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――――【 12月13日 】
竜騎士「ん~…!」ノビノビ
女武道家「朝の準備体操も終わりましたし、そろそろ行きますか?」
竜騎士「行くか…。そうだ女武道家、石はきちんと持ってるな?」
女武道家「もちろんです」スッ
竜騎士「なくすなよ」
女武道家「当たり前ですっ」
竜騎士「それじゃ、湿地帯からサードエリア目指すか」
女武道家「はいっ!また、ドライアドさんに会えますしねぇ」
竜騎士「あ、あぁ…」
女武道家「どうしたんですか?」
竜騎士「いや、変わった奴と友達になっちまったなと…」
女武道家「変わってなんかないですよ。もう、立派な対等なお友達なんですから!」
竜騎士「はは、まぁな」
女武道家「さぁ、出発です!」ダッ
竜騎士「あ、先に走るな!」
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――――【 湿地帯 】
ドロドロ…ザッザッザ…
竜騎士「…」キョロキョロ
女武道家「昨日、ドライアドさんがいたのはこの辺でしたよね」
竜騎士「ん~…今日はいないみたいだな」
女武道家「折角だから挨拶したり、色々話もしたかったんですが…」
竜騎士「…道の案内も頼めたら頼みたかったんだがな」
女武道家「ですねえ」
ザッザッザ…ピタッ
女武道家「…あ、お花が置いてありますよ」
竜騎士「おー…花?」
女武道家「昨日こんなのなかったはずですが…」
竜騎士「何の花だ?」
女武道家「アサガオと、キキョウですね。近くに咲いてるんでしょうか」
竜騎士「…」
女武道家「それとも、ドライアドさんからのプレゼントとかっ!」
竜騎士「…そうかもな」
女武道家「多分、そうですよね♪」
竜騎士「後できちんと花として保存するようにしよう。バックの隅っこに入れとけ」
女武道家「はいっ」
ゴソゴソ…
竜騎士「あとな、そりゃアサガオじゃなくてヒルガオだ」
女武道家「ひ、ヒルガオですか?」
竜騎士「ちょっとした違いがあるからな」
女武道家「珍しい花ですね、あまり聞きませんよ」
竜騎士(あいつめ…、何だかんだで友達って喜んでるんじゃねーか)ハハ
女武道家「どうして…笑ってるんです?」
竜騎士「その2つの花言葉、教えてやろうか」
女武道家「あっ…だからお花だったんですね。彼女、木…自然の精ですもんね」
竜騎士「ヒルガオは"優しい愛情"だ」
女武道家「愛情…友情じゃなくてですか?」
竜騎士「お前の言葉と態度で、愛情を感じたのかもな」
女武道家「キキョウは…どういう意味なんでしょうか」
竜騎士「"優しい温かさ"だ」
女武道家「優しい…温かさ」
竜騎士「言うところ、優しさと温かい愛情…だな」
女武道家「へへ…なんか恥ずかしいですね」
竜騎士「…分からなくもないな」ボソッ
女武道家「えっ?」
竜騎士「何でもねぇ!さっさと行くぞ!」
女武道家「今何て言ったんですか!教えてくださいよぉ!」
竜騎士「あ~もう、置いていこうっと!」ダッ
女武道家「置いていかないでください~っ!」ダッ
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――――【 サードエリア手前 】
ザッザッザッザ…
竜騎士「おっ」
女武道家「あっ!」
竜騎士「湿地帯の終わりだ…。ってことは…あの建物は!」
女武道家「…ついに、サードエリアですね」
竜騎士「…あぁ」
女武道家「湿地帯も結構長い距離でしたけど、敵っていう敵がいませんでしたね」
竜騎士「恐らく最大の天敵はアイツだったんだろうな」
女武道家「ドライアドさんですか」
竜騎士「それと、竜族や他の種族の匂いや感覚がなかった。恐らくドライアドがしてくれたんだろう」
女武道家「他の種族が湿地帯に入らないようにですか?」
竜騎士「彼女のテリトリーには、そう簡単に他の種族は侵入できないっつーのもあるが」
女武道家「さすがですね~…」
竜騎士(俺から言わせりゃ、お前がさすがだよ)
トコトコ…ピタッ
竜騎士「さて、ここから先がサードエリアの入り口。聖堂への大通りだ」
女武道家「…」
ガサガサッ…パァァッ…!!
竜騎士「…おぉ」
女武道家「わぁ…」
サラサラ…ゴーン…ゴーン…
竜騎士「大通りのに整備された小さな川…。遠くで響く鐘の音…。何て綺麗なんだ…」
女武道家「本当に遺跡なんですか…これ」
竜騎士「今にも住民たちの声が聞こえてきそうだな…」
女武道家「この鐘の音はどうして聞こえるんでしょうか」
竜騎士「恐らくこの先にある聖堂のじゃないか。通りの脇を水が流れているからな。水力で鳴るんだろう」
女武道家「高い技術力ですね~」
竜騎士「…ファースト、セカンドと比べてこの通りは本当に"生きている"ようだ」
女武道家「もしかして、生きているんじゃないですか?」
竜騎士「え?」
女武道家「だって、ファフニールさんがいるとか言ってたじゃないですか」
竜騎士「あー竜族の長的なヤツか」
女武道家「知力があるとしたら、他の竜族さんらと町に住んでいるのかもしれませんよ」
竜騎士「その考え…充分有りだ」
女武道家「それと、もしかしたらファフニールさんだって話せば分かる人かもしれません」ムフー
竜騎士「…」
女武道家「手荒にせず、ここは穏便に行くってのもありですね!」
竜騎士「お前、友達になるつもりなの?」
女武道家「ダメですか?」
竜騎士「いや…まぁ…うん…」
女武道家「むう」
竜騎士「ドライアドが言ってただろ。ファフニールとは本格的な戦いになるかもしれないとか」
女武道家「あ~…そういえばそうですね…」
竜騎士「ここは慎重に行く。アイツらは匂いにも敏感だしな」
女武道家「はい」
竜騎士「…うし、まずは軽く見納めだ。ここまで来る事はもう難しくはないからな」
女武道家「わかりましたっ」
カサカサ…ヒュ…ビュウウウ~…!!!
竜騎士「うっぷ!」
女武道家「きゃっ!」
竜騎士「突風か!大通りが吹き抜けの役割をしているんだ…!」
ビュウウ…ウゥゥ…
竜騎士「ふぅ…収まったか」
女武道家「凄い風でしたね」
竜騎士「水なんかも流れてるし余計かもな……ん?」
ドォンッ!!!バリバリバリッ…
竜騎士「何だ!?」
女武道家「あ…通りの向こう側、遠くの建物から何か飛びだしました!」
竜騎士「何、どのくらいの距離だ?」
女武道家「まだかなり離れ…いえ、凄い速度で近づいてきます!」
竜騎士「…一旦ココを離れるぞ!」
女武道家「は、はいっ!」
ゴォォォ…ズズゥゥン!!!グラグラグラ…
竜騎士「なっ!は、早い!」
女武道家「も、もう回り込まれた…!?」
竜騎士「あ、赤く巨大な竜…。まさかこいつが…」
ファフニール『…』
竜騎士「はは…女武道家、一応武器を構えろ」スチャッ
女武道家「…はい」スチャッ
竜騎士「…」
女武道家「…」
ファフニール『…』
竜騎士「…ファフニール、俺は争う気はない。出来れば、見逃して欲しい」
ファフニール『…』
竜騎士「お前たちのテリトリーを荒す気はないし、何をする気もない。頼む」
ファフニール『…ほう』
竜騎士(言葉が分かる…!話が通じるか…?)
ファフニール『ココへ人間が姿を見せるのは久しいな』
竜騎士(それにしても、何故俺たちがココにいる事を分かったんだ…)
ファフニール『…風に運ばれてきた匂いだ』
竜騎士「!?」
ファフニール『突風にわずかに感じられた匂いに、人の匂いが混じっていたからな』
竜騎士「まさかそんなわずかな…というか、俺の考えを読んだのか!?」
ファフニール『造作もない事だ』
竜騎士「…っ」
女武道家「…心を、読むってことですか…」
ファフニール『…そうか、お前たちは竜騎士と女武道家というのか』
竜騎士「…」
女武道家「…」
ファフニール『…』
竜騎士「…お前は、俺たちと戦うのか?」
ファフニール『…』
竜騎士(こんな相手に、勝てる見込みなんてないんだ…!見逃してくれ!)
ファフニール『…例えば』
竜騎士「…?」
ファフニール『我がお前達を殺すのは簡単だ』
竜騎士「まぁそうだろうな」
ファフニール『で、その時…何か変わるものはあると思うか?』
竜騎士「俺らの存在が消えて、影響がなくはないと信じたい」
ファフニール『あぁ…いや。そういう意味ではない』
竜騎士「何?どういう意味だ?」
ファフニール『…我に対して、だ』
竜騎士「お前に対して?」
ファフニール『そう。お前達自身の事はなく、我にとって…何か変わるモノはあるか?という事だ』
竜騎士「…何が言いたい」
ファフニール『はぁ…分からぬか。では、教えてやろう』
竜騎士「…」
ファフニール『我の…"愉しむ心"だ…』ニタッ
竜騎士「…女武道家、逃げろ!!!」
女武道家「!」
竜騎士「とにかく、湿地帯を抜ける用に走れぇっっ!!」ダッ
女武道家「は、はいっ!!」ダッ
ダダダダダダッ!!!
竜騎士「全速力だ!振り返るな!!」
女武道家「どどど、どうしたんですか!」
竜騎士「アイツ、俺らを殺す事を"愉しむ事だ"といいやがった!本気で来るぞ!」
女武道家「そ、そんなっ!」
竜騎士「湿地帯ならまだドライアドのテリトリー…アイツだってそう簡単には…」チラッ
ドドォン…ゴォォォッ…!!!
ファフニール『ハハハハッ!全てを燃やしつくし、久々の鬼ごっこと行こうか!』
竜騎士「…はは」
ダダダダダッ…!!!
ファフニール『我の住む場所まで来る人間はいつぶりか!愉しもうではないか!』
竜騎士「爺ちゃんのことか…?く、くそぉ!それよりこのままだと追いつかれちまう!」
女武道家「うう~っ…!」ブルブル
竜騎士「ど、どうした?」
女武道家「…もう、我慢できません…」
ズザザザァ…ピタッ
竜騎士「あ、おい!?何で止まるんだ!!」
女武道家「こらぁぁ!ファフニールさんっ!」
ファフニール『む…?』
女武道家「これ以上、この森を、自然を壊さないで下さい!!」
竜騎士「何?」
ファフニール『何だと?』
女武道家「ここにはドライアドさんが住んでるんですよっ!そんな暴れたり、燃やしちゃダメです!」
竜騎士「…おま」
女武道家「いくら強い竜だとか、竜族の長とか、関係なく…そういう事は許しませんよ!」
ファフニール『…ふ、ふははははっ!』
竜騎士「…っ」ビリビリ
女武道家「…」ビリビリ
ファフニール『お前自身の事ではなく、まさかドライアドのヤツを気にして…!?』ハハハ
女武道家「何がおかしいんですかぁっ!」
ファフニール『あ~…まぁ遅かれ早かれ…こうなってたか』スゥゥ
女武道家「…?」
ファフニール『ガァァァァッ!!!』クワッ
ブワッ…ゴォォォォッ!!!ドォンッ!!!ボォォォッ…!!
女武道家「!」
竜騎士「な…何て量の炎を…森に!全て燃やすつもりか!」
女武道家「ど、ドライアドさんの森が、湿地帯が…!」
ファフニール『ハハハッ!そもそも我らにとっても、この森はジャマだったからな。いい機会だ』
女武道家「な…何て事を…!」
竜騎士「…くっ!」
女武道家「許せない…」
ファフニール『む…どうした?もう逃げないのか?』
女武道家「酷い…酷すぎます!」
ファフニール『これで森を気にせずに逃げられるだろう?ほら、逃げろ」
竜騎士「…っ」
ファフニール『少しずつ、お前達の体を壊していく。そして、叫ぶがいいさ…ハハハハッ!』
女武道家「ゆ、許せない…絶対に!」スチャッ
竜騎士「ダメだ!勝てる相手じゃない!」
女武道家「気攻波ぁぁっ!!」ビュンッ!!!
…ボォンッ!!
ファフニール『…ん~?』
女武道家「効いてない…!?」
竜騎士「…!」
ファフニール『ははは、何かしたか?まさか、攻撃したつもりか?』ニタッ
女武道家「そんな…」
竜騎士「…早く離れるぞ!」グイッ
女武道家「は、はいっ」
ファフニール『…おっと、待て』
ビュッ…ガシッ!!!
女武道家「!」
竜騎士「女武道家!」
女武道家「うっ…くっ…苦し…」ギリギリ
竜騎士「女武道家を離せ!」
ファフニール『…少し、気が変わった』
竜騎士「…何!?」
ファフニール『やはり、鬼ごっこより"戦い"のほうが愉しそうだ』
竜騎士「…っ!」
ファフニール『それと、こっちの女よりお前のほうが実力は高いようだな』
女武道家「うぅっ…」ググッ
ファフニール『なら、先にコッチの女を殺してサシでの勝負といこうではないか』スゥ…
竜騎士「なっ…や、やめろ!!!戦いならやってやる…だから女武道家を離してくれ!!」
ファフニール『聞こえないな』スゥゥゥ
女武道家「り…竜騎士さ…」
竜騎士「女武道家ぁ!」
ファフニール『カァッ!!』ゴッ!!
ゴォォォォッ!!!
竜騎士「女武道家ぁぁぁっ!!」
ゴォォォ…フウッ…ドシャッ…
ファフニール『くく…これでサシとなったワケだ!一瞬で見事に黒焦げだな』ハハハ
竜騎士「なっ…う、うそ…だろ…?」
ファフニール『…どうした?』
竜騎士「お、女武道家が…も、燃やさ…れ…た…?」
ファフニール『何をしている…さあ、武器を構えよ。我と戦おうではないか』
竜騎士「…」
ファフニール『…早く立て。これで周りの邪魔はいないのだぞ?』
…ガクッ
竜騎士「…」
ファフニール『一体どうしたというのだ、座り込んで…。女の仲間一人くらい殺されたくらい…』
竜騎士「…」
ファフニール『…ほう?なるほどな』
竜騎士「…」
ファフニール『お前の恋人だったのか?その淡い感情、恋心…か?』
竜騎士「…」
ファフニール『なら、普通は殺されて復讐心で燃えるものではないか。恋人の敵、取るつもりで来い』
竜騎士「…目の前で…女武道家を…はは…」
ファフニール『…つまらん。脆いヤツだ』ハァ
竜騎士「…」
ファフニール『…本当につまらぬ。ならば、一緒に死ぬが良い…』スゥゥゥ
竜騎士「あ…」
ファフニール『カァッ!!!』ゴッ
ゴォォォッ!!!
竜騎士「…終わり、か」
ビュンッ!!!
???『何ボサっとしてるんだよ!』
…ガキィンッ!!!
竜騎士「!」
ドライアド『森の仲間が騒いでいれば…ファフニール!私の土地を燃やすなんて、いい度胸だ!』
ファフニール『ぬ…ドライアドか!』
竜騎士「ドライアド…」
ドライアド『女武道家は死んでなんかいないよ…ほら』
竜騎士「…え?」
シュバァッ…パラパラ…
女武道家「ごほっ…ごほごほごほっ…!」
竜騎士「お、女武道家!!」
ファフニール『何だと…!?だが確かに燃やした手ごたえはあった!』
ドライアド『あんたが燃やしたのは、女武道家を囲った私の枝だよ。黒こげにされちまったけどね』
竜騎士「…!」
ファフニール『貴様…人間をかばったのか!』
ドライアド『…』
竜騎士「ドライアド…な、何て言ったらいいか…!」
ドライアド『…私の枝だけじゃない。そいつの持ってた何かで、ダメージは収まったみたいだけどね』
竜騎士「まさか!」ハッ
ゴソゴソ…チクッ
竜騎士「痛っ…、石が割れている…俺の渡した保護の石か…!」
女武道家「ごほごほ…っ!」
竜騎士「良かった…本当に…」ギュウッ…
ファフニール『…ドライアド、どんな風の吹き回しだ?貴様、人間を食って生きていただろうが』
ドライアド『気が変わる事だってある』
ファフニール『道理で人が我の住処へ来た訳だ…、歳をくってボケたか?』
ドライアド『ふん…』
ファフニール『いいだろう。所詮貴様は木の精。我が炎の前には何も出来ぬ!』
ドライアド『さぁね、あくまでもココは私のテリトリーって事…忘れてるんじゃないの?』
ファフニール『ならばその全てを燃やし尽くしてくれる!!』スゥゥゥ
ドライアド『火など吐かせるものか!はぁっ!」シュバアッ!!
