劇場版[新編]叛逆の物語のネタバレを含みます。

元スレ
ほむら「私は今まで、間違えてばかりだった」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1385375017/

2 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/25 19:25:17.64 1dlIf1yco 1/389

杏子「しっかしこんな時期に転校生とはねー。
   しかもアメリカ帰りだってさ! 帰国子女ってやつだろこれ」

さやか「ん、あぁ……うん、そうだね」

杏子「あん? なんだよ、妙にすっきりしない返事じゃん」

さやか「えっ、あ……そんなことないよ、あははっ! 別にフツーだよフツー」

杏子「……? もしかしてアレか? あんた、あの子と知り合いだったとか?
   3年前までは見滝原に居たんだったよね」

さやか「あ、あぁー、そうそう、うん。
    でもどうかなぁー、あっちはあたしのこと覚えてないんじゃないかなぁー?」

3 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/25 19:32:38.52 1dlIf1yco 2/389

杏子「ってことは、そこまで仲良くはなかったってことかい?」

さやか「えーっと、どうだったかなぁー?
   仲が良いと言えば良かったような、それほどでもなかったような……」

杏子「なんだそりゃ。あんたやっぱ何か変じゃないか?
   はっきりしないなら試しに声かけてみれば良いじゃん。ホラ、行ってきなよ」

さやか「い、いや良いよ。今なんか質問攻めで忙しそ……。っ!」

杏子「ん……? なんだほむらの奴、あの転校生と知り合いなのか?」

さやか「……さぁ、どうなんだろうね」

杏子「あっ、行っちまうぞさやか。良いのか?」

さやか「だから良いってば! 話す時間なんてこれからもたっぷりあるんだし!」

杏子「ふーん……? まぁあんたが良いんなら別に良いけどさ」

4 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/25 19:37:20.46 1dlIf1yco 3/389

さやか「…………」

……本当はすぐにでも話しかけに行きたかった。
でもできなかった。
今あたしが持ってる記憶が、この世界では正しいのかどうかが分からなかったから。
多分この世界のまどかとあたしとの関係は、あたしの知ってるものじゃない。

だからどんな風にまどかに話しかけるべきなのか迷ってて……。
そうしてる内に、まどかは行ってしまった。
あいつに……暁美ほむらに連れられて。

そう、あいつ、暁美ほむら。
この世界はあいつに作られた、あの悪魔が作り出した、そういう世界なんだ。

……確か、そうだったはずだ。

5 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/25 19:45:14.89 1dlIf1yco 4/389

今はなんとか覚えてる。
でももうその記憶もあやふやになってきて、なんとなく自信が持てない自分がいる。
いけない……このままじゃあたし、本当に何もかも忘れてしまう。

……何もかも……?
あれ、あたしってもう何か忘れてるんだっけ?
それすらも、よく分からなくなってる。
もしかしたらこのまま何かを忘れてることすら忘れて……
あいつが、悪魔だってことも忘れて……

杏子「――さやか。オイ、さやか!」

さやか「……えっ?」

杏子「えっ、じゃねぇよ。何だよ急にぼーっとしやがって」

さやか「あぁー、ごめんごめん。ちょっと考え事しちゃってて……」

6 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/25 19:52:16.86 1dlIf1yco 5/389

さやか「それで何? 何の話だっけ?」

杏子「今日の放課後はどこに寄ってくかって話だろ?
   喫茶店? たい焼きの屋台?」

さやか「え……そんな話してたっけ? っていうかなんでその二択なのよ。
    あたしがぼーっとしてる間にどんな風に話が進んだわけ?」

杏子「いや、別に? あたしがそのどっちかに行きたい気分ってだけ」

さやか「ぷっ……あははっ! もう、何よそれ」

杏子「それでどうするのさ? あたしはそのどっちかならどっちでも良いぜ?
   今日はさやかに選ばせてやるよ!」

さやか「何よ恩着せがましく。
    まぁそうねー、どっちかと言うと喫茶店でパフェな気分かな?」

7 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/25 19:57:34.47 1dlIf1yco 6/389

