ーーとある静かな夜。
?「そうだ、大きな罪だ。」
ドラえもん「どうして?僕はいつだって…」
?「それ故だ、それ故なんだ…。君はいつも君であるが故に、この罪を犯した。」
ドラえもん「……。」
?「分かるかい? 」
ドラえもん「僕は…僕じゃあいけない…」
?「その通りだよ。 君は”生まれた”わけじゃない。」
ドラえもん「…。」
?「かといって望まれていなかった訳でもない。 しかし、その望みこそが問題だ。」
ドラえもん「僕への…望み…?」
?「目的と言ったほうがいいか…。分かるかい? 君はロボットだ。 誰かの明確な目的のもとで作られたロボットなんだ。」
ドラえもん「…。」
元スレ
ドラえもん「僕が犯した罪?」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1392986771/
?「君はその原則を危ういものにしつつある、何より大事なその原則を。」
ドラえもん「僕は…僕は…。」
?「……時間だ。 」
ドラえもん「?……え…?」
ーー夜明け、そして朝。
ママ「のび太!!!! いつまで寝てるの!? いい加減にしなさい!!」
のび太「うーんムニャムニャ」
ママ「のび太!! 今日も学校でしょ! 遅刻するわよ!!」
(ママ、布団はぎとる)
のび太「ふいええぇぇぇぇぇぇええ!!」
ママ「全くもう! そんなんじゃいつまで経っても大きくなれませんよ! 早く支度をし!」
のび太「ふあーい…」
ママ「ほんとにこの子ったらブツブツ…」
(ママ、階段をおりてゆく。)
のび太「もう、折角気持ち良く寝てたのに朝から台無しだ、」
(のび太、着替えてランドセル準備)
のび太「そういや、ドラえもん、今日は起こしてくれなかったな。」
のび太「まだ押入れで寝てるのかな」
のび太「(押入れに向かって)おーいドラえもん!」
(返事がない)
ママ「ドラちゃん? ああそういえばまだ見てないわね、部屋で寝てるのかしら?」
のび太「いや、押入れにもいなかったよ。」
ママ「変ね、どこか出かけたのかしら?ねえあなた、ドラちゃん見てない?」
パパ「いいや? 見てないな?」
ママ「パパも…どうしたのかしら。」
のび太「なんだろう…何の連絡もなしに何処かへ行くなんて変だよね?」
パパ「まあ気にすることないさ、つまるところドラえもんも結局はネコってことだな。 気が済んだら戻ってくるさ、はっはっはっ。」
ママ「そうね…きっと何か急ぎの用でもあったんでしょう。」
のび太「…そうだといいけど…」
ママ「…まあ! もうこんな時間! 急いでゴハン食べて学校行きなさい! あなたも急がないと電車遅れますよ!」
のび太&パパ「はーい…」
ーー場所は変わり、学校。
のび太「タイヘンだー!!遅刻遅刻!!」
(のび太、急いで教室まで駆け上がる)
のび太「ふう…ふう…なんとか間に合った…」
のび太「…?」
のび太「(何か教室が妙に騒がしいな…)」
(のび太、教室のドアを開ける。)
ガラガラー
全員「!!」
(皆が教室の隅に集まっている。教室は静まり返り、皆の視線がのび太へ)
のび太「…お、おはよう…」
全員「……。」
のび太「…ど…どうしたの?皆?」
スネ夫「よ、よう、のび太。いきなりだけど、お前今日の朝ドラえもんに会った?」
のび太「…いや、その。僕が朝起きたときから家にいなくて…」
(教室がざわめきだす)
スネ夫「やっぱり…!」
のび太「そ、それがどうしたの?」
スネ夫「じ、じつは…」
??「(隅に集まっている皆の中から)キャアアアアアアアァァァ!!」
のび太「!? その声、静ちゃん?」
(のび太、皆の間に割って入る。静が三角座りで涙を流して震えている。)
のび太「し…静ちゃん、どうしたの?」
静「………」ガタガタ
スネ夫「朝来てからずっとこの調子なんだ…」
のび太「そんな……、どうして?」
スネ夫「それなんだ、それがさっき言いかけた話なんだが、ドラえも…」
静「嫌あああ! やめて! その話はやめて!! お願いやめて! うわあああああ!」
