【第3話・前編】 【第3話・中編】 の続きです。
午後1時45分 阿笠博士の家
この日、1年生は4時間授業の日だから、彼女の帰宅は早かった。
哀「……ただいま」
阿笠「おかえり、哀くん」
哀「例の掲示板に、書き込み、有った?」
何を話題にしているのかは、それで博士には通じた。
何しろ、昨日寝る前、あの『彼女』の書き込みを見て散々話題にしたのだから。
阿笠「それらしい書き込みが、先ほど有ったところじゃよ。ガセかもしれんがの」
哀「……パソコン、見せて」
阿笠「ほれ」
ttp://hide14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/************/
【被疑者】拘置所被告殺人・考察&まとめスレ159【交渉中?】
184:◆Moto/.Prof [sage]:20XX/09/04(水) 13:18:43.30 ID:MMMMMMMM
こんにちは、『サキュバス』のお嬢さん。こちらは、お手紙を警察に託した元法学者です。
書き込みありがとうございました。こんな形でコンタクトを取って下さったんですね。
まず、貴女の求めに応えます。自分の証明として、先日お渡しした手紙の文面を、以下に記します。
(↓以下、手紙の文面です↓)
サキュバスのお嬢さんへ
初めてのお手紙になります。
私は、この世界とは違う世界で、生きた記憶を持つ者です。
私がこの世界に来たのは、今から40年以上前の事です。
(おそらく貴女とは違う種族の)軍所属の女性神官だった私は、戦乱の中、事故のような形で異世界に弾き飛ばされ、
弾き飛ばされた先、つまりこの世界で、山の中で遭難死寸前で倒れている女子学生に出逢いました。
185:◆Moto/.Prof [sage]:20XX/09/04(水) 13:18:51.34 ID:MMMMMMMM
貴女が以前インターネットに書いたように、この世界は、本来、異世界の者にとって非常に厳しい環境です。
世界にいじめられ壊れていく身体を必死に保持しつつ、無我夢中で学生の手を取ったのを覚えています。
気が付いた時、私は学生の身体で倒れていて、救助隊に囲まれていました。
元々身に着けていた神官の装束も、異種族の身体も、発動した魔術の贄になって消えていったのだと思います。
異世界を渡った痕跡は跡形も無くなり、ただ学生の身体に記憶がふたつ宿ることになりました。
以上の経緯が嘘か真か、誰にも判断は付きません。
警察にも、私自身にも、判断は出来ません。
ただ確実であることは、私はもはや何も魔力らしき力を持っていないこと、ひとつの職場を定年退職するまで勤め上げたこと、
そして、ここでない言葉の記憶を持っていることです。
その言葉は、もう40年以上話していない言葉ですが、どうか貴女に通じる物であることを祈ります。
もし通じる物であれば、こちら宛てにコンタクトを下さい。
ひとりの元法学者より
(↑以上、手紙の文面でした↑)
627 : ◆oJG7c/xJmM - 2014/02/13 22:25:38 Cvozfr9Y 548/754↓1 そもそも、異世界の暦は季節的にはいつ始まりなんでしょう?
(春、夏、秋、冬、冬至、夏至etc、季節の名前を書いて下さい)
628 : 以下、名... - 2014/02/13 22:31:36 /veaokfA 549/754梅雨
187:◆Moto/.Prof [sage]:20XX/09/04(水) 13:19:27.34 ID:MMMMMMMM
ここからは、私の身の上話です。
あちらの世界は、(少なくとも私が育った場所は)帝政で、最初の帝が統治を始めてからの通算年数で、年を数えていましたが、
その暦で、帝政296年目の12番目の月、第2週の4日目に、私は生まれました。
出生地は、帝国の南端の大きな港町です。建前としては帝の直轄領でしたが、実際は代官が統治する町でした。
父は代官の下で働く末端の役人でしたが、私が9歳の頃、父は役人をクビになりました。
父が失業した経緯は詳しくは知らないのですが、とにかく家の生活は苦しくなり、口減らしを兼ねて、私は神殿に預けられました。
母方の叔母が神殿勤務だったので、それに頼った形です。
魔術は、得意な術が『破壊』と『呪詛』のみでしたが、それ以外の分野で、神殿を追い出されない程度には才覚を認められ、
どうにかこうにか、生まれ育った町の神殿で、神官として成長することができました。
私が21歳になる前、冬の終わりに、戦乱が発生しました。
発端になったのは、自分の町から見て北東方向にある大きな町です。
草、木、花、キノコ、等々、森の中に生きる生命が肥大化して、意思を持って互いに争い始め、また町も襲い始めたそうです。
193:◆Moto/.Prof [sage]:20XX/09/04(水) 13:20:38.37 ID:MMMMMMMM
何者かが、森の中の生き物に、凶悪な魔物の意思を大規模に埋め込んだのが戦の原因だと言われていましたが、はっきりとは分かりません。
(上記の原因が真であった場合、そういう術式は、大規模な攻撃目的の術式であるという点で、宗教的にも法律的にも禁忌です)
攻められた側の兵は懸命に闘ったそうですが、力及ばずいくつもの町が壊滅したそうです。
戦乱は収まらず、317年目の、21歳の誕生日の次の日、軍への派遣が決まりました。
魔術が使える神官が戦力としてアテにされて、軍の中に入るのは、相当なレアケースだと思います。
私が異世界に飛ばされる事故に遭ったのは、318年目の2番目の月の第1週です。日差しがつらい夏の日でした。
軍の上層部は、『相手を止めるには、最終手段を使うほかない』という結論に至ったそうです。
関係無い者を巻き込むのを承知で、時空を弄る魔術で、一気に相手の軍団を消滅させることを決めたそうです。
ですが、肝心の魔術が起動に失敗、暴発。それに巻き込まれた私は、元の世界から弾き出されました。
その後、この世界で私がどうして生き延びたのかは、手紙に書いた通りです。
この事故では、犠牲者が多数出ているのではないかと推測しています。生存者が私ひとりでも不思議ではありません。
術式の仕組みとして、世界を弾き出されるより、身体が一瞬で消えた者が多い筈ですし、異世界に転移したとしても生存率は高くないでしょう。
198:◆Moto/.Prof [sage]:20XX/09/04(水) 13:21:51.40 ID:MMMMMMMM
以上が、私の身の上話です。
40年以上、『自分の記憶』について考えてきました。
遭難死しかけた脳が生み出した『もう一人の私』の妄想なのか、それとも本当の『異世界を生きた私』の記憶であるのか。
どちらであれ、この世界に骨を埋めるほか生きる道は無い、という結論は変わりませんけど。
私の異世界の知識が、本当に本物であるのかを知りたいと、強く思っています。
私の知る、貴女の種族の特徴を以下に記します。これが、貴女の判断の決め手になれば幸いです。
・女性の二次性徴が、ヒトのそれとは大きく異なる種族でした。
受けた精を、ある種の魔力に変換する種族であり、また、その変換後の魔力が無いと死んでしまう種族でもあり、
だからこそ、二次性徴後は『定期的に誰かに抱かれないと、生命を維持できない身体』になる種族、なのだと聞いています。
また、魔力の変換効率が良い者は、自身の生存に必要な分以上の魔力を得るから、残余の魔力を活用する術師になりやすいのだと。
・種族の開祖は、笛の名手でした。
その直系の子孫の青年が、巫女姫と共に旅をする神話が、あの世界では、子どもでも知っているレベルでかなり有名でした。
211:◆Moto/.Prof [sage]:20XX/09/04(水) 13:23:15.43 ID:MMMMMMMM
貴女がこの書き込みをどう判断したのか、どこに自首したいのか、貴女の更なる書き込みをお待ちしています。
いつかどこかで、故郷のことを語り合えることを願って
ひとりの元法学者より
633 : ◆oJG7c/xJmM - 2014/02/15 00:43:20 GVj3nVEA 554/754今晩の書き込みは以上です。
↓1 書き込みを見た哀ちゃんの感想は? 一言でどうぞ。
↓2 次のシーンでは誰を出しますか? これまで出た人で哀以外なら誰でも可です。
なお『誰も出さない』だと、掲示板での返信の描写になります。
634 : 以下、名... - 2014/02/15 11:00:20 Fr4jLSAw 555/754頭が痛くなってきた。本当に本の中の世界を見ているよう。
635 : 以下、名... - 2014/02/15 11:04:24 J3yY3w3Q 556/754服部
哀「頭が痛くなってきたわ。本の中の世界を見ているようね。
この書き込み、……ガセでない可能性の方が高いけど。
先月、『彼女』が、この家で工藤君に接触してきたことが有ったでしょう? その時の話と矛盾しないもの」
阿笠「!! ……そうじゃったな」
哀「『彼女』は、受けた精を魔力に変換できる回路を体内に有する種族であり、それで命を繋いでいると、そう言っていたわね。
だから、倫理観がこちらの世界とはかけ離れていた、と。(※作者註 >>217)
その説明と、……この、自称元法学者の書き込み(※作者註 >>631)は、矛盾せずに両立するじゃない?」
阿笠「……そうじゃのー」
哀「まぁ、先月ここに来て工藤君に話したときは、自首せずに生きると言っていたけれど、(※作者註 >>231)
昨晩の書き込みでは、自首する場所を後で書き込むと言っている。(※作者註 >>590)
『彼女』の気持ちがいつ、なぜ変わったのか、……知りたいところね。たぶん解明できないでしょうけど」
阿笠「『本人』がここに来たこと自体、警察に伏せておるからの」
哀「……ええ」
午後5時45分 服部家 平次の部屋
ガラッ
和葉「……平次。パソコンで、何見てへんの?」
服部「あー、和葉か。例の、サキュバス事件でな、今日、掲示板に動きがあったらしいから、見てたんや」
和葉「やっぱり気になるんやね、……その事件」
服部「(和葉は、東京のあの姉ちゃんが巻き込まれとるの、知らんはずやな)
……坂田はんが、初っ端で巻き込まれた事件やろ。気になるのは当然やないか」
和葉「ねぇ、平次。
『サキュバス』の事件で、人格が巻き込まれた女子高生、誰なのかは、……平次は分かる?」
服部「!? ……和葉は知っとるのか? それ?」
和葉「さっきな、話したいことが有って、蘭ちゃんに電話したんよ。
蘭ちゃんの携帯に電話したら、蘭ちゃんのお父さんが、――毛利探偵が出て、『蘭は入院してる』って」
服部「入院?
(何も知らない人にはそう言っとんのやな、……外向きには)」
和葉「私、毛利探偵の様子がおかしいって感じて、今度はコナン君に電話して、……あの子、カマ掛けたら引っ掛かったで。
蘭ちゃんが今どんな状態なのか、……あの子、平次には喋ってたんやね?」
服部「!! 何やらかしとんのや、あいつ!! このこと、他言無用やのに!!
それにお前も!! 何考えとんのや!!」
和葉「本当に他人に喋っちゃいかんってことぐらい、……私でも分かっとるよ?
ところで、掲示板、私にも見せて? 今日動きがあった、ってこと、……初耳やから」
服部「本当に、……本当に、他言無用やからな!?」
和葉「……うん」
639 : ◆oJG7c/xJmM - 2014/02/15 23:00:56 GVj3nVEA 560/754
今晩の投稿は以上です。次回はオートで掲示板での描写です。
↓1 書き込みを見た和葉の感想は? 一言でどうぞ。
640 : 以下、名... - 2014/02/16 11:20:36 0w/3phwE 561/754奇妙な話だけど蘭ちゃんは無事なのか気になる
和葉「…………
奇妙な事件やね、これ。……蘭ちゃんが無事なのか気になるわ」
平次「せやな。和葉は、これまでの書き込みは見とるんか?」
和葉「いや……、大まかな、まとめしか見てない」
平次「そか。とりあえず、これまでの書き込みは読んどけ。
どんな嘘が中に有るのか、分からへんけど、……少なくとも、あの『姉ちゃん』がどうしたいのかは、書いとったからの」
和葉「……うん」
※ これまでのまとめ(掲示板書き込み編) ※
・8/6 14:55~15:15 (>>15->>17,>>19,>>22,>>24>>26,>>29->>31)
書き込んだ人:『サキュバス』 使用端末:ゲテモノ料理屋『天界』の大将の奥さんの携帯
内容:『サキュバス』犯行声明、事件を起こした理由、質疑応答
・08/06 18:32~18:33 (>>37->>39)
書き込んだ人:『サキュバス』 使用端末:毛利蘭の携帯
内容:『サキュバス』の遺言、サキュバスの生い立ち、警察への注意
・08/15 12:05~12:06 (>>158->>159,>>162->>163)
書き込んだ人:召喚者(『サキュバス』の依頼で書き込みを代行) 使用端末:他人の携帯をスッた
内容:『サキュバス』が召喚者のところに逃げた理由、魔術で見えたもの、これからの決意
・08/16 09:45 (>>256->>257)
書き込んだ人:召喚者(『サキュバス』の依頼で書き込みを代行) 使用端末:他人の携帯をスッた
内容:これから行いたい魔術、成功した場合の影響、魔術師としての宣言
・09/03 21:31~21:32 (>>588->>590)
書き込んだ人:召喚者(『サキュバス』の依頼で書き込みを代行) 使用端末:他人の携帯をスッた
内容:警察宛て→(蘭の部屋の)カメラをずらしてほしい 元法学者宛て→身の上話等を更に書き込んでほしい&書き込む場合の注意事項
・09/04 13:18~13:23 (624>>->>632)
書き込んだ人:警視庁の捜査員(元法学者=粟倉 葉の了承を得て書き込みを代行) 使用端末:警視庁の端末
内容:粟倉 葉の手紙の文面、粟倉 葉の身の上話、『サキュバス』の種族の特徴
644 : ◆oJG7c/xJmM - 2014/02/16 21:02:44 j8rm8EiA 565/754
今日の書き込みは以上です。次回、オートで掲示板の話に進みます。
明日は暗号を出したいのですが、挑戦して下さる方はいらっしゃるでしょうか?
レベルは、これまでの書き込みを振り返れば分かる難易度です。
>>319以降で募集した『ファンタジー世界っぽい単語』が、ようやく消化できるかと思います。
645 : ◆oJG7c/xJmM - 2014/02/17 12:49:42 q6H0r07s 566/754今日はリアル帰宅が遅れそうです。
スマホから投稿出来たらしたいのですが、ここ2~3日、たまにしたらば掲示板にアクセス出来ないときがあるので、
最悪、投稿お休みするかもしれません。
↓1 追加安価です。『現地の記憶を書いた』『今後の不安を書いた』『両方書いた』『両方書かなかった』
上記4択から選択お願いします
646 : 以下、名... - 2014/02/17 16:25:21 Fvg6GFBE 567/754今後の不安
ttp://hide14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/************/
【被疑者】拘置所被告殺人・考察&まとめスレ168【交渉中?】
255:◆MsSuccubus [sage]:20XX/09/04(火) 23:12:48:46 ID:NNNNNNNN
こんばんは。召喚者です。いつもと同じ方法で『サキュバス』の書き込みを代行しています。
=============
・元法学者(◆Moto/.Prof)さんへ
確信できました。貴女は確かに同じ世界の方のようです。
私がどこに自首したいのか、場所を、約束通り書き込みますね。
8月16日の時点で、現在は融合している『サキュバス』と『女子高生』の、人格の再分離を目指すことを書き込んでいました。
当たり前の話ですが、自首するのはこの人格の再分離が成功してからです。
その、将来の自首を念頭に置いた場合、今言っておかないと不安なことが2点あります。
まず1点目です。
人格再分離後、仮に自首するならば、『サキュバスに呪詛を掛けさせてもらう』と召喚者に言われました。
『サキュバスがこの世界に来てから自首するまでの間、見聞きしたこと』について、『他人に伝えること』を禁止させてもらう、とのことです。
つまり、『女子高生』の人格では記憶が欠落し、『サキュバス』の人格では、記憶を持っていても他人に伝えられない状況にする、という事です。
257:◆MsSuccubus [sage]:20XX/09/04(火) 23:12:59:49 ID:NNNNNNNN
そして2点目です。
人格再分離後、サキュバスのほうの人格が入る身体は『魔力が取り込める身体』になります。
それは、『魔力を取り込むことが必須な身体』であり、
貴女の言葉で言うと、『定期的に誰かに抱かれないと、生命が維持できない身体』であるのです。
そもそも、この国どころか、この世界の法体系が、魔力のないホモ・サピエンスを念頭に置いて作られています。
サキュバスが自首したところで、こういう特殊な身体をもつ存在を、無事に収監できるのでしょうかね?
実際に魔術を使わないことには分かりませんが、頻度的には少なくとも週に一度は性交渉が必須な身体になると思うのですが。
召喚者は、『自首せずに中出し上等の違法風俗ででも働いたらどうか』と勧めてきています。
『自首後、警察なり法務省なりが下手打って、サキュバスが魔力欠乏で死んだら元も子も無い』というのです。
260:◆MsSuccubus [sage]:20XX/09/04(火) 23:13:32:52 ID:NNNNNNNN
1点目の事について、召喚者の言う通りの呪詛が掛かったとして、
たぶん取調室で何をやっても、事件の事について全く供述が取れない被疑者がひとり生まれることになるので、
それはそれで警察が苦労するし、サキュバスも苦労することになると思うのです。
今、私がより重視しているのは、やはり2点目の事です。
これまで、足掻いて、選択してきました。
悩み抜いた選択でしたが、『サキュバス』が犠牲者を出してでも、生き抜きたいと思ったから、今の『私』がこんな形で生きています。
自首した結果、それを受け入れた組織の不手際で、せっかく手に入れた生命が失われるなんてこと、
召喚者も、サキュバスも、受け入れるわけが無いのです。
8月6日の初っ端の書き込みの時、警察の人はサキュバスに自首を勧めてきましたね。(※作者註 >>22)
警察は、今日のこの書き込みを見た後であっても、なお自首を勧めてくるのでしょうか?
