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年始早々だけど、二月末を舞台とするよ
元スレ
男「釣りロマンを求めて」幼馴染「仕方ないから付き合います」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1378509317/
幼友「春の海ですなぁ…」
幼馴染「まだ寒いです」
男「2月のボート釣りですので、そりゃ寒いです」
幼友「お、アタリ…とーう!」
男「いい引きです、型が期待できるかもしれません」
幼馴染「あ…私もです、てーいっ!」
男「カワハギのアワセは難しいのに、エサをアサリの剥き身に替えてからは、いい調子で掛けています。二人とも随分、上手になりました」
幼友「おっけー、これはウマヅラハギですねー?」
幼馴染「やりました、マルハギです。肝も詰まってそうです」
男「これは今夜は鍋物と刺身で決定です。肝醤油に浸けて……うへへへっ」ジュルッ
幼友「堪りませんなぁ、きしししっ」ジュルルッ
幼馴染「二人とも、笑い方がエロ親父っぽくて嫌です」
男「では、もう充分釣れました。そろそろ帰港して、晩の支度をしましょう」キュルルルッ…ズドンッ…ドンッドンッドンッ…
幼友「いやっほーぅ、期待に胸躍るぜぃ」ポヨンポヨン
幼馴染「わざと揺らすな、目障りです」チッ
男「走ります。いつも通り、港が見えてきたら舳先が上がっている内に、生簀の水を抜いて下さい」ブロロロォォォッ
幼馴染「らじゃ!」ピシィッ
幼友「ぶらじゃ!」ピシィッ
男(今日は久しぶりに波が穏やかで良かったで……す……?)ブロロロ…ガスッ…ガスンッ!
幼友「何か、変な音しません?」
幼馴染(……はっ…!)
男「幼馴染、さっき燃料は携行缶から入れてくれていたと思うのですが……?」ガスンッ…ガスッ…
幼馴染「……重くて動かなくて、後で男に頼もうと思いました」
男「ほほう、それで」…プスンッ
幼友「あ、止まった」
幼馴染「…そのまま忘れちゃった!てへぺろ!」キャッ
男「キャラを変えてもどうにもなりません」
幼友「あーあ…早く入れちゃいましょ」
幼馴染「そ、そうです!入れれば済む話です!」
男「…それが済まないのです。古いディーゼル船は、ガス欠させるとエア抜き作業が必要です」ヤレヤレ…
幼馴染「じゃあ、手伝うので早くしましょう。寒いです」
男「工具も設備も無い状態では、無理です」
幼友「え、それって?」
男「お手上げです」
幼馴染「まさか、この海の上で…私達は遭難したのでしょうか」
幼友「そうなんですか…!?なんつって」
男「何で幼友ちゃん、余裕しゃくしゃくなんでしょう……一応、予備の2psエンジンを積んであります。けど、トランザム高さが合うかな…」ゴソゴソ
幼馴染「漂流してるー!」
幼友「ウィールソーン!」
男「使えなくは無いか……でもこの小さなエンジンで、元の港まで帰るのは無理です」キュルルッ…キュルルッ…バイイィィィンッ!
幼馴染「どうなってしまうのでしょう」
男「潮流に逆らう事さえ難しいので、どこか島に寄ってエア抜きしてもらいましょう」バババババ…
幼友「あ、あの島…ちっちゃいけど港がありますよ」
男「かなり小さいです、整備できるかな…まあ、次の島となると遠いので、行ってみます」バババババ…
……………
………
…
…島の港内
男「この辺に係留させてもらいましょう……よっと」クルクルッ…キュッ
幼馴染「いったん、船を降りていいでしょうか」
幼友「疲れたー」
男「まずは整備できるところを探さなければいけません、少しかかるでしょうから上がってきて下さい。ほら、手を…」スッ
幼馴染「はい」ギュッ
男「よいしょ…大丈夫ですか?」
幼馴染「平気です」ストンッ
男「じゃあ、幼友ちゃんも…はい、手を掴んで」スッ
幼友「う、だ…大丈夫ですよ?」ドキッ
男「落ちたら寒いです。いいから、掴んで下さい」ギュッ
幼友「あぅ…」ドキドキ
幼馴染「………」
少女「お兄ちゃんら、どうしたん…?」
幼馴染「ん…?女の子…」
幼友「この島の娘かな?私達、船が壊れちゃって困ってるんだ」
男「どこかエンジンを整備できるところ、知っているでしょうか」
少女「アタシん家、できるで?父さんが漁師しとるけん」
男「本当ですか、もちろん費用は払うので、お願いできるでしょうか」
少女「うん…でも、今は自分の船を塗り直しに本土の港に行っとるけん、おらん」
幼友「いつ戻ってくるの?」
少女「ついでに本土の市場の人達とかに挨拶して回る言うとったけん、明後日くらいじゃと思う…」
男「うーん…」
男(明後日までに何とかなるとしたら、一応困りはしない…か)
幼馴染「少女ちゃん、歳は何歳なのでしょう」
少女「私、五年生なんよ」
幼友「そっか、可愛いねー。私、幼友っていうの」
男(ただ、待つ間の宿泊先とか…この島にあるでしょうか)
幼馴染「私は幼馴染、こっちの冴えない野郎は男といいます」
少女「私は少女、ウチに来てみる?お母さんおるよ」
幼友「じゃあ、お邪魔しよっかな」
男(でも、船を牽引してもらうのも高くつくしな…)
幼馴染「男、行きましょう」
幼友「置いてくよー」
男「え?どこへ?」
幼馴染「少女ちゃんの家です。どっちにしても待って、エンジンを直してもらわないといけないのでしょう?」
少女「冴えない野郎さん、はよおいでぇ」
男「ちょ、何その呼ばれ方」
……………
………
…
…少女の家
少女「母さーん、お客さん連れてきたでー」ガラガラッ
少女母「おかえりー?お客さんって、どうしたん?」
幼馴染「えと…お邪魔します」
幼友「いやー、船のエンジン壊れちゃって。この家で直せるって聞いたんですよねー」