シュバァッ!!…バチイッ!!
ファフニール『ぬぐっ…!』
竜騎士「周りの残った木々の枝が…!」
ドライアド『ここは私の森。全てが私の仲間!…ファフニールに思い知らせてやれっ!』
竜騎士「…ドライアド、人型から戻らないのか?」
ドライアド『冗談…本態になったらあっという間に燃やされる。小さいほうが有利』
竜騎士「だけど、このままで戦えるのか?」
ドライアド『そう力は変わらないから。それより逃げたほうがいい…恐らく私じゃ勝てない』タラッ…
竜騎士「…一緒に戦えるぞ、俺は」
ドライアド『その子を背負ったまま?』
女武道家「…」
竜騎士「…」
ドライアド『無理でしょ。今は逃げなよ…私が援護してあげるから』
竜騎士「くそっ…すまん…」クルッ
ドライアド『久しぶりに昨晩いい夢見れたんだよ…それだけで感謝する。ありがとう』
竜騎士「…」
ファフニール『ガアアアッ!!』ゴォッ!!!
ボォォッ…ボトボトッ…
ファフニール『木々、自然の仲間など堅苦しいわ!』
ドライアド『く…早く!』バッ
竜騎士「くっそ!…生きてくれよ!!俺らは、必ずここに戻ってくるからな…!」ダッ
ダダダダダッ…
ドライアド『はぁ~…天敵の属性を持つ相手と殺し合いで、生きてくれよ…か』
ファフニール『ふはは、いいぞ。お前に免じてアイツらは逃がしてやる』
ドライアド『そう?ありがとう…私は貴方を殺すつもりでいくけどね』
ファフニール『…殺すつもりか。面白いな』
ドライアド『あと別にアイツらの為だけじゃない。私のテリトリーを犯した事…それに何より怒ってるだけだ』ギロッ
ファフニール『ハハハハ!…行くぞ!』スゥゥ
ドライアド『…かかってきな!』グググッ
…ドゴォォォンッ!!!ミシミシミシ…パラパラ…
竜騎士「!!…今の音、まさかドライアドが…」
竜騎士「…」
竜騎士「…いや、きっと大丈夫だ。きっと…」
女武道家「…」
竜騎士「必ず、必ず戻ってくるからな…!」
タッタッタッタッタッタ…
…………
………
……
…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 支 部 】
ダダダダッ…ガチャッ、バタンッ!!!
竜騎士「はぁ…はぁ…」
青空騎士「あ、竜騎士さん…?慌ててどうかしたんですか?」
竜騎士「コイツ、頼む」グイッ
女武道家「…」
青空騎士「女武道家さん…ど、どうかしたんですか!?」
竜騎士「ケガはないと思うが、医務室に頼む…」フラッ
青空騎士「た、頼むって…竜騎士さんはどうするんですか?」
竜騎士「俺は行く…」クルッ
青空騎士「い、行くってどこに!?」
竜騎士「友達のところだ…女武道家にそう言えばわかる。目が覚めたら伝えてくれ」
青空騎士「わ、わかりました」
竜騎士「…」スチャッ
青空騎士「…大丈夫なんですか」
竜騎士「当たり前だ。晩御飯の用意は頼んだぜ?」ハハ
青空騎士「…行ってらっしゃいです」
竜騎士「…あぁ」
ガチャッ…バタンッ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ザッザッザッザッ
竜騎士「はぁ…はぁっ!友達一人救えなくて、何が軍人だよ…!」
竜騎士「アイツは命をかけたなら、俺だってやれる事はやってやる…!」
竜騎士「待ってろよ…ドライアド!」ググッ
ダダダダダダダダッ…!!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
青空騎士「…一体あんなに慌ててどうしたんだろう?」
女武道家「…うっ」モゾッ
青空騎士「あ、気づきましたか?」
女武道家「ここは…?竜騎士さん!?」ハッ
青空騎士「竜騎士さんは友達の場所へ行くとか…ついさっきですよ」
女武道家「…ドライアドさん!?」ガバッ
青空騎士「…?」
女武道家「私、ドライアドさんに助けてもらって…その後に気絶しちゃって…」
青空騎士「助け…?どういうことです?」
女武道家「ドライアドさんと友達になって…、それでファフニールさんが…」
青空騎士「…ん?」
ザワザワ…ガヤガヤ…
軍人「今ファフニールとか、ドライアドって…」
軍人「そういえばあの子、竜騎士さんの…?」
青空騎士「…ちょっとココじゃなくて、別の静かな場所で聞かせてください」
女武道家「は、はい」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
女武道家「…というわけです」
青空騎士「なるほど…、にわかには信じられませんね…」
女武道家「…」
青空騎士「まさかとは思いましたが、セカンドのドライアドの事だったとは…」
女武道家「やっぱり、ドライアドさんのこと知っていたんですね」
青空騎士「そりゃそうですよ。あそこの湿地帯の主で、あそこを抜けるのは不可能とされましたからね」
女武道家「そ、それより…竜騎士さんのところへ!」ハッ
青空騎士「ダメですよ!まだ目が覚めたばかりですし、安静にしてないと!」
女武道家「で、でも!いくら何でも、一人じゃ!」
青空騎士「それに、あの人はきっと大丈夫ですよ。あの"竜騎士"さんですよ?」
女武道家「そ、それはそうですが…」
青空騎士「…ファフニールに対抗できるのはドライアドだけですし、竜騎士さんがいれば何とかなるんじゃないでしょうか」
女武道家「…」
青空騎士「今は信じて待ちましょう。…僕らが行ったところで足手まといですよ、多分…」
女武道家「…」
青空騎士「…」
女武道家「…」ズーン…
青空騎士「は~…実力はそれなりにあるのに、どうしてそこまで竜騎士さんに固執するんですか?」
女武道家「え?」
青空騎士「竜騎士さんにそこまでピッタリでなくとも、もっと自分の考えで行動する事も出来ると思うんですが」
女武道家「だ、だから今行こうと考えて…!」
青空騎士「あ…いやそうじゃなくてですね」
女武道家「?」
青空騎士「竜騎士さんは、女武道家さんに自分の事を考えて欲しいと思ってると思うんですよ」
女武道家「私自身ですか?」
青空騎士「結構軍の中でも有名ですし、話は聞いてます。竜騎士さんの今回の態度からも、そういう感じでしたし」
女武道家「…」
青空騎士「きっと、もっと自分の幸せのため…生きる為に考えて欲しいという事だと思います」
女武道家「自分の幸せのため…」
青空騎士「…」
女武道家「なら、私の幸せは竜騎士さんと一緒に戦って、笑いあう事です」
青空騎士「だから、それじゃ…」
女武道家「だって!」
青空騎士「!」ビクッ
女武道家「小さな田舎に住んでた私に、世界を見せてくれたのは竜騎士さんでした。」
女武道家「人の為に役立つ事で、こんなにも嬉しくなることを教えてくれたのも。」
女武道家「誰よりそばにいて、守ってくれたのも。」
女武道家「私自身、本当にバカですから、きっとこれからも色々やってしまうと思います。」
女武道家「今から行こうとしているのも…きっと私がバカだからなんですよね。」
女武道家「でも、でも…。」
青空騎士「…」
女武道家「私は、どんな時でも竜騎士さんのそばにいたいんですっ!!」
青空騎士「…っ!」
女武道家「…はぁ…、はぁ…」
青空騎士「…ただのわがままですよ、それじゃ」
女武道家「…あう」
青空騎士「はぁ~…何で竜騎士さんは女武道家さんにずっと付き合ってるんでしょうか…」
女武道家「うぅ…」
青空騎士「いつの間にか、女武道家さんを守れるのが幸せになってるのかもしれませんね…」ハハ
女武道家「…」
青空騎士「分かりました…、分かりましたよ。でも女性を一人で戦場に送るのは出来ませんし、僕も行きますよ」
女武道家「…あ、ありがとうございます!」
青空騎士「ただし…条件があります」
女武道家「は、はい」
青空騎士「夕方まで待ちましょう。理由は2つあります」
女武道家「…2つですか」
青空騎士「1つ、竜騎士さんが夕方…夜ご飯までに帰ると言ったからです」
女武道家「はい…」
青空騎士「もう1つは、夕方以降になると他の種族が休憩する態勢に入るからです」
女武道家「休憩ですか?」
青空騎士「夜行性の相手もいますが、厄介な竜族などは休みますからね。昼間の強行突破は危険です」
女武道家「そういえば竜騎士さんも似たような事は言ってました」
青空騎士「焦る事は、事故を招きます。今は落ち着きましょう」
女武道家「は、はい…」
青空騎士「…あ、それとこれ」スッ
女武道家「?」
青空騎士「竜騎士さん、慌てて出て行っちゃったのでバックパック置いていっちゃったんですよ」
女武道家「あ、じゃあ私が預かって…」
…ポトッ
青空騎士「あ、お花落ちましたよ」
女武道家「…ドライアドさんのお花です」
青空騎士「ドライアドさんのお花、ですか」
女武道家「…ちょっと荷物を整理して、大事なものは部屋にしまってきますね」
青空騎士「わかりました」
女武道家「…」
トコトコ…ガチャッ、バタン…
青空騎士「…竜騎士さん、彼女の為にも早くご無事で戻ってくることを切に願いますよ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 夕 方 】
…ソワソワ
女武道家「…」
青空騎士「…」
女武道家「…」
青空騎士「…」
コチ…コチ…コチ…
女武道家「…」
ボーン!!ボーン!!ボーン!!ボーン!!ボーン!!ボーン!!…
女武道家「…6時ですね。竜騎士さんは…」
青空騎士「戻っては…きませんか…」
女武道家「…私、行きます」
青空騎士「分かりました。約束でしたしね…向いましょう」
女武道家「はいっ!」
青空騎士「そこまでの道案内はお願いします。それと、敵とは極力戦う事を避けましょう」
女武道家「わかりました」
青空騎士「それじゃ…行きますか」
女武道家「出発ですっ!竜騎士さん…今行きます!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ザッザッザッザ…
青空騎士「夕暮れだと思ったら、もう辺りは暗闇ですね。好都合ですが」ンー
女武道家「夜の遺跡は少し怖いです。冷えますし」
青空騎士「あはは…夜間活動のほうが僕らは多いんですよ?」
女武道家「そうなんですか?」
青空騎士「さっき言ったとおり、夜間のほうが敵も少ないですしね」
女武道家「なるほど…」
青空騎士「…だけど2人パーティで来るのは初めてなので少し緊張してます」
女武道家「普段はもっと多いんですか?」
青空騎士「そりゃ支部の面子の隊で10人から20人で行きますよ。生存力をあげるためにも」
女武道家「凄いですね」
青空騎士「昔はココも統率先頭、前衛先頭、中衛魔法、後衛回復の4人だったらしいですが」
女武道家「そうですね。一番活動しやすいとかなんとか…私もそう習いましたよ」
青空騎士「でも、ここじゃそうはいきません。1人が死ぬ間に、2人が生き残る…そういう犠牲になりたちます」
女武道家「竜騎士さんといると、不思議と2人でも安心します私は」
青空騎士「あの人はかなりの強さですしね…」
女武道家「青空騎士さんも結構強そうですよ?」
青空騎士「僕なんてまだまだ。ココに元々配属される事は決まってましたし、それに死ぬ事前提ですし…」
女武道家「え…?」
青空騎士「塔の中枢までの管轄は下の支部です。が、そこより上は、身内での配属になってるんですよ」
女武道家「どういうことですか?」
青空騎士「機密性が高いので、幼い頃から軍関係にいるか、またはその身内で認められた人しかココには配属されません」
女武道家「幼い頃…から?」
青空騎士「今はもうその制度はないですが、僕は同期と共に6、7歳からここにずっといるんですよ」ハハ
女武道家「えっ!」
青空騎士「ですが子供の人生を奪う事は非道と、さすがに軍部で禁止になりましたけどね」
女武道家「そこまでですか…」
青空騎士「他に漏らしてはならない、絶対機密ですからね…。ココでの一生が決まっているようなものなんです」
女武道家「外に出たいとは思わないんですか…?」
青空騎士「ずっと、ココにいるのが当たり前ですから。生き延びれば支部長の道もありますけど」ハハハ
女武道家「…」
青空騎士「下に降りることは結構ありますよ?そりゃ楽しそうですけど…僕の友達は空の上、ココにしかいません」
女武道家「…」
青空騎士「友人が消えるのを何度も見てきましたし、目をそむけたくはないんです…」
女武道家「じゃ、じゃあ!」
青空騎士「?」
女武道家「もし、竜騎士さんや私がここの謎を解いたり、もう人が死ななくなったら…ここから出られるんですか?」
青空騎士「…!」
女武道家「…」ジッ
青空騎士「…考えた事はないです」
女武道家「え?」
青空騎士「確かに竜騎士さんに多大な期待はあります。ですが、皆思ってます。どうせ"無理"だって」
女武道家「む、無理?」
青空騎士「下の腕利きは何度か来たことはありますが、気づけば皆戻ってこなかった。それが当たり前なんですから」
女武道家「…」
青空騎士「でも、今回の竜騎士さんがセカンドの湿地帯を突破できた事…それは…」
女武道家「…」
青空騎士「あ、いえ!何でもありません。急ぎましょう!」
女武道家「…」
青空騎士「…どうしました?」
女武道家「いえ…そうですね、急いで行きましょう」
ザッザッザッザッザ…!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【セカンドエリア・湿地帯】
ホウ…ホウ…チチチ…
青空騎士「はぁ、はぁ…」
女武道家「何回か敵に当たりましたけど、何とか逃げ切れましたね…」ハァハァ
青空騎士「本当に湿地帯に敵はいないんですか?この疲れでいたら、最悪ですよ…」
女武道家「湿地帯の主さん…ドライアドさんとは友達なのでっ」
青空騎士「…それならいいんですが」
女武道家「それに…、さっきファフニールさんたちと戦ったのはこの辺のはずなんですが…」
青空騎士「…ふむ」
ザッザッザ…
女武道家「…うっ」ツンッ
青空騎士「何ですか、この臭い…」
女武道家「何か…焼けてるような…」
青空騎士「コゲくさい…というか、どういえばいいのか…」
女武道家「…まさか、ドライアドさんが!?」ダッ
青空騎士「あっ、勝手に走っては危ないですよ!」
ザッザッザッザッザッザッザッザッ…!!!ピタッ…
女武道家「…!!」
青空騎士「こ…これは…」
女武道家「も…森が…。何もない…全て…燃えて…」
ゴォォォ…パチパチ…
青空騎士「あれから何時間もたってると思うんですが…まだ燃えているとは…」
女武道家「り、竜騎士さーん!!ドライアドさん!!どこですかぁぁ!」
青空騎士「ダメです!」グイッ
女武道家「ふむぐっ…」
青空騎士「そこにまだ敵がいないとは限りません、大声を出してはだめです!」
女武道家「は、はい…」
青空騎士「今は落ち着いて周囲を探索しましょう。ここで竜騎士さんたちは戦ってたんですか?」
