ハルヒ「やっぱり金曜の夜はタモリ倶楽部に限るわね」
キョン「ああ、そうだな」
ハルヒ「今週はどんなのかしら」
キョン「さぁ……それよりハルヒ」
ハルヒ「なに?」
キョン「いつまで俺んちに居座るつもりなんだお前は」
ハルヒ「はぁ?」
キョン「いや、はぁって言われても……」
元スレ
ハルヒ「深夜徘徊するわよ!」
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1260537533/
ハルヒ「今更何言ってんのよ? 今日は両親と妹ちゃんいないんでしょ? だったら夜遅くまで遊ぶに決まってるじゃない」
キョン「まあ……そういう気持ちも分かりますけど」
ハルヒ「……」
キョン「健全な高校生の男女が、深夜に同じ屋根を共にしているこの状況はどうなんだ」
ハルヒ「すぐそういう考えに持ってくわねこのエロキョン。別にただ遊びに来ただけじゃない」
キョン「……」
ハルヒ「あ、始まった」
フーウェイショーショー♪
ベンベンベンベンベンベンベン
ハルヒ「いっつも思うけどこのお尻っていい形よね」
キョン「ああ、そうだな」
ハルヒ「……」
キョン「……」
ハルヒ「めっちゃやらしい目してるわよ」
キョン「そもそも、女と二人でタモリ倶楽部を見るってのもどうかと思うが……」
ハルヒ「今見たいんだもんしょうがないじゃない」
キョン「やれやれ」
ハルヒ「毎度おなじみ流浪の番組、タモリ倶楽部でございます」
キョン「似てないな」
ハルヒ「うるさい」
キョン「……お、電車か」
ハルヒ「久しぶりねー鉄道系は」
キョン「……」
ハルヒ「あ、これ知ってる」
キョン「乗ったことあんの?」
ハルヒ「小さい頃にね」
キョン「ふーん」
ハルヒ「……」
キョン「……」
ハルヒ「ふぁぁ……」
キョン「飽きたか?」
ハルヒ「今回は少しマニアックすぎるわ」
キョン「そうか? 面白いと思うけどな」
ハルヒ「あんた変人の素質あるわね」
キョン「お前に言われたくない」
ハルヒ「……」
キョン「……」
ハルヒ「……漫画読んでいい?」
キョン「ああ」
ハルヒ「~♪」
キョン「……」
ハルヒ「……」ペラッ
キョン「……ぷっ」
ハルヒ「ふぁぁ~あ……」
キョン「あっはっはっは」
ハルヒ「空耳アワーまだぁ?」
キョン「もうちょいだ」
ハルヒ「早く~」バタバタ
キョン「ベッドでバタバタするんじゃありません」
ハルヒ「……」ムスッ
キョン「……」
ハルヒ「来たわね!!」
キョン「切り替え早っ」
「誰が言ったか知らないが言われてみれば確かに聞こえる……」
ハルヒ「一週間の締めくくりはやはりコレね」
キョン「空耳だけ見るとか、タモリ倶楽部ファンの風上にも置けん奴だな」
ハルヒ「きーこーえーなーいー」
キョン「……」
ハルヒ「……」
キョン「ぶっ!!」
ハルヒ「あははははは!!」
キョン「これは久々に来たわ」
ハルヒ「耳かき行くわねこれ」
キョン「はぁはぁ……可笑しい」
ハルヒ「……ええー!? 手ぬぐい!?」
キョン「タモさんやっぱ厳しいなぁ」
ハルヒ「今の絶対耳かきレベルでしょー」
キョン「……お、メタリカだ」
キョン「ふう、今週も良かった」
ハルヒ「終わり?」
キョン「ああ」
ハルヒ「あーこれからどうしよ」
キョン「帰れ」
ハルヒ「つまんないー」
キョン「明日の朝には家族帰って来るからさ」
ハルヒ「なんか他にいいテレビない?」
キョン「早く帰りなさい」
ハルヒ「スマブラする?」
キョン「もう飽きるほどやっただろ」
ハルヒ「……」
キョン「親が心配してるぞ」
ハルヒ「別に親は大丈夫よ。あたし夜遅くまで出かけることしょっちゅうだから」
キョン「不良だな」
ハルヒ「夜の不思議探しは一味違うの……あ、そうだ」
キョン「?」
ハルヒ「キョン、深夜徘徊するわよ!!」
キョン「ええ!?」
ハルヒ「いいじゃない、もうこうなったら朝まで不思議探しよ!」