自首した後のサキュバスの生命の維持が公に保証されない限り、人格再分離に成功した場合でも、怖くて自首できません。
そのことは、ここで明らかにしておきたいと思います。
264:◆MsSuccubus [sage]:20XX/09/04(火) 23:15:08:55 ID:NNNNNNNN
それでは暗号です。
元法学者さんが書き込んだ神話は、私も知っていました。
その神話に出る名詞を、現地語から、日本語のカナに直してみてください。
一か所、小さい『ッ』が普通の『ツ』になります。
※ ※
倒れ伏した青年『○○○○○○○(=a、名前)』の傍らで、巫女は言う。
「竜よ、『○○○○○○○○○(=b、意味は"夜明けの地")』の竜『○○○○○○○○(=c、名前)』よ。
『○○○○○(=d、地名)』の巫女である『○○○○(=e、名前)』が呼び掛けます。私の声にどうか答えてください」
竜は応える。
「答えよう。但し、お前の問いかけにではなく、その男の熱意のために。
流石は『○○○○○○○(=f、先祖の名)』の子孫だ。『○○○○○(=g、種族の名)』の開祖の直系だけあって、
その曲は私をこの地に縛り付けおった」
※ ※
270:◆MsSuccubus [sage]:20XX/09/04(火) 23:16:12:58 ID:NNNNNNNN
aの1文字目、濁点が有る場合は濁点を取り去った、または濁点が無い場合は濁点を付与した文字をAとします。
bの2文字目を、50音順一つ前へずらした文字をDとします。また5文字目をJとします。
cの6文字目を、Bとします。また、2文字目を、50音順二つ前へずらした文字をIとします。
dの4文字目を、Cとします。また、1文字目をGとし、同じく1文字目を50音順一つ後ろへずらした文字をFとします。
eの1文字目を、50音順三つ後ろへずらした文字をEとします。
fの3文字目を、50音順一つ前へずらした文字をKとし、1文字目を50音順三つ前へずらした文字をLとします。
gの1文字目を、Hとします。
将来自首する場合の待ち合わせ場所は、『ABCDEF GHIJKL』の柱です。
細かい日時、条件などは、後日またお知らせします。
※文字のずらし方について
日本語を50音順で『アイウエオカキクケコサシスセソ……』と1列に並べたものと考えます。
例えば『サ』を二つ前にずらした場合は『ケ』となり、『ス』をふたつ後ろにずらした場合は『ソ』となります。
=============
書き込みの代行は以上です。こちらからの書き込みは、当分の間無い予定です。
653 : ◆oJG7c/xJmM - 2014/02/19 22:05:48 rv4K6EmU 573/754今日の書き込みは以上です。
お待たせしました、暗号がようやく出せました。
何のひねりもなく、>>319以降で募集した『ファンタジー世界っぽい単語』の穴埋め問題です。
↓1 次のシーンで誰を出すか選んで下さい。これまで登場した人なら誰でも可です。
↓当分の間募集 暗号を解いてみてください。正解者先着2名、『エンディングで誰を出したいのか』についてリクOKです。
654 : ◆oJG7c/xJmM - 2014/02/20 08:22:00 DKTq60QQ 574/754念のため追記です。
暗号は↓の単語の穴埋め問題です。解答をお待ちしております。
ゲノムヘリター
ミスティックアーク
モストフロンデス
カルルバン
アポリア
ベータミゼット
イルンクス
↓1 次のシーンで誰を出すか選んで下さい。これまで登場した人なら誰でも可です。
↓当分の間募集 暗号を解いてみてください。正解者先着2名、『エンディングで誰を出したいのか』についてリクOKです。
655 : 以下、名... - 2014/02/20 18:24:39 8hKTCUko 575/754灰原
午後11時20分 阿笠博士の家
阿笠「……哀くん、まだ起きておったのか。明日も学校じゃろう? 大丈夫かの?」
哀「今寝るところだったんだけど、……さっき、掲示板に『本人』の書き込みが来たから、それを見てたの。
正確には召喚者の書き込みの代行だったんだけど」
阿笠「哀くん、……ずっと、掲示板に張り付いておったのか?」
哀「まさか? 掲示板に犯人のトリップの書き込みがあったら通知が出るアプリを、スマホに入れてただけよ。
それで、アプリが通知を出したから、慌ててパソコンの画面を見ていたところ」
阿笠「そ、そうか……、書き込み、ワシにも見せてくれんか?」
哀「どうぞ。(※作者註 >>647-651,>>657)
……頭が痛くなる書き込みなのは間違いないわよ。これは、特に、警察関係者の頭が痛くなるでしょうね」
阿笠「…………」
哀「博士、この書き込みを見て、どう思う?」
661 : ◆oJG7c/xJmM - 2014/02/20 21:41:45 G6hrKMsk 577/754訂正します。何度もすいません。
↓1 博士の感想は?
↓2 次のシーンは誰を出しますか?『粟倉 葉』『召喚者』の2択でお願いします。
↓当分の間募集 暗号を解いてみてください。正解者先着2名、『エンディングで誰を出したいのか』についてリクOKです。
暗号文は>>651と>>657 ヒントは>>654です。
662 : 以下、名... - 2014/02/20 21:54:05 8hKTCUko 578/754一見難しいが、がんばれば解けそう
あと、暗号の答えって「ケンバシエキ カイサツソバ」?
663 : ◆oJG7c/xJmM - 2014/02/20 22:09:33 K6eFiNro 579/754もう寝てましたがスマホから書き込みます
>>662
正解です。エンディングで誰を出したいのかリクエストどうぞ。
664 : 以下、名... - 2014/02/20 22:53:37 8hKTCUko 580/754やったー!!
リクエストは灰原でおねがいします!
665 : ◆oJG7c/xJmM - 2014/02/21 08:27:47 4Big3rhk 581/754>>664
灰原ですね。了解です。
↓1 次のシーンは誰を出しますか?『粟倉 葉』『召喚者』の2択でお願いします。
↓当分の間募集 暗号の解き方の手順を解説して下さい。先着1名、『エンディングで誰を出したいのか』についてリクOKです。
暗号文は>>651と>>657 ヒントは>>654 答えは>>662です。
666 : 以下、名... - 2014/02/21 12:18:51 Vza1rqi. 582/754召喚者
阿笠「一見難しいが、頑張れば解けそうかの? 新一あたりなら」
哀「そう? ……現地語が分かれば一発で解けるけど、現地語が分からないなら、工藤君でも解けないかもしれないわよ?
読む限り、全部、固有名詞の穴埋めじゃないの」
阿笠「……そうじゃなぁ。明日、新一に相談するか?」
哀「そうね。この書き込みは、……暗号の部分だけはプリントして、明日学校に持っていくわ。
さすがに学校で、堂々とスマホからネットを見るのは不味いから」
阿笠「……そうじゃな」
午後11時25分 召喚者の屋敷 地下室
書き込みを終えた召喚者が、転移の魔術陣で屋敷の地下室へ帰還する。
いつものごとく『彼女』が、魔術陣のそばで出迎えてくれた。
蘭?「“お帰りなさい、あるじ”」
召喚者「“こちらこそ。いつも出迎え有り難う”」
蘭?「“この事は、私が望んだことですから。
私が先に眠って、あるじを待つ訳にはいきません”」
召喚者「“……そう?”」
蘭?「“あるじに負担掛かるのに、私には何もできないのが分かってて、……それでも、お願いした作業ですから。
出迎えくらいさせてください”」
召喚者「“……そうね。それでも、有り難う”」
『彼女』の言う通り、ネットの掲示板に書き込む作業ひとつ取っても、魔力を消耗する作業には違いなかった。
――書き込み内容を入れたSDカードを持って、駅のトイレの個室内に『転移』し、周囲の盗聴機・発信機の類の機器を『破壊』。
それから『探知』の魔術を発動させ、隣の個室の様子を伺いつつ、待機。
隣の個室に酔っ払いが入ってきたら、その個室に『転移』。酔っ払いに『睡眠』の魔術を使って眠らせる。
携帯なりスマホなりの端末を奪ったら、元の個室に『転移』。SDカードを突っ込む。
書き込み内容をコピペで掲示板に貼り付け終えたら、SDカードを回収。
端末を、指紋等が取れないレベルで『破壊』してから床に放置し、自身は屋敷に『転移』。
ちびちびした魔術を連発する作業の典型的な例で、そうホイホイ書き込みに行けるようなものではない。
召喚者の魔力は有限なのだ。
召喚者「“あとは警察の様子を見ながら作業を進めるだけね。……こちらの作業を。
警察は、……この書き込みを見て、それでも貴女に、出頭するように言ってくるのかしらね?”」
蘭?「“人格が分離されたら、種族として、『生命を保証すること』が、『男性をあてがうこと』と同じになりますからね。
私の予想では……”」
671 : ◆oJG7c/xJmM - 2014/02/21 23:07:38 hbtU1FGQ 586/754
ひとまず今日の投稿は以上です。
↓1 『彼女』の予想。警察はいつ声明を出す? 『すぐに声明を出すと思う』『しばらくして声明を出すと思う』『声明を出さないと思う』
↓2 ↑で声明を出す場合、その態度は? 『否定的』『半信半疑』『否定も肯定もしない』『その他(要記載)』
672 : 以下、名... - 2014/02/22 00:59:15 SztzRddA 587/754しばらくして出す
673 : 以下、名... - 2014/02/22 07:48:19 8bKtSAGc 588/754否定も肯定もしない
蘭?「“もし警察が声明を出すとするなら、内部で協議するのに時間がかかるから、声明が出るのはしばらく時間が経ってからで、
私の身体の事は、否定も肯定も、判断は示さない声明になると思うんです”」
召喚者「“何故、そう思うの?”」
蘭?「“実際に調べないこと、本当に、新しい身体についての主張の真偽が分からないからです。
嘘吐きだと決めつけられないし、逆に真実だと信じ込んだ声明を出すのも難しい”」
召喚者「“もしも信じ込んだような態度を取って、仮に犯人側の言葉が嘘だった場合、警察がホラ吹きに騙されたことになるものね。
逆に警察が嘘だと決めつけた場合で、実際こちらの主張が真実であった場合、……それはそれで恐ろしい”」
蘭?「“ええ。後者だと、警察は被疑者の生命を保証しないと自白するようなものですからね。
誰がそんな組織に身を預けようと思います?”」
召喚者「“……そうね”」
蘭?「“だから声明を出すとするならば、少なくとも声明の内容は、こちらの主張の真偽は否定も肯定もしないと思うんです。
『そちらの言う事の真偽は分からない』『調べないと分からない、だから調べたい』
『死なせない様に頑張るから自首してほしい』とか、……そういう内容の羅列で精一杯じゃないでしょうか?”」
676 : ◆oJG7c/xJmM - 2014/02/22 23:05:38 PHcC1NaA 590/754投稿遅れてすいません。親に仕事を振られておりました。
↓1 作中日付が進みます。次のシーンはどこのシーンにしますか? 『警視庁』『掲示板』『召喚者の屋敷』『その他(要記載)』でどうぞ。
23時半までにレスがあったら今晩続きを書きます。
677 : 以下、名... - 2014/02/22 23:11:57 BfuB1ZkQ 591/754乙です!
警視庁で
9月5日 午後4時30分 警視庁 小田切刑事部長の部屋
小田切「毛利蘭の部屋に、手紙が湧いた?」
警部N「はい。内容は、この通りです」
――『警察の方へ
誘拐事件に絡み、新規の情報公開は、こちらの要求で止めてもらっていましたが、(※作者註 >>298)
きのうの書き込みの件を受けて、サキュバスの自首後の環境について、
警察が声明を出すのは、こちらとしては一向に構いません。
もちろん声明を出さなくても良いですが、警察がどんな姿勢なのか、私が知りたいです。
サキュバスより』
小田切「……ずいぶんと都合が良い内容だな」
警部N「はい。……それともう一件、この事件に関してご報告が」
小田切「ん?」
警部N「粟倉弁護士に、捜査協力を拒否されました」
小田切「!?」
警部N「今朝、捜査本部から協力要請の電話を掛けた時は、『用事があるから、夕方にならないと警視庁には行けない』と言われたそうです。
夕方に捜査本部に来るよう、約束を取り付けたんですが……」
小田切「が?」
警部N「用事というのは、別の弁護士と代理人契約を結ぶことだったようで、
……先ほど、代理人になったその弁護士から、捜査本部に連絡があったんです。
先方の言い分では、『警察がサキュバスの生命を保証できるか不透明な現状では、捜査協力は出来ません』と」
小田切「…………
警察が、将来、自首した『サキュバス』を死なせるかもしれない、と」
警部N「粟倉弁護士は、……そう考えてるんでしょうね」
小田切「『犯人を死なせる気はない』と、粟倉弁護士には言ったのか?」
警部N「『それが公にコメントにされない限りは、信用できません』と、返されたそうです」
小田切「……そんな態度を取ったということは、粟倉弁護士は、『サキュバス』の身体のことを信じているんだろうな……
昨晩の書き込み、どこに自首したいのかの暗号は、我々は、まだ解けていないんだったな?」
警部N「はい。唯一、種族名が『イルンクス』で、そこから『イ』の字だけは分かってるんですが、それ以外は全く。
それ以上の神話の内容を、捜査本部では誰も聞いていなかったので」
小田切「そうか……
(警察がリアクションを取らない限りは、サキュバスの自首も、唯一知識を持つ協力者の協力も得られない、……か)
きのうの件は、ずいぶん厄介な書き込みだからな。警察が組織として声明を出すにしても、時間が掛かるぞ。
……『サキュバス』の年齢、自称15歳だろう?(※作者註 >>38)
それが、……『最低でも週一回は、男に抱かれないと生命が維持できない身体』か」
15歳という年齢とか、そんな子がヒトを対象とした法で裁け得るのかとか、そもそもの書き込み内容の真偽とか
相手が書き込んだ内容に問題が有りすぎた。
どんな内容であれ、警察は、すぐには声明を出せそうにないのだ。
681 : ◆oJG7c/xJmM - 2014/02/23 00:34:23 3F4uAd36 595/754
今晩の投稿は以上です
↓1 次のシーンはどこにしますか? 『掲示板』『召喚者の屋敷』『毛利探偵事務所』『その他(要記載)』でどうぞ。
↓2 ↑の場所での会話のテーマはどんなもの?
