兄「なんだよ、台本通りだろ?」
妹「もっと好色そうな笑い方で」
兄「好色?」
妹「エロそうに笑って」
兄「えと、『うへへへへっ、口ではイヤがっても体は素直じゃねえか』」
妹「ばっちぐー。次、私が『いやぁ、そこはらめぇぇぇっ!』」
兄「ちょ、声大きいから!」
妹「このくらい大声で言わなきゃ練習にならないでしょ」
兄「それ以前にこの台本おかしいだろ? これ本当に文化祭でやるのか?」
妹「候補だよ。他にも何本か作ってある」
兄「もう少しまともな台本やろうぜ」
妹「うるさいなー。付き合ってくれるって言ったのは兄でしょ」
兄「そうだけどさー」
元スレ
兄「へっへっへっ、口ではイヤがっても体は」 妹「カット!」
http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1302415962/
妹「いい? 演劇に大事なのはエロスなの! 大衆はエロを望んでるの!」
兄「……俺の思うエロスと、お前の思うエロスには大きな隔たりがあると思うんだ」
妹「聞いてあげる。意見をどうぞ」
兄「もっと爽やかにさー、青春モノな感じでさ。体育着越しの曲線とか、見えるか見えないかのパンチラとか」
妹「刺激が足りない。陵辱よ、時代は陵辱を求めてるの!」
兄「はぁ。何が嬉しくて妹と陵辱劇やらにゃならんのさ」
妹「うるさいな。次、脅迫シーン」
兄「あー。『このUSBメモリのデータをばら撒かれたくなかったら、俺の言う事を聞くんだな』」
妹「『最低。絶対に、絶対に許さないんだから!』」
兄「こほんっ。『くくくっ。さあ、まずは服を脱いでもらおうか』、ってバカか! こんなもん文化祭でやれるかっ!」
妹「よいしょっ」
兄「そして脱ぐな!」
妹「リアリティが」
兄「そんなリアリティ遠くに投げ捨てろ」
兄「あのさ、お前は何を書こうとしてるわけ? まさか本当に陵辱するだけの話じゃないだろ?」
妹「恋愛モノ」
兄「は?」
妹「『陵辱から始まる恋もある』がテーマ。斬新でエロくていいかなー、って」
兄「ああ。前々から残念な頭だと思ってたが、本当に手遅れだったんだな」
妹「それは褒めすぎだよ」
兄「お願いだから普通に会話するくらいの機能は残してくれ」
妹「でも斬新でしょ?」
兄「斬新かどうか以前に文化祭で上演できる物を書け。まだこれ誰にも見せてないだろうな?」
妹「うん。兄が初めての人だよ」
兄「……。まあ、とりあえず却下だ」
妹「私を捨てるの? 兄に私の初めてを捧げたのに、酷いよ」
兄「そろそろ怒るぞ」
妹「逆切れはダサいよ」
兄「……他の候補は?」
妹「はいどーぞ」
兄「どーも」
妹「じゃ、始めるよ。『やめてお義父さんっ、いやぁっ!』」
兄「はいストップ」
妹「何? まだ始まったばかりじゃん」
兄「陵辱から離れろ」
妹「えー。でもこの場面は必要だよ」
兄「一応聞こうか」
妹「この主人公は義理の父親から乱暴されて育つんだけど、すごいイケメンのホストに出会って愛し合って難病に……」
兄「却下」
妹「えー。面白いでしょ?」
兄「合意のない性行為がある時点で全部却下だし、そういうパクリ臭が酷すぎるのはダメだ」
妹「ええええっ! 物語の基本はパクリだよ! パクリこそ創作だよ!」
兄「色々怒られるから黙れ。で、陵辱がないのはどれだ?」
妹「この台本だけしか残らないんだけど」
兄「じゃ、それやるぞ」
妹「……本当に?」
兄「なんだって陵辱よりはいい」
妹「本当の本当に?」
兄「うるさい。いいからやるぞ」
妹「うん」
兄「こほん。『俺はいつの間にか妹を意識していた』……うん?」
妹「『お兄ちゃん、朝だよ!』」
兄「『うるさいな』」
妹「『何その態度! 起こしてあげてるのに』」
兄「『頼んでない』」
妹「『いいもん、もう起こしてあげないんだからねっ!』」
兄「『……クソ、あんな無防備にベタベタ触りやがって。俺はお前が好きなのに』、って……うわぁあああああっ!!!」
