ーーー兄の家、パソコンの前
兄「ふぃー……」
兄「3連敗か、初めてだな3連敗なんて」カチッ
兄「こりゃ戦略を見直ないといけないかな」
兄「……」
兄(いい加減この事も家族にカミングアウトしなくちゃな)
チョイト1パイノツモリデノンデー、イツノマニヤラハシゴザケー
兄(電話だ。妹か)カチッ
兄「よっ、元気か?」
妹『兄さん大変!! パパとママが!!』
兄「えええっ!?!?」ガタッ
元スレ
兄「妹が泣く夜は」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1384476502/
兄「妹が泣く夜は」(続き)
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1384518044/
ーーー実家近くの病院
スタスタスタスタ
伯母「あ! 兄君!」
兄「伯母さん! お母さんとお父さんは!?」
伯母「……」
伯母「こっちへ来て」
ーーー霊安室
兄「!!!!!!!!!!!」
兄「……………………………」ボーゼン
妹「ぐずっ……、ぐずっ……、ひっ……」
兄「一体……、どうして……」
伯母「家の裏口の上に、蜂が大きな巣を作っちゃってね。兄君のお父さんが様子を見るために巣に近づいたの」
伯母「そしたら蜂の大群に襲われて、あっという間に体中刺されちゃって……ぐずっ」
伯母「お母さんが何とかお父さんを助けようとしたんだけど、お母さんも蜂に襲われてね……」
兄(何てことだ……、すぐに専門の業者に頼めばよかったのに……)プルプル
兄「妹……」
妹「あ、に、兄さああああんっ!!!」ガバッ
ーーー翌日、実家
兄「伯母さん、今時間ありますか?」
伯母「うん、あるけど?」
兄「警察の現場検証が終わったんで、僕の家から当面必要な物を持ってきたいんですけど、帰ってくるまでここにいてもらっていいですか?」
伯母「あ、いいわよ、行ってらっしゃい。妹ちゃんとここに居るから」
兄「すみません、助かります」
伯母「いいのよ。他にやる事はないし」
兄「早速行ってきます」
兄「では早速行ってきます」
兄「あ、妹、僕の家に行って荷物とか取りに行ってくるよ。6時位に戻るから」
妹「うん、気をつけてね。今兄さんに何かあったら……」
兄「心配しないで。安全運転で行くから」ナデナデ
妹「!(兄さんに頭なでられるなんて、初めてかも)」
兄「じゃ、伯母さんが一緒にいてくれるから、留守番頼むね」
妹「うん、行ってらっしゃい」
兄「あ、妹、僕の家に行って荷物とか取りに行ってくるよ。8時位に戻るから」
妹「うん、気をつけてね。今兄さんに何かあったら……」
兄「心配しないで。安全運転で行くから」ナデナデ
妹「!(兄さんに頭なでられるなんて、初めてかも)」
兄「じゃ、伯母さんが一緒にいてくれるから、弔問に来るお客さんの応対頼むね」
妹「うん、行ってらっしゃい」
ーーー兄の家
兄「よしっと、これだけ持って行けばいいかな」
兄「あとは、お前か」
兄「ごめんね、寂しかったろ?」
兄「実家に行ったら皆を癒してやってくれよな。特に妹には重点的に頼むよ」
文鳥「…ピッ………ピピッ……ピッ……」
ーーー夜、実家の玄関
兄「ただいまー」パタン
伯父「おかえり、兄君」トコトコ
兄「あ、伯父さん。すみません仕事の帰りなのに」
伯父「なんてことないよ。それより色々大変だったな」
伯母「おかえりなさい。お父さんとお母さんが警察の検死から帰って来たわよ」トコトコ
兄「帰ってきましたか……」
伯父「さっき葬儀社の人が警察署から運んで来てくれたんだよ」
兄「妹は?」
伯母「居間に居るわ。行ってあげて」
兄「はい」トコトコ
ーーー居間 両親の亡骸の前
妹「ひっ……、ひっ……、ぐずっ」ジワァ
兄「……」ボーゼン
妹「パパ、ママ……、起きてよぉ……」ポロポロ
兄「妹……」スッ
妹「……」ポロポロ
兄「お父さん、お母さん、おかえりなさい」ジワァ
兄「凄く痛かったでしょうね……。でもここは家の中で蜂は来ないから、どうか安心してくださいね」ポロポロ
妹「ぅわあああああん! パパぁ! ママぁあああぁぁ!!」ポロポロ
伯父「……」ポロポロ
伯母「ぐずっ」ジワァ
ーーーーーーーー
ーーーー
兄「妹、大丈夫かい?」
妹「うん、もう大丈夫」
兄「じゃあさ、僕が飼っている文鳥と遊んでやってよ」
妹「文鳥?」
兄「ほら、かごから出ておいでー」サーッ
文鳥「…ピッ……ピピピピッ…」パタパタ
兄「手乗り文鳥だから、手や肩に乗るよ。ほら」サッ
妹「わぁー、可愛いぃ!」パァァ
兄(お、早速の笑顔。ホッとしたな)
文鳥「……ピピッ……ピッ………ピピピッ……」
伯父「兄君が小鳥を飼ってるなんてなぁ。何が意外だな」
兄「みたいですね。みんなそう言うんですよ」
妹「手乗り文鳥と普通の文鳥は違うの?」
兄「同じだよ。ただ、手乗り文鳥は雛のうちから人間が餌を食べさせたり、時々一緒に遊んだりして育てていくんだ」
兄「そうすると大きくなっても人間を怖がらなくなるんだよ」
妹「へぇ」
伯母「優しいのねぇ兄君」
文鳥「……ピッ………ピッ…ピッ……」
ーーーーーーーー
ーーーー
伯母「あ、兄君、ちょっといい?」
兄「はい」
伯母「しばらくは、なるべく妹ちゃんの傍にいてあげて」
兄「はい、そのつもりでいます」
伯母「あと、妹ちゃん彼氏がいないみたいなの」
兄「え? そうなんですか?」
伯母「だからお葬式が終わって落ち着いたら、彼氏の代わりになってあちこち連れてってあげた方がいいと思うわ」
伯母「その方が気分転換にもなるしね」
兄「そうですね。分かりました」
兄(帰省していた時に時々家に来ていたあの男といい雰囲気だったのになぁ。別れちゃったのか)
ーーー伯父、伯母帰宅後
兄「妹」
妹「ん?」
兄「今夜と明日は4人一緒に寝よう。明後日のお昼にはお父さんもお母さんも火葬されちゃうからさ」
妹「うん、そうね。そうする」
兄「じゃ、あとで布団出すの手伝ってね」
妹「うん」
ーーー深夜、両親の亡骸の前
チーン
兄「お父さん、お母さん、おやすみなさい」ジワァ
妹「……」ジワァ
妹「パパ……、ママぁ……、ぐずっ」ポロポロ
兄「……」スッ
妹「……」ポロポロ
兄「僕が傍に居るから……」ポロポロ
妹「……」
兄「……」
妹「ぐしっ……」
兄(これから親孝行をしようと思っていた矢先に……)
妹「……」
兄「さ、寝よう……」
妹「うん……」
ーーーーーーーー
ーーーー
兄「4人一緒に寝るなんて何年振りだろう?」
妹「兄さんが中学校を卒業する時に行った家族旅行の時以来じゃないの?」
兄「そうだな。もう9年も前か」
妹「2人が生きている間に、もう一度4人で一緒に寝たかったな……」
兄「……」
妹「兄さんは、今どんな仕事をしているの?」
兄「仕事!? ああ、仕事か。仕事……、仕事はね、ええっと、金融関係のアルバイトをしているよ」
妹「そのアルバイト、いつ頃まで休めるの?」
兄「ん? バイト先には休職届を出してあるから当分の間休めるよ」
妹「ふーん」
妹(仕事の事訊いたら何で声が上ずったんだろう? それにアルバイトなのに休職なんてできるの?)
兄(妹を心配させないように咄嗟にあんなこと言っちゃったけど、落ち着いたら色々話すか)
兄「……」
妹「……」
兄「妹、起きてる?」
妹「うん、起きてる」
兄「僕の布団に入らないか?」
妹「あ、うん」モゾモゾ
兄「……」
妹「……」
ーーーーーーーー
ーーーー
妹「」ジワァ
兄「……」
妹「ねぇ、兄さん……ぐずっ」
兄「ん? なんだい?」
妹「どうしてパパと、……ぐずっ、ママ死んじゃったの?……ひっ」ポロポロ
兄(それはこっちが訊きたいよ……)ジワァ
妹「何で? どうして……? ひっ……、ひっ」ポロポロ
兄「妹……」ギュー
兄「神様は意地悪だよな。せめてどっちかだけでも、生かしておいてくれたっていいと思わない?」ポロポロ
妹「ぐずっ……、ぐずっ」コク
兄「……」
妹「ひっ……、ひっ」ポロポロ
ーーーーーーーー
ーーーー
妹「ぐしっ」
兄「……」
妹「ふぅー……」
兄「妹」
妹「ん?」
兄「暫くは、夜一緒に寝ようね」
妹「うん……」
妹(優しいなぁ、兄さん)
妹(兄さんが傍にいてくれれば、どんなに辛い事があっても乗り越えられるような気がする)
妹(逆に兄さんがいなかったり、兄さんも死んじゃったら……、私は今頃どうなっていただろう?)
