――午前9時、桜田家。
ジュン「おい、何の冗談だ?」
真紅「冗談なんかじゃないわ」
ジュン「えーと、今日って4月1日だったけ?」
真紅「今日はエイプリルフールじゃないわ。JUM、真面目に聞いてちょうだい!」
ジュン「……馬鹿言うなよ」
真紅「本当……なのよ」
元スレ
真紅「ジュン聞いて……。私はもうじき、動かなくなるわ」
http://ex25.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1211984040/
ジュン「意味が分からないぞ。どうしていきなり動かなくなったりするんだ」
真紅「気付かないの? 自分の指を見なさい」
ジュン「指? わかったよ。……っ!?」
真紅「理解できたかしら」
ジュン「指輪が、小さくなってる」
ジュンは真紅と翠星石の2体と契約しているため、指輪のサイズが通常よりも大きい。
しかし、今のジュンの指輪のサイズは、通常のものと同じサイズだった。
ジュン「なんで小さくなってるんだ……?」
真紅「一昨日、水銀燈からの襲撃があったでしょう?」
ジュン「ああ。でもその時はいつもみたい途中で水銀燈が帰ったじゃないか」
真紅「ええ、確かに彼女のきまぐれで戦闘は途中で終わったわ。でも」
真紅「戦闘をしなかったわけではないのよ。よく思い出して」
ジュン「あの時は……たしか僕と真紅と蒼星石の3人で水銀燈と対峙して……」
――2日前。
翠星石と雛苺がのりと一緒にお菓子作りに夢中になっている時の事。
ジュンと真紅はリビングでくんくんを見ていた。
真紅「さすがくんくん、いつみても推理が冴えてるのだわ」
ジュン「いやあ、ハラハラするなあ。……ん、あれは?」
ジュンの視界に移った青い飛行物体。
蒼星石の人工精霊レンピカだった。
ジュン「おい、真紅。あれ」
真紅「なによ、今いいとこ……レンピカ?」
レンピカが真紅の元へと飛んでくる。
真紅「どうしたの? なに、蒼星石が水銀燈に襲撃を受けた?」
ジュン「なんだって?」
真紅「今すぐ助けにいくべきだわ」
ジュン「僕も行くぞ。そうだ、お菓子作りに夢中なあいつらにも知らせなきゃ」
真紅「その必要はないわ」
ジュン「なんでだ」
真紅「あの子達に余計な心配はかけさせたくないわ」
ジュン「でも」
真紅「大丈夫よ。いつもみたいに私がパパッと追い払えばいいんだから」
真紅「それに、いきなり私達みんながいなくなったらのりが困るでしょう」
ジュン「わかった」
真紅「じゃあ早く行きましょ。一刻も早く彼女を助けなきゃ」
――nのフィールド。
蒼星石「やめるんだ水銀燈。僕は君と争いたくはない!」
水銀燈「やぁよ。これはアリスゲームよぉ。争いたくないとかそういう問題じゃないわぁ」
水銀燈が雨のように羽を飛ばし攻撃する。
蒼星石は庭師の鋏でそれら必死にしのぐ。
蒼星石(遠距離攻撃の手段を持たない僕じゃ、彼女を追い払えない)
蒼星石(僕は……負けるのか?)
蒼星石は庭師の鋏で攻撃をしのぎながら少しずつ後退する。
だがその時、彼女は躓いてしまった。
蒼星石「しまったっ」
水銀燈「これでおわりよぉ」
真紅「蒼星石っ」
真紅が蒼星石を庇いながら飛び出す。
間一髪、蒼星石に被害はなかった。
真紅「大丈夫蒼星石?」
蒼星石「僕は大丈夫だ。それより君は?」
真紅「私なら平気よ」
水銀燈「真紅ぅ。よくも邪魔したわねぇ」
真紅「この子をやらせるわけにはいかないわ」
水銀燈「何よ。あーあ、なんだかしらけちゃったわぁ。今日はこのへんにしといてあげる」
そういうと水銀燈はメイメイを連れて去っていった。
――。
――――。
――――――――。
真紅「蒼星石を庇った時、実はけっこういいのを貰っちゃってたのよ」
ジュン「なんだよ、あの時はなんともないって言ってたじゃないか」
真紅「あの時はまだ私が動かなくなるなんて思わなかったのよ。それに、」
ジュン「それに?」
真紅「心配はかけたくなかったの」
ジュン「お前……」
真紅「異変に気付いたのは昨日よ」
ジュン「昨日……」
真紅「ジュンはいつも起きるのが遅いから知らないけれど」
真紅「私はいつもより2時間遅く起きたの」
ジュン「おい、それってただの寝坊じゃないのか?」
真紅「人間といっしょにしないでちょうだい。あなたじゃないんだから」
真紅「起きようと思えばいつも通りに起きれるはずなのよ。でも、それができなかった」
真紅「ローザミスティカがじょじょに私の体から抜け始めてるせいで、力が足りなくなってきているのよ」
ジュン「……」
真紅「しかし、起きれないのは私だけじゃなかったのだわ」
ジュン「まさか……」
真紅「雛苺よ」
ジュン「なんであいつまで」
真紅「忘れたの? 彼女は私を媒体としてあなたに力を貰っていたのよ」
ジュン「あ……」
真紅「私よりも雛苺の方が動かなくなるのが早いのだわ」
ジュン「おい、具体的な時間はわかるのか?」
真紅「私は明日か明後日くらい。雛苺は……」
真紅「今夜よ」
ジュン「そんな……」
真紅「悲しいけど、これが現実なのよ」
ジュン「なんで、なんでお前はそんな冷静にいられるんだよっ!」
真紅「冷静? あなたはそんなふうに見えるのっ?」
真紅「私だって恐いのよ! 楽しかった日常があと1日や2日で終わるなんてっ」
ジュン「ごめん……」
コンコンッ。
突如扉をノックする音が鳴る。
ジュン「……誰?」
雛苺「ヒナなの」
ジュン「っ!」
雛苺「ジュンと真紅が大事な話してるのは知ってるの」
ジュン「あ、ああ」
雛苺「それに、ヒナが関係してることも、知ってるのよ」
ジュン「え」
雛苺「ヒナ、動かなくなっちゃうんでしょ。それに真紅も」
ジュン「それはだな、えーと……」
真紅「……そうよ」
ジュン「真紅……」
真紅「ジュン、扉を開けなさい」
ジュン「ああ」
雛苺「ありがとうなの真紅。実はヒナね、ずっと聞き耳たててたの」
ジュン「じゃあ……」
雛苺「ヒナは今日の夜に動かなくなるのね」
真紅「ええ、そうよ」
雛苺「ねえジュン。お願いがあるの」
ピンポーン。
ジュンがインターホンを押す。
巴「はーい」
ジュン「いきなり悪いな」
雛苺「とーーーもーーーえーーーーーーー」
巴「あははっ、久しぶり雛苺」
ジュン「じゃあ僕はこれで」
巴「夕方になったら桜田君の家まで行けばいいのよね?」
ジュン「うん、それじゃ」
雛苺のお願い。
それは巴の家に連れて行って欲しいとの事だった。
ジュンは巴に全ての事情を電話で説明、今に至る。
ジュン「やっぱり、あいつは柏葉が一番好きだもんな」