妹「んー?」
兄「なんだっ、これっ!? 無理無理無理無理っ、無理だって! どんな羞恥プレイだよ!」
妹「兄がやりたいって言ったんでしょ?」
兄「あれは消去法だ! こんなのだって知ってたらやるなんて言ってない!」
妹「じゃ、他のやる?」
兄「それは……いや、今から新しい候補作ればいいだろ!」
妹「どれも作るのに結構時間掛かってるんだよ?」
兄「そっ、そうだ。お前以外の奴は台本書いてないのか?」
妹「いない。オリジナルの劇やるのだけ決めて、結局、私に押し付けたんだもん。『お前色々独創的だから大丈夫』だって」
兄(間違ってはないが、こいつは明後日の方向に独創的なんだよ)
妹「それに、この台本は私にしては珍しく性描写も抑えたやつだし」
兄「うぅぅ」
妹「どうしてもイヤなら別の作るけど」
兄「近親モノなんて上演できないだろ!」
妹「このくらいなら押し通せば行けるって。どーせ学校の文化祭だし」
兄「うぅぅ」
妹「もういいよ。私が少ーし睡眠時間削って普通のつまらない台本考えればいいんだから」
兄「……わかった。これやろう」
妹「いいの?」
兄「仕方ないだろ。パラパラ飛ばし読みした感じだと一番マシだし、好みは置いておけば、悪くはないと思う」
妹「ずいぶん褒めるね」
兄「お前にしては真面目に書いてるからな。切ない話になってるんじゃないか?」
妹「ふぅーん。兄は近親モノが好きなんだね」
兄「褒めてるんだから素直に受け取れよ。ほら、読み合わせするんだろ」
妹「もちろん」
兄「『……俺は、お前の事がす、す、すっ』……無理! やっぱ無理!」
妹「照れすぎ。サラッと言いなよ。リピートアフタミー。『好き』」 兄「『す、好き』」
妹「『好き』」 兄「『好き』」 妹「『好き』」 兄「『好き』」 妹「『妹が大好き』」 兄「『い、妹が大好き』」
妹「『俺は妹が大好きだ!』」 カチッ
兄「『お、俺は妹が大好きだ!』」
妹「うん、バッチリ!」
カチッ 『お、俺は妹が大好きだ!』
兄「ぶっ!」
カチッ 『お、俺は妹が大好きだ!』
妹「私も兄が大好きだよ!」
兄「消してぇぇぇぇぇぇっ!!」
妹「アジカンはそこまで好きじゃないかなー」
兄「そんな話してない!」
兄「…………疲れた」
妹「劇一幕分の構成だからね。最後は二人がキスして終幕」
兄「ベタベタだなー。斬新さはどこに行ったんだよ」
妹「物語の鉄則はハッピーエンドだよ、王道こそナンバーワン! ……『大好きだよ、お兄ちゃん』」
兄「『オレモダヨ』」
妹「感情込めて」
兄「疲れてるんだよ。……『俺もだよ、妹』。これでおしまいだな」
妹「てーいっ!」 どんっ
兄「うぉっ!」 ばたっ
妹「二人は愛を誓うキスを交わすのでした」
兄「そこまで再現する必要はないだろっ!?」
妹「リアリテー」
兄「そんなリアリテーはどぶ川に投げ捨てろっ!」
妹「いいから、んーっ」
兄「近い。髪がくすぐったい。どけよ」
妹「まだしてないでしょ? ほら、早く。ね……お兄ちゃん?」
兄「……んっ」 ちゅっ
妹「ふぇ?」
兄「これでいいだろ。早くどけよ」 かぁっ
妹「ばっ、ばっ、ばっ……バカッ!!」 ドンッ
兄「痛っ! 何すんだよ、バカ!」
妹「ほっ、本当にするなんて、何考えてんのっ!」
兄「お前がしろって言ったんだろ」
妹「あれは兄をからかっただけで、本当にするなんてっ!」
兄「なんだよ。俺が悪いのかよ」
妹「……っ、部屋から出てってよ! 出てけ!!」
兄「言われなくても出てくよ!」 がちゃっ
妹「……うーっ! うぅぅーっ!!」 じたばた
妹「わっ、私が兄の前で取り乱すなんて、一生の恥! 仕返ししてやる、絶対に仕返ししてやるっ!」
兄「なんだよ。自分がしろって言ったくせに」
兄「……たしかに勢いでキスした感はあるけどさ」
兄「意外と柔らかかったな。女っぽくて」 どぎまぎっ
兄「なっ、なーんてなっ! 長く読みすぎて台本に毒されてるみたいだな、うん!」
