【第一章】 の続きです。
316 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/08 21:21:09 BOizPDCY 249/556

 
それから互いに準備を終えると、

改めて青空珈琲店として再出発。


2人は

最初の目的地となる街道村へと到着した――…

317 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/08 21:21:45 BOizPDCY 250/556

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 次の日・街道村 】

…ガチャッ!!

宿番「いらっしゃー…あれ?」


マスター「よう」

女剣士「お、お久しぶりです~」コソッ

宿番「随分早いですね今回は?1週間もたってませんよ

マスター「…ちょっとな」

宿番「…?」

318 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/08 21:23:10 BOizPDCY 251/556

 
女剣士「マスターさん」

マスター「ん?」

女剣士「いつもお世話になっていたようですし、やっぱり事情は説明したほうが…」

マスター「…そのほうがいいか。万が一ってことも考えられる…か」


宿番「えーと…何のことでしょうか」

マスター「あぁ。実はな…」

319 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/08 21:24:44 BOizPDCY 252/556

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

マスター「ってわけだ」

宿番「ははぁ…災難でしたね」

マスター「だから今日はここに泊まって、このまま東に抜ける予定なんだ」

宿番「へぇ、なら明日からはどこに向かうんですか?」

マスター「まずは豪火山のふもとの町だな。あそこでコナの珈琲豆が採れるはずだろ。是非、この目で見たい」

宿番「あぁ、確かにそうですね」


女剣士「…珈琲粉、ですか?豆ですか?…??」

320 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/08 21:25:56 BOizPDCY 253/556

 
マスター「粉じゃない、コナ。コナっていう珈琲豆がとれるんだ」

女剣士「そんなのがあるんですか!」

マスター「火山の石灰質の土壌で採れる酸味の強い豆だ。人気なんだぞ?」

女剣士「へえ~…」


マスター「まぁ…とにかく…ってなわけで今日は一晩頼む。明日には出発予定だからな」

宿番「かしこまりました」ペコッ


マスター「さて、部屋も取れたし…ちょっと」スクッ

女剣士「あれ、どこかへ?」

321 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/08 21:27:38 BOizPDCY 254/556

 
マスター「あー…お前は部屋に行ってていい。ちょっと村長に挨拶してくるんだ。しばらく来れなくなりそうだしな」

女剣士「なるほど、わかりました」

マスター「すぐ戻ってくる」

ガチャッ…バタン…


宿番「それじゃえーと」ゴソッ

女剣士「…」

宿番「こちらが部屋のキーになります。いつもの番号の部屋ですので、ごゆっくりどうぞ」スッ

女剣士「101号室でしたね。ありがとうございます」

322 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/08 21:29:27 BOizPDCY 255/556

 
トコトコ…ギシギシ…

宿番「…」

女剣士「~♪」


宿番「お得意様ですからね、ごゆっくりお休み下さいね!」

女剣士「はい~っ」

323 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/08 21:30:27 BOizPDCY 256/556

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 1時間後 】

…ガチャッ

マスター「戻ったぞ」

女剣士「おかえりなさいです」


…モワッ

マスター「む…何か妙に部屋がモワっとしてるんだが」

女剣士「あ、せっかくなのでお風呂に先に…。お湯は張ったままなので後でどうぞ!」

マスター「ん…おう」

324 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/08 21:31:00 BOizPDCY 257/556

 
女剣士「えーと…それで、村長さんにはお話をしてきたんですか?」

マスター「うむ。村長にも一応、事情を話してきた。しばらくここにも来れないってな」

女剣士「そうでしたか」

マスター「そしたら…ほれ」ガサッ

女剣士「これは?」


マスター「ここの名産。いつもの世話に、これしか出来ませんがって渡してくれたぞ」

女剣士「何でしょうか?」

マスター「開けてみるといい」


ガサガサ…

女剣士「!」

マスター「それがこの街道村の産物。最高級の"栗"。そしてそれを使った栗団子だ」

女剣士「わぁぁ!」キラキラ

325 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/08 21:31:41 BOizPDCY 258/556

 
マスター「食べていいぜ。今年一番の出来らしい」


女剣士「いっただきまーす!」

マスター「早っ」


モグ…モグモグモグ…

女剣士「あ…甘い!美味しいぃ~!」

マスター「幸せそうな顔だな…何よりだ」

女剣士「マスターさんもどうですか?」モグモグ

マスター「あ…いや、俺は村長の家で頂いたからな。好きなだけ食べろ」

女剣士「はいっ」

326 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/08 21:32:23 BOizPDCY 259/556

 
マスター「…」

女剣士「美味しい~」モグモグ

マスター「…」

女剣士「やっぱり高級品と聞くと味も跳ね上がるようですねぇ」モグモグ

マスター「…」

女剣士「う~ん…」モグモグ


マスター「…ふむ、そうだな。少し待ってろ」

女剣士「?」モグモグ

マスター「えーと…」

カチャカチャ…

327 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/08 21:33:18 BOizPDCY 260/556

 
マスター「栗には…この豆と…」

ゴリゴリ…ゴリゴリ…

カチャッ、パサパサ…ジャー…


女剣士「…」モグモグ

マスター「…」ゴリゴリ

女剣士「…」モグモグ

マスター「…」ゴリゴリ

女剣士「…」モグモグ

328 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/08 21:34:20 BOizPDCY 261/556

 
マスター「…おいっ!」

女剣士「ひゃいっ!?」ビクッ

マスター「少し待ってろって言っただろ!」

女剣士「すいません!」モグモグ

マスター「…食うなっての!」


コポコポ…ジャー…

マスター「…ったく、食べ物に見境ねーのか。ほら」コトッ

女剣士「これは…コーヒーですか?」

マスター「栗に合うように少しのブレンドしてみたんだ。飲んでみろ」

329 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/08 21:35:26 BOizPDCY 262/556

 
女剣士「は、はい」

カチャッ…ゴク…


女剣士「…あっ」

女剣士「…さっぱりしてますね」


マスター「ん、合わなかったか?」

女剣士「いえ…何ていうか初めて飲んだ味です。酸味が多い…のかな?」

マスター「栗団子はとにかく甘いからな。苦味も少し多めに口のリセットにしようとしてみたんだが」


女剣士「普通に飲んだらかなりキツそうですけど、こういう甘いお菓子とは…」モグモグ

グビッ…グビグビグビ…


女剣士「ぴったりです!」プハァ!!

330 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/08 21:36:16 BOizPDCY 263/556

 
マスター「そりゃ何よりで」

女剣士「さっぱりしてて美味しいですねぇ」ホワッ

マスター「俺も飲むかー…」

…コンコン

マスター「はいどうぞ」


宿番「失礼します。って、うわっ!」ムワッ

マスター「ん?」

宿番「こ…コーヒーですか?なんか部屋も温かいですし、すっごい濃い匂いですね」

マスター「あーすまん。迷惑だったか。窓開けてあとで換気するよ」

宿番「いえ、それは構わないんですが。ちょっとお話が…」

マスター「…ん?」

331 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/08 21:37:03 BOizPDCY 264/556

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 宿のロビー 】


制服の男「…」ズーン


…コソコソ

宿番「あそこに座ってる方です。マスターさんに用事があるとかっていう…」ボソボソ

女剣士「なんか立派な服着てますね。軍服ですか?」

マスター「…ありゃ中央軍の尉官の制服だ。俺に用事だって…?」

宿番「一応、その人が部屋にいるかどうか確かめるとだけ言いました。どうします?」


マスター「…ふむ。とりあえず敵意はなさそうだ。行ってみる」スッ

332 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/08 21:38:46 BOizPDCY 265/556

 
女剣士「あっ、マスターさん!」


トコトコトコ…

マスター「…よいしょ。対面に座らせてもらうよ」ストン

制服の男「!」


マスター「その制服、中央軍の人間だな。軍の人間が何か俺に用か?」

騎士少尉「自分は騎士少尉と申します。以後、お見知りおきを」

マスター「俺は軍に知り合いなんかいないぜ?」

騎士少尉「…ギルド長のことは」

マスター「何?」

騎士少尉「実は自分、ギルド長に頼まれて貴方達の護衛や見張りについてくれと」

333 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/08 21:40:28 BOizPDCY 266/556

 
マスター「…なるほどな。やはりとは思ったが、やっぱりソッチ繋がりだったか」

騎士少尉「ギルド長いわく、心配はいらないだろうが一応のためだそうですよ」

マスター「…」

騎士少尉「自分らは東ギルドと深い係わり合いがありますし、そのトップのお願いですから聞かないわけには」

マスター「知ってるよ。俺だって元東ギルドのメンバーだ」

騎士少尉「…そうでしたか」


マスター「まぁ…気持ちはうれしいが余計な世話だ。ボディガードなんかいらん」

騎士少尉「しかし」


マスター「しつこいぞ。俺は俺一人で十分…いや、二人で十分だ」

騎士少尉「…二人?あぁ、あなたに着いているという女性のことですね」

マスター「そんなことまで話してんのかアイツは…」ハァ

334 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/08 21:41:11 BOizPDCY 267/556

 
騎士少尉「だが使命は使命です。あなたたちが拒否をされても、守りの任務に就かせていただきたい」

マスター「…そんなに、俺らが西ギルドメンバーにやられるように思うのか?」

騎士少尉「ギルド長の話では相当な手練だとは聞いてましたが…念には念を、と」

マスター「…」ハァ

騎士少尉「…」


マスター「…分かった、分かったよ。お前、少尉ならそれなりの実力はあるんだろう?」

騎士少尉「それなりには」

マスター「…それなり、ね」ジー

騎士少尉「…?」

335 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/08 21:42:22 BOizPDCY 268/556

 
マスター「ふむ、こりゃいい機会かもしれんな…」ブツブツ

騎士少尉「…いかがなされましたか?」

マスター「いや、ちょっとな」

騎士少尉「ふむ」

 
マスター「まぁとりあえず…女剣士!」

女剣士「は、はいっ!」

マスター「ちょっと来い」

女剣士「はいっ」

トコトコ…

336 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/08 21:43:21 BOizPDCY 269/556

 
騎士少尉「こちらが例の女性ですね」

マスター「…この女剣士と勝負してくれ。これでコイツが負けたら俺らの旅に加えてやる」

騎士少尉「…え?」

女剣士「ええぇっ!?」


マスター「勝ったら中央に帰れ。…その条件なら此方としては飲むが?」

女剣士「ちょちょっと、ちょっと!マスターさん!」

マスター「うっせ」

女剣士「うっせって…ちょっとぉぉ!」

337 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/08 21:44:48 BOizPDCY 270/556

 
騎士少尉「…いいでしょう」スチャッ

女剣士「少尉さんもそんな条件飲まないでぇぇ!」

騎士少尉「マスター殿、約束ですからね?全く…自分がこんな女性と戦うはめになるとは…」

マスター「あぁ…約束だ」


女剣士「なんでぇぇ…」

339 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/08 21:47:35 BOizPDCY 271/556

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 宿の外・村の一角 】


ヒュウウ…

騎士少尉「…女性だからといって容赦はしませんよ」スチャッ

女剣士「どうしてこんなことに…」ブツブツ


マスター「互いに危ない時は俺が仲裁に入る。存分にやれ!」


女剣士「恨みますよマスターさぁん!」

マスター「おうおう…」

340 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/08 21:48:14 BOizPDCY 272/556

 
宿番「だ、大丈夫なんですかね…?」

マスター「大丈夫だと思うぞ。あいつも少尉という実力はあるだろうが、恐らく女剣士には勝てないだろう」

宿番「なぜです?」

マスター「…手が綺麗すぎる。ありゃ尉官になって、部下に命令だけをするようになった人間だ」

宿番「なるほど」

マスター「よくいるんだ。上になると、自分を磨くことを止める奴がな。まぁ見てろ」

宿番「はい」


騎士少尉「…」ゴゴゴ

女剣士「…」

341 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/08 21:50:38 BOizPDCY 273/556

 
騎士少尉「いきますっ!!」ダッ

女剣士「!」スチャッ


騎士少尉「…小突!!」ビュッ!!!

女剣士「このくらい!」キィン!!

騎士少尉「臆せず弾くとは…ですが足元がお留守ですよ!」ヒュッ

女剣士「わわ、蹴り!?」ピョンッ

騎士少尉「よく回避しました…ですが空中に浮いた状態なら!!小突!!」ビュッ!!


マスター(ほう…不真面目な奴にしては、いい槍術と体術の連弾だな)

342 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/08 21:51:28 BOizPDCY 274/556

 
女剣士「うくっ!」グルンッ!!
 
騎士少尉「空中で上体を反らした!?だけどそれは!」

女剣士「えへへ…きゃあっ!」

ドスンッ!!

マスター(空中で体を反らしたらそりゃ倒れるわな。そしてそこは槍の間合いだ…どうする?)


騎士少尉「…好機!えやああっ!」ブンッ

女剣士「わわわわっ!」

グルングルン…ザスザスザスザス!!


騎士少尉「横転でちょこまかと!」

女剣士「くっ…小火炎魔法っ!」ボワッ!!

騎士少尉「ぬあっ!」ボォンッ!!

343 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/08 21:52:24 BOizPDCY 275/556

 
マスター(寝転んだ状態からの一瞬の魔法の練りか!)


女剣士「えへへ、危ないところでした」スクッ

騎士少尉「おのれ妙な魔法技を…」ゴホゴホ


女剣士「今度はこっちの番ですよ!」ダッ

…ダダダダッ!!!

騎士少尉「お…早いですね!」

女剣士「この距離なら剣の間合いが有利!小斬っ!!」ビュッ!!

騎士少尉「…甘い!」

…キィンッ!!!

344 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/08 21:53:25 BOizPDCY 276/556

 
女剣士「えっ!?」

マスター(…へぇ)


騎士少尉「普通の槍ならば"柄は切れている"でしょう。ですがこれは防御にも使える…鋼鉄製」

女剣士「そ、そんなの有りですか!」

騎士少尉「そしてこれはこのまま…武器となる!」ブンッ!!

ガキィンッ!!

クルクル…ザシュッ!!


女剣士「私の剣が…弾かれ…」

騎士少尉「勝負ありですかね」フッ


マスター(…いや)

345 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/08 21:55:48 BOizPDCY 277/556

 
女剣士「…まだです!掌底波ぁっ!」ヒュッ

騎士少尉「へっ?」

…バキィッ!!!!

騎士少尉「がっ…」


女剣士「油断はいけませんよ!」

騎士少尉「ごほっ…、掌底波…とは…」フラッ

女剣士「えへへ!」


マスター(そうだ。女剣士には隠された底力、スキルがある…)

346 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/08 21:57:24 BOizPDCY 278/556

 
騎士少尉「…」ニヤッ

女剣士「!」

騎士少尉「予想外にやりますね。ですがこれは真剣勝負。出来ることは…やらせていただく!」

女剣士「え?」

騎士少尉「これはもういりません!」パッ

…カランカランッ


女剣士「槍を捨てた…?」

騎士少尉「…」

スッ…キラッ

女剣士「…へっ?それは何ー…」

騎士少尉「せいっ!!」ヒュッ

ズバズバッ!!ビリビリッ!!

347 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/08 21:58:24 BOizPDCY 279/556

 
マスター「腰に…隠しナイフか!」


女剣士「!」

騎士少尉「確かにあなたは強い。ですが自分とは決定的な差がひとつある…」


女剣士「きゃあああっ!」

騎士少尉「女性だ、ということ」

348 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/08 21:59:02 BOizPDCY 280/556

 
マスター「ふむ…服を破られたか。女というのが仇となる場面…さぁどうする」

宿番「おぉ!眼福眼福!」


女剣士「やっ、ちょっとお!それは反則…!」バッ

騎士少尉「これが本当の殺し合いだったら、今の一瞬で死んでますよ!」ヒュッヒュ!!

女剣士「どんどん破かないでください!いやああっ!」ビリビリッ!!

349 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/08 22:01:27 BOizPDCY 281/556

 
騎士少尉「動きが鈍くなれば…もう貰ったようなものですよ!ナイフでも十分に!」ダッ

女剣士「…っ!」バッ


ズバッ…ガキィンッガキィン!!!!


騎士少尉「これで…今度こそ終わった…って、えっ!?」

女剣士「…うぐぐ…」ギリギリ

騎士少尉「そ、それは私が捨てた槍!!」


女剣士「確かに恥ずかしいですが…勝負に負けるのはもっと嫌なんですよ…!」ググッ

騎士少尉「くっ…何て力だ…」ギリギリ

女剣士「うぅぅ…!」ググッ…

350 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/08 22:02:09 BOizPDCY 282/556

 
騎士少尉「し…下着が見えてますよ…?」ニヤッ

女剣士「!」

騎士少尉「そんなに…見てほしいんです…か…?」ググッ

女剣士「そ…そういうことは…言わないでください!」カァッ

騎士少尉「ふふ、弱みを見せましたね!!」バッ!!

女剣士「きゃあっ!」

…ドシャッ!!


マスター(さすがに押し負けたか…。しかし、な)


騎士少尉「2度目の倒れこみは、もう逃がさない!」ビュッ!!

女剣士「この状態からでも!…小突うぅっ!!!」

騎士少尉「なっ!?」

351 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/08 22:04:12 BOizPDCY 283/556

 
…ドスッ!!!

