俺には幼馴染がいた。とびっきりの美人でモテていた。
あいつが小学5年生を越えたあたりから、男子は彼女に夢中だった。
毎日一緒に登校していた。
小学校っていうのはグループ登校で、一緒にいたかったわけじゃなかった。
あいつは俺のことなんてお構いなしに、マシンガントークを繰り広げているような娘だった。
あいつは、どんな人とでも仲良くなれた。
とにかく顔が広くて、どこへ行くにも常に一緒にいる人がいた。
母親同士、とても仲が良くって一緒に夕ご飯を食べることが多かった。
食べ終わるとお互いの部屋で一緒に遊んでいた。
あいつとは、話が合わなかった。
趣味が異なり、好みもバラバラ。
よく今まで、一緒にいられたものだと感心するくらい。
一緒にいたかったわけではなかった。
あいつといると、俺がダメなやつだと周りから責められるようだった。
元スレ
幼馴染「叶わぬ夢」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1393940904/
放課後を知らせるチャイムが鳴った。
「早く行こうよ」彼女はそう言った。
俺たちは映画を見に行く約束をしていた。
見る映画は「アイアンマン」
俺がとにかく好きで、彼女は興味がなさそうだったけれど、
「君が見たいんでしょ?なら見に行こうよ。今度は私の番だから」といって
付き合ってくれた。
上映が終わると彼女ははしゃいでいた。
「なにあのスーツ!!」
彼女は男のロマンがわかるやつだった。
彼女はちょっとお高いハンバーガーショップへ行きたがった。
彼女はあのお店のクラムチャウダーが好きなんだ。
彼女はアサリが好物だと言っていた。
「次はどんな映画を見ようか」俺は彼女に尋ねた。
彼女はしばらく考えていたけれど、ちょっとためらうように
「君の家に行ってもいい?」そう答えた。
「何を見るつもりなの?」俺は映画のことしか頭にないんだろうか。
彼女はあきれたように俺を見つめていた。
俺は目をそらした。額に汗がにじんでいた。
土曜日になり、彼女は予告通り俺の家にやってきた。
「今日見ようと思っているのはこれです。」
そう言って、彼女は「ロメオとジュリエット」をとりだした。
俺たちはいい雰囲気だった。
俺たちは映画館で映画を見ることをやめ、レンタルショップでDVDを借りてくるようになった。
俺たちは、毎日のように映画を見ていた。
でも、映画を見ている人間なんていなかった。
俺は彼女の香りに夢中だったし、彼女は俺がそういった感情を抱いていることに気付いていたんだろう。
チラチラこちらを見ていた。
誘っている。
俺たちは18本目を鑑賞中、キスをした。
俺から無理やり。
始めは拒んだ彼女も、次第に力を抜いて、キスをうけいれた。
俺たちは夢中でキスをしていた。
荒鷲の要塞へと続くロープウェイが揺れていた。
人生で初めての彼女だった。
彼女は俺の醜い欲をすべて受け入れてくれた。
彼女は、女の子だった。
友人だった頃にはあまりそう言ったところは見せなかったのに。
少女マンガが好きだった。
ああいう恋にあこがれていた。
「ロマンチックも何もないなか、キスしてごめん」
俺は、彼女が恋にあこがれていることに気付き、謝った。
犯すようにはじまった恋には謝りもせず。
「ほんとだよねー。ラブロマンス見ているときにしてほしかった。」と彼女は愚痴った後
「でも、獣みたいで、けっこうよかったかも。」そう、からかうように笑った。
俺は興奮していた。彼女はそんな表情もできるのかと思った。
もっとたくさん見たい、ただそう思って彼女を求めた。
彼女はあきれた表情を作りながら、俺を激しく受け入れた。
彼女が家へ帰ると、そこにはいつもは夜遅くまで仕事をしていていないはずの父親がいた。