兄「さ、寝よ寝よ」
兄(……眠れない。唇の感触が、いや、これは台本のせいであって) もんもん
妹「……」
兄「ふぁぁ、おはよー」
妹「……」 つーん
兄「おーい。お、は、よ、う!」
妹「お母さん、朝ご飯」
兄「無視かよ」
兄(いつも以上に腹が立つな。ふんっ、なら俺も無視してやるからな)
兄(そんな風に思ってから二週間が経つわけだが)
兄「最近は文化祭の準備で朝からいないし、帰るのも遅いし」
兄「俺も悪かった気がしてきたし。普段うるさい奴が静かだと、なんか物足りないっていうか……」
兄「様子、見に行ってみるかな」
体育館
妹「はい、追加のシーンの練習行ってみよー! これ物語的にも重要なシーンだからね!」
兄「お、やってるな」
『ねえ、お兄ちゃん。練習に付き合ってくれる?』
兄「ん? こんなの読み合わせの時にはなかったよな」
『お話の最後は二人がキスして終わるの』
『こんな風にか?』
兄「……っ」
妹「ん。あちゃー、兄来てるよ。予定じゃ本番で見せて顔赤くしてやるつもりだったのになー」
妹「兄ー!」
兄「……」 すたすた
妹「あれ? ……すいませーん、ちょっと外しますー。練習はみんなでやっといて」
廊下
妹「兄! 観てたんなら感想くらいくれてもいいんじゃない?」
兄「ああ」
妹「何、怒ってるの? いつもはこのくらい笑って済ますじゃん」
兄「別に」
妹「うじうじ気持ち悪いなぁっ! 言いたいことあるならはっきり言えばっ!?」
兄「……お前もあの事を気にしてるんじゃねえかって、勝手に思ってただけだよ」
妹「はあ? 気にしてるから、こうして仕返ししてるんじゃん」
兄「結局は話のネタにできる程度の事なんだろ、お前にとっては。人に触れ回っても平気な事なんだろ?」
妹「そういうわけじゃ」
兄「とにかくさ、あれは俺が悪かったよ。ごめん。劇、頑張ってくれよ。じゃ」 とたとた
妹「こんなの、何も面白くないじゃん」
妹「兄をからかって、兄と遊びたいだけなのに。こんなの全然楽しくないじゃん」
妹「私って、ほんとバカ」
体育館
妹「ただいまー」
同級生「あれ。妹ちゃん、目赤くない?」
妹「花粉症。放っといて。それよりみんな、ちょっと聞いて! 今から台本に手直し入れるから!」
同級生「今からっ!?」
妹「ごめん。でも、台本作り私一人に押し付けたり、それなりの事はしてるでしょ?」
同級生「う、うん」
妹「すぐに書き換えるから待ってて」
廊下
兄(あんなにきつく言い返す必要は、なかったよな)
兄「大人げない。強引に謝って逃げ出して、全部あいつのせいにしちまった。俺が勝手に傷付いただけなのに」
兄「……はぁ」
妹「兄!」
兄「うわっ! な、なんだ妹?」
妹「これ、劇のチケット。……もし気が向いたら、観に来て」
兄「うっ、うん」
妹「じゃあね」 とてとて
兄「……」
文化祭当日
妹「おはよ、兄」
兄「おはよう」
妹「先行くね。劇の段取り確認あるから」 とてとて
兄「……」
兄「いつまでも、いじけてる場合じゃねえよな」
兄「頑張ってあいつが作った舞台だ。観に行こう」
体育館
兄「……おっ、始まるみたいだな」
『俺はいつの間にか妹を――』
兄「台詞は所々変えてるが、改めて聞くと恥ずかしいな」
兄「今の所、観客の反応はそれなりかな。所詮、お話の中の事だしな」
『……俺はお前の事が――』
兄「ははっ。この場面は恥ずかしくてなかなか言えなくて、しかもあいつが録音して何度も俺に聞かせたっけ」
兄(それにしてもあのシーン、なかなか来ないな)
兄「……あれ、もう終わっちまうぞ」
『それからも二人は兄妹として仲良く暮らしました』
兄「…………」
パチパチパチパチッ
同級生「おつかれさまー! 受けよかったねー! 脚本弄って正解だったんじゃない?」
妹「かな? そうだといいな」
兄「……」
妹「あ。ごめん、少し外すね」
同級生「はいはーい」
妹「兄、どうだったかな。劇、面白かった?」