少女母「ああ…それは困ったんねぇ、寒かったじゃろ?どうぞ上がってん」
幼馴染(若くて綺麗なお母さんです…)
幼友「お言葉に甘えてー」
少女「冴えない野郎も、早くー」
男「その呼び方やめてもらえないでしょうか」
………
…
少女母「そう……悪いけど、やっぱりウチの人が帰ってこんと修理はできんのよ」
男「そうですか…うーん、待つ間の宿をどうしましょうか…」
少女「ウチに泊まるとええよ!」
幼馴染「いいのでしょうか」
少女母「ウチは昔、民宿もやっとったから部屋は余っとるんよ。よかったらほんまにそうして?」
幼友「そんな……急にお邪魔して、そこまで甘えられないよー」ミカン ムキムキ…
幼馴染「そうです、厚かまし過ぎます」ヤレヤレ クツロギ クツロギ…
男「言葉と態度が一致していません」
少女母「あはは、本当に遠慮せんでええんよ。この娘も喜んどるし…ちょうど明後日なら気も紛れるかもしれんしね…」
少女「母さん!いらん事言わんで!」
幼馴染「……?」
幼友「じゃあ、お言葉に甘えきっちゃおうか?」
男「すみません、ご厄介になります」
少女母「うん、気にせんで?晩には海の幸振る舞うけんね!お酒は飲むん?」
幼友「いやー、ちょびっとしか飲めないですけどねー」ワクワク
男「ほんとほんと、可愛いもんです」ウキウキ
幼馴染「貴様らザルのくせに」
少女母「あはは…漁師の家には、お金は無くてもお酒はたっぷりあるもんよ?遠慮せずに飲んだらええからね!」
少女「あとで島、案内したげるけんね!」
幼馴染「お願いします」ニコッ
少女母「あんた、いいん?…もうちょっとしか時間無いんよ…?」
少女「母さんっ!ほんまに変な事言わんでよ!」
男「……?」
………
…
幼友「ああ…コタツでだいぶ暖まったわー」ヌクヌク
幼馴染「眠たくなってきました」ウトウト…
少女「じゃあ、島を案内したげるっ!」
幼友「え?…えっと、もうちょいゆっくり…」
少女「……そうなん?」シュン…
幼馴染「何か、今がいい理由があるのでしょうか」
少女「え、えっと…そうじゃない…けど」チラッ
幼友(…そうみたいだね、時計をチラ見したもの)
少女「じゃあ…私、ちょっと遊んでくるけん…」
幼友「幼馴染ちゃん、まあいいんじゃない?今より後にしたら夕方が近くなっちゃうし…案内、してもらおうよ」
幼馴染「…そうですね、幼友がそう言うなら」
少女「!!」パアッ
幼馴染「男、島を案内してもらいましょう」
男「あー、ええと…ちょっと俺はやる事があります」
幼友「美人の若奥さんとあんな事やこんな事をするんですか!?」
幼馴染「私という女がいるのに…不潔です!」
少女「冴えない野郎、フケツー!」
男「言うまでもなく違います。船に釣具などを出しっ放しなので、こちらの倉庫にしまわせてもらうだけです。二人が使った道具もあるので、なんなら手伝いますか」
幼友「残念だなー、少女ちゃんとの約束が無ければねー」ヒューゥ アブネェ アブネェ
幼馴染「手伝いたいのは山々ですが、幼い少女ちゃんを裏切るわけにはいかないので、やむを得ません…」ヨロシク ドーゾー
少女「じゃあ、行ってくるけん!」
男「はい、行ってらっしゃい」
幼友「片付けは頼むけん!」
男「はいはい…」チッ
幼馴染「実は船の足元、スノコの下にエサ零したけん!」
男「はいはい……えっ!?」
……………
………
…
少女「ここがこの島でひとつだけの商店!」
幼馴染「おお、小さい」
幼友「タイムスリップ感ぱねぇ」
少女「よくお遣いに来るんよ!ちょびっとお菓子も置いとるけんね!」
幼馴染「もしかしてそのお菓子というのは、懐かし系駄菓子でしょうか」ドキドキ
少女「うーん……よく解らんけど、黒棒とか象さんマークのヨーグルトとか」
幼馴染「モロッコヨーグル!あああ……入りましょう!是非!今!」キラキラ
幼友「出たな、駄菓子マニア」
少女「でも二時で閉まってまた夕方に開くけん、今はお婆ちゃん昼寝しとると思うんよ」
幼馴染「くっ……焦らしプレイ……!」
少女「それからここが、ひとつだけのレストラン!」
幼友「レストランというより、漁師さん向けの飲み屋だね」
少女「でもハンバーグとかオムライスとかスパゲッティとか食べさせてくれるんよ」
幼馴染「魚料理はみんな自分の家で食べるでしょうから、そういう需要があるのでしょうね」
幼友「なるほどねー」
少女「入る?」
幼馴染「もう時間が半端です。今日はお母さんが海の幸を振舞ってくれると言っていたので、お腹を空かせておきましょう」ニコッ
幼友「さっき駄菓子に目の眩んだ女が言う台詞じゃねえ……」
幼馴染「あそこは何でしょう……交番?」
少女「……うん」
幼友「男さんが見慣れない不審者扱いされたらいけないから、挨拶しとく?」
少女「だ、大丈夫!男さんは見た目もいい人っぽいけん!」
幼友「少女ちゃん、なんか慌ててない?」
少女「そんな事ないよ!は、早く次、行こう……」
幼馴染「ふっふっふ、お嬢ちゃん……オトコは見た目で判断しちゃいけねえぜ……?」
幼友「男さん、あれで結構おっぱい星人だもんねー」
少女「じゃあ…おっぱいの大きい幼友ちゃんが男さんの彼女さんなん?」
幼友「か…っ!ち、違うよ!彼女はこっちの幼馴染ちゃんだから!」アセアセッ
少女「なんか今度は幼友ちゃん、慌てとらん…?」キョトン
幼馴染「………」
少女「こっちこっちー!秘密のとこ、教えたげるけん!」
幼馴染「教えたら秘密じゃないような」
幼友「いいんだよ、仲間だもんね!」
少女「ねー!」
幼馴染「ちょ……これ、道じゃない……」ゴソゴソ
幼友「なんか獣道って感じだね……」ガサガサ
少女「この島にはイノシシも鹿もいないから大丈夫……えへへ、この道は私達が作ったんよ!」
幼馴染(私……たち?)
