男「は?」
女「だから、なんでいつもスカしてるんですか?」
男「いや、その前にキミ誰?」
女「え? 同じ部活の後輩なのに知らないんですか?」
男「そうだっけ?」
女「この前の部活で私、先輩にプリントを直接渡しましたよ」
男「あー……そうだっけ?
ごめん、人の顔を覚えるのが苦手なんだわ」
女「うわぁ」
元スレ
女「なんでいつもスカしてるんですか?」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1392704768/
男「そもそもオレになんの用なわけ?」
女「ああ、すみません。まだ話してませんでしたっけ?」
男「『なんでスカしてんですか?』としか言われてない」
女「すみません。先輩、さっきの部活の話し合い参加してないでしょう?」
男「そうだけど?」
女「だから、今度の英語演劇でなにをやるか聞いてこいって他の先輩に言われたんです」
男「ああ、そのことね」
男「言わなかったけ? 適当にオレの役割は決めていいって」
女「ダメですよ。いちおう全員で話し合って決めるってことになっているんですから」
男「……なんで?」
女「なんでって……そういう決まりだからですけど」
男「べつにどんな役でも構わないって言ったはずだよ」
女「じゃあ演劇の主役になっても文句ありませんね?」
男「……いや、さすがにそれはないわ」
女「でも、先輩の言い方ではそうなっても文句言えませんよね?」
男「……はあ」
女「ていうか、さっきも言いましたけど、なんで先輩はそんなにスカしてんですか?」
男「なんだよスカしてるって」
女「気取ってるとでも言えばいいですか?」
男「べつに気取ってなんかいない」
女「じゃあさっさと話し合いに参加しましょう」
男「なんで?」
女「……また同じことを言わせる気ですか?」
男「それはこっちのセリフだわ」
女「ていうかなんで話し合いをめんどくさがるんですか?」
男「……疲れるだろ」
女「はあ?」
男「正直、あんまりお前らのノリが好きじゃないんだよ」
女「私たちのノリ?」
男「みんなで一生懸命頑張りましょうとか、そういうノリ」
女「いいじゃないですか。高校生の青春ってかんじで」
男「そもそもこの部活は英語のディベートやるところだっただろ?」
女「そうらしいですね。今年から変わったんですよね。
ディベートに加えて英語演劇もやろうってなったんですよね」
男「オレはこの部活に演劇をしにきたんじゃないの」
女「ディベートだけがしたいってことですか?」
男「そういうこと。それに、さっきも言ったようにお前らのノリがだるい」
女「……もうちょっと詳しく話してくださいよ」
男「他の連中には言うなよ」
女「安心してください。言いませんから」
男「オレはあくまで勉強のために部活に入ったわけ。
べつに誰かと仲良くしたいとかそういう目的じゃないんだわ」
女「はあ……」
男「しかもアイツらいかにもノリが高校生だろ?」
女「高校生ですもん。当たり前でしょう?」
男「そういうのがダルイんだって。部活終わりに飯食いに行こうとかさ。
休日にラウンドワン行こうぜとか、そういうのあんま好きじゃないんだわ」
女「先輩は人付き合いが好きじゃないってことですか?」
男「うん。そういうのは必要最低限でいいわ。
金と時間ももったいないし、なにより疲れる」
女「……それで?」
男「べつに。ただ、そのせいか知らないけどそこまで友達いないんだよね。
まあべつに全然構わないけどさ」
男(ああ、言いたいこと言えてスッキリだな)チラッ
女「うわぁ、やっぱりスカしてるわー」
男「……へ?」
女「ひとつ勝手なこと言ってもいいですか?」
男「……なんだよ?」
女「最低限の人付き合いでいいとか、って先輩が言ってはいけないと思いますよ」
男「なんでだよ? べつになに言ってもいいだろ」
女「だって先輩はやるべきこともやってませんし」
男「だから、与えられたら役割はこなすって言ってんじゃん! わかんねえかなあ」
女「それじゃあダメですよ。まず、きちんと話し合いに参加してくれないと」
男「だからそういうのはダルいって言ってんだろ。オレの話聞いてた?」
女「聞いてましたよ。人付き合いは必要最低限でいい。ダルイから、ですよね?」
男「そうだよ」
女「やることやってないくせにそういうこと言うとか、反吐が出ますね」
女「ていうか先輩、そういうカッコつけとか似合ってないですよ」
男「は? カッコつけ? べつにつけてねーよ」
女「ふうん。なんだあ、てっきり無気力系気取ってるのかと思ってました」
男「……さっきからなにが言いたいわけ? なんかオレ、キミを怒らせるよなこと言った?」
女「わりと。まず顔を忘れられたあたりから。わりとあの時しゃべったはずなのに」
男「忘れたから、仕方ないじゃん」
女「なんで忘れたんですか? 納得できり理由だったら、もうなにも言いませんから」
男「忘れた理由って……人付き合いがダルイって言ったよな?」
女「言いましたね。耳タコですわ、もう」
男「だから、人に興味もてない。そんで忘れちゃうのかな。
いや、というより人の顔を覚えられないっていうほうがいいのかな?」ドヤッ
男(さあなんて言い返してくるかな?)