↓当分の間募集 暗号の解き方の手順を解説して下さい。先着1名、『エンディングで誰を出したいのか』についてリクOKです。
暗号文は>>651と>>657 ヒントは>>654 答えは>>662です。
682 : 以下、名... - 2014/02/23 10:40:17 57XHVBLA 596/754召喚者の屋敷
683 : 以下、名... - 2014/02/23 10:41:45 RPHIL6wY 597/754元太の勉強
※ これまでのまとめ(掲示板書き込み編・改訂版) ※
・8/6 14:55~15:15 (>>15-17,>>19,>>22,>>24-26,>>29-31)
書き込んだ人:『サキュバス』 使用端末:ゲテモノ料理屋『天界』の大将の奥さんの携帯
内容:『サキュバス』犯行声明、事件を起こした理由、質疑応答
・08/06 18:32~18:33 (>>37-39)
書き込んだ人:『サキュバス』 使用端末:毛利蘭の携帯
内容:『サキュバス』の遺言、サキュバスの生い立ち、警察への注意
・08/15 12:05~12:06 (>>158-159,>>162-163)
書き込んだ人:召喚者(『サキュバス』の依頼で書き込みを代行) 使用端末:他人の携帯をスッた
内容:『サキュバス』が召喚者のところに逃げた理由、魔術で見えたもの、これからの決意
・08/16 09:45 (>>256-257)
書き込んだ人:召喚者(『サキュバス』の依頼で書き込みを代行) 使用端末:他人の携帯をスッた
内容:これから行いたい魔術、成功した場合の影響、魔術師としての宣言
・09/03 21:31~21:32 (>>588-590)
書き込んだ人:召喚者(『サキュバス』の依頼で書き込みを代行) 使用端末:他人の携帯をスッた
内容:警察宛て→(蘭の部屋の)カメラをずらしてほしい 元法学者宛て→身の上話等を更に書き込んでほしい&書き込む場合の注意事項
・09/04 13:18~13:23 (>>624-625,>>629-632)
書き込んだ人:警視庁の捜査員(元法学者=粟倉 葉の了承を得て書き込みを代行) 使用端末:警視庁の端末
内容:粟倉 葉の手紙の文面、粟倉 葉の身の上話、『サキュバス』の種族の特徴
・09/04 23:12~23:16 (>>647-648,>>650-651,>>657)
書き込んだ人:召喚者(『サキュバス』の依頼で書き込みを代行) 使用端末:他人の携帯をスッた
内容:今後自首する場合に不安なこと(実質的な記憶封印&新しい身体の生命維持)、『サキュバス』が自首する場合の場所の暗号
※ 登場人物まとめ(名前を募集したモブ編) ※
粟倉 葉:62歳の女性。某国立大学の法学部の元教授(定年で退職した)で、現在は弁護士。
今のところ、確実に『サキュバス』と同じ世界の知識を持って、警察に協力している唯一の『ヒト』。今は捜査協力を拒んでいる。
学生時代に山で遭難死しかけるも、偶然、事故で転移した異世界の神官の人格を取り込んで生還。以来40年以上、異世界の記憶を抱え込んできた。
江川 沙希:杯戸町在住の中学3年生。15歳。8月22日に自宅で首を吊った。すぐ母親に発見され病院に搬送、そこで意識が回復するも、
日付の変わった23日の真夜中、病室に侵入してきた召喚者に首を絞められ、誘拐された。
警察は、召喚者が殺したのか、自殺後に遺体が盗まれたのか、断定していない。どちらにしろ生存が絶望視されている。
江川 桜子:杯戸町在住の主婦。43歳。沙希の母親。警察の事情聴取では、沙希の生存を諦めていた。
江川 一:杯戸町在住、(職業は会社員)。沙希の父親。警察の事情聴取では、娘の生存に一縷の望みをかけていた。
大山 助太郎:享年48歳の男性。8月26夜~27日朝にかけて、魔術の素材用に盗まれた遺体その1。入院中の杯戸中央病院で病死。
野田 富士:享年91歳の女性。8月26夜~27日朝にかけて、魔術の素材用に盗まれた遺体その2。東都警察病院で病死。
葛野 一二三:享年32歳の男性。8月26夜~27日朝にかけて、魔術の素材用に盗まれた遺体その3。事故死後、監察医務院に搬送されていた。
午後7時 召喚者の屋敷 もうひとつの地下室
夕飯のオムレツを食べている元太に、召喚者は雑談を振ってきた。
召喚者「そう言えば、……あなた、勉強はどんな感じなの?」
元太「(モグモグ)……んー? まぁ、じゅんちょーかー?」
召喚者「そう。小学1年生よね? 教科書はどこを読んでるの?」
元太「算数が『3つの かずの けいさん』、国語は、今は『ゆうだち』を読んでるぞ」
召喚者「分からないところ、有る?」
元太「……特に無えかなぁ。漢字も読めるのばっかりだし」
召喚者「どんな漢字が出てるの?」
元太「えっと、……『木』と『口』と、……何だっけ?」
蘭?「『目』ですね」
召喚者「……それは確かに簡単な漢字ね」
仮面の下、表情は伺い知れないが、召喚者の声は少し笑っていた。
蘭?「さて、……行きますか」
召喚者「ええ……」
会話をしつつ夕飯を食べ終えた『彼女』が立ち会がり、召喚者と共に部屋を出ていく。
元太はそれを見送るが、ふたりを慌てたり呼び止めたりすることは無い。
何日も監禁されていれば分かる。
召喚者はちょくちょくこの部屋に来るが、ふたりが食事中も部屋に居続ける時は、食後に、『彼女』に用事が有る時だけだ。
午後7時5分 召喚者の屋敷 地下室
召喚者「日本語で手短に言うわ」
蘭?「はい」
召喚者「さっきネットに情報が出たの。私達の事件について、警察が会見を開いて声明を出すって」
蘭?「……ずいぶんと早いですね。もっと組織内の意見集約に時間が掛かると思ってました」
召喚者「私も同感よ」
蘭?「会見はいつですか?」
召喚者「今日の、夜ですって。9時に」
蘭?「そうですか……」
今日の投稿は以上です。明日はお休みします。明後日はオートで会見描写になります。
※なお今回は、以下の教科書の出版社のサイト、及びその他解説サイトを参考にしました。
算数:東京書籍『あたらしい さんすう』 国語:光村図書『こくご 一上 かざぐるま』
↓1 次は会見を見ているor聞いている『誰か』の話になります。誰目線の話にしますか? これまで登場した人なら誰でも可です。
↓2 ↑の会見での、『彼女』の書き込みに対する警察の方針は? 『彼女の予想通り』『予想より甘い』『予想より厳しい』『その他(要記載)』
なお、『彼女』の予想は>>675を参照願います。
↓当分の間募集 暗号の解き方の手順を解説して下さい。先着1名、『エンディングで誰を出したいのか』についてリクOKです。
暗号文は>>651と>>657 ヒントは>>654 答えは>>662です。
693 : 以下、名... - 2014/02/24 07:28:52 R0irK5Lo 605/754コナン
694 : 以下、名... - 2014/02/24 21:45:09 65Nid/wk 606/754予想より僅かに厳しい
695 : 以下、名... - 2014/02/25 16:52:51 fsY2VE.U 607/754暗号解き方
a~gまでの文字を数えると
a=7,b=9,c=8,d=5,e=4,f=7,g=5
となる
ワードのヒントのうち9文字、8文字、7文字については一つずつしかないのでb,c,eはそれぞれ確定
b=ミスティックアーク
c=モストフロンデス
e=アポリア
5文字は2つあるがgが種族名を指すことから、
g=イルンクスと確定(作中設定より)
残りの5文字は
d=カルルバン
ここで、7文字は2つあってa及びfは確定できないため
a=ゲノムヘリターもしくはベータミゼット
f=ゲノムヘリターもしくはベータミゼット
として次の暗号に進む
696 : 以下、名... - 2014/02/25 17:26:24 CExtzSvA 608/754これをもとに
Aはaの一文字目の濁点なし
ケもしくはへ
Bはcの六文字目
ン
Cはdの四文字目
バ
Dはbの二文字目スを前へ
シ
と当てはめていくと
ケンバシエキカイサツソバ
もしくは
ヘンバシエキカイサツミガ
となる
暗号文の
『ABCDEFGHIJKLの柱』
と整合するのは
ケンバシエキカイサツソバ
これが解です
697 : ◆oJG7c/xJmM - 2014/02/25 20:14:07 NRKpoyPI 609/754今日の投稿は21時以降になります。今からお風呂行ってきます。
>>695-696
正解です。お見事です。
エンディングで誰を出したいのかリクエストどうぞ。 灰原以外のキャラでお願いします。
(些細なタイプミスと思われますが、最初に確定するのは、b=9文字とc=8文字と、e=4文字ですね。私もタイプミスは良く有るので人のこと言えないですが)
700 : 以下、名... - 2014/02/26 00:19:56 Fe3pp4z. 610/754タイプミス失礼しました
エンディングのリクエストは服部でお願いします
午後9時 毛利探偵事務所
コナン「会見、始まったねー」
小五郎「……ああ」
おっちゃんと共に、パソコンの画面に映る、警視庁の会見場を見つめる。
公式にインターネットで生中継する会見は、警察が行うものとしては(おっちゃんの記憶では『前代未聞なレベル』で)かなり珍しい。
画面の向こう側、カメラのフラッシュを浴びながら、小田切刑事部長が一礼し、原稿を読み上げ始めた。
小田切「拘置所被告殺人事件につきまして、……一部では『サキュバス事件』とも俗に称されているようですが、
本年8月6日に発生した拘置所被告殺人事件につきまして、発表致します。
一部では既に報道されておりますが、
きのう9月4日の23時12分頃、インターネット上の掲示板において、当事件の被疑者と思われる者の書き込みがありました。
この書き込みは、自称『召喚者』が、『サキュバス』の書き込みを代行したと記されており、
『サキュバス』の将来の懸念が記されておりました」
小田切「……書き込みには、『定期的に誰かに抱かれないと、生命が維持できない身体』になるから、
自首するのが恐ろしい、と、ありました。
我々は、この書き込みは、事件の被疑者による物と見ています。
……詳細は伏せますが、これまでの捜査から、そう判断しています。
その上で、警視庁として、我々の姿勢を発表します」
ここで言葉を切る。フラッシュがいっそう強くなり、刑事部長はカメラを真っ直ぐに見つめ、
小田切「書き込みの真偽は、今は判断がつきません。
被疑者の身体を実際に調べないと、何とも言えません。
ただ、どんな事件であれ、ヒトの姿をして自首してきた者が、不手際によって生命を失う事は、警察も望みません。
今後、もし『サキュバス』が自首するならば、まず病院で身体を調べることと、
……その上で身体に関する主張が真実ならば、警察が最大限配慮することを、保証します。
警察は、『サキュバス』の自首を、強く望みます」
706 : ◆oJG7c/xJmM - 2014/02/26 21:03:12 2PuXHTIk 613/754↓明日の午後八時まで募集 会見場の記者のつもりで小田切さんに質問してください
1レスに複数可です。
707 : 以下、名... - 2014/02/27 08:42:09 4axxzBBQ 614/754この発表内容は警察庁の了解を得ているのですか?
708 : ◆oJG7c/xJmM - 2014/02/27 19:32:02 hqwPjVXU 615/754今日も投稿はお休みします。
今週は本当にグダグダですね。本当に申し訳ありません。
明日は夜10時以降の投稿になります。
↓明日の午後9時まで募集 会見場の記者のつもりで小田切さんに質問してください
1レスに複数可です。
709 : 以下、名... - 2014/02/27 23:52:57 RTW9FUSg 616/754自首してきた被疑者に、普通に法律が適用されると考えるか
警察が、サキュバスと性的な接触を行うことがあり得るということか
710 : 以下、名... - 2014/02/28 09:52:21 aWslKVbM 617/754真実かどうか確かめるための方法として現時点ではどういうものを想定しているか
真実であった場合最大限配慮するというが、具体的にどのような方法での対処を想定しているのか
魔術を用いた犯罪の証明は、因果関係を犯罪の構成要件とする司法のあり方を大きく覆すことになるが、その点について警察及び検察はどう考えているのか(証明できるのか、あるいは魔術を用いたことを前提とせず、現実的な方法によって行われたことを立証するのか)
711 : 以下、名... - 2014/02/28 12:29:30 /4VeM.VY 618/754元法学者の書き込みには警察が関わったのか
今も元法学者は警察に協力的なのか
新聞広告に出た誘拐事案の進捗を、話せる分でいいので明かしてくれないか
こちらからの発表は以上です、という〆の言葉があって、それから記者との質疑応答が始まる。
――サキュバスが自首した後、書き込みが真実かどうか確かめるための方法は、現時点ではどういうものを想定されているのですか?
小田切「専門的な医療機関で、医学的に身体を調べることになると、考えています。
……本当に『ホモ・サピエンスではない生き物』なのかどうか、そういう観点での検査を想定しています。
現時点では、それだけ申し上げておきます」
――書き込みの内容が真実であったなら、最大限配慮すると言われましたが、具体的にどのような方法での対処を想定しているのでしょうか?
小田切「生命を維持するという観点での、対処になると思います。
書き込み内容が全て真実であって、かつ、他に術(すべ)が無いのなら、……被疑者が求める方法を採ることも視野には入れています」
――つまり、警察等が、サキュバスと性的な接触を行うことがあり得るということですか?
小田切「今述べたとおり、書き込み内容が全て真実であって、他に生命を維持する方法が無いのなら、そうなる可能性は否定しません」
会見場が、ざわめいた。刑事部長は補足するように言う。
小田切「警視庁だけでなく、様々なところと協議しなければならないのでしょうが、
……少なくとも警視庁は、先ほど述べた通り、『自首してきた者が、不手際で生命を落とすこと』は極力避けたい、という考えです。
その観点での、判断になります」
――この会見での発表内容は、警察庁の了解を得た上での発表なのですか?
小田切「当然、警察庁からは了解を得ています」
――サキュバスが自首してきたとして、普通に、……この国の、云わばホモ・サピエンス向けの、法律が適用されるとお考えですか?
小田切「仮に被疑者が自首してきた場合、その点に関して、検察と協議しながら判断することになると思います。
ただ、法律の適用が何であれ、身体を調べることは絶対に行います。調べないと判断が出来ません」
――犯罪の証明方法について質問です。この国の司法では、因果関係が犯罪の構成要件となっています。
警察及び検察は、魔術を用いた、……という主張で、犯罪の証明になると、考えているのでしょうか?
それとも、魔術を用いたことを前提とせず、現実的な方法によって行われたことを立証するのでしょうか?
小田切「検察と協議中です。……どう立証するのかは、今、この場では申し上げられません」
――すいません、新聞広告に出た『誘拐事案』が今どうなっているのか、進捗を。話せる事があれば、話して頂きたいのですが。
小田切「新聞に告知を出したときと同じく、今も、被疑者側と交渉中です。……それ以上は申し上げられません」
――掲示板上で、サキュバスとやりとりした元法学者さんが居られますね?
警察経由で手紙のやり取りが有ったと、掲示板に有りましたが、こういう手紙や書き込みには、警視庁が関わったのでしょうか?
小田切「元法学者の方と、捜査本部が、意見をすり合わせて文面を作った、と、報告を聞いています」
――今も、その元法学者さんは警察に協力的なんですか?
小田切「……最初から協力的だと聞いています。元々、その元法学者さんが自分から捜査本部に接触してきた、と」
716 : ◆oJG7c/xJmM - 2014/03/01 01:26:03 C8A0r65k 622/754えらく遅くなりました。今晩の投稿は以上です。次はコナンの感想はさんでシーンが変わります。
↓1 会見を見たコナンの感想をどうぞ
↓2 次のシーンは誰目線にしますか? 『小田切刑事部長』『召喚者』の2択でお願いします。
717 : 以下、名... - 2014/03/01 13:35:55 S45rUsVU 623/754やっぱり、言えないことが多いんだね
コナン「……やっぱり、小田切さん、言えないことが多いんだね」
小五郎「当たり前だ。こんな、……こんな、クソみたいにややこしい問題なんだ。
言えない事は、多いだろうさ」
テーブルの上、強く握り締められたおっちゃんの拳が、震えている。
『蘭』の身体と人格を事件に巻き込んだ犯人に、警察が配慮する、と宣言するのは、……すぐ納得できるものではない。
だが、『自首してきた者が、不手際で生命を落とすことは避けたい』というのは、否定しづらい正論だ。
世間の反応を想像すると、その警察の姿勢自体にはそこまで批判は無いだろう、と思う。
『サキュバス』の身体が、本当にその主張通りの身体なのか、……その点に関しては疑問視する声は強く上がるだろうが。
コナン「『蘭姉ちゃん』、……本当に、無事に戻って来れるよね?
人格が再分離して、『蘭姉ちゃん』の方は普通の女子高生に戻るんだよね?
問題があるのは、『サキュバス』の方の身体で……」
小五郎「『本人』の書き込みによると、そうらしいな。(※作者註 >>257)
……残りの会見は俺が見てるから、お前はもう寝てろ.!」
719 : ◆oJG7c/xJmM - 2014/03/01 23:53:47 C8A0r65k 625/754
↓1 次のシーンは誰目線にしますか? 『小田切刑事部長』『召喚者』の2択でお願いします。
0時10分までにレスがついたら今晩中に続きを書きます
720 : 以下、名... - 2014/03/02 11:38:37 qmxDUZ5M 626/754召喚者で
午後9時55分 召喚者の屋敷 地下室
あるじが持ってきたノートパソコンで、刑事部長の会見動画の録画を見る。
時間にして20分無いくらいの会見で、キャプチャーで撮った動画を、時々繰り返しながら、考えて、分析して。
――そして『彼女』は感想を述べる。
蘭?「“予想よりちょっと厳しいですね。ほぼ予想通りでしたが”」
召喚者「“……どこが厳しいの?”」
蘭?「“誰も質問しなかったせいかもしれませんけど”」
『彼女』は画面を指差し、
蘭?「“『絶対に死なせない』、なんて言わなかったんですよ、『不手際で死なせたくない』とは言いましたけど。
……意図的に殺す可能性を排除していないんです”」
召喚者「“あ……!!”」
蘭?「“あるじはどう思いました? これ”」
召喚者「“……典型的な、役人の答え方だと思ったわ。
たまに歯切れが悪くて、言質を取らせたくなくて、……でも、すこしは権威が有るように見える”」
蘭?「“……確かに”」
笑いながら、『彼女』はイヤホンを外し、あるじに渡す。元太に何を見てるのか気付かれないよう、着けていた物だ。
召喚者「“もう、見ないの?”」
蘭?「“ええ。十分見ましたから。
……ちょっと、これからの事が怖いですね。
自首した結果、『やっぱり法律の適用は無理でした』で、……手のひら返して殺害考えて、死屍累々になったりして”」
召喚者「“……そうね。自首前に、牽制で加護を全部説明しないと不味いかしら。
公に、掲示板で説明しないと牽制の意味は無いでしょうけど”」
蘭?「“魔力欠乏は、大丈夫ですか”」
召喚者「“何とかするけど、……頭が痛いわ。人格再分離の術式は手が抜けないもの”」
蘭?「“ですよね”」
蘭?「“……本当に、本当に、有り難うございます”」
召喚者「“気にしないで。召喚者として当然の事だから”」
手を握られながら、まぎれもない本心を告げる。
いつも召喚者の側が手袋を付けているから、素手で触り合うことはないのだけど、それでも、『サキュバス』と『赤魔術の魔女』の誠意は通じ合う。
召喚者「“……死、そのものを防ぐことは出来ない。それをすると世界が許さない。
でも、殺されにくくすることは出来る。殺す側に代償を設定することで。
私は、貴女の生を、……本当に願っているから”」
少なくとも意図的な殺害からは、『サキュバス』を守らねばならない。
725 : ◆oJG7c/xJmM - 2014/03/02 21:34:17 7wdl7OUc 630/754遅くなりました。
……まさか書き上げた後にデータが飛ぶとはorz
↓1 次のシーンは誰を出しますか? これまで登場したキャラでどうぞ。
(作中9月5日は次のシーンで終わりです)
726 : 以下、名... - 2014/03/02 22:36:09 zBiIA2lk 631/754コナンっていいのか?あかんならごめん
午後10時25分 毛利探偵事務所 3階
おっちゃんに寝るようにきつく言われ、3階に上がってからも、1人でこっそり携帯電話から動画は見たし、メールも出来た。
ただ、俺が寝る部屋を壁一枚隔てた隣室は、蘭の部屋で、今は警察の録画・録音機器まみれ。
服部や灰原とのやりとりを、警察の録音が拾う恐れがあるから、これまで行っていたような通話は厳しい。
そういう密かなやりとりも、おっちゃんが3階に上がって来ると、出来なくなる。
俺は、おっちゃんと同じ寝室の床に、布団を敷いて寝ているからだ。
おっちゃんが午後10時頃に寝て、あっという間にいびきをかき始めて、しばらく経って。
コナン「(まさか、寝つけなくなるとはな……)」
俺も、『蘭』の事件には色々と思うところがある。『彼女』について考えが止まらず、寝付けそうにないのだ。
コナン「(頭を冷やしたほうが良いか……)」
水を飲むために、俺は起き上がった。
携帯の明かりを頼りに、流しに向かう。
コップを片手に蛇口を捻った、その時だった。
バタン!!
