「いたいいたいいたい!!」
杏子「おい、いてーよさやか!お前には優しさってモンがねーのかー!?」
さやか「杏子が落ち着きないからあたしもやりづらいんじゃん!ちょっとじっとしててよ」
杏子「いやだってそこの黒いのがなんかマキロン構えてるし」
ほむら「誰が黒いのよ、誰が。じっとしてなさい。私も治療するわ」
杏子「なにが治療だよ!こんなバックリいってる切り傷にマキロンって!魔法で治るんだから消毒必要ないし!ただの嫌がらせだろ!」
ほむら「ええ、嫌がらせよ」
杏子「おいっ!」
ほむら「当然じゃない。私達がどれだけ心配したか!」
ほむら「なにが地獄で会おうぜ、よ。お望みならすぐに地獄を見せてあげるわ」
杏子「お、おい落ち着け!なあさやか!あの悪魔になんか言ってやってくれ!」
さやか「いやあたしからはなんとも…」
杏子「マミっ!マミ助けて!」
マミ「暁美さん」goサイン
ほむら「じゃあ、杏子」
ほむら「地獄で会おうぜ」b
~♪
まどか「ん?メール…」
まどか「あっ」
まどか「よかった!みんな無事だぁ」
まどか「よかった…本当に」
まどか「それにしても…ティヒヒ、杏子ちゃんすごい顔!」
まどか「ほむらちゃんも生き生きしてるし」
まどか「にしても…クローゼットから杏子ちゃんが出てきたときはビックリしたなぁ」
ピンポーン
マドカァー!
まどか「あ、みんなだ!おかえり~」
こうして、私達は波乱の夜を越えた。
だが、すぐに私達は思い知ることとなる。
真の波乱はこれからだと…。
ー翌日ー
まどか「おはよーっ!みんなー!」
仁美「おはようございます、まどかさん」
さやか「おぃーっす…」ボロボロ
ほむら「おはようまどか…」ゲッソリ
まどか「えっ!?さやかちゃんもほむらちゃんもどうしたの?なんだかやつれてない?」
まどか「それに杏子ちゃんがいないみたいだけど…?」
仁美「それが、おふたりとも昨晩徹夜で電話してたそうですの」
まどか「そうなの?」
さやか「いやぁちょーっとだけのつもりだったんだけどねぇ」
仁美「それと、佐倉さんは昨日やっと連絡がついたそうなんですが、今日もやっぱりお休みだそうです」
まどか「そ、そっか!でも連絡ついたなら良かったねえ」
まどか(すっかり忘れてた、杏子ちゃん行方不明ってことになってたっけ)
さやか「仁美ぃ~あたしもう歩けないよ!肩貸して~」
仁美「もう、仕方ない方ですわね。ほら、つかまってください」
ほむら「私も、ちょっと辛いわ。まどか、肩貸してくれないかしら」
まどか「うん、いいよ。はい、つかまって?」
ほむら「ありがとう」
私はまどかの肩につかまると、そっと耳打ちした。
ほむら「徹夜で電話っていうの、ウソよ」ボソボソ
まどか「そんな気がしたよ」ティヒヒ
ほむら「昨日まどかを家に送り届けたあと、みんなでマミさんの家に行ったの」ボソボソ
まどか「えぇー、私も行きたかったよ」ボソボソ
ほむら「あの時はもう深夜だったじゃない」ボソボソ
私達は魔法少女の事情を知らない仁美さんに聞こえないよう、声量に注意しながら続ける。
ほむら「それに、まどかが想像してるような集まりじゃないわよ。ただみんなのケガをさやかに治してもらってただけだから」
まどか「みんなすごいケガだったもんね…」
ほむら「ええ。ケガがすごすぎて、さやかの体力と魔力がもたなかったわ。さやかが顔まで青くなったあたりで、マミさんと交代したんだけど…」
まどか「うんうん」
ほむら「結局、外傷を治すだけで精一杯だったわ。特に杏子が酷くて。かなり衰弱してて…」
ほむら「さすがに杏子を起こして、ムリに学校に連れていくのは酷だから置いてきたの」
まどか「置いてきたってマミさん家?もしかして、いま杏子ちゃんひとりなの?」
ほむら「いえ、マミさんが看病に残ったわ」
まどか「なら安心だね!ところでほむらちゃん達もだいぶ辛そうだけど…。大丈夫?今日はお休みした方が良くない?」
ほむら「私達はなんとか。寝不足と疲労と筋肉痛だけだから」
まどか「うわぁ。それでも学校は辛いよ」
ほむら「全身バキバキよ…。今日体育があったら休んでたかもね」
まどか「ティヒヒ、そうだね。でも私、みんなが無事で本当に嬉しいよ」
ほむら「ありがとう。何度かもうダメかもって場面もあったけど、まどかのためと思えばなんとか切り抜けられたわ」
まどか「もう、ほむらちゃん!」ティヒヒ
さやか「ふたりとも遅いぞー!早くしないと置いていっちゃうよー?」
まどか「あー!待ってよさやかちゃん」
ほむら「ま、待ってまどか。急に走らないで。足がつりそうで…」ヨタヨタ
波乱とは、言うまでもなく学校のことだ…。
文化祭一週間前。
そしてその後には中間考査。
「ーけみ!」
その間も、魔女狩りは欠かせない。
「ぁけみ!」
私達魔法少女は多忙だけれど、ここまでいろいろ重なったことはないかもしれない。
ほむら「まったく、頭の痛い話ね」ムニャ
「暁美!!」
ほむら「は、はいっ!?」ガタッ
先生「お、やっと起きたか。何度呼んだと思ってるんだまったく」
ほむら「すみません…」
先生「それにしても、お前が授業中に居眠りなんて珍しいな。昨日は遅かったのか?」
ほむら「はい…。ちょっと美樹さんと長電話をしてしまって」
先生「とにかくだ。友達ができたようでなによりだが、日常生活に支障が出ない程度に頼むぞ。学生は学問が本業なんだからな」
ほむら「はい…(まあ、私達の本業は魔女狩りなんだけれどね)」
ほむら(っていうか、呼ばれてるなら起こしてよまどか)テレパシー
まどか(ティヒヒ、あんまりほむらちゃんが気持ち良さそうに寝てるから、起こし辛くて)テレパシー
まどか(それより、ほむらちゃん。ヨダレついてる)
ほむら「っ!!?」ゴシゴシ
まどか(逆っ!逆のほっぺただよほむらちゃん!)
ほむら(…死にたい///)ゴシゴシ
先生「お、やっとヨダレに気づいたか。じゃあ気づいたついでにこの問題前出てやってみろ。お前なら楽勝だろう」
ほむら「わかりました」
_________
_______
ほむら「死にたいわ」
まどか「その、元気だして?ほむらちゃん」
仁美「そうですわ。とても可愛らしかったですわよ」
ほむら「可愛い…」
仁美「ええ。とても」
ほむら「………」
ほむら「ああ…。私の培ってきたクールキャラが崩れていく」
まどか「無理してツンとしてるより、自然なほむらちゃんの方がいいと思うよ」
ほむら「違うのよ、まどか。その…違うのよ。そういうんじゃなくて」
仁美「なんだか暁美さんの意外な一面を見てますわ」
さやか「おーす、皆の衆!」
ほむら「あら、おはようさやか」
さやか「まったくみんな冷たいなあ!休み時間もとい、さやかちゃんタイムがやってきたなら教えてくれればいいのに」
まどか「いろいろ開き直りすぎだよさやかちゃん…」
ほむら「そうよ。あなた、数学ヤバイって嘆いてたじゃない。寝ててよかったの?今日は大事な所やってたわよ」
さやか「ん?そこはほら、仁美とかほむらとかいるし!3日あればじゅーぶん!」
仁美「前のテストの時もそう言って間に合わなかったような」
ほむら「そうよ。だいたい私も今回のテストは危ないわ」
さやか「騙されないぞ!ほむらは前もそう言って5計400叩き出したじゃんか!」
まどか「ほむらちゃんは忙しいのに、なんだかんだ言って良い点数取るからすごいよねえ」
まどか「私も見習わなくちゃ」
仁美「私の好敵手は控えめだから恐ろしいですわ。今回も負けませんわよ」
ほむら「…いえ。勝ち越されたままじゃ私も気分が悪いもの。今回は勝たせてもらうわ」
ほむら(い、言ってしまった…。杏子のせいで今回は本当にまずいのに)
ほむら(意地だけで発言する癖、直さないと…)
さやか「おーおー、ハイレベルな戦いだこと。あたし達はついてけないよ。ねー?まどか」
まどか「そうだねえ。でも、そろそろ受験も近いし、私なりに頑張らないと」
さやか「やめてえええ!受験なんて言わないで!あたし死んじゃう!」
まどか「ティヒヒ、私もまだ全然考えてないから大丈夫だよさやかちゃん」
まどか「あ、そうだ!さっきの授業でさやかちゃんが寝てる間におもしろいことがあったんだよ」
さやか「むむ、それは興味深い。だれ関係?」
ほむら「…まどか?」
まどか「あのね、意外だろうけどほむらちゃんが」
ほむら「ちょっとまどか!」
まどか「ティヒヒ、ほむらちゃんがねー」
ほむら「まどかあぁ」
仁美「………」
ー昼休みー
さやか「くぁ~!やっとお昼だーっ!」
仁美「さやかさんは休み時間になると本当に生き生きしますわね」
さやか「そらぁそーよっ!あたしは休み時間のために学校に来てるようなモンだからねー」
まどか「ほむらちゃん、起きて?もうお昼だよ?」ペチペチ
ほむら「……」ゴロン
まどか「寝返りうっただけかぁ」
まどか「仕方ないなあ。ごめんねほむらちゃん」
まどか「起っきろー!地震だぞー!」ガタガタ
ほむら「きゃあああ!」ビクッ
ほむら「ちょっと!机揺らすのは反則よ!驚き死ぬかと思ったじゃない」
まどか「だってほむらちゃん、普通に起こそうとしても全然なんだもん」
さやか「つーかあんたも、この前あたしを起こす時これやったじゃん」
ほむら「…謝るわ。これは、かなり心臓に悪いわね」
さやか「うむうむ、分かればよろしい!」
仁美「しかし、本当に珍しいですわね。暁美さんが授業中こんなに寝るなんて」
さやか「まあ、今日はしょーがないよね!」
まどか「うん。昨日が昨日だったからねえ」
仁美「昨日は、みなさんご一緒でしたの?」
ほむら「違うわ。ただ、ちょっと電話が長引いただけで」
さやか「そーゆーこと!さ、お昼食べよう!」
仁美「…………」
ー屋上ー
杏子「よーっす。遅かったじゃねーか」モグモグ
まどか「え?きょ」
さやか「杏子ぉ!?なんであんたここにいるのよ!」
杏子「いやなんでって…あたしも学生だし。体調が良くなれば来るもんだろ?」
ほむら「今日一日くらいはゆっくり休めばよかったのに」
杏子「いや、5時間目英語だしさ。あたし英語苦手だし、ここ数日休んじまったからな。出とかねーと」
さやか「きょ、杏子がなんか勉強の話してる…」
さやか「あんたやっぱりまだ体調悪いんじゃないの!?」
杏子「はあ?なんでそうなるんだよ」
ほむら「そうよ。杏子は最近ずいぶん勉強してるわよ」
さやか「マジで」
杏子「大マジだ」
杏子「今度こそ、さやかをぶっ倒してやる」ケタケタ
ほむら「またあなたは…」
前のテストでも、こうして啖呵きった上負けてソウルジェム濁らせてたくせに…。
仁美「あ、あの…佐倉さん、右目はいかがされたんですか?」
しまった、と思った。
杏子が昨夜右目をケガしてたのはみんな知ってたから、つい杏子の眼帯をスルーしてしまっていた。
それもみんなして。
ちなみに、潰れた目も一応治療は可能で、事実ちょっとは視力が回復しているとか。
ただ、繊細な器官なだけあって、治療には膨大な魔力が必要らしい。
さやかでも一回じゃ回復しきれないので、数回に分けることになった。
その間は雑菌が入らないように眼帯をしていよう、というわけだ。
一応、仁美さんの前では魔法少女ネタを控えるよう気を使っているのだけど、これは逆に反応しなくちゃ不自然だったわ。
杏子「んぁ?これか。3日前ちょっと蜂にやられてなー!」
仁美「まあ。それでお休みしてたんですの?」
杏子「いやー?それは別。ちょっと富士五湖を巡ってみたくなってね。行ってきた」
また杏子はわけわからない嘘をつく…!
仁美「それは素敵ですわね」
まあ、仁美さんもなかなか天然だから誤魔化せたけど…。
杏子「突っ立ってないで、お前らもメシ食えよー。あたしだけ食べ辛いじゃんか」モグモグ
ほむら「食べてるじゃない」
杏子「気にすんな」
ー6時間目・学活ー
早乙女「はい!ではみなさん、文化祭まであと一週間を切っています。張り切って準備しましょう!」
早乙女「私は生徒の自主性を重んじるので、みなさんの好きにして大丈夫です。困った時だけ相談してください」
早乙女「では私は後ろで読書しています」つ【哲学で見る結婚】
さやか「先生どんどん迷走していくねー」
まどか「心配だねえ」
ほむら「私はぜんぜん進行しないお化け屋敷作りも心配だわ」
杏子「まーなんとかなるだろー」
ー番外編・学活のマミさんー
ーーお昼前に杏子が目覚めて登校したため、疲労と筋肉痛と寝不足をおしてマミさんも一緒に登校したのだった!
マミ「くっふっ」カチカチ
マミ(なかなかバーが来ないわ。テトリスは諦めて、ちょっとずつ消しちゃおうかしら)
マミ(いえダメよ!ここまで来たら粘らないと)
マミ(レベル13から別次元になる。その前にできるだけスコアを…)
「巴さーん、次出番だからよろしく」
マミ「え?うん、わかったわ」
マミ「ふぅ」チラッ
【GAME OVER】
マミ(せっかくいいところまで行ったのに、邪魔しないで欲しいわ)
マミ(まあ、リハーサルならしょうがないけど)
マミ(どうせ私の通行人Cの役なんていてもいなくても一緒じゃない)
「はーい、じゃあ『叛逆の物語』シーン7!行くよー!」
マミ(まあ、劇名はすごくいいけど)
主役(赤)「…なんだよ、これ」
主役(黒)「大丈夫、敵はいままで攻撃してこなかったわ」
通行人C(マミ)「………」ユラユラ
主役(黒)「なら、普段通りの生活をしていれば目をつけられることはないということ」
主役(赤)「じゃあどうすりゃいいんだよ?」
マミ「………」ユラユラ
主役(黒)「あなたは普段通りに過ごしていて。あとは、私がなんとかする」
マミ「………」ユラユラ
マミ(やっぱり私、必要なくない?)ユラユラ
ー1週間後・文化祭ー
まどか「ほむらちゃーん!こっちこっち!」
ほむら「もう、そんなに急がなくても席なら杏子と仁美さんが取っておいてくれてるでしょう?」
まどか「早すぎて困ることなんてないよ!」
ほむら「ちょっと待ってったら…」
杏子「おっ!来たか!」
仁美「『叛逆の物語』もうすぐ始まりますわよ」
まどか「楽しみだねえー」ソワソワ
ほむら「そうね。リハーサルを見た先生方の話によれば、相当のクオリティみたいよ」
杏子「まっ!マミのやつは通行人Cだけどなー」ケタケタ
仁美「そのみなさんのお知り合いの、巴さん?が出たら教えてくださいね?」
杏子「おっ!始まった!」
仁美「…………」
ツンツン
仁美「佐倉さん?」
杏子「あれだよ、マミ。あの使い魔達のどれか」
仁美「…揺れてますね」
杏子「揺れてるな」ケタケタ
仁美「あのうちの、どれかは…」
杏子「それはあたしにもわかんねーや」
仁美「あ、舞台裏に行っちゃいましたね」
杏子「ほんと一瞬だな!」
仁美「………」
杏子「………」
まどか「はーっ!面白かったね!」
ほむら「そうね。最後まで展開が読めなかったわ」
仁美「黒い方が可哀想でした…」
ほむら「そうかしら?彼女にとってはあれが一番の結末だと思うわよ」
杏子「わっかんねーな。あれじゃなあさ…」
さやか「むっ!遅いよ!交代の時間過ぎてるよ?」
まどか「ごめん、ごめん。劇の感想で盛り上がっちゃって」
ほむら「すぐ交代するわ」
私達のお化け屋敷は、午前と午後でシフト分けされている。
さやかは、午前中の吸血鬼担当。
私が午後の吸血鬼を受け持った。
ちなみに、私と劇を見たまどかも杏子も仁美さんも、午後のお化け担当ね。
さやか「まったくさー、みんなほむらに付いて行っちゃって。あたしは寂しいよ」
杏子「しょーがねえだろー?マミが出るのは午前の方の劇なんだから」
さやか「いいよいいよ。あたしはマミさんと周るからー!」
さやか「じゃ、あと頼んだよ、ホムラ伯」
ほむら「まかせてちょうだい、サヤカ伯」
杏子「お前らノリノリだな」
さやか「で、あたし以外全員午後の担当ですよ!あいつら薄情すぎ!」
マミ「まあまあ。ところで、私なんかと一緒でいいの?例の彼は?」
さやか「んー?恭介ですか?あいつも午後の担当ですよ。友達、中沢っていうんですけど、そいつと一緒がいいらしくて」
マミ「あら。取られちゃったわね」クスクス
さやか「あーあ。マミさんくらいですよ、あたしの相手をしてくれるのは」
さやか「あっ!餃子ドッグだ!これ食べてみたかったんですよー」
マミ「な、なんだか得体の知れない食べ物ね…」
さやか「意外とイケますね、餃子ドッグ。このごたまぜ感がなんとも」
マミ「そうね。お腹も膨れるし」
マミ「あ、ここいいかしら。私の数少ない友達が多分いまいるのよ」
さやか「数少ないとか多分とか、ネガティブ要素多いっすね…」
マミ「もはや私はそこらへん割り切ってるわ。さあ行くわよ」
【神社】
さやか(神社て…。文化祭で神社って。得体が知れなさすぎる)
ガラッ
さやか「………」
さやか(なんだここは)
さやか(薄暗い教室に、ピンクのネオン。謎のジャズミュージックに、ことごとく覆面をしているスタッフ…)
さやか(どこからも、神社のエレメントを感じない)
さやか(魔女結界かここは)
マミ「残念、友達はいないみたいだわ」
さやか「そ、そうっすか…」
マミ「せっかくだし、おみくじ引いて行きましょう?」
さやか「お、そこは神社ですねー!あたしも引きます!」
マミ「どれどれ…」ピラッ
【末吉】
頭上注意。食べられます。
マミ「えーっと?どういうことかしら」
さやか「こーゆーのって、大抵わけわかんないこと言われますよね」
さやか「てゆーか、末吉と吉ってどっちが良いんですかね?」
マミ「言われてみると確かに知らないわ。末でもなにか付いてるんだし、吉よりは末吉じゃないかしら」
さやか「でも、末ってなんかマイナスイメージありますよ?」
マミ「まあ、わからないことを考えても仕方ないわ。美樹さんも引いたら?」
さやか「おっ、そうですね。では早速!」ピラッ
【凶】
友達の二股はやめましょう。
さやか「げえっ!凶だ」
マミ「またリアルな訓戒がきたわね」
さやか「友達の二股~?覚えがないなあ」
さやか「あっ!マミさんのことだったりして」
マミ「美樹さん!鹿目さんと私、どっちが大事なの!?」
さやか「うーん、あたしは…仕事かな!」
マミ「それ、女の子に一番言っちゃいけない言葉よ」クスクス
さやか「まあ、まどかもマミさんも友達っていうか仲間みたいなくくりですからね!大丈夫です!」
マミ「またよくわからない理屈ね」クスクス
さやか「あっ!そうだ!次あそこ行きましょうよ!」
杏子「そーゆーわけだ!健闘を祈ってるぜ!」
「はーい!」
杏子「はい、次の人どうぞー」
杏子「って、お前らかよ」
マミ「お前らなんてひどいわ。これでも客なのに」
さやか「そうだぞ杏子!ちゃんと仕事なさい!」
杏子「うぜえ。マミはともかく、さやかはタネも仕掛けも知ってるじゃねーか」
さやか「だからこそ、の楽しみもあるのだよ!さあさあ、早く案内してよ!」
杏子「はあ。友達の前でこーゆーことするの死ぬほど恥ずかしいんだぞ。思えば前もバイト中来やがって」
杏子「まあいいや。コホン」
杏子「あー、ようこそ来てくれた。命知らずなバカ野郎ども」
マミ「どうゆう設定なの?」ボソボソ
さやか「そんなディープな物はないです。適当です」ボソボソ
杏子「お前達を今回呼んだのは他でもない、最高にスリリングな冒険を用意できたんだ」
杏子「もちろんお前達なら二つ返事でOKなんだろ?…やっぱりな!いいぜ、最高にクレイジーだ!」
マミ「………」
さやか「………」
杏子「じゃあ、いよいよ冒険の内容を説明しよう。この先にある洋館がある」
杏子「伝説の吸血鬼、ホムラ伯爵の洋館だ。ここに潜入してもらう」
杏子「目標はただひとつ。洋館のどこかに隠されているマスケット銃を探し出してくれ」
杏子「このマスケット銃がホムラ伯爵の唯一の弱点なんだ。だからホムラ伯爵はそいつを隠しちまった」
杏子「臆病だよな?心臓の毛の数ならお前らが圧勝だ!」
杏子「まあとにかく、そいつを持ってこれればいい。まだ昼だから、ホムラ伯爵は寝てるはずだ」
杏子「ホムラ伯爵の手下どもの妨害はあるだろうが、お前達ならきっとできる!頼んだぜ!」
杏子「あ、あと最後に。ホムラ伯爵に会ったら、なにを差し置いてでも逃げろ。助かりたければな」
杏子「じゃあまあ、そーゆーわけだ!健闘を祈ってるぜ!」
マミ「佐倉さん」
杏子「おいおい、いまの私はキョーコ・サクラじゃない。さすらいの仕事あっせん人にして…」
マミ「佐倉さん」
杏子「なんだよ、せっかく人が役に徹してんのに」
マミ「昨日、急にマスケット銃くれってせがんだのはこれだったのね」
杏子「え、いや?ま、まあ…だって」
マミ「別にいいけどね」
マミ「さ、美樹さん。行きましょう」
さやか「は、はい!」
杏子「やべーよ…。なんかマミ怒ってるぞ」
杏子「おっと。はーい!次の人どうぞー!」
マミ「結構薄暗いわね」
さやか「そうですねー。いくら懐中電灯配ったとはいえ、これはちょっと暗いです」
さやか「製作者として反省ですね」
マミ「でも、なかなか雰囲気あっていひゃああぁ!?!?」ビクッ
さやか(そろそろ来ると思った)
マミ「なに!?コンニャク!?」
「やったね仁美ちゃん」ボソボソ
「気持ちいいですわねまどかさん」ボソボソ
さやか(丸聞こえだよふたりとも)
マミ「くっ意外と油断ならないわね」
さやか「あたし達の製作ですから!」
コツ……コツ……
さやか「ん」
マミ「さがって美樹さん。何か近づいてくるわ」
さやか(マミさんが戦闘モードだ)
???「ふふ、私の家に立ち入る愚か者はあなた達かしら?」
マミ「そういうあなたは自分の弱点を隠した臆病者ね?」
さやか(マミさーん!!ノリノリか!)