少女「ほら、もうすぐ……着いたよー!」
幼友「うわぁ……なんか不思議なところ、すごいねー」
幼馴染「周りが崖に囲まれた砂浜、一箇所だけ海に繋がって入り江になっています」
少女「いいじゃろ!海がちょっとくらい荒れても波が来んから、夏はここで泳ぐんよ!」
幼馴染「これはいいところ……夏にまた来たいくらいです」
幼友「プライベートビーチだねー、道程は険しいけど」
少女「来て来て!絶対、夏休みに来てーね!約束じゃけん!」
幼馴染「じゃあここの事、男にも教えていいでしょうか」
幼友「それは夏に来た時にしよーよ、びっくりさせよう?」
少女「うん!そうしよう!それまでは4人だけの秘密じゃけんね!」
幼馴染「4人……?」
幼友「誰かもう一人、知ってる人がいるの?」
少女「…あっ……」
幼馴染「少女ちゃん、この島には他に子供は……?」
少女「一人……おるよ、まだ……」
幼友「……まだ?」
……………
………
…
…港、係留桟橋
男(だいたい荷物は運び終えたから……)フゥ
男(あのはスノコの下のアミエビを流しとかなきゃ、臭くなるでしょうね……)シクシク
男(幼馴染め……!)ゴシゴシゴシゴシ
男(あのちっぱい娘め…!)バシャーッ
男(……そこも含めて、可愛いのですが!)マイッタネ チキショー!
男(やれやれ、こんなもんでしょう)
男(あとはスノコをたてかけて干して…)コトンッ パタンッ
男(水汲みバケツと借りたブラシを倉庫にしまえば、またコタツにありつけます)テクテク
男(ああ…手が冷たい)
男「……ん?」
少女母「ごめんねー、今は出かけとるんよ」
少年「そうですか……お邪魔しました」ガラガラ……ピシャン
男(……少女ちゃんと同い年くらいでしょうか)
少年「……?」
男「こんにちは」
少年「……こ、こんにちは。……誰…ですか?」
男「船が壊れてちょっとこの家にお邪魔させてもらっている、男といいます。……君は?」
少年「少年…です。その、少女の……」
男「ああ、少女ちゃんの友達ですか」
少年「……友達じゃない…かも」
男(どういう意味でしょう……)
少年「…すみません、さよなら」ダッ
男「少年君」
少年「……?」ピタッ
男「釣りはしますか?」
少年「え…いや、あんまりした事は無いです」
男「そうですか。でも、どこか岸からでよく釣れるところを知りませんか?」
少年「島の大人達は、向こうの防波堤の先でよく釣ってます。渡船で来る釣り客も……」
男「一人で釣るのも寂しいものです。ちょっと付き合いませんか」
少年「でも……」
男「あの防波堤からなら、この家の玄関もよく見えます。少女ちゃんが帰れば判るでしょう」
少年「……ちょっと、家の親に言ってきます」
男「わかりました。少年君の分まで道具を用意しておくので、防波堤に来て下さい」
少年「はい」
…タッタッタッ
男(……家は…あの交番か。警察官の息子なんですね)
………
…
男「簡単な浮き仕掛けなので、投げて待つだけです。撒き餌は俺がしますから、潮に流され過ぎたらまた投げ直して下さい」
少年「はい」
男「ラインを人差し指に掛けて、ベイルを起こして……どうぞ」
少年「え、えいっ」シュッ……ポチャッ
男「まずまずです、あとは浮きをよく見て下さい」
少年「………」ジーッ
男(……素直な良い子です)
少年「………」ジーッ
男(さて、俺は餌撒きついでにサビキでも……)
少年「………」チラッ
男(…やっぱり、少女ちゃんの家が気になるみたいです)
男「少年君、少女ちゃんとは何かあったのでしょうか」
少年「………」
男「ケンカでも?」
少年「ケンカはしてません」
男「…でも、少年君は少女ちゃんに会いたそうです」
少年「………」
男「少女ちゃんは、たぶん少年君に会わないために俺の友達と一緒に出掛けたんだと思います」
少年「…そうですか」
男「何か、思い当たる理由が?」
少年「……僕が約束を破ったから」
男「約束…?」
少年「ずっと一緒に…友達でいるって──」
……………
………
…
…入り江の砂浜
幼友「…そっか。その少年君、島から引越しちゃうんだね」
少女「……それを聞いた時、私…びっくりしすぎて、ついカッとなってしもうたん」
幼馴染「それでケンカを?」
少女「ケンカとは違う……怒ったのは私だけじゃもん。少年は黙って聞いとったから」
幼友「だったら、少女ちゃんがごめんなさいするだけで、仲直りできるんじゃないの?」
少女「仲直りしても、もう向こうは明後日には引越してしまうけん。それに──」
『──独りぼっちじゃった私にやっとできた友達じゃと思うたのに!』
『ずっと一緒じゃ言うたのにっ!』
『少年は裏切り者じゃ!』
『もう、この砂浜に来んでよっ──』
少女「──私…酷い事いっぱい言うたもん、きっと許してくれんよ」
幼馴染「……でも少女ちゃんがこの時間に島の案内をしようとしたのは、家にいたくなかったからでしょう?」
幼友「つまり、少年君が家に来るのが解ってたんじゃないかな?」
少女「………」コクン
幼馴染「少年君は少女ちゃんと仲直りしたいんじゃないでしょうか」
幼友「そうじゃなかったら、訪ねて来ないんじゃない?」
少女「……仲直りした方が、明後日…辛くなりそうじゃから」
幼馴染「少女ちゃん…」
少女「もう、ええんよ。引越しの話を聞いてからずっと考えて、また独りになる覚悟はできたけん」
幼友「本当にそれでいいの?」
少女「うん、夏にはまた幼馴染ちゃん達も来てくれるんでしょ?」
幼馴染「それは約束します」
少女「だったら、平気!…あの岩のとこ、行こう?お魚いっぱい見えるんよ!」
幼友「………」
……………
………
…
…交番の前
男「結局、少女ちゃんは帰ってきませんでしたね」
少年「すみません、五時には帰れって言われてたから……」
男「女の子を遅くまで連れ回すなんて、あとで俺の友達を叱っておきます」
少年「明日、また学校の後で家に行ってみます」
男「…学校は別々なのでしょうか」