女武道家「…はい。でも、誰もいませんね…」
青空騎士「まだ辺りの残り火は消えてない。という事は、さっきまで戦っていたのか…?」
女武道家「じゃ、じゃあ竜騎士さんたちはどこへ…」
青空騎士「ファフニールとやらの気配もないですし、何の感じもしませんね…」キョロキョロ
女武道家「…」
青空騎士「一体…」
女武道家「…あっ!」ピクッ
青空騎士「どうしました?」
タッタッタッタ…
女武道家「今こっちで何か光った!」
青空騎士「ひか…え?」
女武道家「竜騎士さんかも!」
青空騎士「…急ぎすぎです!」
ダダダダダッ
女武道家「竜騎士さんっ…!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
女武道家「…」ゼェゼェ
青空騎士「…」ハァハァ
女武道家「…」ブルッ
青空騎士「…女武道家さん」
女武道家「そ、そんな…」
青空騎士「これは…」
女武道家「何で…竜騎士さんの"槍"だけが…落ちてるの…?」
青空騎士「…」
女武道家「…」
青空騎士「月明かりに照らされて光ったのは、竜騎士さんの武器でしたか…」
女武道家「竜騎士さん…どこに…」グスッ
青空騎士「…」
女武道家「…」
青空騎士「…」
女武道家「…」
ザワザワザワ…ザワ…
女武道家「…?」
青空騎士「今、何か声が…気のせい…?」
ザワ…ザワ…
女武道家「いえ…聞こえます。声が…します!」
青空騎士「…」
カ…
女武道家「…!」
オ…ウカ…
ワタ…シ……
女武道家「今の声は…ど、ドライアドさん!?」
青空騎士「…今の声が?」
ドライアド"『…聞こえる?女武道家…』"
女武道家「は、ハッキリと…聞こえます!ドライアドさん!」
青空騎士「な、何て透き通るような美しい声…!」
女武道家「どこですか!?どこにいるんですか…!」
青空騎士「落ち着いてください、何か話したがっているようです!」
ドライアド"『…女武道家、私ドジってファフニールのやつにやられちゃってさ…アハハ』"
女武道家「や、やられ…?で、でもまだ生きていますよね?声…聞こえますから!」
ドライアド"『ゴメン。これは思念体…もう体はないし、魔法の残り香で話しをしているの』"
女武道家「そ、そんな…」
ドライアド"『時間もないし本題。貴方は絶対にココに来ると思った。竜騎士の行方でしょ?』"
女武道家「!」
ドライアド"『彼はファフニールに連れて行かれた。多分、サードエリアの彼の巣にいると思う』"
女武道家「え…」
ドライアド"『まさか、それを追いかけようとして燃やされるなんて…私としたことが…』"
女武道家「ドライアドさんは、もう…死んでいるんですか…?」
ドライアド"『…私の実体はないし、魔力がなくなればこの声も消える。折角友達になってくれたのに…ゴメン』"
女武道家「私のせい…ですよね」
ドライアド"『そんな事はないさ。そんな顔されてたら、私もいい思いであの世にはいけないじゃないか』"
女武道家「…」
ドライアド"『本当に、ありがとう』"
女武道家「…はい」
ドライアド"『それより竜騎士だ。ファフニールのことだから、どんな事をしているか…』"
女武道家「…っ」
ドライアド"『女武道家だけじゃ、死にに行くようなもんだ…その後ろの子供が一緒でもね』"
青空騎士「なっ…子供だと…」
ドライアド"『私から見たら皆、子供さ。まぁそれは置いといて…女武道家、それでも…行くんだろ?』"
女武道家「竜騎士さんを見殺しにはできません。私…バカですから、危険とわかってても…」
ドライアド"『あはは…そういうと思ったよ』"
女武道家「…」
ドライアド"『だからと言って、友達を見殺しには出来ない。女武道家…良い物をあげよう…』"
女武道家「…?」
ドライアド"『…』"パァッ…
ズズズ…ザワザワザワ…
青空騎士「じ、地面が揺れる…!」
女武道家「き、木が…地面から…!?」
ズズズズズ…
ドライアド"『その小さな木に生っているのはアンブロシア。魔界のフルーツ…』"
女武道家「魔界の…フルーツ…」
ドライアド"『私たち自然の精の子。それがやがて大きくなり、我が体となる…貴重なものさ』"
女武道家「…え!?」
ドライアド"『それを食べれば…強くなれるよ。女武道家、食べな。ただ、その分の代償も…』"
女武道家「待ってください。待って…、これは、貴方の次の体ってことですよね?」
ドライアド"『そうなるね』"
女武道家「これを失ったら、ドライアドさんは…もう生まれ変われないんじゃ…」
ドライアド"『…そんな事はないさ。私は高等な魔物だよ?』"
女武道家「…」
ドライアド"『…気にする暇があるのか?今は竜騎士を助ける事…それが一番だろう』"
女武道家「わ、わかってますけど…!」
ドライアド"『ならつべこべ言わず、受け入れな…』"
女武道家「…」
ドライアド"『…』"
女武道家「これを食べたら、私はどうなりますか?代償というのは…?」
ドライアド"『強くなるよ、とても…。だけど、それはドーピングみたいなもの』"
女武道家「ドーピングですか」
ドライアド"『反動は来る。そして効力も長いわけじゃない…その覚悟も必要だよ』"
女武道家「…」
ドライアド"『…食べるのは薦めるが、決めるのは女武道家だ』"
女武道家「…答えはひとつです。分かっていると…思います」
ドライアド"『…ふふ。やっぱりね。はい…』"
…ビキビキッ…ポトッ…
青空騎士「実が落ちた…」
女武道家「ドライアドさん…貴方の生命の樹の実…頂きます」ペコッ
ドライアド"『なぁに遠慮するな!』"
女武道家「…頂きます!」
…ガリッ!!!モグモグ……
………………ゴクンッ…!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【数十分後…サードエリア・大通り】
タッタッタッタッタッタ…!!!
女武道家「はぁ、はぁ…」
青空騎士「女武道家さん、あれから少し時間がたちましたが体に変化はあるんですか…?」
女武道家「体の中から沸々と魔力が沸く…沸いてると思います」
青空騎士「おも…、思うだけですか!?」
女武道家「でも、助けられる…そんな気はします!」
青空騎士「はは…不安で一杯ですね…」
女武道家「でも、ドライアドさんが果物を食べた後…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ドライアド"『すぐに効力は現れない。望む時に力が発揮されると思うよ』"
女武道家「はいっ」
ドライアド"『…それじゃ、時間もない。気をつけて行ってくるんだよ』"
女武道家「…はい。何からなにまで有難うございました…!」
ドライアド"『…早く行ってきなっ!』"
女武道家「…はい。行ってきます」
青空騎士「行ってきます」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
女武道家「…すぐすぐ力は出てこないんじゃないでしょうか」
青空騎士「そうですね。今はファフニールの場所を目指しましょう」
女武道家「竜騎士さんは…聖堂の前にいるファフニールの屋敷…でしたよね」
青空騎士「確かそういってましたね」
女武道家「…」ゴクッ
…タッタッタッタッタッタ
青空騎士「幸い、今の大通りに敵の気配はありません。今はとにかく進みましょう!」
女武道家「…勿論です!」
ヒュッ…!
女武道家「あっ…いけない…青空騎士さん!」
青空騎士「何ですか!」
女武道家「伏せてください、突風がーー……」
ビュウウウウウウウッ!!!!
青空騎士「!!」
女武道家「…っ!」
ビュウウウウウッ…ヒュウウウウウウウッ!!!!
青空騎士「な、何て突風…!うぷっ…!」
女武道家「忘れてまし…た!前はこれで…ファフニールさんに居場所がバレてしまって…!」
青空騎士「何ですって!…なら、こちらです!」グイッ
女武道家「は、はいっ」
タタタタッ…ビュウウ…
青空騎士「はぁ、はぁ…わき道にそれれば、風は入ってきません…」
女武道家「で、でもこれじゃ…前に進めませんね…」
青空騎士「突風ならすぐに風は止みます。その隙に少しずつ進みましょう」
女武道家「…ですね」
青空騎士「本当の頼みの綱は竜騎士さんです。無事だといいんですが…」
女武道家「無事です…無事に決まってますよ…」
青空騎士「そう、でしたね。すいません…」
ビュウウッ…ウウゥ………ッ
青空騎士「…風が止んだ、行きましょう」ダッ
女武道家「はいっ」ダッ
タッタッタッタッタッタ…!!!
…コォ゙ーン…コォ゙ーン…!
青空騎士「鐘の音…?」
女武道家「竜騎士さんが、あれは水で循環して自然に鳴ってるって言ってました」
青空騎士「キレイな音ですね」
女武道家「…」
青空騎士「…聖堂、まだ見えませんね」
女武道家「いえ、見えてます。もうすぐです…!」
ヒュッ…
青空騎士「と、微風…隠れて!」ダッ
女武道家「わき道…!」ダッ
ズザザザザ…ビュウウウウウッ!!!
青空騎士「中々進めませんね…」ハァハァ
女武道家「…」
青空騎士「あとどのくらいですか?」
女武道家「次か、次の次あたりで着けると思います。隣にある大きな建物も見えました」
青空騎士「そこがファフニールの住む場所ですね…お」
ウウゥゥ…ゥ…
青空騎士「風が止みました、行きましょう!」
女武道家「はいっ!」
タタタタタタタッ…!!
女武道家「…っ」
青空騎士「…」
ゴーン…ゴーン…ゴーン……!!!
青空騎士「また鐘の音…」
女武道家「よく聴こえますね…」
青空騎士「と…見えた!あの正面の白い建物が聖堂ですか!?」
女武道家「恐らくそうです!」
青空騎士「よし、一気に距離を詰めて…」
ヒュッ…
青空騎士「…風!」
女武道家「わき道に!」
ズザザザザ…ビュウウウ…
青空騎士「…はぁはぁ…いよいよ、見えましたね…」
女武道家「ですが、他の竜族さんや他の種族さんがいませんね?」
青空騎士「サードのこのエリアは恐らくファフニールのテリトリーなんでしょう」
女武道家「一番きつかったのは敵の数が多いセカンドエリアだったってことですか?」
青空騎士「それと貴方達が解決してくれた湿地帯ですね」
女武道家「…ドライアドさん」ギリッ…
青空騎士「哀しんでいる暇はありませんよ。風が止んだ…走ります!」ダッ
女武道家「はいっ!」ダッ
タタタタタタタタタッ!!!
女武道家「もう少し…あと少し…!」
青空騎士「隣の建物も見えた!」
…ゴゴゴ…ゴォォォォン!!!ゴォォォォン!!!…ビリビリビリ…
青空騎士「鐘の音が近っ…み、耳が!!」
女武道家「うぅ…!」
青空騎士(一体何で鐘の音だけが生きているのか…)
ヒュッ…
女武道家「また風…だけど!」
青空騎士「ファフニールの屋敷に突撃します!」
ダダダダダッ…!!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【ファフニールの屋敷】
ドォンッ!!!ズザザザザ…モクモク…
青空騎士「…着いた」
女武道家「ここが…ファフニールさんの…」
青空騎士「あんな大音たてて突っ込んだら流石に相手にもバレてそうですね…」
女武道家「よく見えません…、暗すぎます」
青空騎士「月明かりも届いてないようですしね。火魔法っ」ボワッ
女武道家「わっ、明るい」
青空騎士「相手も魔力やらに鋭い反応を持つ相手ですし、あまり使いたくはないんですが…」
女武道家「…竜騎士さんは一体どこに…」キョロキョロ
青空騎士「正面の大きな扉。まずはそこから――…」
女武道家「…っ!」ダッ
青空騎士「って、急ぎすぎは事故のもとですよ!落ち着いてください!」
女武道家「竜騎士さん!!」
ガチャガチャッ!!!…ギィィィ……
女武道家「…!」
青空騎士「そんな急ぎすぎないで…、って、あっ!?」
モゾッ…チャリッ…
竜騎士「…うっ、だ…誰だ…」
女武道家「り、竜騎士さぁぁんっっ!!!」
青空騎士「竜騎士…さん!鎖で縛られて…ひどい…」
竜騎士「な…んだ…?」
女武道家「良かった、無事だったんですねっ…!!」
青空騎士「…ん?」ピクッ
女武道家「今、助けに…!」ダッ
青空騎士「女武道家さん…待ってください」ガシッ
女武道家「ど、どうしたんですか?」
青空騎士「…何か、います」
カツン…カツン…カツン…
ファフニール『…ほう、お客か。女武道家…と、言ったかな?もう1人は知らぬ顔だな』
女武道家「え…?」
青空騎士「こ、これが…ファフニール…?」
ファフニール『知らない人もいるようだ。青空騎士と、言うのか』
青空騎士「なっ…名前を…?」
女武道家「誰ですか!?」
青空騎士「え?」
女武道家「ファフニールさんじゃない…?え…?誰ですか…?」
ファフニール『…"人型"を見せるのはそういえば初だったか』
女武道家「人型…!ファフニールさんもなれるんですか…!」
ファフニール『そうしないと、この素晴らしい屋敷が崩れてしまうだろう。で、何の用かな?』
女武道家「決まってます!竜騎士さんを助けに来たんです!」
ファフニール『なんだ…諦めて我に嬲り殺しされにきたのかと…』ハッハッハ
女武道家「…っ」ギリッ
竜騎士「そ、その声…女武道家…か…?」チャリッ…
女武道家「竜騎士さん!私です!」
竜騎士「ど…どこにいる…?見えない…」
女武道家「目の前にいますよ!竜騎士さん!」
竜騎士「…ど、どこだ…ごほっ…ごほごほ…」
ファフニール『あー…少し遊び過ぎたか?眼が見えてないようだな』
女武道家「眼が…みえ…てない…?」
ファフニール『あと足元に気をつけたほうがいいな』
女武道家「え?」
…ヌルッ
女武道家「きゃっ!滑る…!」
ベチャッ!!…ドロッ…
女武道家「何ですか…これ…」
竜騎士「…」
ファフニール『彼の足を切り裂いた時に、飛び散ってしまってね』
女武道家「あ…足?」チラッ
……ドロッ…ポタ…ポタ…
女武道家「…あ…あぁぁ…!!」
青空騎士「り…竜騎士さんの左足が…ない…!」
ファフニール『折角の遊びだ。死なないように、ジックリとね…はははっ!』
女武道家「…許さないっ…」ギリッ
ファフニール『ほう?面白い眼をしてる…。あの時よりは愉しめそう、かな?』
竜騎士「ダメ…だ。女武道家…」
女武道家「竜騎士さん、私は…貴方と運命を一緒にできれば、本望です…!」
竜騎士「な、なさけねえ…な…俺…」ゴホッ
女武道家「…今は、私が貴方を守ります!」
竜騎士「…」
ファフニール『まぁ座談もいいが、君たちは竜騎士を助けに来たんだろう?』
女武道家「…そうですよ」
ファフニール『なら我は少し離れよう。さ、鎖をはずしてあげたまえ』
トコトコ…ストンッ
青空騎士「イスに座って…余裕を見せてるつもりですか?」
ファフニール『なぁに、これも余興と思えば。さ、外してやりたまえ』
…ダッ!!