帰り道、ジュンは1人でつぶやく。
その言葉からは、どこか寂しさを感じられた。
ジュン「ただいま」
のり「おかえりジュン君」
のりがジュンを出迎える。その目は赤く、先ほどまで泣いていた事がわかる。
ジュン「真紅から、聞いたんだな」
のり「うん……。だから今晩はご馳走たくさん作ろうと思うの」
のり「そんなわけだから買い物にいってくるわね。みんなの面倒はまかせたわよ」
ジュン「わかった」
翠星石「ジュンッ」
ジュン「お前も聞いたのか」
翠星石「どうして2人が動かなくならなきゃいけないですか……」
ジュン「僕に言うなよ……」
ジュン(やっぱり動かなくなる理由は話してないか……)
翠星石「真紅……雛苺……」
蒼星石「ジュン君、ちょっといいかな?」
ジュン「真紅の事か?」
蒼星石「うん、ちょっとここじゃ話せないからnのフィールドに来てもらっていいかな?」
ジュン「ああ」
――nのフィールド。
ジュン「用件は?」
蒼星石「真紅が動かなくなる理由のことだよ」
ジュン「っ!」
蒼星石「一昨日僕を水銀燈から庇ったせいなんじゃないのかい?」
ジュン「さぁ、どうだろう」
蒼星石「真紅が動かなくなるのは……僕のせいだ」
ジュン「違う」
蒼星石「違わない! あの時、レンピカで助けを呼ばなければ……」
ジュン「もうやめろよ」
蒼星石「僕がやられていれば、真紅と雛苺はこんなことにはならなかった」
ジュン「これ以上は言うなよ。僕もしまいには怒るぞ」
蒼星石「ジュン君……」
ジュン「今は理由とかそんなのはどうでもいいんだ」
蒼星石「でもっ」
ジュン「今はあの2人に最後までいい思いをさせてあげれるように、僕達で頑張るべきなんだ」
蒼星石「……ジュン君は、強いね」
ジュン「そんなことないよ。僕は、強くなんかない」
――夕方。
雛苺「ただいまなのー」
真紅「あら、おかえりなさい雛苺」
ジュン「悪いな、柏葉。そうだ、上がっていけよ」
巴「え?」
翠星石「のりがご馳走をたっくさん作ってるですぅ」
ジュン「そういうことだ。食べてけよ」
巴「じゃあお言葉に甘えて。お邪魔します」
雛苺「わーい、巴も一緒にごっはんなのー」
のり「もうちょっと待っててねもうすぐカナちゃんが来るはずだから」
ジュン「お前が頼むからちゃんと呼んどいたぞ」
雛苺「わー。ありがとうなのー」
数分後。
金糸雀「遅れてごめんなさいかしら」
のり「いらっしゃい」
ジュン「真紅、こいつにもちゃんと説明してあるだろうな?」
真紅「ええ。あの子の目を見て」
ジュンは金糸雀の目を見る。
その目は赤く、先ほどまで泣いてたことが伺えた。
雛苺「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! すごいのー」
のり「ヒナちゃんの為に頑張っちゃったわ」
テーブルの上にはたくさんのご馳走。
雛苺は目を輝かせながら席に着く。
雛苺「いっただっきまーすなのー」
真紅「おちついて食べないと喉につっかえるわよ」
翠星石「まったく、おちつきのねーやつですぅ」
金糸雀「たまごがいっぱいかしらー」
蒼星石「みんなもっと落ち着いて」
雛苺「大勢で食べるごはんはおいしーのー」
雛苺「ステーキもエビフライもローストチキンもみーんなおいしいのー」
巴「よかったわね雛苺」
雛苺「でもね」
雛苺「はなまるハンバーグが一番おいしいのー」
のり「ひなちゃん……ぐすっ」
雛苺「のり泣かないで。ヒナは今、とっても幸せなの」
雛苺「ジュンがいて巴がいてのりがいて真紅がいて翠星石がいて蒼星石がいて」
雛苺「みんなでご飯をいっしょに食べれて、ヒナは嬉しいの。のりは、嬉しくないの?」
のり「嬉しいわヒナちゃん。皆でご飯食べれてとっても幸せよ」
雛苺「なら、泣かないで。今をめいっぱい楽しむの」
――夕食後。
ジュン「ふぅ、おなかいっぱいだ」
翠星石「もう食べれねーですぅ」
雛苺「巴ー。あの袋を貸してなのー」
巴「もう渡すのね。はい」
巴はバッグの中から1つの袋を取り雛苺に手渡す。
雛苺はそれを受け取ると中身を取り出す。
入っていたのは手紙だった。
雛苺「みんなこっちきてなのー」
ジュン「どうしたんだ?」
雛苺「ヒナね、みんなにお手紙かいてきたのよー」
真紅「あら、すごいじゃないの」
巴「雛苺ったらね、私の家にいる時のほとんどを手紙書くのに費やしてたのよ」
――午後1時。柏葉家。
雛苺「巴ー、お願いがあるの?」
巴「なあに雛苺」
雛苺「えーと紙とペンを貸して欲しいの。お手紙をかくのよ」
巴「まあ、桜田君にでも渡すの?」
雛苺「ジュンだけじゃないのよ、のりにも真紅にもみーんなに書くのー」
巴「どんなこと書くの? はい紙とペン」
雛苺「ありがとなの。ひみつー」
雛苺「かきかきかきー」
巴「……」
雛苺「感謝の気持ちをこめるのよー」
巴(雛苺、成長したのね……)
巴(出会ったばかりの頃はわがままばっかりだったのに)
巴(自分が今夜動かなくなるって分かってるのに、自分が楽しむよりも……)
巴(――。駄目、泣いちゃ駄目)
雛苺「まずはジュンなのー」
ジュン「ありがとな」
雛苺「あ、まだ開けちゃだめぇっ」
ジュン「? わかった」
雛苺「手紙はヒナが動かなくなってから見てほしいの」
ジュン「どうして?」
雛苺「うーとね、恥ずかしいの」
ジュン「なんだ、そんなことかよ。わかった。後で見るよ」
ジュンは決して「動かなくなってから」とは言わない。
まるでそんなことあるわけないと思っているかのように。
雛苺「次はのりー」
のり「ありがとうヒナちゃん」
雛苺「真紅ー」
真紅「ありがたく受け取るわ」
雛苺「翠星……石」
雛苺の言葉に感覚が空き、動きが硬くなり始めた。
動かなくなるまでもう時間がないようだ。
翠「受け取ってやらんこともないですぅ」
雛苺「蒼……星石」
蒼星石「ありがとう、この手紙は一生大事にするよ」
雛苺「金……糸雀」
金糸雀「ありがとう……かしら。ぐすっ」
雛苺「最……後に」
雛苺「とも……え……」
巴「わ、私にも?」
雛苺「当たり……前……なの」
巴「雛苺……ありがとう、ありがとう」
雛苺「え……えへ……へ」
巴「雛苺、雛苺……雛苺ぉっ」
巴は雛苺に抱きつく。
そしてわんわんと泣き始めた。
巴「いや、いやよ雛苺……いやっ……うわぁぁぁぁん」
雛苺「巴……」
雛苺「ヒナ……今とって…・・・も……幸せ…・・・なの」
巴「雛苺っ、雛苺っ」
雛苺「最後……まで、皆……が一緒に……いて……くれて」
雛苺「巴……が……こんな近く……にいてくれ……て」