騎士少尉「そ…そんな…バカな…」

女剣士「…」

騎士少尉「…がっ」

グラッ…ドシャアッ…


女剣士「はぁ…はぁ…」

マスター「…自分の勢いで、槍に突っ込んだんだ。カウンターで食らったのと一緒だ…そりゃ倒れるか」スッ

女剣士「マスターさん…」

マスター「ご苦労さん。ほら、上着貸してやる」

女剣士「あ、ありがとうございます」

352 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/08 22:05:47 BOizPDCY 284/556

 
マスター「どれ回復でも…って、槍で刺したのに血が出てないのか?」

女剣士「峰打ちみたいなもんです。鋼鉄の柄で思いっきり、みぞおちを貫きました」

マスター「…なるほどな。女剣士の甘さに軽い痛みだけで済んだか」

女剣士「久々に組み手らしいのをやりましたが、強かったですよ」ハァハァ


マスター「仕方ねえなあ…おい、起きろ。少尉」

騎士少尉「ごほっ、ごほごほ…」

マスター「これで実力差は分かっただろ。うちの店員にも勝てない雑魚が、俺らのお守りなんて100年早い」

騎士少尉「…くっ」

353 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/08 22:07:05 BOizPDCY 285/556

 
女剣士「マスターさん、そんな言い方!」


マスター「少し軍での地位があがったからって、あぐらかいてりゃ実力も落ちるんだよ」

騎士少尉「…あぐらなんか」

マスター「綺麗な手。軍人のくせに女だからって相手に下に見た事。どう見てもそうだろうが」

騎士少尉「…っ」


マスター「出直してこい。それと俺らにはもうお守りはいらん…そう伝えろ」

騎士少尉「…はい」

マスター「…」

ヨロ…ヨロヨロ…

354 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/08 22:08:01 BOizPDCY 286/556

 
マスター「そうだ、騎士少尉!…今はお前の悪さだけを言ったが、良い所もある!」

騎士少尉「…?」

マスター「誰にでも本気になれる事。勝とうとする信念。それがありゃお前はまだまだ上に行ける!」

騎士少尉「…」

マスター「…本気になれるなら、もっと本気で自分を磨け。それだけだ」

騎士少尉「…は、はい。ありがとうございました…」

ザッ…ザッザッ…ザッサッザ゙…


女剣士「…」

マスター「そして女剣士」クルッ

女剣士「は、はい」

マスター「よくやったな。少尉とはいえ、男に勝ったんだ。勝つとは思ってたが…いい動きだったぞ」ポン

女剣士「…」ピクピク

355 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/08 22:09:49 BOizPDCY 287/556

 
マスター「…ん?」

女剣士「…マスターさん」ニコッ

マスター「何だ?」


女剣士「掌底波ぁっ!!」ブンッ

…バキィッ!!


マスター「ぬおっ!な…何をする!!」

女剣士「…一発くらい殴らせてくれてもいいでしょう!泣きそうになったんですよ!!」

マスター「しかしだな!」

女剣士「最後に良い所だけ持って行こうとしないでください!!」

356 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/08 22:11:06 BOizPDCY 288/556

 
マスター「ぬ…」

女剣士「だけど、戦いの場を貰って…改めて自分のことを知れたのは感謝します」ペコッ

マスター「…そうだな」

女剣士「もっともっと強くなります!」

マスター「…あぁ」


宿番「あの、いい話の途中でしたが…そろそろ日が暮れるので…」

マスター「ん?」

宿番「いいものを見せて頂きましたし、今日の晩御飯は奮発しますよ。何か食べたいですか?」

女剣士「いいものですか?そんないい戦いでしたかっ」フンッ

357 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/08 22:11:54 BOizPDCY 289/556

 
宿番「戦いもそうですが、その…ね」ニコッ

女剣士「…戦い以外にいいモノ?」

マスター「そりゃ…お前の体じゃないのか?ま、俺は新鮮な食べ物なら何でもいいぞ」

女剣士「…っ!!」


宿番「ははは…ずばり言いますね。ではでは、村で新鮮な食材でも探してきます」

タッタッタッタッタ…


女剣士「も…」ブルッ

女剣士「もう、今日は色々と嫌ぁぁっ~…!」

358 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/08 22:12:27 BOizPDCY 290/556

 
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364 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/09 19:02:13 S/lgixMI 291/556


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――――【 次の日 】

ゴソゴソ…

マスター「うっし。出発の準備できたか?」

女剣士「忘れ物ナシ、いつでも行けます」

マスター「それじゃ行くかぁ」ウーン


女剣士「今日は豪火山に向かうんでしたっけ?」

マスター「そうだ」

女剣士「わかりました」

365 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/09 19:02:47 S/lgixMI 292/556

 
…コンコン

マスター「お…どうぞ」

…ガチャッ


宿番「失礼します。今日からしばらく会えませんし、折角なので個人的な挨拶をと」

マスター「そうなるな。今まで世話になった」

宿番「マスターさん…是非、また来て下さいね」

マスター「一生の別れじゃあるまいし、そんな顔すんな」

宿番「ですが寂しいものですよ…。101号室、いつまでも取って置きますから!」

マスター「…うむ」

366 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/09 19:03:18 S/lgixMI 293/556

 
女剣士「戻ってきた頃には、立派な剣士ですよ!」

宿番「もうすでに素晴らしいものを…」

女剣士「…セクハラですよ!」ギロッ

宿番「あはは…す、すいません」


マスター「怒ると怖いんだぞこいつ。もしかしたら宿も壊されるかもしれん」

宿番「わわ…口は災いの元ですね」

マスター「その通りだ。触らぬ神に祟りなしよ」


女剣士「ひ…人を災いみたいに言わないでくださーい!」

367 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/09 19:04:03 S/lgixMI 294/556

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 街道 】


トコトコ…トコトコ…

女剣士「うぅ…色々と疲れましたよ」ハァ

マスター「まぁそう言うな。ほら、貰った団子が余ってるから食べろ」スッ

女剣士「頂きますけど…」

マスター「はは…」


女剣士「はぁ~…」モグモグ

368 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/09 19:04:41 S/lgixMI 295/556

 
マスター「まぁ次に目を向けろ。豪火山のふもとで、楽しいぞ。行ったことないだろ?」

女剣士「そりゃないですけど…歩きで大丈夫なんですか?」

マスター「途中までしか馬車は入れないからな…4、5日かかるが山道を越えて行った方が早いんだ」

女剣士「なるほど」


マスター「それと…次に行く町はな、相当昔に惨劇が起きた場所だって知ってるか?」

女剣士「豪火山の町がですか?」

マスター「もう何百年も前…、豪火山で炎の魔物が大暴れしてな。町が壊滅したらしい」

女剣士「…!」

マスター「生き残った住民は皆無。一度は人が誰もいなくなったんだと」

女剣士「今は…?」

369 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/09 19:05:15 S/lgixMI 296/556

 
マスター「それから数年。そこの出身者たちが町に戻り、やがて長い歳月で復興を遂げたんだ」

女剣士「良かったです」ホッ


マスター「だがその傷跡は今も癒えていない。町外れには数百という石碑が立っているそうだ」

女剣士「…哀しいですね」

マスター「だが、それを力にして今じゃ立派な成長を遂げた町だ」

女剣士「すごいことじゃないですか」

マスター「当時に猛威を振るった火山だったが、今じゃ休火山だ。カルデラ湖で観光名所だとよ」

女剣士「観光名所ですかっ!」

370 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/09 19:05:54 S/lgixMI 297/556

 
マスター「見たいか?」

女剣士「はい!」

マスター「一応、小規模ギルドがあったはずだ。そこで何か、カルデラ湖付近の一般クエストがないか聞いてみるよ」

女剣士「わーい!」


マスター「なかったとしても、俺も久々だしカルデラ湖は見に行くつもりだったしな」

女剣士「やったっ!」


マスター「ん~…出来れば軽いクエストがあればいいんだが…」

女剣士「例えばどんなクエストがありそうですか?」

マスター「火属性のエレメンタルの討伐。たまたま出現して観光客に迷惑をかけるんだよ」

371 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/09 19:06:27 S/lgixMI 298/556

 
女剣士「火属性エレメンタルですか…。物理攻撃が効くんでしょうか」

マスター「あっ…お前、水属性の魔法使えないんだっけか?」

女剣士「からっきしダメですね。火の最下級の魔法しか…」

マスター「あー…」

女剣士「どうしましょう…危険ですか?」


マスター「ふむ…お前、自分の魔力がどれくらいあるかは分かってるか?」

女剣士「一応、小火炎魔法を10回放てないくらいですかね…」アハハ…

マスター「相当魔力がないんだな…。それじゃ武器に属性付与をしても維持する魔力はなさそうか」

女剣士「申し訳ないです…」

372 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/09 19:06:59 S/lgixMI 299/556

 
マスター「…」

女剣士「…」


マスター「…あっ」ポン
 
女剣士「え?」

マスター「そうだ。そうだったな…この近くに確か…」ブツブツ

女剣士「…何かあるんですか?」


マスター「…ふむ、ちょっと道中で寄り道してくぞ。こっちだ」


女剣士「…は、はい」

373 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/09 19:07:32 S/lgixMI 300/556

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 道中にある小屋 】

ザッザッザ…

マスター「お、あったあった。うる覚えだったから心配だったんだが」

女剣士「…ここは?」

マスター「錬金術師が営んでる小さな店だ。ここならお前の装備も強化できそうだからな」

女剣士「錬金術…ですか」


マスター「まさか…それも知らないのか?」

374 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/09 19:08:08 S/lgixMI 301/556

 
女剣士「い、いえいえ。今あるスイッチ1つで点く明かりとか…」

女剣士「ひねると出る水道。冷蔵庫だとか、そういう不思議な技術のことですよね」


マスター「60点。正確にいえば、魔法の力を使わぬように開発された文明の利器の1つだな」


女剣士「あう…。でも何で錬金術屋さんなんですか?そんな場所で私の装備が強化できるんでしょうか」

マスター「お前が想像してるのは、いわゆる生活品の錬金術品だろう」

女剣士「…それ以外に錬金術の用途が?」

マスター「そもそも錬金術ってのは、東方で開発された物で。戦いのために生み出された技術なんだよ」

女剣士「そうなんですか!?」

375 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/09 19:09:08 S/lgixMI 302/556

 
マスター「今日という日、もう平和ともいえる世の中で錬金術は生活品の研究ばかりだがな」ククク

女剣士「そうだったんだぁ…」

マスター「ここは数少ない、冒険者用の武器や防具の錬金術装備、開発を行ってる場所なんだ」

女剣士「へぇ~!」


マスター「さぁて、"アイツ"がいればいいんだが…」

376 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/09 19:09:39 S/lgixMI 303/556

 
コンコン…

マスター「…いるかー?」

???「はーい、お客かな。どうぞー」


…ガチャッ

マスター「よかった、まだやってたか。失礼するぞ…久しぶり」

???「…誰?」

マスター「俺だ。わからんか?」


???「…」

???「…あぁっ!!」


マスター「思い出したか?かなり久しぶりだな…まだやってて安心したよ」

???「思い出した思い出した!!忘れる訳ないよ!久しぶりだねぇ!」

377 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/09 19:10:19 S/lgixMI 304/556

 
女剣士「…知り合いなんですか?」

マスター「あぁ…こいつは女錬金師。俺の現役時代のパーティの1人だよ」

女剣士「えっ!」


女錬金師「おや…初めましてかな?かわいこちゃん」ニコッ

女剣士「そ、そんな可愛いなんて」テレッ


マスター「お前はとっくに引退したものかと少し思ったが、やっぱりまだ経営は続けてたか」

女錬金師「まだまだ現役だよ。おかげ様で、各方のギルドに入用にしてもらってるからねぇ」

マスター「それは何よりだ」


女錬金師「…で、久々に来た理由は自慢かい?」

マスター「自慢だと?」

378 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/09 19:10:53 S/lgixMI 305/556

 
女錬金師「だからさ…この娘のことだよ」ジロジロ

女剣士「…?」


女錬金師「あんたもいよいよ年貢の納め時ってことなのかね?」クスクス

マスター「冗談だろ。こいつはえーと…あれだ、うちの店員だ」

女錬金師「…違うのかい?」

マスター「違う」


女錬金師「なーんだ残念」

マスター「…」

女錬金師「いい加減、あんたも伴侶を見つけたらいいんじゃないのかい」

379 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/09 19:11:31 S/lgixMI 306/556

 
マスター「…相変わらずな奴だ」ハァ


女錬金師「余計なお世話だよ。それより、嫁の自慢じゃないなら一体何の用なんだい?」

マスター「嫁じゃないが、コイツの事には変わりないんだがな」グイッ

女剣士「わわっ」


女錬金師「…ふむ?」

380 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/09 19:12:08 S/lgixMI 307/556

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


マスター「ってわけだ。どうにかならんか?」

女錬金師「属性武器の魔力が維持できない…か」

女剣士「お手数かけます…うぅ」


女錬金師「…うーん。難しいねぇ」

マスター「やっぱりお前でもダメか?」

女錬金師「うーん…。元々の魔力が少ないってのは、補給薬を使っても勿体ないだけだし…」

381 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/09 19:13:01 S/lgixMI 308/556

 
マスター「これは今後のことにも関わるからな。出来れば若いうちに解決させたいんだ」

女錬金師「そうだねぇ。話を聞く限り、ものすごい才能なんだろう?勿体ないもんねぇ」

女剣士「…そ、そんなに厳しい事なんですか?」


女錬金師「そりゃ…魔法も使えない剣士が一人前になるのは難しいよ。聞いてないのかい?」

マスター「いや、いいんだそのことは」

女錬金師「え?」


女剣士「ちょ、ちょっと待ってください。何のことですか一体!」

マスター「いや…いいんだ」

女剣士「気になりますよ!教えてください!」

382 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/09 19:13:44 S/lgixMI 309/556

 
マスター「…女錬金師」ギロッ

女錬金師「何だい。どうせ気づくことだろう」

マスター「そりゃそうなんだが…」


女剣士「…教えてくださいよ」

マスター「…わかった」

女剣士「…」

383 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/09 19:14:35 S/lgixMI 310/556

 
マスター「…剣士というのはパーティや立ち回りにおいて重要な役割があるのは分かるよな」

女剣士「知ってますよ!相手を翻弄する敏捷力、前衛で戦う体力、常に応用できる技術力…ですよね?」

マスター「…その技術力は、いわゆる"オールラウンダー"の意味合いもある」

女剣士「前に言ってた、あらゆる武術、スキルを使えることですか?」

マスター「違う」

女剣士「じゃあ…何ですか?」


マスター「魔法攻撃も含めた、その技術力だ」

女剣士「!」

384 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/09 19:15:05 S/lgixMI 311/556

 
マスター「もちろん…物理だけでも有意義な立ち回りは出来る。だが、限界があるんだ」

女剣士「で…ですが、父は魔法が苦手で…。私以上に使えなかったのに相当強いんですよ?」

マスター「…騎士、だろ?」

女剣士「そ、そうです」


マスター「騎士は力技だ。技術だけでなく武道家のような気力の一撃を備えているんだ」

女剣士「そんな事言ったら、剣術の一撃も気の練りはあります!」

マスター「槍の一点と、剣の全てを飛ばすのではどちらが一撃に長けていると思う?」

女剣士「うっ…」

385 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/09 19:16:16 S/lgixMI 312/556

 
マスター「パーティ、団体戦においては基本的に前衛、中衛、後衛の3つに分かれているのは知っているな?」

女剣士「そうですね」
 
マスター「前衛は切り込み役。中衛以前は火力と支援役だ」

女剣士「はい」

マスター「前衛はやれる事が多ければ多いほど、パーティでは有利になる。もちろん中衛後衛もだが」

女剣士「そう…ですね」


マスター「前衛の騎士や戦士が盾役や火力なら、剣士は何だと思う?」

女剣士「…やっぱり相手の翻弄や、攻撃防御も出来る…万能役ですかね」

マスター「つまり?」

386 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/09 19:17:06 S/lgixMI 313/556

 
女剣士「何でも出来るって事ですね。さっき言ったオールラウンダー…です」

マスター「それを求められる前衛が、魔法に対抗出来ない、相手に合わせられなかったら…後衛はどうなる?」

女剣士「守ろうとやることが増えて、自分の力を出せない…」

マスター「その通り。特に…お前の場合はな」

女剣士「…」


マスター「器用貧乏とでもいおうか。やれる事は多いが、肝心な部分で撃沈されるだろう」

女剣士「…」

マスター「パーティがダメなら一人旅なら?とは思うかもしれんが、益々やる事は多くなる。個の力が重要になるからな」

女剣士「…」

387 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/09 19:18:53 S/lgixMI 314/556

 
マスター「剣士ってのは誰にでもとっつきやすい。もっとも人口が多いのは剣士だといっても過言ではない」

女剣士「そうですね…、人の歴史は剣と隣にありましたから…」

マスター「つまり今日という日、最も没者が多いのは剣士ということになる」

女剣士「!」


マスター「そのほとんどが、本当の剣士になりきれず…な」

女剣士「それが…魔法ということですか」

マスター「それだけじゃなく剣術面もだが…」

マスター「お前は少しの魔法を使える相手と比べたら、剣術で勝っても総合的に見れば危険な状態だ」


女剣士「…」

388 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/09 19:19:31 S/lgixMI 315/556

 
マスター「俺のように大剣を扱い、一撃に特化した剣士もいるが…」

女剣士「…」

マスター「レイピアに近いお前のような剣を使う剣士は火力で押せるわけでもないしな…」

女剣士「…う」


マスター「剣士っていうのは、あらゆる事象を覚えてこそ。それで一人前なんだよ」

女剣士「…」

マスター「そりゃ歴史には物理しか持たない有名な剣士はいる。だが、ほんの一握りの人間しか俺は知らん」


女剣士「じゃ…じゃあ、私が…一人前の剣士を目指しても…無理だってことなんです…か?」ブルッ

389 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/09 19:21:03 S/lgixMI 316/556