女武道家「竜騎士さんっ!」
青空騎士「…今、鎖を外します…」
竜騎士「すまん…な」
チャリッ…カチャカチャ…
女武道家「…」ギュウッ
竜騎士「…女武道家」
女武道家「良かった…竜騎士さんだ…竜騎士さんの…温かさだ…」グスッ
竜騎士「はは…鼻声じゃないか…。また、泣いてるのか…?」
女武道家「…そ、そんな事はありませんよっ!」
竜騎士「はは…ごほっ、ごほごほ!」
女武道家「ファフニールさん、私は貴方を絶対に…許さないから…!」
竜騎士「ま…待て…お前じゃ…本当にやられ…」
青空騎士「竜騎士さん、大丈夫です。女武道家さんは、ドライアドの力を得てます」カチャカチャ
竜騎士「…ドライアド、の…?」
青空騎士「彼女の生命の実を食べたんです。今、鎖をはずしますね」カチャッ…
竜騎士「生命の実…か…」
カチャカチャッ…ガチャンッ!!ドサッ…
竜騎士「ぐっ…!」
青空騎士「コレを食べてください。気付け薬と、麻痺薬です。一時的にですが痛みを緩くします…」
竜騎士「すまん…」モグッ
モグモグ…ゴクンッ…
竜騎士「ぷはぁ…はぁ、はぁ…」ゼェゼェ
ファフニール『…』ジリッ
女武道家「…」ジリッ
青空騎士「…」
女武道家「結局、本当に傍観しているだけですか…?」
ファフニール『愉しみというのは、不利な状況から逆転する事だよ。こうして3対1になったわけだ』
女武道家「…」
ファフニール『だがまぁ、いくら踏ん張ったところで…我が不利になることは有り得ないがね!』ポウッ
女武道家「指先に赤い光…?魔法…?」
ファフニール『少し…避けたほうがいいと忠告しておくぞ』ビュンッ!!
…ゴォォォォォッ…ドゴォォォォンッ!!!!!グラグラクラ…
女武道家「!!」
青空騎士「うあぁっ!あ…危ない…!!後方が全て吹き飛んだ…!」
竜騎士「くっ…!」
ミシ…ミシミシミシ…
女武道家「な、何て威力…!」
青空騎士「あの小さな火球が…、まるで極火炎クラスか…!」
女武道家「や、やりますね…!」
ファフニール『何、少しの力だぞ?それに今宵は月が美しい夜…素晴らしいディナーなんかいかがかな?』
女武道家「…出来れば、ご遠慮願いたいですね…!」スチャッ
ファフニール『まずはこれでどうかな?』ポッ
ドゴォォォンッ!!!ゴォォォ…!!
女武道家「…っ!」
竜騎士「熱い…な、くっそ…!体が思うように動かない…!」ヨロヨロ
青空騎士「…随分荒っぽい輩ですね!」
ファフニール『…ははは、そうやって逃げる姿は滑稽だな!』
青空騎士「自分で家を壊して、人型になってる意味もありませんね…!」
ファフニール『…ふむ、そうか。では、外で遊んでもらおうか。外へ行こうではないか』クイッ
青空騎士「…こんな遊び、ゴメンですけどね。遊びだの外だの、自我が定まっていないのか…?」
竜騎士「何を考えてるか…さっぱりだ…。子供がそのまま力を得たような奴なんだ…」
女武道家「…子供のままの大人、ってことですか…」
ファフニール『何をしている?早く来い…貴様ら全て…燃やすぞ?』
青空騎士「それじゃ屋敷がなくなりますよ?」
ファフニール『おっと…そうだったな。早く外へ出よう。今日の月は本当にキレイだ』スッ
女武道家「…」
青空騎士「行きましょう、竜騎士さん、女武道家さん」
女武道家「そう、ですね」
竜騎士「あぁ…」
トコ…トコトコ…
竜騎士「うあっ…」ヨロッ
…ガシッ!!
女武道家「…つかまってください竜騎士さん」
青空騎士「左肩は僕に」
竜騎士「…すまん」
女武道家「気にしないで下さい」
竜騎士(失った左足…。俺はもう、軍人としてやっていけないかもしれんな…)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
パァァッ…
ファフニール『本当に素晴らしい夜だな。美しい夜空だ…』
青空騎士「あれ…鐘の音が止んでる…?」
女武道家「突風も…止んでます」
竜騎士「聴こえるのはわずかな水のせせらぎだけ…か」
ファフニール『もうじき、0時を回る。風は止み、鐘の響きは暗闇の前に静寂となる』
女武道家「…?」
竜騎士「…」
女武道家「それは…一体どういう事ですか?」
青空騎士「…?」
ファフニール『まぁ…気にするな。今はそれよりも遊ぶんだろう…?』
女武道家「本態にはならなくていいんですか?」スチャッ
ファフニール『今はまだ力は抑えてやろう。これは"愉しむ遊び"だといっただろう?』
女武道家「それは…ありがたいですね…」
ファフニール『…まずは軽く」ビュンッ
女武道家「…右っ!」
ボォンッ!!
ファフニール『ほう…ではコレはどうだ?』ビュンッ
女武道家「見えますよ!」
ボォンッ!!
女武道家「…その程度なら、避けることは簡単ですよ」
ファフニール『…ほう』
竜騎士「ぬ…見えないが…女武道家は大丈夫なのかっ…?」ボヤッ…
青空騎士「結構やれてますよ、上手く避けてます」
竜騎士「…」
ファフニール『なら、その一帯を焼き尽くしてくれる…』ボワッ
女武道家「両手に火球を…!」
ファフニール『はぁっ!』ビュンッ
女武道家「!」
ボッ…ドゴォォォォンッ!!!!……パラパラ…
青空騎士「…!」
竜騎士「今の轟音…無事なのか…!?」
…ズザザザ
女武道家「範囲が目に見えてる分、避けるのは余裕です!」
ファフニール『…』
青空騎士「今のを避けたのか…!大丈夫ですよ」
竜騎士「あいつは俺より柔軟性がある…。下手に打ち込むより、守りに徹すればやれるほうだ…」
青空騎士「なら、僕が伝えます、何かアドバイスがあれば!」
竜騎士「…あいつ、人型になっても羽根で飛べる…気をつけろ…と」
青空騎士「わかりました。…女武道家さん!竜騎士さんのアドバイスが…!」
女武道家「聞こえてます。竜騎士さんの声は、ハッキリと」
竜騎士「はは…あいつは耳が良かったんだったな…」
ファフニール『一方的な攻撃ではつまらんな。ほら、チャンスをやる…かかってこい』ニタッ
女武道家「…じゃあ、遠慮なく!」ダッ
ダダダダダッ!!
ファフニール『ほう、速いな』
女武道家「掌底波ぁぁっ!」ビュンッ
ファフニール『おっと』ヒュッ
女武道家「…逆足払!」ビュワッ!!
ファフニール『おっ』ヒュッ
女武道家「連撃!小手返!鉄山靠っ!!」ビュビュビュンッ!!
ダァンッ…!!
ファフニール『!』ズザザザ…
青空騎士「最後の一撃が当たった!」
ファフニール『威力は低いが、いい連弾だな』
女武道家「…」
ファフニール『近づかれたら不利…体術相手は面倒だ。なら、要望にお答えして…』
ビキビキッ…バサッ…バサッバサッ…
女武道家「半分の擬態を解いたんですか…!?高い!」
ファフニール『この位置からなら、どうだ…?』ポウッ
青空騎士「空から火球を放つつもりですか!」
ファフニール『…はぁっ!』ビュンッ
女武道家「そんなもの…気攻波ぁっ!」ビュンッ
…ドゴォォォンンッ!!!パラパラパラ…
青空騎士「空中で相殺した!」
竜騎士「…そうだ。落ち着いて…いけ」
女武道家「…空にいるなら、私の気攻波で落とすだけですよ!」
ファフニール『…これはこれは。中々どうして…』
青空騎士「思った以上に女武道家さん自身の実力が高い…!」
竜騎士「当たり前だ…。誰と一緒に旅をしてきたと思ってるんだ…?」ゴホッ
青空騎士「…少し、羨ましいですね」
竜騎士「ただまぁ…ドジが過ぎることでアイツの良さは全部ダメになってたんだけど…な」ハハ
ファフニール『…なら』ビキビキッ…
ズズゥン…
ファフニール『フゥゥ…』
女武道家「…擬態を解きましたか」
青空騎士「で、でっか…!!あれがファフニールの本態…!?」
竜騎士「今の音…本態に戻ったのか…!」
女武道家「やっと本気ですか?」
ファフニール『いやぁ、本気を出せばこの町全体がなくなってしまうからな』
女武道家「…」
ファフニール『何、この前くらいの"軽い炎"だ』スゥゥゥ
女武道家「やらせません!気攻波ぁぁっ!」ビュンッ
…ボォンッ!!!
ファフニール『効かぬなぁ…?我の炎を止めるのではなかったのか?』スゥゥゥ
女武道家「…気攻波連弾っ!!」ビュビュビュッ
ボボボボォンッ!!!
ファフニール『ハッハッハッハ、軽い軽い!』スゥゥ
女武道家「…くっ!敏捷化っ!」パァッ
ファフニール『カァァッ!!!』ボワッ!!!
ゴッ…ゴォォォォォォォッ…!!!!
青空騎士「うああっ!」
竜騎士「くっ…ブレスか…!」
…ゴォォ…ォォ…
竜騎士「ど、どうなった…?」
青空騎士「ブレスの炎で良く見えな…、あっ…あれ!?」
竜騎士「どうした…?」
青空騎士「女武道家さんが消えた!?」
竜騎士「…気配はある。どこかにいるはずだ…」
青空騎士「しかし、どこにも…」キョロキョロ
竜騎士「う、上じゃないか…?」
青空騎士「!」ハッ
ヒュウウッ…
女武道家「地面が火の海なら、私も高い空から!」
青空騎士「いました!た、高い!」
女武道家「と…あ、あれっ!?…ファフニールさんが消えた!?」
青空騎士「え?…ファフニールもいないっ!」
女武道家「ど、どこに…!」キョロキョロ
シュッ…
ファフニール『後ろに注意だ』ニタッ
女武道家「…!」ゾワッ
ファフニール『ふははっ、反応が遅いぞ』
女武道家「き、気攻…っ!」
ファフニール『攻撃も遅いな』ビュッ!!
…バキィッ!!!
ヒュウゥゥッ…ドゴォンッ!!
女武道家「…っつ…!ご、ごほっ…」
ファフニール『いい判断だったようだが、背を見せるようではなぁ』
バサッバサッ…スタッ…
女武道家「…くっ!」バッ
ファフニール『おっと、立たせるか』ビュッ
バキィッ!!…バキバキィッ…!!
女武道家「かはっ…!」
竜騎士「ど、どうなってる…!?」
青空騎士「女武道家さんが、ファフニールの足に踏まれて…!」
竜騎士「なっ…」
ファフニール『痛いか?ハハハッ!』グググッ
ミシッ…ミシミシッ…
女武道家「…っ!あぁぁぁっ…!」
ファフニール『ふははっ!』
竜騎士「お、俺の事はいい…、女武道家に支援してやってくれ…!」
青空騎士「わかりましたっ!」ダッ
ヨロヨロ…ドシャアッ…
竜騎士「ぬあっ…な、情けない…、一人じゃ立ても出来ないのか…」
ダダダダダッ…!!!
青空騎士「ああああっ!大突っ!!」ビュッ
ファフニール『ぬっ?』
…カキィンッ!!
青空騎士「な、何て皮膚だ…」
ファフニール『貴様程度の2流の槍が我の体を通すと思うか?』
青空騎士「やってみなくちゃ分からないでしょう?」
ファフニール『やってみるがいいさ』
青空騎士「大突連弾っ!」ビュビュビュッ
カカカカキィィンッ…!!
ファフニール『ぬははは!かゆさすらないわ!』
青空騎士「じゃ、弱点はないのか…!」
ファフニール『ふむ…だがまぁ、下等な存在とはいえ…攻撃を許すのはいささかイラつくところだな』
青空騎士「何っ?」
ファフニール『カァッ!!』ブンッ
青空騎士「!」
バキィッ!!!…ズザザザ…ドシャアッ…
青空騎士「し…尻尾か…!危なかった…」ハァハァ
ファフニール『ほう!上手く防いだな!』
青空騎士「だけど…」チラッ
ファフニール『む?』
女武道家「う…くっ…」ヨロヨロ
青空騎士「女武道家さんを逃がせた…」
ファフニール『…手負いが何を言うか。全てを我の炎で焼き尽くす』スゥゥ
女武道家「…っ」
青空騎士「まずいっ!」ダッ
ファフニール『少しの時間だったが、まぁ…楽しかったぞ』スゥゥゥ
ダダダダダッ…!!!
青空騎士「くっ!だ、ダメだ!女武道家さん…ま、間に合わない!」
女武道家「…うっ」ヨロヨロ
ファフニール『カッ…』
ヒュウウウッ…ボォンッ!!!
ファフニール『…うぬっ!?何だ?』
青空騎士「…今のは…!り、竜騎士さん!?」ハッ
竜騎士「足が使えなくても、目が見えなくても…歴戦の戦士だぜ俺は…?」
ファフニール『…衝撃弾か!その距離から当てるとはな…!』
青空騎士「女武道家さん!肩!」ガシッ
女武道家「うっ…はぁ、はぁ…。まずっちゃいましたね…」
青空騎士「竜騎士さんが援護してくれたお陰です。竜騎士さん!女武道家さん、無事です!」
竜騎士「…そ、そうか。よかった…そのまま逃げろ…!」
女武道家「えっ…」
竜騎士「生き延びろ…!」
女武道家「い、嫌です…!私も戦って…一緒に…!」
竜騎士「…バカいうなっ!!!」
…ビリビリビリッ…
女武道家「…!」
青空騎士「な、何て声…」
ファフニール『ほう、そんなズタボロでよくそんな声が』
竜騎士「お前が生きてくれる事で、俺の救いだ。こんなナリで、もう俺の軍人としての命は終わったんだ…!」
女武道家「…で、でも…」
竜騎士「…でもじゃないっ!」
女武道家「…」ビクッ!
竜騎士「でもまぁ…また会えて、嬉しかったぜ」ニカッ
女武道家「竜騎士さ…」
竜騎士「ムダ話し悪かったな、ファフニール。お前の耳には少しうるさいだろう?この衝撃弾はよ」
ファフニール『ふははは!愉しませてくれる!』
竜騎士(あとわずか…少ししか持ってきてないが、あくまでも釣ることは出来る…はず!)
ファフニール『なんだ…少しだけ、か』ハァ
竜騎士「!」ハッ
ファフニール『己の醜さに、我が考えを読む事が出来るのを忘れていたのか?』
竜騎士「…ちっ」
ファフニール『まぁ、あえて貴様を狙ってやろう』ニタッ
竜騎士「…」
ファフニール『その後、あの世からジックリと眺めているがいい。あの2人の無残な最期をな…!』
竜騎士「お…おらあぁぁぁっ!」ビュンッ
…ボォンッ!!
ファフニール『…ははっ!効かぬぞ!?』
ズシン…ズシンズシンズシンズシンッ…!!
女武道家「やだ…嫌ぁぁっ!」ダッ
青空騎士「ダメです!」ガシッ
女武道家「離してぇぇっ!!」
青空騎士「ダメです!!彼の思いを無下にしてしまう…今は逃げるんです!」
女武道家「…あぁぁぁっ!!」
…ドクン…ドクン…
竜騎士「さっさと行けぇぇぇ!」
ファフニール『特別待遇だ。我が爪にて、血飛沫の中で死ぬがいい!』
ズシンズシンズシンッ…!!!
竜騎士「そうかよ…ははっ!」
ファフニール『いい笑顔だ!』スッ…
ドクン…ドクン…ドクン…
女武道家「嫌ぁぁぁぁっ!竜騎士さぁぁぁんっ!!」
青空騎士「…っ!」
ファフニール『死ねぇぇっ!』ビュッ
竜騎士「っ!』
ドクン…ドクン…
ドクン…ドクン…ドクッ…ドクッ…
ドクッ…ドクッ…ドクッ…ドクッドクッドクッドクッ……!!
………ドクンッ!!!!
女武道家「あぁぁぁぁっ!!」ビュッ…!!!
青空騎士「…えっ?」
ギュンギュンギュンッ…!!!!バキィンッ!!!
ファフニール『ぬおっ!?』ヨロッ
竜騎士「!?」
女武道家「はぁ…はぁ…!」
ウネ…ウネウネ…
青空騎士「な、何か地面から…ツタ!?いや…枝!?」
ファフニール『何だ…今のは…!』
竜騎士「まさか今のは…ど、ドライアドの枝!?…女武道家!」ハッ
女武道家「…竜騎士さんを、守るっ…!」
竜騎士「…こ、これは…」
青空騎士「…一体」
ファフニール『何だというんだ…!』
女武道家「…」ギリッ
ファフニール『女武道家ぁ…その鞭、枝、どうやって出した…!』
女武道家「お願いします、ドライアドさん!つかまえてください」ヒュッ
ギュンギュンッ!!…ガシッ!!!