杏子「よっし決定! なーに食べよっかなぁー。こないだはチョコだったし、今日は……」

さやか「あっ……あのさ、杏子。
    その……喫茶店なんだけど、あの子も誘って行かない?」

杏子「あの子? って、転校生?」

さやか「そうそう、転校生。ね、良いでしょ?」

杏子「まー良いけど。やっぱアレか? 昔みたいにまた仲良くしたいってか?」

さやか「まぁ……ね。そんなとこかな」

杏子「……ふーん」

さやか「あらら? 何よ杏子、もしかして妬いちゃってるわけ? ジェラシーですか?」

杏子「はぁ!? 誰が、なんで! わけわかんねぇこと言ってんじゃねぇっての、バーカ!」

8 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/25 20:03:09.61 1dlIf1yco 7/389

さやか「そんなに心配しなくても大丈夫だよ~。
    あの子と仲良くなったからって杏子のことほったらかしになんかしないからさ!
    ひとりぼっちは寂しいもんねぇ~」

杏子「誰もそんなこと気にしてないっつーの!
   寧ろあたしの方が仲良くなってやるよ。あんたが寂しがっても知らねぇからな!」

さやか「あははっ、良いねそれ。みんなで仲良くなろ! 前みたいにさ!」

杏子「前ってのがどんなのかは知らねぇが……まぁ良いや。
   そんじゃ、今日の寄り道はあの転校生も一緒ってことで決まりだな?」

さやか「『転校生』じゃなくてまどかだよ、鹿目まどか。名前忘れちゃったの?」

杏子「大丈夫だよ、覚えてるって。さっき聞いたばっかなのに忘れるわけないじゃん」

さやか「……ははっ、そうだね。さっき聞いたばっかだもんね」

9 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/25 20:10:21.54 1dlIf1yco 8/389

1時限目が終ったら、あたしはすぐにまどかの席へ向かった。
杏子も付いて来る。

……やっぱりちょっとだけ緊張する。
まどかついては、まだほとんど元の記憶のまま……だと思う。
だからあたしはこの世界のあたし達の関係についてはほとんど何も……

さやか「……ねぇ、ちょっと良いかな」

まどか「えっ?」

まどかはあたしに気付き振り向いて、きょとんとしたような表情を見せる。
笑顔で振り向いて、名前を読んでくれるのをちょっとだけ期待してたけどやっぱり駄目みたい。
ま、わかってたけどさ。

10 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/25 20:17:02.61 1dlIf1yco 9/389

さやか「……あたしのこと、覚えてない?」

まどか「あっ、その……ご、ごめんなさい」

さやか「そっか……ううん、良いの。仕方ないよ。
    3年も前だし、そんなに仲良かったわけでもないし……」

杏子「……さやか」

さやか「あ、あぁうん! えっと、まど……鹿目さん!
    今日の放課後って何か用事ある? 何も無かったら喫茶店とか寄ってかない?」

まどか「えっと……ごめんね、今日はちょっとまだ家の方が忙しくて。
    荷物の整理とかまだ全然だし、色々……だから……ま、また今度でも良いかな?」

さやか「あー……そっか、そうだよね。まだ色々忙しいよねー」

杏子「…………」

11 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/25 20:22:22.41 1dlIf1yco 10/389

さやか「うん、わかった! また今度誘うね!
    あ……そうだ! じゃあさ、今日のお昼とか一緒にどう?
    おかずの交換とかしてさ! みんなで食べるの楽しいよー!」

まどか「えっ? い、良いの?」

さやか「もっちろん! あたし達だけじゃなくて3年生の先輩も一緒……一緒だよね?」

杏子「? マミのことだよな? そりゃあいつなら1人増えたって文句は言わねぇだろ。
   寧ろ友達が増えたーって喜ぶと思うぜ?」

さやか「だよね! だからさ、一緒に食べようよ!」

まどか「じゃ、じゃあ……ご一緒させてもらっても良いかな。えっと……」

さやか「あたし美樹さやか。さやかで良いよ!」

杏子「佐倉杏子。ま、よろしくね」

12 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/25 20:31:15.92 1dlIf1yco 11/389

さやか「えーっと、それで……あたしも、まどかって呼んでも良いかな?」

まどか「! う、うん、良いよ」

さやか「良かった! じゃあ改めてよろしくね、まどか!」

まどか「よろしくね、さやかちゃん、と……」

杏子「杏子で良いよ。こっちも下の名前で呼ばせてもらうからさ」

まどか「う、うん! 杏子ちゃん、よろしくね」

さやか「…………」

こうして見ると、ちょっとぎこちない感じはするけどやっぱりまどかだ。
これから仲良くなったらきっと、このぎこちなさも無くなるんだろうな。
それで違和感も無くなって、きっとあたしの知ってるまどかに……。