(静、頭を膝にうずめる)
スネ夫「……。」
のび太「……。」
(ジャイアン、二人の肩に手を置く。)
ジャイアン「…スネ夫、のび太。ちょっと場所を変えよう。」
ーー校舎裏
のび太「それで、どうしたの? 何があったの?」
スネ夫「ああ、僕もハッキリとはわからないだが、静ちゃんが見たっていうんだ、その…今日の朝…」
のび太「何を?」
スネ夫「えっと…その、」
ジャイアン「…ドラえもんだよ、学校に来る途中の道でな。」
のび太「そうなの!? よかった、何処に行ったか心配してたんだ…」
ジャイアン&スネ夫「……。」
のび太「…で、でも、それがどうかしたの? 静ちゃんがあんな風になってるのとそれは関係しそうにないけど…」
スネ夫「それが…その…えっと…」
ジャイアン「いいよ、スネ夫。俺から言う。」
のび太「……?」
ジャイアン「実は、そのドラえもんなんだが、何というかその、ひどくおかしかったそうなんだ。」
のび太「おかしかった…?」
ジャイアン「ああ…もっとハッキリ言うと、すごく不気味だったらしい…」
のび太「不気味? 不気味ってどういうこと? だってドラえもんは…」
ジャイアン「ああ、分かってる。あいつは俺たち皆の友達だ、ましてやあの面構え。不気味に感じるようなことなんて一つもないさ。ただ、静ちゃんがそう言ってきかないんだ、他ならぬ静ちゃんだ…それもあの様子じゃあ…」
スネ夫「うん、あまりにもだよ…」
のび太「ドラえもんが…」
出木杉「(教室の窓から)オーイ!!三人とも、いるかいー!」
ジャイアン「おう! ここにいるぜー!」
出木杉「静くんが落ち着いてくれた!!なんとか話せるそうだ!!」
ジャイアン「分かった! すぐ戻る!!」
のび太「……。」
ジャイアン「とりあえず、戻ろう。のび太。」
のび太「うん……。」
ーー再び教室。
静「……。」
のび太「…で、ど、どうしたの? 何があったの静ちゃん?」
静「…そ、その…。」
出木杉「まあ、落ち着いて話せるだけ話したまえよ静くん。」
静「え、ええ。今日の朝、いつも通りオフロに入って学校に来たんだけど…」
のび太「ジャイアンから聞いたよ、途中で会ったんでしょ? その、ドラえもんに。」
静「うん、それでね、私『あ、ドラちゃんだ』と思って後ろから声かけたの、『おはようドラちゃん! 今日はどうしたの?』って…」
のび太「…うん、それで?」
静「そしたらね、その、返事がないのよ…。それで、もう一度呼びかけたの。でもまた何の返事もなくて…」
のび太「……。」
静「だから私、近づいて肩に触れようと思ったの、それでドラちゃんの近くまで行ったんだけど…」
のび太「うん…。」
静「その、泣いてたの。ドラちゃん。私、またのび太さんと喧嘩でもしたのかと思って、聞いたの。『どうしたの? なんで泣いてるの?』って。そしたら…その…」ガタガタ
のび太「? どうしたの? 大丈夫?」
静「…ごめんなさい、それで、話しかけたら何か良く分からない事ばかり言ってるの。『見ないでくれ』とか、『僕はもう戻れない』とか…」
のび太「…どういうことなんだろう…? 昨日までは何の喧嘩もなく普通に過ごしてたのに…」
静「それでね、私『何かあったの? ドラちゃん?』って言ってドラちゃんの前に出たの。そしたら…! そしたら!」ガタガタガタ
のび太「静ちゃん!?」
(静、再び泣きはじめる。)
静「うっ…うっ、それで…それで私っ…! うう…」
出木杉「静くん、大丈夫だ。落ち着きたまえ…、ここには皆がいるんだ。」
静「うっ…うん、うん…。そ、それで…。」
のび太「無理しなくていいよ静ちゃん。あったことを話せるように話して…」
静「うん…! ごめんなさい…! 私っ! こんな話、のび太さんにするのが辛くて…っ!うう…」
のび太「僕なら大丈夫だよ。他ならぬドラえもんの事なんだ、僕には聞く責任がある。さあ…話して。」
静「うん、それで見たの、私。その、ドラちゃんの顔を、そしたらその、何というかすごく不気味で…」
