初春「はい。一昨日くらいから調子悪そうだったんですけど、とうとう熱が出ちゃったみたいで、今日学校を休んだんです」
美琴「それで珍しく支部にいないわけね」
初春「実は佐天さんが支部にいる方が少ないんですよ」
美琴「そうなの? 私が支部に来るときはたいてい佐天さんがいるから、毎日遊びに来てるのかと思ってたわ」
初春「お見舞いに行きたいんですけど、見てのとおり仕事で手が離せなくて」
美琴「じゃあ私が行ってくるわよ。熱のときってやけに心細くなるもんね」
初春「本当ですか? じゃあ冷蔵庫に入ってるアイス持ってちゃってください。今朝冷たいものが食べたいと言ってたので」
美琴「わかったわ。じゃあ行ってきます」
初春「仕事が片付いたら私も行きますね」
元スレ
美琴「佐天さんが熱出して寝込んでる?」
http://raicho.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1294205115/
美琴(さて部屋の前まで来たはいいけど、チャイム押しちゃっていいのかな)
美琴(寝てるかもしれないし、だからって勝手に入るのもね………まず鍵がかかってるか)
美琴「やっぱりチャイム押すしかないわね。起こしちゃったらごめんってことで」ピンポーン
ガチャ
佐天「はい、どちらさまで………えっ、御坂さん?」
美琴「(覗き穴で確認しなかったのかしら)こんにちは、佐天さん。風邪ひいたって聞いたからお見舞いに来たわよ」
佐天「わざわざすいません、お見舞いなんて。あ、どうぞ上がっちゃってください」
美琴「おじゃまするわね」
美琴「調子はどうなの?」
佐天「ダルいです。でもずーっと寝てたから熱は下がってきたみたいです」
美琴「それならよかった。あ、そういえば初春さんが買ったアイスあるけど食べる? それとも冷蔵庫入れとく?」
佐天「んー、冷蔵庫で。今はアイスより普通にご飯が食べたい気分なんで」
美琴「じゃあ私がなんか作ったげるわ。おじやでいい?」
佐天「えぇっ? い、いいですよ別に。お見舞いに来てくれただけで充分ですから」
美琴「遠慮しないでいいって。もともと世話やくために来たようなものなんだし」
佐天「じゃ、じゃあ………おじやでお願いします」
美琴「お待たせ佐天さん。たまごとほうれん草のおじやよ」
佐天「わぁ。ありがとうございます、御坂さん」モソモソ
美琴「佐天さんはベッドに座ってていいわよ。私が食べさせてあげるから」
佐天「食べさせ………!? そ、そこまでしてもらわなくても大丈夫ですっ!」
美琴「いいからいいから。今日は私に甘えときなさい」
佐天「で、でも」
美琴「ほら、ちゃんと腰までふとんかけて」
佐天(もしあたしに姉がいたらこんな感じなのかな)
美琴「じゃあ一口目。あーん」
佐天「ぱくっ。ひゃ、あつうっ」
美琴「ごめん、まだ熱かったのね。ちょっと待ってて。ふーっ、ふーっ」
佐天(かわいい)
美琴「よし。佐天さん、あーん」
佐天「あむっ」
美琴「どう? おいしい?」
佐天「はい、とっても」
美琴「ありがと。まだまだいくわよ」
佐天「ふぅ、ごちそうさまでした」
美琴「はい、お水」
佐天「あ、どうも。あの、御坂さんって料理うまいんですね」
美琴「………佐天さんは今まで私をどういう目で見てたわけ?」
佐天「え、えっと、なんとなーく御坂さんは料理苦手なのかなぁって思ってて」
美琴「そりゃあんまり料理なんてしないけど、そこまで難しいものじゃなきゃ私にだって作れるわよ」
佐天「考えてみれば常盤台に通ってるんですもんね。これくらい朝飯前ですよね」
美琴「まあね。それよりも料理が下手って思われてたことがショックだわ。みんな言わないだけでそう思われてるのかな」