キョン「ちょっとまて……俺はそんな元気無い」
ハルヒ「あたしがあんたの機嫌やら体調を気にしたことがあった?」
キョン「……自覚してるならそれはそれで宜しいかもしれんが」
ハルヒ「行くわよ♪」
キョン「……はいはい。わかりましたよ」
ハルヒ「そう言うと思った」
キョン「まったく……」
ハルヒ「うふふ」
キョン「やれやれ」
ハルヒ「今日は良い夜ねー! 快晴だわ」
キョン「……」
ハルヒ「見て見て! あれがデネブアルタイルベガ~」
キョン「オリオン座だぞ」
ハルヒ「わかってるわよそんなこと! あー星が綺麗」
キョン「元気だなぁお前……」
ハルヒ「取りあえず駅の方行くわよ!」
キョン「へいへい」
ハルヒ「♪」
キョン「そんなにはしゃいでたら転ぶぞ」
ハルヒ「ふんふーんふぅーん」
キョン「……」
ハルヒ「きぃーみーとあーそーぶーぅぅー」
キョン「……」
ハルヒ「だれもーいないしーがいちぃー」
キョン「何だっけそれ?」
ハルヒ「めとめがーあうたーびーわぁーらーうぅー」
キョン「……まぁいっか」
キョン「夜の街の雰囲気はいいな」
ハルヒ「そうね」
キョン「うおっまぶしっ」
ハルヒ「コンビニ!」
キョン「寄ってくか?」
ハルヒ「んーどうしよ」
キョン「寄ろうぜ」
ハルヒ「んじゃ寄る」
ピロリロピロリロ
イラッシャイマセコンバンワー
ハルヒ「なんかおごって」
キョン「やなこった」
ハルヒ「ケチね」
キョン「さっきまで俺んちの菓子を食い漁ってた口が言うか」
ハルヒ「あ、ジャンプ読む」
キョン「……」
ハルヒ「……」ペラペラ
キョン「何読んでんのお前?」
ハルヒ「ジャンプよ。バカじゃないの?」
キョン「そうじゃなくて中身の話だ」
ハルヒ「ワンピースと……ナルト」
キョン「やっぱそんなもんか」
ハルヒ「別に漫画に詳しくなくたって生きてけるわよ」
キョン「責めてるわけじゃないが」
ハルヒ「あんたの部屋にあった奴ってどれ?」
キョン「目次見ろ目次」
ハルヒ「えーっと……」
ハルヒ「えっ!? こいつ裏切ってたの!?」
キョン「あー……ネタバレしちまったか」
ハルヒ「見なきゃよかった……」
キョン「仕方ないな」
ハルヒ「むぅ……」
キョン「ついでに言うとそいつは○○が××した時点で既に」
ハルヒ「ああああ!! 言うなぁ!!」
キョン「ちょ、大声」
キョン「何か買うのか?」
ハルヒ「あったかいもの適当に」
キョン「肉まんとか」
ハルヒ「んー、おでんね」
キョン「さて何買おうか」
ハルヒ「……」
キョン「なんだそれ」
ハルヒ「これ一本で一日分に必要なビタミンの全種類だって」
キョン「へえ」
ハルヒ「まぁ買わないけど」
キョン「なんだ」
ピロリロピロリロ
アリガトーゴザイマシター
ハルヒ「やっぱ冬はおでんよね」
キョン「コンビニのおでんは食ったこと無いな」
ハルヒ「本当!? あんた人生損してるわよ」
キョン「そこまで」
ハルヒ「美味しいぞぉ~」
キョン「俺には肉まんがありますんで」
ハルヒ「あっ……いいなぁ」
キョン「やらねーぞー」
ハルヒ「ひとくち! ひとくちだけ!」
キョン「……さーいしょは」
ハルヒ「パー!!」
キョン「おいおまっ! うわっ!」
ハルヒ「ぱくっ」
キョン「……ごっそり持ってかれた」
ハルヒ「あつっ、はっ、ふぁふい」
キョン「そっちのもくれよ」
ハルヒ「しょうがないわねぇ……」
キョン「たまごくれ」
ハルヒ「やだ」
キョン「んじゃ大根」
ハルヒ「んー……やだ」
キョン「はんぺん」
ハルヒ「絶対ダメ」
キョン「全部ダメじゃねーか!」
ハルヒ「おいしかったわねー」
キョン「俺の肉まん半分返せ」
ハルヒ「えー」
キョン「汁だけじゃ釣り合わねえ」
ハルヒ「とりあえず行きましょ」
キョン「おい待て」
ハルヒ「~♪」
ハルヒ「ぐでー」
キョン「なにやってんすか」
ハルヒ「大通りの真ん中で寝っ転がれるなんて深夜の特権ね」
キョン「怪しまれるぞ」