 
マスター「そうは思わない。…お前に言わなかった理由として、それを克服できる力があると信じたからだ」

女剣士「なぜ…信じられるんですか…」


マスター「努力が出来るところ。そして、お前の生まれ持った戦いの素質だ」

女剣士「努力と…戦いの素質…?」

マスター「少なくとも俺は、3つスキルの基本をそこまで完璧にこなす人間を見たことがない。その才能は天からの贈り物だろう」

女剣士「…」

マスター「逆に魔法が使えないのは重い事だ。だが…お前はそれに動じずに今日まで戦い抜いた気力がある」

女剣士「…はい」

390 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/09 19:21:48 S/lgixMI 317/556

マスター「…努力と素質。お前はそのままでも充分にゆっくりと前を目指せれば良いと…思っていた」

女剣士「思っていた…?」


マスター「ゆっくりと、独自の戦いや剣技も教えたかった…。だが、そうもいかなくなっただろう」

女剣士「あ…お店が燃えた事ですか…」

マスター「そうだ。実践頼りが多くなるであろう今、悠長に構えてはいられなくなったんだ」

女剣士「…」

マスター「…俺と一緒にいる時点でそれなりの危険はある」

女剣士「…私が西ギルド員を吹っ飛ばした事も要因ですよね…」

391 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/09 19:22:19 S/lgixMI 318/556

 
マスター「そうだ。逃げろと言ったが、お前は俺から教えを請うと言った」

マスター「だから…お前の不得意なエレメンタルの相手の豪火山を目指して進んできたんだ」

マスター「苦手な相手は、何よりも成長の糧となる。俺を尊敬した弟子を無碍には出来んよ」


女剣士「…そうだったんですか」

マスター「…黙ってた事は悪かった」

392 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/09 19:22:53 S/lgixMI 319/556

 
女剣士「じゃあ…私は、これからどうするべきでしょうか」

マスター「だからこそ…この錬金術屋に来たんだ。お前の成長のきっかけとなるようにな」ニカッ

女剣士「!」


女錬金師「…はは、参ったねぇ。こりゃ責任重大じゃないか」

マスター「頼むぞ」


女錬金師「私に任せな!頼まれた!」

女錬金師「…とは言いたいんだけど、どんなに考えても残念ながら本当に浮かばないんだよ…」ハァ


女剣士「…っ」


マスター「やはり魔力の補給薬のガブ飲みしか道はないか?」

女錬金師「冗談だよそんな事!中毒になって倒れてしまうよ!」

マスター「わかってるよ。俺だって冗談でいったんだ」

393 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/09 19:23:46 S/lgixMI 320/556

 
女錬金師「んー…」

マスター「…」


女剣士「あ…あの」

マスター「ん?」

女剣士「私のために、そこまで考えてくれて有難うございました。もう…大丈夫です」

マスター「何だって?」

女剣士「さっき言われた通り、努力で槍のような一点集中の気力だとか、それを剣で磨いてみたいと思います」

マスター「…」

女剣士「確かに魔法は苦手ですが、それを克服出来るように努力します!」

394 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/09 19:25:07 S/lgixMI 321/556

 
女錬金師「ゴメンね…力になれなくて」

女剣士「いえ。私自身、諦めませんから。実践を通して、成長したいと思います」

マスター「…」


女剣士「炎のエレメンタルがなんですか。魔法が使えないからって何ですか」

女剣士「ズタボロだろうが、きっとその中で活路を見出して見せます!」


マスター「…」

女錬金師「…そうかい。すまなかったね」

女剣士「謝らないでください。私のことを考えてくれて、嬉しかったです」

395 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/09 19:25:44 S/lgixMI 322/556

 
マスター「…やはり、ダメか」

マスター「せめて、一瞬の属性付与だとかをイメージできれば何とかなったと思うんだが…」


女錬金師「近くに強力な魔法使いでもいれば、魔力枯渇も問題なく練習できたと思うんだけどね」

マスター「…魔力か…。んーむ…」


女錬金師「…魔力の維持が問題か…」

女錬金師「魔法…、維持…維持か…。うーん、属性付与…。維持…魔法…」

女錬金師「…!」

女錬金師「…え?あ…あっ!も…もしかして!」


マスター「ん?」


女錬金師「ちょ、ちょっと待ってておくれ!」ダッ

マスター「お…おい!」

404 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/10 19:05:07 IrVKJRZA 323/556

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ガサガサガサッ…ガランガラン!!!ドサドサッ!!


女錬金師「…あった!」

マスター「何だ?」

女剣士「?」


女錬金師「これ…何だかわかるかい?」トプンッ

マスター「青い…水か?」

女錬金師「ふっふーん。エレメンタル元素だよ」

マスター「…エレメンタル元素?」

405 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/10 19:05:44 IrVKJRZA 324/556

 
女錬金師「そう。属性着火ライターに充填する練成されたオイルの前のモノだよ!」

マスター「ややこしいな。わかりやすく言え」

女錬金師「簡単にいえば、魔法を具現化して、そのエネルギーだけ抽出したもんさ」

マスター「なるほど」


女剣士「属性着火ライター…?」

マスター「武器に属性を付与するライターのことだ。だがお前は維持ができないのが問題なんだ」

女剣士「な…なるほど」


女錬金師「とりあえず、普通はこれを練成してライターに注入する」

女錬金師「そしてライター内部の魔石と弾けて武器に属性として付与出来るんだ」


マスター「で…そのエレメンタル元素がどうしたんだ?」

女錬金師「これをさ…女剣士ちゃん、ちょっとおいで」

女剣士「は、はい」

406 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/10 19:06:17 IrVKJRZA 325/556

 
女錬金師「手を出して…そう。一滴だけ…」

…ポタッ


女剣士「…!」パァッ!!

マスター「!」

パァァ…ジャバァッ!!!


女剣士「わわっ!?手から…み、水が!」

マスター「今のは…水魔法!」

女錬金師「…」ニコッ

407 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/10 19:06:58 IrVKJRZA 326/556

 
女剣士「な、何ですか今の!」アワワ

女錬金師「…今の感覚、どうだった?」

女剣士「ちょ、ちょっと体の芯がくすぐったかったです。今のは一体…?」

女錬金師「今の感覚が、水魔法を練る感覚さ」

女剣士「!」


マスター「どういう事だ?」

女錬金師「火魔法は使えるんだろう?だったら、他の魔法だって使えない訳じゃないと思ったんだ」

マスター「だ、だが人によって属性魔法には良し悪しがあると…。コイツの親も使えないんだぞ?」

408 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/10 19:08:15 IrVKJRZA 327/556

 
女錬金師「基本の一属性の魔法が使えれば、基本的には他の属性の魔法も練りはできるはずなんだよ…」

女錬金師「親は苦手だっただけで、本当ならきっかけがあれば魔法自体は使えたんだと思うよ」

女錬金師「そもそも使えないなら、このエレメンタル元素は零れるだけ。さっきみたく魔法は発動しないのさ」


マスター「…なるほど、水魔法自体は使えなくはないわけか。だが…少ない魔力はどうにもならんぞ」

女錬金師「だから…一滴だけ与えたのさ」

マスター「何?」

女錬金師「…」ニヤニヤ

マスター「だからどういうことだよ」イラッ


女錬金師「確かに属性魔法の維持は魔力が要る。だが…一瞬だけ放てれば?」

マスター「そ、そうか!無理に維持させる必要はない…か…」

409 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/10 19:09:10 IrVKJRZA 328/556

 
女錬金師「アンタもバカだねぇ。感覚を覚えさせるってのは、そういう風に使えるようにさせるって事なんだよ」

マスター「くっ…、あれだけの説明で分かるか!」

女錬金師「ふふん」


女剣士「あ…あの…それで私は…」

女錬金師「あ、そうそう。えーとね…ほら、コレ」スッ

女剣士「これは…」


女錬金師「青いのが水、緑が風のエレメンタル元素。毎日一滴ずつ手に垂らすんだ」

女剣士「そうすると…?」

女錬金師「一瞬だけ魔法が具現化する。そして、その感覚は体に馴染んでいくはずさ」

女剣士「馴染んでいく…」

410 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/10 19:10:16 IrVKJRZA 329/556

 
女錬金師「慣れれば元素液がなくてもその魔法が使えるようになるはずだ」

女錬金師「そして、一瞬の発動の技術は自然と体に刷り込まれる」


女剣士「…!」

女錬金師「それを応用して武器に一瞬の付与をさせれば、少ない魔力で属性攻撃が可能になるよ」

女剣士「ほ、本当ですか!」


女錬金師「魔法の感覚をつかみ、それを武器に付与する。…長い鍛錬が必要になりそうだけどね」

女剣士「努力あるのみってことですか」

女錬金師「しかもこの方法も確実じゃないけど…やってみる価値はあると思うけどね」

女剣士「やります。やらせてください!」

411 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/10 19:11:29 IrVKJRZA 330/556

 
女錬金師「そういうと思ったよ。じゃあ、この元素液…これはアタシからのプレゼントだ」ニコッ

女剣士「えっ!でも…高そうですよこれ」

女錬金師「マスターの弟子はアタシの弟子も一緒さ。遠慮なく受け取りな」

女剣士「…う、うーん」


マスター「女剣士。冒険者たるもの…受け取る心得を教えただろう」

女剣士「あっ」

女錬金師「…ふふ」


女剣士「じゃあ…ありがたく…いただきますね」ペコッ

女錬金師「うん、素直に受け取ってよろしい!」

412 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/10 19:12:02 IrVKJRZA 331/556

 
マスター「…感謝するぞ、女錬金師」

女錬金師「いいっていいって!」


マスター「…時間は必要になるが、何とか解決の糸口が見えたようで良かったな」

女剣士「はいっ♪」

マスター「魔法を習得してきたら、完全な属性付与はゆっくりかつ確実に教えてやる。焦るなよ」

女剣士「わかりました!」


女錬金師「ふふ…良い弟子をもったじゃないか」

マスター「店員だが…まぁ、本当に弟子みたいなもんかもな」

女剣士「弟子ですね♪」

413 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/10 19:13:14 IrVKJRZA 332/556

 
マスター「さて、のんびりしてる暇もない。そろそろ豪火山に向かって出発するぞ」

女剣士「あ、はい!」


マスター「それじゃ女錬金師、俺らは行くとするよ。また用事が出来たら寄りに来る」

女錬金師「はいよ。いつでも待ってるよ」

女剣士「ありがとうございましたっ」


マスター「…じゃっ」

ガチャッ…


女錬金師「…」

女錬金師「…!」

女錬金師「女剣士ちゃん!ちょっと待って!」ボソボソ

414 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/10 19:13:58 IrVKJRZA 333/556

 
女剣士「はい?」


女錬金師「えーとね…」ゴソゴソ

ゴソ…ゴソゴソゴソ…

女錬金師「あとでこの箱開けな。マスターには内緒でね」


女剣士「な、何ですかこれ?」

女錬金師「いいものだよ。説明書は別途ついてるけど、必要になるときが絶対あるから、持っていきな!」

女剣士「…は、はい?」

415 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/10 19:14:44 IrVKJRZA 334/556

 
マスター「ん…何やってる!遠いからな、日が暮れる前に1つの山を越すぞ!」


女剣士「あ…い、今行きます!」

女剣士「それじゃ、失礼します!色々お世話になりました~!」ダッ

ガチャッ…バタンッ…


女錬金師「ばいばーい♪」

女錬金師「ふふ…行っちゃったか」

女錬金師「がんばるんだよ。あの男が、ここまで入れ込む冒険者だ…。私も応援するからね」


女錬金師「…今月もこれで赤字か。支払いどーしよ」ハァ

416 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/10 19:15:31 IrVKJRZA 335/556

 
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・


417 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/10 19:17:00 IrVKJRZA 336/556

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 夕方・山道 】


ザッザッザッザ…ピタッ

マスター「ふむ…」
 
カァ…カァ…!!

女剣士「…日が暮れてきましたね」

マスター「今日はここで一泊だ。道に迷う前にキャンプを張るぞ」

女剣士「キャンプですか?」

418 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/10 19:17:53 IrVKJRZA 337/556

 
マスター「バックパックに入ってるので準備はできる。分かるか?」

女剣士「はい。テントはえーと…」ゴソゴソ


マスター「その間に俺は火をたてよう。食料はあるし、俺が腕によりをかけて作ろう」

女剣士「わーい!」

マスター「ったく…本当に食べ物に目がないやつだな」フゥ

女剣士「し…趣味なんですから放っといてくださいよぉ!」

マスター「食道楽って感じだな。さ、それよりテントきちんと張ってくれよ」

女剣士「任せてくださいっ!」

419 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/10 19:18:23 IrVKJRZA 338/556

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 30分後 】

ホウ…ホウ…
 
女剣士「やっとテント設置し終わったぁ!」

マスター「えらい時間かかったな…ご苦労さん」

女剣士「このテントの打ち込む部分…抜けるんですもん」
 
 
マスター「ビスか。慣れるまではよく抜けるからな」

女剣士「でもなんとか出来ました。手がドロドロです」

420 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/10 19:18:54 IrVKJRZA 339/556

 
マスター「…手、出せ」

女剣士「は、はい」スッ

マスター「…」

ゴソゴソ…スッ

マスター「感覚の鍛錬がてら、泥を洗い流そう。ほら」

…ポタッ


女剣士「…んっ」ピクッ

パァァ!!…ジャバァ…

女剣士「…よかった、上手く水が具現化された…」ホッ

421 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/10 19:19:30 IrVKJRZA 340/556

 
マスター「どんどん覚えろよ。その感覚1つ1つがレベルアップに繋がるからな」

女剣士「はいっ♪」


マスター「さて、こっちに座れ」

女剣士「あ、はい」

チョコチョコ…ストンッ


マスター「夜は少し冷えるからな。暖を取ることは大事だぞ」

女剣士「…あったまります」ホクホク

422 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/10 19:20:02 IrVKJRZA 341/556

 
ボォォ…パチパチ…

マスター「…もうすぐ鍋が出来る。少しだけ待ってろ」

女剣士「…はい」

マスター「…」


ボォ…パチッ!!グツ…グツグツ…

女剣士「…」

マスター「…」

女剣士「…」

マスター「…」

423 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/10 19:20:38 IrVKJRZA 342/556

 
女剣士「…マスターさん」

マスター「ん?」

女剣士「お店…燃えちゃって…。やっぱり哀しいですよね」

マスター「当たり前のことを聞いてどうするんだ」

女剣士「あうっ…すいません…」


マスター「…」

女剣士「…」

マスター「まぁ今はちょっと哀しくもあり…常連方には悪いが、少し嬉しくもある」

女剣士「お店が焼けたことがですか?」

424 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/10 19:21:15 IrVKJRZA 343/556

 
マスター「こうして火を"冒険者同士"で組む事は、何だかんだ言って楽しいんだ」

女剣士「マスターさん…」

マスター「…」フッ


女剣士「…えへへ」

マスター「…」

女剣士「…」

マスター「…」

425 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/10 19:21:51 IrVKJRZA 344/556

 
女剣士「…あっ!」

マスター「ん?」

女剣士「今、"冒険者同士"って!」

マスター「何…?い、言ってないぞ」

女剣士「言いましたよ!」

マスター「言ってない、気のせいだ」

女剣士「言ったー!」


マスター「…ほら、鍋がもう出来る。取り皿はあるからサクっと食べろ」ゴソゴソ

女剣士「誤魔化すんですかぁ!」

マスター「…いつまでも言うなら食わせないぞこらぁー!」

426 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/10 19:22:28 IrVKJRZA 345/556

 
女剣士「あーっ、食べ物を盾にするなんて酷い!」

マスター「お前が変なことを言うからだろうが!」

女剣士「言ったのを認めてくださいよぉ!」

マスター「き…気のせいだ」

女剣士「…むぅ」

マスター「ほら早く食べるぞ」イソイソ


女剣士(…やっぱり、心の奥底ではまだまだマスターさんは冒険者なんだなぁ)クスッ


マスター「…おい」

女剣士「はい?」

427 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/10 19:23:02 IrVKJRZA 346/556

 
マスター「今、なんで俺のほう見てクスっと笑った!」

女剣士「何でもありませーん!」

マスター「くっ…、さっさと食べてさっさと寝る!明日は早くから山を越えるからな!」

女剣士「はーいっ♪」


マスター「ったく…」ブツブツ


女剣士(何を恥ずかしがってるんでしょうか…マスターさんもまだまだ冒険者だと思うんですよね)

女剣士(まぁ…今は食べて、明日に向けて力をつけよっと!)

428 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/10 19:23:38 IrVKJRZA 347/556

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
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・・・・
・・・
・・


444 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/15 19:03:27 4b86t3qY 348/556

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 4日後・豪火山付近の山道 】


ザッザッザッザ…

女剣士「…ふぅ、ふぅ」ゴシゴシ

マスター「大丈夫か?水、飲め」

女剣士「頂きます…」グビッ


マスター「裏山道は思ったより酷いな…、まるで舗装されてないか…」

445 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/15 19:04:06 4b86t3qY 349/556

 
女剣士「表参道もあるんですか…?」

マスター「もちろん。だが短縮しようとしてこっちの道を進んできたんだが…」

女剣士「日に日に温度が上がってって…、凄い暑いですねこの辺…」タラッ

マスター「だな…少し失敗だったか」

女剣士「どうしてこんなに暑いんですか…?」ハァハァ


マスター「豪火山の山脈付近は、地下にあるマグマ群で地上を熱してるんだ。地熱ってやつだな」

女剣士「へ、へぇ…」

マスター「所々湯気が出てるのが地熱の塊だ。この辺一帯は暑いわけだな」

女剣士「そ…そうなんですねぇ。マスターは平気そうですが…」

446 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/15 19:04:45 4b86t3qY 350/556

 
マスター「ん?あぁ、俺はこのくらいはな。"熱い"くらいになったら抵抗魔法もかけるんだろうが」

女剣士「つまり…今は余裕ってことですか…」フラフラ

マスター「ん、まぁな。お前…相当倒れそうだが…大丈夫か?」


女剣士「当たり前です…冒険者たるもの…!これくらいでヘバっては…!」

マスター「そうだな…って」


女剣士「っ~…」フラッ

マスター「お、おい!」バッ

…ガシッ!!

