【 アフターストーリー 】
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 田舎町 】
マスター「…ここが、お前の実家?」
女剣士「そうですけど?」
マスター「…お前が親に言えば返してくれるって意味が分かったよ」
マスター「地方とはいえ、この豪邸。金持ちじゃないか…」
女剣士「ま…まぁ…」アハハ…
マスター「家に親はいるのか?」
女剣士「いると思いますよ。入りましょう」
マスター「う、うむ…」
…ガチャッ
女剣士「おかあさーん!」
女剣士「…」
女剣士「おかあさ~~ん!!!」
マスター「…いないのか?」
女剣士「いえ、今出てくると思います」
ガタッ…ガタガタガガタッ!!ドタンッ!!!
マスター「!」ビクッ
ドタドタドタ…
母親「お、女剣士!?お帰りなさい!」
女剣士「ただいま。今のすごい音は何?」
母親「そこで転んじゃって…あはは…」
マスター(に、似てる…)
女剣士「もー、お母さんったら…」
母親「いつものことでしょ…って、どなたですか?」
マスター「ど…どうも」ペコッ
女剣士「あ、お母さん。こちらはね…」
母親「…お赤飯!」
女剣士「ちがーう!!」
マスター「違います!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
母親「あ…そ、そうだったんですか。私てっきり…」
女剣士「もー…」
マスター「はは…仕方ないですよね。いきなり来たんですから」
女剣士「お父さんは?」
母親「もうすぐ起きてくる…かな?」
ガタガタ…
母親「って言ってれば。お父さんにも紹介しなくちゃ♪」
ガチャッ…
父親「ん~…よく寝た」フワァ
マスター「!?」
母親「あ、おはようございますっ。女剣士が戻ってきてますよ♪」
父親「ん、お…おぉ!女剣士!」
女剣士「お父さん、ちょっと報告したい事があって戻ってきたんだ」
父親「そうか、何か用か?…お隣の男性は?」
マスター「あ…は…初めまして!」
父親「…まさか、もう…そんな男が…。お赤飯か…」ガクッ
母親「違いますよ!」
女剣士「違うっての!!」
マスター「違いますから!!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
マスター「…っていうわけです」ハァハァ
父親「あぁ、そうでしたか。それは娘が世話になって」
マスター「いえいえ…予想以上の実力を持っていてビックリしていますよ」
父親「迷惑をかけてなければいいんですが」
マスター「そんな全然!…ところで」
父親「はい?」
マスター「…まさかとは思いました。これでも冒険者の端くれですので…」
父親「…?」
マスター「あなたは十数年前に…亡くなった…、竜き…」
父親「いやぁ!!人違いでしょう!!」
マスター「…」
父親「彼は私のあ…兄でしてね。よく似ているって言われるんですよ」
マスター「…そう、ですか」
父親「そ…その兄譲りの負けん気を引いたようでしてね…娘も」
女剣士「そうなの!?」
父親「う…うむ。そうだ」
マスター「…」
マスター(まさか…な。国家予算に匹敵する報酬を得た、武道家と騎士の話…)
マスター(騎士は死に、その仲間の武道家が全てを引き継いだと聞く)
マスター(そしてこの女剣士の才能。当時の騎士に容姿がそっくりなこの父親…。いや、深くは追求しないでおこう…)
父親「…マスターさん?」
マスター「あ…い、いえ!それより、おふた方はとても強い方だとお聞きしました」
父親「あぁ…女剣士がそんなことを?」
女剣士「お父さん、昔の事故で目が見えないんでしょ?足も義足だし…なのに私、勝てた事ないじゃん」
父親「そりゃお前がまだまだ経験不足だからだ」
女剣士「わかんないよぉ~?今やったら、私に負けるかも!」
父親「負けるわけないだろ、やってみるか?お?」
女剣士「いいよ!久々に手合わせしよっか!」
マスター「ちょっと待ってください!」
マスター「…その勝負、自分とやって頂けませんか」
父親「へっ?」
マスター「あなたと…一度、お手合わせしてみたい」ゴクッ
父親「…」
マスター「どうでしょうか…是非、お願いします」
父親「…いいですよ。ただし、私は見ての通りの義足で…更に目が見えません。お手柔らかに頼みますよ」ハハハ
マスター「…是非もありません。感謝します」
女剣士(えーっ!お父さんとマスターさんが手合わせ!?)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 近くの広場 】
…クルクルクル…ドスンッ!!