ハルヒ「誰もいないじゃない」
キョン「俺が怪しむ」
ハルヒ「別に気にしないもん」
キョン「……」
ハルヒ「……今日は月出てないわね」
キョン「その代わり星が明るいな」
ハルヒ「田舎行きたいー」
キョン「次の合宿まで我慢しろ」
ハルヒ「えー」
キョン「えーって……」
ハルヒ「連休とか利用してちょっと行かない? みんなで」
キョン「んー、予定とか色々あると思うけどなぁ」
ハルヒ「京都とか行きたいわ」
キョン「京都は都会だろ」
ハルヒ「細かいことは気にしないで」
キョン「……」
ハルヒ「行きたいー」
キョン「京都か……中学以来だな」
ハルヒ「清水寺に行きたい」
キョン「ああ、いいとこだよな」
ハルヒ「あんたを突き落として、本当に死なないかどうか実験するの」
キョン「怖いこと言うな」
ハルヒ「ウソよ」
キョン「わかってる」
ハルヒ「……」
キョン「……」
びゅううううう
ハルヒ「……」
キョン「寒くないのか」
ハルヒ「寒い」
キョン「…………」
ハルヒ「……あ」
キョン「…………」
ハルヒ「見たわね」
キョン「不可抗力だ」
ハルヒ「エロキョン!」
キョン「ど、道路なんかに寝そべってるからめくれるんだ」
ハルヒ「風があっちから吹いてくるとは思ってなかったわ」ムクッ
キョン「……」
ハルヒ「……ま、減るもんじゃないし、パンツぐらい見せてあげるわよエロキョン」
キョン「あれ、いつもみたいに怒鳴られるかと思ってたが」
ハルヒ「安心したの? キモイわね」
キョン「……」
ハルヒ「ばーか」
キョン「……同じ風景なのに昼と大分違って見えるな」
ハルヒ「当たり前じゃない」
キョン「……」
ハルヒ「……」
キョン「……」
ハルヒ「……何か言いなさいよ」
キョン「あーあー」
ハルヒ「……」
キョン「あ、そう言えばハルヒ」
ハルヒ「なに?」
キョン「…………あれ、なんだっけ」
ハルヒ「何よー」
キョン「忘れた。また思い出したら言う」
ハルヒ「ふーん」
キョン「……」
ハルヒ「誰かに電話しよっかな」
キョン「寝てるんじゃないのか」
ハルヒ「そういうイタズラも兼ねて」
キョン「性格悪いな」
ハルヒ「有希とか起きてるかなぁ」
キョン「あいつは……どうだか(長門は寝る必要も無さそうだな)」
ハルヒ「まぁいいわ」ピッピッ
キョン「……」
ハルヒ「……もしもし有希? 起きてた?」
キョン「やっぱ起きてたか」
長門『……起きてた』
ハルヒ「意外と夜更かしするのね、有希って! なに、見たい番組とかあったの?」
長門『……そう』
ハルヒ「へー、何見てたの?」
長門『タモリ倶楽部』
ハルヒ「ぶっ!!」
キョン「……長門はなんて言ったんだ?」
ハルヒ「ごめん、あまりにも予想外だったから吹いちゃったわ」
長門『やはり鉄道回はハズレが無い』
ハルヒ「有希も毎週見てるの? あたしも見てるわ」
長門『金曜の夜はタモリ倶楽部に限る』
ハルヒ「……相当好きそうね」
長門『空耳出したこともある』
キョン「長い電話だ」
ハルヒ「それじゃまた明日ね。急にかけて悪かったわ」
長門『いい』
ハルヒ「じゃあね、おやすみー」ピッ
キョン「……」
ハルヒ「有希もタモリ倶楽部見てたって」
キョン「マジで!?」
ハルヒ「意外よねー」
キョン「意外ってか驚愕だ」
キョン「他の奴にはかけないのか?」
ハルヒ「んー、有希の電話で少し満足したから、またあとででいいわ」
キョン「なんだそれ」
ハルヒ「ふーんふんふーんふんふーん」
キョン「……」
ハルヒ「よぉるーのーまちをーふたりあるくっよーるーにーなればーみんなきえてっ」
ハルヒ「きぃみーのーこえとっぼくのこえとっそーんーなものしかっきっこえなっくってうれしいっ!!」
キョン「あんまり大声で歌うな、迷惑だぞ」
ハルヒ「みんな寝てるわよ」
キョン「起きるかもしれないだろ」
ハルヒ「そんなに眠りの浅い人間だらけの世の中だったら大変よ」
キョン「……」
