8月14日 午前9時 某銭湯
コナン「おじさん待って! ロッカーの鍵抜くの忘れてるー!」
小五郎「お、おう。すまんな」
――8月6日に発生し、蘭が巻き込まれた事件から、早1週間。
俺に、ようやく『本人』のところ見舞いに行く許可が出た。
事件を起こした『本人』は、7日の4時に保護された。
それから、しばらく『本人』の意識は朦朧としていた状態で、その意識がはっきりしたのが9日の夕方。
『本人』に対する警察の取調べが始まったのが、10日の午後からだ。
『本人』が大滝警部に魔術を使い、錯乱した大滝警部に殴られるトラブルが発生したのが、11日の午前。
『本人』は、再度昏倒し意識不明になった。
今度も2日眠り続け、目が覚めたのがきのう(13日)の午後。
大滝警部の方も、魔術を食らって10分後から、猛烈な吐き気に襲われ、丸々一昼夜ゲーゲー苦しんだらしい。
かくして、俺の面会は延び延びとなった。
何しろ、本人の意識が無いのだから仕方がない。
きのうの夕方の段階で『本人』が『コナンくんに会いたい』と言ったことが決め手となり、今日ようやく病室に行けることになったのだが――
見舞いに行ったことが決まった直後の、きのうの夜。
突然、探偵事務所の風呂場が壊れた。
『病院に向かうのは、銭湯に行ってからにしよう』という流れになり、俺とおっちゃんは近所の銭湯に居る。
??「あの、毛利小五郎探偵じゃないですか!?」
小五郎「!! ……すいません、どちらさまで?」
??「あ、いえ、たぶん初対面だと思います。貴方と同じく探偵をしているものです。
事務所が東京ではないですし、貴方ほど有名ではないのですが」
小五郎「ほう、探偵の方ですか? お名前は?」
??「ああ、すいません。星威岳 吉郎(ほしいだけ よしろう)と申します。
いや、とても嬉しいです。貴方みたいにドンドン事件を解決される方は、私にとっては憧れですから」
小五郎「え? そうですか? ……そんなこと無いんですがね。
ところで、星威岳さんはお仕事でこちらに?」
星威岳 吉郎(以下、吉郎)「ええ、昔していた仕事の関係でこちらに来ています。
毛利さんが活動される少し前になりますが、私もここで短期間だけ東京で暮らしていたので」
小五郎「ほー……」
吉郎「ええ、本当に短期間でしたが、ある探偵のかたの助手でした。
私が引っ越した後に有名になった貴方の話は、少し気になっていたんです」
小五郎「それでは、どなたの助手だったんですか?」
吉郎「あ、……いえ、もう亡くなられた方なんですけど、すいません。
それでは失礼します」
小五郎「(何だ? 訳ありか……?)」
コナン「(…………)」
午前10時30分 東都警察病院 703号室の前
コナン「(……この階は、病室のドアのそばに見張りの警官が立ってるんだな……
蘭の病室の前にも婦警が立ってるし……)」
英理「良いこと? コナンくん。
……『あの子』は変わってしまったから、違和感は感じると思うの。覚悟は決めておきなさいね?
きのう昏睡状態から目覚めてから、また何か、様子が変みたいだし……」
コナン「うん、分かったよ、おばさん……」
コンコン ……ガラッ
英理「失礼します」
コナン「しつれいしまーす」
蘭?「あら、おはよう。よく来たね。……『はじめまして』と言うべきかな? それとも『お久しぶり』と言うべきかな?
江戸川コナン君」
コナン「(……確かに、声が少し低くなったな。話し方も、『以前の蘭』と比べて、違和感がある)
……僕、『貴女』の事をどう呼べばいいのかな? 今の『貴女』に、僕のことについての記憶はあるの?」
蘭?「……そうだねぇ。
『サキュバス』と『蘭』の、両方の記憶が、今の『わたし』にはあるからね。
両方の記憶が混ざったうえで出来たのが、今の『わたし』の人格なんだよ?
『蘭』の記憶は引き継いでいるから、確かに君のことは覚えてるはずだ、……と、信じたいなぁ」
コナン「そう……」
蘭?「今の『わたし』をどう呼ぶかは、君の判断に任せよう。
以前の通りの『蘭姉ちゃん』でも『サキュバス』でも、君の好きなようにすると良い」
コナン「……『貴女』が望む呼び方はあるの?」
蘭?「特に、希望は無いかなあ?
見た目はまるっきり『蘭』の見た目だけど、記憶が両方あるから、
……『蘭』とも『サキュバス』とも、どっちで呼ばれても『わたし』自身には違和感は無いからね」
コナン「そうなんだ。ちなみに、他の人達は、どう呼んでるの?」
蘭?「うーん、……そこにいる『お父さん』と『お母さん』は、『蘭』って呼んでるね?」
コナン「そうなの?」
小五郎「……そうだな」
英理「その通りね」
蘭?「まあ『お父さん』も『お母さん』も、そして警察の人達も、
……『サキュバス』が起こした事件の事を聞くときは、『蘭』とは呼ばないけど。
意識してるのかどうかわからないけど、みんな『サキュバス』か『貴女』だよね、その話題の時は。
事件を起こしたのは『サキュバス』だから、当たり前の話ではあるけどね」
コナン「そう……。(事件を起こした自覚はある、か)
じゃあ、僕も同じにする。普段は『蘭姉ちゃん』って呼ぶことにするね」
蘭?「うん、分かったよ『コナン君』」
コナン「……ところでさ、その上で『サキュバス』に質問していい? 事件とは関係なしに、気になってたことなんだけど」
小五郎&英理「「!?」」
蘭?「え? 何?」
コナン「えっと、うまく言えるか分からないけど……、『サキュバス』っていうのは『貴女』だけを表す名前なのかな?
『貴女』自身には、名前は無いの?」
蘭?「……ええっと、どういう事かな?」
コナン「えっとね、例えば、僕たちみんな『ホモ・サピエンス』ではあるよね?
でも、人ひとり呼ぶのに『ホモ・サピエンス』とは呼ばないよね? それぞれ、ひとりひとりに名前があるから。
『サキュバス』っていう呼び方も、『ホモ・サピエンス』と一緒で、えっと、『種族の名前』じゃないのかな、って」
英理「なるほど。『サキュバス』じゃなく、個人の名前が別にあるんじゃないか、と」
コナン「うん、ずっと引っかかってたんだ。
ファンタジーのゲームなんかで、『エルフ』とか『ドワーフ』とかいるでしょ?
そういうキャラに呼びかけるときは、『エルフ』や『ドワーフ』じゃなくて、別々の名前だから」
蘭?「……ははは、流石に探偵だねえ!
警察の人がこれまで聞いてこなかった点を突っついてくる。
言う通りだよ。
『サキュバス』は種族名だから、別に親からつけられた名前がある。名乗ることは、まず無いだろうけどね」
小五郎「……そうなのか? 何で?」
蘭?「名づけの仕組みがこっちとは違うから。
フルネームが『誰々の孫の、誰々の娘の、誰々』なんだよね。
それも、全部父方を辿っていく名前でさ、私を示す『誰々』の部分を命名したのも父だし。
正直な話、名乗るだけでもすごくイヤ」
コナン「あー……、そうなんだ。
父親とすごく揉めてたって書いてたね、掲示板に」(※作者註 >>38参照)
蘭?「……まあ、『揉めてた』どころじゃないんだけど、ね。
今、この世界に『サキュバス』が複数居るならともかく、そんなことも無いみたいだしね。
だから、個人名を呼ばなくても『サキュバス』で間に合ってた。召喚者のところに居た頃からね」
コナン「へー……、あのさ、やっぱり、警察の人は召喚者の事を突っ込んで聞いてくるの?」
英理「ちょっと! コナン君…… そのことは」
蘭?「いや、構わないよ『妃弁護士』、『サキュバス』として答えよう。
……当たり前だよ、そのことに警察は突っ込んでくる。
あの人のことについては、『サキュバス』ですら分からないことが多いし、分かることについても、話すべきでないと思ってるけども」
コナン「どういうこと?」
蘭?「『サキュバス』が使った魔術について、あるいは召喚者が使った魔術については、
『サキュバス』も召喚者も、かなり広い範囲で秘密を守らなきゃいけない義務がある。
世界に対する守秘義務、と言って良いかも知れないね」
コナン「義務……」
蘭?「だから、召喚者の事をしゃべらないのも、その一環」
コナン「そうなんだ……」
蘭?「まあ、召喚者の事を喋らない理由は他にもあるよ? 君には教えられないけれどさ、推理はしてみると良い」
コナン「え?」
小五郎&英理「「??」」
蘭?「ヒント1つ目、【『わたし』が悩み始めたのは、きのうの夕方に覚醒してから】
2つ目、【『サキュバス』としてはよくあること、高校生としては有り得ないものを見た】
3つ目、【人の名誉に関わること】
4つ目、【コナン君には何もないから楽だ】」
コナン「どういうこと?」
蘭?「今から事情を考えてみると良いよ、たぶん絶対に分からないと思うけど。
実は人生に関わるくらい真剣に悩んでてね、『お母さん』に相談しようと思ってたんだ。
……男の人には言いづらい内容なんだけど」
英理「え? そうなの?」
蘭?「『お母さん』が頼んだ別の弁護士さんがもうすぐここに来るんだよね?
その人が来たら、『お父さん』と『コナン君』には席を外してもらえないかな?
『お母さん』と弁護士さんに相談したいことがあるから」
小五郎「え? ……そうなのか?」
蘭?「うん。ここ病院だから、自販機とか、探せばあるでしょ?