さやか(違うよ!これ違うやつだから!!そしてあたしのクラスメイト大体聞いてるからやめてー!!)
ホムラ「私の名はホムラ伯爵…え?お、臆病ではないぞ」
さやか(そしてほら!ほむらはアドリブ弱いんだから!)
マミ「ふふ、覚悟しなさい。絶対にマスケット銃は手に入れるわ」
ホムラ「そ、そうか。どうせムダだろうが、せいぜいムダな足掻きをするとよい」
さやか(ほむらー!キャラがブレてるよ!登場した時はお姉様キャラだったじゃん!)
マミ「あら。ムダかどうか決めるのは私達よ」
ホムラ「そうね…」ザッ
さやか(逃げたなほむら)
___________
_________
マミ「コンニャクとか落とし穴とか、物理的なトラップが多いわね」
さやか「ちゃんと安全は考慮してますよー。楽しい文化祭がケガで台無しなんて最悪ですからね」
マミ「ならいいんだけど…。あら、ずいぶんと長い通路ね」
さやか(ああ、ここか)
マミ「なんだか露骨に怪しいけど、進むしかないのよね」
ズボボッ
「女子が来たぞー!」
「触れ触れー!」
「うおおお!!」
マミ「きゃあああ!」
マミ「な、なによこれ!」
マミ(魔女結界に勝るとも劣らない強烈な負のオーラ…!なんて真に迫ったお化け屋敷なの!)
さやか(中沢が、壁から一斉に手を突き出す案を出した時は感心したもんだけど)
さやか(こーゆー下心からとは。しかもこの中に恭介がいると思うとやるせない)
さやか(ん?あの手は…)
手「ぐりんぐりん」
さやか(…あの、CDレコーダーを叩き割った傷痕のある手は…)
さやか(恭介、あたしはあんたにこんな事をさせるために魔法少女になったんじゃないぞ)イラッ
さやか「……」スタスタ
マミ「美樹さん?」
さやか「ふんっ」バシッ
恭介「痛いっ?!」
中沢「どうした上條!?」
恭介「くっ今回の子は凶暴みたいだ。一旦手を引こう」
マミ「いろいろあったけど、ようやくマスケット銃を手に入れたわ」
さやか「これマミさんのにソックリだと思ってたんですけど、本当にマミさんのだったんですね」
マミ「本当、あの子は。暴発でもしたらどうするのよ」
さやか「でもそれ、火薬も魔力なんですよね?一般人が触る分には大丈夫なんじゃ」
マミ「………それもそうだわ」
さやか(忘れてたんだ)
ホムラ「そっその銃は!」
さやか「あ、ホムラ伯爵」
ホムラ「おのれええ」
ホムラ「うわああ身体が溶ける」
ホムラ「くうう、覚えてなさい。私は不滅。いずれまた機会を図って復活してやるわ」サッ
さやか(マミさんに喋らせるヒマを与えない作戦か。やるなほむら)
さやか(でも客観的に見るとそれはただ勝手に溶けた人だぞ)
マミ「………」
マミ「どうやら、正義は為されたようね」
さやか(もうやめて)
ー放課後ー
さやか「ふーっ!満喫しましたなー」
まどか「そうだねー。楽しかった!」
さやか「あ、まどか達神社は行った?」
まどか「行ったよー。なんかこう、独特だったね」ティヒヒ
ほむら「独特というかなんというか…。ひたすらシュールだったわ」
ほむら「おみくじも謎だったし」
さやか「お、ほむらも引いたの?なんだって?」
ほむら「それが…友人と衝突するかも。発言には気をつけて、的なことを言われたわ」
まどか「ほむらちゃんなら大丈夫だと思うけどなあ」
ほむら「そうでもないわ。私、口下手だから。知らない内に傷つけているかもしれないし」
さやか「しっかし、せっかくの文化祭なんだから前向きなこと書いて欲しいもんだよねえー!」
さやか「最初から大吉しか入れとかない、とかさ!」
まどか「それじゃあありがたみないよう」ティヒヒ
杏子「そうだぞー!ハズレあってこその当たりってもんだ」
さやか「あっ!杏子。報告終わったんだ」
杏子「おう。やー、実行委員なんてやるもんじゃないね。めんどくせーったらありゃしない」
ほむら「あら。けっこう適任だと思うけど」
まどか「ねー。杏子ちゃんの受付、カッコいいって人気だったよ」
杏子「あー!受付といえばさやか!よくも茶化しに来てくれたな!ご丁寧にマミまで連れて来やがって」
ほむら「それについては私からも文句があるわ。なんであんなにマミさんノリノリなのよ!しかもさやかはフォローもなしにニヤニヤしてるだけだし!」
さやか「まあまあ、ふたりとも。楽しかったんだからいいじゃない!」
杏子「ったく。ほんとお前調子いいよなー」
ほむら「まったくね」
杏子「それで、そのさ、マミ、まだ怒ってるかな?」
さやか「ああ、マスケット銃の件?あれなら怒ってないよ。暴発が心配だったみたいだけど、火薬も魔力ですよねって言ったら、なら安心ねって笑ってた!」
杏子「なんだよ!ビビらせやがって」
まどか「杏子ちゃんでもやっぱりマミさんは怖いんだ」ティヒヒ
杏子「いや、あいつ怒るとケーキくれないんだ…」
ほむら「完全に胃袋を握られてるわね」
さやか「そーいや、杏子はおみくじどうだったの?さっきの発言から察するに大吉ですかなー?」
杏子「いや?中吉だった。水難注意だって」
ほむら「マミ難の間違いでしょう?」
杏子「……」
さやか「…ん?暁美さん?なんて言ったのかな?」
ほむら「なっ!なんでもないわよ」カアア
さやか「いやいや!面白かったよ!もう一度言ってみなって!」
ほむら「なんでもないって言ってるじゃない!」バシ
さやか「わーっ!ほむらが怒ったー!」
ほむら「さやか!待ちなさい!」
まどか「『発言注意。友人と衝突するかも』かあ…」
杏子「おみくじ当たったな!あたしも水に気をつけねーと」ケラケラ
さやか「あはは!遅いぞほむらー!」
ほむら「くっ!魔力のドーピングがないとやっぱり敵わないわね」ハアハア
仁美「あら?さやかさんに暁美さん」
さやか「うわ、ちょ仁美どいて!」
ほむら「あ!仁美さんそいつ捕まえて!」
仁美「よくわかりませんが、きっとさやかさんが悪いのでしょう。承知しました!」
仁美「はっ!!」
さやか「タックル!!?」ガハッ
ほむら「やっと捕まえたわさやか!覚悟なさい!」
さやか「あはは!ちょ、くすぐらないで!」
ほむら「だめよ!謝るまで許さないわ!」
さやか「あははは!ごめん、ごめんったら!ひーっ!」
仁美「あの、おふたりとも」
ほむら「?なにかしら」ピタッ
さやか「もうお嫁に行けない…」ハアハア
仁美「このあと、みんなでファミレスで打ち上げがあるそうなのですが、おふたりともどうですか?」
さやか「んー、ごめん。あたしらはパスで。このあと予定入っちゃってて」
仁美「まあ。そうなんですの?残念ですわ」
ほむら「ごめんなさい」
仁美「いえ。予定があるのでしたら仕方ありませんわ」
さやか「ごめんね。今度、みんなで遊ぼうよ」
仁美「ええ。また、今度」
さやか「じゃ、行きますか」
ほむら「そうね」
仁美「……………」ブスッ
ーマミ宅ー
杏子「マミおかわり」
マミ「まだ食べるの!?」
杏子「当然だろ?あたしを不当な理由で怒ったんだ。迷惑料、迷惑料」
マミ「本当にこの子は…」イソイソ
ほむら(なんだかんだ嫌そうではないのよね、マミさん)
さやか「しっかし、マミさんの劇面白かったねえー」
杏子「お前はマミが出てない方のやつしか見てねーじゃん」
さやか「だってほむらがじゃんけんに勝っちゃうんだもん。あたしだって午後の吸血鬼が良かったのに」
ほむら「じゃんけんの結果をどうこう言うのはみっともないわよ」
まどか「でも、結末はちょっとかわいそうだったね」
杏子「そーだな。黒いのが救われねーや」
ほむら「そうかしら?彼女自身、自分の行動が正しいかどうかもわからないし、迷いや葛藤もあるでしょうけど、それでもあの結末を選んだのは他でもない彼女よ」
ほむら「かわいそう、というのはちょっと違う気がするわ」
さやか「でも、黒い奴は少なからず罪悪感は感じてるみたいだよね。結果だけみればかなりハッピーエンドに近いのに、なんとなく後味がさっぱりしないのはそれだと思うよ」
マミ「みんな議論してくれて嬉しいわ。シナリオを書いた人も、そういう議論をして欲しかったみたいだから」カチャカチャ
まどか「あの、黒い人が導かれておしまい、じゃあダメだったんですか?」
マミ「そうねえ、クラスでもずいぶん意見が割れたんだけど」
マミ「ハッピーエンドのためのストーリーって、つまらないじゃない。ハッピーエンドにするためにキャラクターと世界観を設定するんじゃ、やっぱり魅力的な物語ってできないわ」
マミ「舞台とキャラクターを作ったら、あとはキャラ達が思い思いに動いてくれた方が、物語にハリが出ると思わない?」
マミ「ストーリーは、その結果紡ぎ出されるもの。今回は結果的にハッピーエンドとはいかなかったけれど、代わりにキャラクター達、とりわけ黒い人の人格というか、人間性は余すことなく表現できたと思うの」
ほむら「たしかに、切れば血が出そうなほど生き生きしたストーリーだったわね」
杏子「なんだよ、その表現…」
さやか「じゃあ、マミさんはどちらかと言うとこの結末派なんですね」
マミ「私?私は…」
マミ「テトリス派かしら」
杏子「ブレねえな」ケラケラ
マミ「というか、こっちで良かったの?みんなクラスの打ち上げにお呼ばれしてるなら…」
さやか「このお茶会がいいんですよ!あっちより絶対楽しいです」
杏子「どーせ、打ち上げなんて言ってもみんなで話してるのは最初だけで、後半はいつもつるんでるメンツとしか話さなくなるしな」
さやか「だったら、マミさんいた方が楽しいよね」
ほむら「仁美さんには悪いことしちゃったけどね」
まどか「うん…仁美ちゃん」
さやか「まあ、仁美とも今度遊べばいいじゃん!」
まどか「うーん。そう、だね」
マミ「その、良かったらその志筑さん?も招いていいのよ?」
杏子「気ぃ回さなくていいよ。ここはここ、あっちはあっちだ。変にゴタマゼにするとかえってめんどいぞ」
杏子「それに、魔法少女ネタも話せなくなっちまうしな」ケラケラ
まどか「杏子ちゃん達はいつも仁美ちゃんの前でも魔法少女ネタ言ってるよう」ティヒヒ
さやか「あはは、たしかに!」
まどか「いつもフォローしてるの私なんだからね?」ジトッ
杏子「……」
さやか「……」
杏子「その、ごめん」
さやか「シェイシェイですまどか」
ほむら(まどかがおこだわ)
______
____
さやか「じゃあみんな!また学校で!」
まどか「今日もごちそうさまでした」
マミ「はいはい、もうすっかり遅くなっちゃったし気をつけて帰るのよ」
まどか「はーい」
ほむら「さやか、まどかを頼むわよ」
さやか「おうともよ!暴漢なんて現れた日には、さやかちゃんが刻んじゃうよ!」
マミ「ふふ、頼もしいわね」
ほむら「遠慮はいらないわよ。徹底的にやりなさい」
杏子「うわ、こいつ目がマジだぞ」
まどか「ティヒヒ、もうみんな心配しすぎだよ」
ほむら「それじゃあ、また」
まどか「うん!またね!」
マミ「さて、ふたりは帰ったことだし、片付けないと」
ほむら「手伝うわ」
杏子「あれー?マミ、あたしのお菓子袋どこー?」
マミ「知りません!常日頃から整理しておかないから失くすのよ」
杏子「くそー。あれ秋限定のロッキー入ってんだぞ」
ほむら「というか、あなたも手伝いなさいよ」
杏子「しゃーねえな」
マミ「このあと、暁美さんはどうするの?」カチャカチャ
ほむら「どうせ家に帰っても一人だし、もうちょっとお邪魔していくわ」カチャカチャ
杏子「お、なんださみしいのか?」カチャカチャ
ほむら「べつに」パッパッ
杏子「あ、そうだ。ほむら、アレありがとな」
ほむら「アレって?なにかあげたかしら」
杏子「あれだよ!爆弾。あれのおかげであたしは助かったんだ」
ほむら「ひょっとして、前あげた私の爆弾!?」
杏子「ああ。うまくキリカの目をごまかせたよ」
マミ「魔法少女が爆弾なんて。もっとマジカルに戦うべきじゃない?」
杏子「みんなが皆マミみたいになんでもかんでも魔法でできるわけじゃねーんだよ。臨機応変にいかねーと」
ほむら「マミさんの魔法は汎用性が高すぎるのよ。私のこのしょっぱい魔法でどうマジカルに立ち回れって言うの」
マミ「ふたりとも万能魔法みたいに言うけど、私だって最初はリボンだけで戦ってたのよ?」
マミ「こんなものでどう戦うのよ!ってQBに食ってかかったのも一度や二度じゃないわ」
杏子「へー。マミがなあ」
ほむら「ちょっと想像つかないわね。いまじゃ紅茶まで出せるのに」
杏子「なー」
マミ「要は、応用よ。佐倉さんだってあの鎖は後付けの魔法でしょう?」
杏子「まーな。幻覚が使えなくなったってんで、あの時は必死こいて研究したなー」
マミ「魔法少女は条理を覆す存在だもの。暁美さんだっていろいろ工夫してみれば新しい魔法が使えるようになるかもしれないわよ?」
ほむら「工夫…」
ほむら「盾をたくさん召喚して、マミさんみたいに一斉掃射?」
マミ「それは…マシンガンの方が攻撃力ありそうね」
杏子「絵面がカッコ悪そうだしな」
ほむら「……」
ほむら「盾から展開されるシールドを洗練して、剣の形に固定する?」
杏子「それじゃあ手首のスナップが効かないから扱い辛いだろ」
マミ「第一、美樹さんの剣で十分だしね」
ほむら「…やっぱりいまのスタイルが一番な気がするわ」
杏子「ま、魔力を節約できるって面では割とうらやましいしな」
杏子「それに、あたし達だってマジカルに立ち回れてるかって聞かれたらそーでもねーし」
マミ「え」
杏子「そーだろ。銃に槍、剣ってどこもマジカルじゃねーぞ」
ほむら「たしかにそうね」クスクス
杏子「マジカルステッキ振り回して、ビーム当てたら敵が花びらにーって感じだろ。魔法少女って」
ほむら「さすがにそこまでではないんじゃ…肉弾戦とかもするんじゃない?」
杏子「いや、あたしはそーゆーアニメはあんまり見なかったから知らねーんだけど…」
ほむら「…そう」
ほむら(プリキュアは肉弾戦もするのよ)
マミ「……」
マミ「マジカルステッキ出す魔法、練習しようかしら」
杏子「マジでやめとけ。バックリいかれても知らねーぞ」
杏子「っていうかさ、なんかお前らあたしが無事だったのに驚いてたな。てっきり知ってるかと思ったぞ」
ほむら「連絡もよこさないでよく言うわ」
杏子「いや、ほむらの盾の中にはあたしの槍も入ってんだろ?そいつが無事なんだから、あたしも無事に決まってんじゃん」
ほむら「あ」
マミ「言われてみれば確かにそうね…」
杏子「まあこっちとしてもその方が動きやすかったけどな」
ほむら「なんかムカつくわね」
マミ「さて!こうしてるのもなんだし、映画でも観る?」
ほむら「あ、マミさん。私あれが観たいわ。この前途中まで観た、遺伝子のやつ」
マミ「ああ、ガタカね?いいわよ。これは本当にいい映画で…」
杏子「映画もいいけどさ、ちょっと夜風に当たりたくない?」
ほむら「?いいけど、どうしたの急に」
杏子「べつに、特別な理由はないよ。ただ、そーゆー気分なだけだ」
杏子「ちょっと、話もあるし」
特に断る理由もないので、私たちは杏子の散歩に付き合うことにしたわ。
でも思ったより冷え込んでいたので、早速私は後悔し始めていた…。
ほむら「すっかり冷えてきたわね。もう息が白いわ」
マミ「そうね。最近急に気温が変わるから嫌だわ」
ほむら「私、冬物の服あんまり持ってないから仕入れたいんだけど、今度付き合ってくれないかしら」
マミ「いいわね!私もちょうど新しいトレンチコート欲しかったのよ」
杏子「マミ冬物のコートならもう持ってるじゃん」
マミ「ちょっと前着てみたらもうキツくなってたのよ」
杏子「へー。そりゃ良かったなー」
マミ「良くないわよ!また服買わないと。佐倉さん、私のお古着る?」
杏子「着ねーよ。マミとは趣味が合わない」
マミ「あら、可愛くない。暁美さんは?」
ほむら「私もパスよ。まだ、いろいろ足りないから」
杏子「まだ、ねえ」ニヤニヤ
ほむら「なっなによ。希望を持つのが間違いだというの?」
杏子「いやー?好きにしたらいいんじゃねーの?」
ほむら「杏子だって人のこと言えないじゃない」
杏子「お前よかマシだ」
マミ「しかし、そうなると困るわね。服を捨てるのって手間だし、売っても大したお金にならないし」
マミ「誰かがもらってくれるのが一番なんだけど…」
ほむら「さやかあたりだったら喜ぶと思うわ」
杏子「お、そうだな。あいつならいろいろピッタリだ」
マミ「まあ、ショッピングは決定として、その辺は今度集まったときに話してみるわ」
ほむら「ショッピング、明後日の放課後なんてどう?わりとすぐ欲しいの」
杏子「あたしは大丈夫だぞー」
マミ「私も空いてるわ」
ほむら「決定ね。まどかとさやかも誘っておくわ」
杏子「おう」
ほむら(さて、ネットでコーディネート調べておかないと)
ほむら「そういえば、杏子の話って?」
杏子「ああ、それな」
杏子「ちょっと座って話したいんだ。そこの広場なんてどう?」
ほむら「いいけど…。やけに改まるのね。あなたらしくない」
杏子「うっせ」
マミ「まあまあ。いいじゃない、暁美さん。この子だってセンチメンタル入ることだってあるわよ」
ほむら「杏子も人の子だものね」
杏子「お前ら人をなんだと思ってやがる」
ほむら「あえて言うなら猫っぽいかなと」
