急ぎますか」
女「ほんとに入れましたね」
男「そうだろうそうだろう」
女「あ、見てくださいこの壁」
男「なんだなんだ」
女「相合傘が落書きされています」
男「あ」
女「けしからんですね」
男「それ書いたの俺と彼女だ」
女「カップルならなんでも許されると思うなよ」
男「反省してます」
男「図書室だ、懐かしいな」
女「何か思い出でも」
男「昼休みはいつもここにいた」
女「陰キャラですね」
男「本が好きなんだ」
女「私は嫌いです」
男「えぇ、なんで」
女「姉が読書家なので」
男「それは別にいいじゃんか……」
男「彼女もいつも昼休みに図書室にいた」
女「陰キャラカップルですか」
男「そのうち顔見知りになって挨拶をするくらいにはなったんだ」
女「ほー」
男「そんな関係からしばらくして屋上に呼び出されて告白された」
女「うわああ、羨ましい羨ましい、どうせ図書室でも同じ本を取ろうとして、
手が重なって、互い照れながら顔を赤くしたりなんかして
二人とも好きだってことはわかっているのになんだかそれを確かめるのが怖くてみたいな」
男「何言ってんだお前……」
男「そんなわけで屋上にやってきました」
女「見渡しがいいですね」
男「四階建てだからなー」
女「ここで彼女さんに告白されたんですか」
男「あの、角の場所で」
女「青春ですね」
男「告白されて返事をして、その日、彼女が彼女になったんだ」
女「幸せ……だったんですね」
男「好きな子と屋上で二人きりだなんて幸せに決まっている」
女「今は私と二人きりですいませんね」
男「告白する?」
女「ばーか」
男「俺、決めたよ」
女「今でも、死にたいですか?」
男「彼女が死んでからずっと、この世に絶望していて、
彼女がいない世界はいらないと思っていたから
正直今でも、死にてぇって思うよ」
女「今死んだら、天国に行けます」
男「俺は……」
女「どうしますか、死にますか?」
男「俺は…………」
男「俺は死なない」
女「今死なないとあなたは死後に地獄に行く運命ですよ?」
男「それでも……死なない」
女「天国にいる彼女さんと二度と会えなくなりますよ」
男「それでも、彼女は俺に生きろって言うと思う」
女「……イケメンさんに彼女さんとられちゃいますよ」
男「俺が図書室で彼女と出会う前から、幼馴染のイケメンは彼女に惚れてた。
元々俺が横取りしちゃった感じだしな」
女「それでいいんですか?」
男「イケメンは恋敵だったが悪いやつじゃない」
女「そう……ですか」
男「俺は生きる」
女「本当に本当に今死にませんか?」
男「死なない」
女「そうですか………………ばーか」
女「仕方ありませんね」
男「ノルマの役に立てなくて悪いな」
女「ほんとですよ、まったく」
男「それじゃあお別れかな」
女「今度はもっと死にたがっている人を見つけなきゃ」
男「頑張れよ」
女「まぎらわしいので、もう二度と、死にたいなんて言わないでください」
男「了解した」
女「さようなら」
男「色々ありがとう、元気でな」
女「あなたこそ、死んだらつらいつらい地獄ですので鍛えておいてください」
男「俺陰キャラだからなぁ」
女「ばーか」
男「お前もはやく彼氏つくって水族館デートでもしろよ」
女「本当に殺しますよ」
数日後、あの世
美女「あら、久しぶり」
女「むっ、これはこれはお姉さま」
イケメン「美女から話はきいてたが本当にあんたも死神だったのか」
女「あ、イケメンさん」
美女「女、魂を回収し損ねたそうね」
女「ほっといてください」
イケメン「あんたがついていたってことは男も死にそうだったのか?」
女「はい、結局死にませんでしたけど」
イケメン「?そうかよかった」
女「そういえばイケメンさん、男さんから伝言です」
女「彼女さんをよろしくと」
イケメン「あいつ……」
女「あの時死んでいれば天国にこれたのに……」
イケメン「え?それはどういう……」
美女「ふふふふ」
女「なにがおかしいんですか」
美女「あんたは昔からポイントの計算が苦手なのよね」
女「計算?」
美女「忘れたの?死因が自殺のだと、多くの場合ポイントが激減するのよ」
女「あっ!そ、そういえば」
美女「あの子のポイントのぎりぎりさだと……」
女「私はなんてことを……」
美女「あんたの言葉にのっていたらあの子、今頃地獄に堕ちているわね」
現世
男「くそ……いきなり無理をして工事系のバイトなんかするんじゃなかった」
男「一日働いただけでへとへとだ……」
男「けれど地獄にそなえて鍛えなければ……」
女「ほんとに鍛えてるんですか、ばかですね……」
男「えっ」
女「数日ぶりですね、死神です」
男「えぇーーーっ、あの時自殺していたら地獄に堕ちていた!?」
女「本当にすいません!」
男「俺は一体何を迷っていたんだ……」
女「本当にすいませんんん!!!」
男「死神失格じゃないか……」
女「はい、失格になりました」
男「えっ」
女「上司から想像を絶する説教をされた後、ペナルティとして無期限で現世に落とされました」
男「よくわからないが、それって……?」
女「しばらく普通の人間と変わらなくなります」
男「それって大丈夫なのか」
女「大丈夫じゃないです、面倒をみてください」
男「公園の土管くらいしか提供してあげられないぞ」
女「こんな可愛い女の子にひどい……」
男「ということは……俺が地獄に堕ちるのはどうしても避けられなかったわけか」
女「ところがそうでもないんです」
男「えっ」
女「これまた計算を間違えていて本当に申し訳ないのですが」
男「しっかりしてくれ」
女「私達死神、つまり現世のものではないものが人生に干渉した場合を考慮していませんでした」
男「どういうことだ?」
女「つまり、あなたの運命も変わってきているんです」
男「おお!!」
女「頑張り次第で天国へ行く可能性もあるってことです」
男「せいぜい世のため人のため頑張るよ」
女「頑張ってください」
男「ばかにしてる?」
女「いえ、そういうところは好きですよ」
男「あ、笑った、かわいい」
女「ばーか」
男「ばかって言ったじゃん」
死神と出会わなければ言われたように
俺は自暴自棄になって、ろくな人生を送らなかったんだろう
しかし、今はどうやら運命も変わってきているらしい
今までほとんど周りと関わりを持たなかった俺だが、
他人のためになるようなことを生きている間にしてみたくなった
それが結果的に死神が言うところのポイントとやらを稼ぐことになるだろう
天国にいけるといいな
イケメンに彼女がとられないか心配だが
急いで行くと怒られて愛想をつかされるかもしれない
死神はペナルティが終わった後、
今度こそ姉を見返してやるんだと張り切っている
といっても、期間が未定なのでしばらくは仲良くしていくつもりだ
長くなったがこれで俺の人生で最大の決断の話は終わり
~おしまい~
181 : 以下、\... - 2015/01/05 16:49:14.04 pI+G4G0F0.net 87/88ここまで読んでくれた人がいたらありがとうございました!
またそのうちスレを立てさせてもらうかもしれません
実は最近作ったブログの宣伝になるかと思い書きました
http://namakemono0308.seesaa.net/
出来立てで中身が薄いですが、心が広い方はそちらの方も覗いてみてください
以上、星秋でした!
190 : 以下、\... - 2015/01/05 17:08:08.43 5+0W2Bvk0.net 88/88>>181
おもしろかったよ
また次も書いてくれ