席外したついでにミルクティーとか買ってきてもらえたら有り難いかなあ?」
小五郎「……英理、どうするんだ?」
英理「蘭。
言うとおりにするけど、……自販機の飲み物飲めるかどうかは、お医者さんに聞いてからね」
蘭?「うん、……それで良いかな」
コナン「何度もゴメン。最後に、ひとつ質問してもいい?」
蘭?「たぶんもうすぐ弁護士さんが来るけど、……質問がひとつだけなら、大丈夫だと思う。訊きたいことは何かな?」
コナン「えっと……、何度も何度も、『サキュバス』が掲示板に書き込んだことを読んできたんだけど……
『サキュバス』は、知性体に対する態度で看取ってもらう事を望んでいたよね?
万が一のことがあった時、化け物扱いされるのは嫌だ、って、書いてたよね?」(※作者註 >>30参照)
蘭?「……あんな面倒な書き込み、よく読んでるねぇ、君は。確かにそう書いたね」
コナン「化け物扱いされることって、本当に嫌なことなの?
そういう扱いが宗教的にダメとか、文化的にダメとか、そういう理由があったから、ああいう風に書いたの?
事件を起こしたとき、掲示板に自白の書き込みと事情の説明をしなければ、たぶん完全犯罪になってたよね。
『化け物扱いされないこと』って、そんなに大事なことだったのかな?」
蘭?「うーん、……文化とか宗教とか、そういう理由は無いかなあ。
強いて言うなら、単純に化け物扱いされることが怖かったから、かなあ?」
コナン「……そう」
蘭?「少なくとも、あの掲示板への書き込みで、『サキュバス』に知能があるのは一目瞭然だよね?
仮にあの魔術が中途半端な成功になったとしても、よっぽどのことが無い限り、化け物として抹殺されるより、
今後の衣食住は保証されながら、取り調べを受ける方向に進むだろうって、踏んでたのさ。
現に今、そうなってるでしょ?」
小五郎「……確かに、な」
コンコン ガラッ
看護師A「失礼します、……毛利さん、検温です」
英理「あの、すいません」
看護師A「はい?」
英理「娘が『自販機のミルクティーを飲みたい』って言ってるんですけど、飲ませて問題ないでしょうか?」
看護師A「確か、娘さんには食べ物・飲み物に制限はなかったと思いますよ、……念のため先生に確認しますけど
あと、この階は自販機は無くて、買うとしたら、1つ下の階の談話室まで行かないと買えないですよ」
コンコン ……ガラッ
コナン「(また誰か来た?)」
英理「あなた、蘭。私が依頼した弁護士さんよ、少年事件専門の」
小五郎「おお、そうですか。よろしくお願いします」
??「はじめまして。弁護士の七市 里子(ななし さとこ)と申します。
こちらも同じく、うちの事務所の弁護士で、神代 杏子(かみしろ きょうこ)です。
神代 杏子(以下、杏子)「はじめまして、神代です、よろしくおねがいします」
蘭?「……はじめまして」
コナン「(中年の女性と、若い女性。……弁護士事務所のボスと、その事務所の若手ってとこか?)」
蘭?「よかったです、弁護士さんがふたりとも女性で。男の人には言いづらい事で、相談事があったから」
七市 里子(以下、里子)「あら、そうですか?」
小五郎「ええ、そのようで、……私と坊主はとりあえず外に出ておこうかと。
……英理、話が終わったら携帯に連絡頼む。下の階にある談話室で時間潰すから」
英理「ええ。分かったわ」
看護師A「あの、先生に伺ってきました。
『飲み物に特に制限はないから、ミルクティーは飲んでも構いませんよ』だそうです」
蘭?「そうですか、良かった」
コナン「じゃあ僕達、『蘭姉ちゃん』が話している間に、下の階でミルクティー買ってくるね」
午前11時 東都警察病院 6階 談話室
小五郎「ミルクティーは冷たいのにしとけよ」
コナン「……うん、分かってる。って言うかおじさん、この時期は冷たいのしかないよ?
(一応被疑者でもある者に、温かいのは渡せないか。中身ぶちまけて周囲が火傷したりすると困るし……)」
看護師が話した通り、6階には談話室があり、その談話室の奥のほうに自動販売機があった。
そこまで広くは無い部屋だった。
4人掛けのテーブルが2つと、部屋の隅に予備の椅子がいくつかと、自動販売機があるだけの空間だ。
中に居る人も、テーブルの上に突っ伏して眠る人がひとり居るだけで……
コナン「(あれ? この匂い……)」
俺はその眠っている『ように見える』人の隣の椅子に上り、その人の腕を取った。
小五郎「お、おい坊主、何やってんだ?」
コナン「(これは……!!) おじさん! この人、脈が取れない!」
小五郎「!! 何だと!! ……本当だ!!」
コナン「看護師さん呼んできて!! すぐに!」
小五郎「お、おう!!」
コナン「大丈夫ですか! おじさん! 僕の言葉、分かりますか! (くそ、応答が無いし、身体も冷たい……)」
一縷の望みをかけて、心臓マッサージや人工呼吸をすべく、その人の顔を、可能ならば身体ごと動かそうとして、被っている毛布を払いのけた。
そこで、その人の顔の下に血が広がっていること、更にその人が背負っているリュックが、変な形をしていることに気付く。
コナン「まさか……」
リュックの上から軽く手を触れ、その形に、『あるもの』を想像した。
看護師B「……大丈夫ですか! お客さん!」
コナン「看護師さん、この人のリュック、形がおかしいんだ!」
看護師C「ええ?」
コナン「まるで、背中にナイフが刺さっているみたいなんだ!」
小五郎「何だと?」
おっちゃんが慌てて、リュックを脱がしに掛かり、看護師2人が息をのむ。
その人の背中には、俺が言う通りの物が、まっすぐに刺さっていた。
午前11時 東都警察病院 703号室
里子「……では、改めて。
はじめまして、『毛利 蘭』さん。七市法律事務所の弁護士、七市 里子(ななし さとこ)です」
杏子「同じく、神代 杏子(かみしろ きょうこ)です。よろしくお願いします」
蘭?「……一応、『毛利 蘭』って名乗っていいのかな? とにかく、これからよろしくお願いします。
えっと、まず質問良いですか?」
里子「何でしょう?」
蘭?「『サキュバス』が起こした事件について、念のため確認したいことがあって」
英理「……」
蘭?「今の『わたし』は、『蘭』と『サキュバス』の2つの記憶を、……自覚する限り、大した欠落とかは無しに持ってる、はずです。
その前提で、質問しておきたいんですが、……ふたりとも、『お母さん』が依頼した弁護士さんで、
『わたし』がどういう経緯でここに入院したのかはご存知、ですよね?」
里子「ええ、もちろんです」
蘭?「『サキュバス』がネットの掲示板に書いたことも、ふたりとも全部読んでいる、と考えて良いですか?
その前提が無ければ、ちょっと相談できないことなんです」
杏子「もちろん、読ませていただきました」
蘭?「そうですか、……もうひとつ質問です。
『サキュバス』の事件は、どれだけ報道されていますか?
坂田さんの、大阪のゲテモノ料理屋さんでの事件は、当日、結構大きめに報道されたのは確認してるんですが、
そこから先はあまり追いかけて無くて……」
里子「それは、……結構報道されていますね、掲示板に書いた内容が内容ですから」
蘭?「では、坂田さんと沼淵さんが殺された件は公開されているとして、『毛利 蘭』の名前や身元は、報道では出ているんでしょうか?
『サキュバス』を召喚し人は、『報道されるかは未知数だ』って言ってましたけど」
杏子「ええっと、……」
里子「……現在のところ、貴女の年齢と性別は公開されていますね。
本名は当然伏せてますし、ご両親の御仕事や、お住まいも非公開で、高校名もマスコミには流れていないようです。
個人的な感触ですが、警察も相当迷っているように見えますね。色々な意味で前代未聞のケースですから」
蘭?「そうですか。
……それで、相談したいことなんですけど、実はきのうの午後から悩んでいることがあって」
RRRR RRRR……
英理「ごめんなさい、お父さんから電話みたい。……どうしたの、貴方? え!? 何ですって!?」
杏子「何かあったんですか?」
英理「『蘭』、ここの6階の談話室で、人が殺されたって、……お父さんとコナン君が第1発見者になったみたい」
里子「ええっ!?」
英理「『ミルクティー買うどころじゃないからちょっと待っててくれ』って、お父さんが。
……『これから、警察の捜査に協力しないといけないから』って」
蘭?「それは仕方ないなぁ。
『とりあえず今日の昼ごはんのついでになるくらいまでは待つから』って、お父さんとコナン君に伝えて」
英理「分かったわ」
杏子「……えらくあっさりしてますね、毛利 蘭さん」
蘭?「慣れてますから。うちの父、しょっちゅう事件に遭ってるんです」
午前11時15分 警視庁 捜査1課
松本「今連絡が入った! 東都警察病院で殺しだ!」
佐藤「管理官、警察病院ですか?」
松本「ああ、そうだ! 6階の談話室で、男性が背中を刺されて死亡していたそうだ。
第1発見者は、……毛利小五郎と、江戸川コナン君だと」
高木「毛利探偵とコナン君ですか?
