1 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:06:59 n/4RxDgQ 1/67

「あ、間違った。度胸無いな、だ」

「わざとだろ?そうなんだろ?なぁ、そうなんだろ?」

「はは、たった一文字違いじゃん」

「文字で書くとな?でも口に出したら全然違うよな?」

「まぁまぁ。落ち着けよ、幼」

「……」

「今問題なのは胸が有るか無いかじゃないだろ?」

「お化け屋敷…」ゴクリ

元スレ
男「胸無いな」 幼馴染「なんだとこの野郎!」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1404209219/

2 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:07:51 n/4RxDgQ 2/67

「いや、幼がどーーしても入りたくないなら別に良いんだぜ?」

「は、入るよ!なんだよ、こんなちゃっちいの!」

「あんま大声で言うなよ。中の人怒っちゃうぞ?」

「ふん!別に問題ないつーのっ!」

「普段より多めに脅かしてくるかもよ?」

「っ…!!」

「ほらほら、どうする?」

3 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:08:32 n/4RxDgQ 3/67

受付「あの…どうなさいますか?もし宜しければ、後ろのお客様から先に…」

「あ、そうですね、俺ら邪魔ですね。ほら幼、ちょっと道あけて…」

「わ、私たちから入りますし!」

受付「そ、そうですか?それでは…」

「幼、大丈夫なん?」

「も、もちろんだっつーの!」

受付「それではどうぞ」

「おう!ちょちょいとヒネってやるっつーの!」

受付「あの、それはちょっと…」

4 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:09:11 n/4RxDgQ 4/67



お化け屋敷内

「……」
ぎゅーっ

「幼、薄暗いんだから、目開けてないと危ないぞ?」

ぱちっ
「つ、瞑ってねーよ!ちゃんと開けてるっつーの!」

「そうか?なら良いんだけど」

「…」

「ほら、幼」

「なんだよ、目ならちゃんと…」

5 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:09:53 n/4RxDgQ 5/67

「それは解ったから」
さっ

「あ?」

「ちょっと段差があるから、手出しなよ」

「お、おう」
ぎゅうっ

「ちょっと痛いよ」

「し、しっかり握らねーとだろが!」

「そうだな」
ぎゅっ

6 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:10:42 n/4RxDgQ 6/67

「さ、さっさと先に進むぞ!」

「何があっても慌てて走ったりすんなよ」

「は、ははっ…そんな事ある訳…」
バサッ
お化けA「ギャーーーー!」

「ぎゃーーーーーーっ!!!!!」
ダッ

7 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:11:19 n/4RxDgQ 7/67

「言ったそばから…」
ぐいっ

「あ、あわわ…」

「落ち着け、幼」
ぎゅうっ

「あ、あう…」

お化けA(何抱き合ってんだよ、リア充め…)

8 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:12:00 n/4RxDgQ 8/67

「…落ち着いたか?」

「お、おう…」

「!」
ばっ
「つーか、どさくさにまぎれて、抱きついてんじゃねぇ!」

「だってそうしないと危なかっただろ?」

「転んで怪我でもしたら大変だし」

「…」

「それに、走って先に進んだら、そこにもお化けがいるんだぞ?」

「う…」

9 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:12:41 n/4RxDgQ 9/67

「だからほら、手」
すっ

「うん、あ、ありがとう…」
ぎゅっ

「いつもそんなに素直なら良いのになー」

「私はいつでも素直だっつーの」

「そうかそうか」

「…そうだよ」

「そんじゃ、先に進むぞ?」

「お、おうよ」

(ちっくしょう…なんでこんな事に…)