ファフニール『…ぬッ!ドライアドだと!?』
竜騎士「まさか…」
女武道家「私の中に、ドライアドさんが…いる…!」
竜騎士「や、やはり…!女武道家が食べたのは…ドライアドの移し実だったか!」
ドライアド"『…』"ドクンドクン
女武道家「…力が溢れてくる…!」
竜騎士「…」
ザッザッザ…ガシッ
青空騎士「竜騎士さん、手を」
竜騎士「あ、あぁ…わざわざ来てくれたのか…」
青空騎士「もうあの様子じゃ僕はいりませんよ。…一体何がどうなってるんですか?」
竜騎士「恐らく女武道家が食べたのはドライアドの移し身だ」
青空騎士「宿り木…ってことですか」
竜騎士「女武道家は魔力酔いの薬も飲んでいた。その効力が切れて…ようやく体内でドライアドが目覚めたんだ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ドライアド"『すぐに効力は現れない。望む時に力が発揮されると思うよ』"
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
青空騎士「…なるほど。道理で力が得るまで時間がかかると言ってたはずだ…」
竜騎士「最も、ドライアド自身だけじゃなく…女武道家の身体をも持ったドライアドだ。強いぞ…」
青空騎士「…っ」ゴクッ
ファフニール『ぬ、ぬぐぐっ…』ギリギリ
女武道家「覚悟してください。私は貴方を絶対に許しません…」ギロッ
ファフニール『死にぞこないのドライアド如き…、燃やしてくれる!』スゥゥ
女武道家「やらせない!」ビュッ
…バキィッ!!
ファフニール『…ぬぐっ!』
女武道家"「貴方の動きは、燃やされた私がよーくわかってるから」"
ドライアド"『貴方の動きは、燃やされた私がよーくわかってるから』"
ファフニール『…!』
女武道家「…竜騎士さんを、ドライアドさんを…よくも…」ゴゴゴッ
ファフニール『面倒だ!我がツメで切り裂き―…』
女武道家「はっ!」ビュッ
…ドシュドシュッ…!
ファフニール『が…がぁぁぁぁっ!!!』
ポタ…ポタポタ…
竜騎士「…どうした!?今の悲鳴は…!」
青空騎士「め、目です!両目に枝を!」
ファフニール『お、おのれ…おのれ!!!」スゥゥゥ
女武道家「また炎を吐くの?その瞬間が貴方の終わりだって分かる?」
ファフニール『…何だと!やれるものならやってみるがいいっ!!」スゥゥゥゥ
女武道家「…!?」ビキビキッ…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
女武道家(ま、待ってください…ドライアドさん!何をするつもりですか!)
ドライアド(女武道家…私を受け入れてくれて有難う。本当に嬉しかった)
女武道家(このままでも勝てます!変な事は必要ないんですよ!)
ドライアド(ううん。ファフニールは強力な相手…油断はナシ)
女武道家(で、でも…このまま私の中にいれば…、いつかまた自分の体を…!)
ドライアド(所詮移し身。長くは持たないから…。それより、"友達"を守らせて)
女武道家(…ドライアドさんっ!!)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ファフニール『行くぞ…』ピタッ
竜騎士「くっ…!」
青空騎士「女武道家さん…!」
ファフニール『ガッッ…!!!』ガバッ
女武道家「はぁっ!!」ヒュンッ
………パクッ…
ファフニール『むぐっ!?』
女武道家「あ…」
竜騎士「な…何だ!?ブレスが止まった…のか?」
青空騎士「今、何か女武道家さんから飛び出して…」
ファフニール『な…何か…何だ…!?今、何をしたぁ!』
ドライアド"『…ファフニール、覚えといて?』"
ファフニール『ドライアドの声…!?ど、どこだ!』
ドライアド"『守ろうとする何かがあるってことは、何よりも強いんだってことをね』"
ファフニール『き、貴様、まさか!!』
女武道家「…」
竜騎士「ま、まさか…」
青空騎士「移り実、自分自身をファフニールの体内に!?」
ドライアド"『貴方の体の中に眠る魔力の核、炎の根源…私と一緒に…爆ぜさせる!』"
ファフニール『よ…よせ!!」
ドライアド"『竜騎士、女武道家…また、会おうね』"
女武道家「…はい」
竜騎士「もちろんだ。お前のいた場所に…2つの花、置きに行くぜ」ビシッ
ドライアド"『…』"クスッ
ファフニール『よ、よせええぇぇっ!』ビキビキッ
ドライアド"『はぁぁぁぁっ!!!』"
ビキビキビキッ…!!!パァァァッ…!!!
ファフニール『ぬ、ぬああぁぁぁっ!!』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 支 部 】
ズズゥン…グラグラグラ…!!!!
支部長「…な、なんだ!」
グラグラグラグラ…!!
支部長「地震…!?」
…ガチャッ!
軍人「失礼します!」
支部長「この揺れは何ですか!?」
軍人「計測不能な揺れが、空中都市全体に及んでいる模様!」
支部長「揺れの観測点は!?」
軍人「…そ、それが…」
支部長「どこですか!」
軍人「サードエリア…です」
支部長「!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【サードエリア・聖堂前】
ゴォォォ…パチ…パチパチ…
竜騎士「…!」
女武道家「…」
青空騎士「や…やった…」
ファフニール『…ぬぐ…が…』ブルブル
竜騎士「…お前の負けだ、ファフニール」
ファフニール『…そ、んなわけ…ある…か…!』
竜騎士「青空騎士、女武道家…最期の仕事だ」
青空騎士「…」コクン
女武道家「…」コクン
…スチャッ
ファフニール『よ…せ…やめ…』
青空騎士「この手で、自分の尊敬する人を殺そうとした相手を倒せる喜びはありませんよ」
女武道家「竜騎士さん、ドライアドさんの敵…今こそです」
タッ…タタタタタタッ!!
女武道家「…あぁぁっ!」
青空騎士「うあああっ!」
ザシュッ…ザシュザシュザシュッ…!!!バキッ…
ファフニール『…く…そが…』グラッ
…ズズゥン…
青空騎士「…や、やった…」
女武道家「か…勝った…!」
竜騎士「…よく、やってくれた」
女武道家「勝った!!勝ったぁぁぁ!」
竜騎士「はは…喜びすぎだ」
女武道家「竜騎士さんっ!」ダッ
竜騎士「おっ」
タッタッタッタッタ…ダキッ!!ギュウッ…
女武道家「やった、やりました!勝ちました!!」
竜騎士「…おう」
女武道家「…」
竜騎士「…よく、頑張ったな」
女武道家「で、でも…私は、友達を犠牲にして…。素直に喜んで…いいのかって…」ブルッ
竜騎士「また泣くのか?ドライアドが哀しむぜ?」
女武道家「許してくださいよ…このくらい…」グスッ
竜騎士「…そうだな」
青空騎士「しかし…本当によく勝てましたね。結果としては、上等魔物同士の対決でしたが…」
竜騎士「俺の人生の中で、最強の相手だったよ」
青空騎士「僕もですよ」
女武道家「私もです」
竜騎士「…一人の犠牲はあった。だが、お前らが生き残って…良かったよ」
女武道家「…竜騎士さんが生きててくれて、本当に私も嬉しいです」
竜騎士「あぁ…。正直、助けにきてくれて嬉しかったぜ…ありがとな」ポンッ
女武道家「…はいっ♪」
…ズキッ!!
竜騎士「ぐっ!」
女武道家「竜騎士さん?」
竜騎士「何…足が痛むだけだ…ちぃと動きすぎて、痛み止めが切れたか」
女武道家「そうだ…左足…」
竜騎士「何、今の軍の技術ならなくなった足くらい幾らでも復活できるんだぜ?」
女武道家「えっ!」
竜騎士「はは、だから俺は何も心配もしてないだろ?」
女武道家「確かに…そうですねっ」
竜騎士「だがまぁ、今は少しばかし肩を貸してくれ。歩けないしな」ハハハ
女武道家「勿論です♪」
青空騎士(…ウソだ。時間がたちすぎてる。最悪…義足。それに顔色がひどい…!)
竜騎士「ははは…」
青空騎士(素人目にも分かる。あきらかに血を流し過ぎた顔色…、まずい…これは…)
竜騎士「さぁ、支部に戻るか!」
青空騎士「…ちょっと待って下さい、その前に」
女武道家「どうしたんですか?」
青空騎士「そろそろ魔力の抑制剤が切れる時間ですが、大丈夫ですか?」
女武道家「え?あ…そうでした、バックに入ってるし…飲みますね」ゴソゴソ
青空騎士「水は確か向こう側に流れているのが飲めるはずです」
女武道家「あ、そうでしたね。飲んできますっ」
タタタタッ…
青空騎士「これならいいですね。…竜騎士さん、ちょっとお話が」
竜騎士「…分かってるよ」
青空騎士「このままでは、あなたは帰るまでに…もたない…!」
竜騎士「…言うな」
青空騎士「な、何か体調を整えるものが入っていないか、バッグを見てみますね!」
竜騎士「いや…もういいんだ」
青空騎士「で、ですが…!」
竜騎士「止血剤があったとしても、俺はもう血を流しすぎた…無理だ」
青空騎士「諦めては…ダメです。何か方法があるはずだ…!」
竜騎士「…俺がこうしてしゃべってる事ですら…もう限界なんだ…」
青空騎士「…っ」
竜騎士「…なぁ」
青空騎士「はいっ…」
竜騎士「あいつに肩を借りて、死にたくはない。俺を背負っていってくれないか…?」
青空騎士「…」
竜騎士「…頼む。お前の背を借りるってのも…本当に悪い話だがな…」
青空騎士「竜騎士さん」
竜騎士「なんだ?」
青空騎士「生きてください…!支部に戻れば、手術は出来る。助かるんです…!」
竜騎士「…無茶、いうやつだな」ハハッ
青空騎士「そんな、無茶だなんて…」
竜騎士「あ、そうそう…それよりファフニールの爪を根元から斬って運んでくれるか?」
青空騎士「爪ですか?」
竜騎士「一級品だ。お前と女武道家で分ければ、相当な資産になる」
青空騎士「竜騎士さんの分もありますよ」
竜騎士「俺はいい。女武道家には資産を残したい。俺がいなくなったらアイツを戦場に出したくないんだ…」
青空騎士「…わかりました。採ってきますね…」
タッタッタッタ…
竜騎士「…おっ」
タタタタタッ…
女武道家「…飲んできました!何か青空騎士さんと話しをしてましたね?」
竜騎士「おう、お帰り。いや、これから無事に戻れるかなーってさ」ハハ
女武道家「戻れますよ!当たり前です」
竜騎士「お、青空騎士…早いな」
タッタッタッタ…
青空騎士「固すぎて片方しか無理でした。あとは支部長にお願いして、換算して出してもらいますよ」ドサッ
竜騎士「そうか…だがまぁ、しっかりとした証拠にはなるか」
女武道家「そしたら、普通にこれから戻るんですか?」
青空騎士「サードはファフニール、セカンドの湿地帯はドライアド。そこまでは他の種族は少ないでしょう」
竜騎士「問題はセカンドの中盤だな。まぁ幸い夜だ…大丈夫だろう」ニカッ
青空騎士「ですね!では、急いで出発しましょうか!」
女武道家「竜騎士さん…肩、貸しますよ」
竜騎士「あ、いやそれは」
女武道家「貸します。いえ、おんぶします!」
竜騎士「…無理だろ」
女武道家「…えいっ!」グイッ
竜騎士「うおっ」
女武道家「…えへへ、軽いですよ!」
竜騎士「…」
青空騎士「…」
女武道家「じゃ、出発しましょう!ファフニールは後日回収ですね~」
竜騎士「そう…だな」
青空騎士「じゃあ…行きましょう…」
女武道家「…爪や資産はいりません。だから…生きてください…」ボソッ
青空騎士「えっ?」
女武道家「い、いえ!出発です!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――――【セカンドエリア・湿地帯】
ホウ…ホウ…
ザッ…ザッ…ザッ…サッ゙…
竜騎士「…」ハァハァ
女武道家「…竜騎士さん、私に介護してもらって…いつもと何か逆ですね」
竜騎士「はは、そうだな」
女武道家「いつも助けてもらってばっかり…ありがとうございます」
竜騎士「ちっとは進歩しろっ!」コツン
女武道家「あうっ…」
ザッザッザ…
青空騎士「…」
女武道家「私の町に来た時、覚えてますか?」
竜騎士「忘れるものか…。あの時から俺の人生は狂い始めた」
女武道家「ひ、ひどい!」ガーン
竜騎士「冗談だよ、この野郎っ」ギュウッ
女武道家「…えへへ」
竜騎士「…楽しかったな。みんな、いい人ばっかだった」
女武道家「私の住む町ですもん。当たり前ですよ!」
竜騎士「…そこからお前との冒険は始まったんだよ…な」
女武道家「色々行きましたよね」
竜騎士「雪山に…海…、世界を走ったな…」ハァハァ
女武道家「いつも私は迷惑をかけてばかりで」
竜騎士「ははっ、それも楽しかったさ…げほっ!」
…ビチャッ
竜騎士「…すまん」
女武道家「いえ、気にしないで下さい!それより、サバイバルしたこともありましたよね」
竜騎士「あの時もお前が大変…だった…なぁ」ハァハァ
女武道家「…アウルベアさん、懐かしいですね」
青空騎士(まずい…急激に体力が落ち始めてる…!)
竜騎士「そう、そ…う…。お前…の、感知の能力…なぁ」
女武道家「でも、そういう体験…竜騎士さんのお陰で、私は強くなれました!」
竜騎士「そう…だ…な」
女武道家「今回も迷惑かけてばっかりで、私っていつまでドジなんでしょうね!」
竜騎士「…は、はは…」
女武道家「これからも、楽しい事とか待ってるんでしょうねっ!」
竜騎士「…う…だ…な…」
青空騎士(竜騎士さんの声が…かすれていく…ダメだ…!気を保ってください…!)
女武道家「この深い夜も、いつか朝が来るんです!」
竜騎士「おう…」
女武道家「そしたら…どんな明日が待ってるんだろうって考えると、ワクワクしますよね!」
竜騎士「ん…」
女武道家「あっ、そうだ…竜騎士さん!私、あの返事聞いてませんよぉ…?」
竜騎士「…」
女武道家「…一緒に、これからもずっと旅をするんです。楽しく、笑いあって…!」
竜騎士「…」
女武道家「またドジをしたり、バカをしたら叱って下さいね?私、甘えちゃうんで」
竜騎士「…」
女武道家「…急に黙ってどうしたんですか!」
竜騎士「…」
女武道家「明日から、聖堂の謎を解くんですよ?それなのに、そんな元気なくてどうするんですかっ!?」
竜騎士「…」
女武道家「この大きな爪も、私と竜騎士さん、青空騎士さんの賜物ですっ。支部長に褒められますよ!」
竜騎士「…」
女武道家「それとも、やっぱり私の声って大きくて煩いですか?でも、竜騎士さんも怒る時、怖いじゃないですか!」
竜騎士「…」
女武道家「…竜騎士さん!それで、それで…!」
竜騎士「…」
…ギュウッ!