杏子「よーし、そこになおれ。槍でひっかいてやるよ」
マミ「だめよ佐倉さん、『伏せ』」
杏子「伏せねえよ!?!!」
杏子「あーもう嫌だ。お前らなんかキライだ」
ほむら「拗ねないでよ」
マミ「ごめんなさい。佐倉さんの話、聞きたいわ」
杏子「うぜー。超うぜー」
杏子「じゃあおしるこ缶くれたらいいぜー?」
ほむら「おしるこ…。この時期から売ってるかしら」
マミ「微妙ねえ」
杏子「あったかくて、ある程度腹にたまりそうなもんならなんでもいいよ」
ほむら「というか、いつの間に何かを要求する立場になってるのよ」
杏子「だってあたしが真面目な話しようとしてんのにお前らが茶化すから」
マミ「しょうがないわねえ…」
杏子「おっ!さすがマミ。物分りがいいな」
______
____
マミ「はい、おしるこは無かったからコーンスープ」
杏子「サンキュー」
マミ「はい、暁美さんにはコーヒー。ブラックでよかった?」
ほむら「ええ。ありがとう」
カシュ……ゴクゴク
杏子「はぁーっ温まるなあ」
ほむら「そうね」
マミ「で、佐倉さん」
杏子「…ああ」
杏子「あたし、さ。今回のキリカの件で夢ができたんだ」
ほむら「夢?」
杏子「ああ。あたしは家族に死なれてからいままで、ずっと生きるために生きてたんだと思う」
杏子「…まるで、動物みたいな生活さ。お前らと会うまでは弱肉強食とか言って、魔法の力で…他人が努力して得た食いぶちを奪ってた」
杏子「お前らと会ってからも…いや、マミとは和解か。特に目標も持たずに日々を溶かしてたと思う」
杏子「ただ、毎日を適当に…その時々が楽しけりゃいいや、ってな」
マミ「…佐倉さん」
マミ「でも、それは…仕方なかったじゃない。あなたは確かに悪事を、時には犯罪を働いたかもしれない」
マミ「でもそれは、生きるためでしょう?誰だって追い詰められればそうなるわよ」
ほむら「そうね。少なくとも、あなたみたいな境遇になったことのない連中にあなたを責める資格なんてない」
ほむら「暖衣飽食に包まれて、生命の危険に晒されたこともない安全圏にいる連中が、おもしろ半分であなたに石を投げつけるというなら」
ほむら「私はそいつらを、決して許さない」
マミ「それに、私たちと一緒に過ごすようになってからだって、あなたはただ、当たり前の…」
杏子「…ありがとな、ふたりとも」
杏子「でも、あたしが言いたいのはそーゆー事じゃないんだ」
杏子「生きるために生きてきたあたしだけど、そんなあたしに夢ができたんだ」
杏子「それも、途方もなくでっかいのだ!」ニッ
杏子「あたしの一生を捧げても叶えらんないだろうな…」
杏子「それに、どうせ魔法少女やってんだ。長生きはできねーだろ」
マミ「………」
ほむら「杏子…」
杏子「だからさ、せめてこれからはその夢に向けて全力で突っ走りたい」
杏子「そんで、死ぬ瞬間になったら…ああ、あたしはやりきったぞって、満足して死にたいんだ」
杏子「これからは、死ぬために生きる。そう決めた」
杏子「だから、あたしの覚悟が揺らがないように、お前らには言っておこうと思ってさ…」
マミ「佐倉さん…。それは、寂しくて、カッコいい覚悟ね」
マミ「私は応援するわよ!あなたのそんなに輝いた目、久しぶりに見たもの」
杏子「へへ、そうかな…」
ほむら「私も、応援するわ。…ただ、ちょっと気に食わないわね」
杏子「…なんかヘン、かな」
ほむら「ええ」
マミ「それはそうね。私も気に食わないわ」
杏子「…なんだよ、ふたりそろって」
ほむら「私達にも手伝わせなさいよ。ひとりでカッコつけちゃって、ずるいったらないわ」
マミ「そうよ。ひとりで突っ走るなんて、寂しいじゃない」
杏子「あ……」ポカン
杏子「…へへ」
杏子「あはは!なんだよ!お前らこそカッコつけてんじゃねーよ!」
ほむら「なっ」
杏子「あははー!くっせーセリフだなあ。マミのがうつったんじゃねーの?」
マミ「ちょっと!どーゆー意味!?」
杏子「そのまんまだよ!」ケラケラ
ほむら「なによ!茶化すなって言うから人が真剣に聞いてやったのに!」
マミ「そうよ!それで佐倉さんが茶化してくるのはおかしいんじゃないの!?」
杏子「ごめん、ごめん!ただあんまりにも息が合ってて、それがおもしろくてさ!」
ほむら「…もう知らないわ。勝手にやってりゃいいじゃない」
杏子「ごめんったら!やさぐれるなよ!」
杏子「素直に嬉しいよ、ふたりとも。なんか手伝って欲しいことがあったら言うよ。頼りにしてる」
マミ「最初からそう言えばいいのに。素直じゃないんだから」
ほむら「まったくだわ」
ほむら「それで、肝心なことを聞いてないけど」
杏子「ん?」
ほむら「夢って、なんなの?」
杏子「…あー」
杏子「笑わない?」
マミ「さあね」クスクス
ほむら「保証はできないわね」
杏子「なんだよ、言いづらいなあ」
杏子「………」
杏子「…世界を、救いたいんだ」
ほむら「………」ポカン
マミ「また大きくでたわね…」
杏子「これさ、オヤ…、父さんの夢だったんだ」
杏子「あの人は、結局中途半端で死んじゃったから…」
杏子「あの人の夢を継げるのは、もうあたしだけだ」
杏子「あんなにも、他人を思いやってた優しい人がいたんだ。…その心意気だけでも、この世に残してやりたい」
ほむら「杏子…」
マミ「でも、どうやって?この世には人々を苦しめる魔王、なんて都合のいい存在はいないわ」
マミ「戦う相手すらわからないのに…」
杏子「それは、あたしにもわっかんねーや!」ケラケラ
ほむら「えー。早速行き詰まってるじゃない…。大丈夫なの」
杏子「だから面白いんじゃん!あたしは塗装された道なんて歩きたくない」
杏子「行くなら、未開の獣道だ」
マミ「佐倉さんらしいわね」クスクス
杏子「でも、ひとつだけ決めてることがある。…魔法少女の力は使わない」
杏子「あたしが自分で努力して掴みとった、みんなが認める力だけで勝負したい」
杏子「だから当面の課題は、勉強だな!あはは!さっそく鬼門だよ」
ほむら「だから最近、授業に積極的なのね」
杏子「まーなっ!相変わらず訳わかんねーけど」
ほむら「そこなら私も協力できるわ」
マミ「私もよ。わからない所があったら遠慮なく聞いてね」
杏子「ありがとな、ふたりとも」
杏子「………救世についてだけどさ。まだなんの指針もないけど…なんとなく、こうしたいなーみたいなのはある」
杏子「…あたしが死んだフリしてた頃、千歳ゆまって子に会ったんだ」
杏子「そん時、さやかには止められてたけど、魔女狩りに行ったんだよ」
杏子「その時の魔女は、ある家庭をまるまる取り込んでた。あたしが結界に乗り込んだときには、一人を除いては皆殺しだった」
マミ「その、ひとりっていうのが…」
杏子「ああ。さっき言ったゆまって子だ」
杏子「…ゆまは、両親からひどい虐待を受けてたみたいだ。おでこにはタバコを押し付けられたらしい火傷の痕があったし、それ以外にも生傷がたくさんあった」
ほむら「………」
杏子「でも、どんなにひどい親でも、やっぱり子どもにとっちゃあこの世にただふたりだけの両親なんだよな」
杏子「ずいぶん、ダメージ負ってるみたいだった」
マミ「……佐倉さん」
杏子「…泣きつかれたよ。キョーコ行かないでってさ…」
杏子「一瞬、めんどう見てやろうかとも思った。でもあたしだって根無し草の居候だ。これ以上マミに迷惑はかけらんねー」
マミ「よかったのよ、連れて来ても」
杏子「ムリすんなよ。あたし一人でも結構キツイだろ?そこまではして貰えねーよ」
杏子「…悔しいけど、いまのあたしがあいつにしてやれる事はなにもなかった」
杏子「大丈夫だからって頭撫でてやって…。ただ、警察が来るのを待ってただけだ」
杏子「笑っちゃうよな。なにが大丈夫なんだよ。天涯孤独の身がどんなに辛いか、あたしは良く知ってるのに」
杏子「ましてや、あいつにはマミみたいに無条件で受け入れてくれる、頼れるやつなんていない」
杏子「ほむら達みたいな仲間もいない。魔法少女の力もない」
杏子「あたしより、ずっとひどい」
ほむら「……理不尽ね。生まれつき全てを与えられている者もいれば、両親との温かな家庭…そんな当たり前の物さえ与えられてない者もいる」
杏子「ああ。あたしは、ゆまみたいな子を救いたいと思うんだ」
杏子「わけわかんねー世の中からの理不尽におびえる子たちに、家族の温かさを教えてやりたい」
杏子「…孤児院なんか、いいかもな」
マミ「それは尋常な道じゃないと思うわよ?人ひとりの人生を変えるのがどんなに大変か」
ほむら「そうね…。案外、人間の運命って変えにくいわよ」
杏子「うわ、ほむらが言うと説得力あるなー」
ほむら「でしょう?」
杏子「でもそんくらいのが、やり甲斐あるさ」
ほむら「というか、あなたは世界を救いたいんじゃないの?」
杏子「結局、世界なんてあたし達がこうして過ごしてる日常風景の連続だろ」
杏子「だったら、目に着いたところからやってくだけさ。そうして出来た流れが、いつかめぐりめぐって世界を救ってくれねーかな…って」
杏子「いま考えてんのは、そーゆー感じだな!でも、所詮は知識も経験もない馬鹿ないち女子中学生の考えだ」
杏子「いつか、勉強して、もっともっと世間を知った時…また別の考えになってるかもしれないね」
ほむら「…私は、素敵だと思うわ。ちょっと羨ましいくらい」
杏子「ん?」
ほむら「私は、まどかを救うためにがんばってきて…あなた達のおかげでそれを達成できた」
ほむら「いまの私だって、杏子の言う生きるために生きてる人間だわ」
ほむら「何度ももう諦めようかと思ったはずなのに…いまは目標があることが少し羨ましい、かも」
マミ「私だって、人生の目標なんてないわね…。いままでは生きるだけで精一杯だったから」
マミ「佐倉さんや暁美さん達と過ごすようになって、ようやく余裕が出てきたんだから」
杏子「…じゃあさ、ふたりの目標が決まるまでは、あたしの夢に付き合ってよ!」
ほむら「奇遇ね。私も協力させてって言おうとしたところだったんだけど」
マミ「私もよ。なんなら一生付き合ってあげる」
杏子「そっか。そりゃー頼もしいなあ」ケラケラ
マミ「…私も、人助けしたかったのよ。魔女狩りだけじゃなくて」
マミ「私は、それだけの十字架を背負ってるから。幾多もの魔法少女を見殺しにした…」
杏子「…魔女は元は魔法少女だからな。でもまー、仕方ないんじゃないの?そーゆー仕組みなんだから」
マミ「…違うわ。私は、QBと最低の契約を結んだの。魔法少女を見殺しにするっていう」
ほむら「…!マミさんそれは」
マミ「いいのよ。いまの佐倉さんには、知っておいてもらいたい…いえ、言わないと失礼だわ」
ほむら「………」
杏子「どーゆーことだ?お前らふたり、あたしに何を隠してんだ」
マミ「ちょっと前に、魔女がぜんぜん現れなくなったことあったでしょう」
杏子「ああ、あれには参ったな」
マミ「あれ、QBの仕業だったの。私たちが邪魔だから、兵糧攻めでジワジワ殺すつもりだったそうよ」
杏子「…!マジ、かよ。いや、あたしも妙だとは思ってたんだ。でもまさか、アイツがそんな露骨な手に出るなんて…」
マミ「QBは、魔法少女の裏事情が広まるのを恐れてたわ。だから私は約束したの」
マミ「この見滝原周辺で魔法少女がいても、魔女化するまでは一切接触しない。だから魔法少女を、いえ魔女を増やしてくれ、って…」
ほむら「約束は守られた。いまも私たちは魔法少女を見殺しにし続けている」
杏子「それは、胸くそ悪いな…」
マミ「…幻滅した、かしら?こんな悪い私で」
杏子「………」
ほむら「杏子、聞いて。マミさんは私たちのために」
杏子「いや、幻滅するわけねーじゃん…。あたし達はもともと、そーゆー存在だ」
杏子「ただ改めて客観的に見ると…ひどい仕組みだな。あたし達ぜってーロクな死に方しねーよ」
ほむら「…そうでしょうね。織莉子達との戦いだって、大分危なかったし」
マミ「死んだら地獄行きね」
杏子「まあお前らと一緒なら、地獄もたいがい悪くねーんじゃねーかなって思えるよ」
ほむら「地獄で会おうぜ、だっけ?杏子」
杏子「ああもう!ほむらお前それ引っ張りすぎだ!誰だってハイになればそーゆーセリフ出てくんだろ!」
ほむら「残念、私はハイにならない年中低血圧女よ」
杏子「あー、クールぶっちゃってさー!」
マミ「私はわかるわよ佐倉さん。ハイになったなら、仕方ないわよね」
杏子「あたしはお化け屋敷でハイになれるほどではないかな」
マミ「なによ!せっかくかばったのに!何事もハイになった方がいいでしょう?」
杏子「見境なくはやめてくれよ。あたし達が恥かくんだ」
マミ「ちょっと!佐倉さん!」
ほむら「ふたりとも。あまりハイにならないでくれる?低血圧には辛いノリよ」
杏子「うわ、ひとりですましやがって!」
マミ「あら、でもわたし暁美さんが泣き虫なの知ってるわよー?」
ほむら「え!それ持ち出すのは反則でしょう!」
マミ「暁美さんたら私にとっては初対面なのに、いきなり泣きついてきたのよ?」
ほむら「ちょっとマミさん!」
杏子「えー!マミ、よく話聞いてやったな!あたしだったら追い出してるよ」
マミ「んー、佐倉さんでも話は聞いたと思うわよ。なかなか可愛いかったから」
ほむら「この話やめない?」
杏子「あたしは興味あるなー。マミとほむらのファーストコンタクト」
マミ「言ってなかったかしら?あの時は…」
ほむら「やめてマミさん、せめて私のいないところにして…」
______
____
杏子「そろそろお開きにするか?明日が辛くなるだろうし」
マミ「そうね、もうけっこうな時間だと思うわ」
ほむら「私はすでに辛いんだけど」
杏子「知るか」ケラケラ
マミ「まあまあ。お互いまた理解が深まったと思わない?」
ほむら「人の恥ずかしい過去をほじくるのは理解じゃないと思う」
杏子「…でもまあ、なんつーの」
杏子「これからもよろしくな、ふたりとも。もう魔法少女の友達は作っちゃいけねーんだろ」
マミ「そう捉えたことはなかったけど…確かにQBとの約束を考えるとそうなるわね」
ほむら「そうね…。まあもともと魔法少女同士が仲良く、っていうのも珍しい気はするけど、それでもちょっとさびしいわね」
杏子「あたしは、お前らがいりゃ十分だよ」
マミ「私もよ。これ以上を望むのは贅沢よね」
ほむら「…まるで私が欲張りみたいじゃない」
ほむら「私だって、みんなとやっていけるだけで幸せよ。何度も、どれだけ私がこの未来を夢に描いてきたことか…!」
ほむら「だから、長生きしてね。今回みたいなのはなしよ」
杏子「ああ、今回は悪かったよ。まあお前よりは強いつもりだから安心しな」
ほむら「あら、私だって時間停止なしでキリカと渡り合ったわ。案外大差ないんじゃないの?」
杏子「おかしいな。あたしが聞いた話だと、何もないところですっ転んでたらしいけど?」
ほむら「あっ!あれはキリカが私の片脚だけに速度低下をかけたからで!」
マミ「あれはそうゆうことだったのね。やっと納得したわ」
ほむら「さすがに何もないところで転ばないわよ、マミさん…」
杏子「ま、つまるところお前らは、魔法少女の仲間で、同じ夢を追う同士なわけだ」
杏子「頼りにしてるぜー?」
マミ「…ええ。これからもよろしくね」
ほむら「勘違いしないで欲しいのは、私にだって夢ができるかもしれないこと」
ほむら「あくまで、臨時の夢として手伝うのよ。…結果として、最後まで付き合うことになるかもしれないけど」
杏子「わかったよ。ありがとう」
マミ「美樹さんと鹿目さんにも、この話してあげなきゃね」
ほむら「今度のお茶会あたりね」
杏子「おう。楽しみだな」
ほむら「じゃあ杏子。救世の第一歩として、今度のテストがんばらないとね」
杏子「だなー。…あれ?テストって来週じゃん」
マミ「そういえばそうね。文化祭の余韻ですっかり忘れてたわ」
ほむら「そうよ!忘れてた!じゃあショッピングなんて余裕ないじゃない!」
杏子「あの学校、マジで頭おかしいよ。あたし達を忙殺する気か?」
マミ「ボヤいたって仕方ないわ。今度のお茶会は勉強会も兼ねましょう」
ほむら「そうね…。なんか仁美さんに敵対意識持たれてるし、がんばらないと」
杏子「ほむらはループで答え知ってただけなのになー?」
ほむら「でも、毎回一緒じゃないわよ?」
マミ「そうなの!?」
ほむら「ええ。同じ試行を繰り返しても同じ結果とは限らないのよ」
ほむら「どんな些細で小さな遠因が、結果を塗り替えるかもわからない…。私たちが織莉子に勝てたのもこのおかげかもね」
杏子「いや、そりゃ違う。単にあたし達が強えーからだ」
マミ「っと。本当に時間が危なくなってきたわ。いまから何時間寝れるか…」
杏子「おう。けーるか」
ほむら「ええ。じゃあふたりとも、また明日」
マミ「ええ。また明日!」
杏子「じゃーなー!」
ほむら「杏子。マミさん。…がんばって世界を、救いましょう」
杏子「…そうだな」
マミ「そうね」
ほむら「…………」スタスタ
この話を大人が聞けば、きっと笑い飛ばすのだろう。
世間知らずだ、社会に出ればそうは言ってられないーー。
ならば私は問いたい。
あなた達のやっていることはなに?
