1 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします - 2014/05/23 00:09:17.97 RdOyuuQh0 1/38

オリジナル。百合。書きためなしです






姉の部屋


「お姉ちゃん、あの……借りてた辞書なんだけど、学校に忘れて来ちゃって」

「は? ふざけないでよね。今から、走ってとってきなさい」

「え、でももう夜9時だし……」

「なんで、それまで気づかなかったわけ?」

「友達と遊んでて……」

「……私、明日授業あるんだけど……?」

「ご、ごめんなさい」

「昨日も絶対返してって言って、約束したよね?」

「う……ん」

「……はあ、もういいよ。出てって」

「あ……」

「ばいばい……」





元スレ
妹「お姉ちゃんが怖い」姉「妹、邪魔」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1400771357/

2 : VIPに... - 2014/05/23 00:15:45.79 RdOyuuQh0 2/38

廊下―――

「……」

(なんで、忘れたくらいでこんなにきつく言われるんだろう……忘れた私が悪いけど……)

(今から学校……)

(前は、こんな風に一方的に言われるなんてなかったのに)

(……きっと、明日忘れたらまたきつく言われるんだろうな)

(先生たちが残ってるから、まだ開いてるかな)

(どうしよう……)

(上着着て行こう……)

3 : VIPに... - 2014/05/23 00:24:39.68 RdOyuuQh0 3/38

ガチャ――

「あら、妹どこ行くの? こんな遅くに」

「あー、ちょっとノート無くなったからコンビニ買いに行ってくるね」

「じゃあ、お姉ちゃんも一緒に連れていきなさい。ついでに牛乳と小麦粉買ってきてちょうだい」

「あ……いや」

「お姉ちゃーん?! 降りて来て、ちょっと妹と一緒に買い物行ってきて!」

「い、いいよ。お姉ちゃん、勉強で忙しそうだし」

「何言ってんの。いっつも1番か2番なんだから今晩勉強しなくたって罰当たらないでしょ」

「そういう問題かなあ?」

トタトタ――

「ああ、お姉ちゃん」

「なに?」

「……あ」

「買い物、牛乳と小麦粉」

「……」

「……」

「こんな遅くに高校生1年の妹一人で出歩かせるわけに行かないの。お姉ちゃん高3でしょ?」

「そんなに歳離れてないけど」

「いいから」

「……はいはい」

5 : VIPに... - 2014/05/23 00:30:45.54 RdOyuuQh0 4/38

「……あ、別に私一人でも」

「いいの。お姉ちゃんなんだから」

「……行くよ」

「え、あ、うん」



外――

「……」

「……」

(お姉ちゃんに学校に行くって言わないと)

「あ、あのお姉ちゃん?」

「……」

(声、小さくて聞こえなかったわけじゃないよね。無視された……)

「……」

(買い物行った後でいいかな)

8 : VIPに... - 2014/05/23 00:39:11.70 RdOyuuQh0 5/38

スーパー


「牛乳」

「……えっと」

「私は小麦粉持ってくるから、妹は牛乳。早く帰りたいの、私は」

「りょ、了解」

「さっさと行く」

「はいっ」

「3分後にレジにいなさいよ」

「う、うん」

「散れ」

10 : VIPに... - 2014/05/23 00:45:59.24 RdOyuuQh0 6/38

(どうしよ学校行くって……言えない)

(……牛乳……牛乳)

(……あ、らくれん? ゆきじるし? どれ……?)