ハルヒ「駅が見えてきたわね」
キョン「駅前は明るいな」
ハルヒ「だって駅だもん」
キョン「あ、電車」
ガタンゴトン……
ガタンゴトン……
キョン「深夜でも動くんだな」
ハルヒ「貨物列車でしょうね」
キョン「音が遠ざかってく」
ハルヒ「……」
キョン「……どうした?」
ハルヒ「どこへ行くんでしょうね、あの列車」
キョン「さあ……どっかの車庫?」
ハルヒ「ああいうのってスタッフしか行き先分からないよね」
キョン「ああ……あと、鉄道オタクくらいだな」
ハルヒ「皆が寝てる間に、どこか遠くへひっそり出かけてるのって、なんか寂しいわね」
キョン「ロマンチストだな」
ハルヒ「なっ」
「なにしとんじゃオラー」
「オラァなにさらすんじゃボケがー」
ハルヒ「……流石駅前と言ったところね」
キョン「……ああ」
ハルヒ「近付かないのが一番」
キョン「そうだな」
ハルヒ「絡まれても、キョンじゃ頼りないし」
キョン「……認めなくないが、確かに」
ハルヒ「もっと体鍛えなさい」
キョン「あー……だるい」
ハルヒ「ダメダメね」
キョン「……」
ハルヒ「走るわよ!」ダッ
キョン「え? おいちょっと」
ハルヒ「追いつけないだろー」
キョン「なっ……! ちょっとムッとしたぞ今のは」
ハルヒ「はっ、はっ、はっ」タッタッタッ
キョン「むおおおおおおお」ダダダダダダ
ハルヒ「はぁっ、はぁっ、はぁっ」
キョン「はっ、はっ、はやいっ……ちくしょう」
ハルヒ「はぁ……はぁ……あたしが、運動できるって、忘れてたでしょ」
キョン「そういや、そうだったな、はぁ、はぁ」
ハルヒ「はぁ、汗出た」
キョン「風邪引くぞ」
ハルヒ「平気よ」
キョン「深夜に街中を全力疾走なんて、見方によっちゃかなり危ない人にも見えるぞ」
ハルヒ「確かにね」
キョン「……疲れた」
ハルヒ「…………ぷ」
キョン「あ?」
ハルヒ「うふふっ」
キョン「とうとう壊れたか」
ハルヒ「なんか、キョンと深夜にこんなことしてるのが変で」
キョン「……ふふっ」
ハルヒ「あははははっ」
キョン「ははは……なんだこれ」
ハルヒ「あー……可笑しい」
キョン「深夜のテンションだな」
ハルヒ「そうね」
キョン「……あー、足いてえ」
ハルヒ「軟弱者っ」ペシッ
キョン「いてっ」
ハルヒ「……あれ?」
キョン「どうした?」
ハルヒ「古泉くん?」
キョン「うっそだ、こんな時間に」
ハルヒ「古泉くんよ、ほら見て」
キョン「……あ、マジだ」
古泉「……」
ハルヒ「おーい」
古泉「おや?」
古泉「大変奇遇ですねこんな時間に」
キョン「何してんだお前?」
古泉「バイト仲間で集まってたんですよ。遅くなって今帰りです」
キョン「ほう……」
ハルヒ「こんな時間まで遊んでたの? 古泉くんも不良ねー」
古泉「バイトに関するちょっとした話し合いのようなものですよ」
キョン「遅くまでお疲れ様なこった」
古泉「いえいえ」
ハルヒ「こんな遅くまで話し合いとか、大丈夫?」
古泉「今回は軽いノリの会議でしたので、そんなに苦でもないですよ」
キョン「そうか」
古泉「お菓子やテレビを交えた和やかなものでした」
キョン「テレビ?」
ハルヒ「何見てたの? タモリ倶楽部?」
古泉「おや、ばれましたか」
キョン「なんで皆見てんだよ……」
古泉「鉄道系のマニアックさが好きですね」
ハルヒ「話し合いの場でタモリ倶楽部なんて、仲が良さそうね」
古泉「んっふ、楽しい職場ですよ」
キョン「……(森さんや新川さんと一緒にタモリ倶楽部か……)」
ハルヒ「今日の空耳面白かったわよね! なんだっけ?」
古泉「たすけてくれ”ぇ!!」
ハルヒ「あはははは! そうそうそれ」
キョン「お前も毎週見てんのか」
古泉「見れない時もありますが、大抵は見ますよ」
ハルヒ「へえ、古泉くんもかぁ」
古泉「ところで、お二人は何をしているのですか?」
キョン「えー……なんと言ったらいいか」
ハルヒ「夜の不思議探索よ!」