447 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/15 19:05:23 4b86t3qY 351/556

 
女剣士「…」ダラン


マスター(…この暑さに負けてしまったか)

マスター(すまんが、お前の体力を知るには追い込むしかないんだ…悪く思わないでくれ)

マスター(死なない為にも、限界を知り、伸ばす事が俺たちには必須だからな…)


マスター「さて、ここから町も近い。バッグを前に回して…背負って行くとするか…」

448 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/15 19:05:56 4b86t3qY 352/556

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 ふもとの町 】


ヒヤッ…

女剣士「ん…冷たい」

女剣士「…」

女剣士「…えっ!」ガバッ


マスター「ん、気づいたか」

女剣士「あれ…ここは…」

449 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/15 19:06:41 4b86t3qY 353/556

 
マスター「町の宿。もうとっくに着いたぞ」

女剣士「あれれ…。わ、私…」

マスター「途中でぶったおれたから運んだんだ。丸一日寝てたんだぜ」

女剣士「えぇぇっ!ご、ごめんなさい!」

マスター「まぁ考えがあった事だし、別に気にするな」

女剣士「は…はぁ?」


マスター「んなことより、こっちのギルドに顔出しに行くぞ。仕事ないか聞くからな」

女剣士「私もいいんですか?」

マスター「何言ってる。お前も行って、クエストの依頼とか見たほうがいいだろう」

女剣士「はい~♪」

450 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/15 19:07:11 4b86t3qY 354/556

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 町の中 】


…ガヤガヤ

女剣士「わぁ~人が多いですねえ。それに町並みが独特です」

マスター「温泉街って名目で再始動した町だからな。雰囲気も穏やかなものがある」

女剣士「豪火山の目の前なのに、暖かさも丁度いいですね?さっきみたいな暑さはないです」

マスター「だから町があるんだ。そこら中から熱気が噴出したら町なんか作れないだろう」

女剣士「う…そうですね」

451 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/15 19:07:57 4b86t3qY 355/556

 
マスター「俺らが泊まった宿にも温泉が付いてるからな。あとで入るといい」

女剣士「本当ですかっ!やったー!」

マスター「…うむ」

女剣士「それにしても…」キョロッ


ワイワイ…ガヤガヤ…


女剣士「さっきから歩いて行く人が持ってる茶色い卵みたいなのは…なんでしょう」ジュルリ

マスター「温泉饅頭だな」

女剣士「…」ジュルリ

マスター「…食べるか?」

女剣士「いえいえ、そんな悪いですよぉ!」

452 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/15 19:08:37 4b86t3qY 356/556

 
マスター「じゃあ、いらないんだな」プイッ

女剣士「あぁっ!うそ、うそです!食べたいですお願いします!」

マスター「…そこに売ってるから、買って来い。ほら、お金だ」スッ

女剣士「ありがとうございますー♪」ダッ

ダダダダダッ…


マスター「早っ」

453 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/15 19:09:11 4b86t3qY 357/556

 
女剣士「お饅頭1つくーださい!」

販売員「お、いらっしゃいませー。1個150ゴールド、5個で600ゴールドで1個分お得だよ!」

女剣士「…」

女剣士「5個で」


販売員「…、10個なら1200ゴールドで2個分お得だ!」

女剣士「…」

女剣士「じゅ…10個入りで」


販売員「毎度ありがとー!」

454 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/15 19:09:43 4b86t3qY 358/556

 
女剣士「お金と…はい、ありがとうございます」ガサガサ

販売員「またごひいきにー!」


タッタッタッタ…

女剣士「マスターさん!買えましたー!」

マスター「お、そうか…って、随分…袋がでかくないか」

女剣士「ま…マスターさんの分もと思いまして。ね?」

マスター「そうか悪いな。じゃあ1個もらおうか」

女剣士「どうぞっ!」スッ

455 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/15 19:10:20 4b86t3qY 359/556

 
マスター「んむ…」モグッ

女剣士「…じゃあ私も」パクッ

…モグモグ


女剣士「…!」パァァ

マスター「相変わらず美味いな」

女剣士「あんこがとーっても甘くて美味しいですねぇ♪」

マスター「温泉饅頭…もとい、薄皮饅頭は苦手な人が多いんだが」

女剣士「あんこたっぷりなほうが美味しいんですけどね?」

456 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/15 19:11:38 4b86t3qY 360/556

 
マスター「んむ…とりあえずギルドに向かうぞ」モグモグ

女剣士「はーいっ!」モグモグ


トコトコトコトコ…

457 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/15 19:12:32 4b86t3qY 361/556

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 豪火山ギルド 】

…ガヤガヤ

女剣士「ここが豪火山のギルドですか?随分小さいんですね」


マスター「確かに小規模だが…」

マスター「そりゃお前は中央にある世界でも有数な巨大ギルド見たからな…。余計に小さく感じるんだ」


女剣士「…かもしれませんねぇ」

マスター「それにこの辺にはココしかないんでな。貴重な存在っちゃ貴重な存在だ」

女剣士「そうなんですね」

458 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/15 19:13:47 4b86t3qY 362/556

 
マスター「えーと…そんなに混んでないし受付にさっさと行くか」

女剣士「この間みたいな横入りはしないんですね」クス

マスター「ありゃ色々あっただろうが!」

女剣士「ですねっ」


マスター「さて、こっちだ」

スタスタ…

459 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/15 19:14:26 4b86t3qY 363/556

 
マスター「受付サン」

受付「はい」

マスター「今、この辺で一般で受付してる依頼はあるか?」

受付「えーと…少々お待ちを」ゴソゴソ


女剣士「そういえば、一般とかの概念はあるんですね」

マスター「ギルドに所属してない人とかの一般冒険者でもクエスト自体は受ける事はできるんだ」

女剣士「へえ~」

マスター「まぁギルドメンバーが厄介だと思って無視したりして、放っとかれたやつだがな」

女剣士「どんなのがあるんだろぉ」ワクワク

460 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/15 19:15:10 4b86t3qY 364/556

 
受付「えーと、よろしいですか」

マスター「うむ」


受付「最初に紹介出来るのは町内の掃除ですね」

マスター「却下」

受付「次は…、ギルドの加入紹介です。直接雇用なので賃金がいいですよ」

マスター「却下」

受付「では、猫の捜索などいかがでしょうか」

マスター「却下」

461 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/15 19:15:54 4b86t3qY 365/556

 
受付「では、今のところは紹介できるのはありませんねぇ…」

マスター「…エレメンタル討伐とかはないのか?数年前まで出してたはずだが」

受付「近年は冒険者も増え、当ギルドの基本討伐にまわされてます」

マスター「何…、豪火山付近の魔物討伐の依頼ってのは何もないのか?」

受付「ですね、山脈に関連するクエストの大半はメンバーで処理させていただいています」

マスター「そうか…」クルッ


受付「あれ、お帰りですか?クエストの受注はよろしいのでしょうか」

マスター「ちょっと目に付くものがなかった。また来れたらくるよ」

受付「わかりました」

462 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/15 19:16:39 4b86t3qY 366/556

 
トコトコトコトコ…

マスター「…はぁ」

女剣士「何もありませんでしたねえ」

マスター「そうだな、うーん…」

女剣士「勝手にエレメンタルの討伐を行うのは違法なんですか?」

マスター「違法じゃないが、この辺はあのギルドが動いてる。いざこざになるからな…」

女剣士「そうなんですかぁ…残念です」


マスター「仕方ない、豪火山のカルデラ湖でものんびり観光してくか」

女剣士「それは嬉しいですけど、戦えなかったのは少し残念ですね」


マスター「…」

マスター「山脈の途中には、小さな村もある。その辺で休憩しながらとかやるか?」

463 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/15 19:17:35 4b86t3qY 367/556

 
女剣士「あ、それでも充分ですよ!」

マスター「本当なら設備もあるこの辺から始めるのが良かったんだが…ま、仕方ないことだ」

女剣士「気にしませんよ、戦える場が設けてくれるだけで嬉しいことですから」

マスター「ふっ…じゃあ、観光に行くとするか」


女剣士「はーいっ!」

464 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/15 19:18:56 4b86t3qY 368/556

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 カルデラ湖への山道 】

ザッザッザッザ…

女剣士「…」

マスター「観光客が多いな。昔来た時より増えている気がするぞ」


女剣士「今は賑わってますけど…昔、この山道も人と魔物との戦いで…血路を開いたんですかねえ」

マスター「そうだろうな。当時の人がいたら、よっぽど平和で驚くかもしれん」

女剣士「その時代に生まれてたら、生き残る自信はないです…」


マスター「俺だってそうだ。だがまだまだ人に迷惑をかける魔物はいるからな」

マスター「例え弱くても、俺らみたいなのは必要なんだよ」

女剣士「…ですね!」

465 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/15 19:19:31 4b86t3qY 369/556

 
ザッザッザ…

マスター「この山道をまっすぐ行くとカルデラ湖なんだが…」

女剣士「大通りっぽいですしね」

マスター「そこに脇道があるだろ?」

女剣士「はい」

マスター「昔はそこが遠回りのカルデラ湖への道だったんだ。今は冒険者しか通らないがな」


女剣士「ってことは、さっき言ってたこの辺のギルドメンバーの?」

マスター「今はそうなるな。足跡もあるし、つい最近エレメンタルの討伐に出発したんじゃないか」

女剣士「むむぅ…羨ましいですね」

466 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/15 19:20:41 4b86t3qY 370/556

 
マスター「…」ククッ

女剣士「…?」

マスター「お前もよっぽどだな」


女剣士「何で笑ったんですか?」

マスター「自分が危険な目に合うかもしれないのに、その相手と戦えないで悔しいとか羨ましいとかな」

女剣士「冒険者なら当たり前です!」

マスター「よっぽどお前は戦士の血が流れてるらしい。早死にすんなよ」コツン

女剣士「あいたっ!…へへ」

467 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/15 19:22:22 4b86t3qY 371/556

 
…ザワ

マスター「…おや?」

ザワザワ…ガヤガヤ…

女剣士「どうしました?」

マスター「…見ろ。下から誰か登ってくるぞ」

女剣士「え?」クルッ


マスター「…ありゃ豪火山のギルドメンバーだな。火炎のマークが入ってるだろ?」

女剣士「確かに登ってきてますね。ちょっと…慌ててる?」


マスター「こりゃ何かあったな…」

女剣士「どうしたんでしょうか?」


マスター「ふむ…おーい!」

468 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/15 19:23:09 4b86t3qY 372/556

 
ギルド員「…何だ?俺たちは急いでるんだ」

マスター「その様子だと何かあったな。教えてくれないか」

ギルド員「一般人相手に話しをしてる暇はない、どいてくれ」


マスター「…」スッ

クルクルクル…ドスンッ!!!


ギルド員「!」


マスター「この大剣を見ても一般人だと?」

ギルド員「…他所の冒険者か」

469 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/15 19:23:57 4b86t3qY 373/556

 
マスター「見た所、3人しかいないようだが人手不足じゃないか?」

マスター「…良ければ手伝わせて欲しいんだが」

女剣士「!」


ギルド員「他所の奴に手伝わせる事はない、お前ら行くぞ!」

ギルド員「はい」

ギルド員「わかりました」

ダッ…タッタッタッタッタ…


女剣士「あっ…行っちゃいましたね…」

470 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/15 19:25:37 4b86t3qY 374/556

 
マスター「…ふ」

女剣士「?」

マスター「面白そうなことだ、俺らが行って足手まといになるという事はあるまい」ニヤッ

女剣士「ま、まさか」


マスター「…着いて行くぞ!」ダッ

女剣士「あっ、待ってくださいよぉ!」ダッ


女剣士(なんか、マスターさん…急に子供っぽくなっちゃった気がします)クスッ


タッタッタッタッタ…

………

……



471 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/15 19:27:42 4b86t3qY 375/556

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ザッザッザッザ…

女剣士「とはいえ…本当にこんなの着いてって大丈夫なんですか?」アセアセ

マスター「大丈夫だろ。たまたま道に迷いましたとか言えばいい」

女剣士(それはさすがに通らない気がしますよ!)


マスター「…むっ」ピタッ

女剣士「どうしました?」

472 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/15 19:28:45 4b86t3qY 376/556

 
マスター「見ろ、あいつら…武器を用意し始めた」


ギルド員「…準備しろ」スチャッ

ギルド員「あぁ」スチャッ

ギルド員「余計な奴のせいで時間食ったな。急ごう」スチャッ


マスター「…」

女剣士「やっぱり何か討伐するみたいですね」

マスター「大方、他の面子の救助っていったところじゃないか」

女剣士「救助ですか?」

473 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/15 19:29:26 4b86t3qY 377/556

 
マスター「ギルド内でのいざこざは、他所の奴には手伝って欲しくないもんなんだ」

女剣士「人手が欲しかったら素直に言えばいいのに…」

マスター「プライドがあるんだろうよ。気持ちは分からなくはないが」

女剣士「う~ん…」


マスター「それに簡単な救助なのかもしれん。それなら人手もいらんかもな」

マスター「まぁ今は着いてくぞ」


女剣士「あ、はいっ」


ザッザッザ…

474 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/15 19:30:09 4b86t3qY 378/556

 
マスター「…」コソコソ

女剣士「…」コソコソ


マスター「…お」

女剣士「あっ!」


エレメンタル『…』ゴォォ


マスター「見ろ…あれが火のエレメンタルだ。真っ赤に燃え上がってるだろ?」

女剣士「精霊の一種でしたね。初めて見たけど綺麗ですねぇ…」

マスター「とはいえ、触れただけで燃え上がる危険なヤツだ。処理はせんとな」

女剣士「あのギルド員さんたち、剣士と騎士と魔法使いですね。剣士の動き見ないとっ」

マスター「属性付与の戦い方を見るといい」

女剣士「はいっ」

475 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/15 19:30:51 4b86t3qY 379/556

 
ギルド員「…エレメンタル如き、ジャマだ」スチャッ

ギルド員「水炎装っ!」ボワッ!!


女剣士「あれが水の属性付与…、蒼い炎…」


ギルド員「はぁっ!」ブンッ

…ズシャアッ!!

エレメンタル『!』

ボボボ…ボフンッ…


女剣士「消えた!…倒したんですか?」

476 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/15 19:31:44 4b86t3qY 380/556

 
マスター「エレメンタルは下級精霊。切り込むだけで基本的に倒せる」

女剣士「…」

マスター「…どうした?」

女剣士「私、その下級精霊にも勝てないんですよね。ちょっとだけ…悲しくなっちゃいました」

マスター「…焦るなって言っただろ。何のために、今ここに俺がいると思ってる?」

女剣士「えへへ…ですよね!」


ザワザワ…

ギルド員「…もう少し上だな。避難小屋あたりか?」
 
ギルド員「確かその辺だ。…俺らに対処できるといいんスけどね」

ギルド員「あまり聞かない魔物だ…、用心に越したことはないんでしょうが」

477 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/15 19:32:21 4b86t3qY 381/556

 
マスター「あまり聞かない魔物…?」

女剣士「そんなのがいるんですか?」

マスター「表に出てこないヤツは多いが、この辺で地元の面子が聞かない魔物とは…」

女剣士「この辺にはどんなのがいるんですか?」


マスター「俺が知ってるのはエレメンタル、その上位のウィスプくらいだな」

女剣士「私にとっては十分に脅威ですね…」アハハ

マスター「それにしても聞かない魔物か…面白そうじゃないか」

女剣士「お…面白そうですか」


マスター「…ワクワクしないか?こういうの」

女剣士「確かに、ちょっと楽しくはありますけど…」

478 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/15 19:32:52 4b86t3qY 382/556

 
マスター「こういうのも楽しめるようになってこそ一人前だぞ!」

女剣士「そ、そうですかねえ?」

マスター「今に分かるさ…行くぞ」ダッ


女剣士「あ、はいっ!」ダッ

479 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/15 19:33:34 4b86t3qY 383/556

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 避難小屋 】
 
ジリジリ…

女剣士「う…わ、頂上付近まで来ると暑いですね」タラッ

マスター「正規ルートじゃない分、地熱が多いんだ。大丈夫か?」

女剣士「この間と比べたら大分楽です」

マスター「それならいいんだ」


ガヤガヤ…

女剣士「…あ、さっきの人たちがあそこに」

480 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/15 19:34:05 4b86t3qY 384/556

 
マスター「あそこの小屋が、避難小屋だな。数人のギルドメンバーも待機しているようだが…」

女剣士「単に集合して、珍しい魔物を団体で討伐するとかじゃないんですか?」

マスター「さっき俺が、遠まわしに問題があったな?と聞いた時に違うとは言わなかっただろ?」

女剣士「あ、そういえばそうですね」

マスター「少なくとも、あいつらにとって想定外の出来事があったのは間違いない」

女剣士「一体何があったんでしょうか」

マスター「シッ…耳を澄ませてみろ。話が聞こえる」


…ザワザワ
 
ギルド員「…本当に出たのか?」

ギルド員「あぁ、新人のメンバーも数人やられた。ココまで何とか退避してきたんだ」

481 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/15 19:34:52 4b86t3qY 385/556

 
女剣士「…?」

マスター「ほう…」


ギルド員「観光客に避難指示はいいのか?」

ギルド員「出してないぞ。伝令役にそこまで聞いてない」

ギルド員「…俺らで止められるか?というか倒せるのか?」

ギルド員「分からん。だがやるしかないだろう…」


女剣士「一体、何の話でしょうね」

マスター「恐らく、新人の研修中に強力な魔物が出たんだ。あいつらでも手を焼く程のな」

女剣士「えっ!」

482 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/15 19:35:22 4b86t3qY 386/556