……あれ?
あたしの知ってるまどかって、どんなだっけ。

13 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/25 20:37:17.53 1dlIf1yco 12/389

屋上

さやか「居た居た。マミさーん!」

マミ「! こんにちは。美樹さん、佐倉さん……あら?
  その子は初めまして、よね? 2人のお友達?」

まどか「は、初めまして、鹿目まどかです。その、今日この学校に転校してきました」

マミ「まぁ、そうだったの! ふふっ、初日から転校生の子とお昼をご一緒したりして、
  なんだか同じ学年の子に申し訳ないわね。でもとても嬉しいわ」

まどか「そ、そんな、こっちこそ……えへへ」

杏子「ほらな、行った通りだろ? マミなら歓迎してくれるってさ」

15 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/25 20:43:34.71 1dlIf1yco 13/389

マミ「私は巴マミ。よろしくね、鹿目さん」

まどか「は、はい。よろしくお願いします」

マミ「見滝原の前はどこに住んでたの? いつからこの町に?」

まどか「あっ、えっと……」

杏子「ちょっとちょっと。そういう話はさ、飯食いながらにしない?
   あたしもう腹ぺこぺこだよー」

さやか「もー、あんたいっつもそればっかり。ちょっとは賛成だけどさ!」

マミ「ふふっ、ごめんなさい。それもそうね。
  話したいことはたくさんあるし、お弁当食べながらにしましょうか。
  待っててね、すぐにお茶を準備するわね」

16 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/25 20:51:09.54 1dlIf1yco 14/389

まどか「え、お茶?」

さやか「マミさんの自家製だよ!
    いつもお昼がちょっとしたティータイムになっちゃうんだよね」

杏子「本当はケーキかお菓子があればもっと良いんだけどなー」

マミ「佐倉さんったら。それはまた明日!」

杏子「おぉ、さっすがマミ! 早く明日になんないかなー!」

さやか「まったく杏子は本当に食い意地が張ってるわよねー。
    あ、マミさん! あたしからもお願いしまーす!」

まどか「ぷっ……あははっ!」

マミ「ほら2人とも? 転校初日から、おかしな子だと思われちゃうわよ?」

17 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/25 20:57:15.13 1dlIf1yco 15/389

まどか「あっ、ご、ごめんなさい、違うんです!
    ただちょっとその……た、楽しいなって」

杏子「だったら良いじゃん! じゃあマミ、明日は人数分のデザートも頼むぜ?」

さやか「楽しみにしてなよー、まどか!」

まどか「! じゃあ明日もわたし……?」

マミ「もちろん。一緒にお昼を食べましょう?
あ、鹿目さんの都合が悪くなければだけど」

まどか「だ、大丈夫です! それじゃ、えっと……よ、よろしくお願いします!」

マミ「えぇ、よろしくね。デザート楽しみに待っててね」

18 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/25 21:12:04.24 1dlIf1yco 16/389




放課後

さやか「ん~、終わった終わった。さてと、帰りますか」

杏子「まどかは今日は寄り道、無理なんだっけ?」

まどか「あ、うん……。で、でも出来るだけすぐ終わらせて、
    早く一緒に帰れるようにするから、えっと……!」

さやか「あはは、分かった分かった。3人で寄り道するの楽しみにしてるよ!」

まどか「! うん!」

さやか「それじゃまどか、また明日ね!」

杏子「手伝いしっかりやりなよー」

19 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/25 21:20:23.93 1dlIf1yco 17/389

まどか「じゃあね、さやかちゃん、杏子ちゃん!」

2人にお別れを言って、わたしは教室を出た。
さやかちゃんと、杏子ちゃん……。
転校初日からお友達が2人もできるなんて、思わなかった。
それにクラスの子だけじゃなくて、3年生の先輩まで……すごく嬉しい。

さやかちゃんも杏子ちゃんもマミさんも、明るくて優しくて、とっても良い人たち。
みんなとお友達になって、楽しい学校生活になるんだろうなってそう思える。

家の用事で寄り道できなかったのがとても残念。
学校が楽しすぎたのかな、1人で帰るのがちょっとだけ寂しいかも。
でもきっと、今日頑張ったら明日からはみんなで……

   「まどか、今1人?」

20 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/25 21:29:52.45 1dlIf1yco 18/389