ドン――

「あ、すいませ……」

ギャル「ちょっと痛いんですけど」

「すいません」

ギャル「あんた、中学生?」

「え?」

ギャル「ガキくさ」クスクス

「ひどッ……」

「中学生はあんたでしょ……」

「お姉ちゃん!」

ギャル「はあ?」

「はあ?」ギロ

ギャル「……ッち、なんなわけ、あんた」

「痛い目見たくなかったら消えて」

ギャル「……ッう」

「散れ。汚ギャル」

「お、お姉ちゃん……そこまで言わないでも」

12 : VIPに... - 2014/05/23 00:52:04.46 RdOyuuQh0 7/38

ギャル「こわッ……なに、怖すぎあんた」タタタ――

「……」

「…‥お、お姉ちゃん」

「ちょっと、先にレジ行っておいて」

「え?」

「あんたノート忘れてるでしょ」

「そ、それなんだけど……実は、学校に行くための口実なの」

「どういうこと」

「辞書、取りに行こうと思って……その」

「はあ? こんな遅くに?」

「だ、だって、さっき」

「……冗談くらいわかれ」

「え、冗談なの?」

「あんたさ、鈍すぎ」

「ご、ごめんなさい」


13 : VIPに... - 2014/05/23 00:57:59.63 RdOyuuQh0 8/38

「すぐ謝って、情けないわね、ほんとに」

「……ッう」

「だいたい明日、あんたが私の教室に忘れずに持ってこればいいでしょ」

「あ、でも」

「同じこと2度も言わせないで」

「う、ん」

(明日、忘れちゃったら……また怒られるよ)

「これ清算してくるから外で待ってなさい」

「……」



16 : VIPに... - 2014/05/23 01:04:53.07 RdOyuuQh0 9/38

スーパーの外――


「…‥」

「あんた、明日辞書忘れたら罰として……」

「……う、うん」

「そうね、ケーキ奢ってもらうからそのつもりで」

「え……」

「え、じゃないでしょ。そのくらい当然」

「放課後、友だちと遊びに…」

「懲りないわね。そのせいで、忘れたんでしょ。姉妹だからって、甘えたりさせない。そういうのはお断りだから」

「……お姉ちゃん」

「何?」

「……前は、そんな風に言わなかったのに」

「前? 知らないわね」


17 : VIPに... - 2014/05/23 01:10:21.10 RdOyuuQh0 10/38

「……ううん、なんでもない」

「帰るわよ」

「はい……」




翌朝――


「お母さん、どこ行くの?」

「あ、あのねー、お父さん出張先でインフルエンザになっちゃったらしいの」

「……え」

「聞いてなかったけど、それいつの話?」

「一昨日かなー」

「……もっと早く教えてよ」

「ごめんねー。でも、大丈夫そうだって、でも買い物とか大変だって行ってたからちょっと行ってくるね」



19 : VIPに... - 2014/05/23 01:16:37.88 RdOyuuQh0 11/38

「……いつ帰るの?」

「1週間くらいかな?」

「ながッ……その間、妹のご飯とかどうするわけ? 私は、そんな暇ないよ?」

「だ、大丈夫、お母さん、心配しないで」

「心配してないわ。だって、お姉ちゃんいるし。妹、困ったらお姉ちゃんに言ってね」

(……お姉ちゃんが怖い……なんて言えない)

「……はあ」

「じゃ、行ってくるわね」

(あ……お母さん。お母さんいなくなったら……私、すごく心細いよ)

「はいはい……」

「お土産は、栗饅頭ねー」

「お土産はいいから、インフルエンザもらってこないでよ」

「はーい」



20 : VIPに... - 2014/05/23 01:27:40.55 RdOyuuQh0 12/38

――学校

窓際――

「はあ……」

「どうした?」

「最近さ、お姉ちゃん怖いって話したじゃん」

「あー、生徒会長? あんな美人で頭良くて、人当たりもいい人が、妹にはきついって話?」

「……信じてないでしょ」

「っていうか、信じられなーいってだけ」

「それを、信じてないって言うんじゃないかな……」

「何落ち込んでんの?」

「そのお姉ちゃんと……今日から1週間二人っきりなの」

「……ふーん……あ」


窓の外―――


『会長! こんにちは!』

『こんにちは』

『今日もうつくすいいい』

『こんにちは』

『あの、分からないところが』

『こんにちは』


「いつもながら、エレガントに捌いてるね」

(エレガント……? こんにちはしか言ってないし、あのお姉ちゃんの目、全く興味ない時の目だよ)