佐天「そ、そんなことないと思いますよ!? っていうか失礼なこと言っちゃってすいません!」
美琴「別にいいわよ。むしろ佐天さんにはそういうこと気にしないでほしいな」
佐天「へ? それってどういう意味ですか?」
美琴「学校の友だちや後輩はみんな、私をとんでもなくすごいやつだと思って接してくるのよ。それこそ聖母みたいに完璧な女性のように」
美琴「友だちだけじゃなく先生もさ、私に他の学生の手本となるようにってうるさいの」
美琴「私はまだ中学生なのよ? 人格者でもなんでもないし、はっちゃけたいときもあるってのに」
佐天「あ、あはは(割と頻繁にはっちゃけてるような)」
美琴「期待してくれるのは嬉しいけどね。ずーっとそれじゃあ疲れちゃうわよ」
美琴「でも佐天さんはそんなのまったく気にせずに私と話してくれるでしょ?」
佐天「………あたしって普段からそんな失礼な態度とってますか?」
美琴「ちがうちがう。そういう意味じゃなくてね。なんていうか、等身大の私を見てくれてるっていうか」
佐天「等身大の御坂さん?」
美琴「ま、わからないならそれでいいわよ。ただ私にとって佐天さんといる時間は結構大切ってこと」
佐天「えっ………!」ドキッ
佐天「あ、あのっ!」
美琴「んー?」
佐天「あたしだって御坂さんに期待しちゃうことあるんですよっ?」
美琴「へぇ~、たとえば?」
佐天「御坂さんがこうやって優しくしてくれるのは………あ、あたしだけだったり、とか」
美琴「………」
佐天「なーんて、あるわけないですよねー! い、今のは忘れてっ、忘れてください!」
美琴「私、その期待に応えてあげられるかも」
佐天「ふぇ?」
美琴「ね、佐天さん。熱出してるときって体をあっためると良いって言うでしょ?」
佐天「はい。だからあたしもこうしてふとんをかぶって」
美琴「だったら私が佐天さんを抱きしめればもっと良いんじゃない?」
佐天「は、はいぃっ!?」
美琴「というわけで早速やってみましょうか」
佐天「ちょ、ちょ、待ってください! 本気ですか!?」
美琴「もちろん。ちなみに佐天さんに拒否権はないわよ」
佐天(なにこれ、夢じゃないよね)
佐天「そ、それじゃあ、とりあえず………」クルッ
美琴「ちょっと、どうして後ろ向くのよ」
佐天「さ、さすがに向かいあうのは恥ずかしすぎますよぉ!」
美琴「しょうがないわねぇ。まあ今日のところはそれでいいか。じゃ、おじゃましまーす」ゴソゴソ
佐天「わ、わわっ」
美琴「やっぱり熱いね、佐天さんの体」ギュウ
佐天「あたしずっと寝てて汗かいたし、拭いたりもしてないから、その………」
美琴「大丈夫よ。いつもどおり佐天さんのいい匂いしかしないから」
佐天「はうっ」
佐天(幸せすぎて死んじゃうかも)
美琴「どうかな、ちゃんと佐天さんの期待に応えてあげられてる?」
佐天「それはもう、充分にっ!」
美琴「そっかぁ。私がこんなことしてあげるのは佐天さんだけよ?」
佐天「み、御坂さん、今のって………!」
美琴「どういう意味かわかるわよね?」
佐天「………はい」
初春「佐天さーん、お見舞いに来ましたよー」
佐天「おー、初春ありがとねー。あ、白井さんも来てくれたんですか? ありがとうございます」
黒子「当然ですわ。ところで佐天さん、顔が真っ赤ですけどそんな高熱ですの?」
佐天「い、いえっ、これはそういうわけじゃなくて! あはは………」チラッ
美琴「ふふふっ。温かいもの食べたからちょっと火照っただけよね?」
佐天「そう、そういうことですっ」
黒子「………」
黒子「お姉様、そろそろ門限ですしもう帰りますわよ」
初春「来たばっかなのにもう帰っちゃうんですか?」
