天国に一番近いほむら 鹿目まどか編
【結界最深部―薔薇園の魔女―】
マミのリボンに絡め取られた魔女。
空中で巨大な銃を構えるマミ。
マミ「ティロ・フィナーレ!」
撃ち出されたエネルギー弾によって消滅する魔女。
着地したマミの手にはティーカップ。
一口すすって、まどかとさやかに笑顔を向ける。
さやか「勝ったの?」
まどか「すごい……」
【結界―お菓子の魔女―】
マミに手を引かれ、結界の奥へ向かうまどか。
まどか「あ……あの、マミさん?」
マミ「なあに?」
まどか「願い事、私なりにいろいろと考えてみたんですけど」
マミ「決まりそうなの?」
まどか「はい。……でも、あの」
まどか「もしかしたら、マミさんには考え方が甘いって怒られそうで」
マミ「どんな夢を叶えるつもり?」
まどか「私って、昔から得意な学科とか、人に自慢できる才能とか、何もなくて」
まどか「きっと、誰の役にも立てないまま、迷惑ばかりかけていくのかなって」
まどか「それが嫌で、しょうがなかったんです」
マミが扉の一枚を押し開ける。
まどか「でもマミさんと会って、誰かを助けるために戦ってるの、見せてもらって」
まどか「同じことが、私にもできるかもしれないって言われて」
まどか「何よりもうれしかったのはそのことで」
まどか「だから私、魔法少女になれたら、それで願い事は叶っちゃうんです」
まどか「こんな自分でも、誰かの役に立てるんだって」
まどか「胸を張って生きていけたら。それが一番の夢だから」
【工場】
マミが結界のシンボルを浮かび上がらせる。
これまでにない大きさのシンボルに驚くまどかとさやか。
さやか「これって、大物発見って感じっすか?」
マミ「シンボルの大きさは敵の強さとは関係ないわ。大型の可能性は高いけど」
マミ「ただ、たくさんの人間を取り込みたいという意思の表れでもあるから」
さやか「じゃあ、やる気満々ってことですか?」
マミ「そうね。あなたたちも気を引き締めて」
マミ「魔女なんかにこの街で好き勝手させない。私の意志も、シンボルにしたら負けていないわ」
不敵な笑みを浮かべるマミ。
マミ「それじゃ、今日も見滝原の平和のために、行きましょうか」
まどか「待ってください」
さやか「まどか」
マミ「どうしたの?」
まどか「あの……ほむらちゃんにも手伝ってもらいませんか?」
さやか「あのねえ。大体今からどうやって転校生を捜すのさ」
さやか「そんなことをしている間に、犠牲者が出るかもしれないよ?」
まどか「携帯電話の番号、教えてもらったんです」
さやか「まどか、いつの間に」
まどか「もし近くにいるなら、二人で一緒に戦った方がいいと思うんです」
マミがまどかを見る。
まどか「私、一緒に戦うって約束したのにまだ願い事見つけられてなくて」
まどか「あのとき、マミさんの気持ちを聞いたのに、今回もマミさんが一人で戦うなんて」
まどか「私……」
マミがぽん、とまどかの肩を叩く。
マミ「ごめんなさい。私、あなたを縛りつけちゃったみたいね」
マミ「キュゥべえが鹿目さんのことを素質があるって言ってたけど、その意味がわかったかもしれない」
マミ「きっと、あなたの優しい心が、魔女が呪いを吐き出すのとは逆に救いを分け与えているのかもしれないわ」
まどか「そんな……。だって私、誰も」
マミ「いろいろなところで、あなたの気づかないうちに誰かを助けてる」
マミ「その救われた人たちの想いが、あなたの素質になっているのかもね」
まどか「マミさん……」
マミ「魔法少女の私。魔女と戦う私。それを知っていて、なおついてきてくれる」
マミ「契約をしていなくても、あなたたちは十分一緒に戦ってくれているわ」
マミ「だから、願い事はじっくり考えてくれればいい」
マミ「それと、暁美さんに連絡をとってもらえるかしら?」
まどか「……はい!」
【歩道橋】
キュゥべえ「まどか」
まどか「キュゥべえ。よその町に行ったって聞いたけど?」
キュゥべえ「ボクの契約した魔法少女が一人、ここへ流れてきたのがわかってね」
キュゥべえ「気になって様子を見に来たんだ」
キュゥべえ「その子はマミとは違う。あくまでグリーフシードが目当てだから」
キュゥべえ「マミやもう一人の彼女と遭遇するとよくないことが起きるかもしれない」
まどか「そんな……。魔法少女同士なのに」
キュゥべえ「一応、警告しておくよ」
歩道橋の風景が歪み、結界が発生する。
まどか「や……やだ、そんな!」
【結界―落書きの魔女・使い魔―】
ルーズリーフのような模様の壁を、奇声を上げた使い魔が絵に描いたトラックで走る。
別の使い魔がやはり奇声を上げて接近、衝突する。
トラックが爆発し、使い魔たちが笑う。
何事もなかったかのようにトラックが出現し、それを走らせる使い魔たち。
キュゥべえ「これは、魔女じゃなくて使い魔の結界だ」
キュゥべえ「多分、あの二体を倒せば結界は消えると思う」
まどか「でも、私」
キュゥべえ「運がよければマミあたりが気づいて駆けつけてくれるかもしれない」
キュゥべえ「それまではどこかに身を隠そう」
絵に描いたドアを開き、奥へ進むまどかとキュゥべえ。
キュゥべえ「大丈夫だよ、まどか」
キュゥべえ「いざとなれば、君はボクと契約して魔法少女になればいい」
キュゥべえ「万が一に備えて、願い事を考えてもらえないかな?」
まどか「……うん」
さらに進むまどかとキュゥべえ。
絵に描いた魔法少女を見つける。
絵のできはまどかと大差ない。
まどか「これって魔法少女?」
キュゥべえ「かもしれない。魔法少女と魔女は、コインの裏表のようなものだ」
キュゥべえ「この使い魔と何か関係のあった魔法少女かもしれないね」
まどか「魔法少女って、たくさんいるの?」
まどか「さっきも、もう一人が来るって」
キュゥべえ「そりゃそうさ。人の心に恨みや妬みがある以上魔女が巣食うことは必然だ」
キュゥべえ「同じ数だけ、それを狩る魔法少女は必要だよ」
まどか「そうやって、たくさんの魔法少女が戦って、人々や町を守ってきたんだね」
まどか「それに比べて、私はただ守られるだけ」
まどか「マミさんに会うまでは、自分が守られていることにさえ気づかなかったんだもの」
まどか「今もこうやって、マミさんやほむらちゃんが来てくれることを待っている」
まどか「誰かにばっかり戦わせて、自分で戦わない私って、卑怯なのかな」
キュゥべえ「魔女と戦うのは魔法少女の使命だよ」
キュゥべえ「魔法少女でもない君が気にかけることはないんじゃないかな」
まどか「……ありがとう。私たちを守ってくれて」
まどかが魔法少女の絵に近づき、握手するような形で手に触れる。
すると、魔法少女の絵から飛び出してきたかのように、マミが現れる。
まどか「マミさん!」
マミ「無事だったみたいね。よかった」
マミ「美樹さんから連絡を受けたの。暁美さんがあなたに電話がつながらなかったみたいで」
マミ「もしかすると結界の中に閉じ込められているんじゃないかって」
マミ「たかだか使い魔の結界。さっさと終わらせましょう」
まどかたちが通ってきた道を辿って使い魔のいた空間に戻る。
使い魔たちは飽きもせずに衝突を楽しんでいる。
まどか「まだぶつけ合いをしてる」
キュゥべえ「真下が交通量の多い道路だからだろうね」
マミ「成長したら、この付近では事故が多発することになったかもしれないわね」
マミが持ち上げたスカートから二丁のマスケット銃が出現する。
撃った弾丸が使い魔に狙い違わず命中する。
それに伴って元の歩道橋が姿を取り戻す。
まどか「マミさんのおかげで助かりました」
マミ「フフッ、どういたしまして」
まどかの携帯電話がメールの着信を報せる。
“連絡がつかないので捜索する。無事なら電話して”という、無味乾燥な文面。
マミ「そうね。今頃暁美さんも必死で捜してるはずよ。安心させてあげて」
まどか「はい」
【建設中のビル】
ほむらの手をとるマミ。
マミ「正直なところ、心の整理がつかない」
マミ「けれど、こうして手を差し伸べてくれる暁美さんを信じる」
まどか「マミさん……」
杏子「お前ら、何だってんだよ」
杏子が槍で地面を突く。
杏子「魔女だぞ。魔女になっちまうんだぞ。いいのかよ」
マミ「あなたも混ざりたいんでしょ?」
杏子「な、なに言ってんだ」
マミ「はいはい。独りぼっちは、さみしいもんね」
強引に杏子の手をとって握手に重ねさせる。
自分の手を見るまどか。
思い直し、手を引っ込める。
【まどかの部屋】
ベッドで横になっているまどか。
まどか「ほむらちゃん……マミさん……それに杏子ちゃん」
まどか「みんな……死ぬかもしれないのに。魔女になるかもしれないのに」
まどか「それなのに……」
まどか「私……」
キュゥべえ「じゃあ君も契約して魔法少女になるかい、まどか?」
どこからかキュゥべえが現れて椅子の上にちょこんと座る。
まどか「魔法少女は力を使い果たしたら魔女になるって本当なの?」
キュゥべえ「ソウルジェムの穢れが浄化不能なレベルに達したとき、それはグリーフシードに転化する」
キュゥべえ「その結果魔女が生まれることは事実だね」
まどか「ほむらちゃんたちも……いずれ魔女になるの?」
キュゥべえ「さあ、どうだろう。そうなる前に生命を落とす魔法少女も少なくない」
キュゥべえ「僕としては、魔女になってくれることが望ましいのだけど」
まどか「じゃあ、あなたはみんなを魔女にするために、魔法少女に?」
キュゥべえ「勘違いしないで欲しいんだが」
キュゥべえ「僕らはなにも、人類に対して悪意を持っているわけじゃない」
キュゥべえ「すべては、この宇宙の寿命を延ばすためなんだ」
キュゥべえ「君たちの魂は、エントロピーを覆すエネルギー源たりうるんだよ」
キュゥべえ「とりわけ最も効率がいいのは、第二次性徴期の少女の、希望と絶望の相転移だ」
キュゥべえ「ソウルジェムになった君たちの魂は、燃え尽きてグリーフシードへと変わるその瞬間に」
キュゥべえ「膨大なエネルギーを発生させる」
キュゥべえ「それを回収するのが、僕たち『インキュベーター』の役割だ」
まどか「私たち、消耗品なの?あなたたちのために、死ねっていうの?」
キュゥべえ「僕たちはあくまで君たちの合意を前提に契約しているんだよ?」
キュゥべえ「それだけでも充分に良心的なはずなんだが」
まどか「みんな騙されてただけじゃない!」
キュゥべえ「『騙す』という行為自体、僕たちには理解できない」
キュゥべえ「認識の相違から生じた判断ミスを後悔するとき、なぜか人間は他者を憎悪するんだよね」
まどか「あなたの言ってること、ついていけない。全然納得できない」
キュゥべえ「僕は一つだけ、君の願いを叶えることができる」
キュゥべえ「君はその代価として、ソウルジェムを使い果たしたときに生じるエネルギーを僕にくれればいい」
キュゥべえ「例えば、この社会には臓器提供というものがあるだろう?」
キュゥべえ「重要な臓器を他人に譲り渡すとしてもそれは死後のことで、そのときには臓器は何の役にも立たない」
キュゥべえ「善意の対価がゼロのそれに比べ、願い事を叶える僕の方が有益であるとは考えられないかな?」
キュゥべえ「まして、君の善意で延命されるのはほかならぬこの宇宙だ」
何も答えないまどか。
キュゥべえ「どうやら出直してきた方がよさそうだね」
キュゥべえ「でも覚えておいてほしい。僕はいつでも、君の願いを叶えてあげられる」
キュゥべえ「君のその莫大な素質なら、叶えられない願いなんて存在しないだろう」
キュゥべえ「待ってるからね」
キュゥべえが去る。
うずくまるまどか。
まどか「あんまりだよ……」
【ほむらのアパート】
ほむら「この命題のことだけど」
天童「一人でもクリアできてよかったじゃねえか」
ほむら「読んでみて」
手紙を渡すほむら。
天童「2日後の21:00までに、佐倉杏子のソウルジェムを手に入れなければ即死亡」
天童「杏子ちゃんは八重歯の子だろ?」
ほむら「あなた、ソウルジェムが何か知っているの?」
天童「ソウルジェム?ジェムは宝石、っつーことは」
天童「これはソウルミュージックの宝石箱やー!」
天童「アレだ、CDか何かじゃねえか?」
ほむら「やっぱり知らなかったのね」
ほむら「いなくなった理由が福引で温泉旅行とわかったときからそうじゃないかと思ってたけど」
天童「何だよ、天使だって知らないことの一つ二つあらあ」
ほむら「ソウルジェムは、私たち魔法少女の魂」
自分のソウルジェムを出すほむら。
天童「また魔法か。宗旨的にはあまり認めたくないけどよ」
ほむら「あなたの神がソウルジェムの存在を認めているからこんな命題が届くんでしょ?」
天童「じゃあ、ありの方向で」
ほむら「……これを奪われるということは、死と同義。一歩間違えば佐倉杏子は死んでいた」
ほむら「そんなことを命題の形で命じるあなたの神は何者かしら」
天童「結果的に杏子ちゃんは無事だしいいじゃねえか」
天童「神様の考えてることなんて、俺にわかるかよ」
天童「ま、いろいろあったが命題も残すところあと一つだ」
天童「結構うまくやれてるじゃねえか」
ほむら「そうね。私にとっても予想外」
ほむら「今回、私自身でまどかの契約を阻止したことは一度もない」
ほむら「それなのに、まどかは契約していない」
ほむら「あとは、ワルプルギスの夜さえ倒せれば、そのときこそ約束が果たせる」
ほむら「そういう意味では、あなたに振り回されたこの時間も悪くは……なかった」
天童「そういうときは、素直に『ありがとう』と言えばいいんじゃないのかな」
天使らしい、品のある風を装って言う天童。
ほむら「……まだすべてが終わったわけじゃないから」
不機嫌そうに答えるほむら。
【翌朝/学校】
さやかと仁美に温泉饅頭を配る天童。
さやか「ホントにお土産買ってきてくれたんだ!」
仁美「私にまで。ありがたく頂きますわ」
天童「これからも、ほむらのこと頼みますばい」
担任の早乙女が教室に入ってくる。
