侍「ここに、何か御用ですか」
姫「……用が無ければ呼んではならぬのか?」ムカッ
侍「できれば」
元スレ
姫「侍、侍はどこじゃ」
http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1311320329/
姫「そう連れないことを言うでない……わらわはお前の顔が見たかったのじゃ」
侍「姫」
姫「冗談じゃ、そう真に受けるでない」クフ
侍「……御用が無ければ私はこれで」
姫「そう怒るでない、整った顔が台無しじゃぞ?」ニヤッ
侍「……失礼します」
姫「そう急くでない、用はあるのじゃ、聞いてくれぬか?」
侍「……なんなりと、私の出来る範囲であれば」
姫「うむ、では申し付ける」
侍「はい」
姫「わらわをここから連れ出してくれぬか」
侍「何をお戯れを」
姫「戯れでは無い、ここは暇じゃ飽いた」
侍「なりません」
姫「さっきは聞くと言うたではないか」
侍「私の出来る範囲であれば、と申しました」
姫「お前なら出来るであろう、わらわをここから連れ出すのじゃ」
侍「姫をあまり連れ出すなとお館様から言われていますゆえ」
姫「父上様がなんじゃ、わらわの願いが聞けぬと言うのか」
侍「はい」
姫「うー、お前なんか嫌いじゃ」
侍「それはそれは」
姫「わらわは不幸じゃ、この広い屋敷誰一人として味方はおらぬ……」
侍「そんなことは……」
姫「唯一味方だと思っていた侍すらも、わらわの味方では無かったのじゃ」グスッ
侍「姫」
姫「もうよい……下がれ」
侍「はぁ、わかりました……」
姫「本当か?」
侍「……はい」
姫「それでこそ侍じゃ、わらわの唯一の味方じゃ」
侍「はぁ……今日もですか」
姫「なにか申したか?」
侍「いえ、なにも」
姫「では、はよう用意してまいれ」
侍「今日はどちらに」
姫「今日は山じゃ」
侍「わかりました」
姫「あっ、侍よ」
侍「……なんでしょうか?」
姫「頼りにしておるぞ」クフ
侍「……ありがたき幸せ」ハァ
侍「姫、お待たせしました」
姫「早かったの」
侍「毎度毎度の事で館の者、皆慣れてますゆえ」
姫「……嫌味か?」
侍「いえ」
姫「ではなんじゃ」ジロッ
侍「館の者、皆姫の味方ですと」
姫「ものはいいようじゃの」
侍「はは」
バシッ
侍「ッ、何を」
姫「褒美じゃ」ニヤッ
侍「……」
姫「礼はどうしたのじゃ?」ニヤニヤ
侍「……参りました」
姫「ふふ。いい心掛けじゃ」
侍「はぁ」
姫「わらわに敵うと思うでないぞ」
侍「滅相もありません」
姫「では、いざ行かん、未開の地へ」
侍「行くのは裏山ですが」
姫「雰囲気じゃ、雰囲気。相変わらず読めぬ奴め」
侍「それは失礼しました、では参りますが舌を噛みませぬように」
姫「誰に申しておる、大丈夫じゃ」
侍「毎回噛まれてますよね」
姫「……黙るのじゃ」ギュー
侍「……はい」
パカラッパカラッパカラッ
~
姫「もっと飛ばすのじゃ」バシバシ
侍「は、はい」パシッ
姫「あはははは、よいぞそのちょ……」
ガリッ
侍「姫……大丈夫ですか?」
姫「……ひゃいひょうふ」
侍「また噛んだのですね」
姫「うぅ……」コクッ
侍「馬に乗ってるのに口を空けて笑うからですよ」
姫「ううひゃい」
侍「ほら、舌を出してください」
姫「……」ベッ
侍「今日は、またザックリいってますね」
姫「ひはい」
侍「はいはい、一応薬塗りますから、そのまま」
姫「……」コクッ
侍「……いつも、これくらい静かだといいんですが」ネチョ
姫「……」ガブッ
侍「冗談です、冗談ですから、姫指を離してください」
姫「……ふん、
不味い」ペッ
侍「イテテ、次からは砂糖でも塗っておきましょうか?」
姫「ただでさえ甘いお前が砂糖をぬるとは面白い冗談じゃの」