父親からこっそりと避妊具を渡された。
聞かれていた。
ようやく冷静になれた気がした。
今日は土曜日だった。
月曜日にいつものように彼女と話していると
「付き合う前にやっと戻ったね」
彼女はそう言って、優しく微笑んだ。
俺がそんなにわかりやすかったのか、彼女はすぐに
「目つきがちがうよね。目線とか、目力とか。
色でたとえるなら赤と青。」
彼女には何もかも見透かされているようで怖かった。
もしくは安心だったのかもしれない。
彼女のそばは、雪山の中で眠るような感覚なんだ。
そんな経験はないけど。
私には、幼馴染がいた。彼は、地味で冴えない人だったけれど、
私の内面をしっかりと見てくれる人だった。
毎日一緒に登校していた。
グループ通学で強制されていたものだったが、私はとてもうれしかった。
彼には特別なかのいい人がいた。
彼の交友関係は、狭く深くだった。
彼には特別な人がいた。
彼は、毎週土曜日に彼の親と一緒にご飯を食べに来ることが多かった。
もしくは私がお邪魔していた。
私は土曜日が、とても楽しみだった。
ご飯を食べ終わると、彼と遊ぶ時間があったから。
私と彼は、付き合ってなんていなかった。
それでも、付き合っていると思っていた。
彼女なんてできない。私は思いあがっていた。
彼は私を避けるようになった。
理由がわからなかった。
必死に彼を追いかけた。
彼はいじめられていた。
きっと私の友人だと思っていた人たちに。
彼は特に気にしないような顔をしていたし、私にも「関係ないよ」と笑っていた。
教科書には大きく「別れろ。近づくな」そう書かれていた。
声をかけることができなくなった。
何を話せばいいのか分からなくなった。
今までは彼を前にすると、雨のように言葉が降ってきていたのに。
告白されることにあこがれていた。
昔見たアニメのように、雨の中傘もささずに、びしょぬれになりながら告白されたかった。
夢はもう叶わない。
俺はいじめられていた。
あいつは、俺に必死になってしゃべりかけてきた。
はたから見ても彼女は俺に好意を寄せていたってことぐらいわかるだろう。
俺はあいつが、嫌いだった。
あいつといると俺はいつもみじめな気持になった。
あいつに勝てたことなんて一度もなかった。
50M走なんかは俺のほうが早かったけれど、タイムだけだ。
あいつは女子の誰よりも早かった。
母親たちは、俺たちのことをどう思っていたのだろう。
両思い?片想い?それともただ親しいだけ?
俺はあいつが、嫌いだった。
俺たちの小学校にはクラスは1つしかなかった。
メンバーが変わることはなかった。
ひとクラスしかないと人に話すたびに「少子化って怖いね」といわれる。
だから俺たちは、6年間ずっと一緒だった。
中学になってクラスが5つになった。
あいつは「別々になっちゃったね・・・」とかなしそうに言っていたのを覚えている。
俺は、嬉しかった。
彼女はエスパーだった。
俺が求めているものを常に彼女は差し出した。
映画だったり、お菓子だったり、体だったり、ぬくもりだったり。
俺は彼女に何かお返しがしたかった。
彼女はアサリが好きだった。
俺はそれくらいしか、彼女のことを知らない。
「何がほしいかって?急に言われても困っちゃうな。少し考えさせてよ」
そう彼女は言って、映画に目を戻した。
小屋が爆発する。「おおお~」彼女は興奮していた。
「デートがしたい」
彼女はそう言った。言われてみれば俺たちはまだデートというものをしたことがなかったようだ。
いつも俺の部屋で映画を見てばかり。
彼女は、遊園地に行きたがった。
きっと、TAXIなんて見ていたからだろう。
彼女は映画に影響されることがある。
今回はスピードかな?