古泉「そうですか。うふふ、楽しそうでなによりです」
キョン「なんかむかつくな」
古泉「あまり無理をしない程度に頑張って下さい……では僕はこれで」
ハルヒ「おやすみ、古泉くん」
古泉「お休みなさい」
キョン「じゃーな」
古泉「んっふ……(貴方もすみに置けないですねぇ)」
キョン「気持ち悪い目線を送るな!」
ハルヒ「今何時くらい?」
キョン「んー、二時」
ハルヒ「かれこれ一時間以上歩いてんのね」
キョン「そうだな」
ハルヒ「疲れるはずだわ」
キョン「誰かさんが突然走りだしたりしなければここまで疲れてはないだろうな」
ハルヒ「…………」
キョン「……怒ったのか?」
ハルヒ「眠いだけよ」
キョン「おい、ここまで来て眠いとか」
ハルヒ「……」
キョン「もしもーし」
ハルヒ「……」
キョン「……」
ハルヒ「……あ、公園」
キョン「……寄るか?」
ハルヒ「……うん」
キョン「ベンチ汚くないか?」
ハルヒ「どうってことないわよ」
キョン「よっこらせ」
ハルヒ「おっさん」
キョン「言ったところで老けたりしねーよ」
ハルヒ「懐かしいわ、ここ」
キョン「俺はこの公園あんまり来たこと無かったなぁ」
ハルヒ「小さい頃よく遊んだ」
キョン「へぇ」
ハルヒ「あそこにアスレチックあるでしょ? あの下の地面にヘビがいるってうわさが流れた時があってね」
キョン「うん」
ハルヒ「確かめようとしてあたし、かがんで入ってったら出る時に頭ぶつけたの」
キョン「あらら」
ハルヒ「痛かったな……泣かなかったけど」
キョン「んで、結局ヘビはいたのか?」
ハルヒ「いるわけないじゃない」
キョン「そうか」
ハルヒ「子供って何でも信じちゃうよね。根拠も何も無いうわさ話なのに」
キョン「……」
ハルヒ「どこ行くの?」
キョン「ちょっとそこまでな」
ハルヒ「……」
キョン「……ふむ」
ハルヒ「何してんの?」
キョン「いや……流石に入れないから、覗きこんでるだけだ」
ハルヒ「……?」
キョン「いや、そんな話されたら見てみたくなるじゃんか」
ハルヒ「……」
キョン「もしも本当にいたら、面白いかなとか思っただけだ」
ハルヒ「……ふふっ」
ぴとっ
キョン「!」
ハルヒ「……暗くて見えないじゃない、バカキョン」
キョン「もっとそっち詰めてくれんか」
ハルヒ「だって狭くて見れないじゃない、あんたがそっち行きなさいよ」
キョン「……」
ハルヒ「……」
キョン「……無理だ。これ以上はそっちに行けないな」
ハルヒ「……」
キョン「……」
ハルヒ「キョン」
キョン「ん?」
ハルヒ「眠くなっちゃった……」
キョン「そうか……って、え」
ハルヒ「……」
キョン「…………俺の肩に頭添えられた状態で、そのまま眠られても困る」
ハルヒ「うん」
キョン「……」
ハルヒ「……」
キョン「……」
ハルヒ「ねえ」
キョン「ん?」
ハルヒ「キョンってさ……」
キョン「……」
ハルヒ「……なんでもない」
キョン「なんだそれ」
ハルヒ「……」
キョン「……」
ハルヒ「……ふぅ、少し体を休めたらすっきりしたわ」
キョン「そうかい」
ハルヒ「よし」
キョン「ん?」
ハルヒ「よーいしょ、よーいしょ」ギィーコォー
キョン「怪我するからやめとけ」
ハルヒ「これでもブランコの達人だったのよ」
キョン「ほお」
ハルヒ「そーれっ、そぉーれっ」ギィーコォー
キョン「よし、俺も一つ」
ハルヒ「キョンなんかに負けないわよ」
キョン「うおっ幅が小さいっ、頭当たるっ」
ハルヒ「そぉーれっ!」ギィーコォー
キョン「ふんっ、とりゃっ」
ハルヒ「ダメキョン~」
キョン「うるせー、今に、見てろっ」ギーコー
「おい君たち、こんな時間に何やってるのー!」
キョン「やべっ!!」
ハルヒ「逃げるわよっ!!」
「ちょっと、待ちなさいー!」
ハルヒ「はあっ……はあっ……」
キョン「はぁ……まいたか……?」
ハルヒ「多分ね……はぁ……」