巴「ずっと近くにいる、近くにいてあげるからっ。行かないで、行かないでっ」
雛苺「あり……がと……みん……な……だい……す――」
巴「うわあああああああああああああああああ」
――数十分後。
ジュン「手紙……」
真紅「そろそろ開けてもいいんじゃないかしら」
のり「そうね、ヒナちゃんが残り少ない時間をかけてまでかいてくれたんだもの」
みんなは雛苺から貰った手紙を開けた。
ジュンへ
はじめてあったときはすっごくこわかったの。
でも、うにゅーをわかってくれたのはジュンだけだったわ。
ヒナはジュンがだいすきになったの。
でもりゆうはそれだけじゃないのよ。
ジュンはおこりんぼだけどやさしくて、ちっちゃいけどとってもつよくて。
のりへ
まいにちごはんつくってきれたりおせんたくしてくれてありがとなの。
のりはやさしいからついついあまえたくなっちゃうのよ。
あまえんぼでわがままでごめんなさいなの。
のりはきっといいおよめさんになれるのよ。
きょうのばんごはんははなまるはんばーぐがいいな。
しんくへ
まずさいしょに、ヒナのローザミスティカをとらないでいてくれてありがとうなの。
おかげで、ジュンやのりにであえたし、すいせいせきたちともさいかいできたの。
いつもくんくんセットをひとりじめしたりしてたけど、
ヒナにとってはすてきなおねえさんだったの。
しんくものこりわずかなじかん、くいのないようになの。
すいせいせきへ
いまおもうと、いつもすいせいせきにいじわるばっかりされてたの。
でも、あそんでくれるのはいつもすいせいせきだったの。
いっしょにおそうじしたり、ごはんつくったり、いろいろやったね。
おかしのつくりかたをおしえてくれたりしたわ。うれしかったの。
ジュンにめいわくかけないようにね。
そうせいせきへ
マスターのこととかでいろいろたいへんだったけど、ヒナはなにもできなかったの。
ごめんなさいなの、ちからになれなくって。
そうせいせきはみんなのなかじゃいつもおちついていて、
いちばんうえのおねえさんみたいでかっこよかったの。
ヒナもそうせいせきみたいなおねえさんになりたかったな。
かなりあへ
さいしょはすなおじゃなかったけどすぐみんなとなかよくなれたね。
かなりあのマスターのみっちゃんとなかよくなれたのもうれしかったの。
かわいいふくありがとうっていっておいてなの。
かなりあは2ばんめのおねえさんなのにすっごくこどもっぽいのよ。
ひなたちがいなくなってもおねえさんらしくなれるようにがんばってね。
ともえへ
ヒナをこどくからすくってくれてありがとうなの。
ともえにねじをまいてもらって、マスターになってもらって、すごいうれしかったの。
でも、さいしょはわがままばかりだったの。それに、ともえをころしかけてしまったの。
ごめんなさい、ほんとうにごめんなさいなの。
それでもともえはヒナにやさしくしてくれたの。すっごいうれしかったの。
ヒナ、まえよりもおとなになったかなあ? ともえにめいわくかけないいいこになれたかなあ?
もっと、ともえとあそびたかったの。
――さいごに。
いままで、ありがとうなの。
このじだいでめがさめて、こうしてうごかなくなるまでのじかん、
とてもしあわせなじかんだったのよ。
いままででいちばん
とってもとっても
しあわせだったの。
いつかまた、みんなに会えるかなあ?
さいごまでわがままでごめんなさいなの。
じゃあヒナはいくね。
ありがとう。
さようなら。
バイバイ。
――翌朝。午前7時。
ジュン「よし、早くおきれたぞ」
翠星石「ふあぁ、おはようですぅ」
ジュン「ああ、おはよう」
翠星石「ジュン、今日は早いですね」
ジュン「真紅と過ごせる時間はもう少ししかないんだ。早起きにもなるさ」
翠星石「そうですね」
ジュン「真紅はまだ起きないか」
翠星石「はいです」
ジュン「いつもお前達はこの時間に起きてたんだよな?」
翠星石「そーです」
ジュン「昨日は2時間遅かったって言ってたから、最低でも9時までは起きないのか」
翠星石「ですね」
蒼星石「2人ともおはよう」
翠星石「蒼星石ですか、早いですね」
ジュン「おはよう蒼星石」
蒼星石「もう時間がないんだ。僕が早くこなくてどうするんだって話だよ」
翠星石「?」
ジュン「蒼星石お前……」
蒼星石「これ以上先は言わないでジュン君」
翠星石「なんの話です?」
蒼星石「……。君にも、話すべきだよね」
ジュン「おいっ、やめろ!」
蒼星石「真紅が動かなくなるのは、僕のせいだ」
翠星石「っ?」
ジュン「違うって言ってるだろっ!」
蒼星石「他に理由がみつからないよ。どう考えても僕のせいだ!」
翠星石「いったいどうゆうことですか? ちゃんと翠星石に説明するですぅっ!」
蒼星石「うん。真紅が動かなくなってしまうのは――」
――。
翠星石「そんなことが……」
ジュン「くそっ」
翠星石「で、でもっ! 蒼星石は悪くないですよ。えっと……そう、水銀燈です。あいつが悪いんですぅっ!」
蒼星石「水銀燈は悪くないよ。彼女はただアリスゲームをしただけだ」
蒼星石「そこで助けをよんだ僕が悪いんだ。負けるのが恐くて、動かなくなるのが恐くて助けをよんだ僕がっ」
翠星石「蒼星石……」
蒼星石「あげくの果てに妹2人を巻き込んで自分だけ助かっている。最低だ、最低だよ僕は」
パチィンッ。
蒼星石「え……?」
頬を抑える蒼星石。
ジュン「これ以上はいくら僕でも我慢できないぞ」
翠星石「なにするですかジュンッ。ドールとはいえ女の子に手を上げるなんて」
ジュン「お前、昨日僕が言ったことを覚えてるか?」
蒼星石「昨日……」
蒼星石は昨日nのフィールドでのジュンとのやりとりを思い出す。
ジュン「今は理由とかそんなのはどうでもいいんだ」
ジュン「今はあの2人に最後までいい思いをさせてあげれるように、僕達で頑張るべきなんだ」
――。
蒼星石「あ……」
ジュン「残された時間は今日と明日だけだ。こんなことでうじうじしてる場合じゃないだろ」
ジュン「蒼星石、お前の言い分は真紅が動かなくなった後でいくらでも聞く」
ジュン「けどな、その前にさっきみたいな事言ってたらこんなもんじゃすまないぞ」
蒼星石「ジュン君……。うん、そうだね。ごめんなさい」
ジュン「わかってくれればいいんだ」
翠星石「むぅ、なんだか翠星石だけ蚊帳の外ですぅ」
――午前11時
真紅「ふぁ……おはよう」
ジュン「おはよう真紅」
翠星石「おはようですぅ」
蒼星石「おはよう」
真紅「朝起きたら皆が待ってくれている、こんなのもたまにはいいわね」