早乙女「まあ。あなた、無断で教室に……椎名さん?」
慌てて手で顔を隠す天童。
早乙女「椎名さんでしょ?先月――」
天童「いえ、違いますよ、あたしゃ」
声色を作ってごまかす天童。
そそくさと退出する。
天童の挙動を気にするほむら。
【学校・屋上】
マミ「――そういうことだから、もう魔法少女体験コースはおしまい」
さやか「で、でもそれでいいんですか?マミさんはもう――」
マミ「私は、契約していなければ家族と一緒に死んでいたはずだった」
マミ「だから、契約したことそのものに後悔はないわ」
マミ「それに、魔法少女は私だけじゃないから。ね?」
ほむらにウインクを送るマミ。
マミ「それにもう一人、私が昔面倒を見ていた子もいる」
マミ「だから、これ以上魔法少女を増やす必要もなくなったわけ」
マミ「いい?間違っても契約なんてしちゃダメよ」
マミ「あなたたちにも、失いたくない何かはあるでしょ?」
さやか「そっか。この前暁美さんが言ってたのは、こういうことだったんだ」
さやか「でもあたしは変わらないよ。マミさんはマミさんだし、暁美さんは暁美さん」
さやか「魔法少女は人間じゃないなんていう奴がいたら、あたしが言い返してやる」
さやか「見知らぬ誰かのために体を張って戦うことがあんたたちにできるのか、って」
まどか「さやかちゃん……」
マミ「ありがとう。もちろん、お茶会はこれからも受け付けてるから、いつでもいらっしゃい」
さやか「もちろんですよ!」
まどか「私も行きます」
微笑むマミ。
ほむら「待って」
立ち去ろうとするマミを、ほむらが引き止める。
ほむら「今夜、佐倉杏子と一緒にうちに来て」
マミ「あら。魔法少女のお泊り会?」
ほむら「今後現れる、魔女の話をしたいの」
マミ「そうね。せっかく見えない武器の正体も見せてもらったんだし」
マミ「やっぱり連携技の一つ二つ考えておきたいものね」
マミ「わかったわ」
【夜/ほむらのアパート】
部屋をワルプルギスの夜についての資料が埋め尽くしている。
マミ「結界に身を隠す必要のない、自然災害レベルの魔女、ねえ……」
杏子「噂で耳にしたことはあったけど、確かに一人で倒せるような魔女じゃねえな」
ほむら「何日かのうちに、ワルプルギスの夜は見滝原に現れる」
ほむら「倒す、という以前に、私たちで食い止めなければ見滝原は一時間程度で壊滅することになる」
マミ「今更暁美さんを疑うわけではないけれど、これだけの情報、どうやって揃えたの?」
ほむら「実際にワルプルギスの夜と戦ったことのある魔法少女から。これ以上は言わせないで」
杏子「そいつは今どうしてるんだ?」
マミ「死んだか、あるいは魔女になってしまったか。……そういうことね」
ほむら「私は、たとえ一人でもワルプルギスの夜と戦う」
ほむら「もし、あなたたちにそのつもりがないのなら。そのときは――見滝原からずっと遠くへ逃げて」
マミ「私はあまり、縄張り意識を持ち出すことは好きじゃないのだけど」
マミ「この町は私の縄張りよ。現れる魔女を倒す義務は、まず私にある」
杏子「あたしも、逃げてなんて言われてはいそうですか、って柄じゃないしな」
カップ麺をすする杏子。
杏子「ま、いいんじゃねえの?この資料だと、ワルプルギスの夜は時間を止めるような奴じゃないしな」
杏子「そんなずりー能力じゃなきゃ、あたしが負けるもんか」
マミ「まだ根に持ってるの?むしろ本気で敵に回さずにすんだことに感謝しなさい」
杏子「ちぇっ。感謝って、マゾかよ」
ほむら「高く評価してくれているようだけど、私の能力はワルプルギスの夜にほとんど通用しない」
ほむら「魔法の武器を持つあなたたちの方が、より効果的な攻撃ができるはずよ」
マミ「だとすると、暁美さんの役割は支援で、私たちが攻撃ね」
マミ「佐倉さんをワルプルギスの夜の攻撃範囲外から時間を止めて移動させて、一撃ののち離脱」
マミ「手堅く勝負するならそれが基本戦術になるかしら」
杏子「ま、リボンで人間パチンコにされて突っ込むよりは安全だな」
マミ「あら。突進力が上乗せできて効果的だったでしょ?」
杏子「撃ち落とされたときのダメージが倍増だったけどな」
マミ「そのときはちゃんと治療してあげたじゃない」
杏子「そーいう問題じゃねえっつの」
カップ麺をかき込む杏子。
マミ「あとは幻惑の魔法と私たちの組み合わせ、という手があるわね。標的を分散させることで……」
杏子「もう幻惑は使えねえ。どうしてもダメなんだ。まやかしってとこに悪いイメージが絡みついて」
杏子「家族の話なら、あたしなりにもう割り切ったつもりなんだけどな」
マミ「そう……」
杏子「昔のやり方でやるなら、マミがリボンで動きを封じてあたしが斬るってやつが一番性に合ってたな」
マミ「今じゃ私が一人で戦うときのパターンだけどね」
杏子「こんなことなら、槍以外に一工夫考えときゃよかったかもな」
マミ「車のドアを開けるような泥棒魔法以外に?」
杏子「ちっ。気づいてたのか」
マミ「昨夜はおかげで素早く運転手を助け出せたわ」
マミ「魔法は他人のために使うものじゃない、なんて言って飛び出したのにね」
杏子「つい、いつもの癖が出ただけさ」
マミ「フフ、そういうことにしておきましょうか。ところで暁美さん――」
マミ「ワルプルギスの夜と戦うのは『今度で何回目』?」
ほむら「質問の意味がわからないわ」
マミ「あなたが見滝原に来たのは、せいぜい一ヶ月前」
マミ「自分の攻撃が通用しない相手とわかっていながら、それでも戦うと言う」
マミ「長年暮らしてきた町でもないのに、普通そこまでするかしら」
マミ「それだけじゃない。昨日の魔女。テレビに映し出されていたのはあなたの記憶でしょう?」
マミ「魔法少女が魔女になる。それを知って、私の中で辻褄が合った」
マミ「あなたが知っている、ワルプルギスの夜と戦った魔法少女というのは私たち」
マミ「それに美樹さんや鹿目さん。あなたは、私たちが敗れたから時間を戻してやり直そうとしている」
マミ「どう、違う?」
ほむら「正解よ。そこまで見抜かれたのはさすがに初めてだけど」
髪をかき上げるほむら。
杏子「って、じゃああたしたちに勝ち目はないのかよ!」
マミ「勝率を上げる方法ならあるわ」
ほむら「それ以上は言わないで」
マミ「これまで、私たちは衝突を繰り返すことでお互いを理解してきた」
マミ「だから。だからあえて言うわ。今の人数でワルプルギスの夜を倒せないのなら、魔法少女を増やす」
マミ「特に鹿目さんの素質は、かなり戦力として期待できるはずよ」
杏子「あいつが……?」
マミ「でもこれまで、暁美さんは彼女が魔法少女になることを望んではいなかった」
マミ「昨日も契約の代償をあえて話すことで釘を刺してたしね」
マミ「ワルプルギスの夜は倒したい。でも魔法少女は増やしたくない」
マミ「矛盾する行動の理由を説明してもらえるかしら」
ほむら「鹿目まどかの素質は、戦力どころか単独でワルプルギスの夜を撃破できる」
ほむら「その力の代償に、ワルプルギスの夜を上回る最強の魔女に生まれ変わる」
ほむら「もたらされる災いが見滝原だけでなく、人類そのものさえも危うくするほど」
ほむら「つまり、鹿目まどかはワルプルギスの夜を倒すためだけに魔法少女になり――」
ほむら「ワルプルギスの夜を倒したら、速やかにソウルジェムを砕かれなければならない」
ほむら「それは、言ってみれば生贄に差し出すのと同じこと」
ほむら「それだけは、私が許さない」
杏子「畜生、ソウルジェムが濁ると魔女になるってのは、やっぱりろくでもねえな」
マミ「それが、見滝原のすべての人々の生命と引き換えでも?」
ほむら「私が見滝原に来てからせいぜい一ヶ月、とあなたは言ったわ」
ほむら「それに、冷たい言い方をすれば、ワルプルギスの夜が勝てば私は再びやり直す」
マミ「……そう。あなたが昨日時間を戻す魔法のことまで打ち明けなかった理由がやっとわかったわ」
マミ「戦力が不十分と知りながらそれを補おうともしない。そんなことができるのも、リセットできるから」
マミ「私や佐倉さんにとって、この戦いは一度きり。でもあなたは何度かの戦いの一回にすぎない」
マミ「最初から、賭けているものの重さが違うのよ」
マミ「逆に言えば、何度やり直しても望んだ結末を得られなかったのは」
マミ「その程度の覚悟しか持っていなかったからじゃないかしら?」
杏子「おい、いくらなんでも言いすぎだろ」
ほむら「……これ以上、建設的な話は期待できないわね」
ほむら「今回は分かり合えたと思ったけど、あなたの言うとおり」
ほむら「私は、ワルプルギスの夜を倒すその日まで、何度でもこの一ヶ月を繰り返す」
ほむら「たとえ戦いの日にあなたたちが現れなかったとしても、私は恨みに思わない」
ほむら「だから、鹿目まどかには決して手は出さないで」
ほむら「さようなら。次に会うときは、私を知らないあなたたち」
マミ「見損なわないでほしいわね。私たちの方こそ、あなたと違って逃げも隠れもしない」
席を立つマミ。
杏子もそれに続く。
マミ「かりそめの来訪者にすぎないあなたとは違う。私が、見滝原を守ってみせる」
マミ「その後は、過去でも未来でも好きなところに行くといいわ」
マミが玄関のドアを開けると、帰ってきた天童と鉢合わせになる。
天童「あっ、マミちゃん」
マミ「こんばんわ。お邪魔しました」
天童「またいつでも来るとよかよ。ほむらばよろしく頼みます」
答えず、笑みを浮かべただけで去るマミ。
会釈だけして、ついていく杏子。
天童「お友達を呼んでおしゃべりを楽しむ。これぞ中学生の醍醐味」
天童「って、何だこりゃ」
ワルプルギスの夜についての資料に気づく天童。
ほむら「もうすぐ現れる魔女よ」
天童「くっだらねえなあ。オメーはよ、中学生らしく、気になる男子の話題で盛り上がれよ」
天童「青春を色気の一つもなしで過ごしたら、それはただの『春』。つまんねえだろうがよ」
ほむら「どうせあと数日の話よ。放っておいて」
天童「出た。『どうせ』」
天童「前に担当した奴はよ、それこそ口癖のように『どうせ』『どうせ』言うネガティブ人間だった」
天童「それが、俺のありがたーい指導のおかげで命題をクリアしてそれなりに格好よくなったもんだ」
天童「もちろん、魔法なんて使えないし、妙ちくりんな敵とも戦っちゃいねえ」
天童「それでも、今やらなくちゃならないことに向き合ってる」
天童「お前もよ、ちょっとは『今を生きる』ってことの大事さを考えてみりゃどうだ?」
ほむら「お説教なら、今は聞きたい気分じゃないわ」
天童「ま、命題も残り一つ。不安なのはわかるけどよ」
天童「お前の命が数日で終わるか終わらないかは、お前次第」
天童「本気で、生きてみろよ」
ほむら「……ところで今までどこに行ってたの?」
天童「病院」
ほむら「天使なのに、どこか悪いの?」
天童「偶然、さやかちゃんに会ったもんだから、例のヴァイオリンの彼を見舞いに行ってきたんだよ」
ほむら「そういえば、まだ退院していないわね」
天童「手はともかく、足は松葉杖でなんとか歩ける程度には回復してたな」
天童「左手が使えないから、右手を松葉杖で埋めてしまうとかなり不便だけどよ」
天童「退院したら、もう一度ヴァイオリンを聴かせてくれって伝言だ」
ほむら「あれからヴァイオリンなんて触れてもいなかった」
天童「なら、気分転換に弾いてみろよ」
ほむら「そうね。一度頭を切り替えた方がいい」
ヴァイオリンを取り出し、アメイジング・グレイスを弾くほむら。
弾き終える頃に、新聞受けに手紙が投函される。
天童「いよいよ、ラストの命題だ」
ヴァイオリンを置き、手紙を取ってくるほむら。
手紙を開き、文面に目を通す。
横から覗き込む天童。
――明日の14:00までに、
鹿目まどかが魔法少女の契約をしなければ暁美ほむらが即死亡
その場にしゃがみ込むほむら。
ほむら「どうして。どうしてなの」
ほむら「どうして、巴マミも、神様も、まどかのことをそっとしておいてくれないの?」
ほむら「私は、まどかを護るためだけにすべてを賭けているのに」
天童「ほむら……」
ほむら「こんな命題に従うぐらいなら、いっそ死んでしまう方がまだましよ!」
命題の手紙を破り捨てるほむら。
天童「おいっ!」
ほむら「明日。……16日?」
ほむら「気づかなかった。もうそんな時期だったなんて」
何かにとりつかれたように、ふらっと家を飛び出すほむら。
天童「ほむら!」
【深夜/まどかの家】
呼び鈴が鳴る。
玄関に迎えに出る知久。
知久「今日は鍵も出せないぐらい酔ってるのかい?――君は」
ドアを開ける知久。
外にはほむらが立っている。
風になびくほむらの髪。
知久「まどかの、お友達?」
ほむら「こんな時間なのはわかっています」
ほむら「でも、どうしても話さなきゃならないことがあるんです」
ほむら「鹿目さんを、呼んでいただけますか?」
ほむらの思いつめた表情に気づく知久。
知久「こんな時間だよ、本当に」
知久「立ち話もなんだろうから、上がっていきなさい」
【まどかの部屋】
パジャマ姿のまどか。
机の上には携帯電話。「コイノボリくん」ストラップがつけられている。
まどか「どうしたの、急に」
ほむら「明日の朝、見滝原に避難命令が出る」
ほむら「それは、最強の魔女が生み出す嵐」
ほむら「結界さえ必要としない、これまでの魔女とは格の違う相手」
ほむら「だから、私や巴マミ、あなたをさらった佐倉杏子」
ほむら「そのうち何人か、あるいは全員が生命を落とすかもしれない」
まどか「そんな……」
ほむら「魔法少女はやがて魔女になる存在。前に話したわね」
まどか「うん」
ほむら「約束して。私たちが死んだとしても、その蘇生を願いに契約することだけはしない、と」
まどか「ほむらちゃん……」
ほむら「魔女になる前に死ぬとしたら、それはそれで私たちの運命」
ほむら「それが明日、というだけのこと。魔女になるよりはずっと受け容れられる」