「うらやましい。あんな美人のおねえたまがいて」

「……あげる」

「いやいや……」






21 : VIPに... - 2014/05/23 01:31:55.76 RdOyuuQh0 13/38

「ううん、むしろ私をもらって」

「あんたはいらないけど、お姉さんは欲しいかな」

「……ひどいよお」

「重症だね……ま、そんなにお姉さんが怖いなら、お姉さんの弱みでも握ればいいじゃん」

「そんなものあるのかな」

「そりゃ、人間だもの」

「人間……」

「あんた、実の姉をなんだと思ってるの?」

「……恐怖の象徴」

「……」

「……」

22 : VIPに... - 2014/05/23 01:40:20.98 RdOyuuQh0 14/38

放課後――

「こんにちは。妹いる?」

1年生「せ、生徒会長だ……おい、妹。お姉さん、来てるぞ」

「あッ……」

(た、大変なことに気が付いてしまったよ……辞書返すの忘れてたよ)

「……妹」

「ひッ」

「……びびりすぎ」

「妹」

「……あ」

「今日は、もう借りていってもいいかしら?」

「あ、どーぞどーぞ」

(友ちゃん……!)

(いや、美人のお願いは断れない)

(死にたくな……)

「行くわよ、妹。辞書は持っていて?」

「入れる、入れてる……入れましたッ」

「そう、来なさい」

「あ、う、うん……」

「またね」

「……うん」

24 : VIPに... - 2014/05/23 01:48:29.46 RdOyuuQh0 15/38

とある喫茶店――


「コーヒー二つ」

店員「畏まりました」



『あの子、すごい美人ね――』

『ねえ、コーヒー私が持って行っていい?』



「……」ぴくッ

(私がコーヒー飲めないの知ってるくせに……ひどいよお)

「なに、その反抗的な目。立場が分かってないみたいだけど、今、あなたの制裁中なわけ」

「は、はい」

「それに、ケーキにはコーヒーが合うのよ」

(そんなの、知らないもん……)



『髪もさらさらだわ――』

『妹? 似てないわね』


「……」ダン!

「ど、どうしたの……いきなり机たたいて」ビクビク

「蚊がいたの」

26 : VIPに... - 2014/05/23 01:56:05.05 RdOyuuQh0 16/38

店員「ご注文のコーヒーになります……」チラ

「ありがとうございます」

(……お姉ちゃん、なんだか怒ってる?)

店員「失礼いたします」チラチラ

「……」

「ありがとうございます」

「ねえ」

「?」

「辞書返す気あったの?」

「あったよ……」

「ふーん」

(……忘れちゃいけない、怒られるって思って、でもそれがかえってストレスになって、同じこと繰り返しちゃったのかな……なんて、分析しても、お姉ちゃんの中では……)

「甘いわね」

(って、言われるの)

(……私、お姉ちゃんみたいに人間できてないもの)

(って、言えたらなあ)

29 : VIPに... - 2014/05/23 02:02:28.44 RdOyuuQh0 17/38

「……ケーキがよ」

「……え」

「あのさ、あんた、私のこと嫌いでしょ」

「……そんなこと」

「私だってあんたのことは妹だとは思ってないから」

ガタッ――(妹、椅子から立ち上がる)

「……おね、ちゃ……ん」

「……」ジッ

「そこまで……言わなくても」ウルッ

「……そこまで言わないと、分かんないでしょ」

「分かったって、悲しいだけだよ……」

「泣くなら、家で泣きなさい」

「ねえ……どうして、そこまで私にひどく言うの……?」

「どうして? 言う必要がある?」

30 : VIPに... - 2014/05/23 02:10:00.01 RdOyuuQh0 18/38

「ない……よね。ううん、ごめん、帰るよ……」

「ええ」

「……ッ」


タタタタ――



「……」モグ


『食べる姿も上品……』

『あら、妹みたいな子、いつの間にかいなくなっちゃったわね』

『いいわよ、どうでも……目の保養ね』


「……」ゴク

パリンッ――!