ジュン「何いってんだ、待ってるほうの身にもなってみろって」
翠星石「朝ごはんはできてるです。早く下にいくですぅ」
真紅「ごちそうさま」
のり「おそまつさまでした」
ジュン「なあ真紅、お前今日なんかやりたいことあるか?」
真紅「そうねぇ、こういうのっていざとなると思いつかないものね」
のり「なんでもいってね真紅ちゃん」
真紅「じゃあ、皆でお出かけなんてどうかしら?」
のり「じゃあ近所の公園へピクニックね。時間的にはお昼ご飯じゃなくておやつを持っていきましょうか」
翠星石「翠星石の腕のみせどころですぅ」
真紅「お願いがあるのだけど、いいかしら?」
のり「なあに真紅ちゃん?」
真紅「お菓子なんだけど、私がつくってもいいかしら」
のり「いいけど、だいじょうぶ?」
真紅「私だって些細な事でもいいから、みんなの為に何かしたいの」
のり「ふふ。わかったわ」
それから真紅はのりに作り方を教えてもらいながら一生懸命お菓子を作った。
皆はそれを暖かく見守る。
お菓子を作っているときの真紅の顔はどこまでも楽しそうで
ジュンは終始にやにやしながらそれを見続けていた。
翠星石「ジュンってばさっきからにやにやして気持ちわりーですぅ」
ジュン「う、うるさいっ」
のり「じゃあ出発しましょうか」
お菓子も完成し、皆は身支度をして家を出る。
ジュン「金糸雀は?」
翠星石「公園で落ち合うです。今日はみっちゃんもくるですよ」
ジュン「そうか」
騒がしくなりそうだな、とジュンは思った。
真紅「楽しみね」
誰もがその言葉を本心からのものだと理解した。
そしてわずかな沈黙。
翠星石「よーし! 今日は鬼ごっこをやるですよ」
そんな沈黙を破る翠星石。
真紅「また子供っぽいものを提案するわね」
翠星石「真紅は鬼ごっこの奥の深さをわかってないですぅ」
蒼星石「確かに鬼ごっこって単純だけど楽しいよね」
ドール達の談笑をジュンとのりは暖かく見守る。
金糸雀「おそーい! まちくたびれちゃったかしらー」
公園にはもうすでに金糸雀とみつがいた。
翠星石「うるせーです。時間通りにきたですぅ。金糸雀が早すぎなんです」
蒼星石「まあまあ」
真紅「レディは身支度に時間がかかるものなのよ」
ドール達がわいわいと騒ぐ。
みつ「こんにちはー」
のり「どうもこんにちは。今日は来て下さってありがとうございます」
みつ「いえいえ、こちらこそ誘っていただいて」
みつ「真紅ちゃん、動かなくなるんですね……」
のり「ええ。もう雛ちゃんも動かなくなりました」
ジュン「おい、今はそんな暗い顔するなよ」
のり「ジュン君……」
ジュン「今は楽しむ時だろ。そんな暗い空気なんて駄目だ駄目」
みつ「ジュンジュン……」
ジュン「僕はあいつらの所に混ざってくる。おーい」
翠星石「ジュンがきやがったですぅ。やつは鬼ですよ。皆逃げるですぅ」
ジュン「ちょ、まてずるいぞ! せめてじゃんけんぐらい……あーちくしょう。逃げ足の速いやつらめ」
みつ「ジュンジュン、強いですね」
のり「私もあんなに強くなってるとは思いませんでした」
みつ「きっと、あなたが頑張ってジュンジュンに接してきたからですよ」
のり「私なんかより真紅ちゃん達の方が影響を与えたと思います。あの子達が家に来てからジュン君はどんどん元気になっていって」
みつ「じゃあ、ジュン君はさぞかし辛いでしょうね」
のり「ええ。真紅ちゃんが動かなくなって一番堪えるのは、きっとジュン君でしょうね」
みつ「でも、それまでは楽しい時間を過ごして欲しいですね」
のり「ふふ。そうですね」
ジュン「はあ……。疲れた。ひきこもりに鬼ごっこは辛い」
ジュンはブランコに座って休憩をしていた。
真紅「あら、大変そうね」
真紅がお菓子の入った袋を持ってジュンそばへと来る。
真紅「食べて。私の特製クッキーよ」
ジュン「ん……んまい。翠星石にも引けを取らないぞ」
真紅「ふふ。ありがとうジュン。ふぅ、疲れちゃったわ」
ジュン「お前も疲れたのか」
真紅「そうよ。もうすぐ動かなくなる身体を一生懸命動かしたんだもの」
真紅はさらっと言ってのける。ジュンはそれに応えていつも通り会話を続ける。
ジュン「そりゃ大変だな。あいつら3人はホント元気だよなぁ」
真紅「金糸雀なんて一番子供みたいにはしゃいでるわよ。この中では一番上の姉なのにね」
ジュン「あいつ第2ドールなんだっけ? 言われないと分からないよなぁ」
真紅「雛苺と同じくらい子供っぽいものね」
ジュン「水銀燈に比べてガクっと精神年齢が落ちるよな。よっぽどお前の方が大人っぽいぞ」
真紅「あら、私を褒めるなんて珍しいじゃない」
ジュン「言い方を変えると老けてるって意味だぞ」
真紅「実際何百年も生きてるもの。気にしないわ」
何気ない会話。しかし二人は今までにないくらい幸せだった。
真紅「ねえジュン」
ジュン「なんだ?」
真紅「今の私のお願いだったら、なんでも聞いてくれる?」
ジュン「そうだな……。なるべく聞いてやるぞ」
真紅「今から動かなくなるまで、あなたと二人っきりで過ごしたいの」
ジュン「……え?」
真紅「もう一度言うわ。今から動かなくなるまで、あなたと二人っきりで過ごしたいの」
ジュン「本気か?」
真紅「ええ。本気よ」
真紅は若干顔を赤らめている。
少し、恥ずかしかったのだろう。
真紅「どうなの? 聞いてくれるの?」
ジュン「……駄目だ」
真紅「っ! どうして?」
ジュン「お前、他のやつの事も考えろよ」
ジュン「他のやつらだってお前と最後まで過ごしたいって思ってるはずだ。僕だけお前と一緒なんて駄目だろ」
真紅「ジュンは私と二人っきりは嫌だっていうの?」
ジュン「そんなことはいってない! ただ、他のやつらにもお前と過ごす権利があるってことだよ」
真紅「でも私はあなたと過ごしたいの! お願い」
ジュン「駄目だって言ってるだろ!」
真紅「なんで……。なんでわかってくれないの? 私はただあなたのことが……。っ!」
真紅は言い終わる前に走り出していた。
ジュン「おい真紅っ」
のり「え? 真紅ちゃん?」
真紅は公園を飛び出してしまった。
蒼星石「どうしたの?」
ジュン「真紅が走ってどこかに」
蒼星石「なんだって!? レンピカッ。真紅を追いかけるんだ」
翠星石「なんでこんなことに?」
ジュン「……」
真紅は泣いた。
何故私の気持ちを分かってくれないのか、と。
真紅はジュンを愛していた。
姉妹達に対する愛情とは違う感覚。
今までに一度も感じた事の無かった感覚。
真紅はジュンを愛していた。
――夕方5時。桜田家。