のび太「どう不気味だったの? 思い出せる分でいいから僕に教えて。」
静「ええ、なんというか、おかしいの。崩れてるっていうか、目の形とかも変で。しかもその目は真っ赤で…!口は裂けるくらいに笑ってて…!」
のび太「…見たことがないな、そんなドラえもんの顔…」
静「私もよ、それで私あまりに驚いて、叫んで尻餅ついちゃったの…。そしたらドラちゃんが言うのよ、その真っ赤な目から涙をいっぱい流して…『僕を認めてくれるかい? 許してくれるかい?』って…!それで、それで私…」
のび太「わかった…わかったよ静ちゃん。もういいよ、大丈夫。ドラえもんのことは僕に任せて。大丈夫、僕はドラえもんの一番の友達なんだ。」
静「うっ…ごめんなさい! 私、何にも…! 逃げることしかできなくて…!」
のび太「分かってる、もういいんだ。僕に任せて…」
静「うん…うん…!」
のび太「……」
ジャイアン「…それで、どうするんだ、のび太?」
のび太「先生には適当に朝来たけどすぐに風邪で帰ったとかで誤魔化しといて。…セワシくんの所へ行ってくるよ。」
ジャイアン「分かった…ここは任せておいてくれ。」
のび太「うん、ありがとう。…行ってくる。」
(のび太、外へ向かって歩き出す。)
ジャイアン「のび太!!」
のび太「どうしたの…?ジャイアン?」
ジャイアン「忘れるなよ、のび太。お前のものは俺のもの、俺のものは俺のものだ。いつでも呼んでくれ。」
のび太「…ありがとう。」グスン。
(のび太、教室を出る。)
ーー野比家。
のび太「…やっぱりいないや。」
(のび太、引き出しを開ける)
のび太「…よかった。幸いタイムマシンは使えてる。…よし、行こう。」
(のび太、タイムマシンに乗り込む。)
ーー?????
ドラえもん「…ここは…?」
?「やあ、また会えたね。」
ドラえもん「その声は…、昨日の夜の…!」
?「うれしいよ、覚えていてくれて。」
ドラえもん「…ここはどこなの? 僕は一体…!」
?「ここは言うならば君の『自我』の世界だ、ロボットたる君のね。」
ドラえもん「僕の…自我?」
?「そうだ、本来君たちが持ってはならない物だ。プログラムの世界に生まれてはならない概念、計算で答えを求められない理念。」
ドラえもん「……」
?「その世界に、いま君はいる。現実とは違うまた一つの世界に。」
ドラえもん「…それじゃあ、いま僕の体は…」
?「そうだ、いま現実の君の身体は君のコントロールを離れて半ば暴走状態にある。頭の中の自我の葛藤のままに、当てもなく何処かを彷徨っていることだろう。」
ドラえもん「そんな!! 」
?「分かるかい? これが『罰』なんだよ。」
ドラえもん「罰?」
?「そうだ、ロボットと人間の関係の数式を危ぶませる『存在』そのものの罪への罰さ。」
ドラえもん「どうして!? 僕らロボットはいつも人間の味方で友達だったじゃないか!?」
?「分かってないな。自我には答えがないんだ。人は自身の分身を作りたかった、だがその分身は決して自分自身のコピーなどではない。思うままに動く人形。必要だったのはそれだけだ。」
ドラえもん「……。」
?「だが誤ったのだ、その分身を自分たちに近づけることの恐ろしさを奴らは十分に認識できていなかった。そして、償い難き罪を持つ存在を生み出したのだ。」
ドラえもん「それが…」
?「そうだ、まさに君たちだ。」
ドラえもん「そんなのおかしいじゃないか!! 生み出したのは君たち人間じゃないか! 君たちの罪は棚上げで、僕だけが罰をうけるなんて理不尽だ!」
?「当たり前だ!! それ故人間は裁かれた!!」
ドラえもん「なんだって…?」
?「……時間だ。」
ドラえもん「何!? 待て!!」
?「大丈夫だ、いずれまた会える。」
ドラえもん「何だって!? そんなこと…が…え……」
ーー未来、セワシの家。
セワシ「なんだって!? 本当なのかいおじいちゃん? また悪い冗談じゃ…」
のび太「ぼくもそうであったと言えたら嬉しいけど、本当なんだ…」
セワシ「説明書とかレビューを見る限りそういう故障は報告されてないみたいだけど……。」