「……」

店員「お客様どうされました?」

「ごめんなさい。カップを割ってしまって」

店員「お怪我はありませんでしたか?」

「ええ、大丈夫よ」

38 : VIPに... - 2014/05/23 08:40:02.35 RdOyuuQh0 19/38

家――


「……ッハア……ハァ……ゴホッ」

「……ッウ……ヒックッ」ポロポロ

「……なんでここまで、言われないといけないの……」

「私……嫌いなんて……一度だって言ったことないのに……」

「怖いけど……ひどいこともいっぱい言われたけど……嫌いなんて思ったこともないのに……」

「ッう……うえええッ……ヒッ……」

「お姉ちゃん……ッ……お姉ちゃんッ……」


妹はリビングのソファーに顔を埋めて泣き続けた。


「……昔、みたいに戻れないの……かな」

「でも……お姉ちゃんが怖くて……言葉も上手く伝える自信が……」


――弱みでも握ればいいじゃん


「……それとこれとは違うような……」

「でも、今の立場だと……言いたいことも言えない……」

「……」

39 : VIPに... - 2014/05/23 08:49:17.71 RdOyuuQh0 20/38

姉の部屋――


「弱みと言ったら……やっぱりこういう所に……」

「……なんていうか、お姉ちゃんの部屋って殺風景だよね……」

「私がぬいぐるみ置きすぎなのかな……ベッドの半分は埋まってるし」

「……う、部屋にいるだけでドキドキする……お姉ちゃんが帰る前に……な、なんでもいいしね……ほんとに」

「机の引き出しとかは……」

ガラ――

「アルバム……恥ずかしい写真とか……」

ゴソ――

「いや、やっぱり、人のアルバムを勝手に見るのは……」

「あ、こっちは日記かな……で、でも日記はさらにまずいような」

「……私、何しにお姉ちゃんの部屋来たんだろ……」

「……後で怒られるって思ったら……思うように手が進まない……」

40 : VIPに... - 2014/05/23 08:58:12.80 RdOyuuQh0 21/38

「……こっちの引き出しは……手紙? あ、これラブレター……お姉ちゃんて、こういうのとっておくタイプなんだ……意外……」

「……美人で、気が利いて、人当たりもいい……お姉ちゃん」

「私とは違うよね……」

「……私、やっぱりお姉ちゃんのこと……」

「どうして、みんな……お姉ちゃんなんだろ。お姉ちゃんの何を知ってるって言うんだろ……」

「なんで、私ばかり……こんなつらい気持ちにならなきゃいけないの……」

「お姉ちゃん……が憎い」

「……ッは」

「ダメ……嫌いじゃない、嫌いじゃない……」

「好きになる努力しないと……ううん、私が好きになってもらう努力……しないと」

「……いつまでかな。……いつまで我慢しないといけないのかな……」

41 : VIPに... - 2014/05/23 09:07:12.43 RdOyuuQh0 22/38

「……お姉ちゃん中心で生活する意味なんて……あるのかな」

「……一度くらい仕返ししたって、罰は当たらないんじゃない……」

「理由のない言葉の暴力で傷つけられて……よく我慢してきたよ……そうだよ」

「昔は優しかったなんて、いいわけだよ……今以上に嫌われたりするのが怖いだけ」

「……いいよね。いいんだよね」

「もっと、何かないか探そう……」

ゴソゴソ――


ガチャ――バタン――


「ッ大変……夢中になってたらお姉ちゃん帰ってきた……」

「出たら、音でばれちゃう……」

「クローゼット……は絶対に開ける」

「ベッドの下……」

ゴソゴソ――



42 : VIPに... - 2014/05/23 09:14:50.51 RdOyuuQh0 23/38

『妹――帰ってるの? 返事しなさい』


(あ、靴が……玄関に)

(なんとかやり過ごさないと)

(息をひそめて……)

(体ちっさくて良かった。お姉ちゃんサイズだと入らなかった)


トタトタ――


『いないのか……』


(上ってくる)


トタトタ――

ガチャ――


「……」

(……)ビクビク

「ふう……」

椅子を引いて、机に座る。


43 : VIPに... - 2014/05/23 09:32:56.20 RdOyuuQh0 24/38

(お願い……買い物とか行って……)

「……」

姉は椅子に座って動かない。

(……もしかして、携帯いじってる? それとも寝ようとしてる?)

