昔々ある富山に、ひまわりちゃんとさくらこちゃんがいました。
ひまわりちゃんは毎日おかしを作り、
さくらこちゃんが毎日それを食べ、
時にはケンカもしながら、ふたり仲良く暮らしていました。
元スレ
櫻子「眠りひま」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1339774804/
ある日、さくらこちゃんがひまわりちゃんに言いました。
さくらこ「ひまわりー!」
ひまわり「なんですの、さわがしい」
さくらこ「ピクニック行きたい!」
ひまわり「ピクニック?」
さくらこ「だからおかし作ってー」
ひまわり「また急ですわね」
さくらこ「だめ?」
ひまわり「……だめじゃありませんけど」
さくらこ「やったー」
ひまわりちゃんはさくらこちゃんを甘やかしすぎるきらいがあります。
ひまわり「そのかわり、ひとつ約束してくださいな」
さくらこ「やくそく?」
ひまわり「わたくしがおかしを作りますから、
さくらこはおにぎりを作ってちょうだい」
さくらこ「わかった!」
ひまわり「おかか入りですわよ」
さくらこ「まかせろー!」
こうしてふたりは、野山へピクニックに行く約束をしました。
ところが、それをこころよく思わないものがいました。
王国を追われた魔女・チーナです。
チーナ「幼なじみ同士でピクニックぅ~?」
かつて想い人をその幼なじみにうばわれたチーナは、
世界中の幼なじみカップルを憎んでいました。
チーナ「そんなの、ぜったいにゆるさないんだから!!」
その夜、チーナはひまわりちゃんの家をたずねました。
チーナ「ひーまわーりちゃーん」
ひまわり「あらガチ川さん」
チーナ「ガチ川さんって言うのやめて」
ひまわり「あ、はい」
チーナの苗字は吉川です。
ひまわり「なにかご用ですの?」
チーナ「おとどけものよ。はいこれ」
ひまわり「まあ、なんておいしそうなおにぎりでしょう」
チーナ「さくらこちゃんがいっしょうけんめい愛情こめて作ったからひまわりちゃんに味見してほしいんだって」
ひまわり「いただきますわ!」
ひまわりちゃんはさくらこちゃんを甘やかしすぎるきらいがあります。
それがあだとなりました。
ひまわり「うっ……!」
ひまわりちゃんが食べたのは、悪しき闇の忌まわしく邪なる黒光りした毒おかかおにぎりでした。
それを食べたものは、ふかいふかい呪いの眠りに落ちてしまいます。
床にたおれたひまわりちゃんを見て、チーナはおおきな声で笑いました。
チーナ「おーっほっほっほ! おーっほっほっほ! ……おーっほっほっほ!」
これといって気の利いたコメントが思い浮かばなかったのか、
チーナの高笑いだけがいつまでもひびいていました。
夜が来て、夜が更け、夜が明け。
それでもひまわりちゃんは目覚めませんでした。
さくらこ「ひまわりー!」
ひまわり「……」
さくらこ「うわっビックリした!」
さくらこ「ひまわり、なんでこんなとこで寝てんの?」
さくらこ「ひまわりー?」
ひまわりちゃんは起きません。
さくらこ「つかれてるのかな?」
さくらこ「うーん……」
さくらこ「しょーがない、もすこし寝かせといてあげよ」
さくらこ「ひまわりー、ベッドで寝ないとカゼひくぞー」
ひまわりちゃんは起きません。
さくらこ「ますますしょーがない!」
さくらこ「うんしょ、うんしょ」
結局、その日も向日葵ちゃんは目を覚ましませんでした。
待ちぼうけを食らったさくらこちゃんはとても怒りました。
けれど、すやすやと眠るひまわりちゃんの顔を見ていると、
なんだかさくらこちゃんまで幸せな気持ちになってしまって、
けっきょく、その日はさくらこちゃんも家に帰ったのでした。
また明日からは、学校がはじまります。
1
さくらこ「ひまわりー!」
ひまわり「……」
さくらこ「なんで学校こなかったの!」
さくらこ「あっまだ寝てる!!」
さくらこ「寝てるならしょーがない!」
さくらこ「明日はこいよな!」
ひまわりちゃんは起きません。
6
さくらこ「ひまわりー!」
ひまわり「……」
さくらこ「いつまで寝てんだ!?」
さくらこ「ほらっ今日のプリント!」
さくらこ「あとしゅくだいも出たんだけど!!」
さくらこ「ひまわりがおしえてくれないとわかんないんだけどー!!!」