マスター「この広さなら、十分に戦えそうですね。大剣でも暴れられそうだ」
父親「はは…。まぁ田舎ですので広さだけはありますから」スチャッ
マスター(…槍か。この男…やはり騎士…)
父親「さて、やりますか。お手柔らかに」スッ
マスター「いえいえ…では。お願いします」
女剣士(…)ドキドキ
母親(…)ドキドキ
父親「…はぁ!」ダッ
ダダダダダダッ!!!
マスター(始まった…だが、思ったほどの速度ではない)
マスター「おりゃあっ!」ブンッ!
父親「ぬっ!」ビュッ!!
…ガキィン!!!
父親「"それほどの大剣"を、軽く振り回すとはやりますね…」
マスター(見えないのに、感じだけで全てが見えるのか!)
マスター(そういえば…俺がいることも言葉を発する前にわかっていた…もはや達人の域の感覚じゃないか…)
父親「久々に楽しめそうだ…本気でいかせて頂きますよ。龍突っ!!」
ビュッ…ビュオオオオッ!!!
マスター「竜技…!?…ぐっ!ふ、防ぎ切れない!」タァンッ!
女剣士「マスターさんが飛んで逃げた!」
母親「わぁ~高い…」
マスター「相手の苦手なのをつかせて頂く!轟音と共に上からならば…」
マスター「いくら気配を読んでも、どこから攻めるか難しいはずだ!」ヒュウッ
父親「…ふむ」
スタスタスタ…トスッ
父親「この辺…か」
マスター「はっ!?」
父親「そのまま落下してきたら槍に刺さりますよー。どうしますか」
マスター「な、何故…うらぁぁっ!」グルンッ!!
父親「ほう、空中で落下位置を変化するとは。やりますね」
…ズズゥン…!!
マスター「…ぬぐっ」バッ
父親「空中の攻めの威力は高いが、落下時に硬直が生まれるのはキツイですよね」ダッ
ダッ…ダッダッダッダッダッ!!
父親「龍突っ!!」ビュッ!!
マスター「ぬぅぅ…大斬っ!!!」ブンッ!!!
…ガガキィィン!!!
マスター「…っ!」ビリビリ
父親「つつ…大剣の威力は対したもんですね。貰ったと思ったんですが弾かれるとは…」ビリビリ
父親「さすがの振り速度だ。攻撃速度が尋常じゃない」
マスター「…ふふ、親父さん」
父親「むっ」ピクッ
マスター「この間合いなら、剣が有利だっ!」ブンッ
…ヒュンッ
マスター「外れた!?」
ズザッ…ズザサァ…
父親「ふぅ…危ない危ない。今のはちょっと危なかったな」
マスター「い…一瞬であそこまで…引いたのか…」タラッ
女剣士「お父さん…本当に強い…。あのマスターさんが…」
母親「あらあら、女剣士。強いに決まってるでしょ、私の夫であなたのお父さんなんだから♪」
女剣士「…うん」
父親「さて…小火炎魔法っ!」パァッ
マスター「!」
…ボォン!!
マスター「おっとっと…」プスプス
父親「ありゃ、避けもしない」
マスター「…すみませんが、貴方が魔法を苦手なのは聞いてます。脅威にはなりません」
父親「そうでしたか、全く…女剣士のやつめ」
女剣士「ご…ごめんなさーい」
父親「確かに私は魔法が苦手ですけどね、苦手なら苦手なりにやる手段があるんですよ」ニコッ
マスター「へえ、見せて頂きたいですね」
父親「…はっ!」ブンッ!!