黒子「一目、佐天さんの様子が見ておきたかったんですの」
美琴「そうね、佐天さんも私の献身的な看病のおかげで元気が出たようだし。初春さん、あとお願いね」
初春「任せといてください(特にすることもないですけど)」
美琴「あ、そうだ。佐天さん」
佐天「え?」
美琴「明日も来るからね」ボソッ
佐天「は、はいぃ」ポワーン
初春「なんだか慌ただしく出て行っちゃいましたねぇ」
佐天(御坂さん………)
初春「佐天さん、聞いてます?」
佐天「え、な、なにっ!?」
初春「なんでドアの方をずっと見てるんですか?」
佐天「べ、別に見てないっての! あ、そうだ! 初春が買ってくれたアイス、まだ食べてないから食べたいな!」
初春「はいはい、今とってきますよー」
常盤台寮
黒子「お姉様、少しお話したいことがありますの」
美琴「んー? なによ、怖い顔して」
黒子「………佐天さんに手を出しましたわね?」
美琴「ちょっとぉ、人聞きの悪い言い方しないでよ。手なんか出してないわよ。口説いただけ」
黒子「おんなじことですのっ! また年下の女子をもてあそぶ気ですの!?」
美琴「そんなことしないし、したこともないわよ。ただ佐天さんが私に気があるっぽかったから」
黒子「いい加減、好意を見せた相手を誰かれかまわずひっかける悪癖をどうにかしてくださいまし!」
美琴「なによ、あんたもしかして妬いてんの?」
黒子「勘違いもほどほどにしてくださいな………わたくしとお姉様はもうとっくに終わってますの」
美琴「あら、私は別にいいのよ? あんたとなら他の人にバレないし」
黒子「やめてくださいまし。それに今は佐天さんの話をしてるんですのよ」
美琴「私と佐天さんのことは黒子に関係ないでしょ。あんたも人の恋愛にいちいち口出しする癖なおした方がいいわよ」
黒子「恋愛? はっ、どうせまた楽しむだけ楽しんだら捨てるんでしょうに。なにが恋愛ですの」
美琴「あのね、私だって好きでもない人を口説いたりしないって。それに捨てたこともないわ」
黒子「そうでしたわね。お姉様が他の女性にも手を出してることを知られて喧嘩別れするの間違いでしたわ」
美琴「喧嘩別れしたのはあんたともう一人だけよ」
黒子「って、そういう話をしてるんじゃありませんの! 佐天さんの好意を無下にするようなことは謹んでほしいんですの」
美琴「だぁから、最初からそんなつもりはないって言ってんでしょ。先に食堂行ってるから、じゃあね」
バタン
黒子「はぁ(お姉様、どうしてあんなふうになってしまったんですの? 昔はもっと恋に奥手で誠実な方でしたのに)」
黒子(後輩にモテることを自覚してから、お姉様は変わってしまいましたわ………)
翌日
美琴(ったく黒子のやつは口うるさいんだから。姑かっつうの、まったく)
美琴(ま、佐天さんに会えばいらついた気持ちもまぎれるわよね、きっと。あの子は私を自然体で受けとめてくれるし)
美琴(処女をもらうのはまだ先として、今日中にファーストキスくらいは奪いたいなぁ)
美琴「調子はどう? 明日には学校行けそう?」
佐天「はい、御坂さんのおかげで熱もひきました。ありがとうございます」
美琴「お礼なんていいわよ。あれくらい、恋人なんだから当然でしょ?」
佐天「こ、恋人だなんて………! もう、御坂さんったら!」
美琴(ホント可愛いなぁ、佐天さんは)
美琴「佐天さん、こっち来て。ここに座って」
佐天「………?」スッ
美琴「んふふ、ふとんのかわりに私があっためてあげる」ギュッ
佐天「ひゃっ! み、御坂さん、いきなりすぎですよぉ」
美琴「んー、その『御坂さん』ってのはダメね」
佐天「え、ダメって?」
