1 : 以下、名... - 2014/06/20 18:10:19 OEga7BLE 1/35

店主「君が此処に来るは、既に知っていたよ。歓迎しよう」


「……なんだコイツ」

メイド「我が大いなる店主<マスター>です。お見知りおきを――」

「その、店主ってのが言うに、俺がココに来るのを知っていたらしいな」

メイド「きっとそれは、夢色の宝珠<フトゥレサイト・フィースハイト>の事ですね」


「夢色の宝珠<フトゥレサイト・フィースハイト>……? 何を言ってr」

店主「未来を見せる珠、それは夢幻の闇色に――美しいだろう?」

元スレ
店主「ようこそ、闇色の巣窟<ディエ・フーレ>へ――」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1403255419/

2 : 以下、名... - 2014/06/20 18:32:31 OEga7BLE 2/35

以下は私が私に課した縛り<フォーシュリフェン>です。ここに記しておきます。

・七行ノ規約<フォーシュフライフェン・ジッフェン>……自らを七行へと縛るる束縛
・括弧ノ統一(フェスト・ベグリフ・アインガンス)……"人物「内容」<br>"への束縛
・溜書ノ禁止(ブリフ・ニハト・ブラハウフト)……賢者の系譜を妬みし愚者の魂
・惰眠ノ制約(イェーデ・デルイェンス)……堕天使との契約を永久破棄させる条約

以上の3つです。では書いていきますね。

3 : 以下、名... - 2014/06/20 18:40:06 OEga7BLE 3/35

「俺は昔から好奇心旺盛な人間だった」

「路地を見つけては入り込んでいた子供時代を過ごしたこともある」


「だが、雀百まで踊り忘れず、かな。と思わせる事態に遭遇した」

「いつも通りの退社後に、何の変哲も無い裏路地だ」

「もちろん俺は入っていったが、その中で一際興味を引く店があった」


??「――気づいたようですね。この店は、賢者には見えないのですよ」

「おいおい嘘こけ……って、俺は、どこから話しかけられたんだ?」

4 : 以下、名... - 2014/06/20 18:51:58 OEga7BLE 4/35

女の声「気づく由もありません。あなたの前にある店の中ですから」

女の声「でも、貴方のその瞳が澄んでいることくらいは分かります」

女の声「見たところ、連れの女は居ないようですね……丁度いい」


女の声「貴方に、この店へと入る権利を与えました」

女の声「少し寂しいですが、このまま帰る権利も与えましょう」


「……いや、たぶん入るけど……何のお店なんだ?」

女の声「ほんの喫茶店<ダス・カフィ>ですよ」

5 : 以下、名... - 2014/06/20 18:56:56 OEga7BLE 5/35

「その……ダス・カフィってのは何を扱ってるんだ?」


女の声「っ!?  ……こほん。これは失礼いたしました」

女の声「いわゆる、キッサテンのことです」

「いや、明らかにおかしい言葉が聞こえたよ俺!?」


女の声「それは、きっと言葉の"あや"です」

女の声「契約者は、示された一定の言語域を使用するものなのです」

「そ、そうなのか……業界用語みたいなヤツなんだな、きっと」

6 : 以下、名... - 2014/06/20 19:03:00 OEga7BLE 6/35

ちょっと異世界との契約により、出かけねばなりません。
こちらからは現世界の魔術――電子技術<オパラティヴン・アイングリフ>を。
向こうからは闇の術式を、それぞれ提供しあいます。
今、両世界は実に協力関係にあるのですよ。

ちょっくら行ってたてまつります。

7 : 以下、名... - 2014/06/20 19:07:55 EdyM9qa. 7/35

>>2
縛りが3つのはずなのに4つあるように見える

9 : ◆9hX8MnZCWc - 2014/06/20 20:49:33 OEga7BLE 8/35

最初は3つだった
→計画変更で4つへ
→慣性の法則により3つと表記
→実は5つだったことが判明 ←New!