女剣士「えっ!?」
マスター「や…槍を空高く投げた!?」
父親「…小火炎魔法っ!」パァッ
…ボォン!!!
マスター「…おっ!?どこに撃ちましたか、明後日の方向ですよ!」
父親「2つの注意は、1つの隙を生ませるのに十分なんですよ。小火炎魔法っ!!」パァッ
…ドゴォン!!…
マスター「あ、足元を!うわっ!」
…ドシャアッ!!
女剣士「マスターさんを転がした!」
ダダダッ…タァンッ!!
父親「今度は私が上からとらせて頂きますかね」
ヒュウウッ…ガシッ…
女剣士「さっき投げた槍を…取った…まさか…!」
父親「…龍落っ!!!」
ヒュウウウッ…!!
マスター「ぐ…!」ダッ…
父親「一度転んだ相手には、こんな小さな魔法でも…小火炎魔法っ!!」パァッ…ボォン!!
マスター「うあっ!」グラッ
女剣士「頭を揺らして…」
父親「…中々強かったですよ」
マスター「う…うおっ…防御がまにあわな…」
ヒュウウウウウウッ…ボコンッ…!!!
マスター「がっ…」
父親「柄での叩きつけに途中から切り替えましたが…私の勝ち…ですね?」
マスター「がはっ…」
…ドサァッ
父親「…ふぅ。女剣士、魔法は最小でも幾らでも戦いの手段はあるんだぞ。覚えておけよ」
女剣士「お…お父さん…」
父親「どうした…俺を見直したか?」ハハハ
女剣士「小斬~~!!!」ブンッ
…バシュウッ!!
父親「ぬおおぉっ!?な、何をする!」
女剣士「マスターさんをイジめるなんて、最低ですよ!!もっと手を抜いてもいいじゃないですか!」
父親「だ、だが男同士の真剣勝負で…」
女剣士「問答無用~!」
父親「な、何でだぁぁ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 夕 方 】
マスター「あいつつつ…」
父親「申し訳ありませんね…大丈夫でしたか?」
マスター「い、いえ。自分の実力も劣っているのが分かって良かったですよ」
父親「はは…」
母親「でも、まだ本気じゃありませんでしたよね?武器も違いますし」
父親「ば、バカッ!」
女剣士「え?」
マスター「え?」
母親「あれは少し前に貰った、お祭りで使うような軽い凡槍ですよ。本気なら龍槍使うじゃないですか」
父親「そういうことを人の前で言うんじゃないっつーの!」
母親「あ、あう…すいません…」
マスター(ま…マジか…)
女剣士「お父さん…どんだけ強いの…」
父親「まだまだお前には負けんよ」ハハハ
女剣士「む…むぅぅ…」
父親「それにしても、あなたのような人なら娘も安心だ。是非、娘を鍛えて頂きたいですよ」
マスター「そんな恐れ多い…」
父親「いえいえ」
マスター「…」
女剣士「ま、まぁさ。そういう訳だから、一応報告にね」
父親「んむ…励むんだぞ」
母親「頑張ってね♪」
女剣士「うん!」
父親「これからはどこに向かうんですかね?」
マスター「予定では、東方へ抜けるのも有りかと。大きく東からグルっと回るのも悪くはないですね」
父親「東方へ抜け、ジパング、更に大海を渡って遊休王国、星降町、西地方…やがてココへ戻ると」
マスター「その頃には1年…2年もたってるでしょう。立派な剣士に彼女も成長してますよ」
女剣士「…楽しそうですねぇ!」ウキウキ
父親「全く…誰に似たんだか」ハハ
マスター(どっちにも似てるよ!)