まどか「……どうしてかな」
まどか「ほむらちゃん、まるで明日死ぬのがわかってるみたいにしゃべってる」
まどか「それだけ強い魔女なら、魔法少女が一人でも多く必要だよね?」
ほむら「駄目よ」
ほむら「戦いの経験を重ねていないあなたは足手まとい」
ほむら「あなたが加わることで、私たちが有利になることなんてない」
まどか「それ、嘘、だよね」
まどか「保健室へ行くときからずっと。私が契約しないように気をつけてた」
まどか「魔女の正体を知っているから、魔法少女を増やしたくないのが本当の理由だった」
まどか「でも、それだけじゃない」
まどか「ほむらちゃん、私の知らないところで何か背負い込んでる」
まどか「でなきゃ、そんな悲しい顔してないよ」
ほむらに手を差し出すまどか。
まどか「マミさんに手を差し伸べたように、私の手を取ってはくれないの?」
ほむら「……あなたは」
ほむら「何であなたは、いつだって」
ほむら「そうやって自分を犠牲にして」
ドアをノックする音。
知久「ハーブティーを作ってきたよ」
まどか「……うん。ありがとう」
まどかがドアを開ける。
部屋に入ってくる知久。手にはハーブティーを載せた盆。
知久「リラックス作用のあるハーブを使ってるんだ。心が落ち着くといいんだけど」
ほむら「……いただきます」
ハーブティーを口に含むほむら。
知久「風が強くなってきたみたいだ。雨が降るかもしれないし、今夜は泊まっていったらどうかな」
ほむら「いいえ。まだ別の用事が残っているので」
知久「宿題でもあるのかい?明日は土曜日だし、慌てることもないと思うよ」
ほむら「せっかくですが」
知久「そうかい?もし気が変わったら、そのときは遠慮はいらないからね」
ほむら「ありがとうございます」
知久が部屋を出ていく。
ハーブティーを飲み、ほむらに向き直るまどか。
まどか「ほむらちゃん、私」
ほむら「あのお父さんを悲しませることになっても、まどかはそれでいいの?」
ほむら「たとえ魔女にならなくても、あなたは明日死んでしまうかもしれない」
ほむら「それを、あなたのお父さん、お母さんは望んでいるかしら」
まどか「……それは」
ほむら「世の中にはたくさんの魔法少女がいて、私たちを守ってくれている」
ほむら「前に、あなたが言ったこと」
ほむら「だからお願い。魔法少女の私に、あなたたちを守らせて」
まどか「それって、……それって、卑怯だよ」
不意に、ほむらを抱きしめるまどか。
まどか「ほむらちゃんを大切に想う人のことも考えて」
まどか「両親、あの叔父さん。私だって」
まどか「ほむらちゃんを失ったら悲しむ人がいるんだよ」
まどか「それを、自分は死ぬとか、足手まといはいらないなんて言わないでよ!」
まどかの目から涙がこぼれる。
ほむら「やめて。……やめて!」
まどかを振り払うほむら。
ほむら「あなたの心は優しすぎる」
ほむら「あともう一歩で、私はようやく約束を果たせるの」
涙声になるほむら。
まどかに背を向ける。
ほむら「私ね、ある人に憧れて魔法少女になったの」
ほむら「病弱で、何の取り柄もなくて、そんな私の友達になってくれた子」
ほむら「その子は明日現れる魔女と戦って死んじゃって」
ほむら「どうして、私みたいな価値のない子じゃなくて彼女が死んでしまったのか」
ほむら「それが納得できなくて、私は魔法少女の契約をしたの」
ほむら「もう一度、彼女との出会いからやり直したい」
ほむら「今度は、護られる私でなく、彼女を護る私になりたい」
ほむら「願いどおり、私は彼女と出会う前まで時を遡った」
ほむら「けれど、彼女を護ることはできなかった」
ほむら「自分が魔女になることを知った彼女は、私が時を巻き戻す前に言ったの」
ほむら「『キュゥべえに騙される前のバカな私を助けてあげて』」
ほむら「今の私は、その約束を果たすために生きている」
ほむら「何度も、何度も、彼女を失って。それでもいつかは、救うことができるかもしれない」
ほむら「それが私の、たった一つの道しるべ」
ほむら「今、出口のない迷路に迷い込んだと思った私に、ようやく光が差しかけている」
ほむら「ワルプルギスの夜を倒すことができるのなら、たとえ死んでも私は本望なの」
ほむら「その決意を、あなたの優しさで揺るがさないで」
まどか「ほむらちゃん、それってもしかして――」
ほむらが立ち、髪をかき上げる。
ほむら「私たちがいなくなっても、あなたは立ち直れる」
ほむら「これまでのことは、夢だったと思えばいい」
ほむら「さようなら、まどか」
ほむらの姿が消える。
まどか「ほむらちゃん!」
開いた窓の外では雨が降り出している。
【キッチン】
ティーカップを載せた盆を片付けにきたまどか。
キッチンの電気はついていて、知久がスープを作っている。
まどか「それ、ママの?」
知久「ああ。今日は遅いね。お友達は?やっぱり泊まっていくのかな」
まどか「ううん。帰っちゃった」
知久「そう。雨が強くなる前に帰れるといいね」
まどか「うん」
知久「心配かい?何か、大事な話があったんだろう?」
まどか「パパ。もしも、私が急にいなくなっちゃったら、どうする?」
知久「もちろん捜すよ」
まどか「それでも見つからなかったら?」
知久「それでも捜す。大事な娘だからね」
まどか「私、パパやママに守られてるんだね」
知久「守られているから一人前じゃない、とでも言われたのかな?」
まどか「ううん、そうじゃない。けど……」
知久「親が子を守るのは、当然のことさ」
知久「まどかが大人になってからも、パパやママはまどかを守り続けるよ」
まどか「あのね、友達のことなんだけど」
まどか「悪いことが起きてて、自分がいなくなればすべて丸く収まるって」
まどか「それを信じて、いなくなっちゃうかもしれないの」
まどか「私、どうすればいいのかわからなくて」
知久「まどかは、その子の言うことに納得できているのかい?」
まどか「納得はできるの。でも、いなくなってしまうなんて嫌」
知久「そういうのは、納得しているって言わないんだよ」
知久「間違っていると思うのなら、何度でもそう言ってあげればいい」
知久「逆に意固地になるかもしれないけど、それでも繰り返し繰り返し、言い続けるんだ」
知久「大事なのは、決して途中で見放さないこと」
知久「間違ってると言うのなら、地獄の底まで付き合うぐらいの覚悟で言うんだ」
知久「それができないのなら、関わる資格を持っていないということ」
まどか「パパにしては、意外に厳しいこと言うんだ」
知久「人生、何事も経験だからね」
まどか「ありがとう。何だか、道が見えてきた感じ」
知久「じゃあゆっくりお休み。忠告をするのは、結構気力と体力を使うからね」
【港湾地区・鉄塔】
雨の中、魔法少女の姿になっているほむらが爆弾を設置している。
ほむらの頭上でビニール傘が雨を遮る。
天童「お嬢さん、濡れますよ」
見上げるほむら。
ほむら「私に構わないで」
再び設置作業を続けるほむら。
天童「ちぇっ、つまんねえ反応だなあ」
天童「まあ俺も相手がこんなガキんちょじゃいまいち盛り上がれねえけどよ」
天童「で?家出かと思ったら、こんな所で爆弾なんて仕掛けやがって」
天童「敵はどこにいるんだ?え?」
あたりを見回しながらたずねる天童。
ほむら「明日になればわかるわ」
天童「明日までに誰かがうっかり爆発させちまったらどうすんだよ」
天童「この量、下手すりゃ鉄塔が崩れちまうぞ」
ほむら「そう。鉄塔を倒すのが私の狙い」
ほむら「これほどの大きさなら、押し潰せば身動きだって封じることができるかもしれない」
爆弾にダンボールで覆いをかけていくほむら。
天童「今度はゴジラでも上陸するってのか?」
鉄塔を見上げる天童。
ほむら「そんなところよ」
天童「そんなの、自衛隊に任せりゃいいじゃねえか」
天童「魔法が使えるからって、そこまでやる必要があんのか?」
ほむら「私が倒さなきゃいけないの」
ほむら「人々を守りたい、なんて綺麗事なんかじゃない。きわめて個人的な理由」
ほむら「あいつを倒さない限り、私は前に進めない」
ほむら「――いいえ、前に進めなくてもいい」
ほむら「刺し違えてでもいい。私の命と引き換えに護れるのならそれでいい」
天童「まどかちゃんのことか」
うなずくほむら。
ほむら「魔法少女は魔女を狩る宿命。いつかは、魔女に敗れて死ぬかもしれない」
ほむら「悪くすれば、狩るはずの魔女に取り込まれることもある」
ほむら「まどかには、普通の人生を歩んでほしい」
ほむら「だから、命題には従えない」
天童「本当に、それでいいのか?」
天童「そのゴジラみたいなのを倒して死ぬなら満足だろうがよ、単に負けて死んじまったら」
天童「そのとき、まどかちゃんはどうなる?」
ほむら「私には奥の手がある。神様の力だって及ばないとっておきが」
ほむら「それに、思惑どおりに事が運んだら命題の時間までに決着はつけられる」
ほむら「そうすれば、まどかが魔法少女になる理由はなくなる」
ほむら「私には、それだけで十分」
天童「幼なじみで友情が恋心に変わった、ってのならまだわかる」
天童「でも出会って一ヶ月もしない、仲良くなったばかりの友達にそこまで入れ込める理由は何だ?」
ほむら「……まどかにとってはそうかもしれない。でも、私にとっては」
事情を説明するほむら。
天童「……そいつが奥の手ってわけか」
ほむら「信じるも信じないも、あなたの勝手」
天童「別に疑ったりしねえよ」
天童「にしても、随分ヘヴィな人生歩んでんだな、お前」
天童「だとすると、さしずめ俺はドクか?」
天童「映画で車は空を飛べても、現実の車はいつまで経っても空を飛ばねえな」
ほむら「もう一つ仕掛けが残ってるから、これ以上話をしている時間はないわ」
ほむら「わかったら帰って。私は、絶対にまどかを魔法少女にはしない」
天童「いいや帰らねえ」
ぽん、とほむらの肩を叩く天童。
天童「ゴジラをやっつける。命題をどうするかは、それから考えろ」
天童「仕掛けってやつは俺も手伝ってやるよ」
ほむら「天童……」
【朝/見滝原市】
広報車が避難指示の発令を報せている。
空全体を覆う曇り空がときおり雷で光る。
【10:52/港湾地区】
人気のない港湾地区に一人立つほむら。
足元から霧が覆い始める。
霧に紛れてほむらを通り過ぎる、道化や動物たちの形をした使い魔。
遠くの空に姿を現す、歯車の下に逆さになっている女性の人形をつけたような魔女。
――ワルプルギスの夜。
変身するほむら。
ほむら「今度こそ」
時間を止めるほむら。
無数の重火器を周囲に並べる。
ほむら「――決着をつけてやる!」
再び時間停止。
ロケットランチャーを構え、撃っては捨てを繰り返す。
空中に静止する無数の砲弾。
時間が動き出すのに合わせ、一斉にワルプルギスの夜を襲う。
爆発に包まれるがびくともしないワルプルギスの夜。
不気味な笑い声とともに、人形の口から吐き出される炎。
並べた迫撃砲を次々に撃ちだすほむら。
追い討ちに鉄塔を手元のリモコンで爆破し、ワルプルギスの夜に叩きつける。
炎でたやすく溶かしてしまうワルプルギスの夜。
魔法で運転するタンクローリーの上に乗ったほむらが鉄橋の上部外郭を疾走する。
勢いをつけてワルプルギスの夜に向かって飛んでいくタンクローリー。
爆発炎上するタンクローリー。
それも吐き出す炎によって消滅させられる。
飛び降りたほむらが川に着水する直前に、その足元から砲台がせり上がる。
発射されるミサイルがワルプルギスの夜を弾き飛ばし、地面に叩きつける。
その周囲に展開された無数の地雷が反応し、一斉に起爆する。
大爆発が空をも赤く染める。
遠くでその光景を眺めるほむら。
炎の中から黒い矢のようなものがほむらを襲う。
ほむらの背後からそれにぶつかる赤い閃光。
串刺しになった黒い矢――魔法少女のシルエットを模した使い魔が消滅する。
ほむら「佐倉、杏子……」
杏子「本当に手札を見せない奴だな、お前」
杏子「数日後なんて言って、もう来てるじゃねえか」
串団子を一つ食べる杏子。
杏子「しかもあれだけやって、なおピンピンしてやがる。とんだバケモンだ」
ほむら「そんな……」
大爆発にも傷ついていないワルプルギスの夜。
ほむら「巴マミは?」
杏子「別行動。さっきの爆発に気づいたら、すぐに駆けつけるだろ」
杏子「どこに現れるのか知ってたんなら、最初から言やあいいじゃねえか」
杏子「おかげで、手分けして奴を探す羽目になっちまった」
杏子「いいな。まずはマミが来るまで戦いを避ける」
杏子「戦力を小出しにするのは戦法としては0点だ」
ほむら「あなたにそんなことを言われるなんてね」
杏子「うるせー。どうせマミの受け売りだよ」
【11:28/避難所】
木目の床にシートを敷いて、避難している見滝原の人々。
毛布が配られるなど、本格的な避難活動が始まっている。
タツヤ「今日はお泊り?キャンプなの?」
知久「ああ、そうだよ。今日はみんなで一緒にキャンプだー」
タツヤを抱え上げる知久。
はしゃぐタツヤ。
一人、家族に背を向けるまどか。
まどか「ほむらちゃん……」
【11:34/港湾地区】
施設の壁に身を隠しつつ、ワルプルギスの夜の攻撃の合間を縫って反撃するマミ。
銃弾が命中しても、まるでこたえないワルプルギスの夜。
マミ「さすが最強の魔女ね。びくともしない」
言葉とは裏腹に、次のマスケット銃を出して構え、撃つマミ。
使い魔が迫るのを杏子が切り伏せる。
二人から離れたところで、機関銃を連射するほむら。
流れる汗が輪郭を伝い、顎から滴る。
ほむらに向かって炎を吐くワルプルギスの夜。
盾をかざして炎を防ぐほむら。
その戦いぶりを目で追うマミ。
杏子「どうした?」
マミ「――いいえ。何でもないわ」
ほむらに目をやる杏子。
杏子「……このままでいいのかよ」
マミ「今は、魔女を倒すことだけに集中して」
マミ「私が道を作るから、そこからあいつ目がけて切りかかって」