美琴「私たちは付き合ってるんだから、名前で呼びあった方がいいと思わない?」
佐天「な、名前呼びですか」
美琴「そ。これから私は涙子って呼ぶから、涙子は私のこと美琴って呼んでね」
佐天「うぅ、急に言われても」
美琴「いい? 涙子」
佐天「………はい。美琴、さん」
美琴「よくできました。ほら、恋人っぽいでしょ?」
佐天「そうですけど、すっごい恥ずかしいかも………!」
美琴「じゃあもっと恋人らしいことしたら恥ずかしくなくなるんじゃない?」
佐天「もっと恋人らしいことって?」
美琴「決まってるでしょ。キスよ」
佐天「キ、キスゥ!?」
美琴「いや?」
佐天「いやじゃないですけど、いくらなんでもキスははやすぎるんじゃあ………」
美琴「私は涙子とキスしたいんだけどなぁ」
佐天「か、風邪がうつっちゃうかもしれませんよ?」
美琴「それでもいい、涙子とキスできるなら」
佐天「そんなにあたしとキスしたいんですか………?」
美琴「うん、したい」
佐天「あうっ」ドキッ
美琴「いやなら抵抗していいから」スッ
佐天「ず、ずるいですよっ。あたしが抵抗できないの知ってるくせに」
美琴「じゃあ目つぶって」
佐天「美琴さん………んっ」
美琴「んんっ、ちゅ、んぅ………ちゅ、ちゅ、んっ」
佐天「し、舌いれてくるなんて聞いてないですよおっ!」
美琴「ごめん、ごめん。でもよかったでしょ?」
佐天「それは、そう、ですけどっ!」
美琴「どんな感じだった?」
佐天「とっても熱くて、舌がとけていくような感じでした………」
美琴「ねぇ、もう一回しよっか」
佐天「どうせあたしがなに言ってもやめるつもりないんですよね?」
美琴「あははっ、ご名答」
佐天「もうっ………好きにしてください」
佐天(はぁ………結局あれから一回どころか十回以上キスしちゃったよ)
佐天(しょうがないよね、美琴さんからしてくるんだし。それに気持ちいいし)
佐天(でも美琴さん、なんであんなにキスうまいんだろ? やっぱり前に付き合ってた人とかいるのかな)
黒子「ずいぶんとご機嫌ですわね、お姉様………」
美琴「だって佐天さんとの仲が順調に進展してるからさぁ。今までにないくらいよ!」
黒子「………もしかして、もう抱いたなんて言いませんわよね?」
美琴「さすがにそれはまだだけど、この調子だと一週間後にはそれも夢じゃないわねっ」
黒子(佐天さんが傷つくことのないように祈るばかりですわ)
数日後
佐天「あっ、美琴さーん」
美琴「ごめんね、ちょっと先生と話しこんじゃって。待たせちゃった?」
佐天「いえ、全然。どこ行きましょっか」
美琴「とりあえずウィンドウショッピングでもする? そのあとにお茶でもして」
佐天「それならあたし行きたいお店があるんですけど、いいですか?」
美琴「んじゃそこからまわりましょ」
とあるアクセサリーショップ
美琴「こじんまりとしてるけどしゃれたお店ね。穴場って感じ」
佐天「この前一人でブラブラしてるときに見つけたんですよ」
美琴「へぇ~………ん? その指輪がほしいの?」
佐天「そうなんですけど、今これを買うとおさいふへのダメージがやばいんで。来月になったら買います」
美琴「いいわよ、私が買ってあげる」
佐天「ええっ!? い、いいですよ、そんな」
美琴「涙子への最初のプレゼントよ。私も同じの買うから」
佐天「み、美琴さんとペアの指輪………えへへ」
美琴「よし、決定ね」
佐天「はぁ~、もう足が痛くて痛くて」
美琴「歩きまわるから結構疲れるのよね」
佐天「いつの間にか夕方かぁ。熱中しすぎましたね」
美琴「ホントねぇ。っていうかさ」
佐天「ほえ?」
美琴「今日まだキスしてないと思うんだけど」
佐天「だってここ外じゃないですか………誰かに見られちゃいますよ」