10 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:13:36 n/4RxDgQ 10/67



4日前

「は?賭け?」

「おう!賭けだ!」

「勝負事は何か賭けた方が燃えるだろ?」

「んー、何を賭けるんだ?言っとくが金は駄目だぞ?」

「負けた方が一番苦手な弱点を晒して、克服するってのはどうだ?」

「弱点…ねぇ?」

11 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:14:33 n/4RxDgQ 11/67

「どうだ?もちろん受けるだろ?」

「あー、まぁいいぜ」

「うっし!んじゃやろうぜ!」

「その前に、お互い苦手な事を事前に紙に書いておこうぜ」

「あん?」

「後で、苦手な事を無かった事にしない為にさ」

「ははは、良いなそれ。そうしようぜ」

「ちゃんと苦手な事書けよ?」

「そっちこそ」

12 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:15:14 n/4RxDgQ 12/67

「へへっ、武士に二言はねーぜ」

「はは、武士なのかよ」

「おうよ!心はサムライだぜ!」

「書いた紙は別々の封筒に入れておこうぜ」

「へっへっへ…私が苦手なのは…っと」
カリカリ

「苦手な事なぁ…」
カリカリ

13 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:16:51 n/4RxDgQ 13/67

「よし、そんじゃ、今日は何の勝負にすっかな?」

「へっへー。今日はソフト持参なんだぜ!」

「お?」

「プレステ出せよー」

「天地を喰らう2?懐かしいなー」

「だろだろ?」

「でもこれでどうやって勝負するんだ?」

「最終面クリアした時のスコアで勝負だ!」

「なるほど、受けてたつぜ」

「行くぜっ!」

14 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:17:48 n/4RxDgQ 14/67



関羽『敵将、曹操、討ち取ったりー!』
ジャーンジャーーン

「う…」

「さて、最終スコアはどうなるかな?」

「私の方が沢山ボスを討ち取ったはずだ!」

「でも呂布は俺が倒したからなぁ」

「むぅ…私の趙雲は負けてない!」

15 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:18:32 n/4RxDgQ 15/67



「…まぁ結果、俺の圧勝だった訳だが」

「そんな馬鹿な…」

「関羽の方が敵の突進を止めやすいし、使いやすいんだよ」

「あと、幼は空中投げを狙いすぎだよ」

「だって、格好良いだろ?空中投げ!」

「格好良いけど、点数には結びつかないからな」

「ぐぐぐ…特訓してきたのにっ!」

16 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:19:20 n/4RxDgQ 16/67

「さーて…幼の苦手な事は何かなー?」
ガサガサ

「うぐぐ…」

「何なに?……お化け?」

「そ、そうだよ…私の弱点はお化けだよっ」

「まぁ、知ってたけどさ」

「くっそー!男の弱点を暴くつもりがっ!」

「さて、どうやって克服するかなぁ?」

17 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:19:58 n/4RxDgQ 17/67

「お、お化けなんて本当はこの世には居ないんだぜ?」

「克服しようがないじゃんか」

「あー、そう言えば」

「な、何だよ」

「近くの遊園地にお化け屋敷があるじゃんか」

「お、お化け屋敷?そんなのあったかな?無かったんじゃないかな?」

「あそこ、改装して前より怖くなったらしいな」

「つ、作り物じゃねーか、ハハ」

18 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:20:45 n/4RxDgQ 18/67

「んじゃ、今度の日曜、一緒に行こうぜ」

「わたっ、私は!作り物のお化けは全然怖くねーよ!」

「それを証明する為にもさ」

「に、日曜は用事が…」

「おいおい、武士に二言は無いんじゃ無かったのかよー」

「逃げるのか?」

「逃げねーよ!解ったよ!行ってやんよ!」

「時給制のアルバイトお化けなんざ、片手でヒネってやんよ!」

「じゃあ、日曜日、朝からな」

「お、おぅ…」

19 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:21:28 n/4RxDgQ 19/67

遊園地に行く前日

「くっそー…まさかこんな事になるとは…」

「よりにもよってあそこの遊園地のお化け屋敷かよ…」

「私がお化け苦手になった原因じゃねーか!」

「正直行きたくねぇ!」

「……」

「でもなぁ…」

「こっちからふっかけた勝負だったしなぁ……」

20 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:23:38 n/4RxDgQ 20/67

「それに、あれからもう6年くらい経ってるし」

「今見たら、結構子供だましかも…」

「てか、行くしかねーな!」

「私の数少ない弱点を克服するチャンスって考えれば良いんだ!」

「そうだ…うんうん、そう考えれば良いんだ!」

「それにこれって、デ、デートだし?」

「男とデート…」

21 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:24:15 n/4RxDgQ 21/67

「作り物のお化けをぶっ飛ばして、弱点克服!」

「その後、男と遊園地を堪能!」

「そして2人はいい感じに……」

「おいおい、すげー良い事尽くめじゃねーか!」

「ちょっとワクワクしてきたぜ!」

「そうとなったら、明日に備えて早く寝るか!」
パチン
「……」

「……デート」モンモン

22 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:24:53 n/4RxDgQ 22/67

翌朝

(くっそ…興奮してほとんど眠れなかったぜ……)