俺は高所恐怖症だった。
でも、楽しそうだと心の底から思った。
俺は、夢の国に来るのは2度目だというと彼女は驚いた。
「スペシャリストにまかせなさい」そういい彼女は俺の手を、ゆっくりつかんだ。
普段の彼女とは思えないような早歩きで、すいすいと先へ進む彼女についていくのに俺は夢中だった。
普段の彼女とは思えないような饒舌さで、どんどんアトラクションの解説をしていく彼女を俺は、愛していた。
俺たちは仲は良かった。でも、人前でいちゃついていたことはなかった。
きっとしていないはずだ。
自信はない。
でも、友人から「付き合っているのか?」と問われたことはなかった。
どうでもよかっただけかもしれないが。
彼女と俺は、昼食を一緒に食べるようになった。
彼女は金曜日だけお弁当を作ってきてくれるようになった。
「一週間頑張ったご褒美」と彼女は照れ臭そうに言った。
彼女に俺の好きなものを喋った記憶はないのに、お弁当にはいつもトマトが入っていた。
彼女は「ばればれだよ。いっつも幸せそうに食べているんだもん」と幸せそうに言った。
俺には彼女のことなんて、いくら見つめていてもわからないのに。
彼女は俺のことを何でも知っている。
そんな気がした。
「君のことをもっと知りたい。食べ物は何が好きとか、好きな遊びとか、好きな本なんでもいい。君のことは何でも知りたい。」
俺はちょっと気持ち悪いな、そう思いながらも彼女に問うた。
彼女は顔を真っ赤にして、喜んでいるようだった。
そうだ、彼女は少女漫画が好きだった。
「あ、アサリが好きです。」と彼女は小さな声で、嬉しそうに言った。
「知ってる」俺は答えた。
放課後になって、いつもは俺の家に来る彼女が、「今日はうちに来ない?」
と少し照れたように言った。
「うん」俺はすぐに答えた。
本当は「どうして?」と尋ねようとしていたのに。
俺は緊張していた。
彼女の家に着くと、すごい甘い香りがした。
床には、クッションが置かれていた。
よく見ると彼女が俺の家に置いていったものと同じデザインだ。
色は黄色。うちのは緑。
彼女は「好きな所に座って。」
というので、彼女の隣に座った。
しかし彼女は、「そこはだめです。」そういった。
「今から、スマブラ大会をやりまーす。」。
「え?スマブラ?」
「だって君の家にはないから。」
確かに俺の家にはなかった。
「期待したでしょー。残 念。今日は私の好きな遊びを紹介しまーす。」
彼女は嬉しそうな顔でそう言った。
「君は初心者だろうから、手加減してあげよう。」
彼女は自慢げに言った。
俺はトゥーンリンク、彼女はガノンドロフを使った。
「宿命の対決だね。熱いね。」彼女はそう言った。
「ちょっと、弓禁止!ブーメランも!!男だろ!!!」
正直に言うと彼女は弱かった。
俺のプレイに文句ばかり言っていたけれど、彼女は、とても満足げだった。
「爆弾投げるな!!」
彼女は怒鳴った。
彼女といろいろ話をした。好きな武将は島津義弘だと知った。
彼女は男らしい。
好きな漫画は宇宙兄弟らしい。
ロマンがある。
俺の彼女はそんな人なんだ。
彼に、どうやら彼女ができたようだ。
いつかそんな日が来るとは思っていた。
彼女は、彼の後ろの席の子。
出会ってから半年ほどで、彼を射抜いた女の子。
年に似合わぬクールな表情、振る舞い。少し浮いている子だった。
私たちの前では。
彼の前では、年相応の愛らしい笑顔で、彼をずっと見つめている。
聞いた話では、授業中彼のことをずっと見つめているらしい。
うらやましかった。
彼と私はいつも対角だった。
私はあ行だった。
彼に彼女ができたことはわかっていた。
それでも、今まで通り彼のそばにいられると思っていた。
彼が私のせいでいじめを受けたことも知った。
それにもかかわらず、未練がましく一緒にいようとしていた。
彼も特に拒むような表情はしなかった。
私は嬉しかった。
私は彼のことを何も知らなかった。
彼がどんなことを考えているのか想像もできなかった。
彼も楽しんでくれているんだとずっと。
気付けていなかった。
私はいつも、自分のことばかり。
彼は、私と一緒にいたくなんてなかったというのに、私は気付けなかった。
いつものように彼の家でお相伴に預かっていた。彼は食卓に降りてこなかった。
おばさんに「彼は?」と聞くと
おばさんはとてもうれしそうに「今、彼女が来ているの」
そう言った。
その日は珍しくおじさんがいた。
いつも土曜日は夜遅くまで仕事をしている人だったので、久しぶりにお会いした。
先ほど、おじさんは彼らを呼びに行ったそうなのだが、