妹「……」
妹「兄さんは……、死なないでね」
兄「心配しないで。僕は死なないよ」ギュー
兄(こんなに悲しんでいる妹を残して、死んでたまるか)ジワァ
ーーー葬儀から2週間後、実家
兄「明日、一緒にどこかへ出かけないか? 家に閉じこもってばかりってのも何だし、気分転換にもなるからさ」
妹「そうだね、行こうよ」
兄「どこへ行きたい?」
妹「うーん、どこか遠くのショッピングモールがいいな」
兄「遠くの?」
妹「お父さんやお母さんと行った事がある所は、いろいろ思い出しちゃいそうで」
兄「そうだね……。よし、明日は隣の県のショッピングモールに行こう」
妹「うん」
兄「何ならさ、友達とかも誘ったら?」
妹「ううん、平日の昼間だし、多分誰も来れないと思う」
兄「そうか。それとさ、そろそろ別々に寝る?」
妹「……」
妹「」ジワァ
兄「あぁごめん、分かった分かった、一緒に寝よう、当分の間一緒に寝ようね」ナデナデ
妹「夜中1人は嫌……」
ーーー翌日、隣の県のショッピングモール
ホンジツハ、トナリノケンショッピングモールニオコシイタダキマシテ、マコトニアリガトウゴザイマス
兄「今日は僕が何でも買ってあげるから」
妹「え? いいの?」
兄「ああもちろん。洋服からアクセサリーから何でも来い、だよ」
妹「それは嬉しいけど、お金大丈夫なの?」
兄「心配するなって」
妹「じゃお言葉に甘えて。まずは洋服から♪」
兄「よし、じゃ早速」
ーーーーーーーー
ーーーー
妹「はー、色々買ったなぁ」
兄「僕まだ荷物持てるから、もっと買い物しなよ?」
妹「もう十分よ。こんなに色々買ってくれてありがとう兄さん」
兄「いや、何てことないよ」
妹「そこのベンチで休もうよ」
兄「あ、じゃ食べ物でも買ってくるよ」
妹「私が買ってくる。何買ってこようか?」
兄「そうだな、たこ焼きと何か飲み物買ってきて」
妹「お茶でいい?」
兄「うん」
妹「了解」
兄(妹のあんなに嬉しそうな顔を見たの、久しぶりだな)
兄(お父さんとお母さんが死んだショックもさほど引きずってないみたいだし)
兄(これからも週1くらいであちこち連れて行くか)
兄(将来は妹も結婚して僕の元を去っていくわけだから、それまではキッチリ面倒見なくちゃな)
兄(妹が結婚すれば寂しい気もするが、妹が結婚した後に僕も相手を見つけて結婚すればいいんだもんな)
妹「はーい、お待たせ―」テクテク
兄「お、うまそうだなー」
ーーーーーーーー
ーーーー
妹「最後の一個は兄さんが食べてね」パクッ
兄「ああ」
妹「ねぇ兄さん……」
兄「ん?」パクッ
妹「私達、これからどうなるの?」
兄「当面は2人で暮らそう」
妹「うん」
兄「妹が結婚するまで僕が責任持って面倒見るから心配するな」ポンッ
妹「ありがとう。兄さん」
兄「何言ってる。家族なんだからそう言う事でお礼を言うのは無し、ね」
妹(『私が結婚するまで』かぁ。ずっと私の面倒見てよ、なーんてね……)
ーーー帰りの自動車内
ブロロロロー
妹「さっき『私が結婚するまで面倒みる』って言っていたけど、もしも私がずっと結婚しなかったらどうなるの?」
兄「結婚できるよ。こんなに綺麗でナイスバディな女を世の男が放っておくわけ無いだろ?」
妹「そんなの分からないじゃん」
兄「まぁ、そうなったらずっと2人暮らしってことになるのかなぁ」
妹(私、そのほうがいいよ……)
妹「兄さんは、将来どうするつもりなの?」
兄「さあねぇ、どうしようかな。とりあえずお父さんとお母さんの事が落ち着いたら考えるよ」
妹「ふーん……」
兄「僕も妹にいいお相手が見つかるように協力するから」
妹(余計なことしないでよ)
兄(協力するとは言ったものの、何だろうこの気が進まない気分は?)
ーーー買い物から2週間後、実家
妹「さー、文鳥ちゃんかごから出ておいでー」サーッ
文鳥「…ピッ……ピピピピピッ……………ピッ…」パタパタ
妹「えへへ♪ あ、そうだ、このパン食べる?」
文鳥「……ピッ………ピピッ…」パクパク
妹「あはっ♪ そんなに慌てて食べなくてもまたたくさんあるよ」
文鳥「…ピッ…」パクパク
妹「……」
妹「ねぇ文鳥ちゃん……、実の兄を好きになっちゃうなんて、変だよね……?」
妹「はぁー……」
妹「……」
文鳥「私ハ有リダト思ウヨ。オ兄サンハ1人ノ男ダシ、ソレニ恋愛ナンテ、人ソレゾレデショ?」
妹「え!?!?」
妹「文鳥ちゃん!?」ガバッ
兄「文鳥なら鳥かごの中に入れたけど?」
妹「あれ? 兄さんいつ帰って来てたの?」
兄「10分くらい前かな」
妹「……やだ、いつの間に寝ちゃったんだろう?」
兄「僕が帰ってきたらよく寝てたよ」
妹「え? そうだった?」
兄「ああ。それとさ、昼寝する時は文鳥を鳥かごに入れてから寝てね」
妹「あ、ごめんね」
兄「まぁいいけど、次から気を付けてね」
妹(『恋愛なんて人それぞれ』か)
妹(世の中には何組もの兄妹がいるんだから、1組くらい実の兄に恋愛感情がある妹がいてもいいのかな)
妹(それにしても、さっきの本当に文鳥ちゃんだったの……?)チラッ
文鳥「…ピッ…ピッ…………ピッ…」
ーーー両親の葬儀からか3か月後、実家
兄「妹、僕たちの今後の事なんだけどさ」
妹「うん」
兄「僕は、東京で2人で暮らしたいと思うんだ」
兄「この家はお父さんとお母さんが建てた家で、お父さんやお母さんとの思い出がいっぱいあるけど」
兄「それがいつまでも悲しみを引きずっちゃうような気がして。事故もあったからね」
妹「うん。私も同じことを考えていたの。この家にいると何だか悲しみに押し潰されそうになるっていうか」
妹「決してこの家が嫌いなわけじゃないんだけどね」
兄「だよな。お父さんとお母さんには申し訳ないけど、前向きに生きるためにはしょうがないよな」
妹「そうよね。東京で暮らそうよ」
兄「ああ、そうしよう」
兄「ところで、僕が住んでるあのアパートには住みたくないよね?」
妹「え? うーん、そうね。6畳一間でお風呂がないって言うのはちょっとねぇ」
妹「私も働いて部屋代半分出すから、ワンルームマンションとかで暮らそうよ」
兄「あ、いや、その心配はしなくていいよ。実は今まで黙っていたんだけど……」
妹「え? 何よ?」
兄「半年くらい前に引っ越したんだよね。マンションに」
妹「ええっ!? どうして黙っていたのよ?」
兄「うん、ちょっとワケ有りでさ。でも決していつまでも隠すつもりじゃなかったんだ」
兄「話そうと思ったら急にお父さんとお母さんが死んじゃったから、落ち着いたら妹に話そうと思って」
妹「そんな事言ったって……」
兄「そうだ、明日そのマンションに行こう。そこで何もかも話すから」
妹「う、うん」
妹(アルバイトなのにマンション暮らしか。よっぽど時給がいいアルバイトなのね)
ーーー翌日、兄の家
妹「」ポカーン
妹(何この素敵なマンション……)
兄「どうしたの? つっ立ってないで入ったら?」
妹「兄さん! 本当にここ兄さんの家なの!?」
兄「そうだよ? 何なら賃貸契約書見せようか?」
妹「あ、いや、別に……」
兄「疲れただろ? 休憩しよう」
妹「え? うん」トコトコ
ーーーーーーーー
ーーーー
兄「リビングにダイニングにキッチンと……」トコトコ
兄「で、ここが風呂とトイレね」トコトコ
兄「妹はこの部屋を使ってくれ」カチャ
妹「兄さんの部屋は?」
兄「隣だよ」
妹「……ねぇ、ひとつ聞いていい?」
兄「いいけど?」
妹「兄さんは今アルバイトなんでしょ? しかもずっと休んでて。なのに何でこんなマンションに住んでるの?」
兄「実は、アルバイトどころか仕事らしい仕事はしていないんだ」
妹「ええっ!? どういう事!?」
兄「詳しくはウェブ、じゃなくてリビングで」
ーーーリビング
兄「ま、座ってよ」チョコン
妹「うん」チョコン
兄「妹、FX取引って聞いたことある?」
妹「さぁ? 初めて聞くわ」
兄「ネットを使って、専用の口座にある自分の資金を外国のお金に換えたり」
兄「それをまた日本のお金に換えたりしてお金を増やしていく、いわゆる資産運用のツールのひとつなんだ」
妹「うん」
兄「それを3年前に始めたら、どういう訳か運用に成功し続けて、まぁ時には損をすることもあるけど」
兄「自分の資金が増えていったんだ」
妹「へぇ……」
兄「それで今では、FX取引の儲けだけで生活してるんだよ」
妹「本当に!? あ、そう言えばいつだったか『競馬で大穴当てた』って言って」
妹「お父さんとお母さんと私にお金くれた事があったね? それってもしかして」
兄「ああ、本当はFX取引で大儲けしたからなんだよ」
妹「そうだったんだ。私にも30万もくれたからびっくりしたわよあの時は」
兄「それで、お金にも余裕ができたからこのマンションに引っ越したってわけさ」
妹「ふーん。でも兄さん、何でこの事を私たちに黙っていたの?」
兄「ずっと黙っているつもりは無かったんだけどね」
兄「お父さんもお母さんも僕たちによく『お金は額に汗して稼ぐものだ』って言ってただろ?」
妹「うん、言ってたね」
兄「だけどFX取引は椅子に座っパソコンの前でマウスを動かすだけなんだ」
兄「だから2人の言いつけに背いている罪悪感があって、中々言い出せなかったんだよ」ウルッ
兄「だけどさすがに、そろそろカミングアウトしようと思っていた矢先に死んじゃって……」ジワァ
兄「稼いだお金で親孝行をしようと思っていた矢先にさ……グズッ」
妹「」スッ
兄「こんなことなら、もっと早くカミングアウトすればよかったよ……、ヒッ……、ヒッ」
妹「兄さん……」ジワァ
兄「グズッ」
兄「グシッ……」
兄「お父さんとお母さんが死んだ時、3回連続で損失を出したんだ。3回連続は初めてだったんだよ」
妹「うん」
兄「今にして思えば、虫の知らせだったのかもしれない」
兄「僕が、蜂の巣を撤去する専門の業者のお金を出していれば、お父さんとお母さんは死なずに済んだんだ」
妹「それは違う。兄さんは全然悪くないわ。あれは事故だったのよ……、ぐずっ」
兄「うん、そうだよな。あれは事故だよな」
ーーーーーーーー
ーーーー
兄「妹」
妹「ん? 何?」
兄「僕は今FX取引の稼ぎで十分暮らしていけるから働いてないんだ」
兄「だから平日の昼間も家にいるからウザいって感じるかもしれないけど」
妹「ううん全然! 全然ウザくないよ」フルフル
妹「兄さんがいつも近くに居るから、寂しい思いをしなくて済むって思うとなんだか嬉しいけど」
兄「そうかな」
妹(兄さんは家で稼いで、私は家事をやって、いつも兄さんが傍に居て、なんて素敵なライフスタイルなんだろう♪)
妹(だけど私達は兄妹で……。私、ここでずっと兄さんと暮らしたいよ)
兄「今日はここに泊まっていく?」
妹「え? あ、でも着替え持ってこなかったし、文鳥ちゃんも寂しいと思う」
兄「そうだな。帰るか」
ーーー実家へ向かう電車内
ゴジョウシャノデンシャハ、トッキュウ、アカギ1ゴウ、マエバシユキデス
兄「東京で一緒に暮らすのに、ひとつだけ守ってほしいことがあるんだよ」
妹「どんな事?」
兄「僕たちはいわゆるプチセレブになるけど、だからってお金を湯水のように使ってほしくないんだ」
兄「『いつまでもあると思うな親と金』っていうことわざがあるじゃないか」
妹「うん」
