?S県K市 株式会社 TEA 技術部?
平社員「おはようございまーす」
始業15分前
同期男「おはよっす、相変わらず寝ぼけた顔してんな。」
平社員「余計なお世話だ。そして寝癖全開のお前にだけは言われたくない。」
私物を壁際のロッカーに放り込み、同期男、後輩男、後輩女の座る長方形テーブルの端に座る。
平社員「あれ?主任まだ来てねーの?」
後輩男「あっ何か主任と係長達みんな課長に呼ばれてどっか行きました」
後輩女「何ですかねー?最近退職者多いからその関係ですかね?」
平社員「ん?何にしろ嫌な予感しかしないな…」
始業5分前。ほとんどのテーブルの席が埋まる。
空いているのは係長と主任の席だけ
始業のチャイムと共に奥の会議室の扉が開き、上司達が流れ出てきた。
主任「お待たせー、はーいじゃあミーティング始めるよー」
書類の束をトントンと整えながら主任が席についた。
同期男「で、主任なんの話だったんですか?」
主任「ん?あぁさっきの?あれ期の目標の話。また移動中話すわ」
主任「んじゃま、まずは今節の予定確認しちゃお。」
俺たちの仕事は節と月と期で構成される。
1節 5日、1ヶ月 3節、1期 4ヶ月だ。
通常期だと1ヶ月 15日出勤になる。
但し、出勤中は24時間拘束だ。
節外でも会社の命令で研修や訓練があったり、自己啓発もあったりする。
まぁ主業務は何をするかと言えば単純に
『戦争』
だ。
元スレ
平社員「今月の目標は防衛線の突破か、キツイな」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1409935579/
主任「はい、裏直からの申し送り。
いつも通り最終確認は現場でやるから
簡単に読み合わせね」
主任が各自にレジメを配る。
後輩女「うわぁ泥沼…退職者二人ですね」
後輩男「えっ通信係さんと狙撃係さんが退職!?」
平社員「はいはい二人共私語は控える。まず主任の話聞こうな」
そうは言ったが、俺も知ってる二人の退職は正直ショックだった。
主任「見ての通りなんだけどな。同期男、裏直の業務報告読み上げて。」
同期男「えーと、先節に俺らが押し上げた当社シェアが先方、
第2技術部 営技課2係他により約400m戻された。」ペラッ
同期男「当社 第3技術部 技術課を6班投入するも
退職者 8名、労災 12名(内休業 4名)。
当該ラインを後退させ工数を集中させることで現状を維持」ペラッ
平社員「って、現状維持できてないじゃん。」
先節の苦労が水の泡になった事実は若干頭にきた
後輩女「まぁまぁ」
同期男「相手方 営技課はOJTレベルが高く、報連相も綿密。
全員との名刺交換も完了できず現況に至る。
ってなんだこりゃ」ポイッ
主任「ということで、これで引き継ぎまーす」
全員「え?」
平社員「マジすか?あっち営技ですよ、
ウチら技術課じゃ相手にならないんじゃ…」
後輩男「営技課ってそんなにデキるんですか?」
同期男「デキるも何も営業のステルス性と技術の実務力持ってんのよ」
後輩女「各社の稼ぎ頭ですよね。研修で習ったじゃない」
後輩男「でも名刺交換すらもできなかったなんて…」
主任「まぁ検討も調整もして無いことを悩んでも仕方ない。
ツール確認して移動準備に入るぞ」
主任は全員のレジメを回収し立ち上がった。
全員の視線が俺の方を向いている。
平社員「???」
後輩女「安全呼称、平社員さんの日ですよ」
平社員「あぁそっか。では。」
平社員「今節も安全作業でお願いします!」
全員「お願いします!!」ビシッ
主任「うーし、じゃあツール着けたら準備室集合な。30分後、遅れんなよ。」
更衣室 ツールロッカー前
廊下を出て更衣室に移動する、移動前でざわつくロッカーでツールを身に着ける。
身体
カーゴポケットの付いたズボンを履き、ホルダー付きベルトで締める。
ブルゾンの上に強化繊維で伸縮性の悪い防弾ベストを着込む。
この素材の動きにくさは改善提案を書こうと思うがいつも出せず仕舞いだな。
頭
『端末』と呼ばれるヘルメットを被る。
手にはコントローラを装着する。
端末をブートしセットアップを確認する。
端末の液晶シールドに各業務アプリが表示される。
平社員「おーい後輩女。相互安全チェックするぞー」
後輩女「はい、ち、ちょっと待って下さい。」
主任を頭として原則5名のチームで、平同士はコンビを組み相互扶助する仕組みだ。
大概は若手と中堅の組み合わせが多い。
後輩女「お待たせしました。お願いします。」
平社員「うん。じゃ、まずは。液晶表示良し」
後輩女「よしっ」
平社員「社員ID確認」
液晶越しの後輩女の上に表示が出る。
『株式会社 TEA 営業3部 技術課 2班 後輩女
024538 顕著な異常無し』
平社員「よし」
後輩女「よしっ」
味方識別の為、所属、氏名、社員番号と
健康管理の為にバイタルデータが表示される。
平社員「メール送受信確認」
「連絡、テスト」と極小さい声で呟き、コントローラのボタンでアドレス帳展開。
女を選択し送信ボタンをクリックする。
声帯の振動を広い、文字に起こすシステムだ。
後輩女から同じ文章の受信確認。
平社員「よし」
後輩女「よしっ」
他にも内線通話、マップアプリ、目標管理アプリ、タスクアプリを一通り確認し相互安全チェック完了。
平社員「じゃあ行くぞ。」
入ってきた入り口の逆側の扉を出る。
一回り小さいロッカーの並ぶ部屋に入ると、端末の自動認識でロッカーがターゲットされる。
平社員「021144、平社員、装備受領」
端末『業務状況:従事中、装備携帯:許可』
端末とロッカーの通信認識と声紋認証で鍵が開く
仕事道具を手に取り、ホルダーとベストに予備弾倉を入れていく。
端末
『ライフル…装填:0発、予備弾倉:30発×6ケ』
『サブアーム…装填:0発、予備弾倉:20発×3ケ』
残弾表示の正常作動を確認しロッカーを閉じた。
?連絡車発着ホーム?
『各班所定の位置に整列して下さい、各班毎…』
ホームに出ると液晶に文字が流れる。分かってるわウザったい。
すでに他の班は集合し終わっているようだ。
主任「はい、平社員と後輩女 2分遅刻?」
平社員「わぁ厳しい。でも時計読み合わせしてないからノーカンっすよ。」
後輩女「わ、私がモタモタしてたので、平社員さんは悪くないです。ゴメンなさい。」
同期男「まぁ早く並べよ、係長こっち見てんぞ。」
後輩女「あ、はい、ゴメンなさい。」
後輩男「ぷぷっ」
後輩女「何よ?」ギロッ
端末『1分45秒後 連絡車到着予定』
主任「うし、全員装備最終確認」
同期男は支援火器、後輩男は通信機と短機関銃、後輩女はスナイパーライフル、俺はアサルトライフルを各自確認する。
備品支給の庶務課が配属されている現場なので装備統一の必要もない為、全員が専門火器を装備している。
後輩女「あーカールツのスコープ欲しいー」
後輩男「もっと残業して残業代で買えば?」
同期男「ほら喋ってんじゃねぇ来たぞ」
ホームに4台連なって連絡車が滑り込んでくる、重苦しい扉がやかましく開く。
主任「全員乗車ー」
一班の奴らから先に乗り込んで行く
一班の一番後ろにいる男に軽く会釈をする。
先輩男「よぉ平社員久しぶり。今節も宜しくなー」ニコッ
平社員「おはよーごさいます、こちらこそー」
同じ直なので、しばしば顔を合わせる。
進捗の悪い現場では応援してもらったりと、尊敬できる先輩だ。
彼は1班の班長、主任でウチの主任と同期だ。
先輩男「さっさとウチの班に転籍してこいよー
歓迎会弾むぜー」
軽口を利きながら乗り込んで行く。
主任「テメー、ウチのエースをナンパしてんじゃねぇ、早よ乗れ」
二人の仲が良いのもウチの係で退職者が少ない理由だろう。
全員が乗り込み終わるとまた重苦しい音を立てて扉が閉まり、連絡車は走り出した。
連絡車 車内
連絡車の車内に似つかわしく無い軽快な音楽が流れる。
前節ではこんな音楽は流れて無かったはずだ。
後輩女「あっこれかー」
平社員「何が?」
後輩女「これ総務の女の子の改善提案だそうです」
同期男「なにそれ?」
後輩女「何かメンタル防止の為に移動中に音楽掛けてリラックスできる様にとか…」
後輩男「へぇ」
平社員「現場にも出てねぇヤツの提案採用されたってあんま意味ねぇよな…」
同期男「ホントだよ、俺の提案はボツなのに」
後輩男「何を提案出したんですか?」
平社員「人事、総務の女の子と社内合コンだと」
同期女「うわぁ、それはちょっと」
同期男「お前、先輩に向っていい根性だな。あと平社員、バラしてんじゃねえよ」
班毎に座ったボックスシートに笑いが起こる
ま、これだけでも提案は成功なのかもしれない
主任「まず現場は前節と同じな、到着位置が前と同じなのはデジャヴじゃ無いぞ」
皮肉混じりにボックス中央の画面を操作する
主任「で、また同じ要領で先方さんのシェアを奪いまーす」
平社員「しつもーん、目標は何mですか?」
主任「はい、平社員くん良い質問だ。今回は何と1200mです」
全員「え"!?」
後輩女「えっでも…」
主任「聞こえなーい」
後輩男「向こうは営技が…」
主任「あーあーあー聞こえなーい」
平社員「前節の3倍ですよ?」
同期男「あぁ全員退職だなこりゃ」
主任「これが朝の会議の内容。今月中に先方さんの独占地域にこちらが出店するのが目標でーす」
平社員「今月中に防衛線突破かキツイな…」
主任「勿論ただとは言いません、出店のあかつきにはA、B直とも2節の長期休暇でーす」
後輩女「永遠に休暇になりそうですね…」
後輩男「休暇もらってもやること無いし」
同期男「金もねえしなぁ…」
平社員「っていうか達成できる気がしない」
主任「あぁぁウッセーお前ら!理念その八唱和」
全員「実行前から躊躇するのは考え抜いてないからだ、やれない言い訳を探すな、やり抜く方法を考えろ!」
主任「ってことで、俺もキツイとは思う」
主任「でも退職者を出さない様にお互い協力して、成果を出そう」
今節の現場:G県との境界地域
その後も前節の実績確認、振り返りを行いながら連絡車は走り続ける。
窓一つ無い連絡車の車内は時間の経過を麻痺させる。
車内放送『現場到着まで残り5分です、各自降車準備をお願いします。
安全に留意しゼロ災を心掛けましょう』
主任「各自端末起動、装備携帯」
主任「出張所内とはいえ降車時が一番危険だ、気を抜くなよ」
全員「ハイッ!」
何回現場に出てもこの瞬間は緊張する。
端末『降車地 異常無し、各係1班より降車開始』
扉が開き1班から降りて行く。
先輩男の背中が外の光に吸い込まれて行く。
平社員『よし、今回は考課稼いで職能上げてもらわなきゃな』
期末考課に向けて決意を新たに地に足を付けた
15 : VIPに... - 2014/09/08 13:17:12.46 +D2SUxuS0 10/212会社員とはいったい
16 : VIPに... - 2014/09/08 21:17:25.89 vDBoO3f6O 11/212PMCかな?
