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魔法少女は衰退しました 【パート1】 【パート2】 【パート3】 【パート4】
魔法少女は衰退しました しーずん つー 【パート1】
えぴそーど じゅうきゅう 【人間さん達の、よくぼうのきわみ ぜんぺん】
――――正直に言えば、私は今日、体調が優れていませんでした。
いえ、元より心臓が弱いので体調が優れないのは割と何時もの事なのですが、普段に比べ格段に悪かったのです。
振り返れば原因はすぐに思い付きました。
まず昨日の鹿目さんの告白……それを断ってしまった事。
あれが本心だったとはいえ、結果的に人の心を踏み躙ってしまった重みは、私の身体にずしりと圧し掛かりました。
私だってその辺はちょっと気にするのです。明日から顔合わせ辛いなぁーとか思うのです。
だから昨日は、あまり寝つきが良くありませんでした。
それと、やはり昨日実感した事なのですが、体力が著しく低下していたようです。
睡眠不足、体力低下……この二つから引き起こされる次の事象は、大体皆さま同じでしょう。
ついでに「昨晩は少し気温が低かった」と付け足せば、私の身に起きた事は大方想像が付く筈です。
はい。私は風邪を引いてしまいました。
……だから大人しく寝ていれば良かったのですが、妖精さん達に頼んでいた”作業現場”に無理してでも
行こうとしてしまったのです。シャルロッテさん達の制止も無視して。恐らく、熱で朦朧としていたのでしょう。
普段なら滅多に燃やさない義務感が私の中でバーニングフラーッシュ(朦朧としています)。
一日ぐらいならお菓子だけでもテンションは持たせられたでしょうに、妖精さん達の元へ出向こうとしてしまいました。
――――この決断が失敗でした。
本来ならば何重にも設定されているセキュリティを解除し、安全を確保して進まねばならない『その場所』。
朦朧としていた私はその扉を、抉じ開けてしまったのです。
そして――――
シャル「で? なんで私達の――――まぁ、ほむらの家だけど……それが粉微塵に吹き飛ぶ結果になった訳?」
ゲルト【本当に粉微塵ですね……家のあった場所が荒野と化してますよ……】
シャル「爆弾でも仕掛けられていたのかって感じの大爆発だったわよね」
ゲルト【よく生きてましたよね、私達……】
シャル「妖精さんのお陰、なのかもね」
ゲルト【……爆発と生存のどっちが、ですか?】
シャル「……どっちも、よ」
杏子「あたしのさやか様コレクションが……」
ほむら「す、ずみまぜ……げほっ! ごほっごほっげほっ!」
ほむら「ほ、本ら゛い、”弁”をじっがりど閉めたヴえで、あげないとダメな扉を」
ほむら「うっがり、こじあけでしまいまじで……」
ほむら「”むごうがわ”のエネルギーが、いっぎにこぢらに流れごんで」
ほむら「こんなけっがに……げぼ、げぼげぼっ!」
シャル「あ、ああ、分かった。もう色々分かった……」
ゲルト【あの、何時も物臭なくせして、何故今回そんなに頑張ってしまったのですか?】
杏子「あたしのさやか様コレクションが……」
ほむら「ずみまぜん……ようぜいざん、にんげんがいないどやるぎでないので……」
シャル「やる気?」
ほむら「もだぜるだけならおがじだげでも、げほっげほげほ!」
ほむら「でも魔女ざんをいっごぐもはやぐすぐうだめにもごほっごほっ!」
ほむら「わだしが現場をじぎじ、げほげほごぼっ!」
ゲルト【す、すみません。もう良いです】
ほむら「ごめんなざい、ごめんなざい……」
シャル「ああもう。こんなんじゃ怒るに怒れないわねぇ」
シャル「……いや、ぶっちゃけそこまで怒る事でもないかも知れないけど」
ゲルト【ですねー……】
メイド*100「ガヤガヤ」
シャル ゲル(何しろ100人近いペーパークラフトメイドさんが既に家の再建を始めてるんだもん……)
シャル「このスピードでの工事なら、昼までには家自体は完成しそうね」
ゲルト【ですねぇ】
杏子「あたしのさやか様コレクションが……」
シャル「……さっきから佐倉さん呆然としてるけど、どうしたの?」
ゲルト【なんでも数日かけて集めた美樹さんの写真とか爪とか髪の毛とかのコレクションが】
ゲルト【この爆発で全て吹き飛んでしまったそうで……】
シャル「きもっ」
ゲルト【気持ちは分からないでもないですが、口に出すのは止めましょうよ】
シャル「いや、写真は良いとしても爪と髪の毛は……」
ゲルト【それはそうですけど】
ゲルト【でも世の中には自分の爪を集めていた殺人鬼とか、髪の毛をコレクションするだけでなくテイスティングして
楽しむ人とかが居るそうなので、それと比べれば……】
シャル「なにそれこわい。まじでこわい」
ゲルト【一応言っておきますけど、私だってその趣味に賛同している訳ではありませんからね?】
お姉さん「……全く。お嬢様には困ったものです」
シャル「あ、お手伝いさん。おっはー」
ゲルト【あ、おはようございます】
お姉さん「おはようございます」
お姉さん「……昔から風邪を引くと、無茶をした挙句大惨事を招いてきたというのに」
お姉さん「中学生になっても、お嬢様は変わりませんね」
ほむら「だっで、だっで……」
お姉さん「はいはい。あまり話すと、今まで築き上げてきたクールなイメージが崩れてしまいますよ」
シャル ゲル(え? あれ、クールなイメージだったの?)
お姉さん「臨時ですがベッドは既に用意してあります。今日はゆっくりとお休みください」
ほむら「うん……けほっ、けほ」
お姉さん「こちらです。さぁ……」
シャル「やれやれ……」
ゲルト【それで、どうしますか?】
シャル「? どうするって?」
ゲルト【今日の予定ですよ。私は用がない限り、このまま家の敷地内に居ようと思っていますが……】
シャル「ああ、そういう事」
シャル「とりあえず、私はさやか達との待ち合わせ場所に行くつもり」
シャル「なんか今日は公民館での授業が始まる前の、説明会だかなんだかをやるって話だからね」
シャル「さやか達にほむらが休むって事を伝えるのと、プリントとかあったら貰ってこないと」
ゲルト【そうですか】
シャル「そう言えば、佐倉さんはどうする? 私と一緒に行く?」
杏子「……ああ、そうだな。あたしも一緒に行くよ」
シャル「あ、そう? てっきり一日塞ぎ込むのかと思ってたから、駄目元で聞いたんだけど」
杏子「失った物は返ってこない……あたしはそれをずっと前から知ってるからな……」
杏子「後悔なんて、しない……」
杏子「それより前を向いて生きるのがモットー!」
杏子「だから、さやか様に会いに行くさ!」
シャル「佐倉さん……」
シャル(良い話風に語ってるけど、今回失ったのって変態コレクションよね)
ゲルト(過去に失った物って、多分家族の事ですよねー……)
ゲルト(同列に語られる亡くなったご家族が可哀想です)
杏子「おい、シャル。汚物を見るような眼差しを人に向けちゃいけないってご両親に教わらなかったのか」
シャル「汚物にその眼差しを向ける分には良いかなーって」
杏子「なぁ、それは流石に酷くないか? 泣くぞ? あたしマジで泣くぞ?」
ゲルト【まぁまぁ】
ゲルト【……それにしても幸先悪い感じだなぁ】
シャル「ん? 幸先って、何かするつもりだったの?」
ゲルト【え? あ、ああ、ごめんなさい】
ゲルト【実は、今日――――】
お姉さん「あ、良かった。まだ居ましたね」
シャル「? お手伝いさん?」
ゲルト【どうかしましたか?】
お姉さん「お嬢様から、シャルロッテさんにこれを渡すようにと言われまして」
シャル「これは……段ボールで出来た小箱?」
お姉さん「そちらは皆さまが妖精さんと呼ぶ、我々のマスターの発明品、『ご希望取り寄せボックス』です」
お姉さん「その箱から、ご希望する機能のアイテムを取り寄せる事が可能となっております」
シャル「なんか似たような機能のアイテムをほむらが持っていた気がするんだけど……」
お姉さん「そちらは特定のアイテム名が分からなくとも、希望する機能を持ったアイテムが出てくる仕組みです」
お姉さん「万一インキュベーターが何らかの戦いを仕掛けてきた時、多分役立つだろうとお嬢様は仰っていました」
シャル「多分役に、ねぇ……」
お姉さん「それと、そろそろ公民館に行かれた方が良いのでは?」
お姉さん「私に内蔵されている鳩時計型体内時計によりますと、現在午前八時を過ぎているのですが」
シャル「げっ!? ヤバい! 遅刻しそうじゃん!」
シャル「佐倉さん、急ぐわよ!」
杏子「お、おう!」
ゲルト【いってらっしゃーい】
お姉さん「全く……お嬢様ほどではありませんが、皆さまも結構慌ただしい事です」
ゲルト【あはは……まぁ、花の女子中学生って事で一つ……】
お姉さん「それと比べ、ゲルトルート様は随分落ち着かれたご様子」
お姉さん「もしかして、他の方々よりも年上なのでしょうか?」
ゲルト【どうなんでしょうね。人間だった頃の事は、殆ど忘れちゃいましたし】
ゲルト【辛うじて覚えている事も大抵恨み辛みだし、しかも細かなとこが抜けてて何時頃の話とかも分かりませんから】
ゲルト【ただまぁ……その曖昧な記憶からの推測ですけど】
ゲルト【高校生ぐらいだったのかも】
お姉さん「……そうですか」
ゲルト【あ、気にしないでくださいね? どうせ殆ど覚えていませんし】
お姉さん「はい」
お姉さん「では話を変えるついでに一つお尋ねしたい事が」
ゲルト【はい?】
お姉さん「先程、シャルロッテ様に何かを言おうとしていたご様子」
お姉さん「会話を終わらせてしまった私が尋ねるのも難ですが、何を言おうとしていたのでしょう?」
ゲルト【ああ、そんな、大した事ではありませんよ】
ゲルト【ただ――――】
……………
………
…
―――― 見滝原某所(まどか達の通学コース) ――――
まどか「……八時二十分」
まどか「ほむらちゃん達との待ち合わせの時間、来ちゃったね」
さやか「そだね」
まどか「うーん。そろそろ行かないと遅刻になっちゃうから、ほむらちゃんに連絡した方が良いんだろうけど」
まどか「フラれちゃった手前、ちょっと連絡しにくいな……」
さやか「そだね」
まどか「ねぇ、さやかちゃん」
まどか「そんな訳だからさやかちゃんから、ほむらちゃんに連絡してくれないかな?」
さやか「そだね」
まどか「……さやかちゃん、私の話全然聞いてないでしょ」
さやか「そだね」
まどか「……すぅー」
まどか「美樹さやかぁーっ!!!」
さやか「うひゃう?!」
さやか「な、な、なんだ!? 敵襲か!? ついにインキュベーターの総攻撃が始まったのか?!」
まどか「もう、さやかちゃんったらどれだけ上の空だったの?」
まどか「そもそもキュゥべえの母船は、昨日私とほむらちゃんで落としちゃったから総攻撃なんてこないよ」
さやか「あ、そうなんだ――――って、オイ。今さらりととんでもない事後報告しなかったか?」
まどか「ふん、ボケーってしてるから気付かないんだよ」
まどか「そんな隙だらけでいたら、何時か上条くんを誰かに盗られちゃうよ」
さやか「え?」
まどか「狙ってる子からしたらさやかちゃんはライバルだから、そんな話は聞かないと思うけど」
まどか「上条くん、結構女子の人気あるんだから」
まどか「まぁ、天才バイオリニストで、容姿も(ほむらちゃんほどじゃないけど)カッコいいからね」
まどか「あんまり隙を見せてると明日にでも誰かが告白しちゃうかも」
まどか「なんてね♪」
さやか「ふぐ」
まどか「ふぐ?」
さやか「ふ、ぐ、ぐ、ぐぅ……」
さやか「ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!」
まどか「泣いたああああああああああああああああああああああああああああああああ?!」
まどか「ちょ、さ、さやかちゃん!? なんで泣いて……」
シャル「おはよー、鹿目さん」
杏子「おっす」
まどか「あ、二人とも良いところに!」
まどか「あのね、さやかちゃんが……」
杏子「ああ、まどか。みなまで言うな。見れば分かる」
まどか「杏子ちゃん……」
杏子「さやか様を泣かすなんて、そんなのあたしが許さない」チャキ
まどか「みなまで聞いてよ!? テンプレとしか言えない誤解してるから! だから槍を向けないで!」
シャル「そうよ佐倉さん。鹿目さんがさやかをいじめるとは思えないし」
シャル「で、なんでこんな事になってんのよ」
さやか「ひぐ……ひぐ……恭介が……恭介が……」
シャル「恭介? ああ、アンタの幼なじみか。そいつが?」
さやか「まどかが、盗っていくって……」
シャル「……………GO」
杏子「……………」チャキッ
まどか「うん、今のは仕方ないと思うけど誤解だから。誤解だから喉元に槍の切っ先突き付けるのは止めて」
まどか「さやかちゃん?! ちゃんと説明してよ! あたかも私が上条くん狙ってるかのような発言は止めて!」
まどか「お願いだから、一つ一つ、丁寧に説明してくれないかな? かな?」
さやか「ぐす……うん……」
さやか「あのね、昨日の事なんだけど……」
~~~ 回想 ~~~
――― とある喫茶店 ―――
店員「こちらが珈琲と当店特製カップケーキ」
店員「こちらはホットケーキセットになります」
店員「ご注文は以上でよろしいですか?」
さやか「大丈夫でーす」
店員「ではごゆっくり」
さやか「……いやぁ、二人っきりでお茶とか久しぶりだね」
さやか「それで? 話って何?」
さやか「仁美」
仁美「……まずは確認させてください」
仁美「さやかさんは……上条くんの事が好きなんですよね?」
さやか「ぶっ!?」
さやか「だ、だ、だ、誰からそれを聞いて……!?」
仁美「見ていれば分かりますわ。さやかさん、隠し事が下手ですもの」
さやか「う……」
仁美「それで、どうなんですか? 好きなんですか?」
さやか「……………ああ、もう!」
さやか「そうだよ! 好きだよ!」
さやか「それが何?」
仁美「実はわたくしもなんです」
さやか「ヒョ?」
仁美「わたくしも、上条くんをお慕いしているのです」
さやか「……え?」キョロキョロ
仁美「さやかさん、これドッキリじゃありませんから。辺りを見渡してもカメラはありませんから」
さやか「べ、べべべべ別におおおおおど、驚いてなんかないっすよ!?」
さやか「そ、そ、そ、そーかー! 仁美は恭介が好きかーっ! あは、あははははは!」
さやか「恭介も隅に置けないなぁ! あっは、はは、はっば、ば、あばばばばばばっ」
仁美(一体どれだけ上条くんの事が好きなんですかあなた……)
さやか「で、で、でも、その、な、なんであたしにそれを言って」
仁美「……わたくしは上条くんが好きです。だけど同時に、さやかさんとの友情を大切にしたい」
仁美「横取りも、抜け駆けもしたくない」
仁美「ですから――――さやかさんに、勝負を申し込みます」
さやか「しょ、勝負?」
仁美「わたくしは明後日、上条くんに告白します」
仁美「良いですか、明後日です。明後日、告白します」
仁美「ですから明日一日、さやかさんがどうするか……さやかさんが決めてください」
仁美「この意味、分かりますよね?」
さやか「そ、れは……」
さやか「そんな、事、急に言われても……」
仁美「……意気地なし」
さやか「!?」
仁美「好きな人が今こうして取られようとしているのに、わたわたと狼狽えるだけ」
仁美「これが意気地なしじゃなければなんだって言うんですの?」
仁美「ああ、それとも棄権なさると? それは結構」
仁美「戦わずして勝利出来るなら、宣戦布告した甲斐があるというものですわ」
さやか「……!」
仁美「この調子なら、このまま無事に明後日を迎えられそうですわ」
仁美「もしかしたらわたくしがこの話をしなくとも、さやかさんが告白してしまう可能性もあると思っていましたが……」
仁美「こんな体たらくでは、とてもそんな大それた事は出来そうにありませんわね!」
仁美「明後日と言わず、もっとゆっくり仲を深めるといたしましょうか!」
さやか「……さっきから聞いてれば……」
さやか「無事に明後日を迎えられる? 戦わずして勝利?」
さやか「アンタ、告白すれば成功するって思ってる訳?」
仁美「当然」
仁美「でなければこんな勝負、持ち込む訳がありませんわ」
さやか「……ふ、ふふふふふふ」
仁美「……?」
さやか「何馬鹿言ってんのよ! アンタの恋は実らない!」
さやか「恭介は……あたしのもの!」
さやか「あたしが恭介の彼女になるんだ!」
さやか「――――明日から、ね!」
仁美「ふふ、見物ですわ」
仁美「言っておきますけど、事故や風邪で告白出来なかった」
仁美「そんな言い訳、聞きませんからね?」
さやか「言う訳ないでしょ! 言う必要ないし!」
さやか「高々好きって言うだけなんだから、電話でだって出来る事じゃない!」
さやか「明日あたしは恭介に告白する!」
さやか「そんでもってあたしを先に告白させた事……アンタに後悔させてやるんだからっ!」
~~~ 回想終わり ~~~
さやか「……って、威勢よく勝利宣言したは良いけれど、よく考えたら相手のペースに乗せられた訳で」
さやか「これからどうしたら良いのか思いっきり悩んでいる次第です……」
シャル「まぁ、今回ばかりは仕方ないと言うか、アンタじゃなくても大体同じ事をしたと言うか」
杏子「志筑仁美……愛と友情を両立させようとするその心意気、気に入ったね」
まどか「杏子ちゃん、怒らないの? もしかすると上条くんにさやかちゃんを盗られるかも知れないんだよ?」
杏子「そりゃ、出来ればあたしと付き合ってほしいけど」
杏子「さやか様が幸せになるのなら、あたしはそれで十分幸せだからな。問題ないよ」
まどか(杏子ちゃんマジ天使)
まどか(……私も見習おう)
シャル「ちなみに付き合う上での苦悩とかはないの?」
さやか「へ? 苦悩?」
シャル「いや、だってアンタ黒光りの巨人で、あと最近プリティでキュアキュアな戦士にもなったんでしょ?」
シャル「人間と怪物は恋出来ないーとか、なんとなくアンタ言いそうだし」
さやか「それを言ったら恭介は改造人間じゃん」
シャル「それもそっか」
まどか「人間の枠って、こんな軽いものだっけ……?」
杏子「ぶっちゃけ私ら四人の中で、純度100%の人間って一人も居ないんだけどな」
シャル「で? どうする……って聞くのは愚問だけど」
シャル「今日ちゃんと告白出来るの?」
杏子「つーても、しないって選択肢はない訳だけどな」
まどか「しないと仁美ちゃんが告白しちゃうもんね……」
さやか「そう、なんだけど……でも……」
さやか「……………ふぐ」
さやか「ふえええええええええんっ!」
まどか「ああ……また泣いちゃって……」
まどか「不安になるのは分かるけど、でもやってみなくちゃ分かんないよ」
さやか「分かるもん! 恭介は、あたしなんか好きじゃない……」
さやか「きっと、仁美の方を取るんだ……」
さやか「このままじゃ、恭介が仁美に取られちゃうよぉ……!」
シャル「落ち着きなさいよ。まだそうと決まった訳じゃないでしょ」
まどか「そ、そうだよ! だってさやかちゃん、あんなに上条くんに……」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
巨大さやか『よっこら』
恭介「あれ、なんでさやかの右手が僕に迫って」
巨大さやか『しょ』
恭介「ぷっちーん!?」ズシンッ!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
恭介「ん? あ、さやかか。なんd」
さやか「ちょっとこっちに来て」
恭介「え? こっちって……あの、窓際に連れてきて一体何をする気」
さやか「そい」
恭介「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
まどか「……あー」
さやか「あーって何!? その『ああ、そう言えばそうだね』と言わんばかりの声は!?」
まどか「いや、でもこれ好きになってくれる要素無いと言うか」
まどか「今まで好きだったとしても、怖がられるようになる要素しか最近は無かったと言うか……」
さやか「止めて! あたしも分かっているけどわざわざ言葉にして突き付けないで!」
シャル「……まずは現実を受け止める事から始めましょうか」
杏子「けど、どうすんだ?」
杏子「失敗が目に見えてるのに挑むなんて、そんな馬鹿はさせられないだろ」
まどか(杏子ちゃん、真面目にさやかちゃんの幸せを考えてる……)
まどか(割と本気でさやかちゃんには杏子ちゃんをおススメしたい)
シャル「だから、そんな事言ってもしょうがないじゃん」
シャル「拳を突きつけられ、自ら退路を断った」
シャル「ただそれだけの話。誘いに乗った自分が悪いと思って告白するしかないでしょ」
杏子「でもよー……」
シャル「大体一日かそこらで恋愛フラグなんて立つ訳ないし」
シャル「妖精さんパワーがあれば話は別だけど、そんなほいほいと頼む訳にはいかない」
シャル「一応ほむらから、欲しい機能を持った妖精さんアイテムを取り出せる箱ってのを借りたけど」
シャル「これだってちゃんと働くか、正直私は疑ってる」
さやか「……………」
まどか「妖精さんパワー……って、今更だけどほむらちゃんは?」
杏子「ああ、風邪引いたから休むってよ」
まどか「そうなんだ……私としては、今日はちょっと顔を合わせ辛かったけど」
まどか「でもほむらちゃんが居たら、妖精さんと一緒にさやかちゃんの悩みを解決してくれたのかな」
杏子「そりゃ無理だろ。アイツ、恋愛事は苦手みたいだし」
杏子「妖精さんもなんつーか子供っぽいから、恋愛は苦手そうじゃん」
まどか「……まぁ、苦手だよね。ドキドキの違いが分からないぐらいだし」
まどか(私の時は、まぁ、告白の後押しにはなったけどそれだけだもんね……)
まどか「やっぱりさやかちゃんが自力で告白しないと」
さやか「当て身」
シャル「へぶっ!?」
まど 杏「!?」
杏子「ちょ、何をしてるのですかさやか様!?」
まどか「シャルロッテさんを殴って気絶させるなんて……どうして!?」
さやか「いやー、妖精さんパワーに頼れば万事解決だよーあはははははは」
まどか「って、さやかちゃん、シャルロッテさんが持ってた箱を奪い取った!?」
杏子「どういう事だオイ……さやか様、目が虚ろじゃねぇか!」
まどか「多分ふられるかも知れないという思い込みで自暴自棄になってるんだよ!」
まどか「さやかちゃん、ああいう状態は稀によくあるから!」
杏子「それってさ、稀なの? 多いの?」
まどか「稀なんだけどよくあるんだよ!」
まどか「と、兎に角止めないと!」
まどか「妖精さんアイテムを使いこなせるのはほむらちゃんだけ」
まどか「さやかちゃんが使ったら、それはもう大変な事になるに決まってるよ!」
さやか「ふははははは! もう遅い! 手遅れよ!」
さやか「妖精さんアイテムはフィーリングが大事! この箱は多分こんな感じに使うんだ!」
さやか「あたしの恋を叶えるアイテムを出しておくれーっ!」
――――ぽーんっ!