女「……ふふふっ……」
男「な、なに笑ってんだよ?」
女「だって……ふふっ、人の顔を覚えられないって言った瞬間、先輩ドヤ顔してんだもん」
男「はあ? してねーし!」
女「してましたからー。超ウケましたよー」
男(うぜええええええええ、なんだコイツ!)
男(頭の悪そうな女で、いかにも脳みそ軽そうでなんも考えてなさそうなのに!)
女「だいたい自分の記憶力が悪いことを誇ってどうするんですか?」
男「ほ、誇ってねえよ!」
女「ついでに言うと、めんどくさいならさっさとどっか行けばいいじゃないですか?」
男「それは……」
女「私は後輩ですし、それぐらいできそうなものなのに」
男(ぐっ……いや、まて、落ち着けオレ)
男(そ、そうだ……!)
男「あのさあ」
女「はい」
男「いくらオレが人付き合いがめんどくさいからって、そんなことできるわけないだろ?」
女「んー、どういうことですか?」
男「人間関係ってもんがあるでしょ? オレは最低限の人付き合いならするって言ってんの」
女「ああ、なるほど」
女「そうですね。いくら先輩でも最低限の人付き合いぐらいはしますよねー」
男「そういうこと。
急に話かけてきた後輩の相手ぐらいはするよ」
女「そうですよねー。カワイイ後輩である私が来て、『ひょっとしてオレ、モテ期!?』という
期待をして話を聞いたとかそういうのじゃないんですよねー」
男「ち、ちがうし」
女「そうですかー。ていうか、まず自分でカワイイとか言うなってツッコミしてくださいよ」
男「うるせえな。ていうかもう話終わっていい?」
女「ええ。必要最低限な人間関係のために、話し合いに参加してくれるって
先輩が約束してくれたらいいですよ」
男「しつこいなあ、キミも」
男「だいたいキミみたいなヤツにはわからないよ」
女「うん? 私みたいなって?」
男「……。あのね、世の中には物事に誘われても断れない人とかもいるじゃん」
女「ああ、イエスマンな人ですね。ザ日本人みたいな」
男「そう。ぶっちゃけるとオレもちょっとそういう傾向があるからさ。
そういう人間は無意識に人間関係を避けるものなんだよ」
男(ふっ……どうだ?)ドヤッ
女「あの、ドヤ顔してるとこ悪いんですけど」
男(あ、あれ? またしてた?)
女「なんで私にそういう人の気持ちがわからないって思うんですか?」
男「だ、だって……」
女「どうしてそういうふうに決めつけられるんですか?」
男「だって……キミみたいに自然に友達と遊べたりするヤツはなんも考えてないでしょ?
一昨日だって部活おわりに友達とファミレスに行ってたし……」
女「へえ、私の顔は覚えてなかったのに、私の一昨日の行動は知ってるんだ?」
男「あっ……いや、それは……」
女「まあそれはどうでもいいです。ところで先輩」
男「……なんだよ」
女「なんで私に人間関係を避けたりする、先輩みたいな人の気持ちがわからないって思ったんですか?」
男「だから、キミらはごく自然に遊んだりだとか、なにも考えずに……」
女「日々を過ごしてると思ってるわけですね。
つまり、先輩は私がなにも考えてないで、部活して遊んで適当に生きてるって言いたいんですね?」
男「そ、そうまでは言ってないよ……」
女「じゃあひとつ質問です」
男「なんだよ、言えよ」
男(くそっくそっうぜえええええええ! 絶対に言い返してやる……っ!)