これが社会のルールだと言って、自分がかつて受けた理不尽をそのまま下の世代に押し付ける。
だから世の悪習は途絶えることはない。
そんな奴らが、杏子の夢を笑うなんて片腹痛い。
世の中を良くしたいと願うのは子どもっぽい?
そうゆう理想を打ち捨てて、社会に迎合して流されて、自分だけは這い上がって弱者を貶して石を投げつける。
それが大人になるということなら、私は大人になんてなりたくない。
一生、そんな大人を軽蔑し続ける。
こんな私の考えも、中学生の戯れ言だと一蹴できるから大人はズルい。
だけどきっと、子どもであり続けるということはとてつもなく難しいのだろう。
守るべき家族や、自分自身のためにどんな理不尽にも耐えて頭を地面に擦り付けて…そんな過程で、夢もなにも摩耗してしまうのかもしれない。
…私たちはこの子どもっぽい夢を、世間から守り通せるのだろうか。
それは、これからの私たちに問うしかないだろう…。
ーテスト後ー
さやか「終わったーっ!」イェーイ
さやか「そして終わったああああ!!」ガバッ
まどか「風物詩だねえ…」ティヒヒ
さやか「もう嫌だ…。なによ点Pって!動くなよ!」ガーッ
さやか「ねーっ?まどか!」
まどか「私は、今回けっこう自信あるかなぁ。ほむらちゃんと勉強したから!」
さやか「そ、そんな…!裏切り者めーっ!」
まどか「さやかちゃんも誘ったじゃない。そしたらゲームするのに忙しいって言うから」
さやか「あぁ…。過去のバカなあたしを誰か救って…」
さやか「あっ!杏子はどーだったんだろ!おーい杏子ぉー!」
さやか「杏子どんくらいできたー?」
杏子「ここってさ、これで合ってるかな」
ほむら「ええ、そうね。これは要するに、傾きが同じってことだから」
仁美「あ、でもここ。代入する数が入れ違ってますわ」
杏子「ん、ああっ!ほんとだ!!」
ほむら「惜しかったわね」クスクス
ほむら「でも途中式は合ってるんだから、部分点はもらえるわよ」
杏子「いやー!でも悔しいなー!」
さやか「あのー、佐倉さん?」
杏子「あ!あと、歴史の桜田門外の変のとこって、安政の大獄と井伊直助で合ってるか?」
仁美「そうですけど、漢字が違います。井伊直弼ですわ」
杏子「またミスってた…」
ほむら「でも、格段に出来るようになってるじゃない。びっくりしたわ」
杏子「あれ、さやか。お疲れさん」
さやか「杏子…。ひょっとして、結構できた?」
杏子「いや、この調子じゃ目標点には届かねーや」
ほむら「でも平均越えはかたいわよ。本当にすごいわ、よく短期間でここまで叩き上げたわね」
さやか「………」
杏子「あ、ごめんさやか。それでなんだって?」
さやか「いや、なんでもないや」
杏子「なんだよー!気になるだろ」
さやか「いやいや、ほんとに。じゃ…」
杏子「?」
ー放課後ー
まどか「ねえねえほむらちゃん!みんな!テストも終わったことだし、カラオケ行こうよ!」
杏子「おっいいねえ!やり切ったあとガーッて遊ぶの、気持ちいいよなあ」
仁美「私も、行ってもいいでしょうか?」オズ
まどか「もちろんだよ仁美ちゃん!ね、さやかちゃん!」
さやか「うん、そうだね」
さやか「…あたしは、パスしようかな」
杏子「はあ?なーに言ってんだよさやか!お前は強制参加だからなー?」
さやか「…、いや冗談に決まってんじゃん!やだなあ、もう。さやかちゃんがそーゆーイベントを見送るはずないっしょー」
杏子「さっすがさやかだ!」
まどか「ほむらちゃんも来るよね?」
ほむら「…ごめんなさい。私、ちょっと用事があって。みんなで楽しんできて」
まどか「ええ、そうなの…」
杏子「なんだよ、つれねーな」
さやか「ね、あたしの時と対応違くない?」
杏子「だってお前に用事なんてあってもどーせ大したことじゃねーじゃん」ケタケタ
さやか「失礼なっ!あたしだっていろいろ抱え込んでんだぞーっ」
ギャーギャー
まどか「ね、ほむらちゃん。用事って?」
ほむら「…ええと。笑わない?」
まどか「うん!」
ほむら「…ポイントが2倍なの」
まどか「…えっ?」
ほむら「その、行きつけのスーパーのポイントが今日だと2倍貯まるの」
ほむら「ほら、私っていまはバイトもしてないし、両親からの仕送りだけじゃ結構やりくりが大変で…」
まどか「そっかぁ、なら仕方ないね!」ティヒヒヒヒ
ほむら「ま、まどかっ!笑わないって言ったじゃない!」
まどか「だ、だってさ!ほむらちゃんがそーゆー生活感の溢れること言ってると、なんだか普段とのギャップがかわいくて!」ティヒヒ
ほむら「もう、まどかのばかっ」
まどか「けっこう遅くまでいると思うから、間に合ったらおいでよ!」
ほむら「わかったわ。ああ…時間止めたい」
―放課後・スーパー―
ほむら(はあ…。まどかも昨日のうちから言っておいてくれればいいのに)
ほむら(いつもの買い物のはずなのに、なんだか無性にむなしいわ)
ほむら(練習してた曲、歌ってみたかったなあ)
ほむら「ふんふんふふんふん、ふふふんふんふんふーんふん♪」ポイポイ
さやか「あれ、ほむらじゃん」
ほむら「ふんふん…きゃああああ!!さっさやか!?」
さやか「うわあ!?いきなり大声あげないでよ、もう!」
ほむら「だって、…その、聞いてた?」
さやか「ん、さっきまでの鼻歌のこと?」
ほむら「…わすれて」
さやか「なんでよ、かわいかったぞー?」ニヤニヤ
ほむら「わすれてよ、もう…」カアア
ほむら「ていうか、あなたまどか達とカラオケじゃないの?」
さやか「いやまあ、さっきまでいたんだけどね。抜けてきちゃった」
ほむら「なんでまた。見たところ特に用事があるようにも見えないけれど」
さやか「んー?まあ、なんていうかちょっとね」
ほむら「なによ、歯切れの悪い」
さやか「なーんか最近、杏子のノリが悪いもんでね」
ほむら「杏子の?…そうかしら」
さやか「なんか、勉強がんばりだしたり、いやにいろいろ積極的になったりさ。いやあんたキャラ違うだろーってさ」
ほむら「ああ。そういうこと」
ほむら「つまり、杏子がかまってくれなくてさびしいのね」クスクス
さやか「ちがっ…くない、けど」
さやか「…ていうか、この話わすれて。あたしいま、普通に嫌なやつだ」
ほむら「いえ、いいんじゃないの?人間だれしも、そういう部分はあるわよ。むしろ、さやかの意外な面を見れてうれしいわ」
ほむら(昔まどかが、私に嫌な面を見せてくれてありがとう・って言ってた理由がわかったわ。以外と、悪くないものね)
さやか「……」
ほむら「さやか。この後ひまかしら」
さやか「…これと言って用事はないね」
ほむら「なら、私の家に来ない?」
さやか「ほむらん家?そーいやキリカ戦でまどかと隠れてたとき以来かも。うん、お邪魔していい?」
ほむら「ええ。じゃあその前に、買い物付き合ってくれる?結構買いだめるつもりだから」
さやか「あっひょっとしてさやかちゃんを荷物持ちにするつもり!?」
ほむら「さあね」クスクス
さやか「やられたー!こいつ、確信犯だ」
ほむら「ほら、早くついてきて。日が暮れちゃうわ」
―ほむら宅―
ほむら「なんにもない家だけど、まああがって?」ガチャ
さやか「おじゃましまーっす」
さやか「ほむら、この買い物袋どこ置いたらいいかな」
ほむら「ああ、いま冷蔵庫に入れちゃうからこっちにもってきてくれる?」
さやか「ほい、ここでいい?」ドサ
ほむら「ありがとう。いま整理しちゃうから向こうで適当にくつろいでて」
さやか「はいよー」
ほむら「さやかー?」カチャカチャ
さやか「んー?」
ほむら「はい、これ。ケーキとコーヒー。マミさんほどなおもてなしは出来なくて申し訳ないんだけど」カチャッ
さやか「うわあ、ありがとう!!」
ほむら「ケーキはさっきついでで買った安物だけど、コーヒーは結構いいものだから。口に合うといいんだけど」
さやか「いやいや、これだけあればさやかちゃん感激っすよ!あたしなんて、まどかが遊びに来てもポテチと牛乳しか出してないし!」
さやか「ていうか、ちょっと悪いくらいだよ。お金厳しいんでしょ?返そうか?」
ほむら「私が好きでやってるんだからいいのよ。それに、せっかく出したものをお金で返されるって、あんまりいい気分じゃないわ」
ほむら「お金が厳しいっていっても、今月のおこづかいナシであろうあなたよりは余裕あると思うしね」クスクス
さやか「うっ、嫌なこと思い出させるなよー」
さやか「まあそーゆーことなら!ありがたくいただきまーす!」
ほむら「ええ、めしあがれ」
さやか「うん!ケーキおいしいじゃん!あ、あと砂糖とミルクあるかな。コーヒーに入れたいんだけど」
ほむら「あっごめんなさい。ミルクおいてないのよ…。砂糖は、えーと調理用のでいい?」
さやか「いいよー。てかほむらブラックなんだね。おっとなー!」
ほむら「いえ、そーゆーんじゃなくて。中毒なのよ。カフェイン中毒。濃いめのブラックじゃないと効きが薄くて」
さやか「へえー。…あたしも、ブラックで飲んでみよ」ズズ
さやか「うへえっやっぱ苦いぃ」
ほむら「もう、むりして飲むものでもないのに。好きなように飲めばいいのよ。はい、お砂糖」コトッ
さやか「さんきゅー」
さやか「ほむらってこーゆーのこだわるんだね」
ほむら「こだわるというか…。ループ時代、爆弾づくりに慣れなくて深夜までかかってたから、その時に眠気をとばそうと飲み始めたのがきっかけね」
ほむら「最初は眠気を飛ばすためだけに飲んでたけど、いまでは確かにハマっているわね」
さやか「ふーん。あっ最近まどかがコーヒー飲みたがるのってあんたの影響?」
ほむら「そうなの?…たしかに、まどかが遊びに来るときはごちそうしてるけど、私の前じゃそんなことないわよ」
さやか「なーんかこのまえ缶コーヒー飲んでてさ、パッケージによくあるコーヒー豆の絵が描いてあったんだよ。楕円形のコーヒー豆」
ほむら「ありがちね」
さやか「そしたらまどかが自慢げに言うわけよ。缶コーヒーに使われてるのは…なんだっけ。なんたら種」
ほむら「ロブスタ種ね」
さやか「うんそう!たぶんそれ!そのなんたら種だから楕円形じゃなくて丸いんだよ!この缶コーヒーは嘘つきだね、とか」
ほむら「…丸みを帯びてるだけで、まんまるじゃないわよ。短楕円形というべきね。そいうえばまどかには丸いのよ、としか言ってなかったわ」クスクス
さやか「あちゃー、やっぱり受け売りかぁ。仁美にも自慢げに言ってたよ」
ほむら「あとでそれとなく言ってあげないとね」クスクス
さやか「あと、飲むのは全部ブラックになったね。またムリしてるのが丸わかりでさー」
さやか「でも、あたしがカフェオレとか勧めると、私はさやかちゃんと違って大人なの!って文字通り苦い顔で言うわけさ」
ほむら「それは面白いわね。まどかったら私の家じゃいつもどばどばお砂糖入れるわよ」クスクス
さやか「だめじゃん!!」ケラケラ
ほむら「でも、まどかってあなたの前じゃそういう面も見せるのね。ちょっとうらやましいわ」
さやか「まあ、あたしはこーゆーキャラだからねー。知識自慢とかしやすいんでしょ」
さやか「うらやましいで言えば、杏子って真面目な話をほむらにはするくせにあたしにはしてくれないんだよねえ」
ほむら「だってさやかはすぐ茶化すじゃない」
さやか「いやまあそうなんだけど!」ケラケラ
ほむら「…ねえ、杏子の夢の話は聞いた?」
さやか「ああ、救世ってやつ?聞いたけど、笑っちゃった。どうして?」
ほむら「それ、杏子は本気だから。だから今回のテストはあんなにがんばってたのよ」
さやか「ええ…。じゃあ悪いことしちゃったかな」
ほむら「そうね。口には出さずとも、傷ついたと思うわ。あなたが言うように杏子のノリが悪いなら、それが関係してると思う」
さやか「…そっか。あとであやまらないと」
ほむら「あと、さやか。それとは関係なしに、これからあなたと杏子の関係は変わっていくと思う」
さやか「どーゆー意味?」
ほむら「そのまんまよ。杏子は夢を得て変わった…いえ、成長したわ」
ほむら「…なんて。偉そうに言えるほど私も大した人間じゃないけれど」
ほむら「とにかく、杏子は変わった。なら、きっとあなた達の関係も変わるわ」
さやか「…なにが言いたいのさ」
ほむら「このままだと、いつか杏子と疎遠になっちゃうわよ」
さやか「なっ」
ほむら「そうでしょう。人間関係なんて、歯車みたいにデリケートだわ。片方の歯車が回り始めたのに、片方が止まったままならいずれはかみ合わなくなって外れるだけよ」
ほむら「杏子との関係を大事に思うのなら、あなたも杏子に合わせて変わらないと」
さやか「…うーん」
ほむら「だいたい、世の中に変わらないものなんてないと思うの。仮に不変なものがあったとしたら、それは老化して消滅を待つだけのものじゃないかしら」
ほむら「それでも絶対に失いたくないものがあるとして、そうしたら私たちにできることは、進化し続けることじゃない?」
ほむら「そう考えると、停滞すら退化だわ。だって、人間は飽きる生き物だから。現に、あれほどこんな他愛もない平和な日常を切望していた私だって、もうこの日常を当たり前のものとして享受しつつある」
ほむら「人間の欲望って、つくづく際限のないものだと思うわ」ニガワライ
ほむら「私も、変わろうと、いえ、成長しようと思ってる。あなた達…仲間との関係は、私にとって宝物だから。みんなで成長して、いつまでも仲良く…」
ほむら「したいん、だけど。ごめんなさい。ひとりでまくしたてちゃって。…引いたかしら」
さやか「…いや、まあその通りだと思うけどさ。あたしは、その。…こーゆーキャラじゃん。変わるなんてムリだよ」
ほむら「…たしかに、いきなりは勇気がいるわね。ちょっといじわるな言い方をすれば、あなたが杏子にしたような反応を返されると思う」
さやか「…そう言われると、かなり悪いことしちゃったかなぁ」ハア
ほむら「でもさやかさえがんばれば、あなた達はいまよりもっといい関係になれるはずよ」
ほむら「先陣は杏子が切ってくれたじゃない。…さやかなら大丈夫、私が保障する」
さやか「なんでほむらが??」
ほむら「……ちょっと、待ってて」
さやか「???」
__________
_______
ほむら「……お待たせ」ガチャ
さやか「え」
さやか「眼鏡に、おさげ……?」
ほむら「そう。これが私の本来の姿」
ほむら「…まさかまたこの格好をすることになるとは思わなかったけど」
さやか「へえ…。話には聞いてたけど、かなり」
ほむら「冴えないでしょう」クスクス
さやか「いやいや、そんなことないよ」
ほむら「いいのよ。自分が一番わかってるから」
ほむら「…昔の私は、いつも自信がなくて、暗くて、オドオドしてて。しかも、…私、性格悪いから。自分ができないのを、心の中で他人のせいにして」
ほむら「……でも、ある大切な人に言われたの。かっこよくなっちゃえばいいんだよって」
ほむら「言われた当時は、そんなの無理だと思ってたのに。人間切羽詰まれば変われるものね。まどかを救うためのループを続けるうちに、少しは私も変われた…と、思う」
ほむら「さんざんお世話になったその大切な人には、もういまの私を見せることはできないのが心残りだけれど」ニガワライ
ほむら「まあ、その。私、口下手だから、うまく伝わったかはわからないけど。私でも変われたのよ。さやかなら大丈夫に決まってるわ」
さやか「………」
さやか「ありがと、ほむら。なにが性格悪いよ。あんた全然いいやつだよ、あたしが保障する」
さやか「あんたが友達でよかった」ニコ
ほむら「え、なにそれ。なんか調子狂うわね…。さやからしくない」
さやか「ええええ!!ほむらがキャラ変えろって言ったんじゃん!!!」
ほむら「いえ、ほんとごめんなさい。うん、がんばって?」クスクス
さやか「こいつムカつくーっ!」
ほむら「待って、落ち着くから」
ほむら「すーっはーっ」
ほむら「さやか」キリッ
ほむら「あなた達に負けないよう、私もがんばるから。お互い、精進しましょう」
さやか「うん」ゴソゴソ
ほむら「さしあたって、杏子はマミさんに勉強教えてもらってるらしいから。さやかさえ良ければ、私と一緒に勉強しない?できればまどかも誘って」
さやか「そだねー」カシャッ
ほむら「他人に教えるのは理解を深めるというし、私にとっても…」
ほむら「カシャッ?」
さやか「送信、と」
ほむら「ちょっと!!なにしてんのよ!!」
さやか「眼鏡ほむら記念撮影アーンド共有」ケラケラ
ほむら「共有って…ああああああ!なにグループで晒してるのよ!!削除!削除しなさい!」
さやか「だーめ☆」ペロッ
ほむら「こいつ…!!」
ほむら「ケータイ貸しなさい!」
さやか「やーだよ。さやかちゃんを馬鹿にするのが悪い!」ダダダ
ほむら「あっ待ちなさい!」ダッ
_______
_____
…その後、数日もしないうちに杏子とさやかはまた仲良くじゃれ合うようになった
さすが、さやかは私なんかよりよほど社交スキルが高いわね
しかし元のふたりの関係からは若干の変化があるようで、勉強やその他教養面でお互いをライバル視するようになった(ように見える)
……うまく、歯車がかみ合ったまま前進できたようだ
私も、がんばらないと
―数日後 ほむら宅―
まどか「おじゃましまーす」
さやか「おじゃまー」
ほむら「いらっしゃい、ふたりとも」
さやか「今日もお願いしますぞー、暁美先生!」
ほむら「はいはい。ほら、早くあがって」クス
まどか「この三人で勉強会って、なんか新鮮だね!」
ほむら「そうね。いつもは五人でマミさん家か、まどかかさやかどっちかと二人で勉強って感じだものね」
まどか「しかし最近さやかちゃん熱心だよねえー。杏子ちゃんの影響?」
さやか「まっさかー!あたしはただ、勉強の楽しさに目覚めてしまっただけだよ」フフン
ほむら(よく言うわ)テレパシー
さやか(なにさ、うそは言ってないよー)テレパシー
ほむら(はあ、調子いいんだから)
ほむら「じゃ、ちょっと待っててね二人とも。コーヒー淹れてくるわ。そしたら始めましょう」
ほむら「ふんふんふーん♪」コリコリ
まどか「ティヒヒ。カラフル練習してるの?」ヒョコッ
ほむら「あら、まどか。そうね、今度のカラオケに備えて」コリコリ
まどか「この前は来れなかったもんねえ」
ほむら「ええ。その分今回は歌いまくってやるわ」コリコリ
まどか「ね、仁美ちゃんも誘っていいかな」
ほむら「え、仁美さん?マミさんもいるのよ。今度のは五人で行かない?」
まどか「う、そっちのがいいかなあ」
ほむら「うーん、仁美さんには悪いけどね…。彼女とは別の機会に遊びましょう」
まどか「……」
まどか「……ちょっと、後で、仁美ちゃんのことでお話しがあるんだけど…」オズ
ほむら「後で?どういう話?」
まどか「うーんと、ね。後でさやかちゃんと一緒のときに話すよ」
まどか「それよりほむらちゃん、またコーヒー豆挽いてるの?」
ほむら「ええ。まどかもやってみる?」コリコリ
まどか「いいの?」
ほむら「もちろん。はい」スッ
まどか「えと、こっち回しでいいんだよね?…っ、んしょ」コリコリ
まどか「意外と固いね」コリコリ
ほむら「でしょう?手挽きも最初は楽しかったんだけど、最近は面倒くさくて。電動ミルを買おうか悩んでるの」
まどか「あっ!面倒くさいから私にやらせてるんだー」コリコリ
ほむら「まどかがやらせてって顔してるから」クス
まどか「う。ちょっと興味はあったけど」
ほむら「でしょ?まどかってすぐ顔に出るから」
まどか「そうなの?…じゃあねえ、私はいまなにを考えてるでしょうっ!?」ニコ
ほむら「…?ほむらちゃんはクールでかっこいい、かしら?」
まどか「ぶぶー!もう、自画自賛はみっともないよー?正解はね、帰ったらさぶちゃん聞こう、でしたー」ティヒヒ
ほむら「えええ、プライベートすぎよ!わかるはずないじゃない!」クスクス
まどか「ティヒヒ、ちょっとイジワルだったね」
まどか「あ、挽き終わったみたい」
ほむら「ありがとうまどか。ご苦労さま」
まどか「ほむらちゃんはなんで一回一回豆挽きからやるの?」
ほむら「ん?それはね…、まどか、ちょっとこっち来て」
まどか「?」ヒョコ
ほむら「ほら」パカ
まどか「わあ、いい香り…!」
ほむら「でしょう?一番コーヒーの香りが豊かな瞬間ってね、実はこの挽きたての時なのよ。おいしいコーヒーの条件は、もちろん豆そのものの質も大事なんだけど、焙煎してからできるだけ二週間以内のものを、挽きたてで飲む。これに限るわ」
まどか「へええ。そんなに違うの?」