マミ「無理はしないようにね。あくまで、試してみるだけだから」
杏子「おう。サポートは頼む」
マミ「任せといて。じゃあ、始めるわ!」
マミがリボンを延ばし、工場の煙突にくくりつける。
一本のロープとなったリボンの上を風のように駆けていく杏子。
そこへビルの残骸が飛来するが、マミが放った別のリボンがトランポリンのようになって弾き返す。
杏子「くらえっ!」
手を切り落とす斬撃――のはずが、槍は空しく跳ね返される。
杏子「何食えばこんなに頑丈になるんだ?」
ワルプルギスの夜が炎を吐く。
宙返りでかわす杏子。
群がる使い魔をマミの銃が撃ち落とす。
マミ「今度は私よ!」
方陣を形成する無数の銃が一斉に火を噴く。
弾丸の雨を受けながら、それを意に介さずに笑うワルプルギスの夜。
【11:49/病院】
窓の外で風に揺れる木々を見つめる恭介。
恭介「避難所に行かなくても平気かい?」
さやか「いいっていいって。どうせ、大したことはありませんでしたってすんじゃうよ」
恭介「ごめん。手のことばかり気にして、足のリハビリが遅れていなかったら退院できていたのに」
さやか「だから。別に病院にいたら助からなくて、避難所だったら助かるなんてわけじゃないし」
さやか「それに、『退院が遅れている』よりも、『来週中には退院できる』って言おうよ」
さやか「同じことでも、より明るい感じでしょ?」
天童「くーっ、いいこと言った、さやかちゃん」
不意に現れる天童。
さやか「叔父さん?」
天童「メモしとこ」
手帳を取り出す天童。
さやか「暁美さんは?」
天童「ほむらは、その、私用で」
さやか「私用って、こんなときに」
窓に体をくっつけるさやか。
さやか「まさか……魔女?」
恭介「さやか?」
キュゥべえ「――暁美ほむらなら、君の想像どおりワルプルギスの夜と戦ってるよ」
さやか「キュゥべえ!」
振り返るさやか。
天童「キュゥべえ?俺は、天童世死見……」
天童「君、キュゥべえなんて呼ばれてるの?」
恭介に聞く天童。
恭介もきょとんとした顔でさやかを見ている。
キュゥべえ「外の嵐も、すべてワルプルギスの夜によって引き起こされている現象だ」
さやか「これが……?でも今までの魔女は結界の中にいたのに」
キュゥべえ「結界に守られる必要がないぐらい強いということさ」
キュゥべえ「暁美ほむら。巴マミ。佐倉杏子」
キュゥべえ「この町にいる魔法少女が結集してもなお、ワルプルギスの夜を倒すことは無理だろう」
キュゥべえ「それでも、君が加わることで傾いた天秤を水平に近づけることはできるかもしれない」
キュゥべえ「ほんの少しだけど、地に足のついた希望を手に入れた君の力なら」
キュゥべえ「窮地にある彼女たちの救いにはなるだろう」
ゴクリ、と唾を飲むさやか。
さやか「――本当だね?」
キュゥべえ「以前の君は、言ってみれば風船のようなものだ」
キュゥべえ「正義を口にしても、他人のためと言っても。その言葉の中には何も詰まっていなかった」
キュゥべえ「あれから何日も経っていないのに、今の君は人が変わったようだ」
キュゥべえ「成長期の人類が持つ可能性は実に興味深い」
キュゥべえ「そして目の前には最強の魔女がいる」
キュゥべえ「実戦の舞台としてはこれ以上のものはないだろう。戦えば、君はさらに一段上の強さを手に入れる」
キュゥべえ「ただし、ボクには君たちが勝てるという保証はできない」
さやか「魔法少女は、魔女になるんでしょ?あれは本当なの?」
キュゥべえ「否定はしないよ」
キュゥべえ「君たちがそのことを知ってしまった以上、契約に対して引け目を感じることは理解できる」
キュゥべえ「――それでも、魂を賭けるに足る願いを君は持っているのかい?」
さやか「……恭介」
目を閉じ、うつむいて言うさやか。
強くうなずき、恭介に笑顔を向ける。
さやか「ごめん。用事ができちゃった」
恭介「……さやか」
さやか「友達?っていうか、私のライバルがさ、ピンチみたいなんだ」
さやか「これはさやかちゃんが助けに行かないとね」
恭介のそばに駆け寄り、キスするさやか。
恭介の体を強く抱きしめる。
さやか「エヘヘ、しちゃった」
さやか「でもこれで勇気が出たよ。もう何も恐くない」
さやかの目尻にうっすらと浮かぶ涙。
恭介「さやか、君はどこへ行こうとしてるの?」
さやか「もらった勇気を、今度は私が分けてあげる番」
さやか「さよなら、恭介。もし生きてまた会えたら、ヴァイオリンを聴かせてね」
恭介「さやか?」
さやか「――キュゥべえ」
さやか「私の願いは、恭介を事故に遭う前の健康な状態にまで治すこと」
さやか「それが叶うのなら、私は、魔法少女に……なる!」
キュゥべえ「君の祈りは、エントロピーを凌駕した」
キュゥべえ「さあ、解き放ってごらん、その新しい力を」
青い輝きがさやかを包み、胸の中からソウルジェムが現れる。
手に取った瞬間、さやかは魔法少女に変身している。
右手に剣。左手の鱗状の籠手は右手より明らかに防御を意識したもの。
白い籠手の手の甲には紫色のダイヤのマーク。
さやか「これが私の武器。それに、このグローブ」
さやか「……わかったよ、私の戦い方が」
窓を開けるさやか。
風が病室に吹き込み、激しくカーテンをはためかせる。
さやか「叔父さん、後で窓を閉めておいてくれる?」
天童「うん?……ああ」
さやかが窓から身を躍らせる。
恭介「さやか!」
慌てて飛び起きる恭介。
恭介「えっ?……どうして足が?……手も」
両手で足に触れ、動かないはずの左手を動かしてみる恭介。
窓を閉める天童。
天童「ほむら……。お前は、一人なんかじゃねえ」
天童「だから、どんな命題でも生き延びろ」
天童「神様……。年端も行かねえ女の子たちがけなげに頑張ってんじゃねえか」
天童「あいつらのために。力を貸してやってくれよ」
戸惑う恭介を置いて、病室を去ろうとする天童。
恭介「待ってください!さやかは、さやかはどうなったんですか?」
天童「さやかちゃんは、彼女の戦いの場に行った」
天童「その手が動くのなら、君には君の戦いができるはずだ」
今度こそ病室を去る天童。
恭介「僕の、戦い……」
【12:03/港湾地区】
杏子「この力の差は何なんだよ!」
何度目かの攻撃を弾き返され、カッとなる杏子。
串団子を食べようとするが、全部食べてしまっている。
串を投げ捨てる杏子。
マミのマスケット銃による攻撃も、ワルプルギスの夜の体表面で燃え尽きてしまう。
リボンで拘束しようとしても同じように燃やされる。
マミ「佐倉さん!私のガードをお願い」
杏子「りょーかい!」
ジャンプを重ね、マミのそばに移動する杏子。
マミ「ティロ・フィナーレ!」
巨大な銃から撃ち出される渾身の一撃。
ワルプルギスの夜がエネルギーの光に包まれる。
が、次の瞬間光は黒い塊に飲み込まれ、飛び出した無数の使い魔がマミたちを襲う。
杏子「何だとっ!」
格子状に展開した防御壁が、圧倒的な物量の前に蹴散らされる。
気づいたほむらが援護しようとするが、数発機関銃を撃ったところで弾丸が切れる。
マミ「くっ!」
使い魔に突き飛ばされ、ガードレールにぶつかるマミ。
勢いの強さにガードレールがなぎ倒される。
杏子「マミ!……うわっ!」
杏子も使い魔の突進で倉庫にぶつかる。
シャッターに深くめり込む杏子の体。
ほむら「そんな……」
機関銃を捨て、素早く手榴弾のピンを抜くほむら。
お手玉でもするように軽く上方に投げる。
時間を止め、殺到する使い魔の群れから距離をとったほむらが、拳銃で手榴弾を撃つ。
時間が流れると同時に、爆発で使い魔が一掃される。
ほむら「巴マミ!佐倉杏子!」
ぴくりとも動かない二人。
ほむら「どうして?……どうしてなの?」
ほむら「何度やっても、あいつに勝てない」
盾に目をやるほむら。
内蔵の砂時計は、わずかな砂を少しずつ落としている。
ほむら「命題の期限は14:00」
ほむら「砂が尽きるのが先か、それとも……」
ゆっくりと前進をはじめるワルプルギスの夜。
巻き起こす暴風が、ビルや煙突をもぎ取る。
暴風に耐えかねた木が一本、根こそぎに宙を舞う。
ほむらの後ろからぶつかってくる木。
ほむら「あっ」
振り向き、木に気づくほむら。
次の瞬間、青い閃光とともに木が両断され弾き飛ばされていく。
さやか「いやあ、ゴメンゴメン」
さやか「危機一髪、ってとこだったねえ」
ほむら「美樹さやか……その格好」
さやか「あー、せっかく助けに来たんだからさ。そのフルネーム呼びやめなよ」
さやか「さやかでいいから。あたしはこれから、ほむらって呼ぶ」
ほむら「どうして。魔法少女になればどんな運命が待っているか、知っているでしょう?」
さやか「追い詰められたライバルのもとに駆けつける正義の味方、魔法少女さやかちゃん。お約束でしょ?」
さやか「人生の壁を乗り越える前に、壁の方が倒れちゃったら目標をなくしちゃう」
ほむらに指をつきつけるさやか。
さやか「さあ、ちゃっちゃと魔女をやっつけよう!マミさんは?」
さやか「それに、もう一人魔法少女が一緒に戦ってるって聞いたけど」
首を横にふるほむら。
黙って、マミの倒れている方角を指差す。
さやか「けが人一名発見。これは、早速出番ですね」
一人うなずいて、マミのもとへ行くさやか。
ワルプルギスの夜を警戒しつつ、その後を追うほむら。
マミのそばに立つさやか。
背中の白いマントが細い帯状にほどけていき、マミの体をくるむ。
マントだったものは温かな青白い光になって消える。
マミ「……うう」
マミ「……美樹さん?」
さやか「どうも。魔法少女さやかちゃんです」
マミ「あなたも、ワルプルギスの夜と戦いに来たの?」
さやか「もちろん。でも今は、もう一人の魔法少女の手当てが先です」
さやか「ほむら。もう一人はどこ?」
ほむら「あっちの、倉庫の入り口よ」
さやか「ちょっと遠いな。よし、アレやるか」
さやかの姿が消え、直後に杏子のところに現れる。
ほむら「時間を、止めた?」
マミ「たぶん、瞬間移動よ」
マミ「彼女の左手を見た?籠手に紫色のダイヤのマーク」
マミ「あれ、あなたを意識してそうなったんだと思う」
ほむらの左手を指差すマミ。
マミ「美樹さんが見たあなたは、瞬間移動で洗濯ロープを移るところ」
マミ「あなたの魔法が時間操作だと知っていれば、時間を止めることもできたかも」
ほむら「さやかが魔法少女になることはこれまでにもあったけど、あの籠手は初めて見る」
ほむら「それに、マントが包帯になって他人の治療魔法になるなんていうのもそう」
ほむら「私の知っている魔法少女のさやかは、剣を無数に出して投擲する」
ほむら「思えば、あれはあなたの戦法に影響されていた」
ほむら「今のさやかが私の影響を受けている、というのも、そういう意味では理解できる」
マミ「守破離。型を模倣し、型を破り、ついには型にとらわれぬ」
マミ「いつか、私たち以上の魔法少女になるかもね、彼女」
マミ「こんな戦いで失ってしまうにはもったいない逸材よ」
マミ「そうは思わない?」
ほむら「同感ね」
ほむら「――『献身』」
ほむら「私はこの時間をあきらめかけていた」
ほむら「ワルプルギスの夜の強さを知らないとはいえ」
ほむら「この状況で戦いに身を投じる勇気」
――だったら方向性が違うんだろう。お前の思ってる献身と、今回の命題と――
ほむら「風向きが悪いから、と見捨ててしまっては、それは献身じゃない」
ほむら「今、ようやく『献身』がわかった」
ほむら「巴マミ。――お願い、私に力を貸して」
ほむら「ワルプルギスの夜に勝ちたい。いつか勝ちたいんじゃなく、今」
ほむらを見据え、ゆっくりとうなずくマミ。
マミ「いいけど、私は高いわよ?」
マミ「そうね。戦いが終わったら、大きなケーキをごちそうしてくれる、というのはどうかしら」
微笑む二人。
そこに杏子ごと瞬間移動で現れるさやか。
杏子「いつの間にか見滝原の魔法少女も大所帯になっちまったな」
杏子「これじゃナワバリにできねえ」
マミ「美樹さん。あなた、瞬間移動が使えるの?」
さやか「まあ、ほむらの見よう見まねっていうか」
ほむら「私のは時間を止めてその間に移動しているのよ」
髪をかき上げるほむら。
さやか「えーっ。じゃあ、そっちの方が断然いいじゃん。互角の力になったと思ったのに」
さやか「ずるーい」
杏子「大丈夫かよ、こんなルーキーで……」
マミ「ともかく、これで瞬間移動と攻撃の組が二つ作れるわ」
マミ「私と暁美さん、そして美樹さんと佐倉さん。瞬間移動で近づいて攻撃、離脱」
杏子が意外そうな顔でマミを見つめる。
うなずくマミ。
マミ「これまでの経緯からみて、有効な打撃を与えるには一点に継続して叩き込むしかない」
マミ「メインは佐倉さん。狙うのは、首を折ること」
マミ「私は、佐倉さんが攻撃しやすいように隙を作る」
マミ「暁美さんと美樹さんは、機動力でサポート」
マミ「動き出したあいつを放置すれば、見滝原全域が瓦礫の山になってしまう」
マミ「ここが正念場よ」
広げた手のひらを下に向け突き出すマミ。
ほむら「私たちは、まだ戦える」
マミの手に自分の手を重ねるほむら。
杏子「やってやろうじゃん」
さらに自分の手を重ねる杏子。
さやか「マミさんやほむらって、意外と体育会系?でもこのノリ、嫌いじゃない」
さやか「あたしたち、負ける気がしないわ」
最後にさやかが手を重ねる。
マミ「さあ、気合を入れて!行くわよ!」
おう!と叫ぶ三人。
ワルプルギスの夜を追って飛ぶ。
使い魔をばらまくようにして追撃をさえぎるワルプルギスの夜。
ほむらとマミが銃撃で蹴散らす。
杏子「まずは一発叩き込むぞ!」
さやか「任せて!」
さやかが杏子の手をとり、瞬間移動でワルプルギスの夜の後頭部に出現する。
力の限り槍を突き立てようとする杏子。
激しく火花を散らすが、最後には槍の方が燃やされてしまう。
体ごと振り返るワルプルギスの夜。
その動きだけで周囲に暴風が巻き起こる。