少年「僕は私立の小学校へ通ってるから、渡る船の時間も違うんです」
男「そうですか……何か俺ができる事はありませんか?」
少年「…もし明日もなかなか会えなかったら、また防波堤で釣りをさせてくれますか?」
男「お安い御用です」
少年父「……おや?」
少年「あ、父さん」
男「ああ、少年君のお父さんですか。初めまして、男といいます。少年君を釣りのお供にお借りしました」
少年父「初めまして、息子がお世話になりました」
男「……明後日、引越されるそうですね」
少年父「ええ、異動でね…息子には辛い想いをさせてしまいます」
男「お父さん、ちょっとお話できるでしょうか」
少年父「…よかったら上がって下さい。引越しは進めているので、何もありませんが──」
……………
………
…
…少女の家
幼馴染「ん…?男からメッセージが来ました」
幼友「どこをほっつき歩いてるのかねー」
幼馴染「えっ……!? 男、今夜は別の家でお世話になる事になったそうです……」
幼友「まーた、すぐに釣り仲間作っちゃうんだからー」ヤレヤレ
少女母「あらー、せっかくお料理たくさんつくったのにねぇ」
幼馴染「大丈夫、責任をもって私が食べます」
幼友「そして私が飲みます」
少女母「ふふふ……幼友さんはイケるクチみたいじゃねぇ」
幼友「おや…その言いぶりは、少女母さんもだいぶ飲みますね?」キラーン
少女母「漁師の妻じゃからねぇ、負けりゃせんよ…?」キラキラーン
幼馴染「…幼友もすぐに飲み仲間作ります」ヤレヤレ
………
…
…夕食後
少女「幼友さんは?」
幼馴染「まだ少女母さんと飲んでいます。呆れたものです」
少女「母さん、いつもなかなか女同士の話とかできんから、嬉しそうじゃったもん」
幼馴染「そうですね、島には他に若い夫婦といえば少年君の家くらい……あっ…」
少女「………」
幼馴染「少女ちゃん……」
少女「大丈夫、平気。…私も二人が泊まってくれて嬉しいけん!」
幼馴染「……ちょっと待っていて下さい」ガサゴソ
少女「?」
幼馴染「はい!ポテトチップスにチョコ、プチシリーズ各種と夕方に買った駄菓子色々です!」
少女「わぁ、ぼっけぇある!」
幼馴染「冷蔵庫には何かジュースがありますか?」
少女「うん、たぶんあったよ!」
幼馴染「少女母さんが飲み続けているのですから、怒られはしないでしょう。今夜は私達も女同士のパジャマパーティーです」ニコッ
少女「やった!ジュース、とってくるね!」
…パタパタパタ
「コラー!ウチノ ナカデ ハシッタラ イケンヨー!」
「アッカンベーダ!ヨッパライノ クセニー!」
幼馴染(……少しは寂しさが紛れるといいのですが)
幼馴染(でも、本当は少年君と仲直りするのが一番です)
幼馴染(あの娘達二人も幼馴染み……悲しい結末には、したくありません──)
………
…
少女「そんでね、運動会の時は私、リレーのアンカーじゃったんよ!」
幼馴染「それはすごいです、私は走るのは極めて苦手です」
少女「島の人達もたくさん観に来てくれて、楽しかったんじゃけん!」
幼馴染「……学校には友達、たくさんいるのですね」
少女「うん!……でも、放課後とか休みの日とか、ほとんど遊べんもん」
幼馴染「………」
少女「……その運動会の時、少年も来てくれたんよ。いっぱい応援してくれた…私、クラスの娘に冷やかされて恥ずかしかったけど、すごく嬉しかったん」
幼馴染「少女ちゃんは、少年君の事…好きなのでしょうか」
少女「……好き、じゃったよ」
幼馴染「本当に過去形なわけでは無いでしょう?」
少女「………」
幼馴染「私と男も、小さな頃からの幼馴染みです。…離れる事なんか、考えた事もありませんでした」
少女「幼馴染ちゃんも…」
幼馴染「やっぱり、特別な存在です。もし離ればなれになるとしても、そんなに簡単に割り切れる想いではないと思います」
少女「でも…!遠距離レンアイなんて、大人でも続かないって……」
幼馴染「学校の友達が、そう言ったのですか?」
少女「………」コクン
幼馴染「少女ちゃんと少年君は、いつからの友達なのでしょうか」
少女「えと、一年生…じゃったと思う」
幼馴染「じゃあちょうど学校の友達と同じくらいのお付き合い。…明日、そのお友達に訊いてみるといいです」
少女「何を…?」
幼馴染「『もしどっちかが転校したら友達じゃなくなるの?』って、そのお友達が何て答えるか……本当の友達なら、きっとこう言います」
少女「………」
幼馴染「『離れても、ずっと友達だよ』って」
少女「……っ…!」ジワッ
幼馴染「少年君とも、ずっと友達のはずです。ましてや少女ちゃんがきちんと自分の想いを伝えれば、もっと二人の繋がりは強くなるでしょう…?」
少女「幼馴染…ちゃん…」グスッ
幼馴染「まだ、少年君に『好き』とは伝えていないのでしょう?」
少女「うん……」グスンッ
幼馴染「だったら、言うべきです」
少女「………」ポロポロ
少女「私、言う……明後日、最後の日に…告白する」グスッ
幼馴染「…明日じゃないのですか?」
少女「うん、明日は私…また今日の入り江に行く」
幼馴染「……?」
少女「二人であの砂浜に埋めたん…」
幼馴染「埋めた…?」
少女「タイムカプセル…小さいけど、三年生の時に埋めた」
幼馴染「いつ開ける予定のカプセルだったのでしょう?」
少女「いつ…とは決めてないし、中身を少年は知らんの。私がいつか告白する決心がついた時に一緒に掘り出すつもりじゃったん」
幼馴染「それなら二人で…」
少女「ううん、すぐには見つからんと思うけん。明日見つけといて、明後日に二人で開けられたら…」
幼馴染「………」
少女「幼馴染ちゃん、手伝ってくれる…?」
幼馴染「…もちろんです」
……………
………
…
…翌日、昼前
男(さて…午後にはまた少年君と会う事になるでしょうが、お昼はどう過ごしましょう)
男(ここで食事だけ頂きに少女ちゃんの家に行くのも気がひけます)