ほむら「段違いよ。もう他では飲めないわ…。あと、豆で保存すれば空気と接する面積が狭くなるから、酸化しにくく長持ちするってメリットもあるわね」
まどか「なんか、それ聞いてたらいつものコーヒーなのに飲むのが楽しみになっちゃった!」
ほむら「こういうウンチクを聞くと、なぜかおいしく感じちゃうわよね。私もたまに高級な食材を買ったら、ネットで調べながら食べてるわ」
まどか「うーん、それはうちでやったらママが怒りそうだなあ…」ティヒヒ
ほむら「一人暮らしの特権ね」
まどか「私は、ほむらちゃんが教えてくれるからいーやっ」
ほむら「あら、じゃあ私も張り切っていろいろ調べないと」
まどか「よろしくー」
ほむら「…もう」クス
さやか「おーい!茶はまだかーっ」
ほむら「いっけない、結構待たせちゃったかしら」
まどか「だね!私も手伝うよ、急ごう」
ほむら「ええ」
まどか「あれ?さっき挽いたの、ひとり分しかないよ?」
ほむら「ああ、まどかとさやかには別のコーヒーを用意したのよ。…これこれ」
まどか「レギュラーの粉のやつだ。どうせなら挽きたてが飲みたかったなあ…。なんて」
ほむら「まあまあ。きっと気に入るわ」
まどか「?」
ほむら「おまたせ」カチャ
さやか「もう、遅いぞー!茶と茶菓子は、あたしが腰を下ろしてから五分で用意すべしっ」キリ
ほむら「なにキャラよそれ…」
さやか「さやかちゃん関白」
まどか「もう、関白さんも手伝ってよぉ」
さやか「考えておこう」
ほむら「なんで人の家でここまで図々しくできるのかしら…」
さやか「あ、そーだ!ほむら、差し入れあるよ」ゴソゴソ
ほむら「あっウォーカーズのショートブレッドじゃない!これ大好きなのよ!どうしたの?これ輸入ものだから滅多に売ってないのに」
さやか「ああ、この前杏子と買い物行ったときにね。杏子がこれほむらの好物だって言ってたから」
ほむら「…そういえば、バイト帰りによくふたりで食べたわね」
まどか「へええ。おいしそう」
ほむら「コーヒーと合うわよ。一緒にめしあがれ」
まどか「うんっ」
ほむら「あっ、ごめんねまどか。すっかり忘れてたわ。お砂糖いま持ってくるから」
まどか「だっ大丈夫だよ!『いつも通り』ブラックで飲むから!」
ほむら「…?だって、いつもまどかは」
さやか「……」ニヤニヤ
ほむら「あ」
~~
さやか「あと、飲むのは全部ブラックになったね。またムリしてるのが丸わかりでさー」
さやか「でも、あたしがカフェオレとか勧めると、私はさやかちゃんと違って大人なの!って文字通り苦い顔で言うわけさ」
ほむら「それは面白いわね。まどかったら私の家じゃいつもどばどばお砂糖入れるわよ」クスクス
さやか「だめじゃん!!」ケラケラ
~~
ほむら(…まどか。さやかの前ではカッコつけたいのね…。もう)
ほむら「…ええ、ごめんなさい。まどかはいつもブラックだものね」
まどか「そうだよ!失礼しちゃうよ!」
さやか「ほうほう」ニヤニヤ
ほむら「…はあ」
まどか「…」グビ
まどか「あれ、これほんのり甘い…?」
ほむら「ええ。フレーバーコーヒーっていうの。飲みやすいでしょ」
まどか「うん」グビグビ
ほむら「こういう方がふたりは飲みやすいかと思って買ってみたんだけど、気に入ったかしら」
さやか「うん!こりゃあいいねえ」
ほむら「よかった。…じゃあ、一息ついたし、勉強しましょうか」
まどか「おー!」
さやか「え、ちょっと早くない?」
まどか「ほらほら、やろうよさやかちゃん」
さやか「ちぇー」
さやか「ほむらー、ここどうやるんだっけ?」
ほむら「ここ?ここはこの角が直角でしょ?だから…」
さやか「えー、そこ直角なの!?直角マークついてないよ?」
ほむら「…よく見て。この角は直径の円周角でしょ?」
さやか「直径の円周角…言われてみればそういう見方もできるね」
ほむら「で、円周角は中心角の半分じゃない」
さやか「中心角…でもこれ直径だし…ああああああ!!?」
ほむら「気づいたみたいね」ニヤニヤ
さやか「この直径を180°の中心角だと考えれば!」
ほむら「そう!その円周角は半分の90°、つまり直角になるのよ」
さやか「くぁーやられた!いまだにこーゆー考え方ができないんだよねー。よくほむらは思いつくね」
ほむら「思いつく、というか普通に教科書に載ってたわ」
さやか「うっそ」パラパラ
さやか「ほんとだ。じゃああたしが覚えてなかっただけか…」
まどか「でもそういうの覚えるのって難しいよね。私も全然覚えられてないよ…」ティヒヒ
ほむら「マミさんが言ってたんだけど、覚えるって意識より、さっきやったみたいにどうしてそうなるのかを考えた方が身になるそうよ。実際、私もその公式がどうしてできたかを考え始めてからかなり成績が安定するようになったわ」
さやか「へー。確かにさっきのは覚えるみたいな意識はなかったのに結構頭に残ってるかも」
ほむら「でしょ?」
まどか「教科書の端っこにコラムみたいな感じで公式の成り立ち載ってるよね。今度から見てみようかなあ」
ほむら「うーん、私は最初は自力で考えてるわね。まあ大抵はわからないから、最後にはコラムを見て、ああ、そう来たか、ってなるわ」
まどか「ほむらちゃんでも分からないんだ…」
ほむら「当然じゃない。私は元がダメダメだもの。過去の偉人が発見したような法則を説明できるはずないわ。…やっぱり悔しいけどね。やるわね、偉人!ってなるわ」クスクス
さやか「そりゃ偉人だもん!」ケラケラ
まどか「でもその法則をなにも見ずに説明できたら、偉人と並べるってことだよね!」
ほむら「かもね」クスクス
ほむら「なんか疲れてきたわね…。休憩する?」
さやか「さんせーっ!」
まどか「私もー。頭がぽわぽわしてきちゃった」ティヒヒ
ほむら「じゃあコーヒー淹れてくるわ」
さやか「まだ飲むのかよ」
まどか「私ココアがいいなぁ」
ほむら「はいはい」クスッ
まどか「ふはぁ、温まる」
さやか「もうすっかり寒くなったからね」ズズ
ほむら「次のテストが終わったら冬休みよね。またみんなでどこか行かない?」
まどか「あ、私も思ってた!どこがいいかなぁ」
さやか「スキーとか!」
ほむら「スキー…やったことないわ。…というより、冬そのものがかなり久しぶりね」
まどか「そっか…。じゃあそのぶん楽しまないとね!」
ほむら「ええ、もちろん!冬に病室にいないのも、…友達といるのも、初めてだから。思いっきり楽しんでやるわ!」
さやか「嬉しいこと言ってくれるね。こりゃあたし達も責任重大だよ、まどか!」
まどか「うんっ!とりあえずスキーが第一候補かな?」
ほむら「スキー…ちょっと興味はあるけど、寒い時期にさらに寒いところに行くのってどうなのよ」
さやか「わかってないなあ!よりその季節を感じれるじゃん!夏の海もしかりだよ」
ほむら「海は海水に浸かって相殺できるじゃない。スキーは雪しか待ってないわ」
まどか「ほむらちゃんはどこか行ってみたい所とかはある?」
ほむら「ゆ、遊園地とか…。あとみんなで年越しとか、初詣とか…かしら」
まどか「わあ、年越しとかって発想はなかったよ!絶対やろうね!」
ほむら「ひとり参加が危うそうなのがいるけどね」ジッ
さやか「ふっふっふ、あたしには恭介がいるからねー!いやぁ、リア充はつらいですなぁ!」ハッハッハ
ほむら「確か、クリスマスも一緒なんでしょう?はぁ~、結局は友達より恋人を取るのね…。さびしいわねまどか」ホロリ
まどか「付き合う前は『でもなんだかんだ、あたしは恭介よりみんなを優先しちゃうんだろうな~』なんて言ってたのがウソみたいだよねほむらちゃん」ハア
さやか「なんだよぅ!みんな付き合った当初は『私たちに構わずに幸せになりなさい』みたいなムードだったじゃん!!特にほむら!」
ほむら「だって、何回繰り返してもあなた達がうまくいってる時なんてなかったから、てっきりそういう運命なんだと思ってたのよ。それがなんの因果か、このループで成功しちゃうもんだから。そりゃ感慨深くもなるわよ」
まどか「それでもちょっとは私たちとも遊んでほしいよねー」
さやか「なにがちょっとはよ!恭介とは週3なのにアンタたちとは週7だよ週7!魔女退治含めたら週10は軽くオーバーだよっ!」
ほむら「週3らしいわよ、まどか。なにしてるんだか」ヒソヒソ
まどか「私この前キス自慢されちゃったよほむらちゃん。いやらしいね」ヒソヒソ
ほむら「最近の若い子はいろいろと早熟だもの。仕方ないわ」ヒソヒソ
さやか「くっそー、好き勝手言ってくれちゃって。ふたりにも恋人ができたら絶対いじり倒してやる…」
まどか「じゃあ遊園地かな?ほむらちゃん東京ネズミ―ランド行ったことある?」
ほむら「行ったことないわ。前々から興味はあったんだけど…」
さやか「じゃあ、ネズミ―ランド行こう!夢の国は楽しいぞー」
まどか「わ、私たちも一回しか行ったことないんだけどね…」ティヒヒ
ほむら「ネズミ―ランド…!楽しみだわ」
ほむら「と、ところで…その、予算はどれくらいなのかしら」
さやか「あーっと、交通費含めフクザワさんとヒグチさんが一人ずつって感じかな」
ほむら「た、高い…。またバイトしないと」
まどか「そういえば最近してなかったよね」
ほむら「したかったんだけど、杏子が変なタイミングでいなくなるからできなかったのよ」
さやか「ああ、そーいや杏子の魔法で歳ごまかしてたんだっけ」
まどか「ふたりとも大人びてるから、いったん高校生だって言えば問題なさそうだよね」
ほむら「誰かさん達が冷やかしに来るからもう接客業はやらないけどね」ジロ
まどか「か、かっこよかったよ??」
さやか「まどか、多分それフォローになってない」
ほむら「…あれ、そういえばさっきまどかが仁美さんのことで話があるって言ってたけど」
まどか「あ、え、えーっとね、ほむらちゃん」
さやか「あ、それね。実はさ、ほむらに相談というかお願いというかがありまして」
ほむら「なに?いやにもったいぶるわね」
さやか「仁美とも、仲良くしてあげてほしいんですわ。…最近、仁美から相談されちゃってさ。壁を感じるって」
まどか「私たち、仁美ちゃんと最近遊べてなくて…。仁美ちゃんからのお誘いは断るのに、ほむらちゃんや杏子ちゃんとは遊んでて、その話で盛り上がったりしちゃったでしょ?それがショックだったみたいで…」ウツムキ
さやか「えっと、あたし達としてはほむら達と仁美が仲良くしてくれるのが一番なんだ。仁美とももうずいぶんと長い付き合いだし、あたし達ものけ者にしてる罪悪感はずっと感じてた」
まどか「ひ、仁美ちゃんもね?ほむらちゃんや杏子ちゃんと仲良くしたいって言ってたよ?だからマミさんも紹介して、みんなで仲良くできたら、それはとっても素敵だなって…思うんだけど…」
まどか「どうかな…?」
ほむら「…それは」
ほむら「ムリだと思う…」
まどか「どっ、どうして!?仁美ちゃんはいい子だよ?きっとほむらちゃんとも…」
ほむら「違うわ。私が言いたいのはそういうことじゃないの」
ほむら「私たちは生物として、根本的に違うわ。…しょせん、表面上の付き合いしかできない」
さやか「一般人のまどかとはこうしてるのに?」
ほむら「まどかは魔法少女のことを知ってるじゃない。仁美さんとは違う」
まどか「仁美ちゃんにも打ち明ければ…!」
ほむら「だめよ!それは絶対にだめ!!魔法少女の存在を明かすことがどれほどのリスクを伴うかわかってるの?あなた達、こんな残酷な運命に親友を巻き込んで平気なの!?」
さやか「ちゃんと契約だけはしちゃだめだって言っておけば…」
ほむら「…さやかは、人間がどれだけ自分の欲望に弱いか知らないんだわ。だめだと分かっていても、目の前にうまい餌をぶらさげられたら食いつかずにはいられない…。事実、あなただって私の警告を無視して契約したじゃない」
さやか「あたしは…!あたしはちゃんと自分の魂と祈りを秤にかけて…!」
ほむら「っ!あなたは…!…ごめんなさい、酷いことを言うけど……。あなたは、いつもそう言って……魔女に身を堕としていった!今回がイレギュラーなのよ!」
ほむら「あなた達はこの平和な時間軸しか知らないから実感が湧かないかもしれないけど、魔法少女のことを一般人に知らせるのは危険すぎる!これは私の経験から言ってるの。不要なリスクは避けるべきよ」
まどか「じゃ、じゃあせめて一緒に遊んであげて?マミさんのお茶会にも…」
ほむら「…あの場は、魔法少女のお茶会よ。杏子も言ってたでしょう。へんにゴタマゼにしてもうまくいくはずないって」
ほむら「あの気の置けない感じがいいのに、へんに気を遣いだしたらそのストレスはどこで爆発するやら…」
ほむら「あと、マミさんを除くメンツで遊ぶにしても、隠し事がある以上はどうしてもよそよそしくなっちゃうわ。そういうのを敏感に察知しての今回の相談だと思うから、無理に仲良くしようとしても根本的な解決にはならない」
まどか「ほ、ほむらちゃん…!」
ほむら「私は、現状維持でまどかとさやかは仁美さんとも遊ぶって感じがいいと思うんだけど…」
さやか「…なんだよそれ」
ほむら「これがベストだと思うわ」
さやか「仁美はっ!仁美だって親友なんだっ!!そんな風に見れるかっ!!」ガタッ
さやか「見損なったよほむら!あんたがそんなに冷たいヤツだったなんて」
ほむら「じゃあどうするの!?仁美さんが魔女になってもいいって言うの!?」
さやか「そうは言ってないよ!ちゃんと話せばわかってくれる!!」
ほむら「それが甘いって言ってるの!!万が一のことがあったらどうするの!」
さやか「だいたい何さ!さっきから聞いてればダメ、ダメばっかり!あたしには変われだの成長しろだの言っておいて、あんた自身はどうなのよ!」
ほむら「冷静に考えれば至る当然の結論よ!私の経験から断言する、絶対にうまくいくはずないわ。あなただって薄々感じてるはずよ、どうしようもないって!」
さやか「…っ!」
ほむら「…そうでしょう?すべてがうまくいくなんて、ありえない」
さやか「……帰る」スタスタ
ほむら「えっ!?ちょっと…」
まどか「ごめんねほむらちゃん」スック
ほむら「ま、まどか!?」
まどか「でも…いまのはちょっと酷いかなって」スタスタ
ほむら「ま、待ってよ二人とも!待って…!」
ガチャ
バタン
ほむら「……」ポツーン
ほむら「な、なによ…どうしてこうなるのよ…」
ほむら「…ふ、ふふ。…すべてがうまくいくなんて、ありえない」
ほむら「ふふ…」グスッ
ほむら「……………」ジワワア
―マミ宅―
杏子「なぁマミー!ここどうすんだっけ?」
マミ「ん?どれどれ…」
マミ「ああ、台車の問題ね。これは…」
ピンポーン
杏子「ん、あたし出るよ」
ピンポピンポーン
杏子「はいはーい、いま出るっての」ドタドタ
杏子「どちらさん?」ガチャ
ほむら「ぎょう゛ご…」ドロッ
杏子「」パタン
杏子「マミっ!マミー!大変だ!涙とか鼻水とかあらゆる汁でドロドロになったほむらがいる!!」
マミ「ええっ!?なんで閉めちゃうの!入れてあげなさいよ!!」
杏子「あっしまった!なんか怖くてつい…。いま開けるぞほむらーっ!」ドタドタ
マミ「…で?なにがあったの」
ほむら「ま゛み゛ざん゛…」グスッ
杏子(コイツのこんなツラ見るの初めてだぞ…)
ほむら「まどかとさやかに嫌われたあああああああ」ガバッ
マミ「ちょ、ちょっと暁美さん!?」
杏子「嫌われたぁ?にわかには信じらんねーな。どうしてまた」
ほむら「う゛ああぁぁあんっ!!私、間違ったことなんて言ってないのにいいいいい」グスグス
杏子「…こりゃ話を聞くのは当分無理そうだな」ハア
マミ「私、ココアでも淹れてくるわ。落ち着くでしょう」
杏子「おー」
ほむら「ぐずっえぐ…」
杏子「…あー、その、なんだ。まどかのためにループしてたあんたにしたら気休めだろうが、…えっと。…あ、あたしもマミもあんたを嫌ったりしないから。…安心しろよ」ナデナデ
ほむら「ぎょうご…」グスッ
ほむら「杏子ぉお!」ガバッ
杏子「うおっと。…はあ、こんなのキャラじゃねーんだけどなあ」ナデナデ
ほむら「私…!わたし…」
杏子「はあ。ほら、鼻水とかかめよ」
ほむら「あ゛り゛がどう゛」チーン
杏子「うわああ人のスウェットで鼻かむなバカ!!」
ほむら「うう…まどかぁ」グスグス
杏子(めんどくせええ。…ん?おみくじの水難ってこれのことか?だとしたらバカにできねーな)
杏子「…っておい!お前ソウルジェム見せてみろ!」グイッ
ほむら「…?」
杏子「うわ、やっぱりか!おいマミ!ココア作ってる場合じゃねーぞ!あたしのグリーフシードのストック持ってきてくれ!!」
マミ「え、なにどうしたの」カチャカチャ
杏子「こいつソウルジェムまでドロドロだ!早くしねーと魔女化する!」
マミ「えええ!?笑えないわよそれ!」ドタドタ
マミ「…少しは落ち着いた?」
ほむら「ええ…。手間かけさせたわね…」
杏子「ったく。人のグリーフシードの大半溶かしやがって。この借りはでけえぞ」
ほむら「…ごめん」グスッ
杏子「あ、あーっとさ!いや、こーゆー時のためのストックだしさ!気にすんなよ」
ほむら「でも…」
杏子「いいんだよ」
杏子(あーやりづれえな。…しかしコイツがここまでしおれるなんて。相当参ってるなこりゃ)
マミ「…で?いったいなにがあったの」
ほむら「実は…」
_______________
___________
________
マミ「…デリケートな問題ね」
杏子「だな。てかあたしも当事者か」
ほむら「どうすればいいのよ…。もうわかんないわよ私…」ジワァ
杏子「わーっ!ストップ!ソウルジェム濁り始めてるぞ!気持ちを切り替えろ!」ユサユサ
マミ「た、楽しいこと!楽しいことを考えて!!」
ほむら「楽しいこと…。そう、まどかとさやかと、冬休みの予定を話してたのよ。遊園地に行こうかって話になって…。あ、その前に上條くんの件でさやかをからかって…」
ほむら「ああ、本当に楽しかった。そう、直前まではあんなに楽しかったのに…!どうしてあんなことに…」
杏子「お、おい」
ほむら「もう無理かも…。やっと成功したのに…。私はこの時間軸でだけは失敗しちゃいけなかったのに…!!」
マミ「いけない!佐倉さんグリーフシードを!」
杏子「マジかよちくしょう」コツンッ シュワアア
杏子「くそぉ…。あたしのグリーフシードがこんなに減って…」
マミ「暁美さん、ココアのおかわりは?」
ほむら「ありがとう…。もう本当に大丈夫だから。杏子もごめん、貴重なグリーフシードなのに」
杏子「…お前が魔女化するよりは1ミリくらいましだ」プイッ
ほむら「もう」クスッ
マミ「やっと笑ったわね」
マミ「で、どうするの?」
ほむら「どう、って言われても」
マミ「あなたの意見は変わらない?」
ほむら「だってそうでしょう?仕方のないことなのよ」
杏子「…まあ、あたしもほむらと同意見だ。一般人に魔法少女のことを話してロクなことになるはずがないさ」
杏子「実体験者としては、な」ハア
マミ「佐倉さん…」
ほむら「単純に、あの二人には想像しがたいのかもしれないわ。魔法少女の運命の惨さも、QBの恐ろしさも体験してないふたりには…」
マミ「それはそうだけど、仲直りしたくはないの?」
ほむら「したいわよっ!あたりまえでしょ。まどかもさやかも、かけがえのない親友だわ」
マミ「なら、謝らないと」
ほむら「え、私が?」
マミ「そうよ。確かにあなたは間違ったことは言ってない。それでも、暁美さんは自分に100%非がないって言いきれる?」
ほむら「う…」
マミ「たとえば、どうせ暁美さんのことだから強い口調で言ったんじゃないの?不可能だわ、とかムリね、とか」
ほむら「そ、それは…そう、かも」
マミ「でしょう?少しでも悪いところがあったなら謝らないと。そうしたらきっと、向こうも謝りかえしてくれるわ。こんなケンカはお互い望んでないんだもの」
ほむら「……そうだったら、いいな」
マミ「そうに決まってるじゃない!暁美さんはループしすぎて、この世界では失敗できないって気負いすぎてるのよ。友達って、そんなに簡単になくならないものよ?」
杏子「友達少ねーやつ語るなよ」ボソッ
マミ「なにか言った!?」
杏子「いや、な~んも」
マミ「いまから美樹さん達を呼ぶから、うまくやりなさいね?」
ほむら「え、ええ…!」ドキドキ
マミ「大丈夫よ、ちゃんと私が仲裁するから」
杏子「あー、それさ。あたしにやらせてくんねーかな」
マミ「佐倉さん?」
杏子「救世なんて大言はいたんだ。友達くらい救えねーと」
マミ(佐倉さん…!)