キョン「はぁ……しかし、びびった」
ハルヒ「補導だけは勘弁だわ」
キョン「よく走る日だ、全く……」
ハルヒ「……ここ、どこかしら」
キョン「夢中で走ってきたからな……」
ハルヒ「あれって土手?」
キョン「……ああ、土手っぽいな」
ハルヒ「行ってみよう」
キョン「ああ」
ハルヒ「……」
キョン「ていうか、俺たちは一体どこへ向かっているのか」
ハルヒ「別に、どこだっていいじゃない」
キョン「帰れなくなったらどうする」
ハルヒ「子供じゃないのよ、なんとかなるわ」
キョン「……それもそうだな」
ハルヒ「あ、いい眺め」
キョン「おお……」
ハルヒ「夜の河川敷って、真っ暗」
キョン「そりゃな」
ハルヒ「川の向こう側が綺麗……」
キョン「いつの間にかビルが増えたなぁ」
ハルヒ「そうね」
キョン「……」
ハルヒ「ねえキョン」
キョン「なんだ?」
ハルヒ「キョンは神様とか信じる?」
キョン「……何を出し抜けに」
ハルヒ「なんとなく、聞いてみたくなった」
キョン「そうだな……(お前が神様だろって言ったらどんな顔すんだろうな)」
ハルヒ「あたしはね、別にキリスト教も仏教も神道も信じてない」
キョン「……」
ハルヒ「今までずっと自分だけ信じてきたし」
キョン「そうだな」
ハルヒ「でもね……一つだけ、これは信じざるを得ないなって言葉があってね」
キョン「なんだ?」
ハルヒ「諸行無常」
キョン「……ふっ」
ハルヒ「あっ! 笑ったな!」
キョン「なんか片っ苦しいのがでてきたなーと思って」
ハルヒ「要するに、どんなものも時間が経てば無くなっちゃうってこと」
キョン「……」
ハルヒ「この言葉考えた人って天才だと思うわ。誰もが薄々と感じるものにちゃんとした名前を付けたなんて」
キョン「まぁ……そうかもな」
ハルヒ「……最近、怖いの」
キョン「怖い?」
ハルヒ「時間が経つのが早いの。このままどんどん早くなって、死ぬまで加速し続けるのかと思うと、怖いの」
キョン「……」
ハルヒ「ずっとみんなと一緒にいたいのに……」
キョン「……」
ハルヒ「怖いよ……」
キョン「……ああ、俺も怖くてしょうがない」
ハルヒ「……」
ガタンゴトン……
ガタンゴトン……
キョン「……どうしようもねえよ、そんなのは」
ハルヒ「……」
キョン「いちいち考えるだけ無駄だ。どうせ分かってるんなら、そんなの見て見ぬふり決めるしかねーよ」
ハルヒ「うん……」
キョン「……だから、元気出せ」
ハルヒ「うん……」
キョン「……」
ハルヒ「……」
キョン「まったく、夜ってのは色んなこと考えさせれるからな」
ハルヒ「……」
キョン「……」
ハルヒ「……ありがと、キョン」
キョン「いえいえそんな」
ハルヒ「……」
キョン「……あ」
ハルヒ「なに?」
キョン「いや、ただの飛行機」
ハルヒ「どこ?」
キョン「あそこ、鉄橋の上」
ハルヒ「……なんかUFOっぽい」
キョン「その道に詳しい涼宮さんはどう判断しますか」
ハルヒ「……ウソ……あれって……マジ?」
キョン「……え?」
ハルヒ「あんな色のランプ点けてる飛行機なんて無いわよ! それに、形が前に雑誌で見た奴と似てる」
キョン「じょ、冗談だろ……?」
ハルヒ「本物のUFOよ! きっと!」
キョン「まさかぁ…………!?」
ハルヒ「!!」
キョン「……今、見たか?」
ハルヒ「消えた……?」
キョン「おい、これはどういう」
ハルヒ「やったぁー!!」がばっ
キョン「うわっ!」
ハルヒ「あたし、初めてUFO見た!! 生まれて初めて!」
キョン「そ、そうだったのか」
ハルヒ「嬉しいっ! 今日深夜出歩いて本当によかったわ!」
キョン「……はは」
キョン(……雲の中に入っただけじゃないかとか、そんなことは言うべきじゃない、いや言えそうにないな)
キョン(ハルヒは、実は俺よりずっと現実的で、頭がいい。俺が疑問に感じるくらいのことだし、こいつも実はわかってるんじゃないのか?)