「幼、体調悪いのか?」

「んな事ねーよ」

「ならいいけど…」

「さ、行こうぜ!」

23 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:25:29 n/4RxDgQ 23/67

現在


お化けB「置いてけぇ…その首、置いてけぇぇぇ!」
ガバーーッ

「ぎゃーーーー!」



お化けC「足元に落ちてないですかねぇ…」

「な、何がだよ」

お化けC「私のハラワタがぁぁぁぁ」
ガバーーッ

「ぎゃーーーーー!」

24 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:26:10 n/4RxDgQ 24/67



お化けD「……」
ズルリズルリ

「お、おい…あれ、あいつ、か、下半身無くないか?」

「そう見えるな…」

お化けD「お前の足を俺にくれぇぇぇぇ」
ズルズルズルズル

「ぎゃーーーーーー!」

25 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:26:49 n/4RxDgQ 25/67

「は、速ぇぇ!ど、どんな仕組みだっ!」

お化けD「イヒヒヒ…俺は本物だからなぁ…」

お化けD「仕掛けなんてねぇよ…イヒヒヒ」
ズルズルズルズル

「ほ、本物だっ!あの動きは本物のお化けだっ!」

「ダメだ!逃げられねぇ!男っ!もう倒すしかねぇ!」
グググッ

「いや、それは駄目だから」
ガシッ

26 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:27:31 n/4RxDgQ 26/67



「ハァ、ハァ…逃げ切れたか…」

「うん、そろそろ出口かな?」

「やっと終わりか…」

「あ、あそこ明るくなってるな」

「い、急ごう!男っ!」
ダダダッ

「あっ!待てっ幼!危ないから走るなっ!」

バリバリバリーー

「ギャーーーーーーーーーーー!」
バタッ

27 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:28:26 n/4RxDgQ 27/67




「……っ!」
ガバッ

「お、やっと気付いたか。良かった良かった」

「て、敵はどうなった?私はどうなったんだ?」

「出口直前の壁から作り物の手がいっぱい出てきて」

「それ見て気絶したんだよ」

「き、気絶…だと?」

「頭打たなかったから、大丈夫だと思って救急車は呼んでない」

「そんで広場のベンチで寝てた訳だ」

「俺の膝枕でな」

28 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:29:07 n/4RxDgQ 28/67

「畜生!屈辱だーーっ!」

「ほら、目が覚めたんならそろそろ帰ろうぜ」

「え?今何時だよ?」

「もう4時回ったな」

「気絶じゃなくて、ただ寝てたんじゃねーか!」

「だーーーー!何やってんだ私!」

「予定が…計画が…くっそーーーー!」

「取り敢えず落ち着け」

29 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:29:47 n/4RxDgQ 29/67

「うぐぅ…」

「まぁ、また来れば良いだろ」

「遊園地は逃げないし、お化けも克服してないしな?」

「……ニヤついてんじゃねぇよ」

「ところで予定と計画って何だ?何か考えてたのか?」

「それはお化けとは関係無いから内緒だっ」

「ん、そうか」

「帰るぞ!男っ!」

「へいへい」

30 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:30:32 n/4RxDgQ 30/67



帰りの電車の中

「結構混んでるな…」

「ん?そうだな…はぁ……」

「何?まだ落ち込んでる?」

「な、何でもねーよ」

「気になるんだが」

31 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:31:13 n/4RxDgQ 31/67

ガタタン
ギューーー
「いてててっ」

「大丈夫か?」

「後ろから押された…すげー痛い…」

「…こっち側に」
ぐいっ
「……向かい合わせに立つってどうなんだよ」

「幼の後ろは壁だし、前は俺の鉄壁のディフェンスだぞ?」

「幼の事をしっかり守るぜ」

「あ、ありがと…」

32 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:31:56 n/4RxDgQ 32/67

「……顔近けぇな」

「そこは我慢してくれ」

「……別にイヤじゃねぇし」

「ん、そか」

「あ、あのよ、男」

「ん?」

「えっと、その…なんつーかさー」

「これ聞くのはルール違反かもしれねーけどよー」

「何だよ、歯切れ悪いな」

「男のよー、じゃk」

33 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:32:35 n/4RxDgQ 33/67

ガタタン
ギューッ
「うぉっと」

「だ、大丈夫か、男」

「大丈夫大丈夫」

「俺は大丈夫なんだけど…」

「ん?」