彼らは一度家に戻り、真紅の帰りをまっていた。
金糸雀とみつは仕事の関係で自宅へと帰った。
翠星石「さあ! どうゆーことか説明するです」
ジュン「……」
蒼星石「ジュン君、黙っていてもわからないよ」
ジュン「実は――」
ジュンはさっきの出来事を皆に3人に話した。
沈黙。
ジュンが話終わってから、誰もが口を開かなくなった。
ジュン「僕は部屋に戻ってレンピカが戻ってくるのを待つ」
そう言ってジュンは自室へと消えた。
のり「どうすればいいのかしら……」
最初に口をあけたのはのりだ。
翠星石はうつむいたまま何も言わない。
蒼星石は1人無言で立ち上がると、ジュンの部屋へと向かって行った。
蒼星石「ジュン君? 入るよ」
ジュン「レンピカが戻ってきたのか?」
蒼星石「いや、残念ながらまだだよ。それとは別に話があるんだ」
ジュン「話?」
蒼星石「うん」
蒼星石はジュンの側に近寄る。
蒼星石「どうして一緒に居てあげないの?」
ジュン「それは、さっきも言ったとおり皆も真紅と過ごす権利があるから」
蒼星石「そんなことより真紅のお願いの方が僕は大事だと思うけど?」
ジュン「そんなんじゃ不公平だろ。考えてみ――」
パチィンッ。
蒼星石がジュンの頬を叩く。
ジュン「な、なにすんだ」
蒼星石「君は本当にジュン君なの? 今朝のジュン君とはまるで別人だ」
ジュン「っ!」
蒼星石「昨日と今朝、君が僕に言った言葉はどれも真紅の事を一番に想ってるような言葉だった」
蒼星石「それなのに今度はなんだい? 真紅のお願いなんか聞けるかとでも思っているの?」
ジュン「そんなこと思ってるわけないだろ!」
蒼星石「じゃあ真紅の願いを聞いてあげればよかったじゃないか」
ジュン「だから他のみんなも真紅と過ごす権利が――」
蒼星石「権利があるだけで実際にみんながどうするか聞いたわけじゃないんでしょ?」
ジュン「う……」
蒼星石「他の皆だってジュン君と同じ気持ちだと思うよ。僕だってそうだ」
ジュン「……」
蒼星石「僕は咎めないよ。君と真紅が二人っきりでも」
ジュン「蒼星石……」
蒼星石「お別れの言葉さえ言わせてくれれば僕はそれでいいんだ」
蒼星石「これで僕の話は終わりだよ」
蒼星石は部屋から出て行く。
そして新たにノックの音。
のり「ジュン君。話があるんだけど、いいかな?」
のり「私ね、ジュン君が真紅ちゃん独り占めしても平気よ」
ジュン「ひ、独り占めってなんだよ!」
のり「私だってね、できれば真紅ちゃんと最後まで一緒に居たいわ」
ジュン「だったら……」
のり「でもね、そんな私のわがままなんかより真紅ちゃんのお願いを聞いてあげたいと思うの」
のり「だって真紅ちゃんはジュン君のことが大好きなんだもの。それに」
のり「ジュン君だって真紅ちゃんのこと大好きなんでしょ?」
ジュン「わー! わー! 何言ってんだブス!」
のり「ふふ、照れちゃって」
のり「だからね、私は真紅ちゃんとジュン君が二人っきりで最後を過ごしても、文句は言わないよ?」
ジュン「でも……」
のり「お姉ちゃんからのお願い。真紅ちゃんのお願いを叶えてあげて」
ジュン「お前までお願いって」
のり「それじゃあね、今から夕飯の準備しなきゃだから」
のりはそういってジュンの部屋を去る。そして――
翠星石「ジュン。お話があるです」
ジュン「お前もか」
翠星石「率直にいうですよ。真紅と最後までいちゃいちゃしやがれです!」
ジュン「なっ、いちゃいちゃって」
翠星石「翠星石は分かってるですよ。真紅がジュンのこと大好きだってこと」
翠星石「だから、最後まで二人っきりでいたいってお願いは叶えてやりたいのです」
翠星石「だって翠星石は、真紅の姉でもあるのですから」
ジュン「お前はそれでいいのか? 後悔はしないのか?」
翠星石「どうでしょうね。真紅が幸せに最後を迎えられるなば、悔いはないです」
翠星石「それに翠星石が気にしてたのは、ジュンが真紅が二人っきりってことで……」
ジュン「ん?」
翠星石「な、なんでもないです。なんでもないです。今のは聞かなかったことにしやがれですぅ!」
ジュン「わかったよ。ったく」
翠星石「と、とにかく! 翠星石はジュンと真紅がふたりっきりでいちゃいちゃすることに異論はないです」
ジュン「いちゃいちゃじゃないって」
翠星石「翠星石の話はこれで終わりで……あれは!」
翠星石が窓の方を指差す。そこには金糸雀の人工精霊ピチカートがいた。
ジュン「今開けるからな」
ピチカートが部屋に入ってくる。そして翠星石の元へと飛んでいった。
翠星石「なんですか? うん、うん。わかったです。ちゃんと伝えるですよ」
ジュン「なんだったんだ?」
翠星石「金糸雀からも許可が出たですよ」
ジュン「許可って」
翠星石「もちろんジュンと真紅が二人っきりでいちゃいちゃすることです」
ジュン「だからいちゃいちゃじゃないと何回言えば……」
翠星石「さらに朗報ですよ。真紅は今みっちゃんの家にいるみたいです」
ジュン「なんだって!」
翠星石「ほら、迎えにいってやるですよ。真紅はきっと待ってるです」
翠星石「蒼星石ものりも許してくれたのでしょう? もうみんなを気にする必要はないのです」
ジュン「……行ってくる!」
ジュンは部屋を飛び出す。が扉から頭だけを出し、
ジュン「ありがとうな」
そう行って走り出した。
――草笛家。
真紅はうつむいたままずっと動かない。
金糸雀とみつはそれを心配そうに見つめる。
真紅は公園を飛び出したあと、自らみつの家へときた。
真紅「ごめんなさい。飛び出してはみたものの行く場所なんてどこにもなくて」
金糸雀は必死に真紅を慰めたが効果はなかった。
――わたしはなんてわがままなんだろうか。
真紅は心の中で自分を責め続ける。
――自分のわがままで周りに迷惑をかけたわ。
――ジュンなんてあんなに怒ってしまった。
――確かにジュンの言う通り。他のみんなも一緒に過ごす権利はある。
――みんな優しい。だからきっと私と最後まで過ごしたいと思ってくれているでしょう。
――でも、私のわがままはみんなの想いを裏切ったわ。
――なんて、愚か。
――これでアリスになろうなんておこがましいにもほどがあるわね。
――ごめんなさいみんな。ごめんなさいジュン。
ピンポーン。
チャイムが鳴る。
みつ「はーい」
ジュン「真紅はっ?」
真紅「っ?」
金糸雀「やっときたかしら」
ジュン「真紅っ!」
ジュンは真紅のもとへ一目散に駆け寄ると、抱きしめた。
真紅「きゃっ」
ジュン「ごめんな真紅。ごめんな……」
真紅「ジュン……」