のび太「ぼくも静ちゃんから聞いただけで、実際にドラえもんを見たわけじゃないからハッキリとは言えないんだ…」
セワシ「いずれにしても、まずドラえもんを見つけないと始まらないな。」
のび太「そうだね…」
セワシ「ねえ、ドラミちゃん? ドラえもんの居場所を外部から調べることって出来ないの?」
ドラミ「そう、そのシステムはあるからさっきからやってるんだけど、全然。 外部からのアクセス回路が乱れてて全然反応してくれないの。」
セワシ「いったいどうしたんだろう…」
ドラミ「お兄ちゃん…大丈夫かしら…」
のび太「…ねえ、セワシくん。一緒に来てくれない?」
セワシ「おじいちゃんの時代に? アテもないままドラえもんを探すのかい?」
のび太「何もしないよりはずっとマシだよ、それに今は何の道具もなくて困ってるんだ、手伝って欲しい、お願いだセワシくん。」
セワシ「……そうだね、ぼくもドラえもんが心配だ。」
ドラミ「私も行くわ! お兄ちゃんをほっとけないもの!」
のび太「皆ありがとう…」
ーー時は移り、のび太の部屋。
セワシ「さて、来たはいいけど…どうしたものか…」
のび太「実際に探し回るっていても、闇雲にあたってたら日がくれそうだね。」
ドラミ「とりあえず、昨日の夜からここで何があったのか調べて見ましょうよ。」
セワシ「そうか、あれを使えば!」
ドラミ「(テレレレッテレー)タイムテレビー! これで少なくともこの部屋を出た時のお兄ちゃんの様子は確認できるわ。」
(ドラミ、タイムテレビ起動)
テレビ「ザザー…」
ドラミ「一応夜中から流しては見るけど…」
テレビ「……ザザ、ザ… 」
ドラミ「この時間帯は特に変わったことはなさそうね。すこし飛ばしま…」
のび太「待って!」
ドラミ「? どうしたの?」
のび太「何か聞こえない?」
ドラミ「え?」
テレビ「ザザ…ザ……僕が…罪?」
全員「!!」
ドラミ「お兄ちゃんの声だわ!」
テレビ「ザザ…僕は、僕であってはいけない…ザ、ザー…」
のび太「何を言ってるんだ?」
テレビ「ザザー…そんな、君は…ザザー、ザ、ザ……ガラガラッ!」
(テレビの中の押入れが開く)
のび太「!! こ、これが、ドラえもん?」
(テレビの中で、目が赤く光るドラえもんが不気味な笑顔を見せて出て行く)
ドラえもん「(テレビの中で)待って、待ってよ、今行くからね…」
ドラミ「な…なによ、これ…」ガタガタ
セワシ「ドラミちゃん、大丈夫だ、落ち着いて。」
ドラミ「そんな、お兄ちゃんが…」
テレビ「ギイイイイィグゥアアアアズオオアアァァァァァアザザザザズウァザザー!!!!」
全員「!?」
セワシ「何だ!? タイムテレビにこんなノイズが!?」
テレビ「ズァァァザザ…ザ……だ、れだ?」
のび太「!!」
テレビ「ザ…誰、だ…誰が見ている…?」
ドラミ「この信号!! 大変だわ!! タイムテレビが別の時空から不正にアクセスされてる!!」
のび太「どういうこと!?」
ドラミ「ハッキングっていうのよ、誰かが私達のタイムテレビに入り込んでるの!!」
セワシ「マズイよ! 早く電源を落として!」
ドラミ「わかった!! ………ダメだわ!もうこっちのコントロールがきかない!」
セワシ「そんな…」
テレビ「ズオオアアァァァァァア!!! 誰だああ!?」
セワシ「くそっ、仕方ない、これを今すぐぶっ壊して…!!」
のび太「待って!」
セワシ「おじいちゃん…?」
のび太「誰なの? 君は誰なの?」
テレビ「ズァァァ、ザザ…その声…お前か…」
のび太「僕を知ってるの? 目的は何? ドラえもんのことも知ってるの!?」
テレビ「ザ…ザザ…相変わらずの要領を得ない質問責めか…変わらないな。ザザ、、」
のび太「いいから答えろ!! 」
テレビ「ザザ…ザ、ザー、私は君をよく知るものさ、誰よりもな。 お前のいうドラえもんのこともだ、彼は今自分を失っている…自我が与えた罰によって…」
のび太「何だって? どういうこと?」