父親「それじゃ…娘を宜しくお願いしますね」ペコッ
母親「宜しくお願いします」ペコッ
マスター「いえいえ…」ペコッ
女剣士「釣られて…」ペコッ
母親「それで今日はどうするの?泊まってくの?」
マスター「しばらく離れる事になりますし、是非…今日は家族水入らずでいかがでしょうか」
女剣士「いいんですか?そりゃ少しはお話もしたいですが…」
父親「そんなこと言わず、マスターさんも一緒に飲みましょう」
マスター「いえいえ!ですが、家族水入らずというものが…」
父親「冒険家業として、冒険者同士…仲間でしょうよ」ニカッ
母親「…ですね」ニコッ
マスター「!」
女剣士「!」
マスター(全く…この人といい、女剣士といい…)ハハ
女剣士「お父さん…」
マスター「いいでしょう、是非…今晩は…飲み明かしましょうか!」
女剣士「おーっ!」
父親「…いやお前はダメだろ」
女剣士「えーっ!」
父親「いやいや」
女剣士「むぅぅ…」
マスター「やれやれ…これからも楽しませてくれそうだ」
女剣士「…何か言いましたか?」
マスター「いや何でもないさ」
女剣士「…えへへ、さぁ…明日も楽しく、これからも冒険者として頑張りましょうねっ!」
マスター「あぁ…そうだな!」ニカッ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
【 E N D 】
680 : ◆qqtckwRIh.[sag... - 2014/02/18 20:10:56 7Uv30VZk 556/556
ここまでお付き合いしてくださった皆様、ありがとうございました。
過去の作品との繋がりを持ちつつ、ちょっと変わった王道ファンタジーで描いたつもりです。
まだまだ描き切れてない部分はありますが、
次の機会があればまた、目に通してくれれば嬉しいです。
新作等がある時は、現存しているスレにご報告はさせていただきます。
本当にありがとうございました。
後は修正分のアップをしておきます。
それでは…失礼致します。
※関連作品
このSSの作者さん(◆qqtckwRIh.)の作品
《剣士シリーズ》
【少年剣士編】
少年剣士「冒険学校に入学します!」
少年剣士「冒険学校で頑張ります!」
少年剣士「冒険学校の休暇です!」
【幼剣士編】
幼剣士「待っていて下さい・・僕が必ず・・!」【前編】
幼剣士「待っていて下さい・・僕が必ず・・!」【後編】
幼剣士「僕には夢が出来ました」
青年剣士「運命ということ・・」【前編】
青年剣士「運命ということ・・」【後編】
【冒剣士編】
冒剣士「…冒険酒場で働くことになった」【前編】
冒剣士「…冒険酒場で働くことになった」【後編】
冒剣士「僕は最高の冒険者になる」
【白剣士編】
白剣士「毎日が平和なこと」
白剣士「明日が平和なこと」
白剣士「未来が平和なこと」
【真剣士編】
真剣士「英雄の…血…?」【第一幕】
真剣士「英雄の…血…?」【第二幕】
【その他シリーズ・単発ネタ】
勇者「時空に飛ばされたら魔王がアパートに住んでいた」
【竜騎士シリーズ】
竜騎士「田舎に飛ばされ自給自足生活」【前編】
竜騎士「田舎に飛ばされ自給自足生活」【中編】
竜騎士「田舎に飛ばされ自給自足生活」【後編】
竜騎士「孤島に残されサバイバル生活」
竜騎士「空を翔けて冒険生活」【前編】
竜騎士「空を翔けて冒険生活」【後編】
竜騎士「空を翔けて冒険生活」【番外編】
【女剣士シリーズ】
女剣士「冒険者の喫茶店で働く事になりました」【第一章】
女剣士「冒険者の喫茶店で働く事になりました」【第二章】
女剣士「冒険者の喫茶店で働く事になりました」【後日談】
メチャクチャ嬉しいわ!