 
マスター「地元のメンバーで手を焼くっていうのは相当だぞ」

女剣士「想定外…ってことですね」

マスター「まだ詳細が分からんが…少し話を聞かせてもらおう」ジッ


ギルド員「こっちの数は8。人が出払ってなければ…」

ギルド員「…一番の実力者のギルドマスターさんさえいればな」

ギルド員「中央の東と西の話し合いに参加だろ?そんなのより人を救う方を優先してほしいぜ…」


女剣士「…」

マスター「飛び火…ってやつか。だが…」

女剣士「?」

マスター「これならいけるぞ、来い」ダッ

女剣士「えっ、大丈夫なんですか!」

483 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/15 19:36:01 4b86t3qY 387/556

 
…ガヤガヤ

ギルド員「…ん?」


ザッザッサッ゙…

マスター「さっきぶりだな」

ギルド員「あ!お前…着いて来たのか!?」

マスター「…話を聞かせてもらった。是非、俺らにも手伝わせて欲しいんだが」

ギルド員「他所に手伝わす事なんてねぇよ。俺らで何とかする」

マスター「…東西の話合いで実力者がいないんだろ?それは俺も聞き捨てならないんだよ」

ギルド員「ん…?お前、中央のギルドメンバーなのか?」

484 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/15 19:37:14 4b86t3qY 388/556

 
マスター「まぁそんなもんだ。それに中央東のマスターとは顔馴染みでな…是非手伝わせて欲しい」

女剣士(なるほど)


ギルド員「…ダメだ。俺らにも俺らのプライドがある」

マスター「プライド如きで倒せるか分からない相手に挑んで、一般人を危険に巻き込むんだな」

ギルド員「何ぃ!?」

マスター「俺なら市民を守る為に、受け取れる戦力は受け取るぜ?…人の為の冒険者ならな」

ギルド員「…っ」


マスター「どうだ?正論だろう?」

ギルド員「…ちっ」

485 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/15 19:38:03 4b86t3qY 389/556

 
マスター「決まった。参加させてもらう…足手まといにはならんよ」

女剣士「ですっ!」


ギルド員「あんた…名前は」

マスター「マスター、と呼んでくれ」

戦士長「…俺は戦士長。…ギルドリーダーだ」

マスター「そうか、宜しく」


女剣士「私は女剣士です、どうぞ宜しくお願いします」ペコッ

戦士長「女か…よろしく」

女剣士「…はい」

486 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/15 19:38:42 4b86t3qY 390/556

 
マスター「で、相手について知りたいんだが」

戦士長「…"スルト"、だ」

マスター「…何?」


戦士長「新人研修をしている所に、突然現れたんだ。研修官も含めて…やられたよ」

マスター「きょ…巨人族がここに?」

戦士長「…どこから現れたのかも分からん」


女剣士「…巨人族ですか」

マスター「魔物の中でも上位の一種だ」

女剣士「上位の魔物…」

487 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/15 19:40:04 4b86t3qY 391/556

 
戦士長「こっちの戦力は8人…いや、お前らを含めて10人か」

マスター「…巨人族との戦いの経験は?」

戦士長「俺も含め、全く未経験。そうじゃなかったら既に特攻してるさ」

マスター「…」

戦士長「あんたはあるのか?」

マスター「何度か。直接対峙で、数体の巨人族との対峙の経験もある」


戦士長「…本当か!」

マスター「これでも俺らは役不足だと思うか?」


女剣士(私は全く未経験なんですが)ブルブル

488 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/15 19:41:05 4b86t3qY 392/556

 
戦士長「…奴等に弱点はあるのか?」

マスター「巨人族は基本的に共通で物理に抵抗力がある。更に魔法は根本的に弾く程の防御だ」

戦士長「ち…力は」

マスター「見たまんまさ。頭を抜かれたらクリーンヒットも関係なく一撃で俺らは死ぬだろうな」

戦士長「なら、どうすればいい…」


マスター「関節…。奴らは唯一、膝や肘といった間接部分の防御が薄い」

戦士長「はは…そこを狙って切れと?」

マスター「出来ない事はない。それに今は…やるしかないんだろう?」

戦士長「…」

マスター「俺なら市民を救い、かつギルドメンバーも守らせてもらう立ち回りを指南するが」

戦士長「お、お前が俺らのパーティリーダーになると!?」

489 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/15 19:41:54 4b86t3qY 393/556

 
マスター「別に請け負わないなら、先にお前らだけで行けばいい。俺はこの女剣士と二人だけでやる」

マスター「だが勝手に突っ走って、死んだからって恨みはなしだぞ?」

マスター「俺としては、仲間が多ければ作戦も速やかに終わると思っただけだからな」


戦士長「ぐぬ…」

マスター「そもそも、この豪火山ギルドのせいで市民が死傷しました…なんて公表したくないだろう」

戦士長「…そ、それはそうだが…」

490 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/15 19:42:52 4b86t3qY 394/556


…ポンッ

ギルド員「…戦士長」

戦士長「ん?」


ギルド員「俺らは市民を守る為の団体でもあります。誰かが犠牲にならねば…なりませんよ」

戦士長「…」

ザワ…ガヤガヤ…

ギルド員「マスターさんが本当に戦ってくれるなら、指南してもらうべきです!」

ギルド員「そうですよ、僕らがただ突っ込んで犬死するくらいなら…教えていただきましょう」

ギルド員「プライドとか言ってる場合じゃないんですから!」

491 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/15 19:43:45 4b86t3qY 395/556

 
戦士長「…そ、そうだな…。何よりも市民を…守るべきだものな…」

戦士長「ま…マスター…さん、是非、助けていただきたい…」ペコッ


マスター「…決まったな。俺がこの戦闘…パーティを仕切らせてもらう」スチャッ


女剣士(か…かっこいい!!)

501 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:00:49 evGmHZsU 396/556

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ザッザッザ…

マスター「こっちの道で合ってるのか?随分、山奥で新人研修もやってるもんだ」

ギルド員「年々…魔物は少なくなってる…からな…」

マスター「…お前が先の巨人の襲われて生き残った奴なのか」

ギルド員「…あぁ」


マスター「どういう状況だったんだ」

502 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:01:25 evGmHZsU 397/556

 
ギルド員「エレメンタルの討伐をしていて…急に地鳴りが聞こえた…」

ギルド員「気がつけば…目の前に…スルトがいた…」

ギルド員「だが…、俺らの実力では…やられるばかり…で」ブルッ


マスター「逃げた面子はお前と、下に報告に行った伝令役だけ、か。しかし深くまで歩くな」


ギルド員「もうすぐ…そこだ…」

マスター「分かった。相手の姿が見えたら作戦は改めて考える」

戦士長「改めて!?リーダーになったんだ、そのくらいは先にきちんと考えて欲しいものだな!」


マスター「相手の姿を見えずに考えて何が作戦だ。なら、その巨人の特徴を教えてくれ」

戦士長「む…ぐ」

マスター「落ち着け。別に手柄をどうしようっていうんじゃない…人を救う気持ちは一緒のはずだぞ」

戦士長「…」

503 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:02:05 evGmHZsU 398/556

 
…ズドォン!!グラグラ

女剣士「きゃあっ!?」

マスター「む…揺れがひどいな。スルトが暴れているのか」

 
ギルド員「…マスター…さん、そこの岩陰だったはずです。覗いてみてください」

ギルド員「俺は…怖い…。後ろに下がる…」

マスター「ん…」

コソコソ…スッ


スルト『…グオオオッ!!』ブンッ

…ズドン!!!ミシミシミシ…

504 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:02:37 evGmHZsU 399/556

 
マスター「あいつがスルトか…真っ黒な容姿…珍しいタイプの巨人だな」

戦士長「ほう、あれが何とか出来ると?」コソッ

マスター「思ったよりも小さいな。まだ一般的なのと比べて戦いやすいと思うぞ」

戦士長「…」


…ポンポン

マスター「ん?」

ギルド員「さて…マスターサン、俺らは何をすればいい?」ニヤッ

マスター(む…えらい前向きなギルド員だな。この状況の中、やる気に満ち溢れてやがる)

505 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:03:25 evGmHZsU 400/556

 
ギルド員「マスターサン?」

マスター「あ、あぁ。見た所、あいつは打撃頼りだな。遠距離魔法も無理だろうし、主流の戦い方で行く」

ギルド員「というと、前衛と中衛、後衛でいいのか?」

マスター「それでいい。ええと…君の名前はなんだ?」


豪騎士「豪騎士だ。以後よろしくな」

マスター「豪火山の名前を入れてもらった騎士か…いい名前だな」

豪騎士「ふっ、ありがとう」

506 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:04:32 evGmHZsU 401/556

 
マスター「なら、戦士長と以下3人。豪騎士と以下3人でパーティを作ってくれ」

豪騎士「あんたらは?」

マスター「どうしても4人同士だと2人が余る。そこは俺と女剣士のペアで抑える」

豪騎士「分かった」


戦士長「…ふん、先ずはどうするつもりだ?」

マスター「まずは俺が先制して、相手のスキルを見極めよう」コキコキ

女剣士「一人で…危険じゃないですか?」

マスター「言っちゃ悪いだろうが、ココで一番動けるのは俺だと思うんでな」

507 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:05:06 evGmHZsU 402/556

 
戦士長「何を!?貴様のようなよそ者なんぞに!」グイッ

豪騎士「戦士長サン!今は内輪もめしてる場合じゃないでしょう!」

戦士長「ぐ…」


マスター「…」

マスター「気持ちは分かるが、実力と現実を受け入れてくれ」


戦士長「…くそっ」


豪騎士「マスターさん、悪かった。とりあえず相手の見極めは…お願いしたい」

マスター「期待して待ってろ」スチャッ

508 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:05:40 evGmHZsU 403/556

 
女剣士「気をつけて下さいね…」

マスター「この状況、前にもあったろ?力任せの相手っていうな」

女剣士「あ…東ギルドのですか!」

マスター「いつでも、どんな時でも鍛錬だと思って挑めばこういう場面でも過去が生かせる。覚えておけ」

女剣士「…はい!」


マスター「んじゃちょっくら見てくる。よっ!」ダッ

ダダダダダッ!!!


豪騎士「な…早っ!あの大剣を持ったままあの速度なんて!」

女剣士「さすがマスターさん!」

509 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:06:42 evGmHZsU 404/556

 
スルト『…ムッ!』

マスター「何で人里まで出てきたのかは知らんが…倒させて貰うぞ!」


スルト『グヌオオオッ!!!』クワッ

マスター「…ん?」

スルト『ハァッ!!』ブンッ

…ズドォン!!!ビリビリ…グオオオオッ!!!


マスター「うおっ!」

女剣士「えっ!?」

510 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:07:31 evGmHZsU 405/556

 
豪騎士「地面に打撃を当てて、そのまま衝撃波を繰り出した!?」


…ゴ゙ォォォォォ!!

マスター「…上手い技出すじゃねえか!」
 
 
女剣士「衝撃波が地面を滑りながらマスターさんに向かってく!」

マスター「ふ…衝撃波なんてな…弾き飛ばすだけだ!」ブンッ

ガキィンッ!!!ゴワッ!!!

スルト『!』


マスター「ぐ…」ビリビリ

511 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:08:13 evGmHZsU 406/556

 
女剣士「…良かった」ホッ

豪騎士「まさか打撃から衝撃波を出すなんて…」


マスター「地面を流す衝撃波か…予想以上の威力…。大きさもでかくて厄介か」

スルト『…』ニヤッ

マスター「…もう一度!突っ込ませて貰う!」ダッ


スルト『…グオオオッ!』ググッ


女剣士「また来ますよ!マスターさん!」

512 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:09:08 evGmHZsU 407/556

 
マスター「分かってるよ…相手がアレで出せるなら…!」ググッ

女剣士「えっ」


マスター「こっちも似たような動きで出せるんじゃねえか!?気合の一撃だしな!」ブンッ!!

スルト『グオオオアッ!!』ブンッ!!!


ズドォン!!!…ゴォォォォ!!!


豪騎士「ま、マスターさんも衝撃波を!」

女剣士「…!」

豪騎士「あの大剣の扱う力と、気合の練りが半端じゃなく上手いんだ…すげぇ…」

513 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:09:42 evGmHZsU 408/556

 
カッ…ドゴォン!!!グラグラ!!

マスター「ぬっ!」ビリビリ…

スルト『グヌッ…!』


パラパラ…

マスター「ちっ…相殺か。いけたと思ったんだが」

スルト『ヤルナ…』

マスター「…」

514 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:10:26 evGmHZsU 409/556

 
女剣士「しゃべ…るんですか!?」

豪騎士「人語の理解があるくらいは珍しくないさ」

女剣士「じゃあ、なんで私たちを襲ったか…聞きましょうよ!」

豪騎士「理解はあっても、知性は低い。ただただ食べる為だとか、そういうだけだよ」

女剣士「…っ」


マスター「…一旦退かせて貰うぞ」ダッ

スルト『ニガスカ!』ググッ…

マスター「ふんっ!」ブンッ!!

…ゴォォォ!!ドゴォン!!!

スルト『ヌアッ…!!』


マスター「…」

ダッ…タタタタタッ…

515 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:10:58 evGmHZsU 410/556

 
女剣士「マスターさん!」

ズザザ…

マスター「…ふぅ」

女剣士「ご苦労様です。見た感じ、対抗できそうですね」

マスター「思ったよりも実力自体は高くないが、巨人族特有の硬さは健在のようだ」


豪騎士「…マスターサンなら、そのまま倒せたんじゃないか?」

マスター「…」

豪騎士「マスターサン、どうした?」


マスター「さっきの道案内した奴に聞きたい事がある。新人達を襲ったのはあいつらだけか?」

516 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:11:39 evGmHZsU 411/556

 
ギルド員「…え?」

マスター「相手はアレだけか?」

ギルド員「…そうだ」


マスター「…お前、ちょっと来い」グイッ

ギルド員「おわっ…な、何をするんだ…」

マスター「相手は本当にアレだけか?」

ギルド員「だからそうだって!」


マスター「…」スチャッ

517 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:12:09 evGmHZsU 412/556

 
女剣士「!」

豪騎士「!」

戦士長「!」

ギルド員「ひっ!?」


女剣士「ま…マスターさん?仲間に武器を構えて何を!」

マスター「なぁに…、ちょっとな!」ブンッ!!

…ザシュッ!!!

ギルド員「ひぎっ!!」

518 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:12:52 evGmHZsU 413/556

 
女剣士「な…仲間を斬ったー!?」

豪騎士「マスターさん一体何を!…って!」


ギルド員「…」ヒュッ


戦士長「き…消えた!?」

マスター「…戦士長、後ろだ」

戦士長「へっ?」クルッ

519 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:13:27 evGmHZsU 414/556

 
ギルド員「…」ヌッ

戦士長「のわっ!き、貴様いつの間に背後に!」ビクッ

女剣士「今確かに斬ったと思ったんですが…な、何が起きたんですか!」


マスター「…そいつはもうギルドメンバーじゃねえよ。恐らく魔物の類が化けてるぜ」トントン

ギルド員「…」

戦士長「な、何!?」バッ


女剣士「ほ、本当ですか!?」

マスター「現に今切り裂いたのに、生きてるだろうが」

女剣士「た、確かにそうですが…」

520 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:14:21 evGmHZsU 415/556

 
戦士長「お、おのれ!我がギルドの仲間に化けるとは不届きな…姿を現せ!」スチャッ

ギルド員「…」ドロッ

戦士長「うおっ!?」

ドロドロ…ベチャッ…

女剣士「こ、今度は溶けたー!?」

マスター「物理が効かないって事は、スライム種のどれかだな。知性はそれなりのようだが」

マスター「いつの間に化けてやがったんだか…、そいつの"元になった奴"は既に死んでるな」


戦士長「く、くそ!俺の仲間に化けるとは…水炎装っ!死ねぃ!」ブンッ!!

スライム『!!』

…ドシャッ!ドロッ…ドバァ…

戦士長「ふー…ふー…」

521 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:15:10 evGmHZsU 416/556

 
女剣士「マスターさん、何でスライムが化けてるって気づいたんですか?」


マスター「…スルトとさっき対峙した時、死んだと聞いた仲間の遺体がそこにはなかった」

マスター「まず、ここが新人研修をやってた場所ではないと踏んだ」

マスター「それにあの一体だけなら襲われたギルドメンバーでも善戦処理はできたんじゃないかと思ってな」


女剣士「それだけで…」

マスター「それに、ちょっとこの展開は不味いぞ」ギリッ
 
女剣士「何故ですか?」

マスター「恐らく…俺ら人間を罠にハメる為じゃないかと…」

女剣士「え?罠…」


…ドォン!!!ミシミシ…

522 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:15:59 evGmHZsU 417/556

 
マスター「今の音は…」

女剣士「今のは衝撃波の音とは少し違いますね…何の音でしょうか」

マスター「これは、"足音"だな」

女剣士「え…」


ズゥン!!…ズゥン!!…ボォォ…


戦士長「…な、何だありゃ」

女剣士「う、うわっ…!」


マスター「女剣士」

女剣士「はい」

マスター「早い段階でこんな相手をさせるとは…少し反省してるよ」ハァ

523 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:16:29 evGmHZsU 418/556

 
女剣士「い、いえ…。経験の糧になりますからね…!」

マスター「そうか。全力でサポートしよう」

女剣士「いりません!とは言いたい所ですが…、是非、お願いします」タラッ…

524 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:17:24 evGmHZsU 419/556

 
キメラ『…ギィィ』

ウィスプ『…』フヨフヨ

スルト『…ククク』

エレメンタル『…』

スライム『…』


マスター「おーおー…勢ぞろいだな」

豪騎士「な…新たな巨人族!?それに、他の取り巻きの数が尋常じゃないぞ…」

戦士長「い、一体どうなってるんだ!」

マスター「さっきのも合わせてスルトが2体、他は何匹だ?ふーむ…」

525 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:18:50 evGmHZsU 420/556

 
女剣士「どうしましょうか…私が対抗できそうなのは…」


マスター「俺の後に着け。スルトの討伐に回るぞ」

マスター「それと…豪騎士!戦士長!それと残った7人は周りを頼む!」


戦士長「…分かった」

豪騎士「うじゃうじゃとどこから現れやがった…。これ以上進ませる訳にはいかないな」スチャッ

マスター「その通りだな。俺らがやられたら一般市民を巻き込む事になるぞ」

豪騎士「…マスターさん」

マスター「ん?」


豪騎士「俺一人で2人分の戦いをする。だから、1人を避難の呼びかけに使いたい」

マスター「…大丈夫か?」

豪騎士「これでも長い間、ここで戦い続けてきた。任せて欲しい」

526 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:19:43 evGmHZsU 421/556

 
マスター「うし…分かった。じゃあ、お前!急いで本部と今現在観光に来ている市民に呼びかけてくれ」

ギルド員「僕ですか…了解しましたっ!」ビシッ

マスター「それと出来れば山の入り口の封鎖。一応のため、近隣からの応援も頼む」

ギルド員「了解しました。では…、ご武運を…」ペコッ

ダッ…タッタッタッタッタッタ…!!