病院にいらっしゃったのは、例のサキュバスの件の関係でしょうか?」
松本「おそらくそうだろう。
……ちなみに通報者は看護師だ。
あの病院には普段から警官が何人も居るからな、そっちからも連絡が来ている。
それでだ、目暮、佐藤、高木、お前達が現場に向かえ。捜査を頼む」
目暮&高木&佐藤「「「ハッ!」」」
午前11時15分 東都警察病院 703号室
里子「それでは気を取り直して……、悩み事の話でしたね。
『きのうの午後から悩んでいることがある』とのことでしたが」
蘭?「……どこからどう説明したらいいか迷うんですが、
当然、今から話すことは、弁護士として秘密を守っておいてほしいんですけど……」
杏子「それは当然、守秘義務は守りますよ。弁護士ですから」
蘭?「……『お母さん』も、秘密は守ってくれる? 『お父さん』にもしゃべらないでいてくれるのかな?」
英理「え? ええ、もちろん、『蘭』が望むのならあの人にも言わないわ」
蘭?「……良かった、じゃあ、話しますね。
実は、先日、……魔術を使ったのが悪かったのか、錯乱した警察の人に殴られたのが悪かったのか。
目が覚めた昨日の午後から、ある魔術が何故か常時発動状態になってしまって、その魔術がどうしても止まらない状況なんです。
弱い魔術なんですけど……」
里子「……その魔術の内容は?」
蘭?「女子高生としては、分からなくてもいい内容の情報が見えてしまう魔術なんです。
人に会ったとき、その人の直近の――」
午前11時40分 東都警察病院 6階 談話室の前
高木「こんにちは毛利さん。……相変わらずの死神っぷりですね」
小五郎「いや、狙ってるわけじゃないんだがなぜか事件の方が寄ってくるんだよ」
佐藤「ところで、なぜコナン君とふたりでこの部屋に居られたんですか?」
コナン「『蘭姉ちゃん』のお見舞いなんだ! それで、『蘭姉ちゃん』にミルクティー買ってきてくれって頼まれたんだ。
7階に入院中なんだけど、7階には自販機が無くて、ここに自販機があるって聞いて、この談話室に来たんだ」
高木「(……、やっぱりか)」
コナン「ちなみに、『蘭姉ちゃん』は今病室で、おばさんと、別の弁護士さんとで話し合いしてるよ。
男の人には言いづらい内容の相談事があるんだって」
目暮「……ほう、そうなのかい、コナン君。(『蘭くん』が話し合いねえ……)
ところで、通報したのはどなたかな?」
看護師B「あ、はい! 私です。
部屋を飛び出してナースセンターに行って、先生に『人が刺された』と伝えて、そして通報しました」
目暮「その先生は?」
医師D「私です。
談話室で、あの男性の死亡を確認しました。……既に、死斑が出ていました」
目暮「死亡を確認したあとは?」
毛利「明らかに殺人ですから、……これ以上死体に触れないほうが良い、ということで遺体から離れました」
コナン「僕は上の階に、お巡りさん達を呼びに行ったよ! 見張りで何人も立ってるの、知ってたから」
目暮「なるほど…… (この病院の7階には、訳ありの患者が多いからな……)」
高木「……コナン君がそういう風に知らせてくれたから、そのお巡りさん達からも、警視庁に連絡が来たんだろうね。
おまけに、そのお巡りさん達は、この談話室に誰も立ち入らないようにしてくれた、と」
毛利「ああ、そういう流れで間違いない」
目暮「毛利君とコナン君、それから看護師と医師の皆さんも、遺体を発見するまでの流れを、また細かく聞いてもよろしいかね?
この廊下は人目があるし邪魔になるから、できれば場所を変えたいんだが……」
看護師C「……構いませんけど。
ちょっと待ってくださいね、今、空いてる病室があったはずなんで、そこを使えないか聞いてみます」
午前11時45分 東都警察病院 6階 602号室
目暮「すまないね。毛利君、コナン君、面倒だが、また最初から経緯を話してくれないかね?」
毛利「ええ、構いません警部殿。
私達は、『蘭』から、ミルクティー買ってくるように頼まれていました。
看護師さんから『自販機は6階の談話室にある』と言われ、あの談話室に向かったんです。
自販機の前で、私が小銭を出して、コナンがミルクティーのボタンを押して、缶を取り出して、そうしたら、
……コナンが突然、テーブルに突っ伏していた、あの被害者の脈を取り始めたんです」
高木「え、何で?」
コナン「うっすらだけど、あの男の人の方から、血みたいな匂いを感じたんだ。
あの人、自販機に背中向ける形で、椅子に座って、机に突っ伏してたよね?
もしかしたら、具合悪くして、血を吐いているのなって思って」
毛利「それで、コナンが『脈が取れない』って騒ぎ始めて……」
(中略)
佐藤「……それで、コナン君から呼ばれた警官が、談話室を立ち入り禁止にしたんですね?」
毛利「ああ、そういう流れだな」
コナン「あの人、間違いなく誰かに刺されてるよね? リュックには、背中に触れる面に、変な切れ込みがあったみたいだし」
高木「そうだろうね。
誰かがあの人を刺して、ナイフの柄が嵌るような切れ込み入りのリュックを着せて、その上に毛布をかぶせて、
……突っ伏して眠っているように、細工したんだろうね」
目暮「オホン ……ところで、刺された男性がどこの誰なのかはご存知かな?」
コナン「僕たちは全く知らない人だよ? 朝、似てる人には会ったけど」
高木「似てる人?」
コナン「朝、おじさんと行った銭湯のロッカーで、すれ違った探偵さん。
顔はすごく似てるけど、体格がまるで違ったから別人だってすぐ分かったよ」
看護師C「あの人は、……あまりまじまじと見てないので自信がないんですけど、
盲腸で入院している、星威岳(ほしいだけ)さんの、ご家族の方だと思います。
ご高齢の患者さんだから、盲腸でも容態が良くなくて、夜は、長男さんと次男さんが付き添っていました。
もっとも、患者さんの容態は朝になって落ち着いたんですけども。
確か長男さんが名字が違ったと思うんですけど――、談話室で亡くなったの、その名字の違う長男さんのような気が……」
毛利「え? 星威岳?」
目暮「? 何か心当たりがあるのかね?」
コナン「銭湯のロッカーですれ違ったその人、探偵さんなんだけど、『星威岳』って名乗ってた。
……僕たち、案外、次男さんとすれ違ってたのかもしれないね」
高木「……有り得なくはないね。
夜通し付き添って疲れて銭湯に行くのも、談話室で休むのも」
目暮「まあ、実際にその患者の家族の方なら、病院の方に連絡先の記録があるだろうから、それを見せてもらえますかな?
連絡先の記録以外にも、監視カメラなどを確認させて頂くことになるでしょうな。
その辺りの確認は、今、他の警官達に当たらせてますが……」
毛利「警部殿、私は、……いつものようには、捜査には協力しない方が良いのでしょうかね?
第一発見者ですし、それに……」
コナン「……!! (そっか、おっちゃんは、刑事事件の『加害者と融合した被害者』の父親だから……)」
目暮「…………。
いや、『この件に関しては』協力を頼む、毛利くん。
遺体発見直後に死斑が出ていたというのなら、君もコナン君も犯人ではないのだろう。
ところでコナン君」
コナン「何? 目暮警部?」
目暮「手に持っているミルクティーは、『蘭』くんの物かな?
今、持っていってあげなさい。……佐藤くんも、コナン君に付き添ってあげてくれ」
佐藤「? ……はい、分かりました」
午前11時20分 東都警察病院 703号室
里子「……その魔術の内容は?」
蘭?「女子高生としては、分からなくてもいい内容の情報が見えてしまう魔術なんです。
人に会ったとき、その人の直近の――」
杏子「直近の?」
蘭?「その、……人に会ったとき、その人の直近の性行為の情報が見えるんです。
具体的には、えっと、セックスの相手の名前とか日時とか場所とかで、それがあんまり最近だと記憶まで見えるみたいで」
英理「……その、魔術がきのうの午後から発動しっ放しになってると?」
蘭?「そう。それで、ただでさえ残り少ない『わたし』の魔力が枯渇の危機で……
『わたし』、たぶん今すごく命の危機に瀕してるみたい。
魔力が完全に抜けきると、『蘭』も『サキュバス』も、人格が壊れるから。
……取りあえず、証明のために、『お母さん』も、弁護士さんも、どういう情報が見えるのか言った方が良いでしょうか?
それ以外に魔術のことを証明する手段がないと思うんですが」
里子「…………。お願いします、教えて下さい」
蘭?「えっと、七市弁護士に見える情報は……」
(中略)
英理「……たしかに、弁護士さんふたりと、私の分は正解みたいね。少なくとも魔術のことは信じるわ」
蘭?「良かった……。
それで、警察の人に関して、ちょっと相談なんだけど……」
里子「何ですか?」
蘭?「ここの見張りの婦警さんが――(ヒソヒソ」
里子&杏子&英理「「「はぁ!?」」」
蘭?「……それで、苦情言うべきなのか、言うとしたらいつ言うべきなのか困ってるんです。
あと、警察関係以外にも他に困りごとがあって――」
午前11時57分 東都警察病院 703号室
コンコン ……ガラッ
佐藤「失礼します」
コナン「『蘭姉ちゃん』、ミルクティーだよ!」
蘭?「あ、ありがとうコナン君。……お久しぶりです、佐藤刑事」
佐藤「お久しぶりです。
……あの、私の顔に何か付いてますか?」
蘭?「いえ、ちょっと迷ってることがあって。
一応、警察への苦情なんですけど」
佐藤「え?」
蘭?「男の人には言いづらいことなんです。
弁護士さん通すべきなのか、今ここで佐藤さんに言うべきなのか……」
『本人』はそう言って、考え込む。
――今、ここの見張りに立ってる婦警が、2日前におそらくはラブホテルで不倫をしていて。
婦警が視界に入らなくても、たまに婦警の記憶が『本人』の脳裏にちらついて困ってる、と、素直に言うべきか。
何しろ刺激が強いのだ、既婚の同僚二人を同時に相手にしている、いわゆる3Pの記憶だから。
今、苦情を言うとしたら、少なくとも常時発動している魔術のことも言わねばならない。
佐藤刑事が誰と何処でナニをしてたのかを、最低限、魔術の証明として喋ることになるが――
杏子「……い、今ここで、言うのは、止めておいたほうが良いと思いますよっ。
内容が、かなり繊細ですしややこしいですし、
この刑事さんに言っても、上の人に報告するのに困るんじゃないですか?」
英理「そうよ『蘭』。
この弁護士さん達と文面考えて、弁護士さん通して、正式に警察に言いましょう?」
蘭?「……そう、じゃあ、今言うのは止めましょうか」
佐藤「……(苦情って何なの? それに蘭ちゃん、声が少し変わった?)」
蘭?「佐藤刑事、あの、お願いがあるんですが……
『私』の事件を担当している人達に、『苦情があること』だけ、伝言して頂いてよろしいですか?