まどか「! 箱からなんか飛び出してきた!」
さやか「わっ、と、と……キャッチ!」
さやか「えっと……小瓶、かな。中になんか水? みたいなのが入ってる……」
杏子「……薬か?」
まどか「さ、さやかちゃん、止めようよ……」
まどか「妖精さんアイテムだよ? 前ほむらちゃん言ってたよ?」
まどか「ちゃんと使っても役に立たず、適当に使っても役に立たず、悪用しようとしたら自分が破滅するって」
まどか「妖精さんに頼るのはふられてからでも遅くないから。ね?」
さやか「ええい、止めるな!」
さやか「あたしはこの薬で恭介とラブラブになるんだ!」
さやか「おっ、丁寧にも箱の底に説明書があった!」
さやか「瓶にもラベルが貼ってあるね。えっと、何々……」
まどか「ど、どうしよう、全然私の話を聞いてくれない……!」
杏子「落ち着け! 妖精さんがそんな素直にちゃんと願いを叶えてくれるアイテムをくれる訳が」
さやか「『ひんめい:とりこびやく』」
さ ま 杏「……………」
さ ま 杏(ちゃんと叶えてくれるアイテム来たああああああああああああああああああ!?)
さやか「び、び、媚薬ううううぅぅぅぅぅ!?」
杏子「おいおいマジかよ!?」
まどか「ほほほほ本当に媚薬!? 媚薬なの!?」
さやか「ま、待って! 説明書を読まない事には――――」
さやか「『つかいかた:のんで』」
さやか「『これのんだひと、はじめてみたひとすきすきーになります』」
さやか「『おむねどきどきで、おかおはまっかっか』」
さやか「『ときどきしんぞうきゅってなるけれど、それがとてもここちよいー』」
ま さ 杏「本物だァ――――――!!!」
さやか「ほ、ほほほ、ほ、ほほほほほ本物来てるぅぅぅぅぅぅ!?」
まどか「……!」
杏子「凄いよさやか様! これがあれば上条の奴と結ばれますよ!」
さやか「え? きょ、杏子ちゃん? あの……止めないの……かな?」
さやか「だって、その、杏子ちゃんは……」
杏子「……あたしは、さやか様が幸せになれるのなら、それで満足ですから」
杏子「今まで止めていたのは妖精さんアイテムだから、なにか酷い事があるかも知れないと思っただけ」
杏子「さやか様が幸せになれるのなら、あたしはそれを応援します!」
さやか(杏子ちゃんマジ天使)
さやか「よ、よし! これを使って恭介と……」ポンポン
さやか「?(肩を叩かれた? 一体何――――)」
まどか「魔力びーむ」
さやか「まどぎゃあああああああああああああああああああああああ!?」シビビビビビビビッ
杏子「!?」
杏子「ま、まどかがいきなりさやか様を攻撃した……!?」
杏子「おい、まどか!? 一体何をしてんだ!」
まどか「……ごめんね、さやかちゃん。痛かったよね」
まどか「でも……」
杏子(倒れたさやか様の手から落ちた媚薬を拾った……?)
まどか「私ね、ふられたけど、まだほむらちゃんを諦めてないの」
まどか「だから」
まどか「これを飲ませてほむらちゃんとのラブラブライフを送るのは私だよおおおおおおおおおお!」ダッ
杏子「……………」
杏子「媚薬盗ってったああああああああああああああああああ!?」
杏子「くそ! アイツ、ほむらが好き過ぎて頭可笑しくなったのか!?」
杏子「早く追い駆け……い、いや、さやか様の怪我を見る方が……!」
さやか「う、ぐ……」
杏子「! さやか様!?」
さやか「あ、れ……あたし……」
さやか「! そ、そうだ! まどかは!?」
杏子「……媚薬を奪った後、何処かに逃げていきました。多分ほむらの元だと思いますけど」
さやか「そんな……い、行かなきゃ……!」
杏子「駄目です! まだ傷が――――」
さやか「これぐらい――――あたしの力を使えば!」キュピーン
杏子「ぐっ!?(さやか様の身体が光って……!?)」
杏子(あ、あれは……プリティでキュアキュアで伝説の戦士っぽい恰好!?)
さやか「この姿なら、この程度の怪我なんでもない!」
さやか「それより、まどかを止めないと」
杏子「で、ですが――――」
さやか「そして、取り戻すんだ」
さやか「あの媚薬を!」
杏子「え?」
さやか「アレさえあれば……アレさえあれば恭介はあたしの虜……!」
さやか「そんで、虜になった恭介とあたしは」
さやか「うひ、うひひひひひひひ……」
杏子「さ、さやか様……?」
さやか「そうと決まったら!」
さやか「まどかをボコボコにしに行ってくる!」
さやか「ひゃっはーっ!!」ビュンッ
杏子「うわっ!?(も、猛風が起こるほどの速さで走り出した……)」
杏子(な、なんだよこれ……)
杏子(今のさやか様を見て確信した。何かが可笑しい)
杏子(まどかにしろさやか様にしろ、こんな……薬のために誰かを怪我させるような人間じゃない!)
杏子(原因があるとしたら――――まぁ、言うまでもなく妖精さんアイテムにある!)
杏子「くそ! あの薬を使わせるのは色々と不味そうだな……!」
シャル「……う」
杏子「!? シャル、起きたのか!?」
シャル「いたた……うーん……」
シャル「……なんで私、こんな所で寝てんの?」
杏子「良いか、事態がひっ迫してるから要点だけ伝える」
シャル「? え、ええ……」
杏子「さやか様はアンタを気絶させた後、妖精さんアイテムの媚薬を呼び出した」
杏子「で、まどかが媚薬を奪い、さやか様はそれを追い駆けた」
シャル「……は?」
杏子「言っとくがあたしだってパニクってんだ。どうなってんのか訊きたいぐらいだよ」
シャル「い、いや、そんな事言われても……」ガサ
シャル「んっ……何、この紙? 『とりこびやく』?」
杏子「ああ、どうやら説明書みたいだな」
シャル「説明書ねぇ……確かに媚薬効果があるって感じに書いてあるわね」
シャル「成程。恋に恋する乙女たちが、媚薬を求めて大暴れ、と……」
シャル「妖精さん好みのドタバタ劇と言うか……」
シャル「でも妖精さん製媚薬にしては、効果が平凡なような気が――――」スッ
シャル「……ん? 二枚目……?」
杏子「え?」
シャル「あ、これ二枚目の紙が一枚目にくっついていたのね」
シャル 杏「……………」
シャル 杏(これ絶対二枚目に大事な事書いてあるパターンじゃん!?)
杏子「ちょ、あたしら一枚目しか読んでない!? 半分読んでないぃぃぃぃぃ!?」
シャル「と、兎に角読みましょう! そこに全ての答えが書いて……」
シャル「書いて……」
シャル(『しよーじょーのごちゅうい』)
シャル(『ほんせーひんは、にんげんさんのこころをすきすきーってします』)
シャル(『すきすきおーらがおふれてるので、みるだけでちょっぴりこうかあり』)
シャル(『おなまえわかると、みんな、びやくのとりこになります』)
シャル(『すてきおーらあふれてるので、にんげんさんむいしきにあつまりんぐ』)
シャル(『おまつりさわぎってすてきねー』)
シャル「……………」
杏子「……これって、その……つまりアレか?」
杏子「媚薬を奪い合って騒動が起きる効果があると?」
シャル「……………多分」
杏子「しかもこれ、人が集まる効果まであるみたいだぞ」
シャル「……………みたいね」
シャル 杏「……………」
シャル 杏「なんつー余計な効果付けてんだよ妖精さああああああああああああああああああああああああん!?」
シャル「不味い、本格的に不味いわ!」
シャル「だって騒動を騒動と思わないあの妖精さんがお祭り騒ぎって表現しているのよ!?」
シャル「こ、これは、何時ぞやかほむらが言っていた……」
シャル「地図上から見滝原が愉快に消え去る事に……!?」
杏子「愉快に消え去るってどんなイベントだよ!?」
シャル「私だって知らないわよ!」
シャル「だけどこうなった以上、もうこれに頼るしかないわ……!」
杏子「その箱は……妖精さんアイテムが出てくる箱?」
シャル「これで、さやか達を止められるアイテムを出してもらう」
杏子「なっ……!? そんな事したら――――」
杏子「……いや、それしか手はねぇか……」
シャル「妖精さんには妖精さんで立ち向かうしかない」
シャル「これも、ほむらが以前言っていた事ね」
シャル「てな訳で! 使い方はフィーリング的にこんな感じかな!?」
シャル「暴走したさやかとまどかを止められるアイテムを出してーっ!」
杏子(さやか様と全く同じフィーリング感じたんだな……)
――――ポポポポンッ!!
シャル「って、多っ!? 一個だけじゃなくて何種類もアイテムが!?」
杏子「ひー、ふー、みー、よー……四種類か」
杏子「こんだけあれば、一個ぐらいは使えそうか?」
シャル「一個は使えると良いわねぇ……一個は」
シャル「とりあえず、説明書を読んでから決めましょ」
シャル「出来るだけ被害の範囲が小さそうなやつから使って」
「おーいこっちこっちーっ!」ドンッ
シャル「おおっとこのタイミングで背後から小学生が突っ込んできたー(達観)」
シャル「どべちっ!?」
杏子「げっ!? しゃ、シャルが転んで……」
杏子「……箱から妖精さんアイテムが飛び出して、どっかに転がっていっちまった」
杏子「しかも物の見事に東西南北に分かれて」
シャル「……最高に、最悪な状況ね」
杏子「ああ」
シャル「……どっから拾いに行く?」
杏子「そもそも真っ直ぐ転がって行くものなのか、アレ?」
シャル「……さぁ?」
シャル 杏「……………」
シャル 杏「どうすりゃいいんだこの状況ぅ!?」
……………
………
…
―――― 東 ――――
「何よ何よ何よ! ナスはお味噌汁の具以外は食べられないって何なのよ!」
「彼氏の好みに合わせてくれない彼女とは付き合えないって、あんな男こっちから願い下げ……ん?」
「あら、あんなところに何か落ちてるわね……ゴミ、かしら」
「一応捨てておきましょう……」
「……!?」
「こ、これは……!?」
「……」キョロキョロ
「ちょ、ちょっとだけなら――――」
―――― 西 ――――
「今日も一人で登校~っと」
「……最近、上条の奴絡みにくくなったなぁ」
「なんか改造人間になっちまったらしくて、登校は百メートル3秒の猛スピードだから追いつけないし」
「まぁ、元気になったのは良いけどさぁ……」
「――――ん?」
「なんだ、茂みの向こうが光って……」
「オレンジ色の、宝石? 一体……」
「な、なんだ!? 石が光って――――」
「う、うわあああああああああああ!!?
―――― 南 ――――
「……はぁ」
「さやかさんは今日、上条くんに告白するのでしょうか」
「いえ、勝負を挑んだのはわたくし。だから告白する事に文句はないですし、むしろしないとガッカリすると言いますか……」
「ですが、やはりあんな事言わなければ良かった、と思わずにはいられません。我ながら醜い――――」
「っと、と? ……何か踏んでしまいましたわね。これは、ボールペン?」
「あ、ペンライトですわね。押すと光りますわ」カチカチ
「落し物みたいですけど、どうしたものか……」
「ん? 何か音が……!?」
「あ、あれは――――」
―――― 北 ――――
「ふふふ♪ 皆さん、吃驚するだろうなぁ」
「結果的とはいえ、ドッキリになりましたからね」
「あーっ! 二本の足で歩くって最高っ!」
「……あら?」
「なんだか瓶が……捨て瓶?」
「いけませんねぇ、ゴミはちゃんとゴミ箱に捨てないと……」
「ん? これは――――」
……………
………
…
まどか「はっ、はっ、はっ、はっ……!」
まどか「さやかちゃん……の、姿はないね……」
まどか「ふぅ。路地裏まで逃げ込んで、なんとかまけたかな」
まどか「単純な力では私の方が強い筈だけど、妖精さんパワーの塊みたいなさやかちゃんと戦うのは」
まどか「出来れば避けたいからね」
まどか「……」
まどか「……うぇひ、」
まどか「うぇひひひひひひ……!」
まどか(なんという幸運! ツキは私に向いているよ!)
まどか(さやかちゃんには悪いけど……ううん、媚薬使わなかったからってふられるとも限らないし、悪くはないよね!)
まどか(兎に角私はこの媚薬でほむらちゃんとラブラブな恋人生活をゲットする!)
まどか(ああ、でもほむらちゃんって惚れたらどうなるのかな!)
まどか(ほむらちゃんって遠巻きに見るより自分から引っ掻き回しにいくタイプだし……)
まどか(もしかして飲ませた途端理性を失って襲ってくる!?)
まどか「うぇ――――――――――ひ――――――――――!!!!」 ← 嬉しさで走り回る
ドンッ!
まどか「ぶっ!?(誰かにぶつかった!?)」
まどか「あいたっ!?」ドテンッ
「ひゃあっ!?」ドテッ
まどか「いたた……尻餅撞いちゃった……じゃなくて!」
まどか「ご、ごめんなさい! 前を見ていなくて……!」
「か、かかかかかかかな、鹿目さん!? ななななんでここここここ」
まどか(あれ? この声って)
まどか「早乙女先生――――?」
猫耳和子(以下猫和子)「……………」
まどか「……先生?」
猫和子「……………」
まどか「あの、えーっと……」
まどか「……その猫耳と尻尾は?」
猫和子「……カチューシャが、落ちていて……」
猫和子「す、捨てようと思って手に取って……その……」
猫和子「……出来心で」
まどか「……出来心ですか」
猫和子「そしたら尻尾まで生えて……」
猫和子「し、信じられないと思うけど、本当なんですよ?」
まどか(ええ、本当でしょうね……この限りなくしょうもない状況こそがその証明という)
まどか(分かる……あのカチューシャがなんなのか見当が付く)
まどか「あの、外せば良いのでは……」
猫和子「何故か外せないの……」
まどか「ですよね」
まどか(ああ、間違いない……この一体誰得なんだろうと思わざるを得ない、呪いのアイテム的状況)
まどか(どう考えても妖精さんアイテム)
まどか(……嫌だなぁ、関わると絶対ろくな事にならないもん)
まどか(それに早くほむらちゃんの元に行きたいし)
まどか「えーっと、じゃあ私はこれにて……」
猫和子「ちょ、鹿目さん待って!」
猫和子「こんな恰好じゃ人前に出られません! だから助けて!」
まどか「無理です。割と本気で無理です……だから服から手を離してください」
猫和子「離しません!」
まどか「いや本当に離してくださいよ! 大体どうしろって言うんですか! 取れないんでしょ!?」
猫和子「諦めんなよ!」
まどか「それ自分自身に言ってくれません!?」
まどか「と言うか私は忙しいんです! 離してください!」
猫和子「は――――な――――さ――――な――――い――――!!」
まどか「ああもう! いい加減にしないと首をこきりとやっちゃいますよ!!」
――――カチャン
まどか「あ?」
猫和子「ん?」
まどか(あ……媚薬の瓶、落としちゃった……)
まどか(……ころころ転がった結果、丁度ラベルが上に来て)
まどか(とりこびやく、の文字が丸見えに)
まどか(……なんだろう。凄く嫌な予感が――――)
猫和子「鹿目さん」
まどか「え、あ、はい。なんです」
猫和子「ごろにゃーん♪」
まどか「!?」
まどか(さ、早乙女先生が猫の鳴き真似と共に……)
まどか(如何にも猫が主人に甘えるようなポーズをとった!?)
まどか(なんだろう、こう、年を考えてよとか無駄にかなり上手いとか)
まどか(あの歳の大人に甘えられるとキッツイとか抱いていた尊敬の念が砕かれたとか)
まどか(色々と考えが込み上がってきて――――)
まどか(あ、出る)
まどか「ごばぁ!?(吐血)」
猫和子「……ふっ。やはり吐いたわね」
猫和子「このカチューシャを被って以来、誰かに甘えよう、頼ろうと思った瞬間」
猫和子「何故か今のような猫っぽいポーズを取ってしまうようになり」
猫和子「それを見た人が吐血するようになったのですよ!」
まどか(何その滅茶苦茶な効果!?)
猫和子「ふふ……この小瓶」
猫和子「媚薬、みたいですね」
まどか「そ、れは……!」
猫和子「誤魔化そうとしても無駄ですよ。だって凄まじいパワーをビンビン感じるもの」
猫和子「私の野性的本能が、これは本物だと言っているの!」
まどか「か、仮に、本物だとして……」
まどか「先生はそれを、どうする気なんですか……!?」
猫和子「決まっています!」
猫和子「私のハーレムを作るのです!」
まどか「……………」
猫和子「ふふふ……媚薬を使えば、どんな男も私の虜……」
猫和子「もう私の行いに誰も文句を言わない! 目玉焼きが半熟だからとかナスが嫌いだとか言わせない!」
猫和子「やった! やったわっ! ついに私も独身からランクアップできる!」
猫和子「もう何も怖くない! だって私ひとりじゃないもの!」
猫和子「ああでも日本は一夫一妻制だから結婚したら他の男と付き合えないわねーそれだとハーレムが作れな」
まどか「それとなく威力を削いだ魔力びーむ」
猫和子「みぎゃあああああああああああああああああああああああああああ!?」シビビ
まどか「……ふぅ。無事に媚薬を取り戻せた」
まどか「全く。ハーレムを作ろうだなんて」
まどか「そんな不純な理由の人にはまかり間違っても渡せないよね!」
まどか「私みたいなピュアな恋にこそこういう薬は相応しいんだから!」
まどか(だけどどういう事なんだろう。恋に生きてる先生だから媚薬を奪おうとするのは何となく納得出来るけど)
まどか(でもなんで先生が妖精さんアイテムを持ってるの? まさか先生も妖精さんと友達?)
まどか(ううん、そういう単純な事じゃない。そう単純で済む筈がない)
まどか(今まで経験した妖精さん絡みのトラブルから考えると……)
まどか(例えば何らかの事故で妖精さんアイテムが見滝原に散らばったとか)
まどか「いやいやまさかそんな事ある訳ないよねあはははははははは」
鎧姿の中沢「くそぉ! これどうやったら脱げんだよぉ!」ガシャンガシャン
円盤に乗っている仁美『あらあら、みなさんこんにちは~』
まどか「」
まどか「……え……いや……え?」
中沢「お? おお! 鹿目さんじゃないか! 聞いてくれよ!」
中沢「今朝変な玉を見つけて、なんとなく近付いたら……」
中沢「何時の間にかこの鎧を着ていたんだよ!」
中沢「鎧なんて着た事ないから脱ぎ方が分からなくて!」
まどか「ソ、ソウデスカ」
まどか「ま、まぁ、そのうち脱げるよ……多分」
まどか「それよりも仁美ちゃん」
まどか「その円盤は……?」
仁美『道端に落ちていたペンライトを拾ったところ、空からこの円盤が下りてきましたの』
仁美『そしてこちらの宇宙人の方々とお友達になったのですわ』
妖精さんA「どもです」
妖精さんB「はーい」
まどか(もろに妖精さん来てるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!?)
まどか(銀色の全身タイツは宇宙人のつもりなの!?)