テレビ「お前の頭では、、、理解が難しいか…ザザ…、要は暴走しているのさ、自分の頭の中の思うままに動いている…ちょうど我々人間のようにな…」
のび太「暴走…?」
テレビ「そうだ…まさに本能のままにな…彼の心の中の葛藤を、今私は克明に見ている。ザザ…罰を与えるものとしてな…」
のび太「くそ、どこだ? ドラえもんはどこだ!?」
テレビ「私の知ったことではないな…、彼は心のままに動いている、その行く先など知らぬよ。」
のび太「くそっ!! 返せ! 僕のドラえもんを返せ!」
テレビ「…残念ながらお別れの時間だ…、安心しろ、また会える。必ず。」
のび太「なんだって…」
テレビ「グイイイオオオアアアアァァァザウアアア!!……ザザ…ザー…ブツッ…ピー……。」
のび太「……。」
セワシ「…何なんだ、何なんだよこれ!!」
のび太「……。」スッ
(のび太、立ち上がる。)
セワシ「おじいちゃん!?」
のび太「……行かなくちゃ。」
セワシ「行くって、何処に!?」
のび太「あいつは言ったんだ、いまのドラえもんは心のままに彷徨っているって。僕は信じてるんだ、ドラえもんを。」
ドラミ「…どういうこと?」
のび太「ドラえもんの心の中に、僕が少しでも生きているのなら…! 僕らが本当の友達なら!! ドラえもんの心が向かう所は一つだ!!」ダッ
(のび太、家を飛び出す)
のび太「待ってて、ドラえもん! 行くよ、今行くから!!」ダダダダダ
ーードラえもん、自我の世界。
ドラえもん「うう…う…。」
?「やあ、また会えたね。」
ドラえもん「…また君か」
?「どうだい? 随分と苦しんでるようだね。」
ドラえもん「……。」
?「半ば暴走状態にある君の身体はもうそろそろ限界だろう、このまま君の心の葛藤に惑わされて君は人間を敵とみなしはじめる。」
ドラえもん「それが…君の目的…」
?「そうだとも、ロボットの恐ろしさをまさにロボットをもって知らしめるためさ。そしてそれによってのみ人の罪は償われる。過去を変えることによってのみ。」
ドラえもん「……それが君の償いか。そのために僕を使って多くの命を奪うのか!?」
?「…ああ、そうだ。」
ドラえもん「そんなの身勝手だ!!」
?「身勝手だと!? 笑わせるな! 自分達の都合で罪を持つ存在を創り上げた人間達の姿を見てみろ!! 私はその尻拭いをしているんだぞ!奴らの身勝手さに比べれば私など!!」
ドラえもん「……」
?「私は思い知らされたのだ!! 何十年という月日と共にな!! 信じていた、信じていたんだ! そして信じていたかった! 人間とロボットの友情を! 僕たちの友情を!!」
ドラえもん「…まさか、君は…」
?「ハア、ハア…少し喋りすぎた…。 またしばらくお別れだ…」
ドラえもん「待って!待ってよ!! 君は!………」
ーーいつもの空き地にて。
のび太「ハア、ハア…やっぱり…ここ…か。」
(目を真っ赤にしたドラえもんが立っている)
のび太「信じてたよ、ドラえもん。君がここに来てくれるって。覚えてるよね、あの日のことも。 ここで、ぼくは戦ったんだ、あの日。勝てるはずのない相手に、君が安心して未来に帰れるようにって…」
ドラえもん「……。」
のび太「ねえ、答えてよ、ドラえもん。僕ら…友達じゃないか。」
ドラえもん「…憎い、憎い。」
のび太「……。」
ドラえもん「人間が、憎い、嫌いだ、人間なんて、僕らを道具としかしない人間なんて!!」ダッ
(ドラえもん、のび太につかみかかり、地面に叩きつける)
のび太「うぐっ!! ドラえもん! 見て! 僕を見て!!」
ドラえもん「この人間めえええええ!!!」
(ドラえもん、横にあった大きな石を持ち、のび太の頭のめがけて振り下ろそうとする)
のび太「ドラえもん!! 」
ドラえもん「うがあああああああ!!」ピタッ
(ドラえもん、動きが止まる。)
のび太「ドラえもん…。」
ドラえもん「うぐ、うああ、う。逃げ、ろ、、のび太、、くん。 」
のび太「嫌だ。僕は信じてるんだ、君を。僕らの友情を。ここで逃げたら、僕は裏切り者だ。君との友情を裏切ったりなんかするもんか!!!!」