兄「僕たちはある日突然親を失った。だからもしかしたらお金もある日突然失ってしまうかもしれない」
兄「FX取引だって大きな損失を出して、口座にある資金がまるっきり無くなってしまうこともありえるわけだ」
兄「だから僕は儲けたお金はなるべく貯金しておこうと思うんだ。だから生活のレベルは今までと変わらないと思う」
妹「うん、私もそれでいいと思うよ」
兄「それを聞いて安心したよ」ニコ
兄「もしもだよ、もしも妹に浪費癖がついたりしたら、僕は妹と一緒に暮らす事は出来ない」
兄「わかったね?」キリッ
妹「うん。わかった(すごい真剣な目……)」
兄「でもだからってケチケチしなくてもいいからね。今まで通り普通に暮らしていればいいのさ」
兄「まぁ月に1~2回くらいはプチ贅沢とか、年に一度は普通の贅沢もしようと思ってるんだ」
妹「贅沢か。たまにはいいよね」
兄「たまにはね」
妹「私も兄さんに一つ守ってほしいことがあるんだ。養ってもらうのに言い辛いんだけど……」
兄「養ってもらうなんて言うなよ、家族なんだから。遠慮しないで言ってごらん?」
妹「うん、私が結婚するのを急かさないでほしいの」
兄「ああ、いいよ。妹のペースでゆっくりお相手を探せばいいさ」
妹「慌てて失敗してもね。ほら、『善は急げ』っていうじゃない?」
兄「……ん? それを言うなら『急いては事をし損じる』じゃないか?」
妹「え? あ! べ、別にいいじゃないのどっちでも」
兄「まるっきり意味違うぞ?」
妹「いいの!」
妹(早く東京で兄さんと暮らしたい気持ちがつい出ちゃった……)
ーーーーーーーー
ーーーー
兄「夜1人で寝るのはまだ出来そうにない?」
妹「うん。まだ出来そうにないかな」
兄「じゃさ、シングルのベッドを買って僕のベッドの隣に置くからそこで寝てよ」
妹「うん、ごめんね兄さん」
兄「そんな、謝ることじゃないよ」
ーーー妹の引っ越し後、兄の家
兄「たまには、外で食事をしないか?」
妹「うん、いいよ」
兄「少し歩いた所にカフェがあってね、以前雑誌に紹介されていたんだけど、兄妹で切り盛りしているんだって」
妹「へぇ、いいね。行こうよ♪」
ーーーカフェ
ガチャ
マスター「いらっしゃい」
マスター妹「いらっしゃいませー」
妹「なかなかいい雰囲気ね」
兄「そうだな。何となくレトロな雰囲気がいいね」
マスター妹「いらっしゃいませ。ご注文お決まりになりましたらお声をおかけください」
兄「あ、はい」
妹「兄さんもこの店初めてなの?」
兄「初めてだよ」
ーーーーーーーー
ーーーー
マスター妹「お待たせしました。ミックスサンドと、ナポリタンと、オレンジジュースになります」
兄「あ、どうも」
妹「わぁ、おいしそう」
マスター妹「あのー、失礼ですが、お二人は御兄妹でいらっしゃいますか?」
兄「はい、そうですけど?」
マスター妹「やっぱりそうだったんですね」
マスター妹「どことなくお顔も似てらっしゃいますし、さっき『兄さんもこの店初めて』とか妹さんが仰ってましたので、もしかしたらと思って」
妹「兄に『近くに兄妹でやっているカフェがあるから行ってみよう』って言われて来てみたんですよ」
マスター妹「まぁ、そうでしたか」
兄「以前は一人暮らしだったんですけど、事情があって妹と暮らす事になりまして」
マスター妹「あら、私達と似てますね。実は私も一人暮らしの兄の所へ転がり込んで今に至っているんですよ」
妹「本当だ。似てますね」
マスター「出前頼むー」
マスター妹「あ、はーい」
マスター妹「ちょっとごめんなさいね。ごゆっくりどうぞ」トコトコ
妹「はい」
兄「僕たちといろいろ似てるね本当に」
妹「ねぇ、これからも時々来ようよこのお店」
兄「そうだな。来てみるか」
ーーー帰り道
兄、妹「ごちそうさまでしたー」
マスター「ありがとうございまーす」
マスター妹「ありがとうございましたー。またよろしくお願いしますー」
兄「ちょっと遠回りになるけどさ、運河沿いに遊歩道があってね、そこ歩いて行こう。なかなか夜景がきれいなんだ」
妹「うん、いいよ」
テク……テク……
テク……テク……
妹「割ときれいな夜景ね。東京の運河沿いだしあまり期待していなかったんだけど」
兄「な? そうだろ?」
妹「うん♪」
妹(綺麗な夜景が見える所を兄さんと2人きりで歩いて。これで手を繋いだり、腕を組めたら最高なんだけどな)
妹(それとも思い切って抱き付いちゃおうかな……。いや、でも人目もあるし嫌がられたりしたら)
妹(そうだ、前から気になっていたことを聞いてみよう)
妹「兄さん」
兄「ん?」
妹「兄さんは今彼女いるの?」
兄「いないよ」
妹「ふーん」
妹(兄さん、目の前に彼女になりたがっている女がいるのに)
妹(はぁー……)
ーーー数日後、妹の部屋
妹(兄さんに対するこの気持ち、もうどうにもならないわ。あの日の夜、遊歩道のいいムードがトドメだったなぁ)
妹(でも実の兄を好きになっちゃうなんて異常なことだし、皆からも気持ち悪がられるだろうなぁ)
妹(私はどうすればいいんだろう……。誰か助けてぇ!)ジワァ
妹(兄さん……)
妹「はぁー……」
妹「……」
妹(トイレに行って来よう)スック
ーーーリビング
トコトコ
文鳥「…ピッ…………ピピッ……ピッ………」
妹「……」ジーッ
妹「ねぇ文鳥ちゃん、兄さんに対するこの気持ち、どうしたらいいと思う?」
文鳥「…ピッ………ピッ…」
妹「はぁー……」
妹(ソファーに座ってテレビでも見よう……)ポフッ カチッ
テレビ「カキーン…ウッター! オオキイゾ ハイルカ? ハイッター! ホームラ」カチッ
テレビ「エー、ソノケンニカンシマシテハ、イッサイワカリマセン OOOクン ダイジン! ソレジャ」カチッ フッ
妹(つまんないの……)
妹「……」
文鳥「『世間ノ目ヤ常識』ト『オ兄サントノ恋愛』、両方手ニ入レヨウナンテ欲張リダヨ。 ドッチカヲ捨テタラ?」
妹「ん!?!?」ガバッ
妹「文鳥ちゃん!?」
兄「文鳥がどうかしたか?」
妹「あ、別に」
兄「それより、ソファーで寝るならタオルケットとかかけないと風邪ひくよ。ほら」サッ
妹「あ、もう起きるから」
妹(……やだ、またいつのまにか寝ちゃった)
妹「……」
妹(『どっちかを捨てたら』か。確かに2つ共取ろうとするから迷うのよね)
妹(だとしたら捨てるほうは決まっている……)
妹(ありがとう文鳥ちゃん。私、もう迷わないわ)
文鳥「…ピッ…………ピッ…ピッ…」
ーーー夕方前、仏壇の前
妹(お父さん、お母さん、私はこれから、兄さんに私の想いを伝えます)
妹(本来なら、私が他の男性と結婚して、子供ができれば一番喜んでくれるんでしょうけど)
妹(でも私が、兄さん以外の男性を好きになるなんて絶対ないと思う)
妹(そしてもう、兄さんへの想いを押さえるのは限界……)
妹(実の兄を愛してしまうのは、世間からは白い目で見られてしまうけど、それでも私は構わない)
妹(お父さん、お母さん、親不孝者になっちゃってごめんなさい)
妹(『いいのよ、あなた達に散々辛い思いさせちゃったんだから、好きになさい』とか、言ってもらえたらいいな……)
兄(妹、さっきからずっと仏壇の前に居るけど、どうしたんだ?)
妹(兄さんは優しいから、受け入れてくれるかな。でも世間的にはとんでもない話だし)
妹(もし、私が告って兄さんに酷い振られ方をしたり、態度が豹変したりしてもうどうしようも無くなったら)
妹(お父さんとお母さんの元へ行かせてもらうかもしれないけど……)
妹(その時は、よろしくお願いします)ウルッ
妹(兄さんへ想いを伝えて、受け入れてもらえれば天国、突っぱねられたら地獄)
妹(一世一代の大博打ね。でももう、後戻りはしない)
妹「」スック
妹「よぉし、やったるわい!」
兄「!?」ガタッ
妹「あ」
ーーーーーーーー
ーーーー
妹「ねぇ兄さん、運河沿いの遊歩道に散歩に行こうよ」
兄「ん? いいよ」
ーーー遊歩道
テク……テク……
テク……テク……
兄(今日はいつもと様子が違うな。黙ったままだし。さっきの仏壇の前に居たのと関係があるのかな)
妹(兄さん……、私の想い受けとめてくれればいいけど)
兄(何か思い詰めてなければいいが)
妹(そこに座って告白しよう)
妹「兄さん」
兄「ん?(やっと喋った)」
妹「そこで少し休もうよ」
兄「ああ」
チョコン
チョコン
兄「夕焼けがきれいだね」
妹(どういう風に言えばいいんだろう? 自分の気持ちをそのまま伝えればいいのかな)
妹「ねぇ、兄さん」
兄「ん?」
妹「」モソモソ ピトッ
兄「?」
妹「このまま、ずっと2人で暮らそうよ」
兄「え?」
妹「私今、とっても幸せよ。今までにない位。そりゃ、お父さんとお母さんが死んだのは凄く悲しくて辛かったけど」
妹「兄さんと2人で暮らせて、兄さんと一日中一緒だし、この幸せがずっと続けばいいなって思っているの」
妹「だから、ずっと兄さんの傍に居させてよ」
兄「……」
兄「それって、兄妹として一緒に暮らすって言う事なのかな? 例えばお互いに彼氏彼女ができても」
妹「ううん、そうじゃないの。兄さんに彼女ができたら、私は耐えられないよ」
兄「……」
妹「だからなんていうのかな、兄さんとその……、こっ、恋人になれたらいいなっていうか……」カァァ
兄「妹……」カァァ
妹「……」
兄「……」
妹「だめ?」
兄「僕なんかでいいのか? 実の兄だよ?」
妹「もちろんよ。むしろ兄さんじゃなきゃやだ」
兄「変人扱いされるよ?」
妹「私は、世間の目や常識より兄さんの方がずっと大切だから」
兄「そう……、か」
妹「覚悟は、出来てるもん」
兄「まぁ、それでも妹が幸せなら、それを壊す事もないよな」
兄「僕でよければ。よろしく頼むよ」ニコ
妹「いいに決まっているでしょ!」
兄「……」
妹「……」
兄「実を言うとね、僕も妹とずっと一緒に暮らしていけたらいいなって思っててさ」
妹「!」
兄「やっぱり兄妹だよな。お互いに同じ事想っていたのにどっちも気が付かないなんて」
兄「でももう、自分の気持ちを抑える必要は無くなったね。妹も僕もさ」
妹「兄さん……」
兄「好きだよ、妹」
妹「私も、兄さんが……、好き」
チュッ
通行人(おーおー、見せつけてくれちゃって)
兄「ふふっ♪」
妹「えへへ♪」
兄「何だか変な感じだね。兄妹なのに『好き』って言ったり、キスしちゃうなんて」
妹「これからは毎日するんだから慣れないと」
兄「そうだね」
兄「こんなに綺麗な女性の彼氏になれて幸せだよ」ナデナデ
妹「私もこんなに優しい男性の彼女になれて幸せ」ジワァ
兄「ん? 泣いてるのか?」
妹「だって、もし振られても振られた相手と一緒に暮らさなくちゃいけないんだよ?」
妹「こんなに辛いことはないよ。だから内心ビクビクだったんだ」
兄「振るわけ無いよ」
妹「うん。安心して涙が出ちゃって」
兄「妹、ずっと一緒にいようね」
妹「うん、ずーっと一緒だよ。私がおばさんになっても。お婆さんになっても」
妹(ありがとう、文鳥ちゃん)
ーーーーーーーー
ーーーー
妹「ねぇ兄さん、とても訊きづらいこと訊くけど」
兄「別にいいよ。遠慮しないで何でも訊いて」
妹「あの、さ……、私は歴代何人目の彼女なの?」
兄「えーっとねぇ、何人目だろう? ちょっと数えてみるね」
妹(えっ!? 私が知らない間にそんなにたくさん!?)