女「仮に先輩に好きな女の子がいたとしましょう」
男「いねえよっ!」
女「仮、です。べつに先輩に好きな人いなくてもいいです」
男「……おう」
女「その好きな人(仮)をデートに誘うとしたらどうします?」
男「ど、どうするって……」
男(い、意味分かんねえー。なんでこのタイミングでそんな質問!?)
男「えっと、まず電話……いや、メールで……あ、いや直接言ったほうが……」
女「まず考えることから始める、でしょ?」
男「へ?」
女「相手をデートに誘う前に色々と考えるのが先でしょ?」
女「予定とか、どこで遊んだらいいか、とか相手のことを色々考えるますよね?」
女「今の先輩みたいにどうやって誘ったらいいかって」
男「そ、それは……そうだね」
女「これってべつにデートだけじゃありませんよね。友達と遊ぶ時だって似たようなことは考えますよね?」
男「……」
女「むしろ遊んでる人ってそういうことを無意識的にやってるんだと思うんですけどね」
女「まあ、先輩からしたらなにも考えてない連中に見えるんでしょうけど」
男「ぐっ……」
女「今回のことだってそうなんじゃないですか?」
男「今回のこと?」
女「先輩を演劇の話し合いに参加させることです」
男「ああ、それね」
男(ていうかよく考えたら、そっから話が始まったのか)
女「他の先輩が先輩を呼び戻そうとしたのは、色々と考えているからだと思いますよ」
男「なにを考えてるって言うのさ……」
女「部活の雰囲気のこととか、色々ですよ」
男「結局部活のためだろ」
女「……他の先輩方はひょっとしたら先輩と仲良くしたくて、私に頼んだのかもしれませんよ?」
男(だったらなんで後輩であるお前に任せるんだよ!)
女「まだなにか言いたげですね? いいですよ、聞いてあげます」
男「べつに……」
女「そうですか」
男(これ以上話しても気分が悪くなるだけだ。帰りてぇ……あっ)
男(……いや、でもこれならイケるか?)ニヤッ
男「でもさあ、やっぱり人付き合いがめんどくさいって気持ちはわからないでしょ、キミには?」
女「え……?」
男(よ、よし! ポカンとしている……勝ったぞ!)
男「だってキミはかなり友達多いし、色んなヤツと遊んでんじゃん?」
男「人付き合いがめんどくさかったらそんなことしないよね?」
女「まあ、わりと遊ぶのは好きですし、実際よく遊んでますね」
男「だろ? だったら人付き合いを面倒だと思うオレみたいなヤツの気持ちはわからないよ」
女「うーん、なんでそういう発想になるんですか?」
男「いや、だから人づきあいがめんどくさくないから遊んだりするんでしょ?」
女「逆だと思いますけどね、私は」
男「……どういうことだよ?」
女「色々な人間関係を築いている人のほうが、人間関係のめんどくささを知ってると思いませんか?」
男「……そうか?」
女「じゃあ、先輩は恋人関係のめんどくささを知っていますか?」
男「……知らない。ていうかちょっと待て」
男「なんでオレに彼女がいないと思うんだよ」
女「いそうにないと思ったからですけど、間違っていたらすみません」
男「……すみません、いないっす」
女「予想ついてましたから大丈夫です。まあ私も知りませんけど」
女「でも人間関係のめんどくささを知ってる人って、やっぱりそれ相応の人間関係を築いている人だと思うんです」
女「先輩が過去に滅茶苦茶な人間関係に悩まされていて、そうなったなら私はなにも言えませんけど」
男(いや、正直なんか漫画と学校の環境に影響されてそうなっただけだからなあ……)
男(ていうか、いわゆる気持ち悪い妄想に耽るタイプだしなオレ……)
男(ヤバイ……反発しようとする意識が萎えてきた……)
男「じゃあキミも人間関係をめんどくさいと思うこととかあるの?」
女「普通にありますよ。ていうか逆にない人ってそういませんよ」
女「ていうか、先輩って絶対ちょっと自分は人とちがうみたいなこと思ってません?」
男「お、思ってねえし」
女「ふうん」
男「だいたいオレは人に興味なんてもてないから、まず他人と自分を比較したりなんてしない」キリッ
女「人に興味ないんですか?」
男「ないね。だから自分語りがするヤツに腹立つわ。興味ねえっつーの」
女「……くふふっ……せ、先輩……ふふふっ、あははは」
男「またなんで笑うんだよ!」
女「いや、だって……」
女「他人に興味はない」キリッ
女「先輩のイタイ発言で……私のお腹がイタイっ……ふふふふっ……」
男(やっぱうぜええええええええ!)