マスター「さぁて、準備はいいか。出来るだけ固まって戦ってくれ」

豪騎士「アドバイスはそれだけかな?巨人は任せたよ、君らが崩れたら俺らも危険だからね」ニヤッ

マスター「任せろ。働くさ…女剣士!遅れるなよ!」


女剣士「当たり前です!」スチャッ

527 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:21:17 evGmHZsU 422/556

 
マスター「…全員、準備を頼む!」

戦士長「全員、武器を準備しろ!武器への水属性着火用意っ!」

豪騎士「数人は俺に着け!マスターさんの支援に回る!」

ギルド員達「はっ!」ボワッ!!


マスター「事態はまだ不明だが、今はとにかく敵を抑え殲滅する!」

マスター「女剣士と俺は先行するぞ、行くぞ!」ダッ!!


女剣士「…はいっ!」ダッ!!

ダダダダダダッ…!!

528 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:23:15 evGmHZsU 423/556

 
キメラ『ギィィ!!』クワッ

マスター「邪魔だぁぁ!」ブンッ!!

…ドシャアッ!!!

マスター「…女剣士、このペースで着いて来れそうか!?」


女剣士「余裕です!ですけど、精霊に私の攻撃は…」

マスター「お前は道中はキメラを狙え!胴体を切り裂けば落とせる…スルトまでの道中の精霊は俺が相手をする!」

女剣士「わかりました!」

…ダダダダダッ!!!

529 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:24:07 evGmHZsU 424/556

 
キメラ『ギィッ!!』バッ

女剣士「…小斬っ!」

ビュッ…ズバァッ!!


マスター「いいぞ、その調子だ。それとな…こんな時だが指南の1つだ!」

女剣士「なんでしょうか!」

マスター「水魔法が少しでも使えるようになれば、こういう使い方もある!」

女剣士「ど、どんな方法ですか!」


マスター「小水流魔法っ!」パァッ!!

エレメンタル『…ッ』

…バシャアッ!!

マスター「弱点属性を受けた精霊は、一時的に本来の防御が薄くなりー…」スッ

530 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:24:40 evGmHZsU 425/556

 
ブンッ…ズバァッ!!

エレメンタル『』ジュワッ…


女剣士「…!」

マスター「確実な的中と一瞬の攻撃間合いが必要だが、いずれ使うようになるだろう。覚えておくんだ」

女剣士「はいっ!」

マスター「さぁスルトも目の前だ…、相手の攻略法は覚えているか」

女剣士「関節を狙う…でしたよね」

マスター「そうだ…、スルトの衝撃波もお前なら避けられるだろう。足の関節から上手く切り込め」

女剣士「わかりました!」

531 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:25:37 evGmHZsU 426/556

 
マスター「こっちはいいとして…そっちに逃がした魔物はお前らで処理を頼んだぞ!!」


…スチャッ

豪騎士「当たり前。一匹もココを通しやしない!」

戦士長「…俺の斧の前に平伏すがいい」


ウィスプ『…』ボォッ!!

豪騎士「水炎装っ!小突っ!!」ビュッ…

ボシュゥンッ!!

532 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:26:26 evGmHZsU 427/556

 
戦士長「我流、水属衝撃ィィィ!」

…ズドォォンッ!!!

ギルド員「中水流魔法っ!」パァッ!!

ギルド員「皆さん!抵抗魔法を!」パァッ!!


豪騎士「いいぞ!見える限りの相手を倒すのを目標に、確実に倒していこう!」

豪騎士「任せてくれよマスターサン!」

533 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:27:31 evGmHZsU 428/556

 
マスター「…ようし、いいぞ!」

女剣士「上手くいってるみたいですね…って、マスターさん正面!」ハッ

マスター「!」


スルト『グオオオッ!』ググッ

スルト『ヌゥゥゥ!』ググッ


女剣士「に…二体同時に来たー!?」

マスター「スルトも1匹増えやがってたからな…。横に並んで俺らの逃げ口をなくすつもりだ」

マスター「…俺が片方の衝撃波を抑える!俺の後ろにつけ!」

女剣士「はいっ!」


マスター「ふんっ!!」ブンッ!!

534 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:28:05 evGmHZsU 429/556

 
ゴッ…ゴォォォォ!!!

カァッ!!…ドゴォォン!!!パラパラ…


女剣士「うわ…凄い衝撃…」グラグラ

マスター「くそ…1匹ならまだしも、2匹の同時となるとキツいな…」

女剣士「どうしましょうか」

マスター「…お前はまだ俺の後ろからピッタリと着いてこい」

女剣士「わかりました」

535 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:28:39 evGmHZsU 430/556

 
スルト『ヌオオオォッ!』

スルト『ウウゥオオ!』

マスター「やらせるかよ!」ブンッ

…ゴォォォォ!!!

マスター「こっちからの先制の衝撃波だ!距離を詰めさせてもらうぞ!」

スルト『ヌウッ!』ガゴォ!!


スルト『…』クルッ

ザッザッザッザッ…


女剣士「ま、マスターさん!一体が逃げていきます!」

マスター「逃げた…だと?」


ザッザッザ…ピタッ

536 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:29:34 evGmHZsU 431/556

 
スルト『…』ニタッ

マスター「いや…違う」

スルト『…』ググッ

マスター「これは…」


スルト『カァッ!』ブンッ!

スルト『ヌゥアッ!!』ブンッ!

ゴォッ…ゴォォォォォォ!!!!


マスター「横のラインじゃなくて2連の縦のラインで攻撃してきたんだ!!」

537 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:30:09 evGmHZsU 432/556

 
女剣士「えぇっ!?」

マスター「一発目を防いでも二発目が来るぞ!横によけろ!」ダッ

女剣士「はいっ!」ダッ


ドゴォン!ドゴォォン!!!ズザザ…


女剣士「ふぅ…ふぅ…危なかった…」

マスター「少ない知性で考えやがったなスルトめ…」

女剣士「縦っていうのは厄介ですね」

マスター「…そうでもないんだなこれが」

女剣士「え?」

538 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:30:47 evGmHZsU 433/556

 
マスター「横に並ばれた方が俺らにとっては辛かったんだぜ?」ククク

女剣士「え?」

マスター「次の攻撃が来たら…手前のスルトを倒す。着いてこいよ」

女剣士「そ、そりゃ着いていきますが…」


スルト『ヌオッ!』ブンッ

スルト『ハァッ!!』ブンッ

ガツッ…ゴォォォォォォ!!


女剣士「きたぁ!」

マスター「横に避けろ!そして…次のが来る前に手前のスルトを切り落とす!」ダッ

女剣士「は、はい!」ダッ

539 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:31:21 evGmHZsU 434/556

 
スルト『!』

マスター「お前らやっぱり少し頭が足りないな」

ダッ…ダダダダダダダッ!!!


マスター「大斬っ!!!」ヒュッ…

ズバァァッ!!!…ドシャドシャッ…

スルト『ガァァアァ!!』


女剣士「関節を落とした!」

マスター「横で近くに並んでいたら、援護しあえて疑似タイマンになる事もなかったのにな」

女剣士「あ…そういうこと…」

540 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:31:57 evGmHZsU 435/556

 
マスター「お前の頭はスルト以下か」コツッ

女剣士「いたいっ!そ、そんな咄嗟に言われても考え付きませんよぅ…」

マスター「そりゃそうか。こうして経験を積けばいいさ」

女剣士「でも考えが浮かばなかったのは少し悔しいですけどね」

マスター「…くく」


女剣士「とりあえずあと1体ですね」キッ

スルト『グ…クソ…』


マスター「行くぞ!」スチャッ

541 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:32:31 evGmHZsU 436/556

 
スルト『グオオオッ!!』ビキビキッ

マスター「やらせるか!」ブンッ!!

ゴォォォッ!!ドゴォン!!

スルト『グヌッ!』


マスター「怯め怯め。この隙に前進を…」ダッ


スルト『グ…グオォォ!』ブンッ

ゴ…ゴォォォォッ!!!

542 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:33:12 evGmHZsU 437/556

 
マスター「な…怯まずに撃ってくるとは!技の発動も早い…!」

女剣士「…マスターさん!危ない!」ダッ

…ガキィン!!ドゴォン!!

女剣士「きゃああっ!」


マスター「女剣士!!」

女剣士「いつつ…だ、大丈夫です。剣で何とか衝撃を緩めました…」ヨロッ

マスター「あの衝撃波は重い。俺の事よりもまずは自分の身を案じるんだ」

女剣士「は…はい」

543 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:33:53 evGmHZsU 438/556

 
マスター「だが…助かったぞ。ありがとうな」

女剣士「い、いえ!」


スルト『…グオオオッ!!』ググッ


女剣士「いけない!また衝撃波が来る!」ハッ

マスター「女剣士、奴の実力はどうやら少し高いらしい」

マスター「俺が最初の衝撃波を抑える。その隙を見て、奴の関節を切り落とすんだ」


女剣士「私に…出来るでしょうか」

マスター「…出来る。お前の実力なら、確実に」

女剣士「はいっ…やってみます!」

544 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:34:53 evGmHZsU 439/556

 
スルト『ヌオォォ!』ブンッ!!

ゴッ…ゴォォォォ!!!

マスター「来たな…ぬあああっ!」ブンッ!!

ゴォ…ゴォォォ!!!


カッ…ドゴォォォン!!グラグラグラ…


マスター「今だ…行けぇぇ!」

女剣士「やぁぁぁっ!!」ダッ

ダダダダダダッ!!

545 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:36:08 evGmHZsU 440/556

 
スルト『ヌッ!?』

女剣士「私の間合いです!悪いですが、その全てを切り落とさせて頂きますよ!」タァンッ!!

マスター「飛んだか…いいぞ、高い!そのまま後ろを取るんだ!」


クルクル…スタッ!

スルト『ヌ…』

女剣士「貰ったぁ!」ブンッ!

マスター「よし!」


バッ…ガキィン!!

女剣士「!?」

546 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:36:50 evGmHZsU 441/556

 
スルト『クク…オソイゾ…?』

女剣士「な、何て早い反応…け、剣が、弾かれ…」

スルト『ザンネン…』ヒュッ

ドゴォッ!!!!

女剣士「うあ…っ!!」


マスター「なっ…!」


スルト『…』ニタッ

女剣士「…ごほっ」

…ドサッ

547 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:38:08 evGmHZsU 442/556

 
マスター「あ…あのスルトの実力を…甘く見すぎた…!」

女剣士「ま…ます…たー…さん…」ゴホッ

マスター「今行くぞ!待ってろ!」ダッ


スルト『グオッ!!』ヒュッ

ゴォォォォォ!!!ドゴォン!!

マスター「ぬ…ぐ…、奴のモーションが早すぎて近づく事が出来ん…!」

マスター「豪騎士!戦士長!そっちから誰か1人援軍を…」チラッ

548 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:39:08 evGmHZsU 443/556

 
ゴォォォ!!ボォン!!

豪騎士「…がはっ!」

戦士長「敵の炎が合わさって威力の増大が尋常じゃない!火の消化に当たれ!」

ギルド員「目一杯やってます!これ以上は魔力が…持ちません!」

豪騎士「前衛で巨人族と戦っているマスターサン達を見習え!死んでも道を死守するんだぁぁ!」


ゴォォォ…パチパチ…


マスター「はっ…参ったね…。この数とあんなスルトは予想外だった…」

…スチャッ

マスター「…あの衝撃波を抑えて進むには…アレしかないか…」

マスター「だが…持つか…?」

549 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:39:52 evGmHZsU 444/556

 
女剣士「…ごほっ…」


マスター「…どうこう考えてる場合じゃねえか。今行くぞ!」ダッ

スルト『ヌッ!』ピクッ

マスター「衝撃波なんて出させるか!だ…、大火炎魔法っ!!!」パァッ…

カッ…ドゴォォォォン!!! 
 

スルト『ヌグオォ!』プスプス


マスター「ごほっ…、た、大したダメージじゃねえだろうが…」

マスター「お前に近づくのは十分だ…!」

ダダダダダッ!!

550 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:40:41 evGmHZsU 445/556

 
スルト『!』ハッ

マスター「大火炎にびっくりしたか…?反応が鈍いぞ…切り落としてやるからな!」ブンッ!

ズバッ…ブシャアアッ!!!


スルト『グアァァッ!』グラッ

…ズズゥン…

スルト『ク…クソ…』


マスター「はぁ…はぁ…、死んでおけ…」ヒュッ

…ドスドスドスッ…ボトッ…ドシャッ…

スルト『…』

551 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:41:24 evGmHZsU 446/556

 
マスター「ち…、すまん女剣士…、完全に俺の誤算だった…」ソッ

女剣士「…」

マスター「ひ…ヒール…」パァッ!

女剣士「…」

マスター「足りないか…ひ、ヒールッ!!」パァッ!!

女剣士「…う…うぅ…?」…ドクン


マスター「間に合った…か…。はぁ、はぁ…」

マスター「だがこれでスルトは倒しきった…。何とか持ったか…これで…」ハッ


フヨフヨ…

ウィスプ『…』

エレメンタル『…』

552 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:42:02 evGmHZsU 447/556

 
マスター「なっ、精霊種!いつの間に近くに…!」

女剣士「ま…マスターさん…?」

マスター「…ちっ、女剣士じゃまだ相手には出来ない…か…」

女剣士「マスターさん!?あれ…私…」ガバッ


マスター「お…女剣士、気づいたか…」

女剣士「は、はい」

マスター「お…俺が倒れたら、厳しいと思うが…戦士長の場所まで運んでくれる…か?」

女剣士「え?どういうことですか?」

553 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:42:37 evGmHZsU 448/556

 
マスター「し…小水流魔法っ!!」パァッ!!パァッ!!

ジャバッ!!

ウィスプ『!』

エレメンタル『!』


マスター「ぬあああっ!」

ブンッ…ドシャドシャアッ!!…ジュワッ…


マスター「よ…し…倒した…か…」

マスター「あと…は…、た、頼んだ…ぞ…」グラッ


女剣士「マスターさん!?」

554 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:43:09 evGmHZsU 449/556

 
…ドサッ

マスター「…」


女剣士「マスターさん!?マスターさん!どうしたんですか!」ガバッ

マスター「…」

女剣士「マスターさん!」ユサユサ

マスター「…」


女剣士「な、何で!マスターさぁん!」

女剣士「…っ」

女剣士「そ、そうだ…戦士長のところに運んでくれって…」

…グイッ

女剣士「え、えい…!背負って…連れて行きますからね…!待っててください…!」ブルブル

…ザッ、ザッ、ザッ

555 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:44:12 evGmHZsU 450/556

 
豪騎士「お、おい!みんな…向こうを見ろ!スルトが全部倒れたぞ!」

ギルド員「うおおっ!マスターさん達がやってくれたんだ!」

豪騎士「もうひと踏ん張りだ!目に見える精霊を倒せば俺たちの勝ちなんだ!!踏ん張れぇ」


戦士長「ぬおおっ!」ブンッ!!

豪騎士「うらああっ!」ヒュッ!!

ギルド員「中水流魔法っ…、全身から魔力を捻じりだすんだぁぁ!」パァァッ!