吹き飛ばされないようにするだけで手一杯の四人。
口から吐き出される炎が四人を襲う。
盾と籠手でパートナーをかばうほむらとさやか。
籠手の周囲に音符状の魔法陣が浮かび、炎を跳ね返す。
ほむら「前に出るわ。つかまって!」
右手を差し出すほむら。
マミが手をとるとほむらが時間を止める。
炎をかいくぐり、ワルプルギスの夜に接近する二人。
炎が途切れた瞬間、パートナーの背を飛び出すマミと杏子。
杏子が攻撃した箇所に精密に銃弾を命中させるマミ。
再度、杏子が新しい槍を首に突き立てる。
またしても向きを変えるワルプルギスの夜。
暴風にちぎられたビルの上層部が風に踊るように襲いかかる。
狙いが外れたビルがワルプルギスの夜にぶつかるが、直後に焼き払われる。
笑いながら、使い魔を放つワルプルギスの夜。
【12:19/病院・ロビー】
恭介がロビーに下りてくる。
ロビーでは受付の女性に患者やその親族らが群がっている。
患者A「本当にこの病院にいれば安全なのか?」
患者B「遠くの病院に避難した方がいいんじゃないのか?」
親族A「さっさと救急車を手配してよそへ移送しなさいよ!」
受付A「申し訳ありません。現在救急車は負傷者の搬送で出払っており用意できません」
患者C「そこを何とかするのがお前の仕事だろうが。病人を見殺しにするのか?」
患者D「わしゃ百まで生きると決めとるんじゃ。病院なんかで死にとうない」
親族B「うちの子は将来官僚になってこの国を動かすのよ!その芽を摘んでもいいの?」
受付B「落ち着いてください。大きな建物ですし、病院が吹き飛ばされるようなことはありませんから」
患者E「ここからそう離れてない場所で、ビルが派手に空を飛んでるんだ!」
患者F「そうだ!お前たちは俺たちを安全な場所に移す義務がある!」
テレビを見つけた恭介がため息をつく。
壊されて電源が切られているテレビ。
明らかに間違った使い方をされた消火器が無造作に転がっている。
恭介「……ん?」
テレビのわきに、なぜかヴァイオリンのケース。
恭介「僕のヴァイオリン……どうして、こんなところに」
ケースを開く恭介。
ヴァイオリンを手に取る。
恭介「本当に、僕のだ」
恭介「懐かしいな」
試しに弾いてみるが、音が微妙にずれている。
恭介「フフッ、一ヶ月ぶりだからね。無理もないか」
調律して音を合わせる恭介。
恭介「僕の戦い……そうか」
恭介「さやか。僕もできることをしてみるよ」
患者たちの後ろ、少し離れた場所に立つ恭介。
おもむろにヴァイオリンを弾き始める。
曲はアメイジング・グレイス。
患者C「呑気に楽器なんて演奏してる場合か!」
親族B「そうよ!うちの子はあなたなんかよりずっと頭だっていいのよ!」
非難されながらも、弾くことをやめない恭介。
しだいに、受付を囲んでいた人々が恭介のまわりに集まる。
親族A「それにしても上手ね。子供とは思えない」
患者E「確か、神の恵みに感謝する曲だ」
患者B「そうだ。こんなときは神様に祈ろう」
患者F「そうだ!こうなったらもはや神様しか頼れない!」
患者D「いよいよ、お迎えが来たのか……?」
曲を聴きながら、一心に祈る人々。
何が起こっているのかわからず、戸惑いながらも祈る受付たち。
さっきまでの騒ぎが嘘のように、ヴァイオリンの音色を除いて静まり返る。
【12:27/オフィス街】
ビルの残骸が飛んできてほむらに向かう。
ほむら「……まさか」
かわそうとするが間に合わず、直撃を受けるほむら。
別のビルに叩きつけられ、ガラスを割ってビル内に転がる。
足を動かそうとするが瓦礫の下敷きになっていて抜けない。
瓦礫からにじみでる血。
ほむら「ここまで……なの?」
ほむら「力を合わせても、傷一つつけられない」
盾の砂時計は、もう時の流れを示さない。
盾に手をかけるほむら。
ほむら「時間を戻して……今度はどうするの?」
ほむら「ミサイルでさえ倒せない。魔法の武器も通じない」
ほむら「私のやってきたことは……結局……」
うなだれるほむら。
左手に装着しているソウルジェムが濁っていく。
天童「ほむら!大丈夫か!」
駆け寄ってくる天童。
ほむらの足に気づき、瓦礫をどけようとする。
ほむら「天童……」
天童「クソッ、持ち上がりゃしねえ。待ってろ、何か探してくる」
天童のズボンの裾をつかむほむら。
ほむら「もういいの……ここにいて」
天童「ほむら」
ほむら「天童……!」
泣き出すほむら。
しゃがんで、胸を貸す天童。
ほむらが天童の胸にしがみつく。
優しく抱きしめようとする天童。
首を振り、ほむらの両肩をつかむ。
天童「おい、ほむら。泣くのはまだ早えよ」
天童「ゴジラをやっつけて前に進むんだろ?やれるか?」
泣き顔のまま、何度もうなずくほむら。
ほむら「絶対、勝ってみせる」
嗚咽に声を詰まらせながら言い切るほむら。
天童「よし!」
立ち上がり、ほむらのそばを離れる天童。
金属製のパイプを手に戻ってくる。
パイプを瓦礫にかませて隙間を広げる天童。
天童「今だ!」
うなずいて足を抜くほむら。
さやか「ほむら!……叔父さん?」
瞬間移動でほむらの元に駆けつけるさやか。
ほむらの額と足から出血。
さやか「時間を止めれば間に合ったのに」
ほむら「もう、時間は止められない」
盾を見せるほむら。
ほむら「砂時計が止まったら、時間操作の魔法はあと一つだけ」
ほむら「これまでの一ヶ月をなかったことにする」
ほむら「今、その魔法は必要ない」
さやか「もちろん。まだ、あたしたちは終わりじゃない」
マントをほどいた包帯が足を覆うと治療の魔法で足が治る。
次に額の怪我を治そうとして、さやかの動きが止まる。
さやか「ヴァイオリンの音色が聞こえる……」
ほむら「ヴァイオリン?」
さやか「ほら。聞こえるでしょ。これ、『アメイジング・グレイス』」
ほむら「『アメイジング・グレイス』……」
ハッとして、ほむらがうなずく。
ほむら「聞こえる……」
さやか「きっと、恭介だよ」
さやか「恭介が、あたしたちに負けないで、って応援してくれてるんだ」
額の治療をすませるさやか。
ほむら「さやか。私をみんなの所へ」
さやか「え?……叔父さんはいいの?」
ほむら「大丈夫。今は戦いに集中して」
ほむらが天童を振り返る。
黙ってうなずく天童。
【12:31/避難所】
避難指示が一向に解除されないことにざわめく人々。
そこへアメイジング・グレイスが鳴り響く。
市民A「変だな。スピーカーじゃないぞ、これは」
市民B「どういうことなんだ」
早乙女「『アメイジング・グレイス』?」
何かをひらめいた早乙女が、ホール壇上にあるマイクを取る。
早乙女「見滝原中のコーラス部員に連絡します」
早乙女「至急、壇上に集合しなさい」
ぞろぞろと集まる、私服姿、制服姿の女子生徒たち。
早乙女「皆さん、この曲は知っていますね?」
早乙女「避難している人々の不安を、私たちで少しでも和らげましょう」
はい、と答える生徒たち。
ヴァイオリンの演奏に合わせて歌いだす。
(アメイジング・グレイス 天国に一番近いほむらver歌詞)
神の恩寵 妙なる響き
哀れなしもべも救う
道に迷い 闇の中でも
光差して導く
試練を与え 恐れ抱かせ
克服させる 教え
神の御心 いと尊きを
信じることで知る
危険に苦難 誘惑の
長く厳しい旅路
ついに見えた 帰る家
神の導きによりて
【12:32/オフィス街】
ほむら「『アメイジング・グレイス』」
ほむら「まるで、今の私」
ほむら「ワルプルギスの夜に挑んでは敗れ、打つ手もなくなった私」
ほむら「命題に振り回されながら、ここまで戦ってこれた私」
ほむら「だったら、私の旅の終わりは見えるの?」
――明日の14:00までに、
鹿目まどかが魔法少女の契約をしなければ暁美ほむらが即死亡
ほむら「――そうね、あと90分」
ほむら「何度も時を繰り返した果ての、残り時間」
ほむら「魔法が使えなくてもいい。私たちは、きっと勝てる」
ほむら「たとえこの身がどうなったとしても、私は結末を見届ける」
ほむら「巴マミ、佐倉杏子、美樹さやか。これまでで最高のあなたたちを、私が絶対に死なせない!」
グレネードランチャーを取り出すほむら。
果敢にワルプルギスの夜に突進する。
使い魔を放つワルプルギスの夜。
マミの銃撃が、ムチのようにしなる杏子の槍がほむらを援護する。
ほむら「テメー、コンチクショウ!いつまでも笑っていられると思ったら大間違いなんだから!」
構え、グレネードを撃つほむら。
ワルプルギスの夜の首に命中して爆発が起こる。
これまで笑っていたワルプルギスの夜が笑うのをやめる。
首に小さな亀裂。
杏子「ワルプルギスの夜に、傷が!」
さやか「あたしたちも、負けてられないよっ!」
強引に杏子ごと瞬間移動するさやか。
驚きながらも、素早く切り替えて攻撃に移る杏子。
火花が杏子を煌々と照らす。
杏子「うおおおおおっ!」
傷口をえぐるように切る杏子。
少し、傷口が広がる。
重ねて撃ち込まれるマミの銃弾。
さらに深まる傷口。
ベレー帽の位置を調整し、右手を上げるマミ。
マミ「撃てっ!」
手が振り下ろされると、背後に並べられた無数のマスケット銃が一斉に撃ちかかる。
精密に亀裂を叩く銃弾。
わずかずつ、しかし確実に、広がっていく傷口。
さやか「このっ!このっ!」
剣を力任せに叩きつけるさやか。
傷口がいびつな形に歪む。
度重なる攻撃に、体を回転して振りほどくワルプルギスの夜。
暴風にあおられ、散らばる四人。
これまで以上に高笑いするワルプルギスの夜。
【13:02/避難所】
アメイジング・グレイスの演奏と、合唱は今も続いている。
立ち上がるまどか。
詢子「どうした?まどか」
まどか「ちょっと、トイレ」
廊下に出て、外の様子をうかがうまどか。
暴風で木々が揺れている。
キュゥべえ「その様子だと、君は知っているようだね」
キュゥべえ「暁美ほむらをはじめとする魔法少女たちがワルプルギスの夜と戦っていることを」
まどか「教えて。ほむらちゃんたちは勝てるの?」
キュゥべえ「暁美ほむらはもう二時間ほど通して戦っている」
キュゥべえ「消耗もしているし、彼女が得意とする時間操作の魔法は既に使えなくなっているようだ」
キュゥべえ「それでも状況は悪いことばかりではないよ」
キュゥべえ「美樹さやかが今から一時間余り前にボクと契約して魔法少女になった」
まどか「さやかちゃんが?」
キュゥべえ「彼女の参戦に勇気づけられて、ワルプルギスの夜に手傷を負わせるまで戦況はよくなった」
キュゥべえ「このチャンスに切り札を投入すれば、あるいはワルプルギスの夜を倒せる」
キュゥべえ「そうは思わないかい、まどか?」
まどか「私――」
知久「まどか」
名前を呼ばれて振り向くまどか。
知久「気分でも悪いのかい?」
まどか「ううん、そんなことない」
知久「昨夜うちに来た友達のことが気になる?」
まどか「どうしてわかるの?」
知久「そりゃ、ここに来ていないようだからね。どうしたのかな」
まどか「……パパ。捜しに行ってもいい?」
首を横に振る知久。
知久「勇気がある、とか勇敢だ、というのは褒め言葉だ」
知久「だけど、自分にできることを誤解して行動するのは勇気じゃないよ」
知久「消防署の人の方が、まどかよりずっと頼りになる」
知久「小学校の頃の先生に、随分年をとった人がいてね」
知久「その人が戦争について語った言葉は、今も覚えている」
知久「戦争の末期、日本は学生まで駆り出して戦争を続けようとした」
知久「もう十分な物資もなくて、片道分の燃料を積んだ戦闘機に爆弾を積んで敵の船に自爆攻撃を仕掛ける」
知久「そんな、信じられないようなことが行われたんだ」
知久「その先生は、ちょうど一年遅く生まれたことで、この作戦に選ばれなかった」
知久「当時はそれを大層くやしがっていて」
知久「お国のために尽くすのに年齢なんて関係ないはずだ、と憤っていた」
知久「その後日本は終戦を迎える」
知久「そうすると、なぜか急に日本はアメリカやイギリスと戦っても勝てるはずがなかったという話が出る」
知久「おまけに、それを裏付ける資料を新聞が掲載したりする」
知久「先生は腹を立てた」
知久「どうして、自分たちの先輩が死ななければならなかったのか」
知久「なぜ、飛び立つ前にその資料を公開してくれなかったのか」
知久「彼らの死はお国のためでも何でもなかった」
知久「ただ、大人の都合に乗せられて、無益な死を強いられたにすぎなかった」
知久「この体験から、再び若者が死を強いられることがないようにと教師の道を選んだ」
知久「この話を聞いてから、パパは勇気というものに疑問を持つようになった」
知久「本人は体を張って何かをなすつもりだから、それは満足だろう」
知久「でも、本当に必要な勇気は、学生に爆弾を持たせることをやめさせることじゃないのかな」
知久「だから、パパはまどかを行かせられない」
まどか「だったらなおさら、私は行かなきゃ」
まどか「私は、ほむらちゃんに爆弾を持ってほしくない」
まどか「自分を犠牲にして全部解決するなんて間違ってるって、何度でも言いたい」
まどか「そのために、地獄の底まで付き合ったっていい」
知久「まどか……」
知久「よりによって、こんなときに」
頭をかく知久。
知久「じゃあ、パパも一緒に捜そう」
まどか「ううん。私じゃないと意味がないの。パパは、ママやタツヤのそばにいて、二人を安心させてあげて」
まどか「パパは、私を守ってくれている」
まどか「その気持ちを、私は絶対に裏切らない」
知久「そうか」
知久「一つだけ、忘れないでほしい」
知久「もしも、まどかの身に何かあったら、パパもそうだけどママはもっと悲しむよ」
知久「サバサバした性格と、そういうことを割り切れるっていうのは別のことだからね」
知久「だから、必ず無事で帰っておいで」
まどか「うん。約束する」
背を向け、走り去るまどか。
【13:34/オフィス街】