美琴「そう言うと思ってここに来たのよ。ほら、そこの公園の遊具の中じゃまわりから見られないでしょ。子どもはもういないし」
佐天「どんだけ計画的なんですかっ」
美琴「涙子と会ったのにキスしないなんて私には考えられないもの」
美琴「ん、ちゅう、んっ、んじゅ………」
佐天「ちゅ、ちゅ、んぐっ………ん、はぅ」
美琴「外で隠れてキスしてると、いけないことしてる気分になるね」
佐天「いけないことしてきてるのは美琴さんですけどね………」
美琴「でも涙子も本当はキスしたかったんでしょ?」
佐天「言わせないでください………って、どこ触ってるんですかぁ!」
美琴「太ももだけど。それよりも静かにしないと誰か見に来ちゃうかもよ?」
佐天「んっ………!」
美琴「涙子の太ももすべすべで気持ちいい」スリスリ
佐天「ちょ、ちょっと! スカートの中に手を入れちゃ………ひゃん!」
美琴「そういえば涙子ってよく初春さんのスカート捲ってるけど、涙子は今日どんなパンツはいてるの?」
佐天「そんなこと言うわけないじゃないですかっ!」
美琴「いいじゃない、教えてよ。ちゅっ」
佐天「ひあっ! く、首はやめ………」
美琴「教えてくれないんなら、このままキスマークつけちゃおっかな」
佐天「し、白ですっ! 横にリボンがついた白です!」
美琴「横にリボン、か。見てみたいなぁ」
佐天「は、はぁ?」
美琴「パンツだけじゃなくて、パンツの下も見たいわね」
佐天「えっ………」
美琴「私がなにを言いたいかわかる?」
佐天「………」ドキドキ
美琴「涙子を抱きたいって言ってんの。ハグの方じゃなくてね」
佐天「んな、なっ………!」
美琴「これ以上は外じゃまずいし、ひとまず涙子の部屋に行こっか」
佐天(み、美琴さん、本気ぃっ!?)
佐天の部屋
佐天「わあっ!」ドサッ
美琴「ごめん、もう我慢できない」ガバッ
佐天「ま、待って! シャワー浴びたりとか………!」
美琴「いらない。今すぐしよ? ね?」
佐天「で、でもでもっ、あたし初めてだからなにすればいいかなんてわからないし!」
美琴「そんなこと気にしないでいいわよ。私がリードするから」
佐天「………や、優しくしてくださいね?」
美琴「わかってるよ。涙子が私のことしか考えられないようにしてあげる」
佐天「あ、美琴さん………あんっ」
―――――
―――
―
佐天「美琴さんって野獣だったんですね」
美琴「野獣ってあんたねぇ………かなり優しくしたつもりなんだけど」
佐天「エッチのことじゃなくてそれまでの過程です。公園で太もも触ってきたり、部屋に入ってすぐ押し倒してきたり」
美琴「うっ………そういうのは、ほら、涙子への愛が溢れちゃったというか」
佐天「でもいいんです。美琴さんに求められるのは嬉しいし、こうやって腕まくらもしてもらってますから」
美琴(やっぱり涙子も腕まくらって好きなのね)
佐天「ところで美琴さんに少し聞きたいことがあるんですけど」
美琴「んー?」
佐天「美琴さんって以前にも付き合ってたことあるんですか?」
美琴「え。な、なんで?」
佐天「やけにこういうことに手慣れてるっていうか。キスもうまかったし。やっぱり経験があるのかなぁって」
美琴「まぁね………正直に話すけど、付き合ったのは涙子で五人目ね」
佐天「すごっ! やっぱモテるんですね、美琴さん」
美琴「隠しててごめんね。軽蔑した?」
佐天「し、してませんよ! むしろ昔のことを聞くあたしの方が無神経で」
美琴「ううん、いずれ話さなきゃいけないと思ってたから」
佐天「あのぉ………最後に一つだけ。付き合ってた人たちって全員女の子ですか?」
美琴「当たり前でしょ」
常盤台寮
美琴「たっだいまー黒子!」