男「お、オレは自分にしか興味ないっていうか……そういうのなんだよ」
女「ふうん。私が一昨日ガストに行ったのを知ってたのに?」
男「ガストかどうかまでは知らなかったし!」
男「だいたいそれはただ目に入っただけで、知ろうとして知ったわけじゃねーし!」
女「そうですね、それはちがますね」
女「でもじゃあなんで他人に目線を気にしたり、人付き合いをめんどくさいって思うんですか?」
男「え?」
女「そういうのって、自分がどう他人に見られてるか気にしてるからじゃないですか?」
男「そ、それは……」
女「これもひとつの他人への興味なんじゃないですか?」
女「あの人は自分のことをどう思っているんだろうって」
女「他人に興味ない人は、人間関係をめんどくさいとかそれ以前のものと処理してしまう気がするんですよね」
男「そんなの変人だろ」
女「はい。だから他人に興味をもたない人間なんて本当にごくわずかなんだと思いますよ」
男「そうなのか……?」
女「まあでも、人の顔色を伺うだけの人は結局自分のことしか考えていないと言えるかも」
男「どういうことだよ?」
女「人の顔色を伺うのと人の気持ちを慮るのは別ものですよね?」
男「いや、いっしょだろ?」
女「ちがいますよー。そうですね、たとえばすごい怖い顔した人がいるとしますよ?」
男「おう」
女「人の顔色を伺うっていうのは、その怖い顔をした人を見て」
女「うわ、この人怒ってる、刺激しないようにしようって考えることです」
男「慮るのほうは?」
女「うわ、この人怒ってる、どうして怒ってるのかな、なにかあったのかな……ここまで考えることです」
女「だから結局人の顔色を伺う人って最終的には自分のことしか考えてないんですよ」
男「ああ、じゃあそれオレだわ。やっぱりオレは人になんて興味ないんだよ」ドヤッ
女「ちがいます。それはただの自己中です」
男(ああああっ!? もうああ言えばこう言うヤツだなあぁ!)
男(ていうかなんでオレはこんなヤツに論破されてんだ!!)
女「あの、なんでそんなに他人に興味がないふりをするんですか?」
男「はぁ!? フリじゃねーしっ!」
女「だったらそんなに頑なに興味ない興味ないって連呼しなくていいじゃないですか」
男「キミがしつこいからだろっ!」
女「だいたいそういうカッコ付け先輩には似合ってないし」
男「じゃあなんだよ、人に興味ないキャラが似合うのってどんなんだよ?」
女「なんかイケメンでクールで……ちょっと中性的で……」
男「バーカ、そんなヤツがそうそういてたまるか!!」
女「ええ。だからまず人に興味ないなんて人はそうそういないと思いますよ」
男(むっきいいいいぃ! 屁理屈もいいとこだああああああ)
女「ていうか今自分で、人に興味ないキャラって言っちゃいましたしね」
男「うるせー言い間違いだ。だいたいそんな他人に興味ないキャラなんて意味ねえだろ」
男「それにキミが言ったんじゃん」
男「人の顔を覚えられないのを自慢してどうなるって」
男「こんなキャラなんて、気取ったって意味ねえよ」
女「まあそうですね」
男(つ、ついに黙らせたのか……この女を論破したのかオレは!?)
女「私にはそういうキャラを気取る人の気持ちは理解したくありません」
男(ついに女のお得意の感情論がきた……くくく、もらったぞこの勝負……!)