まどか「なんで妖精さん……と言うか電波は……」
妖精さんA「こちらののりもの、でんぱとおさぬのでー」
妖精さんB「おそとのおさんぽにさいてきかと」
妖精さんA「まれによくつかいますが?」
まどか(世に溢れるUFO映像の正体を知ってしまった……)
仁美『鹿目さんはこちらの方々の事を知っているのですか?』
まどか「し、知っていると言うか……その……」
まどか「よ、妖精さん? だよね……」
仁美『あらあら、鹿目さんったら。妖精さんだなんて……』
仁美『そんな非科学的なもの、居る訳ありませんわ』
仁美『ですよね? 宇宙人さん』
妖精さんA「ぼくらうちゅーじん?」
妖精さんB「はなしがうちゅーじんとはよくいわれますな」
妖精さんA「じゃあ、そういうことで」
仁美『ほらね?』
まどか「じゃあ、とか言ってたんだけど」
まどか(ああ……これ、絶対妖精さんアイテムが町に散らばってる……大惨事の前触れになってる……)
まどか(しかもアイテム単体ならまだ良いけど)
まどか(妖精さんがここに来てしまっている……)
まどか(妖精さんは居るだけで世の中が面白おかしく理不尽ドタバタになるってほむらちゃんが言ってた)
まどか(そして私の手には媚薬)
まどか(ヤバい。これ愉快で楽しくてはた迷惑な出来事が始まる寸前って感じだよ)
まどか(ここはさっさと早急に素早く立ち去)
さやか「見つけたぞっ!!」
まどか「げぇっ さやかちゃん!?」
さやか「ようやく、ようやく見つけたぞまどかぁぁぁぁ……!」
まどか(あああああああこんな時にぃぃぃ……!)
まどか(ここでさやかちゃんが迂闊に媚薬どうのこうのなんて言おうものなら)
まどか(先生の時と同じ事態が起こると容易に想像出来る! それもさっきの三倍もの規模で!)
まどか(い、いや……しかしここには仁美ちゃんも居る!)
まどか(さやかちゃんと仁美ちゃんは今ライバル状態! 媚薬は伏せたい情報!)
まどか(そこは曖昧にして語る筈!)
さやか「さっさとあたしから奪い取った媚薬を返せ!」
まどか「さやかちゃんの馬鹿ああああああああああああああああああっ!!」
中沢「……媚薬?」
仁美『……媚薬……』
中沢「媚薬を使って……俺、モテモテ?」
仁美『媚薬を使えば……上条くんはわたくしに……』
中沢「俺のハーレム帝国……!」
仁美『上条くんがわたくしに惚れる分には、さやかさんとの約束には抵触しない……!』
まどか「ほら見てよ! 流れるような速さで二人とも媚薬の虜だよ!」
さやか「アンタが言えた事じゃないだろ! あたしから奪い取ったくせに!」
さやか「つーかその媚薬は元々あたしのでしょうがっ!」
まどか「もっと元を辿ればほむらちゃんのだよ!」
まどか「そしてほむらちゃんの物って事は将来の伴侶である私のものでもあるんだよ!」
さやか「屁理屈にしたってもう少しマシな言い分なかったの!?」
猫和子「ふざけてんじゃないわよおおおおおおおおおお!」ガバッ
まどか「うわぁ!? 先生が復活した!? 手加減したとはいえ黒コゲにした筈なのに!」
まどか「なんで起き上がれるんですかぁ!?」
猫和子「あなたには、分からないでしょうね……」
猫和子「未来ある、あなた達には……」
猫和子「私には、もう時間がないの」
猫和子「あと、あと一年で……」
猫和子「四捨五入したら四十台になってしまう私と違って!」
まどか「物凄い欲望塗れな答えが返ってきた!?」
\ビヤク・・・/\ビヤク・・・/\ヨコセ・・・/\ヨコセ・・・/
まどか(ああ……私以外みんな敵って感じになってる)
まどか(このまま戦えば苦戦は必須……いや、媚薬を奪われる事も十分に考えられる)
まどか(でも無理に戦う必要はない)
まどか(媚薬を持っている私の勝利条件は)
まどか(”誰よりも早くこの薬を使ってしまう事”!)
まどか(わざわざ戦ってあげる筋合いなんてない!)
まどか「だから――――逃げる!」カッ!
さやか「うわっ!? まどかが光って――――」
まどか「うぇはははははははーっ!」
さやか「なっ……声はすれども姿が消えた!? 何処に――――」
中沢「う、上だ! 空を飛んでる!」
さやか「!(妖精さんによる改造で得たパワーの一つ、超視力発動!)」
さやか(あんにゃろう……魔法少女姿になって、魔法で空を飛んでるんだな!)
仁美『うふふ。お先に失礼しますわーっ!』ビュンッ
さやか「!? しまった、仁美には乗り物があるっ!」
中沢「うおおおおおおおお!」
さやか「な、中沢!?」
中沢「なんだから分からんが出てこい!」
中沢「俺の乗り物ーっ!」
――――ヒヒーンッ!!
さやか「ちょ、空から……う、馬――――」
さやか「いや、ペガサス!?」
中沢「おお! なんか呼べば出てきそうな気がしたが、本当に来るとは!」
中沢「成程、ペガサスなら空を飛べるな!」
さやか「いやいやいやいや、ペガサスが来た事にツッコミを入れようよ!」
中沢「ツッコんでる暇があったら媚薬を追う! はいやーっ!」
ペガサス「ヒヒーンッ!」
さやか「ああ、中沢の奴まで飛んでいっちゃったよ……!」
さやか「……………」
さやか「で、あの」
さやか「先生は飛ばないんすか?」
猫和子「……私は……猫耳生えただけだから……」
さやか「あ、そっすか」
猫和子「そ、そうだわ! 美樹さん、私と組まない?!」
猫和子「まずはチームを組んで、強敵を排除するのがお互いのメリットに――――」
さやか「あ、すんません。あたしも空飛べるんで」
猫和子「え゛」
さやか「変☆身」ビカーッ
猫和子「……あら、美樹さんが……黒光りの巨人に……」
巨大さやか『ドゥワッ!』
猫和子「そして如何にも当然と言わんばかりに飛んだわね……」
猫和子「……………」
猫和子「なんで私だけ走って追い駆ける事になるのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
こうして始まった媚薬争奪戦。
果たして私はほむらちゃんに媚薬を飲ませる事が出来るのか?
次回に続く! だよ!
―――― 公民館玄関口 ――――
マミ「……公民館の前で待っていたけど、誰も来ない」
マミ「もう説明会始まっちゃうけど、鹿目さんも美樹さんも暁美さんも佐倉さんも魔女さん達も来ない」
マミ「これは、あれかしら。私だけがハブられてる感じなのかしら」
マミ「他のみんなは妖精さんのトラブルに巻き込まれているのかしら」
マミ「別に良いけどね。どうせ妖精さん絡みのトラブルなんて、ドタバタ大喜劇でしょうから」
マミ「一人の方が気楽だもん」
マミ「……ぐすん」
妖精さんメモ
『集合離散の性質』※原作設定※
妖精さんは普段はバラバラであまり群れないのですが、楽しい事があったり妖精さんの密度の高い地点が
出現すると、そこに爆発的な勢いで集合・増殖します。その状況下では例えばゴミ山が一晩で未来都市になると言った、
発展し過ぎてジョークにしか見えない超絶科学力による事象が起きるのです。
が、飽きたり吃驚したり諸々の寿命を迎えたり……様々なきっかけにより、解散も一瞬で起こります。
これを集合離散の性質……と名付けてみる。
『信じてメガホン』※オリジナル※
メガホンを通じて出した声に信憑性を持たせる、なんとも不思議なアイテムです。
どんなホラでも信じさせる事が可能ですが、信憑性は声の大きさに比例するため、でっかいホラを吹く時は
相応の大声となります。そうなると必然的により多くの人に知れ渡る事となりますので、
例えば「明日地球が滅亡する!」なんてホラを信じさせようものなら、世界が大パニックに陥ってしまうでしょう。
効能の割に潜在的な危険が大きいので、あまり他人には触らせたくない道具ですね。
『妖精さん密度』※原作設定※
妖精さんは楽しい事が好きです。その事と関係があるかは分かりませんが、妖精さんがたくさんいると
それだけで世界が愉快で不思議で不条理でご都合主義な感じになってしまいます。
その度合いはその地域で最も妖精さんと親しい人物(例えば私)が一日に出会う妖精さんの数で計測します。
数値はfを使用。ただし15人以上になると厳密性が損なわれるため、15f以上は過密状態を表すFとします。
密度Fならば怖いものは何もありません。存分に不思議を楽しみましょう。
10fの時は一瞬の油断が怪我に繋がるかも知れません(私の場合、”幸運”にも全て回避出来ましたが)。
5fの時は割とリアルな現実です。が、適当に射出したアンカーが上手い事とっかかりに引っ掛かったりします。
1fはほぼ現実です。ですが希望はあります。きっとなんとかなるでしょう。
0fの時は諦めてください。現実は非情なのです。
尚、私は常に妖精さんを侍らせているので常にF状態。無敵です。えっへん。
『電磁鬱』※原作設定※
超絶科学力を持ち、辛く悲しい現実を明るく楽しくしてくれる妖精さん。しかし彼等にも苦手なものがあります。
それは電波。
電波を浴びた妖精さんはテンションが下がり、表情が暗くなり、鬱っぽい状態になってしまいます。
私が妖精さんから聞いたところによると「くうきをよまないので」との事。意味は分かりません。
この性質のせいで妖精さんは都会では活動出来ないのです。残念。
『ご希望取り寄せボックス』※オリジナル※
ああ、こういう時に役立つアイテムがあった筈だけど名前が思い出せない……そんな時に便利なのがこれ。
用途を思い描けばお望みのアイテムが出てくる素敵グッズです。
ただし何が出てくるか分からない事、あくまで要望に応える事が目的なので加減も出来ない事、
要望を叶えるアイテムが複数あるとまとめて出してくる事、そして稀に”うっかり”関係無いアイテムを
出してしまう事……と、どうして中々使い勝手が悪いです。
検索をボックス自身にお任せしているのが不味いのか、それとも別の理由があるのかは不明です。
えぴそーど にじゅう 【人間さん達の、よくぼうのきわみ こうへん】
前回のあらすじ。
さやか:ねんがんの びやくを てにいれたぞ!
【まどか】
そう かんけいないね
> 殺してでも うばいとる ピッ
ゆずってくれ たのむ!
さやか:な、なにをする きさまー!
―――― 見滝原上空 ――――
まどか(魔力全開で空の彼方まで飛んだよ!)
まどか(高さはざっと1000メートルぐらい……かな? よく分かんないけど)
まどか(――――私が魔法少女になったばかりの頃、マミさんが言っていたっけ)
まどか(魔法少女が空を飛ぼうと思ったら、重力の操作や慣性の制御、姿勢の固定に風や気圧に対する細かな調整)
まどか(それらを行う魔法を、継続的かつ繊細にコントロールしないといけない)
まどか(祈りによってそういう力を手にしたならともかく、そんな複雑かつ高度な魔法を使えば、
当然魔力をとんでもない勢いで消耗する)
まどか(だから空を飛ぶのは戦う上で有利だけど、実戦では使えない)
まどか(今の私はいくらでもある魔力を使って、力技で飛んでいるけど……)
まどか(空を飛ぶのは本来それぐらい大変な事)
まどか(だから普通なら、この高さまで追い駆けてこれる『人』なんて居ない訳だけど――――)
仁美『待ちなさいまどかさん! そして大人しく媚薬を渡しなさーいっ!』
まどか(妖精さんの乗り物に乗っている仁美ちゃんは当然)
巨大さやか『待てやまどかあああああああああああああっ!!』
まどか(さやかちゃんも普通に飛べるだろうし)
中沢「素直に渡せば俺のハーレムの一員に入れてやるぜええええええっ!」
まどか「えい」<魔力弾発射
巨大さやか『すぺしうむー』<光線発射
仁美『適当に攻撃してください』妖精さんA「らじゃー」<ミサイル
中沢「ぎゃあああああああああああああああああ」シビビビバリバリチュドーン
ペガサス「ひひーーーーんっ!?」
まどか「あ。あまりにもムカつく事言うもんだからつい撃っちゃった」
巨大さやか『不可抗力っしょ』
仁美「自業自得ですわ」
中沢「しかし甲冑のお陰で無傷だったぜ!」
ペガサス「ひひーんっ!」ケンザイッ
まどか「ちっ」
巨大さやか『ちっ』
仁美『ちっ』
中沢「え、俺そんなに酷い事言った?」
まどか(中沢くんもさも当然とばかりに追い駆けてきたし)
まどか(来なかったのは先生だけ……見た目は一番非常識だったのに)
まどか(でも、三人は妖精さんアイテムを使っているんだからこのぐらいは想定済み)
まどか(むしろ先生だけでも来られなかったのは僥倖ってやつだね)
まどか(――――飛ぶ前にも思ったけど、今、この中では私が一番有利!)
まどか(ほむらちゃんにこの媚薬を飲ませちゃえば勝利確定になる)
まどか(だから無理に戦う必要はない。むしろ妖精さんアイテム相手に戦う方がリスキー!)
まどか(このまま最高速度で飛んで、ほむらちゃんの家に飛び込み)
まどか(有無を言わさず媚薬を飲ませるのが最速安定の勝利方法だよ!)
仁美(まどかさんが何処に向っているかは分かりませんが、目的は容易に想像出来ますわ)
仁美(まどかさんは既に媚薬を持っている。あとは使ってしまえば、まどかさんは目的を達成出来る)
仁美(無論、邪魔されないようわたくし達を倒しておくという選択肢もあるでしょう)
仁美(しかし現在一目散に逃げている以上、戦うのではなく逃走を選んだのは確実)
仁美(ならばこのまま逃がす訳にはいきません!)
仁美『宇宙人さん! 武器を起動して、まどかさんを攻撃してください!』
仁美『出来れば先程のミサイルではなく、動きを止める事を目的にしたものを!』
妖精さんA「でしたらこのすいっちをー」
仁美『押せばいいんですね! えいっ!』ポチッ
――――うぃーん
仁美『あら、何か出てきましたわ?』
妖精さんA「ねばねばびーむー」
仁美『全く関係性を見いだせない単語が二つつながった武装ですけど、構いませんわね!』
仁美『とりあえず発射!』
――――ピルルルルルルッ
まどか「うひゃあ!? なんか変なビームが飛んできた!?」
まどか(なんか見た目がねばねばしてそうなビーム! 当たったら多分動きが鈍りそう!)
まどか(幸い難なく避けられる速さだけど、妖精さんアイテムから出てきたビーム……)
まどか(最優先で避けないとダメ!)
中沢「こっちも追い駆けるだけじゃないぜ! 弓矢を食らえ!」
まどか(中沢くんは如何にも普通の矢を撃ってきた!)
まどか(勿論普通の矢なんていくら当たっても平気だけど……)
まどか(妖精さんが関わった矢が普通の筈ない!)
まどか(これも下手に防御する訳にはいかない! 全力で回避しないと!)
巨大さやか『小細工なんて不要! このまま質量の差で押し切ってやる!』
まどか「ひゃあっ!?」
まどか(さやかちゃんは体当たり攻撃! 直線的だけど……私よりも速い!?)
まどか(直撃を受けたら、多分一番ダメージが大きい!)
まどか(さやかちゃんは肉体攻撃だから、私の魔法でシールドを張って防げると思うけど……)
まどか(でもさやかちゃん程の攻撃を受けたら、打撃によるダメージ自体は防げても)
まどか(その衝撃で吹き飛ばされちゃう! ほむらちゃんの家から遠ざかっちゃう!)
まどか(勿論その隙に仁美ちゃん達の攻撃が来るかも知れないし)
まどか(時間を掛けたら、その分ほむらちゃんの家に辿り着く前に攻撃に当たっちゃう可能性も高くなる)
まどか(さやかちゃんの攻撃を受ける訳にもいかない……)
まどか(って、結局全部の攻撃を避けなきゃ駄目じゃん!?)
仁美『さぁ、全砲門一斉掃射ですわーっ!』
中沢「喰らえ乱れ撃ち!」
巨大さやか『マッハ30の超スピード飛行による体当たり! 何時まで避けきれるかなぁ!!』
まどか(ぐ……! ま、不味いよこれ……!)
まどか(全員が私の媚薬を求めて攻撃してくる! 狙いを一人に絞れない!)
まどか(出来たら魔力を解放して周囲一帯を吹き飛ばしちゃいたいけど……)
まどか(街に被害を出すのは流石に不味いと思うし)
まどか(それにみんな今は妖精さんアイテムの塊みたいなもの。特に仁美ちゃんは妖精さんと一緒に行動中)
まどか(私の攻撃でみんなノックアウトって未来が全然見えない!)
まどか(どうすれば、どうしたら……)
まどか(この包囲網を破れる……!?)
まどか「……………」
まどか(いや、待って)
まどか(そもそもこれって”包囲網”なの?)
まどか(だって――――)
中沢「くっそぉ! 当たれ当たれ当たれぇ!」
まどか「……よっと」ヒョイ
中沢「糞! いくら乱れ撃ちしても躱されちまう!」
巨大さやか『え』プス
中沢「あ」
巨大さやか『って、何してんの中沢!? なんであたしを攻撃してんのさ!』
中沢「な、流れ弾だよ! つーかお前が勝手に当たりに行ったんだろ!」
巨大さやか『よく言うよ! あわよくばとか狙ったんじゃないの?!』
巨大さやか『ま、あんなへなちょこ弓矢、いくら撃たれても痛くも痒くもないけどさ』
巨大さやか『痛くも痒くも……』ポリポリ
巨大さやか『……………』ボリボリ
巨大さやか『……………!』ガリガリ
巨大さやか『ちょ、なんか身体が……』
巨大さやか『身体が、痒い!』ガリガリガリ
中沢「え?」
巨大さやか『な、なんじゃこの痒さはあああぁぁああぁあああ!?』ガリガリガリ
妖精さんA「あー、あれはー」
妖精さんB「いたくはないけど、かゆーくなるやですなー」
妖精さんA「あたるとかゆくなります?」
中沢「え、俺の矢ってそんな効果だったの?」
巨大さやか『なんだその滅茶苦茶な効果!?』
巨大さやか『でもこの痒さはキツイ!? これなら腕がもげる方がマシだよ!?』
巨大さやか『これもう飛ぶのに集中出来な……』
巨大さやか『アッ――――!!』
――――ひゅぅるるるるるるるるる……
――――ずしーんっ!!
まどか「……百メートル級の巨人が市街地に落下とか、軽く天災だよね」
中沢「あれ、二十人ぐらい下敷になって死んだんじゃ……」
まどか「それは平気だと思うけど(妖精さんが此処にいるので)」
まどか「……今日の夜のニュースで、見滝原に隕石落下か? みたいな見出しが出るんだろうなぁ……」
まどか「良いのかなぁ……妖精さんの事、秘密にしとかなくて……」
まどか(いや、思い返すとほむらちゃん、そういうの隠す気全然なかったような……)
まどか(……クラスメートの前で普通に妖精さんアイテムを使ったらしいし、始めて会った時も私達の前で
妖精さんをなんの躊躇いもなく呼び出してるし)
まどか(……「え? なんで隠す必要があるのですか?」)
まどか(うん。絶対こう言うよね)
まどか「兎に角、同士討ち作戦は成功!」
まどか「みんな結局私利私欲で私に挑んでるからね! チームワークは壊滅的!」
まどか「簡単に同士討ちを狙えたよ!」
中沢「ちぃっ! 小癪な!」
中沢「だが、まぁ、美樹の奴がリタイアしたのは好都合!」
中沢「次こそこの攻撃を当てて」
仁美『隙ありですわー』
中沢「え――――ぎゃああああああああああああああああああああああ!?」シビビビビ
ペガサス「ひひひひひひひーんっ!?」
まどか(ひ、仁美ちゃん、中沢くんを狙って攻撃した!?)
中沢「ど、どぼじで……?」
仁美『元より、わたくしは皆さんと協力する気なんてありません』
仁美『さやかさん相手に戦うのは少々リスクがありそうでしたが……そのさやかさんが脱落した今』
仁美『あなたのような、居ても居なくても変わらぬ方にはお引き取り願うまでですわ』
中沢「ぢ、ぐしょー……」ヒュー
ペガサス「ヒヒーン……」ヒュー
まどか(中沢くんも落ちていった……常人なら即死するパターンだけど、多分平気だよね)
まどか(だけど……)
まどか(最悪の相手が残った……!)
まどか(仁美ちゃんはほむらちゃんと違って妖精さんをけしかける事は出来ないだろうけど)
まどか(でも、そうだとしても妖精さんが仲間に居るのはあまりにも心強すぎる!)
まどか(どうやって切り抜ければ……!?)
仁美(さて、どうしましょう)
仁美(まどかさんも宇宙人さんの道具を持っているのか、不思議な力を得た様子)
仁美(それも、相当に強い力ですわ)
仁美(三対一の攻撃すら躱していたのですから、ねばねばびーむ単体では当たりそうにありません)
仁美(恐らく、ミサイルも躱されてしまうでしょう)
仁美(持久戦に持ち込まれたら、その分まどかさんが想い人に媚薬を飲ませるチャンスを与えてしまう)
仁美(このままでは、”負けて”しまう)
仁美(なら……短期決戦を挑むしかない!)
仁美「宇宙人さん、何か最終兵器的なものはありませんか?」
妖精さんB「でしたらこちらのすいっちおしてー」
仁美「こちらの……ガラスを叩き割って押すタイプのボタンですわね」
仁美「この如何にも危険な雰囲気、正に最終兵器ですわ!」
仁美「えいっ!」ガシャンッ
―――― ビーッ! ビーッ!