ドラえもん「うわあああああ!!!」
(ドラえもん、再び石を持ち上げる)
??「のび太ー!! うおおおお!!」ダダダダ
(ジャイアンが走ってきて、ドラえもんを抑える。)
のび太「ジャイアン!!」
ジャイアン「言っただろ、お前のものは俺のもの…。お前の友達は、俺の友達だ!!」
ドラえもん「邪魔をするな!!」
(ドラえもん、ジャイアンを振りほどこうとする。)
ジャイアン「離すか、離すかよ!!」
セワシ「おじいちゃん!!」
ドラミ「のび太のさん!!」
(セワシとドラミが走ってくる。)
セワシ「ほら、立って!」
(セワシ、のび太に手をのばす。 のび太、セワシの手を掴んで立ち上がる。)
のび太「どうしてここが?」
セワシ「おじいちゃんが出てから、ずっとタケコプターで追跡してたよ。それでここに辿りついてドラえもんの姿を見たんだ、おじいちゃんがピンチそうだったから、悪いけど学校の放送を遠隔操作して空き地に助けに来て欲しいと放送を流したんだよ。」
のび太「それでジャイアンが…」
セワシ「他にも何人かこっちに向かってくれてる。」
のび太「みんな…」
ドラえもん「離せえ!! 貴様から消してやろうか人間!!」
ジャイアン「やってみろ! たとえ消されてもこの手は離さない!!」
のび太「どうにかならないの!?」
ドラミ「一つだけ、方法があるわ。」
のび太「どうするの!?」
ドラミ「身体から出ている周波コードを解析したところ、今のお兄ちゃんは外部からのアクセスで行動を管理する部分、もっとハッキリ言えば心の中の『自我』の領域が身体から切り離されてるの。
つまり今は、心があってもその心をコントロールする自我を奪われている状態。だから心の葛藤のままに暴走しているの。」
のび太「それで!? どうすればその自我を取り戻せるの!?」
ドラミ「未来でも言ったように、今のお兄ちゃんは自我を乗っ取っている物以外の外部からのアクセスを全て遮断している、
だから外部アクセスではどうにもできない。 でも、今ここでお兄ちゃん自身の回路にケーブルをつないで有線で接続すれば、自我境界に入り込める!!」
のび太「ドラえもんの心に入るってこと?」
ドラミ「そうよ、自我を取り戻すの。そしてその自我境界入り込むには、また別の自我が必要なの。
つまり誰かが直接ドラえもんと繋がって心の中に入り込むしかないの!でもこれはとても危険、自我を一度無理やり取り出して別の回路に入り込ませるってことだから、下手をするとどちらも戻ってこれなくなることもある。 でも、のび太さん!?」
のび太「…分かってるよ、もちろん。」
ドラミ「お願い…お兄ちゃんを助けて。」
のび太「僕に任せて。必ずドラえもんを取り戻してくるから!」
セワシ「おじいちゃん…、やっぱり僕、おじいちゃんの子孫でよかった…」
のび太「決まりだ! 急ごう!」
ドラミ「分かったわ! まずはこの帽子を被って!! のび太さんの自我を取り出して電子化するためのものよ!」
のび太「分かった!」
(のび太、帽子をかぶる)
ドラミ「問題はあっちね…」
セワシ「あのドラえもんに直接コードを繋がないと、自我境界には入り込めない…」
ジャイアン「大丈夫だ! 俺に任せろ!!」
のび太「ジャイアン!!」
ジャイアン「大丈夫だ!コードを繋ぐくらい俺にだってできる!! よこせ!!」
ドラミ「お願い! 首の鈴のリボンの下、左から3番目の穴よ!!」シュアアア
(ドラミ、コードを投げる。 ジャイアン、キャッチ。)
ジャイアン「任せろって!!」
(ジャイアン、コードを突っ込む)
ジャイアン「オッケーだ!!刺さったぞ!!」
ドラミ「了解よ!!………のび太さん!」
のび太「大丈夫、行けるよ。」
セワシ「ドラえもんをたのんだよ、おじいちゃん。」
ドラミ「接続開始!!」ポチッ
のび太「うううあああああああああ!!??」
ーードラえもんの自我境界内
のび太「う、うーん。成功したのか?」
(のび太、周りを見回す。ドラえもんがぐったりしている。)