17 : 1 ◆tsERP5rFx9iS - 2014/09/09 02:59:29.26 YDMCWr1c0 12/212>>15 >>16
ーーー会社案内ーーー
各企業の地域毎シェア(統括地)争いが激化している業務環境で、
弊社は精力的に支店(占領基点)を増やし、新地域における販売力(地域資源獲得)強化を行っております。
国家、地域行政の崩壊した昨今、各地域の土地、住民様の
管理、運用を行い皆様により暮らしをお届けすることが、
弊社の使命と認識し日々企業活動に励んでおります。
株式会社 TEA
(temporary employment agency.inc)
S県北部を本拠地とする中堅会社
?地域開拓事業部
?建築事業部
?人材開発事業部
?IT事業部
の4事業部で構成
社員 32000名
統括行政区 12地区
包括住民数 65万人
勤務は独自カレンダーによる。
寮、社宅完備。
年金、社会保険無し。
労働傷病は会社にて治療を保証。
給与、休暇は別途規定により定める。
尚、弊社への問い合わせはできません。
出張所 2係集合地点
降車すると同時に4つの係がそれぞれの集合場所に散って行く。
俺たち2係も集合を終え、係長に傾注した。
係長「みんな、おはよう。えー今節は期の目標を達成させる為の重要な節です」
係長「前節の手戻り作業のように感じるかもしれないが、気を引き締めて取り組んで下さい」
係長「各班長は目標を明確にPDCAをしっかり回して成果を上げるように。」クルッ
先輩男「各班!解散!引き継ぎしっかりな!」
一同「ハイッ!!!」
各班周囲に散って行く、俺たち2班も一纏りに移動を開始する。
平社員「係長もB直いる前であんな言い方しなくてもな…」
同期男「前節は係長自らの肝入りスキームで進捗したからな、
ちょっとは皮肉も言いたいんだろ?」
後輩女「B直の主任さん達、睨んでましたね…」
主任「ほれほれ2係2班集合ー、引き継ぎやるよー」
全員「はーい」
主任の声掛けでこれから5日間の寝ぐらになるテントに集まる。
テントは裏直と共同で利用している為、そこで引き継ぎを行う。
テント内 引き継ぎ中
同期女「と、いうことで先方のスキルは極めて高く、
折衝活動どころか名刺交換もままならない状況です」
主任「ふーん、営技の4班編成ってとこか。確かに手強い相手だな…」
主任「ウチの係はメインルートの脇道になるルート担当だからなぁ
先方さんの回り込み中にハチ当たった感じだな」
同期女「あちらは直接折衝を全くせず、遠方から一方的に仕掛けてきます」
同期男「いやらしいな、正々堂々テーブルに付けっての」
平社員「いや、隠密機動でシェアを奪うのが営技のモットーだからな
対面折衝はそりゃ嫌うだろ」
平社員「って、ここまで話してなんだけど、何でお前が引き継ぎしてんの?」
同期女「えっ、うん、ウチの主任が今回ので休業災害になっちゃって
他にも狙撃さんと通信さんが…」
後輩男「あっレジメに書いてあった…」
主任「オーケー、それ以上言わなくて大丈夫
良く頑張った、後は任せてゆっくり休め」
主任「端末のデータリンク終わったら、連絡車乗るまで寝てていいぞ」
同期女「でも、もう少し詳細を…」
主任「いや、ヤツらもう予測点に居ねぇよ
あと目の下、隈で真っ黒だぞ
寝てねーんだろ?」
平社員「そうだよ、後は俺らがやっとくから、安心して休んでろ」
同期男「おっ頼もしいー。今節のリードオフマンは平社員に決定ー」
後輩男「流石ですね、見習いたいです」
後輩女「バックアップは任せて下さい」
主任「まぁ頭は平社員は決定として。同期女、ゆっくり休んで、
班編成含め係長としっかり面談すること」
主任「以上、データリンク開始。作業補助物資調達、庶務課行ってこい」
平社員「えぇーマジですかぁ」
主任「ちょっと、出てくるわ、調達後待機な」
全員「了解しました」
平社員「ブツブツ…」
出張所 テント群
主任「内線通話、2係1班 先輩男」
端末『呼び出し中です』
先輩男「どーした?何か用か?」
主任「B直の話聞いたか?映像データ見てないけど、ヤバいぞこれ」
先輩男「あぁ先方さんの営技な、確かに…」
主任「ウチの営技は一本向こうのルートに出張ってるから無理として
せめて営業呼んで環境確認だけでもお願いしてぇなーと思ってさ」
先輩男「で、係長のとこ付き合えと。だけどなぁ」
平社員「ウチのワンマン係長が営業なんて入れないだろうと。」
主任「おわっ!平社員、何で着いてきてんだ?」
先輩男「俺もいるけど」
平社員「補助物資取りに行くとこです、現場なら退職モンですね」
先輩男「端末通話は俺のをローカルで直リンクさせた」
主任「はぁ…お前らは意味無く仲良いな」
先輩男「それは良いとして、まぁ取り敢えず当たって砕けてみるか
多少機嫌を損ねても仕方無いだろ」
平社員「頑張ってくださーい」ヒラヒラ
主任「ついでだ、お前も道連れな」
平社員「俺には物資受け取りって重要な…」
主任「そんなの後輩男にやらせとけ、内線通話 後輩男………」
平社員「あぁ失敗した…着いて来なきゃ良かった」
先輩男「ははは、何事も経験、経験」
21 : VIPに... - 2014/09/09 05:22:13.21 r4GU8Y0qO 16/21224時間戦うんスね
期待
23 : 1 ◆tsERP5rFx9iS - 2014/09/09 22:35:22.05 /kVcz1DBO 17/212>>21 120時間戦うんですね。
ーー就業規則 勤務体系ーー
原則として、1節5日間の24時間連続拘束とする。
5日勤務後の120時間は休息期間とする。
休息期間中でも別命ある場合はその限りでは無い。
個人の都合による節内では特別の事情を除き休暇は禁止とする。
30日での累計勤務時間が480時間を超える場合、委員会にて別途協議する。
24 : VIPに... - 2014/09/09 23:41:27.75 HrC0BRYL0 18/21272時間働けますか?(迫真)
25 : 1 ◆tsERP5rFx9iS - 2014/09/10 03:03:18.68 7n0QXR8W0 19/212>>24 私は嫌です。
ーー就業規則 勤務体系ーー
改訂1 誤記訂正
原則として、1節5日間の24時間連続拘束とする。
5日勤務後の120時間は休息期間とする。
休息期間中でも別命ある場合はその限りでは無い。
節内では特別の事情を除き休暇は禁止とする。 △修正
30日での累計勤務時間が480時間を超える場合、委員会にて別途協議する。
出張所 係長テント内
係長「ったく、お前らは自分達で調査活動もせず」クドクド
係長「私が若い頃はまずは自分で」クドクド
係長「そんなことだから期の目標も」クドクド
平社員『もうそれ二回聞いたよ…』
係長「そもそも…んん?平社員ちゃんと聞いてるのかね!」
平社員「あっ、はい。まずは我々が独力で調査、状況精査を行って係長に報告」
平社員「不足情報については係長のご指示に従い、実践しながら詳細把握」
平社員「然るのち、再度報告、相談を経て進捗計画をリスケし最終工程表に落とし込み…」
係長「分かっておらんな。そういう細かい事を言ってるんじゃ」クドクド
主任 / 先輩男『バカ、余計なこと言いやがって…』
クドクドクドクド…
係長「まぁ良い、私から営業課長には連絡しておくから、さっさと依頼書書いて
管理課に提出して段取りを固めろ」
係長「いちいちツマらんことを相談しに来るな」
全員「申し訳ありませんでした」
係長「分かったなら早く実務に戻って進捗遅れを取り戻せ」
主任「はい、では失礼します」クルッ
係長「あっまて、先輩男」
先輩男「何でしょうか?」
係長「OJT年間計画と改善提案一覧がお前のところだけ出ておらん
そんなこともちゃんと出来て無いから」クドクド
主任 / 平社員「失礼しまーす」ソソクサ
平社員『先輩男さん、あなたの犠牲は無駄にしません』
主任『安らかにな…』
端末『メール受信:先輩男』
端末『テメーら見捨てやがったな、覚えてろ(泣)』
係長「んんー?聞いてるのかね?」
出張所から250m地点:TEA統括地 末端
そんなこんなが有りながらも何とか営業の協力も取り付けることができた。
今は同行してくれる営業を1、2班で揃って待っているところだ。
後輩男「でも営業ってそんなに必要なんですか?
僕、営業絡む業務始めてなんですよねー」
後輩女「あんた本当に研修で何聞いてたの?」
主任「んじゃ後輩女、今回の営業の動きも含めて解説宜しく」
後輩女「あ、はい。えーと、今回先方の営技さんが出てきたので、我々の活動できる
実務範囲が不明確になっています」
後輩女「これは先方の営業活動範囲の広さと、コンペになった際の打撃力が読めず
私達1班、2班の実務能力、スキルで対応可能か不明な為です」
平社員「営技相手に2班じゃ無理だろって思う気持ちは内緒だな」
同期男「俺、新人の頃に痛い目合ってんのよね」
主任「そこ二人、茶化すな」
後輩女「そこで、我々より環境把握、名刺交換の得意な営業に入ってもらって
先方のコンセプト、チーム規模の把握をしてもらいこちらのタスクと合致するか
を分析、精査、修正してもらう為です」
周囲「おー」パチパチパチ
主任「はい、模範回答ありがとう、分かったか?後輩男」
平社員「絶対自分で説明する手を抜いたよな」
同期男「俺、あんな綺麗に説明できないな」
営業女「流石、同期ペーパー1位の後輩女ですね」
一同「!!!???」
営業女「あっ初めましてー、今回ジョイントさせて頂く営業女です、よろしくー」
「全然、気配無かったぞ」
「あれ、目の前にいるのに端末が認識して無い」
「でもこんな眼鏡ちびっ子で大丈夫なのか?」
ヒソヒソザワザワ…
主任「あーお疲れ様です。急な要請なのに迅速な対応ありがとうございます」
営業女「お世話になります。あっ隠蔽モード外しますね、
身内ですが一応皆様とも名刺交換しておきます」
営業女「あと、さっき眼鏡ちびっ子って言った1班のモブAさん
女子社員内での評判下げておきますので」
モブA「えぇー」
同期男「コエー、マジでコエー、女子社員の評判落とすとか降格よりコエー」ガクブル
平社員「そら、お前だけだよ」
営業女「早速ですが、共有ドライブのデータは移動中に確認してきました
さっさと実務に入りたいので行きましょう」
先輩男「うん、若いけど頼もしい娘だな、1班 班長の先輩男だ、宜しく。
こっちは2班 班長の主任だ」
主任「改めて宜しく」
営業女「あっ先輩男さん、よ、宜しくお願いします」テレッ
営業女を加えた11名で今回の活動地域を目指し移動を開始する。
後輩女「久しぶりー元気だったー?」ワイ
営業女「後輩女こそー、最近何してんの…」キャイ
シェア確定地域の為、そこまでの警戒も必要無い
まだここら辺では私語も大目に見てもらえる。
技術部技能課の面々が外回りをしてくれている
引き継ぎレジメで誤記があったが、裏直で営技相手に退職した内の5名は技能課の方々だ。
俺たち営業部に対し、技術部技能課は獲得したシェアを保持する為、
日夜、定点での保守保全と担当地域の外回りを受け持っている。
彼らがいなければ俺たちが飛び込みで獲得したシェアもすぐに相手方の
営業範囲になってしまい出張所や支店を建てることもままならない。
但し、新規シェアの獲得等の非定型業務は得意としていない。
しかし何故か俺たち営業部(特に技術課)は目の敵にされることが多い。
そんな彼らに会釈をしつつ、完全な営業外地域に俺たち1,2班は足を踏み入れていった。
開拓事業部 人事機密報告書
ーー フェイスtoフェイスシートまとめ ーー
各部署とも今期の面談を終えた為、結果を集結、分析する。
営業部の複数名から異動願いと
上司への意見が散見されるものの例年通りの傾向。
営業係長への意見、情報については別途まとめ協議とする。
新規の意見としては、女子社員の何名かから、モブA(社員ID:22248)に対する
意見が複数見られた。
内容としては
「目がいやらしい」「何だか馴れ馴れしい」「課の宴会に誘われた」
などの内容であるが、同時期での発生の為、継続注視する。
モブAの勤務態度、成績については全く問題無く、班長、係長からの
聞き取りでも優良である為(班長は何故か笑っていたが)
本情報を基にした考課への影響は無いものと判断する。
G県との競合地域
G県との境界は従来、川を隔てて両岸にて住み分けていた。
それが去年G県南部をエリアとする
FHW 株式会社が橋の両端地域へ営業範囲を拡大
複数回のコンペを経て橋南岸の一部のシェアを先方に譲り渡した。
弊社のシェア奪還活動により、安定的な地域経営は未だ開始されておらず、
FHW社の支店出店、地域での地位確立は辛うじて防いでいる状態だ。
今、立っているここは橋から南東の市街地域。
主となる大型国道の一本東のルート。
両社の営業重複範囲だ。
営業女「では、ちょっと先行します、端末は私のIDに対し常時オープンでお願いします
現位置から右前方の工場内に先方技能班が4班いるので折衝をお願いします
その先のスーパー駐車場で再合流し検討会にしましょう」
後輩女「営業女ちゃん、気を付けてね」
先輩男「すまない、頼りにしてるぞ」
営業女「ま、任せて下さい」フンス
ハンドガンを両手に構え姿勢を低く取る。ロングスカートの端が持ち上がる。
裾から這い出したノズルが周囲に砂埃を舞い上げた。
営業女「でわ」シュン
後輩男「えっ!?何あれ?」
平社員「あれは営業7つ道具の一つ、無音機動」
平社員「圧縮気体推進であんなスピードが出るんだよ」
同期男「すげぇボディバランスだよな」
主任「訓練して無い常人が使うと顔面ハンバーグ必至だよ」
主任が頬に手を当て震える。
過去に何があったか触れないのが優しさだろう。
後輩男「主任使ったことあるんですか?」
触れるバカがここに居た……
ちょっとは空気を読む努力をしろと。
先輩男「移動開始」クス
主任「一瞬足りとも気を抜くなよ、特に後輩男!」
後輩男「は、はい」
さて、仕事を始めますか。
ーー 先行営業中 営業女 ーー
今回の営業活動は私単独での初めての業務。
それがあの先輩男さんの班のサポートだなんて、なんて幸運なのかしら。
うぅいかん、顔がにやける。
仕事、仕事っと。
6wayの端末画面が賑やかに周辺情報を私に伝えてくれる。
通常端末の3way画面に対し、私達営業専門の端末は特別製だ。
あれ?基本マップ情報に対して乖離が大きいなぁ…。
FHW社はこの辺りだとまだ地域造成活動を始めて無いって情報なんだけど…。
衛星データとも相関が低い…。何でだろう?
動体センサーに感があるけど、これはまた技能班かな?
うん、確認。
私の目的は折衝ではなく、現状把握。
業務のPDCAを回すにもそれが一番だと、嫌気が指すくらい教え込まれてきた。
一瞬の成果より長期での成果、その為には正確な情報掌握が鍵になる。
特にこの地域には先方の営技が活動している。
最低でもその全員と名刺交換をするのが今回の業務目標だ。
実務では及ばないけど、その分営業能力に対しては遅れを取る理由が無い。
早く終わらせて先輩男さんに報告しなくっちゃね。
目線の端では広域マップで色違いのマーカー同士が近づいていくのを示している。
緑のマーカーの移動速度が下がり、散開行動を始めた。
ん、そろそろあちらも、折衝開始かな?
んじゃそこの孤立してる技能班一班活動停止させとこっと。
ーー 工場手前 1班、2班 ーー
営業女からの情報がじゃかじゃか飛び込んできて端末情報が更新され続ける。
マーカーの移動軌跡を見ると、先方さんの1,2m位の距離を通過している様に見えるんだが…
名刺交換の技術は同僚識別用の微弱な通信を拾い、コードを強制解析することで
相手方の所属等の社員情報を判明させる作業だ。
味方同士はランダムにパスフィルターを掛け続けることで拾える様にしているが、
他社の人間がそれを拾うには大分近接する必要がある。
通常は折衝完了後や、肉薄した際に名刺を頂くことが多いのだが、
どんな折衝術を使っているんだろう?
光学迷彩もそこまで万能じゃ無いし、無音機動と言っても多少の駆動音はある。
改めて営業さんの専門性に感心させられる。
離散して15分後には今日のノルマの8割くらいの範囲は網羅されていた。
円周機動に移行して、詳細情報の収集に入った様だ。
先方技能班を示すマーカーが増えている。
結構居るなこりゃ…
営技を示すマーカーが無いことが、安心と不安を半々にさせる。
ま、まずは目の前の仕事を片付けますか。
端末表示を中域と指示系統に変更し待機する。
端末『主任:コンビ毎に中域散開、間隔15m』
端末『主任:先輩男のご挨拶を合図に各自接触開始』
端末『主任:応酬は必要無い、一発で決めろよ。成果を期待する。』
サイレンサーの組み付けを確認する。
はいはい、了解しましたよ。
平社員「チャットモード起動、後輩女」
平社員「先輩男さんの合図の後、同時タイミングで、俺は右、後輩女は左を頼む」
チャット『了解しました』
不自然な程の静けさが辺りを包む。
……いくらなんでも流石に静か過ぎやしないか?
端末『緊急内線、強制通話:営業女』
端末のレッドアラートが点滅する。
左肩が焼ける様に熱い。幸い弾は抜けたみたい。
無音機動が1ノズルやられてバランスが取りにくい。
オートバランサータイプじゃなくて良かった、付いてたら真っ直ぐ進まない。
あぁ頭の中がグチャグチャだ。
ダメ、今は少しでも距離を取らなくちゃ。
あっヤバい先輩男さん達に報連相しなきゃ。
営業女「緊急内線、強制接続、1班、2班」
早く、早く、はやくはやくはやく…
……………………………
ーー これより10分前 営業女 ーー
孤立した先方、技能班 一班に対してアプローチ開始。
さてと、先輩男さん達への陽動になるようにまずは接触しますか。
光学迷彩ON、セーフティ解除、スライドOK。さて、行きますか。
端末『タスク設定、12時方向技能班 8名』
端末『装填、残弾 20×2。弾倉 20×6』
端末『最近接目標認識、自動追尾ON』
5m間隔 8人の方円陣形の右後部から回り込む
パシュ、パシュ、パシュ
サイレンサーが渇いた音を放つ
端末『タスク完了確認』
端末『残弾 R19/L18』
営業女「ふ、ん…っと」
速度に乗ったまま、真っ直ぐ方円の左後に突っ込む。
端末『次目標認識、追尾ON』
パシュパシュパシュ、パシュ
端末『タスク完了確認』
端末『残弾 R16/L17』
営業女「つぅぅぎぃ!」
無理矢理身体を左に捻り、無音機動の出力を最大まで吹かす。
鋭角に跳ね返るように方円の最後尾に進路を変える。
営業女「自動追尾OFF、視認中心適宜ロック」
タンタン、タタタタン
正面と左から弾が飛んでくる。
スカートの後端を掠めた…あーあ、だから力仕事は嫌いなのよね。
パシュパシュ
端末『タスク完了確認』
端末『残弾 R14/L17』
さて、あと半分ちょっと。
後端末に向かった勢いのまま、一旦距離を取ろうっと。
後ろ向きになり、視線を残りの相手に向けながら慣性に任せて距離を取る。
さて、作業中盤と参りますか。
端末『タスクロスト。2目標の位置情報不明』
営業女「え?」
カシュン、カカカカカカ
フルオートの斉射を辛うじて躱した。
どこから?何が起きたの?