いつどういう形で、その苦情を警察の方に話すかは分からないんですが……」
佐藤「ええ、分かりました。
『蘭さんが苦情があると言っていた』ことは、伝えますね」
コナン「って、『蘭姉ちゃん』、肝心のミルクティー貰い忘れてる! ほら!」
蘭?「あ、ごめん、ありがとうコナン君」
午前11時55分 東都警察病院 602号室
小五郎「コナンを追い出して、看護師も先生も部屋から出して……私に何かお話ですか、警部」
目暮「いや、大したことではないんだよ毛利君。
君も分かっていることについて、だ。
我々も、今は取調べから外れているが、『サキュバス』の事件に関わったのでね」
小五郎「そうでしたな、警部。
高木も、『サキュバス』相手に、あの掲示板に書き込んでいたようだしな」
高木「ええ」
目暮「『蘭くん』は、本当に気の毒なことだ。君は、今も大変だろう?」
小五郎「ええ、……本当に」
目暮「率直に言おう。
捜査一課の人間は、特に強行犯係の人間は、みな探偵としての君の能力を評価しているし、
正直に言って、これからも君には捜査には協力してもらいたんだよ、だが……」
小五郎「……私は、『サキュバス』が融合した人間の、父親です。
殺人事件の加害者の身内、……と、そういう風に扱わざるを得ない、と」
高木「……」
目暮「いや、単純にそう考えているわけではないんだ、『蘭くん』自身は被害者なのだから。
ただ、これから事件に遭遇した時、探偵としてその事件に君が関わることを、今までほどは、喜ばない人間が出るだろう。
……そのことは、頭の片隅にでも入れておいてくれないかね?」
小五郎「おっしゃることはもっともです、警部殿。
仮に、私が秘密を知り得る立場の刑事だったとしても、そういう態度になるでしょうな。
……御忠告、ありがとうございます」
午後12時8分 東都警察病院 602号室
ガラッ
佐藤「目暮警部、ただいま戻りました」
コナン「(……おっちゃん、警部と何か話してたのか? 空気がちょっと重いな)」
目暮「ああ、ご苦労、佐藤君」
佐藤「警部、本庁の方に連絡入れたほうが良いかもしれないことがありまして……」
目暮「ん? 何かね?」
佐藤「今向かった病室で入院中の『本人』から、警察に苦情があるそうです。
肝心の苦情の内容は濁されたんですが、……『弁護士を通して言うかもしれないから、事件を担当する者に苦情があることだけは伝えてほしい』と。
正確には『本人』が私に苦情を言おうとして、弁護士さん達が必死に止めてました。
繊細で、ややこしくて、上に報告するのに困るような内容の苦情だそうです」
目暮&高木「「??」」
小五郎「何だそれは!?」
佐藤「……毛利さんも、内容は御存じないんですね」
コンコン ……ガラッ
看護師C「失礼します、星威岳さんのご家族の連絡先をお持ちしました。
入院時に書いて頂いた誓約書です」
目暮「ああ、どうも。見せて頂きますかな?」
看護師C「はい、どうぞ」
高木「……入院費用の保証人になったのは、長男の方と次男の方なんですね。
長男が夢見 竜太郎(ゆめみ りゅうたろう)さんで、次男が星威岳 吉郎(ほしいだけ よしろう)さん、と。
刺されたのは夢見さんでしたか?」
コナン「……! (次男の名前、銭湯で会った人と同じだ!)」
看護師C「御長男のほうが刺されたと思うんですが……、
何分、患者さんはともかくそのご家族までは顔を覚えている自信が……」
佐藤「まあ、今分からなくても、この書類から、住所や御家族の連絡先をたどれますから。
家族の方に本人だと確認してもらえればそれで大丈夫ですから。
そこまで深く悩まれなくても良いですよ」
看護師C「……そうですよね、ありがとうございます」
目暮「ちなみに、盲腸で入院中の星威岳さんには、遺体を確認してもらうことは難しいのですかな?」
看護師C「正直、無理だと思います。
きのうの朝4時に、意識不明の状態で担ぎ込まれて緊急手術して、今はまだ意識を取り戻されていないんです」
目暮「……それなら、確かに無理でしょうな」
看護師C「それでは、失礼します」
ガラッ
佐藤「警部、次男の方に連絡を入れますか?」
目暮「ああ、もちろん、頼むよ佐藤くん」
ガラッ
警官E「警部、監視カメラを調べた結果なのですが……」
目暮「どうだったのかね?」
警官E「それが、……談話室内をそのまま映すカメラが無かったようです。
廊下にはカメラが有り、部屋への出入りは全て撮れていました」
佐藤「毛利探偵が入る前までに、何人出入りしていたの?」
警官E「被害者本人を含めて四名です」
午後12時15分 東都警察病院 4階 廊下
コナン「この病院って、4階で監視カメラを見てるんだね」
小五郎「おおかた、患者が使わない部屋をこの階に集めたんだろう。
この階は、機械室と倉庫と、守衛の控室が纏まってるからな、……って、何でお前が監視カメラの確認に付いて来るんだよ」
コナン「おじさんに付いていくのがダメなら、僕どこに居ればいいの?」
高木「えーっと、どこかで待ってるとかは?」
コナン「今、『蘭姉ちゃん』の病室は、弁護士さんが来て話し合ってるでしょ?
6階の談話室は立ち入れるはずがないし……」
小五郎「『蘭』の部屋の前で、英理が出てくるのを待ってれば良いだろうが」
コナン「あの階、廊下にお巡りさんがいっぱい居るよ?
僕が廊下に長々居たら、仕事の邪魔だと思うなあ」
小五郎「……テメエ、ああ言えばこう言いやがって」
目暮「構わんよ毛利君、この子なら一緒でも」
小五郎「良いんですか? 警部殿」
目暮「コナン君、きみが事件に関わるのは今に始まった事でないからな、……今更な事だろう」
コナン「…… ありがとうございます、目暮警部」
午後12時18分 東都警察病院 4階 守衛控室
目暮「監視カメラの映像はどうかね? 現場に、人の出入りが4人あったというのは聞いたが……」
警官F「はい、お伝えした通り、監視カメラに映っていたのは4人です。
そもそも監視カメラが部屋までは覗かない配置になっていまして、
部屋の出入りした人は分かるのですが、誰が加害者なのかまでは……」
コナン「(被害者は部屋の奥に座っていたからな…… そんな配置の監視カメラから見えるわけがないか)」
高木「4人が部屋に入った時間帯は?」
警官F「えっと、この画面に出していますが……
まず、9時ちょうどに部屋に入って10分後に出た、この人が1人目です」
目暮「……どう見ても清掃員だな」
高木「でしょうね。手に持ってるのはモップとバケツでしょうか、これは」
警官F「2人目は、10時16分に入って、10時27分に出たこの人です。
ベビーカーを引いた女性のようですね」
目暮「脇に大荷物を抱えているようだな。この女性、凶器を持てない訳ではなかろう」
警官F「3人目がこちらの方で、10時22分に部屋に入っています。
部屋を出た映像がありませんから、この人が被害者でしょう」
高木「毛布か何かを脇に抱えてますね。あの毛布、被害者の私物だったんでしょうか?」
コナン「でも、リュックが無いねー、発見された時、背負ってたのに」
警官F「4人目は10時29分に部屋に入って、10時35分に出たこの人です。
片腕を吊った人でしょうか?」
目暮「だがこの人も、肩から大きめの鞄を下げている。完全に手ぶらで無い限り、無関係とはいえんよ」
警官F「そして、毛利さん達が部屋に入って発見したのが11時頃でしたね」
毛利「ああ、そうだったな坊主」
コナン「うん、そうだったよ!」
目暮「当然の話だが、最初の清掃員は事件には無関係だろう。事情は無論聞くべきだろうが」
小五郎「そうでしょうな」
警官F「はい。そう思って、この病院の清掃を請け負っている業者に連絡をいれています。
それから、残り3人の動きも、今追いかけている最中です」
高木「実質的に被疑者は2人ですね……」
RRRR RRRR……
目暮「目暮だ、どうした佐藤くん?