スキマ時間に何個かだけ上げてくよー
あと酉つけとく

10 : ◆9hX8MnZCWc - 2014/06/20 20:55:14 OEga7BLE 9/35

女の声「さぁ、どうぞ」

「では、遠慮なく…… ……わぁお」


「一見してただ乱雑に置いてあるだけに見える、このグッズっ!」

「だがその実は一定の法則によって築き上げられた――」

「所謂・不確定性の原理を最大限利用した巧妙な配置ッ!!!」

「しかも、全てがオカルトちっくなグッズばかりだ……!」


「ここの店主、デキる……ッ!!!」

11 : ◆9hX8MnZCWc - 2014/06/20 21:00:54 OEga7BLE 10/35

「混沌なる清純<コスモス・ディス・カオス>ですよ……男さん」

「なっ、何故俺の名前を――」

「雰囲気に呑まれるのは悪くないですが、程ほどに、ですよ」


「そ、そうか……なるほど、とりあえず落ち着いたよ」

メイド「ならばテストをしましょう。私は何に見えますか?」


「いや、メイドだろ」

メイド「……なるほど、やはり所詮は人間ですか――」

12 : ◆9hX8MnZCWc - 2014/06/20 21:01:54 OEga7BLE 11/35

契約を再開しに行き奉ってくる

13 : ◆9hX8MnZCWc - 2014/06/20 22:20:26 OEga7BLE 12/35

「……そう、俺は人間だ」

メイド「ですが、私や貴方は選ばれし人間<アウスケヴェルテ・パズーン>です」

「確かにな。ところで、ここはキッサテンなんだろ?」

メイド「ええ」

「何か頼まないとマズいんじゃないか?」


メイド「……すみません。店主<マスター>が居ないとお出しできないのです」


「――オマエの酷い版がいるのか?」

14 : ◆9hX8MnZCWc - 2014/06/20 22:35:24 OEga7BLE 13/35

メイド「いいえ……店主は、それは素晴らしいお方です」

「えっと……あなたとの関係は?」


メイド「私の雇い主であり、唯一の理解者――です」

メイド「あと私、メイドって言います。よろしくです」

「まぁ、ここの雰囲気は好きだ……また来るよ」


メイド「今度は、店主の居るときにお願いします」

メイド「……日々悪と戦っていて、不定休ですが――」

15 : ◆9hX8MnZCWc - 2014/06/20 22:53:29 OEga7BLE 14/35

「何日か後まで、俺はその店まで通うことになる」

「その際にメイドに色々聞いた」

「……半分は、まだ見ぬ店主<マスター>の自慢話だったが」

「だが、あの店の雰囲気はなぜか嫌いになれなかった」


「そして俺は、会社を辞めた」

「別に自分から辞めたわけじゃない。単に短期契約だったのだ」


「これは契約が終わった後の、最初の日曜日の話である」

16 : ◆9hX8MnZCWc - 2014/06/20 22:58:36 OEga7BLE 15/35

「……普段の日曜日は遅くまで寝てるからな」

「陽の光の眩しきを、まるで思い出したようである」


「……あの店、行くかな」

「そうだ、今日こそ店の名前を聞いておこう」


「早朝ゆゑか、メイドの玄関コールが無い」

「そしてふと横を見た俺は、遂に見てしまったのだ」

「本物の、魔道術式らしきものを」

17 : ◆9hX8MnZCWc - 2014/06/20 23:01:18 OEga7BLE 16/35

メイド「……っっ」

「……あの、メイド……さん……?」

メイド「………」

「普段は笑顔を振りまいていたメイドが、今日は真剣だ」


「話しかけないでおこう」

メイド「……あっ、男さん。今日はお早いのですね」


「ここ数日はそうだろう。仕事は俺を見捨てたんだ」

18 : ◆9hX8MnZCWc - 2014/06/20 23:13:24 OEga7BLE 17/35

メイド「……確かにそうでしたね…ははは……」


メイド「――見て、ましたか?」

「一応、な。桃色の――魔道術式<オペラティヴ・ワーファルレン・デア・マージェ>か?」

メイド「……私の話、ちゃんと聞いていたんですね。意外です」

「一応、な……高次の人間のみ発現可能とかなんとか」


メイド「私の術式は――"恋愛の術式<リーベフォル>"ですから」

メイド「いつか、活かせればいいな……とぞ思ひけり」