女武道家「…えっ…竜騎士さん?」
竜騎士「…」ボソッ
女武道家「えっ…?」
竜騎士「…」ボソッ…ボソボソッ…
女武道家「!!」
竜騎士「…」ニカッ
女武道家「…竜騎士さん!そ、それって…!」
竜騎士「…」
…ガクッ
女武道家「あっ…!!」
青空騎士「…っ」
女武道家「…竜騎士、さん?」
竜騎士「…」ダランッ…
女武道家「…寝ちゃったんですか?」
竜騎士「…」
女武道家「やだなぁ…もうすぐ支部ですよ?」
竜騎士「…」
女武道家「私がしっかり部屋まで届けますからね!つかまっててくださいよ!」
竜騎士「…」
女武道家「…だから、だから…まだ、もう少し…このまま…私の背中で寝ていてくださいね…」ブルッ
竜騎士「…」
女武道家「…寝て…いて、下さいね…」ブルブル
青空騎士「女武道家さん、り…竜騎士さんは…。一度、ここで腰を下ろして…」
女武道家「…いいんです。このまま、真っ直ぐ…帰るんです。歩くんです…」
ザッザッザッザ…
青空騎士「…」
女武道家「だ、だって…、前を向いて歩いてれば…いつか幸せはやってくるんです…!」
青空騎士「…」
女武道家「ですよね…竜騎士さん…」グ…グスッ…
青空騎士「…女武道家さん」
女武道家「…笑わないと、竜騎士さんにまた怒られちゃいますから…えへへ…」ポロポロ
ザッザッザッザ…コケッ…
女武道家「!」
…ドシャッ…ゴロンッ…
竜騎士「…」
女武道家「あ…あう…」
竜騎士「…」
女武道家「り…竜騎士さ…。うぇ…うぅ…ひぐっ…」
青空騎士「…涙を流しても、竜騎士さんは許してくれると思いますよ…」
女武道家「そ、そんなこと…」ハッ
竜騎士「…」
女武道家「で、でも…顔を見ると…うっ…あう…」ヒグッ
青空騎士「…」
女武道家「竜騎士さん…竜騎士さぁぁん…!!!」ポロポロ
青空騎士「…」
女武道家「うぁぁぁん…うわぁぁん…っ!」
青空騎士(竜騎士さん、貴方は大事な人を一人にして…本当に良かったんですか…)
女武道家「ひぐぅ…あうぅぅ…」グスッ…
青空騎士(まだ、彼女はこんなにか弱い…。貴方がもっと傍にいてあげるべきだった…!)
…ポタッ
青空騎士「…ん?」
ポタッ…ポタポタポタッ…ザァァァァァッ…!!!
青空騎士「うわっ!?」
女武道家「あ…雨…」
青空騎士「そんな…バカな…。雲より高い場所で…雨だなんて…」
女武道家「…」
青空騎士「…」
女武道家「青空騎士さん…」
青空騎士「…はい」
女武道家「わ…私は、竜騎士さんの為に何か出来たと思います…か…?」
青空騎士「貴方と一緒にいれた時間は本当に幸せだったと思います。見てください、彼の笑顔を…」
女武道家「…」
ザァァァ…
青空騎士「それにしても…不思議な雨ですね。冷たいはずなのに、まるで温かさを感じる」
女武道家「きっと…ドライアドさんの涙です。ドライアドさんも…泣いているんです…」
青空騎士「…」
女武道家「…」
青空騎士「女武道家さん。哀しむ事も大事だが、竜騎士さんの言葉を思い出して…前へ、進みましょう」
女武道家「わかって…ます」バッ
青空騎士「…」
女武道家「出発…します。竜騎士さん、もう少し私の背中にいてくださいね」ギュッ…
竜騎士「…」
…ガサッ
青空騎士「…待って下さい。今、何か物音が…!」ハッ
女武道家「えっ?」
…パァァッ!!
女武道家「!」
青空騎士「なっ、明かり…!?まさか、敵!」スチャッ
女武道家「て、敵ですか…!」
ザッザッザッザ…ザッザッザッザ…
青空騎士「多数の足音…!」
女武道家「…」ゴクッ
ガサガサッ…ピタッ
青空騎士「…って、あっ!?」
女武道家「!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
【12月13日終了時点】
■所持品
・購買 酔い止めの薬
・購買 粉ミルク
(バックパック)
その他消耗品は現場に一時破棄
■発掘品
・黒曜石の彫刻
・黒曜石の皿
・蝶の文様入りの銀細工
・ファフニールの爪
■探索距離
・サードエリア、聖堂前
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 12月14日 】
…パチッ
女武道家「!」ガバッ
女武道家「…」
女武道家「あれ?私…ここ…どこ?ベッド…」
…コンコン
女武道家「はい」
青空騎士「失礼します」ガチャッ
女武道家「あ…青空騎士さん。おはようございます…ここは…」
青空騎士「医務室です。よく眠れましたか?」
女武道家「あ、はい…。そ、それより昨日…!私どうしてここに…」
青空騎士「あぁ…覚えてないんですね」
女武道家「すみません…」
青空騎士「湿地帯を抜けるところで、他の何かの足音が聞こえたのは覚えてますか?」
女武道家「そして武器を構えて、明かりが見えたんですよね」
青空騎士「はい」
女武道家「で、何か出てきて…そこで私…記憶が…」
青空騎士「…あの光は、僕たちの支部の軍人たちだったんですよ」
女武道家「そうだったんですか」
青空騎士「ドライアドが犠牲になった爆発で、この遺跡全体に大規模な揺れが生じたらしいんです」
女武道家「…」
青空騎士「それを調査する部隊を緊急的に組んだパーティが僕らと出会ったわけです。幸運でした」
女武道家「…そうだったんですね」
青空騎士「その後、すぐに女武道家さんも倒れてしまって。支部に運んで、医務室で寝てたんです
女武道家「わざわざ、ありがとうございました」
青空騎士「…」
女武道家「あの、聞きたいことが」
青空騎士「彼なら、もうここにはいません」
女武道家「えっ…?」
青空騎士「彼の体は、既に今朝早く下に送られました」
女武道家「そう…ですか…」
青空騎士「…それに関して、支部長がお話があるそうですよ」
女武道家「支部長がですか?」
青空騎士「今、呼んで来ますね」
女武道家「あ、はい…」
タッタッタッタ…
女武道家「…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コンコン…ガチャッ
支部長「どうも、おはようございます。体調はどうですか?」
女武道家「…いい感じです。お話があると聞きました」
支部長「…青空騎士くん、一回外してもらえるかな」
青空騎士「では、失礼します」
ガチャッ…バタンッ
支部長「…さて」
女武道家「はい」
支部長「竜騎士さんの事は聞きました。そして、彼を…見させてもらいました」
女武道家「…」
支部長「残念です…本当に」
女武道家「…」
支部長「もうすぐ、あと一歩でこの謎を解けるところまで来てたというのに…」
女武道家「…」
支部長「人類のかけがえのない宝を失った気分です…。貴方の悲しみはそれ以上のものでしょうが…」
女武道家「…」
支部長「あ…こんな話で申し訳ない」アセッ
女武道家「い、いえいえ!気にしないで下さい!」
支部長「それで、竜騎士さんに関してなのですが…下で上官殿に任せることにしました」
女武道家「上官さんですか?」
支部長「彼女が一応、竜騎士さんの直属の上司ですから。あとの事はお願いいたしました」
女武道家「…なるほどです」
支部長「それと、今回見つけてくれた遺跡の様々なもの…簡単にですがコレになります」
ゴソゴソ…スッ
女武道家「これ…何ですか?」ペラッ
支部長「貴方が清算を断った銀細工などを除いて、今回の働き分の報酬の報告書になります」
女武道家「え…」
支部長「黒曜石はまともに値段がつきませんが、ファフニールの肉体、探索距離…その結果です」
女武道家「け…ケタ間違ってるんじゃないですか…?」
支部長「それでもファフニールは青空騎士さんと分けてですよ」
女武道家「こ…こんなに…?」
支部長「何より謎に近づけ、サードエリアまでの血路を開いてくれた事の貢献が大きいです」
女武道家「…」
支部長「…不満なら、まだ色をつけるように"上"にお願いしますよ?」
女武道家「い、いえ!」
支部長「下手すれば小国家を買収できる額ですよ」ハハハ
女武道家「そんなに凄い事をしたんですか?私たちは」
支部長「人類最大の謎へ最も近づいた報酬。ファフニールという超上級の素材の価値。充分です」
女武道家「そうですか…」
支部長「あと…非常に申し上げにくいのですが…」
女武道家「…何ですか?」
支部長「竜騎士さんがいなくなった今…残念ですが貴方がここにいる事は許されません」
女武道家「あ…」
支部長「体調を考慮し、あと10日前後は許可が出てますが…」
女武道家「そうですよね。探索許可を得たのは竜騎士さんで、私じゃないですし…」
支部長「…やはり、悔しいですか?」
女武道家「正直…。でも竜騎士さんは、私に戦いの場にいて欲しくないといってました」
支部長「…」
女武道家「だけど、私は竜騎士さんの追いかけた夢を、まだ一緒に見ていたかった…です」
支部長「…そうだと思いました」
女武道家「えっ?」
フラフラ…
支部長「…あっ…おっとっと…」
女武道家「え、あ…支部長さん?」
支部長「何か眩暈がー…」クラクラ
女武道家「だ、大丈夫ですか!?」
支部長「…」ペラッ
女武道家「あ、何かの紙を落としまし…」
支部長「いやー体調が優れなくて何を落としたか何て分からないなぁ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
青空騎士(壁越しに聞こえてるけどわざとらしすぎます!)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
女武道家「…こ、これって!」
支部長「…」ニコッ
女武道家「支部長さん、この紙にある、特別探索許可しょ…」
支部長「とりあえず!」
女武道家「は、はいっ!」
支部長「今は、体調の回復。それと下へ一度挨拶に伺うことです」
女武道家「上官さんへの報告…ですね」
支部長「はい。それじゃ、自分は失礼します。また何かあれば」
女武道家「は、はい」
ガチャッ…
支部長「話は終わりました。青空騎士くん、何か話したいことがあれば。それでは自分はこれで」
タッタッタッタッタ…
青空騎士「全く…演技が下手な人だ」ハァ
女武道家「支部長さんが落とした特別探さ…いえ、紙のこと、知ってたんですか?」
青空騎士「僕が一応お願いしたんです。また戻ってきたいんでしょう?…竜騎士さんの意には反しますが」
女武道家「ありがとう…ございますっ…!」
青空騎士「とにかく今は支部長の言うとおり、回復に努めてくださいね」
女武道家「…はい」
青空騎士「では、自分もこれで失礼します。あとは追々連絡いたしますので」
女武道家「わかりました」
青空騎士「…では」
ガチャッ…バタンッ…
女武道家「そう…今、私には、私の出来ること…ですね」グッ
女武道家「それにしても"特別探索許可証"かぁ…私、またここに戻ってこれるって事ですよね」
女武道家「えへへ…私、認められたのかな?ねっ、竜騎士さん!」
シーン…
女武道家「あ…。」
女武道家「…」
女武道家「…」
女武道家「…こうして部屋に一人で長くいる事…随分久しい気がします」
女武道家「でも…、もう怒られる事もないんですよね…」
女武道家「竜騎士さん…」
グスッ…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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――――【 9日後 12月22日 】
ガチャッ…バタンッ…
上官「…戻ったか」
女武道家「空中都市探索の結果報告に参りました」
上官「一応、話は聞いてる」
女武道家「…」
上官「ご苦労だった。聖堂の存在、ファフニールの討伐…君の昇進は間違いないだろう」
女武道家「…」
上官「本当にご苦労だった…な」
女武道家「…ごめんなさい」
上官「おや?なぜ謝る?」
女武道家「私のせいです。私が…全部悪いんです…」
上官「はぁ…気にするな」
女武道家「…」ブルッ
上官「…さて、次の仕事に関してだが」
女武道家「…」ブルブル
上官「…どうした?」
女武道家「ごめんなさい…ごめんなさい…」ポロポロ
上官「…っ!」
女武道家「本当は我慢しようと思ってました…でも、上官さんの顔を見たら…」グスッ…
上官「やめろ…」
女武道家「ひぐっ…」ポロポロ
上官「やめろ!」
グイッ…ダァンッ!!
女武道家「…ひっ」
上官「な…泣けば、私の大事な部下が戻ってくるのか!?」
女武道家「…で、でも…」
上官「でもじゃないっ!!」
女武道家「!」ビクッ
上官「私だって本当は泣きたい…だが、涙を流す暇なんてないんだ…!」
女武道家「上官…さん…」
上官「竜騎士は、自分を犠牲にしてお前を守った。お前がそんなんでどうする…!」
女武道家「…」
上官「前を見て歩け!私はそうする。竜騎士もそうやって、前を向いて歩いてきただろう?」
女武道家「そう…ですよね…!」ゴシゴシ
上官「…」
女武道家「もう…泣きません」
上官「…」
女武道家「…前を見て歩きます、私も!」
上官「…」
女武道家「…」ジッ…
上官「…ふっ、いい目だ」ニコッ
女武道家「…え?」
上官「はははっ…!」
女武道家「…?」
上官「…来い。抱きしめてやる」グイッ…ギュウッ
女武道家「きゃっ…じょ、上官さん?」
上官「…嘘だ」
女武道家「…えっ…?」
上官「私だって本当は一人で泣いた。だが、部下のお前がいる手前、強く見せたかっただけだ。すまんな」
女武道家「…」
上官「よく怖くても、辛くてもココへ報告しに来てくれたな」
女武道家(怖かったの…分かってたんですね…)
上官「それでこそ、竜騎士の仲間…私の部下だ」
ポンッ…ナデナデ…
女武道家「あ…竜騎士さんもたまに撫でてくれました」
上官「…ふむ」
女武道家「さっき、でもじゃない!って、竜騎士さんにも言われました…」
上官「はは、アイツは私とずっといたからな…似たところもある…か」ハハ
女武道家「えへへ…」
上官「まぁ…前を見て歩けとは言ったが、反省…過去を省みるなという事ではないからな?」
女武道家「もちろんです!」
上官「そうか…それならばいい。さて…お前に聞きたいことがある」
女武道家「はい」
上官「竜騎士の体は今どこにあるんだ?」
女武道家「…え?」
上官「話では、空から一歩早く下へ降ろされたらしいが、場所までは知らないんだ」
女武道家「わ、私も聞いてませんよ?というか…上官さんに聞いてくれ、と言われました」
上官「何?」
女武道家「だから、上官さんが知っているものだと思って…」
上官「待て。それを話したのは誰だ?」
女武道家「上の支部長さんです」
上官「私も支部長に聞いたんだが…話が違うな…待ってろ」
トコトコ…ポチポチ…プルルッ、プルルルル…
上官「早く出ろ…」ソワソワ
女武道家「…それは?」
上官「電話、というやつだ。最近開発されてな。通信機器よりよっぽど小さくて便利なんだ」
女武道家「へぇ…電話ですか」
上官「お前たちが戦ってる間に上にも設置されたんだ。まぁそれより…」
…ガチャッ
支部長"「はい、こちら空中都市支部」"
上官「おい、話が食い違ってるぞ」
支部長"「…どなたですか?」"
上官「これは極秘回線だ。相手が誰だか分かってるのに聞くのか?」
支部長"「はぁ~…どうせ何か怒ってるんでしょう。声が怖いです」"
上官「当たり前だ!竜騎士の体…、い…、い、遺体は…どうした!」
支部長"「それは前に伝えたはずです。既に下に。女武道家さんにも伝えてるはずですが?」"
上官「その女武道家が目の前にいるんだが?」
支部長"「あちゃ~…予想以上に早く報告に行ったんですね…」"
女武道家「…?」
上官「どういう事か話しをしてもらおうか」
支部長"「…本当にこれは極秘回線ですか?」"
上官「そうだ」
支部長"「では…女武道家さんにも聞こえるように近づくようにお願いします」"
上官「女武道家、来い。支部長が何やら一緒に聞いて欲しいらしい」
女武道家「あ…はい」
トコトコ…
支部長"「女武道家さん、聞こえますね?」"
女武道家「はい」
上官「いいから早く話せ」
支部長"「12月31日、年末。そこで竜騎士さんの死を公式に発表します」"
女武道家「…」
上官「…なぜ遅れる?」
支部長"「12月31日という新年前のニュースのほうが、人々の受けがイイからですよ」"
上官「…」
女武道家「…」
支部長"「…」"
上官「…バカにしているのか貴様」
女武道家「今のは…さすがに許せませんよ」
支部長"「ふ、二人とも…そんな怒らないで下さいよ!」"
上官「今から貴様を、竜騎士の侮辱罪として軍法会議に持ち出す。覚悟することだな」
支部長"「ま、待ってくださいって!訳があるんですよ!」"
上官「…言ってみろ!」
支部長"「軍法会議されちゃたまったもんじゃないですし、約束に反しますが…仕方ないでしょう」"
上官「早く言え!」
支部長"「それが、彼の望んだ事だからです」"
上官「…彼?」
支部長"「自分が言えるのはそこまでです。では、失礼します」"
…ガチャッ!!ツー…ツー…
上官「き、きられた…あいつ!」
女武道家「…12月31日に発表…ですか」
上官「…支部長が言うには、な。あとで色々分かったら連絡はするよ」
女武道家「はい…」
上官「とりあえず今は休暇をやろう。実家に戻って、顔を見せてやれ」
女武道家「わかりました」
上官「…また、な」
女武道家「はい…失礼します」
ガチャッ…バタンッ…!!