キョン(……いやきっと、意地でも信じたいんだな。疑いたくないんだ)
ハルヒ「あははっ……ははは」
キョン「……」
キョン(その場のノリとか、雰囲気に従って笑ってる顔だ)
ハルヒ「……」
キョン「……いつまでしがみついてんの」
ハルヒ「……」
キョン「どれくらい経ったろ」
ハルヒ「あたしがキョンにこうしだしてから?」
キョン「いや、家出てから」
ハルヒ「さあ」
キョン「抱きつかれたままじゃ、時計が見れん」
ハルヒ「もうすぐ朝よ」
キョン「なんで分かる」
ハルヒ「体内時計」
キョン「そうかい」
キョン「……なぁハルヒ、さっきのって」
ハルヒ「言わないで」
キョン「え?」
ハルヒ「……」
キョン「……わかった、何も言わない」
ハルヒ「……キョンは優しいね」
キョン「それほどでない」
ハルヒ「ありがとね」
キョン「……ああ」
ハルヒ「星が綺麗」
キョン「ああ」
ハルヒ「この時間帯って、違った星が見れるのよね」
キョン「……どゆこと?」
ハルヒ「大抵9時か10時あたりに見えるのが、その季節の星座って決められてんの」
キョン「ふむ」
ハルヒ「夜明け近くまで時間が経つとその分星が移動するから、東の空から出てきた春先の星座も見れたりするのよ」
キョン「へえー」
ハルヒ「……実は今考えた話」
キョン「なんだよ」
ハルヒ「理論上はこれで間違ってないと思うけどね」
キョン「……あれは何座?」
ハルヒ「知らない」
キョン「あれは?」
ハルヒ「わかんないわよ」
キョン「なんだ、詳しそうに見えたけど大したことないな」
ハルヒ「本で読むのと実際に見つけるのじゃかなり差があるわよ」
キョン「まあそうかもしれんな」
ハルヒ「ふぁぁぁ……」
キョン「……あぁ……ふあぁぁ」
ハルヒ「ふふ、あくびがうつった」
キョン「厄介なもんうつすな」
ハルヒ「へへへ」
キョン「ちょっと、本気で眠くなってきた」
ハルヒ「この時間帯ってやたら眠くなるわよね」
キョン「土手に寝っ転がって寝るか?」
ハルヒ「いいわね」ゴロン
キョン「おい冗談のつもりだったんだが」
ハルヒ「やばい……このまま寝ちゃえる」
キョン「こんなとこで寝たら朝ジョギングに来たアスリートたちに笑いものにされるぞ」
ハルヒ「キョンが起こしてくれる」
キョン「お前が寝たら多分俺も寝ちまうかも」
ハルヒ「……」
キョン「……」ゴロン
ハルヒ「……キョンも、寝るの……?」
キョン「さあ……どうだか」
ハルヒ「……」
キョン「……」
ハルヒ「すー……すー……」
キョン「……寝息立ててら」
ハルヒ「すー……すー……」
キョン「ハルヒ?」
ハルヒ「……ふぇ?」
キョン「今寝てたろ」
ハルヒ「寝てらいわよ」
キョン「寝息立ててたぞ」
ハルヒ「白んできた?」
キョン「うーん、これは白んできたと言えるのか」
ハルヒ「日の出はまだ先よね」
キョン「ああ、まだだろうな」
ハルヒ「時計持ってんでしょ」
キョン「俺の時計は時間は分かるが、日の出の時刻は分かりません」
ハルヒ「そんぐらい、勘よ勘」
キョン「あと一時間」
ハルヒ「でたらめ言うなっ」
キョン「勘だろ」
ハルヒ「……」
キョン「……」
ハルヒ「うううう~」がばっ
キョン「どうした」
ハルヒ「眠いから、体動かしてごまかすっ」
キョン「どこ行くんだ―」
ハルヒ「土手を、まっすぐ、あっちへ!」
キョン「……やれやれ」むくっ
ハルヒ「どこへ繋がってるのかしら」
キョン「普通に考えて、川は海へ流れてくもんだろう」
ハルヒ「このまま海まで行く?」
キョン「勘弁してくれ」
ハルヒ「……」
キョン「……」
ハルヒ「どこかで引き返さなくちゃね」
キョン「そうだな」
ハルヒ「このまま行ったきりって訳ないものね。映画とかドラマじゃあるまいし」
キョン「ああ」
ハルヒ「今日は多分夕方まで寝る」
キョン「俺も多分そうだ」