男(勝手な事をしたので、なんとなく二人に怒られそうでもあるし…)
男(でも、お腹空いたなぁ)
男(ん…?何か食べるものがありそうな店…)
男(漁師さん向けの居酒屋でしょうか……でも昼もやってるみたいだな)
男(何か、食べるか……)
男「こんにちは…」ガラガラッ
幼馴染「はい、こんにちは」モグモグ
幼友「いらっしゃいませ」ズズズーッ
男「………」ガラガラ…ピシャッ
幼友「ちょ、なぜ帰る」
男「いや、なんとなく」
幼馴染「さては昨夜、女性の家に厄介になったとか……」フルフルフル
男「待てまて」
幼友「幼馴染ちゃん、私は味方だからっ!こんな浮気男、早く忘れようっ!?」
男「浮気、してないです」
幼馴染「いやっ!他の女を悦ばせた手で私に触れないでっ!」
男「悦ばせてないです」
幼友「はっ…!まさか、オトコを悦ばせた…!?」
男「キレるぞ」
………
…
幼馴染「そうですか、少年君に会ったのですね…」
幼友「なんとかしてあげたいよねー」
男「しかしそちらの話を聞くに、少女ちゃんは今日も会う気は無さそうです」
幼友「告白の決心がついた時に掘り出すつもりだった…かぁ」
男「あの様子なら、少年君も少女ちゃんを想っているのは間違いないと思うのですが」
幼馴染「その点を聞き出してはいないのでしょうか」
男「フッ…オトコってのはテメエの色恋沙汰を気安く口に出し」
幼友「だめだよ。このヒトが幼馴染ちゃんに告白するのに何年かけたと思ってんの」
幼馴染「というより、告白すら釣りのついで…という感じでした」
幼友「オトコなんて恋に関しては鈍感で奥手で、女より女々しいもんよ?」
幼馴染「同感です」
男「はぅあ」
男「いっそ、今日その入り江に少女ちゃんが行っているところへ、俺が少年君を連れていったらどうでしょうか」
幼馴染「少女ちゃんはカプセルを見つけてから会いたいようです」
幼友「いきなり少年君が目の前に現れたら、素直になれるわけないよ」
男「そんなものでしょうか……」
幼馴染「まったく、本当に女心の解らないヤローです」
男「男心的には面倒臭い限りです、会えば一発解決な気がするのですが」
幼友「やれやれ」フゥ
幼馴染「これだからオトコは」ハァ
男(船、直ったら置いて帰ろうかな……)
……………
………
…
…午後、三時頃
男(結局、二人は少女ちゃんと一緒に入り江へ行ってしまいました)
男(たぶん次の船で少年君が帰ってくるはず)
男(釣りの準備でもするか……)
男(いつ少女ちゃんが家に帰ってくるか判らないんだし)
男(いつでもやめられる、ルアー釣りでいいかな)
………
…
少年「男さん、こんにちは」
男「お帰りなさい。今日も少女ちゃんは出かけています」
少年「……そうですか」
男「まあまあ…気を落とさずに、また釣りでもしながら待ちましょう」
少年「はい」
男「底を探るように、トントン…と手前に引いてきて下さい」
少年「こうかな……えいっ」ピシュッ
男「着底を待って、糸フケをとって……どうぞ」
少年「………」チョンチョン
男(砂底だけど、結構沈み岩や藻場が見えたから多分……)
少年「…わっ!?…な、なんか引いてる!」アタフタ
男「一気に引き上げて下さい」
少年「…釣れたー!」ピチピチ
男「それはアイナメ。30cmはありませんが、岸から釣る分には充分な型です」
少年「すごい、楽しい」
男(………)
少年「えいっ!」ビシッ
男「少年君は島に住んでいるのに、あまり釣りなどはしなかったのですね」
少年「うん……勉強とか頑張らないと、学校でついていけなくなるから」
男「やはり小学校でも私立校、結構な競争があるのでしょう」
少年「……うん」
男「俺には自慢の弟がいます。同じように私立小学校に通い、今は県外の中高一貫校で高校生です」
少年「そうなんですか」
男「勉強に励む弟を尻目に、俺は遊んでばかりいました。…悪い事をしたと思っています」
少年「………」
男「弟も……そして少年君も、本当はもっと遊びたかったんじゃないですか?」
少年「それは…そうだけど、でもいつかこうして引っ越す事になるのも、解ってたから」
男「あんまり島の人達と仲良くなったら、別れる時が辛くなる……と?」
少年「……はい」
男「でも少女ちゃんと離れる事だけは、やっぱり辛そうです」
少年「そんな事ないです!…そんな事」アセッ
男「少年君、友達同士で好きな娘の事を話すのは恥ずかしいでしょうが、俺は大人です」
少年「………」
男「その位の歳の子に好きな異性がいるのは、ごく自然な事だと思います」
少年「…はい」
男「俺も少年君よりもっと小さな頃から、ずっと好きな娘がいます」
少年「今も?」
男「……幸いにも、想い通ずる事ができました」
少年「………」
男「その関係になるためには、やはり気持ちを伝える必要があります」
『──告白すら釣りのついで…という感じでした』
男「…ちなみにそれは、ちゃんと改まった形でしておかないと後々悪く言われます」ボリボリ…
男「と、とにかく…離ればなれになる前に気持ちを伝えておかないと、きっと後悔すると思います」
少年「後悔…ですか」
男「気持ちが通じ合ってさえいれば、きっと距離には勝てるはずです」
少年「……だけど、会えないんじゃ…」
男「本当は、俺の友達から口止めされていましたが……『秘密の入り江』…で、解りますか?」
少年「!!」
男「今、少女ちゃんは俺の友達と一緒に、そこにいるはずです」
少年「…そこは……」
『少年は裏切り者じゃ!』
『もう、この砂浜に来んでよっ──』
少年「……もう、行けないんだ」ギュッ
男「面倒な事だと思いませんか」フゥ…
少年「何がですか」
男「オトコには、やっぱり女心は解りません。『当って砕けろ』が、一番明快で良いと思います」
少年「………」
男「ましてもう時間が無いなら、なおさら。手段も結果も明快が一番じゃないでしょうか」
少年「…はい」
男「小学生に言う事じゃないかもしれません…が、オトコなら」
少年「オトコ…なら?」