兄「お前はどうなんだ?」
妹「手応えはあったかな。みんな楽しんでくれたと思うよ」
兄「そうじゃねえよ。お前が楽しかったか聞いてるんだ」
妹「私? 私は、みんなが楽しんでくれれば」
兄「……あのシーン、カットしたんだな」
妹「あ、うん。あれは、ない方がいいと思って」
兄「本当にない方がよかったと思うか?」
妹「うん。あれ、気分良くないでしょ」
兄「つまんねえよ」
妹「え?」
兄「刺激もない、ラストも中途半端。あんな小奇麗なつまんない話、全然面白くねえよ」
妹「でも、みんなは面白いって」
兄「お前が全然楽しそうじゃねんだよっ! そんなのつまんねえだろっ!」
妹「え……」
兄「馬鹿でいい加減で適当で、自分勝手で人の気持ちも考えないしすぐにやり過ぎるけど、でも、いつもすげえ一生懸命で楽しそうで」
ぎゅぅ
妹「あっ……」
兄「だから、一緒にいたくなるんじゃねえか」
妹「でもっ! 兄、怒ってたじゃん!」
兄「あれは、その……二人きりの秘密だと思ってたから、あんな風にされて何か腹が立って」
妹「あ。……ふーん。そっかー。へぇー。なるほどねー」
兄「な、なんだよ」
妹「……兄、私に惚れたでしょ?」
兄「ばばばばばっ、ばか言うなよっ! おっ、俺が妹に惚れるはずないだろっ!」
妹「でも誰が聞いても告白だよね、兄の言葉」
兄「違っ」
妹「いつから? キスの時?」
兄「こ、これは恋とかじゃなくてだなっ!! そ、そう、性欲だ!!」
妹「はぁ?」
兄「女に縁がないから身近なお前に性欲を向けてるだけだ!!」
妹「くくくっ、全然言い訳になってないじゃん。……ま、いんじゃない、性欲だったとしてもさー」
兄「え?」
妹「お互い擦り切れるくらいやって、飽きたらフツーの兄妹に戻って、またバカみたいな事して遊ぼうよ」
兄「お前なぁ、少しは真面目に考えろよ」
妹「真面目だよ? 私、いつも私のバカに付き合ってくれる兄が大好きだもん」
兄「うぅ」 かぁっ
妹「うん、これで全部解決!」
兄「してないだろ!」
妹「そして、二人は誓いのキスを交わすのでした」 ちゅぅ
兄「んんっ!? ひっ、ひたがっ! ひたがぁっ!」
妹「んーっ」 くちゅくちゅっ
兄「んーっ!」
妹「……ぷはっ。どう? 気持ち良かった?」
兄「大事なものを奪われた気分だ……」
妹「口では嫌がっても体は」 兄「尻を撫でるなっ!」
同級生「妹ー、打ち上げ始まるよー!」
妹「ごめーん、私これから擦り切れるぐらいセックスしてくるから!」
同級生「せ?」
兄「はいはい妹さん、みんなと楽しんできてくださいねー」
妹「ふーん、クラスの男子と楽しんでこようかなー」
兄「お前なぁ」
妹「この人も打ち上げに参加するってー!」
兄「あっ、おい!」
同級生「えと、誰?」
妹「今回の話のモデル、ずばり兄です」
兄「バっ……あっ、あくまでモデルなんで」
妹「毎日しっぽり決めてます」
兄「何言っても信じないでくれ、こいつ頭が残念なんだ」
同級生「あー、大丈夫ですよ。うちのクラスはみんな慣れてますから」
妹「その言い方何かむかつくなー」
兄「俺がいても場違いだろ? 先帰ってるから」
妹「兄を連れてくと、私と兄の台本プレイが見られるよー!」
兄「そんなの誰も見たく」 同級生「ええーっ! リアル近親プレイが生でっ!?」
兄「妹の同類かっ!?」 妹「生だよ! キスもしちゃうよ、しかもディープ!」
同級生「兄さん、行きましょう!」 妹「ほらほら、早く!」
兄「いやぁぁっ!」
こうして兄を辱めるという当初の目的も叶ったとかなんとか。
112 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日: - 2011/04/10(日) 17:19:01.11 3Zc2ZB3+0 35/35続けようと思えばいくらでも続きそうなんで、ここで終わり。体調がやばいんで寝ます
続けたい方いたらどうぞ。いなければ落としてくれれば