兄「1、……1人目だな。さっきのキスも初めてだったしね」
妹「」ズッコケ
妹「本当に!?」
兄「本当だよ。僕みたいな冴えない男に早々彼女ができるわけ無いだろ?」
妹「そんなことない。兄さんは冴えない男じゃないよ。だけど本当? 信じるわよ?」
兄「だから信じてよ。って言っても証明できないけどさ。妹が初めての彼女だよ」
兄「まぁぶっちゃけ恋人未満みたいな微妙な関係の女はいたけどね。1人だけ」
兄「もうずいぶん前に自然消滅みたいな感じで音信不通だけど。もちろんその女とはキスはした事ないよ」
妹「ふーん、そうなんだ」ホッ
兄「妹から訊かれたから僕も訊くけど、僕は妹の歴代何番目の彼氏なの?」
妹「実は私も、兄さんが最初の彼氏なんだ。もちろんキスも初めてだよ」
兄「えっ? じゃ僕が実家に帰省していた時に時々来てた男は?」
妹「あの人はガーデニングの事を教わるのに時々来てもらっていただけよ。それにあの人、ゲイだし」
兄「ゲイ……」
妹「うん」
兄「それにしても、こんなに綺麗なのに彼氏が今までいないなんてなぁ」マジマジ
妹「ね、何でだろ?」
ーーーーーーーー
ーーーー
兄「そろそろ帰ろうか?」
妹「あ、待って。もう一回」
兄「いいよ」ニコ
チュッ
兄「」ニコッ
妹「えへへ♪」
兄「さ、行こうか」スック
妹「うん」スック
兄「手繋いで帰ろうよ」サッ
妹「あ、そうだね」ギュッ
テク……テク……
テク……テク……
兄「散歩に行く前に仏壇の前に長い事いたけど、どうかしたのか?」
妹「お父さんとお母さんに謝ってたの。これから兄さんに想いを伝えて、受け入れられたら恋愛しちゃうけどごめんなさいってね」
兄「そうだったのか。僕もお父さんとお母さんに謝らないとな」
妹「私ももう一回謝るから、一緒に謝ろうよ」
兄「一緒にね」
ーーー帰宅後、仏壇の前
チーン
兄「お父さん、お母さん、僕と妹は許されない恋愛をします。2人の希望には答えられなかったけど」
兄「その代りに2人で仲良く真面目に精一杯生きていくから、どうか許してください」
妹「お父さん、お母さん、私達を許してくださいね」
ーーー夕食後、リビング
妹「ねぇ、これからはさ、『お兄ちゃん』って呼んでいい?」
兄「この歳で? 子供のころに逆戻りか?」
妹「『兄さん』だとなんか微妙に距離感があるような感じがして」
兄「別に構わないけど、なんか恥ずかしいなぁ」
妹「すぐに慣れるよお兄ちゃん」
ーーー2日後の夕食後、ダイニング
妹「お茶入ったよ」コトッ
兄「お、ありがとう」ズズー
兄(恋人になって2日経ったか。もう最後までしてもいいのかな? 妹も待っているかもしれないし)
兄(告る時は妹が勇気を出して言ったんだから、今回は僕が勇気を出して誘うべきだよな)
兄「妹」
妹「ん?」
兄「僕たち恋人同士になったでしょ?」
妹「うん」
兄「だからどうだろう? 今夜とか、さ」カァァ
妹「!」カァァ
兄「……」
妹「うん、いいよ」ニコ
兄「……」
妹「……」
兄「誘った僕が言うのもなんだけど……、戻れなくなるよ?」
妹「うん、解ってる。もうとっくに戻れない所まで来てるでしょ?」
兄「まぁ、そうだな。それでその……、今日は安全な日か?」
妹「」コク
兄「じゃ、今夜ね」
妹「うん……」
妹「お兄ちゃん」
兄「何だい?」
妹「その……、一緒に入らない? お風呂」カァァ
兄「ああ、いいよ」カァァ
ーーー風呂場
兄(ふぅ……)
兄(いつもは一番リラックスできる場所なのに、やっぱり今日は落ち着かないなぁ)
兄「……」
兄(これが妹の体の中に……)
カチャ
兄「ぶっ!」
妹「どうしたの?」カァァ
兄「いやー、体にタオル巻いてくるかと思っていたから」カァァ
兄(あんなに胸大きかったか?)ジー
妹「あんまり見ないでよ……」カァァ
兄「綺麗な体だね」
ザパァァ
兄「すっかりおとなの体になっちゃって」
妹「もぅ」パシッ
兄「いてっ」
妹「そう言うお兄ちゃんもね」
兄「まぁね」
兄「一緒に入るなんて何年振りだろう?」
妹「確か私が小学校2、3年の頃だったかな、一緒に入らなくなったの。だから10年以上前よ」
兄「そんなになるか」
兄「随分立体的な体だったんだね」
妹「私、着痩せするから」
兄「……」
妹「……」
妹「」チラ
妹(アレが、私の中に……)
妹「……」
妹「お兄ちゃん」
兄「ん?」
妹「私の胸とお尻とアノ部分ね、中学生になってからは男の人には誰にも見られた事も触られたこともないの」
妹「女性にもね、なるべく見られたり触られないようにして来たのよ」
兄「そうなのか?」
妹「だから……、私の心も身体も全部、お兄ちゃんの色に染めていってね♪」ピトッ
兄「」ゴクリ
兄「僕は嬉しいよ、ありがとう妹」
妹「うん……」
兄「だけどこの傷、残っちゃったんだね……」
妹「え? 何?」
兄「肩のこの傷だよ。僕が中学生の時だったかな。妹をいじめてさ……」
妹「あ、全然気にしてないよ。目立たないし、この傷の事なんかすっかり忘れてた」
兄「ごめんね。僕があの時いじめなかったら」
妹「お兄ちゃん、この傷の事はもう言わないで。私、何とも思ってないから」
兄「ああ」
妹「約束だよ?」
兄「うん、約束する」
妹「ちょっと小指立てて」
兄「ん?」サッ
キュッ
妹「♪指切りげんまん、嘘ついたら針1本飲ーます、指きった♪」
兄「1本か。地味にリアルだね」
妹(こんなに小さな傷の事でお兄ちゃんを苦しめたくないから)
妹「体洗うね」
兄「うん」
バシャア
兄(いい体してるなぁ)
―――――――――――――
―――――――――
妹「お先にー」
兄「ああ」
兄(僕も体洗って出るか)
―――兄の部屋
カチャ
妹「お待たせ」
兄「!(ブラにパンティに僕のワイシャツか)」
妹「ごめんねお兄ちゃん、ワイシャツ勝手に借りちゃって」
兄「別に構わないよ。こういう使い方なら大歓迎だ」ニコ
兄「綺麗だよ、とても」
妹「えへっ♪」
兄「」ギュッ
妹「」ギュッ
チュッ、チュッ、チューッ
兄「…レロレロッ…」
妹「!!」ガクガクッ
兄「…レロッ…ニチャ…」
妹「」ガクッ
兄「ふぅ」スッ
妹「はぁ」
兄「」モミモミ
妹「きゃ、ぁん♪」
兄「ブラ、外していい?」
妹「」コク
兄「」スッ スルッ ボヨンッ
兄「大きいね」
妹「Fカップよ♪」
兄「」モミモミ
妹「ぁあ、きゃぅ、んっ……」
兄「ワイシャツ脱がすね」スッ パサッ
妹「お兄ちゃんの服も脱がせてあげる」スッ パサッ
兄「ああ」
妹「最後の1枚は、お兄ちゃんが脱がせてね」
兄「うん」スーッ
兄「座って足少し広げて」
妹「うん……」ポフッ
兄「」クリッ クリッ クリッ クリッ
妹「ぁ…、あ…、お兄ちゃん…、あ…」
―――――
妹「ぁ…、ねぇお兄ちゃん」
兄「ん?」
妹「お兄ちゃんのも気持ち良くさせてあげたいの」
兄「あ、うん」
妹「……」ギュ
妹「」シコシコ
兄「あ、気持ちいいよ」
ーーー
妹「」シコシコ
兄「妹、もう入れていいかな?」
妹「」コク
兄「仰向けに寝て」
妹「」パフッ
妹「一杯、キスしてね。痛みも紛れると思うから」
兄「ああ。本当に痛かったら言ってね」
兄「もう少し足広げて」
妹「恥ずかしい……」サッ
兄「今、入れるよ……」
妹「うん…」
兄「」グッ
妹「!」
兄「…チュッ…クチュ…ニチョ…」グッ
妹「痛っ」ギュ
兄「大丈夫?」
妹「うん、この位の痛みなら大丈夫」
兄「…ヌチョ…レロッ…」ググッ
妹「いっ」ギュ
兄「もう少しで、全部入るからね」
妹「」コク
兄「…アムッ…ジュル…」ググッ
妹「痛っ」ギュ
兄「今、全部入ったよ」
妹「うん……」ウルッ
兄「ゆっくり、動かすね」
ズッ ズッ
妹「あ…、あ…、ぁあ…」ギュ
兄「ごめん…、もう出そう」ズッ ズッ
妹「あ…、中に、中に出してね」
兄「うっ、あぁ……」ピュルッ、ピューッ、ピューッ、ピューッ
妹「あ、お兄ちゃん、中でいっぱい出てるのが分かるよ」
兄「ふぅ、ふぅ…」
兄「」ニュ
妹「あ、だめ! 抜かないで。しばらくこのままでいて」ギュ
兄「わかった」
妹「…チュッ…」
兄「すごく気持ちよかった。愛してるよ、妹」ニコ
妹「うん、私も愛してるよお兄ちゃん」ニコ
―――――
兄「また硬くなっちゃったから動かしていい?」
妹「うん、今度も中に出してね」
兄「妹」グッ ズッ ズッ ズボ
妹「あ…、あ…、お兄ちゃん…、ぁ…」ギュ
―――――
兄「妹…」ズッ、ズボ、ズッ
妹「お兄ちゃん…、お兄ちゃん…、あ…、あ!」ギュ
――――――
兄「妹! 出る…」ズッ、ズッ