仁美「まぁ、警報が……それっぽい感じですわね!」
仁美「それで、どんな最終兵器が起動するんですか?」
妖精さんAB「じばくー」
仁美「……え?」
妖精さんA「さいしゅうへいきといえば」
妖精さんB「じばくですなー」
妖精さんA「みっちゃくしながら」
妖精さんB「こなみじーん♪」
妖精さんC「たのしいですなー」
仁美「た、た」
仁美「楽しい訳ないでしょおおおおおおおおおおおおおおお!!?」
ちゅどおおおおおおおおおおおおおおおおおおんっ!
まどか「え。何もしてないのになんで?」
仁美「覚えてなさぁぁぁぁぁぁぁ……
妖精さん「わー」
まどか「……仁美ちゃん、妖精さん諸共落ちて行っちゃった」
まどか「仁美ちゃんだけ生身な訳だけど、まぁ、妖精さんが居るから平気だよね。うん」
まどか「兎に角、これで邪魔者は居ない!」
まどか「このままほむらちゃんの家まで超音速飛行で一直線だよ!」ギューンッ
まどか(さやかちゃん達の邪魔のせいで、ちょっとほむらちゃんの家から遠ざかったけど)
まどか(――――でももう見えた!)
まどか(なんかほむらちゃんの家が跡形もなく消えているけど、メイドさんがいっぱい居るし)
まどか(テントが張られているから、多分あそこにほむらちゃんが居るよね!)
まどか(ああ、もう邪魔者は居ないからゆっくり行っても良いんだよね)
まどか(誰にも邪魔されず、恋人になれるんだよね!)
まどか(……でも)
まどか(でも、もう我慢出来ない!)
まどか(私はほむらちゃんが好き! 大好き、大好き大好き大好き大好き!)
まどか(どうしようもないぐらい好きなの! 女の子同士とか、どうでもいいぐらい好き!)
まどか(早く恋人になりたい! たくさん触れ合いたい!)
まどか(手を繋ぎたい、キスもしたい、一緒にお風呂に入りたい一緒の布団で寝たいエッチもしたい!)
まどか(そしてほむらちゃんに――――好きって言ってほしい!)
まどか(だから!)
まどか(このままほむらちゃんの家に突っ込み、有無を言わさず媚薬を飲ませる!)
まどか「ほむらちゃん! 待ってて!」
まどか「恋人になったら絶対大事にするから!」
まどか「だから今日だけは――――」
まどか「今日だけはちょっと乱暴させてもらうよ!」
まどか(よし! ほむらちゃんの家の敷地に入っ)
――――ブンッ!!
まどか(え)
まどか「な、ぶっ!?」
まどか(ほむらちゃんの家の敷地に入った途端、何かが出てきて、私を叩いて……)
まどか(あ、これホームランの時のボールみたいな軌道で吹っ飛ばされる)
――――ばっちぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃんっ!!
まどか「なんでこうなるのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
ほむら「……?」
お姉さん「どうかしましたか、お嬢様」
ほむら「あの……げほっ、げほ……」
ほむら「なんが、物おどが聞えだような気がしで……」
お姉さん「アレですかね。万一我が家に侵入しようとする狼藉者を追い払うために設置した」
お姉さん「『万能蝿叩き』が起動したのではないかと」
ほむら「え゛ー……姉ざん、あれつがっだの?」
ほむら「あれ、なんでもただぐには大きくすればいいっでこどになっで」
ほむら「三めーどるぐらいある、鈍器みだいになっだやつだよ」
ほむら「しがもせんざーが大雑把だがら、鳥どかにも反応じで、ふっとばしちゃうじゃん」
お姉さん「しかし余計な効果がない分、使い易いではないですか」
お姉さん「マスターにしか分からない超理論で、どれだけ派手に吹っ飛ばされても死にはしませんし」
ほむら「そればぞうだけどー……」
お姉さん「それより、まだ全然風邪は治ってないのですからちゃんと寝ていてください」
お姉さん「私はこの後買い物に行きますが、なにか食べたい物のリクエストはありますか」
お姉さん「勿論、消化の良い物に限りますけど」
ほむら「……ぷりん」
お姉さん「はい?」
ほむら「ひざじぶりに、ぷりん、つくっで」
お姉さん「……やれやれ。見滝原に来てからずっと注文がないと思ったら、こんな時に頼んでくるとは」
お姉さん「言ってくれれば何時でも作るというのに」
お姉さん「わざわざ二人きりの時に頼まなくても良いじゃないですか」
ほむら「……だっで、ぷりんつぐっでって言うの、子供っぽぐで、はずかじいもん」
お姉さん「全く……」
お姉さん「我が妹は本当に見栄っ張りです事」
……………
………
…
まどか「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
まどか「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおどべっち!?」
まどか「う、うぐぐ……吹き飛ばされて地面に墜落しちゃったよ……」
まどか「此処は、ああ、学校だ……修復中でブルーシートで覆われてるけど」
まどか「ああもう! 何が起きたのかは分からないけど絶対妖精さんアイテムだよ!」
まどか「多分侵入者迎撃用のシステムとか、そんな感じのやつ!」
まどか「あったまきた! だったらこっちも全力で破って……」
まどか「破って……突入して……」
まどか「……今更だけど人の家に突撃って失礼だよね。外国なら銃でぱーんっと撃たれても文句言えないよね」
まどか「それをどうにかこうにか突破した人を、家主は暖かく迎え入れてはくれないよね」
まどか「……ちょっと頭に血が上り過ぎたかも」
まどか「そうだよ、邪魔者はぜーんぶ倒しちゃったんだからあとは普通にお家にお邪魔すれば……」
「お邪魔すれば、なんだって?」
まどか「!?」
まどか「なっ……さやかちゃん……!?」
さやか「ようやく見つけたよ……いや、幸運だった」
さやか「痒みから解放された時、丁度空を吹っ飛んでいくアンタの姿が見えてね……」
さやか「プリティでキュアキュアモードになって、後を追い駆けたんだよ」
さやか「今度は空を飛んで逃げられると思わない事だね」
まどか「ぐっ……で、でも、さやかちゃん一人ぐらい――――」
中沢「おっと、俺の事も忘れてもらっちゃ困るな」
まどか「なっ……中沢くん!?」
まどか「そんな、だって仁美ちゃんの攻撃を受けて……」
中沢「ふん。ペガサスはへとへとになって戦線離脱したが」
中沢「俺はこの甲冑のお陰で無傷だぜ!」
まどか「一体どんな材質で出来てるのその鎧!?」
中沢「鎧にタブがあってな、主成分はポリエチレンテレフラートって書いてあったぞ」
中沢「多分、化学工場とか原子力発電所で着る防護服に使われている素材だな」
まどか「それペットボトルの素材だよ!? 確かに軽くて丈夫で長持ちするけどさぁ!?」
中沢「まぁ、材料なんざどーでもいい」
中沢「コイツと協力するのは癪だが、二対一になってるぜ?」
まどか「う……だ、だけど二人だけならまだ……」
仁美「わたくしも居ますわよ!」
まどか「ちょ!? 仁美ちゃん!? 高度1000メートルから生身で落ちたのになんで無傷!?」
仁美「局所的に発生した竜巻によって落下の勢いが相殺され」
仁美「その後燃えるゴミに出されていた大量のソファとか布団の上に偶然落下したので助かりましたの」
まどか「偶然と言うより最早コントだよそれ!?」
仁美「それより、まどかさん。どうしますか?」
仁美「円盤は壊れてしまい、宇宙人さんは何処かに逃げてしまいましたが……」
仁美「わたくしには我が志筑家に伝わる戦闘技法があります」
仁美「御二方ほどではなくとも、戦う術を持ち合わせているわたくしを数えれば三対一」
仁美「流石に、分が悪いのでは?」
まどか「ぐっ、ぐぎぎ……!」
まどか「さっきからごちゃごちゃとぉ……!」
まどか「そこまで言うなら本気で全員吹っ飛ばしちゃうよ! 跡形もなく消しちゃうよ!」
まどか「今の私にはそれが出来るんだから!」
まどか「なんなら今ここでその力を見せつけてあげようか!?」
まどか「ほら、逃げ帰るなら今のうち――――」
「隙ありっ!」
まどか「へ――――ぶげっ!?(せ、背中から衝撃が……)」
まどか(これは、キック!?)
まどか「どんがらがっしゃあああああああああああんっ!?」
さやか「ああ!? まどかが吹っ飛ばされた!?」
仁美「なっ……そんな、どうして……」
恭介「ふぅ……上手く決まったな」
仁美「どうして上条さんが!?」
さやか「嘘!? 恭介!? なんで……」
恭介「改造人間たる僕の聴力は常人よりも遥かに優れている」
恭介「お陰でさやかと鹿目さん、あと志筑さんと中沢の会話を聞き取れてね」
恭介「流石に空中戦には参加出来なかったけど」
恭介「こうして地上に降りてきたようだから、早速参戦してみたって訳さ」
中沢「どんだけ地獄耳なんだよ……」
恭介「そして――――」パシッ
さやか「ん? 恭介が今持ってるのって……」
さやか「ま、まどかが持ってた媚薬!?」
恭介「媚薬は、僕が手に入れた」
さやか「そ、そんな……!」
さやか「恭介、そ、その、それを渡してはくれない、かな……?」
恭介「おいおい。なんで僕がわざわざ鹿目さんに跳び蹴りを食らわせたのか分からないのかい?」
恭介「僕がこの薬を手にし、使うためだよ」
さや 仁「!?」
さやか(きょ、恭介が媚薬を使う相手!?)
仁美(一体誰が……ま、まさか、まさか……)
さや 仁(私!?)
中沢「おいおい上条……一体誰にその薬を使うつもりなんだ」
恭介「ふ……そんなの決まってるだろ」
さやか「恭介……!」
仁美「上条くん……!」
恭介「杏子ちゃんだよ!」
さやか「……………」
仁美「……………」
まどか(……蹴飛ばされてからようやく復帰したら)
まどか(さやかちゃんと仁美ちゃんが、道端に落ちている犬の糞を見るかのような眼差しで上条くんを見つめている……)
中沢「お前も天使ちゃん狙いだったのかよ!?」
恭介「お前も? ふん。中沢、お前と一緒にするんじゃない」
恭介「女なら誰でも良いお前と違い」
恭介「僕は杏子ちゃん一筋だ!」
さやか「」ピキッ
仁美「」ビキッ
まどか(ああ、二人が怒ってるのはそういう……)
中沢「だからテメェは器が小さいんだよ!」
中沢「男ならハーレムを夢見ろやぁ!」
恭介「馬鹿野郎! 愛とは一本道しかあり得ない!」
恭介「貴様のような強欲塗れの男に、天使な杏子ちゃんは渡せない!」
中沢「ふん! お前に俺の夢が分かるとは思ってねぇ!」
中沢「我が覇道を阻む以上――――」
中沢「貴様はここで死ねぃ!」
恭介「たかが甲冑に身を包んだぐらいで僕に勝てると思ったか!」
恭介「自分の欲望で女の子の心を弄ぶ」
恭介「そのふざけた幻想をぶち殺す!」
恭 中「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
さやか「あーまじかったるいわーやってられないわー」
仁美「誰ですかねーあんな愚物が好きだなんて言ったひとー」
まどか(ああ……二人のテンションがリーマンショック直後の株価みたいな勢いで下がってる……)
まどか(ま、まぁ、障害が二つ、上条くんとの差し引きでも一つ減ったのは喜ぼう。うん)
まどか(だけど、どうしよう)
まどか(上条くん単体なら、十分に倒せる)
まどか(中沢くんだけでも同じ)
まどか(でも二人が本気での戦いを繰り広げている中に割って入り)
まどか(媚薬を”無傷”で奪い返す……)
まどか(これは中々難しそう)
まどか(ここは一旦二人の戦いが終わるまで待つべき?)
まどか(いや、だけどその間にさやかちゃん達が正気に戻らないとも……)
まどか(あれ? これは今が正気なのかな? ん? んん?)
まどか(……ん?)
杏子「イヤイヤ、ダカラムリダッテ」
シャル「ツーテモホカニテハナイデショー」
まどか(あれは杏子ちゃんに、シャルロッテさん?)
まどか(なんか100メートルぐらい離れた場所にある木に身を隠している、のかな?)
まどか(……怪しい。色々と)
まどか(えっと、もしもし二人とも? どうしたの?)テレパシー
杏子(うわっ?! なんだ!?)テレパシー
シャル(誰かが直接脳内に!?)テレパシー
まどか(いや、これテレパシーですから。魔法少女だった時、普通に使ってたよね?)テレパシー
シャル(あ、そう言えばそうだった)テレパシー
杏子(最近使う機会がなくてすっかり忘れてたわ)テレパシー
まどか(もう……って、こんな話をしている場合じゃなくて)テレパシー
まどか(二人ともどうしてこんなとこに?)テレパシー
まどか(まさか、媚薬を奪いに来たの?)テレパシー
杏子(まぁ、半分正解、かな)テレパシー
杏子(少し前にその媚薬の説明書を読んだんだけどさ)テレパシー
杏子(どうやら、あの媚薬は飲ませなくても人を虜にする効果があるらしく)テレパシー
杏子(その奪い合いによって騒動が起こるって代物らしいんだ)テレパシー
まどか(ああ……だからあんなにもたくさん邪魔が入ったんだ……)テレパシー
杏子(いや、アンタが真っ先に虜になってただろ)テレパシー
まどか(てへ♪)テレパシー
杏子(たく……)テレパシー
杏子(話を戻すとだな)テレパシー
杏子(そんな物は危険だからどうにかしようとシャルが張り切ったんだけどさ)テレパシー
シャル(……うっかり転んで、妖精さんアイテムをばら撒いちゃったのよ)テレパシー
まどか(……うっかり、ね)テレパシー
シャル(妖精さんアイテムだから大惨事にはならないと思うけど、でも大事件は起こしそうでしょ)テレパシー
シャル(というかもう起きちゃってる訳だけど……)テレパシー
シャル(だから散らばった妖精さんアイテムの回収がしたいのよ)テレパシー
シャル(勿論媚薬も、ね)テレパシー
まどか(それは――――)テレパシー
シャル(……一つ、聞きたいんだけどさ……)テレパシー
シャル(妖精さんアイテムを熟知しているほむらに、どうやって媚薬を飲ませるつもりだったの?)テレパシー
まどか(それは、食事に混ぜたり、無理やりだったり……)テレパシー
シャル(私にはなんらかのトラブルが起きて、結局自分で飲む羽目になる予感がするんだけど)テレパシー
まどか(……あ)テレパシー
シャル(回収、しても良いわね?)テレパシー
まどか(……はい)テレパシー
シャル(はい、難関攻略っと)テレパシー
シャル(で、だ。この状況と媚薬の効果から考えると)テレパシー
シャル(志筑さんと、えっと……クラスの男子が散らばった妖精さんアイテムを持ってるのかしら)テレパシー
まどか(うん。ただ、一個は此処に居ないけど早乙女先生が持っているのと)
まどか(仁美ちゃんが持っていたアイテムはなんか爆発しちゃったから)テレパシー
まどか(残っているのは中沢くんの甲冑と、早乙女先生が付けたカチューシャだけだね)テレパシー
シャル(え?)テレパシー
まどか(? どうかした?)テレパシー
シャル(あ、いや、うん……)テレパシー
シャル(一個足りないわね……確か四つあった筈なんだけど……)テレパシー
まどか(え? 四つ?)テレパシー
シャル(まぁ、ある分だけ回収しちゃいましょ)テレパシー
シャル(……回収……)テレパシー
中沢「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
恭介「どりゃあああああああああああああああああ!!」
シャル(……………)
まどか(うわぁ、私の目でも追えないような速さで肉弾戦を繰り広げてるよ……)
シャル(……佐倉さん、頑張って)テレパシー
杏子(いやいやいやいやいや、可笑しくね? 可笑しいだろ?)テレパシー
杏子(なんで今あたしに丸投げした? 元々お前がやっちゃった事だろ。自分でなんとかしろよ)テレパシー
シャル(無理)テレパシー
杏子(ああ、まぁ、うん……お前にあの二人の間に入るのは無理だな。うん)テレパシー
杏子(でもだからってあたしに即投げってどうなんだよ)テレパシー
シャル(佐倉さんなら出来るよ)テレパシー
杏子(テメェ今馬鹿にしたな? 馬鹿にしたよな?)テレパシー
シャル(してないわよ。ただ鼓舞しただけよ)テレパシー
杏子(仮にそうだとしても気に入らねぇ)テレパシー
シャル(じゃあどうしろって言うのよ? 何? 私に死ねと?)テレパシー
杏子(だから諦めるにしてもあたしに丸投げするなっつってんだよ!)テレパシー
シャル(諦める訳にはいかないでしょ! 妖精さんアイテムなのよ!?)テレパシー
シャル(アンタ事態の深刻さ分かってないでしょ!?)テレパシー
杏子(んだとゴルァ!?)テレパシー
シャル(やんのかああんっ!?)テレパシー
まどか(ちょ、二人とも喧嘩は止めて!?)テレパシー
まどか(もしかしなくてもこれも媚薬効果!? 節操なさすぎだよ!?)テレパシー
杏子「だからテメェは何時も何時も――――」
まどか(ああもう、ついには声まで出しちゃって……)
恭介「その声は、杏子ちゃん!?」
シャ 杏 ま「!?」
まどか(ちょ……い、今の声に上条くんが気付いた!? 100メートルも離れてて、しかも戦いの最中に!?)
まどか(って、上条くんは改造されて地獄耳になったんだ!)
まどか(も、もし上条くんが『私と同じ結論』に至ったら――――)
恭介「ふ、ふふ、ふははははは!」
恭介「この勝負――――僕の勝ちだ!」ドンッ!
まどか(ああ! 上条くんが走り出した!?)
中沢「ま、待――――」
まどか(目の前で戦っていた中沢くんは気付いたけど……)
まどか(駄目! 鎧が重過ぎるのか、全然遅い!)
さやか「――――」
仁美「――――」
まどか(さやかちゃんと仁美ちゃんは気付いているのかすら怪しい! 反応した様子もない!)
まどか(こうなると止められるのは私だけなんだけど……)
まどか「こ、この――――」
恭介「遅い!」
まどか(ああ! 振り上げた腕の下を潜られた!?)
まどか(どれだけ強くなっても私は結局遠距離攻撃型だから、近接戦は分が悪いよぉーっ!)
まどか(で、でもまだ希望はある!)
まどか(天使となった杏子ちゃんの超絶パワーなら上条くんを追い払う事ぐらい――――)
杏子「あだっ」
シャル「げぇっ!? 上条に突撃しようとした佐倉さんが石に躓いてこけたーっ!?」
まどか「なんでここでこけるのォ――――?!」
恭介「うけけけけけ! 天は我に味方せりぃぃぃぃぃ!」
まどか(ああ、もう駄目――――)
――――しゅるるるるるるるっ
恭介「え、あぶしっ!?」
まどか(え!? 上条くんが、転んだ!?)
――――しゅるるるるるる……
中沢「うわっ!? なんだこれ!?」
シャル「きゃあ!?」
杏子「な、なんだぁ!?」
まどか(!? 地面からたくさんの蔓が生えてきた!?)
まどか(その蔓がみんなの手足に絡み付いて拘束してる! 一体何処から……)
まどか「って、私も考えていたら足に蔓が絡まってきゃあああああああああああああああ!?」
まどか「なんで片足だけに絡まって持ち上げるの!?」
まどか「見えちゃう! 逆立ちになったらスカートが捲れてパンツ見えちゃう!」
まどか「ほ、ほむらちゃん以外に見せるのは嫌ああああああああああああああっ!」
さやか「うわぁ!? つ、蔓が……うぐっ!?」
仁美「きゃあ!?」
まどか「ああ! みんな拘束されちゃった!?」
まどか「一体なんなのこの蔓……」
まどか(あれ……この蔓……よく見たら棘が生えてるから……蔓というより、茨?)
まどか(それにこの色合いとか、茎の見た目とかって……)
まどか(薔薇のそれによく似ているような――――)
「ふぅ……なんとか間に合いましたね」
全員「!?」
まどか「だ、誰!?」
まどか(声がした方を見たら、誰か居る……!)
まどか(誰か……)
まどか(……えっと……)
まどか(え? 本当に誰?)
まどか(ヒスイみたいに綺麗な髪でポニーテールを作っていて、お淑やかそうな顔立ちで)
まどか(マミさんほどじゃないけどスタイルが良くて、私達より年上っぽい……高校生ぐらい?)
まどか(分からない事だらけだけど、間違いないのは――――)
全員(全然知らない人だっ!?)
??「ふふ。上手い事全員拘束できましたね」
まどか「あ、あなたは、一体何が目的なの!?」
??「この展開からして、簡単に予想が付くのではありませんか?」
??「勿論媚薬を奪うためです」
まどか(そんな……まさか、知らない人まで関わってくるなんて……!)
恭介「ぐっ……お前も媚薬を奪いに来たのか……!」
恭介「でも甘く見たな! 君も不思議な力が使えるみたいだけど」
恭介「改造人間となった僕のパワーなら、いくら太くとも植物ぐらい!」ギチチ
??「あら……私が魔法で出した茨が引き千切られてしまいそう。話には聞いていましたけど、本当に凄いパワーです」
??「だけど、これがありますからね」
まどか(ポケットから何か、小瓶みたいのを取り出した?)
まどか(それでその液体を地面に垂らして……)
――――メキメキメキメキメキッ!!