「!?」
勢いの強い、ドアの開閉音。
慌てた俺が振り返ると、今は常時明かりが点いている部屋、……蘭の部屋の扉が何故か開いていて、
そこから緩やかに白い物体が飛んでくる。俺の方に向かって。
コナン「(紙飛行機?)」
それは、ゆっくりと俺の頭上の高みを一周してから、床に落ち、
ひとりでに折り目が広がり、一枚の紙になっていく。
『彼女』からの手紙だった。
730 : ◆oJG7c/xJmM - 2014/03/03 22:14:44 yPBOQw4Y 634/754
今晩の投稿は以上です。次回はオートで手紙です。
9月5日が終わったら、時系列は一気に進めます。
警察の皆様へ
刑事部長の会見を見ました。
『蘭』と『サキュバス』の人格の再分離が成功した場合、という大前提が当然ありますが、
再分離が成功した場合、『サキュバス』の自首は、考えてはいます。
とはいえ、『サキュバス』はともかく、すくなくとも『蘭』の方は、家族の元に返さねばならない、という考えです。
この時、戻ってくるのは、8月6日以降の記憶をすべて失っていて、でもそれ以外は精神的にも身体的にも、正常なホモ・サピエンスの『蘭』です。
人格の再分離が何もかも成功に終わったならば、そういう『蘭』になると思います。そうなると信じていたいです。
そして、肝心の『サキュバス』の方の自首について。
掲示板に書いた身体の構成は、『サキュバス』の人格と魔力を正常に引き継ぐ上で、どうしても必要なことでした。
作り上げた身体を維持するためにも、また、人格を維持するためにも、体内に常に魔力が必須であり、
だとすると、体内に魔力を取り込む方法として、元々の種族の体質と同じような、精→魔力の変換方法でいくしかない、と。
身体を作るに当たり、必要な生贄の数が、現実的な数で収まる方法が、それしかありませんでしたから。
『サキュバス』はずっと、生きることを願ってきました。
自首するときは、出来る限り死にづらくなる(死ななくなる、ではないです。流石に不死にはなれませんから)ように備えてから自首します。
掲示板に書いたように、異世界から転移して以降、見聞きしたことの証言を事実上封じるのも、生きるための手段です。
明らかにすると誰も幸せにならず、色々と危うい秘密を、見聞きしてきましたから。
召喚者だけを守るために、『サキュバス』に封印を掛けるわけではないのです。
また別に、もっと直截に死を遠ざけるための呪詛ないし加護を、『サキュバス』に使おうと決めています。
その詳細は、それこそ自首を決めた時、自首する直前にお伝えするつもりです。
召喚者と、蘭と、サキュバスより
追伸 新一へ (なお、この行含め、以下の内容は他人の視線に触れると消えます)
召喚者の秘密を守るついでに、貴方の秘密も守ります。
貴方がどう思おうが、『わたし』はこれで良いと、本心からそう思います。
蘭と、サキュバスより
733 : ◆oJG7c/xJmM - 2014/03/04 22:10:13 kHxCLsLQ 637/754今日の投稿は以上です。明日の投稿はお休みします。
次回、コナンの感想を挟んでから、別のシーンに移ります。作中時系列は10月に進みます。
↓1 手紙を読んだコナンの感想は?(具体的な内容でも良いし、『悲しい』『悔しい』でも可)
↓2 次のシーンは誰を出しますか? これまで出たキャラなら誰でも可です。
734 : 以下、名... - 2014/03/06 18:03:53 YTiC0hs2 638/754情けない
735 : 以下、名... - 2014/03/06 20:05:43 m4TQGKhw 639/754妃弁護士
コナン「(……情けないな、俺は。
一番、気を使わせたくない奴に、こんな風に言われて……)」
俺の秘密。何を言っているのかは明白だ。
俺が新一だということを、今の『彼女』は知っている。
俺と、あの黒の組織と、因果があることも。灰原の事も、魔術で見抜いて、知っていると言っていた。(※作者註 >>209-210)
『蘭』であれ、『サキュバス』であれ、俺は自分の事を知られたくはなく、……こんな風な配慮はされたくもなかった。
小五郎「……おい、何かあったのか?」
ドアの音に起こされたのであろう、おっちゃんが寝ぼけ声で問いかけてくる。
俺は、慌てて大声で答えた。
コナン「おじさん!! 『蘭姉ちゃん』から手紙!! 紙飛行機が、勝手に部屋からここまで飛んできた!!」
小五郎「何だと!!」
一気に覚醒したおっちゃんが、走り寄り、俺の手元から手紙をひったくった。
コナン「おじさん、僕にも見せて!! まだ途中までしか読んでなかったのに!!」
しれっと嘘を吐き飛び跳ねて、おっちゃんが広げる手紙の様子を、無理やり見る。
確かに、俺に宛てた追伸は、きれいさっぱり消えている。
小五郎「……『蘭』は、……普通になって、帰ってくるのか?」
手紙を読んだおっちゃんは、複雑な感情の入り混じった様子で、そう呟いた。
738 : ◆oJG7c/xJmM - 2014/03/06 22:10:39 es8lguf2 642/754今日の投稿は以上です。
>>734-735
ありがとうございました。次のシーンは妃弁護士を出します。
予告通り、10月に進みます。
10月5日 午前10時 毛利探偵事務所
英理「最後に手紙が来てから、もう一か月……。
『蘭』は、どうしているのかしらね?」
コナン「おばさん。……便りが無いのは良い便り、って言うよね。
身体を造ったり、魔術で色々やってて、準備で忙しいから手紙を書く暇ないんだ、って、……僕は考えることにしてる」
英理「……そうね。そう考えるしか無いんでしょうけど」
あの9月5日の夜、紙飛行機の形で湧いた手紙を最後に、『本人』や『召喚者』からの連絡が途切れた。
インターネットの書き込みも一切無くなり、公開されている限りでは警察の新たな発表も無く、一か月が過ぎたことになる。
1か月の間に、世間は動いた。
犯人側の書き込み、『誰かに抱かれないと生命を維持できない身体になる』という内容は海外にも報道され、かなりの議論が沸き起こり、
『自首後に身体を調べないと何も判断できない』という警察の見解は、有識者の間では一定の理解を得た。
もし仮に、『サキュバス』の身体が真実そういう構造ならば、現行法では、どこの施設でも収監は困難でないかとも指摘され、
複数の政治家グループが、『サキュバス』の主張が真実だった場合のための法律案を試作して公表して、また議論を呼んでいる。
法律案がどういう構成であったとしても、収監中の男性との性行為を認める内容になる。議論を呼ばないわけが無い。
そんな騒動を尻目に、『蘭』の両親と、俺は、ひたすら、元太と『蘭』の帰還を待っている。
コナン「……手紙、送れなくなるなら、一言そう書いてくれればよかったのにね」
英理「ええ……」
これも、最近ずっと思っていることだ。
あの紙飛行機の手紙を読んで、近いうちに『蘭』が帰ってくることを期待した。
まさか1か月音沙汰無しとは、俺も、妃弁護士も、おっちゃんも想定していない。
ちなみに、警察がこの事態を想定していたかは不明だが、2学期が終わるまでは、事態を見守る姿勢ではあるようだ。
犯人側は、8月27日、遺体を盗んだ現場に、警察宛ての手紙を残している。
その手紙の全貌を俺たちは知らないが、元太を『遅くとも2学期中には返す』とは、書いてあったらしい(※作者註 >>461)
コナン「おばさん、今日もここに居るの?」
英理「ええ、昼までは時間が有るからここに居るわ。……『蘭』から手紙が来るかもしれないから」
742 : ◆oJG7c/xJmM - 2014/03/08 00:44:54 TQnYvT3c 645/754遅くなりました。今晩の投稿は以上です。
↓1 次のシーンは誰を出しますか? これまで出たキャラなら誰でも可ですが、
『妃 英理』『コナン』は除きます。
743 : 以下、名... - 2014/03/08 14:59:27 KarpqCCk 646/754召喚者
午前10時 召喚者の屋敷 地下室
召喚者「“あの子には、『もう少しで解放される』と、言って良いかも知れないわ”」
いつものような2人きりの打ち合わせの会話の最中に、元太が監禁されている部屋の方を見ながら、あるじはそう言った。
蘭?「“……そう、ですね。今夜から、私達が丸一日消えると教えなきゃいけませんから。
解放の見込みを教えても良いかもしれません”」
召喚者「“解放の日付自体は決まってないから、日程の明言は出来ないでしょうけどね”」
蘭?「“単純で素直ですからね。あの子。
曖昧な日程だったとしても、説明次第で、私達が居ない間、おとなしく待ってくれると思うんです”」
召喚者「“そうね……、では、昼に教えましょうか。食事を出すときに”」
蘭?「“そうしましょうか”」
午前11時55分 召喚者の屋敷 もうひとつの地下室
蘭?「ご飯食べる前に、ちょっとお話があるんだけど、良いかな?」
元太「ん、なんだ? 『姉ちゃん』」
蘭?「……これからの事について、なんだけど」
元太「は、はい……」
真面目な雰囲気に気付いた元太は、少しだけ圧倒されつつも、『姉ちゃん』と『あるじ』に向き合った。
蘭?「今から『私』は用事で……、今日の夜からは、あるじも大事な用事で、この部屋から離れることになってるの。
具体的には、君が夕飯を食べた後くらいの時間になるかな。
たぶん夜になっても用事は続いていて、……朝になって、朝ご飯を食べる時間になっても、私達は帰って来れない」
元太「!! じゃあ、明日の朝ご飯は無いのか!?」
召喚者「……まさか。貴方が食いしん坊なのは分かってるのに、それはしないわ。
今晩私が出る時、ここに明日の朝ご飯と水を置いて行くから」
元太「そうかー。良かった……」
蘭?「でもね。……さっき言った通り、夜から私達ふたりとも居なくなる。
ひとりで眠って、朝、起きて、ご飯を食べて、待っていてほしいの。明日の昼までには帰ると思うから」
元太「俺ひとり、か」
召喚者「ええ、ひとり、ね。
……どうでも良い話だけど、もちろんこの部屋の鍵は閉めて出掛けるから。
逃げ出そうと思っても無理よ」
元太「(ゾッ)……それは、分かってるさ」
逃げないよう釘を打ったあるじの声は、洒落にならないほど低く険しくなる。
『彼女』は怯えた元太に心の中でだけ苦笑してから、改めて彼に向き合った。
蘭?「でね、元太くん。ここからが本当に大事な話なんだけど」
元太「ん?」
蘭?「私達の用事が終わってしばらくしたら、元太くんはおうちに帰れるようになると思う」
元太「……本当か!?」
召喚者「ええ、本当よ」
蘭?「今夜の用事が終わったら、『私』は、……『蘭』はここに戻ってくるでしょうけど、
でも、明日戻ってくる『私』は、しばらく、ここのベッドで眠り続けていると思う。
……だからね、そんな『蘭』を、見守ってくれたら、嬉しい、かな」
元太「……」
蘭?「戻ってきた『蘭』の、様子がおかしいと思うことも、あるかもしれない。
でもね。それでも、そんな『蘭』を見守って。……お願い」
元太「……『姉ちゃん』は、何しに行くんだ?」
蘭?「言えないよ。君には、絶対に言えない。
君が、家に帰ったら大人の人に聞くと良い、と、思う。……大人の人は、きっと知ってる」
元太「えー……」
口をとがらせた彼の頭を、『彼女』は優しく撫でる。
蘭?「よく説明できない理由で君をここに閉じ込めてるけど、……君とのお話は結構楽しかったよ。
電気ウナギの水槽に落ちた思い出話とか、……他には、電気ウナギの水槽に落ちた思い出話とか」
元太「……俺の話、それしか覚えてないのか!?」
748 : ◆oJG7c/xJmM - 2014/03/09 00:38:08 PDRkCxTw 651/754今晩の投稿は以上です。次1シーン挟んだら、自動で『彼女』の話に進みます。
↓1 次のシーンは誰を出しますか? これまで出たキャラなら誰でも可ですが、
『妃 英理』『コナン』『本人』『元太』『召喚者』は除きます。
749 : 以下、名... - 2014/03/09 11:31:49 K22uQhs6 652/754目暮警部
午後4時 警視庁 捜査一課
松本「今、佐藤と高木は居るか?」
目暮「佐藤と高木ですか?」
佐藤「私はここに居ます、管理官。高木くんは外に出ています」
白鳥「……今、その高木くんと通話中ですが」
松本「(タイミングが良いな……)
『サキュバス』事件の捜査本部から、2人に呼び出しが来た。佐藤は今から捜査本部に行ってくれ」
佐藤「はい!」
松本「白鳥、高木に伝えてくれ。今居る所から真っ直ぐに捜査本部に行くように、な」
白鳥「はい!」
佐藤は捜査一課を出て行き、白鳥から電話で命令を聞いた高木も、動き始める。
松本「……それにしても久々だな、この件での捜査本部からの呼び出しは。
佐藤が誘拐されて以来だから、……もう一か月以上か」
目暮「ええ。もう、そうなりますね」
松本「高木が退院してからも、もう2週間が経つのか。……2人の調子はどうだ?」
目暮「見る限り、……問題無いように、振る舞う余裕は有るようです。
(コソッ)……2人とも、この件が、仲が深まる方向に作用したようで」
松本「……そうか。
(ワシが判断する前に、2人が結婚して、どちらかの異動が必須になるかもしれんな……)」
独身同士の刑事がカップルになり、ラブホテルで合意の上でヤッて、無自覚に肝炎ウイルスをうつし合い、
特殊能力持ちの『被疑者』に、手紙でそれを指摘され、直後に男の方が肝炎で入院に至った。
……という、佐藤と高木のケース。
上層部で割と議論になったが、処分も辞職勧告も、そして今のところは異動もなく、退院した高木と佐藤は、この課で仕事を続けている。
『被疑者』から来た手紙を隠蔽していたら不味かっただろうが、手紙が来たことを素直に報告したから、
……素直に報告したからこそ、2人とも、現時点で処分は受けることなく過ごせている。
『被疑者』の特殊能力うんぬんを言う以前に、肝炎の感染自体は軽率だから、その点、印象は悪化したけども。
754 : ◆oJG7c/xJmM - 2014/03/11 22:32:23 Jawu4vwQ 655/754今日の投稿は以上です。次回はオートで『彼女』の話になります。
↓1 人が普段来ない場所or建物を指定してください
755 : ◆oJG7c/xJmM - 2014/03/12 23:17:19 zI.1u1H6 656/754情けない話ですが、流石にここまで進行がグダグダになると、安価取る方も居なくなるようですね。
明日正午までレスがなければ、以後安価無しで進行しようかと考えています。
↓1 人が普段来ない場所or建物を指定してください
756 : 以下、名... - 2014/03/12 23:33:11 YZ5Hcu6w 657/754おつですー!
山奥の洞窟…とかでいいんですかね?