マミ「そういうことなら、任せるわね!」
杏子「おう、任せとけ」ニッ
ほむら(いまいち不安ね…)
さやか「……」ブスッ
まどか「さ、さやかちゃん…!」
ほむら「え、えっと…」
さやか「…なに?マミさんと杏子にチクってあたし達を悪者にしようっての」
ほむら「ちがうわよ…!なんでそんなケンカ腰なの」
さやか「ふん、自分に聞いてみな」
まどか「ちょっとさやかちゃん。さっき言い過ぎちゃったねって、ほむらちゃんに謝ろうって話し合ったばっかりなのに…」ボソボソ
さやか「だってマミさんと杏子を後ろに控えさせてるんだよ?ぜったい反省してないよ。むしろこれから三人がかりで仁美のことは諦めろって説得してくるに決まってる」ボソボソ
まどか「でもさやかちゃん…!」ボソボソ
ほむら(…私が目の前にいるのに、まどかもさやかも内緒話してる。やっぱり相当怒ってるのかしら…)
杏子「おい、さやか。話はこいつから聞いたぜ」
ほむら「待って杏子!まずは私が…」
杏子「まあ任せろって」
杏子「なあさやか。あたしの家族の話はしたよな?」
さやか「うん…。杏子ひとりを残して一家心中…」
杏子「そうだ。あたしがバカだったばっかりに…みんな、あたしが殺したようなもんだ」
まどか「杏子ちゃん…」
杏子「まあ、あたしの場合は偶然だったが…親父に魔法少女だってのがバレちまったのが原因だな」
さやか「…一般人に魔法少女の話をするのは危険だって言いたいの?」
杏子「まあ、そうだな」
さやか「でもさ、杏子の場合はどっちかって言うと杏子の祈りが原因じゃないの?杏子のお父さんは杏子が魔法少女だってこと自体に怒ったわけじゃないじゃん」
まどか「さやかちゃん言い過ぎだよ!杏子ちゃんの祈りが原因なんて言わないであげて!」
杏子「いやいいんだまどか。…ありがとな」
さやか「で?なんで仁美に魔法少女のこと打ち明けちゃいけないの?」
杏子「おお、そーゆー話だったな。いいか、よく聞けさやか…」
杏子「……」
さやか「……」
杏子(…なんでだ??)テレパシー
マミ(なに論破されてるのよっ!!?)テレパシー
マミ(え?なに?もうちょっと考えがあるんじゃないの?)
杏子(いやぁ、なんかしんみりさせとけば仲直りするかと…)
マミ(…美樹さんや鹿目さんの立場になってみなさい。これは、そんな感情を落ち着かせればなんとかなるってケンカじゃないでしょう。具体的な解決案がいるわ)
杏子(うぐ…)
杏子「だーっ!とにかく、魔法少女のことは話さない方がいいんだって!」
さやか「なによそれ!意味わかんない!」
杏子「考えてもみろ!万が一、仁美のやつが契約したらどーすんだ!魔法少女になったが最後、かなりの確率で魔女化か戦死だぞ!」
さやか「そこはあたし達でフォローしたりすれば大丈夫でしょ!ってか、まず契約しないように言い含めれば…!」
杏子「それがお前の言うほど簡単なことなら、ほむらはこんなにループしてねえだろ!」
さやか「ていうかなに!?結局あんたはほむらの味方なわけ?ふーん、よかったねほむら。頼れる味方がふたりもできて。つまりあんたはそこまでして仁美と仲良くしたくないわけだ」
ほむら「違うっ!私はそんなつもりじゃないの!お願いだから私の話を聞いてよ!」
さやか「仁美と仲良くする相談ならいくらでも乗るけど、どうせ違うんでしょ」
まどか「ま、待って!ケンカはやめようよ!こんなの私達らしくないよ」
さやか「大体まどかはどっちの味方なのさ!?すっかり日和っちゃってさ!そういうどっち付かずの態度って腹立つよ」
まどか「え…う。わ、私は」
杏子「おい!味方とか敵とか、そーゆー話じゃねーだろ!」
ほむら「さやか!いくらなんでも、まどかに当たり散らすのは許さないわよ!!」
ぎゃーぎゃー
マミ「……」
ばんっ!!
マミ「いったん、落ち着きましょうか」
さやか「マミさん…」
ほむら「……」
マミ「まず、暁美さん?なにか美樹さんに言うことは?」
ほむら「…その、さやか。…ごめんなさい。さっきはキツイ言い方をしてしまったわ」
マミ「美樹さん?」
さやか「…あたしが聞きたいのは、そんな言葉じゃないです」
マミ「それはそうよね。これはお互いの立場と気持ちを理解して、譲歩し合わないと解決しないわ」
さやか「譲歩なんて…!」
マミ「その前に、美樹さん。…自分が正義だという前提に立った、善悪の二元論はとても危険よ。あなたが勝手に敵にしていた子を見てみなさい」
さやか「……」
ほむら「…?」
マミ「どう?その子は悪者かしら」
さやか「…違う。ほむらはあたしの…友達です」
マミ「そう、ただの泣き腫らした、あなたの友達よ」
マミ「暁美さんがどんな有様でここに転がり込んできたか知ってる?あなたと鹿目さんに嫌われたって、ぐじゅぐじゅになるまで泣き叫んでたのよ。…魔女化寸前までソウルジェムを濁らせて」
ほむら「や、やめて!そこまで酷くなかったわよ…///」カアア
マミ「暁美さんも変な意地はらないの!」
マミ「聞けば、あなた達ふたりは暁美さんが相談を断ったら一方的に帰っちゃったそうじゃない。そりゃ暁美さんの言い方も酷かったかもしれないけど、あなた達もここまで暁美さんを傷つけたわ。…なにか言うことは?」
さやか「…悪かったよ」
まどか「ごめんねほむらちゃん…。本当に、ごめんなさい…!」グスッ
ほむら「もう、なんでまどかが泣くのよ」クス
まどか「だって…!ほむらちゃんのことそんなに傷つけてたなんて…」ヒック
ほむら「もう終わったことじゃない」
まどか「…!っく、うぅ。ごべんね゛ぇほむらちゃん…!ごめんなざぁぁぁい」ダキッ
ほむら「わ。…もう」ナデナデ
さやか「……」ブスッ
マミ「…で、そうしたら美樹さんの意見も聞かないとね?」
さやか「……」
さやか「一方的に出て行ったのは謝るよ。でも、あまりにもほむらが断定的に言うから…」
ほむら「…ごめんなさい」
さやか「いいよ、あたしも怒鳴ったりしてごめん…」
さやか「でも、あたしにとって仁美は親友で…!恭介からOKもらった時も、涙目でおめでとうって。お嬢様のくせに嫌味もなくて…本当に大事な大事な親友なんだ」
さやか「でも…ほむらや杏子やマミさんも、付き合いは短いけどすごく気が合って…一緒にいて楽しいくて…。やっぱりみんな大切な親友で…!」
さやか「もうあたし分かんなくて…!そんな…どっちか選べみたいな…そんなむごいこと言うなよぉ…!!」ポロポロ
ほむら「…さやか」
ほむら「ごめんなさい…。そうよね、あなたやまどかからしたら板挟みよね…。私は、自分の都合しか考えられてなかった」
ほむら「魔法少女のことは言えないにしても…もうちょっと、歩み寄る努力はするべきよね」
さやか「ほむら!」
ほむら「ね、杏子」
杏子「そこであたしに振るのかよ…。まあ、そうだな。今度五人で遊びに行ってみるか」
まどか「うんっ!ありがとうふたりとも!」
マミ「えっ五人?私は?」
杏子「いや、魔法少女のことは話さずにあんたとの関係を言えって言われると…なあ?」
ほむら「かなり厳しいわね」
さやか「ごめんなさい…」
まどか「で、でもいつか紹介しようね?」
マミ「私が仲裁したのに…」
杏子「皮肉だな」ケラケラ
マミ「まあいいんだけどね。…じゃあせっかく集まったことだし、みんなお茶していく?」
さやか「わーっ!賛成です!」
杏子「めんどくせーやつらのせいで腹減ったしなぁ」
ほむら「まどか、時間大丈夫?」
まどか「うちは門限ゆるいから。でも帰りは誰かボディガードについてもらいたいなあ…なんて」
―深夜―
杏子「みんな帰ったか。…いやぁ、一時はどうなるかと思った」
マミ「佐倉さんは引っ掻き回しただけよね」クスクス
杏子「ううっ!…結構、むずいもんだな、あーゆーの。マミはすげえや」
マミ「あら、あなたが言ったんじゃない。みんながちょっとずつ理解し合えればいいのになって」
杏子「ああ!言ったなそんなこと。…ってことは、今回の件はあたしが間接的に解決したってことでいいのか?」
マミ「そういうことにしておいてあげる」クスッ
杏子「なあ、一個気になってるんだけど」
マミ「なあに?」
杏子「文化祭のおみくじ。みんな当たってるからさ、次はマミの番かなーって」
マミ「ああ、そういえばそうね。美樹さんが『友達の二股注意』、暁美さんが『発言注意、友人と衝突するかも』」
杏子「あたしは『水難注意』。まあ確実にほむらの鼻水だろーなあ…」
マミ「私は『頭上注意。食べられるかも』なんだけど」
杏子「やめてくれよ、油断して魔女にバックリいかれるなんて笑えねえからな」
マミ「大丈夫よ、意外と佐倉さんって心配性ね」
杏子「…ほんとに、やめてくれな」
マミ「ええ。最近は毎日が楽しくて仕方ないの。死んでたまるもんですか」
杏子「…あたしがいまここでアンタに噛みついたら、占いはチャラになるかな」
マミ「かもね」クスクス
マミ「さあ、もう寝ましょ…う?」
杏子「…」ユラリ
マミ「…ちょっと佐倉さん?まさか本当に…」
マミ「ま、待って落ち着いて!ちょっと!ああっ…」
ガブッ
「きゃああああああああああああああ」
―数日後―
仁美「ではみなさん、また明日」
杏子「じゃーなー」
ほむら「ええ、明日はよろしくね」
仁美「こちらこそ」
杏子「じゃ、あたしも帰るわ。明日は9時集合でいいんだよな?」
さやか「うん!遅れないでよー?」
杏子「さやかじゃあるまいし、それはねーよ。んじゃなー」フリフリ
まどか「ティヒヒ、また明日、杏子ちゃん」
ほむら「じゃあ、私たちも帰りましょうか」
まどか「そうだね」
―通学路―
まどか「明日楽しみだね~」
ほむら「そうね。私はちょっと緊張もあるかしら…」
明日は仁美さん含め、まどか達5人と遊園地に行く予定だ
あの一件のあと、私も杏子もできるだけ仁美さんとも絡んでるんだけど、どうもまだぎこちない…
そこで、一日遊園地にでも遊びに行って親睦を深めようということになった
遊園地といっても、前に話しに出たような夢の国じゃなくて地元の古びた遊園地なんだけど…
杏子と私があまり持ち合わせがないせいでこうなってしまったので、そろそろ新しいバイトを始めたいところね
まどか「ほむらちゃんは遊園地初めてだもんね」ティヒヒ
さやか「しっかりあたし達でエスコートしてやらないと!」
ほむら「ふふ、よろしくね。半端なエスコートだったら承知しないわよ?」クスッ
さやか「まっかせなさいって!勉強を教えてもらってる恩に、あたし達は遊びで応えよう!ねー、まどか?」
まどか「私たちにはそれぐらいしかできないもんねぇ…」ティヒヒ
ほむら「しか、だなんて。最高よ、ふたりとも」
さやか「あれ?ほむらん家って通り過ぎてない?」
ほむら「ああ、これからまどかの家にお邪魔するの」
まどか「ほむらちゃんにうちの野菜をおすそわけするんだ~」
さやか「そっか。ほむらはひとり暮らしだもんね」
ほむら「ええ。すごくありがたいわ」
まどか「ティヒヒ」
さやか「あ、じゃあ杏子やマミさんにもあげたら?」
まどか「うーん、杏子ちゃんは野菜は苦手だ、って…」ティヒヒ
さやか「あいつ…」
ほむら「マミさんは?」
まどか「マミさんは喜んでくれたんだけど、あとで杏子ちゃんから食卓からタンパク質が消えるからやめてくれって苦情がきちゃって…」
さやか「どんだけキライなんだっ!」ケラケラ
ほむら「まあ杏子のことだから苦い顔しながらも平らげたんでしょうね…」
さやか「んじゃ、あたしはこのへんで」
まどか「上条くん待たせちゃうもんね」ニヤニヤ
ほむら「明日、なにしたか聞かせなさいよ」ニヤニヤ
さやか「バイオリン聴かせてもらうだけだっつーの!」
ほむら「ふーん?」
まどか「キスしないの?」
さやか「しないっ!///」
さやか「ふたりしてからかってくれちゃって!ほんとにもう行くから!バイバイ!///」タタッ
まどか「さやかちゃんをからかうの楽しいね」ティヒヒ
ほむら「また本人もちょっと嬉しそうなのよね」フフッ
まどか「ねーっ」
___________
________
まどか「はい、ほむらちゃん」
ほむら「わ。こんなに…いいんですか?」
知久「いいんだよ。まどかがいつもお世話になってるからね」
まどか「そーゆーこと!遠慮しないで」
知久「それにしても中学生で一人暮らしなんて大変だろう。よかったら野菜だけじゃなくて、夕ご飯とかもうちに食べにおいでよ。まどかも喜ぶ」
ほむら「いえ、そんな…。そこまでお世話になるわけにはいきません。一応父と母からも生活費はもらってますので」
知久「…ほむらちゃんはしっかりしてるなぁ。まどかも見習いなさい?」
まどか「もぅ…やめてよパパ」ティヒヒ
知久「ははは。まあ、家族の団らん、みたいなものが恋しくなったらおいでよ。ご家族の代わりになれるはずもないけど、気が向いたら」
ほむら「ええ。お気遣いありがとうございます」ペコリ
ほむら「では私はこれで…」
知久「うん、気を付けて。まどか、見送ってあげなさい」
まどか「はーい」
ほむら「…ここまでで大丈夫よ。ありがとう、まどか」ニコ
まどか「んー、もうちょっとお話ししてたいかな。時間大丈夫?」
ほむら「ええ。じゃあそこに腰かける?」
まどか「うん!」
まどか「……」ジッ
ほむら「……?」ニコ
まどか「ほむらちゃん…この前は、ほんとうにごめんなさい…!」ペコリ
ほむら「…もう、なにかと思えば。まどかにもさやかにも、あれから何回も謝ってもらってるじゃない。いいのよ、もう済んだことよ」
まどか「ううん…!私、最低だった…ごめんね、ごめんなさい…」
ほむら「私はいいって言ってるのに…。なにをそんなに気に病んでるの?」
まどか「だって…!ほむらちゃん魔女になりかけてたって…!マミさんや杏子ちゃんがいなかったら、ほむらちゃん…し、死んで、たんだよね…?」
ほむら「…私が私でなくなるわけだから、まあ死んでるって表現で合ってるかもしれないわね」
まどか「私…そんなにほむらちゃんを傷つけて…!」
ほむら「めんどくさいでしょ、私…。ちょっとした口論で勝手に絶望して、死にかかって…。私が弱いだけだから気にしないで」
まどか「ちょっとしたじゃないよ。私たち一方的にほむらちゃんを悪者にして突き放したんだもん。私だってそんなことされたら絶対落ち込んじゃうよ…」
ほむら「…確かに、まどかにしてはすごく怒ってたわね。ちょっとびっくりしたわ。その、私も言い方は悪かったとは思ってるけど、なにがそこまであなたを怒らせたの?私にも非があるなら謝りたいわ」
まどか「…前にほむらちゃんに相談したことあったよね。魔法少女じゃないせいでみんなと壁を感じてる、って。その時ほむらちゃんは言ってくれたよね、なにがあっても私をのけ者にしない、私はあなたの味方だからって抱きしめてくれたよね」
まどか「だから私は、今回もほむらちゃんは二つ返事で仁美ちゃんと仲良くしてくれるのかなって思ってたんだけど…」
ほむら「……」
まどか「優しくしてくれたのは、私だからなの?ほむらちゃんは私や魔法少女のみんなの他はどうでもいいの?って。そう思ったら急にほむらちゃんが冷たい人に思えて…」
まどか「でも!あとで冷静になってみたら、ほむらちゃんの主張も間違ってなくて!逆になにがあっても私の味方だって言ってくれた親友を突き放したように責めたてた私こそ冷たいんじゃないかって!」
ほむら「そんなこと…」
まどか「私ね、決めてたんだ…。私も、なにがあってもほむらちゃんの味方でいようって。私ができることなんてたかが知れてるけど、それでもほむらちゃんが困ってたら全力で助けてあげようって」
まどか「なのに…!実際にほむらちゃんが魔女化しかけた時、助けたのはマミさんと杏子ちゃんで!わ、私はこともあろうに、ほむらちゃんを追い詰めた側で…!悔しいやら、情けないやら…。ごめんね、本当にごめんなさいほむらちゃん…こんな冷たい私で」グスッ
ほむら「まどかっ!?な、泣かないで…」オロオロ
まどか「っ!?ち、違うのほむらちゃん!同情してほしくて泣いてるとかじゃなくて!…えぐ、慰めてほしいんじゃなくて…」グスグス
まどか「違うのに…涙、止まってよぉ…」グシグシ
ほむら「…えっと」オロオロ
ほむら「……」
ほむら「まどか」ギュ
まどか「ほむらちゃん!?///」
ほむら「泣かないでよまどか…。今回は私が弱くて悪かった。それでいいじゃない」
まどか「良くないよ…いまだって、ほむらちゃんはこんなに優しいのに」
ほむら「…優しくなんかないわ。私、けっこう冷たいわよ」
ほむら「本音を言うとね…私、わからないの。新しい友達の作り方なんて」
ほむら「あなた達4人とは、ループを通してどうしたら仲良くなれるか知ってたの。どんな話題で盛り上がるか…どんな趣味で、どんなことが好きなのか…」
ほむら「だから…それっぽい事情を並べ立てて、私はただ逃げてただけなのかもしれない」
まどか「でも…」
ほむら「それに確かにショックではあったけど、いま思えばちょっと嬉しくもあるわ。気に入らないところがあったら、それに目をつむって上辺だけで付き合うより、指摘してくれた方が友達!って感じするじゃない」
ほむら「…なんて。私はそんな偉そうなこと言えないわね」フフッ
まどか「……」グスッ
ほむら「だから!お願いだからそんなに気に病まないで。むしろこれからも、私に腹が立ったらどんどん指摘して」
まどか「………じゃあ、さっそく気に食わないところ指摘してもいいかな」ギュー
ほむら「え、ええっ!?う、いいわよ」ドキドキ
まどか「…………優しすぎ」ギュー
ほむら「…え?」
まどか「優しすぎっ!もっと私を責めてもいいんだよ?」
ほむら「そ、そんなことできないわよ…」
まどか「……」ムー
まどか「ほむらちゃんも言って!」
ほむら「な、なにを?」
まどか「私のイヤなところ!あるでしょ?」
ほむら「急にそんなこと言われても…ないわね、特に」
まどか「えー、ほんとに?」
ほむら「ほんとに」
まどか「じゃあ作っちゃおうかなぁ」
ほむら「え」
まどか「それーっ!」コチョコチョ
ほむら「きゃあっ!ちょ、あは、はははははあh」
ほむら「やめて、まどっ!ははは、ひひっ!ひいいいい」バタバタ
まどか「さやかちゃんが言ってたとおりだ!くすぐるの弱いんだねほむらちゃん」
ほむら「やめて、やめなさいっ!怒るわよ!」
まどか「わ、怖い!」パッ
ほむら「はぁ…はぁ…なんかまどかが最近さやかみたい」
まどか「えーひどーい」ティヒヒ
ほむら「ぶっ!その発言こそ酷いじゃない」クス
まどか「たしかに!」
まどか「じゃあ、明日はよろしくね」
ほむら「ええ、よろしく」
まどか「…実はあのあと、仁美ちゃんに怒られちゃって。そんなことしたらヘンに気を遣わせるだけだから申し訳ない、って」
まどか「だから…仁美ちゃんのことキライにならないであげて。自然体で接してあげてね」
ほむら「わかったわよもう」クスッ
ほむら「ていうか、明日はまどかもさやかも一緒でしょ?なら大丈夫よ」
まどか「え、えーと。そうだったね」ティヒヒ
ほむら「じゃあ、また明日」
まどか「うん!また明日!」
―翌日―
杏子「…で?どーゆー冗談だこりゃ」
ほむら「…やられたわね」ハア
LINE
―魔法少女のお茶会―
さやさや
{ごめーん!あたし用事思い出したから遅れていく!