恭介「ぐ、うぐぁ……!?」
恭介「ば、馬鹿な……さっきよりも強度が増した……!?」
??「ふふ♪ 流石妖精さん製の栄養剤。少し与えただけでこんなにも力強くなるんですね」
??「元々私の魔法で作り出した薔薇とはいえ、吃驚するほど高性能です」
植物【カクメイノトキハキタリーッ!】
??「……あまりたくさん与えるのは止めときますか」
まどか(妖精さんアイテムを、妖精さんアイテムだと分かって使ってる!?)
まどか(しかも魔法でこの茨……薔薇を作り出したって事は、魔法少女!?)
まどか(そんな事が出来るのはほむらちゃんを知っている私達ぐらいの筈!)
まどか「あ、あなたは一体誰なの!?」
??「え?」
??「あの……まだ気付きません?」
まどか「気付くも何も知らない人だよ! ……知らない人、ですよね?」
??「それは酷くありません? 薔薇で初対面で妖精さんですよ? 割とバレバレ……」
??「え、鹿目さん以外の人は分かりますよね? 分かってますよね?」
さやか「い、いやー……」
シャル「鹿目さんの名前は知ってるみたいだから……鹿目さんの知り合い?」
杏子「あたしもちょっと覚えが……」
??「ちょ、酷い!? 皆さん総じて酷いです!」
??「私ですよ、私!」
ゲルト「ゲルトルートですよ!!」
ま シ さ 杏「……………」
ま シ さ 杏「な、なんだってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
ゲルト「えええええっ!? 本当に気付いてなかったんですか!?」
シャル「い、いや、だって人間の姿だし……」
ゲルト「昨日の夜、ようやく決意が決まったんで人間に戻ろうと思っていたんですよ!」
ゲルト「その事を今朝話そうとしたら、皆さん時間が迫っていて話が出来なくて」
ゲルト「お手伝いさんに話したら、ほんの数十秒で妖精さんがこのボディをくれたんです!」
シャル「ああ! あの時話そうとしていたのってその事だったの!?」
杏子「で、でもよ、その身体は誰かのクローンって訳じゃないんだよな? モデルは誰なんだ?」
ゲルト「なんか魂に刻まれている記憶とやらを引き出したので、これが私本来の姿らしいのです」
ゲルト「覚えてませんけど、妙にしっくりくるので気に入っています」
さやか「そ、それで妖精さんアイテムは……」
ゲルト「人間に戻った姿を見せて皆さんを驚かせてやろうと思い、公民館に向かっていた時に偶々拾いまして」
ゲルト「で、その後鹿目さんの魔力を感じたのでなんだろうと思い寄り道し」
ゲルト「そこで美樹さん達と媚薬の話をしている場面に遭遇したのです!」
まどか(ああ、つまりさやかちゃんが思いっきり媚薬の話をした時には、もう全員集合状態だったのね)
まどか「さやかちゃんの馬鹿ああああああああああああっ!」
さやか「!? 何故いきなり馬鹿にした!?」
まどか「諸々全ての原因がさやかちゃんにあるからだよ!」
シャル「そんな事より! アンタ、なんで媚薬を狙ってるの!?」
シャル「まさか、誰か飲ませたい人が……」
ゲルト「当然。伊達や酔狂で媚薬を手に入れようなんて思っていません」
ゲルト「全ては私の祈りを叶えるため」
ゲルト「魔法少女になってでも、叶えたかった夢を実現するためです」
まどか「え……」
まどか(ゲルトルートさんの、祈り……? それが、媚薬で叶えられるの?)
まどか(そう言えば、一昨日、私が恋の相談をした時、恋に対する想いを言ってた)
まどか(そして、その所為で……とも言い淀んでいた)
まどか(もしかしてゲルトルートさんの祈りは恋の願い?)
まどか(それで魔女になったって事は――――)
杏子「おい、祈りってなんの事だ!?」
ゲルト「見ていれば分かります」シュルル
恭介「ぐあっ!? 目元に蔦が……前が見えない!」
ゲルト「ふふ……万一誰かを見てしまっては元も子もないですからね……」
中沢「ちくしょう! こうなったら……」
ゲルト「あなたもです」
中沢「ぐうっ!?」
仁美「ああ!? 中沢さんも顔に蔦が絡まって……!」
ゲルト「他の皆さんは邪魔さえしなければ、それ以上の拘束はしませんよ」
ゲルト「痛い目を見たくなければ、大人しくしていてくださいね?」
シャル「くっ……!」
ゲルト「さて……ふふ、うふふふ♪」
ゲルト「はい、あーん……♪」
恭介「がぽっ!?」
さやか「ああ!? 恭介の口に媚薬が……!」
シャル「上条が狙いだったの!?」
まどか「そんな……!」
ゲルト「……おっと、全部飲ませちゃダメダメ」
ゲルト「うん。ちゃんと半分残せましたね」
まどか(ああ……こんな……こんな事って……)
まどか(なんで、なんでなのゲルトルートさん……!)
まどか(あれだけ恋を大切にしていたのに)
まどか(なんでさやかちゃんの好きな人を奪うような真似を――――)
ゲルト「あとはこれを……」
ゲルト「彼に飲ませます」
中沢「ファッ!?」ガポッ
女子s「え?」
ゲルト「それから二人を引き合わせます」
恭介「え?」
中沢「え?」
ゲルト「そして蔦を外して――――御開帳~♪」
恭 中「あ」
恭 中「……………」
恭介「中沢!」ガシッ
中沢「上条!」ガシッ
女子s「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?」
ゲルト「いよっしゃあっ!!」ガッツポ
シャル「何がいよっしゃあ! よ!? 何が!?」
さやか「アンタ一体何が目的であんなしたの!?」
仁美「よよよよよりにもよって上条くんと中沢くんに媚薬を飲ませ、二人を恋仲にするなんて……」
仁美「それは禁断の恋ですわよーっ!?」
杏子「テメェ、さやか様の恋を邪魔した挙句あんな事して、どう落とし前つける気なんだ!」
まどか「ちゃんと説明して! こんなの、納得出来ない!」
ゲルト「……ふふふふふ」
ゲルト「絶望してからは薔薇を愛でる魔女となり」
ゲルト「魔法少女となった時も、植物を操る魔法を使っていた私」
ゲルト「それは何故か?」
ゲルト「私が薔薇族愛好家の女だからです!」
【薔薇族・・・ゲイ雑誌】
さやか「……………」
シャル「……………」
杏子「……………」
さ シャ 杏「お前の魔法が薔薇ってそういう理由なのかよおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
ゲルト「そう、私は薔薇の魔法少女――――薔薇の下で愛する男達と出会いたいと願った」
ゲルト「腐りきった女なのですよ!」キラキラ
シャル「コイツめっちや清々しい笑顔で言い切ったわ!?」
杏子「道理で魔女の時の姿がドロドロと腐ってる風な外見だった訳だなぁ!?」
まどか「薔薇族ってなに?」
仁美「はぁはぁはぁはぁ……うっ」
仁美「ふぅ……乙女の嗜みですわ」キリッ
まどか「え?! そうなの!?」
さやか「ちげぇよ!」
ゲルト「ちなみに学校に持ち込んだBL同人誌を当時の親友に見られ」
ゲルト「軽蔑されたのが原因で魔女化しました!」
杏子「やっぱりただの腐敗物じゃねぇかコイツ!」
シャル「謝れ! 自分の中の正義に苦しんで魔女化した鹿目さんに謝れ!」
まどか「友達に軽蔑されたなんて、そんなの可哀想過ぎるよ……!」
仁美「いえ、鹿目さん。今の話、実は同情すべき点が一つもありません」
仁美「薔薇族とは孤高の存在ですのよ」
まどか「そ、そうなんだ……カッコいいね」
さやか「まどか騙されるな!? そして仁美、お前もなのか!?」
仁美「乙女の嗜みですもの」
さやか「嗜まない女子も普通に居るわ! 主に此処に!」
ゲルト「魔女になってからは延々自分の育てた薔薇を眺め」
ゲルト「アントニー×アーデルベルトの妄想を描いたものです」
シャル「マニアック過ぎない!?」
杏子「ヤベェこいつめっちゃレベル高いぞ!?」
まどか「どういう意味?」
仁美「カップリングですわね。一般的に先に読み上げられた人物が攻めという傾向がありまして」
さやか「止めて!? まどかを穢さないで!」
ゲルト「その妄想を邪魔する魔法少女とか一般人を蹴散らす日々……」
ゲルト「どうせ誰も私の趣味を理解してくれないと思い、使い魔と薔薇以外には心を開きませんでした……!」
ゲルト「だけど私は決めました!」
ゲルト「誰にも分かってもらえないかも知れない。でも――――」
ゲルト「自分に正直に生きよう! 暁美さんみたく、楽しく、胸を張って生きよう!」
ゲルト「だって好きなものは好きだから!」
ゲルト「という訳でまずは私の大好きなBLを見たいと思い、こんな行動に出てみましたっ!」
シャル 杏「妄想で留めとけよこのアホおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
恭介「中沢ーっ!」
中沢「上条ーっ!」
まどか「……………」ドキドキ
仁美「つまりどちらが受けか攻めかというのも大事なのですが、しかし誘い受けやヘタレ攻めというジャンルもあり」
さやか「そこの腐敗物2! いい加減まどかを巻きこむなっ! そしてまどかは引き込まれるな!」
シャル「ああもう! 妖精さん絡みだから知ってたけど……」
シャル「もう少しマシなオチを付けなさいよぉ――――――――!!」
……………
………
…
―――― 午後十二時頃 ――――
―――― 見滝原市街地 ――――
マミ「そう……私の知らない場所で、そんな事が起きていたのね」
マミ「……私の知らない場所で」ズーン
シャル「いや、落ち込まないでよ。落ち込むような話じゃないし」
マミ「ふ、ふんっ。落ち込んでなんていないわよ!」
マミ「妖精さんが絡んだトラブルなんて、精神的に疲れるだけって知ってるんだから!」
マミ「別にみんなと一緒に居たいとか、寂しいとか」
マミ「これっぽっちも思ってないんだからね!」
シャル(この人、身体は大人っぽいけど中身は子供っぽいのよね)
シャル(……可愛い)
マミ「……何その慈愛に満ちた眼差し?」
シャル「強がる子供を愛でるような眼差しよ」
マミ「だから寂しがってないって言ってるでしょ!?」
杏子「お前ら楽しそうだなぁ」
マミ「楽しくないわよ!?」
杏子「いや、結構楽しんでるだろ」
杏子「それに比べて……」
さやか「うう……恭介ぇ……恭介ぇ……」
シャル「……呻き声が怖いわ」
まどか「まぁ、さやかちゃんは結局告白すら出来なかった訳だしね」
まどか「ほむらちゃんに告白して、すっきりふられた私は今回の事そこまで引き摺ってないけど」
まどか「何も言えずにふられたようなものになったさやかちゃんは……」
杏子「うう……さやか様……おいたわしい……」
ゲルト「まぁまぁ、人は恋に破れた分だけ強くなれるものです。前向きに考えましょう」ツヤツヤ
シャル「お前がっ!」
杏子「それをっ!」
シャル 杏「言うなあああああああああっ!!」 < ダブルパンチ
ゲルト「ばいばいきーんっ!?」ゴロゴロゴロ
まどか「……流れ星になるほど遠くには吹っ飛ばなかったね」
シャル「たく……この事態で得したのってゲルトちゃんだけじゃん……」
まどか「いや、仁美ちゃんも良いもの見せてもらったって言ってたよ」
シャル「寝取られて喜ぶんかいアイツ……」
マミ「……上条くん達、元に戻ると良いのだけど」
まどか「とりあえず明日、ほむらちゃんに聞いてみます……あまり期待出来ませんけど」
マミ「期待出来ないわねぇ……」
さやか「うう……恭介ぇ……」
さやか「こんな事になるなら妖精さんアイテムに頼らず、ちゃんと告白するんだったよ……」
ゲルト「まぁまぁ。きっと他に良い人に出会えますって」ツヤツヤ
さやか「だからお前が言うなーっ!」 < アームロック
ゲルト「がああああああああああああああああ」
まどか「懲りないなぁ」
まどか「……ふふっ」
さやか「ちょ、なんでまどか今笑ったの!?」グッ グッ
ゲルト「あの、美樹さんアームロックそろそろ外しぎぃえええええええっ!?」
ゲルト「無理無理無理無理それ以上いけないぃぃぃぃぃ!?」
まどか「あ、うん。別に馬鹿にした訳じゃないよ?」
まどか「ただ、楽しいなって」
さやか「はぁ? 楽しい?」
まどか「楽しいよ。みんなで、こうして笑い合えるんだから」
まどか「こういう時間がずっと続けば良いなぁ……」
さやか「まどか……」\モウムリホントムリギェピィィィィィィィィ!/
「やれやれ。人間はどうして事ある毎に希望を抱こうとするんだろうね?」
全員「!?」
まどか「今の声って――――」
マミ「キュゥべえ!?」
QB(疾患持ち)「やぁ、相変わらず能天気みたいだね。僕達と敵対状態にあるのに、隙だらけじゃないか」
疾患QB「こんな間抜けな原生生物に僕達の母船が落とされたなんて」
疾患QB「ああ、思い出すだけで腸が煮えくり返るよ」
まどか(このキュゥべえ、もしかして昨日ほむらちゃんが落とした宇宙船で出会った……?)
マミ「な、何このキュゥべえ……?」
ゲルト「なんか、私が知っているのと違う……?」
シャル「会うや否や、やたらと棘のある言葉を使ってくるじゃない」
シャル「アンタ達、感情を持ってないんじゃなかったの?」
疾患QB「一応僕はギリギリ”持ってない”事になっている」
疾患QB「合理性が感情によって損なわれない、という定義の下での話だけど。元々全く持ってない訳じゃないし」
疾患QB「ただまぁ、この渦巻く衝動を君達の言語に当てはめるなら」
疾患QB「嫌悪だね」
さやか「ふん。要するにあたしらの事が嫌いって事でしょ。あたしもアンタの事なんか嫌いよ!」
さやか「踏み潰されないうちに姿を消した方が身のためじゃない!?」
杏子「ああ、全くだ」
杏子「テメェが何を企んでるのかは知らねぇけど」
杏子「こちとら妖精さんパワーで魔法少女時代とは比較にならないぐらい強くなってんだ」
杏子「何かしようってんなら、一瞬でゴミにしてやるけど?」
マミ「……キュゥべえ」
マミ「私は……まだあなたの事をそこまで嫌いになれないの」
マミ「同時に、あなたに対する憎しみの気持ちもある」
マミ「だから、佐倉さんの言った事をなぞるようだけど」
マミ「消えてくれないかしら? 私の魔法があなたを撃ち抜く前に」
疾患QB「ふん。そうなりたくはないね」
疾患QB「どっかの誰かが僕達の母船を落としたせいで、スペアのボディが今はないんだ」
疾患QB「魂と本体は本星にあるから別にどうって事はないけど、こちらでの活動が出来なくなるから勘弁してほしいね」
さやか「だったら――――」
疾患QB「ただねぇ、今回はどうしても君達の前に姿を見せなきゃならなかったからね」
シャル「はぁ? どういう……!?」
まどか(な、何……!?)
まどか(景色がどんどん塗り替わっていく!? 赤と黒が全てを覆う、凄く不気味な空間になってる……!)
まどか(これって――――)
シャル「ま、魔女の結界!?」
ゲルト「でも、何処からも魔女の気配は……!」
疾患QB「多層空間フィールド」
疾患QB「魔女の結界と”君達が勝手に名付けた”空間を僕達のテクノロジーで再現したものだ」
疾患QB「本来は暁美ほむらを隔離し、妖精の援護を受けられないようにして始末するために持ってきたものだけど」
疾患QB「今回は逆に、暁美ほむらが君達の救援に来られないようにするために起動させてもらった」
疾患QB「まぁ、魔法少女の素質があるなら何時かは見つけられるだろうけど、時間稼ぎにはなるからね」
さやか「つ、つまり?」
シャル「私らを閉じ込めた、って事でしょうね」
マミ「……どういうつもり? 私達を閉じ込めて、このまま餓死でも狙うつもり?」
疾患QB「はっ。そんな面倒で不確実な手法、取る訳ないだろう?」
疾患QB「さっきも言っただろう。あくまで時間稼ぎ。君達と暁美ほむら……妖精が合流するのを遅らせるのが目的さ」
疾患QB「暁美ほむらが勘付く前に、君達を始末させてもらおう」
杏子「よくそんな大口叩けるもんだね!」
杏子「テメェの力じゃあたしらを倒すなんて真似、出来る訳ねぇだろ」
杏子「それとも実力を隠してたってか?」
疾患QB「まさか。このボディはあくまで君達魔法少女との契約のためのものさ」
杏子「なら――――」
疾患QB「逆に聞くけど、君達は”我々”が”孵卵器<インキュベーター>”しか存在しないと思っていたのかい?」
まどか「ど、どういう意味?」
疾患QB「やれやれ。鈍いなぁ」
疾患QB「何故僕達に感情が生じなかったか、考えた事はあるかい?」
疾患QB「それは僕達が女王個体を頂点とする、一つの集団が個として振る舞う進化を遂げた生命体」
疾患QB「この星の生物で言うところの、蟻や蜂などの社会性昆虫のような存在だったからさ」
疾患QB「末端の個体は余計な事を考えず、コロニー存続のためだけに労働し」
疾患QB「女王個体はコロニー存続のために末端の個体を手足として扱う必要がある」
疾患QB「そのような社会体制を維持するには、感情という個を尊重するシステムは極力排除しないといけないからね」
疾患QB「必然、感情を失う方向に進化した訳だ」
疾患QB「さて、僕達はエネルギー……元を辿れば食料調達が役割の個体なんだけど」
疾患QB「でも、自然界は生易しくないよね?」
疾患QB「例えば外敵が攻めてくる事もあるだろうし、自然災害だってある。巣作りも必要だ」
疾患QB「そんな仕事の全てをまで”食料調達班”に任せられるか? 答えはNOだ」
ゲルト「……まさか!?」
疾患QB「ここまで言えば、まぁ、分かるよね?」
疾患QB「連中は血気盛んで効率よりも効果重視で僕達の努力を無碍にするから、本当は呼びたくなかったんだけど」
疾患QB「今回は種族の危機だ。感情を優先する訳にはいかない」
疾患QB「さぁ――――おいで!」
――――キュゥべえが声を張り上げた瞬間、結界内に”それ”は現れました。
まるで鋼鉄のように頑強そうな筋肉で固められた肢体。
トカゲとも鳥とも付かない顔立ち。
人間のような恐竜のような、或いはその中間のような身体の形。
手から三本だけ伸びる槍のように鋭利な爪。
全体的に赤一色で、部分的に白いラインが入っている……キュゥべえと真逆のカラーリングをした皮膚。
どれもがキュゥべえと違う。どれもキュゥべえと似ていない。
だけどその中で一つだけ共通点があるとすれば、瞳。
肉食動物みたいに鋭くて、だけど感情が一切読み取れない……キュゥべえと同じ瞳。
だから私には、それがキュゥべえの仲間だと分かりました。
だからそれが、今から私達が戦う敵なのだと理解しました。
――――私達は、勝てるのでしょうか。
――――ほむらちゃんも妖精さんもいない、この絶望的な状況で。
「アイツ等が排除対象だ! 連中を速やかに、そして全力で始末しろっ!」
「”戦闘用個体<ウォーリア―>”!」
―――― その頃 ――――
見滝原中学教頭「で? 思いっきり欠勤した理由は?」
猫和子「……媚薬を……追い駆けていました……」
教頭「はぁ?」
猫和子「いえ、その……寄り道、です……」
教頭「そうですか……中学生ですら時間通りに来るというのに、寄り道ですか」
教頭「で、頭にあるその猫耳は?」
猫和子「ひ、拾って……出来心で……」
猫和子「それでその、付けたら外れなくて……」
教頭「はぁ? そんな訳ないだろうが」
教頭「ほれ、簡単に外れるじゃないか」ヒョイ
和子「え? あ、アレ!? えっ!?」
教頭「全く。くだらない嘘を」
教頭「大体あなたは昔から」クドクド
和子「ひぃーん……」
妖精さんメモ
『元気一発特製肥料』※オリジナル※
どんなに弱った植物でもプラント42並に元気になるという素敵な液体肥料です。
しかしながら使われた植物は自我に目覚めるようで、しかも大抵の個体が人間に対し敵意を抱くので大変危険です。
そりゃ、雑草なら存在に気付かれず踏みつけられたり邪魔という理由で毟られたりされ、
花や野菜でも見栄えが悪いからとか実を大きくするためとか言って身体の一部を毟られたら、
感謝よりも恨みの方が大きくなるってものです。
特に花を摘まれるとか、ねぇ?