「もう食べてきた。」といわれ断られてしまったと、少し目をそらしながら言った。
私は、無神経だった。
彼女がいたとしても、彼ならば私のことを快く受け入れてくれると考えていた。
だから私は彼の部屋へ行ってしまったんだ。
私は必死に涙をこらえ、お腹が痛くなってしまったと嘘をつき、家へと走った。
胸が痛かった。頭が割れそうに痛んだ。口からは血が垂れていた。
涙をこらえるときにかみしめたせいだろう。
玄関の姿見に映った私は、醜かった。
それから彼女は事あるごとに、俺に今はまっているもの、興味のあるもの、目にとまったものを
とても楽しそうに話してくれるようになった。
彼女は俺ととても感性が似ていた。
彼女が楽しんでいたものは俺も楽しかった。
俺が楽しかったものは、彼女も楽しそうだった。
彼女は頭がよくて、教えるのが上手だった。
俺は、勉強が楽しくなった。
綺麗なノートを俺の字で埋めていくことが。
綺麗な教科書を彼女と一緒にめくることが。
あいつのことなんて、忘れていた。
彼女が法事で休んだ日。
久しぶりに一人で帰っていると、あいつを見掛けた。
久しぶりだったし、彼女のおかげか、あいつに対して、恨みなんてなくなっていた。
「久しぶり」俺は、何も考えずにそう声をかけた。
振り返ったあいつは、
俺の知っていた幼馴染ではなかった。
綺麗に整えていた髪は、ぼさぼさになってしまっていたし、目の周りは黒かった。
眠れていないのだろうか。
俺はのんきにそんなことを考えていた。
幼馴染は俺を見ると走って逃げた。
俺は、しばらく考えてからあいつを追いかけた。
ただ、話がしたくて。
すぐに追いつくことができた。
昔の俺なら、追いつくことは難しかったはずなのに。
幼馴染は久しぶりに走ったようだった。
「どうして逃げるんだよ。それにどうした?ぼろぼろじゃないか」
俺は特に何も考えずにそう尋ねた。
幼馴染はただ、目を合わせないように下を向いていた。
顔を見せたくなかったのかもしれない。
俺は、幼馴染に祝福してほしかった。
お前がいるせいでなんて恨んでいた時期もあったけれど、今はとても幸せなんだって。
自慢したかったんだろう。
幼馴染の気持ちを知らなかったわけではないのに。
「俺、彼女ができてさ」そんな風に話を始めたのを覚えている。
幼馴染のおかしな風貌のことなどもうどうでもよくなっていた。
幼馴染はずっと黙って聞いていた。
聞いていなかったかもしれない。
でも聞いているように見えた。
幼馴染は、震えていた。
今考えても、恐怖のせいかか悲しみのせいかか怒りのせいなのかは分からない。
震える彼女を心配した俺は、話をやめた。
初めてキスした時の話をしていた。
最低だと思う。
「どうした?」そう声をかけると彼女はパッと顔を上げ
ほんの少し目を合わせた後、俺にキスをして逃げて行った。
彼女の唇はかさついていたけれど、俺の唇に少し湿り気を残していった。
鉄の味だった。
彼と彼女の営みを聞いてから私はおかしくなってしまったのだろう。
自分の声が嫌いになった。
自分の髪が嫌いになった。
自分の体が嫌いになった。
自分の顔が嫌いになった。
毎日しっかり行っていた髪のケアも肌のケアも、やらなくなった。
触れることが嫌だった。
友人に話しかけられても、声を出せなくなった。
声を聞きたくなかった。
鏡を見ることができなくなった。
嫉妬で狂った顔を見るのが嫌だった。
次第に友人は私から離れて行ったが、もうどうでもよかった。
学校に行くのはせめて親には心配をかけたくなかったから。
もしかしたら彼に声をかけてもらえるからかもしれない。
そんな風に考えていたのかもしれない。
学校からの帰り道、待ち望んでいた声を聞けた。
嬉しくって振り返った時に、私は自分の容姿を思い出した。
彼は驚いた顔をしていた。
こんな私は見せたくなかった。
彼のために必死に磨いてきた綺麗な私だけを見せていたかった。
だから走って逃げてしまったんだろう。
彼は追いかけてきてくれた。
すぐに追いつかれてしまった。
そういえば、どれくらい走っていなかったんだろう。
彼は私を気遣ってくれた。
嬉しかった。こんな私でも彼は昔のように接してくれた。
でも、彼は『彼女』との思い出話を始めてしまった。
この話がしたくてしょうがなかったんだろう。
聞いたこともないような上機嫌な声音で、以前の私のようなスピードで彼は私に語りかけた。
私はぼんやりと聞いていた。『彼女』は私だ。そう言い聞かせて。
幸い、彼との時間は長かった。彼の話す話は私でも一緒にやったことがあるようなことばかりだったから、簡単に置換できた。