19 : 正しくは"ぞ→ける" デス ◆9hX8MnZCWc - 2014/06/20 23:22:44 OEga7BLE 18/35

「……今日は、店主が来る予定があるのか?」

メイド「男さんには、先見の能<フトゥレサイト>があるかもしれませんね」

メイド「今日、かの地に来ると思われます」


「本当に不定休だったんだ……」

メイド「私は人間を騙したりしません」


メイド「本当の賢者<サルベイ>か、本当の愚者<アイン・ナル>か――」

メイド「人間を騙すのなんて、そのうちのどっちかです」

20 : ◆9hX8MnZCWc - 2014/06/20 23:28:54 OEga7BLE 19/35

「……だが、待てど店主は来なかった」

「そして、明くる日も、明くる日も来なかった」

「日曜日だけは来る希望があるらしいが、やはり来なかった」


「そして、俺の中でひとつの疑問が生じてしまった」


「彼女の店主<マスター>は、本当に実在するのか?」

「という、至極単純なものだ」

21 : ◆9hX8MnZCWc - 2014/06/20 23:34:14 OEga7BLE 20/35

「俺にそう思わせた理由のひとつは、日曜朝の術式だ」

「あれは練習といっていたが、本当は何のためなのだろうか?」

「彼女は『まだ少しだけ完成していないのです』と言っていたものの――」

「俺には少なくとも、アレは完成しているかのように見えた」


「なぜなら、俺がこうやって彼女に気を病んでいるから。であろう」


「もちろん彼女は美しいまでの店主一筋愛である」

「これはいわゆる、三角関係<ダイエクスベティェォング>であるのだ」

22 : ◆9hX8MnZCWc - 2014/06/20 23:39:02 OEga7BLE 21/35

「彼女の瞳に、俺は映っていない。俺に投影してもいない」

「何も出されていないから、お金も落としていっていない」

「見るに、俺以外の客もいないようだ」

「だから……」


「……店主を、見つけにいくしかないんだ――!!」


「だが、その希望は薄い」

「とりあえず今日も、彼女に会いに行こう」

23 : ◆9hX8MnZCWc - 2014/06/20 23:43:36 OEga7BLE 22/35

「――もう何年も会ってないって!?」

メイド「はい、実は、そうです……」


「もし会えたら、気づけるのか?」

メイド「あっ、当たり前ですっ!! 絆をナメないで下さい!!」


「なるほど……分かった。今日はありがとう」

メイド「あれ。今日はもうお帰りですか?」

「……まぁな」

24 : ◆9hX8MnZCWc - 2014/06/20 23:47:21 OEga7BLE 23/35

メイドの声『店主<マスター>! やりました!』

メイドの声『……今日も、任務を全うできたのか。よろしい』

メイドの声『あっ、ありがとうございます……っ!!』


「……盗み聞きしてみたはいいものの」

「幸せそうで何よりだった……はぁ、もう帰ろうかな」


メイドの声『そうですマスター、今日も男さんに会いましたよ』

「っ!」

25 : ◆9hX8MnZCWc - 2014/06/20 23:55:02 OEga7BLE 24/35

メイドの声『いつものように凛々しくて、どこか掴めなくって』

メイドの声『観察眼が凄くって、それで……いつも傍にいてくれる』

メイドの声『そう、マスターの、よう、な……人で……っ!』

メイドの声『………マスターの、ような……っ!』


メイドの声『マスターが居ないと、私、もう……もうっ……うえええええん……っ』

「……俺は、何も出来ないのか……っ!?」


メイドの声『帰ってきてください、マスター……っ……』

26 : ◆9hX8MnZCWc - 2014/06/20 23:58:22 OEga7BLE 25/35

「……俺は、話すべきなんだろうか?」

「店主はたぶん、事故でもう居ない、って」

「それとも、気づかないフリをして、このまま――」


メイドの声『……今、行きますよ。マスター……待っててくださいね』

メイドの声『……ッ!!』


「メイドっ!! 早まるな!!!」

メイド「!!??」

27 : ◆9hX8MnZCWc - 2014/06/21 00:04:04 VXJdSMo. 26/35

「……遅かったか――」

メイド「……んぅ……?」

「見えてしまったんだよ、メイドの未来が……くそおぉおおおっ!!」