学校を出て少し歩いたところで、突然後ろから声をかけられる。
驚いて振り向くとそこに居たのは、

まどか「ほ……ほむら、ちゃん」

ちょっとだけ、体が強張るのを感じる。
ほむらちゃんはそんな私の緊張に気付いたのか、少しだけ微笑んで言った。

ほむら「ごめんなさい、驚かせるつもりはなかったの。
    帰る方向が同じみたいだったから声をかけてみたんだけど」

まどか「う、ううん、こっちこそごめんね」

ほむら「それで……あなた、今は1人?
    お昼は美樹さん達と一緒だったでしょう?」

22 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/25 21:35:44.17 1dlIf1yco 19/389

まどか「あ、うん……。2人とも寄り道に誘ってくれたんだけど、
    今日は家の手伝いがあって、それで……」

ほむら「……そう。私も1人なの。良かったら途中まで一緒に帰らない?」

まどか「う、うん、良いよ」

ほむら「ありがとう、まどか」

……そうして、わたしはほむらちゃんと2人で帰ることになった。
転校初日から一緒に帰るって、普通に考えたらお友達になれる良い機会なのかも知れない。
でもわたしは……正直に言って、ほむらちゃんとお友達になれる自信がなかった。

お友達になりたくないわけじゃない。
だけど、なんとなく、上手く言えないんだけど……。
この子は多分、良い意味か悪い意味かは分からないけど……普通じゃない、ような。
そんな気がする。

23 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/25 21:40:01.35 1dlIf1yco 20/389

今朝のわたしに接する態度は、どう考えても変だった。
だってあんなの、あれじゃまるで……

ほむら「お昼、楽しかった?」

まどか「えっ?」

ほむら「お昼ご飯、美樹さん達と一緒に食べたんでしょう? 仲良くなれた?」

まどか「あ……う、うん。さやかちゃんも杏子ちゃんも優しくて、
    それから3年生の先輩も一緒で、楽しかったよ」

ほむら「……そう、良かった」

まどか「!」

あれ……なんだろう。
今のほむらちゃんの表情、なんだか……

24 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/25 21:45:02.65 1dlIf1yco 21/389

ほむら「みんなとても良い人達だから、きっと良い友達になれるわ。
    楽しい生活を送れるはずよ。これから卒業まで、ずっと。
    卒業してからもきっと、ずっと……」

まどか「う、うん……」

ほむら「家族とも……ずっと仲良くね」

まどか「うん……」

……やっぱり、ほむらちゃんは何か変わってる。
ついさっきまではその『おかしさ』が、ちょっと怖かった。
だけど今は……

まどか「ねぇ、ほむらちゃん」

ほむら「何?」

まどか「今日の朝のこと……訊いても良いかな?
    ほむらちゃんが言ってたことの意味、とか……」

28 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/25 22:55:29.49 1dlIf1yco 22/389

隣を歩きながらずっと正面を向いていたほむらちゃんだけど、
その時初めて、横を向いてわたしと目を合わせた。
だけど何秒も経たないうちにすぐにまた正面を向いて、静かに答えた。

ほむら「ごめんなさい」

まどか「……訊いちゃ駄目、なの?」

ほむらちゃんはしばらく答えずに、そのまま正面を向いて歩き続ける。
そしてふいに、ぴたりと止まった。

まどか「ほむらちゃん……?」

ほむら「……やっぱりあなたは優しいわね。
    あんなに訳の分からないことを言った私を、まだ理解しようとしてくれている」

まどか「えっと、だって……」

ほむら「その気持ちだけでとても嬉しいわ、ありがとう」

29 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/25 23:02:48.87 1dlIf1yco 23/389

まどか「う、ううん、そんな。お礼なんて……」

ほむら「でも良いの。私のことなんて気にしないで。
    あなたはあなたの家族や、友達を大切にしてあげれば良い」

まどか「え……」

ほむら「……私、ここで曲がるわね。また明日学校で会いましょう。
    困ったことがあったら何でも言ってね、きっと力になるから。
    それじゃ、さようなら」

まどか「っ……」

引き止めようとしたけど、できなかった。
やっぱり……ほむらちゃんとお友達になるのは難しいかも知れない。
そう思いながら、わたしはほむらちゃんの背中を見送った。

30 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/25 23:11:47.41 1dlIf1yco 24/389

わたしにはほむらちゃんの言ってる意味は全然わからない。
ほむらちゃんもそのことは知ってるんだと思う。
わたしがほむらちゃんのことを何もわかってないって知ってて、ああ言ってるんだと思う。