10分程経過した。

「よし……着替えるか」

(……)

姉がクローゼットを開ける。ファスナー音の後、スカートがぱさりと床に落ちた。

(……お姉ちゃんの着替え覗いてるみたい……ばれたら……ほんとに殺されるかも)

「……」

着替え終わったのか、姉がドアへと向かう。

(ほッ……)

「……」ピタ

(え、なんで立ち止まるの)

「……」クル

(こ、こっち向いた)

「……」テクテク

姉はベッドの上にとさりと座った。30㎝程先に姉の足首。

(ちかいちかいちかい……)ドドドッ





44 : VIPに... - 2014/05/23 09:41:29.95 RdOyuuQh0 25/38

「……ッん」

(なになになに……)ドドドッ

「ッン……ッ」

(……何この声)ドキッ

「……ンァッ……」

衣擦れ音。

(なんで、こんな艶っぽいの……?)

「ンクッ……」

ピチャ――

(なんの音? 水?)ドキドキッ

「……フッ」

プチュッ――クチュッ

「ン……」

(……もし、もしかして……一人で始めちゃったの……?)ドドドッ

(わーわー!? どうしよう、どうしよう! わたし、ここにいる! ここにいるよ!)

(じゃなくて、耳を塞いで……っわわ聞こえてくる……!?)

(あ、あれでも……これって、お姉ちゃんの弱み……?)

「……ッァ、妹ぉ……」

(……え)ドキ

「妹ぉ……やァッ……そこ、だめぇッ」



45 : VIPに... - 2014/05/23 09:48:04.54 RdOyuuQh0 26/38

(ちょ……やめて……やめてよ……)

「……アアッ」

(やめて、私の名前……呼ばないでやめて……最低……最低)

「……ッァ…ヒッ」

「やめて!」ゴン!

「い、いったああ!!」

「妹?!」

姉はベッドの上でバタバタと物音を立て、やや合ってベッドしたを覗いてきた。

「あ」

「……ッ」

(びっくりしてる……そりゃそうだよね……私だって、びっくりだけど)



46 : VIPに... - 2014/05/23 10:03:58.91 RdOyuuQh0 27/38

数分後――

姉はベッドに座り、妹を見ないようにしていた。
妹は姉の前に立って、見下ろす形だった。

「あんた、なんで人の部屋に勝手に入ってるわけ」

姉はこちらを見ずに言った。

「ご、ごめんなさい……」

「友だち、なくすよ。そういうことしてると」

「……」

「まあ、まず家族からか」

「……」

「私、用あるから」

姉が立ち上がる。

「……」

彼女がドアノブに手をかける前に、妹は引き留めた。

「何、腕放しなさいよ」

「……お姉ちゃん」

「放せって言ってるの」

妹の腕を、姉は振りほどこうとした。

(……あ、れ。お姉ちゃんて、こんなに力弱かったんだ)