男「『そのうち迎えに来るから、信じて待ってろ』くらい言えばいいと思います」
少年「俺が…少女を迎えに…」
男「そうです、他の誰にもさせたくはないでしょう?」ニヤッ
少年(他の…誰かが、少女を迎えに……それは)ドキッ
男「だったら」
少年「そんな事…させない。僕……入り江に行きます!」
……………
………
…
…入り江の砂浜
少女「無い…!確か、この岩の裏に……」ゴソゴソ
幼馴染「まだまだ日暮れまでは時間があります。がんばって探しましょう」
幼友「どんなカプセルだったの?」
少女「ガチャガチャのカプセルに、色を塗っとったんよ…確か、ピンク色」
幼馴染「…何を入れていたのでしょう?」
少女「……貝殻」
幼友「貝殻?何か特別な貝殻なの?」
少女「ううん、この砂浜で見つけたちょっと大きな二枚貝の貝殻なんよ」
幼馴染「これは……ピンクの陶器のかけらですか」
幼友「うわ、ピンクのカラーボール出てきた。すっごい期待したのに、馬鹿にされた気分…」
少女「………」ゴソゴソ
『少女、何を埋めるの?』
『これ!カプセル!』
『中身が判らないよ……何が入ってるの』
『内緒!開ける時のお楽しみなんじゃけん、勝手に掘ったらいけんのよ!?』
『それじゃ一緒に埋める意味、無いんじゃ……』
『ううん、あるんよ。ずっとそうじゃったっていう証拠なんじゃから』
『ますます解らないけど、まあいいや』
『少年は三年生の時にカプセルを埋めたって事だけ、忘れたらいけんのんじゃけんね!』
少女(…無いんかな……もうダメなんかな…)ゴソゴソ
幼馴染「……ん?これ、ほとんどピンク色が剥げてますが…ガチャガチャのカプセルっぽいような」
少女「え……!」
幼友「本当だ!ちょっとだけピンクの塗料、残ってる!」
幼馴染「……ただ」
少女「開いてる……中身は!?」
幼友「二枚貝の貝殻……これじゃない?」
幼馴染「あ、うっすら『少女』って書いてあります!」
少女「嘘……片方しかない……!」
幼友「もう片割れもあったんだ?」
少女「…繋がったままじゃったんよ。それで片方に私の名前、もう片方に少年の名前をマーカーで書いとったん……」フルフル…
幼馴染「ち、近くにあるはずです!探しましょう!」
幼友「らじゃー!」
少女(願掛けじゃったのに……告白する時、『あの時からずっと』好きじゃったって伝えるつもりじゃったのに…!)
幼馴染「おかしいです、近くにあるはずなのに……」ゴソゴソ
幼友「無いなあ…似たような貝殻も無いよ」ホリホリ
少女「………」ザクザク
幼馴染「そ、そうです!昨夜の少女母さんの料理にハマグリが!」
幼友「それじゃダメでしょ」
少女「………」ザクザク
幼馴染「少年君が中身を知らないなら、その一枚に二人共の名前を書くとか!」
幼友「幼馴染ちゃん、落ち着いて」
少女「ありがとう……もう、いいん…」
幼馴染「少女ちゃん…」
少女(やっぱり、暗示されとったんよ。離ればなれになるって…)
…ガサッ……ザッ!
少年「…少女!」
少女「嘘……少年…!」ドキッ
幼友「え!この子が少年君…!」
男「…そうです、よっこらしょ」ガサゴソ…フー ヤレヤレ
幼馴染「男!連れてきてはだめだと…!」
男「ええい、しゃらくせえ。白黒はっきりさせりゃいいんです」
少年「ごめん…来ちゃだめだって言われたけど…僕、どうしても」
少女(……来て…くれたん…)
少年「お、男さんに言われたんだ!気持ちを伝えなきゃだめだって…!」ドキドキ
少女「気持ち…?」
少年「僕、少女の事…好きだから…!」
少女「……少年…!」
.
幼友(えんだあああああぁぁぁぁぁ!)
幼馴染(いやああああぁぁぁぁぁ!)
少年「『離ればなれ』にはなっちゃうけど……」
少女「!!」ズキン…
幼馴染(そのキーワードは…!)ギャーー
幼友(今はマズイってーーー!)アワワワ…
男「何をあたふたしているのでしょう?」
少女「……そう、なんよね」ボソッ
少女(気持ちは嬉しい…けど、やっぱり貝殻が暗示する通りにしか……)
幼馴染「しょ、少女ちゃん…」
少女「少年、ごめんね……でも私達が会えんようになる事は、もう決まっとったみたいじゃけん!」ニコッ
少年「え……」
少女「じゃから、元気でね!…明日は寂しくなるけん、見送りにはいかんから!」
少女「幼馴染ちゃん、幼友ちゃん!家、帰っとくけん!」
幼友「少女ちゃん!待って…!」
少年「少…女……」
幼馴染「……男、タイミングが悪すぎます」
男「……おや?」
幼友「なぜ連れてきたし!」
男「ビシッと告れば上手くいかない訳が無いと思って…」
幼馴染「はぁ…少年君、悪いのは男です。あとでしっかり、てーいしておきます」
男「ひっでえ」
幼友「そうそう、私の胸で慰めてあげよう!」
少年「…いいんです。男さんのおかげで、すっきりはしました」
男「少年君…」
少年「ありがとうございました。自分の荷物まとめるので、帰ります」
幼馴染(…何とかしてあげられないのでしょうか)
……………
………
…
…その夜、少女の家
少女母「ウチの人から連絡があって、明日の朝イチには帰ってくるって言うとったけんね」
男「すみません、たかがエア抜きくらいの事で二日もお世話になってしまって」
少女母「いいんよー! 今夜は飲み手が増えるから、嬉しいわ!」
男「幼友ちゃん、少女母さんはそんなに飲むのでしょうか」ヒソヒソ
幼友「バケモノ級だよ……」ボソボソ
少女母「さあ、乾杯しましょ! 瓶、持った?」
男「そこは瓶じゃなくグラスのような気が」
幼友「本当に一升瓶が一人一本置いてあるし」
少女「………」モグモグ
幼馴染(少女ちゃん…)
………
…
幼馴染「少女ちゃん、もう部屋にいたのですか」
少女「幼馴染ちゃん…」
幼馴染「今夜もパジャマパーティー、しますか?」
少女「ううん……大丈夫」
幼馴染「明日、本当に見送りはしないつもりですか…?」
少女「うん…たぶん」
幼馴染「…それで後悔はしない?」
少女「………」