でもそれはきっとすごく寂しいことで。
相手が自分のことを分かってくれない、
理解してくれないと思ったまま会話をするなんて、すごく辛いことで……。

でも仕方ないことなのかな、とも思う。
どんなに仲が良くても、人のことを100%理解するっていうのは多分、無理なんだと思う。

だからすれ違ったりもするし、ケンカしちゃったりもするし、
今朝ほむらちゃんの言ってた通り、敵同士になっちゃったりもするかも知れない。
それは仕方ないことなんだけど、でも……。
仲直りした時にはきっともっと仲良くなれてるんじゃないかな、ってそんな風にも思ったりもして。

もしわたしが本当にほむらちゃんと敵同士になったら、その時はきっと……。

31 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/25 23:18:21.55 1dlIf1yco 25/389




……あの子は本当に優しい。
こんな私を理解しようとしてくれる、とても優しい子。

でも、分かってる。
たとえあの子にだって私の想いは理解できない。
誰にも理解できない。
してもらう必要もない。
ただ1人、私だけがこの想いを抱いて信じていれば良い。

でも安心して、まどか。
あなたが私のことを分からなくても、
私はあなたのことを分かってるから。

32 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/25 23:24:33.09 1dlIf1yco 26/389

あの子はとても優しい子。
だからこそ私は、自分の歩む道を信じられる。
優しいあの子の幸せを守らなければならないと、改めてそう思える。

私はきっとこの世界で、あなたを幸せにしてみせる。
いつか私はあなたの敵になるかも知れないと、そう言ったけれど……。
でも絶対にあなたには気付かせない。

ねぇ、まどか。
あなたには敵なんて居ないわ。
あなたの周りに居るのは、あなたの味方だけ。
もちろん私だってあなたの味方。
だから何も気にしないで、たくさんの友達と、家族と、幸せに暮らせば良いの。

私はそう言ってあなたを騙し続ける。

33 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/25 23:29:34.69 1dlIf1yco 27/389

ごめんね、まどか。
でも安心して。
あなたのその幸せは間違いなく本物だから。
紛い物なんかじゃない、本当の幸せ。
紛い物は私だけ。

あなたの敵は私だけ。
嘘つきの卑怯者は、私だけ。
仕方ないわよね。
私は悪魔なんだから。
そしてそれで良いの。
あなたの幸せさえ守れれば、私はどんなに醜い存在になっても構わない。

私はもう二度とあなたとわかり合うことはない。
当然よね。
神と悪魔が仲良くなんて、なれるわけないもの。

34 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/25 23:35:39.30 1dlIf1yco 28/389

でも良いの。
あなたは私と仲良くする必要なんてない。
私のことなんて気にしないで。
あなたはただこの世界に居てくれれば良い。
何処にも行かないでくれれば良い。
私は傍で、きっとあなたの幸せを守り抜くから。
あなたが幸せな人生を全うするまで、あなたの世界を守ってみせる。

ほむら「…………」

今夜も、瘴気が濃いわね。
本当に救いようのない世界。
だけど私は、この世界を守る。
この世界にあなたが居る限り。

この世界からあなたが居なくなった、その後は……またその時に考えましょう。

44 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/26 19:28:16.96 qZPYiNBko 29/389




マミ「美樹さん、大丈夫? 体調が悪いなら無理しなくて良いのよ?」

さやか「ううん、大丈夫大丈夫! 平気だよ!」

杏子「無茶すんじゃねぇぞさやか。今日も魔獣共は元気いっぱいみたいだしさ」

さやか「だったらなおさらあたしだけ休んでるわけにはいかないでしょ!
    本当に大丈夫だよ! 大体、あたしの売りは回復力なんだから。
    体調不良なんてあり得ないって!」

マミ「だったら良いんだけど……少しでも調子がおかしいと思ったらすぐ下がるのよ?」

さやか「はーい、了解です!」

45 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/26 19:33:41.82 qZPYiNBko 30/389

2人ともあたしの様子が変なことに気付いて心配してくれてる。
でも体調自体は、本当にどこも悪くない。
ただ……何かおかしい。

今あたしはマミさんと杏子と一緒に魔獣退治に向かってる。
この状況はどこもおかしくはない、はずなのに。
それなのにあたしは自信を持てなかった。
それだけじゃない。
杏子があたしの家に居候してるってことも、自信を持てなかった。
『本当にそれで良いのかどうか』。