一瞬で混乱の渦に叩き込まれた。
唯の技能班相手に流石にこんなミスはしない。
最悪のシナリオが想起される。
営業女「タスク変更、未確認 2名の補足」
あぁ最悪。
多分これあちらの営技さんだわ。
ーー 工場外周 同期男、後輩男コンビ ーー
端末『緊急内線、強制通話:営業女』
強制通話?へぇ、そんなことできるんだ?
違う違う、そんなこと感心してる場合じゃない。
営業女「営業女です、お疲れ様です。現在、先方技能班と接触中でしたが…」
後輩男が驚きの眼差しをこちらに送ってきている。
正直俺も予想外の状況に思考が追い付いていない。
後輩男「ど、同期男さん。何があったんでしょうか?」
後輩男が俺の横に来て小声で聞いてくる。
端末の機能が強制接続で停止しているので、肉声で会話するしか無いからだ。
同期男「バカ、寄ってくんな。非常時はまず正確に状況判断からだ」
とは言ったものの今は営業女の話を聞くしか無い。
営業女「端的に言います。そちらの技能班の中にも営技さんが偽装して
混成されている可能性が極めて高いです。」
営業女「私もそちらにご……きゃう…」
営業女「………」
端末『通信途絶しました。通話終了します』
あれ?これ結構まずいんじゃね?
頬を冷や汗が流れ落ちる。
端末『主任:焦るな、まず目の前の目標から目線を切るなよ!』
後輩男「同期男さん」オロオロ
同期男「焦るな、動くな、息を整えろ」
同期男「ここからは判断間違え、即退職だぞ」
目線の先、先方さんに変化は見えない。
息を潜めて次の指示を待つ。
ーー 工場外周 主任、先輩男 ーー
最悪だ、一応想定していたけどまさかこうなるとは…。
今は一瞬でも早く次の手を構築しないといけない。
横にいる先輩男の表情も焦りと迷いで満ちている
部下達にはこんな顔見せられねぇな。
端末『先輩男:どうする?』
主任「仕掛けるのも博打だし、引こうとしても追撃か…」
主任「結構詰んだな、こりゃ」
端末『先輩男:悠長に構えてる場合じゃないよね、俺的には引きなんだけど』
主任「同意、だけど先方さんにケツ向けて、ただで済むとも思わん」
主任「営技さんが混ざってるなら尚更だ」
端末『……』
一瞬の判断ミスで二班がズタズタになるのは目に見えてる。
うん、こういう時は基本に忠実に。
主任「不明瞭な状況に憶測で望まない。確かにここは徹底だな」
端末『先輩男:了解、すまないがそちらに殿を頼んで良いか?
ウチの面子は中距離専門でちょっとキツい』
主任「あぁ良いよ、ウチには頼れるリードオフマンがいるからな」
主任「各自、タスク放棄、後退開始。さっき通ったコンビニに集合」
主任「こちらからのアクションは禁止する」
主任「平社員コンビ、最後尾を任せた。」
端末『先輩男:モブA,B 平社員のサポート入って、
平社員は放っておいて良いから後輩女へのケア綿密にな』
端末『平社員:ひでぇ。でも了解』
端末『モブA,B:了解』
端末『平社員:取り敢えず、タイミングはそちらでどうぞ』
戻ったら何か奢ってやらないとな。
後は営業女の無事を祈ろう。
ーー 工場外周 平社員、後輩女コンビ ーー
来たよ貧乏クジ。
まぁ遠近のコンビは俺達だけだから仕方無いか。
平社員「聞いたか後輩女、えぇーと栄誉ある役割を受け賜りました」
端末『主任:同期男から後退開始。平社員、先方動きがでたら牽制開始』
平社員「と、いうことです。内線繋ぎっぱで宜しく」
後輩女「了解しました」
平社員「後輩女は変わらず左の一人をマーク」
平社員「その後のタスク構成したので送るわ、柔軟に視認目標追いに変えちゃって」
8人×4班、32タスク。
そんなのがこなせるほど俺達は優秀じゃ無いし、不確定要素が入る現状では組んだところで無駄になる。
視認範囲と後輩女の折衝範囲に絞って8タスクのみ設定。
この通りに行ってくれれば万々歳だな。
ジワジワと時間が流れていく、離脱圏は60mってとこか?
いや、営技さんの機動を考えると100mは欲しい
端末『同期男:50m離脱、定点警戒に入ります、次どうぞ』
平社員「視認では状況に変化無し、継続して下さい」
端末『先輩男:了解、モブC,D 後退開始」
後輩女「平社員さん、タスク外ですが2名の認識途絶!」
後輩女「途絶位置から予測して、光学で捕捉します」
平社員「おっと、始まったな。光学捕捉はしなくて良い、多分無駄だ」
平社員「それよりいつでも移動できるようにしとけ!」
後輩女「各タスク、移動開始しました」
後輩女「予定通りタスク1から処理を始めます」
カシン、パシュ
後輩女「タスク1、クリア。つぎ!」
カシン、パシュ
後輩女「タスク2、クリア」
カシン
平社員「移動だ、移動!定地したら喰われるぞ!」
タタン、タタン、タタタタタタタ
カシュン、カカカカ
平社員「近接弾!やべ、こっちの位置割れてんぞ。タスク3、クリア」
端末『メイン残弾 25』
平社員「主任、先輩男さん、先方さんが張り切り出しました
即時…ッッチッ!」タタタン。パシュパシュ
端末『タスク4、クリア。サブ残弾 18』
平社員「即時、移動開始して下さい」
平社員「こっちは何とかします」
平社員「後輩女、先行しろ!後ろは俺に任せろ」
平社員「同期男と合流してタスク処理継続。完了後は近接目標から順にタスク設定」
後輩女「了解しました、お気を付けて」
と言ったものの、この数はまずいな。
同僚達も同期男の射線より向こうには出た。
移動速度も上がっている、まぁ後は離脱可能だろう。
緑のマーカーが離れていく代わりに、赤いマーカーが一直線に
俺に集まって来てるのが面白いくらい見て取れる。
こりゃ修羅場だね、ワクワクしてきたぞ。
ーー 同期男警戒線 後輩女 ーー
平社員さんの指示を聞いてここまで引いたものの本当に大丈夫なんだろうか?
端末『主任:同期男、警戒線下げるよ、後退移動開始』
端末『先輩男:モブA,B、同期男と同一行動、1班 ここからの指示は
主任から受けて。主任よろしく』
端末『主任:了解、モブC,D先にコンビニまで行って5Sよろしく』
同期男「ほれ、移動するぞ。後輩男、周辺警戒怠るなよ!」
タタタタン
後輩男「はいー。あわわわ」パララララ
同期男「チッもう回り込まれたか。やけに早えな」ドゥルルルル
チュンチュンチュン
後輩男「危なっ!俺ここにいますよー勘弁して下さいよー」
後輩女「あーもぅ、さっさと下がりなさいよ」
カシン、パシュ
カシン、パシュ
平社員さんが引きつけてくれているおかげで私達はタスク5,6の消化で
何とか安全な距離を稼ぎながら後退を始められた。
だけど平社員さんは…
同期男「あー大丈夫だよ多分。営技相手でもこの状況なら平社員の
実務力の方が上だろうし、先輩男さんも行ったしな」パシュパシュ
表情を読まれたのか、同期男さんが声を掛けてくれる。
本当ならこんな時こそコンビが助けなきゃなのに……
端末『平社員:バイタル正常』
端末表示を見守るだけの自分の無力さを呪うしか無い。
ーー 置いてけぼり 平社員 ーー
タタタタタタタン
うわ、やべ。完全に囲まれた。
パシュパシュパシュ
ついでにさっきから認識外のとこからちょいちょい干渉されてる
営技さんだよな、これ。確かに名刺交換どころじゃ無いな。
走りながらも、塗り変えられていく絶望的な状況に退職を覚悟しかけた。
端末『先輩男:よ、楽しそうだね』
希望の光はまだ残っていた。
端末『先輩男:左後ろと真右に営技さんがいるね、うーん左前か……』
端末『先輩男:10人くらいいるけど、そっち来よっか』
また、ご無体な…
でもそこしか無いか、腹を決めよう。
メイン、サブの弾倉を入れ替え、大きく息を吸う
端末『メイン 残弾 30/サブ 残弾 20』
端末『進行方向のタスクは標準業務に比較すると高難易度です』
端末『上司と相談しタスクの見直しを……』
平社員「うっせー!!スケジューラーOFF、先輩男さん、45秒で突破します」
平社員「すんません、援護お願いします。反転のタイミングは適当にお願いします」
端末『先輩男:了解、左回りで行くよ』
圧倒的少数でも挟撃の形になった。
右前方からの干渉も少なくなり、これなら左前への突破に集中できる。
カカカカカカ、カチン
端末『メイン 残弾 0、弾倉を交換して下さい』
パシュ、パシュ
端末『サブ 残弾 6、残弾に注意して下さい』
やばい…弾足りないかも。
弾倉交換してる余裕は…
タタタンタタタンタタタタタタタ
無いなこりゃ。
端末『先輩男:よーし、反転するよ、着いて来てね』
平社員「せ、先輩男さん、ちょっと待っ……」
パシュ、カシン
パシュ、カシン
端末『先輩男:ちょうど相棒も来たみたいだしね』
ーー コンビニ前 主任 ーー
まったく、ウチの部下達は言うこと聞きやしねぇ、
業務指示を何だとおもってんだ。後で説教だなこりゃ。
後輩男「主任、残りの5S終わりました。」
後輩男「あれ?何ニヤニヤしてるんですか?」
主任「うっせ、引き続き周辺警戒。仕掛かり業務無いか念押しチェック」
後輩男「はいー」スタコラ
コンビニにもあちらの技能班が詰めていたが、モブC,Dと同期男達で5S完了
落ち着いたところで営業女と交信してみるが反応無し。
全員合流して業務整理できたらすぐに途絶点付近を確認だな。
マーカーが接近してきた、そろそろ視認圏内だな。
緑も赤もゴチャゴチャで良く分からん。
主任「三人ともー進路上に着弾させっから除けてなー」
端末『平社員:な、うそ!』
端末『先輩男:え?冗談でしょ?』
端末『後輩女:何が起きるんです?』
主任「モブA,B、あいつらの進路上に迫撃開始」
モブA,B「了解」ジャキィ
ポポン、ポポン
間抜けた音を立てて白煙が尾を引いていく。
あーあこの区域での隠密性もうゼロだな。
ーー コンビニ前 1班、2班 ーー
平社員「俺は確かに鬼を見た」
先輩男「俺はバァちゃんが手を…」
後輩女「社会って想像より厳しいとこですね」
主任「はい、三人共お疲れ。無事全員集合だな」
主任「各自健康チェック、報告して」
モブC,D「はーい、先輩男さん」
先輩男「どうした?モブC,D」
モブC「ちょっと左手首折れてまーす」プラプラ
モブD「ちょっと右脇腹貫通銃創でーす」ダラダラ
先輩男「ちょ、おま、モブD!血出過ぎだろ。早く止血しろ」
主任「あらら、これじゃ全員で動けないな…」
後輩女「でも営業女ちゃんの探索が…」
端末『通信回復、営業女:バイタル微弱』
さっきまで途絶していた営業女の端末とのリンクが回復した。
しかし、音声通話もメールも入って無い。
いくら何でもタイミングが良過ぎる。
同期男「俺らで行きましょう」
同期男「あんなちっさい女の子が独りで苦しんでるんだ」
同期男「助けに行かなきゃ漢じゃない」ドーン
後輩男「カッコイイ」
平社員「何か少し不純さを感じるが」
後輩女「手放しで喜べないですね」
モブA(ロリだなコイツ)
端末『ザザッ…』
端末『営業女:誰がちっさい…です…って』
端末『モブAさん…女子…社員の…評…』
モブA「えっ!?何で俺???」
後輩女「営業女ちゃん!!!」
端末『営業女:すみません、ちょっと動けません』
端末『営業女:回収をお願いしたいです』
同期男「ん、近いな。よしっ任せとけ」ダダッ
主任「おい、馬鹿、同期男、待て」
同期男「」ダダー
ーー コンビニ内 平社員 ーー
営業女の通信回復には罠も無く、同期男が担いで帰ってきた。
その同期男は現在、レジの前で正座反省中だ。
負傷者3名を抱えて、一時休息となる。
モブC,Dは休業災害レベル。
営業女も暫くは動けないだろう。
主任「それにしても良く知らせてくれた」
主任「報連相無かったらこんなんじゃ済まないところだったよ」
営業女「お心遣いありがとうございます、でも未然に予測しておければ…」
先輩男「それにしても良く無事だったね。あちらの営技に付かれてたんでしょ?」
営業女「あ、はい。でも遠距離タイプで助かりました」
営業女「撃たれて川に失速落下して、その瞬間にバイタルOFFにして擬態したので」
主任「おぉ古い業良く知ってるねー。死んだ振りかぁ」
営業女「はい、自己啓発の時にウチの課のシニアの方から教わりました」
平社員「理念その三、か」
後輩女「古きを知れ。新しき物の礎である。
古きを知らずして創造は無い。ですか?」
平社員「あぁ。元々名刺交換が始まったのって
この死んだ振りが原因なんだよ」
後輩男「へー。そうだったんですか」
平社員「そ、バイタルモニターに頼り過ぎて反撃されて退職者続出」
平社員「で、確実に折衝完了したのを確認するのが目的で名刺交換が始まった」
同期男「交錯した時の名刺交換や、営業技術の名刺交換は結構最近の技術なんだよ」スッ
主任「何立ち上がってんだお前?」
同期男「」クルッズサッ
先輩男「あれ?もしかしてシニアって営業爺さん?」
営業女「あっそうです。ご存知なんですか?」
営業女「優しくて皆に慕われてます、糸目爺とか呼ばれてますね」
主任 / 先輩男 / 平社員「じ、爺」ガクブル
営業女「あれ?皆さんどうしました?顔色悪いですよ」
後輩女「どこか怪我でもしてるんじゃ…」
主任 / 先輩男 / 平社員「ナンデモナイデス」
ーー コンビニ内 主任 ーー
ともあれ、初日からこの負傷者数は頂けない。
あちらの技能班を30名弱業務不能にしたものの
営技さんとの名刺交換は完了していない。
今節の予定はガタガタに崩れた。
…出張所帰りたくねぇな。
係長のお小言がエライことに…
営業女「あっそういえば、報告忘れてました」
営業女「若干推定が入りますがこの区域の営技さん、4班もいません」
主任「え、本当に?」
営業女「はい、広域探査も合わせて掛けてたんですが、私の引っ掛かった班と
皆さんの折衝した班の二つに2人ずついたと思われます」
平社員「うん、確かに2人居た」
先輩男「なんでその結論に?」
営業女「あのですね、この区域、異様にマップの精度悪いんですよ」
営業女「で、分析掛けたら先方さんのローカルサーバーからの
介入痕跡があってですね。電子撹乱掛けてたので止めるついでにチラっと」
主任「は?サーバークラックとかどうやって?」
営業女「後輩男さんの携帯サーバー踏み台にして、支店のサーバーに接続し…」
主任「ちょい待ち。君それをあの動きの中でやってたの?」
営業女「そうですけど?」キョトン
一同(ば、化け物だ)
営業女「2系統そっちに割いてたので油断しちゃいました」
営業女「オマケに分析終わったの川に落ちて擬態中だし」
営業女「もっと手番良くやらなきゃですね」シュン
主任「あ、ありがとー!!」
営業女「えっ?」ビクッ
主任「それ、今日、明日の業務目標。よっし、これならまだお小言無いだろう
ゴメン、他に情報は?」
営業女「え、えぇ他には…」アレヤコレヤ
ーー 出張所 係長テント前 主任 ーー
休業災害発生と応援の営業さんの労災を多少叱責されたものの
それ以上の成果に係長も矛を収めてくれた。
営業女の取集情報は、今節エリアの2/3を網羅し
且つ未知だった営技さんの実数を明らかにした
俺達の詰めていたコンビニとその先の空白地帯まで弊社 技能班が進捗し、
初日からシェアを300mほど押し上げる結果となった。
主任「やれやれ」フゥ
先輩男「でも結果オーライだな」ニコッ
先輩男とお互いを労い、それぞれのテントへ戻っていく。
営業女は夕方の連絡車で支店に戻った。
先輩男の見送りに頬を赤らめ名残り惜しそうな表情をしていたのが印象的だ。
……あいつに嫁さん居るの知らねえのかな?