妹「あ、また中に、あ、中に出してね」ギュ
兄「うっ……」ピュッ、ピューッ、ピューッ
妹「またしばらくこのままでいてね」ギュ
兄「うん」
―――――
妹「また硬くなったね」
兄「分かる?」
妹「うん、分かるよ」
兄「あのさ」
妹「何?」
兄「今度は下の穴に入れていいかな?」
妹「え? 怖いよ」
兄「先だけ入れてすぐ抜くから。妹の全てを奪いたいんだよ」
妹「あ、だったらいいよ♪ でも怖いから先だけにしてね」
兄「うん。すぐ抜くからね」
兄「」ニュウウ
妹「あ…、ぁ…」ギュ
兄「」ジュポッ
妹「お兄ちゃんに全部奪われちゃった♪」
兄「ありがとう妹、僕のものになってくれて」ナデナデ
妹「私もう、絶対にお兄ちゃんから離れないからね♪」ギュ
兄「僕だって、絶対に離さないよ♪」ギュ
妹「えへへ♪」
兄「ふふっ♪」
―――初体験から1カ月後、玄関
妹「宅配便? 何買ったの?」
兄「妹、夜にさ、この箱に入っている服を着てみてよ」サッ
妹「え? うん」
兄「似合うと思うよ」
妹「どんな服?」
兄「夜開けてみて」
―――夜、妹の部屋
妹(どんな服が入っているんだろう?)ザーッ パカッ
妹「!!」
妹「もぅ……、ふふっ♪」
妹(中学校も半年で中退した高校もブレザーだったから、セーラー服なんて初めて着るけど)モゾモゾ
妹(こうして見るとセーラー服ってエッチな服よね。こんなに胸の所に手を伸ばしやすい服もないわ)
妹(それにこのスカートの短さ、30センチ位しかないじゃないの)カァァ
妹(でも、これを着ればお兄ちゃんにいっぱい愛してもらえるんだよね♪)
妹(女物の通学靴履いて)ゴソゴソ
妹(学生鞄持って、イってきまーす♪)
―――兄の部屋
カチャ
妹「お兄ちゃんただいま♪」
兄「おー、よく似合ってる。凄く可愛いよ♪」
妹「えへへ♪ もぅ、お兄ちゃんにこんな趣味があるなんて知らなかったよ♪」
兄「妹もまんざらでもなさそうだね♪」
妹「お兄ちゃん、私に保健体育の指導して♪」
兄「いいよ。じゃ早速♪」ドン
妹「あぁん♪ 私中学生になったばっかりよぉ♪」バサッ
兄「おー、随分けしからん体をした小学7年生だなー♪」スルッ
妹「ぁあ~ん♪」
兄「妹、もうこんなに濡らしちゃって♪」クリッ
妹「だってぇ♪」カクッ
兄「じゃ、今入れちゃうね」スルッ
妹「早くぅ♪」
兄「」ズボッ ズッ ズッ
妹「ぁん♪ ぁあ♪ あー♪」ギュ
―――――
妹「あーー♪、お兄ちゃあん♪ お兄ちゃあああん♪ あ゛ーーーーーー♪」ガクガクッ
兄「ハッ、ハッ、妹!! うっ、うう……」ピュルッ ピューッ
妹「ハアッ、ハアッ、ハーッ、ハーッ、フゥ…、もうお兄ちゃん、気持ち良すぎ……♪」
兄「フウッ、フーッ、ハァ…、僕も……、凄く興奮したよ♪ もう妹、喘ぎ声大き過ぎ」
妹「バカッ」カァァ
妹「今日は、このまま寝ちゃおう……」
兄「うん、僕も」
妹「……」
妹「お兄ちゃーん、セーラー服着た妹布団だよぉ♪」ポフッ
兄「おー♪ 掛け心地最高!」ギュ
妹「えへへ♪」
―――翌朝、キッチン
ジュー
妹「ふん♪ ふふん♪ ふん♪」
兄「おはよう……」ドキッ
妹「あ、おはよう♪」
兄(セーラー服にエプロンか)ドキドキ
妹「もう少しで出来るから待っててね」
兄「僕は待てそうにないよ♪」ガバッ
妹「あぁん♪ もう♪ 分かったからベッド行こう♪」
―――1ヶ月後の夕食後、ダイニング
兄「妹が淹れたお茶はいつも美味しいね」ズズー
妹「お茶の葉のパッケージに書いてある『美味しいお茶の淹れ方』を忠実に守っただけよ♪」
兄「へぇ、お茶は淹れ方によって美味しくなるんだねぇ」
妹「ねぇお兄ちゃん、お願いって言うか相談があるんだけど」
兄「新しい彼氏でも出来たか?」
妹「違うわよっ!!!」ガチャン!!
兄「!?」ビクッ
妹「……」ウルッ
兄「冗談だよ、冗談だってば」
妹「」ジワァ ポロポロ
兄「あ、ごめん。ごめん妹」ギュ
妹「わたっ、私、ひっ、そんなかるっ、軽い女じゃないっ、ぐずっ」ポロポロ
兄「そうだよ、そうだよな。妹は一途な女だよ。ずっと僕のことを愛してくれているもんな」ナデナデ
妹「おにっ、お兄ちゃんの事が、ひっ、もうどうにもっ、どうにもならない位、ひっ、大好きっ、のに」ポロポロ
兄「ありがとう妹。僕もね、もうどうしようもない位妹が好きだよ」ナデナデ
妹「だからっ、ひっ、他にかれっ、彼氏なんか出来る訳なっ、いよっ」ポロポロ
兄「うん、わかるよ、わかる。妹の彼氏は僕だよな。僕だけが妹の彼氏だよな」ナデナデ
兄「僕の頭の中が一瞬『恋人』から『兄』に戻っちゃってさ。ごめんね本当に」
妹「それにっ、ひっ、遠回りに『彼氏作っ、作って早く出ていけ』って、いわっ、言われているみたいで」ポロポロ
妹「ひっ、凄く嫌だった……」ポロポロ
兄「そんなこと無いよ。全然そんなこと無い。妹に他に彼氏ができて、ここから出ていってしまったら僕は発狂すると思う」
兄「平常心で居られなくなるよ。妹は僕のものだから誰にも渡したくない」ギュ
妹「じゃ、何であんなっ、ひっ、あんなこと言ったの?」ポロポロ
兄「ほんの軽い冗談だったんだ。妹がボケツッコミで『実は下の階の男の人と、ってそうじゃないの』とか」
兄「そんなふうに返ってくるって勝手に思ってたんだよ」
兄「でも冗談にしては本当に悪い冗談だったね。ごめんね本当に」ナデナデ
妹「冗談なのか本気なのか分からなかったよ……ぐずっ」
兄「うん、ごめん。お詫びにさ、今から24時間、妹の言う事何でも訊くから」
妹「……本当?」
兄「ああ本当だよ。でもあくまで常識的に僕が出来る範囲でね。電車1台盗んで来てとか言われても出来ないけど」
妹「そんなこと言わないよ。どうしようかな……、あ、じゃあさ、今夜はずっと膝の上にいさせて」
妹「あと、移動は全部お姫様抱っこで♪ 夜は最低3回は中に出してね♪」
兄「うん、わかった」
―――深夜、兄の部屋
妹「はーっ、はーっ、はーっ、ふぅ、ふぅ……、凄く……、気持ち、よかったぁ♪」
兄「はーっ、はーっ、はーっ、はーっ、僕も、最高だったよ……、3回目で、しんどかったけど」ガクッ
妹「あーもうお膣(なか)いっぱい……♪」
兄「ごめん、ちょっと休憩させて」パタッ
妹「えへへ♪ お疲れ様お兄ちゃん」チュッ
―――――――――
―――――
兄「妹、あの時にさ、僕に『相談がある』って言っていたけど、どんな事?」
妹「あ、うん、あのね、最近時々切ない気分になったり寂しい気分になったりすることがあるんだ」
兄「どんな時に?」
妹「お兄ちゃんが1人でパソコンに向かっている時とか、夕方家にいる時とか、1人でマッタリしている時とか」
妹「だけど、お兄ちゃんと体をくっつけていると寂しくなくなるの」
兄「うん」
妹「だからね、寂しい気分になった時にお兄ちゃんに抱き付かせてほしいなぁって思ってたの。でもこれお願いじゃなくて命令にしちゃう♪」
兄「ああ、いいよ。家の中でお客さんが来ていない時ならいつでも抱き付いていいからね」
妹「外にいる時は?」
兄「外にいる時か。人目が少ないところで後ろから抱きつくならいいよ」
妹「本当? 何回抱き付いてもいい?」
兄「もちろんさ」
妹「ひょっとして私って、依存症なのかな」
兄「どんなんだろう。でも妹も凄く悲しい思いや辛い思いをしたんだから、もう寂しい思いはしなくていいよ」
兄「寂しい時は僕に甘えたいだけ甘えていいからね。僕だって妹に甘えてる所はあるわけだからさ」ナデナデ
妹「うん、ありがとうお兄ちゃん」ウルッ
兄(まだお父さんとお母さんを失った悲しみを引きずっているんだろうな)
―――翌朝、リビング
妹「朝食食べ終わったから、これから濃厚なディープキスを3時間ね♪」
兄「3時間!?」
妹「うん、ソファーに座って」
兄「3時間か。そんなに長い事出来るかなぁ」ポフッ
妹「そお? じゃあさ、4時間でいいわよ」バサッ
兄「何で増えるの……?」
妹「えへへ♪ いただきまぁーす♪」アムッ…クチュ…ピチャ…
兄「」ジュルッ…ヌチョ…
―――30分後
兄(……いつもより、濃厚にしてるつもりだけど、どうかな)…レロ…ニチュ…
妹(……お兄ちゃん、いつもより激しいよ)…レロッ…ニチャ…
妹(……このままじゃ、キスだけでイっちゃう)…ムチュ…クチュ…
妹(……でも、気持ち良すぎて止められないよぉ)…ピチャ…レロ…
妹(えーい、もうどうにでもなれ!)…ヌチュ…クチュ…
妹「」…レロッ…レロッ…
妹「」…クチュ…クチュ…レロッニチャクチュピチュムチュクチュレロニチャ(ん、んん、んんんんん!)