ttp://hide14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/************/
【被疑者】拘置所被告殺人・考察&まとめスレ257【交渉中?】
817:◆MsSuccubus [sage]:20XX/10/05(土) 15:55:38:50 ID:OOOOOOOO
こんにちは。サキュバスです。
召喚者に頼まずに書き込むのは、久しぶりだね。
今晩、ようやく人格再分離の魔術が出来るようになった。
場所は伏せるけど、8月6日に女子高生と融合した時のように、人が立ち入らないような場所で、術式を展開する事だけは確かだよ。
今回はその時以上に、念入りに、人が来る可能性を極力排除した場所を、選ばせてもらった。
今回は前回同様、爆発の危険があるし、それと別に、魔術の真っ最中に他人に乱入されたら、その人の魂が吸われて廃人になってしまうリスクもある。
魔術的な防護の仕組みとか全く知らない人間に、傍に来られると、すごく困る。
今夜、普段人が来ない場所が異常に光っていたら、そこは魔術の真っ最中の場所かもしれない。
絶対に近寄らない、できればその光そのものも直視は避けるレベルで、避けてもらえると有り難いかな。
体質的に弱い人が精神やられる危険も、無い訳ではないからね。
819:◆MsSuccubus [sage]:20XX/10/05(土) 15:55:59:54 ID:OOOOOOOO
さて、ここから先は警察の人にお知らせ。
今晩行う魔術が完全に成功しても、すぐには自首できない。
人格再分離が成功しても、色々とやらなきゃいけない作業があるからね。
何もかも順調に進んだとして、自首が可能になるのは、最低でも今から1週間後かな。
念のため言っておくけれど、自首することが本当に決まったわけではないよ。
再分離が失敗したら自首どころじゃないし、成功しても自首はしない選択肢もある。
もし自首するとしたら、先日暗号で示した通りの場所で待ち合わせ、かな。(※作者註 暗号は>>651と>>657)
自首する場所は、その場所で、日時は、直前に知らせることになる。
更に条件を追加したいのだけど、警察が暗号を解けているのだとしたら、
私達が示す自首する日時に、その暗号の場所に、刑事さんを立たせておいて欲しい。
その刑事さんも、誰でも良い訳でなく、私が8月27日に手紙を送った女性刑事さんか、そのカップルの男性刑事さんのどちらか、が良い。
822:◆MsSuccubus [sage]:20XX/10/05(土) 15:56:21:58 ID:OOOOOOOO
指定した場所・日時に、指定していた人が立っていないなら、私は警察を信用しない。
異世界出身の元法学者さんが本当に知識を持っていて、警察に協力してくるなら、警察は暗号の答えを知っているはずで、
警察が暗号を解けなかったり、答えを間違ったりしたら、それは元法学者さんと協力関係を構築するのに失敗したか、
あるいは、元法学者さんが間違えていて、警察がそれを見抜きようが無かったか、……その、どちらかだと思うから。
どちらにしても、警察を信用しない理由には十分だから。
サキュバスの出身地には、警察が無かった。
正確には、犯罪が無かったんじゃなく、裁く役所と、捜査する役所が一緒だった。役所内で部署は違うらしいけどね。
あの世界で、誰かが罪を犯したとき、その犯罪の場所で何があったのか、過去視の魔術で探れば一発だし、
その時の心の動きも、供述の嘘も、魔術で調べればすぐ分かる。
そんな風に解析する・見抜く魔術が、太古の昔から有った。魔術の裏をかいて、何かやらかそうとする者も、太古の昔から居るけどね。
世間は、個々の魔術師の未熟で、見抜けない事や見誤る事が有ることは知っていても、魔術という技術そのものは信頼してた。
そんな文明だったから、分析の魔術の専門職は居るけど、捜査を専門にする役所としては発展する事が無かったんだと思う。
825:◆MsSuccubus [sage]:20XX/10/05(土) 15:56:59:01 ID:OOOOOOOO
どうしようもない話ではあるんだけど、サキュバスは、分析の魔術を一切使わない、この世界の司法手続きが、ちょっと怖いかな。
理屈の上では魔術が存在しない事は理解しているんだけど、心が、付いていけてないんだと思う。
あの世界は結構貧しくて、刑罰法がやたら身体刑中心でむごかった。とはいえ、裁く手続きは厳格で、信頼は受けてたから。
サキュバスは、元々、あの世界で、専門職の役人としての、分析系の魔術師を目指してたから、
あの世界での刑事手続きには詳しいから、余計にそう思うのかもしれないけどね。
元々の実家で、相続で揉めなかったら、将来の夢を絶たれ、命の危機に晒されていなかったら、
この世界に召喚されたとしても、サキュバスは、元の世界に戻る事を願っていたんだろうと思う。
だけど、そうはいかないから、この世界で生きることに決めて、本当に色々な物を巻き込み、犠牲にして、今、足掻いてる。
この世界で生きると決めた以上、故郷と違うことには馴れなきゃいけない。
でも、おそらくこの世界での、魔術を使えない警察や司法に対する不安は、そう簡単には消えない。
そんな被疑者でも自首を望むというのなら、私が自首を望んだ時、指定していた日時・場所で、指定した刑事さんを立たせておいてほしい、かな。
サキュバスより 敬意を込めて
763 : ◆oJG7c/xJmM - 2014/03/13 22:11:59 0V5Nk7t2 662/754今日の投稿は以上です。
すいません、思った以上に長くなりました。
次回、『彼女』目線での洞窟での話になります。
午後4時5分 都内 とある洞窟
蘭?「ただいま、戻りました」
転移の魔術で、『彼女』は、この薄暗い洞窟に帰ってきた。
仮面を顔を隠したローブ姿の誰か、――と言っても、召喚者ではなく、彼女に仕える執事の男性なのだが、
その執事は、床に術式の陣を描く作業を止めることなく、戻ってきた『彼女』に、声だけ掛けてくる。
執事「お帰りなさいませ。
書き込みが済むのは、案外、早かったのですね」
今日、昼ご飯を食べてから、執事と『彼女』はこの洞窟に転移した。
ここで魔術を行うから、その下準備の作業のために。
2人でやらなければいけない作業、……邪魔になるコウモリを魔術的な手法で徹底的に追い出したり、
洞窟の出入り口に、視線妨害の符を貼りまくる作業を終えたのが、午後3時40分頃。
それから、『彼女』だけ、書き込みのためにこの洞窟を出て、そしてそれが済んだから、『彼女』はここに戻ってきた。
蘭?「流石に、……『自分』の事なのに、他人に作業任っ放しにするほど、厚かましくはなりたくないですから。
何よりも、今回は、タイミングが良かったんですけどね」
言いながら、『彼女』も床の上の陣の構築に加わる。
作業手順は事前に打ち合わせていたから、どこまで作業が済んでいて、これからどう描いていくのか、聞かずとも分かる。
執事「……ほう? どういうことです?」
蘭?「米花総合病院の中でも、あまり人が来ないような場所のトイレに出現して、個室に陣取ったんですけど、
出現のすぐ後に、タイミング良く人が来て、……その人が便座に座った時に昏倒させて、携帯を奪って、再転移して、それで」
執事「そうでしたか。書き込みは、どちらで?」
蘭?「同じ病院の、別の階のトイレです」
執事「書き込んだ後、携帯は捨ててきたのですよね?」
蘭?「当たり前です。
バッテリー抜いてSIMカードと本体をへし折ってから、視線妨害の術も念のため掛けて、トイレに流してきました」
執事「視線妨害。
……なるほど、トイレの配管を浚(さら)ったとしても、発見の手間が余計に掛かる、ということですか?」
蘭?「ええ。
魔力を絞った『私』の術でどれだけ効果があるか分かりませんが、ちょっとでも、警察には苦労してもらいたいですからね。
『私達』の事件を追うことが、難しい事なんだと、心が折れるくらいの困難なんだと、……思ってくれたら良いんでしょう、けど」
執事「……そうですね。
ところで、質問よろしいでしょうか?」
蘭?「ん? 何ですか?」
執事「魔術が成功した後の、貴女様の身体の話です。
お嬢様に2週間前に話を伺って、一応は了承しているのですが、……本当に、本当に、よろしいのですか?」
彼は、陣を描く手を止め、まっすぐに『彼女』を見つめていた。
真面目に質問しているのだろう。仮面越しでも、声色と視線で分かる。
蘭?「ぁあ、そのことですか。……まさか貴方に、嫌な点が有るんですか」
執事「そういう、訳ではないのですが、……私めが力になれるならもちろん嬉しいのですが、
ですが、……貴女は、貴女の意思は、どうなのです?」
蘭?「気にしないでください。『サキュバス』にとっては、ご飯食べるくらい当たり前のことを願ってるだけなんです」
執事「……そうなのですか?」
蘭?「必要だから、お願いするんです。……男の方の精が必要だから、生きるのに必要だから、お願いするんです。
一度了承されたんです。今更、嫌がられても『サキュバス』の命が危機なので、却って困るんですけど、ね」
執事「は、はぁ……」
蘭?「怖いですか? 意識を無くした15歳を抱くのは」
執事「それは、……少々どころでなく。そんなこと、初めてですから」
おずおずと言ってくる彼に、『彼女』は苦笑した。
蘭?「それはそうでしょうね。加減が分からないなら、どうか丁寧にお願いします」
執事「ぜ、善処致します」
『蘭』と『サキュバス』の人格が融合した状態の今、『彼女』の残存魔力は結構危うい。
人格再分離の後、『サキュバス』の側の魔力自体は低いまま。『蘭』の魔力はゼロになる。
『蘭』は、魔力の消費もゼロになるから問題ない。
だが、『サキュバス』は日常的に魔力が必須。何もしなければ、人格崩壊の危機は続く。
しばらく意識不明になる見込みの『サキュバス』を、男性の誰かが、抱かねばならなかった。
では、誰が『サキュバス』を抱くことになるのか?
人格再分離の魔術では、召喚者は多大な魔力を消費する。
仮に術式にトラブルが起きてしまえば、魔力欠乏の障害が起きるギリギリのところまで魔力が必要になるだろう。
術が順調に済んだとしても、どこかで男性を攫って調達するほどの魔力を残すのはかなり厳しい。
だとすると、魔術を弄して、誰かを洗脳し『彼女』と交わらせるよりは、
事情をすべて知っており、強く信頼されている忠実な執事(性別:男性)に、任せる、となるのが、当然の帰結であった。
『彼女』も執事をまぁ信頼していて、あるじから提案されても抵抗は無く。
見ての通り、執事の方が、延々悩み続けることになったのだが。
771 : ◆oJG7c/xJmM - 2014/03/15 15:23:29 v8QdRZbA 668/754今日の投稿は、できるとすれば21時~21時半くらいです。
その時間帯に投稿がなければ、今日はお休みということでお願いします。
↓1 中学3年生女子の髪型や容姿を考えてください。あまりにも不自然なら弾きます。
↓2 誰得な話ですが、執事とサキュバスの絡み(性的な方)の描写って必要でしょうか?
要らない・キンクリ・ねっとりの3択でどうぞ。
なお作者はエロシーンをこれまで書いたことありませんので、期待はしないでください。
772 : 以下、名... - 2014/03/15 18:24:32 /tApeiGQ 669/754>>1乙です!
黒髪短髪、身長は中学生の平均くらい。スポーツ少女って感じの見た目。
773 : ◆oJG7c/xJmM - 2014/03/16 18:03:02 oIqNjCSQ 670/754>>722 レスありがとうございます。
今日18時半に一度投下します。
↓1 誰得な話ですが、執事とサキュバスの絡み(性的な方)の描写って必要でしょうか?
要らない・キンクリ・ねっとりの3択でどうぞ。
なお作者はエロシーンをこれまで書いたことありませんので、期待はしないでください。
774 : ◆oJG7c/xJmM - 2014/03/16 18:03:47 oIqNjCSQ 671/754レス番訂正。すいませんorz
>>772 レスありがとうございます。
今日18時半に一度投下します。
↓1 誰得な話ですが、執事とサキュバスの絡み(性的な方)の描写って必要でしょうか?
要らない・キンクリ・ねっとりの3択でどうぞ。
なお作者はエロシーンをこれまで書いたことありませんので、期待はしないでください。
午後7時15分 都内 とある洞窟
召喚者「お疲れ様。……ちゃんと準備は出来ているようね」
きっかり約束通りの時刻に、あるじは、少女の身体を背負って、この洞窟に現れた。
あるじはいつも通り、仮面にローブ姿。
一方、背負われている方は、意識が有るようには見えないパジャマ姿の少女であり、仮面は無く、目隠しの布を巻いていた。
意識が無いのは当然だった。誘拐した、江川 沙希(15歳)の身体そのものなのだ。
蘭?「『自分』に関する事ですから。ちゃんとしますとも」
召喚者「それもそうね」
執事「……お嬢様、運びましょう」
召喚者「お願い」
何を、どこに運ぶ、とはわざわざ言わない。見ればわかる当たり前の事だから。
蘭?「あ、手伝います」
運ぶのは、あるじが背負って持って来た、『サキュバス』のための新しい身体。
運び先は床に描いた魔術陣の上。描いたばかりの線を踏まないよう、慎重に。
そうして陣の中央に置かれた沙希の身体は、一見すると平均的な体格の15歳の女の子だった。
短めの黒髪で、中学3年のスポーツ少女にしか見えない。
自宅で自殺を図り、それから殺害され、身体は連れ出され、『サキュバス』の器になるため魔術的な様々な細工を施された、
……なんてこと、予備知識無しには、誰も思い至るまい。
召喚者「……ところで、今日の夕飯は、一応食べはしたのよね?」
蘭?「ゼリー飲料、1袋だけでしたけど。6時半頃に。
術式の最中に吐いたら困るから、本格的には食べない。……そうでしたよね?」
召喚者「ええ」
蘭?「そういえば、今日の書き込みの後、反応はどうでした?」
召喚者「ネットは結構騒然としていたわ。TVも、貴女の書き込みを丸々引用して、報道してたみたい。
『普段人が居ない場所で、今夜異常に光っている場所が有れば、近寄らずに警察に通報を』って、有識者がコメントしてたわ。
警察からの公式の声明は、まだ無かったけど。……私が家を出た時点ではね」
蘭?「警察、……公式で声明を出さなくても、TV局に報道するように要請したのかもしれませんね」
召喚者「その可能性は、あるでしょうね。
あの書き込み、どう読んでも最初の部分は世間一般向けの注意書きですものね(※作者註 >>758)
『通りすがりの一般人を廃人にする訳にはいかない』って事、……その点だけは、世論も、警視庁も、同意するでしょうから」
蘭?「ですね……
……さて、後は本当に『魔力を流すだけ』ですか」
召喚者「…………
ええ、そうね」
数十秒、誰もしゃべらない沈黙があって、それから『彼女』が口を開いた。
蘭?「……あるじも、執事さんも。ふたりとも、本当に感謝してるんですよ、『サキュバス』は。
初っ端の召喚がミスであったとしても、そうやって喚(よ)ばれたからこそ、命が救われたんです。
喚んでから、いつも『サキュバス』のために、全力を尽くそうとして下さいました。
今行う術が、たとえ失敗しても、『サキュバス』は、お二人には恨みようが有りません。……『サキュバス』の、本心です」
召喚者「……では、『蘭』は?」
蘭?「……それ、は、……
本当に、大っ嫌い!! 見たくもない事見させられて、知らされて!! それから、やりたくもない決断まで……!!」
執事「!?」
豹変し、崩れ落ちた『蘭』に向けて、あるじは、出来うる限り静かに告げた。
召喚者「それは、そうでしょうね。
だから忘れてしまいましょうか。見たことも、知ったことも、決断したことも、全て、これからの術式で。
『貴女』は、忘れてしまったほうが良いと思うから」
『蘭』が泣き止み、魔術が始められるようになるまで、それから5分掛かった。
780 : ◆oJG7c/xJmM - 2014/03/16 18:51:26 oIqNjCSQ 677/754
投稿は以上です。
今日は作者が21時頃に寝なければなりません。20時半までに安価にレスが有れば、今晩中にまた投稿します。
↓1 魔術を行っている洞窟は、警察に発見されたのでしょうか? 『発見された』『気付かれなかった』の2択でお願いします。
↓2 ↑が『発見された』の場合、警察はどう対応したのでしょうか?
『洞窟に踏み込もうとした』『見守った』『その他(要記載)』の3択でお願いします。
781 : 以下、名... - 2014/03/17 06:41:25 Me05nzio 678/754発見された
782 : ◆oJG7c/xJmM - 2014/03/17 18:06:01 5QBesGzA 679/754こんにちは、作者です。
今日は21時頃に投稿します。
↓1 洞窟を見つけた警察は、どう対応したのでしょうか?
『洞窟に踏み込もうとした』『見守った』『その他(要記載)』の3択でお願いします。
783 : 以下、名... - 2014/03/17 20:10:42 fXkZfg9I 680/754見守った
午後8時30分 警視庁 小田切刑事部長の部屋
小田切「……妙な洞窟が見つかった、だと?」
警部N「はい。都内の、キャンプ場の奥の、……この場所なのですが」
広げた地図の上、見たところ結構な山奥の一か所に、×印が有った。
警部N「『洞窟が不自然に光っている』と、キャンプ場の客から通報が有ったようです。
確かに中が光っているのを、出動した者が確認しました」
小田切「……これまで、……遺体の窃盗等、割と東京中心に動いているのは分かっていたからな。
都内のキャンプ場だったとしても、不自然ではないが……
(……『念入りに、人が来る可能性を極力排除した』とか書いてたが、……見つかっているじゃないか)
現場は、今、どうなっている?」
警部N「今のところ、光を直視しないしないようにしつつ、洞窟の外で待機させています。
洞窟の出入り口がふたつあるらしく、もちろん両方とも監視していますが」
小田切「では、別途動きが有るまでそのまま待機だ。……絶対に、洞窟の中には手を出すな!」
午後8時30分 都内 とある洞窟
召喚者「“彼女を喚んだ者として、かの地を統べる竜神に、私は願います
彼女の身体が、誰かに殺されませんように
彼女の身体が、意に反して閉じ込められませんように”」
執事「……」
目が眩むほどの光が、魔力を帯び形を得、渦となって吹き荒れる空間の中。
自身を魔術的に防護して、身を低くすれば問題ないと知っていたから、召喚者と執事は地面に這いつくばって耐えていた。
召喚者「“彼女に向けられる言葉が、謝罪の求めでありませんように
何より、彼女に対して、『誓うこと』が強制されませんように”」
魂に刻み込んだと言えるほど、言い馴れた呪文は、正確に繰り返すほど成功率が上がる。
砂が口の中に飛んでこようが、風が目を打とうが、とにかく正しく集中して詠唱を繰り返すことが最善。
目の前、陣の真ん中で眠る『ふたり』のためには、そんな努力をするしか道は無いのだ。
召喚者「“ひとつ目の願いは、私が何より、彼女が天寿を全うする形で生きることを願うからです
ふたつ目の願いは、私が、彼女の身体の自由を願うからです
みっつ目の願いは、謝罪を求められることが、彼女の身体を壊すと知っているからです
最後の願いは、彼女の『誓い』は、竜神か契約者にのみ捧げられるものだと知っているからです
竜神よ、どうか我が願いと魔力を受け入れたまえ”」
融合していた人格が、弄られ、動いていく様子が、召喚者には分かっていた。
あと少しすれば、魔力を与えられ動き始めた術式が勝手に動くようになり、
そうなると詠唱が不要になる一方で、暴発・爆発のリスクが生じる段階に移る、ということも。
そして、詠唱が不要になる、その段階は、予想より少しだけ早く来た。
召喚者「ァ、ハ……」
執事「……!?」
訝しそうにこちらを見る執事に、彼女は『心配無い』と、眼で答える。
引き続きとんでもない環境であり続ける洞窟の中、これから推定数時間、延々と陣を見つめ続けることになっている。
……今へばったら、どうしようもない。
術が暴走し、万が一爆発してしまえば、無論傍にいる召喚者も執事も、ただでは済まない。
だが、術の途中で退避するよりは、術者が傍に居続けたほうが成功率は上がる。
ならば、ここに居続ける、というのが、召喚者の考えであり、その召喚者に仕える執事の考え方だった。
788 : ◆oJG7c/xJmM - 2014/03/17 22:20:19 HFtZLWhA 685/754今日の投稿は以上です。
予告より遅くなり本当に申し訳ありません。最悪なタイミングで、親に仕事を振られておりました。
なお、明日の投稿はお休みします。
↓1~3 多数決 ズバリ、人格再分離の魔術は成功したのでしょうか? 『完全に成功した』『半端に成功した』『失敗した』の3択でお願いします。
789 : 以下、名... - 2014/03/17 22:23:45 Me05nzio 686/754完全に成功した
790 : 以下、名... - 2014/03/18 07:49:08 0OWhpjT. 687/754完全に成功した
791 : ◆oJG7c/xJmM - 2014/03/19 20:10:26 pAJFjGWg 688/754>>789-790
どうもです。では、『完全に成功した』で話を進めます。
今日は21時代に投稿予定です。
10月6日 午前3時30分 都内 とある洞窟
立ち上がっても問題ないほどに風が穏やかになり、光が収束したのは、術の開始から8時間以上経ってからだった。
召喚者「(パンパン)……上手く、いった、かしら?」
執事「どうでしょうか……」
ローブの土埃をはたき落としながら、小声で呟きつつ、陣の中央を見る。
半ば灰となって消えかけている魔術陣ど真ん中、手を握り合い、意識無く横たわっている、パジャマ姿の『ふたり』がいる。
召喚者「(ふたりのどちらにも、特段異常は無い、ようね……)」
見た目の肉体に異常は無かった。
『魔女』として見る限り、魂の方にも『大きな異常』は無い。
――細かい部分は意識が回復しないと分からないが、人格を弄っているため、覚醒は、しばらく先になるはずだ。
そんな風に考えを巡らせた、そんな時だった。
警官P「誰かいませんかー!?」
召喚者&執事「「!?」」
感慨をぶち壊す声だった。
完全に気付いていなかった、第三者の声。
ふたりとも驚き、一瞬で我に返り、……だが外に人が来る事自体は想定はしていたから、そこからの動きは早かった。
召喚者「“かの地の竜神よ、我は願う、……この場に光在れ!!”」
警官P「ヒッ!?」
最低限の魔術で編んだ、見た目の勢いだけは半端ない光球(但し無害)が、超特急で声の方に飛んでいく。
声の主に当たろうが当たるまいが、牽制にはなるはずだ。特に、こちらの書き込みを読んだ人間ならば。
執事「転移を!!」
召喚者「ええ……!! すぐ貴方の部屋に連れてって!!」
執事は『サキュバス』を抱え上げていた。彼らをまず『転移』で屋敷まで飛ばす。
次いで残った『蘭』を召喚者が思い切り抱き寄せ、心の中で20秒数えてから(前の術の直後に転移すると事故を起こす)、
今度は召喚者自身が転移。
転移が完了する一瞬前、『待て』の怒声と共に、青い服の誰かが洞窟に入り込んだのが見えた気がした。
結局、姿を碌に確かめずに屋敷に逃げ込んだ訳だが、……後からニュースを見るに、制服姿の警官だったのだろう。
795 : ◆oJG7c/xJmM - 2014/03/19 22:05:42 pAJFjGWg 692/754今日の投稿は以上です。続きは明日になります。
↓1 誰得な話ですが、執事とサキュバスの絡み(性的な方)の描写って必要でしょうか?