でも私はキスなんてしたことなかったんだよ。
気付くと彼と唇を重ねていた。
私の唇はかさかさだった。リップクリームなんて随分塗っていない。
それに、口の中いっぱいに血の味がした。いつのまに噛んでいたんだろう。
やっぱり私は逃げてしまった。
こんな自分を彼には見せたくなかった。
醜かった。
今度は追いつかれることはなかった。
俺は茫然としていた。
好意には気付いていたけれど、幼馴染があんなに変わってしまうなんて信じられなかった。
幼馴染の気持ちには気付いていたけれど、俺は暴力と、劣等感から逃げるために知らないふりをしていた。
幼馴染は俺との時間を大切にしてくれていたのに。
好意を素直にぶつけてくれていたのに。
見ないふりをしていた。
「このままじゃいけない。変わらなきゃいけないんだ」
声に出して言ったのか心の中だけでいったのか、定かじゃないけれど、そうおもった。
久しぶりに彼女の家に来た。
呼鈴を鳴らすと、随分やつれた様子のおばさんが、俺を出迎えてくれた。
本当に久しぶりにあった気がした。
俺はいろいろなものを見ないふりし続けていたんだ。
「いらっしゃい」元気のない声でおばさんは言った。
「幼馴染は帰っていますか?」
「あのこに会いに来てくれたの?」
そう言っておばさんは俺を家に入れてくれた。
「久しぶりにこの階段上るな」そう思った。
きっとそんなに久しぶりじゃない。
こんな気持ちで上るのが久しぶりなだけで。
「入るよ」
一声かけてノックもせずに入った。
きっと入れてくれないと思ったから。
「いやあああああああああ」
幼馴染は狂ったように顔を枕に押しつけながら、くぐもった声で叫んだ。
おばさんにはきっと聞こえていない。俺はそう信じることにした。
「俺、お前の気持ちずっと気付いていたんだ。
でも気付いていないふりしてた。ごめん」
言いたいことはこんなことじゃないのに、最初に謝罪した。
謝ろうとは思っていたし、別にいいんだけど。
「お前は昔から綺麗だったし、明るくて、人気者で、一緒にいると辛かったんだ。
いじめられていたのは事実だけど、別に耐えられないようなものでもなかった。
ただ逃げる口実にしたかっただけなんだ。」
幼馴染は俺に枕を投げた。
「ずっと、お前なんていなくなればいいと思ってた。
全部俺のために。」
「聞きたくない!聞きたくない!」
幼馴染はそう叫び始めた。
きっとおばさんは俺に任せてくれているんだろう。
俺はおばさんにもずっと冷たく当たっていただろうに。
「聞いてくれよ。もう逃げているだけなのは嫌なんだ。
俺は、彼女のことが好きだから。
もう逃げてるわけにはいかないんだ。」
言い聞かせるように俺は言った。
幼馴染は叫ぶのをやめると、ちらと俺を見た後立ちあがった。
ゆっくりと近づいてきた幼馴染は、俺を思いきり突き飛ばし、俺が上を向くと、着ていたワンピースを脱いでいた。
「どうして、彼女なの?」そういいつつ彼女は俺の上に寝そべり首筋をなめ始めた。
「彼女といると安心できるんだ。ずっと一緒に同じペースで歩める。
そんな人、きっと彼女以外にいないから。」
「私だって、ずっと一緒にいるよ?ずっと隣にいるよ?」
ズボンを脱がそうとしながら彼女は言った。
俺は抵抗しなかった。
その先はないと何となく、わかっていたから。
「お前は、自分のペースで進んでいるからきれいなんだよ。人を自分のペースに巻き込んで進めるそんな人なんだ。
ただ、俺には、速すぎるんだよ。」
幼馴染の手はとまった。
幼馴染は、わかったようなわかっていないような顔でゆっくりと俺にキスをした。
とても甘かった。
ちょうど一週間学校を休んだ幼馴染は、昔の幼馴染だった。
朗らかな笑顔を浮かべ、人の真ん中にいて、輝いていた。
俺は嬉しかった。
彼女には、俺と幼馴染のことをすべて話した。
2度キスされたことを話したら彼女は、2度思いっきりはたいた後に、
優しく3回キスをした。
幼馴染は、金曜日に俺たちが昼飯を食べているところに現われて、
「彼のことあきらめたわけじゃないから。
いつか私のペースに彼を巻き込んでみせる。
一度振られたくらいで、消えるような想いじゃないから。
叶わない夢なんてないって、証明して見せるから。」
とても大人びて、それでいて子供のような笑顔で、そう告げた。
53 : 以下、名無しが深夜にお送りします - 2014/03/07 22:52:31 4eEgyOec 37/37終わりです。
支援などありがとうございました。わかりにくいところもあったようですみません。
また明日にでも新しいスレを立てると思うので、見かけた際にはよろしくお願いします。