タッタッタッタッタ…
上官「女武道家は…いったか」
ポチポチポチ…プルルッ、プルルルルルルッ…
支部長"「はい、もしもし」"ガチャッ
上官「本気で軍法会議にかけるぞコラァ!」クワッ
支部長"「もおおっ!しつこいですよ!!」"
上官「なら本当のことを話せ!彼とは誰だ!なぜ12月31日に発表する!」
支部長"「…敵わないですよ、そんなに凄まれちゃ。では、本当の事をお教えします」"
上官「当たり前だ。早く話せ」
支部長"「…では」"
上官「ん…」
上官「…何?さすがに、冗談だろう?」
上官「ほ、本当なのか…?」
上官「そ…そうか…!そうか…」グスッ…
上官「…分かった。2月だな」
上官「…ん。感謝する」
上官「まぁ…そうなるな」
上官「ふん…」
支部長"「とまぁ…以上です。これ以上は話せません」"
上官「いや充分だ。場所は?」
支部長"「それはさすがに…彼の意思ですから」"
上官「アイツらしいな…。わかった、改めて情報、感謝する」
支部長"「いえ…では」"
…ガチャンッ
上官「くく…2月が待ち遠しくなったな。あ…いやその前に12月31日か…」
上官「…女武道家も、その時に呼び出さねばな」
コンコン…
上官「ん、入っていいぞ」
軍人「失礼します!今回の会議の議題についての報告書のまとめに参りました!」
上官「…年末は忙しくて嫌いだ。ま、アイツも頑張ってるようだし、私も頑張るかぁ!」ウーン
軍人「へっ?」
上官「あ、いやこっちの話だ。さぁ…仕事をするか!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
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・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
――――そして12月31日
竜騎士の死を伝えたニュースは、瞬く間に世界へと広がった。
多くの依頼をこなし、多くの騎士、軍人たちの憧れにもあった竜騎士。
その死は余りにも突然で、余りにも理不尽で…哀しさが世界を包み込んだ。
だが、彼の唯一のパーティだった女武道家は、
竜騎士の壮大な式に顔も出すことはなく、彼女は暫く姿を消した。
やがて月日は流れ…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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――――【 5月16日 】
コンコン…ガチャッ
女武道家「あの~…失礼しま…」
上官「なぁにが2月だ!3ヶ月も遅れてるじゃないか!!」
女武道家「…」ビクッ
上官「何…?そんなもの知ったことじゃない!」
女武道家「あ…あの…」
上官「あ…女武道家か。そうだ…来たよ。じゃあな、電話切るぞ。ん…わかった」
ガチャンッ
女武道家「…どなたかと電話でしたか?」
上官「上の支部長とちょっとね。ったく…2月とかウソばっかついて…」ブツブツ
女武道家「…?」
上官「そ、れ、よ、り…」ギロッ
女武道家「…っ」
上官「この数ヶ月、どこに行ってた!!!」クワッ
女武道家「ひ、ひええっ!」
上官「お前に連絡をとろうと実家に聞いても帰ってないというし!」
女武道家「あうっ」ドキッ
上官「軍の活動経歴を調べてもあの日から動いてないし!」
女武道家「うぅっ」ドキドキッ
上官「人に心配をかけるな…全く!」
女武道家「あうう…ゴメンなさい…」
上官「あんな事があったばかりで行方不明だとか、肝を冷やしたぞ」
女武道家「…ゴメンなさいです」
上官「で、どこへ行ってたんだ」
女武道家「色々と旅をしてまして…」アハハ…
上官「どこに」
女武道家「…」チョイチョイ
上官「ん…?天井指差してどうした?」
女武道家「ですから…上、です」
上官「…上、だと?」
女武道家「こ、これを~…」ペラッ
上官「…何だこれは?…、特別探索許可証…だと!?」
女武道家「…あはは」
上官「…」ブルブル
女武道家「あ、私…ちょっと用事思い出して…」コソッ
上官「この…ばかもの!!!」
女武道家「あうぅ~っ!ゴメンなさいです~っ!」
上官「あのバカ支部長め、余計なものを…。手書きだなこれは…!ったく…」ハァ
女武道家「で、でも…前を見て歩けって言ったのは、上官さんですよ!」
上官「む…」
女武道家「竜騎士さんの夢の続きを追いかける事が、前を見て歩く事だと思ったんです!」
上官「む…そ、それは…」
女武道家「…ですけど、無断だったのはすいませんでした…」
上官「どうせ支部長に言われたんだろう。内緒で来いとかな」
女武道家「全部分かってらっしゃるんですね…」
上官「あとで怒りの電話は入れておくよ」ハァ
女武道家「あはは…」
上官「ま…無事でよかったよ」
女武道家「ありがとうございます。あ…それで、今回呼ばれた理由をまだ訊いてないんですが」
上官「あぁ…そうだった。まぁそろそろかな」
女武道家「そろそろ?」
上官「ま、少し待ってろ。…ところで、竜騎士の待遇を知ってるか?」
女武道家「待遇ですか?」
上官「女武道家はアイツの葬式に出なかっただろう?」
女武道家「…出たくありませんでしたから」
上官「気持ちは分かるよ。まぁ聞いてくれ。…その式で竜騎士は殉職という事で特進とかを受けたんだよ」
女武道家「殉職、特別待遇ってわけですか…」
上官「あいつは例外過ぎた。三階級特進とか、過去にも余り聞いた事がないぞ」
女武道家「さ、三階級!?」
上官「中佐から准将も挟んで少将だよ。…笑えるね」
女武道家「竜騎士さんが少将…ですか」
上官「本来なら、殉職扱いじゃなくても中将、いや…大将に上り詰めてたかもしれないんだけどね」
女武道家「いえ、竜騎士さんなら元帥ですよ!」
上官「はっはっは!元帥には私がなるからな、そう簡単に席を譲るものか」ククク
女武道家「…上官さんなら、本当になりそうですよね」
上官「何年後になるか分からんがな。必ず私はこの国…いや、世界を導く指導者になってみせる」
女武道家「楽しみにしています」
上官「それでなぁ、あの支部長め…一々私のやる事に文句つけてくるんだよな…」ブツブツ
女武道家「どうしたんですか?」
上官「いや色々とな…割と昔から知ってるやつではあるんだが」
女武道家「仲いいんですか?結構親しげに話しをしてますよね」
上官「あ~…あいつは同期なんだよ」
女武道家「同期!」
上官「正確にいえば、私が塔の管轄をした時の知り合いで…同じ歳だって話だがな」
女武道家「塔の管轄!?上官さん、塔にいたことあるんですか!」
上官「上の担当ではないんだけどね。だから竜騎士の許可証もスムーズに運べただろう?」
女武道家「確かにそうですね」
上官「ま、私じゃなくても許可は下りてただろうけどね」
女武道家「なるほど~…」
上官「…しかし」
女武道家「?」
上官「竜騎士だけじゃなくて、女武道家も立派になったな。嬉しいぞ」
女武道家「そ、そんな…」
上官「あの時はまだ世間知らずだったが、今じゃ立派な一流の冒険家だ」
女武道家「そ、そうですかね…?だったら、嬉しいな」
上官「…同じ女性としても、誇りに思うぞ」
女武道家「いえ、私から見たら上官さん以上に誇れる人もいないと思います」
上官「照れるじゃないか」
女武道家「本当のことですよ!」
上官「はは…お?」
…コンコン
女武道家「おや、誰か来ましたね」
上官「…女武道家、そこを一回どけてくれ」
女武道家「あ、は…はい」
上官「よし…入っていいぞ」
ガチャッ…
軍人「大丈夫ですか?こちらです」
コートの男「あぁ…すまない」フラフラ
上官「…来たか」
コートの男「…どうも」
女武道家「だ、誰ですか?」
上官「…」
女武道家(真っ黒なコートにサングラス…。松葉杖…?)
上官「…ようこそ、中央軍へ。私が案内状を出した上官だ」
コートの男「…はい」
上官「イスはこちらだ…手招きしよう」ギュッ
コートの男「すいません、ありがとうございます」
ヨロヨロ…ストンッ
上官「よし、君は一度離れてくれるか?」
軍人「了解しました。失礼します」
ガチャッ…バタンッ…
コートの男「…」
上官「これで話を聞く人はいない。楽にしてくれ」
コートの男「はは…ありがとうございます」
女武道家「…どちら様ですか?この人の為に私が呼ばれたんですか?」
コートの男「…」
上官「そうだ」
女武道家「でも、私こんな人知りませんよ…?」
コートの男「…」
上官「まぁ後で分かるさ」
コートの男「"上官殿"…色々と野暮な話は止めましょうよ」
上官「野暮なものか…。私だって、どういえば良いか分からないんだ」
コートの男「…」
女武道家(あ…)
上官「…何か言わないか?」
コートの男「…いえ」
女武道家(ま…不味いです…)モジッ
上官「…ふむ」
女武道家「あ、あの…上官さん。私、ちょっと…」
上官「ん?」
女武道家「少しだけ、行ってきますね」モジモジ
上官「ん?どこにだ?」
女武道家「だ、だからちょっとあの…」モジッ
上官「ああ、トイレか。存分に行って来い」
女武道家「えぇっ!上官さんもっとデリカシーを…」
上官「お前が言うな!ま、行って来い」
女武道家「は、はいっ!行ってきます!」ダッ
ガチャッ…バタンッ…タッタッタッタッタッタ…
上官「全く…」
コートの男「…」フッ
上官「…」
コートの男「…上官殿?」
上官「なんだ?」
コートの男「聞いてませんね。彼女がココにいるなんて」
上官「まぁまぁ。たまたまだよ」
コートの男「たまたま、ですか。そりゃ都合のいいことですね」
上官「ま…それは置いといて。調子はどうなんだ」
コートの男「余裕です…と言いたいところですが、見ての通りです」
上官「松葉杖のところを見ると、脚…まだダメなのか」
コートの男「…はい」
上官「そうか…」
コートの男「分かってます。自分は既に…」
上官「そう悲願するな。私も出来ることなら手伝ってやる」
コートの男「…ありがとうございます」
上官「で、どうする。本当のことを話したほうがいいんじゃないのか」
コートの男「いや…もう一人で旅立つ時なんです。今も立派に元気じゃないですか」
上官「お前は…それでいいのか?」
コートの男「…いいんです。仕方ありませんよ…」
上官「…」
コートの男「竜騎士は死んだんですよ。もう…この世にはいません」
上官「いいや。生きてるね」
コートの男「…」
上官「今、私の目の前に…いるじゃないか」
コートの男「…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
女武道家「ふぅ~スッキリしました♪」
タッタッタッタ…
女武道家「それにしてもあの黒い人…一体誰なんでしょうか」
女武道家「もしかして私が勝手に遺跡調査に行ったから…執行人とか…!?」ゾゾゾッ
女武道家「うわーーん、まだ軍にいたいですよぉー…」
…ボソボソ
コートの男「…です」
上官「…だろう」
女武道家(あ…ドア越しに何か声が…。まさか私の処遇についてですか!)
女武道家(こうなったら…盗み聞きしてやります!)コソッ
上官「お前は…それでいいのか?」
コートの男「…いいんです。仕方ありませんよ…」
上官「…」
女武道家(…何の事だろう。私のことじゃないっぽい…?)
コートの男「竜騎士は死んだんですよ。もう…この世にはいません」
上官「いいや。生きてるね」
女武道家(…!?)
コートの男「…」
上官「今、私の目の前に…いるじゃないか」
コートの男「…」
女武道家(え…!?!?)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
竜騎士(コートの男)「…止めて下さい。もう、俺は竜騎士としては生きていけないんです」
上官「…」
竜騎士「どうせ軍は抹消されました。人々の記憶からも消え、俺はもうただの人間です」
上官「私から見たら、お前はずっと私の部下さ。可愛い愛弟子だ」
竜騎士「…嬉しい言葉ですね」
上官「女武道家にも教えてやればいい。泣いて喜ぶぞ」
竜騎士「だから、もう俺はアイツの傍にはいてやれないんです」
上官「なぜだ」
竜騎士「俺は一度死にました。そして、こんな体でどんな顔で会えばいいんですか?」
上官「…いつも通りでいいさ」
竜騎士「…無理だ」
上官「無理じゃない」
竜騎士「無理なんですよ…」
上官「やれやれ…いつの間に私の部下はそんな弱気になったのかねぇ」
竜騎士「…」
上官「確かに、お前は部下として切り捨てたほうがいいかもね。一番弟子でもっといいのを見つけたんだよ」
竜騎士「…誰ですか?」
上官「女武道家」
竜騎士「…ふっ」
上官「あいつは凄いぞ?一人で遺跡に行って、竜騎士さんの夢を追いかけるんだーってね」
竜騎士「は…?」
上官「無断で一人で冒険したようだよ?そっちのほうがよーっぽど一番弟子っぽ…」
竜騎士「…っざけないで下さいよ!」ドンッ!!