さやかと杏子のコンビネーションで首の傷をさらに押し広げているが、二人に疲労の色が出はじめている。
まとわりつく使い魔への対処が遅れ、反撃を受ける二人。
マミも傷を負っているが、治療魔法を使う様子はない。
火を吐いて使い魔ごとさやかと杏子を焼くワルプルギスの夜。
籠手のあるさやかは辛うじてもちこたえるが、杏子は炎に包まれて落下していく。
追いかけようとしたさやかにビルが直撃する。
弾薬を使い切ったグレネードランチャーを捨てるほむら。
ほむら「――昨日言ってた、人間パチンコのこと覚えてる?」
マミ「え?ええ」
ほむら「それを使って、あいつに爆弾をぶつけたい」
ほむら「もちろん、爆弾を仕掛けるのは私」
マミ「無茶よ!だいたい、私の手がふさがったら誰が飛んでいくあなたを守るの?」
ほむら「もう私に、これ以上あいつに通用する武器はない」
ほむら「拳銃では、自分の身を使い魔から守るぐらいにしか使えない」
ほむら「時間を止める魔法も使えない今、私は完全に足手まとい」
ほむら「だったら、たとえ一撃だけでも」
ワルプルギスの夜を見つめるほむら。
マミ「あなたの案は却下よ。うまくいったとしても、反撃を避ける手段がない」
マミ「一度ビルをぶつけられているあなたなら、盾が万能でないこともわかるはずよ」
マミ「決定的な瞬間に必殺技を撃つための力を温存している以上」
マミ「無謀な策で負傷したあなたの治療に魔力を使いたくない」
ほむら「でも……私には、もうこれしか残されていない」
爆弾を手に抗議するほむら。
不意に、その手に別の手が重なる。
まどか「そんなことはないよ。ほむらちゃん」
ほむら「まどか……?」
まどか「ほむらちゃんにはまだ、みんなを守る意志がある」
まどか「それさえあれば十分だよ」
まどかの足元にいつの間にかいるキュゥべえに気づくほむら。
まどか「私、魔法少女になる」
ほむら「やめて……それじゃ、それじゃあ私は、何のために」
まどか「ごめん。本当にごめん」
まどか「これまでずっと、ずっとずっと、ほむらちゃんに守られてきた私」
まどか「でも私はほむらちゃんの後ろじゃなくて隣にいたい」
まどか「楽しいことだけじゃなくても。いやなこと、悲しいことだって、一緒に乗り越えたい」
まどか「だから、みんなを、私を置いていったりしないで」
ほむらの目が、遠くに倒れている二人を追う。
続いてマミを。
まどかをつかもうと伸ばしかけた手を、拳を握り締めて引くほむら。
ほむら「まどか……」
マミ「鹿目さん」
マミ「彼女が嘘をついていなければ、あなたはワルプルギスの夜を上回る最悪の魔女になる」
マミ「あなたが魔法少女になるのは構わないけど、魔女になることは見過ごせない」
マミ「それがどういう意味か、わかるでしょう?」
マミ「美味しい紅茶が飲めるのは生きている間だけ」
マミ「それでも戦うというの?」
まどか「私、やっとわかったんです。叶えたい願い事も」
まどか「一緒に戦うって約束、果たさせてください」
マミ「鹿目さん……」
キュゥべえ「最高の素質を持つ君なら、どんな途方もない望みだろうと叶えられるだろう」
まどか「本当だね?」
キュゥべえ「さあ、鹿目まどか。君はその魂を代価にして何を願う?」
まどか「私」
深呼吸して、心を落ち着けるまどか。
まどか「魔法少女たちが生命をかけて守ろうとしたものを魔女になって壊してしまうなんておかしい」
まどか「魔女にならないために死を選ばなきゃいけないなんて報われない」
まどか「希望の祈りによって生まれる魔法少女なのに、死ぬか魔女になるかの二つの道しかないなんて間違ってる」
まどか「人を、街を。守ってきた意志にかけて。ふさわしい報いをもたらしたい」
キュゥべえ「力……?いや、運命に干渉する祈り」
キュゥべえ「君が最高の魔法少女になるのも、運命だとしたら」
キュゥべえ「まさに君にふさわしい祈りだ」
キュゥべえ「願いは今、聞き届けられた」
キュゥべえ「守ろうとする意志を、君が導くといい」
光に包まれるまどか。
魔法少女に変身している。
手には木製の弓。
光り輝く矢を放つと、空中で二本に分離して杏子とさやかのそばに落ちる。
二人の周囲を花が覆う。
意識を取り戻す二人。
立ち上がり、ワルプルギスの夜に向かっていく。
これまでにない速度と腕力で傷口を切り開く二人。
マミ「守ろうとする意志に報いる、ということは、意志を力に変換する魔法?」
マミ「でももっと底知れないものを感じる」
マミ「暁美さんの『見えない武器』のときのように、……いいえ、それ以上」
次の矢を放つまどか。
空中で何本かに分裂した矢が、一本を除いて空中に静止する。
一本はワルプルギスの夜に向かっていき、接近したところで姿を変える。
ほむら「あれは……!なぜ、あの魔女が」
矢が変化したのは、白い光に包まれた薔薇園の魔女。
綿菓子のような使い魔を放ちながら、ワルプルギスの夜に突進する。
ワルプルギスの夜の青い衣装を切り裂き、歯車に亀裂を入れる薔薇園の魔女。
静止していたうちの一本が、今度はお菓子の魔女になる。
脱皮して蛇状の姿になり、ワルプルギスの夜の腕を噛みちぎる。
続いて委員長の魔女。
ワルプルギスの夜にしがみつき、至近距離で使い魔の群れに切り裂かせる。
さらにハコの魔女。
使い魔がワルプルギスの夜を引っ張り地面に叩きつける。
残る矢は一本。
ほむらの盾が、ガタガタと揺れる。
ほむら「……グリーフシード?」
盾から飛び出したグリーフシードが孵化し、白い光に包まれた人魚の魔女になる。
無数の車輪を叩きつけ、さらに両手の二刀で切りつける。
さやか「何あれ。同じ剣の使い手として、かなりイメージ悪いんだけど」
――さっきのは嘘。一個だけ取っておいたんだ――
ほむら「まどか……」
かつて、願いを託して、まどかがほむらのソウルジェムを浄化したグリーフシード。
思わず涙をこぼすほむら。
まどか「ほむらちゃん。マミさん。受け取って」
花を渡すまどか。
受け取ったマミの負傷がたちどころに癒される。
同じく、花を手に取るほむら。
ほむら「えっ……?」
砂がなくなったはずの盾が、わずかに砂を落としている。
まどか「みんなが守ろうとしたもの。最後は、あなたたち二人が示して」
まどか「私が最初に出会った、二人の魔法少女」
まどか「絆を教えてくれた二人の手で、戦いを終わらせて」
マミ「フフッ。そう言われると、やる気が出てくるわ」
マミ「暁美さん、悪いけどとどめは私に任せて」
マミ「あなたは、その爆弾でアシスト」
ほむら「大層な名前を叫んで、とどめにならなかったら格好がつかないものね」
マミ「最強の魔女があなたみたいな泣き虫にやられたんじゃ名折れもいいところだからよ」
指摘されて、涙を拭くほむら。
マミ「さあ、行って!」
うなずいて、時間を止めるほむら。
ワイヤーロープを使って手持ちの爆弾をひとくくりにし、これまで何度も狙ってきた首に投げつける。
時間が流れると同時に、ワルプルギスの夜の頭部が大爆発を起こす。
マミ「ティロ・フィナーレ!」
巨大な銃身から膨大なエネルギーが放たれる。
これまでのティロ・フィナーレに数倍する威力のエネルギーが、ついにワルプルギスの夜の首を吹き飛ばす。
まどかの使役した魔女によって蓄積したダメージによって、胴体が、歯車が誘爆を起こす。
不気味な笑い声がやみ、雨が降り始める。
【13:58/オフィス街】
杏子「勝ったのか?あたしたち、ワルプルギスの夜を倒したのか?」
さやか「暴風もやんでる。間違いないよ」
杏子「こういうときは、空が晴れたりするもんだけどな」
さやか「天気なんてどうだっていいよ」
さやか「たとえどしゃ降りでも、今の気分は晴れ晴れしてる」
さやか「アンタは?そうじゃないの?」
杏子「……まあ、な」
さやか「でも驚いたな。まさかまどかが魔法少女になるなんて」
杏子「……そうか」
さやか「どうしたの?」
杏子「まだ、全部終わったわけじゃない」
杏子「結局、愛と勇気が勝ってハッピーエンド、ってわけにはいかないんだな」
さやか「何それ。結構ロマンチストだったりする?」
【13:59/オフィス街】
マンションの屋上。
最後の拳銃を確かめるほむら。
残り弾丸は一発。
ほむら「ワルプルギスの夜には勝った」
ほむら「けれど、魔法少女になったまどかは遅かれ早かれそれ以上の魔女になる」
ほむら「まどかを護りきれなかった以上、次に望みをつなぐしかない」
盾の砂時計はもう砂を流してはいない。
ほむら「それでも、決着だけは私の手で」
ほむら「せっかく、ワルプルギスの夜に勝利した、最高の仲間たち」
ほむら「その勝利を血で染めるのは、この世界を捨てる私でいい」
涙が流れ、拳銃を握る手が震えるほむら。
ほむら「ごめんなさい、まどか」
ほむら「また、あなたを殺すことになるなんて」
決意を固めた表情で、涙を拭くほむら。
屋上から飛び、まどかのもとへと向かおうとする。
勢いよく床を蹴った直後、左手のソウルジェムがひとりでに滑り落ちる。
隣のマンションに飛び移ったとき、その手にソウルジェムはない。
ほむら「えっ?」
地面に叩きつけられ、砕けるソウルジェム。
壊れた人形のように、倒れ込むほむら。
【14:00/???】
紫色の空間。
地面も、空もない場所に、制服姿のほむらがただよっている。
天童「よう」
ほむら「ここは……どこなの?天国?」
天童「まあアレだな。お前の夢の中、とでもいうか」
天童「それより、全部見させてもらったぜ」
天童「やるじゃねえか」
これまでの天童とは雰囲気が変わって、大人の態度。
天童「何度もあきらめたり、くじけたりしながらよ」
天童「何だかんだ言いながら、結構底力見せてきたじゃねえか」
天童「お前が命がけでいろんなことを学んできたから、俺もみんなもお前について来たんだよ」
手帳を取り出し、開く天童。
天童「お前が魔法少女になるとき、何を願ったか覚えているか?」
天童「『彼女に護られる私でなく、彼女を護る私になりたい』」
天童「これって、恩返しのつもりじゃないよな」
天童「守ってもらうだけじゃ対等の友人とはいえない。そういうことだよな」
天童「それと同じことを、鹿目まどかはやってみせた」
天童「美樹さやかも、お前の友人であろうとして契約した」
天童「遠回りに遠回りを重ねて、さらに一ヶ月もかけて、お前は願いにふさわしい自分自身を手に入れたんだ」
天童「それもお前が願ったからなんかじゃない」
天童「お前が行動したから、二人はお前を友達と認めたんだ」
天童「そもそも友達なんてものは、願い事で作るもんじゃねえからな」
ほむら「でも、うまくいかなかった」
ほむら「魔法少女になってしまったまどかは、いつかワルプルギスの夜を超える最悪の魔女に生まれ変わる」
ほむら「そうなってしまったら、私やほかの魔法少女たちではもう……」
ほむらの瞳から涙がこぼれる。
うなずく天童。
天童「最初に会ったときから、お前はずっと鹿目まどかのことだけを考えてた」
天童「でも今じゃ、仲間のことも考えられるようになったじゃねえか」
天童「もうお前は一人じゃない」
ほむら「そうね。こんなところだけど、天童がいれば退屈だけはしなさそう」
涙を拭くほむら。
天童「俺のことじゃねえ」
天童「お前は立派に、命題を全部クリアした」
天童「俺が帰っても、お前は十分やっていける」
ほむら「帰る?……どうして?」
ほむら「変人で、おならが臭くて、人のお金でお土産買ってくるような奴だけど」
ほむら「まだまだ、あなたから教わることはあるわ」
苦笑する天童。
天童「お前が今までに学んできたことは、みんなこれに書いてある」
手帳を渡す天童。
天童「お前、時間を遡って別の宇宙に行けるらしいな」
天童「そんなお前にはわかりきっていることだろうが」
天童「宇宙は一つじゃないし、これから未来に枝分かれする無限の可能性もやっぱり一つじゃない」
天童「だから、こんな宇宙が一つぐらいあっても罰は当たらないさ」
天童「じゃあな。みんなと仲良くするんだぞ」
天童「あばよ」
上げた右手を振り、去っていく天童。
ほむら「天童……?」
【14:06/オフィス街】
マンションの屋上。
目を覚ますほむら。
変身の解けた制服姿。
なぜか、まどかたち魔法少女が変身の解けた姿でほむらのそばに横たわっている。
まどかを助け起こすほむら。
一瞬躊躇しつつ、盾を構えようとするが盾が出ない。
変身しようとして、何も起きないことに気づくほむら。
ほむら「ソウルジェム……落としたのは、夢じゃない?」
ほむら「だったら、どうして私は生きてるの?」
自分の指を見るほむら。
爪に刻まれていたダイヤのマークが消えている。
まどか「ほむら……ちゃん」
ほむら「まどか。ソウルジェムを見せて」
まどか「うん。……あれ?」
何も起こらない。
まどかの手をつかみ、爪を見るほむら。
ほむら「――ない」
ほむら「どういうこと?」
マミ、さやか、杏子が起き上がる。
マミ「どうして?気を失ってたみたい、だけど……」
杏子「雨の中、呑気に寝てるなんて、バカみてーじゃねえか」
さやか「いつの間にか、変身も解けてるし」
ほむら「あなたたち、ソウルジェムは?」
マミ「まだ濁りきってはいないわよ。ほら……?」
ソウルジェムを出せないマミ。
さやか「あれっ。おかしいな」
杏子「どうなってんだ」
誰一人、ソウルジェムを出せない。
マミ「まさか、何者かに盗まれた?」
ほむら「ソウルジェムが私たちの生命活動をサポートできる距離にあるなら変身できるはずよ」
ほむら「誰か、変身できる?」
同じように、誰も変身できない。
杏子「何だこりゃ。魔法少女じゃなくなっちまったのか、あたしたち」
さやか「えーっ。華々しくデビューを飾った魔法少女さやかちゃんの、今後の活躍は?」
まどか「……さやかちゃん、結構気に入ってたんだ」
マミ「キュゥべえ。これはどういうこと?説明してもらえるかしら」
呼んでもキュゥべえは現れない。
杏子「全員魔法少女じゃなくなった。そういうことかよ」