侍「はは、で姫、舌はいかがですか?」
姫「……」
侍「……姫?」
姫「……」チラッ
侍「怒っているんですか?」
姫「怒ってはおらぬ」ニコッ
侍「これは相当機嫌が悪い……姫、謝りますから機嫌を直して下さい」
姫「怒ってはおらぬと言っておろう」ニコッ
侍「……本当に申し訳ございません、どうか機嫌をお直し下さいませ」
姫「お前は普段のわらわより、こちらの方がいいのじゃろ?」ニコニコ
侍「まぁ……い、いえ、そんなことはございません……あっ、舌は大丈夫なようですね」
姫「このたわけめ、話をそらすでない」グィ
侍「うっ」
姫「まぁ、よい。いつまでもヘソを曲げていてもつまらぬ、特別に許してやろう」
侍「ありがとうございます」
姫「……お前だからじゃぞ」ボソッ
侍「ッ」
姫「あはは、黙りおったわ」
侍「姫」
姫「お前も普段そんだけ静かだと可愛いんじゃがの」ニコッ
侍「……申し訳ございませんでした」
姫「うむ、あっ」
侍「どうしました」
姫「ほれ、柿じゃ」
侍「あぁ……あれは渋柿ですよ」
姫「食べてみぬとわからぬ」
侍「食べるのですか?」
姫「うむ、ほれはよう取ってまいれ」
侍「渋いですよ?」
姫「はよう」
侍「はいはい、ご所望のままに」
姫「木から落ちぬように気を付けるのじゃぞ」
侍「心配してくれるのですか?」ヨッ
姫「うむ、お前が落ちて万が一でもあれば帰れぬからの」
侍「その時は馬に任せて走らせればお屋敷に着きますよ」ヒョイ
姫「……なら、落ちてよいぞ」
侍「それはご勘弁を」モギッ
姫「おぉ、でかした。はよ持ってまいれ」
侍「ただい……わっ」ズルッ
姫「侍ッ」
侍「と、まぁ冗談ですけど」ヒラリ
姫「……」
侍「姫、ご所望の渋柿でございます」スッ
姫「……」バクッ
侍「姫?」
姫「心配したではないか」ジワッ
侍「えっ」
姫「お前が落ちたと思って心配したと言っておるのじゃ」
侍「姫……申し訳ございません」
姫「もうよい、しかし、この柿は渋いの」ペッ
侍「だから、渋柿と……?」
姫「罰じゃ食え」
侍「これをですか?」
姫「全部じゃぞ」
侍「えっ」
姫「足りぬと申すのか?なら……」
侍「いえ、十分です、食べさせていただぎます」ガブッジワッ
姫「ふん」
侍「口の中がイガイガする……水」ゴソゴソ
姫「ほれ」
侍「あっありがとうございます」ゴクゴク
姫「因みに、それで最後じゃからな」
侍「ふぅ……ん?最後といいますと?」
姫「お前が用意した水はそれで最後じゃ」
侍「確か三本用意した筈ですが……」
姫「うむ、二本は口や手やら濯いでおったら無くなってしまっての、それが三本目じゃ」
侍「もう少ししか残っていませんが……」
姫「だから、最後だと言っておる」
侍「……わかりました、水を探して来ますので待ってて下さい」
姫「わらわも行く」
侍「危険ですから」
姫「こんな所に独りで置き去りにされる方が危険じゃ、違わぬか?」
侍「……はぁ、わかりました」
姫「うむ。で、あてはあるのか」
侍「えぇ、少し行けば小川があります」
姫「ほう、詳しいの」
侍「何度も来ておりますから……では、出発します」ヒョイ
姫「うむ……」
侍「大丈夫です、今度は歩かせますので」
姫「それはつまらぬの」
侍「もう、薬はありませんので」
姫「……」ガブッ
~
チョロチョロ
姫「おぉ、小川の音じゃ」
侍「えぇ、もう少し行けば簡単に降りれる場所がありますので、そこで水を汲みます。ついでにお昼にしましょう」
姫「うむ……あっ蝶々じゃ」
侍「綺麗な蝶々ですね」
姫「馬を止めるのじゃ」
侍「危険ですよ」
姫「良いから早く、逃げてしまうではないか」バタバタ
侍「あぁ、暴れないで下さい、仕方ないですね……崖に気をつけて下さい」