ぎゅうっ

34 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:33:09 n/4RxDgQ 34/67

「俺の身体に手回しちゃってるんだが?」

「……しばらく良いだろ、掴まる所無くて不安定だったし」

「……あー、うん」

「嫌か?」

「嫌じゃないけどさ…」

「何だよ」

「胸当たってるんだけどさ」

「なっ!?」

「胸無いな」

「何だとこの野郎!」

35 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:33:53 n/4RxDgQ 35/67

「でも度胸はあるな」

「お、おう…?」

「電車内で抱きついてきたりってさ」

「…こりゃ不可抗力だから良いだろ、別に」

「あぁ、良いよ」

「で?さっき何か言いかけたのは何だ?」

「あー、あのさー、言いたくなかったらさー、別に答えなくても良いんだけどよー」

「何だよ」

36 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:34:29 n/4RxDgQ 36/67

「男の弱点って何だ?」

「俺の弱点なぁ」

「勝負に負けた私に聞く権利無いんだけどよー」

「でも、聞いてみたいんだ」

「何で?」

「男って、勉強も運動もソツなくこなすじゃん?」

「そうか?」

37 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:35:12 n/4RxDgQ 37/67

「クラスの連中、分け隔て無く接してるだろ?」

「普通だろ」

「先輩や後輩からも頼りにされてるしよー」

「そうかなぁ」

「そうだろ。自覚ねーのかよ」

「俺は普通だと思うがなぁ」

「…あと、男が何かにビビってるの見た事ねーし」

「んー」

38 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:35:55 n/4RxDgQ 38/67


「あの賭けの紙に何て書いたんだ?」

「……」

「あ、言いにくいなら良いんだ別に、うん」

「…悪用しないって約束出来るか?」

「悪用?それをネタに脅すとか?しねーよそんな事、ははは」

「……幼」

「なんだよ?」

39 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:37:07 n/4RxDgQ 39/67

「だから、幼だって」

「だから、なんだよ」

「俺の弱点」

「は?」

「俺が一番怖いのは幼さんです」

「い、意味がわからねーんだけど」

「私が怖いってどう言う意味だよ」

40 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:38:01 n/4RxDgQ 40/67

「あー、結構混んでる電車の中で話す事じゃねーと思うんだけどゴメンな」

「ん?なんで謝るんだよ」

ぎゅっ

「お、おい、男?」

「俺、お前の事大好きなんだよ。知ってたか?」

「なっ!?」

「声デカいよ」

41 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:38:45 n/4RxDgQ 41/67

「な、何言ってんだよいきなり」

「ん?マジなんだけど」

「そんなの電車の中でする話しかよ!」

「だから最初に謝っただろ」

「謝って済む話しかよ!」

「また声デカくなってるぞ」

「でもお前っ…」

42 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:39:26 n/4RxDgQ 42/67

「俺は今、幼の顔を見るのが一番怖い」

「何でだよ?」

「返事を聞くのが怖いから」

「んん?」

「幼はすぐ顔に出るからさ」

「きっと解かっちまう」

「……」

43 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:40:39 n/4RxDgQ 43/67

「幼が今、何を考えているのかが」

「だから今、幼の事ぎゅっと抱きしめてるの、照れ隠し」

「照れ隠し?」

「今、俺、きっと顔真っ赤だからな」

「そ、そうかよ…」

「だからしばらくこうしてて良いか?」

「お、おぅ…」

44 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:41:15 n/4RxDgQ 44/67




『次は~薬師如来前、薬師如来前~。お出口、左側になりま~す』

「おっと…着いちまったな」

「……おぅ」
プシュー

「ほら、降りるぞ」

「……」
ぎゅうっ

「どうした?」

「もうちょっと、このままでいたい…」

「!」

「ダメか?」

45 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:41:56 n/4RxDgQ 45/67

プシュー
ガタンガタン…
「…まぁ、こんな事もあるよな」

「すまねーな…」

「……俺も」

「ん?」

「実は俺も、もうしばらく、こうしていたかった」

「そっか…へへっ。たまにはこんな事もあるよな?」