ーーー 業務日報 ーーー
2係2班 主任
※発行物
.班員健康チェックシート
.補助物資申請書
.応援依頼書
.同、事由書
.災害報告書
.補給申請書
※各人実績
.平社員:12名折衝完了
.同期男: 4名折衝完了
.後輩女: 6名折衝完了
.後輩男: 2名折衝完了
※業務トピックス
FHW社優勢地区においての活動
先方営技の進出によりシェア喪失危機であったが
営業課からの支援を頂き、周囲環境把握及び、
先方営技の活動実態が明らかになった。
先方営技の影響範囲、業務遂行能力共に
想定していたもとより低く、明日からの活動は
より効率化が期待できる。
同行の2係1班に2名の休業、営業課員に労災が
発生したものの成果に対して被害軽微と
上位審査にて認められた。
※特記事項
先方営業戦術による、突発的な危機状況に際し
平社員の献身的行動により退職者も出さず、
こちらの営業情報も漏洩することがなかった。
単日での実績としても高く特筆に値する。
ー 以上 ー
55 : VIPに... - 2014/09/16 22:14:39.17 cfDWr0lAo 43/212おつ
57 : VIPに... - 2014/09/17 02:31:24.25 SfloBic80 44/212楽しそうで何より
>>55 >>57 支援あざます
ーーー 服務規定 ーーー
休憩、食事について(総合職)
上司承認された予定消化後は日報の提出、受領を以って休憩時間とする。
節内については毎日三食、所定の場所にて食事を支給する。
連続勤務により休憩、食事が取れない際は福利ポイントで還元する。
食事メニューは事業部毎に定める
現場勤務時の夕食には酒類を一人二本支給する。
酒類の摂取に際し、班員の内一名はこれを禁ずる。
ーー 2班テント内 後輩女 ーー
主任「さて、一日目の進捗予定業務は完了です」
全員「今日も一日、安全作業お疲れ様でしたー」
主任「はい、じゃあ振り返りと明日へのフィードバックいきますか」
スッ
主任「どうぞ」
後輩女「はい、今日の反省点は指示違反です。平社員さんが孤立した時に……」
後輩男「僕は平静さを欠いた点が……」
同期男「警戒線の張り方は上手くいったと……」
平社員「残弾のマネージメントをもうちょっと…」
それぞれが反省や伸ばしたいことを述べ意見を交換する。
一日の終わりの定常作業だ。
主任「うん、反省の方が多いけど、今日はみんな良くやってくれた」
主任「自主性が高いのは良いことだけど節度を持ってな」苦笑
主任「じゃあ、今日一日の無事に感謝。明日もよろしく」
全員「カンパーイ」
私たち技術課は比較的夜は自由な事が多い。
技能班の方々は昼夜3直での勤務に対し、平常勤務の為だ。
なので、庶務課から食事と一緒に支給されるビールで一日の疲れを
みんなで流すのが大概の班での夜の過ごし方になっている。
ただ、緊急業務に備えて各班最低でも一人は飲酒しないでいることが
規則によって義務付られている。
ウチの班では後輩男が下戸の為、この役を一手に引き受けてくれる。
同期男「いやぁ今日は平社員が囲まれた時、後輩女の心配そうな顔が何とも」
後輩女「や、やめて下さいよ。コンビの事を心配するのは当たり前じゃないですか」
平社員「本当に?心配掛けてゴメン」
主任「なになにそれ?教えて」
後輩男「もしかして後輩女ってー」
スパコンッ!
全員「おー」
同期男「さすがスナイパー、ナイスヘッドショット」
ワイワイ、ガヤガヤ
こうして夜は更けていくのでした。。。
ーー 出張所内 2係集合場所 平社員 ーー
係長「ということで、昨日は他部署との連携を上手く取り…」
係長「…のように、献身積極な行動が…」
朝から良くあんだけ喋れるな、といつもある種の尊敬の念を抱く。
平社員「くぁ」涙目
後輩女「マズイですよ平社員さん、ちゃんと聞かないと」ボソボソ
係長「今日も昨日以上の成果を意識して業務に、励むように」クルッ
昨日以上?無理です。退職しちゃいます。
先輩男「各班解散、業務予定確認とコミニケーションしっかりな」
ワラワラ、ガヤガヤ
主任「はーい、じゃあ予定確認はじめ…」
先輩男「おーい、主任ー」
主任「るよー。何だ、先輩男?」
先輩男「いや、ウチさモブC,Dが休業災害に
なったから補充まで単独運営無理なのよ」
主任「あぁーそっか、じゃあ2班合同でやるか」
先輩男「助かる。あと、主任が仕切ってくれると更に助かる」
先輩男さんの個人実務能力は課でダントツを誇る
対してウチの主任の計画立案、タスク処理精度は
係長クラスとも言われている。
元コンビの二人ということも有り、その連携は俺たちでは真似できない。
主任「んー天気も良いし、外でやるかぁ」
一同「はーい」
管理責任。班長クラスになると必ず付きまとうそれを
預け、受け取れる間柄も羨ましく感じられた。
後輩男「そーいえば、同期でコンビなんですね、あの二人って」
同期男「あぁそうか、お前らの代だと知らないのか」
後輩女「何か事情でもあるんですか?」
同期男「話すと長いしなぁ…」
同期男があからさまに面倒臭そうな顔を作る。
主任「おーい、早くこーい」
同期男「はーい」ピュー
あっ、逃げた。
ーー 球技場 後輩男 ーー
平社員「ま、後で教えてやるよ。良い思い出じゃ
ゃ
無い人も多いからあんまり聞き回るなよ」
追求する訳にもいかない空気に会話が切れる。
そんなに深い理由があるとは思いもよりませんでした。
出張所の端にあるレク広場に集まる。
ベンチに全員座ったところで朝のルーチンが始まった
主任「改めて昨日はお疲れ様。みんなの頑張りで
節目標の達成に大きく近づけた」
主任「だけどそれは、それ。今日はまた違う
フェーズだと念頭に置いて欲しい」
ピリッとした空気に変わる。
ここからが本当の業務開始だ。
主任「営業女の働きで環境も大分判明した
でももう、古い情報だ。今日は足場を固める」
手招きで僕が呼ばれる。
携帯サーバーからPADを取り出し手渡す。
主任「各地点情報は現在カレントでは無いので
随時最新、一元化の為には地点観測機の設置を要するんだね」
主任「まずはここと、ここと、ここ。
以前の観測機は死んでるので今日はその新設に当たりまーす」
げげっ今日は忙しくなりそうですね。
ーー コンビニ前 平社員 ーー
平社員「お疲れ様でーす」
技能モブ「おぅ、お疲れ」
昨日詰めていたコンビニを足掛かりに今日の
業務は進められることになった。
まずは獲得シェアを確固たるものとする為に
統括地外周に観測機を埋設していく必要がある
シェア内側については技能班のサポートがある為、そこまで問題は無い。
だか、今日はその外側にシェア拡大しつつ観測機設置の予定であり
昨日ほどでは無いがソコソコの固定タスクが設定されている。
ドリドリドリ
後輩女「へぇ観測機ってこうやって設定してたんですね」
後輩男「うん、設定位置まで行ってセット。
作動させると自立計算して情報授受可能深度まで進む」
後輩男「掘り起こされたり、地表からの衝撃で壊れちゃダメだから
結構深くまで掘って行くんだよねー」
端末『最適深度に達しました、諸元入力とポイント設定をして下さい』
後輩男「ただ、この最後の設定だけはマニュアルなんだよね」
ピー、ピッピッピッ
端末『設定完了。サーバーリンク正常。データ反映します』
平社員「GPS情報の精度とパスフィルターの同期上仕方ないだろ」
後輩男「そうなんですけどねー」
端末のマップアプリを確認すると今設置した
場所に輝点が表示された。
動体センサー、集音機、データ中継点の完成だ。
今日はあとシェア内に6ヶ所、シェア外に3ヶ所設置する予定だ。
主任「よーし終わったかー?次行くぞー」
周辺警戒をしていた主任の号令だを
さて、さっさと次のポイントまで行っちまおう。
ーー 設置ポイント5ヶ所目 平社員 ーー
その後も設置作業は順調に進みシェア内は予定を繰り上げて完了の勢いだった。
だけど、そういう順調で気が緩む時ほど何か起こるもので…
先輩男「ん?いまチラッと反応無かった?」
同期男「え?いや俺には分かりませんでしたが」
主任「念の為、レコーダ確認。先輩男頼む」
先輩男「了解。どれどれ…」
先輩男「あ…マズイかも…」
主任「なにが?」
先輩男「たぶん半分囲まれてるわ、ここ」
悪い予想ほど良く当たるもんだ。
主任「設置中止っ。後輩男、モブB、周辺確認」
平社員「そういや、あちらの観測機あんま潰した記憶無いよね…」
同期男「後輩男!スクリーニングちゃんとやってたのか!?」
主任「待て、同期男。今は現状確認がプライオリティAだ
二人とも周辺確認に集中しろ。先輩男バックアップ」
主任「他3人は周辺警戒」
全員「了解!」
ーー 情報収集中 後輩男 ーー
あわわわわ、何で?しっかり工程上の異物確認したよ僕。
同期男さんに怒られる。
早く周辺情報を集めないと。
同期男「後輩男!いま何%だ?」
後輩男「はいー。やっと40%です。」アセアセ
主任「焦らせるな。後輩男、ゆっくりで良い。
しっかり、正確に、だ。」
後輩男「うーん、えーと」アセアセ
端末『ーーBLANKーー』
後輩男「こっちは?」
端末『ーーBLANKーー』
モブB「探査しましたが、著変無いですね」
先輩男「そっか、気のせいかな?」
あっそうか、広域帯じゃなくて、ナローで細かくスィープすれば…
端末『ーーBLANKーー』
端末『ーーBLANKーー』
端末『ーーBLANKーー』
端末『ーーBLANKーー』
端末『通信波確認、位置情報解析中…』
あっ当たった!
えーと、位置は?……
後輩男「しゅに…」
後輩男「あっ……」
端末『後輩男さんの退職届けを受理しました』
端末『』プツッ
.
ーー 設置ポイント5ヶ所目 主任 ーー
カクッ…パタ。
同期男「え?」
後輩女「うそ…」
先輩男「チッ」ガバッ
主任「各自、9時方向に対し遮蔽物に入れ」
モブB「?っ痛うぅ!?」ダダッ
ビシッ、チュイン
平社員「後輩女!!!」グイッ
モブA「スナイパー!スナイパー!」
同期男「」ハッ
チュイン…ビシッ
主任「あちらさん腕っこきだ。頭上げんな!」
くそ!くそ!クソッタレ!
ここまで周辺警戒も情報照会も怠らなかった。
何でだ、何でこうなった。
主任「遠距離止んだら直接折衝来るぞ!」
先輩男「モブB!状態はどうだ?」
モブB「大丈夫です、カスっただけです」
主任「全系統を動体感知に回せ、範囲は中距離で良い」
主任「おいっ!同期男!ボケッとしてんじゃねぇ!」
先輩男「同期女、姿勢高い。もっと屈め」
主任「状況に呑まれるな。冷静になれ、焦ればミスを誘発するぞ」
先輩男「モブA、中距離用拡散マーカー用意」
モブA「了解。…OKです」
主任「中心10m、円周80mにセット」
モブA「セット。…完了」
主任「っ撃てぇ!」
パシュン、パーン。
パラパラパラパラ
先輩男「モブB、感度は?」
モブB「問題ありません」
先輩男「マーカー接続しろ。他全員、モブBとデータリンク」
ーー 統括地外周 民家周辺 主任 ーー
(=設置ポイント5ヶ所目)
よし、これで何とかあちらの近接行動はケアできるな。
あとは遠距離か…
チュイン、チュイン、ビシッ
くっ、正確だな…さてどうするか?
後輩女「射角、聴感にて相手位置予測完了」
後輩女「予測位置でデータリンクさせます、許可下さい」
優秀な部下に恵まれたもんだ。
主任「リンク前に予測点付近に観測弾発射」
あちらさんも丸裸にしてやれ」
後輩女「了解!」スチャ
主任「観測弾発射、位置補足後は自由射撃」
カシン、パシューウ
後輩女「完了、自由射撃に移行します」
先輩男「後輩女、スナイパーは任せたよ」
先輩男「平社員!」
平社員「はい!」
先輩男「中、近距離来るよ、ウチの可愛い娘ちゃんに
指一本触れさせるなよ。」
平社員「了解!」
主任「同期男。防御陣形張るよ、お前が要だ」
同期男「りょ、了解」
先輩男「モブA、モブBに張り付いて。
モブB、自己防衛しながら状況整理、できるよね?」
モブA「了解」
モブB「了解」
ビシッ
カシン、パシュ
後輩女の牽制が効いてきたな。
後はどんだけあちらさんが出張ってくるかだ。
端末『マーカー及び遠隔観測点リンク完了、表示します』
マーカーは撒いた範囲に社員以外が侵入すると
位置と人数を測定しマップ内に表示する。
遠隔観測弾は撃ち込んだ周辺の先方情報を取得
範囲は狭いが連続的な追跡が可能だ。
双方ともに測定、分解能が高くないので、
先方の社員情報分析までは不可能
だが、これで先方に対する目は手に入れた。
全員の様子も大分落ち着いた。
モブB「先方さん、いらっしゃいました」
モブB「11時の方向……」
主任「どうした?」
モブB「40名様?ウソだろ?」
…流石に思考停止だこりゃ。
こんな時の対応マニュアルには
【速やかに自部署帰還、上司に相談】
しか書いて無いヤツだな…。
同期男「うおぉぉおぉぉ!」ダダダッ
主任「え!?」
平社員「おい!バカ、何やってんだ!」
同期男「後輩男の、後輩男のぉ」ジャラジャラ
同期男「カタキだぁ!!!」ピン、ポイッポイッ
ドルルルルル…
ドンッドンッ
主任「血迷ってんじゃねぇ!戻れ!早く戻れ!」
同期男「うぉぉ!」ドルルルルル…
主任「タメだ。平社員、モブA、先輩男、頼む」
主任「後輩女、何とか食い止めてくれ」
3人「了解」
後輩女「精一杯やってるつもりです」
さて、俺も行くか。
部下の不始末は上司の責任だ。
後輩男の分も含めて俺が直接返してやるよ。
ーー 折衝中 同期男 ーー
端末『進行方向のタスクは標準業務に比較すると高難易…』
同期男「スケジューラーOFF、視認中心及び近接目標に適宜タスク設定」
ワラワラと虫みたいに湧いてきやがって。
ドルルルルル…
端末『タスククリア…』
端末『新しいタスクが追加され…』
端末『メイン 残弾…』
次から次へと流れていく端末情報も
端末『弊社社員が後方から…ガー』バキン、プツッ
右前で修羅と化してる先輩男さんも
落ち着いてる様に見えて一番激昂してるような雰囲気の主任も
音も無く現れた営技のナイフを隣で受け止めてくれてる平社員も
目立たないけど地味に援護してくれるモブAも
そこで俯せに倒れてる後輩男も……
何だろう?これ現実なのかな?