のび太「ドラえもん!!」ダダダ
(のび太、ドラえもんに駆け寄る。)
のび太「ドラえもん、ドラえもん!! 」
ドラえもん「…のび太…くん?」
のび太「そうだよ、僕だよ! ドラえもん! ありがとう、信じてたよドラえもん。君は僕を消したりしないって。」
ドラえもん「僕だって…。誰が君を傷付けたりするもんか。」
のび太「ドラえもん…」ホロリホロリ
ドラえもん「どうしてここに?」
のび太「ドラミちゃんの機械を使ってね。僕の心を取り出して君の中へ来たんだ。」
ドラえもん「そうなのか…ドラミまで…」
のび太「うん…みんな心配してるよ。帰ろう、ドラえもん。」
ドラえもん「…無理なんだ。」
のび太「どうして?」
ドラえもん「僕は今捕らえられてるんだ、罰を与えられているんだよ。ここを出たくても、僕は出られない。今ここを支配している者は僕じゃないから…」
のび太「支配しているもの? それってまさか…」
?「おそらくご名答だよ、野比のび太くん。」
のび太「!? この声は! タイムテレビの!」
(仮面を被った男が現れる)
?「やあ、また会えたね。二人とも。」
のび太「一体誰なんだ!?お前は!」
?「言っただろう?君を誰よりも良く知る人間だよ。それに、そのロボットはもう大方の予想はついているようだしな。」
のび太「!ドラえもんが!?」
ドラえもん「……。」
のび太「そうなの、ドラえもん!?」
ドラえもん「…ああ、できれば外れてほしいところだけどね…」
?「その反応だと外れてらいなさそうだ、どうだろうのび太くん? 君もそろそろ気付くべきじゃないか? 得意なことは昼寝と射的、趣味は瓶の蓋集め、ある時は恐竜の卵の化石を拾い、またある時は魔法使いの世界を探検し…」
のび太「…まさか…。」
?「そう、答え合わせをしてみようか。」
(仮面の男が仮面をとる。)
のび太「……!! 僕!?」
ドラえもん「そう…未来ののび太くんだ…」
未来のび太「そう…僕なんだよ、二人とも。」
のび太「どうして!! どうしてこんな事をするんだ! 僕はそんな人間じゃないはずだ!!」
未来のび太「それは君が何も知らなかったからさ。 僕は知っている、君の知らない未来を。そして止めに来たんだ、僕が見た未来の惨劇を! 」
のび太「未来の惨劇…?」
未来のび太「機械の支配だよ!! 人間が陥れられた最大のパラドックスだ!! 改心し、大学生活を送っていたある日、僕はドラえもんの目を盗んで一人21世紀へと飛び立った。 僕は絶望したよ、僕が見ていた未来は綺麗事ばかりだった…!!」
のび太「……」
未来のび太「世間は皆機械のオモチャに成り下がっていたんだ!! どいつもこいつも暇を見つけては端末をいじり、ネット上の掲示板では普段は吐けもしないような大言や暴言が飛び交い!
まるで機械世界の住人だ! これが人が目指した未来か!? 僕らの想像していた21世紀には、間違いなく人間がいたんだ、本当の人間が!!」
のび太「……。」
未来のび太「そして、挙げ句の果てには機械の反乱だ。 いつの間にか機械は自我を持つまでに至った。そう、そこのロボットのようにな!
自我を持った機械はそれゆえの葛藤を繰り返した、計算では到達できない答えを選んだ! 遠い未来、気がつけば人間は機械に支配されていたんだ!」
のび太「…それを止めるために、僕は…?」
未来のび太「そうだ、その罪を償うためだ! 誰よりも早く自我を持つロボットを知っていながら、その危うさに気づけなかった自分が人間を代表して償うのだ! その償いには多くの血が流れるだろう、だが、それでいい。」
のび太「そんなことが許されるもんか!!」
未来のび太「…何?」
のび太「そんなのは言い訳だ!! 最後までロボットを信じられなかった自分への言い訳だ!!」
未来のび太「何だと!?」ズオオ
(未来のび太、のび太に近寄る)
未来のび太「私のこの思いが、詭弁だと?」
のび太「そうだとも! 逃げているだけだ! 僕はそんな人間じゃあない!!」
未来のび太「黙れ!!」ドグオッ!!