ひまわりちゃんは起きません。
37
さくらこ「ひまわりー!」
ひまわり「……」
さくらこ「TVアニメ『ゆるゆり』の二期がはじまるって今日はじめて知ったんだけど!!」
さくらこ「テレビ東京系で7月2日からってなんで教えてくれなかったの!」
さくらこ「あっ寝てる!!」
さくらこ「ならしょーがないな……アニメまでには起きてね!」
ひまわりちゃんは起きません。
94
さくらこ「ひまわりー!」
ひまわり「……」
さくらこ「給食のパン持ってきたぞ!」
さくらこ「今日はイチゴジャムだったよ!」
さくらこ「まあジャムはわたしが帰るとちゅうで食べたけど」
さくらこ「ひまわりがおかし作ってくれないのがいけないんだからな!!」
ひまわりちゃんは起きません。
169
さくらこ「ひまわりー!」
ひまわり「……」
さくらこ「はいはい寝てる寝てる」
さくらこ「いつになったら起きるんだろ」
さくらこ「おーい、つんつん。つんつーん」
さくらこ「……つんっ」
ひまわりちゃんは起きません。
292
さくらこ「ひまわりー!」
ひまわり「……」
さくらこ「マンガ買ってきた!」
さくらこ「日刊百合少女ナモリは今日も100P越えだよ!」
さくらこ「なもり先生って何人いるんだろ」
さくらこ「読んだらひまわりにも貸してあげるね!」
ひまわりちゃんは起きません。
350
さくらこ「ひまわりー!」
ひまわり「……」
さくらこ「見て見て、びじゅつで描いたの!」
さくらこ「ひまわりがいなくてたいへんだったんだから!」
さくらこ「でもじょうずでしょ、エアひまわり」
さくらこ「えへへ、枕元にかざっといてやろう!」
ひまわりちゃんは起きません。
408
さくらこ「ひまわりー!」
ひまわり「……」
さくらこ「今日も寝てる!」
さくらこ「ほんとしょーがないな……」
さくらこ「もぐしもぐし」
さくらこ「おかかうまい! もはやプロなみ!」
ひまわりちゃんは起きません。
500
さくらこ「ひまわりー!」
ひまわり「……」
???「……」
???「……」
???「……」
???「……」
さくらこ「くせもの!?」
さくらこちゃんの前にあらわれたのは、4人の小人でした。
メンバーを紹介します。
???「さくらこちゃん、はじめましてなの」
まず、ふとまゆがかわいいかえでちゃん。
???「はなこたちはくせものじゃないし」
つぎに、くりくりおめめのはなこちゃん。
???「♪想い出は いつも キレイだけど うにだけじゃ おなかが すくわ」
UNI AND MARY。
???「今日はさくらこちゃんに話があって来たんだけど」
そして大室撫子。
以上、3人の小人とひとりの胸が小さい人が、ひまわりちゃんを囲むように立っていました。
大室撫子「」
大室撫子はしばしば白目をむきます。
さくらこ「なんか用かい?」
かえで「ひまわりちゃんのことなの」
さくらこ「ひまわりー!」
はなこ「おちつけし」
さくらこ「あ、はい」
UNI AND MARY「♪前よりももっと やせた胸にちょっと “チクッ”と ささるうにが イタイ」
さくらこ「おだいじに」
大室撫子「冗談はそれくらいにして……ひまわりちゃんが魔女の呪いで眠り続けてる件についてなんだけど」
さくらこ「えっ」
大室撫子「えっ」
さくらこ「ただの寝坊じゃないの?」
大室撫子「なにそれ逆にこわい」
3人の小人とひとりの胸が小さい人は、さくらこちゃんにすべてを話しました。
本当にただの寝坊だと思っていたさくらこちゃんは、とてもおどろきました。
かえで「かえでたちは、さくらこちゃんのお手伝いにきたの」
はなこ「さくらこちゃんにかわってひまわりちゃんを見守るし」
UNI AND MARY「♪もどかしい気持ちで あやふやなうにで それでも イイ 恋をしてきた」
大室撫子「今まで大変だったでしょ。これからは私達が力になってあげる」
さくらこ「え、いらない」
大室撫子「えっ?」
さくらこ「え、大きなお世話じゃね? おっぱいは小さいくせに」
大室撫子「えっ」
さくらこ「え、だいたい他の3人と一回り近く年がちがうとか恥ずかしくないの?」
大室撫子「」
いったい大室撫子がなにをしたというのでしょうか。
結局さくらこちゃんは、3人の小人とひとりの胸が小さい人をむりやり追い出してしまいました。