黒子「なんですの、その異様なハイテンションとVサインは」
美琴「それはもちろん、心身ともに涙子を私のものにしたっていう歓喜のサインよ!」
黒子「心身ともに………って、もう佐天さんを抱いたんですの!? まだ付き合って一週間もたってませんわよね!?」
美琴「だから言ったじゃない。涙子とはすごくうまくいってるって。黒子が心配する必要なんてなかったのよ」
黒子「ですがそれは佐天さんが良い女性ということであって、お姉様の手癖の悪さはなにも変わってないのでは?」
美琴「あんたも口がへらないわねぇ。大丈夫よ、涙子は可愛いし気も合うし、なにより………」
黒子「なにより?」
美琴「体の相性がバッチリっぽいのよね。あそこまでグッときたのは初めてだわ」
黒子「はぁ………佐天さんがかわいそうですの………」
三週間後
美琴(さて、と。今日は特に約束してないけど部屋に行ったら会えるでしょ。合鍵ももらってるし)
湾内「あ、あの! 御坂様!」
美琴「んー? あら、湾内さん。久しぶりじゃない」
湾内「お久しぶりですの。御坂様はこれからなにか用事などございますか?」
美琴「特になにかあるってわけじゃないけど。どうして?」
湾内「い、いえ、そのぉ………少しお話でもと思いまして。も、もちろん御坂様がよければですけれど」
美琴「別にいいわよ。んじゃちょっと歩こうか」
湾内「はい! ありがとうございます!」
佐天(美琴さんとの約束はないし、久々に支部にでも行ってみようかな)
佐天(初春いるかなー。そだ、なんか差し入れでも買ってこう)
佐天(ん………? あれ、美琴さん? それと隣にいるのは………名前忘れちゃったけど、たしか水着撮影のときにいた人、だよね)
佐天(なんで二人で歩いてるの?)
美琴「ごめんね、私の買い物(っていうかただの立ち読み)に付き合わせちゃって。学舎の園だとコンビニなんてないしさ」
湾内「お気になさらないでください。次はどちらへ?」
美琴「いや、もうないわ。それで湾内さんのお話ってなに?」
湾内「………御坂様は結局あの方と付き合わなかったんですね」
美琴「(またずいぶんと昔の話ね)うん。あのままあの子と付き合ったら湾内さんに失礼だと思ってね」
湾内「別れた人間のことまで考えるなんて、やっぱり優しいんですね、御坂様は」
美琴「優しくなんかないわよ。もともと私があの子を受け入れなければ、湾内さんと別れることにはならなかったんだし」
湾内「それも御坂様の優しさですわ。あの方の気持ちも汲んであげようとしたんでしょう?」
佐天(なんとなくついてきちゃったけど………しんみりしてる。暗い話してんの?)
佐天(でもなんかあやしい雰囲気なんだよな、あの二人)
美琴「違うわよ、私の意志が弱かっただけの話」
湾内「御坂様は素敵な方ですから………言い寄る人が多くて迷ってしまうのも仕方ありませんわ」
美琴「(そんな大層な人間じゃないんだけどなぁ)もうやめましょ。こんな話しても悲しくなるだけだわ」
湾内「………御坂様。あの、もう一度、わたくしと」
美琴「ダメよ」
湾内「な、なんで………!」
美琴「もう付き合ってる子がいるのよ。私は今その子が好きなの」
佐天(美琴さん、今一瞬怒った?)
湾内「そう、でしたの。すいません、未練たらしい女で………」
美琴「私の方こそごめんね。湾内さんを傷つけたのは私だっていうのに」
湾内「いえ、いいんですわ。ただ御坂様がもし、もしよければ………」
美琴「なに? 言ってみて?」
湾内「今この時間だけは、昔みたいに名前で呼んでください」
美琴「………わかったわ、絹保」
湾内「ありがとうございます、美琴様」
佐天(うえっ!? いきなり親密になった!?)