知ってたはずなんだ。
みんなで一緒に魔獣と戦ってたことも、杏子があたしの家で暮らしてることも、知ってた。
なのに自信が持てなかった。
今あたしが持ってる記憶に、自信が持てなかった。

なんでだろう?
この記憶は……別にどこもおかしくはないはずなのに。

46 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/26 19:42:37.29 qZPYiNBko 31/389




翌日、昼休み

マミ「――それじゃあ、デザートにしましょうか。約束通りちゃーんと用意してきたわよ?」

まどか「わぁ、ありがとうございます!」

杏子「ぃよっ! 待ってましたぁ!」

さやか「どれどれ……むむっ、これは! チーズケーキだ! 美味しそぉー!」

まどか「マミさん、もしかしてこれ手作りですか?」

マミ「えぇ、そうなの。美味しくできてると良いんだけど」

さやか「やったあ、マミさんの手作り!
    そんなの美味しいに決まってるじゃーん!」

47 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/26 19:48:26.36 qZPYiNBko 32/389

杏子「さてはマミ、まどかが居るってんで気合入れて来たな?
   あたし的には大歓迎だけどさ!」

まどか「えっ、そうなんですか? わたしのためにわざわざ……?」

マミ「それもあるんだけど……。
  実は昨日たまたまクリームチーズを買う機会があって、
  ちょうど良いしチーズケーキでも作ろうかな、って思ったの」

さやか「へぇー。でも買う機会があったからって普通にそういう発想になる辺り、
    流石マミさんって感じだよね!
    あたしだったら特売やってたってチーズケーキ作ろうなんて思わないもん」

まどか「わたし、買ってもそのままおやつに食べちゃうかも……」

杏子「あたしはそうだな……マミ、チーズケーキ作ってくれないかなぁーとか思うかもね」

さやか「マミさん頼みか!」

48 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/26 19:53:53.05 qZPYiNBko 33/389

杏子「それより早く食おうぜ! マミ、お茶もなくなったからおかわり!」

マミ「はいはい、今準備するから待っててね」

まどか「あっ、手伝います!」

マミ「ありがとう、鹿目さん。それじゃあ、みんなにお茶を入れてあげてもらえる?」

まどか「はいっ」

さやか「いやぁ働き者だねぇー。
    杏子ぉ、あんたもちょっとはまどかを見習ったらどうなのよ?」

杏子「説教はやだよー。今はマミのケーキとお茶が先だね!」

49 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/26 20:01:38.84 qZPYiNBko 34/389




放課後

さやか「――それにしても、案外引越しの片付けって早く済んじゃうものなんだね。
    あたしはてっきり今日くらいまではかかると思ってたけど」

まどか「うん! ウチはパパが専業主夫だから、お昼のうちにかなりやってくれて。
    それで昨日でほとんど終わっちゃったの」

杏子「へー、専業主夫ねぇ。まぁ確かに体力の要る仕事を済ませるにゃ好都合だね」

まどか「わたしもね、今日はちゃんと寄り道したいなと思って頑張ったんだ!
    だから良かったぁ。わたし寄り道ってあんまりしたことなかったから楽しみで……えへへ」

さやか「あはは! 『ちゃんと寄り道する』ってのも変な言い方だよね。同感だけど!」

杏子「でもさぁまどか、本当に店を見て回るだけで良いのか?
   買い食いとかの方が良かったんじゃない?」

さやか「まどかをあんたと一緒にしないの!」

50 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/26 20:06:14.54 qZPYiNBko 35/389

まどか「あはは……。わたしは全然、こういうのもすごく楽しいよ?
    お店を見て回るだけでもなんだかわくわくしちゃうし、3年前との違いも知られて良いなって」

杏子「ふーん。あたしは見て回るより食って回る方が好きだな」

さやか「あんたねぇ。大体、お昼にチーズケーキとか食べちゃったんだから
    その上放課後も買い食いなんて普通はしないんだって。あんたが特別なのよ」

杏子「そーいうもんかね」

さやか「とか言ってる間にまたお菓子食べだしてるし……」

杏子「ま、あたしも別にこういうの嫌いじゃないよ。
   あんたが満足するまでは付き合ってやるさ」

まどか「うん、ありがとう!」

51 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/26 20:13:53.83 qZPYiNBko 36/389