要らない・キンクリ・ねっとりの3択でどうぞ。
796 : ◆oJG7c/xJmM - 2014/03/20 21:19:54 M/Zi5RJo 693/754こんばんは、作者です。
グダりすぎて、さすがに書き込む人が居なくなったみたいですね……
本日21時45分までにレスがない場合は、これから安価無しで進めていきます。
↓1 執事とサキュバスの絡み(性的な方)の描写って必要でしょうか?
要らない・キンクリ・ねっとりの3択でどうぞ。
午前3時32分 召喚者の屋敷 地下室
『蘭』と一緒の転移は、辛うじて誰にも妨害されずに成功した。
転移した先、自分の屋敷の地下室で、目を開ける。
部屋に行くように指示した執事が、何故かまだ『サキュバス』を抱きかかえて、ここに居た。
執事「大丈夫ですか、あか……」
召喚者「シッ!!」
『紅子様』と言いかけた執事に、慌てて指を立てて見せ、黙らせる。
そのまま立てた指を隣の部屋へ向けたら、意図を察した執事は青ざめ、無言で深々と礼をした。
隣の部屋では、元太が寝ている。起きている可能性は低いが、万が一起きていて実名を聞かれたりしたら、途轍もなく不味い。
召喚者「……とっとと『その子』を貴方の部屋に連れて行きなさい! 指示した通りに!」
執事「は……!!」
怒りの感情がはっきりとした囁き声に打たれ、執事は『サキュバス』を抱えたまま部屋を飛び出していく。
執事は、流石に、事前の指示を忘れるほど愚かではない。
これから『彼女』相手に『何』をするのか、こうやって命令したからには、成し遂げるはずだ。
召喚者「(これで、『サキュバス』はひとまず片付いた。……わたしが担当するのは、『蘭』ね)」
床の上、意識のないまま『蘭』が寝ている。
これから、隣の部屋のベッドまで連れて行き、寝かせて、元太と同様に身体をベッドに縛り付ける、という作業を、
召喚者はひとりで行う手筈になっていた。
799 : ◆oJG7c/xJmM - 2014/03/20 22:49:29 M/Zi5RJo 696/754今日の投稿は以上です。
これからは安価無しで進めます。リクエストがあったら安価形式は再開するかもしれません。
午前3時40分 召喚者の屋敷 執事の部屋
執事「は、はぁ……、ハァ……」
人ひとり抱えて階段を上るのは、ちょっとした重労働だった。
執事は、肩で息をしながら、自身のベッドに寝かせた『サキュバス』を見下ろす。
これから『何』をしなければならないのか、主人から命令されていたし、『彼女』自身から求められていると分かっていても、
なぜ『その行為』が求められているのかが分かっていても、気まずさは、ある。
執事「(私ごときが、惚れられたわけではない。……信頼はされているのでしょうが。
この方が、『サキュバス』が、紅子様を信頼していたから。
私が、その紅子様に仕える者であるから、同じように信頼されて……)」
洞窟で、『彼女』と交わした会話を思う。
――怖いですか? 意識を無くした15歳を抱くのは
――加減が分からないなら、どうか丁寧にお願いします
覚悟を決めるほか、無いのだと、思う。
仮面に隠した自分の顔がどんなに醜かろうと、『彼女』と自分の間にどれほど年齢差が有ろうと、そんな事はあまり関係なく、
ただ、『彼女』を生かす道具であることが求められているのだから。
執事「よろしく、お願いします……」
意識が無いのは分かっていても、願いの通り丁寧に。
『彼女』の、パジャマのボタンに手を掛けた。
午前9時32分 召喚者の屋敷 執事の部屋
??「んー…… ぅん……」
執事の腕の中、江川 沙希の身体を得た『彼女』が覚醒したのは、まだ朝と言える時間帯だった。
執事「起きられましたか。……『サキュバス』様」
??「ん、……しつじさん。いま、なんにちの、なんじですか?」
執事「10月6日の、朝です。予想以上に早い御目覚めですね」
??「……そりゃー」
起き抜けの、本当に眠そうな顔で、『彼女』は緩やかに笑った。
??「じゅつは、かんぺきに、できてて…… まりょくも、からだのなかで、グルグル、まわってますからー
……いま、すごく、ねむいです、けど」
執事「無理なさらないほうがよろしいですよ。
もう少し寝ましょうか。……失礼ながら、呂律が回っていないようですから」
??「ええ。そうしますー。
しつじさんも、ありがとーございます」
執事「いえ、主人の御命令に従ったまで、ですから」
執事本人にとっては当たり前の返答をしたら、思いがけない言葉が『彼女』の口から出た。
??「おきたら、つながってたんだから、すごくうれしいんですよ? 『わたし』にとっては……」
執事「……ぇ?」
執事の反応を見た『彼女』は、またニヘニヘと笑い、再度眠りの海へ沈んでいく。
どうすれば良いのか、執事は十数秒ほど考えて、
……とりあえず、『彼女』の髪を優しく撫でてから、今もなお自身と『繋がったまま』の『彼女』を、抱き寄せた。
再度『彼女』が覚醒したのは、――それは本格的な覚醒と言っても良い物だったが、その日の昼前だった。
本来の予想では、最低でも丸1日眠り続けると予想していたから、想定以上に早い覚醒だったことになる。
午前10時 警視庁 小田切刑事部長の部屋
洞窟内で撮った写真が、何枚も、机の上に広げられていた。
照明に晒された地面の上、丸い『何か』が描かれている、それを写した物だ。
半ば砂となって判然し難いが、白い塗料で円の中に文字らしい物が記された魔術の陣の、その痕跡は、確かに読み取れる。
警部N「3時30分に踏み込んだ直後の段階で、中の線も、線を引いていない地面も、かなりの早さで砂に変わり始めていたようです。
予め待機していた鑑識が、慌ててシャッターを切ったり、ビデオを撮ったりしたようですが、全て砂となるのに5分掛からず。
……今ではどこに陣を描いたのか、全く分からない状況とのことです」
小田切「犯人の身元に繋がりそうな物は、採取できなかったのか?」
警部N「はい。
外に居た者が踏み込む前に、誰かの会話らしい声を聞いていたのですが、その声の録音は出来ませんでした。
洞窟の外に録音機材を置いていましたが、その機材の中身まで、開けてみたら完全に砂になっていた、と」
小田切「……ほう」
警部N「洞窟内の地面のほうでも、踏み込んだすぐ後に、髪の毛らしいものを何本か見つけはしたものの、
……こちらも、採集するなり砂に変わって崩れてしまった、とのことです」
小田切「それでは、証拠にはならないだろう。
かなり困難な事だろうが、最低でも今日一日は、血眼になってでも洞窟を調べ上げてくれ。
まだ、砂になっていない物が残っているかもしれん。
駄目で元々でも、そうしないと、身元に繋がる証拠を得るという望みは捨てきれないだろうからな、……上の方々が」
警部N「……ハッ」
小田切「それに、インターネットで場所を特定されて、野次馬が押しかけているんだろう?
内実共に、徹底的に調べ上げておかないといかんだろう、……結果的に、徒労である恐れが強くても、だ」
洞窟を見つけて通報したのは、大学生のグループだった。
彼らの大学では夏休み最後の土曜日を、キャンプで締めくくろうとしていたサークル仲間、とのことだ。
今の時代の若者らしい話だが、光る洞窟を見つけた彼らは、通報と並行して、色々と撮って、インターネットで呟いて、大騒ぎをしており、
警察が把握した段階で、もはや削除要請をしても意味が無いほど情報が拡散されていた。
おまけに、洞窟は確かに普段は人が通らない山奥に有ったが、付近の、崖の上を通る公道から見下ろせる位置でもあった。
今現在、ブルーシートで覆った洞窟の出入り口、その中に捜査員が出入りしている様子を、
ネットで位置を知った野次馬が、公道の歩道から、まるでバードウォッチングのように見学している状況だという。
警部N「それで、……粟倉弁護士には、どうされますか?」
小田切「ネットのニュースを見た弁護士が、今朝になって連絡を入れてきたんだったな?」
警部N「はい」
小田切「――『現場の洞窟で、魔術の陣の痕跡の現物を見せてほしい。それが出来ないなら、陣を撮った写真を見せてほしい。
見せてくれるのなら、『サキュバス』が出した暗号の、その答えを教えることを、考えてもいい』、……か。
『答えを教える』ではなく、『教えることを考えてもいい』だろう?」
警部N「……はい。
『見れば、術が成功したのか失敗したのか、分かるかもしれないから』と」
小田切「現場の地面が分からないほど砂まみれなら、連れて行っても意味は無い。
……実際に当人の依頼に従うとするなら、写真を見せるしか無いだろうな」
9月5日に突然態度を一変させ、警察に協力しなくなり(※作者註 >>678-679)、それ以後の度重なる捜査協力要請に対し、
『考えさせてくれ』としか言わなくなった弁護士は、今から30分ほど前、突然捜査本部に連絡を入れてきて、要求を突き付けてきた。
捜査本部側は、当たり前の話だが、『上と協議させてください』とその場での即答を避けており、
上=刑事部長はじめ警視庁幹部、の判断を仰ぐために、こうやって机上にその写真が広げられることになる。
小田切「この事件は、総監だけでなく、もっと上が気にかけている事案だ。
そういった方々が反対するならそれまでだが、……見せるのもやむを得んだろう。
……あくまで個人的な判断だが、 私は、……そう思う」
警部N「そう、ですか」
小田切「(相談というよりは、……私が、写真を見せるように総監を誘導する形になるかもしれないな)
今の段階では、他に手が無い。
無論、写真を見せるとすれば、写真の流出は絶対禁止だと念を押すことになるだろうが、な」
正午 召喚者の屋敷 もうひとつの地下室
お昼時、いつものように昼ご飯を持って来た『あるじ』、……だけでなく、
元太にとっては全くの『初対面』の、パジャマ姿の女性も部屋に入ってきて、元太の顔を見るなり、笑顔でこう言った。
??「こんにちはー、元太くん。一日ぶりだねぇ」
元太「……あんた、誰だ?」
本当に、見覚えがないのだ。
この部屋に誘拐されて以来、会った人間は、仮面の『あるじ』と、『蘭姉ちゃん』の姿だけど何か雰囲気が違う『姉ちゃん』だけ。
こんなショートカットの人、会った覚えは全くない。
??「そっかー、……そんな反応になるよねぇ。
――『よく説明できない理由で君をここに閉じ込めてるけど、君とのお話は結構楽しかったよ。
電気ウナギの水槽に落ちた思い出話とか、他には、電気ウナギの水槽に落ちた思い出話とか』(※作者註 >>747)」
元太「……え!? どういうことだ!?」
さすがに、前の日に自分がツッコミを入れたネタくらい、分かる。
相手がボケた、その言い方はきのうの『姉ちゃん』の喋り方そっくりだが、だがその『姉ちゃん』は、このショートカットの人ではない。
『姉ちゃん』は夜中、元太が寝ている時間に帰ってきたそうで、元太の隣のベッドで今も寝続けているのだ。
それも、両手両足に枷を付けられ、おまけにアイマスクまで被せられた状態で。
足枷だけの元太とは偉い違いだが、『理由があるから決して触るな』と『あるじ』から強く言い渡されているから、元太は『姉ちゃん』には触れてない。
??「どういうことか、知りたいみたいだね?」
元太「知りたい! 当たり前だろ!?」
召喚者「……じゃあ、教えましょう。これまであなたに説明できなかったことが、ようやく説明できるようになったから。
まだ、全部は教えてあげられないけれど、……昼ご飯を食べてから、ある程度の事は教えてあげる。
はい、あなたの、お昼ご飯」
元太「分かった! いっただっきまーす!」
??「……あー ……のど、詰まらせたりしないようにね」
女性が、若干引いた様子で注意を告げるくらいには、この時の元太のスピードは凄まじかったのだろう。
午後12時6分 召喚者の屋敷 もうひとつの地下室
元太「さぁ! 食べ終わったぞ! 早く、話してくれ!」
完食にわずか5分。トレイをあるじに付きつけて話をせかす様子に、女性は苦笑した。
パジャマ姿の彼女は、元太の真横に来るようにベッドに腰掛け、話し始める。
??「まず、ね。信じられないことかもしれないけど、このあるじは、魔力を持ってる」
元太「魔力?」
視線が、あるじに向いた。
腕を組んで壁際に立っている。仮面だから表情は知れないが、2人の会話に入る意思はないようだ。
??「うん。この世界では、滅多にいないんだけど、……正しい手順を踏めば、ヒトの魂を弄って、どうこうすることが出来るんだよ。
あるじはそう言う人だ、……って、そのことを、頭に入れてから、話を聞いてほしいかな」
元太「おう」
更に視線が動く。今度は、ベッドで拘束された状態で寝ている、『姉ちゃん』へ。
??「……それと、もうひとつ。
そこで眠ってる『女性』には、どこにも落ち度はないよ。大人に怒られるようなことも、何ひとつしてない」
元太「……?」
??「元太くん、その『女性』の名前、知っているね? 言ってみて?」
元太「『蘭姉ちゃん』」
??「そうだけど、……えーっと、正式な名前は? つまり、上の名前と下の名前を繋げて言ったら…… どうなるかな?」
元太「『毛利』、……『蘭』、だよな? ふだん呼ばねぇけど」
??「そう、『毛利 蘭』が正解だね。
……さて、ここからが本題。
8月の16日に君がここに誘拐されてからずっと、その『毛利 蘭』の様子がおかしいとは思わなかった?」
元太「おう! 思ってたぞ。……この人、『蘭姉ちゃん』だけど何か違う、って!」
??「だから君はここで、『蘭姉ちゃん』じゃなく、『姉ちゃん』って呼び続けたんだよね?」
元太「ああ!」
??「様子が違うのはね、当たり前だったんだよ。
これまで詳しく説明できていなかったけれど、8月6日から今朝まで、『毛利 蘭』の身体には、『ふたり』の魂が入っていた」
元太「……『ふたり』?」
??「ひとりの身体には、ひとりぶんの魂が入る。
つまり、魂は、ひとりの身体に、それぞれひとつ。それは分かるかな?」
元太「うん」
??「でも、今朝までの『毛利 蘭』の身体には、『ふたり』の魂が入っていた。
元々の『毛利 蘭』の魂と、『もうひとり』の魂が、ね。
このままだと、『ふたり』の魂も、『ひとり』の身体も壊れてしまうようだったから、……だから、魂を分けたの。
『毛利 蘭』の魂は、元の『毛利 蘭』の身体の中に居続けるように、それから」
女性は、彼女自身の手を心臓に当てた。
??「……分かれた『もうひとり』の魂は、新しく作った『もうひとり』のための身体に。
魂を分けたのは、きのうの夜から今朝にかけてで、分けるのが上手く出来たから、
……今、『わたし』はこうやって生きて、元太くんと話してる」
元太「じゃあ『おまえ』の魂は、今朝まで、『蘭姉ちゃん』の身体の中に居た?」
??「そう」
元太「そもそも、何で、そうなったんだ? 何で、そんな形になったんだ?」
??「それは、……どうして『ふたり』の魂が、『毛利 蘭』の身体に居続けることになったのか、理由を知りたいということ?」
元太「おう!」
??「……『わたし』は、ここじゃない、別の世界の生まれだよ。
故郷の世界で生まれ育って、当然、生まれつきの『わたし』の身体が、元々あった。
詳しい事は大人に聞いてほしいんだけど、事故みたいな形で、『わたし』、夏にこの世界にやってきたの。
故郷に戻れなくて、ここに居続けるしかなくて、……世界が違うせいか、『わたし』の身体、すぐに壊れそうになった」
元太「世界が違うと、身体が壊れる?」
??「『わたし』の場合は、そうだったね。
……でね、放っておくと、身体と一緒に魂も壊れてしまう。『自分』の生命が無くなってしまう。
完全に身体が壊れてしまう前に、あるじの助けをもらって、『わたし』の魂を、『別の誰か』の身体の中に移すしかなくて、
……その『別の誰か』が『毛利 蘭』で、魂を移す魔術には犠牲も必要だったけど、それが成功したのが、8月の6日」
元太「……俺、『お前』の名前、知ってるかもしれない。ニュースで聞いた」
??「言ってごらん、たぶん当たりだよ。
何言われても、怒ったりはしないから」
元太「『サキュバス』、……牢屋から人を誘拐して、殺した奴」
??「正解。魂を移す魔術に、どうしても、ね、誰かをそうしなければいけなかったの。
誰かを殺さないと生きていけない、そんな風になってから、悩んで、悩んで、……生きるって、決めて、殺した」
元太「……」
??「魔術は成功したけど、『ひとり』の身体に『ふたり』の魂を抱え込むのは、やっぱり無理だった。
無理があると分かってから、『蘭』の身体で、病院を抜け出してあるじに助けを求めて、途中で君を誘拐したりしながら、
新しい『わたし』の身体を作るべく、今朝まで頑張っていたんだ、……っていうのが、これまでの流れ」
元太「なんで、途中で俺が誘拐されるんだ?」
至極当然の疑問に『サキュバス』が応えるより前、あるじが急に口を挟んできた。
召喚者「それは、言えないわね。後で家に帰すから、それから大人の人に聞きなさい」
元太「……ぇえ?」
??「そうですね、それが良いでしょう」
『サキュバス』も、賛同しながら立ち上がる。
元太「なぁ、最後にひとつだけ質問させてくれ! 『蘭姉ちゃん』は起きるのか?」
??「起きるよ、遅くとも明後日くらいには。早ければ、今日の夜かな。
『蘭』が目覚めたら、……目覚めた『蘭』は、8月6日から今までの記憶を全部なくしてる、はずだよ。
君に『蘭』が何か質問してきたたら、『ややこしい事情が有ってここに誘拐されてる』って答えておいて」
元太「えっ?」
??「君、ややこしい話をしゃべるの、上手くないでしょ? 下手な説明で、『蘭』が混乱すると困るじゃないの」
もっともな指摘だ。頭の出来がさほど良くない、ということに関して、元太自身にも自覚がある。
元太「……はぁーい」
午後4時 都内 某弁護士事務所
警視庁の捜査は、行き詰まっていた。
『写真を見せてほしい』という要望だけでなく、『警視庁の捜査員の側が出向いてほしい』という注文が、共に叶えられ、
粟倉弁護士が立てた代理人(=別の弁護士)の事務所に、その日のうちに捜査員が行く、くらいには。
警部N「こちらが、現場の写真になります」
洞窟の地面に描かれた魔術の陣の写真が、10枚、机の上に置かれる。
粟倉「ありがとうございます。……拝見させて頂きます」
刑事O「ご覧になって、分かる事はありませんか?」
粟倉「一目見て分かるのは、魔術の流派が違うという事と、……でも、文字は、読み取れる物は、有りはしますね」
刑事L「!! 分かる物だけ、教えて頂けませんか?」
粟倉「ここの世界の漢字と一緒で、1文字1文字が意味を持つ、……表意文字って言いますよね、そういう文字なんです。
これが『願い』で、これが『身体』、たぶんこれが『魂』、難しいけど、……これは『力』でしょうか?