マミ「……鹿目さんの願い。それが今の状況を生み出したんじゃないかしら」
さやか「どういうこと?」
マミ「鹿目さんの願いは、守ってきた意志に報いる」
マミ「でも、それだけじゃなかった」
マミ「死か魔女になるか、二つの道しかないなんて間違ってる」
マミ「この言葉も、願いに含まれているのだとしたら」
ほむら「魔法少女の運命に、別の選択が加わった――?」
杏子「人間に戻ることが選択ってことか?でもあたしは別にそんなこと」
マミ「私たちは、二つの運命しかなかったことを知っている」
マミ「それに、魂がソウルジェムに取り込まれてしまったことも」
マミ「この時点ですでに、無制限に希望を振りまく存在ではなくなってしまっている」
マミ「魔法少女であること自体が私たちの負い目になる以上、私たちは魔法少女でいられなくなった」
マミ「その結果、第三の選択がもたらされたのではないかしら」
さやか「そもそもまどかは、どんな願いを叶えてもらうつもりだったのさ?」
まどか「えっと、その。魔法少女が希望を持ち続けていられる、そんな風にならないかなって」
杏子「希望を持ち続けられない魔法少女は魔法少女じゃない」
杏子「それなら、マミの話も間違っちゃいないのか」
ほむら「仮にそうだとしても、魔法少女の運命を変えるなんて願いの代償ははかりしれない」
ほむら「これまでの私の経験からみて、まどかは莫大な穢れを背負って魔女になっていなければおかしい」
四人の目がまどかに集まる。
おろおろするまどか。
ほむら「契約の結果、というなら、あまりにも都合がよすぎる。これじゃまるで、奇跡――」
ほむら「……奇跡?」
――だから、こんな宇宙が一つぐらいあっても罰は当たらないさ――
ほむら「天童?」
マミ「天童って――」
杏子「誰だよ?」
ほむら「九州から来た叔父よ。温泉饅頭をもらったでしょ?」
杏子「あれは、田舎から送ってきたからって、お前にもらったんじゃねえか」
ほむら「もう。馬鹿ーっ。どうして私がまどかをさらったあなたに温泉饅頭渡さなきゃならないの?」
ほむら「それに温泉饅頭を送ってくるなんて、家が温泉旅館ぐらいのものでしょ」
杏子「知るかよ。マミのおすそ分けか何かだろ」
マミ「杏子は、その叔父さんと面識があるの?」
ほむら「あなたまでそういうことを言うの?」
マミ「もしかして、それ、暁美さんが繰り返してきた別の一ヶ月の話じゃない?」
ほむら「……えっ?」
マミ「そういう意味じゃずっと戦い続けてきたから、混同しているのよ、きっと」
マミ「『この一ヶ月』、私はあなたの叔父さんとは面識はないわ」
ほむら「そんな……」
まどかとさやかの方を見るほむら。
無言でうなずく二人。
よろめくほむら。
まどかがその体を支える。
まどか「私たちのために、それだけ必死だったんだね」
ほむら「違う……天童は、今日だって……。これまでもずっと……」
さやか「とりあえずさ、雨に濡れないところへ行こうよ。このままだと風邪ひくよ」
マミ「それもそうね。弱っている暁美さんにはこたえるかも」
杏子「――ダメだ。鍵がかかってる」
マミ「そういうときの、泥棒魔法でしょ!……もう魔法少女じゃなかったわね」
さやか「もしかして、最強の魔女を倒したあたしたちなのに」
さやか「ドア一枚のせいで、消防署の人に救助してもらうわけ?」
さやか「やだやだやだ。そんなの、かっこ悪いよ!」
まどか「そんなこと言っていられないよ。ほむらちゃんを安静にしないと」
【昼/病院・ロビー】
壊されたテレビに代わって、別のテレビが搬入されている。
救助された五人の元・魔法少女が柱の一本に集まっている。
マミ「魔女になる心配がなくなったとはいえ、魔法が使えないのって不便なものね」
マミ「治療の魔法ですぐに解決できたのに」
さやか「そういえば、契約の願いって、無効になってないよね?」
杏子「自分の願い事なのに、どうなってるのかわかんねえのか?」
まどか「さやかちゃんの願いは、自分のためのものじゃないから」
杏子「……他人のために願い事使っちまったのか」
さやか「……みんな、ゴメン。すぐ戻るから」
足早に、奥へ消えていくさやか。
【病室】
横たわり、布団をかけられている恭介。
さやか「まさか、そんな……」
さやか「あたしが魔法少女じゃなくなったから、元に戻ったんだ」
さやか「だったら願いじゃなく、魔法で治しておけばよかった……!」
恭介に覆いかぶさるようにして泣くさやか。
ぽん、とその肩が叩かれる。
恭介「おかえり」
自分に触れているのが恭介の左手であることに気づくさやか。
病室に入ってくる看護師。
看護師「もう少し上条君を寝かせてあげて」
看護師「さっきまですばらしい演奏をしていて、熱を出したの」
さやか「演奏……。『アメイジング・グレイス』」
さやか「嘘だと思うかもしれないけど、あたし、聴こえたよ」
さやか「おかげで頑張れた」
恭介「さやかも、無事でよかった」
恭介「今日は無理だけど、約束どおりヴァイオリンを弾くよ」
さやか「手……動くんだよね?」
恭介「手も足も。随分と、雨に降られたんだね」
さやかの髪に、左手で触れる恭介。
さやか「……そうだ。ほむらがちょっと風邪をひいたみたいでさ」
さやか「様子を見に行ってくる」
恭介「さやかも、風邪をひかないようにね。今日はもう、温かくして休むといいよ」
さやか「あたしは、風邪一つひいたことがないのが自慢なんだから」
さやか「恭介だって、知ってるでしょ?」
ピースサインで笑顔を向けるさやか。
さやか「明日、また来るから」
恭介「うん。待ってる」
病室を出て、走り出すさやか。
【病院・ロビー】
搬入されたテレビの設置が終わり、スイッチが入る。
ニュース番組が“見滝原竜巻災害”を報道している。
アナウンサー「ヨットでの太平洋横断など、世界的な冒険家、椎名大輔さんが」
アナウンサー「見滝原竜巻災害の現場から救助されていたことが判明しました」
画面に映る天童の顔。
食い入るように見つめるほむら。
アナウンサー「椎名さんは見滝原市内の病院に運ばれ、現在入院中とのことです」
アナウンサー「なお、椎名さんはチョモランマ単独登頂に挑戦することを公表しており」
アナウンサー「今回の災害で、登頂が延期になる可能性も出てきました」
背景に映る病院。
ほむら「天童、ここに……いる?」
ふらっと歩き出すほむら。
まどか「ほむらちゃん?」
【病室】
ドアを開くほむら。
天童がベッドから体を起こしている。
頭に包帯。
ほむら「天童!」
駆け寄るほむら。
ほむら「天童、天童、天童!やっぱりいたんだ。記憶違いなんかじゃなかった」
天童に抱きつくほむら。
ほむら「私、やったよ。ワルプルギスの夜を倒した」
ほむら「それに、まどかも、私も魔法少女じゃない」
ほむら「だからもうやり直さなくていい」
ほむら「……何変な顔してるの?」
ほむら「ほら、『カット』って、いつものように言ってよ」
ドアが開く音。
中年の婦人が入ってくる。
婦人「大輔さん?」
婦人「――お知り合い?」
天童「わからないんだ」
ほむら「あなたまで記憶喪失のふりをするの?」
婦人に向き直るほむら。
ほむら「私、天童と一緒にいたんです」
婦人「もしかしたら、主人とは山でご一緒に?」
ほむら「山?」
婦人「チョモランマに登るために、練習で雪山登山をして、遭難して一ヶ月行方不明だったんです」
婦人「まさか、竜巻に巻き込まれているなんて」
婦人「おまけに、この一ヶ月の記憶もなくなってて」
婦人「もし、何かご存知でしたら――」
改めて天童を見るほむら。
自分の知る、天童よりも十歳は老けている。
ほむら「椎名、大輔……」
ほむら「この人の体を借りてたのね」
婦人「えっ?」
ほむら「いいえ。人違いだったみたいです」
ほむら「ご主人、ご無事で何よりでした」
ぽん、とほむらの肩を叩く婦人。
婦人「気を落とさないで。あなたの捜している人も、きっと見つかるから」
婦人「主人なんか、行方不明になるのこれで二度目よ」
婦人「十年ぐらい前にもヨットで太平洋横断中に、三ヶ月ほど消息が途絶えて」
婦人「それでも帰ってくるんだから、あなたも大丈夫。元気を出して」
ほむら「――はい」
うつむくほむら。
ほむら「失礼しました」
ドアに手をかけるほむら。
振り返り、椎名を見る。
声には出さず、唇のみ動かすほむら。
――さよなら、天童。ありがとう。
病室を出たほむらを元・魔法少女四人が待っている。
まどか「ほむらちゃんの、知り合いの人?」
ほむら「ううん、人違い」
マミ「じゃあ今度こそきちんと診てもらいましょう。魔法に頼れない分、無理ができないんだから」
さやか「風邪はひき始めが肝心、って昔から言うからね」
杏子「まあ、うまいもんでも食えば、ケロリと治っちまうけどな」
時を巻き戻す盾は、もう、ない。
巻き戻す必要もない。
誰も魔女と戦わない、魔女にならない。
魔法少女の運命を引き受けたまどかが代償としてその身に受けるはずだった穢れは天使が持ち去ってしまった。
一ヶ月の間、ほむらを振り回した天使はもういない。
それでも、ほむらは笑顔になれる。
なぜなら、ここにいるのは――
天国に一番近いほむら 鹿目まどか編「わたしの、最高の友たち」 終わり
天国に一番近いほむら エピローグ
【数日後/駅】
ホームに五人の元・魔法少女。
さやか「せっかく友達になったのに、残念だなあ」
杏子「これ以上マミの家に厄介になる理由はねーからな」
マミ「竜巻災害、というか、ワルプルギスの夜のおかげで遠い親戚が見つかる、というのも奇妙な縁ね」
まどか「そうなんですか?」
マミ「私たち、結局消防署の人に救助されたでしょ。あれが地方紙に名前入りで出ちゃって」
マミ「それをどういう経路で入手したのか、杏子の親戚の方が知ったみたいなの」
ほむら「でも、学校では新聞に掲載されたなんて話は聞いてないけど」
マミ「避難もしないで救助された生徒がいるなんて学校の評判を落とすだけだから」
マミ「全国紙じゃなかったことも幸いしたわね」
さやか「確かに、親からメチャクチャ怒られたもんなあ……」
さやか「バカとか、そんな言葉ですまされる問題じゃないぞ!って」
まどか「私も、避難所に行ったらママに叱られた」
まどか「どんな理由でも、死んでしまったら台風の日にサーフィンしに行く連中と同じ扱いなんだって」
杏子「あたしも、叱られることになるのかな」
ほむら「心配する必要はないわ」
ほむら「叱られたとしても、それはあなたを思ってのこと」
ほむら「後になって必ず、その言葉を思い返すときがやってくる」
さやか「一人暮らしなのに、なかなか深ーいお言葉ですねえ、ほむら?」
マミ「九州の叔父さんのことかしら?あまり、暁美さんが叱られる姿が想像できないんだけど」
ほむら「短い間だったけど、ずっと叱られてたような気もする」
ほむら「それに、励まされてたようにも」
まどか「そんなに慕ってる人なら、来てもらえばいいのに」
ほむら「いいの」
ほむら「これからは私が自分で学ぶ」
ほむら「一緒に歩むことのできる仲間もいる」
ほむら「たとえ、離れ離れになったとしても、それは変わらない」
杏子「あたしも、みんなのことは忘れないよ」
りんごをかじる杏子。
まどか「私も、杏子ちゃんのこと忘れない」
さやか「まあ、あんな戦い、忘れられっこないよね」
マミ「でも、ここに約一名、何度も戦いすぎて『どの戦いだっけ?』って言いそうな人がいるけど」
ほむら「……おかしいわ。私の知っている巴マミは猫耳メイド服で土下座して」
ほむら「『一生しもべになることを誓います』って泣いて言ってたのに」
マミ「勝手に記憶を捏造しない!」
杏子「相変わらずだなあ、二人とも」
さやか「ほむらは私のライバルですよ!たとえマミさんでもそれは譲れません!」
マミ「ちょっと。彼女はライバルなんかじゃないわよ」
マミ「……お友達、なんだから」
マミとほむらの目が泳ぐ。
まどか「杏子ちゃんも、携帯電話を持ったら電話してね」
料理の本を渡すまどか。
杏子「本なんて食べられないのにさ」
まどか「自分で作れるようになったら、もっとおいしいものが食べられると思って」
杏子「……だな」
アナウンスが列車の到着を告げる。
列車に乗る杏子。
杏子「じゃあな。お前らと一緒に戦えたこと、一生の宝物にする」
さやか「あたしにとっても宝物だよ」
マミ「うちに来ればいつだっておもてなしの用意はできているわ。遠慮しないでいらっしゃい」
まどか「電話番号そこに書いておいたからね」
ほむら「元気で」
列車のドアが閉じる。
手を振る杏子と、手を振り返す四人。
列車が出発し、やがて見えなくなる。
ホームを去る四人。
駅の清掃員が、落ちている手帳に気づく。
清掃員「ちょっと姉ちゃん、これ落としたよ!」
声をかけるが、話に夢中なのか聞こえていない。
清掃員「幸せそうな連中だなあ」
清掃員「それに比べて俺なんか」
清掃員「嫁さんには借金作られて、子供置いて逃げられて」
清掃員「麻薬の密売に手を出したら殺し屋に狙われて」
清掃員「自首して出所しても銀行員に復職できるはずもなく」
清掃員「こんなバイトでその日その日を食いつないで」
清掃員「グチグチ言うのはやめよう。……連絡先とか、書いてないか?」
手帳をめくる清掃員。
手帳には何も書かれていない。
清掃員「新品か?でも外側はそんな風じゃねえな」
ページをめくり続ける清掃員。
ページの終わり近くで、ようやく記述のある箇所を見つける。
清掃員「ちぇっ。大きなお世話だよ」
清掃員「でも、こんな風に言われるってうらやましいな」
清掃員「俺も、人生考え直してみっか」
清掃員「とりあえず駅に届けときゃ、あの姉ちゃんたちが取りに来るよな」
手帳を閉じようとする清掃員。
そこに風が吹き、記述のあるページだけを破りとっていく。
清掃員「あっ!」
清掃員「俺、知らね」
空を舞う手帳の切れ端。
書かれていたのはたった一文。
――“お前の人生、それでいいんだ!”