豪騎士「その調子だ…って、ん?」

556 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:44:55 evGmHZsU 451/556

 
女剣士「はぁ…はぁ…」

ズリッ…ズリッ…


豪騎士「…マスターさんが運ばれてる…?どうしたんだ!!」

女剣士「わ、わかりません…急に…倒れて…」

豪騎士「くっ…今行く!」ダッ

タタタタタタッ…ズザザ…


豪騎士「一体どうしたんだ…マスターサン!」

マスター「…」

女剣士「わ、わかりません。どうしたんでしょうか…!」グスッ

557 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:45:50 evGmHZsU 452/556

 
豪騎士「血の気がない…。息も薄い…、まさか…」

女剣士「な、何ですか!?」

豪騎士「魔力の枯渇じゃないか…。魔力を使いすぎて、気を失っているんだ…」

女剣士「えっ!?で、でも…マスターさんは魔法をそんなに使ってませんよ!」

豪騎士「だ、だが…。実際にこの症状は…」

女剣士「…っ」


豪騎士「このままじゃ不味いぞ。だが…下山までにこれでは間に合わなくなる…!」

女剣士「じゃあどうすればいいんですかっ!」

豪騎士「魔力の充填薬があれば…」

558 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:47:20 evGmHZsU 453/556

 
女剣士「…充填薬!?」

豪騎士「あぁ…魔力を回復させる物だ。さっきまであったんだが、俺らも戦いで…」

女剣士「そ…そんな…」


豪騎士「時間がたつほど症状は重くなる。やばいぞ…」

女剣士「ど…どうすれば…」ブルッ

豪騎士「…充填薬がないことにはどうしようもない!」

560 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:48:49 evGmHZsU 454/556

 
女剣士「で、でも…私たちにそんなもの…ある訳が…」ハッ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
女錬金師「必要になる時があるからね。内緒で…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

女剣士「…まさか」

ゴソゴソ…パカッ

女剣士「豪騎士さん…こ、これ…。細瓶に入ってるんですが…」スッ

…トプンッ


豪騎士「ま…魔力の充填薬!しかも…こりゃ軍部に卸される特注品じゃないか!」

女剣士「!」

豪騎士「…どこでコレを?」

女剣士「ま、まぁ色々と…」

561 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:49:23 evGmHZsU 455/556

 
豪騎士「とにかく今は…マスターさん!」

マスター「…」

豪騎士「これを飲まさせてもらうぞ」


女剣士「で、でも気を失ってますよ!どうするんですか…?」

豪騎士「口移しで空気と一緒に押し込んだりもあったんだろうが…今はこれで大丈夫だ」グイッ

女剣士「!」


豪騎士「細瓶のおかげで、喉の奥に反射運動を起こして直接流し込める」

豪騎士「普通はこんな細口じゃないんだが…こういう場合に備えてたような道具だな…」

562 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:50:25 evGmHZsU 456/556

 
マスター「…」

ゴクッ…ゴクッ…


女剣士「こ、これでマスターさんは…助かるんですか…?」

豪騎士「早い処置だろうから、大丈夫だろう」

女剣士「よ…良かった…」ヘナヘナ

豪騎士「しかし…、マスターさんが魔力枯渇するのは普段からなのか?」

女剣士「え?い、いや…初めて見ましたよ。枯渇したことも、今聞いて知ったくらいですし」


豪騎士「じゃあ…なんでこんな特注品を?一般に手に入る代物じゃないぞ」

女剣士「それはー…」

563 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:51:00 evGmHZsU 457/556

 
マスター「ごほっ!ごほごほごほ!!」

豪騎士「いけね、飲ませすぎた。マスターサン…大丈夫か?」

マスター「む…」パチッ

豪騎士「アンタ、魔力枯渇でぶっ倒れてたんだぜ。たまたま充填薬があったから良かったものを…」

マスター「充填薬は…豪火山のギルドメンバーが…?」

豪騎士「違う。マスターサンの身内から受け取った」


マスター「女剣士が!?」ガバッ

女剣士「マスターさん!良かった…生き返ったんですね!」ギュウッ!!

マスター「おい、人を勝手に死んだ事にするな」

女剣士「だ、だってぇ…」

564 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:51:32 evGmHZsU 458/556

 
マスター「た、戦いはどうなったんだ?」

豪騎士「あとは残っている少しの精霊を退治すれば…」チラッ


…ウオォォ!!

戦士長「俺らの勝ちだ!良くやったぞ皆!」

ギルド員「大丈夫か…立てるか?」

ギルド員「あぁ…」


豪騎士「…ってな訳で終わったみたいだね。無事に」ハハ

マスター「そうか…良かった」

565 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:52:09 evGmHZsU 459/556

 
豪騎士「あんたらが巨人族を相手してくれたおかげだ…」

マスター「何を。あの数の精霊を倒してこそだ」

豪騎士「はは…何て謙遜する人だ」


マスター「…女剣士、ところで話を戻すが…」

女剣士「は、はい」

マスター「何故、特注品の充填薬を持っていたんだ?」


女剣士「じ…実は…」

566 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:53:18 evGmHZsU 460/556

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

マスター「…」

女剣士「…」


マスター「…女錬金師が、ね」


女剣士「どうして準備が出来たんでしょうね」

女剣士「それに、マスターさん…そんなに魔法使ってませんでしたよね?」

567 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:54:14 evGmHZsU 461/556

 
マスター「…」

女剣士「…?」


マスター「お前は戦いの力が高くても、別の面で劣ってるよな」ハァ

マスター「本当にスルト以下か」


女剣士「むっ、どういう意味ですかぁ!」


マスター「…あのな」

女剣士「はいっ」

マスター「俺はな…」

568 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:55:36 evGmHZsU 462/556

 
戦士長「…おおい!おーい!」

マスター「ん…」

ザッザッザッザ…

戦士長「どうした!何で戻って来ないんだ。そっちで戦いは終わったんだろ?」

豪騎士「あ…戦士長サン」

戦士長「この報告も含めて、一旦ギルド本部に戻ろう。…マスター、言いたくはないが…感謝するよ」

マスター「ん…あ、あぁ…」

569 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:56:16 evGmHZsU 463/556

 
戦士長「…助かった。本当に」

マスター「…」


戦士長「本当に強かったんだな…あんたら」

戦士長「最初の無礼、少しは詫びたい。二人とも、良ければ一緒にギルド本部に来てくれないか」


マスター「俺らがか?」

戦士長「お前たち以外にいないだろう」


マスター(無駄にプライドの高い人間だな…、実質、豪騎士がリーダーみたいなもんか)

570 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:56:58 evGmHZsU 464/556

 
女剣士「私は構いませんが…」

戦士長「なら決まった。今回の事、何かしらの魔物の問題にも関係がありそうだ…重く見るよ」

マスター「それがいいな。普段見せない魔物らが出てきたのは何かこちら側にも問題があったからだろう」

戦士長「…あぁ」


豪騎士「んじゃ、帰りますか!…二人とも立てるのか?」


マスター「よっ…大丈夫…だ」ヨロッ

女剣士「私も…大丈夫です…」ヨロッ


豪騎士「…二人ともダメそうだな」ハハッ

571 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:57:40 evGmHZsU 465/556

 
マスター「そ…そんなことは…」フラッ

女剣士「ないですよっ!」フラフラ…

 
豪騎士「…戦士長サン」

戦士長「わ…分かったよ。ほら…」

グイッ…ガシッ

マスター「…む」

女剣士「あはは…お手数かけます」

マスター「…すまんな」

572 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/16 19:58:20 evGmHZsU 466/556

 
豪騎士「あんたらは俺ら、そして町を救ってくれたのはアンタあってこそだ」

豪騎士「このくらいさせてくれ」


戦士長「…じゃあ行くか」


女剣士「はいっ…ありがとうございます」


マスター(ズタボロになるまで戦ったのは何年ぶりだろうか…)

マスター(それとあの話は…やはり…するべきだろうな…)


ザッザッザッザ…

ザッザッ…

……



577 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/17 18:58:30 EqbYBAk2 467/556

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 夜・豪火山ギルド 】


…ザワザワ

ギルド員「生き残れて良かったよ…あんな戦いは久しぶりだ…」

ギルド員「俺だって…。亡くなったのも付近から見つかったし…良かったな…」

ギルド員「いいのかどうなのか…。仲間を失ったのには変わりはないんだ」


戦士長「何故今回のような事が起きたのかはまだ捜索中だ。早い解決が望まれるな」

豪騎士「…ですね」

578 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/17 18:59:32 EqbYBAk2 468/556

 
マスター「恐らく…だが」

戦士長「ん?」

マスター「…新人研修は定期で行っているんだろう?」

戦士長「そりゃそうだが」

マスター「魔物の生息域の変化とかあったんじゃないか?」

マスター「例えば…山奥にしかウィスプ等がいなくなったとか」


戦士長「…よく知っているな?近年、付近にいた魔物はめっきり少なくなったんだ」


マスター「多分だが、新人研修や依頼で生息域が減少したんだろう」

マスター「このギルドの実践研修は山の中で行わなければならなくなったろう?」

マスター「そして…奴らの縄張りに足を踏み入れた」

579 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/17 19:00:03 EqbYBAk2 469/556

 
戦士長「…なるほど」

マスター「大体はそんな感じだろう。この山脈は広大だ…そりゃ魔物のパラダイスだって存在してるさ」

戦士長「…」

マスター「俺だって人だし、人の味方だ。だが、そいつらの気持ちもわかる」

戦士長「…」

マスター「難しい問題さ。答えなんか出るわけがないんだ」

戦士長「そうだな。冒険者っていうのは、人っていうのは…、魔物っていうのは…複雑だよ」

マスター「…」

戦士長「…そういえば近隣への応援は保留させたのと、観光の封鎖解除はどうするべきか」ハァ


マスター「少なくとも近辺にはまだ群れはいそうだ。応援も含めて討伐隊は必須だろう」

マスター「あとは応援も混ぜてアンタらでやれるはずだ。観光解除は問題なさそうに見えるぞ」

580 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/17 19:00:52 EqbYBAk2 470/556

 
戦士長「そ、そうか。色々助かる」

マスター「いやなに、冒険者同士…仲間だろう」

戦士長「あぁ…そうだな」

マスター「…」
 
 
豪騎士「ま…まぁまぁ!そんな染みったれた話をするんじゃないでしょう!」

戦士長「そ、そうだったな」

豪騎士「今は生き残った喜び、マスターサン、女剣士サンへの感謝でしょ!」

戦士長「…うむ」

581 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/17 19:01:49 EqbYBAk2 471/556

 
豪騎士「ささっ、女剣士サン!グイっと飲んじゃって!」トクトク

女剣士「わ、私はまだ飲めませんよ!」

豪騎士「あ…そうなの?まぁ細かい事は気にしないで!」

女剣士「無理ですってばぁ!マスターさん助けてぇ~!」


マスター「そいつはまだ16歳だしな…あんまりイジメないでやってくれ」ククク

豪騎士「ありゃま随分と若いのね…」

マスター「それで実力も高くて、勇気もある。全く…今の若い奴らはどんなに将来有望なんだか」

582 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/17 19:02:28 EqbYBAk2 472/556

 
豪騎士「若いって…、マスターサンもそんなに歳いってないでしょ?」

女剣士(あ、そういえばマスターさんって何歳なんだろう)


マスター「さぁ~な。まぁ若く見られがちだが」

豪騎士「あーっ!教えてよー!」

マスター「いいからお前が飲め」グイッ

豪騎士「むぐぐ…。わかった、わかったって!飲むから!」


マスター「…」

女剣士「…?」

583 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/17 19:03:05 EqbYBAk2 473/556

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――――【1時間後・テラス】

ソヨソヨ…

女剣士「…はぁ~。テラスは少し涼しいですね」

マスター「ギルドの中は熱気で溢れてたしな。豪火山といえど、夜風は少し涼しいか」

女剣士「いっぱい食べましたし、冒険者仲間に囲まれて楽しかったです」


マスター「…昼間はすまなかったな。俺の見誤りでお前を危険な目に…」

女剣士「いいんです。ああいう体験もなかったですし…いい経験です。怖かったですけどね」ヘヘ…

584 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/17 19:03:45 EqbYBAk2 474/556

 
マスター「そうか…」

女剣士「これからも色々教えてくださいね。マスターさん!」

マスター「…あぁ」

女剣士「~♪」


マスター「…その前にな、1つ。話したい事があるんだ」

女剣士「…何ですか?まさか、このいい雰囲気の中…」ゴクッ

マスター「違うわ!」

女剣士「じゃあ何です?」

585 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/17 19:04:26 EqbYBAk2 475/556

 
マスター「…俺が、戦いの途中で倒れたのは分かってるよな」

女剣士「あ…魔力の枯渇でしたっけ」

マスター「お前はさほど気にしてなかったようだが…。何も思わなかったか?」

女剣士「いえ…」


マスター「…」ハァ

女剣士「?」

586 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/17 19:05:03 EqbYBAk2 476/556

 
マスター「いいか…良く聞け。俺はな…」

女剣士「はい」


マスター「お前と一緒で、魔力が極端に少ない…いわゆる万能に不向きな人間なんだ」

587 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/17 19:05:57 EqbYBAk2 477/556

 
女剣士「…えっ?」

マスター「…」

女剣士「で、でも!ヒールとか、大火炎とか、水魔法とか…色々やってたじゃないですか」

マスター「技術面はな。魔力とは別だ」

女剣士「え…えっ…?」

588 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/17 19:06:55 EqbYBAk2 478/556

 
マスター「…少し、昔話をしよう。聞いてくれるか?」

女剣士「も…もちろんです」


マスター「ありがとう。俺が東ギルドのメンバーだった事は話をしたよな」

女剣士「はい」

マスター「その頃、俺はまだ普通の剣…お前のようなカットラス風の片手剣で戦っていた」

女剣士「!」

マスター「その頃はまだ魔力のハンデも感じる事なかった…誰かさんのようにな」

女剣士「…」

589 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/17 19:07:59 EqbYBAk2 479/556

 
マスター「やがて実力も上がり、上位依頼を請け負い始めると…それは急に来た」

女剣士「…」

マスター「前にも言った、魔法が使えない事によって自分の身を守れず、更に仲間への負担だ」

マスター「そういう事が増えつつも俺は、必至に戦った…」

女剣士「…」


マスター「だがある時、どうにもない失敗をしちまってな」

マスター「俺自身の限界を感じ、軽い片手剣を捨てて…新たな道を探した」


女剣士「それが…今の…」

マスター「そう。大剣だ」

590 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/17 19:08:58 EqbYBAk2 480/556

 
女剣士「…!」

マスター「元々才能があったというか…人よりも気力を上手く練ることが出来たし」

マスター「力も人並み以上にあった俺は、すぐに大剣を扱うことは出来るようになったんだ」


女剣士「…」

マスター「そして、俺は改めて上位依頼を受けた」

マスター「魔力のいらない戦い方に切り替え、力でねじ伏せるようになった事で」

マスター「辛かった上位依頼はサクサクとこなせるようにはなった。嬉しかったよ」


女剣士「それで…」

591 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/17 19:10:57 EqbYBAk2 481/556

 
マスター「…それからは成功続きで、俺のした事は正解だと思っていた。だがな…」

女剣士「…はい」

マスター「所詮、付け焼刃の立ち回りだ。ある時のクエストでボロが出て、仲間を巻き込む大失敗をしたんだ」


女剣士「…!」


マスター「それからは簡単だ。俺が自分自身に耐えられなくなって…逃げた」

女剣士「逃げ…た…?」


マスター「ギルドの脱退。いわゆる冒険者として引退を決意したってワケだな」ククク

女剣士「…」

592 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/17 19:12:44 EqbYBAk2 482/556

 
マスター「仲間は止めてくれたさ。それが当時の固定のパーティメンバーだ」

女剣士「あっ、もしかして女錬金師さんや、マスターさんが前に紹介してくれるって言ってた…?」


マスター「そう。それと今回、女錬金師が俺に薬を渡さなかった訳だが…」

マスター「表立って俺に薬を渡しても受け取らない事は分かってたんだろう。だから内緒にしたんだ」


女剣士「…」

マスター「まぁ…何が言いたいかっていうとな」

マスター「お前は俺とそっくりなんだ。才能を持ち、魔法を使えない。そして…まだ若かったということ」

女剣士「…はい」

マスター「魔法を使えないで、他の才能に後々から移動しても俺と同じ道を辿るだけ」

マスター「その前に、お前を今までの道から外れることなどないよう…」

マスター「剣士としてずっと見据えられるように教えようと思ったんだ」

593 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/17 19:14:43 EqbYBAk2 483/556

 
女剣士「…」


マスター「…ちなみにな、俺が冒険者だと言われる事を嫌がってた理由もこれさ」

女剣士「え?」

マスター「逃げた事を責められているようで、嫌だったんだ」

マスター「…何を言ってるか、わからんよな」


女剣士「いえ…わかります。わかる気がします」

マスター「…っふ」

女剣士「マスターさんは、もう自分で冒険者だとは思ってないんですか?本当に」

594 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/17 19:15:30 EqbYBAk2 484/556

 
マスター「何?」

女剣士「何で冒険者の仕事依頼を副業としてきたんですか?」

女剣士「何でまた私と世界を歩こうと決めたんですか?本当に…引退したと思ってるんでしょうか」


マスター「…そ、それは」

女剣士「…今、本当のことを教えてほしいです」


マスター「…」

マスター「…表向きには引退したんだと言っているが…」

マスター「本心くらい、わかっているだろう…」

595 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/17 19:16:40 EqbYBAk2 485/556

 
女剣士「…っ!」

マスター「皆だって俺の気持ちを分かってみてくれていた。それもまた、分かっている」

女剣士「…」

マスター「本当ならスッパリ足を洗うべきだったんだろうとも思う」

マスター「…俺と一緒にギルドを止めてくれた仲間のためにも」

女剣士「…マスターさん」


マスター「女錬金師は笑顔で今も迎えてくれるがな」

マスター「ほかの仲間とは顔合わせだってしない奴だっている」

マスター「今も俺が冒険者と一緒の仕事をしてる事は知ってるだろうし…な」

女剣士「…」

596 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/17 19:17:50 EqbYBAk2 486/556

 
マスター「情けない話だが…正直…怖い。女錬金師も、普段は明るいが…俺の仕事を快くなんか…」

女剣士「…マスターさん」


カツ…カツ…カツ…ポンッ!