46 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:42:42 n/4RxDgQ 46/67

「あぁ…こうなっちゃうのが怖かったんだよなぁ」

「何がだよ?」

「俺が幼の事怖いって言ったのはさー」

「言っちゃったら、今までの関係が壊れそうで怖かったんだ」

「そんなのが怖かったのかよ、はは」

「俺にとってはかなり重要な事だったんだよ」

「私が男の事を嫌いって言う訳ないだろー」

「私も男の事が大好きだぜ?昔からなー」

「お、おぅ…さらっと言うんだな」

47 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:43:43 n/4RxDgQ 47/67

「何だよ、何か変か?」

「だってさっき大きな声出しただろ?」

「ありゃちょっとビックリしただけだよ」

「ちょっとビックリ…か」

「恥ずかしいーとか、拒絶されたらどうしようーとか…」

「そんなマイナス思考一切無いのな?」

「そんな事考えた事ねーな」

「嫌いならずっと一緒にいねーよ」

「仲の良い友達って言うか、兄妹って言うか…」

「そんな感じには思ってなかったのか?」

「全然」

48 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:44:34 n/4RxDgQ 48/67

「はぁ…俺一人がビビってたのかよー」

「そうだな、ビビリだなー」

「男の弱点は私だったかー……へへー」

「悪用するなよ?さっき約束しただろ?」

「悪用って何だよ」

「……」

「ま、いいや。今こうしてんのが幸せだからー」
ぎゅーっ

49 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:45:24 n/4RxDgQ 49/67

「…あぁ、もう、お前は可愛いなぁ」
ぎゅーーーっ
ナデナデナデ

「なっ!?なんだよいきなり!」

「それが悪用ってんだ」

「はぁ?」

「いつもは乱暴な口調なのに、たまに見せる可愛い仕草が好きだ」

「幼にそれやられると、俺は抵抗出来なくなっちまうんだよ!」

「…ほぅ?」

50 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:46:14 n/4RxDgQ 50/67

「だから…」
ぎゅうっ
「へへへっ、こうすれば男は抵抗出来ねーのか?」

「……だから悪用するなって」

「……もうちょっとだけ、な?」

「……」

「なぁ、男」

「なんだよ」

51 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:48:06 n/4RxDgQ 51/67

「私は男の事が大好きで」

「男は私の事が大好き、で良いのか?」

「そうだな」

「じゃあ、私に言う事があるんじゃねーか?」

「…そうだな」

「……………」

「……黙ってないで早く言えよ、うりうり」
ぐりぐり

52 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:48:50 n/4RxDgQ 52/67

「止めろちびっ子」

「ちびっ子じゃねーよ!」
ぐりぐり

「…幼さん、俺とお付き合いして下さい」

「…ふへへへっ」

「変な笑い方すんなよ、変態と思われるぞ」

「その変な女に告白したのは誰だよ、ふへへっ」

「俺だな」

53 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:49:26 n/4RxDgQ 53/67

「……で?返事は?」

「この顔を見て判断しろよっ」
ぱっ

「ははっ、幼、何で泣いてんの?」

「そっちだって。ふへへっ、訳わかんねーな?」

「意味わかんねーなー」

「私のは嬉し泣きだよ、バーカ」

「俺のだってそうだよ、バーカ」

54 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:50:15 n/4RxDgQ 54/67




『次は~薬師如来前、薬師如来前~。お出口、右側になりま~す』

「ほら、降りるぞ」

「…」

プシュー
ガタンガタン…

「はー、ちょっと遅くなっちまったな」

「そ、そうだな。もう真っ暗だな」

「早く帰ろうぜ」

「あ、あのさ」

「ん?」

55 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:50:57 n/4RxDgQ 55/67

「手、繋いで良いか?」

「…もちろん」
ぎゅっ

「…ありがと」

「……お前、ホントに可愛いなぁ」

「……お前、ホントに格好良いなぁ」

「んじゃ、帰るべ」

「そうすんべ!」

56 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:51:31 n/4RxDgQ 56/67

「行くぞ、男!」
ダッ

「待て待て!」
ぎゅっ

「何だよ、早く帰ろうぜ!」

「や、ゆっくり歩いて行こうぜ」

「今夜は月が綺麗だしよ」

「キザか!」

「まぁ、たまにはこう言うのも良いじゃないか」