「しつこいわね」

「……」ぎゅう――

「ッいた」

47 : VIPに... - 2014/05/23 10:15:49.60 RdOyuuQh0 28/38

「行きたかったら、行ったらいいよ……」

「は?」

「私の手、振りほどけないんだ……」

「ちょっと、ふざけるな」

「完璧超人なお姉ちゃんも、性格と腕力は人並み以下だったんだね……」

「あんた、そんなこと言える立場ッつう?!」

姉は端正な顔を苦痛に歪めた。

「私だって、こんなことするつもりなかった……」

「お姉ちゃんが……いつもいつも私をいじめるから」

「しかも! 私をせ、性欲処理に使ってッ! ほんとに、信じられない! 最低、最低!!」

「ッ……」

「私の気持ちなんて、どうでもいいんだろうけど……」

「放しなさい」

「立場がわかってないのはお姉ちゃんの方だよ……」

妹は、姉をドア際に押し付けた。ドアノブが背中に当たったのだろう。姉は苦痛の表情を浮かべた。
妹は少し背伸びして、姉の耳元に口を近づけた。

「ねえ……お母さんにお姉ちゃんの秘密言ってもいいんだよ」


48 : VIPに... - 2014/05/23 10:26:14.86 RdOyuuQh0 29/38

「……」

「なんで、睨むの。お姉ちゃんいつもそう。どうして、そうやって人の事そんな目で見れるの? やられた方の気持ちなんて考えてないんでしょ」

「はッ、考えてやってるに決まってるでしょ。わからないの?」

「……そっか、じゃ、こんなことされてもいいんだよね」

妹は、右手で姉の頬を思い切り引っ叩いた。

「……ッ」

姉は少しよろめいた。痛かっただろうに、声を我慢して。

「……」

(手がじんじんする……やった方も痛いんだ……)

「あんた」ギロ

(昨日まで、あんなに怖かったお姉ちゃんが……今は、なんだか違う人みたい)

「殴り返せばいいよ……」

「どうして、そんな不毛なことにつきあわなければいけないの」

「ひどいこと言うよね……」

「あんた、私に何を期待してるの? 謝罪? 優しい言葉? そんなものが欲しいのなら母親にでも言えばいいじゃない」

49 : VIPに... - 2014/05/23 10:40:07.83 RdOyuuQh0 30/38

「私は……復讐……したいの」

「勝手にやれば」

「いいんだ。いいんだね」

「あんたが何をしようが、どうでもいいの」

「……私たち、なんでこんなに分かり合えないのかな」

「あんたと分かり合う気なんてさらさらないからよ」

「お姉ちゃん……ッ」

妹はこれほど怒りを覚えたことはなかった。目の前の人間は差し伸べた手を叩き落していく。これ以上、こちらが何を譲歩すればいいのだろうか。否、する必要などない。

「……」

妹は姉の頬をもう一度思い切り叩いた。彼女はよろめいて、もう一度背中をドアに打ち付けてずるずると力なく崩れた。

「ッ……」

(弱い。お姉ちゃんてこんなに弱い生き物だったの……? これじゃあ、私今まで怯えてきたのがバカみたいだよ……)

「張り合いない……」

姉は右頬だけを赤くしていた。見下ろした姉は、未だに毅然としていたが。その態度は、妹の腹内を沸々と煮え渡らせた。





50 : VIPに... - 2014/05/23 10:49:46.09 RdOyuuQh0 31/38

「気が済んだ? 私、用があるのよ」

「済むわけないよ……」

「さっさと済ませなさい」

「……」

何か、ないのか。この姉を屈服させる方法は。

「あ、ねえ、さっき私の名前呼びながらしてたことしてみてよ」

「するわけないでしょ」

「……そんなの許されないもん」

「ちょッ……」

妹は姉のスカートをたくし上げた。両足の間に体を埋める。姉が妹の肩を押し返して抵抗してきた。

「ほんと、変態……だよ」

姉の手を無理やり下腹部に持ってこさせる。

「ッ……やめ」

姉は2度思い切りぶたれたせいもあるのか、その抵抗も力ない。

「自分でこすってたの?」

紫のレースで編まれたショーツは、秘所を覆っている部分だけ、やけに黒っぽい。濡れているのだ。

「だまれ」

「……どうして、私の名前でやるの? そんな嫌がらせ思いつくのお姉ちゃんだけだね、きっと」

52 : VIPに... - 2014/05/23 11:01:14.77 RdOyuuQh0 32/38

「……お姉ちゃんを精神的に辱めないと……心を折ることはできないかな」

「……」

「……ふふ」

キスして、胸を揉みしだいて、私の指を下に入れてみたらどうなるだろう。

「どうして、こんなこと思いつくのかな」

不思議と、抵抗はなかった。

「私も、やっぱりひどい姉のひどい妹なんだね……」

「何してッ……ンムッ」

姉の口を塞ぐように、妹は唇を押し当てた。

「チュッ……ル…‥ァッ……」

「ッ……ハァッ……ンッ」

(口内を犯すってこういう感じかな)