マスター「ん?」クルッ


女錬金師「そんなこと・・・思っちゃいないよ!!」


マスター「なっ!?」

女剣士「女錬金師さん!?」


女錬金師「このバカ…やっぱり倒れたんだってね。一応充填薬を持たせて良かったよ」ハァ

マスター「なな、何でお前がここにいるんだ!」

女錬金師「このギルドは私の店のご用達だよ?仕事がてらさ」

597 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/17 19:18:46 EqbYBAk2 487/556

 
マスター「…そ、そういや…そうだったな…」

女錬金師「外で聞いた事ある声と、聞いた事ある話をしてると思えば…やっぱりアンタだったかい」

マスター「くっ…」


女錬金師「アンタと一緒に引退をしたのに、まだ冒険者稼業をやってるからって快く思わないだって?」

マスター「う…」

女錬金師「当たり前だよ!!」

マスター「…」

女錬金師「…なんて、冗談だよ。皆…アンタが冒険者を止められないのは知ってたさ」

マスター「な、何…?」

598 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/17 19:20:42 EqbYBAk2 488/556

 
女錬金師「特にパーティだったアタシと…」

女錬金師「仲間だった剛腕武道家、魔僧侶…全員、アンタに冒険者は止められないってずっと言ってたさ」アハハ

マスター「…」


女錬金師「たまに、魔僧侶とは仕事で顔を見せるんだけどね、アンタの話をよくするよ」

マスター「お、俺の?」


女錬金師「未だに冒険者として活躍してる、実力があっても小さな村を救うヒーローだって」

女錬金師「毎回、笑いながら言ってるよ。所詮、アンタは一生冒険者だってね」


マスター「…!」

女錬金師「アンタは魔僧侶とは全然会わないし、心配もしてるだろうけど、別に恨んじゃいないさ」

女錬金師「もちろん、アンタが心配してる当時の面子…みんなそうさ。今度遊びに来て、自分で話も聞けばいい」

マスター「…」

599 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/17 19:21:33 EqbYBAk2 489/556

 
女剣士「マスターさん…良かったじゃないですか…!」

マスター「あ…あぁ…」

女剣士「♪」


マスター「…」


女剣士「むぅ…もう!マスターさん!!」

マスター「ん…お。おう?」

600 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/17 19:22:27 EqbYBAk2 490/556

 
女剣士「逃げたと思ってるのはマスターさんだけですよ」

女剣士「私も、マスターさんは趣味だろうが副業だろうが…今も立派な冒険者だと思ってますから」

マスター「…女剣士」

女剣士「これからも、私に道を教えてください。先輩として!」ペコッ


マスター「いいのか…俺でも。こんな卑屈な性格もしてるんだぞ?」

女剣士「…もちろんです。何があろうと…もう、あなたは私の師匠だと思ってますから!」


マスター「…っ」


女錬金師「いい弟子を持ったんじゃないかい。本当にね」

601 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/17 19:23:07 EqbYBAk2 491/556

 
マスター「…そうだな」

女剣士「えへへっ!」


女錬金師「…ひと段落ついたところで、ちょっとついでに聞きたい事があるんだよ」

マスター「何だ?」

女錬金師「アンタは魔僧侶とは会わないけど、逆に私は剛腕武道家と会わないんだ」

女剣士「昔のパーティだった人ですね」

マスター「あ~…剛腕武道家な」


女錬金師「今は中央軍に務めてるってのは聞いたんだけど、どんな様子なんだい?」

602 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/17 19:23:40 EqbYBAk2 492/556

 
マスター「あいつは今、軍の左官だか将官じゃなかったか?」

女錬金師「へぇ!女なのによくそこまで」

女剣士(女性なのに軍の幹部クラスですか。ってか剛腕武道家って凄い名前…)


マスター「今は"上官"とかって名乗ってるみたいだがな」

女錬金師「ほぉ~」

マスター「かなぁり前に、竜騎士っつー弟子が出来たって相当喜んでたな」

女錬金師「へぇ~」


女剣士(私と似たような感じなんですかね?兄弟子って感じ…。今度会ってみたいなぁ)

686 : ◆qqtckwRIh.[sag... - 2014/02/18 20:15:49 7Uv30VZk 493/556


マスター「さぁて、夜風に当たりすぎると体に毒だ…中に戻るか」クルッ

女錬金師「…また、いつでもおいでよ」

マスター「あぁ、今度は…みんなにまた…会いに行くよ」

女錬金師「…ふふ」


マスター「ほら、行くぞ」

スタスタスタ…

女剣士「あ、待ってくださいよ!」


マスター(ありがとよ。女剣士、女錬金師…)

604 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/17 19:25:02 EqbYBAk2 494/556

 
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
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・・・・
・・・
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616 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/18 19:18:41 7Uv30VZk 495/556

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 次の日・宿 】
 

ユサユサ…

マスター「おい、朝だぞ」

女剣士「むにゃ…朝早くないですか…」

マスター「お前、温泉に入りたいって言ってただろ。朝風呂だと日の出が綺麗だぞ」


女剣士「昨日夜中まで飲みでしたし…、ふしぶしが…」

マスター「お前飲んでないだろ!」

女剣士「むむぅ…」ガバッ

618 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/18 19:19:45 7Uv30VZk 496/556

 
マスター「ほら…起きろ」グイッ

…パサッ

マスター「!!」


女剣士「あ…下着のままでしたね…」ニヘラ

マスター「はぁ~…」

女剣士「今着替えますぅ…」ゴソゴソ

マスター「お前寝起きだとか、そのおっとりしすぎる性格なんとかしろ!」

女剣士「むぅ~…」

619 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/18 19:20:30 7Uv30VZk 497/556

 
マスター「戦う時と違いすぎるぞ…」

女剣士「でも、お父さんとお母さんどっちも似てるって言われるんですけどねぇ…」モゾモゾ

マスター「どんな親だか見てみたいわ…」ハァ


女剣士「よっし、着替えました。温泉に行きましょう!」ダッ

マスター「あ、おい!コラ!」

620 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/18 19:21:04 7Uv30VZk 498/556

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 温 泉 】
 

…ガラッ!!

女剣士「うわぁ~!露天風呂が広~~い!!」


マスター「!?」

女剣士「…あれ?」

マスター「…!?!?」

女剣士「あれれ、マスターさん?何で女風呂に…まさか、覗きですか!?」

621 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/18 19:21:54 7Uv30VZk 499/556

 
マスター「はっ!?いや、ここは男風呂だぞ!」

女剣士「えぇっ!?女風呂ですよ!」


マスター「ま…」

女剣士「…まさか」


マスター&女剣士「混浴…」

622 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/18 19:22:41 7Uv30VZk 500/556

 
女剣士「まっ、気にしませんけどね」

スタスタスタ…ジャブンッ!!

マスター「うわっぷ!」

女剣士「あ、タオル着けたままの入浴はダメですよね。よいしょ」

マスター「…」


女剣士「あ~…マスターさん、どうせ濁り湯なんで期待してもダメですよぉ?」

マスター「…はぁ」

女剣士「見えなくてため息ついちゃいましたか?」クスクス

マスター「違うわ!もう何でもいいよ…」

623 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/18 19:23:14 7Uv30VZk 501/556

 
女剣士「えへへ…温泉、気持ちいいですねぇ。昨晩の疲れによく効きそうです」ハフー

マスター「疲労には良く効くからな。ゆっくり浸かればいい」

女剣士「それに他のお客さんもいないし、開放感~!」ザバッ!


マスター「ば、バカ立つな!」

女剣士「あ…」ザボンッ!


マスター「何で俺がこんなに気を使わなければならんのだ…」

女剣士「マスターさんは別に気にしなくていいんですよ?」

マスター「気にするだろうが!」

624 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/18 19:23:53 7Uv30VZk 502/556

 
女剣士「そうですか?」

マスター「お前な、俺がまともなじゃなかったら色々と危ういだろう」

女剣士「え~…」

女剣士「まぁ…そうなったらその時ですよね」エヘヘ


マスター「…」

マスター「…!!」ザバッ!!


女剣士「きゃあっ!?ちょ、ちょっと急に…そんな、ココでですか!?それはそれで心の…」


マスター「…お前!」

女剣士「…え?誰かいるんですか?」クルッ

625 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/18 19:24:39 7Uv30VZk 503/556

 
冒険戦士「…やぁ、マスター」ハハ


マスター「冒険戦士!?」

女剣士「冒険戦士さん!?」ザバッ!!


冒険戦士「…マスター、それにお姉さん久しぶりだね」ニコッ

女剣士「良かった…無事でしたか…。色々聞いて、心配してたんですよ…」

冒険戦士「心配してくれてたの?嬉しいなぁ…っと待って!」

ザボザボ…ドボンッ…


女剣士「…?」

冒険戦士「お姉さん…、全部見えてる…」

女剣士「え…?あ…」

626 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/18 19:25:36 7Uv30VZk 504/556

 
冒険戦士「あはは…僕もまだ健全な男子なんで…。ちょっと濁り湯に隠れるよ…」

タタタタタッ…ザボンッ…


女剣士「…」カァァ

ザボザボ…ブクブク…


マスター「それより…どうしてここにいる?逃げたんじゃないのか?」

冒険戦士「逃げてたよ。森の中を抜けて、山脈を通ってさ」

マスター「ふむ」

冒険戦士「でもね、山脈でたくさんの魔物に追いかけられてさ。仕方なく町に抜けたんだ」


マスター「…あー」

冒険戦士「そしたら町の中は、マスターとお姉さんの話でもちきりだったから」

マスター「どこにいるか聞いて、この宿に来たわけか」

627 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/18 19:26:20 7Uv30VZk 505/556

 
冒険戦士「うん。久々に顔でも見せようかなって」

マスター「わざわざ嬉しいぞ。…生活のほうはどうだ?まだ戻れる見込みもないんだろう?」

冒険戦士「そうだね…まだ話し合いも進んでないみたいだし」

マスター「…そうか」

冒険戦士「そんな顔しないでよ。僕だって一人前の冒険者だし!」

マスター「すぐドジをするから心配には変わらん」

冒険戦士「もう…マスターはいっつもそうなんだから…」


女剣士「…」ブクブク

冒険戦士「でもまぁ、そこに沈んでるお姉さんに良い物見せてもらったしね」ニカッ

女剣士「ま…またこういうの…」ブクブクブク…

628 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/18 19:27:26 7Uv30VZk 506/556

 
冒険戦士「お姉さん、自信持っていいと思うよ!」

女剣士「それ、フォローになってませんよぉぉ」

ザバザバザバ…!!


冒険戦士「!」

マスター「おーい、女剣士。向こう側に隠れるのはいいが、背中側が丸見えだぞ」


女剣士「う…うわぁぁんっ!」

ザバザバ…コケッ…ジャボォン!!!


冒険戦士「あ~あ…転んだ…」

629 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/18 19:28:21 7Uv30VZk 507/556

 
マスター「さっきまで開放感とか、別に気にしないって言ってた奴が急にどうしたんだか」

冒険戦士「そりゃマスターだからじゃないの?」

マスター「何がだ?」

冒険戦士「いーや、何でも」


マスター「…まぁそれはそうと、いつ出発するつもりだ?早くここも出なければならないだろう」

冒険戦士「う~ん…次はエルフの町に行ってみるよ。大陸自体が違うし、落ち着きそうだし」

マスター「それがいいな」

冒険戦士「でも、お姉さんはマスターと冒険かぁ…ちょっぴり羨ましいや」


マスター「なんだったら、お前も来るか?」

冒険戦士「…ボクも?」

630 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/18 19:29:14 7Uv30VZk 508/556

 
マスター「あぁ。俺らは別に気にしないぜ」

冒険戦士「…止めとくよ。もっと落ち着いて、マスターに本当に認められるようになったら…ね」

マスター「…そうか」

冒険戦士「さて…僕はそろそろ行くよ。顔が見れて良かった」ザバッ


女剣士「ふぁ、ファイトーですよー!」


冒険戦士「お姉さん…遠すぎて声が小さいよ…」

マスター「…気を付けてな。あ、そうだ…ちょっとロビーで待ってて貰えるか?」

冒険戦士「…あ、うん」


マスター「女剣士!俺らはあがってるから、あとでロビーに来いよ!」

女剣士「は、は~い…」

631 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/18 19:30:04 7Uv30VZk 509/556

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


冒険戦士「は~いいお湯だった…。マスター、それで何か用?」

マスター「待たせたな…ほら」

冒険戦士「…こ、これって…」

マスター「お前が好きだったいつもの一杯だ。淹れたてだぜ」


冒険戦士「…」

マスター「当、青空喫茶店のサービスとなっております。どうぞご遠慮なく」


冒険戦士「…頂きます」

632 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/18 19:31:05 7Uv30VZk 510/556

 
…ゴクッ

冒険戦士「うん…やっぱり、美味しいや…」

マスター「そりゃ良かった」

冒険戦士「でも、青空喫茶店て…何?」


マスター「まぁ色々あってな。気にするな」

冒険戦士「そっか」

グビッ…グビッ…


マスター「…」

冒険戦士「また、この味を飲めるといいな」

マスター「飲めるさ」

冒険戦士「…うん」

633 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/18 19:31:59 7Uv30VZk 511/556

 
タッタッタッタッタ…

マスター「おっ」

女剣士「お待たせしました。髪の毛乾かすのに時間かかっちゃって」ホクホク


冒険戦士「湯上りのいい女性って感じだね、お姉さん」

女剣士「そ、そうですか?」テレッ

冒険戦士「うん、お風呂の中でも見た時も、思わず目がいっちゃったくらい!」


女剣士「う…うわあぁぁん!」ダッ

ダダダダダッ…!!


マスター「…あーあ。あんまりうちの弟子をいじめないでくれるかな」

634 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/18 19:33:16 7Uv30VZk 512/556

 
冒険戦士「あはは…。ああいうお姉さん見ると、ついつい…ね」

マスター「昔っから変わらないな本当に」

冒険戦士「はは…それじゃ、僕はそろそろ出発しようかな!」


マスター「うむ。改めて…気を付けて行けよ」

冒険戦士「もちろん。お姉さんにもよろしくね」

マスター「わかった」

冒険戦士「じゃ…」


カツ…カツカツカツカツ…

635 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/18 19:33:56 7Uv30VZk 513/556

 
マスター「…」

女剣士「はぁ…はぁ…」トコトコ

マスター「戻ってきたか。もう、冒険戦士は出発しちまったぞ」

女剣士「声かけたかったのに…」


マスター「行く所を見られたくないんじゃないか。…俺と一緒でな」

女剣士「え?」

マスター「逃げる事を見られたくないんだよアイツは…多分な」

女剣士「…」

マスター「さ、どうせアイツとはいつか会える。俺らも次の町に行く準備をするぞ」

636 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/18 19:34:35 7Uv30VZk 514/556

 
女剣士「!…、次はどこへ行くんですか!?」

マスター「さぁて…どこに行きたい?このまま東方側に抜けてもいいんだが…希望とかあるか?」

女剣士「え、えっとぉ~…」


マスター「まだ落ち着きも取り戻してないみたいだし、時間はあるしな」

女剣士「マスターさんはどこかに行きたい所とかないんですか?」

マスター「そうだな…あぁ、お前の故郷とかどうだ?親に直接話もしたほうがいいんじゃないかと思ってな」

女剣士「わ…私の実家ですかぁ…」

637 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/18 19:36:06 7Uv30VZk 515/556

 
マスター「そういやお前の実家って…どこだったか?」

女剣士「田舎町っていう小さな場所ですよ」

マスター「ふむ…ふむ?おい、ここからそう遠くもないじゃないか」

女剣士「あ…そ、そうですか?」


マスター「何だ、乗り気じゃないな」

女剣士「中央で頑張るとか言ってたのに、世界に旅立ってるとか…なんか…ね?」エヘッ


マスター「…」

女剣士「…」

マスター「お前、手紙で伝えるって言ったのに伝えてないのかぁ!?」

638 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/18 19:36:41 7Uv30VZk 516/556

 
女剣士「ひーっ、ごめんなさいごめんなさいぃ!」

マスター「…決定、お前の実家に戻る。次の旅はそこからだ」

女剣士「ほ、本気ですか!?」

マスター「当たり前だ。さて、部屋に戻って準備するぞ」


女剣士「うぅ~…」

マスター「お前の親に会ったら、美味い珈琲でも淹れて飲ませてやるさ」

女剣士「マスターさんの珈琲は美味しいですからねぇ」


マスター「それにお前の親は手練なんだろう?いっぺん、手合わせをしてみたいもんだ」

女剣士「あっ!強いですよぉ?」

639 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/18 19:37:12 7Uv30VZk 517/556

 
マスター「あぁ、そうだろうな」

女剣士「…仕方ない、行きますか」ハァ

マスター「当たり前だって言ってるだろう」

女剣士「…」

マスター「…」


女剣士「…マスターさん!」

マスター「なんだ?」

640 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/18 19:37:44 7Uv30VZk 518/556

 
女剣士「これから、冒険者同士…冒険者の師匠として…よろしくお願いしますねっ!」

マスター「…それも」


マスター「…当たり前だ」

641 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/18 19:38:42 7Uv30VZk 519/556

 
あ…そういえば借金とか…どうなりますか…?

ん~?そんなのあったか…?


えっ…

今はお前を教える方が大事だ…そんなもん忘れた…

で、でも…どうやって親に紹介すれば…


ギルドに紹介された師匠と弟子でいいんじゃないのか

あ~…それで大丈夫かな…

さぁ~な…

642 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/18 19:39:19 7Uv30VZk 520/556

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・ 
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・


643 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/18 19:39:52 7Uv30VZk 521/556

 
再び冒険者として走り出した師匠と

駆け出し剣士の冒険劇ははまだまだ続く


さぁて、次は何が待っているんだろうか…
 
 
 
――ランプが燃えているうちに、
   人生を楽しみたまえ、
 しぼまないうちにバラの花を摘みたまえ

…ヨハン・マルティン・ウステリ
 
………
……


644 : ◆qqtckwRIh.[] - 2014/02/18 19:40:24 7Uv30VZk 522/556

 
【 E N D 】

【 後日談 】 に続きます。

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