ジュン「お前の願いならなんだって聞いてやる。聞いてやるから」
真紅「いいのよジュン。私こそごめんなさい。みんなで楽しんでたのに私のわがままで台無しにしてしまって……」
ジュン「いいんだよ。もうお前には時間が無いんだ。わがままを言う権利があるんだよ」
真紅「いいの……?」
ジュン「ああ。お前が動かなくなるまで、ずっと僕がいっしょにいてやる」
真紅「でも他のみんなが……」
ジュン「みんなOKしてくれたよ。姉ちゃんだって翠星石だって蒼星石だって金糸雀だって」
ジュン「みんなお前のことが大好きなんだよ。だからお前の最後の願いを快く許してくれたんだ」
真紅「みんな……」
ジュン「それに」
真紅「それに?」
ジュン「ぼ、ぼくだってその……お前のことが大好きだから」
真紅「っ」
真紅の目から涙が流れる。
ジュン「え? 泣いてる? ご、ごめん真紅」
真紅「別に悲しかったりするわけじゃないのだわ」
そう、それは嬉しさからくる涙。
真紅「ありがとうジュン。私は幸せだわ」
真紅「あなたに出会って、のりやみっちゃんさんと出合って、他の姉妹達と楽しく過ごして」
真紅「ありがとうジュン。私のマスターになってくれて」
ジュン「じゃあ僕らはそろそろ帰るよ」
真紅「迷惑かけて申し訳なかったのだわ」
みつ「いいのよ。残りの時間を大切にね」
金糸雀「もうこれでお話するのは最後になるかしら?」
真紅「そうね」
金糸雀「カナ、真紅やヒナに会えてよかったかしら。おかげですごい楽しかったかしら」
金糸雀「真紅がいなくなっても、カナ頑張るわ。この平穏を守るために」
真紅「ええ、頑張って。翠星石や蒼星石を任せたわ。“お姉さん”」
金糸雀「わかったかしら。第2ドール金糸雀。姉としてしっかりあの2人を守ってあげるわ」
真紅「ありがとう。それじゃあね」
――帰り道。
真紅「ねえジュン」
ジュン「んー?」
真紅「あの時の言葉、もう一度言って貰ってもいいかしら?」
ジュン「あの時の言葉?」
真紅「私のこと、大好きって言ってくれたでしょう?」
ジュン「っ! い、言ったけどもう一度ってのは……」
真紅「あの言葉は、私を連れ戻す為だけの言葉だったの……?」
ジュン「ち、違う。それは違うぞ。断じて違うからな」
真紅「じゃあ、もう一度お願い」
ジュン「う……。真紅。だ、大好きだ」
真紅「ふふ。ありがとうジュン。私もあなたのこと、大好きよ」
翠星石「やっと帰ってきたですぅ」
蒼星石「おかえり真紅」
のり「おかえり真紅ちゃん。心配したのよぅ」
真紅「ごめんなさい。私のわがままでみんなに心配かけて」
翠星石「まったくですぅ。でも、今回は特別に許してあげるですよ」
ジュン「お前はまた偉そうに」
真紅「みんなに確認したいことがあるわ」
真紅「私の最後のお願い。本当にいいの?」
蒼星石「僕は構わないよ。真紅には最後まで幸せでいてほしいから」
のり「わたしも同じ意見よ」
翠星石「ジュンと好きなだけいちゃいちゃすればいいです」
ジュン「お前、ちょっと機嫌悪くないか?」
翠星石「そんなことねーです。知ったような口きくなですチビ人間」
ジュン「んだとぉ?」
真紅「いいじゃないジュン。私はジュンといちゃいちゃしたいわ」
ジュン「なっ、お前何言ってんだ」
真紅「だって私はもう……」
ジュン「わかった! わかったからもう言うな!」
のり「ふふ。微笑ましいわ」
蒼星石「そうですね」
のり「よし、みんな。晩御飯にしましょうか」
蒼星石「レンピカ。例の事、頼むよ」
皆が食卓につく中、蒼星石はレンピカに何か指示をしているようだった。
翠星石「蒼星石もはやく席につくです」
蒼星石「ああ、ごめんごめん」
その日の夜もご馳走だった。
みんなはのりのお手製料理をおいしそうに食べる。
食卓からは笑顔が絶えなかった。
真紅「ごちそうさま」
のり「おそまつさまでした」
真紅「そろそろ、ジュンと2人っきりになりたいのだわ」
翠星石「じゃあ、これでお別れみたいなもんですね……」
蒼星石「最後に、真紅に言いたい事があるんだ」
のり「私もよ」
翠星石「同じくですぅ」
蒼星石「真紅、まずはごめんなさい。なんで謝ってるのか、分かると思うけど口にはしないでくれたら嬉しい」
蒼星石「そして、ありがとう。君に会えて僕はいろいろ変わったんだ」
蒼星石「君のおかげでこの平穏の素晴らしさや争う事の虚しさがよくわかったんだ。僕にとって、これは大きなことだ」
蒼星石「自分が変われたこと、僕は嬉しく思うよ。改めてありがとう真紅」
真紅「こちらこそありがとう蒼星石」
蒼星石「僕はこの平穏を守ってみせる。いつか、君や雛苺の魂が戻ってくる事があるかもしれない」
蒼星石「その時に、今と同じ平穏で君達を迎えてあげたいから」
真紅「ええ。いつかきっと戻ってくるわ。またみんなと笑いあいたいもの。まかせたわ蒼星石」
蒼星石「うん。まかせて」
のり「真紅ちゃん。私もあなたにありがとうって言わせて」
真紅「ええ」
のり「あなたがこの家で暮らすようになってから、いいことがたくさんあったの」
のり「例えばジュン君ね。前よりも元気になって、いっしょにご飯食べてくれるようになって。姉としてとても嬉しかった」
のり「それから真紅ちゃんやヒナちゃん、翠星石ちゃんが家に住むようになっていっそうにぎやかになったわ」
のり「たくさんの人のためにご飯をつくるって、とっても幸せなのよ。それに気付かせてくれたのも真紅ちゃん」
のり「本当にありがとうね」
真紅「こちらこそありがとう。迷惑かけっぱなしだったわね」
のり「全然迷惑なんかじゃないわ」
真紅「そう言ってくれると嬉しいのだわ。のり、ジュンをよろしくね」
のり「まかせて!」
翠星石「翠星石も真紅にはとっても感謝してるですぅ」
翠星石「この時代で目覚めてからは真紅に頼りっきりでしたからね」
翠星石「こんな素敵な生活が送れるのも真紅のおかげです」
翠星石「おかげでジュンとも出会えたですし……あ、なんでもないですっ。聞かなかったことにしてほしいですっ」
翠星石「なんだか姉として立場がないようにも感じるですけど、とにかくありがとうです」
真紅「こちらこそありがとう。金糸雀といいあなたといい、もうちょっと姉らしく頑張ってちょうだい」
翠星石「わ、わかってるですよ。たとえ水銀燈やら敵がきても翠星石がおっぱらってやるですぅ」
真紅「期待してるわ」
翠星石「だから、安心してほしいです。残りの時間、自分のことだけをしっかり考えるですよ」
真紅「ええ。わかったわ」
蒼星石「僕達が言いたい事はこれで全部かな」