鹿目まどっち
{わ、私も…
{ごめんね二人とも
杏子「要するに!しばらくあのお嬢様と一緒に過ごせってことね」
ほむら「頼んだわよ杏子。私の対人スキルじゃどうにもならないわ」
杏子「丸投げかよ!いや、あたしも正直金持ちお嬢様は苦手だ…」
ほむら「こら杏子、そんな言い方」
杏子「だぁーってよぉ」
仁美「お待たせしました…」ヒョコッ
仁美「あら?まどかさんとさやかさんは」
杏子「あぁー、用事があるとかでさ、遅れてくるんだって」
仁美「まあ…二人ともなにをなさってるんだか」
ほむら「先に入ってていいそうだから行っちゃいましょう」
仁美「そうですわね」
ほむら『行っておくけど、私遊園地なんて初めてだから。杏子がんばって』テレパシー
杏子『なに言ってんだ。あたしだって初めてだぞ?』テレパシー
ほむら「……」
杏子「……」
―マミ宅―
マミ「それはちょっと酷いんじゃないの?」
さやか「いやいや!多少の荒療治は仕方ないっすよー」
まどか「うーん、これでよかったのかなぁ」
マミ「…テンパる二人が目に浮かぶわ」
さやか「まあまどかがどーしても!って言うんで、午後からは合流しますし」
マミ「まさか最初の計画では丸1日放置するつもりだったの?」
まどか「まあ…ティヒヒ」
マミ「はぁ…。二人とも支度して。遊園地行くわよ」
さやか「ああ、やっぱまずかったですかね」
まどか「だから言ったのに」プー
マミ「なに言ってるの二人とも。尾行するのよ!こんな面白い展開、見逃す手はないわ!」
さやか「うぇ!?そっち?」
マミ「ほらほら早く!」ウキウキ
さやか「尾行って発想はなかったです!やりましょうやりましょう!」ウキウキ
まどか「…いいのかなぁ」
―遊園地―
ほむら「え、えーっと、入場券ってやつでいいのよね?」
杏子「あたしに聞くな!…フリーパスがあるんだからこれ買えばいいんじゃねえの?」
仁美「今日は一日遊ぶんですし、フリーパスじゃないですか?」
杏子「だよな!んー、仁美はほむらと違って頼りになるなあ」
ほむら「うるさいわね」
さやか「やっぱり二人ともテンパってますねえ」ニヤニヤ
マミ「こーゆーの楽しいわね」ニヤニヤ
まどか「午後にはちゃんと合流しようね…?」
さやか「わかってるって!まどかは心配性だなぁ」
――ジェットコースター
ほむら「あ、あんなに高くから…?」ボーゼン
杏子「なにびびってんだよ」ケラケラ
仁美「そうですわよ!これに乗らないと始まりませんわ」
ほむら「だって!壊れたらどーするのよ!即死よ即死!」
杏子「うるせーなぁ」ケラケラ
仁美「もしもの時のための安全バーですわ」
杏子「ほら行くぞほむら」
ほむら「ま、待ってまだ心の準備が…」
マミ「はい、じゃあ行くアトラクションの順番を決めましょう」
まどか「え?あの、ほむ」
さやか「んー、そのへんは適当で!」
マミ「だめよ!こーゆーのはちゃんと効率よく回らないと」
さやか「は、はあ…」
まどか「ほむらちゃん達の尾行…」
マミ「えーっと、ちょっと待っててね。フードコートがここにあるから…」
さやか「あ!あたしバイキング乗りたいです!」
マミ「ということは…」
まどか(ふたりとももう尾行飽きてる…)
杏子「うっぷ」ヨロヨロ
ほむら「ちょっと杏子大丈夫?」
仁美「暁美さんはともかく、佐倉さんもなかなかいい声あげてましたねー。意外ですわ」
杏子「放っといてくれ…。まさかあんなに怖いなんて思うかよ…。なーほむら?」
ほむら「ええ…。想像以上だったわ」
ほむら(魔力で心臓強化してなかったら発作で死んでたかも)
仁美「じゃあ今日は絶叫系はやめておきましょうか」
ほむら「…でも、ちょっと楽しかったかも」
杏子「ええーお前マジかよ。見栄張るなよ?」
ほむら「張ってないわよ!」
仁美「ああいうのはだんだんクセになってくるのもですわ。ほむらさんもひょっとしたらこれからハマるかもしれませんよ?」
ほむら「…次はちょっと抑え目がいいわ」
仁美「了解です」
――空飛ぶじゅうたん
仁美「これはあんまり怖くないですわよ」
杏子「うへえ…一回転してんじゃねーか」
ほむら「でも平行移動だけだし…キッズ向けって書いてあるわよ」
杏子「キッズ向け、なあ…」
キッズ1「これぜんぜん怖くなかったなー」
キッズ2「俺たち舐められてるよな」
仁美「…だそうですけど」
杏子「楽勝だろ」キリッ
ほむら「一瞬で態度変わったわね」
さやか「いやあー、いつ乗っても楽しいねー、名物サイクロンジェットコースター」
まどか「なんかあちこちボロボロだから割とリアルな方向で怖いんだよねえ」ティヒヒ
マミ「次はミラーハウス行きましょう!全面鏡張りの迷宮ですって!」ウキウキ
さやか「おお、それめちゃ楽しいっすよー!あたしとまどかはタネ知っちゃってますけど…」
マミ「ネタバレはやめてね?」
さやか「もっちろん!」
まどか「ねえねえ、ほむらちゃん達…」
さやか「ん?まあ午後には合流するし大丈夫っしょ!」
まどか「……」ムー
ほむら「バイキング楽しかったわぁー」ツヤツヤ
仁美「わりとスリリングでしょう?」
ほむら「浮遊感がたまらないわ。でも最後の方はちょっと景色に飽きるかしら」
仁美「まあそこはご愛嬌です」
杏子「あたしはもう乗らねえぞ」
ほむら「あら、杏子が一番楽しんでたじゃない」
杏子「ありゃあ悲鳴だばか!」
仁美「じゃあ次のやつは暁美さんと二人で乗りましょうか」
杏子「そーしてくれ。あたしはメリーゴーランドで馬と戯れてるさ」
ほむら「ええー乗りましょうよ」グイグイ
杏子「いーやーだー」
仁美「じゃあじゃんけんでどうでしょう?」
杏子「なんでだよ!」
ほむら「いいわね。私と仁美さんに勝てたら馬と好きに過ごしなさい」
杏子「いやいやいや訳わかんねーよ、そんな手に乗るか」
仁美「さいしょはぐー!」
ほむら「じゃんけん!」
杏子「ええっ!?ちょ、マジかよ!」バッ
――フリーフォール
杏子「そしてなんでコレなんだよ!!」
ほむら「じゃんけんに負けたのにみっともないわよ」
仁美「じゃんけんは絶対ですわ」
ガコン…ガコン…
杏子「よりによってこんな、ただ落ちるだけのシロモノじゃなくてもいいだろ…」
ほむら「杏子、なんで目をつむってるの?」
杏子「ちょっと眠い」
仁美「いい景色ですわよ」
杏子「そうか」
ガコン…ガコン…
ほむら「あれっ?まどか!?」
杏子「はあっ!?」パチ
杏子「ってたけえよ!!バカだろこれ作ったやつ!!」
仁美「そろそろ落ちますわよ」
杏子「うそだろ!?やめろバカほんとに…」
ガコン…ガコン…
ガコッ!
杏子「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
仁美「きゃー!!」
ほむら「いえーい!!」
ピタッ
杏子「ふーっ!ふーっ!死ぬかと思った…」
杏子「ってかほむら!まどかなんていねえじゃん!」
ほむら「いえ、ほんとにいたのよ。多分さやかとマミさんも一緒に。ほら、ミラーハウスの近く」
杏子「はあ?んなはず…」
ガコッ!
杏子「え゛っ?これまだ続くのか?」
仁美「当然!わりと長いですわよ」
ガコン…ガコン…
杏子「やめろーやめろー」
ガコッ!
杏子「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!」
杏子「ほむらの馬鹿野郎おおおおおおおおおおっ!!」
ほむら「なんでよおおおおおおおおお」キャー
――お昼・フードコート
杏子「メシだメシー!腹減って死んじゃうぜ」
ほむら「杏子は一番はしゃいでたものね」
仁美「ですねー」クスクス
仁美「佐倉さんってもっと怖い方なのかと思ってましたけど、意外とかわいいんですね」
ほむら「ええ、杏子は基本的にいじられキャラだし」
杏子「あたしはお前らが意外とドSでびっくりしてるよ」
杏子「つーか、ほむらにいじられキャラとか言われたくねーよ!お前のがよっぽどだろ」
ほむら「どこがよ!」
杏子「この前さやかが撮ってた眼鏡でおさげの…」
ほむら「うあああ言わないでえええ」
仁美「眼鏡でおさげ…?」
杏子「あー、こいつがまほうsy」グム
ほむら「ストップ!」ガシ
ほむら(なにサラッと魔法少女とか言おうとしてるの!)テレパシー
杏子(しまった!あっぶねええ)テレパシー
仁美「?」キョトン
ほむら「ああ…ごめんなさい。黒歴史すぎて本当に知られたくないのよ…」
仁美「ええー興味ありますわ」
杏子「いや、すまねえな。さっきのほむら見てもわかると思うけど、この話になるとコイツ本当に凶暴だから」
仁美「確かにすごい剣幕でしたね」クスクス
ほむら「…そういうわけだから」
杏子「さて!メシ買いに行こうぜ」
仁美(さやかさんにはおさげ眼鏡?のこと教えてますのに…)モヤモヤ
さやか「お腹減った~!」
まどか「ティヒヒ、もう12時回ってるもんねえ」
マミ「お昼にしましょうか」
さやか「ですねー!」
まどか「それとほむらちゃん達とも合流しないと!」
さやか「そっか。お昼に合流って話だっけ」
マミ「結局あまり尾行しなかったわね」
まどか「私は何度も言いましたけどねっ」
さやか「まあまあ、きっと向こうもうまくやってるよ。んじゃあ二人に連絡してみる」
マミ「あ、それよりも魔力辿ったほうが早いわよ」
さやか「それもそうですね!さすがマミさん!」
まどか「うーん、こういう会話を聞いてると魔法少女も楽しそう…」ティヒヒ
さやか「やめなって!ほむらが荒れるから!」ケラケラ
まどか「な!ほむらちゃんの前だったら絶対言わないもん!魔法少女が厳しいものだって知ってるしほむらちゃんに心配かけられないもん」
まどか「ただ、わ…私だってマジカルなものに憧れはあるって話で…」
さやか「まどかは魔法少女もの大好きだもんねえ~」
まどか「う…子供あつかいしないでよぉ」
マミ「……」
マミ(こうして話を聞いてると…やっぱり美樹さん達と私達では魔法少女についてずいぶん認識がズレてるわね)
マミ(あまり私としては聞いてて気分のいい話ではないけど…逆にそれは美樹さん達がまだ酷い思いをしていないということ)
マミ(私や佐倉さんや暁美さんのような思いはしないに越したことはないじゃない。そう、事実そう判断してQBとの契約も織莉子・キリカとの戦闘も避けさせたのは私自身)
マミ(しっかりしなさい巴マミ。認識の甘さに苛立つようじゃまだまだよ。思わず微笑んでしまうくらいの心の広さは持たないと)
さやか「…マミさん?」
マミ「あっ、ごめんなさい。ちょっと考え事を」
まどか「深刻そうな顔でしたけど…」
マミ「一人暮らしだとね、いろいろあるのよ」
マミ「よく食べる同居人もいるしね」クスッ
さやか「あー、杏子のやつマミさんに迷惑かけてるのか!今度言ってやらないと」
マミ「さて、暁美さんと佐倉さんの魔力を探りましょう。美樹さんも協力してね?」
さやか「はーい」スッ
さやか「あ!さっそく反応してますよ。フードコートみたいです」
マミ「…待って!二人だけじゃないわ、この反応は…!」
――フードコート
杏子「このラーメン舐めてんだろ!量少なすぎねーか?」
ほむら「十分よ…。私なんてまだ食べ終わってないんだけど」ハフハフ
仁美「暁美さんは結構食が細いんですね」
ほむら「私は長らく入院生活だったから…」ハフハフ
杏子「もう我慢ならねえ!カレー買ってくる」ガタッ
仁美「まだ食べますの!?」
ほむら「放っておけばいいわ。いつものことだから」チュルチュル
仁美「…お二人は本当に仲がよろしいですよね。もう長い付き合いなんですか?転校前から交流があったとか」
ほむら「いえ、付き合いは決して長くないわ。知り合ったのも転校してからだし。ただ波長は合うわね、まどかとは違う方向で」ズズッ
仁美「…まどかさんとは?まあ暁美さんと仲はよろしいですけど…」
ほむら(あ…。そうだ、仁美さんは私がまどかの為にループしてたこと知らないからまどかネタが通じないんだったわ。ほんと、こーゆー機転が効かないところ治したい…。話題変えないと)
ほむら「…その、仁美さん。呼び方、ほむらでいいわよ?まどか達みたいに」
仁美「えっ…?…ふふ、わかりましたわ。ほむらさん」
仁美「ほむらさんも、呼び捨てでいいですわよ。他の方みたいに」
ほむら「…わかったわ、仁美」
ほむら「…なんか恥ずかしいわね!」クス
仁美「ですね!」フフ
ほむら「ああ、お腹が膨れたらコーヒー飲みたくなってきたわ」
仁美「いいですねー。飲みたいですわ」
仁美「でもこういうところのコーヒーってあまり美味しくないかと」
ほむら「わかるわ、粉っぽいというかイガイガするというか」
仁美「そうなんです!のどに悪いんですよね」
ほむら「…仁美って、結構コーヒーこだわるの?」
仁美「こだわるってほどでは…ただ、ミルで挽くところまではやりますね。あとはコーヒーメーカーです」
ほむら「私もそんな感じだわ。なんていうか、ハンドドリップまでいくとめんどくさいのよね。挽くまでがボーダーというか」
仁美「わかります!一杯のコーヒーのために大量の洗い物を出すハメになりますからね」
ほむら「そうなのよねー」
ほむら「豆はどこで?」
仁美「学校の近くのコーヒーショップです。その場で焙煎してくれるところで」
ほむら「ああ、あのご夫婦でやってる」
仁美「そこですそこです!」
ほむら「私もそこで買ってるわよ」
仁美「奇遇ですね!…まあこの一帯で他に買えるところといえばショッピングモールの輸入店とかしかありませんからね」
ほむら「あそこはもう焙煎してあるからイヤなのよね。いつ煎ったんだか知らないけど、なんか鮮度が足りない気がして」
仁美「あそこは確実に酸化してますわ。あまりよろしくないです」
ほむら「だと思ったわ」
ほむら「…なにやら意外なところで趣味が合ったわね」
仁美「ですねえ」
ほむら「今度一緒に買いに行きましょうか」
仁美「ええ!ぜひともご一緒させていただきたいです」
ほむら「それにしても杏子遅いわね…。っ!?」バッ
仁美「えっ?」キョロキョロ
仁美「きゃあああああ!?な、なんですかここは!?」
ほむら「くっ…(魔女結界…!)」
ほむら(どこまで愚かなの私は!?まさか話に夢中になってる間に結界に取り込まれてるなんて!そりゃ杏子も来ないはずよ!)
ほむら(状況は最悪!仁美が正気のままここに取り込まれてしまうなんて…!なんて説明すれば…?それよりここを脱出しなくちゃ!)