兄(お、おい)
妹「ジュポッ、ふぅ、ふぅ、ふぅ、はぁ、はぁ……」
兄「妹? 大丈夫か?」
妹「」コク
兄「キスだけでイっちゃうなんて、妹はヤラシイ女だなぁ」ニヤニヤ
妹「お兄ちゃんが……、いけないんでしょ……」グッタリ
兄「でも、僕も気持ち良かった。好きだよ、妹」ギュ
妹「うん、私もお兄ちゃんが好き♪」
妹「ちょっと寝かせて。体に力が入らないの」
兄「寝ちゃうの?」
妹「うん」パタ
兄(しょうがない、硬くなったのは自分で処理するか。そして僕も少し寝よう)
―――夕方、リビング
妹「」パチ
妹「ふぁ~あ……」
妹(今何時……? 16時35分!?)ガバッ
兄「」パチ
兄「……う~ん、何時だ今?」
妹「16時35分よ」
兄「え!? そんなに寝ちゃったのか?」ムクッ
妹「みたいね」
妹「あーあ、昼間行きたい所があったのになぁ」
兄「どこへ行きたかったの?」
妹「銀座とか渋谷とか新宿とか、どこか大きな街よ」
兄「だったら今からでも行こうよ。カフェで食事して、街をぶらぶら歩くだけでもいいじゃん」
妹「あ、そうだね♪ 行こうよ。支度してくるね」
兄「ああ(僕も着替えるか)」
―――――――
―――
妹「さ、行こう♪」
兄「ぶっ!!」
兄「あのー、妹様」
妹「何ですかお兄様」
兄「何ゆえセーラー服なの?」
妹「お兄ちゃんが好きな服だからよ」
兄「確かに好きな服だけど、頼むからやめて」
妹「えへへ、冗談よ♪ 着替えてくるからもうちょっと待っててね」
―――――――
―――
妹「おまたせー、今度こそ行こう♪」ムチムチ
兄「!!」
兄「その服も冗談?」
妹「ううん、本気だけど?」
兄「そのタイトスカート短すぎじゃないか?」
妹「いいでしょ別に?」
兄「目のやり場に困るよそれ」
妹「お兄ちゃんなら好きなだけ見ていいわよ。もちろん中もね♪」メクリッ
兄「!(スカートの股下殆ど無い……)」
妹「エッチ!」サッ
兄「……」
妹「あとね、お兄ちゃんに命令」
兄「はい、何でしょう?」
妹「昨日の『24時間何でも言う事を聞く』のは家に帰ってくるまで延長よ」
兄「いいよ」
妹「それとね、これから色々サポートして」
兄「何を?」
妹「スカートの事よ。このスカートの短さだとちょっとしたことでも見えちゃうでしょ?」
妹「物を落としちゃったら拾ったりとか、階段を昇るときはすぐ後ろに付くとかね♪」ダキッ ギュ
兄「そう言うことね。わかった」ギュ
妹「…私のスカートの中…しっかり守ってよ…♪」
兄「(また甘ったるい声で囁きおって。勃っちゃうじゃないか)
チュッ
兄「頑張るよ」
妹「えへへ♪ さ、行こうよ」スッ
兄(妹、なんか急に大胆になったな)
―――夜、カフェ
ガチャ
マスター「いらっしゃい……、!」
マスター妹「いらっしゃいませー、あら」
妹「やっほ」
兄「いらっしゃいましたー」
マスター妹「どうしたの今日は? 随分色っぽい格好しちゃって?」
妹「バツゲームなの」
マスター妹「まぁ、本当に仲がいいのね」
兄(バツゲームを受けてるのは僕だけどね)
妹「妹にこんなに格好させるなんて、信じられない」
兄(あのなぁ……)
マスター妹「バツゲームなら仕方ないんじゃないの。いつものでいい?」
妹「うん。お兄ちゃんもいつものでいいでしょ?」
兄「うん、いつもので」
マスター妹「兄さん、私も妹ちゃんみたいな恰好しようか?」
マスター「いいよ別に。何が悲しくておまえの大根足見ながらコーヒーを淹れなくちゃならんのだ」
マスター妹「まあ、失礼ね」イラッ
妹「プライベートで着ればいいじゃない。似合うと思うよ」
兄「妹みたいな格好で仕事したら店の趣向が変わっちゃうよ」
マスター妹「それもそうね。じゃ兄さん、今度の休み期待してね♪」
マスター「そんなもん期待しないよ」
妹「マスターね、多分照れてるんだと思うよ」ヒソヒソ
マスター妹「だよね、きっと」ヒソヒソ
―――カフェの外
兄・妹「ごちそうさまでしたー」
マスター「毎度どうもー」
マスター妹「ありがとうございましたー、またねー」
妹「ちょっとこれ付けさせて」
兄「ん? どうしたのこれ?」
妹「お兄ちゃんが逃げないように」カチャ
兄「こんなの付けなくたって逃げないよ」
妹「いいから。さ、行こう♪」
―――夜、駅
妹「お兄ちゃん、昇りのエスカレーター乗るよ。後ろに立たないと誰かに見られちゃうよ♪」
兄「あ、そうだね」トコトコ
妹(何だか結構スリルある♪)
兄「妹、先行くね」
妹「やめてよ!」ガシッ
兄「冗談だよ♪」
妹「もう……」
―――大きな街
テク…テク
テク…テク
妹「この時間でも人通りが多いねー。さすが東京」
兄「『眠らない街』とか言うからね」
兄「なぁ妹」
妹「何?」
兄「ひょっとしてノーブラ?」
妹「分かる?」
兄「そりゃあ腕組んでればねぇ。肘に胸が当たるから」
妹「揉みたくなったら言ってね♪」
兄「い、今はいいよ。家に帰ったらね」
妹「でもこうして腕組んで歩いてると、普通のカップルにしか見えないよね?」
兄「まぁね、兄妹だって思う人はいないと思うよ」
妹「ちょっとさ、恋人らしい事してみない?」ピタッ
兄「どんな事?」ピタッ
妹「まずこれを外して……」カチャ
妹「私に背中向けて」
兄「撃たないでくれよ」クルッ
妹「」パシッ
兄「いてっ」
妹「」ギュー
兄「!」
兄(後ろからとはいえ何もこんなに人の往来がある前で抱きつかなくても)
妹「」ギュー
兄(妹の胸が……)
通行人1「リア充爆発しろ」
通行人2「あれ? この辺だけ熱いな」
通行人3「若いっていいなぁ」
兄(ううぅ、通行人の視線が痛い……)
妹「」ギュー
兄「……」
―――20分後
妹「はい、終わり」スッ
兄「ホッ」
妹「じゃ、これ付けてね」カチャ
兄「付けなくても逃げないってば」
妹「いいから♪」
―――――――
――――
兄(それにしても妹のスカートの短さ、フラグならなければいいけど)
DQN1「随分目を楽しませてくれるねぇお嬢さん」ザッ
妹「」ビクッ
兄(考えていたそばから……)
DQN2「どうだいかわい娘ちゃん、こんなのと遊ばないで俺たちと遊ばない?」
兄「何ですか君たちは?」スッ
DQN1「っるせえ、豚のクソは引っ込んでろ」
妹「ちょっと待ちなさいよ! 豚のクソって何? 私のお兄ちゃんh」
兄「よしな」サッ
DQN1「引っこんでろっつってんだろ? あ?」
兄「うーん、引っこみたくても引っこめないんだよね」ポリポリ
兄「僕たちは今拘束プレイの真っ最中でね。ほら、手錠でお互いの手首を繋いでいるんだよ」ジャラ
DQN1「!」
DQN2「な……」
兄「しかもこの手錠、桜田門で刑事やっている親戚からもらったもので、とても頑丈に出来ているんだよな」カチャカチャ
兄「カギは家に置いたままだし、連れと遊ぶとなるともれなく豚のクソも一緒に行く事になるけどいいのかな?」
DQN1「……」
DQN2「……」
DQN1「チッ、行くぞ」
DQN2「ケッ」
兄「バイバーイ、二度と僕たちの前に現れないでねー」フルフル
兄「手錠のハッタリ信じちゃってまぁ。さ、行こう」
妹「」イラッ
兄「どうした? 怖い顔して?」
妹「お兄ちゃん、あいつらに仕返ししない?」
兄「よせよ仕返しだなんて」
妹「だって、お兄ちゃんを豚のクソだなんて、許せない!」
兄「気持ちは解らんでもないけどな、ああいうのとは関わらないのが一番なんだよ」
妹「ううーっ、あんな奴らクソ喰らえだ」
兄「そうそう、本人がいない所ならいくら悪口言ってもいいからね」
兄「ただ、こんなに綺麗な女性が『クソ喰らえ』って言うのは止めた方がいいな。似合わないよ」
妹「じゃ何て言えばいいのよ?」
兄「そうだな……、『うんこ召し上がれ』とか」
妹「え?」
兄「いや、何でもない」
妹「?」
テク…テク
テク…テク
妹「あーあ、せっかくの気分が台無し」
兄「また抱き付いていいよ?」
妹「そうは言ってもねぇ」
兄(そうだ、今日は日曜日だな、時間は……、20時半か。行ってみるか)
兄「妹、別の場所に行ってみよう」
妹「どこに?」
―――東京駅、新幹線プラットホーム
ノゾミOOOゴウ、シンオオサカユキデス、キョウト、シンオオサカヘマイリマス、ホンジツサイゴノレッシャデス
テクテク
テクテク
妹「こんな時間に新幹線乗って、今日中に帰ってこれるの?」
兄「新幹線には乗らないよ。しばらくしたら帰るよ」
妹「それにしても、抱き合ったり背中から抱き付いてるカップルが何組かいるけど?」
兄「抱き合ったりしてるのは遠距離恋愛のカップルなんだ」
妹「遠距離恋愛……」
兄「そう。週末を2人で過ごして、どっちかが日曜の夜に最後の新幹線に乗って帰るんだよ」
兄「2人で抱き合って、新幹線が発車するまで離れ離れになるのを惜しんでいるのさ」
妹「へぇ」
兄「僕たちもナンチャッテ遠距離恋愛カップルになってみようか」
妹「あ、うん♪」
ギュ
妹(えへへ♪ 正面から抱きついちゃった)
妹(遠距離恋愛かぁ。私には絶対無理だな。でも私たちは至近距離恋愛で)
妹(これからお兄ちゃんと一緒に家へ帰って、あんなことやこんなことを……、ムフフ♪)
妹「……」
妹(何だろう? この優越感……)
妹「……」
妹「お兄ちゃん」
兄「何?」
妹「パンティがお尻に食い込んじゃって気持ち悪いの。スカートの中に手を入れてパンティ直してくれる?」
兄(ヲマイワナニオイッテルンダ)
兄「妹、いつからそんな大胆になったんだよ」
妹「初めてセーラー服を着た時かな。なんか目覚めちゃって」
兄(変な事目覚めさせちゃったなぁ)
兄「ここでそんなことしたら捕まっちゃうよ」
妹「大丈夫よ。この壁の隅で私の体をお兄ちゃんの体で隠すようにしてやれば殆ど見えないでしょ?」
兄「そうは言ってもなぁ……」
妹「スカート短いから簡単でしょ? それにほんの5、6秒よ。ほら早くぅ♪」クルッ
妹「命令よ♪」
兄「ん゛ー」
サッ クイッ クイッ
妹「ぁあ♪ あぁん♪」
サッ
兄「変な声出すなよ……」
妹「だってぇ♪」
プルルルルルルル………OOバンセンカラ、ノゾミOOOゴウ、ホンジツサイゴノシンオオサカユキガハッシャシマス
兄「妹、ちょっと顔上げて」
妹「何?」クイ
チュッ
妹(こんな所でキスしちゃった♪)
妹(えへへ♪ いい気分♪)
妹「お兄ちゃんも結構大胆♪」
兄「まぁ時々ね」
タタン……タタンタタン……
兄「そろそろいいかな?」
妹「あ、うん♪」スッ
兄「さ、帰ろう」
―――深夜、マンションの通路
妹「今日はスカートの中守ってもらったり、変な人から守ってもらったりして」
兄「でもあの手錠してなかったらどうなってたか」