残りは、ちょっと、……無理ですね。消え方がひどいです」
警部N「(文字らしい部分、ほとんどの字が、半分以上形が崩れてるからなぁ……)
そうですか。文字は、分かる種類の物ではあるんですね?」
粟倉「はい。……日常に使う物ではないですけど、あちらの世界の、神話や魔術の関係で使う文字のはずです。
どういう形で何を意味する文字になるのか、どんな時に使うべきなのか、かなり厳密に定められていました。
神官や魔術に関係する職に就きたいなら、大概の流派で、頭に叩き込まれると思います」
刑事L「術が成功したかどうかというのは、分かりませんか?
捜査員が踏み込んだ時、何も書いてない部分でも、地面がかなりの早さで砂になっていったそうなんです」
粟倉「……砂になるというのは、魔術が終わって、魔力が抜けていった証ではあるんでしょう。
でも、それは必ずしも、結果の成功ではないです。
申し訳ないですけれど、成功かどうか判断は付きかねます」
刑事O「どういうことですか?」
粟倉「例えば、魔力不足で術が途中で終わって、結果が半端に終わっても、成功したときと同じく、地面が砂になるんです。
……あくまで私の習った流派での話ですから、『サキュバス』や召喚者が使う術でもそうなのかも、分かりませんけど。
ロクに力になれずにすいません、写真を見せて頂いたのに」
警部N「いえ……、その件に関してはお気になさらずに、ですが……」
写真を見せてこの弁護士から告げられたのは、確かにそこまで重要と言える情報ではない。
だが、警察の方には、もう一つ別な用事がある。もっと大切な情報を得る、という用事が。
それを叶えるべく、警部は踏み込んだ。
警部N「先生、こうやって写真をお見せしましたから、『サキュバス』の暗号の答え、見せて頂けるのですよね?」
粟倉「……もちろん、お教えします。答えは、こちらです」
この時は、この弁護士は素直だった。
暗号の解を記した紙を、机に広げて見せたのだ。
倒れ伏した青年『ゲノムヘリター』の傍らで、巫女は言う。
「竜よ、『ミスティックアーク』の竜『モストフロンデス』よ。
『カルルバン』の巫女である『アポリア』が呼び掛けます。私の声にどうか答えてください」
竜は応える。
「答えよう。但し、お前の問いかけにではなく、その男の熱意のために。
流石は『ベータミゼット』の子孫だ。『イルンクス』の開祖の直系だけあって、
その曲は私をこの地に縛り付けおった」
文字A→ケ 文字D→シ 文字J→ツ 文字B→ン 文字I→サ 文字C→バ 文字G→カ 文字F→キ
文字E→エ 文字K→ソ 文字L→バ 文字H→イ
『ABCDEF GHIJKL』の柱→『ケンバシエキ カイサツソバ』の柱→『賢橋駅 改札そば』の柱
粟倉「私の方で調べると、『ケンバシ』という名前の駅は、日本には東都地下鉄の賢橋駅しかないようです。
実際に行ってみましたが、改札のそばにある柱は1本しか見当たりませんでした」
警部N「……なるほど、地下鉄の駅の柱、ですか。
暗号を解いたこの紙、コピーを頂いてもよろしいですか?」
粟倉「コピーでなくとも、現物を差し上げますよ。
いつか、『サキュバス』が自首してくると、良いですね」
……『その子の自首を願うなら、捜査に素直に協力してくださいよ』と、そう言いたくなる気持ちを、この警部は飲み込んで、
もう少し柔らかい言葉に変えて告げた。
警部N「……ええ。その時は、ぜひとも御協力をお願いします」
重要な事件で、手掛かりになる情報を持つ人が1人しかいなくて、おまけにその人は元法学者で、現弁護士。
そんな人が途中で捜査への協力態度を変化させたから、――よく分からないその変化に、捜査本部は振り回されたのだ。
ttp://hide14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/************/
【被疑者】拘置所被告殺人・考察&まとめスレ368【分離中?】
106:◆MsSuccubus [sage]:20XX/10/17(木) 16:04:32:54 ID:PPPPPPPP
召喚者です。
サキュバスの自首の日時が固まりました。明日の午後5時です。
場所は、暗号で指定していた場所で。
その場所に、警察の誰に立ってほしいのかも、以前の書き込みに書いた通りです。
魔術は完璧に終わりました。
女子高生も、サキュバスも、生きています。
10月18日 午後2時45分 帝丹小学校 下駄箱
周囲を見渡して、誰も居ない環境だと確認してから、灰原が話しかけてきた。
哀「今日一日、心ここにあらずという感じだったわね。工藤君」
コナン「仕方ないだろ? 今日なんだから」
何が、とは言わない。主語が抜けても、何の話題か意味は通じるし、そもそも何の話題かを言うべきでない事だから。
哀「……そうね。今日は、事務所で待機するの?」
コナン「ああ、そうするしかないんだ。おっちゃんも、俺も、妃弁護士も、場所を示す暗号が、解けていないからな」
哀「警察は、解けているのかしら?」
コナン「……おそらく、解けてるんじゃないのか? 教えてはくれないけど、な」
警察のその態度、理解はできるが、納得はしたくない。ため息を吐きながら、下駄箱を開ける。
哀「工藤君、ちょっと、……これ、見て」
コナン「……!? 何だ、この手紙!!」
ttp://hide14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/************/
【被疑者】拘置所被告殺人・考察&まとめスレ401【自首?】
506:◆MsSuccubus [sage]:20XX/10/18(金) 16:42:58:57 ID:QQQQQQQQ
こんにちは。召喚者です。
サキュバスが自首する前に、2点、書き込まねばいけないことが出来ました。
1点目は、私達が誘拐していた男の子の解放と、盗んだ遺体のうち使わなかった部分の返還についてです。
先ほど、ある道府県警の本部長の自宅の庭に転移して、その子を寝かせ、遺体を置いておきました。
庭から見る限り、本部長宅は留守だったようです。
ここにこうやって書き込んだ以上、即座に見つかると信じています。保護をお願いします。
男の子はおそらく一昼夜は眠り続けると思いますが、健康に影響はないと考えます。
2点目は、今日自首するサキュバスの、身体についてです。
以前書き込んだように、定期的に誰かに抱かれないと生命に関わる身体なのですが、それ以外に注意点が有ります。
身体を作るに当たり、術の中に織り込んだ、サキュバスが生涯抱えることになる加護(あるいは呪詛)があり、
その術の後、更に私がサキュバスに与えた加護(呪詛)も有ります。
510:◆MsSuccubus [sage]:20XX/10/18(金) 16:43:18:01 ID:QQQQQQQQ
※サキュバスの、生涯消えない加護(呪詛)は、以下の通りです
1.誰かが、サキュバスを殺そうとすると、その企みは高確率で失敗します。
加護(呪詛)を乗り越えて実際に殺すと、企んだ組織や下手人が滅ぶ程度には、強く呪われます。
2.誰かが、サキュバスを意に反して閉じ込めることは困難です。
実際に閉じ込めても、拘束具や鍵が壊れます。下手をすると閉じ込めようとした組織や下手人が呪われます。
3.誰かが、サキュバスに『謝罪を求めること』は困難です。また、サキュバスが『謝罪すること』も困難です。
下手をすると求めた組織や人が呪われます。
4.誰かが、サキュバスに『誓うこと』を求めるのは困難です。また、サキュバスが『誓うこと』も困難です。
宣誓書を代筆したり、代読したりするのには問題は有りませんが、サキュバス本人は、署名も読み上げも困難です。
下手をすると求めた組織や人が呪われます。
515:◆MsSuccubus [sage]:20XX/10/18(金) 16:43:59:05 ID:QQQQQQQQ
※更に、私が与えた加護(呪詛)は、以下の通りです。これは数十年続きます。
効果が切れる前に、サキュバスに寿命が来るかもしれませんが。
1.サキュバスは、この世界に来てから、今日暗号の場所に行くまで、見聞きしたことを、
どんな形であれ他人に伝えることは出来ません。
2.サキュバスは、今日以降、留置場・拘置所・刑務所・少年院の敷地に入る事が出来ません。
無理矢理入れようとすると、入れようとした側の人や組織が呪われます。
なお、鑑別所と児童自立支援施設はこの加護(呪詛)の範囲外です。
2つ目の加護(呪詛)は、1つ目の加護(呪詛)を考え付いた時と、同時に思い付いていました。
容疑が掛かった事柄について、一切反論が封じられた相手に、当局が優しく振る舞うとは思えなかったのです。
この加護(呪詛)が有る限り、サキュバスを服役させようとすると、法務省が全滅します。
呪いを回避しようとするならば、サキュバスを児童自立支援施設に入れるか、さもなくば釈放するか、
あるいは、私を捕まえて加護(呪詛)を解かせるか、以外に選択肢はありません。
521:◆MsSuccubus [sage]:20XX/10/18(金) 16:44:18:09 ID:QQQQQQQQ
付け加えると、サキュバスを管理下に置く限り、誰も彼女を抱かずに放置する、というのも不可能です。
それは、殺す企みと同一なのですから。
私は、当然、捕まる気はありません。サキュバスと違い、自首する気もありません。
警察が捕まえるよりも前に、私が死んでしまえば、誰も解けない加護(呪詛)がサキュバスに残ることが確定します。
私の人生の結末が自死であったとしても、そんな結果が残るのならば、それは、私にとっては勝利です。
私の狙いは、最初から、サキュバスを生かすことでした。
召喚した者の義務として、喚(よ)んだ者を生かすこと。
この国の法を守るよりも、魔力を持つ者としての義務が、私にとっては重要なことなのです。
私の書き込みは以上です。
今のところ、更に書き込みをする予定は有りません。
午後4時44分 大阪市内 服部家の近くの路上
この日は、平次も和葉も、部活はせずに下校していた。
今日の午後5時に、蘭が帰って来る。
部活をするよりは、早く家に帰ってネットから情報を見たい、と、……ふたりともそう判断していたのだ。
和葉「あ、……例の掲示板に書き込みが有ったみたいやね」
和葉が、メールの着信音が鳴った携帯を開いて、言った。
平次「……何や、書き込みがあったらメールが来るようにしてたんか?」
和葉「うん。そういうサービスしてる人が居ったから、私のアドレス登録してたんよ」
平次「書き込み、俺にも見せぇ」
和葉「ちょっと待ってな、……はい」
ふたり揃って、携帯を見る。
いつもの掲示板で、確かに、犯人側がいつも使っているトリップの書き込みが有った。
和葉「…………
この書き込みの1点目、平次の家かもしれへんよ?」
平次「……俺ん家は今日、誰もおらんはずや!
確認せなあかん! 走るで!」
和葉「う、うん……」
メールに気付いた段階で、服部家まで約100mの場所まで着いていた。
残り約100m、平次は全力で走り出し、和葉はそれに必死で付いて行く。
RRRR RRRR……
家の門扉に到着したところで、平次の携帯が鳴った。
平次「親父!? 今、俺ん家の目の前や! まだ中、入ってへん!
その件やろ、……おぅ、すぐ確認する!」
和葉「ハァ、待って、……ハァハァ 平次ぃ、電話、おじさんからぁ?」
通話しつつ鍵を開けながら、平次は頷いた。
平次「ああ……、和葉もここに居るで!!」
和葉「お邪魔します!!」
鍵が開いた。敷地の中に飛び込んでいく。
目指すのは、庭だ。大きな家の建物には入らず、その建物の左に行けば庭が有る。
平次「……親父!! ウチや! ウチの庭や! 子どもが倒れとる! それと……!」
砂利が敷き詰められた日本庭園の、ど真ん中。
そこだけ変な色の砂にまみれており、その上に、肥満体の少年が、縛られた状態で倒れていて――
和葉「あの子、見覚え有るで! 東京の、コナン君の友達の……」
平次「……和葉! その子、無事かぁ?」
和葉「息は有るみたいや! ……意識は無いけど!」
平次「親父が、救急車呼んだそうや! 『周りの腕とか足とか、絶対に触るな』って、親父が!」
和葉「……え?」
平次に言われたその時になって初めて、和葉は周囲を見た。
元太を中心とした周囲2mくらいの砂利の上、人の腕やら足やらがゴロゴロ転がっている。
和葉「……う、うん!」
思わず腰を抜かしそうになりつつ、和葉は思いっきり首を縦に振った。
午後4時58分 地下鉄賢橋駅
――『賢橋駅 改札そば』の柱。該当する柱は、確かに1本だけだ。
改札の目の前に有るデカデカとした1本で、その柱にもたれかかる、女性刑事がひとり居た。
佐藤「(……警察病院のトイレで、待っていた時を思い出す、わね)」
10月5日、インターネットの書き込みで『自首する場所』に立つように指定された刑事は、警察病院の時と同じく、佐藤か高木。(※作者註 >>760)
警察病院のトイレに立ったあの時は、高木が肝炎で入院していたから、佐藤が行くしかなかった。
今回また佐藤が立つようになったのは、高木が再入院したわけではなく、別な理由で、
『自称・ややこしい身体な(=生きるためには性行為が必須な)女子の自首』だと分かっていたから、だ。
あまり考えたくはないが、高木を立たせて、その場で、……発情だの誘拐だのされたら不味い、という、上層部が判断した結果だった。
佐藤「(監視だらけなのは今回も一緒ね。……当たり前の話だけど)」
監視カメラで見られているのは当然だが、周囲にも、何人も私服の捜査員が居る。
佐藤の視界に入る範囲では、立っている者は全員若く、女性が多いが、それも上層部の判断だ。
今回自首する被疑者は、他人の性行為の記憶を見抜く。
だから、指定された佐藤以外は、そういう行為の記憶の無い者、……つまりは処女だの童貞だのを、捜査本部が精一杯かき集めた、らしい。
セクハラにならないように人を集めるのに苦労したとか、そういう話は、警視庁内で噂になっていた。
5時なるまで、あと1分と少し、くらいになった時だった。
不意に、聞き覚えのある男の子の声が、佐藤の名を呼びかけた。
コナン「佐藤さん!」
佐藤「!! コナン君、それに、哀ちゃんも。……どうしたの!?」
哀「今日、小学校の私の下駄箱に、こんな手紙が入っていたの。
……貴女が居るってことは、きっと手紙の内容は正しいんでしょうね」
佐藤「え!? それ、見せて!」
哀「はい」
コナン君と哀ちゃんへ
毛利 蘭が無事なのかどうか、真っ先に分かる場所を教えてあげましょう。
a=ゲノムヘリター b=ミスティックアーク c=モストフロンデス d=カルルバン
e=アポリア f=ベータミゼット g=イルンクス
暗号が示す場所は、これで分かるはずです。
日時は、言うまでもなく、きのうの書き込みに書いています。
現地で立っているのは、警察病院で私にミルクティーを持ってきた時、付いてきた女性刑事さんか、その彼氏の刑事さんのはずです。
私は、その場所に蘭と一緒に出現します。
私が誰なのか、書かずとも分かるはずですよね?