『お手軽無敵装甲』※オリジナル※
どんな攻撃を受けても装着者にダメージを通さない、妖精さん驚異のテクノロジーの産物です。
理論上MOABや核兵器、果てはプラズマやマイクロ波照射すらも無力化するという超絶防具。
しかも元がペットボトルなのでリサイクルまで出来、更に装備として命中すると痒みが止まらない弓矢と
空を自由に飛べるペガサスが付属品としてついてきます。
と、中々凄いアイテムなのですが、あらゆる攻撃を無効化するため装着者の肌にぴったりと吸い付くよう
サイズが伸縮するため、脱ぐのが凄く大変という欠点があります。
尚、私は着た事がありません。装着系は大抵自力じゃ脱げないんですよねぇ……
『外出用フライングオブジェクト』 ※オリジナル※
見た目もろに円盤な妖精さんアイテム、それが外出用フライングオブジェクト。略してGFOです。
装甲が電波を遮断する素材(アルミホイルだそうです)で出来ており、内部まで電波を通しません。
つまり、この乗り物を使えば妖精さんは電波塗れの都会でもある程度活動出来るのです。やったね。
ちなみに世界中で目撃されているUFOの正体は大体これだと思われます。曰く「みつかったらにんげんさんに
しゃしんとられるー」と妖精さんは喜んでいたので、ステルス機能はないと推測されるからです。
まぁ、そりゃそうですよね。恒星間航法を編み出せるほど高度な文明を持った異星人が、
最寄りの衛星に基地すら作れない地球人の観測網に引っ掛かるような間抜けとは思えませんから。
『猫娘体験カチューシャ』※オリジナル※
一度被れば幼女だろうとリアル中二病少年だろうとサラリーマンだろうと老婆だろうと熟女だろうと
脂ぎった中年男性だろうと会社社長だろうと総理大臣だろうと、猫の尻尾と猫の身体能力を与えてしまう恐怖のアイテムです。
妖精さん的加護で可愛くなるとか、そんな事は一切ありません。素体そのままに猫耳と猫の尻尾が備わります。
しかも本能的な部分にも猫要素が備わり、誰かに頼ろうとした途端猫撫で声と悩殺ポーズを取ってしまうのです。
挙句自分では取り外せず、誰かに外してもらわねば延々と猫(笑)のままになってしまいます。
そのあまりの恐ろしさから、A級危険アイテムに封印してあったのですが……シャルロッテさんが使った
『ご希望取り寄せボックス』の効果には逆らえなかったようです。元々封印出来るような代物ではないですけど。
尚、悩殺ポーズ自体にはなんの効果もありません。仮にその悩殺ポーズを見て嘔吐なり吐血なりをしたなら、
それは装着者が絶望的なほど似合っていなかったという話でしょう。
『ブラックボックス』※原作設定※
小さな容器に妖精さんをたくさん閉じ込めると、その容器は光を反射しない真っ黒な箱となります。
これがブラックボックスで、搭載するとそれだけであらゆる物がパワーアップします。
機械だろうがお鍋だろうが生物だろうが関係ありません。曰く、人間が飲むと『かみ』になれるそうです。
実に便利ですが、そのうち箱から妖精さんが出て行ってしまうので効果は永続しません。
尚、箱の他にも蜂蜜などにも溶かす事が出来、飲料に適した形となります。
しかし私が溶かした妖精さんは事前に神にはなりたくないと伝えてあるので、飲んでも神にはなりません。
ただ妖精さんパワーだけは抑えきれないようで、飲むと妖精さん一人当たり100f相当の出来事に見舞われる事になります。
妖精さん曰く「ここ、げんさくにはないせってー」……だから原作ってなんの事ですか。
えぴそーど にじゅういち 【インキュベーターさんとの、だいけっせん】
―――― 見滝原:???? ――――
「いくの?」
「ああ、行かないといけない」
「僕は彼女達に償わなければならないのだから」
「……死んじゃ、やだよ」
「保証は出来ないけど、努力はしよう」
「だから、少しだけ待っていてくれ」
「うん……分かった」
「いってらっしゃい」
「――――ねこさん」
―――― インキュベーター結界 ――――
疾患QB「いけっ! ”戦闘用個体<ウォーリアー>”!」
戦闘用個体(以下WR)【ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!】ビリビリ
まどか「ひっ……!?」
シャル「ちょ……な、なんなのアレ!?」
杏子「赤い、キュゥべえ……?」
マミ「あれが、戦闘用個体……」
ゲルト「凄まじい力を感じます!」
さやか「と、兎に角変し
――――ゴシャッ!
まどか「――――え……」
まどか(あれ……何時の間に、赤いキュゥべえが私の傍に……)
まどか(いや、違う)
まどか(私の傍に来たんじゃなくて――――さやかちゃんに殴り掛かったんだ)
まどか(私達には見えないほどの速さで)
WR【ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛! ! ! !】
疾患QB「やれやれ、相変わらず手が早い。隙を見つけたと思ったらすぐこれだ」
疾患QB「ま、殺し合いの最中隙を見せる方が悪いんだけどね」
シャル「い、何時の間に……!?」
杏子「コイツ、さやか様を! あたしの槍を食らえ!」ブンッ!
WR【】スッ
杏子「!? 消え……」
シャル「杏子ちゃん後ろ!」
杏子「なっ!? 何時の間に!?」
WR【アアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!】
杏子「不味……避けられ……!」
WR【!】スッ
杏子「また消え、うわぁ!?」ギュンッ
まどか(赤いキュゥべえがいた場所に光の弾が! あれは――――)
まどか「さやかちゃんの攻撃!?」
さやか「ぐ、は……はぁ……はぁ……!」
さやか「危なかった……プリティでキュアキュアになろうとしている最中じゃなかったら」
さやか「頭を殴られた瞬間、死んでいた……!」ツー…
まどか(さやかちゃんの頭から血が!?)
疾患QB「へぇ。まさかウォーリア―の攻撃に耐えるとはね」
疾患QB「ウォーリアーは戦闘用に調整された個体。生物というよりも兵器に近い」
疾患QB「有機物的存在の中では、宇宙最強クラスの戦闘能力を持っている」
疾患QB「そんなウォーリアーに瞬殺されないとは、それだけで驚くべき事だよ」
シャル「良く言うわ……驚くなんて感情、持ち合わせてないくせに」
疾患QB「……ああ、そうだね。持ってないよ、そんな感情」
疾患QB「言葉のあやさ」
シャル「けっ……」
シャル「……それより、どう? アイツの動き、誰か見えた?」
まどか「いえ、全く」
マミ「私も全然見えなかったわ……特に、佐倉さんの背後に回ったものは、反応すら出来なかった」
ゲルト「私も巴さんと同意見です」
杏子「あたしは辛うじて……けど、分かったところでどうにか出来る速さじゃねぇ」
杏子「それにあたしの背後に現れたアレ。アレは全く見えなかった」
さやか「あたしも殴られるってのは分かったけど、身体が追い付かない。アイツ、滅茶苦茶速いし、強いよ」
シャル「見えるなら勝機はあるわ。勝機は、ね」
シャル「問題は……佐倉さんの背後にアイツが突然現れた事」
シャル「”動いた”様子すらなかった。魔法少女歴の浅い鹿目さんや、
一応は一般人であるさやかが気付かないのは仕方ないにしても」
シャル「魔法少女歴の長い、戦闘経験豊富な私達が、誰一人その動きを認識出来なかったのは奇妙」
まどか「ど、どういう事ですか?」
シャル「恐らく、佐倉さんの背後に回った時アイツは”動いていない”」
シャル「テレポートのような能力を持っている、と見るべきね」
マミ「あの強さにテレポート能力……全く、厄介な化け物ね」
まどか「……どうします?」
シャル「……………」
シャル(鹿目さん、テレパシーちゃんとそっちに行ってる?)テレパシー
まどか(あ、はい)テレパシー
シャル(今から作戦を説明する。あいつ等に聞かれないよう、テレパシーで伝えるわ)テレパシー
シャル(あまり悠長にしてられないから、よく聞いてて)テレパシー
まどか(は、はい!)テレパシー
シャル(……兎に角相手が速過ぎる。まともな方法じゃ、誰もアイツに攻撃を当てられない)テレパシー
シャル(だったら面制圧)テレパシー
シャル(どれほど高速で移動しようと関係ない。この結界内全てを焼き払うほどの広範囲攻撃で、奴等を焼き払う)テレパシー
シャル(これ以外に、アイツに打撃を与える方法は恐らくないわ)テレパシー
シャル(そしてそれほどの広範囲攻撃が出来るのは、あなたさんだけ)テレパシー
シャル(頼める?)テレパシー
まどか(……分かりました!)テレパシー
まどか「殺しちゃうのは可哀想だと思うけど……でも、さやかちゃんに酷い事をしたあなた達は許せない!」ヘンシン
まどか「魔力解放! みんなの周りに結界を展開し、被害が出ないようにしてから」
まどか「赤いキュゥべえを中心に――――全力で魔力の塊を落とす!」
まどか「……あれ?」
シャル「どうしたの、鹿目さん!? 早く攻撃を!」
まどか「ま、待って! えいっ! えいっ!」
まどか「……!? ど、どういう事!? なんで……」
まどか「魔法が使えないの!?」
シャル「なっ……!?」
ゲルト「え!?」
マミ「まさか!? ――――!」ヘンシン
マミ「……! わ、私も魔法が使えなくなってる!?」
シャル「ど、どういう……!?」
疾患QB「やれやれ。何を慌てているんだか」
疾患QB「魔法少女は僕達のテクノロジーによって生み出された存在だよ」
疾患QB「そして過去の経験から、人間は僕達の目的を知るや憎悪を燃やす事も知っている」
疾患QB「なら、その対策をしていないと思うかい?」
ゲルト「それ、は……」
疾患QB「随分と嘗められたものだよ」
疾患QB「魔法少女の魔力と逆位相の波長をぶつける事で魔法の発動を妨害する」
疾患QB「”マジックキャンセラー”ぐらい、作ってあるに決まってるじゃないか」
マミ「ま、マジックキャンセラー……!?」
疾患QB「まぁ、エネルギーの消費が多いから、普通は使わないけどね。使うまでもないし」
疾患QB「現在の鹿目まどかの力でさえ、僕達が使用する戦闘艦なら一隻で対処可能なのだから」
疾患QB「ただ今回は妖精の件もあるし、君達を無力化する事にしたんだよ」
シャル「くそっ! 確かに嘗めていたわ! そんなのを作っていたなんて……!」
シャル「私のお菓子の魔法すら使えないなんて、徹底し過ぎよ!」
シャル「こうなると、戦えるのは元天使の佐倉さんと、妖精さんに改造されたさやかだけ……」
杏子「へっ、気にすんな」
杏子「最近、と言ってもここ数日だけど、我ながらダラダラとした日々を過ごしていたからな」
杏子「このぐらい歯応えのある奴と戦いたくなってたところさ」
さやか「こっちもだよ」
さやか「なんだかんだ、この力を手にしてから”本気で殴り合った”事ってないからね……」
さやか「あのぐらい強い奴じゃなきゃ、自分の強さを確かめられないってもんだよ!」
WR【オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!】
杏子「アイツもやる気みたいだな……!」
杏子「行きますよ、さやか様!」
さやか「おうよ!」
さや 杏「おりゃあああああああああああああああああっ!」
WR【オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!】
まどか(さやかちゃんと杏子ちゃんが、赤いキュゥべえと戦い始めた!)
まどか(二対一、数では勝っている。杏子ちゃんは天使だし、さやかちゃんは伝説の戦士的な強さになってる)
まどか(だ、だけど……)
杏子「ぐああぁっ!?」
さやか「がはっ……!」
WR【オオオオオオオオオオオッ!!】
まどか(も、もう押されてる!)
マミ「くっ! せめて魔法が使えれば、あの二人の援護に回れるのに!」
まどか「何かしないと、あの二人でも負けちゃう……」
まどか「――――そ、そうだ! 妖精さんアイテム!」
まどか「妖精さんアイテムを使えば!」
マミ「! その手があったわ! シャルロッテさんが持ってるバックから、妖精さんアイテムは取り出せる!」
マミ「シャルロッテさん!」
シャル「……二人とも、とりあえずこの道具を渡すわ」
まどか「え? あ、えっとこれは……杖?」
マミ「私のは、ラッパ?」
シャル「……ゲルトちゃんにはもうマントと剣を渡してあるわ」
シャル「私はこの三角コーンね」
まどか「三角コーン? ああ、工事現場とかに置かれてる」
まどか「えっと、それでこの道具はどうやって使えば……」
シャル「残念だけど、説明している暇はないの」
シャル「――――後ろ、見て」
まどか「え……っ!?」
WR2【……………】
マミ「に、二体目……!?」
まどか「何時の間に!?」
ゲルト「……確かに、彼等は自分達が蜂のような生き物だったと言っていました」
ゲルト「女王を除けば、一つの役職に一個体しかいないとは考えられません」
シャル「さぁて……あと何体現れるのかしらねぇ……!」
まどか「――――来る!」
WR2【アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!】
杏子「がああああっ!?」
さやか「杏子ちゃん!?」
杏子「だ、大丈夫です……ごふっ……」
杏子「ちょっと、口の中を切っただけですから……」
杏子「それより……」
さやか「うん……」
さや 杏「強い……!」
WR【……フシュルルルル……】
さやか「動きは速い、攻撃は重い。それでいて身体は頑丈」
杏子「まさかあたしの槍が弾かれるとは思いもしませんでしたよ」
さやか「たく……攻守ともに完璧の敵かー」
さやか「レベルMAX、ステータスカンストの主人公を相手にするボスキャラの気分だよ」
杏子「しかもテレポートって言う特殊能力持ち」
さやか「容赦ねー……」
WR【……スゥー……】
さやか(ん? 息を吸って……)
WR【ボオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!】
さやか「あ、青い火を吐いたぁ!?」
杏子「ぐあぁっ!?」
さやか(私達二人の全身を包むほど大きな焔! 凄く、あ、熱い……)
さやか(そして何より、”これじゃあ前が見えない”!)
さやか「杏子ちゃんっ!」
杏子「さやか様――――ぐっ!?」
さやか(良し! 杏子ちゃんに体当たりをして、その場から動かせた!)
さやか(あたしの想像通りなら、これは攻撃じゃなくて)
さやか(目潰し――――)
WR【ガアッ!!】
――――シュンッ!!
さやか「っ!?」
杏子「!?」
さやか(な、何!? 今、赤キュゥべえが腕を振った瞬間、なにかが放たれて……)
――――ズバッ!
さやか(あたしの背中を、切り裂いた……!?)
さやか「ぐ、うう、うううぅ……!」ガクッ
杏子「さ、さやか様!? あたしを庇って……」
さやか「だ、大丈夫……こんなの掠り傷だよ……それより……」
さやか「今の攻撃、なんだか分かる?」
杏子「あ、はい……」
杏子「今のは多分エネルギーの塊を、投げナイフの要領で飛ばしたのではないかと」
杏子「事前に焔を吐いて目潰しをした事から、攻撃の予備動作が大きくて当てにくい攻撃だと思いますが……」
さやか「その分攻撃力は高い、と……プリティでキュアキュアになったあたしの身体に、
掠っただけでこんな大きな傷を付けるぐらいだからね……」
さやか「うっ……」
杏子「さやか様!?」
さやか「ごめん……やっぱ掠り傷じゃないわ……」
さやか「ちょっと、立つのもしんどい……!」
杏子「ま、待ってください! 今、天使の奇跡で回復を……」
さやか「駄目!」
杏子「!?」
さやか「……今は、駄目。アイツがこっちの隙を窺ってる」
WR【……………クルゥゥゥ……】
杏子「で、ですが……!」
さやか「……杏子ちゃん」
さやか「しばらく、アイツの足止めを頼んでいい?」
杏子「え?」
さやか「あたしの全力をこめた一撃を、アイツにお見舞いする」
さやか「だけどそのためには力を集める時間が必要なの」
さやか「そのための時間を稼いでもらえない?」
杏子「……どれぐらいですか?」
さやか「……大体、二分」
杏子「分かりました」
杏子「全力で……アイツを、止めます!」ダッ!
WR【!】
杏子(アイツの身体能力は、ハッキリ言って出鱈目だ。上手く立ち回れば、
フルパワーのまどか相手にも善戦出来そうなぐらい)
杏子(あたし一人じゃ到底勝てないし、さやか様とタッグを組んでもこの様だ)
杏子(だったら一人二人じゃなく――――もっとたくさんで挑むしかねぇ)
杏子(そして、あたしにはそれが出来る!)
杏子「……父さん、母さん、モモ。ごめん」
杏子「今まで封印してきたこの力……さやか様を、みんなを守るために使わせてくれッ!」
杏子「行くぞ!」
「 ロ ッ ソ ・ フ ァ ン タ ズ マ !」
幻影杏子達『……!』
WR【――――グゥ!?】
杏子(あたしの幻覚魔法の奥義……実体のある幻影を作りだし、攻撃する魔法!)
杏子(魔法少女だった頃は、ソウルジェムの穢れを無視しても七体が限界だったが……)
杏子「天使の力は今じゃ欠片ほどしか残ってねぇが、それでも今のあたしの力は魔法少女だった頃の比じゃない!」
杏子「そして天使の力で幻影を作り出せば、それは魔法少女の魔法じゃない! キャンセラーだかは効かないよっ!」
杏子「数を作り出すのに重点を置いたから、幻影の個々の力は魔法少女だった頃のままだが――――」
杏子「総数六十人のあたし相手にお前がどこまでやれるか試してやる!」
杏子「あたしの”幻覚魔法”を食らえ!」
幻影杏子『だありゃあああああああああああああああああああああ!!』
WR【……………スゥー……】
WR【オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ ! !】
――――ズガガガガガガガガガガッ!!
幻影杏子『ぐわああああああああああああああ!?』
杏子「な、何ぃ!? 凄まじい拳の連打で、あたしの幻影たちを一気に殴り飛ばした!?」
杏子「あの拳のスピード、今までよりずっと速い……連打で放たなければ、あたしでも見えないほどに……」
杏子「コイツ、今まで本気じゃなかったのか!?」
杏子「だ、だが、殴られているのは所詮幻影! 実体はあっても物理的なダメージは受け難い!」
杏子「このまま数で押し通す!」
WR【オオオオオオオオオオオオ!!】
幻影杏子『どりゃあああああああああああああああっ!』
WR【オオオオオオオオオオオオ……】
幻影杏子『やあああああああああああああああああっ!』
WR【オ、オオオ……】
幻影杏子『うりゃあああああああああああああああっ!』
杏子(良し! 少しずつだが幻影は距離を詰めている! このまま一気に――――)
WR【ルオオオオオオッ!!】
――――カッ!
杏子(え?)
幻影杏子『ぎゃああああああああっ!!』
杏子「なっ……幻影がまとめて吹き飛ばされた!?」
杏子「エネルギー波を広範囲に放ったのか!? そんな事まで出来んのかよ!」
杏子「けど、また幻影を向かわせれば……」
WR【】フッ
杏子「ぁ――――」
杏子(赤キュゥべえがあたしの目の前に……そうだ、コイツ瞬間移動出来るんだった)
杏子(不味い拳を振り上げた早く避けないといやでもこの速さ)
杏子(あ、駄目だ……避けられねぇ)
WR【ゴアッ!!】
――――グシャアッ!
杏子「……ご、ぽ……」
杏子(あ、アイツの腕が、あたしの胸を貫いた……!)
杏子(魂をソウルジェムにされていた魔法少女でも、これは間違いなく致命傷……回復しきれないダメージ……)
杏子(そして今のあたしは、”しぶとさ”だけは魔法少女に劣っている)
杏子(これはあたし、死んだな――――)
杏子(これが”実体”ならね)
WR【!】
杏子「気付いたかっ! だけどもう遅ぇ!」
杏子「あたしは――――幻影だ!」
WR【ッ!!】
幻影杏子「おっと、逃がさねぇよ!」ガシッ
幻影杏子「あたしが”たった六十体”しか幻影を出せないと思ったか!?」
幻影杏子「お生憎様――――あたしと同等の実力を持った”コイツ”を作るのに力を削ぎ過ぎただけさ!」
幻影杏子「捨て身のつもりならテメェを抑えるぐらい、なんとか出来んだよ!」
WR【ギ……グゥ……!】グッ、グッ…
幻影杏子「……つーても、まぁ、こんなにでかい穴を腹に開けられたら、幻影でも長くはもたねぇ」
幻影杏子「つーかもう大分力が抜けてきているしな」
幻影杏子「だから――――」
幻影杏子「さやか様!」
さやか「とっくに準備万端だよ!」
さやか「妖精さんに改造された事で得た、あたしの超パワーを光の塊にして放つ……」
さやか「さやかちゃん必殺、スペ○ウム玉だあああああああああああああああああああああっ!」
WR【ギ!? ギ、オ、オオ……】
WR【オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!】
――――ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!
さやか「うぅっ!?」ゴゥッ!
さやか「……………ぷはっ」
さやか「……我ながら凄まじい威力。猛烈な爆風と光で、こっちがやられそうだったよ」
杏子「全くですよぉ……」フッ
さやか「あ、杏子ちゃん。今まで何処に居たの?」
杏子「さやか様の傍にずっと居ましたよ。幻覚魔法を使って姿を消していただけで」
さやか「あ、そうなんだ」
杏子「ところで、そのスペ○ウム玉って色々パクリ過ぎてません?」
杏子「そりゃ青白ですし、実際大きい光の玉をぶつけた訳ですけど」
さやか「良いの良いの。こういうのはノリが大事なんだから」
杏子「はぁ……」
さやか「……ただまぁ、なんだ」
さやか「あの技の元ネタ……ああ、玉の方ね? 映画以外だと三回使ってるけど、敵に止め刺したの最後の一回だけらしいんだよね」
杏子「え? ――――ッ!?」
さやか「……いやぁ、本当にどうしようかな……これ」
WR【……】パンパンッ
杏子(な、なんて奴だ……さやか様渾身の一撃を食らってもなお、身体についた埃を落とす余裕を見せつけてやがる!)