……被害者の弟が来たのか? ああ、被害者の身元は看護師の証言の通りで間違いないと」
午後12時24分 東都警察病院 6階 廊下
佐藤「はい、警部。被害者は、夢見 竜太郎さんに間違いそうです。
看護師さんの証言の通り、501号室に盲腸で入院中の、星威岳 幻の銀次さんの御長男ですね。
職業は俳優だそうです」
目暮「? それは、盲腸で入院中の父親が、そういう芸名の俳優なのかね?」
佐藤「いえ、今入院している父親の方は、変わった名前の方ですが無職です。
被害者の、夢見 竜太郎さんが俳優ですね。
弟の星威岳 吉郎さんが言うには、
お兄さんから『仕事をクビになった後、伝手をたどって芸能事務所に入れてもらい、端役で出ている』と聞いていたそうです」
目暮「(リストラされた中年が、普通、伝手で俳優になるか?) それは本当なのか? 少々怪しいな……
ところで、他に被害者に家族はいないのか? 弟さん以外にも確認は来てもらったほうが良いだろう」
佐藤「そうですね、聞いてみます」
目暮「あと、父親が入院してからの御兄弟の動きも聞いておいてくれ」
佐藤「はい、分かりました」
佐藤「すいません、星威岳さん。
申し訳ないんですが、お父さんが入院されてから今までの、貴方がた御兄弟がどうされたか教えていただけないでしょうか?」
吉郎「……まさか私を疑ってらっしゃるんですか?」
佐藤「いえ、そうじゃないんです。
防犯カメラで誰がどこの部屋に行ったのかは分かりますけど、誰と何を話したのかは分からない場合もありますから。
お兄さんがいつ犯人と接触したのか、手掛かりが無いかと思いまして」
吉郎「……それなら構いませんが、私の言うことは、力になれないかもしれませんよ?
そんな風に記録しているカメラがあるなら分かるでしょうけど、私はこの病院に時々しかいなかったんです」
午後12時28分 東都警察病院 602号室
佐藤「まず、お兄さんのご家族の構成を教えていただけませんか?
場合によっては、ご家族のかたにも心当たりを聞かなければいけませんので」
吉郎「……兄は、5年前に、奥さんと娘さんと、あと義理のお母さんとお父さんをいっぺんに亡くしてます。
兄貴以外が車に乗っているときに、事故があったそうで。
だから、兄は婿に行ってましたけど、……婿に行った先がそういう事になったので、今は家族はいないんです」
佐藤「……そうなんですか、失礼しました」
吉郎「それで『家族亡くしてストレスで激太りして、それ以来体重が落ちてないんだ』って言っていました。
で、うちの父が相当に心配しまして、父の隣の部屋に兄を住まわせていたんです。
うちの父はアパートを1軒持っていて、そこの1階に住んでいますから」
佐藤「……お母さんや、星威岳さん御本人はどちらにお住まいなんですか?」
吉郎「母は、私が高校生の頃に亡くなりました。私は群馬で探偵をやっています」
佐藤「ということは、お兄さんの顔を見て確認できる御家族の方は、弟の星威岳さん、貴方だけということですね?」
吉郎「そうなりますね……、父は今、意識がありませんから」
佐藤「では、お父さんが搬送された経緯などは聞かれてますか?」
吉郎「兄から聞いた話なんですが……
きのうの夜中の3時半くらいに、父が兄に電話して、『耐えられないくらい腹が痛いから救急車呼んでくれ』と言ったらしいんです。
慌てて兄が父の部屋に入って行って、兄が119番している最中に、父が意識を失ったそうです」
佐藤「それでは、お父さんが緊急搬送されて、お兄さんが付き添われたんですね?」
吉郎「はい。この病院に搬送されて、父が盲腸だと分かって、あれよあれよという間に手術になったと、兄から聞いています」
佐藤「星威岳さんは、手術をしている時に病院に来られたんですか?」
吉郎「いえ、私は、きのうの夕方の、手術がとっくに終わった頃に駆けつけました。
それで、完全看護だから大丈夫だろう、ということで兄と一緒に病院を引き上げて、
それから私は兄の家に泊まる、はずだったんですが」
佐藤「が?」
吉郎「風呂に入る直前に、この病院から電話が掛かってきて、
『幻の銀次さんの容態が急変したから来てくれ』って言われたんです。
また慌てて兄と一緒に病院に向かって、……結局朝になったら父の身体は落ち着きましたけど、私も兄も、夜は交代でしか眠れませんでした」
佐藤「それから、朝になって、星威岳さんはどこに行かれたんですか?」
吉郎「病院を出て銭湯に行きました。きのうの夜、風呂に入ってませんから。
……人に会うなら小ぎれいにしようと思いまして」
佐藤「人に会われる予定があったんですか?」
吉郎「はい、父がこうなる前から、元々入っていた予定があったんです。
昔東京に住んでいた時の仕事の関係で、午前10時に人に会うことになっていました」
佐藤「それで、どういった方に会われたのかお伺いしても?」
吉郎「ええ、警察の方に相談しようと思っていたことなんですが……」
佐藤「?」
吉郎「私は、1年ほど前までは東京で探偵の助手をしていたんです。
私を雇っていた探偵の方が、廃業された直後に亡くなられまして、それを機に、私は群馬で独立して探偵をしているんですが」
佐藤「そうなんですか……」
吉郎「東京で助手だった頃の事務所に、私宛の脅迫状が届いているそうなんです。
2週間くらい前から、差出人不明で何通も何通も」
佐藤「脅迫状ですか? その事務所が廃業されたというなら、手紙は宛先不明で届かないのでは?」
吉郎「その事務所が廃業された後、同じ場所で、私を雇っていた方の甥にあたる方が、税理士事務所を開かれているんです。
探偵の方も、甥の方も、同じ名字の、……金田(かねだ)という方でして、
宛先の文面が、『○○番地3階 金田事務所』だから、拒否しようが無いらしいんです」
佐藤「……それは確かに拒否できないでしょうね。
実際に税理士事務所宛ての手紙かも知れませんし」
吉郎「でしょう?
『封を開けたら星威岳宛と分かる脅迫状が、何通も届いて気味が悪い。脅迫状の内容を見に来てほしい』と連絡を頂きまして。
今日の午前10時に、その税理士事務所に行っていたんです」
佐藤「そうだったんですね。
……ちなみに脅迫状の文面はどんな感じでした?」
吉郎「『ホシーダケ! オマエのせいでオレのジンセイがメチャクチャだ! ブッコロシテヤル!』っていう内容でした。
それがパソコンで打った文面で何通も何通も……」
佐藤「内容はすべて同じだったんですか?」
吉郎「はい、すべて同じでした。
……正直、人の人生を壊すような心当たりは、全くないんですけどね」
佐藤「(……この人、被害者と顔はそっくりよね? その関係で、っていうのは有り得る……?)
そうですか、後でその税理士事務所の方に、警察が脅迫状の確認に伺うかもしれません」
吉郎「……そうですか、お願いします」
佐藤「聴取に御協力頂き有り難うございました。
これからまた何かお伺いすることがあるでしょうけど、その時はまたご協力をお願いします」
吉郎「分かりました。……えっと、ひとまず今は父の病室に居ますね」
佐藤「では、何かあった時はそちらに伺います」
RRRR RRRR……
佐藤「(警部から電話だ……)はい、佐藤です」
目暮「目暮だ、被害者の弟さんからは話は聞けたかね?」
佐藤「はい、一通りは聞けました。
被害者の遺体の身元が確認できる方は、弟さんだけのようです。
お父さんが意識が不明の状態ですし、他の御家族は皆亡くなられているそうです」
目暮「そうか……。
ところで佐藤くん、監視カメラの画像で分かった事だが、犯行可能な時間帯に談話室に入った被疑者が2人いて、そのうち1人は6階にいる。
606号室に居るはずの、片手を包帯で吊った男性だ。
検証中の者達を向かわせて足止めをさせているから、事情を聞いていてくれ」
佐藤「……! 分かりました」
※登場人物まとめ(被害者家族編)※
夢見 竜太郎:被害者。警察病院6階の談話室で刺殺された。室内のテーブルに突っ伏して寝ているときに、背後から刺された模様。
死亡推定時刻は14日の10時30分前後。
5年前に婿入りした先の家族が全滅→激太り→父の隣に転居→(3~4年経過)→会社をクビになる→デイビデオの男優になる
という人生を歩んでいた。
星威岳 吉郎:被害者の実弟。被害者と顔がそっくり。
約1年前まで東京で探偵の助手をしていたが、雇い主が探偵事務所を廃業後死亡したため、今は独立して群馬で探偵をしている。
2週間ほど前から、東京で助手だった時の事務所に、星威岳宛ての脅迫状が送りつけられていた。
星威岳 幻の銀次:被害者の実父。高齢者。都内で、自身が所有するアパートの1室に在住。
13日の午前4時に盲腸で警察病院に担ぎ込まれ、緊急手術を受けている。
以後、容態が悪化したり落ち着いたりしながら、501号室で意識不明のまま入院中。
午後12時40分 東都警察病院 606号室
ガラッ
警官G&警官H「「失礼します」」
??「……お巡りさん方、何か御用のあっとですか?」
警官G「(この片腕吊った老人、地方の人か?)