翠星石「これで、お別れですね」
のり「真紅ちゃん……うぅっ……」
真紅「泣かないでのり。私は今幸せなの。だから、あなたにも泣いて欲しくない」
のり「うん、そうよね。ごめんなさい」
真紅「じゃあそろそろ行くわ。ジュン、抱っこしてちょうだい」
ジュン「ああ」
真紅「それじゃあね。もう一度、私のわがままをきいてくれてありがとう」
真紅「たとえ私の魂が遠くへいっても、あなた達のことは絶対にわすれないわ。絶対に」
真紅はジュンに抱っこされて、2階のジュンの部屋へと消えた。
蒼星石「翠星石」
翠星石「どーしたです?」
蒼星石「本当に良かったのかい?」
翠星石「何がですか?」
蒼星石「君はジュン君のことが好きなんだろう?」
翠星石「な、ななななな何いうですか蒼星石! なんで翠星石があんなチビを」
蒼星石「僕にはわかるんだよ。いや、他のみんなもわかってただろうね」
翠星石「うぅ……」
翠星石「しょうがないですよ」
翠星石「だってジュンは翠星石よりも真紅の事が好きなのですから」
翠星石「叶わぬ恋ってやつです。今まで散々ジュンのこと馬鹿にしてきたです。しょうがないですよ」
蒼星石「真紅の願いを聞いたことに後悔はないのかい?」
翠星石「後悔はないですよ。誓ってもいいです」
翠星石「翠星石は、蒼星石の姉であって真紅の姉でもあるのです。妹が幸せならそれでいいのです」
蒼星石「翠星石……。君は、やっぱり優しいね」
翠星石「慰めてくれなくてもへーきですよ」
蒼星石「慰めなんかじゃない。本心からの言葉さ」
翠星石「ありがとーです」
蒼星石「それと、嫌な言い方になるけど」
翠星石「なんですか?」
蒼星石「真紅はもう動かなくなる。そうしたらまた君にもチャンスはあるんだよ」
翠星石「そうかもしれないです」
翠星石「真紅が居なくなって。それでもジュンは毎日を生きていかなくてはなりません」
翠星石「生きているうちに素敵な女性に出会うことはいくらでもあるのです」
翠星石「真紅を想い続けて生きるのも、新たな想い人と添い遂げるのもジュンしだいです」
翠星石「巴となんかくっついたりするかもですね」
翠星石「でも、翠星石がジュンの想い人になることはありません」
蒼星石「どうして?」
翠星石「翠星石がそう生きると決めたからです」
翠星石「ジュンの隣を一緒には歩けない。だけど後ろからずっと見守り続ける。そんな生き方を選んだのです」
蒼星石「……それは、辛くないかい?」
翠星石「辛いかもしれません。だけど、翠星石の幸せよりもジュンの幸せの方が大事です」
翠星石「だから、翠星石はジュンを守り続けると決めたのです」
蒼星石「君らしいね」
翠星石「覚悟はできてるですよ」
蒼星石「そうか。嫌なことを聞いてごめん」
翠星石「気にしなくていいですよ。翠星石を思っての言葉ってことはわかってますから」
蒼星石「ありがとう。じゃあ僕はそろそろ帰る。マスターが待ってるからね。また明日の朝来るよ」
翠星石「おやすみなさいです蒼星石」
蒼星石がnのフィールドを通って帰路に着く。
翠星石「……のり」
のり「なあに?」
翠星石「今夜は、のりのベッドで一緒にねていいですか?」
のり「ええ、もちろんよ」
――ジュンの部屋。
2人は寄り添いながらベッドに座っている。
真紅「ねえジュン」
ジュン「ん?」
真紅「昼間走り回ったせいで、私は夜明け前には動かなくなるわ」
ジュン「もう朝までもたないのか」
真紅「そうみたい。残り数時間、ずっと抱きしめてくれないかしら」
ジュン「ああ」
ジュンは真紅を自分の前に座らせ、後ろから抱きしめる。
真紅「もうすぐ動かなくなるというのに、どうして私はこんなに幸せなのかしら」
こうしてジュンと真紅はいろいろなことを語り合った。
今までの事。お互いの過去。これからのこと。そして自分がどれだけ相手を愛しているかということ。
真紅「私の方がジュンのことを愛してるのだわ!」
ジュン「僕の方が愛してるぞ。絶対にね」
真紅「私よ」
ジュン「いいや、僕だね」
真紅「……」
ジュン「……」
2人は見つめ合う。
真紅・ジュン「あははははははははっ」
真紅「こういうのをバカップルっていうのでしょうね」
ジュン「まさか僕がこんなになるとは思わなかったよ」
真紅「ジュン。私はね、動かなくなるのが恐いわ」
ジュン「そうだろうな」
真紅「雛苺は強かったわね。動かなくなるまで恐がる仕草なんてみせなかったわ」
真紅「一番子供っぽいって思ってたのにね。あの子は本当に成長したわ」
ジュン「そうだな」
真紅「私は、何か変われたかしら」
真紅「人形の身だけれど、前に進めたかしら」
ジュン「進めたんじゃないか」
真紅「本当? どんな風に?」
ジュン「お前が僕を好きになったってことが、大きな一歩だよ」
真紅「あなた、言ってて恥ずかしくない?」
ジュン「恥ずかしいに決まってるだろ。今僕の顔は真っ赤だぞきっと」
真紅「あら、それは見てみたいわ」
ジュン「やめろっ、振り向くな! このっ」
真紅「邪魔しないでジュン! その真っ赤な顔を見せなさい!」
真紅はジュンの阻止をかいくぐって後ろを振り向く。そして
真紅「んっ――」
ジュンは真紅の視界をさえぎるかのようにキスをした。
数秒間のキス。
部屋は時間が止まったかのように静まり返る。
真紅「っぷはぁ」
ジュン「っはぁ」
真紅「い、いきなりこんなことするなんて、野蛮ねジュン」
ジュン「これでお前も顔真っ赤だぞ。おあいこだな」
真紅「ふふ。してやられたのだわ」
ジュン「僕だってやる時はやるんだぞ」
真紅「知ってるわ。今までの戦いでもそうだったもの」
真紅「あなたは強いわ。私がいなくなってもしっかりと生きていけるはずだわ」
ジュン「どうだろうな。絶望のあまり前よりヒッキーになるかも」
真紅「大丈夫よ。この真紅が言うのだから間違いないのだわ」
ジュン「……。ありがとな」
真紅「あなたは本当に、最高の家来だっ……たわ」
ジュン「真紅っ」
真紅「この時代……で、あなた……に螺子……を巻いてもらっ……て」
真紅「契約……を結……んで」
真紅「とても……とて……も楽し……かったわ」
ジュンは真紅をいっそう強く抱きしめる。
ジュン「ああ、僕もだ。僕もだよ真紅」
真紅「この……時代で目覚……めて」
真紅「あなたた……ちに出会えた……こと」
真紅「私……の誇り」
真紅「……不思……議ね」
真紅「さっき……まで恐か……ったのに」
真紅「何故……か今は……恐くな……いわ」
真紅「とても……やす……らかな気……持ち」
ジュン「っ……」