さやか「悔しいけど、こりゃあたしらだけじゃ倒せそうにないね」
さやか「ほむらが来てくれるまで時間稼ぎに徹するか……」
杏子「で、ですが時間稼ぎをしたところで……それに、ほむらとは連絡を取ってないじゃないですか!」
さやか「そうだけど……なんだろう。アイツの影響かな」
さやか「きっと大丈夫、どんなに辛くてもなんとかなるって思えるんだ」
さやか「だって、あたしらには”妖精さん”が味方に付いている!」
さやか「だからあたし達が負ける訳ないってね!」
杏子「さやか様……」
杏子「……そう、ですね」
杏子「あの非常識のオンパレードな妖精さんと、非常識人間ほむらの事」
杏子「なんだかよく分からない理由でこの結界を見つけるに決まってる!」
さやか「そういう事!」
さやか「さぁ、第三ラウンド……いくよ!」
杏子「はいっ!」
疾患QB(ふむ。佐倉杏子と美樹さやかとの戦闘は順調に展開しているようだ)
疾患QB(計算上、ウォーリアーがあの二人に負ける可能性はない)
疾患QB(人間には”気合い”というよく分からない力があるけど)
疾患QB(あの調子なら、今以上の力を発揮したところで展開は変わらないだろう)
疾患QB(あの二人に関しては問題ない。全て計算通りだ)
疾患QB(……問題は……)
まどか「こ、この杖、適当に振ったら……」
まどか「なんか空からタライが振って来るんだけどーっ!?」
――――ガシャーンッ!
まどか「あいたーっ!?」
WR2【!?】ガンッ
まどか「だ、ダメージ固定なのか赤いキュゥべえにもダメージがあるのは良いんだけど」
まどか「私にも当たるんだけど!? むしろ私によく当たるんだけど!?」
――――ガシャーンッ!
まどか「いたぁ!?」
マミ「か、鹿目さん!? 大丈夫!?」
マミ「ああもう! こうなったら覚悟を決めて……」
マミ「私もこのラッパを吹くわっ!」
――――ぱーぷー
マミ「って、これじゃ豆腐屋のあれじゃない!?」
マミ「私そんな風に吹いてない」ポンポン
マミ「え? 誰か肩を叩いて……」
豆腐\ヤァ/
マミ「……………」
マミ(後ろを振り向いたら、身長……体長? 二メートルはありそうな豆腐が立っていた)
マミ(ううん、その、立つというか、手足はないんだけど……えっと……)
豆腐\アレヲヤッツケルンダネ!/
マミ「え? あ、うん。そう。そうそう(声は聞こえないのに、何を喋ってるのか何となく分かる……)」
マミ「えっと、戦ってくれるの?」
豆腐\トウゼンダヨ!/
マミ「じゃ、じゃあ……お願い、します」
豆腐\ヨシ!マカセロ!/
豆腐\ターッ!/
マミ(あ、豆腐が赤いキュゥべえ目掛けて突撃して……)
WR2【……】ブンッ
ぐしゃあ
マミ(簡単に砕け散った)
マミ(……弱い)
豆腐2\クソーッ!ヨクモオレノイモウトヲー!/
マミ「え、二人目……って、妹!? あれ女の子!?」
豆腐3\キョウダイ!オレモチカラヲカスゼ!/
豆腐4\オレモダ!/
絹ごし豆腐\ア、アンタガシンパイダカラツイテキタンジャナインダカラネ!/
寄せ豆腐\テヤンディ!/
油揚げ1\オレタチノコトモ/
油揚げ2\ワスレチャコマルゼ/
ガンモドキ\オウオウナメンジャネェゾワレェ!/
マミ「ってなんかいっぱい来たあああああああああああああああああ!?」
豆腐s\ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!/
まどか「え、ちょ、なんか大量の食べ物がこっちに来てぎゃあああああああああああああああ!?」
WR2【!!?!?!?!】
マミ(赤キュゥべえが逃げ出した……余程不気味に見えたのかしら)
マミ(……あ、こけた。なんか可愛い)
ゲルト「今です!」
マミ「! マントと剣とマスク(仮面的な使い方をするやつ)を装備したゲルトルートさんが!?」
ゲルト「この装備を身に着けた時から見える、白とか赤のドクロマーク!」
ゲルト「恐らくそれは物体の脆い場所、致命的な部分を示している筈!」
ゲルト「そしてこの赤いキュゥべえには――――腰の部分に赤いドクロがある!」
ゲルト「その赤いドクロをこの剣で」
ゲルト「ぶすりっ!」
WR2【――――!!!】
ゲルト「これにて抹殺完了……」
ゲルト「……解☆決(横ピース)」
マミ(何故ポーズを取った)
マミ「で、でもこれでアイツは倒せたのよね!?」
WR2【……】ムクリ
マミ「……あら?」
ゲルト「む! まだ立ち上がりますか!」
ゲルト「しかし、この妖精さんアイテムの力さえあれば……」
WR2【……】ムキムキ
ゲルト「……あれ?」
WR2【グ、グゥ……】ムキムキ
ゲルト「あれれ? え、なんか急に全身の筋肉が膨張しているような……?」
WR2【オ……】
WR2【オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!(持病の腰痛が治ったぞーっ!!)】
ゲルト「なんかパワーアップしたああああああああああああああああああああ!?」
ゲルト「ひええええええええええええっ!?」
シャル「全く、みんな何してんのよ!」
シャル「いくら妖精さんアイテムだからって、もっと使いこなせないの!?」
マミ「……そういうあなたは今どんな状況かしら」
シャル「は。妖精さんアイテムの三角コーンを地面に置いたところ」
シャル「そこを中心に不可視のバリアーが展開」
シャル「あの赤いキュゥべえの攻撃を一切通さなかったけど」
シャル「私もバリアーから出られなくなっており、傍観するしかない状況にあります」
マミ「はい、よく出来ました」
マミ「つまりあなたが一番真っ先に戦線離脱してんのよ!」
シャル「そんな事言われても仕方ないでしょ! 使い方知らなかったんだもん!」
シャル「というかここから出して! 本気で出して!」
シャル「誰でも良いから助けてええええええええええええええええ!?」
マミ「ちょっと五月蝿いから黙ってて!」
まどか「た、タライが私を集中攻撃してあいたーっ!?」
WR2【!!!?!?!!?(なにあの茶色い物体臭いが生理的に受け付けないぃぃぃぃぃ!?)】
ゲルト「赤いキュゥべえがこっちに来たああああ!? いやあああああああああああ!!」
\ギャーワーウェェェダレカタスケデェェ/
疾患QB(なんなんだ、あれ)
疾患QB(……あの理不尽というか、不条理というか、ふざけきった展開というか……!)
疾患QB(こっちが真面目にやればやるほど滅茶苦茶にされるこの状況!)
疾患QB(というかなんでウォーリアーが逃げてるんだよ!? 戦闘用にチューニングされた個体なんだぞ!
感情どころか、戦闘以外の思考は抱かない個体なんだぞ!)
疾患QB(なんなんだ!? 何かよく分からない力が作用しているのか!?)
疾患QB(――――はっ!?)
疾患QB(お、落ち着くんだ……僕は冷静なインキュベーター。この程度で動揺している場合じゃない)
疾患QB(……やはり、妖精の技術力は脅威だ。魔法を封じた連中相手にも苦戦を強いられるほどに)
疾患QB(本来は暁美ほむらと妖精を結界によって隔離する作戦だったけど)
疾患QB(結果的に、逆になった事が功を奏したか)
疾患QB(屋外なら”戦艦”の主砲が使えるからね……)ニタァ
疾患QB(おっと、巴マミ達の方は苦戦しているようだけど)
疾患QB(あっちはそろそろ勝負が付きそうだ)
さやか「うぐぁ!?」
杏子「がはっ……!」
WR【フゥールルルルル……】
さやか「ちょ、本当に強過ぎ……!」
杏子「まどか達は、ドタバタしつつも相手を翻弄しているみたいですけど……」
杏子「このままじゃ、あたし達は……!」
WR【】フッ
杏子「ま、またテレポート!?」
さやか「でも、すぐに攻撃してこない? 姿も見えないし……逃げたのかな?」
杏子「でもここまで一方的だったのに逃げるなんて」
杏子「……あああああっ!?」
杏子「くそっ! やられた!」
さやか「え? 何? 何なの?」
杏子「多分アイツは今、物陰に身を潜めていると思われます!」
杏子「そしてあたし達が隙を見せた瞬間――――」
さやか「はっ!? またテレポートしてきて、ぶすり!?」
杏子「あたしなら、そうします!」
杏子「しかもこっちはアイツの姿が見えないから、何時テレポートしてくるか分かりません!」
さやか「ちょっ……」
杏子「背中合わせに立ってください! せめて背後に回られないように!」
さやか「う、うんっ!」
杏子「……………」
さやか「……………」
杏子(さやか様とあたしで、お互いの背後を守っている。構えとしては、これが最善の筈)
杏子(今は互いの死角をフォローし合って、アイツが攻撃してきた瞬間に防御を……)
杏子(……いや、待て)
杏子(これじゃ何もせず、指を咥えてアイツが攻撃してくるのを待つのと変わらない)
杏子(そもそもアイツの速さ相手に、攻撃を見てからガードなんて不可能だ)
杏子(こんなんじゃ駄目だ! 守りに入ったら負ける!)
杏子(防御を考えるんじゃない。攻める事を考えるんだ)
杏子(そう、例えば――――)
杏子「……………」
杏子「……………」
杏子「………――」チラッ
――――フッ
杏子(来た! やっぱり予想通り、あたしの死角を狙ってきやがった!)
杏子(だけどこっちの方が上手だったな! そっちはあたしが一瞬余所見した瞬間を狙ったつもりだろうけど)
杏子(それは囮! あえて作った死角に意識を集中していたから、テメェの気配は手に取るように分かった!)
杏子(あとは渾身の力を込めて作ったこの槍の一撃を食らわせる!)
杏子(奴の装甲を貫けるかは分からないが――――これがあたしの全力! もしもは考えねぇ!)
杏子「そこだ――――」
「そこじゃない! 上だっ!」
杏子「!?」
杏子(な、なんだ今の声!? 聞いた事があるが、誰の……)
杏子(いや、それよりすぐ死角へと振り向いたのに、誰も居ねぇ――――)
杏子(赤キュゥべえの、腕しかねぇ!?)
杏子「か、身体の一部だけテレポートしてきただ、がっ!?(腕があたしの首を掴んで!?)」
さやか「杏子ちゃん!?」
杏子(不味い! 身動きがとれねぇ!)
杏子(そんでもって、言われた通り上を見りゃあ……)
WR【オオオオオオオオオオオオオオオオオオ……!!】
杏子(ああ、口に真っ赤な光を貯めているアイツの姿が……)
杏子(あたしとさやか様をまとめて吹っ飛ばそうって魂胆か!)
杏子(……ごめん、さやか様)
杏子(あたしのせいでこんな――――)
「どりゃああああああああああああああああああっ!!」
WR【!?】
――――ズガンッ!!
杏子「ぶはっ!?(赤キュゥべえが吹っ飛んだ!? ついでに、あたしの首を絞めていた手も……!)」
さやか「だ、大丈夫!? 怪我はない!?」
杏子「は、はい……なんとか……」
杏子「それより……」
「やれやれ。君はもっと慎重で、付け入る隙のない人間だと思っていたけど」
「暁美ほむら達と係わって、ちょっと丸くなり過ぎたんじゃないかい?」
「……まぁ、僕が言えた事ではないけど。丸くなり過ぎて原型残ってないレベルだし」
さやか「!? あ、アイツ……!」
杏子「なんでテメェがあたしを助けるんだ……」
杏子「キュゥべえ!」
QB「……………」
さやか(ど、どういう事? だって、最初からいたキュゥべえはそこに居るままだし……)
疾患QB「……………」
QB(以下旧べえ)「長々と話をしている状況ではない。必要な事だけ言っておこう」
旧べえ「まず、僕は君達の味方だ」
旧べえ「遠回しな利益関係ではなく、純粋に君達を助けようという意思がある、という意味でね」
さやか「み、味方、なの?」
杏子「はぁ!? 今更アンタを信じろって言うのか!?」
杏子「さやか様は兎も角、あたしは騙された身だぞ!」
旧べえ「うん、そうだね。至極尤もな答えだ。信じてくれといくら言葉で言っても、僕の言葉ほど軽いものもあるまい」
旧べえ「だから行動で誠意を示そう」
さやか「行動って、アンタ何をする気なの?」
旧べえ「君達にとっては願ったり叶ったりな事さ」
旧べえ「――――あのウォーリアーは、僕が仕留める」
さや 杏「!?」
疾患QB「……やれやれ。フィールドを突破されたから暁美ほむらと妖精かと思って身構えたけど」
疾患QB「まさか同族だったとは」
疾患QB「君はあれか。以前精神疾患を患い、処分指示が出たのにそれに背いて逃走」
疾患QB「何体かで追い駆けたけどGPSの故障のせいで捕まらなかったという、病的個体なのかな?」
旧べえ「ああ、そうだね。多分それは僕の事だ」
旧べえ「しかし病的個体なのは、君もじゃないかい?」
旧べえ「ウォーリアーの交戦圏内に顔を出すなんて、どう考えても合理的じゃないからね」
旧べえ「大方彼女達の哀れな最期をこの目で見たかったから、という理由で見に来たんだろう?」
疾患QB「……この行動をとった理由については、特に否定しない」
疾患QB「しかし定義上、僕はまだ病的個体じゃない。君とは違う」
旧べえ「今の言葉こそ正に病的個体の証明だと思うけどね」
旧べえ「自分の”立ち位置”へのこだわりなんて、感情的行動の典型じゃないか」
疾患QB「……不快だな」
旧べえ「?」
疾患QB「君の何もかも知っているような、こちらを見下すその態度」
疾患QB「ああ、不快だなんて”感情的”な発想だよね。自分で自分が嫌になる。そういう発想も嫌になる」
疾患QB「お陰で最近の僕は毎日毎日酷く”不快”なんだ」
疾患QB「これも全て妖精のせいだ」
疾患QB「さっさとアイツ等を排除して、この症状を治療しないとね」
疾患QB「――――ついでに、君の排除もしておこう!」
疾患QB「ウォーリアー! 攻撃目標の変更だ!」
疾患QB「あの病的個体を第一目標に設定するんだ!」
WR【オオオオオオオオオオオオオオオッ!!】
さやか「!?」
杏子「あ、赤キュゥべえが、あたしらを助けたキュゥべえの方に!?」
杏子(どういう事だ!? 本当に、アイツはあたしらの味方だったのか!? それとも罠!?)
杏子(くそ、何がどうなってるか分からねぇ!)
杏子(だけどこのまま赤キュゥべえに殴られたら、アイツ潰されちまう!)
杏子(ああああ、駄目だ、間に合わな――――)
旧べえ「よっ」ガシッ
WR【!?】
さやか(え……キュゥべえが赤キュゥべえの拳を受け止めた?)
旧べえ「こら」グイッ
杏子(そんでその拳を掴んだまま身体を捻って)
旧べえ「どっせぃやあーっ!」
WR【ゴガァ!?】ビダーン!!
さや 杏「一本背負いしたあああああああああああああああああああ!?」
疾患QB「な、何だってぇぇぇぇぇぇっ!?」
WR【オ、ゴオ……!?】
旧べえ「おっと、このぐらいで倒れるとは思ってないよ」
旧べえ「ふぅ――――」
疾患QB「!? なんだ、あの病的個体のエネルギー量が急激に上昇している……?! 身体機能が上昇している!?」
疾患QB「馬鹿な!? インキュベーターのボディに、そんな戦闘性能は備わっていない!」
疾患QB「仮に協力者を得てその肉体に改造を施したとしても」
疾患QB「この星の科学力では、その小型のボディにそこまでの力を身に着ける事は不可能だ!」
疾患QB「まさか、君は妖精と手を組んで……」
旧べえ「いや、妖精とは一度も会ったは事ない……と思う。何故か自信を持って言えないけど」
旧べえ「とりあえず、この力は僕達に元々内包されていたシステムを、ちょっと応用しただけさ」
旧べえ「勿論君にも搭載されているものだよ。尤も、君には扱えないだろうけど」
疾患QB「僕にも搭載されている……?」
疾患QB「……まさか!?」
旧べえ「僕達には、魔法少女が魔女化した際発生する感情エネルギーを回収するための仕組みがある」
旧べえ「そのシステムをちょっとばかし応用すれば、己の感情から生じたエネルギーも”回収”可能だ」
旧べえ「その莫大な、宇宙の寿命に影響を及ぼすほどのエネルギーを戦闘用に転化させてもらった」
旧べえ「人間に比べると僕の感情はまだ希薄だし、希望と絶望の相転移も魔女化に比べればかなり小さい」
旧べえ「安定だってしない。コントロールもままならない。掴みきれなくて漏れ出てる分もある」
旧べえ「だけどね」
WR【オ、オォ……】
WR【オオオオオオオオオオオオオオオッ!!】
杏子(赤キュゥべえが立ち上がって、キュゥべえの方に!?)
WR【オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!】
旧べえ「心を知らない君達に、”この力”は超えられないよ」
――――ブンッ!
さやか(きゅ、キュゥべえの尻尾が振られて――――)
――――グシャアッ!!!
杏子(赤キュゥべえの頭を、く、砕きやがった!?)
WR【グ、ギュ、ゥ……】ドサッ
さやか「あ、あっさり倒しちゃった……」
杏子(おいおいマジかよ。もしかしなくても、あたしらの何倍も強いってか)
杏子(今は味方ぶっているけど、もし裏切られたら……)
旧べえ「さて、まずは一体」
旧べえ「あとはマミ達の方も助けるとして」
シャル「ふぅ……まさかあの三角コーンに秘められた力があったなんてね……」< 鼻眼鏡装着中
マミ「豆腐たちの”黄金無双演劇”も欠かせなかったわ」
まどか「タライでコンボを決められたのも彼等のお陰ですからね痛い」ガンッ
ゲルト「解☆決」< 横ピース
旧べえ「……必要ないみたいだね」
杏子「一体あっちでは何があった!?」
さやか「まぁ、妖精さんアイテムを使える時点でこうなるのは予想の範囲内と言うか……」
マミ「美樹さん、佐倉さん! 無事だったのね……って、キュゥべえ!?」
シャル「コイツが、二体? ……なんのつもりかしら?」
まどか「っ!」
さやか「お、落ち着いてみんな!」
さやか「多分だけど、コイツは悪いキュゥべえじゃないみたいなの!」
さやか「あたし達を助けてくれたんだから!」
シャル「はぁ!? アンタ何を言って……」
旧べえ「言いたい事は分かる。僕への不信も、今までの事を思えば当然だ」
旧べえ「だけど今だけは、僕を攻撃するのは止めてほしい」
旧べえ「せめて――――アイツの事が片付くまでは」
疾患QB「……………」
シャル「……分かったわ。さやかにも止められたし、今は潰さないでおいてあげる」
シャル「尤も、その約束もあと数秒で期限が切れるでしょうけどね」
ゲルト「あなたの仲間は倒しました。最早あなたの身を守る者はいません」
ゲルト「ですが、このまま逃がせばあなたはまたろくでもない事をするでしょう」
ゲルト「だから選ばせてあげます」
ゲルト「自分からこちらに投降するか、力尽くで捉えられるか」
シャル「言うまでもないけど、後者の場合手荒くなるから覚悟しなさい」
シャル「ま、殺しはしないわ――――逃がしたくないからね」
疾患QB「……くっ」
疾患QB「く、くく」
疾患QB「くくく、くくくくくくく」
まどか「……?」
疾患QB「くひ、くひひひひひひひひひひ」
疾患QB「ああ、二次成長期の少女は本当に素晴らしい」
疾患QB「足元の絶望に気付かず、目の前の希望に飛びかかる浅はかさ」
疾患QB「手元の光しか目に入らない、視野の狭さ」
疾患QB「都合のいい未来しか予測出来ない、未熟な思考回路」
疾患QB「こんなに扱いやすい”知的生命体”、他の惑星じゃまず見つからないよ」
マミ「どういう意味!?」
疾患QB「君もさぁ、本当は分かっているんだろう?」
疾患QB「これで終わる訳がないって」
旧べえ「……………」
疾患QB「ウォーリアーを動かしたんだ。それは”我々”にとって敵対象の駆逐を意味する」
疾患QB「そしてこのウォーリアーは、第67099番駐屯艦隊所属だ」
旧べえ「――――何!?」
さやか「ちゅ、駐屯艦隊……?」
疾患QB「現在、この星から凡そ60万キロ地点にその艦隊が停泊している」
疾患QB「戦艦を旗艦とし、巡洋艦4隻、駆逐艦4隻」
疾患QB「そして航空母艦1隻と100機の戦闘機が、何時でもこの星を攻撃出来るよう待機してある」
疾患QB「辺境惑星の原生生物とはいえ、魔女を人間に戻せる技術力の持ち主だからね」
疾患QB「感情疾患を誘発する可能性がある事も伝えたら、小規模とはいえ、すんなり本星が軍を派遣してくれたよ!」
シャル「な、何それ!?」
さやか「宇宙戦艦、だって……!?」
マミ「……キュゥべえ。その……」
マミ「あなた達の船というのは、どの程度の強さを持っているの?」
旧べえ「……駆逐艦が一隻あれば、地球程度の文明レベルなら一時間も掛からずにリセット出来るだろう」
旧べえ「ましてや戦艦となれば惑星破壊級の兵器も搭載している。戦闘機もミサイルぐらいじゃ装甲に傷一つ付かない」
旧べえ「どう足掻いても、この星の戦力では勝ち目がない強さだ……!」
まどか「そんなっ!?」
疾患QB「そういう事だ。君達は指を咥えて、僕達の作戦が終わるのを待つと良い」
疾患QB「ああ、だけど安心してほしい。僕達は別に、人類を滅ぼそうだなんて思っていない」
疾患QB「あくまで僕達にとって脅威であろう妖精の駆除が目的だ」
疾患QB「大切なエネルギー源である君達の個体数が減ってしまうのは、僕達にとっても損失だからね」
疾患QB「可能なら、人類側の被害は抑えるつもりさ」
疾患QB「まぁ、この国の総面積程度の土地が地球から消し飛ぶ事になるかも知れないけど」
疾患QB「人類という単位で見れば多くても全体の2%未満の犠牲しか出ない。生物の個体増減としては誤差の範疇だよ」
疾患QB「むしろ最近は君達自身増え過ぎたと思ってるみたいだし、丁度良いんじゃないかな?」
杏子「て、テメェ……!」
ゲルト「あなた方は人の命をなんだと思っているのですか!?」
ゲルト「散々エネルギーとして利用した挙句、危ないと思ったら切り捨てるなんて……!」
疾患QB「他種の生物の命をどう思うかなんて、君達人間もよく分かっていると思うんだけどなぁ」
疾患QB「人間だってトウモロコシから燃料を作っているじゃないか」
疾患QB「もしそのトウモロコシ畑から人体に有害な菌が発生したら、畑を消毒し、トウモロコシは処分するだろう?」
疾患QB「人間はどういう訳か、自分達の命は他の生物にも尊いものとして認められると思っているよね」
疾患QB「自分達は、他の生物の命に尊さなんて感じてないくせに」
ゲルト「……っ!」
疾患QB「……さて、お喋りはそろそろ終わりにしよう」
疾患QB「間もなく、軍による攻撃が開始される」
疾患QB「最初の攻撃目標はこの見滝原」
疾患QB「見滝原殲滅後は主に発明品などから妖精の発生地点を特定し」
疾患QB「余剰次元砲によって周辺地域妖精の駆除を行う」
シャル「よ、余剰次元砲……?」
旧べえ「簡単に言うと、三次元空間そのものをしっちゃかめっちゃかにする事で」
旧べえ「物理的に存在する対象なら強度に関係なく、あらゆる方向に引き裂いて破壊する兵器だ」
旧べえ「空間干渉による破壊なので伝達速度こそやや遅めだが、その威力は他とは比べようもないほど強力」
旧べえ「現在余剰次元砲よりも強力な兵器というのは、限定的条件下で使える特殊兵器を除くと」
旧べえ「宇宙を枯らすほど大量のエネルギーを用いるか、物理法則の違う並行世界でしか生成出来ないとされている」
さやか「もっと簡単に言って!」
旧べえ「……地球人の兵器で言えば、水爆みたいなものだよ。水爆と違ってクリーンではあるけどね」
マミ「そんなもの、撃たせる訳にはいかないわ!」
疾患QB「言っとくけど、僕をどうこうしても事態は変わらないよ」
疾患QB「ちょっと前にも言ったけど僕の魂はこの場に存在しない。この身体を潰しても僕は殺せない」
疾患QB「そもそも僕はあくまでエネルギー回収部隊であり、戦闘部隊とは別の部署に所属している」
疾患QB「向こうは僕がどうなろうと、その行動を変える事はないよ」
まどか「そんな、ど、どうしたら……!」
疾患QB「どうするもこうするもないよ」
疾患QB「君達に出来るのは諦める事だけで――――」
――――バリーンッ!!