妹「ねぇ、お兄ちゃん……」ダキッ ギュ
兄「ん?」ギュ
妹「…どれだけ惚れさせれば気が済むの♪……?」
兄「うーん、どれだけかな」
チュッ レロレロッ
妹「もう、どうなっても知らないから♪」スッ
テクテク
テクテク
兄「妹、今夜は疲れたから寝かせて」
妹「だめ!」
兄「くれる訳無いよな」
妹「私の身体を散々疼かせといて何言ってるの」
兄「冗談だよ。僕だってビンビンだ♪」
妹「そうでしょ♪」
隣人男「こんばんはー」
妹「あ、こんばんはー」
兄「こんばんは」
ガチャ パタン
兄「さっきの男の人といい雰囲気だったね?」
妹「うん、実はね、今あの人と不倫関係……、ってそうじゃないの」パシッ
兄「ふふっ♪」
妹「えへへ♪ お兄ちゃーん♪」ギュ
―――――――
――――
―――半年後、深夜、兄の部屋
妹(昼間読んだ実の兄妹が愛し合うウェブ小説、2人暮らしであんなに愛し合っていたのに)
妹(その事を誰にも言えなくて段々行き詰って、最後には普通の兄妹に戻るために離れて暮らす事になって)
妹(2人共毎晩泣いてたなぁ。凄く辛かっただろうなぁ……)
妹(でも、これが本来兄妹が歩むべき道なんだよね)
妹(ひょっとして、将来は私もお兄ちゃんと離れて暮らすことになっちゃうのかな)チラッ
兄「Zzz……」
妹(そんなのやだ、そんなのやだよ……)ウルッ
妹(お兄ちゃんと離れたくない、ずっとずっと一緒にいたい。家族が離れ離れになるのはお父さんとお母さんだけでたくさんだよ)ジワァ
妹(お兄ちゃんとだけは絶対絶対離れたくない。もしそうなったら私一人になっちゃう)ギュウウウ
兄「」パチ
妹(お兄ちゃん、お願い。ずっと私の傍にいてね。2人だけの兄妹なんだから。もう辛い思いはしたくないよ……)「ぐずっ……」
兄「……ん? どうした?」
妹「ううん、なんでもない……。ぐしっ」
兄「何でも無くないだろ? どうしたの?」ムクッ
妹「ぐずっ」ムクッ
妹「あのね、昼間ーーーていうウェブ小説読んじゃって、私達も将来離れ離れになっちゃうのかなって考えたら凄く寂しくなっちゃって」ジワァ
妹「ねぇお兄ちゃん、私達も将来離れ離れになっちゃうの? そんなのやだよ、そんなのやだ……、ひっ」ポロポロ
妹「私、おにっ、ひっ、お兄ちゃんの言う事何でも聞くから、…ひっ、…だから、ずっとずっと私の傍に居て!」ポロポロ
兄(大胆になったけど、繊細な所もあるんだな)
兄「妹、おいで、僕の膝の上に座ってごらん」
妹「うん……」モゾモゾ チョコン
兄「こんなに綺麗な顔に涙は似合わないよ」ニコ フキフキ
妹「だってぇ……」
兄「心配しないで。僕たちはこれからもずっと一緒だよ。恋人になった時に約束したじゃないか」ギュ ナデナデ
兄「僕たちはその兄妹と同じで愛し合いながら一緒に暮らしているけど、この先行き詰るような事は何もないじゃん」
妹「だけど、今は無いけど将来行き詰まるような気がして」
兄「そんなことないってば」ニコ
兄「要するにその兄妹は、愛し合っている事を隠すために嘘で嘘を塗り固めてしまって、身動きが取れなくなっちゃったんだよね?」
妹「うん」
兄「だったら僕たちはカミングアウトしちゃおうよ」
妹「え?」
兄「『両親を同時に失ったショックで頭がぶっ飛んで愛し合うようになっちゃったんだ』ってね」
妹「そんな事……」
兄「嘘をつかなくて済むから随分楽だと思うぞ?」
兄「でもだからって自分から進んで話さなくていいからね」
兄「話の流れで、今話さないとこの後ずっと嘘を言わなくちゃいけないっていうタイミングで話せばいいよ」
兄「大抵の人はドン引きしたり、最悪絶縁状態になってしまうかもしれないけど」
兄「そういう人は放っておけばいいのさ。放っておく人の目を気にしたってしょうがないだろ?」
妹「そうかもしれないけど」
兄「逆に理解してくれる人は大切にするのさ。まぁあんまりいないと思うけど」
兄「それに、妹が僕に告った後に言ってたじゃん。『世間の目や常識より兄さんの方がずっと大切』って」
兄「だから、世間の目や常識に凝り固まった人の態度なんか気にしないで、普通に暮らしていけばいいのさ」
妹「そうよね、そう言う人と無理にお付き合いすることも無いもんね」
兄「幸か不幸か都会は近所付き合いが希薄だからね。僕たちが愛し合っているなんてあまり気づかれないかもよ」
兄「そんなわけでさ、僕たちには行き詰まる事は無いからずっとずっと一緒にいられるよ」ナデナデ
兄「おじさんやおばさんになっても、お爺さんやお婆さんになってもね」ニコ
妹「うん……」
兄「全世界の人からドン引きされても、絶縁されてもさ、妹がいれば僕は平気だよ」
妹「私もこの世にお兄ちゃんだけがいればいい。他は何もいらない」
兄「」ギュッ チュッ
妹「♪」
兄「もう大丈夫?」
妹「うん」
兄「さ、寝よう」
―――――――
――――
妹「お兄ちゃん、私が寝ている間に、どこかへ行ったりしない?」
兄「行かないよどこにも。どこかへ行く時は必ず一緒だよ。だから安心して」ニコ
妹「うん」
妹「こんなこと言うと不謹慎だけど、仲が良かったお父さんとお母さんは、一緒に死ねてある意味幸せだったよね」
兄「ああまぁね。死に別れにならなかったからね」
妹「私達も死ぬ時は一緒だよ?」
兄「もちろんさ。だけど生きているうちはお父さんとお母さんの分まで精一杯生きなくちゃな」
兄「せっかくこの世に産んでもらって、僕たちは出会えたんだから。僕たちの命は粗末にしちゃダメだよ」
妹「そうね」
兄「それでも万が一、いや、億が一にももしもの事があったら、その時は天国でまた4人で暮らそう」
妹「うん……」ジワァ
―――――――
――――
ーーー1カ月後、リビング
妹「さて、ゴミ出しも終わったっと♪ ……あれ?」
妹「……お兄ちゃん、その女の人、誰?」
兄「あ、妹、紹介するよ。僕の嫁だ」
女「初めまして、妹さん」ニコッ
妹「えっ!?!? お兄ちゃん、……いつ結婚したの?」カタカタ
兄「あれ? 前に言わなかったっけ? まぁそんな事はどうでもいいけど」
兄「僕は嫁とここで2人暮らしをするから、妹は今日中に荷物まとめて出て行ってくれないかな?」
妹「えっ!? えっ!? だって私達、ずっと一緒だって約束したじゃない??」ブルブル
妹(……兄さん、今までの私との生活って何だったの?)
―――真夜中、兄の部屋
妹「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛!」
兄「」パチ
妹「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛!」
兄「何だ?」ムクッ
妹「う゛う゛う゛う゛う゛!」
兄「(うなされてるのか?) 妹……、!! ……凄い寝汗」
妹「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛!」
兄「妹! 妹!!」ユッサユッサ
妹「う゛っ、ん……、あ」
兄「大丈夫か? 凄くうなされていたけど?」
妹「あ、あら? え?」ガバッ キョロキョロ
妹「お兄ちゃん! さっきの女の人は!?」
兄「女の人? 誰だよ? ここに居る女は妹だけだろ?」
妹「ゆ、夢か」
兄「どんな夢見たんだ? 怖い夢だったのか?」
妹「……」
妹「」ポロポロポロポロ
兄「!?」
妹「ぅわあああぁぁぁん!! お兄ちゃあああぁぁん!!」ガバッ
兄「おおっと」バサッ
妹「ぅ゛わああぁぁん!」ポロポロ
兄「大丈夫、大丈夫だよ、僕はずっと妹の傍に居るから、どんな事があっても妹を守るから」ナデナデ
妹「ぅ゛わああぁぁん!ポロポロ
―――――――
――――
妹「ぐずっ……」
兄「少しは落ち着いた?」
妹「」コク
兄「パジャマ着替えてきなよ。風邪ひいちゃうよ」
妹「うん……」
妹「……」
兄「どうした?」
妹「一緒に来てよ……」
兄「いいよ」
―――妹の部屋
妹「」モゾモゾ
兄「終わった?」
妹「……」
妹「お兄ちゃん……」ギュッ
兄「」ナデナデ
妹「お兄ちゃんは、私以外の女を見ちゃだめ……」
兄「うん、僕はいつも妹だけを見つめているよ。僕が好きなのは妹だけだし、妹だけを愛している」
妹「」ジワァ
兄「」ナデナデ
妹「」…チュプッ…レロッ…ポロポロ
兄「」…レロッ…ヌチョ…
―――――――
――――
兄「妹、どんな夢を見たの? 凄くうなされていたけど?」
妹「うん、あのね……。私がゴミ出しから帰ってきたら、リビングにお兄ちゃんと女の人がいたの」ジワァ
兄「うん」
妹「その女の人はお兄ちゃんのお嫁さんでね、2人で暮らすからって、私がここから追い出されそうになるの……ぐずっ」
妹「でもそこでお兄ちゃんに起こされるんだけど」
兄「夢に出てきた僕は最低のクズだな。ごめんね、酷いことしちゃって」ギュー ナデナデ
妹「ううん、お兄ちゃんが悪いんじゃないもん。だけど、もうこんな夢2度と見たくない」
兄「心配しないでね、正夢になる事は絶対にないから」ナデナデ
妹「うん……」
―――――――
――――
兄(妹があんな夢を見たり、小説に影響されて夜泣いたのも、僕と離れ離れになるのを恐れているからなんだろうな)
兄(僕だってずっと妹と一緒にいたいんだから、離れ離れになるわけないんだけどな)
兄(でも、妹にもう悲しい思いをさせないためにも、前から考えて色々調べた事、今やるかな)
兄「妹、さっきの夢はね、逆夢だよ」
妹「逆夢?」
兄「実際には逆の事が起こるような夢ってことさ」
妹「それって、どういう?」
兄「妹」ムクッ
妹「ん?」ムクッ
兄「その……、結婚しよう」
妹「……」
妹「……え?」
兄「結婚しよう」
妹「結婚しようって言ったって、兄妹だよ私達」
兄「兄妹だよ」
妹「だから、血の繋がった兄妹は結婚できないでしょ?」
兄「できるよ」ニコ
兄「『兄妹は結婚できない』って言うのはさ、それはつまり」
兄「僕と妹が婚姻届の用紙に書き込んで役所に持って行っても、受理してもらえないってことなんだよ」
兄「それで法律の上では婚姻は成立しないわけで、『血の繋がった兄妹は結婚できない』っていうことなのさ」
妹「うん」
兄「でも考え方によってはさ、僕たちが書いた婚姻届を役所が受理しない。たったそれだけの事なんだよ」
兄「それ以外の事は別に出来ないわけじゃないんだ」
妹「『それ以外の事』って?」
兄「例えば血の繋がった兄妹が結婚指輪を買ったりだとか、結婚式を挙げたりとか」
兄「新婚旅行に行くとか、妊娠出産とかは出来ないわけじゃないんだ」
妹「!」
兄「まぁ妊娠出産はいろいろ問題があるから出来ればしたくないけど」