……突然すいません、ちょっと貴方からお話をお伺いしたいことがあるのですが」
??「はぁ、オイに?」(※作者註 オイ=1人称)
警官H「今日の午前中、この階の談話室に立ち入られましたよね? 自動販売機とテーブルがある部屋なんですが……」
??「……あぁ、その部屋には行っとります」
警官G「その部屋で、先ほど、人が殺されてるのが見つかりましてね」
??「えぇ!?」
警官H「それで、今日、談話室に立ち入った方々に、事情を聞いて回ってるんです」
??「オイは人殺しとは違いますよ!! この病院、オイが来たの今日が初めてですもん」
佐藤「失礼します」
警官G「あ、佐藤刑事!」
佐藤「突然すいません、警視庁の佐藤と申します。
先ほど、そちらの談話室で人が殺されてるのが発見されまして」
??「そいはお巡りさんから聞きました。それで、その部屋に行った人に事情を聞いとんでしょ?」
佐藤「はい、……失礼ですが、お名前とお住まいをお伺いしても?」
??「オイは、霧島 権兵衛(きりしま ごんべえ)です。九州から、妹の見舞いに来てます」
佐藤「そうですか……、そちらのベッドで休まれてるの、霧島さんの妹さんなんですね」
霧島 権兵衛(以下、権兵衛)「ええ、10歳以上年が離れとりますけど、オイの妹です。
肺癌で、いつ死んでも不思議じゃ無かそうで、妹から目ぇ離したく無かとですけど」
佐藤「えっと、……妹さんが肺癌で、いつ死んでも不思議じゃ無いから、目を離したくない、と」
権兵衛「ええ、すんません、訛(なま)りが取れんで」
佐藤「いえいえ、おっしゃることは大体分かりますから。
妹さん以外のご家族の方は、ここにはいらっしゃらないんですか?」
権兵衛「妹の息子の嫁さんが、いっつも妹の面倒を見とるそうです。
今日は、嫁さんは朝しか来てませんけど。
『オイが妹を見とるから、貯まった家事でもやっとかんね』って言って、オイが、嫁さんを家に帰らせたんです。
嫁さんは、昼の1時半に、またこの病室に来るそうです」
佐藤「そうですか。
お嫁さんが来られるまで、ちょっとここで話を伺ってもよろしいですか?」
権兵衛「構いませんよ、人が殺されたんですもんね」
佐藤「今そこで横になられてる妹さんは、元気な頃は、お仕事はされてたんですか?」
権兵衛「妹は医者でした、……捕まるくらいのヤブ医者」
佐藤「え?」
権兵衛「オイはよう知らんのですけど、なんか医療ミスで患者さん死なせてしまって、警察に捕まってたって聞いてます。
業務上なんとか罪で捕まって、しばらくして釈放されて、それから体調不良になって、調べたらかなり進んだ肺癌で、
……まだ地方裁判所の判決が出とらんけど、『たぶん判決前に亡くなって裁判打ち切りになるんじゃなかろうか』、って
妹の家の嫁さんは言ってました」
佐藤「そうなんですか……、妹さんのご家族もお医者さんなんですか?」
権兵衛「妹の息子はたしか医者ですよ。
息子の嫁さんは、元看護婦で、妹の息子と結婚してからは主婦だって聞きました」
佐藤「だから、普段の世話はお嫁さんがされてるんですね?」
権兵衛「……そうでしょうねぇ」
佐藤「ところで、今日、あの談話室に入られたのは、いつだったか分かりますか?」
権兵衛「……確か10時半くらいです、オイがあの部屋に行ったのは。
喉乾いて、この病室にはお茶置いてないから、自販機のを買おうと思って。
看護師さんに聞いたら、『自販機はあの部屋に有ります』って言われて」
佐藤「それで、あの部屋に入られた?」
権兵衛「はい、こんな腕でも、お茶買う分には問題無かですから。
財布から小銭出したり仕舞ったり、時間は掛かるとですけど」
佐藤「ということは、お茶を買われたんですか?」
権兵衛「ええ、ペットボトルのお茶買いました。……フタ開けるのにも、時間掛かったとですけどね」
佐藤「その時、談話室の中には、誰か居ましたか?」
権兵衛「机に突っ伏してる方が、1人おられましたけど、他には誰も。
誰か人が居れば、ボトルのフタ、開けてもらおうと思ったとですけど、……毛布被って寝とらす方を、起こすのもどうかと思って」
佐藤「……!! その人に、話しかけたり、触ったりしましたか?」
権兵衛「してません」
佐藤「その人の、寝息が聞こえたりはしましたか?」
権兵衛「……んー? 聞こえとらんと思います」
佐藤「寝てるその人と、霧島さん以外に、人はいなかったんですね?」
権兵衛「そのはずです。
他におったら、ペットボトルのフタ、開けてくれないか頼んでたと思います」
佐藤「他に、部屋に人が入ってくることはありましたか?」
権兵衛「それも、無かったです」
佐藤「ところで霧島さん、腕にギプスつけておられますが、どんな御怪我をされてるんですか?」
権兵衛「……これ、交通事故です。
道歩いてたら、車のタイヤが飛んできて、慌てて避けたけど、腕にぶつかってきて……
『ぶつかった先が胴体じゃなく、腕だったからまだ良かった』って、医者に言われとります」
佐藤「……それは、確かに。
事故に遭ったのは地元ですか?」
権兵衛「はい、掛かっている病院も地元です」
午後12時41分 東都警察病院 703号室
コンコン ……ガラッ
コナン「失礼しまーす……」
英理「あら、何かあったの?」
コナン「えっとね、小五郎のおじさんが警察に協力してるんだけど、僕が邪魔になるから、この部屋で待っておくように言われたんだ。
……僕、ここに居て良い? 音楽聞きながら部屋の隅っこで立っておくから、さ……」
蘭?「構わないよコナン君、昼ご飯食べながら、話したいことは大体話したから」
コナン「そう? 良かった……
ところで『蘭姉ちゃん』、僕が持ってきたミルクティー飲んだ?」
蘭?「飲ませて頂いたよ、昼ご飯と一緒に。
看護師さんが、昼ご飯の食器を回収するついでに、缶を捨ててもらったね、……!! ぁ!」
コナン「どうかしたの?」
蘭?「この部屋の見張りに立ってた婦警さんが、移動するみたいだね、……隣の病室の方に。
高木刑事を含む何人かと一緒に」
英理「ちょっと、『蘭』……!!」
コナン「え!? ここのドア閉まってるのに、何で分かるの?」
蘭?「や、ちょっと口が滑った、何でなのかは言えないなあ。
……当ててごらんよ? 最初に君がここに来たとき、『わたし』が出したヒントと密接に関わってるから」
コナン「……それは、召喚者のことを言わない理由の、ヒントの事? それと密接に関わってるの?」
蘭?「そうだね。
探偵なら考えてみると良いさ、……『音楽』を聴きながら」
『本人』は、俺を見つめながら笑って告げた。
だから俺は、『本人』達から目を離さずにイヤホンを付け、思考に集中することにする。
俺がイヤホン越しに聞くのは、音楽ではなく、おっちゃんに付けた盗聴器から聞こえてくる会話なのだけど。
午後12時43分 東都警察病院 705号室
コンコン…… ガラッ
高木「失礼します」
??「……何ですか?」
毛利「(監視カメラに映っていた通り、ベビーカーを連れた若い女性だな……)」
目暮「すいませんが、ちょっとお話を伺いたいことがありましてね……。
先ほど、この病院の6階の談話室で、人が殺されているのが発見されました。
その捜査の一環で、話を聞いて回っとるんです」
??「え!? 談話室って……、どこですか?」
高木「ジュースの自動販売機がある部屋です、ここの一つ下の階の」
??「ああ!! あの部屋ですか、あの部屋で人殺しが……」
目暮「ええ、そうです。
監視カメラを解析した結果、今日、その部屋に入った人がいるのが判明しました。
それで、入った人ひとりひとりに、まず事情を伺うことになりましてね」
??「それで私のところに来られたんですね、刑事さん達が……
私、あの部屋に今日は入ってますからね」
高木「はい、……失礼ですがお名前をお伺いしてもよろしいですか?」
??「蜜葉 鐘衣(みつば かねい)です」
高木「そちらの患者さんの御家族ですか?」
蜜葉 鐘衣(以下、鐘衣)「はい、……そこのベッドで寝てるの、私の主人です」
高木「では、そちらのベビーカーのお子さんは、蜜葉さん御夫婦のお子さんですか?」
鐘衣「ええ、娘です。1歳と1か月になります」
目暮「蜜葉さん、場所を変えてお話を伺いたいのですが」
鐘衣「事情が事情ですし、協力はします、けど……
私の母がもう少ししたらこの部屋に来るので、それまではここに居ても構いませんか?
母にこの子を預けてからにしたいですし、主人には誰か家族がついてた方がいいと思うし……」
小五郎「御主人、体調が思わしくないんですか?」
鐘衣「あまり長くないそうです。クロイツフェルト・ヤコブ病っていう、難しい病気で、ええっと、
……狂牛病が人にうつった事例らしいです、日本では相当珍しいって聞きました」
高木「そうなんですか」
鐘衣「うちの主人、バカなんです。
警察の方なら調べれば分かる事でしょうけど、体調おかしいのに病院行かずに、万引きして捕まって、裁判中に病気が分かって入院して」
高木「万引きですか……、窃盗罪ですね。
御主人の、その窃盗についての判決は確定してるんですか?」
鐘衣「地裁の判決は出たけど、高裁の判決はまだだったそうです。
……盗癖持ってるくせして裁判ではみっともなく足掻いてるんだから、バカみたい」
午後12時47分 東都警察病院 703号室
話したいことは大体話した、と言っていたはずだが、今はいったい何を話しているのやら。
俺がイヤホン越しに事情聴取の模様を聞いている間にも、弁護士3人と『本人』のやり取りは続いていた。
但し、やり取りと言っても、声ではなく筆談によるものだが。
『本人』が、きのうの午後の段階で、妃弁護士に日記用のノートと筆記具をねだっていたらしく、
俺が部屋に居る間は、そのノートを筆談用に転用して会話をすることになったようだ。
おかげで、俺からは『本人』と弁護士が何を話しているのかさっぱり分からない。
4人とも真剣な顔をしているから、真面目な話題なのは、ほぼ間違いなさそうなのだが……
妃英理と、七市里子と、神代杏子の3名は、『本人』と、こんな内容の筆談を繰り広げていた。
蘭?:隣の病室に人があつまってるみたい 事情聴取か?