主任「………」パクパク
主任?何言ってるんですか?
主任「…き男、同期男!」バキッ
同期男「っ痛ぅ」
主任「馬鹿野郎!これ以上俺に退職経緯報告書かせるつもりか!」
主任「早く端末脱げ、下がってその傷手当てしてこい!」ドカッ
景色に色と音が戻ってきた。
額がヌメヌメする。
平社員「主任!ちょっと席外します!」
横目では平社員が営技ともつれる様に民家の中に飛び込んで行くのが見えた。
俺は蹴り飛ばされた勢いのまま、後方のモブBの所まで辿り着いた。
あぁでもあっちに、後輩男の所に戻らないと。
フラフラ
モブB「同期男さん!動かないで!」
何すんだ、邪魔すんな。
プスッ
カタキを俺がカタキを……
ーー 民家内 平社員 ーー
端末『近接対象、情報分析中…』
平社員「あっぶねー。頸動脈スレスレだよ」
首筋から流れるモノを感じる
それが冷や汗じゃ無いことは分かってる。
ジリジリとお互い見合うだけの時間が僅かに過ぎる。
端末『分析完了』
『FHW株式会社 第2技術部 営業技術課
特殊営業係 エリート男』
正直、一番名刺を頂きたくない相手だった。
だけど1対1の直接折衝なら…
ビュッ、シュッ
平社員「うおっ、っと」
うわ。ダメだ躱すので精一杯だな…
ビュッ、ヒュッ
躱しつつ距離を取る、長モノは無意味だな。
スラン
腰のナイフを抜き逆手に構える。
久振りの感覚だ。
こう見えてもナイフは、
平社員「ソコソコ自信があるのよっと!」
ヒュッヒュン、スパッ
エリ男「うっ、何だと…」タラ
平社員「えっ!これ避けんの?」
ヒュッ、ヒュン
シュッ、ビュッ
ヤベェ互角?負けてる?
営業爺仕込みのナイフ術で倒せない相手って
平社員「中々の腕前ですね」
エリ男「フン、折衝相手に話す言葉など無い!」
膠着した状況の中、外のみんなの状況も気になる
さっさと折衝完了させて通常業務に戻りたいのに…
ヒュッ
外の銃声がより音を増す。
砲撃の音も混ざり始め気が気じゃない…
ヒュン、ヒュン、スパッ
ナイフが空を切る音、互いの服を切る音だけが
狭い屋内で交互に放たれる。
エリ男「」パクパク
ん…通信してる?
この状態で参加者増えたらどうにもならんな…
エリ男「チッ」
舌打ちをしながらあちらから距離を取る。
少し睨み合う。が、様子がおかしい。
あちらさんが腰に手をかけようとする。
こちらも同時に腰からサブを滑り出させ後ろに飛び退く。
カシュカシュ
パシュパシュ
エリ男「仕掛かりは本意では無いが」タッ
カシュカシュ
エリ男「今回は貸しておく…」
ポイッ、コロン
平社員「!」ダッ、ガチャン
ガラスの窓を破り外に転がり出る。
ズズン
平社員「ふぅ」
折衝し切れなかったが、何とかお引取り頂けた
エリート男か…もう会いたく無いな。
ーー 民家周辺 後輩女 ーー
カシン、パシュ
また、避けられた。
ここまで思う通りに進捗できないのは初の経験。
端末『目標ロスト』
後輩女「うーん…最後の一発か」
カシン、パシューウ
観測弾が切れた、元々そんなに持ってきて無かったし
こんなに使うことになるとは想定して無かった
業務計画、想定が甘かったと反省する。
ただ観測不可範囲からだと平社員さんたちの
位置には干渉できない所に移動させたので
これはこれとして良しとしよう。
ビシッ
相変わらず気を抜くとかなりの近接弾がくる。
他の人の心配をしてる余裕は無いわ。
自分の仕事をしっかり終わらせることに集中しよう。
ーー 先方とブレスト中 主任 ーー
同期男は下がったな、あとはモブBに任せよう。
バスン
っ痛!直撃!?
肩口の一番厚い部分か…危ねぇ危ねぇ
ん?…肋骨は逝ったか?
平社員「主任!ちょっと席外します!」
おぅ行ってこい、って営技さん相手か
主任「しっかり、落ち着いてな」
って聞こえてないか
ワラワラ、ターンタタタタタ…
カシュン、カカカ、カカカ
あーしかし、まじぃなこれ…昨日の比じゃねぇや。
主任「課題が一辺に展開され過ぎてる、このままじゃジリ貧だ」
主任「絞り込むよ!あそこの民家まで走れ!」
主任「モブB、全員の現位置に支援砲撃
この真上に落とせ、20秒後だ!」
端末『先輩男:了解、大胆だね』
端末『モブA:了解』
端末『モブB:了解』
ピン、ピン、ピン、ポポイ
ヒュッー、ズズン
ズズン
全員「」ダダダダダッ
ーー 民家ガレージ 主任 ーー
さて、今ので折衝相手も減らしたし、全方位対応も避けられた。
目の前の業務に集中、集中。
カカカカカカ、タタタタターン
端末『残弾 0、弾倉を交換して下さい』
端末『弾倉 残り2、注意して下さい』
まぁマズイ状況に変わりは無いか。
遮蔽物に入ったおかげで状況は落ち着いたが…
端末『モブA:RPG!』
だよなー。そうなるよなー。
身を屈めて祈るしかない。
シューン
パシュ、カッ、ドドーン
主任「え?何だ?」
端末『後輩女:ふわー当たった』
端末『先輩男:えっ?何したの?』
端末『後輩女:危なそうなんで狙ってみたら当たりました』
端末『後輩女:多分次は無理です、では』
飛んでる砲弾に精密射撃って…
後輩女、恐ろしい子…
カカカ、カシュン、カシュン
弾も無い、先輩男もモブAも所々被弾してる
平社員も戻ってこない
端末『残弾 0、弾倉を交換して下さい』
もう限界かな?
カカカ、カシュン
主任「モブB、後輩女。安全圏まで下がれ」
主任「俺たちのことは気にするな」(笑)
端末『先輩男:うん、どうにかするよ』
タタタタ
端末『後輩女:でも…』
主任「分かりやすく言うと"命令"だ」
主任「下がって出張所に状況を知らせろ」
タタタタ、ズズン
カカカ 端末『残弾…』
主任「でも と だって は嫌いなんだよ」
ーー 別の民家 後輩女 ーー
前方100mちょっとでは先方の技能班さんが主任たちを詰めている。
こっちから手を出せば分散できるだろうけど、
正直、あちらの狙撃係さんの相手しながら半端に手を出しても…
でも…
後輩女「モブBさん」
モブB「うん、仲間は見捨てられないよな」
二人で見合って頷き合う。
よし、覚悟は決まった。
???「ひょほほ、良い顔じゃの」
???「じゃが、無謀と勇気は別物じゃぞ」
!?
モブB「!?誰だ!」ジャキ
こんな近くにいるのに気配が全く無かった。
ううん、目の前にいるのに今も気配が曖昧だ…
???「先輩男に主任に平社員か、あのバカ共め」
細い目を更に細め、顎の白髭をさすりながら呟く
どうやら我が社の関係者らしいが油断はできない
後輩女「あ、あの…失礼ですが…」
???「まぁまた後での」
???「今はそれどころでは無かろう」シュン
え?消えた???どこに?
ビシッビシッビシッ
モブB「ボっとしてんな!」ガバっバスン
後輩女「モ、モブBさん!大丈夫ですか!?」
モブB「気にするな、それより…」
端末『認識不能:君らはそこで待ってなさい』
端末に強制介入?どんな技術なの?
あの老人を信じて良いのか?
混乱の深まるまま私は元の業務に戻った。
ーー 民家ガレージ 主任 ーー
後輩女とモブBのフリップが動かない
何やってんだアイツらは…
モブA「RPG!」
先輩男「はいよっと」カカカ
体制も整ったのでどうにかなってるが
どっちにしろ残弾と先方の人数を考えると無理だな…
モブA「予備弾倉終了、節約します」シャコン
先輩男「俺もメイン終了、サブ残り3本」シャカ
主任「よしっ、せめて最後まで頑張ろう」
端末『認識不能:バカもん、それはただの諦めじゃ』
目線の先にいた先方技能班3,4人が崩れ落ちる
一瞬見えた姿がまた消え技能班の影が減っていく
端末『認識不能:理念その七』
主任 / 先輩男「はい!最後の一秒まで考え抜け。
考えるのを止めた瞬間に失敗は確定する」
主任「え?」
端末『認識不能:まったく。デキの悪い教え子は
持ちたくないもんじゃ』
主任 / 先輩男「じ、爺!」
端末『社員情報を受信しました』
端末『営業爺:爺とは何じゃ。後でしっかり指導してやるわい』
端末『営業爺:まぁそれも後でな。ホレ出てきなさい』
主任「え″?そっちにですか?」
端末『営業爺:弾が無くてもできることはある』
端末『営業爺:少しは考えなさい』
ガチャーン、ズズン
主任「ケホ、今度は何だ?」
後ろの窓から平社員が飛び出てきた。
営技との折衝は上手く乗り切ったみたいだな。
平社員「はーしんどかった…」
主任「よし、行くぞ平社員」
先輩男「早く行こ。爺に何されるか」ガクブル
平社員「え? え?」
ーー 民家庭先 平社員 ーー
主任「モブAはここで後方支援よろしく」
先輩男「平社員、メインと弾倉ちょうだい」
スッ
先輩男「はいモブA、無駄打ちしないでね」
端末のログを確認する。
なるほど、主任は俺をリストラしたいんだな
端末『営業爺:何しとる、さっさと来んか』
平社員 / 主任 / 先輩男「はい!今すぐ」
ーー ブレスト再び 平社員 ーー
メインは没収されたし、何故か営業爺はいるし
何か凄い人数に囲まれてるし…
端末『営業爺:営業の基本、多人数との折衝時は懐に飛び込むべし』
端末『営業爺:彼我差が大きいほど逆に相手は何もできなくなるものじゃ』
シュン、サクッサクッ
端末『営業爺:ホレ、ボっとしとらんで早く働かんか』
日本刀のような刃渡りの長い片刃ナイフを振るう
無音機動の動きも加わり縦横無尽に技能班の中を
駆け抜けていく爺は手のつけようが無い。
全員「はいっ」ヒュッ、スパッ
飛び出して群に突っ込み、また戻り
三人で背中を預け合いながら移動を繰り返す
避けた弾が同士討ちを誘い、いつの間にか先方は
俺たちへ手を出す術に困窮していた。
確かにこれなら数の不利は出にくい。
でも体力にも限界はある。先方のナイフがかする回数も増えてきた。
平社員「主任、ツライっす」
主任「奇遇だな、俺もだ」
先輩男「終わりが見えないってモチベ下がるよね」
愚痴を吐きながらも堅実に相手を減らしていく
モブAの支援も相まって最悪の状況は脱しつつも
ゴールの見えなさは精神を削っていった
ワラワラ、ゴチャゴチャ
平社員「爺さん、キリが無いっす」
端末『営業爺:何を泣き言言っとる。これぐらいの相手なら
あと2時間はタスクを進め続けられんとイカン』
先輩男「いや、普通に無理ですって」
主任「 確かにもう一手必要かと…」
先輩男「切れ味悪くなってきた…」
ヒュパ、シュ、サクっ
端末『営業爺:まったく、相変わらず文句だけは一人前だな』
端末『営業爺:お前らに言われんでも』
端末『営業爺:もう打ってあるわい』
ポポン、ポポン、ヒュー
ーー ダッシュ中 主任 ーー
ポポン、ポポン ヒュー
バシュ、バシュ、バシュ
端末『営業爺:お望みの次の一手じゃよ』
端末『営業爺:早く逃げんと黒焦げじゃぞ』
カッカッカと高らかな笑い声がスタートの号砲だった
俺たち三人は先方に背中を見せるのを躊躇せず
後ろのに向かって走り出した。
端末を良く見ると後輩女の更に後方に緑の
マーカーが無数にこちらへと向かってきている。
端末『技能班長:お疲れ様、営業爺さんからは
お前達のマーカーを狙えと言われている』
端末『技能班長:2分間斉射の後、進捗の予定
それまで狙い続けるので頑張って避けてくれ』
端的に要件だけ伝えられ内線が切れる。
前後からの弾に当たらないよう祈りながら走る
主任「後輩女ー!モブBー!走り出す準備ー!」
後輩女「はい?」
モブB「同期男はどうすれば?」
呆気に取られる二人の顔が見えてきた
後ろでは轟音が鳴り響き始めた。ヤバイ近い。
主任「担げ!」
後輩女「いや無理ですって」ブンブン
主任「モブA、そっち持て!」
モブA「了解」
辿り付きざま同期男を引き起こし、二人で肩を担ぐ
後輩女とモブBが不思議な顔をしている
平社員「ログ見ろ。いや、何でも良い走るぞ」
バシュ、バシュ、バシュ
ヒュー
後輩女「あの…軌道が私達を向いてるような…」
弾着予測アプリを見ながら後輩女が呟く
ええ、その通りですとも
少し向こうに横たわっている後輩男が見える。
後で迎えにくるからな…
ーー 出張所内 平社員 ーー
後輩男は安全衛生課が連れて帰ってきてくれた。
予定不履行と装備の紛失、後輩男の退職を理由に最初は真っ赤な顔だった係長も
報告された成果と営業爺の取りなしもあって、最終的には上機嫌でテントに帰って行った。
だが俺たち三人はレク広場の端で直立不動のまま
かつての指導員と対峙している訳だが…
営業爺「まず誰から行こうかのぉ」
主任「あのー。その前によろしいでしょうか?」
営業爺「なんじゃ?」ギロリ
主任「えっと、何故こちらに?」ビクビク
営業爺「ふむ…営業女じゃよ。あの子の労災の知らせを聞いて、
本人に色々と話を聞いたら知った名前が出てきたのでな」
営業爺「少し気になる点もあったので来てみたら
お前らがあのザマだったんじゃわい」
先輩男「あーやっぱりあの子の言ってたのって爺様のことだったんだ」
平社員「シニアで教育係やってるんスね」
営業爺「そんなことはどうでも良い」
周囲の気温が何度か下がった様な錯覚を起こす。
営業爺「で、何だあの業務進捗は?のぉ主任?」
主任「あっはい、工程確認も履歴照会もしっかりやってたつもりなのですが…」
営業爺「語尾を濁すな。都合良く分析するな」
営業爺「スクリーニング時の異常と昨日からの先方営技の不可解な動き、
予測材料が山ほどあるぞ。なぜなぜもしなかったのか?」
主任「はい、申し訳ありません」シュン
営業爺「次に…」ギロ 「先輩男」
先輩男「はい」カチン
営業爺「お前も班長だろ?なぜ主任に全部任せる?」
営業爺「二班共同は別に良い。だが、指揮系統は混同しちゃいかん。
お前の部下のことはお前が一番分かっているんだ。命令権を放棄するな」
営業爺「実務ばかりでマネージメントは全然
成長せんの。仕事をさせるのがお前の仕事じゃ」
先輩男「スミマセン」ドヨーン
営業爺「次に平社員」
平社員「は、はい!」ピシーン
営業爺「特に無い。が、さっさと出世しろ。お前くらいだぞウチ出身でヒラのままは」
その後もみっちりご指導頂き営業爺さんはお帰りになりました。
いやしかし、ホント丸くなったな。
ーー 射撃訓練場 後輩女 ーー
パシュ、カシン
状況整理が足りなかった