妹は舌で、姉の歯列をなぞり、吸い尽くすようにじゅるじゅると音を立てた。

「……ハッ」

唇を放す。互いに慣れないためか息を荒げた。姉は陶器のように白い頬をさらに真っ赤にさせていた。苦しかったのか、嫌悪からか、目じりに少し涙を溜めている。

「ふうッ……お姉ちゃんでも泣くことあるんだ……ッ」



53 : VIPに... - 2014/05/23 11:10:36.95 RdOyuuQh0 33/38

「……」

「もっと泣いて」

姉のシャツのボタンを外していく。

「抵抗しないんだ」

姉は、少し足が震えていた。見ると、手も微動している。妹は背筋を這い上がるものがあった。

「震えてるよ。大丈夫?」

「……だまれ」

「あ、もしかして……びっくりして腰が抜けちゃったとか……」

「ッ……」

「図星? 立ってみてよ、ねえ」

姉は立ち上がろうとしたようだった。だが、くてりと膝が折れた。

「……もしかして、私の事怖い?」

「そんなわけないでしょ」

「ふーん……そっか」

妹は両手で姉の胸をわし掴んだ。豊満な胸は、自分のより一回りは大きい。ブラを乱暴にずり下げると、たわわに実った胸が、上下にぶるんと揺れた。




54 : VIPに... - 2014/05/23 11:28:31.35 RdOyuuQh0 34/38

何度も何度も、姉が苦痛の顔を浮かべるのを期待して胸を揉みしだいた。

「ッ……」

敏感な部分を触られて、さすがの姉も悶えるように体を振っていた。

「柔らかいんだね……おっきいとやっぱり。羨ましいなあ」

「いッ……」

乳首を親指と人差し指の腹でつねってやるとうめき声を出した。

「……」ゾクゾク

「……ッ」

息の荒い姉に、妹は興奮した。

(……見た目だけなら、やっぱり美人なんだよね)