コナン「(ヒソヒソ)……この手紙、『サキュバス』から、だよね?
a b c d……って書いてるのは、9月4日の書き込みの暗号の答えで、結果は『ケンバシエキ カイサツソバ』で。
それで、ここに立つように指定されてるのは、佐藤さんか高木さんで……」
哀「今、5時、25秒前ね」
佐藤「…………
君たちがここに来るんじゃなくて、まず、手紙が来た事を警察に通報してほしかったなぁ」
この子らには言うだけ無駄だろうが、警察の義務として、たしなめないと不味い。
捜査員Q「坊や達、ちょっとこっちに来てくれるかなー?」
コナン「えー?」
哀「15、14、13、12、11、10……」
コナンと、スマホを見ながらカウントする哀を、別の女性捜査員が見かねて追い出しに掛かる。
ふたりとも言葉が不服そうだが、一応は、指示に従って動き始めた、
その時。
コナン「あ……!!」
佐藤「!!」
何も無い床の上、突如として青い光が生まれた。
丸く、円の形で展開される、それは、一見するとファンタジーの世界の魔法陣のようで。
捜査員は、子どもふたりの腕をわし掴みにして、飛び退くように光から離れた。
佐藤は、……動けない。視線が、離せない。
哀「……5、4、3、2、……」
一般客を含め多くの者が注目する中。
5時きっかりに『彼女』は、佐藤の目の前、陣のど真ん中に『湧いた』。
佐藤「『貴女』は……!!」
パジャマの上に藍色のローブを羽織った『彼女』は、同じくパジャマ姿の女性を、……『毛利 蘭』を背負っていた。
『彼女』の顔を、佐藤は捜査本部の資料で見て、知っている。
佐藤「……江川さん、江川、……沙希さん」
??「身体はそうだね。でも中の人格は別だよ。
……中が誰なのか、分かってるはずだよね?」
佐藤「……ええ。……『サキュバス』」
??「そう」
会話を交わす間に捜査員達が駆け寄り、佐藤と『彼女』はあっという間に囲まれる。
同時に、捜査員に紛れて『蘭』に近寄ろうとするコナンが排除され、冷めた目をした哀と一緒に連れ出されていった。
見た限り『蘭』はぐったりとしていて、『彼女』の背中から外され、搬送される手続きが素早く進んでいく。
……警察の方針として、『彼女』の方も、いずれ病院に搬送されることになっている、はずだ。
佐藤「生きているのよね? 『貴女』も、……ら、『その人』も」
瞬間。
その場の全員が一瞬手を止めるくらいに、勢いの強い返答が返ってきた。
??「死んでないよ!」
本当に強い声で、心の底から。
??「私達は、生き延びたんだから!!」
855 : ◆oJG7c/xJmM - 2014/03/30 21:09:02 l8pbfu5E 735/754これで本編は終わりです。
リクエストの平次・哀は、こういう形での登場となりました。
明日・明後日は投稿できませんので、4月2日以降にエピローグを投稿します。
それで、このスレは完結となります。
856 : ◆oJG7c/xJmM - 2014/03/30 23:43:21 QQ5HbKes 736/754追記です
エピローグに○○を出してほしい、というリクエストがあれば、それに答えます
多い場合、全部のリクエストには答えられないかもしれませんが
リクエスト締切は4月2日の正午まで、ということでお願いします
857 : 以下、名... - 2014/04/01 07:34:49 DSarCEsE 737/754乙です
その後の平次と和葉が見たいです
858 : 以下、名... - 2014/04/02 19:59:13 drotRJcI 738/754三池苗子
859 : ◆oJG7c/xJmM - 2014/04/02 21:28:00 ydwOuw8g 739/754>>857-858
ありがとうございます。両方ともリクエストに答えられると思います。
年度始まってすごく多忙になり、今週は平日の更新が無理っぽいです。
エピローグは5日か6日に投稿します。
リクエストは引き続き募集します。締切は4日午後7時までです。
多い場合、全部のリクエストには答えられないかもしれませんので御了承下さい。
3月27日 午後12時30分 警視庁 廊下
苗子「毎回毎回の事ですが、……人事異動の前後って、皆さんバタバタされますね」
自販機から取り出したコーヒーのプルタブを開けながら、三池苗子は、先輩に話を振った。
話を振られた先輩、宮本由美は、自分の分のコーヒーを飲みつつ応じる。
新年度、4月1日付の人事について、既に内示は出されていた。
苗子も由美も今回は異動は無いが、異動することが決まった人間は、いつも以上に忙しい。
由美「そりゃあ、……引継ぎとか、やることが一杯あるでしょうからね。
……話をしていたら、もうすぐ動く人が来たわ」
苗子「(……佐藤刑事か!!) お疲れ様です!」
由美「お疲れ様です」
美和子「お疲れ様です……」
由美「美和子、ちょっと疲れてない?
今、異動でみんな忙しそうだ、……って話をしてたんだけど、引継ぎとか順調に出来てる?」
美和子「まぁ、……何とか。
実は、こっそり、引継ぎ用の資料を作り始めていたの。この春は異動になるかも、って思っていたから。
まさか、……異動直前に仕事が猛烈に増えるなんてことまでは、想像していなかったけど」
由美「……それは、大変ね。あ、一杯おごるわ」
美和子「ありがとう、由美」
由美と美和子は仲が良く、それぞれの好みの飲み物くらい分かっている。
由美は、手慣れた様子で小銭を入れてボタンを押し、美和子は一礼して缶コーヒーを取り出した。
そのコーヒーを美和子が飲み始めたところで、苗子が、他意無く話を振る。
苗子「佐藤警部補も、婚約されてる方も、今回、異動されるんですよね?
結婚する前の、婚約の段階で、当事者がおふたりとも異動されるの、私、初めて見ました。
……実際は、良くあることなのかも知れないですけど」
美和子「それは、……実際に人事が動いたからには、そういう事もあるんでしょうね、やっぱり。
高木くんと婚約したことも要因でしょうけど、今年度は、……本当に、異動になりそうなことがあったのよ」
苗子「そう、なんですか」
美和子「ええ」
コーヒー片手に、美和子は遠い目をして振り返る。
――高木との同意の上の行為で肝炎をうつし合い、おまけにそれを特殊能力持ちの『犯人』に指摘され、高木が入院し、
その後自分が拉致られたり、『犯人』の自首を目の当たりにしたり、それから高木と婚約し……
美和子自身、自分がこんなカップルの上司なら、カップルを両方とも異動させるだろう、と、思う。
深い仲だと分かるだけならまだしも、肝炎をうつし合ったことまで知られると、……ちょっと、周りも自分も困る。
上司や同僚から、いじめられるというわけでは決してなく、むしろ気を使われてたのは、ふたりにとっては幸いだった。
それでも、高木の退院以降、気付かないふりをしていたが、違和感というか、ぎこちなさは感じ続けていたのだ。
美和子「……私が関わった事件の、ひとまずの裁判の結果は、まだこの課に居る時に見届けることが出来るから、
それはそれで、言い方は悪いかも知れないけど、……区切りに出来るんだと、思うわ」
由美「美和子、その事件って」
美和子「『サキュバス』の件よ。
……『あの子』、明日、東京家裁で少年審判の結果が出るって」
8月28日 午前10時 大阪市 服部家 縁側
RRRR RRRR……
平次「(工藤から電話か……)
おぅ、どうした、工藤?」
コナン「『サキュバス』の少年審判の決定、今日だろう?
何か、日本(そっち)で、速報入ってないかと思ってな」
平次「工藤、気が早いで。こっちに情報が入ってくるのは、早くてもこっちの時間で今日の昼や。
決定の言い渡しは午前中にあるらしいけど、な」
コナン「……そうだよなぁ。すまねぇ」
平次「まー、お前がアメリカから電話かけてくる気持ちは分かるで。
少年審判への入れ込みっぷりは、流石に、身体を巻き込まれた方の姉ちゃんの時ほどではないやろうけどな。
お前、あの時は、……審判の決定が確定するまで、相当不安定やったやないか」
コナン「!! しゃあねぇだろう! あいつの場合、どんな処分でも有り得たんだぞ!!」
平次「……それもそうやな」
激しい怒声に思わず平次は耳を押さえ、だが、コナンの意見には同意する。
本当に、『どんな処分でも有り得た』のは事実だ。
『蘭』と『サキュバス』が融合した8月6日以降の犯罪、――元太の拉致監禁や、遺体の窃盗、他人の端末の窃盗や不正利用、
その他諸々の罪状が、自首後の『サキュバス』だけに限らず、『蘭』にも降りかかってきたのだから。
コナン「結局、蘭は不処分で確定したけどよぉ、……それも弁護士が散々粘った結果らしいから、な」
平次「……今朝、TVのワイドショーが、この事件の経緯を振り返ってたんやけど、
異例なんやろなぁ、……『犯行時の記憶が、今も保持されていると確認できない』っていう理由での不処分は。
空気読めそうにない法律の専門家が、あの時の処分含めてこの事件は異例づくめや、って強調しよった」
コナン「……そりゃ、そうだ。
わざわざ、『サキュバス』を誰かが抱くために逮捕前に法律まで作ったり、……この事件が、異例と呼ばれないはずが無い。
分かりきってるけど、……『サキュバス』への処分も、異例の軽さなんだろうなぁ。
言い渡せる処分が『それ』しかないから」
平次「……工藤、裁判ちゅうものは、蓋開けてみいひんと判らん面が有るで。
少年審判でもそれは同じやから、だから、……そう決めつけんなや」
コナン「……ああ」
平次「それと、もし昼に審判の速報が出たとしても、俺は、すぐにはお前には電話できへんかもしれん。
もうすぐな、坂田はんの墓参りに行くんや、和葉に誘われて」
コナン「え? ……それなら仕方ないな。
あの刑事の墓、大阪市の無縁墓地だったか?」
平次「そや。坂田はんの遺体、引き取りたがる親戚が誰ひとりおらへんかったそうや」
コナン「……そうか。
じゃあ無理は言わねえ。こっちでネットの速報を待つことにするさ」
ピンポーン
コナン「……お前の家、誰か来たのか?」
平次「たぶん和葉や。……すまんの、工藤。切るで」
コナン「いや、気にすんな」
和葉「平次ー、縁側座って何かしてたん? もう、出るはずの時間やけど」
平次「電話しよった、工藤と。もう『サキュバス』の審判なんやな、って」
和葉「……そ、やね。この庭で、色々あってから、もう5か月以上過ぎてるんやねぇ」
平次「(しもた…… 電話の内容、言わんほうが良かったな)
和葉、……ここの庭、見ても平気か?」
和葉「あの時は腰抜かしかけたし、夢にも出たけど、……今は、もう、大丈夫」
平次「……手、震えとるで。大丈夫に見えへん」
和葉「……あ」
立ち上がり、和葉の腕をつかむ。
平次「酷い光景やったから、ショックが強く出たんやろ。
墓参り、もっと先の、別の日にするか? 無理する必要は無いし、墓は逃げへんのやから」
和葉「……え、でも、今日は」
平次「俺が心配なんや! 今日はニュースも何も見ずに、家に居(お)っとけ!
暇つぶしやったら、勉強でもゲームでも、俺がいっくらでも、そっちの家で付き合ってやったるから!」
午後12時36分 毛利探偵事務所
RR……
事務所の机の上に置いた携帯が鳴り始めてすぐ、小五郎は電話を取った。
小五郎「(英理からか!) もしもし!」
英理「貴方、今さっき、あちらの弁護士から連絡が有ったの。
児童自立支援施設送致、ですって。……大方の予想通りね」
小五郎「……そうか。蘭には知らせたのか? 何と言っていた?」
英理「もちろん教えたわ。第一声は、落ち着いた様子で『そうなるしかないんでしょうね』って。
それと、……さっき急に、『サキュバスから手紙貰えないか』って言い出したの」
小五郎「手紙?」
英理「ええ、手紙。
それで弁護士に伝えたら、『今からだと厳しいですけど、面会の時に口述筆記ができないかやってみます』って」
小五郎「……そうか」
英理「で、ここから先は、こちらの弁護士からの話なんだけど。
……当初の予定通り、こちらからも、報道機関宛てに声明を出すってことで良いわよね?
文面は、おととい詰めた通りで」
小五郎「……ああ、あ、いや。
ちょっと待ってくれ! もう一度、文面をチェックさせてくれ」
英理「……そう? じゃあ、FAX送るわ」
小五郎「頼む。
……ところで、蘭の後遺症は、今はどんな感じだ?」
英理「ちょっと、まだ、……貴方に会わせるのは厳しそうね。
貴方の話を振るだけで、恐怖が顔に出るもの」
小五郎「……そうか」
10月18日に保護され、翌日に意識を取り戻した『蘭』には、確かに後遺症が生じていた。
『サキュバス』と人格が融合したために生じたらしい、その後遺症は、……記憶の若干の混乱と、父親恐怖症のふたつ。
記憶の混乱は比較的早期に治まったものの、もうひとつはまだ残っていて、小五郎は今に至るまで、まだ蘭とはまともに喋れていない。
理性がどうであれ、小五郎の話題を振ると恐怖感が湧きあがる状態の、娘。
……まぁ『会わせたらまずい』と、小五郎含め、誰もがそう判断するだろう。
精神科医が、まだ入院中だった時の『サキュバス』に後遺症の解決法を聞きに言ったそうだが、
彼女の答えは『時間が癒すのを待つほかないと思う』で、……結局、彼女の言う通りにしかならない状態で、今に至る。
英理「これからも毎日、蘭の様子を報告するから、……それで我慢してちょうだい。
当初に比べれば、少しずつ良くなってはいるから」
小五郎「ああ、頼む。英理」
今、この事務所には、妻も、娘も居らず、居候の坊主も居ない(阿笠博士経由で親元に帰した。帰される本人は本気で嫌がったが)
いつか、娘と普通に会話ができる日を待ちながら、小五郎はひとり、この事務所で日々を過ごしている。
拝啓 毛利 蘭 様
貴女が、私からの手紙を強く望まれたとのことで、今、この手紙を書いています。
こういう手紙で一番必要なのは謝罪の言葉なのでしょうが、今の私には、書くことも言うことも出来ません。
手紙が届いた時点で既に知っていると思いますが、本日、私の少年審判で、児童自立支援施設送致という結果が出ました。
15歳という年齢で、主だったものでも殺人2件と監禁1件と死体損壊3件、という罪状では異例の軽さだそうですが、
そういう審判を下すほかどうしようもないから、関係者の皆さんは納得するしかないそうです。
それでも、弁護士さんには、納得がいかない点はあるようです。
現場に残された証拠がほぼ砂になって失われていたせいで、直接的な証拠が極めて少ない状況でした。
だから、誰かに有罪だという事を言い渡す程度まで、犯行が証明できていないのでは、と。
私自身には審判の結果に不満は無いので、争う気はないのですが。
貴女は私より早くに、記憶の有無を相当調べられた上で、処分なしと言い渡されたと聞いています。
今は、元の自宅とは違う場所で療養されているそうですね。
貴女の、後遺症からの早期の回復を願っています。
土日の休みが明けたら、私は施設に移ります。
いつになるかは分かりませんが、いつかは社会の中で、この特異な身体で生きることになるのでしょうね。
これからの生は、本当に、大事にしたいです。
サキュバスより 最大級の敬意を込めて
追伸
貴女とは、まだ慰謝料の話が出ていないと聞いてます。
今もそうですが、今後もその話は、弁護士さんにお願いします。
私が施設に居る間、弁護士さん経由じゃないとやり取りできない状況になるはずです。
施設を出た後でも、そういう風に、弁護士さん経由のやり取りしか出来ないかもしれません。
ちなみに、貴女以外の残りの被害者の方とは、慰謝料の話は、まとまりはしました。
今のところ総額は、何年か頑張れば払えそうな額になっています。
いつになるか分かりませんが、慰謝料はいつか完済したいです。
【第3話 完】
874 : ◆oJG7c/xJmM - 2014/04/06 21:11:52 1zUTqvPw 752/754投稿は以上です。
明日、後書きを投稿します。
875 : ◆oJG7c/xJmM - 2014/04/07 21:07:01 oO099zlg 753/754
【後書き】
8月6日にSS速報VIPでスレを立てて以来、休んでた時期を含めて8か月かかりましたが、ようやく完結できました。
どうみても作者のせいで、途中から安価に応えるレスが無くなり、ただのSSスレになっていましたが、
自己満足でも終わりまで持って行けたことには安堵しています。
読み返すと色々足りないところが有ったり、書き忘れたこともあるので、
別の場所で、安価でない作品として加筆再掲載しようか考えてはいますが、ひとまず、安価スレとしては終わりです。
読んでいてお分かりと思いますが、オリキャラのサキュバスの設定を考え込んでいるうちに、作者がこのキャラにハマりこみました。
ガチキチが書けないのでファンタジーで理屈を付けようとして、こういう内容になったスレ、ということでご理解願います。
最後になりましたが、安価に参加したり感想を下さった方はもちろん、最後まで読んで頂いた方に感謝申し上げます。
◆oJG7c/xJmM
※以下、目次です。
・第1話 >>1-49
・第2話 >>54-148 (お題:『名前』『推理ミス』『記憶』)
・第3話 >>154-873 (お題:『楽器』『電気ウナギ』『元太の過去』)
877 : ◆oJG7c/xJmM - 2014/04/12 15:15:02 J8v4FG5M 754/754大丈夫だとは思いますが、成りすまし疑惑防止のため、念のためこちらでトリつきでお知らせしておきます。
安価でない作品として、加筆再投稿することになりました。
場所は、Arcadiaというサイト様の、チラシの裏SS投稿掲示板です。
タイトルは『名探偵コナンの世界で、ファンタジー世界生まれの犯人が生き足掻く話』になります。
シーン加筆はあっても、筋書きは変わらない予定です。