3 : 以下、名... - 2014/06/07 00:59:05 WXANseu2 1/10

「この世の中に存在する全ての物に感謝して生きなさい」

これは私を育ててくれた人の口癖だった。
その人は別に聖職者なわけではなかった。

その人はいつもそんなことを言う癖に虫が嫌いで

「虫ってなんでこの世の中にいるのかな?」

って言っていた。
他の人からするとそういうところが憎めないそうだ。
でも私には理解できなかった。

元スレ
私が嫌いだった他人へ
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1402070052/

4 : 以下、名... - 2014/06/07 01:05:15 WXANseu2 2/10

いつも笑顔で明るい元気な人だった。
だから周りには自然といろいろな人が集まった。

その人と純粋に友達になりたい人
相談に乗ってほしい人や、つき合って欲しい人,etc.
中には騙そうと近づいてくる人もいた。

私はその人と違っていろいろな人から嫌われていた

5 : 以下、名... - 2014/06/07 01:10:57 WXANseu2 3/10

「あの子は本当にあの人の子どもなの?」

「あなたはどうしてあの人に似なかったのかな?」

と言われる事もあった。
その人に似てない理由はわかっている。
私はその人の本当の子どもでは無いから。

じゃあなぜ私が嫌われているのか
その答えは知らない

私を育ててくれた人は

「嫌われるのは、アナタにも何か原因があるはずよ」

と言っていたが私には、嫌われるようなことをした覚えは無かった。

6 : 以下、名... - 2014/06/07 01:15:11 WXANseu2 4/10

私はどうして嫌われているのだろうか?
私はどうして恨まれているのだろうか?

私は羨ましかった。
私と違ってみんなに好かれる貴女が

憎かった。
私と違って助けてくれる他人がいて。

私と対極に存在する貴女の存在が

7 : 以下、名... - 2014/06/07 01:21:09 WXANseu2 5/10

その存在を消してやろうかと思った時もあった。

こんな事を考える私は歪んでいると誰だって思う。
自分でも歪んでいると思う。

でも私はその人が本当にこの世から消えて欲しかった。

そんなことを思って日々を過ごすと
ある日私を育ててくれた人は動かなくなってしまった。
正直私は嬉しかった。

8 : 以下、名... - 2014/06/07 01:29:04 WXANseu2 6/10

もう私は貴女と比べられることはないと

その人が死んだのに泣かない私を見てみんなは

「何で自分を育ててくれた母親が亡くなったのに泣いてないの?」

とか言ってた。
私を育ててくれたあの人は本当の母親では無いから、悲しい訳が無いだろう
と思った。

それから長い年月が経った。
年々私はその人のことを忘れていった。

9 : 以下、名... - 2014/06/07 01:31:42 WXANseu2 7/10

そしてその人の事をほとんど忘れてしまった頃に
その人の机から一通の手紙を見つけた。
それは私に宛てた手紙だった。

そこにはこう書いてあった

10 : 以下、名... - 2014/06/07 01:39:22 WXANseu2 8/10

『最愛の娘へ
 お元気ですか? これを読んでいると言うことは、アナタが20歳になった頃だと思います。
 もう家から出て働いている頃でしょうか?
 アナタは私の事を嫌っていたようですが、今はどうですか?
 私は今も昔もアナタの事が大好きです。
 アナタと過ごしたこの20年間はとても楽しかったです。
 たまには家に帰ってきてもらえるととても嬉しいです。
 
 最後に……

11 : 以下、名... - 2014/06/07 01:49:33 WXANseu2 9/10

 お誕生日おめでとう。
 そして私はアナタの帰りをいつでも待っています。
 
 アナタの嫌いな他人より』

その人の手紙は嘘だらけだった。

なのに私はこの手紙を読むとなぜか涙が止まらなくなてしまった。
記憶の断片でしか存在しなかったはずなのに……
とても嫌いだったはずなのに……

家でなんて待って無いくせに……
20年も一緒に過ごして無いくせに……

貴女はなぜ逝ってしまったの?
まだありがとうも言ってないんだよ?
ごめんなさいだって言って無いんだよ?

12 : 以下、名... - 2014/06/07 01:53:11 WXANseu2 10/10

「お母さん……」

私は初めてその他人の事を『お母さん』と呼んだ……

「育ててくれてありがとうございました……」

「そしてごめんなさい……」

私は初めてその人に泣かされたのだった。

~fin~

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