姫「わかっておる……蝶々~待て~」スタッ,タッタッ
侍「ああ言うところは、まだまだ幼いというのに……口だけは……」
姫「なにか~言ったか~」
侍「いえーなにもー」
姫「待て~」
侍「姫、前を見てください」ダッ
姫「ほえ?キャッ」ズルッ
侍「危ない」ガシッ
姫「おぉ、すまぬ」
侍「いえ……って、うわぁ」ズルッ
ドーン
姫「……ッ痛」
侍「……」
姫「侍?」
侍「……」
姫「侍?大丈夫か?」
侍「……」
姫「侍、侍。返事をするのじゃ」グスッ
~
姫「……」グスッ
侍「う~ん」
姫「侍!気づいたのか?」ガバッ
侍「あっ姫、どうしたんですか?泥だらけで」
姫「なにも覚えておらぬのか?」
侍「……そういえば、崖から滑り落ちて……姫お怪我は?」
姫「わらわは、足にかすり傷だけじゃ、お前が守ってくれたからの」
侍「そうですか良かった」
姫「お前はどうなのじゃ」
侍「私ですか?……っ痛」
姫「どこか怪我をしておるのか?」
侍「はい……右腕が落ちた衝撃で怪我をしたみたいです」
姫「大丈夫か?」
侍「まぁ……なんとか、しかし」
姫「なんじゃ」
侍「今の腕では崖を登れそうにないです」
姫「そうか……」
侍「すいません」
姫「謝るでない……それに、謝るのはわらわの方じゃ。すまぬかった」
侍「いえ」
姫「すまぬ、すまぬ」ウゥ
侍「姫……お顔をおあげ下さい。綺麗な顔が台無しです」
姫「うぅ……」グスッ
侍「ほら、こちらへ拭いますから」
姫「……うむ」
侍「失礼します」フキフキ
姫「くふ、くすぐったい」
侍「動いてはいけません、拭えないじゃないですか」
姫「もうよい」
侍「わかりました」
姫「お礼にわらわが主の顔を拭ってやろう」
侍「結構です」
姫「そう照れるでない、ほれほれ」
侍「姫……っ痛」
姫「あっすまぬ、怪我をしてたのを忘れておった」
侍「忘れないで下さい……」
姫「大丈夫じゃったか?」
侍「大丈夫ですよ。まぁ、念のため固定しときます」
姫「酷いのか?」
侍「念のためですから」
姫「……」
侍「まぁ、馬が独りで戻ると屋敷の者も異変に気づくでしょう、それまでの辛抱です」
姫「うむ……」
侍「さぁ、お昼にしましょう。幸い荷物はありますから」
姫「そうじゃの……腹が減っては気が滅入るしの」
侍「その通りです。あっ……水を汲んで来なくては」
姫「わらわが汲んで来る」
侍「いえ、そんな、足は大丈夫ですし、私が」
姫「わらわが汲んで来る」
侍「……では、一緒に」
姫「しょうがないの」
侍「はは」
姫「くふ」
~小川~
侍「くぅ、冷たさが身に滲みる」ピチャ
姫「侍、魚がおる」
侍「本当ですね」
姫「旨そうじゃな」
侍「……道具が無いので捕れませんよ」
姫「わかっておる……しかし」
侍「……火も無いですし」
姫「はぁ~」
侍「戻りますよ、姫」
姫「もうか?もう少しここに居ぬのか?」
侍「下手に動くと探しに来たものに見つけられませんので」
姫「そうじゃな……魚……」チラッ
侍「屋敷に戻れましたら、捕ってきますから」
姫「本当じゃな?約束じゃぞ」
侍「えぇ、幾らでも」
姫「沢山はいらぬ、二匹で十分じゃ」
侍「二匹ですか」
姫「うむ、わらわとお前の分じゃ……一緒に食べようぞ」
侍「はい、喜んで」
姫「ではさっさと戻るぞ、ほれ、はよう」
侍「はい」
~
侍「はぁ~着いた」
姫「はよう飯を出すのじゃ」
侍「はい……あっ」ゴソゴソ
姫「どうしたのじゃ?」
侍「落ちた時に荷物が潰れたみたいで……この様に」
姫「握り飯が煎餅のようじゃな」クスッ
侍「そうですね」
姫「量が増えたみたいにみえるの」
侍「確かに……姫どうぞ」
姫「すまぬ……うむ、旨い」
侍「美味しいですね」
姫「しかし……助けはいつ来るのかのう」モグモグ