天国に一番近いほむら 終わり
453 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします - 2012/12/23 09:27:54.62 IDUaz4tQo 325/334天国に一番近いほむら、これにて完結です。
本編で説明を省いたいくつかの事柄について触れたいと思います。
まどかの願いで魔法少女は人間に戻れるようになっていますが、その条件は願いに見合うだけの
救いをもたらすことです。ワルプルギスの夜を倒した、ということは竜巻災害を一つ消滅させた、と
いう実績に相当するため、魔法少女になったばかりのさやかでも人間に戻っています。
守る意志に報いる、という願いなので、それなりに功徳を積む必要がある、ということです。
一つの願い事と引き換えに魔女を倒し続けなければ生きていけない定め、が気に入らなかったので
このような形でルールに穴を開けました。そこ?と思うかもしれませんが「謝罪と賠償」に
通じるものがありませんか?
本来であればキュゥべえによって叶えられた願いは裏目に出るものです。マミはせっかく拾った命を
戦いによって失うことになり、さやかは仁美に恭介をさらわれる形になっています。杏子の場合は
もっと悲惨で自分の話を父親が聞いてくれなくなったことで家族を失う元も子もない結末を迎えています。
ほむらにしても、まどかを守る願いのせいでちょっとでも目を離すとまどかがすぐ契約しようと
してしまう=私が守るしかない、という叶い方になっています。
本編の願いが裏目に出ないのは神様の干渉が入っているのかもしれません。神様が魔法少女システムの
ことを知っているのは命題からうかがい知ることができます。
少なくとも、まどかを人間に戻すことに関しては神様が手を入れていることは確かです(願いの
効果に対して実績が不足しているであろうから)。
ほむらに与えた命題のために他人であるまどかを犠牲にするようでは神様の沽券に関わる、
ということと、クリームヒルトが誕生したら信仰してくれる人類がいなくなって商売あがったり、
という実利的な理由によるものです。
ほむらに命題が与えられた理由は特に設定していませんでしたが、ほむらが時間遡行をして
この時間軸にきたことで急に人類滅亡の危機が浮かび上がったため、その始末をさせるべく
命題を与えた、なんていうのもありかと思います。
454 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします - 2012/12/23 09:28:47.69 IDUaz4tQo 326/334ほむらが???で天童に会ったときには天童は神様から魔法少女システムについて知らされています。
これはまどかが背負う穢れを始末するためです。この時点なら天童にはキュゥべえの姿も
見ることができたかもしれません。
今回投下分の天童がらみの場面はドラマ最終回をほとんどそのままなぞっています。コメディを
期待された方は不満を感じるかもしれませんがご容赦ください。ドラマでは同じ台詞をより
熱く語っています。名場面の一つです。
ドラマ最終回を観ていない方のために断っておきますが、世界は改変されていないし天童が概念になった、
ということもありません。見滝原の竜巻災害は各地に爪痕を残しています。天童は天界に帰りました。
最後に手帳を落としていますが、そもそもほむらは物理的に手帳を受け取ったわけではないので落としている
ことにも気づいていません。ドラマでも人生肯定メッセージは甘粕四郎の背後に表示されていますが
四郎は見ていません。メッセージを贈った天童に認められた、ということが重要ということです。
ほむらの結末についてですが、原作におけるまどかの旅を「何でも一つだけ願いを叶えてもらえる
女の子が願い事を決めるための一ヶ月」と定義し、それに対するほむらの旅とは何であったかを
考えたところ、10話で契約するまでの「憧れの相手と対等の友達になろうと決意するまでの一ヶ月」に
着目して、決意が努力と行動によって実る「憧れの相手と対等の友達になるまでの一ヶ月+α」と
定義しました。原作でも一度対等の友達になっていますが直後にまどかのソウルジェムを砕く
結果に終わっています。
それに加えて全員生存ということで、対等の友達を複数持つ形で終わることにしました。
ドラマでも周囲の人々と心を一つにしていく形なので、まどかにのみ心を開くよりも合っている
のではないかと思います。
455 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします - 2012/12/23 09:30:57.55 IDUaz4tQo 327/3341レスで書ききれないほどの積み残しでしたが、本編で触れられなかったことについては
基本的に解釈は自由です。説明を省いた、と表記していることからもわかると思いますが
設定をすべて本編で明かす必要はなく、物語の根幹が十分明らかであればよいと考えています。
>>1の拙い技量でも伝わっているといいのですが。
来週のこの時間にHTML化依頼を出します。感想等ありましたら土曜一杯ぐらいまでならレス返しが
できるかと思います。ついでに性懲りもなくドラマについての補足を書くので年末年始の
空いた時間を使って観てもらえると幸いです。下手な正月番組よりは見ごたえがありますよ。
補足その5・天国に一番近い男
ほむら「最後の補足はドラマそのものの魅力を、終了した本編を振り返ることで解説するわ」
ほむら「>>1は名前欄を見てもわかる大阪人だけど、お笑いのセンスに乏しい」
天童「スキーが滑れない北海道人みたいなもんだな」
ほむら「したがって笑いの要素一つとってしてもうまく伝えられているかどうか怪しい」
ほむら「実際、後半はコメディよりも『続きはどうなる?』という話になった」
ほむら「それというのも、全編にわたってドラマの雰囲気を持たせ続けるだけの力がなかったから」
ほむら「その代わりに、気に入った要素を各編ごとにそれぞれ含めている」
ほむら「それを紹介していくことで>>1がこのドラマを執拗に推す理由を知ってもらえるとうれしい」
ほむら「巴マミ編。テーマは『ドラマの概要』それに『天童のキャラクター』」
ほむら「命題をクリアできなければ即死亡、という物騒な設定。それを暗くさせない天童のパーソナリティ」
ほむら「使い道のなさそうな瀬戸口グッズに助けられる主人公」
ほむら「本編では、初対面のマミに遠慮なく話しかける馴れ馴れしさが天童の本領」
ほむら「ドラマのゲストキャラとは大抵絡みがあり、不躾で四郎にとがめられる」
ほむら「大人の登場人物がもう少し多ければそのあたりの場面を描きたかった」
天童「話す相手が一人しかいないっていうのはむしろほむらの性質だからな」
ほむら「……努力はしてみるわ」
ほむら「美樹さやか編。テーマは『特訓』」
ほむら「スケボー以外に特技を持たない四郎はピアノや柔道で努力を余儀なくされる」
天童「『どうせ』ばっかりのネガティブ星人が成長するために努力は不可欠だな」
ほむら「四郎の成長物語でもあるこのドラマでは努力の場面が丁寧に描かれている」
ほむら「もちろん、数日でピアノを弾きこなしたり有段者を投げるようなことは実際には難しいけれど」
ほむら「少しずつ自信をつけて、『どうせ』と言わなくなっていく四郎に、まわりの人々も引っ張られる」
ほむら「鼻持ちならないボンボンの結城サトルが好青年になっていくあたりが特に顕著かしら」
天童「でもピアノの次の話じゃ天狗になっちまうんだよな」
天童「普段褒められることのない奴が下手に自信を持つのは怖いねえ」
天童「人間、謙虚が一番」
ほむら「あなたも少しは謙虚になったらどうかしら」
ほむら「佐倉杏子編。テーマは『自立』」
ほむら「基本的に、四郎は天童に支えられてはいても命題のクリアは自力でなんとかしている」
ほむら「ドラマも終盤になると、天童に意見を求めなくてもやるべきことを考えられるようになる」
ほむら「それまで教師的な立場だった天童が年の離れた兄のようなポジションで四郎を見守る」
ほむら「二人の絆が強く結びつく一方で、命題の数は残り少なくなっていく」
ほむら「いずれ去っていく天童と別れたくないという気持ちは視聴者も同じ」
天童「俺ってば罪な男だねえ」
ほむら「……そのポーズ、昔はともかく今では『もう何も恐くない』ってネタにされてるわ」
ほむら「誰のことかは明言を避けるけど」
ほむら「鹿目まどか編。テーマは『団結』」
ほむら「麻薬密売の容疑をかけられた四郎の潔白を証明するため、四郎の仲間が立ち上がる」
天童「それで銀行に侵入して監視カメラの映像を探すんだよな……って、どんなストーリーだよ?」
ほむら「脚本のバラエティに富むのも特徴の一つ」
ほむら「自信過剰になって嫌われる話、熱血スポーツもの、兄に見下され罵倒される忍耐もの」
ほむら「多彩なジャンルを取り込みながらも、一話単位で見ればベタな流れ、よく言えば王道を行く」
ほむら「そこに命題がどう絡んで、どのようにクリアされるのか」
ほむら「展開が読めるのに命題のクリア方法は見当もつかない。それが視聴者をハラハラさせてくれる」
ほむら「予測可能と予測不能の絶妙なミックス具合は脚本のレベルの高さを示している」
ほむら「それともう一つのテーマが『最終回』」
天童「まあ、ドラマ観てりゃ最終回まんまだってわかるよな」
ほむら「最終回の命題は『天童にさよならを言えなかったら即死亡』」
ほむら「視聴者にとっては、『天国に一番近い男』にさよならするための一時間」
ほむら「命題クリア後の四郎が丁寧に描かれ、椎名大輔との出会いで視聴者も救われる」
天童「あのシーンがなかったら俺がどうなったのか、モヤモヤしたんだろうな」
天童「この俺でも、さすがに視聴者の記憶までは消せないからな」
ほむら「補足1で明かせなかった特殊能力、《記憶操作》」
ほむら「本編でも私以外の登場人物は天童のことを忘れている」
ほむら「杏子の『まどかって、誰だよ?』とぴったり合わせられるため、結末は早い段階で決まっていた」
ほむら「魔法少女システムはどうなったのか、など疑問は残るけれど、ドラマは違う」
ほむら「きれいさっぱり終わることができ、残りがない」
ほむら「その後作られた二度のスペシャル版や『教師編』が蛇足、という意見があるのも」
ほむら「原因はこの最終回でやりきった感が見事だからではないかしら」
ほむら「ドラマを観ていない人にとって本当に必要だったのか?と思われる補足もこれで終わり」
ほむら「本編を気に入ってもらえたのなら、必ず気に入る作品であることは保証するわ」
ほむら「天童や大和田政雄のキャラに笑い、甘粕四郎を応援する」
ほむら「そんな時間を是非過ごしてみてほしい」
ほむら「そして締めは……ドラマを観た人には欠かせないであろうこの言葉で」
天童「バイバイ!俺、お前らのこと、結構好きだったぜ!」