部屋の中には、さくらこちゃんとひまわりちゃんだけが残りました。
さくらこ「やれやれ、へんな人の相手はつかれるなー」
さくらこ「べつにたいへんじゃないもん」
さくらこ「さみしくないもん」
さくらこ「ねーひまわり!」
ひまわりちゃんは起きません。
それから、またいくばくかの時が流れました。
消費税増税。宇宙戦争。富山以外全部沈没。
さまざまな出来事が、めまぐるしい速さで、
まるで、眠るひまわりちゃんを置き去りにするかのように起きていきました。
けれどさくらこちゃんはそんなことなんてお構いなしに、
来る日も来る日も、ひまわりちゃんの傍で笑いつづけました。
999と363
さくらこ「ひまわりー!」
ひまわり「……」
さくらこ「あのね、明日ね、学校で遠足があるんだって!」
さくらこ「みんなでおべんと持って、山に登るの!」
さくらこ「わたしたちが行こうって約束した、あの山に」
さくらこ「……ひまわりー」
ひまわりちゃんは起きません。
999と364
さくらこ「ひまわり」
ひまわり「……」
さくらこ「あのね、わたしね」
さくらこ「遠足、行かなかった」
さくらこ「みんなには、ちゃんとごめんなさいってしたよ」
さくらこ「だって、ズルになっちゃうもんね」
さくらこ「いっしょがいいよね、ひまわり」
ひまわりちゃんは起きません。
おだやかな寝息を立てて、眠りつづけています。
さくらこ「ひまわりー……」
ひまわり「……」
さくらこ「ひまわりのおかしが食べたいなぁ」
さくらこ「ひまわりが作ってくれないから、もうずっと食べてないよ」
さくらこ「……なんか、眠くなってきちゃった」
ごそごそ。
さくらこちゃんがベッドにもぐりこみます。
ひまわりちゃんは起きません。
さくらこ「えへへ……ひまわりー」
ひまわりちゃんのぬくもりを感じながら、
さくらこちゃんも、しずかに眠りにつきました。
その夜、さくらこちゃんはふしぎな夢を見ました。
桜とヒマワリが仲良く咲いたお花畑の夢です。
空を桜が、大地をヒマワリが彩る、すてきなお花畑です。
そこには花々にまぎれ、色とりどりのおかしも実っていました。
イチゴショート、タルト、ミルフィーユ、
レアチーズ、モンブラン、スフレ、シフォン。
クッキー、フィナンシェ、キャンディ、マシュマロ、
マドレーヌ、おせんベ、アイス、プリン。
どれもこれもさくらこちゃんの好きなものばかりです。
さくらこちゃんの好きな、ひまわりちゃんが作るおかしです。
でも、そこにひまわりちゃんはいませんでした。
それだけで、さくらこちゃんはかなしい気持ちになりました。
さくらこ「ひまわりーどこー」
名前を呼んでも、だれも答えてくれません。
こんなに大好きなものに囲まれているのに、
さくらこちゃんは泣いてしまいそうになりました。
そんな時、空をおおう桜の上から天使がおりてきました。
あかり「アッカリ~ン☆」
さくらこ「あかりちゃんだ!」
あかりちゃんでした。
あかり「ち、ちがうよぉ! あかりはあかりじゃないよ、あかりは大天使アカリエルだよぉ!」
さくらこ「あかりちゃんじゃん」
あかりちゃんでした。
あかり「ちがうって言ってるのにぃ……こほんっ。えー、さくらこちゃん?」
さくらこ「なに?」
あかり「ひょーしょーじょー!」
さくらこ「ひょーしょーじょー?」
あかり「ひょーしょーじょー。
さくらこちゃん、あなたはひまわりちゃんのために、
雨の日も風の日も、いつもやさしくしてあげました」
さくらこ「てれるね!」
あかり「なので、クラゲの神様がごほうびとして、
さくらこちゃんの願いをひとつだけ叶えてくれるそうです」
さくらこ「マジで!?」
あかり「マジだよぉ。ひとつだけだから、よく考えてね」
さくらこちゃんはなやみました。
なやんでなやんで、こう言いました。
さくらこ「あーした天気になーれ!」
あかり「んん!?」
さくらこ「ん?」
あかり「んんん……え、今のがお願い? ひょっとして?」
さくらこ「うん!」
あかり「い、いいの? ひまわりちゃんを目覚めさせるとかじゃなくて」
さくらこ「え? ひまわりならかってに起きるでしょ」
あかり「んん!? ひまわりちゃんって呪いで眠ってるんだよね!?」
はい。
さくらこ「いや呪いとか知らねーし」
さくらこ「やくそくしたもん」