「俺のバカ! どうして、どうして何も出来なかったんだっ!!」


メイド「……気にすることは、ありませ、ん………」

「血だらけじゃねーか……どう気にするなってんだよ」


メイド「やはり、優しい人なんですね……店主<マスター>は――」

28 : ◆9hX8MnZCWc - 2014/06/21 00:06:08 VXJdSMo. 27/35

「違っ――」


「……いや、あっている。それでいいんだ、メイドよ」

メイド「ふふふっ……」

メイド「……」

メイド「…………」


「!!!!」

「……夢、か」

29 : ◆9hX8MnZCWc - 2014/06/21 00:08:43 VXJdSMo. 28/35

「日曜日……だな。もう昼だが」

「いやー、悪夢だなんて本当に久しぶりだ」

「メイドがナイフで自殺? そんなわけあるか」


「……そんなわけ、ない、って言い切れるのか?」

「……」

「………俺は、どうすべきなんだろうか」


「でも、その結論は、得られた気がするな」

30 : ◆9hX8MnZCWc - 2014/06/21 00:12:33 VXJdSMo. 29/35

「俺が店主を演じてやればいい。ただそれだけだ」

「もし俺に先見の能<フトゥレサイト>があったなら――」

「メイドは、今日の夕方には死んでしまうんだ」


「それくらいなら、自信を持って救えるさ……っ!」


「さて、店主の格好ってどんなだ?」

「……魔道士のローブ、とかなんだろうなきっと」

「さっさと調達して、メイドを助けるんだッ!!!」

31 : ◆9hX8MnZCWc - 2014/06/21 00:14:49 VXJdSMo. 30/35

「裏路地前」


「そう。確か最初は夜だったな」

「今は夕方だ。ローブ探しにかなり手間取ったからな」

「……懐かしいな。最初に来たときも、ここを通ったっけ」

「その後は、最適ルートを見つけちゃって、通らなかったけど」


「よし、行こう。メイドが待ってる」

「……これで、いいんだよな」

32 : ◆9hX8MnZCWc - 2014/06/21 00:15:48 VXJdSMo. 31/35

店主「君が此処に来るは、既に知っていたよ。歓迎しよう」


「……なんだコイツ」

メイド「我が大いなる店主<マスター>です。お見知りおきを――」

「その、店主ってのが言うに、俺がココに来るのを知っていたらしいな」

メイド「きっとそれは、夢色の宝珠<フトゥレサイト・フィースハイト>の事ですね」


「夢色の宝珠<フトゥレサイト・フィースハイト>……? 何を言ってr」

店主「未来を見せる珠、それは夢幻の闇色に――美しいだろう?」

33 : ◆9hX8MnZCWc - 2014/06/21 00:18:47 VXJdSMo. 32/35

「……俺には何も見えませんけど」

メイド「私もです」

店主「見える。今日は"男"以外に、客人が来ることはない」


「あなた、本当に店主さん?」

店主「……如何にも、そうだ」


「まじかよ……」

「……マジかよおおおおおおおおおおおおおおおおっっっっ!!!!」

34 : ◆9hX8MnZCWc - 2014/06/21 00:22:07 VXJdSMo. 33/35

「……」


「皆さん、未来を見てしまったことはありますか?」

「それは偶然です。絶対に偶然です」

「客が来るときは、あんな店にも来るんです」

「それと、正夢なんてのはきっと存在しません」

「それでは、よい週末を。おやすみなさい<グーテ・ナハト>――」


店主「ようこそ、闇色の巣窟<ディエ・フーレ>へ――」 END

35 : ◆9hX8MnZCWc - 2014/06/21 00:25:03 VXJdSMo. 34/35

これにて完結です。
本当はもっと色々やりたかったんですけどねぇ……
でもこれから、悪魔との交渉<ディスカッション>があるのですよ。
急がねばなりません。彼らは重要な取引先ですので――

それではそれでは。

36 : 以下、名... - 2014/06/21 02:47:39 AWxnGvek 35/35

ぐっ…‥右目が痛む…‥
>>1よ。今すぐこのShortStoryを抹消するのだ…‥
さも無ければ漆黒の月光が陰る頃、人間世界は消失-errorout-するだろう…‥

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