兄「それでさ、妹、明日2人で婚約指輪を買いに行こう」
兄「その後は役所行って婚姻届の用紙を貰って、書いた後は僕たちで持っていればいいじゃん」
妹「」ジワァ
兄「そして、どこか小さな結婚式場で、妹はウェディングドレス着て、僕はウェディングスーツ着て」
兄「2人だけで結婚式を挙げようよ。そこで僕たちの永遠の愛を誓うのさ」
兄「式場によっては、『結婚証明書』を発行している所があるみたいだよ」
妹「」ポロポロ
兄「その後に記念写真撮ってさ。あと新婚旅行にも行こう」
兄「そうすれば、妹の夢に出て来た女もここから追い出せるだろ?」
妹「ぐずっ」
兄「僕が妹を世界で1番幸せな女にするよ、ね」
妹「ぅわあああぁぁぁん!! お兄ちゃあああぁぁん!!」ガバッ
兄「おっとと」バサッ
妹「好きっ! 好きっ! だあい好きっ!!」
妹「」チュッ、チュッ、チュプ、レロッ、レロッ
兄「お、おい……」
妹「結婚しよう! 絶対結婚しようね!」
―――――――
――――
妹「ぐずっ……ぐずっ」
兄「今夜は泣いてばかりだな」ナデナデ
妹「だってえ……、……ひっ」
兄「僕たちみたいにね、婚姻届を出さずに夫婦同然の暮らしをしているのを『事実婚』って言うんだって」
妹(事実婚かぁ♪)
兄「新婚旅行はどこに行きたい?」
妹「そうねぇ……、国内がいいかな」
兄「国内のどの辺り?」
妹「うーん、お兄ちゃんはどこに行きたいの?」
兄「そうだなー。北海道かな」
妹「北海道かぁ、いいね。北海道にしようよ」
兄「いいのか? 北海道で?」
妹「うん!」
兄「じゃ北海道で! 北海道は広いから2週間位かけてゆっくり回ろうか」
妹「あ、いいね♪」
―――――――
――――
兄「もう遅いし、寝るか」
妹「うん。寝よう」
―――――――
――――
妹「はぁー……」
兄「どうした?」
妹「何だか眠れなくて。色々あったせいかな」
兄「そうか。じゃ子守唄歌ってあげるよ」
妹「お兄ちゃんが?」
兄「ああ。シューベルトの子守唄の替え歌なんだけどね。余計に目が覚めちゃったらごめんね」
妹「笑っちゃうような替え歌はやめてよ」
兄「そんなんじゃないよ」
妹「じゃ歌って」
兄「うん」
兄「」ゴホッ
兄「♪ね-むれ-…、ね-むれ-…、あ-に-の-む-ね-に-…」
妹「」ウルッ
兄「♪ね-むれ-…、ね-むれ-…、あ-に-の-て-に-…」
妹「」ゴソゴソ ピトッ
兄「♪こ-こ-ろ-よ-き--…、う-た-ご-え-に-…」ポン……ポン……
妹「……」
兄「♪む-す-ば-ず-や-…、た-の-し-ゆ-め-…」ポン……ポン……
妹「……」
兄「どうだ? 眠れそうか?」
妹「Zzz……」
兄「もう寝ちゃったのか」
兄「おやすみ。僕のお嫁さん」ナデナデ
チュッ
時は流れて――――――――――
―――墓地、両親の墓前
僧侶「それでは、私はこれで失礼いたします」ペコ
兄夫「あ、どうもありがとうございました」ペコ
妹妻、伯父、伯母「ありがとうございました」ペコ
兄夫「さてっと、僕たちも行きましょうか」
伯父「ああ、行こう」
兄夫「父さん母さん、また来るね」
妹妻「また来るわね」
テクテク
テクテク
テクテク
テクテク
伯父「兄夫君、次の法事は何回忌になるんだ?」
伯母「やぁね、目上のあんたがそう言う事知らないなんて」
伯父「すまん、冠婚葬祭の事は本当に疎くてな」
兄夫「今回が十七回忌なんで、次は二十三回忌ですね」
伯父「分かった。勉強になったよ」
伯父「ところで、兄夫君と妹妻ちゃんの実家だった家に住む俺の息子夫婦が、家の中をリフォームしたいって言ってるんだけど、構わないか?」
兄夫「全然構いませんよ。な?」チラ
妹妻「そうですよ。もうとっくに私達のものではないですし、息子夫婦さん達の好きにしてもってください」
伯父「2人の思い出が詰まった家だから、一応了解を得ておこうと思ってね」
兄夫「そんな。気を使ってもらわなくてもいいですよ」
伯母「それにしても妹妻ちゃん、あい変わらす綺麗ねぇ。ため息が出ちゃうわよ」
妹妻「そんなことないですよ」
伯父「恋する女性は本当に綺麗だよ。な? 兄夫君」
妹妻「ふふっ♪」ポッ
兄夫「うーん、どうなんでしょうねぇ」ポッ
伯父「2人共照れるなよ」ニヤニヤ
―――――――
――――
兄夫「伯父さん、伯母さん、僕たちはここで失礼します」
伯父「あ、駅まで俺の車で送ってくよ」
兄夫「いえ、伯父さんの家とは逆方向だし、陽気がいいから歩いていきますよ」
伯父「そうか。2人共元気でな」
兄夫「伯父さん達もどうかお元気で」
伯母「近くに来た時はいつでも私達の家に寄ってね」
妹妻「はい、是非」
兄夫「失礼します」
妹妻「伯母さん、またね」
伯母「またね妹妻ちゃん」
伯父「腕なんか組んだりして、夫婦そのものだな」
伯母「2人共幸せそうね」
伯父「2人が男女の仲になってるって聞いた時はどうなるのかって心配したけど、杞憂だったな」
伯母「だから言ったでしょう? あの2人なら心配無いって」
伯父「ああ。心配して損したよ。さ、行こう」
ーーー駅へ向かう道
テクテク
テクテク
妹妻「ねぇあなた、明日は文鳥ちゃんのお墓参りに行こうよ」
兄夫「ああ、ペット霊園にね」
妹妻「文鳥ちゃんも長生きしたわよね」
兄夫「そうだよな、文鳥の寿命は7,8年って言われているのに10年生きたからね」
兄夫「その喪服似合うね」
妹妻「ジャケット脱ぐとノースリーブになるのよ」ヌギヌギ
兄夫「へぇ、……なんだかコスプレの喪服みたいになっちゃったな」
妹妻「えへへ♪、駅までこのままで行こうっと」ギュ
―――墓地の最寄駅
マモナク、3バンセンニ、フツウ、タカサキユキガ、マイリマス、アブナイデスカラ……
兄夫「えーっと、あわせて88歳だから……、5つ違いだと……」ブツブツ
妹妻「あなた、なにブツブツ言ってるの?」
兄夫「ん? このポスターに書いてある切符が何年後に使えるのか計算していたんだ」サッ
(フルムーン夫婦グリーンパス)
(ふたりあわせて88歳以上から、JR全線グリーン車(新幹線「のぞみ号」など、一部の列車・設備を除きます)がご利用になれます)
妹妻「へぇ、こんな切符があるのね」マジマジ
兄夫「夫婦を証明する書類は要らないみたいだから、僕たちでも使えるよ」
妹妻「そうなんだ。何年後に使えるの?」
兄夫「6年後だよ」
妹妻「6年後かぁ。まだ先ね。でも、この切符使って新婚旅行で行った北海道とか行こうよ♪」
兄夫「そうだな。またぐるっと回ってみるか」
妹妻「ちょっとそこのコンビニに買い物に行ってくるわね」
兄夫「ああ、いってらっしゃい」
妹妻「買ってくるものある?」
兄夫「何か飲み物買ってきてよ」
妹妻「緑茶でいい?」
兄夫「いいよ」
妹妻「了解」
―――――――
――――
妹妻「はい、買ってきたわよ」サッ
兄夫「お、ありがとう」ブチッ、クルクル…
妹妻「それでね、コンビニから出てきたら、男の人に声掛けられちゃった……」ブチッ、クルクル…
兄夫「また?」
妹妻「『この先のファミレスで、一緒にお茶でもどうですか?』って」
兄夫「喪服着てる中年の女性が1人で歩いていたから、未亡人と勘違いしたのかな」
妹妻「たぶんね」
妹妻「『駅に主人を待たせてますので』って言ったら残念そうな顔をして行っちゃったけど」
兄夫「まぁ妹妻がそれだけ魅力的だってことだね」
妹妻「そうかな♪」
妹妻「……」
妹妻(昔はよく頭なでてくれたのにな……)
妹妻「ちょっと早いけど改札入っちゃおうよ」
兄夫「うん、いいよ」
ピピッ
ピピッ
―――プラットホーム
兄夫「こんなに後ろへ行かなくてもいいんじゃないか?」テクテク
妹妻「まぁいいから」テクテク
妹妻(ここは死角だから誰も見てないわよね?)キョロキョロ
妹妻「ねぇあなた」ピタッ
兄夫「ん?」ピタッ
妹妻「昔みたいに私の頭なでてよ」
兄夫「は!?」
妹妻「その……、頭ナデナデしてって言ったの」
兄夫「ナデナデって、もうそんな歳じゃないだろうに……」
妹妻「い、いいから早く。周りに誰もいないから」
兄夫「ええ……っと、ちょっ、ちょっと待ってね」
兄夫(久しぶりでなんか緊張するな)ゴホッ
兄夫「妹妻、綺麗だよ」ナデナデ
妹妻「えへへへ♪」ニコニコ
兄夫(はぁー、いい歳こいたオッサンとオバサンが何をやっているのだろうか……)
妹妻「今夜も寝かさないからね♪」ギュッ、ピトッ
兄夫「わっ! こんな所で抱きつくなよ」
妹妻「いいじゃないの。周りに誰もいないんだから」
兄夫「よくないよ。遠くに何人かいるよ」
妹妻「コスチュームは何着ようか?」スッ
兄夫「いやー、今日は寝かせてくれないかなー」
妹妻「今日もセーラー服にする? それとも久しぶりにミニのメイド服とか?」
兄夫「聞いちゃいねぇよ」
兄夫「もう半年以上毎日だよ? 今日位は寝かせt」
妹妻「だめ!」ギロッ
兄夫「……じゃあコスはその時の気分次第で」
兄夫(セックスレスの夫婦が羨ましく感じる今日この頃)
―――帰りの電車内
ツギハ、シナガワデス、チュウオウシンカンセン、トウカイドウシンカンセン、ヨコスカセン……
兄夫(もうすぐか。着く前にトイレに行こうと思っていたのに)
兄夫(頭を預けられた上にガッツリ腕を組まれちゃあなぁ……)
兄夫(車掌さんや他の乗客の視線が痛かったな)
妹妻「Zzz……」ガシッ
兄夫(駅のトイレに行くか)
兄夫「……」
兄夫(そろそろ起こさないとな)
兄夫「妹妻、そろそろ降りる駅だよ」ユサユサ
妹妻「ん、んん……、あ……、ふぁ~あ……。あなた、お目覚めのキス」
兄夫「何言ってる。電車の中だぞここは」
妹妻「いいじゃないの」
兄夫「だめだよ。2、3人だけど他のお客さんも乗ってるし」
妹妻「……ケチ」
兄夫「じゃあさ、言葉で」
妹妻「?」
兄夫「いつも傍に居てくれてありがとうな」ニコ
妹妻「いいのよ、私が傍にいたくて居るんだから。これからもずっと一緒よ」
兄夫「もちろんさ」
兄夫「」ニコッ ナデナデ
妹妻「えへへへ♪」ニコニコ
妹妻「そうだ、コスチュームだけどさ、この喪服でどう?」
兄夫「これ?」
妹妻「どお?」
兄夫「うん、まぁいいけど」
妹妻「あ、じゃあさ、喪服着る二度手間も省けるから家に着いたらすぐシようよ。」
妹妻「家に着いたすぐ後はこの喪服で、夜はあなたが選んだコスチュームでね♪」
兄夫「……どうしてこうなった?」
―――――完―――――
116 : 以下、名... - 2013/11/16(土) 05:46:37.74 W38mzbQx0 165/165終わりです。
長々と、そしてこんな時間までお付き合いくださいましてありがとうございました