女「でも、そういうキャラを気取る人の気持ちは想像つきます」
男「ふーん、想像がつくねえ。言ってみ?」ニヤニヤ
女「そうやって他人の顔を覚えられないとか、興味ないって言うことで自分を優位にたたせたいんです」
男「……」ピクッ
女「『あなたには興味ありません』『めんどくさい』『他人の顔なんて覚えられない』」
女「そうやって思い込んで、自分を優位に立たせたい……そんな感じなんじゃないですか?」
女「なんでもかんでも、そうやって突き放していれば少しは優越感を得られますもんね」
女「めんどくさい……便利な言葉ですよね」
男「……」
女「もちろん、世の中には仕事に疲れたとかで他人どころかすべてのものに興味をなくしてしまう人もいるでしょう」
女「でも私たちまだ高校生ですよ?」
女「めんどくさいことでも、つまらないことでもなんでもやればよくないですか?」
男「……」
女「……」
男「……めんどくさっ。お前すげえめんどくさい女だわ」
女「すみません」
男「……で、たぶんオレもはたから見たらそうなんだろうな」
女「それは否定したいですけど、できないですね」
男「あのさ」
女「はい」
男「オレ、けっこうマジで人付き合いはめんどくさいとか他人に興味なしとか思ってたんだわ」
女「そうでしょうね」
男「いや、今でも思ってるつもりだよ?」
男「でもまあ、ひょっとしたらそうやって思い込もうとしてるだけかも」
女「……はい」
男「けど心当たりあることもあるわ。あとさ、人に興味ないとかって言うのはさ」
男「そうやって言ってるとらくなんだわ」
女「らく?」
男「自分より楽しそうなヤツのこととか知るのってムカつくじゃん」
男「見下してたヤツが自分よりすごかったりしたら、惨めな気分になる」
男「なにも考えてないと思ってたヤツが、自分より物事をはるかに考えてるのを知ったら……」
男「って、考えると気分が重くなるだろ?」
女「そうかもしれませんね」
男「だから、そうやってめんどくさいの一言で放棄して、らくしたいんだよ」
女「……そうですか」
男「はあ……サイアクな気分だわ」
女「なんでですか?」
男「お前のせいだろうが」
女「私も疲れましたよ」
男「めんどくさい男の相手を延々としたせいか?」
女「はい。私は先輩のことをめんどくさいと思って、先輩も私のことを同じように思ったでしょ?」
男「おう、ここまでしつこいヤツは初めてだったわ」
女「あはは、だって人を見下して自分は他人より考えてますよーみたいなこと言い出すんですもん」
男「見事なオレのひとりよがりだったわ」
女「ひとりよがりも、いい方向に考えれば持論とかにもなりますけどね」
男「オレよりディベートうまそうだな」
女「私もそう思います。じゃあ、とりあえず行きましょうか?」
男「へ?」
男「どこへ?」
女「部活ですよ。なんかすっかり話が脱線しましたけど、もともとは先輩を話し合いの場に呼びに来たんですから」
男「そういえばそうだったな」
女「さあ行きますよっ!」
男「……やっぱり行かなきゃダメなの?」
女「あれれ? これだけ言われてまためんどくさいとか言って逃げるつもりですか?」
男「だ、誰が逃げるって……」
女「じゃあ来るんですよね?」
男「お、おう。ここまでめんどくさいことしたんだから、もういいよ、最後まで面倒でもやるよっ!」
女「ふふっ……」
男「……なにがおかしいんだよ」
女「いえ、予想通り、先輩は来てくれるんだなと思って」
男「全部お前の予想通りってこと?」
女「そうじゃないです。もし本当にアウトな人だったら、ここまで会話が続くこともなかったはずですから」
女「お前うざいから帰るわ、で終わっちゃいますからね」
男「……そうすりゃよかったわ」
女「反骨精神に溢れた返しをしてくれましたもんね」
男「……うるせ」
男「あーでも、なんて言って話し合いに参加すりゃいいんだろ」
女「なんなら私も一緒に謝ってあげますよ?」
男「そんなカッコ悪いことできるか! 自分できちんと謝る!」
女「ふうん。じゃあせいぜいがんばってくださいねー」
男「その、まあ…………ありがと」
女「……どういたしまして」
男「ほんっっっとにすみませんでした!」
部員「お、おう……そんなに謝らなくても……」
男「いや、オレのせいでみんなに迷惑をかけてしまった!」