上官「おぉ怖い怖い…」
竜騎士「ちゃんと面倒見てくださいよ!貴方の部下でもあるんですから!!」
上官「私じゃ無理だ」
竜騎士「無理?上官殿のような人が無理だって…?女武道家、女一人を抑えることがですか!?」
上官「そりゃ無理さ。人が人に会うことすら無理な人だっているんだから」
竜騎士「そんな人いるわけ…!」
上官「…」
竜騎士「…っ」
上官「無理するな。会いたいんだろう?お前自身、竜騎士だって伝えたいんだろう?」
竜騎士「くっ…」
上官「伝えればいいさ。お前が…直接な」
女武道家「…」
竜騎士「!」ハッ
上官「やれやれ、後ろにいたのも気づかないとは…」
竜騎士「お…女武道家…今の話、まさか全部聞いて…」
女武道家「はい…。あなたが竜騎士さんだった、というところから…全部…」
竜騎士「…そ…そうか…」
女武道家「…」
竜騎士「…」
女武道家「…貴方は、本当に竜騎士さん…なんですか?」
竜騎士「…どう、思う?」
女武道家「サングラスを外して…目を、見せてください。コートを脱いでください。お願いします…」
竜騎士「…」
パサッ…カチャカチャッ…
女武道家「…!」
竜騎士「目は開けないんだ。光しか感じることが出来ない。足はない…顔にも酷いキズだ」
女武道家「あ…」
竜騎士「…どうだ?お前の知ってる男とは全く別の…」
女武道家「あ…あぁぁ…」ブルブル
竜騎士「ん…?」
女武道家「竜騎士さぁぁぁんっ…!!!」
ダダダダッ…ダキッ…ドォンッ!!ゴロゴロゴロ…
竜騎士「ぬあぁぁっ!」
上官(…やれやれ)
上官「はぁ~…お熱いねぇ…。私は外に人が近づかないようにしておくよ」ハハッ
ガチャッ…バタンッ…
竜騎士「っつ…バカ!俺はまだキズも癒えてないんだぞ!」
女武道家「竜騎士さん、竜騎士さんだ…本当に…!」
ギュッ…ギュウウウッ…
竜騎士「…」
女武道家「竜騎士さんの匂い…竜騎士さんの温かさ…そのままだ…」グスッ
竜騎士「…久々に会っても、まだ泣き虫だなお前は」ハァ
女武道家「…竜騎士さぁん…」
竜騎士「…いつまで倒れて抱きついてるつもりだ。俺が下じゃキズに障るだろうが」
…ポンッ、ナデナデ…
女武道家「あう…。えへへ…、竜騎士さん…」
竜騎士「…ここまでバレたら仕方ないな…久しぶりだ。女武道家」ニコッ
女武道家「…はいっ!」
竜騎士「少し話したいこともあるが、この体勢は少々床が冷たくて痛いのだが」
女武道家「じゃあ、ソファーで抱きしめてくっつきます!」
竜騎士「いや、別にくっつかなくても」
女武道家「竜騎士さんにくっついていたいんですっ!!」
竜騎士「あ…そう…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
竜騎士「…」
女武道家「竜騎士さん」
竜騎士「ん?」
女武道家「あの時、生きていたんですか…?」
竜騎士「…少なくとも、生きてたっては言えないな」
女武道家「どうして助かったんですか…?」
竜騎士「あの、お前の背で倒れた時…俺は死んでいた状態と一緒だったらしい」
女武道家「え…」
竜騎士「…寒かった。暗かった。意識がどこかへ飛んでいく…沈んでいく…あれが死ぬって事なんだろうな」
女武道家「…」
竜騎士「だが…そんな中、暗闇の中から手が伸びてきた。光輝いてた…」
女武道家「手…ですか」
竜騎士「手と一緒に、声が聞こえた。お前の声だ。何よりも…温かかったよ」
女武道家「…私の声」
竜騎士「そして、その手に引っ張られるままに、高く高く進んだ。空を翔けるようにな」
女武道家「…」
竜騎士「やがて目覚めると、ベッドの上だった。支部長たちの驚く顔が未だに忘れられん」ハハ
女武道家「一人でよみがえったってことですか?」
竜騎士「いや一応、蘇生術やら色々してたみたいだぜ。諦めた瞬間、俺が息を吹き返したらしい」
女武道家「…」
竜騎士「ま…お前のお陰で、一度死んだ世界から復帰できたのかもしれねえぜ」
女武道家「私、役にたてましたか?」
竜騎士「…おう。当たり前だ」
女武道家「でも…痛かったですよね。辛かったですよね」
竜騎士「あぁ。痛かったし辛かったよ。だが…お前に背負われるのは悪い気分じゃなかったかな」
女武道家「また、背負いますか!?」フンッ
竜騎士「そういう意味じゃねえよ、バカ」
女武道家「あう」
竜騎士「あんなに頼りなかったヤツが、こんなに大きくなってたんだなっていう…な」
女武道家「えへへ…」
竜騎士「改めて褒めてやるよ。そして、ありがとうな」ニコッ
女武道家「はいっ♪」
竜騎士「…」
女武道家「あ…そうだ!」
竜騎士「ん?」
女武道家「あの時の言葉、ウソじゃないですよね…」モジッ
竜騎士「あの時?」
女武道家「私に囁いてくれたじゃないですか!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
竜騎士「…」ボソッ
女武道家「えっ…?」
竜騎士「…」ボソッ…ボソボソッ…
女武道家「!!」
竜騎士「…」ニカッ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
女武道家「私はしっかり覚えてますよ!」
竜騎士「あ…あぁ~…」
女武道家「あの言葉通りなら…わ、私たちはどうなりますか?」
竜騎士「…忘れてくれ」
女武道家「えっ…」
竜騎士「忘れてくれ!!あんな死にかけで出たセリフ!!」
女武道家「ええ~っ!じゃ…じゃあ、ナシって事ですか…?」ショボン…
竜騎士「…っ」
女武道家「凄い…嬉しかったのにな…」グスッ
竜騎士「…」ドキン
女武道家「でも、仕方ないですよね…」
竜騎士(こいつ、段々…女として悪い方に良くなってる気がするぞ…)ドキドキ
女武道家「あう…」
竜騎士「あ~もう!そんなんじゃ敵わねぇじゃねえか。…そういう意味じゃねえよ」
女武道家「…?」
竜騎士「改めて、きちんとして言いたいだけだ」
女武道家「ほ、本当ですか…?」
竜騎士「約束…だったしな。ほら、俺から一回離れてそこに立て」
女武道家「!!」ピョンッ
竜騎士「…こっちでいいのか?目が見えないから良く分からないんだ」
女武道家「私、正面にいますよ!」
竜騎士「…そうか、では…」ゴホン
女武道家「…」ドキドキ
竜騎士「…」
女武道家「…」ドキドキ
竜騎士「…」
女武道家「…」ドキドキ
竜騎士「…やっぱ無理だ」プイッ
女武道家「えぇぇっ!」
竜騎士「恥ずかしいんだよ!!」
女武道家「うぅ~…」
竜騎士「っち…あぁ~~~もう!!」
女武道家「!」
竜騎士「…」スゥ…
女武道家「…!」
…ガシッ!!
竜騎士「女武道家、俺は仲間である前に…お前の事を"女としても"大好きだ」
竜騎士「だから…俺と一緒にこれからもパーティを続けてくれ。ずっと、な」
女武道家「…っ!!」
竜騎士「…」
女武道家「…」
竜騎士「…」
女武道家「…はいっ」ニコッ
竜騎士「…っ」カァァ
女武道家「え?」
竜騎士「だぁぁぁ恥ずかしすぎるわ!!ばぁぁかっ!!」
女武道家「え、ええぇ!かっこいいですよぉ!」
竜騎士「そういうことじゃねー!しかも、何だかんだで変なセリフになってるしよ!」
女武道家「恥ずかしがらないで下さいよ…、じゃあ…」
竜騎士「ん?」
女武道家「良く出来ましたで、おでこにチューしてあげます!」チュッ
竜騎士「…」
女武道家「えへへ…いい子いい子」ナデナデ
竜騎士「ぬがーーーっ!」
女武道家「きゃああっ!な、何ですかぁ!」
竜騎士「俺の気配の読みなめるなよ?…おらぁっ!」グイッ
女武道家「わっ…」
竜騎士「キスってのはな…こうするんだよ…!」
…………
………
……
…
女武道家「…っ!」
竜騎士「…っ」
…
……
………
…………
竜騎士「…」
女武道家「…あう」ボンッ
竜騎士「…この歳になって、キスくらいで大騒ぎすると思わなかった。あーくそっ」ボリボリ
女武道家「えへへ…どうしよう、嬉し幸せすぎて死にそうですっ…」
竜騎士「俺が死から戻ったんだ。お前が死ぬ事は俺が許さねぇよ」
女武道家「私だって、竜騎士さんが死ぬ事はもう許しませんからね…絶対に!」
竜騎士「…お互い様だな」ハハ
女武道家「…ですねっ」エヘヘ
…ジー
上官「ラブコメディは終わったかい、お二人さん」
女武道家「はっ!」
竜騎士「じょ、上官殿!?ま、まさかそこにいるんですか!?」
上官「本当に私の仕事場でラブラブされると辛いんだけどねぇ」ハァ
竜騎士「も、申し訳ありません!」
上官「ラブラブは否定しないのかよ」ゴツッ
竜騎士「いてっ!」
上官「まぁ…何だ。長い道のりだったが…おめでとう二人とも」
竜騎士「…ありがとうございます…なのか?」
女武道家「…ど、どうでしょうね」
上官「ラブラブもいいが…今後について少し話そうと思うが、いいか?」
竜騎士「は、はい」
女武道家「はいっ」
上官「お茶と必要な書類を用意するよ。ま…少し待ってくれ」
竜騎士「書類ですか…?まぁ、はい…わかりました」
女武道家「はい」
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上官「さて…と。じゃあ今後の事についてだ」
竜騎士「はい」
上官「竜騎士、お前はもう軍にはいない身だ。いや…世の中からもいないと一緒だが」
竜騎士「…ですね」
上官「女武道家、君は今年の4月に7昇進が決まり、大尉になったわけだ」
竜騎士「お前が大尉か…笑えてくるな」ククッ
女武道家「相変わらずひどいですね…」
上官「それで、どうするつもりだ?お前たち2人がパーティで冒険する事は出来なくなるだろう」
女武道家「え?」
上官「え?って、お前、軍の規定くらい知ってるだろう?」
女武道家「そ、そうなんですか?」チラッ
竜騎士「…あのな、軍人は基本的に一般人と探索とかしちゃダメなの」
女武道家「な、なぜですか?」
竜騎士「軍の情報や、軍の技術、軍しか入れない施設にパーティだと入れちゃうだろ?」
女武道家「あ…」
竜騎士「ほら…上の支部だってそうだろ?本来なら一般の立ち入りは禁止だしな」
女武道家「じゃあ…もう、竜騎士さんと旅をする事は出来ないってことですか…」
竜騎士「そうなるな…」
女武道家「い、嫌ですよ。やっとまた会えたのに…!」
竜騎士「…」
上官「だから、一つ案がある。女武道家、軍をやめろ」
女武道家「やめろ…?」
上官「一応、一生不自由しない金はあるんだろう?」
女武道家「それは…ありますが…」
上官「竜騎士はな、こう見えて寂しがりやでな。一人じゃリハビリも上手くいかん」
竜騎士「ちょっ…」
上官「お前の故郷の田舎町に一軒家を買え。そこでゆっくりとリハビリをさせるんだ」
女武道家「一緒に住めってことですか…?」
竜騎士「…」
上官「そうだ。軍のままでは、活動記録でどのみちバレてしまうだろうしな」
竜騎士「…女武道家、お前はどうだ?」
女武道家「私は…竜騎士さんと一緒にいたいだけです。軍にいて一緒になれないなら、やめます」
竜騎士「そんな簡単に…」
女武道家「簡単くらいが丁度いいんです」
竜騎士「はぁ~…、お前にそう言われたら俺だって頷く以外ないじゃないか」
上官「…あっさりだな。もっと揉めると思ったが」
竜騎士「こういうヤツなんですよ、こいつは」グリグリ
女武道家「…あうう」
上官「それもそうか。あ~あ…それにしても、一番弟子も二番弟子もいなくなるのか~」
竜騎士「それはないですよ」
上官「うん?」
竜騎士「俺らは、一生…あなたの部下であり弟子です。上官殿もそう言ってくれたじゃないですか」
女武道家「そうですよ。今まで、お世話になりました。だけど、これからも宜しくお願いします」ペコッ
上官「ふふっ…バカどもが」
女武道家「あ、そういえば軍の退役手続きってどうすればいいんでしょうか?」
上官「ほれ。名前を書くだけでいいように準備しといた」ポイッ
女武道家「準備いいですね…」
竜騎士「…はは」
上官「あとこれが田舎町の土地権利書。一応こことの極秘回線電話も引けるようにしといたぞ」パサッ
竜騎士「!?」
上官「あ、田舎町の皆には既にお前が生きてた事も伝えてあるから」
女武道家「!?」
上官「あと家具とかは一式後日、家が出来てから届くようにしておいたからな」
竜騎士「い、いつの間に!?」
上官「お前が生きてるって支部長に聞いた日から準備しといた。こうなると思ってな」
竜騎士「…さすが…だ…」
女武道家「でもこれで、ずっと一緒ですね竜騎士さん♪」
竜騎士「…そうだな」
上官「あ、そうそう…竜騎士、お前一応下半身は動くんだろ?」
竜騎士「膝下から動かないだけですよ」
上官「ああそうか。じゃあいいや」
竜騎士「何がです?」
上官「一家の主なるたる男は、やはり言葉や気持ちだけでなく…」
竜騎士「何の話しをしてるんですかぁっ!!」バンッ!!
上官「…大事な事じゃないか」
竜騎士「それはそれ、これはこれですよ!あー…危ない…」
女武道家「?」キョトン
竜騎士「今はお前はまだ気にしなくていいよ…」
上官「何を言う、女武道家は回りから見ても美し可愛い女性。それに運動もやっててスタイルが」
竜騎士「ふんっ!クッション投げ!」
…ボフンッ!!
上官「うぷっ…」
竜騎士「それ以上言ったらダメですって、マジで」
上官「…分かったって。じゃ、女武道家…それに名前は書いたか?」
女武道家「はいっ」
上官「よろしい。後日に少し手続きもあるが、まぁ今はこれでいい」
女武道家「分かりました」
上官「…ふふ。お前達は一度、外のカフェで休んでるといい。私は書類を出してくる」
ガチャッ…バタンッ…
竜騎士「はぁ~…ひと段落ついたし、上官殿のいうとおりにカフェに行くか?」
女武道家「はいっ、行きましょう♪」
竜騎士「っと…今はコートとサングラスかけてないと、すぐにバレるからな…」
パサッ…スチャッ…
女武道家「竜騎士さん、これからもいっぱい、沢山、色々なお話しましょうね!」
竜騎士「もちろんだ」
女武道家「それと…二人の家には、また畑を作りましょうよ!」
竜騎士「ん~?悪くないな。また二十日大根とか植えるか」ハハッ
女武道家「お金の心配もないですし、アーヴァンクちゃんを飼えますよね!」
竜騎士「あー…いいぜ。でもよ、まだ生きてるかなアイツ」
女武道家「生きてますよぉ!この間、実家でも一緒に遊びましたし」
竜騎士「えっ」
女武道家「えへへ…」
竜騎士「ま、そういう話はカフェででもしようぜ」
女武道家「あ~…でも、そしたらアヴァちゃん用に小屋も作らないと…」
竜騎士「聞けよ」
女武道家「そうだ、竜騎士さん!」
竜騎士「何だよ」
女武道家「コックさんとか、スミスさんにも挨拶に行かないといけませんねっ」
竜騎士「ん、まぁな。だからとりあえずカフェに…」
女武道家「でもでも、二人で一緒に住む家を建てますって恥ずかしいな…」カァッ
竜騎士「…」
女武道家「け、けけ…結婚とか…」チラッ
竜騎士「気がはえぇよ!つか、ここじゃ恥ずかしいからカフェに行こうぜって…」
女武道家「むぅ~…。確かにこういう言葉は男の人から言ってほしいですよね…」ブツブツ
竜騎士「…はは」
女武道家「竜騎士さん?…何で笑ったんですか?」
竜騎士「何となくだよ。生きててお前の笑顔を見れてよかったなー…ってな」ハハ
女武道家「…!」
竜騎士「はぁ~…楽しい事になりそうだな、全くよっ!」
女武道家「あ…竜騎士さん…それでね、それでねっ…!!」
……………
…………
………
……
…
――――決して出会う筈ではなかった二人。
だが…運命という名の偶然で、二人は出会った。
そして、二人は冒険に出た。世界を旅した。困難を乗り越えた。
二人は幾度と笑いあい、涙を流し…抱きしめあった。
これからも二人の道は険しいものとなるだろう。
だけどきっと大丈夫。この二人はどんな壁でも、乗り越えられていくだろうから。
……
………サァァァッ…
…そして…その年の夏。二人の家の庭には綺麗な2つの花が咲いた。
その2つの花は夏風に揺れながら、静かに静かに咲いていた。
今日もまた、庭先に出た二人は庭の花を見つめると、小さく優しく微笑んだ。
【 E N D 】
617 : ◆qqtckwRIh.[sag... - 2013/12/26 20:19:39 uX21C08. 478/505
■あとがき
無事に終了できたこと、ひとえに皆さまのおかげです。
また、竜騎士の本編はこれで終了となります。
3作全部を読んで下さった方々、コメントを寄せて頂いた方々、有難うございました。
そして、今年1年…本編にお付き合いくださった皆さま、本当に有難うございました。
※本編は終了しましたが、
謎解き予想編、アフターストーリー、修正(一部)を掲載しまして終了となります。
【番外編】に続きます。
竜騎士「空を翔けて冒険生活」【番外編】
おもしろかったぜい