業務計画も甘かった
パシュ、カシン
場の空気変化も感じられなかった
相手の気配も読めなかった
パシュ、カシン
イニシアチブも取れなかった
手玉に取る取られた感もある
パシュ、カシン
何より…
殺り切れなかった
パシュ、カシン
パシュ、カシン
パシュ、カシン
…………
ーー 医務室 同期男 ーー
目を開けると見慣れない天井が視界に広がる。
あぁそうか…眠らされてたのか…
左目と視界が無い。
顔に手を当てると包帯が巻かれている様だ。
産業医「おっ気がついたかね?体調はどうだ?」
何も答える気にならない。
同期男「後輩男は…」
答えの分かり切った質問。
意味が無いことは分かってる。
産業医「残念だが運ばれてきた…」
産業医が何か言っている。
聞いておいて何だか聞きたくも無い答えだ。
何だろう悲しいでも虚しいでも無い感情だ。
面倒くさい、吐き気がする、何も考えたくない
目を瞑って寝てしまおう。
そうしたら全部元通りさ…きっと。
ーー 2班テント内 主任 ーー
同期男は医務室
平社員はその様子を見に行った
後輩女は端末で見た限り訓練場に篭っている
一人きりのテント内。
こんなに広くて静かなんだな…
外から今業務を終えた別班の話し声が聞こえる
業務日報を書く
退職経緯書を書く
装備補充申請書を書く
人員補充もツール補充も同じ書類なのが気に入らない。
アイツらが戻って来る前に終わらせよう。
カコカコ、タン
主任「フゥ」
さて、明日の業務計画立てないとな…
ーー 出張所内 平社員 ーー
モブA「なんで、なんで定時補給貰いに行った
だけなのに…庶務課の子の反応が…」
庶務&総務娘「あ、あの人…」ヒソヒソ
泣きそうになっているモブAを横目に見ながら
テント群の中をブラつく
同期男の様子を見に行ったが眠っていて話せなかった
産業医の話だと一回起きて会話もできたらしい
良い状態とは言えないが最悪では無い。
まずは安心だな。
しかし、班員の退職は何回目でも慣れない。
いや、こんなこと考えられる時点で慣れてるのかもな。
自嘲気味な思考と共にアテの無い散歩は続く。
パシュ、カシン
パシュ、カシン
テント群の外れにある訓練場まで流れ着く
誰かが自己啓発している音がする。
発砲音、テンポから言って後輩女か…
班員の退職は初めてだったはず。
しかも同期の退職ともなると更にメンタルへの負荷は高まる。
平社員「ウン、先輩としてコンビとして話でもするか」
自分に言い聞かせる。
いや、俺の方が話したいだけなのかもな…
訓練場の扉を押し開けながらまた自嘲する。
ーー 訓練場内 平社員 ーー
薄暗い射撃レーンの一番奥に後輩女はいた。
端末を外し、イヤーマフをしているせいか近付いているのに全く気付かない。
後ろから様子を見守る……って
平社員「おい、後輩女!お前どれだけ撃ってるんだ」
銃身からカゲロウが立ち、白煙が上がっている
射撃間を狙い肩を叩く、集中して射撃訓練している奴に声を掛けるのは命懸けだ。
後輩女「あれ、平社員さん。どうしたんですか?」キョト
平社員「バカ、バレル歪みそうな程連続射撃してんじゃねぇよ」
後輩女「え?あっホントだ。きゃ熱っ!」
床に置こうとした手に銃身が触れたらしい。
後輩女「ふーふー」グス
休憩スペースに移り、飲み物の缶で手を冷やさせる。
目に涙を溜めながら手に息を吹きかけている。
そこまでのヤケドでは無いはずだ…
居心地の悪い沈黙が続く。
互いの胸の中の曇り具合を象徴しているようだ
後輩女「あの…」
平社員「なんだ?痛むのか?」
後輩女「いえ…。…平社員さんの同期でも、あの…」
平社員「退職者か?もちろん居るぞ」
昔話は好きじゃ無い。
他の奴が関わる話なら尚更だ。
平社員「聞きたいのか?」
後輩女「」こくん
まぁ今日は仕方無いか…
ーー 休憩スペース 後輩女 ーー
平社員「仕方無いな…」ポリポリ
やや浮かない顔をしながら平社員さんは話出した
平社員「今朝の話題とも関係するんだがな」
後輩女「先輩男さんと主任が同期でコンビな話ですか?」
平社員「そう、それ」トン
コーヒーの缶をテーブルに置き面持ちを変えた
平社員「お前、IDの18000番台って何人いるか知ってる?」
後輩女「いいえ、知らないです」ふるふる
平社員「答えは " ゼロ " だ」
97 : VIPに... - 2014/09/23 00:26:41.83 Ux7vpvVu0 74/2128000人も退職できるほど人員は余裕あるのか
98 : VIPに... - 2014/09/23 00:27:27.70 Ux7vpvVu0 75/212違う1000人だ
99 : VIPに... - 2014/09/23 12:51:11.92 DLFGmhIUO 76/21218期とか18年度入社とかじゃねぇのか。
100 : 1 ◆tsERP5rFx9iS - 2014/09/23 15:22:38.75 v171AmtVO 77/212
>>97>>98 高速自己レスに惚れた。
>>99 事業部毎です。
ーー 社内規則 社員ID設定基準 ーー
本社総合:000000番台
地域開拓:010000番台
建築事業:030000番台
人材開発:050000番台
IT事業:060000番台
各事業部毎の通し番号とし、詳細については
事業部毎に定める。
ーー 採用実績(全社) ーー
本年度:1623人
昨年度:1105人
一昨年度:4255人(HMB社合併分含)
多少の矛盾はご勘弁を
ーー 昔話中 平社員 ーー
平社員「そう、正確に言うとゼロになった、だ」
平社員「C市って分かるか?」
後輩女「えぇY県のTKD社の独占シェア地域ですよね」
平社員「あそこ、昔はS県扱い。つまりウチの会社のシェアだったんだぜ」
後輩女「ウソ、地形も位置的にもY県ですよ」
平社員「まぁそこをめぐっての話なんだか…」
…
………
……………
ーー S県Y町 平社員(回想)ーー
連絡車に揺られる技術係の面々
班長「よし、お前ら準備は良いか?」
班員達「はいっ!」
この頃、技術係は一班7人三班制だった。
中堅チームのベテランAさん、Bさん、Cさんと
若手チームが俺、先輩男さん、主任で構成されていた。
ベテA「どうだ平社員そろそろ慣れてきたか?」
平社員「はい、お陰様で。簡単な進捗なら一人で何とかなりそうです」
ベテB「ほぉ生意気な口聞くねぇ」グハハ
ベテC「ほら主任、先輩だろ?あれ位自信持つんだ」
班長「主任は別に自信が無い訳じゃないだろ
なんなら一番自信家なんじゃないか?」
主任「そんなことはありません班長」ツン
ベテB「まぁ真面目過ぎるのが珠に傷だな」
先輩男「zzz」クカー
ベテA「コイツは間違い無く大物だな」(笑)
チゲーネー、ゲラゲラ、ガヤガヤ
車内放送「あと5分で現場到着、成果を出してこい」
係長の声がスピーカーから流れる。
降車地は統括地外縁の簡易補給地だった。
班長「全員!私語止め!降車準備!」
ベテランさん達の顔から笑みが一瞬で消える。
さっきまでと同じ人達とは思えない表情だ。
ーー 降車地 畑の真ん中 平社員 ーー
班長「ベテAから降車開始」
ベテA「了解」
各班の中堅チームから降車が始まる。
3班の中堅チームの後ろに着き俺たちも降車する
係長「何をモタモタしとる!ここは先方シェアの目と鼻の先だぞ、さっさと…」
ベテC「!!!RPG!」
班長「即時降車ぁー!走れー!」
班長「降車済みの者は班単位で拡散展開!」
班長「姿勢を低くしろー!近接折衝もすぐ、ウグッ!」ターーーン
班長が連絡車にもたれ掛かりズルズルと倒れる
平社員「は、班長ー!」
ベテA「アホさっさと来い、班長はもうダメだ」
ズルズル
カッ、ズガーン
俺たちの乗って来た連絡車が紙っぺらのように
吹き飛んでいった。
車両の燃える炎がジリジリと背中を炙る
煙に紛れながらベテラン達に引っ張られ降車地から離れる
ウチの班長と3班の若手を除いて18人が集合した
2班長「係長、ご指示を!」
係長「」ポカーン
2班長「係長!…だめだなコリャ」
2班長「各班、ベテランは周辺警戒。若手は怪我が無いかチェック
確認取れた者から周辺警戒に当たれ」
スタスタ
2係長「被害は!?」
2班長「はい!1班長と3班若手が喰われました」
2係長「チッ若手は良いとして1班長は痛いな」
3班長「クッ」ギリッ
2係長「全くツイとらんな、1係長は?」
2班長「ご覧の通りです」
係長「」ポカーン、パクパク
2係長「ったく、使えんな。2班長、貴様がマネージメントしろ」
2班長「了解しました」ビシッ
平社員(あっ現場で対上司敬礼)
2班長「1班は名目上、私の所に吸収とするが、ベテA貴様が仕切れ」
ベテA「了解」
3班長「ウチはどうする?」
2班長「どうするもこうするも半分じゃ仕事にならんだろう?
後方の支援、警戒を頼む。重要な業務だ」
3班長「分かった」コク
主任「2班長、若手チェック完了、異常無し
周辺警戒に従事開始しました」
2班長「うん、ご苦労様。引き続き若手の集約を頼むよ」
主任「了解しました」
降車地でのノンアポ折衝に係はガタガタ。
連絡車も4台中2台が損壊。
加えて前方では直接折衝が始まっている。
他の係の応援も望めない。
モブC「2係長から、通信。班内無線に回します」
2係長『1係長に代わって課のまとめを私がすることになった
今回は社の総力をあげてのイベントだ、ウチが原因での失敗は許されん』
2係長『体制は若干崩れたが予定通りY町全域のシェア獲得後、
C市とのシェア交錯地内側まで進捗を行う』
2係長『各班、目標管理を再確認、業務予定と
照らし合わせ確実な運営を心掛けること、以上』
2班長「よーし、まずは安全な足場を確保するか
3班長、ベテA来てー、役割分担するよー」
ベテAさんを交えた3人が真剣な表情で話しあっている。
2班長「人数減ったし定常進捗はキツ…」
ベテA「いや、そこは中堅が前に出て…」
3班長「それだとウチの班が…」
暫くの話し合いの後、ベテAさんが帰ってきた。
ベテA「先頭はウチが務める。重要な役割だ」
ベテA「ま、気張っても結果は変わらん。いつも通りで行こう」
班員「はい!!!」フンッ
ベテA「だから気張り過ぎんなって」苦笑
アハハ、ソッカー
ーー Y町中心部 平社員 ーー
降車地点での折衝は初期被害のみで終了。
各係毎に元のままの予定に従った進捗を開始した
ベテA「こっからは建物が増えてくる、視認性悪くなるから更に注意なー」
ベテC「先輩男、動線の取り方悪いよー。
視界保ちつつ、周囲から遮蔽する所辿るんだよ」
OJTを交えた進捗は極めて効率が落ちる。
徐々に移動速度が落ちながら進捗が進む、いや遅滞していく。
2係長『1係!位置情報の更新はどうした!』
ベテA「現在市街地に進行中、まだ先方からの接触ないも…」
2係長『慎重と臆病は違うんだぞ!進捗急げ!』
ブツッ
ベテA「ま、あぁは言われたけど焦らずに急ごう」
自社のシェアからこんなに突出するのは初めての経験だった。
歩を進める度に緊張が走る。
一歩一歩で先方の影に怯える。
中堅チームがリードしてくれなかったら1mm足りとも前に進めないだろう。
ベテB「ん?いらっしゃったかな?」
緊張の針が最大を振り切る。
自然と手が震え始め、身体全体に伝播する。
主任「落ち着け」
少ししか期の変わらない主任の落ち着きように
ある種の嫉妬すら感じる。
自制と反抗の入り混ざった感情で己を鼓舞する
ガサッ
平社員「うわっ!」カカカカ
飛び出してきた影に思わず反応してしまった。
トサッ
見覚えのある作業着。
見覚えのあるマスコットチャーム。
倒れているのが同期だと認識するのに時間は掛からなかった。
ベテB「バッカやろー」ガツン
平社員「ウグッ」ズザー
ベテB「その方向から来るのはウチの社員に決まってんだろ」
ベテA「ベテB、音を出すな。あと可哀想だが
不用意に出てくるこの娘も悪い」
ピクッ
平社員「まだ息がある」ガバッ
倒れた同期に駆け寄ろうとする。
ピョコッ
同期女「はーびっくりしたー」パンパン
平社員「!!」ビクッ
が驚くほど軽やかに、平然と起き上がり土埃を払っている。
ベテC「あれ?一発は完全に当ってたよね?」
その場の全員が不可解な顔をして同期女を見つめる
同期女「あ、はい。ここに」ユビサシ
胸元に付けた携帯無線に弾がめり込んでいた
デカくて重いと不評だったそれが同期女の命を救った。
ベテC「危なかったね、この距離じゃ防弾ベストでも抜けてただろうし」
平社員「はぁー」ヘナヘナ
足の力が抜け、その場にへたり込んだ。
チュイン
その俺の頭上、ヘルメットを掠りながら銃弾が通過した。
ーー 応対開始 平社員 ーー
ベテA「来客!折衝開始!速やかに散開!」
ババッ、ズルズル
ベテBさんに首根っこを掴まれ引き摺られながら遮蔽物に入った。
この頃は射角も読み切れなかったこともあり、
ベテランさん達の的確な動きが魔法のように感じた。
ベテA「ベテC、あちら何名様だ?」チラ
ベテC「ちょっと待って、集音、動体分析中」
大型のバックパックに入った情報端末で分析を掛ける。
網羅範囲も狭く計算も遅い、オマケに重い。
この頃の端末の実用性は極めて低かった。
同期女「あのー。私はどうすれば?」オド
ベテB「その辺で隠れて小ちゃくなってろ!」
タタタタ、カンカンカンカン
隠れたゴミ収集コンテナに弾が当り音を放つ。
各人の位置に的確に撃ち込まれ牽制される。
ベテA「チィこれ技能班じゃないな…」
反撃しようと頭を上げれはそこに撃ち込まれる。
完全に釘付けにされた俺たちは2班長に救援を求めた。
2班長「スマンこちらも折衝中で人が割けない
2係長にお願いしてみてくれ」
お忙しそうだ。
ベテCさんが嫌々2係長に繋ぐ
2係長『知らん!これ以上足を引っ張るな!』
やっぱりという顔でベテラン3人が項垂れる。
若手3人+1人は黙ってその様子を見つめるしか無かった。
ーー 釘付け中 平社員 ーー
ベテA「さて、ドン詰まりだ」フム
ベテB「あぁどうにもならんなコリャ」ハハ
ベテC「もう面倒臭いな」フゥ
ベテC「あっあと、解る範囲だと8人な、相手」
なんでこの人達は笑っているんだろう?