お父さんと、目暮警部と、高木刑事と、ここの見張りに立ってた婦警と、あと男女各1名←夫婦?
↑少なくともこれだけ私の術に引っかかってるっぽい?
英理:あなた、それだけ分かるの? 術の有効範囲は?
蘭?:となりの病室までは分かるみたい。集中すれば
でも集中しても、術自体を止めることは出来ないっぽい? なんでか常時発動状態が止まらない
杏子:まるでレーダーですね
蘭?:つうかレーダーそのものだと思う。非処女と非童貞限定で引っかかるだけで
→だからそこにいるコナン君が、魔術では感知できないんだけど むしろ感知出来たら困る
里子:それはそうですよね、小学生ですから
蘭?:まあこの術も万能じゃないよ
ヤッた相手の名前は分かっても、その人本人の名前が分からないことが多いから
英理:??
蘭?:例えば、夫婦で、旦那の方を魔術で調べた時
直近でヤッた人=奥さんの名前はわかる、ヤッた場所、日時も
でも、旦那本人の名前は分からない事が多い←記憶が覗ける場合で、ピロートーク中に、奥さんが名前を呼んでない限り
英理:なるほど、じゃあ何で隣の部屋に誰々が居るって分かるの?
蘭?:お父さん→今日もう会った人、どんな情報が見えるのか確認済み→『~~な情報の人』=お父さんと判断
目暮警部→蘭は、警部の奥さんの名前を元々知ってた→直近でヤッた相手の名前が、奥さんと同姓同名→目暮警部?
高木刑事→ドアの前を歩いて行ったとき、記憶が一瞬見えた。先月ラブホで佐藤刑事とヤッてたみたい
婦警→術の範囲内に居続けてるから、場所は自然に判明
男女各1名→ヤッた相手の日時場所が同じ、名前も名字が一緒、『蜜葉』姓の夫婦? 記憶は見えないけど
英理:ありがとう
このノートのこのページ、私達が切り取って持ってたほうが良いわね
看護師さんに見られたら、書かれた人の名誉が……
蘭?:それもそうだね、こういう情報、プライバシーの最たるものだし
お願いします
午後12時47分 東都警察病院 705号室
目暮「では、お母さんが来るまでに、ここで少々話を伺ってもよろしいですか?」
鐘衣「それなら、構いませけど、……でも、この子がグズった時は中断させてくださいね。
今はお昼寝中だから大丈夫だと思いますけど」
目暮「……ああ、そうですね、それは必要な事でしょうから、構いませんよ」
鐘衣「ありがとうございます」
高木「我々は、廊下の監視カメラを調べたんですが、……蜜葉さんは、今日、あの談話室に入られてますね?
そして談話室を出てから、まっすぐこの病室に戻られて、今に至っている」
鐘衣「そうですね、その通りです」
高木「どんな用事であの部屋に入られたんですか?」
鐘衣「ええっと、自分用の飲み物を忘れていたので、自販機でお茶を買って飲もうと思って。
そしたら、娘がグズりかけたので、抱っこでなだめて、……あの部屋には結構長く居たと思います」
※登場人物まとめ(容疑者編)※
霧島 権兵衛:容疑者その1。九州在住の高齢者の男性。左腕の怪我でギプスを着けている。10時29分~35分に談話室に立ち入っていた。
年の離れた妹が、肺癌の末期でいつ死んでもおかしくない状態で、606号室に入院中。
その妹は医師なのだが、医療事故を起こし、業務上過失致死で地裁判決を受けるはずだった(死ねば裁判が打ち切りになる見込みだが)
蜜葉 鐘衣:容疑者その2。都内在住の若い女性。赤ちゃんを連れている。10時16分~10時27分に談話室に立ち入っていた。
夫が705号室に入院中。病名はクロイツフェルト・ヤコブ病。たぶん寿命はそこまで長くない。
夫は万引きの常習犯で捕まっており、高裁判決前に病気が判明し、入院している。夫との間に赤ん坊の娘が1人いる。
※登場人物まとめ(弁護士編)※
七市 里子:少年事件専門の弁護士。自身の弁護士事務所のボス。中年の女性。703号室で『本人』と筆談中。
神代 杏子:少年事件専門の弁護士。七市弁護士の事務所に勤務している。若い女性。703号室で『本人』と筆談中。
午後12時50分 東都警察病院 705号室
高木「娘さんと談話室にいた間、部屋には他には誰か居ましたか?」
鐘衣「最初は、誰もいませんでした。
……途中から、毛布を持った男の人が部屋に入ってきた、と思います。
その人は、太ってて、……黙ってテーブルの上に突っ伏して眠り始めたんです。少しビックリしたのを覚えてます」
高木「他に、誰か入ってきましたか?」
鐘衣「えっと、もし忘れてたらすいません、……居ないと思いますけど、他には」
高木「部屋に居た時、何か記憶に残った事はありますか? 何でもないことでもいいんですけど」
鐘衣「え!? そうですね……
最初にあの部屋の自販機を見た時、『温かいお茶は無いのかー』って思ったくらいでしょうか。
この季節は、冷たい物しかないんですね」
高木「では、冷たいお茶を買われたんですか?」
鐘衣「ええ」
目暮「その時、買ったお茶は今もお持ちですか?」
鐘衣「?? ……はい。カバンの中に有ります」
高木「すいません、カバンごと見せていただくことは出来ますか?」
鐘衣「え? ……構いませんけど、……あ!!」
目暮「……どうかされましたか?」
鐘衣「男性に見せるのはちょっと困る物もあって……、ビニールや袋に分けて纏めてるので、いったん選り分けさせてください」
目暮「え、ええ、そういう事なら構いませんよ。
見ての通り婦警も居るので、その分はそちらで……、君、頼めるかね?」
婦警I「はい!」
午後12時54分 東都警察病院 705号室
鐘衣「……えっと、この袋と、この袋は婦警さんにお願いします」
婦警I「はい」
鐘衣「他の物は男の人でも大丈夫です」
目暮「すいませんね、蜜葉さん」
鐘衣「いえ、警察の方もこういう事がお仕事でしょうし、殺人を疑われるのは嫌ですから。
……私を疑ってないと、こういう調査はしないでしょう?」
目暮「……何にせよ、捜査に協力していただけるのは有り難い事です。この件は重大な事件ですからな」
鐘衣「でしょうねぇ……、
まさか警察病院で男の人が刺されて殺されるなんて」
目暮&高木&小五郎「「「!?」」」
小五郎「(この位置なら、ベビーカーは守れるな……)」
小五郎「……奥さん、我々、この病室に来てから、誰がどうやって殺されたのか、意図的に全く喋っていないのですが……
何でご存知なんですか?」
鐘衣「…………
あ……!!」
午後12時56分 東都警察病院 703号室
コナン「……」
俺は、おっちゃんと警部達が、被疑者を追及する様子を聞いていた。
被疑者は、今はアウアウ言うだけで、まともな言葉を発していない。
殺人犯は誰なのか、もう分かったも同然だった。
午後12時57分 東都警察病院 705号室
鐘衣「…………
この事件ではよく考えるんですね、犯人を捕まえるために、……刑事さん達も探偵さんも」
婦警I「……貴女が、犯人なんですか?」
鐘衣「あの探偵のせいだと思ったんですよ。
あの探偵と助手が、私の義理の兄を推理ミスに巻き込んだせいで、主人は仕事を失って、盗癖を再発させて……」
高木「? 一体、何があったんです?」
鐘衣「……私の主人と、主人のお兄さんは、兄弟で同じところに勤めてました。
去年の春、その勤め先の社長が急に亡くなったんです。
それで、金田っていう探偵と星威岳っていう助手が首を突っ込んできて……」
小五郎「……」
鐘衣「あいつらの推理ミスで! お兄さん、殺人犯だと思われて一時期捕まってたんです!
それから警察の捜査で推理ミスが分かって、自殺って結論になったけど、社長の奥さんは受け入れてくれなくて……
主人もお兄さんも、あの職場をクビになったんです!
謝罪要求しようと思って金田の探偵事務所に行ったら、親戚の人の税理士事務所になってて……
笑える話ですよね!
……あの探偵の行方を聞いたら、謝罪もしないで、体調を理由に事務所を畳んで、その翌週に亡くなってたんですって!」
目暮「それで、何故あの人の殺人に結びつくのかね?」
鐘衣「お兄さんはともかく、主人は仕事が見つからずにストレスで万引きして、逮捕されて、
挙句の果てに病気でここに入院する事態になって……
あの探偵はもうこの世にはいないから、あの助手に手紙送りつけて気味悪がらせようと思って……」
高木「(手紙? 何の事だ……?)」
鐘衣「……そうしたら、きのう、この病院であの助手を見つけたんです!
6階のあの部屋でジュース買っているところに居合わせて、同じエレベーターに乗って、
5階の『星威岳』って名札のある病室に入っていくのを見て、……運命の巡り会わせだと思いました」
高木「それで、今日あの談話室で殺したと?」
鐘衣「ええ。
……いつか殺す機会があると思ってました。
それが今日になるとは思ってなかったけど……」
目暮「何をやっとるのかね! アンタが殺したのは別人だ!」
鐘衣「……え?」
目暮「刺し殺された被害者の名前は、夢見 竜太郎!