さくらこ「起きたら、いっしょにピクニック!」
あかり「でも、いつ起きるかわからないんだよね?」
さくらこ「ていけつあつだからね」
あかり「そういう問題かな!?」
さくらこ「せっかく起きても雨だったらピクニックできないし、
だから神様が天気にしてくれたらうれしー」
あかり「そ、それはそうかもしれないけど……さくらこちゃんはさみしくないの?」
あかりちゃんがたずねました。
さくらこちゃんはふしぎそうに首をかしげ、
それからすぐに笑って、こう答えました。
さくらこ「ぜーんぜん!」
さくらこ「毎日ひまわりと遊べないのはつまんないけど……」
さくらこ「明日のことを考えてたら、それだけで楽しいもん」
さくらこ「ひまわりが起きたらなにして遊ぼーとか、
なに作ってもらおーとか、あと、いろいろ!」
さくらこ「眠ってたって、会えないわけじゃないし」
さくらこ「だから」
さくらこ「ぜーんぜん、さみしくなんかないよ」
あかり「……そっかぁ」
さくらこちゃんの笑顔を見て、あかりちゃんはうなずきました。
少しのうそもない笑顔を見て、うれしそうにうなずきました。
あかり「じゃあ、あかりの役目はおしまいだね」
そう言ったあかりちゃんが、アの字のステッキをひと振りすると、
さくらこちゃんの体が足下から消えはじめました。
さくらこ「うおおなにこれ! なにこれこわい!」
あかり「だいじょうぶだよ」
あかり「さくらこちゃんが元いたところに帰るだけだから」
あかり「ひまわりちゃんもいっしょにね」
さくらこ「そうなんだすごい! あかりちゃんありがとー!」
あかり「えへへ、どういたしましてだよぉ。
ひまわりちゃんと仲良くね、さくらこちゃん」
さくらこ「うんっ! あかりちゃんばいばーい!」
999 と 365
さくらこちゃんが起きると、外はもう明るくなっていました。
カーテンの隙間から、あたたかい春の日差しがこぼれています。
そして、
その光が照らすベッドの上に、
ひまわりちゃんはいませんでした。
さくらこ「ひまわりー?」
きょろきょろと部屋中を見回しても、ひまわりちゃんの姿はどこにもありません。
がちゃっ。
その時、扉の開く音がしました。
さくらこちゃんが振り向くと、そこには、
ひまわり「あら、やっと起きましたわね」
ひまわりちゃんが起きてました。
ひまわり「ほら、さっさと支度してしまいなさいな」
ひまわり「今日はピクニックって、さくらこが言ったんでしょうに」
ひまわり「ほんとにだらしないんだから……」
ひまわり「まさか、約束を忘れたとは言わせませんわよ」
ひまわり「もうクッキーは焼けてますし、さくらこ待ちなんですからね」
ひまわり「それなのにおにぎりも作らずこんな時間まで……」
ひまわり「……ちょっとさくらこ? わたくしの話聞いてます?」
ぐちぐち、くどくど。
いつも通りに小うるさいひまわりちゃんを、
さくらこちゃんはじっと見ていました。
ひまわりちゃんに、言いたいことがありました。
たくさん、本当にたくさんのことが浮かんでは消えて、
結局さくらこちゃんは、たった一言。
花の咲いたような笑顔で、たった一言。
さくらこ「おはよう、ねぼすけっ!」
少女は1000年の夢から覚め――
さくらこちゃんとひまわりちゃんは、いっしょにピクニックへ出かけました。
それからのふたりは、
いつもいっしょに、
いつまでもいっしょに、
仲良くケンカをして暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。
さくらこ「ひまわりー!」
ひまわり「なんですの、さわがしい」
さくらこ「いるか!」
ひまわり「ちゃんとついてきてますわよ」
さくらこ「となりだろ!」
ひまわり「はいはい」
さくらこ「ずっとだからね!」
ひまわり「わかりましたってば」
さくらこ「ゆびきり!」
ひまわり「しかたないですわね……」
「「ゆーびきーりげーんまーん――」」
99 : 以下、名... - 2012/06/16(土) 02:44:55.57 cW9Je33+0 55/55本日6/16が誕生日の向日葵ちゃんに、このSSを捧げますのすし
ご支援ありがとうございますのすし
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