この状況におかしくなったんだろうか?
そんなことを考えている隙に三人は飛び出して行った。
ベテA「お前らはそこで待機なー」カカカカ
ベテB「イテッ」バスン
主任「え?」先輩男「は?」平社員「マジ?」
同期女「お気を付けてー」フリフリ
出た瞬間に左手に被弾してたよ。
防弾ベストって万能じゃ無いよ。
社会人として一人前になるということは、
それまでの常識を捨てることだと学びました。
ーー 訓練場休憩スペース 平社員 ーー
後輩女「無茶苦茶ですね、その人達…」
平社員「あぁ。あんな風にならないとなのかって
悩んでいたのがバカバカしくなるよ」
後輩女「ちなみに平社員さんは何年目だったんですか?」
平社員「ん?俺か三年目だな」
後輩女「へぇー今の私より下でその状況ですか」
平社員「まぁ今みたいにOA進んで無かったからなぁ、色々泥臭かったよ」
平社員「で、まだ続くんだが聞くか?」
後輩女「」コクコク
平社員「んじゃ」グビッ
平社員「結局三人は笑いながら帰ってきたよ」
平社員「もちろん折衝完了させてな」
平社員「で、そんなこんなを繰り返しながらY町シェアの確定は進んだ」
平社員「ま、ベテランさん達みたいな腕利きがあんだけ居れば当たり前だが…」
平社員「問題はその後のC市への業務進捗だったんだ…」
空になったコーヒーをまた置き、話を続ける
ーー 国道分岐点 平社員 ーー
この頃C市へのルートは川沿いの旧道と山あいのバイパスがあった。
Y町の独占シェア化を完了させた我々は、
この付近で工数を集約させる為に待機していた。
この時点で節7日目、残業規制の緩い時代
残業続きでも何とも思わなくなっていた。
裏直も合流し始め、続々と人数が増えていった
営業部:800人、技術部:2200人
統括部:600人、企画部:200人
工機部:300人、製作部:150人
4000人を越す大所帯は後にも先にもこれが最後だった。
事業部全体の2/3の工数がここに集結していた。
部長、課長も半数以上がこの業務に従事しており
本当に全社挙げてのイベントなのだと実感した。
企画部長「えーこのイベントは中計にも明記された重要なイベントです」
企画部長「この結果いかんが、我が社の将来を決めると言っても過言では無いでしょう」
企画部長「各自の目標を確実に達成させ、
事業部目標を達成できるよう努力して下さい」
先輩男「目標、目標、か」
主任「うるさい、ちゃんと話を聞け」
何人かの挨拶が終わり解散の号令が掛かる。
それは何故か班毎では無く、中堅主体の人員
一般、若手主体の人員に分けられ別々に集合させられた。
技術部長「ここから二手に分かれて進捗する」
技術部長「技能系若手Grのこちらが旧道側からまずは折衝開始」
技術部長「引き付けたその後、バイパス側から中堅Grが折衝開始
こちらのGrには中堅が素早く折衝する為の地盤造りを任せる、以上」
スタスタ
平社員「囮ってこと…?」
先輩男「それ以外表現しようが無いな」
主任「つべこべ言わずあっちに集合だ、行くぞ」
退職勧告に近い目標を与えられ、若手みんながポカンとしている。
各自思考の追い付かないまま集り不安を語りあっていた。
ーー 囮組集合場所 平社員 ーー
管理課長「ハーイじゃあ二人組作ってー」
集められた俺たちはツーマンセル行動を命じられた
平社員「な ん … だ と」
部の中で自由にコンビを組めという命令に絶望した。
社外行事とかに参加しない俺は親しい同年代の知り合いに事を欠く
主任は先輩男と組んだみたいだし。ウロウロ
平社員「あっ」ピコン
遠くに唯一の知り合いである同期男の姿を見つけ
絶望の淵から這い上が…
同期男「よぅ平社員、とんでも無いことになったな」
特技女「平社員君久しぶりー」
…ることはできなかった。
二人でコンビを組んでしまったようだ。
平社員「いいさ、一人でいいさ」フン
特技女「あー同期女ー」ブンブン
同期女「特技女ちゃーん」テテッ
捨てられた仔犬の様にトボトボ歩いていた同期女が特技女に呼ばれ寄ってくる。
特技女「コンビ見つかった?」
同期女「まだー」シュン
こ、これは!
千載一遇のチャンスを逃す訳にはいかない。
平社員「よ、良かったら組んでやっても…」
同期女「いいの!?ありがとー」キラキラ
俺の手を握り嬉しそうに飛び跳ねる。
平社員「そういえば、その…この間はゴメン」
同期女「大丈夫ー無線も新型になって快適だし」
同期女「あっ見て見て、今度の無線ってOA機能も入ってるんだよ」パカッ
特技女「わっ凄ーい」イイナー
同期女「モニターも兼ねてるからレポート書かなきゃなんだけどね」
はしゃぐ女子二人に毒気を抜かれながら
俺たちは次の命令をその場で待ち続けた。
ーー 集合場所 平社員 ーー
その後部毎に機械的に編成が割組まれ、10人1組前後でまとめられた。
班長もいない、まさに烏合の衆だ。
2000人からの若手が集まる場はそこが現場だと
言うことを忘れさせるくらいの賑やかさ。
列は整っているが組織とは言えないレベル。
管理課長「静粛に!」
水を打ったように周囲が静まる。
騒がしさが苦手な俺としては助かった。
管理課長「いまから君たちには旧道沿いから進捗を始めてもらう」
管理課長「部長も仰っていたが中堅チームの活動基盤を作るのが最大の目的だ」
管理課長「若手だけで業務進捗する機会をこういった大きな場で
与えられた意味を良く考え、自己の成長の為にも頑張ってもらいたい」スッ
技能課長「こちらのチームの全体マネージメントは私が承った」
技能課長「場慣れしている営業部チームを先頭に順次進捗を開始する」
技能課長「10分後に進捗開始だ。何か質問のある者はいるか?」
シーン
技能課長「無ければ…」
スッ
技能課長「うん?では君、所属と氏名は?」
先輩男「はい、営業部技術課の先輩男です」
先輩男「率直にお聞きします。私達は捨て駒ですか?」
ザワザワ、スゲーユウキアルー
先輩男さんの発言に周囲がざわつく。
誰もが思っていても一番聞けないことだった。
マネージャー陣の顔にも困惑の色が見て取れる
技術課長「断じて違う!」バッ
椅子に座っていた技術課長、つまりウチの課長が立ち上がり前に出てくる。
技術課長「統括補佐の技術課長だ」ガチャガチャ
技術課長「確かに本命の中堅チームに対して囮の様に見える
加えて事実その要素もある、しかしそれは捨て駒では無い陽動だ」
技術課長「ここにいる皆が確実な成果を上げてこそ成り立つ計画であり
中堅より君たちの果たす役割りの方が重要だ。
一人たりとも無駄な工数ロスは出させない」
技術課長「私も全力でサポートさせてもらう、一緒に頑張ろう!」
ウオー、ナルホドー、ガンバロー
疑心暗鬼だった状態の若手たち。その意欲が上がるのが手に取るように分かった。
ウチの課長が言うなら間違い無い、信じよう。
主任「俺たちが取っ掛かりか…」ボソリ
主任の呟きで冷静な思考が戻ってきた。
ここ数日で折衝の多い現場に慣れたものの、まだ不安は残る。
主任、先輩男さん、同期男、特技女、同期女
知り合いばかりの組なのが救いではあるが…
ーー 十分後 ーー
技能課長「では進捗開始、成果を期待する」
営業部から歩き始める、まだ警戒はいらない地域とはいえ緊張は隠せない。
旧道とはいえ側道も多い、拠点間も面でシェアに組み込まないと後方の憂いになる。
最初は長蛇の列だった集団も次第拡散し周りに
4,5組が見えるだけの状態になっていく。
川の対岸にも他の組が回っていく。
指示、指揮者が身近に居ない不安感は先方と相対した時とは違い底冷えするような重圧を生む。
先輩男「いい天気だなー」ノビー
同期女「そーですねー」ふぁー
見晴らしの良い旧道、C市への道のりはまだ始まったばかりだ。
ーー N町通過中 平社員 ーー
パララン、パララ
カカカカカカカカ
パシュン、カカカ
先輩男「折衝完了を確認」
主任「確認しました」ユビサシ、ヨシ
同期男「ヤベ、弾倉終わった」
平社員「あ?その辺の退職者の持って行けば?」
ガサゴソ
同期男「んじゃ借りてくな」ナムー
Y町をスタートして丸一日。
幾たびの折衝を繰り返しN町中盤まで辿り着いた
定期補給も無いこの現場では作業糧食を囓り
退職者の弾倉を拾って進捗を進めていた。
今回装備統一した理由はこの為か…
実地は最高のOJTだ、頼れる上司達もいない。
バックアッパーもいない。代わってくれる人もいない。
この環境は俺達を大きく成長させた。
普段の業務やOFFJTでは得られない位の経験をし、能力は目に見えて伸びた。
始め10名だったウチの組も今や6名。
メンバーはご想像の通りだ。
特技女「そういえば…」
同期男「どうした?異常か?」
特技女「ううん。つまんない事なんだけどさ…」
特技女「この働き誰も評価付けてなくない?」
同期男「!」平社員「!」先輩男「!」主任「!」
同期女「どーゆーこと?」カシゲ
特技女「いや。どんなに頑張っても成績査定に関係無い訳よ、この業務」
核心をついた一言だった。
言うなれば頑張り損。
あぁ何時間か前に見たあの組はそれに気付いてたんだな…。
全っ然、進捗する気無いように見えたもんなー
主任「と、とにかく。与えられた業務には最善を尽くすのが社員の務めだ」
先輩男「おー社員の鑑」
平社員「一生着いて行きます。だから先頭代わって下さい」
慣れは恐ろしい。
たった一日で昨日までが嘘のように冗談を言う余裕すらある。
道端にチラホラと社員が横たわっている。
その風景にも半日で慣れた。
物陰から先方が現れて突発折衝になる。
今朝方で慣れた。
社員の装備から糧食と弾倉を補給する。
今さっき慣れた。
もう8日間連続勤務。
…ダメだ、まだ慣れない。シンドイ。
全員が同じ直、同じ装備、同じ工程。
女子二人より先に音を上げる訳にはいかない。
疲れとストレスに反比例して全員の口数が増えていく。
慣れ と言う名の余裕が 油断 に成長していっているのを、この時まだ誰も気付いていない。
ーー 射撃訓練場休憩スペース 後輩女 ーー
昔話をしてくれる平社員さんの顔はどこか楽しそうに見えた。
だけど所々に哀しそうな表情も混ざる。
無理をさせてるんじゃないだろうか?
少し心配になった。
平社員「あーっやっぱ長いなこの話。後輩女は聞いてて退屈じゃない?大丈夫?」
後輩女「退屈だなんてトンデモない。とても勉強になります」
紛れもない本心だ。
職業柄辛い思い出が多いせいか、昔の話をしてくれる先輩は少ない。
各年度の報告書も機密で見られないし、
社史も無いので始めて聞いた話ばかりだった。
後輩女「ところでお話しに出てくる同期女さんって」
平社員「そ、裏直の」
後輩女「へーコンビだったんですねー」
平社員「この時に組んだコンビがイベント終了後も継続したんだ
課内の大編制替えもあってコンビで係が決まった感じ」
後輩女「なるほどー。じゃあコンビ制もこの時が発祥なんですね」
平社員「そうだね。んで、主任と先輩男がコンビだったのもこのせい」
ソトマックラ
平社員「おぉ話し長くなってすっかり遅くなっちゃったなー」ノビー
後輩女「え?終わりですか?」
平社員さんの同期が退職多数なこと、主任と先輩男さんが昔コンビだったこと
色々聞けたけど…
平社員「ん?まだ先を聞きたい?」
後輩女「18000番台の方がゼロな理由が聞けてませんし」
余り話したく無いところなのだろうと理解はしていた。
だけど好奇心が気遣いを上回り、無神経なお願いをしている自分がいた。
スッ
後輩女「あれどこ行くんですか?」
怒らせちゃったのだろうか?