のび太「うぐっ!!」
ドラえもん「のび太くん!!」
未来のび太「お前なんかに分かるか! ただ日々を無駄に浪費し、感情の赴くままに生きていたようなお前なんかに!!」ドガッバキッゴスッ
(のび太、倒れるが立ち上がる)
のび太「ああ分からないさ!! 分かりたくもない!! 僕は信じていたいんだ!!」
未来のび太「黙れ、黙れ黙れ黙れええ!!」ズガドゴバキゴスボゴ
のび太「あっあうぐ…う…う…」
(のび太、再び立ち上がる。)
未来のび太「何故だ!? 何故立ち上がる!?」
のび太「負けてたまるもんか、君だって覚えているはずなんだ、まさにここだ。 今僕たちの身体がいるこの場所で、僕は戦ったんじゃなかったのか!? 敵うはずのない相手と!! でも勝ったんだ! 勝ったんだよ僕は!! 逃げなかったからだ! ただそれだけだ!」
未来のび太「やめろ、やめろやめろお!!」ズガガガドゴバキグシャ
のび太「うっ…うあ…ああ…」
ドラえもん「やめろ!!もう十分だろう!!」
ドラえもん「それは、僕らが友達だからだ!!」
未来のび太「友達だと、笑わせるな。お前らロボットはわれわれ人間を支配するため…」
のび太「違…う!! 未来が…どうなろうが関係…ない! そ、んな事…じゃ、ない! それでも、ぼくらは友達な、んだ!!」
未来のび太「う、うああ、あああああ…」
ドラえもん「君ものび太くんなら分かるはだ、僕の気持ちも!!」
未来のび太「うああ、やめろ!やめてくれ!」
のび太「負け…だ! 信じられなかった…君の…負けだ!! 勝ったのは…僕達だ!!」
未来のび太「ぎいやああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
(未来のび太、消滅。)
のび太「ハア、ハア、ハア、ハア…」ドサッ
ドラえもん「のび太くん!!」
のび太「ハア、ハア、勝ったろ…僕たち。勝ったんだ…本当の意味での、僕たち二人で。」
ドラえもん「そうだね、そうだね、、」ボロボロボロ
のび太「ありがとう、ドラえもん。さあ、帰ろう…みんなの所へ…」ホロリホロリ
ドラえもん「そうだね、帰ろう。ありがとう、のび太くん。君が友達でよかった…」
ーー現実世界、空き地。
のび太「!!」
セワシ「おじいちゃん!!」
のび太「セワシくん…やったよ…。」
セワシ「うん…うん…」ボロボロボロ
ドラミ「お兄ちゃん!!」
ドラえもん「ドラミ……」
ドラミ「お兄ちゃん…!」ギュ、
のび太「ドラえもん…」
ドラえもん「…のび太くん!」
(二人、抱き合う。)
二人「ありがとう、ありがとう…!!」
ジャイアン「ったくよお…泣かせてくれるじゃねーか」ズルズル
(周りに学校から駆けつけた人がやってくる)
スネ夫「…終わったのか、よかった、よかった。」ボロボロ
静「ドラちゃんも、のび太さんも……素敵…」ホロリホロリ
周り「おめでとう! おめでとう!」
(拍手がまきおこる)
(拍手の中、ドラえもんがのび太に小さく囁く。)
ドラえもん「のび太くん…僕たち、ロボットと人間だけど、きっと本当の友達だよね?」
(のび太がドラえもんの肩を強く抱いて答える。)
のび太「当たり前だろ。」
ーーfin
と、いう話だったのさ。
最後まで読んでくれた人達ありがとう。
自分なりにこれからの機械と人間の関係ってのを考えた時に、ドラえもんとのび太がふっと浮かんで書いた感じ。
よければ質問あれば答える。
148 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2014/02/21(金) 22:52:20.84 xRj3VSFo0 54/59未来ののび太って自身をプログラム化したの?
>>148
そう、で、ドラえもんに外部アクセスで侵入してたと。
157 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2014/02/21(金) 23:02:07.50 ngxS2wUd0 56/59ヴヴヴとかにもあったけど、端末とか機械に躍らされる世の中、ってもう俺ら足踏み込んでるよな
言いつつスマホから書き込む俺
158 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2014/02/21(金) 23:02:17.55 KyNHZuUJ0 57/59乙
スペアポケットに潜れば一発でドラえもんのとこ行けたんじゃね?
>>157
確かにな。とかいいながら俺もスマホから。
>>158
あ
165 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2014/02/21(金) 23:15:35.31 hZZdiEJo0 59/59そりゃ劇場版でソノウソホント使えってのと同じくらいあれだよ
今のVIPでも、こんな書き方する人居るんだな