「お姉ちゃん、えっちな顔だよ……」

姉は口半開きにして、こちらを力なく睨んだ。

「だ、まれ」

「それしか言えないの……?」

妹は胸をいじるのを止めて、右手の人差し指と中指を口に含む。唾で少し艶のついたその二本を、今度は姉の口にねじ込んだ。

「ふッぐッ?!」

「舐めて……ね?」

姉は噛むことはしなかったものの、顔を左右に揺らして抵抗した。

「こんなものかなあ……」スポッ

涎で指がべとべとになった。銀色の糸が一本、抜いた指と姉の顎に架かっていた。それを、ぷつりと切る。姉はますます呼吸を荒くしていた。





55 : VIPに... - 2014/05/23 11:39:46.45 RdOyuuQh0 35/38

「……よし」

妹は姉の膝を押し広げる。むちむちとした太ももから、むわっと色香が漂っている。
続いて、ショーツの隙間に指を差し込んだ。

「止めッ」

姉は初めて抵抗らしき抵抗を見せた。

「だめだもん……止めないもん」ゾク

「入れるなッ、バカッ」

姉の言葉も空しく、二本の指は姉の濡れそぼった秘所に姿を消していく。

「ふんくッ……」

姉はぷるぷると、体を震わせていた。潤滑の良くなったそこは、ぬるぬると気持ちがよい。

「ね、どんな感じなの? 嫌いな妹にえっちなことされるのって」

姉は返事をしない。妹は、つまらないと思い、指をゆっくりとかき回す。姉の身体が魚のようにびくびくと跳ねた。

「お姉ちゃん、どうしたの? 痛いの? 何か言ってよ」

「ぬ……けッ……」

姉は何を必死になっているのか。それだけを何とか言い終え、耐えるように口を結ぶ。

「もっと激しい方がいい?」

泡立てるように、妹は膣内を乱暴にかき回した。奥の方のひだをこすると、姉の腰はその度に宙に浮いた。

「まるで喜んでるみたいだね……下品」

56 : VIPに... - 2014/05/23 11:54:56.12 RdOyuuQh0 36/38

「どうして抵抗しないの? なんで、されるがままなの?」

「ッ…‥ァッ」

姉は非常に快感に弱かった。無様だった。

「……もうイきそうなの?」

「なわけッ……」

「素直じゃないよね……」

「ひッ……ぐ」

「イかせてあげる。私は、お姉ちゃんと違って優しいから……」

ひと際強く指をこすり上げた。姉は背中を反らす。膣内の指が締め付けられた。彼女は声を我慢しようとして、

「ッ……ふッうんッ……ァアアッ―――!」

失敗に終わっていた。それを聞きながら、妹は微笑んだ。姉なんて、簡単で卑猥な生き物だった。生徒会長だとか、優等生だとか、いったい彼女の何を語っていたのだろうか。恐怖の対象が、今は面白い玩具のようにも思えた。

「……動物みたい」

「……ッはあ……」

乱れた姉は、少し可愛かった。それから、もっといじめて鳴かせてやりたいとわずかに思った。姉はふらりと体を前に傾ける。自分で体重を支えられないのか。妹は反射的に受け止める。

「……お姉ちゃん?」

「ッ……ッハア」

姉は行為の最中、一切妹の体に触れてこようとはしなかった。けれど、彼女は無言のまま、両手を妹の体に回して、縋るように抱き付いてきた。甘ったるい匂いが、姉の細い首筋から漂い、鼻孔をくすぐった。

「な、なに……」

「……ッン…ハァ」






57 : VIPに... - 2014/05/23 12:14:20.02 RdOyuuQh0 37/38

突然のことで、妹は少し混乱した。何かの作戦だろうか。

「……最悪」

姉はぽつりと呟く。そんなことを言いながら、なぜ抱きしめてくるのだろうか。

「ちょ……放してよ」

妹は姉の腕を引きはがすことは可能だった。ただ、それができない。
姉は体を少し引いて、妹の正面に体を移動させる。

「……」

姉は泣いていた。

「どうして、お姉ちゃんが泣くの? お姉ちゃんにそんな権利ない……」

妹は動揺した。

「泣きたいのは、私の方だもん。……なんで、なんで大好きだったお姉ちゃんに……こんなことしなくちゃいけないの? 私、何か悪いことした? 私、お姉ちゃんを憎いだなんて……思いたくないよ」

「好きなように……すれば。ただ、私はあんたを受け入れない……」

「私はお姉ちゃんがわからない。ひどいよ……どうして、抱きしめてきたの? ねえ、私に……何を隠してるの」

姉は何も言わない。外れたボタンを止めていく。何事もなかったかのように。

「……私を見てよ。お姉ちゃん、認めてよ」

姉は衣服を整えて、ふらふらと立ち上がる。彼女は泣きながら言った。

「……あんたが妹じゃなかったら、良かったんだよ」

姉はくるりと背を向けた。
妹はその背を呆然と眺めることしかできなかった。



58 : VIPに... - 2014/05/23 12:26:36.77 RdOyuuQh0 38/38

4年後――



とある喫茶店


「……お姉ちゃん」

「な、何よ……」

「っていう昔話、覚えてる?」

「知らないわね。忘れた」

「……もう! いつまでもいつまでも、素直じゃないんだから!」

「ッ……はいはい、ごめんなさいね」


『ねえ、あの子すごい美人――』

『ほんと、綺麗……となりは妹かしら?』


「……」ピキッ

「お、お姉ちゃん?! カップそんなに力強く握ったら割れちゃう」

「知らないわよ」

「もうッ」

「……あなたの方がよっぽど」ボソ

「なに?」

「いいえ、なんでもないわ」

「でも、まさかあの一週間後に、お姉ちゃんから誘ってくるとは思わなかったなあ」

「あなたが焦らしプレイなんて覚えてくるからでしょ」

「お姉ちゃんこそ、好きなら好きって最初から言ってよ」

「言えるわけないでしょ」

「……あーあ、なんで、私こんな人のこと好きなんだろ」

「泣きたいならお家に帰ってどうぞ」

「泣かないもん……だいたい、家に帰って鳴くのはそっちの方でしょ」

「……ッ言うようになったものね」

「ふふん……」








おわり


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