ジュンは涙をこらえる。
最後まで涙はみせない。それがジュンの覚悟。
真紅「ねえ……ジュン。……最後……のお願……い」
ジュン「ああ、なんだ?」
真紅「私……から、あなた……に」
真紅「キスを……させて」
ジュン「ああ」
ジュンは抱きしめていた腕を緩める。
真紅は立ち上がりジュンのほうへと向き直る。
その動作はあまりにも不安定で、
動かなくなるという現実を、よりいっそうジュンにつきつけた。
真紅「目……つむって」
ジュン「ああ」
ジュンは目を閉じる。
真紅「ジュン……」
顔をジュンに近づける。
真紅「愛……してる……わ」
唇と唇が触れ合う寸前。
真紅の動きが完全に止まり、
唇が合わさることなく
ジュンの肩へともたれかかった。
ジュン「真紅……真紅……。うわ、うわあああああああああああああああ」
堪えていた涙があふれ出る。
ジュンはもう動かない真紅を抱きしめながら、泣く。
夜が明ける。
ジュンはもう泣き止んでいた。
涙はもう枯れてしまったのだろう。
ジュンは真紅を抱き上げると鞄のもとへと向かう。
ジュン「じゃあな真紅」
鞄を開ける。
ジュン「お前のことは何があっても忘れない。ずっと愛してやる。……だから」
真紅を鞄の中に寝かす。
ジュン「絶対、戻ってこいよ」
ジュン「お前からキスしてもらえるの、ずっと待ってるからな」
ジュンは真紅に口付けると、鞄を閉じた。
――真紅編 END。
エピローグ
蒼星石は桜田家をでてnのフィールドを滑空していた。
前方に人影。蒼星石は地面に降り立った。
その人物の横にはレンピカがいる。
蒼星石「やあ。来てくれたんだね」
蒼星石「水銀燈」
水銀燈「人工精霊使って呼び出して何の用? まさか戦う気になったのぉ?」
蒼星石「基本的に僕は戦う気はないよ。今日は君にお願いがあってきたんだ」
水銀燈「お願いぃ?」
蒼星石「金輪際、僕達に争いごとを挑まないようにして欲しいんだ」
水銀燈「馬鹿じゃないのぉあなた」
蒼星石「僕達はみな今の平穏が続く事を望んでいるんだ」
水銀燈「あなた、私達がなんなのかわかってるぅ? ローゼンメイデンよ」
蒼星石「ああ。分かっているよ。アリスゲームをしてアリスになるのが目的だ」
水銀燈「それなのに争いごとは嫌だなんて、めちゃくちゃ言ってることわかってる?」
蒼星石「ああ。分かってる。でも僕らはみなアリスになることよりも、今の平穏の方が大事なんだ」
水銀燈「あなた、お父様を裏切る気?」
蒼星石「そういうことになってしまうかもしれない。でもしょうがないんだ」
蒼星石「それに……。これはけじめなんだ。僕がしっかりとつけなきゃいけないけじめ」
水銀燈「けじめぇ?」
蒼星石「真紅は今夜動かなくなる。僕のせいでね」
水銀燈「っ!? どういうこと?」
蒼星石「前にあった時のことを思い出してごらんよ」
水銀燈「……なんだ。あの子結局大丈夫じゃなかったじゃなぁい」
蒼星石「真紅はこの平穏が続く事を望んでいる」
蒼星石「真紅が動かなくなるのは僕のせいだ。だから、けじめとして僕は平穏を手に入れなければいけない」
水銀燈「嫌だ、といったらぁ?」
蒼星石「しょうがないね。力ずくでも従ってもらうよ」
水銀燈「力ずくですって? ふふふ。お馬鹿さぁん」
蒼星石「レンピカッ」
蒼星石は庭師の鋏を手に取ると水銀燈へ向かって走り出した。
水銀燈「無駄よぉ」
水銀燈は羽を飛ばしてそれを妨害する。
蒼星石は防御で足を止められる。
水銀燈「またあの時の展開ねぇ。このままじゃあなた負けるわよ」
蒼星石「負けない、僕はまけないっ」
蒼星石は鋏で防ぐのをやめ、避けることに集中する。
そして羽の嵐の中、水銀灯の元へと徐々に近づいていった。
水銀燈「こしゃくなっ」
蒼星石「負けるもんかっ。真紅の為、翠星石の為、ジュン君の為、のりさんの為、金糸雀の為!」
水銀燈まで残り数メートルのところまで近づく。
蒼星石「くらえええええ」
水銀燈「無駄よぉっ」
雨のように襲い掛かっていた水銀燈の羽が一転集中する。
蒼星石「ぐうっ」
鋏が水銀燈に直撃する寸前、羽が蒼星石の身体に突き刺さる。
水銀燈「残念だったわねぇ」
蒼星石「こんなもの……こんなものぉっ」
蒼星石は倒れない。
大きなダメージを受けながらも耐えている。そして、
蒼星石「おおおおおおおおおお」
足に力を入れて踏む込む。
水銀燈「ぐふぅっ……。なぜ……」
鋏の先を水銀燈の身体に穿った。
蒼星石「水銀燈おおおおおおお」
動きが止まった水銀燈を組み伏せ、蒼星石は馬乗りになる。
そして鋏の刃を水銀燈の首にあてる。
蒼星石「勝負……ありだ!」
蒼星石「さあ、願いをきいてもらうよ」
水銀燈「私としたことが……」
蒼星石「金輪際、僕達に争いごとをしかけないと誓うんだ。さもなければ」
蒼星石「その首、刎ねさせてもらう」
水銀燈「……わかったわ」
蒼星石「そう……か。あり……がと……」
水銀燈「?」
蒼星石「ご……めん。翠星……せ――」
蒼星石の身体からローザミスティカが飛び出す。
そして蒼星石は鋏にもたれかかるように動かなくなった。
水銀燈「何よ……。あなた限界だったのね」
水銀燈は蒼星石を見つめ続ける。
水銀燈「いいわ。あなたの願いはしっかり聞くし、ローザミスティカは取らないでいてあげるわ」
水銀燈「私は今の生活にわりと満足してるし」
水銀燈はめぐの顔を思い浮かべる。
水銀燈「それに」
水銀燈「……気分じゃないもの」
そういい残し、水銀燈は去っていった。
そしてそれを影から見ていたものが1人。
雪華綺晶「ふふ……。みつけた……。私の器……」
――翌日。桜田家。
ジュン「おはよう」
のり「ジュン君おはよう。真紅ちゃんは?」
ジュン「もう行ったよ。どこか遠くへ」
のり「そう……」
翠星石「うじうじしててもしかたないです。朝ごはんを食べて元気をつけるですぅ」
のり「そうね」
リビングの扉が開く。
現れたのは蒼星石だった。
翠星石「蒼星石、おはようですぅ」
蒼星石「おはよう。……“お姉さま”」
――END。
感謝の気持ちをこめて
何も無い世界。
音も匂いも景色も、何も無い空虚な空間。
真紅「おまたせ。待たせたわね」
雛苺「一日くらいへーきなのよ。ヒナも成長したんだから」
真紅「そうね。あなたはローゼンメイデンの名に恥じないくらい、立派になったわ」
雛苺「えへへ。ねえ真紅。どこ行くなの?」
真紅「そうねえ。見回しても何も無いし。流れるがままに進みましょう」
雛苺「うん。真紅が一緒なら恐くないのよ」
真紅「じゃあいきましょうか」
雛苺「うんっ」
では。