佐天(な、なんで手なんかつないじゃってるの!? しかも美琴さんの方から………)
美琴「絹保、私そろそろ行かなきゃ」
湾内「(美琴様には待ち人がおりますものね)でしたら、あの、最後に………」
美琴「ふふっ、変わんないわね、その癖。いつも帰るときは絶対キスをせがんできたよね」
湾内「でも、正真正銘これが最後のキスですわ。本当の、別れのキス」
美琴「そういえば別れるときはしてあげなかったっけ………」
佐天(えっ? なんで美琴さんはあの子の頬に手をあててるの? ちょ、ちょっと待ってよ! そんなに顔を近づけたら………)
佐天「うそ………どうして………?」
支部
ガチャ
黒子「佐天さん、入るときはノックくらいしてくださいな」
佐天「白井さんだけ………ですか」
黒子「そうですの。初春も固法先輩も出張ってて………佐天さん? なんで泣いてますの?」
佐天「うぅ、ぐすっ………白井さぁ~ん!」ダキッ
黒子「ぐえっ! さ、佐天さん、苦しいですのっ」
佐天「うわぁあん!」
黒子(間違いなくお姉様のせいですわね………結局泣かせやがりましたのね)
黒子「なるほど、そんなことが」
佐天「はい………あたし、どうしていいかわからなくて、走ってたらここに着いたから………」
黒子「もう説明は充分ですわ。すべて把握できましたの」
佐天「把握できた?」
黒子「ええ。お姉様と一緒に歩いていたという子はおそらく湾内さんですの。お姉様が二ヶ月ほど前まで付き合っていた子ですわ」
佐天「もう別れてたってことですか?」
黒子「少なくともよりを戻したという話は聞いておりませんの。お姉様の口からも、友だちからの噂でも」
佐天「じゃあ美琴さんは湾内さんに言い寄られて………あ、あたしがいるのにまた付き合うことにしたってことですか………?」
黒子「その可能性は低いかと」
佐天「なんでですか?」
黒子「お姉様は一度きれた相手に手を出したことはありませんの」
佐天「でも手をつないで………キ、キスまでしてたし」
黒子「お姉様に直接聞いてみないとわかりませんが、湾内さんに懇願されて仕方なくしたんだと思いますわ」
佐天「仕方なくでキスしちゃうんだ………」
黒子「年下の女子にはとことん弱いんですのよ、お姉様は。たぶん『これで最後だから~』とか言われたんですわ」
黒子「いい機会ですから佐天さんに教えておきますの。お姉様と付き合って涙を流した方は佐天さんだけじゃありませんわ」
黒子「というより、お姉様と付き合って涙を流さなかった女性はおりませんの」
佐天「ど、どういうことですか?」
黒子「お姉様は………そうですわね、女たらしと言いますか、非常に女癖が悪いんですの(自分も女のくせに)」
黒子「昔は誠実な性格だったのですけれど。女性、特に後輩からモテることを自覚してしまってからはそれはもうひどいもので………」
佐天「ひどいって言ってもあたしでまだ五人目だし、そこまでじゃあ………」
黒子「五人? それはお姉様が言ったんですの?」
佐天「は、はい。今まで付き合った人数を聞いたときにそう言ってました」
黒子「はぁ………たしかに、正式に付き合ったという意味では五人かもしれませんわね」
佐天「え。それってどういう意味ですか?」
黒子「体だけとか、一晩だけの付き合いもいれたら、わたくしが知るだけでも十五人とは関係を持ってましたの」
佐天「十五人って………三倍じゃないですか!」
黒子「常盤台だけでこれですわ。わたくしの知らない、お姉様の個人的な知り合いも含めたらもっと多いかと」
佐天「ちょっと待ってくださいよ! そんないろんな人に手を出してたら学校で悪い噂が流れるんじゃ」
黒子「お姉様は超電磁砲として学校では人気者ですのよ」
黒子「それに恋愛レベルでお姉様を好いている方も少なくありませんの(なにしろ女子校ですから)」
黒子「そのような人たちからしたら、お姉様に抱かれることは一種のステータスになってますわ」
佐天(女子校って怖いところなんだ………)
黒子「今までお姉様と付き合った方は全員、このようなお姉様の行動が原因で別れておりますの」
佐天「はは………あたしも例外じゃないってことですか。結局そこらへんの女の一人としてしか見られてなかったんですね」
