1 : ◆/BueNLs5lw - 2014/11/30 02:15:10.78 pnBiLajZ0 1/10


ユウキとアスナ(SAO)に関するネタバレあるかも
ただのポエム
若干、百合







眩しい。

太陽だ。

ボクの目の前に、

広がっている。


光。


全ての光。

朝靄の中で、

神に祈りを捧げるように、

ボクは剣をかざした。

右手にはとても大切な仲間の手を握り締めていた。


剣は光を遮って、

ボクらの顔に陰を作った。

それ以外の全てを照らしてくれる、光。


「アスナ」


名前を呼ぶと、必ず笑ってくれる。


「なあに」


問いかけてくれる。

瞳の中に、焼き付けるように、じっとこちらを見る。

彼女の癖なのか。

どうなのか。

わからないけれど。

その瞬間、ボクは彼女の中にいるんだと、

とても落ち着いた気持ちになる。





2 : ◆/BueNLs5lw - 2014/11/30 02:25:52.97 pnBiLajZ0 2/10

優しいのだ。

お母さんのような。

お父さんのような。

姉ちゃんのような。

離れても、そばにいる。


優しいものは、どうしていつも、

こんなに近くまできてしまうのだろうか。

近すぎて、今まで頑なに張っていた線を

飛び越えて、すぐそばまで来て。

本当は、ダメなのに。

優しい人を、傷つけたくなんかないのに。


優しく頭を撫でて、ここへおいでと手招きする。

そこへ行くわけにはいかないのに。

足はふらふらと向かう。

突き放そうとしても、ダメ。


「森の家、今日は誰も来ないの?」


「そうよ、今日はね二人だけ」


「そっか」


「のんびりできていいでしょ」


「うん、キリトはたまに小言を言うからね」


「あらあら……ふふ」



3 : ◆/BueNLs5lw - 2014/11/30 02:38:39.00 pnBiLajZ0 3/10

ゲーム中なら、どんな敵が出たって、

いの一番に突っ込んでいく。

猛進して、ぶつかって。

後ろなんて振り返ってられない。

それが楽しい。

生きている実感が湧く。

なにしろ、それがボクの全てだ。

ボクは人生の全てを捧げている。

この、仮想世界に。

でも、不意に。

驚かされる。

あまりにも近くにいるものだから。

錯覚してしまう。


触りたいと、欲求が生まれてしまう。

それは、そう。

赤ん坊が腕を広げて、

母の温もりをせがむように。

手を伸ばせば、掴めるんじゃないかと

そんな思い込みに過ぎないけれど。


「そう言えば、キリト君がまた決闘したいって……ぼやいてたよ」


「えー、今度は両手剣?」


「んーどうだろ」


「なんか、片手だとアンバランスだよね、あの人」


「やっぱり分かるんだ」


「まあ、ボス部屋の前であんな戦い見せられたらねえ」

4 : ◆/BueNLs5lw - 2014/11/30 02:50:40.94 pnBiLajZ0 4/10

「でも黒い剣と金色の剣って地味なの派手なのどっち? って思っちゃった、私」


「あの人は、金より黒って感じだよね」


「そうそう、金は似合わない」


アスナは言ってから、苦笑した。


「今のは内緒ね」


人差し指を薄桃の唇に当てる。


「うん、わかってるよ」


仮想世界で握り締めた手の感触が、どこまでリアルを再現できているのかというと、

ボクには、もうよくわからない。

遠い遠い昔。

感じたことがある。

でも、忘れてしまっている。

そう、忘れてしまっているだけ。

思い出せないだけで、ボクの体にはきっと記憶されている。


だから、まだ、手を繋ぎたい、と思うのだ。

それは、ボクがまだ生身を忘れていないという証かもしれない。


5 : ◆/BueNLs5lw - 2014/11/30 02:58:03.32 pnBiLajZ0 5/10

「今日はね」


ぽつりとアスナが言った。


「ユウキと二人になりたかった」


互いにソファに座って、手を握り、窓の外を見ていた。

雪が降っていた。

部屋は暖かい。

そういう設定変更だ。ただの設定。

BGMの音量を調節したり、グラフィックの解像度を上げることと、

なんら変わりない。

でも、暖かい飲み物を飲みたくなるし、暖かいシャワーを浴びたくなる。


現実世界で目覚めた時には、絶対にそんなこと思わない。

ただ、クラゲみたいにボクは海中を漂っている。

そんな気分で。

6 : ◆/BueNLs5lw - 2014/11/30 03:17:14.88 pnBiLajZ0 6/10

クラゲにいるのはほんの少しのエネルギーだけ。

例えば、本物のクラゲは体の拡張と縮小を行う過程で、

クリティカルな一時休止を挟み、高効率な推進性を

獲得している。


ボクは、ほんの少し体力を削って、

成長と崩壊の傍ら、

仮想世界で暴れまわり、

現実世界でふよふよとジェルに身をゆだねている。


キミが近づいてきて、ボクを見つけてしまった時は、

とても驚いたけど。

ボクはただ、ふよふよと漂うクラゲだった。

これからもずっと、クラゲ。


ボクは海の上で、波の気のまま、ダンスを踊る。

キミの清らかで、優雅な動きには劣るかもしれないけど。

速さなら負けないよ。



「だから、誰も呼ばなかったの?」


ボクは聞いた。


「……ええ」


「嬉しい……」


ボクは笑った。



7 : ◆/BueNLs5lw - 2014/11/30 03:24:50.17 pnBiLajZ0 7/10

こてん、とアスナの頭がボクの肩に置かれた。


「今日は、帰るまで、こうしてたいなあ」


「甘えん坊だ」


「そうよ、知らなかったの?」


「全然、知らなかったよ」


「私、たぶん年下に甘えるの……好きなのかも」


最後の方は、尻すぼみであまりよく聞き取れなかった。

その照れくさそうな感じ。

優雅?

じゃないかもね。


「お疲れモード?」


「ユウキの子守がちょっとね」


「えー!?」


「うそうそ」

8 : ◆/BueNLs5lw - 2014/11/30 03:42:13.74 pnBiLajZ0 8/10

笑い声が、広いログハウスに響く。

こんな日々が、とてつもなく愛おしい。

アスナが大好きだ。

大好きで、大好きで堪らない。


「アスナ」


「はーい?」


ボクはゆらゆらと漂うクラゲになって、

キミのすぐそばで踊っていたい。


どこにいても誰かを想ってしまう切ない気持ちを、

ボクはきっと、生涯、どの世界に行こうとも、

忘れることはない。

幸せだ。

もしかしたら、一目惚れ?

女の子同士だから、それはないか。

ただ、この想いを。

心からの幸せを。

いつまでも。

どこまでも。

願わくば忘れたくないよ。


「大好き」


恥ずかしそうに笑った。






おわり

9 : ◆/BueNLs5lw - 2014/11/30 03:44:52.80 pnBiLajZ0 9/10

SAO見るたびに、ユウキ熱もらう。
誰か書かないかな。ユウキとアスナss

10 : VIPに... - 2014/11/30 06:47:50.36 n8XWkbRAO 10/10

難しいんだよ
あの病気は下手なこと書けないし……

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