アンタが殺したのは、アンタが狙った探偵の助手でなく、その助手の実のお兄さんだ!」
午後1時2分 東都警察病院 703号室
警部が犯人に事実を告げ、そして説教する声が、俺の耳に入ってくる。
――1歳の子が居るのならば、まずその子のことを考えなかったのか、と。
警部が言う事はもっともだろう。
父親がいずれ死ぬことが確定的なのだから、母親がこんな風な事をするべきではなかった。
仮に、あの談話室の前に監視カメラが無かったとしても。
警察は、被害者の家族関係を調べるだろうから、星威岳探偵が助手だった頃の因果から、犯人を見つけ上げていたはずだ。
犯人を連行するのだろう、その705号室で、誰かがドアを開けたらしい音が聞こえ……
同時に、この703号室で筆談に夢中だった『本人』が、顔を上げた。
蘭?「隣の部屋、……話し合い、終わったみたいだね」
コナン「(何で、隣の部屋の動きが分かるんだ?
俺はおっちゃんに盗聴器付けてたけど……、隣の部屋のドアの音は、こっちまで響いてこないはずだよな?)」
言いながら、『本人』は、筆談していたノートのページを破き、七市弁護士に渡す。
蘭?「弁護士さん、これ、……誰かに読まれたら不味いから」
里子「ああ、……そうですね」
ガラッ
コナン「あ、おじさん!」
小五郎「あー……、こっちの事件はほぼ解決したんだが、……そちらの話し合いはどんな感じで?」
蘭?「『わたし』が話したいことは大体終わった、……弁護士さん達は?」
里子「そうですねぇ、……今日話すことはほぼ終わったと見ていいかと。
明日またたくさん話したいことがありますが」
杏子「ですね……」
英理「ということで、今日の弁護士さんとの話し合いは終わりね」
小五郎「そうか。
……ところで、何のノート持ってんだ?」
蘭?「日記だよ、まだ何も書いてないけど」
コナン「さっきまでそのノートで弁護士さん達と筆談してたよ! おまけに書いた紙、破いて弁護士さんに渡してた!」
小五郎「……え?」
蘭?「男の人に読まれたら困る内容なんだよ、内容は『お父さん』でも見せられないなぁ」
英理「……そうね」
里子「でしょうね……」
小五郎「……まあ、弁護士さん方がそうおっしゃるなら、筆談の内容は追及しませんが……」
里子「ともかく、今日は、私と神代はここで失礼しますね」
蘭?「そうですか」
英理「今日は有り難うございました、明日もよろしくお願いします」
杏子「はい、明日も、お願いします」
小五郎「本当に、……よろしくお願いします」
蘭?「で、……『お父さん』」
弁護士が出ていくなり、『本人』の表情が真面目なものに変わった。
蘭?「家族だけになったところで真面目な話をしたいんだけど」
小五郎「……何だ?」
蘭?「今後の『わたし』の人生のことについて」
コナン「(おい、えらく突然な話だな)」
蘭?「今の『わたし』の状態で、……『サキュバス』と『蘭』が混ざった今の人格の状態で、
もし仮に『わたし』が何か人生に関わる決断をしたとして、……『お父さん』は、その決断を応援してくれるのかな?」
小五郎「……内容によるな。
娘の人生を左右するものなんだから、それこそ無条件に応援するとは言える訳がないだろう」
蘭?「……
ははは……、そっか、……そーだよねぇ、『父親』なら、『娘』が大事なら、そういう答えが当たり前なんだよねぇ……」
小五郎「お、おい! 泣きかけてないか?」
蘭?「いや、大したことないよ、『サキュバス』の記憶が、余計に惨めになってね」
英理「え?」
蘭?「『サキュバス』の父親、ロクな親じゃ無かった、から。
あっちの文化的に近親相姦もタブーなのにね、アイツら、私が父の子を産んでから死ねって財産目当てで押し付けてきて!
そんな、そんな『サキュバス』がボロボロになるたくらみに、一番乗り気で意見を押し付けてきたのが父親だった、から……」
コナン「(あー なるほど……)」
小五郎「おい大丈夫か、……『サキュバス』」
蘭?「大丈夫だよ『毛利探偵』、……むしろ吹っ切れた」
小五郎「え?」
蘭?「たぶんこれから、……『わたし』は、色んな決断をすると思う。
その決断に、貴方が賛成するかしないかは分からないけども、……ただ」
英理「……ただ?」
蘭?「ただ、その決断がどれだけ馬鹿馬鹿しいものに見えたとしても、それは『わたし』が考えて考え抜いた末のことなんだ、
……って、それだけは頭に入れておいてほしい、なぁ」
小五郎「……ああ、分かった。
それだけは覚えておこう」
午後9時45分 毛利探偵事務所
服部「何やそれ! 結局その被害者は、人違いで刺し殺されたんか?」
コナン「ああ、……兄弟で顔がそっくりだったからな、太ってるかどうかの違いはあったけど。
殺された方は、酷いとばっちりだよな。
生き残った弟の星威岳探偵も大変だろう、犯人は探偵がきっかけで殺意を持ったわけだし、それに……」
服部「それに、何や?」
コナン「今日、夕飯食べている最中に、ここの事務所に星威岳探偵が電話してきたんだけど……
盲腸で入院中だった星威岳探偵の父親も、今日、亡くなったそうだ」
服部「……つまり、その星威岳探偵は、実の兄貴が刺殺された後に、父親を盲腸で亡くした、と。
それは、……確かに大変そうや。てか、何でその探偵がそっちの事務所に電話してくんねん」
コナン「……ああ、それは、単にお礼の電話を掛けてきただけだ。
おっちゃん、その談話室での殺人事件の第1発見者になった上、警察の捜査に協力したから。
その事を、星威岳探偵は警察から聞いて、初めて知ったんだとさ」
服部「そうか……」
コナン「警察の聴取でおっちゃんの事を聞いてびっくりしていたら、父親が危篤になって病院に呼び出され、病院に戻った直後に父親に死なれて、
霊安室で葬儀社の車待っている最中に、おっちゃんへのお礼を言ってないのを思い出して、携帯で事務所の番号調べて電話したんだと。
『……ひょっとしたら、次から次から色んなことが起こったから、星威岳探偵は混乱してるのかもしれない』って、
おっちゃんがボヤいてた」
服部「……そりゃそうやろ」
コナン「俺も同感だ」
服部「……話変わるけど、入院中のねーちゃんはどうやったんや?」
コナン「ああ、そのことなんだけど……、悪ぃ、誰か来た、切るぞ」プチッ
ドタドタドタドタ…… バタン!!
小五郎「おい坊主! まだ寝てないよな!?」
コナン「? どうしたの、おじさん?」
小五郎「今連絡があった! ……『蘭』が病院から消えた!!」
コナン「え!?」
小五郎「急で悪いが、お前は、ここで留守ば、……いや、博士の家に泊めてもらえないか頼んでくれ!
これから、俺が何時に帰って来れるかは分かんねえんだ!」
コナン「……待ってよおじさん! 僕も病院についてく! 僕、この格好で今すぐ出れるから!」
午後10時10分 東都警察病院 703号室
入院患者が突然消えたために、鑑識を始め多数の捜査員が出入りする室内。
【どこで】消えたのかと、【どうやって】消えたのか、が推測できるが故に、鑑識は、病室のある場所を執拗に調べていた。
それは、個室であるこの病室の、トイレである。
監視カメラの記録を見る限り、廊下の監視カメラは正常で、かつ、患者本人が部屋を出入りする様子は映っていなかった。
一方、病室のトイレは、壁が変色しており、床が砂まみれであり、
そして何より、『本人』が書いたと思われるノートが、蓋を閉めた洋式便座の上に広げてあった。
トイレの壁の変色は、かつて『毛利 蘭』が保護された時の、魔法陣が展開された後の床の変色に似ており、
トイレの床の砂は、同様に『毛利 蘭』が保護された時、床が砂まみれであったことを思い出させるものだった。
そして便座に広げてあったノートの文面を見れば、ここで『誰が』『何を』したのかが一目瞭然であった。
――ふたつの人格が混ざった、今の、わたしの決断です。
ひとまず今は、サキュバスを召喚した人の元へ向かいます。
だから、ここからまた、召喚の陣を開いて向かいます。
これから更に決断するために、必要な知識を探しに行きます。
いつ戻るのか分からないけれど、いつか蘭は戻ってくるでしょう。
【第2話完 第3話へ続く】
149 : ◆oJG7c/xJmM - 2013/11/03 23:24:39 .PohWtZ. 139/754ということで、第2話完です。
第2話は読者の方からお題を募集した三題噺でした。
お題は、「名前」「推理ミス」「記憶」でしたが、お題の入れ方はそこまで丁寧ではないですね。
同様に、今から投稿する第3話も読者の方からお題を募集した三題噺で、
「楽器」「電気ウナギ」「元太の過去」がお題となります。
まず安価を取りますね。
↓1~3くらいまで
事件に出てくるモブの名前を決めます。名字と名前をそれぞれ一つずつどうぞ。適当に組み合わせて出します。
150 : 以下、名... - 2013/11/04 00:49:26 L7RVIWGM 140/754大山 桜子
151 : 以下、名... - 2013/11/04 01:00:49 RtkmDGHg 141/754一 一(にのまえ はじめ)※漢字表記で日本一短い名前
野田 江川富士一二三四五左衛門助太郎 (のだ えがわふじひふみしござえもんのすけたろう)※漢字表記で日本一長い名前
>>150-151
安価どうもです。
↓1 冒頭のシーンをどこから始めるか決めます。
『警察病院』か『召喚者の居る所』か『その他』から選択して下さい。『その他』の場合は希望する場所の記載をお願いします。
153 : コバトン - 2013/11/04 14:35:07 yMGWfuq6 143/754召喚者のいるところ
【第3話】【前編】 へ続く。