黒子「………ここまでお姉様のひどい話ばかり聞かせてしまいましたから、一つお姉様の名誉を回復するような話をしますわ」
佐天「今さらそんな話を一つ聞いてなにか変わるんですか」
黒子「わたくしはルームメイトなのでよくお姉様からこの手の話を聞きますの。あの子とキスしただのこの子を抱いたなどと」
黒子「けれどたいていは愚痴ですの。お姉様は後輩には流されやすい性格ですから、ちょっとフラグが立ってると思ったらすぐ手を出しますの」
黒子「残念なことに、お姉様に口説かれておちなかった方はおりませんわ。その手腕で何人もの後輩を虜にしましたの」
黒子「当然その中にはお姉様とそりが合わない人もいましたわ。むしろ、そりが合った人の方が珍しいですわね。自然と愚痴も増えますの」
黒子「付き合ってる人の話をしてても、絶対に他の女の子の名前が出てきたりといった感じですわ」
黒子「そんなお姉様が、ここ最近はずっと楽しそうに一人の女の子の話をするんですのよ」
佐天「………」
黒子「その子はわたくしとお姉様の共通の友人でしたし、わたくしの大切なパートナーの親友でもありましたの」
黒子「わたくしは最初反対しましたの。どうせまた相手をひどく傷つけて終わるだけだと思ってましたから」
黒子「三日くらいしたら、また愚痴だけを聞かされるようになるんだろうとふんでおりましたの」
黒子「でもわたくしの予想とは反対に、お姉様は毎日その子となにをしたかを楽しそうに惚気るんですわ(人の気も知らないで)」
黒子「心底驚きましたわ。あの女たらしのお姉様が、一ヶ月近く他の女の子に見向きもしないんですもの」
黒子「それどころかどんどんその子にのめりこんでるようでしたわ」
黒子「そして一昨日、お姉様はこんなことを呟きましたの」
美琴『ねぇ、黒子。私やっと女の子を泣かせないですみそうよ。涙子とならずっとやっていける気がする』
黒子「佐天さん、どうですの? お姉様の名誉、少しは回復できて?」
佐天「………もう、白井さんも人が悪いなぁ~。そんな話聞いたら美琴さんのこと諦められないじゃないですか」
黒子「ええ、そうですわね。わたくしは最低の女かもしれませんわ。女泣かせのお姉様と佐天さんをくっつけようとしてるんですもの」
佐天「ホントですよ。白井さんの話を聞かなかったら、あたしはその女泣かせをこんなに好きになることなかったのに」
黒子「それは悪いことをしてしまいましたわね」
佐天「だけど白井さんはそれでいいんですか?」
黒子「なにがですの?」
佐天「だって白井さんはまだ美琴さんのこと好きなんでしょ?」
黒子「ぶはっ! な、なにを戯言を………!」
佐天「バレバレですよ。あと美琴さんが言ってた初めて付き合った人ってのも白井さんですよね?」
黒子「なっ! お姉様はわたくしのことまで話しましたの!?」
佐天「いえ。詳しい話はなんにも。ただ初めての彼女は姑みたいに口うるさいやつだったって聞いてたんで、ピンときました」
黒子「それはどういう意味ですの~!?」
佐天「喧嘩した夫婦の仲をとりもつ姑みたいってことですよ! それじゃあたしは美琴さんのところに行ってきます!」ダッ
黒子「あっ! 佐天さん、一つ言い忘れてましたわ」
佐天「はい?」
黒子「お姉様が佐天さんにはまった一番大きな理由は、『体の相性が最高だから』らしいですの」
佐天「………あんの野獣め」
佐天「もしもし、美琴さん? 今どこにいますか?」
美琴『どこって、涙子の部屋よ。あんたが全然帰ってこないから掃除までしちゃったわよ』
佐天「じゃあ絶対そこにいてください! いいですね!? 大事な話があるんです、逃げたら承知しませんよ!」
美琴『大事な話? なによそれ?』
佐天「着いたら話しますよ! それと! 美琴さんもあたしに言わなきゃいけないことあるんじゃないですか!?」
美琴『………うん、話さなきゃいけないこといっぱいあるわね。じゃあ待ってるからはやく帰ってきなさいよ』
佐天「はい! あ、あと今ここで言っておきたいことがあるんです! どうしても今言いたいんです! ちゃんと聞いてますか!?」
美琴『うるさいくらいに聞こえてるわよ。なに?』
佐天「美琴さん、愛してます」
この後、美琴は想像を絶する修羅場(というか説教)を体験した。
おわり