ハルヒ「徹夜したの久しぶり」
キョン「俺も多分そうだ」
ハルヒ「同じことばっか言わないでよ」
キョン「言葉考えるのがめんどい」
ハルヒ「もう」
キョン「あー」
ハルヒ「新聞バイクだ」
キョン「あー」
ハルヒ「毎日この時間に起きるなんて、まるで拷問だわ」
キョン「あー」
ハルヒ「郵便のバイトとかやったことある?」
キョン「あー」
ハルヒ「起きろー!!!」
キョン「うわぁっ!! びっくりした」
ハルヒ「ゾンビみたい」
キョン「そうだな」
ハルヒ「で?」
キョン「ん?」
ハルヒ「郵便配達のバイトやったことある? って聞いたの」
キョン「やったことないな」
ハルヒ「やっぱりね」
キョン「そんな早起き俺にはできん」
ハルヒ「そう言うと思った」
ハルヒ「……」くるっ
キョン「なんだ?」
ハルヒ「あんた、クマすっごいわよ」
キョン「お前も相当黒いぞ」
ハルヒ「うそ」
キョン「ほんとだ」
ハルヒ「……」じー
キョン「……見すぎだぞ」
ハルヒ「眠いのよ。全部、眠気のせい」
キョン「大分明るくなってきたな」
ハルヒ「そうねー」
キョン「……」
ハルヒ「この時間帯の空、一番好き」
キョン「そうかい」
ハルヒ「藍色からレモン色のグラデーション」
キョン「写真撮りてーな」
ハルヒ「ケータイは?」
キョン「電池が空っぽだ」
ハルヒ「モノより、思い出」
キョン「適当に言っただけだろ」
ハルヒ「ばれたか」
キョン「……なんだっけそれ」
ハルヒ「なんかのCM」
キョン「言葉だけ覚えてて、本来の映像がどんなもんだったか忘れちまった」
ハルヒ「よくあることよ」
キョン「そうかもな」
ハルヒ「印象深いものは記憶に残るもの」
キョン「当たり前だな」
ハルヒ「薄い記憶は無くなっちゃう」
キョン「……」
ハルヒ「あたしは、全部まるごと覚えていたい」
キョン「そんなことできんのか」
ハルヒ「できない」
キョン「……」
ハルヒ「……」
キョン「だからカメラが発明されたんだろ、きっと」
ハルヒ「そうね」
キョン「……」
ガタンゴトン……
ガタンゴトン……
ハルヒ「つかれた」
キョン「そこの階段にでも座るか」
ハルヒ「うん」
キョン「始発かな」
ハルヒ「……でしょうね」
キョン「……」
ハルヒ「ねえ」
キョン「ん?」
ハルヒ「あたしたちってさ」
キョン「うん」
ハルヒ「……」
キョン「……」
キョン(何を言っていいのか分からん。もとい、気持ちをどんな言葉で表現したらいいか分からん)
キョン(全部眠気のせいにして逃げたい気分だ)
ハルヒ「……」
キョン「……あ」
ハルヒ「……朝日…………」
キョン「おおお……」
ハルヒ「綺麗」
キョン「ああ、綺麗だな」
ハルヒ「……朝が来たら、もう深夜徘徊とは言えないわよね」
キョン「そうだな」
ハルヒ「……そろそろ戻る?」
キョン「……」
ハルヒ「……」
キョン「できるなら、ずっとここにいたい」
ハルヒ「……映画やドラマじゃあるまいし、そんなこと無理よ」
キョン「だよなぁ」
ハルヒ「……でも、あたしもキョンと同じこと考えてた」
キョン「……」
ハルヒ「……」
キョン(グダグダとテレビを見て、適当にだべって……)
キョン(こんな曖昧で、グデグデな日常っていつまで続くんだ?)
ハルヒ「あ、あれって県道かしら」
キョン「んー多分そうじゃね」
ハルヒ「あれ辿って帰れるわね」
キョン「どれくらいかかるか知らないけどな」
ハルヒ「……」
キョン(……まあ、今は深刻に考えないようにしよう)
キョン(この日常はいつまでも続くし、俺たちは確かにUFOを見たんだ)
キョン(そう考えるようにしよう)
キョン「なぁハルヒ」
ハルヒ「んー?」
キョン「さっき何て言おうとしたんだ」
ハルヒ「忘れた。眠いのよ」
キョン「そうかい」
おわり
キョン、俺と代われ!
ハルキョン最高!