平社員「ちょっとトイレ。あとコーヒー」
後輩女「あ、はい買っておきますね」
平社員「バカ、後輩に奢ってもらえるか。で、後輩女は何飲む?」
後輩女「あ、じゃあお茶をお願いします」
平社員「りょーかい」
それにしても凄い内容…。昨日、今日の業務と比べても段違い…
先輩達が現場で全然平気な顔をしてるのはこの経験が活きているんだろうか。
平社員「お待たせっと」トン
後輩女「ありがとうございます」パキュ
平社員「えーと、N町のとこからだよな」
……
………
…………
ーー C市手前N渓谷 平社員 ーー
主任「ここらで休憩にするか」
先輩男「そうだね、こっからまた忙しそうだし」
昔は橋が架かっていたこの川もTKD社の営業活動時に落とされており
渓谷沿いに歩き浅瀬を渡る必要があった。
川を渡る際に先方から干渉が強くなるのは明らか
その前に休憩を取る案に全員が賛成した。
同期女「あっ見て下さい、近くに社員集まってますよ」ピコピコ
新型のOA内蔵無線にラフな社員情報が表示されている。
この頃は無線連絡内容を本部で更新する
仕組みなので完全なリアルタイムでは無い。
しかし、二日間ほぼスタンドアローンで行動し続けた
俺たちには同僚の存在が嬉しかった。
主任「そんなに遠く無いな…そこまで行くか」
全員「おー」
人が増えれば業務も多少は平準化できる。
喜び勇んでその場所へと向かった。
ーー N渓谷集合場所 平社員 ーー
平社員「なっ!?」
同期女「うそ…」
主任「……」
信じられない、信じたくない光景だった。
100人近いであろう同僚たち全員が地に伏せ沈黙している。
一日前の集合時の喧騒と対極に位置するような静寂が渓谷の河原を支配していた。
先輩男「全員ほぼ一発か、しかも装備を外したままの者すら居るな…」
主任「突発且つ大規模での先方からの干渉か…」
特技女「まだそんなに経って無いですね」
OA情報の更新時間、退職者の体温から今さっき起きた惨劇だと断定する。
俺たちも早く着いていたら…
主任「おい、惚けてる場合じゃないぞ」
主任「先方さんはまだ近くにいるってことだ」
ビシッビシッビシッ
パチュン、パチュン
主任「全員散開」
先輩男「手頃な岩が多くて良かったねー」サッ
平社員「でも6人じゃ時間の問題じゃ…」
結構な量のお客様だ…捌ききれる訳が無い。
無線『技術課組、位置情報を報告せよ』
同期女「現在N渓谷にて折衝中、彼我差大。支援をお願いします」
無線「N渓谷?そこにいた十数組と連絡が付かんのだが付近に見えるか?」
同期女「はい…ただ…」
無線『何だ?はっきり言わんか』
同期女「私達以外、全員退職済みです…」
無線『なっ!?』
同期女「現在、退職動機の先方の一部と思われるGrと折衝中。
おおよそ20名前後と推定されます」
同期女「繰り返します。支援及び指示をお願いします」
無線『ちょっ、ちょっと待っていろ!そこを動くなよ』
ーー N渓谷岩陰 平社員 ーー
平社員「動くなって言われてもなー」
同期女「そうよね、動けないものねー」
二人が隠れてピッタリの岩
あちらの斜面には先方さんたち。
俺たちは分断され手も足も出ない状態になった
平社員「俺、この場面デジャヴだ」
同期女「うん、私も」
でもベテランさん達の真似をする気にはならない
やったら退職確定に決まっている。
無線『主任だ、同期女何か指示はあったか?』
主任から無線が入る。
長距離無線は同期女の物だけだった為、指示、報告係になっていた。
同期女「その場で待機。とのことです」
無線『……了解。追加指示合ったら即組内無線で知らせてくれ』プッ
怒ってた。ぜったい怒ってた。
あの主任がここまで分かり易いのも珍しい。
間隙を縫ってこちらからも手を出す。
そうしないとすぐに近接折衝になり、俺たちも退職者の仲間入りだ。
手を出してても時間の問題かもしれないが…
無線『まだ追加指示は無いか?』
支援を期待した連絡を複数回やり取りする。
指示は未だ無い。
無線『…全員がバラけているのは得策じゃない』
無線『右に見える欄干跡まで移動する。その旨連絡しろ』
同期女「了解しました」
無線で本部に伝えた。まだ待てとの指示だった。
無線『知るか』
同意です。
無線『全員一編に動くぞ。俺が引き付けるからその隙に走れ』
無線『主任がその役じゃその後続かないじゃないですか』
無線『私達がやります。ね、同期男』
無線『任せておいて下さい』
無線『……すまない』
無線『やだなーちゃんと後で合流しますから』
ーー 岩陰 平社員 ーー
無線『向こうの木の下辺りの水面に大き目の石を投げ込む、3分後だ』
無線『着水が合図だ、タイミング間違うなよ』
無線『『『了解』』』
3分が長い、適当に折衝しながらその時を待つ。
ヒュッ……バチャーン
平社員「良し!行くぞ」ダダッ
同期女「うん!」ダダッ
無線『ウオー』カカカカカカ
タタタタタ、ビシッビシッ
カカカ、カカカ
斜面にノールックで打ち込みながら走る
繋ぎっ放しの無線から同期男の咆哮が聞こえる
無線『よしっ同期男、特技女。反転しろ来い!』
珍しく主任の声が昂ぶる。
カカカカカカカカカ
同期女「あっ」コケッ
最後尾を走っていた同期女が石に足を取られて転んだ
平社員「クッ!あのバカ!」
バラけて走っていた俺が振り返り駆けつけようとした
平社員「クソッ間に合え!」
バスバスバス
タタタン、バスバス
特技女「バカね。大丈夫?ケガしてない?」
同期女「特…技……おんな…ちゃん?」
特技女「カヒュ…もードジなんだから」ポタポタ
ダダダ、ガシッ、ズルズル
同期女の腕を掴み引き摺り欄干を目指す。
特技女のことはすぐ後方にいる同期男に任せるしか無かった。
同期女「どうしよう、特技女ちゃんが、特技女ちゃんが…」えぐえぐ
平社員「いいから走れ!特技女は同期男が連れてくる!」
カカカ、タンタンタン
先輩男「こっちだ!早く来い!」
牽制射撃をしながら先輩男さんが手招きしている
欄干の陰に飛び込み、牽制に加わる。
平社員「同期男!早く!」
叫んだ瞬間、その向こうに絶望が見えた。
斜面にいた先方が川を渡り向かってくる。
平社員「同期男ー!特技女ー!」カカカ
先輩男「全力であの進捗を止めるんだ!」カカカ
主任「同期女!泣いてんじゃねぇ!さっさと撃て!」
同期男は岩に隠れやり過ごしている。
先方の進捗が激しく、あと数mの特技女に近づけないでいた。
無線『主任、俺突っ込みます。一瞬で良いので隙を下さい』
無線『……分かった。…無理はするなよ』
数十m離れたここからでは牽制しかできない。
同期女「ごめんなさい、ごめんなさい」
タタタタタ、タタタタタ、カカカ、タンタン
泣きながらも同期女も的確に牽制を続ける。
言いたくは無いが二人のことはほぼ諦めかけていた。
無線『同期男、来ちゃダメ。私なら大丈夫…ケホ』
無線『大丈夫なワケ無いだろ!喋るな、ジッとしてろ!』
無線『主任』
無線『なんだ、特技女』
無線『このバカのこと、よろしくお願いします』
平社員「おい、何する気だ!やめろー!!!」
振り向いた彼女の微笑みは忘れられないくらい美しかった。
タタッ、バシャバシャ、カカカカカカ
特技女が岩から飛び出し先方の前に踊り出る。
無数の銃口から吐き出されるそれが彼女を蹂躙した。
無線『特技女ー!!!』
無線『バカ、来るな』カフ
無線『来たら…嫌いになるよ』ニコ
タンタン、カカカ、タタタタタ、カシュン
ぱちゃん。
水面に一筋の赤い糸が引かれていく。
無線『特技女………』
平社員「同期男!何してる、来い!早く!」
岩陰で動かなくなった同期男。
景色の先から迫ってくる20数名の集団。
先輩男「いい天気だなぁ」
平社員「何をノンキなことを!」
先輩男「絶好の退職日和じゃない?」ニコリ
主任「まったくだ…。さて行くか」ニヤリ
平社員「俺も…」バッ
先輩男「先輩にカッコつけさせろって」
同期女「先輩男さん、主任」メソメソ
主任「泣くな、お前達はこの隙に逃げろ」
先輩男「同期男も俺達が絶対どうにかしてやる」
ドンッ、バシャ
ドン、バシャ、ドンバシャ
ガチャガチャ
ドン、バシャ
全員「???」
水音に振り向くと鉄製のアーマーに身を包んだ中年男が浅瀬の真ん中に立っていた。
ドンッ
技術課長「クソどもが!」
ドン、バシャーン
技術課長「我が社の未来を担う」
ドン、バシャ
技術課長「有望な社員達に」チュイン、バス
ドン、バシャ
技術課長「何をしたーーー!!!」ウオーン
ガチャガチャガチャ
ドンッ、バシャバシャバシャ
技術課長「フーフー」ギロッ
鉄製のブーツが音を鳴らす。
手甲で弾を防ぎながら一瞬で距離を詰める。
次の瞬間には先方の半分が水面に浮かんでいた。
ドンッ
課長が踏み込むと爆発音が聞こえ、その姿が消える。
バシャ
次に見えるのは先方の腹へ手甲に付いたナイフを突き立てている姿。
無音機動とは違い、自らを真っ直ぐ相手に放ち、
全てを射抜く矢と化す機動。
技術課長「お前らはそこにいろ!」クワッ
全員「承知しました」ビクゥ
数十m離れてても腹の底まで響く一喝
俺たちは只々上司の仕事振りを見つめた。
技術課長「ふぅ」ヒュンヒュン、ピピッ
ナイフの血を払い飛ばし同期男を引き摺り歩く。
上司だと分かっていてもその姿に恐怖を感じる。
技術課長「キサマラー!!」
全員「ハイッ!」ビックーン
技術課長「無事で良かった」ウルウル
技術課長「そして遅くなってすまなかった」ペコ
主任「いぇ、そんな、でも…」
技術課長「そちらの娘も私がもっと早く来れば」バシャバシャ、スッ
川から特技女を抱き上げ河原に優しく寝かせる
無線『技術課長、進捗如何でしょうか?』
技術課長「目的ポイントに到着、5名を除き全員退職の模様」
技術課長「暫く本ポイントに駐留する、他の様子はどうだ?」
無線『駐留、了解しました。状況ですが、中堅チームが一つ目のトンネルを抜けました』
無線『大きな異常、折衝は無いようです』
技術課長「了解した。変化があったらすぐ知らせてくれ」
平社員「あの、課長」
技術課長「ん?どうした平社員」
平社員「全体はどんな状態なんでしょうか?」
技術課長「んーそうだなぁ、概ね順調だが…」
技術課長「若手の退職者が予想より多い…」ガックシ
ーー N渓谷河原 休憩中 平社員 ーー
技術課長「それにしてもお前たちが無事でなにより」
主任「でも特技女が…」
同期男「……」
同期女「うぅ」ヒック、ズズッ
技術課長「無線であらかた聞こえてはいた、あと数分…」
良く見ると課長の射出機動もボロボロだった。
ここまで全速力で向かってきてくれていたのだろう。
主任「俺の…」ドヨーン
技術課長「主任のミスでは無い。抽象的な指示を出した本部の、つまり私のミスだ」
その言葉を最後に全員が口を閉じた。
休息と呼ぶには重苦しく痛々しい時間が流れる
そんな空気を切り裂くように課長の無線が繋がった
無線『緊急通信!中堅チーム後方のトンネルが爆破、閉鎖』
無線『現在、前方から現れた多数の先方と折衝中!』
技術課長「なんだと!?読まれていたのか?」
技術課長「あちらにそんな工数が残っているなんて…」
無線『状況は極めて劣勢、すでに工機課長は退職!』
技術課長「状況が知りたい。誰か技術課の課員に直接無線を繋げ!急げ!」
無線『現場が混乱しており…、あっ一回線取れました繋ぎます』
技術課長「こちら技術課長、どうした、何が起きた?無事か?」
無線『こちらベテC、いやー課長。これ無理っすわスミマセン』
無線『酷いもんです。トンネルに生き埋め、横の崖を爆破され土砂崩れ、
トドメに前側方同時進捗。ベテAは先に逝きました』
無線『俺らもそろそろやば…カカカ…いですね』
後ろでは激しい折衝の音が聞こえる。
ベテCさんの声も途切れ途切れになっている。
技術課長「ベテC!待ってろ、今そっちに!」
無線『ダメですよ課長、若いのの、ガハッ、面倒見ないと。パシュパシュ…おい!後ろだ!』
無線『俺たちはもう良いからそっちお願いしますね』
技術課長「何を言っている!私に無断で退職させんぞ!」
無線『あーやべ、増えた。ズズン。課長、誰か若いの近くにいます?タンタンタンタン』
技術課長「いるぞ、丁度お前の班のヤツらだ」
無線『おーツイてるなー。ウグッ』
無線『平社員。ナイフ教えてやる約束してたなぁ。チッ弾がねぇや。ゴメンな守れなくて』
無線『先輩男。貸してたギターやるわ。あと部屋のヤツも持ってけ』
無線『しゅに…。クッ!ベテB…お疲れー。主任、お前が次の世代を支えるんだ』
無線『独りじゃ業務の成功は無い。ガハッ、にゃろ。お前だけが優秀でも意味無いんだ』
無線『下を育てて…組織を…強くして…課長を助けてあげてくれ…ガアッ』
無線『じゃ、課長…スミマセン、お先に…失礼……し…ま…』ザーッブツッ
平社員「ベテCさん!ベテBさん!」
主任「……」先輩男「……」
技術課長「……業務撤収」
主任「え?」
技術課長「業務撤収だと言っている」
技術課長「本部、これ以上の業務継続不可と判断する、どうか?」
無線『企画部長より継続の指示が出ております』
技術課長「は?何を言っておる、本体は全員退職だろう?」
無線『いえ、トンネル手前の少しと若手組がまだ工数充当可能との判断です』
技術課長「ふざけるな!会社を潰したいのか!」
無線『私に言われましても…』
技術課長「今からそちらに行く、それまで指示保留」
技術課長「お前たちはN町市街まで戻れ」
課長はそう言い残し、射出機動を目一杯使いながら本部に戻っていった。
ーー 射撃訓練場休憩スペース 後輩女 ーー
後輩女「」ゴクリ
平社員「この先は聞いたことあるんじゃ無いか?」
後輩女「え?」
平社員「当時ウチの課長、ま、今の部長が企画部長の首根っこ掴まえて
現場で引き摺り回したって話」
後輩女「あーそれなら知ってます。宴会の時に何度か…あの話なんですね、これ」
平社員「で、現在のN町渓谷を挟んだY県S県境界に至る、と」
後輩女「凄い…」
後輩女「この経験があるから皆さん折衝能力が高いんですね」
平社員「いや、それは別の問題」
後輩女「そうなんですか?」
平社員「ま、また後でな。今度の約束があるって良いことだよ」
飲み掛けのお茶に蓋をして背中を伸ばす。
こんな長い時間誰かの話を聞いたのは久しぶり。
主任「おーい、どこにいるんだー?」
余りに遅い帰りに主任が探しに来たようだ。
平社員「あーここでーす」
平社員さんが窓から顔を出し手を振る。
主任も中に入ってきてコーヒーを飲んでいる。
主任「少しだけ淋しかった…」
後輩女「フフッベテCさんの想いはちゃんと
届いてるんですね」
主任「?」
後輩女「なんでも無いです」
遠くからギターの音色が聞こえる。
その曲はどこか寂しく、どこか懐かしい響き
静かに出張所の夜空に吸い込まれていった。
ーーー 業務日報 ーーー
2係2班 主任
※発行物
.班員健康チェックシート
.退職経緯報告書
.災害報告書
.補給申請書(ツール申請)
.補給申請書(人員申請)
※各人実績
.平社員:10名折衝完了、特殊社員対応
.同期男:18名折衝完了
.後輩女: 0名折衝完了、特殊社員対応
.後輩男: 観測機設置 -> 本日付退職
※業務トピックス
観測機設置業務を基本に若干のシェア拡大を予定
シェア内での作業時に先方から干渉発生し対応
技能班の交代時間と展開最遠方を狙われた為、
当班のみで折衝を開始。
先方営技の狙撃係を中心に突発折衝を強いられ
後輩男が退職にとなった。
営業爺氏の支援を受け近接折衝についてはロス無く業務完了。
同期男が被災した為、診療所にて休養中
※特記事項
先方狙撃係(特殊社員)対応に際し後輩女の折衝技術の高さが観察できた。
先方近接折衝時、特殊社員に対し平社員が対応
折衝完了しなかったもののロスゼロに抑えたことは評価に値する
後輩男退職の影響を受け、同期男がメンタル面で
不安定な兆候を見せた。復帰後継続注視する。
ー 以上 ー
続き
平社員「今月の目標は防衛線の突破か、キツイな」【後編】


挫折
わかれば楽しいかも