幼馴染「少年君は、勇気を出して気持ちを伝えてくれました」
少女「………」
幼馴染「少女ちゃんは……たしかに貝殻の願掛けには破れたけれど、まだ言葉にはしていません」
少女「でも、伝えてもどうせ……」
幼馴染「離ればなれになったからといって、繋がりが断ち切られるわけでは無いのでは?」
少女「あと一年で中学生じゃもん、すぐに好きな娘とか…できるよ」
幼馴染「別々の学校なのは、今も同じ事でしょう」
少女「それは……そうじゃけど」
幼馴染「私立の小学校にも同じように女の子はいるはず。それでも少年君は少女ちゃんを好きになりました」
少女「………」
幼馴染「昨日も言いましたが…友達も、好きな人も『離れてもずっと変わらない』気持ちというのはあると思います」
少女「でも…期待し続けて、やっぱりダメじゃったら……」
幼馴染「……ここから先は、少女ちゃんが自分で決める事です」
少女「…うん」
幼馴染「もしも明日、もう一度貝殻を探してみるつもりなら手伝います。どうせ船が直るまでは暇ですので」
少女「幼馴染ちゃん……」
幼馴染「では…おやすみ……なさい……」ZZZzzz…
……………
………
…
…翌朝、港
男「はいはい、次…渡しますよー」ヨッコラショ…ット
少年父「すみません、荷物積み込みの手伝いまでさせてしまって」
男「いえいえ。今、少女父さんが船を整備してくれているので、どうせ暇です」
少年「父さん、この箱は?」
少年父「ああ…それは軽いから、一番上だな」
男(少女ちゃんも幼馴染達も、朝の内に消えてしまいました…)
男(またあの砂浜に行っているのでしょうか)
……………
………
…
…入り江の砂浜
幼友「やっぱり、無いね…」
幼馴染「もうそろそろ、少年君の家で引越しにチャーターした渡船が出る時間です」
少女「……ダメ…だったなぁ」シュン…
幼友「もう貝殻無しでも、告白しちゃえばいいじゃん! 少年君が少女ちゃんを好きなのは判ってるんだから!」
幼馴染「幼友……」
幼友「伝えない方が、絶対に後悔するって!」フンス
幼馴染「…もちろん、幼友の言う通りだと思います。でも私は少女ちゃんの気持ちも、ちょっと解る気がします」
少女「……?」
幼馴染「私と男もそうですが、幼馴染みという関係は何となく普通の男女とは違うように思っていました」
幼友「ノロケる気?」
幼馴染「お互いの気持ちも大事です。でもその特別な立ち位置は、運命的に神様がくれたもののような気がして」
幼友「…くっ……」
少女(綺麗にスルーした…)
幼馴染「少年君と少女ちゃんは産まれた時から近所というわけでは無いのかもしれませんが、物心ついた頃から傍にいるのが当たり前…」
幼友「………」ズキン
幼馴染「だからこそ、お互い好きでも確証が無い……なかなか特別になれなかった気がします」
少女「…うん」
幼友(……違う…)
幼馴染「誰かに、何かにその特別な絆を証明して欲しい……少女ちゃんにとっては、それが貝殻の願掛けだったのでしょう?」
少女「そう…かもしれん…」
幼友(……違うよ…)
幼馴染「だから、それを失くしたから自信も無くす…その気持ちは──」
幼友「──ちょっと、待った」
少女「幼友ちゃん…?」
幼友「異議あり…だよ、幼馴染ちゃん」
幼馴染「幼友……何を言う気でしょう」
幼友「確かにね、小さい頃…産まれた頃から一緒っていうのは、特別な存在かもしれない」
少女(え…幼友ちゃん、怒っとる…?)
幼友「その事を誰かに証明して欲しい?…甘ったれた事、言わないでくれる?」フンッ
幼馴染「…喧嘩を売っていますか」ジロッ
幼友「買う?…高くつくけど」キッ
少女「ま、待って…なんで喧嘩になるん…!? やめてっ!」
幼友「『好き』なんて気持ちは、誰かに証明してもらうものなんかじゃないの! 傍にいるのが当たり前? そんなの境遇に甘えて尻込みしてるだけの言い訳でしょ!?」
幼馴染「……う…」
幼友「『告白が釣りのついで』だった…!? それでも向こうから言ってくれただけマシだったんじゃないのっ! どうせそれが無ければ今でもオサナナジミの立場に甘えてたんでしょ!?」
少女「お、幼友ちゃんっ…」
幼友「少女ちゃんだって、そう! せっかく少年君から告白してくれたのに、離ればなれになるからって答える事もしない…!別に少年君だって好きで引っ越すんじゃないわよ!」
幼馴染「幼友っ!今、落ち込んでる少女ちゃんを叱ったって…!」
幼友「ううん、叱るわ! だってまだ間に合うかもしれないんだもん! 今から港に走れば、少女ちゃんは告白できるかもしれないんだよ!?」
少女「……っ…」ビクッ
幼友「離れて行っちゃったら、それももうできない……いつか再会しても、そのヒトの傍に誰かがいたら気持ちを伝える事も許されないの…」ポロッ…
幼馴染(……幼友…泣いて…)
幼友「だからっ! まだ間に合う内に、言わなきゃいけないんだよ!」
少女「まだ…間に合う…」
幼友「好きなヒトに…『好き』って言えないのが、一番…辛いんだからっ……」グスッ…
少女「幼友ちゃん…ごめん、ごめんな…! 私、港に行くっ!」グスッ
幼馴染「……少女ちゃん!」
幼友「コレ……さっき、見つけた」スッ
少女「新しい…貝殻、まだ二枚繋がっとる…」
幼友「名前なんか、書かなくてもいいよ。一対になった貝殻は二つと無いんだから」
幼馴染「…行くなら、早くしましょう! 時間が…!」
少女「うんっ…!」
……………
………
…
…港、桟橋
少女母「ごめんね…少年君。結局あの娘、来なかったねぇ」
少年母「大丈夫、また手紙を書かせますから…」
男「少年君、また釣りに誘います。その時には、この島にも…」
少年「はい…楽しみにしてます」
少年父「男さん、息子がお世話になりました。じゃあ、残念だが船頭さんを待たせるのも悪い……そろそろ乗ろう」
少年「………」チラッ
男「……少年君」
少年(さよなら……少女…)
…ブルンッ、ドッドッドッ……ブロロロロッ!