部員「大丈夫だよ、まだ始まったばっかだし……」
男「いや、もうなんでも頼んでくれ! 背景作る役でも、スポットライトの役でも木の役でもなんでもやるっ!」
部員「木……? いや、お前英語すごいできただろ?」
男「ああ、そうだけど?」
部員「せっかくだからさ……」
先輩「どうしちゃったの彼?」
女「私も豹変ぶりにびっくりです」
女「……まあ、さっきの会話でわかりましたけど反骨精神に溢れた方だから」
女「意外と不思議でもないのかもしれませんね」
先輩「そうなの? なんかあの人っておとなしいのかと思った」
女「それがそうでもないんですよ」
先輩「へえ。まあでも、やる気になってくれたのは頼もしいね。ありがとね、説得」
女「どういたしまして」
先輩「じゃあお礼にアンタはやりたい仕事を選んでいいよ」
女「え? いいんですか、後輩の私がそんなふうに選ぶなんて」
先輩「アンタのおかげで部員が一致団結できそうなんだから、これぐらいはね」
女「ありがとうございます。えっと、じゃあ……」
男「疲れた……」
男(なんか勢いに任せすぎたけど、大丈夫かな……)
女「せ・ん・ぱ・いぃっ!」ビチッ
男「いてぇっ! なにすんだよっ!?」
女「す、すみません、先輩の猫背を見たらなんか叩きたくなっちゃって……大丈夫ですか?」
男「……おう。ていうか他のヤツと帰らなくていいの?」
女「実は……ちょっと先輩に用があって……」
男(ていうか女の子とオレは今ふたりっきりで下校しているのか)
男(そして、先輩に用がある……ま、まさか……!?)
女「はい、これ」
男「…………なにこのプリント?」
女「今回の演劇では、なんと私と先輩が脚本家なんですよ」
男「お前も脚本なの?」
女「はい。偶然ですけど、私も脚本を担当することになって……」
女「それでその脚本についての要項です」
男「おう、サンキュ」
女「それと、その紙には私の連絡先も書いてありますからあとでケータイに登録してくださいね」
男「……」
女「どうしました? 口が開いてますよ」
男「べ、べつに」
男(あれ? これってもしかしてオレのこと……)
男(そうだよ、そもそもオレのことをあそこまで説得してくれのも……お、オレのことが、す、すすす……)
女「先輩、すみませんでした」
男「……え?」
女「いえ、改めて考えるとすごいひどいことを言ったなと思ってね」
男「ん? あ、いや、まあお前のおかげで少しはオレの考えも変わったし……」
女「本当ですか?」
男「うん」キリッ
女「ほんと、あのまま先輩が突っぱねてたら私、先輩を懐柔するために秘密兵器の一発ギャグをしようと思ってたんですよ」
男「……なんのギャグをやるつもりだったんだ?」
女「秘密です。でも本当によかったです」
男(いや、しかしこれはオレにほれ……)
女「私も久々にムカついてついつい言い過ぎちゃいました」
男「……ムカついたのか」
女「はい。男のくせにいちいちうるせえなって思ってました」
男(あれ? ひょっとしてこれオレに惚れてるとかそういう展開じゃない? ちがう!?)
女「ひょっとして先輩、私が先輩を説得した理由を勘違いしていたりしますか?」
男「な、なななななにを言ってるんだ。怒りのこもったいい説得だと思ったよ?」
女「そうですか。安心しました」
女「もう本当にほかの先輩からの頼みじゃなかったら、絶対に途中で帰ってましたもん」
男「あはは、マジか」
女「先輩だってそうでしょ? めんどくさかったですよね、お互いに」
男「……あのさ」
女「?」
男「たしかにオレはめんどくさがりだし、色々言った」
男「それで、その……都合がよすぎるかもしれなんだけど……えっと……つまり、めんどくさくなかったら……」
女「あーもうっ! ながいっ! めんどくさい! 男ならズバッと言ってください!」
男「オレと仲良くしてくださいっ!」
女「……なんだ、そんなことですか。喜んで」
男「ほ、ほんと!?」
女「ええ、先輩がめんどくさくないなら」
男「やっぱりディベートではお前には勝てなさそうだわ」
女「今ごろ気づいたんですか?」
男「……いつか負かす」
女「楽しみにしてます。まあ、なにはともあれこれから頑張っていきましょうね!」
男「おう! めちゃくちゃ頑張るわっ!」
おわり