疾患QB「……え?」
シャル「結界が……割れた?」
マミ「まさか私達に攻撃が届くように、結界から追い出した!?」
さやか「杏子ちゃん!」
杏子「はい! あたし達の力でこの街全体に結界を張って……」
旧べえ「いや、待つんだ」
旧べえ「……アイツの様子がおかしい」
さやか「え?」
疾患QB「艦隊!? まだこっちの戦闘は終わってない! 念のため隔離フィールドの再展開を……」
疾患QB「……何?」
疾患QB「どういう事だい!? この星に宇宙戦闘を想定した技術はまだ存在していない!」
疾患QB「ましてやこちらの艦隊に損害を与えるなんて――――」
疾患QB「まさか!?」
まどか「?」
疾患QB「……い、いや、この態度、何も知らない……?」
疾患QB「暁美ほむらじゃない? それとも単独で動き出したのか――――」
疾患QB「ん?」
まどか「……ねぇ、あれって」
さやか「……ああ、パソコンだね」
マミ「パソコンね」
ゲルト「パソコンですね」
杏子「あれパソコンだったのかよ」
旧べえ「パソコンには見えないけど」
シャル「とりあえず……」
七人「に、逃げろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
疾患QB(……なんだ? いきなり逃げ出した?)
疾患QB(一体何を見て……)
疾患QB「……わっつ?」
疾患QB(空から何か球体が落ちてきた……それもサッカーボール大とかじゃなくて)
疾患QB(全長500メートルぐらいのやつ)
疾患QB「って、それがこっち目掛けて落ちてきてるううううううううううううううううう!?」
疾患QB「ちょ、ちょ、ちょおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ?!」
――――ずずーんっ!!
マミ「げほっ、げほっ……みんな、大丈夫!?」
シャル「ええ、なんとか……」
杏子「うわ、巻きこまれた家の一部が倒壊してる……」
旧べえ「いや、むしろ市街地に落ちてきたのに、それだけで済んでるのが奇跡だよ」
旧べえ「どうやら空中分解し、一つ一つのサイズが道幅程度に収まったからこの程度で済んだのだろう」
さやか「つーか、あれエリーちゃんのパソコンだよね!? なんで落ちてきたの!?」
まどか「それよりもエリーちゃんだよ! 中に乗ってるんじゃないかな!」
旧べえ「パソコンなのに中に乗るという発想が既に意味が分からないのだけど」
杏子「それレーザーとか出すよな。あたしそれにやられたし」
――――ぱかっ
ゲルト「! 見てください! 装甲の一部が外れて……」
エリー【うう……】
まどか「エリーちゃん!」
旧べえ「あの魔女も、君達と接触した事のある者なのかい?」
マミ「ええっ! 私達の、友達よ!」
さやか「すかさず翻訳眼鏡を装着!」
さやか「エリーちゃん、どうしたの!?」
エリー【さ、さやか……?】
エリー【……あああああもう! なんなのよアイツ等!】
エリー【パソコンの機能フル活用して宇宙旅行を楽しんでいたら】
エリー【なんか変な船がたくさんやってきて、いきなり攻撃してきたのよ!?】
さやか(え、怪しい連中が来たから迎え撃った、とかじゃないの?)
エリー【こっちは予備のパソコン九機も含めた十機で対抗したけど】
ゲルト(ああ、そう言えばあのパソコン、十機も作っていましたっけ)
エリー【何故か定期的に開く装甲内部を攻められて落とされちゃうし!】
エリー【旗艦っぽい一隻以外は全部落としといたけど……】
エリー【強過ぎよ! パソコン相手に戦えるような連中じゃないわよアイツ等!】
エリー【なんなのアレ!?】
シャル「……えーっと……」
六人(あなたのお陰で地球が救われたんですけど……)
旧べえ「彼女はなんて言ったんだい?」
さやか「かくかくしかじか」
旧べえ「わーお……なんか、あっさり解決……」
旧べえ「あ、いや、まだだ! 旗艦が残っているのなら、まだ余剰次元砲は存在する!」
旧べえ「以前危機は去っていない!」
マミ「え、ああっ!? なんて事!」
杏子「くっ……あと一歩だったのに!」
エリー【え、なんで悔しそうなの? 私パソコン壊されたんだけど慰めの言葉とかないの?】
さやか「今はそれどころじゃないんだよ!」
エリー【それどころよ!? 私にとってパソコンは命よ! い・の・ち!】
まどか「このままだとリアル命が危ないの痛いっ!」ゴシャンッ
エリー【なんで鹿目さんの頭上からタライが!?】
疾患QB「ふ、ふふふ……良い事を聞いたよ……」
シャル「こ、コイツ!?」
エリー【え、スルー!? 今のタライなんで全員スルーなの!? そして何故糞白猫が二匹!?】
エリー【私に簡易的でいいから状況説明しなさーいっ!?】
疾患QB「余剰次元砲が生きているなら計画になんの支障もない! 被害は甚大だが、第一目的は達せられる!」
疾患QB「これで暁美ほむらは、終わりだ!」
まどか「あ、ああ……!?」
まどか「空に何か……ゆ、歪みが……!?」
旧べえ「不味い! 空間湾曲が発生している! 余剰次元砲の影響圏が大気圏を突破したんだ!」
旧べえ「着弾まであと数秒もない!」
マミ「そんな……!」
シャル「ほ、ほむらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
――――ばっちぃーんっ!!
全員「……はぇ?」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ほむら「? さっき、なんか音しなかったー?」
お姉さん「どうやらまた『万能蝿叩き』が起動したみたいです。恐らく鳥でしょう」
ほむら「ああ、それか……なら、いいか」
ほむら「それより、今はプリン! ぷ・り・んーっ!」
お姉さん「はいはい、手作りプリンですよー」
ほむら「うわぁーい♪」
妖精さんA「ぷりんとききましたです?」
妖精さんB「おこぼれねらい?」
妖精さんC「はげたかにあこがれちゃう?」
お姉さん「マスター達の分はこちらですよー」
妖精さん達「うわぁーい♪」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
疾患QB「跳ね、返された……余剰次元砲が……?」
疾患QB(馬鹿な、あ、あり得ない!)
疾患QB(理論上余剰次元砲を防ぐには、同規模かつ逆波形の余剰次元砲を射出してぶつける事だけ!)
疾患QB(だけど余剰次元砲は空間をかき乱す事が目的であり、周期的な波形が存在しない、
完全なランダム性と干渉域の相互作用による予測不可能な連鎖性を持っている)
疾患QB(そもそも波形を観測出来るという事は、余剰次元砲の影響下にある事を意味しているのだから)
疾患QB(観測した瞬間、その対象は引き裂かれる事になる!)
疾患QB(不可能なんだ! 余剰次元砲は、僕たちでも防ぐ事はおろか観測すら出来ない攻撃なんだ!)
疾患QB(ましてや跳ね返すだなんて、一体どんな技術を使えば・・・…!?)
旧べえ「君達には一体何が起きたか分かるかい?」
まどか「全然」
マミ「全く」
杏子「さっぱり」
ゲルト「見当も付きません」
さやか「ただまぁ、何時ものパターンだとすれば……」
シャル「どーせならなんでも跳ね返せたら面白いみたいなノリで作ったアイテムが」
シャル「偶々起動したとか、そんな感じじゃない?」
疾患QB「!? の、ノリで、作った……偶々……!?」
疾患QB「し、信じない……信じないぞ……!」
疾患QB「そんな、そんな軽い気持ちで僕らの技術を……この宇宙最高のテクノロジーを……」
疾患QB「僕らの文明を、超えられて堪るかっ!!」ダッ
まどか「! に、逃げたよ!」
シャル「ちっ! そうはさせない――――」
杏子「っ! あぶねぇ!」
シャル「へ?」
――――ガラガラガラッ!
シャル「ひゃあっ!?」
マミ「エリーさんのパソコンが崩れてきたわ!?」
さやか「大丈夫!?」
シャル「う、うん……だけど……」
シャル「くそっ! パソコンの崩落さえなかったらアイツを逃がさなかったのに!」
シャル「パソコンさえなければ!」
エリー【ちょ、なんで二度言ったの!? 言っとくけど私は悪くないわよ!?】
ゲルト「まぁまぁ、落ち着いてください」
エリー【宥めないでよ本格的に私が悪者っぽくなるから! というかアンタ誰!?】
杏子「まぁ、ベストな結果とは言い難いが全員無事だったし、良しとしないか?」
エリー【出来るかっ!】
ゲルト「まぁまぁ」
マミ「……そうね。全員で危機は脱したし、それで良しとしましょう」
マミ「あなたとも、出会えたしね」
旧べえ「……………」
マミ「……ねぇ、あなたもしかして……」
シャル「巴さん。今はあまり雑談している場合じゃないと思うわよ」
マミ「っ……そう、ね……」
シャル「……さて。アンタには聞きたい事が山ほどある」
シャル「とりあえず、ほむらのとこまで来てもらえないかしら?」
シャル「勿論拒否権なんてないけど」
旧べえ「ああ、こちらとしてもそのつもりだったから、そうしてくれると助かる」
旧べえ「ただ、一つお願いしたい事があるんだ」
ゲルト「お願い?」
杏子「あのなぁ、確かにあたし達は今さっきお前に命を救われた」
杏子「あたしの場合、祈りの結果は自業自得だからテメェを非難する資格もないだろうさ」
杏子「けど、そっちの頼みを聞くほど心を許してない事、分かってんのか?」
旧べえ「分かってる。図々しいと分かった上で頼みたいんだ」
旧べえ「僕は現在ゆま……小さな女の子と共に暮らしている」
旧べえ「その子も、暁美ほむらの家に連れて行って良いだろうか」
旧べえ「彼女はまだ幼い。その上親も、訳あって居ない」
旧べえ「一人にはしておけないんだ」
マミ「女の子って、魔法少女なの?」
旧べえ「いいや、魔法少女じゃない。才能はあるみたいだけどね」
旧べえ「それに、信じてもらえるかは分からないけど、僕は彼女を魔法少女にしたくないんだ」
シャル「……現時点では、とか腹の中では思ってるんでしょ」
旧べえ「それは――――」
シャル「……良いわ」
シャル「その子に何か罠が仕掛けられていたとしても、妖精さんをどうこう出来るとも思えないし」
シャル「望み通り、その子も連れて行ってあげる」
旧べえ「ありがとう」
シャル「……ふん」
マミ「私も一緒に行くわ。何か起きたら人手が多い方が良いでしょうし」
マミ「……力になれる自信はないけどね」
さやか「今日の事をほむらに報告しないといけませんしねー」
まどか「……うん。行こう」
エリー【……はぁー。もう、なんだか分かんないけど、そっちも色々あったみたいね】
エリー【ついでだし、私も一緒に行ってもいいかしら? パソコン壊れちゃったから、直してもらいたいし】
エリー【パパとママの写真データは結界内にバックアップ取ってるから、急がなくても良いけど】
マミ「ええ、むしろ来てほしいぐらいよ」
ゲルト「それじゃ、皆さんで暁美さんの家に……の前に、そのゆまちゃんって子を迎えに行くとしましょう」
杏子「そうすっか」
ゲルト「では、すみませんが念のため、あなたを拘束させてもらいます」
旧べえ「うん。当然の事だね。分かったよ」
マミ「……ごめんなさい、キュゥべえ」
旧べえ「気にしないでくれ」シュルルル
旧べえ「それじゃあ、案内しよう。ゆまが居るのはまずあっちの道に進んで……」
――――テクテクテクテク
シャル「……………」
エリー【シャル? どしたの?】
シャル「え? ああ、なんでもないわ」
エリー【そう?】
エリー【……それにしても、このパソコン放置で良いのかしら……】
シャル「妖精さんが作った発明品なら、多分段ボールとかプラスチックで出来たものでしょうし」
シャル「見た所死人も出てないみたいだから、良いんじゃないかしら?」
エリー【だ、段ボール?】
シャル「多分よ多分。まぁ、あらゆる意味で真っ当な素材は使われてないでしょうけど」
エリー【今度聞いてみよう……】
シャル「知らなくても良い事のような気もするけどね」
シャル「それより、アンタ足遅そうだしねさっさと行かないと置いて行かれるわよ?」
シャル「みんな、もう大分先に進んじゃってるし」
エリー【へ? あ、ほ、ほんとだ!?】
エリー【みんな待ってよぉーっ!】
シャル「……」
シャル(とりあえず、みんなが無事で良かったわ。今回ばかりは、本当に”脱落者”が出ても可笑しくなかった)
シャル(……いいえ、今まで出なかったのが不思議なぐらい、ね)
シャル(私達が戦おうとしていたのは、星々を渡り、魔法すらも再現してみせる力を持った異星人)
シャル(地球が一丸となって立ち向かうならいざ知らず、たった数人の子供が彼等に抗おうとしたって)
シャル(そんなのは、連中からすれば人の掌から逃げようとするダンゴムシ。ううん、それ以下の意味しかない)
シャル(私達に勝ち目なんてものはない。今まで私達が無事だったのは、彼等が真面目に手を打たなかったから)
シャル(――――でも、これからは違う)
シャル(あの逃げたキュゥべえの言葉が正しいなら、今日やってきたという艦隊はあくまで戦力の一部)
シャル(本来なら、それだけでも私達は手も足も出なかった。奴等もそれで十分だと思っていた筈)
シャル(だけどそれを打ち破ってしまった以上、奴等はいよいよ本気にならざるを得ない)
シャル(その本気というのが圧倒的な大艦隊か、単独の超兵器か、或いはもっと別の物なのかは分からないけど)
シャル(”人類”では到底抗えない、圧倒的な力がくる事は間違いない)
シャル(……その圧倒的な力に対抗出来るとすれば、それはきっと妖精さんだけ)
シャル(そして、その妖精さんと明確な意思疎通が出来るのは……)
シャル(頼むわよ、ほむら)
シャル(人類の未来、アンタ達に託すわ)
―――― ほむホーム ――――
ほむら「いやー、身体のだるさが中々抜けないので妖精さんに作ってもらった風邪薬を飲んだところ」
ほむら「私の体内から排出されたウィルスが意思を持ち、不気味な生命体に進化してしまいました」
ほむら「てへっ♪」
黒くてうねうねした何か「ぴるげぶぅぎゅぃあぃああぁ!」
妖精さんA「かぜきんさん、げんきぴんぴん?」
妖精さんB「ふえたがり?」
妖精さんC「ぶんれつしてぞーしょくしたそー」
ほむら「これどうしたものですかねぇ? 退治しようにも気持ち悪いからあまり触りたくない――――」
ほむら「あ、第二陣が……うぷっ」
ほむら「おろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろ」ダバー
黒くて(略)2「ぎびぃえあえあぅえあぁあああ!」
ほむら「あー、また産まれちゃった……げぷっ」
ま マ さ 杏 ゲ エ 旧「……………」
シャル(……本当にコイツ等に任せていいのかしら、人類の未来)
妖精さんメモ
『絶対安全とんがりこーん』※オリジナル※
三角コーンを元に発明された、超強力なシールドを発生させる道具です。発生するシールドは物理的衝撃は勿論
悪臭や悪口すらも遮断する優れもの。ついでに見せちゃいけないものも見せない、未成年に優しい機能付きです。
特殊な操作をすると秘めたる力が解放されるとかなんとか。何が起こるかは分かりませんけどね。
『呼び出しチャルメラ』※オリジナル※
一吹きすればあら不思議。豆腐及びそれらから作られる食品がたくさんやってきます。自ら。
それらは吹いた人間の指示に余程の事がない限り従います。しかし彼等にも自我があるらしく、
無茶な命令を出した場合良くて命令無視、最悪反逆されてしまいます。
尤も反逆されたところで所詮豆腐とか油揚げとかなので、生命の危機に晒される心配はないのですが。
万一反旗を翻されたら、美味しくお腹に収めてしまうのがのが一番良いでしょう。
『お笑いステッキ』※オリジナル※
一振りするとあら不思議。タライが頭上に落ちてくるようになります。
……他に書く事なんてないぐらいシンプルな道具です。強いて言うなら上手い事連続ヒットするとボーナス得点が入り、
周りにいる誰かの頭上に純金製のタライが落ちてくるぐらいで……
『解決セット』※原作登場※
マスクとマントとサーベルがセットになっている妖精さんアイテムです。マスクを通じて外を見ると、
物体にドクロマークが浮かんでいるのが見えるようになります。ドクロマークはその物体の危険を呼び込む箇所を示し、
白 < 赤 < プラチナの順でより大きく、のっぴきならない危険を招いてしまいます。
けれどもご安心を。ドクロマークをサーベルで突き刺せばそれだけで粉々に砕け、
見事危険は取り除かれます。修理した訳じゃないのになんで? という疑問は抱くだけ無駄です。
尚、対象のドクロを全て取り除くと「解☆決」の掛け声と共に身体が勝手に横ピースを取ってしまいますが、仕様です。
『金ニンニク』※オリジナル※
見た目は黄金に輝くニンニク。だけど食べるとあら不思議、身長100メートルの巨人になれます。
その能力はマッハ30で飛行し、ミサイルの直撃で傷一つ付かず、腕からスペなんとかという謎粒子を発射して
敵を爆殺する……こうして書くと恐怖しか感じられない恐ろしい怪人です。
妖精さん曰く、食べた人を地球最強にするために作ったのだとか。
しかし地球最強と断言出来るという事は、地球で二番目に強い奴を知っている事になりますよね?
どうやって調べたのでしょうか?
ちなみにうっかり食べてしまったさやかさん曰くイチゴ味との事。どうやら味は後付けのようです。
『プライバシーなんてないさ針金』※オリジナル※
どんな鍵でも開けてしまう、とっても危ない針金です。
使い方は至極簡単。鍵穴にこの針金を突っ込み、ぐいぐいと引っ掻き回すだけ。それだけでどれほど強固な
施錠もあっさり開けられます。妖精さん曰く、針金の開けてやろうという気持ちに感銘を受けて、鍵が勝手に開くとか。
鍵にはもっと義務感というか使命感を持ってもらいたいものです。
ちなみにカードキーで開錠するタイプの鍵は真面目なので、開けてくれないそうです。
続き
魔法少女は衰退しました しーずん つー【パート3】
……ゲルゲル