少年「男さん! さよなら…!」
男「元気で…! また会いましょう!」
………
…
幼馴染「もう船が…!」
幼友「男さんっ! 船、停めてっ!」
少女「少年…っ! 待って…待ってっ!」
幼馴染「だめです! 船のエンジン音で聞こえてない…!」
幼友「くっそ…もうすぐそこなのに…!」
少女「もうダメだよ…桟橋から離れとる…」グスンッ
幼友「幼馴染ちゃん! ダメもとで叫ぶよっ!」
幼馴染「男なら…! 気付くはずっ!」スウゥゥッ
幼友「せーの……!」スウゥゥッ
幼馴染「てーーーーーーーいっ!!!」
幼友「とーーーーーーーうっ!!!」
.
男(……ん…?)
少年「…さよーならーっ!」
男「ま…待って! ストーップ!! 少年君っ…船頭さん止めて!」
少年「え……!?」
…ブロロロロッ…ドッドッドッ…
男「船頭さん!少しだけ待ってあげて下さい!」
船頭「しゃあねえな……もっかい桟橋に着けるかい?」
少年「お願いします!」
幼馴染「男っ…! 聞こえましたか…!」ハアハア
幼友「ぎりぎり…せええぇぇふ…!」ゼエゼエ
少女「少年っ!」
少年「少女…来てくれたんだ」
少女「ごめんっ…私、ちゃんと返事もせんで……私、待っとるから! 少年の事、す…好きじゃから!」ドキドキ
少年「うん…! 必ず会いにくるから!」ドキドキ
少女「これ、カプセルの中身……とは違うんじゃけど」スッ
少年「二枚貝…?」
少女「ちぎるよ……えいっ」ブチッ
少年「……片方、くれるの?」
少女「二枚貝の片割れは、他のどの貝とも合わんから…! 私、片方をずっと持っとくけん!」グスン…
少年「うん…ありがとう。僕もずっと持ってる、絶対に」ニコッ
男「…最初の夜、少年君の家に泊まって少年父さんから詳しく聞きました」
幼友「何を?」
男「少年君の引っ越す先……○△市だそうです」
幼馴染「私達の地元の隣りですか」
男「それに引越し先の最寄駅から、この島への連絡船が出ている港までは電車で僅か30分です」
少年父「…少年、お前ももう大きくなった。一人でちょっと旅するくらい、できないオトコに育てた覚えはない」
少年「え……」
男「小学生の二人にとっては途方も無い距離に思えた事でしょう……でも、引越し先とこの島は決して遠くはないという事です」
幼友「毎日学校に通ってるんだもん、少女ちゃんも本土の港へ出るのは簡単だよね?」
少女「……うんっ!」
少女母「週末にはウチに泊まりに来たっていいけんね!」
少年「はいっ!」
男「それに……俺もせっかく島に来ておいて、あまり魚釣りをする暇がありませんでしたので」
幼馴染「私達に至っては、全くしていません」
男「少年君と少女ちゃんに、島のポイントを案内してもらいたいものです。…構いませんか?」
少年「テスト期間じゃなかったら、いつでも!」ニコッ
少女「うんっ! それも待っとる!」フンスフンス
男「それぞれのご両親も、構わないでしょうか」
少年父「頼みたいくらいですよ」
少女母「その後、ウチに飲みに来るんならええよ!」キラーン
幼友「次は負けませんからっ!」キラキラーン
男「さあ…そろそろ船頭さんが、待ちくたびれて……」
幼友「船頭さーん?」
船頭「うおおぉぉうぅぅぅ……餓鬼が、泣かせやがってよおおぉぉ…」エグッ…ヒック…ボロボロ
……………
………
…
…昼過ぎ、島を離れた海上
ブロロロロロ……
男「ひゃっほーい、エンジン快調!」
幼友「たまたま寄った島で、なんか色々あったねー」
男「全くです、良い出会いに恵まれました」
幼馴染「私がガス欠させたおかげです」エッヘン
幼友「原因はそうだけど、威張る事じゃないね」
男「まあ、事情と三日間の話をしたら少女父さんも無料で良いと言ってくれたので、よしとしましょう……」チッ
幼馴染「………」
幼友「…どしたの?」
幼馴染「幼友、もう怒っていませんか…?」
幼友「当ったり前じゃん……ってか、言い過ぎてごめんね?」
幼馴染「ううん、幼友の言う通りだったと思っています」
幼友「もう、いいじゃない? 忘れたから、忘れてー」
幼馴染「……はい」クスッ
幼馴染(でも、きっと忘れられません)
『好きなヒトに…好きって言えないのが、一番…辛いんだからっ……』
幼馴染(あの時、誰を想って泣いたのか)
幼馴染(いつか、ずっと先の話でいいから…教えて下さい、幼友…)
【おしまい】
979 : ◆M7hSLIKnTI[] - 2014/01/14 20:11:08 IaPn0f9w 71/75ちょっと削ってスレ内完結余裕でした
では、またてーいしましょう
980 : 以下、名無しが深夜にお送りします... - 2014/01/14 20:17:45 WnOq/N.w 72/75乙なのです
981 : 以下、名無しが深夜にお送りします... - 2014/01/14 20:28:40 r18LXHT. 73/75乙てーい
982 : 以下、名無しが深夜にお送りします... - 2014/01/14 20:46:24 tzrBTSG6 74/75乙とーう
985 : 以下、名無しが深夜にお送りします... - 2014/01/14 22:20:04 j5LVikCQ 75/75乙
次スレはあるんだよな?
好きなだけてーいして良いんだよな?