侍「そうですね、ここはいつも来ないとこですし」
姫「……」
侍「まぁ、明日の朝になれば腕の痛みも引いてくるでしょうから、崖をよじ登りますよ」
姫「無理するでないぞ」
侍「はい……では、そろそろ休みましょうか」
姫「もうか」
侍「体力は温存しとかなければいけません」
姫「うむ、わかった」
侍「はい」
姫「……暇じゃ、なんか面白い話しはないのか」
侍「そうですね……では、昔話でも」
姫「うむ」
~
侍「~となりました、めでたしめでたし」
姫「ほうほう」キラキラ
侍「面白かったですか?」
姫「面白かった、特に鬼を倒した所はよかったぞ。スカッとした、ただ少々可哀想でもあるが」
侍「そうですか」
姫「うむ……クシュン」
侍「寒いのですか」
姫「大丈夫じゃ」
侍「無理しないで下さい、いつのまにか日も陰ってきてますし、これから夜にかけて気温も下がるでしょう」
姫「……少し寒い」
侍「では、こちらへ身を寄せあえば寒さも和らぐでしょう」
姫「うむ」ゴソゴソ
侍「こんなに手が冷えてるとは……気づかずにすいません」ハァーゴシゴシ
侍「少しは暖まりましたか?」
姫「うむ……」
侍「どうかしましたか?」
姫「お前は暖かいの」
侍「手がですか」
姫「心がじゃ、こんな状況になってもわらわを攻めもせぬ所か気にかけてくれとる」
侍「それは……」
姫「わらわとは正反対じゃ……わらわはどうしてこうなんじゃろ」シュン
侍「そんな、ことはありません」
姫「慰めずともよい」
侍「……姫、こちらを向いてください」
姫「なんじゃ」
侍「……」
ギュー
姫「何をするのじゃ」
侍「姫が冷たいお人だと思うのであれば、いつでも私がこうして暖めて差し上げます」
姫「侍……」
侍「なのでそんなこと言わないで下さい」
姫「……くさいの」
侍「ははは、やっぱり臭かったですか」
姫「うむ、かなりの。それにいつまでわらわを抱いておるのじゃ、息がつまりそうなのじゃが」
侍「すいません」パッ
姫「それに……お前少し匂うぞ」
侍「それはすいません」
姫「うむ、匂う」クンクン
侍「姫、少し離れて下さい」
姫「嫌じゃ、寒い。それに引き寄せたのはお前じゃろ」ギュー
侍「それはそうですが」
姫「それに臭いとはいっておらぬ、匂うといっておるのじゃ」
侍「しかし……」
姫「わらわは嫌いでないぞ、お前の匂い。父上様と同じ逞しく働き者の匂いじゃ。これ動くでない」クンクン
侍「……はい」
姫「それに甘い匂いもする。かなりな」クンクン
侍「ははは」
姫「わらわはどんな匂いじゃ」
侍「それは……」
姫「ほれ」
侍「では失礼して……」
姫「……」ドキドキ
侍「小さいですね」
姫「……」バキッ
侍「冗談ですよ」
姫「……」ジロッ
侍「とてもいい匂いがします。香の匂いですか?それに、少し泥と草の匂いが……」
姫「お前に期待したわらわがたわけじゃった」ハァー
侍「……それに、微かに涙の匂いがします。私なんかの為に泣いてくださったのですね、お優しい方です」
姫「……ズルいの」
侍「そうですか?」
姫「うむ、ズルい。いや、卑怯というべきかの」
侍「まぁ、その辺は年の功と言うことで」
姫「まぁ、よい。わらわは優しいからな負けといてやろう」
侍「ありがとうございます」
姫「うむ」
~
「姫ー」
「姫様ー」
侍「姫、どうやら助けが来たようです」
姫「うむ。ここじゃー」
「姫様が見つかったぞー、誰が縄を持ってこーい」
侍「助かった」
姫「うむ、そうじゃ侍」
侍「はい?」
姫「魚、忘れるでないぞ」
侍「もちろんです。二匹……ですよね」
姫「うむ。二匹じゃ……まぁ、少し増えてもよいがの」
侍「わかりました」
姫「楽しみにしておるぞ」ニッ
おわり