「大人か!」

57 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:52:04 n/4RxDgQ 57/67



「今日は良い一日だったな」

「そうだなー。俺史上最高の日になったな」

「それは大げさ過ぎだろー」

「大体私は半日寝て過ごした様なもんだしな」

「そう言えば…」

「ん?」

58 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:52:44 n/4RxDgQ 58/67

「…俺、幼の顔、ちゃんと見れたなぁ」

「ん、そうだな、今見てるな?」

「俺の弱点、克服出来た」

「んん?」

「だから来週は幼の弱点を克服だな?」

「はぁ?」

「気絶してたからなー」

「う…それは…」

59 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:53:21 n/4RxDgQ 59/67

「寝顔可愛かったから別に良いんだけど」

「に、ニヤついてんじゃねぇよ!」

「今度は手離して走ったりすんなよ?」

「そ、そうするよ」

「大丈夫、今度は俺も絶対離さないからな」

「おぅ!一度戦った相手に遅れをとるような私じゃねーよ!」

「今度こそバイトお化けなんざ、軽くヒネってやるっつーの!」

60 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:55:23 n/4RxDgQ 60/67

「じゃ、来週は別の遊園地に行くか!」

「!?」

「ちょっと遠出だけど、富士急ハイランドに行こうぜ」

「そ、そこに何があんだよ」

「それは行ってのお楽しみ」

「そのニヤけ面で大体解った!行かねぇ!富士急ハイランドには行かねぇ!」

「えー?弱点克服するのが罰ゲームだろ?」

61 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:55:59 n/4RxDgQ 61/67

「私はもう大丈夫!今日で克服出来た!」

「えー?本当に?」
チラッ

「何だよ…おい、どこ見てんだよ?」

「いや、あそこの草むらに…」
ガサガサガサ

「ギャーーーー!」
ダダッ

「ちょっ…」
ぐいっ
バタッ

62 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:56:37 n/4RxDgQ 62/67

「いてて…だから急に走るなっつーの」

「ご、ごめん、つい…」

「……」

「……」

「あのさ、俺の上からどいてくれるか?立てないんだが」

「男、あ、あのさ…」

「ん?まさか腰が抜けたとか?」

63 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:57:19 n/4RxDgQ 63/67

「かばってくれてありがと」

「いえいえ、彼氏ですから。鉄壁のガードで守るぞ?」

「…これ、お礼っ」

ちゅっ

「!!」

「…ファーストキスだな、路上で。にへへー」
がばっ
ぎゅうっ

64 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:57:58 n/4RxDgQ 64/67

「…胸無いな」

「なんだとこの野郎!」

「でもやっぱりすげー度胸だな」

「いくら人通りが少ないからって、道で、お前……」

「誰かに見られたらどうすんの?」

「別に構わねーよ。私は隠すつもり無いからなー」

「おまわりさんに怒られるかもだぜ?」

65 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:58:40 n/4RxDgQ 65/67

「こんな所に警官なんてこねーよ」

「そうかな?」

「ははは、男は心配性だなー」

「でも、さすがにもうそろそろ立って欲しいんだけど」

「んー、もう少し~~」
スリスリ

「急に甘え出したな、可愛いから良いけど」

「んふふ…男に新たな弱点を作ってやるぜ」

66 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:59:18 n/4RxDgQ 66/67

婦警(道端に転がって抱き合う明らかに未成年の男女……)

近くに居た婦警(これ、注意すべきかな…すべきだよね……)

近くに居た婦警さん(イチャイチャしちゃって)

たまたま近くに居た婦警さん(年齢=彼氏居ない歴の私を馬鹿にしてるのかしら)

たまたま近くに居た婦警さん(27)(……)


たまたま近くに居た年齢=彼氏居ない歴のちょっと可哀想な婦警さん(27歳)「爆発しちゃえ、リア充っ!」
タタタッ


「!?」



おわり

67 : ◆L0dG93FE2w - 2014/07/01 19:59:57 n/4RxDgQ 67/67

これで終わりです
読んでくれた人が居たら嬉しいです

次スレは
男「え?もうですか?」 幼馴染の父「おう」
ってタイトルで立てると思います
見かけたら読んでもらえたら嬉しいです

では。

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