ほむら(ど、どうすれば…!?)
QB「・・・・・・」ヒョコッ
ほむら「ひ、仁美!とにかくここは危険だと思うわ!出口を探しましょう!」
仁美「…はいっ!」
ほむら(こうなった以上、私も一般人のふりをしてうまく出口に誘導するしかないわね…。仁美は怖がらせてしまうけど…)
ほむら「多分こっちよ!」
仁美「は、はい!」
仁美「あの、ほむらさん」タタタ
ほむら「どうしたの?」タタタ
仁美「周りに…変な生物が…」
ほむら「よくわからないけど、目を合わせないようにしましょう」
ほむら(使い魔が集まってきた…!簡単に出してはくれないみたいね)
ほむら(どうする…!?変身しなくても魔力を込めればある程度は戦えるけど)
ほむら(私が徒手空拳で切り抜けられる…!?仁美を護りながら…!)
ほむら(…あまり後のことを気にして二の足を踏んでる間に仁美がやられたら元も子もないわ。いざという時は覚悟するしかないわね)
仁美「ひっ!?襲ってきますわ!」
ほむら「足を止めちゃだめ!死にたくなければ走るしかないわ!」
仁美「そんな…ああっ!」ベシャッ
ほむら「仁美!」
なんでこんな時に転ぶの!?…いえ、私が急かしすぎた…!
こんな異常事態に一般人が平静を保てるはずがない。そのうえ、私が余裕をなくして急かしたてたから…
仁美「っ!きゃああああっ!!」
ほむら「くっ!」ゲシッ
迫ってくる使い魔に膝蹴りをくらわす。
しかしいくら魔力を込めているとはいえ、所詮は膝蹴り。ダメージはないからただの時間稼ぎにすぎない。
ほむら「立てる!?」
仁美「いえ…こ、腰が抜けてしまって」
ほむら「く…!」
…苛立ってはだめだ。私が余裕をなくせば仁美の精神的な負担が増えるだけ。
彼女を少しでも安心させないと…!
ほむら「つかまって」
仁美「え?」
ほむら「おんぶしてあげるから」
仁美「でも…」
ほむら「大丈夫、こんなのお化け屋敷と変わらないわ。本当に死ぬわけないじゃない。ほら、早くフードコートに戻りましょう。杏子を待たせちゃうわ」
仁美「す、すみません…」ヒシ
ほむら「さて、行くわよ…!」
仁美をおぶると周囲を見渡す。どうもグズグズしている間に使い魔たちに囲まれてしまったようだ。
仁美「これって…まずいのでは」
まずいどころではない。でも、それを仁美に悟られてはならない。余裕を持つのよ私…!
ほむら「…ちょっと揺れるけど、我慢してね」ダッ
仁美「…!」ギュウ
真正面の使い魔達に突進する。
包囲された場合、一番避けなければならないのはその場にとどまることだ。
間合いを詰められる前に、この包囲網を突破する…!
一匹、二匹…迫りくる使い魔を紙一重でかわしていく。気分はサッカー選手だ。
…視野を広く持たなくてはならない。直近の一匹一匹を場当たり的に処理していては間に合わないからだ。前方の敵すべてを把握して、その間をすり抜けられるルートを想定する。
三匹、四匹…あまり統制のとれた動きではない。この結界の魔女は使い魔にあまり構わない性質らしい。つまりそれは変身していない私にも勝算はあるということ。
…五匹!
ほむら「抜けたっ!」
仁美「ほむらさん!うしろっ!」
ほむら「っ!」クル
仁美の声に、考えるよりも早く身体を反転させていた。
すると目の前には迫りくる使い魔が。おそらく最初にかわした相手だろう。
ほむら(くそ…!この体勢じゃかわせない!)
ほむら(変身する!?いえダメよ、ようやくたどり着いたこのループ!なんとしても仁美に魔法少女のことは知られてはいけない)
ほむら(大丈夫、ソウルジェムさえ無事なら再生できる!)
ほむら「くっ…」
ほむら(一発!一発耐えることができれば…!)ギュ
仁美「ほむらさんっ!危ないっ!」
しかし、結果的にその使い魔の爪牙は私には届かなかった。
使い魔の身体が時間停止したかのごとく、空中に縫い付けられたからだ。
使い魔を魔女結界というキャンパスに縫い付けたのは、突如地面から生えた標識大の棒だった。
そしてそれはよく見ると…
ほむら(杏子の槍!)
ほむら(杏子っ!?)テレパシー
杏子(よお、めんどくせーことになってるな)テレパシー
杏子(あたしが陰から援護してやる。お前は全力で走ってろ)
ほむら(…恩に着るわ)
杏子(その代わりにこいつのグリーフシードはいただくよ)
ほむら(はいはい)クスッ
仁美「ほむらさん?」
ほむら「…思い出し笑いよ、気にしないで」
仁美「…そろそろ自力で歩けますわ。ありがとうございました」
ほむら「そう?じゃあ下ろすわね」
ほむら「さあ、きっと出口まであと少しだわ。がんばりましょう」
仁美「ええ!」
杏子「…よしよし、あとちょっとの辛抱だな」クイックイッ
杏子(しかし槍を地面から出すのって難しいんだよなあ…。消耗も激しいし)
杏子(アイツらと使い魔の距離も余裕が出てきたし、そろそろ投げる方に切り替えるか)
杏子「ん…?」
杏子(なんだ…!?使い魔たちが集まって…)
杏子「!!」
杏子(ほむらっ!)テレパシー
ほむら(杏子?どうしたの)テレパシー
杏子(緊急事態だ!魔女がすぐ後ろまで迫ってるぞ!)
ほむら(ええっ!?最深部どころか、こんなに浅いところなのに!?)
杏子(さっきまでのは使い魔じゃなかった!分裂した魔女だったんだよ!)
ほむら(……!そういうこと。なら統制がとれないのも無理はないわね。いまこの瞬間まで魔女がいなかったんだもの)
杏子(冷静か!あたしの援護が間に合わないんだ!いざという時は覚悟してくれ!)
ほむら(了解)
ほむら「…やっぱり、こうなるのよね」ハア
…出口を目の前にして。
ついに魔女に追いつかれてしまった…。
仁美「ほ、ほむらさん…!なんですの、あれ…!?」ガクガク
ほむら「…仁美。怖がらせてしまってごめんなさい。もう大丈夫だから」
ほむら「それと…。これから見ることは、クラスのみんなには…内緒にね」
覚悟の深呼吸を終えると私は…魔法少女に変身した。
仁美「ほ、ほむらさん!?あなたは…」
ほむら「私は魔法少女。たったひとつの願いを代償に、呪われた運命を背負わされた者」
ほむら「仁美、少しだけ待っていて。すぐ終わるわ」
マミ「暁美さんっ!?」
さやか「杏子!!」
ほむら「いま終わったところよ」
杏子「おせーよ、二人とも」
ほむら「遅いのはあなたでしょ、なによ援護が間に合わないって」
杏子「しゃーねーだろ?攻撃を切り替えようとした矢先に奴さんが変身するんだからさー」
仁美「あ、あの…私まだいまいち状況がつかめてないんですが…」
まどか「仁美ちゃん!よかったぁ、無事だったんだね!」
ほむら「当然よ。私がついてるんだもの」
杏子「かなーり直前まで変身しなかったけどな」
ほむら「…だって」
仁美「あの、みなさんは全員魔法少女…ですの?」
まどか「私以外の四人がそうだねー」ティヒヒ
ほむら「隠していてごめんなさい…」
さやか「仁美には話せない事情がいろいろとございまして…」
杏子「恥ずかしい限りだな」ポリポリ
マミ「あなたが噂の志筑さん?私は巴マミ。見滝原中学の三年生よ」
仁美「あ、初めまして。私、志筑仁美と申します。まどかさん達から巴先輩の話は常々…」
マミ「あら、嬉しいわ。どんな風に聞かされてるのか興味あるわ」
仁美「優しくて面倒見のいい方だと」
マミ「それだけかしら?ねえ、佐倉さん?」
杏子「なんであたしなんだよ」チッ
仁美「あと、ちょっと交友関係に難のある方だとも…」
マミ「どういうことかしらねえ、佐倉さん?」
杏子「だーからなんであたしなんだよ!!」
マミ「…とまあこれくらいにしておいて。QB?どうせいるんでしょう、出てきなさい」
QB「また君に呼び出される日がくるなんてね。嬉しい限りだよ」
マミ「相変わらず口は達者ねQB。要件はわかるでしょう?」
QB「志筑仁美についてかな。確かに彼女には資質があるようだ」
仁美「資質…とは、魔法少女のですか?」
QB「さすがに話が早い。その通りだよ、君にはその資格がある」
QB「魔法少女になったら、僕が願いをなんでもひとつ叶えてあげる。だから、僕と契約して魔法少女になってよ!」キュップイ
仁美「なんでも、ひとつ…」
QB「個人の資質にもよるけど、基本的に制限はない。君の望むままを言ってみるといい」
ほむら「仁美!魔法少女になったら、さっきみたいな怪物と戦わないといけないのよ!それに…」
マミ「暁美さん!」
マミ「……」ジッ
マミさんが真剣な表情で見つめてくる。…ここは任せろ、と言いたいのだろうか?
テレパシーを使わないということはそうなのだろう。テレパシーはQB経由だから、恐らくQBを出し抜く手があるに違いない。
ほむら(マミさん…頼みます!)
マミ「志筑さん。魔法少女については、暁美さんから聞いてるのよね?」
仁美「え?ええ…呪われた運命を背負わされた…とか」
QB「……」
マミ「…ふふ、それで、志筑さんには叶えたい願いとかあるの?」
仁美「え?ええ、なくはないですけど…」
マミ「なら、こんなチャンスはないわよ?ぜひ叶えてもらっちゃいなさい」
ほむら「!!?」
ほむら(マミさん…!?だ、大丈夫なのよね?)ギリ
QB「…仁美、その願いは君の魂の代価に値するものかい?」
仁美「…たぶん、値しますわ」
マミ「……」
ほむら「……っ!」
ほむら(まだアクションを起こさないの!?マミさん…!)
杏子「おい…」
さやか「い、いいの!?」
まどか「……」オロオロ
QB「なら、願い事を言ってごらん。そうすれば君は晴れて魔法少女の仲間入りだ」
仁美「私…私は…」
ほむら(もうだめ!アイツを撃ち殺すしかない!)スッ
QB「…いや、やめてくれ」
仁美「え?」
QB「僕は君とは契約できない。この話はなかったことにしてくれ」
マミ「いいの?契約が取れかかってたのに」
QB「…マミ、君も意地が悪いね。君はこの結末を予期していたんだろう」
マミ「……」
QB「僕は君のその態度がハッタリだとわかっている。内心は僕のこの反応に誰よりも安堵しているはずだ」
QB「しかし…ハッタリだとわかっていても、僕にはそんなリスクは冒せない。君の勝ちだよ、マミ」
マミ「ハッタリ?なんのことかしら」
QB「…正直、君がここまで厄介な存在になるとは思いもしなかったよ。成長したね、マミ」
マミ「…用は済んだんでしょう。さっさと消えなさい」
QB「やれやれ、嫌われたものだ」
QB「…だがマミ、覚えておくといい。僕たちは今回の件で、ハッキリ君を障害だと認識した。対策はさせてもらうよ」
マミ「……」
QB「じゃあね」ヒョイッ
マミ「…はぁ」ヘタッ
ほむら「マミさんっ!」
さやか「マミさん!」
マミ「なんとか、なったようね」
杏子「どーゆーことだオイ。なんでアイツは引き下がったんだよ」
仁美「あの…私が一番、なにがなんだか」
まどか「仁美ちゃん危ないところだったんだよ?みんな魔法少女にされて酷い目に遭ってるの」
仁美「え?でも巴先輩はいい機会だからって…」
マミ「それについては謝らなくちゃね。ごめんなさい、あなたをダシにしてしまって」
仁美「え…っと?」
杏子「説明しろよマミ。あいつの言ってたリスクってのはなんなんだ」
マミ「…まあ、それについては今度でいいじゃない。さあ、せっかくの遊園地なんだから楽しみましょう!志筑さんもね」ニコッ
仁美「は、はい!」
ほむら「魔法少女については今度ゆっくりね。ここじゃその…人が多いから」
仁美「あ、…そうですわね。確かに公衆の面前だと恥ずかしいですわ」
さやか「よーし!改めてみんなで楽しむぞーっ!」
まどか「おーっ」
杏子「おい、ふたりとも。何かあたし達に言うことがあるんじゃねーのか?」
さやか「ん?…あ!あははー、まあまあここは遊園地!細かいことは忘れて楽しもうではないかー」ダッシュ
杏子「あっ!てめえそれで済むと思ってんのか!?おい待てさやかーっ!」ダダダ
まどか「その、ごめんねほむらちゃん」
ほむら「いいのよ。どうせさやかあたりが言い始めたんでしょう?それに仁美とも仲良くなれたし。ね?」
仁美「ええ。楽しかったですし…先ほどのほむらさんはとてもカッコよかったですわ」
ほむら「え、ええっ!?そう、かしら…?」
まどか(…仲良くしてほしかったハズなのに…なんだろう、ちょっと複雑)ムー
まどか「私もほむらちゃんのことカッコいいと思ってるよ!」ズイ
ほむら「ま、まどか!?…その、ありがとう?」
マミ「あら、暁美さん大人気ね」クスクス
ほむら「マミさん…バカにしてない?」
マミ「とんでもない。うらやましいわよ」クスクス
ほむら「…やっぱりバカにしてるわ」
まどか「ほむらちゃん!私コーヒーカップ乗りたいなあ!」グイグイ
ほむら「きゃ!ちょっと、なんか今日のまどか強引な気がするわ…」
仁美「あ、私も乗ります!」
マミ(…よかったわね、暁美さん。やっぱりあなたには笑顔が似合うわ。いつかその、まだどこかぎこちない笑顔が、もっと自然になれる日がくるといいわね)
マミ「……」
~~
QB『…だがマミ、覚えておくといい。僕たちは今回の件で、ハッキリ君を障害だと認識した。対策はさせてもらうよ』
~~
マミ(まあ…なんとかなるでしょう)
杏子「なにやってんだマミー!置いてくぞー?」
マミ「あ、ちょっと待ってよ!」
――観覧車
杏子「さて、こうして3―3で別れたんだ。さっきの解説頼むぜマミ」
ほむら「まさかインキュベーターの方から契約しないでくれ、なんて。こんなこと初めてだわ」
マミ「うーん、解説ってほどのことはしてないんだけどね…。QBの言った通りハッタリだったし」
マミ「…私がQBと取引したのは覚えてるわよね?」
ほむら「魔法少女のシステムを口外しないから魔女を作ってくれってやつよね」
マミ「ええ。あの取引、私たちはQBの営業を妨害しないって条件も入ってたでしょう?」
杏子「ああ。そのせいでまどかへの勧誘を邪魔できねーんだよな。うざってえ」
ほむら「一本取られたわよね」
マミ「いえ、案外そうでもないのよ。今回の志筑さんの件で気が付いたんだけど、あれ、QBにとっても不利な意外な穴があるの」
ほむら「…どんな?」
マミ「QBとの契約内容は『魔法少女』に魔法少女のシステムを口外しないこと。なら、一般人に話したところで契約には底触しない」
杏子「まあ、そうだな」
マミ「じゃあ、魔法少女のシステムを知った子がQBと契約したらどうなるかしら?」
ほむら「…あっ!!『魔法少女のシステムを口外できる』魔法少女が生まれる!」
杏子「おおっ」
マミ「そう!QBの一番恐れている存在が生まれるわ」
ほむら「かなりグレーゾーンだけどね」クス
杏子「でもまあ漏らしたもん勝ちだしなあ」
マミ「そうね」クスクス
マミ「つまりQBの言っていたリスクっていうのは、『魔法少女のシステムを口外できる』魔法少女を生み出してしまうリスクってこと」
マミ「直前に、志筑さんに『暁美さんから魔法少女のことは聞いてるか』って尋ねたでしょ?それに対して志筑さんは理想の返答をくれたわ」
ほむら「えっと、確か…」
~~
マミ『志筑さん。魔法少女については、暁美さんから聞いてるのよね?』
仁美『え?ええ…呪われた運命を背負わされた…とか』
~~
ほむら「っ!すでにシステムのことを聞いてるようにも取れるわね!」
マミ「でしょ?あれは本当に僥倖としか言えないけど…あの瞬間に私は勝利を確信したわ」
杏子「~♪」ペリペリ
マミ「そもそもQBは私たちと交友関係にある人物は勧誘する気がなかったんじゃないかしら」
ほむら「…確かに、私達はあいつらの勧誘を邪魔できないんだからその気があれば堂々と勧誘できるわよね」
杏子「ロッキーくうかい?」ヒョイッ
ほむら「いただくわ」パシッ ポリポリ
マミ「しかも一発で暁美さんのソウルジェムが濁ったように、私達の輪を乱すにはこれ以上ないほど効果的なのに」ポリポリ
ほむら「…その話はちょっと///」カアア
杏子「いーじゃんいーじゃん。意外なほむらを見れて楽しかったぞ」ポリポリ
マミ「そう、でも今回の件で暁美さんが消耗したのを見て、QBは志筑さんを利用しようと思ったんじゃないかしら」ポリポリ
ほむら「でも魔法少女にする気はないんでしょう?」
マミ「そう。勧誘するフリよ。きっとQBは、志筑さんを勧誘すれば私たちが全力で止めに入ると思ったんでしょう。そしてしぶしぶ撤退する。これを繰り返せば…」
ほむら「私達はかなりのストレスを感じるでしょうね」
マミ「…それがQBの狙いだったんだと思うわ。だから私は逆に志筑さんを魔法少女に勧めたの」
杏子「なるほどなぁ」ポリポリ
ほむら「どっちも仁美を魔法少女にしたくないのに勧誘してたのね」
マミ「ええ。まあチキンレースに近いわね」クスッ
ほむら「よくもまあ思いつくわねそんなこと…」
マミ「ふふ、見直した?」
ほむら「見直したもなにも…」ボソボソ
マミ「?」
ほむら「ありがとう、マミさん。ほんと、助けられてばっかりね」
マミ「あら、私だってたくさん助けられてるわよ」
ほむら「え?」
マミ「さあ!そろそろ観覧車が一周するわ。降りる準備しないと」
杏子「待って菓子かたす」ゴソゴソ
ほむら「知らない内にずいぶんお店広げたわね…」
まどか「あっ!三人も降りたみたい!おーい!こっちこっちー!」フリフリ
ほむら「まどか」タタッ
さやか「よーし、全員そろったし、写真撮ってお開きにしようか」
仁美「今日は楽しかったですわ」
ほむら「ええ、あっという間だったわ」
マミ「最初からみんなで回ってもよかったかもね」
まどか「ほらぁ~さやかちゃん!」
杏子「罰として帰りにあたしにたい焼きおごれ」
さやか「まあまあ!またいくらでも遊ぶ機会はあるわけだし!せいぜいお金貯めてよね、ふたりとも!」
ほむら「ああ、そういやバイト探さないと」
杏子「だなぁ」
ほむら「だいたいあなたが行方不明になるから悪いのよ」
杏子「しゃーねーだろあれは」
さやか「あ、すみません!写真撮ってもらっていいですか?」
「いいですよ」
さやか「ありがとうございます!さあさあ並んでみんな!」
マミ「二列になった方がいいかしら?」
杏子「小さい子は前へどうぞ?」
まどか「なんで私見て言うの~?」ティヒヒ
ほむら「じゃあ私はまどかの隣で」スッ
仁美「さやかさん、早く早く!」
さやか「待って待って!」
さやか「よし!はいどーぞ!」
「じゃあ撮りますよー?せーのっ」
全員「「「ピースっ!!」」」
736 : ◆QnqYInc3ms - 2014/03/20 14:52:52.29 orJwUwIko 612/612これで完結になります
気づけば半年という長期間に渡るSSとなってしまいましたが、皆さんのレスのおかげでなんとか完結させることができました
見てくださった方ありがとうございました
シリーズは全部見てるけど、続き書いて欲しいなぁ