さやか「――これで近くの店は大体回ったかなー」

杏子「そんじゃ、今日のところはそろそろ切り上げるかい?」

まどか「うん、そうだね。今日はとっても楽しかったよ!
    ありがとう、さやかちゃん、杏子ちゃん!」

杏子「どーいたしまして。今回はただ店を見て回るだけだったが、
   次はそうだな……あたしのオススメの屋台とか紹介してやろうかな」

さやか「あはっ! 良いねぇそれ。ただし、ちゃんとお腹が減ってる時に頼むよ?」

まどか「杏子ちゃんのオススメって、すごく美味しそう! 楽しみにしてるね!」

52 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/26 20:22:14.33 qZPYiNBko 37/389

杏子「おう、期待して待ってなよ」

さやか「あっ、そうそう、まどか。帰る前に聞いとくけど、学校はどう?
    今日で転校2日目が終わったわけですが、
    何か困ったこととか、分からないとことかあったりはしませんかな?」

まどか「ううん、大丈夫。2人のおかげで困ったことは全然ないよ!
    ……あっ、でも……。1つだけ訊きたいことがあるんだけど、良いかな?」

さやか「うむ! なんでも訊いてくれたまえ!」

まどか「その……ほむらちゃんって、どんな子なのかなって」

さやか「……え?」

53 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/26 20:27:51.48 qZPYiNBko 38/389

杏子「何、ほむらのことが気になるわけ?」

まどか「う、うん、そんなとこかな」

杏子「どんな子かって言われてもなぁ。あたしはあんまり喋ったことないし……。
   クラスで喋ること自体そんなに無いんじゃないの?」

まどか「そう、なの? 大人しい子?」

杏子「まぁそういうことになるか。暗いってことはないと思うけどさ。
   あとは……あたしはよく分かんないや」

まどか「そうなんだ……」

杏子「オイさやか。あんたからは何か無いわけ?」

さやか「え、あー……えっと……ごめん。
    あたしもよく知らないんだ、暁美さんのこと」

54 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/26 20:35:06.17 qZPYiNBko 39/389

さやか「ただ、うーん……あたしはなんていうか、ちょっと苦手、かな」

まどか「え……そうなの?」

杏子「なんだそりゃ、苦手とか初めて聞いたぞ。なんでだよ?」

さやか「いや、なんでかは上手く説明できないんだけど……。
    なんとなーく、ね。あぁいや、別に嫌いとかじゃないんだよ?
    でもさ、あるじゃん? なんか上手く言えないけど苦手……みたいな」

杏子「……? あたしにはよく分からないが、生理的に無理ってやつか?」

さやか「生理的に、生理的に……うーん……そうなのかな? よくわかんない。
    真面目っぽい感じだし、別に何かされたわけでもないんだけどなぁ」

まどか「…………」

55 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/26 20:40:39.46 qZPYiNBko 40/389

さやか「あっ、ご、ごめん変なこと言って! 別に悪口とか陰口じゃないから!
    暁美さんがどうこう言うんじゃなくて、あたしがワケ分かんないこと言ってるだけだから!」

まどか「あっ、ううん、大丈夫だよ! 気にしないで!」

杏子「まー確かにワケわかんねぇな。さやかが理由もなく誰かを苦手になるなんてさ。
   マミじゃねぇけど、あんたとほむらには前世で何か因縁深いものがあったりして!」

さやか「な、何よそれ。前世では宿敵同士でしたとかそういうこと?」

杏子「それかほむらの奴に殺されたとか?」

さやか「はぁ……!?」

まどか「き、杏子ちゃん、それはちょっと……!」

杏子「ん、あぁ……ちょっと悪ふざけが過ぎたね」

56 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/26 20:46:00.94 qZPYiNBko 41/389

杏子「まぁアレだ。残念だけどあたしらじゃほむらのことはこれ以上教えられそうにないよ。
   悪いね、ろくなこと教えてやれなくてさ」

まどか「ううん、良いの……ありがとう」

さやか「まどかは、さ。暁美さんのことはどう思ってるの?」

まどか「えっ、わたし? ……ちょっと変わった子、かな」

さやか「変わった子……?」

杏子「へぇー、なんで?」

まどか「え、いや、なんでというか……。わ、わたしにだけなのかな……。
    クラスではそんなことないの? ちょっと不思議なことを言ったりとか……」

杏子「……? 少なくともあたしは聞いたことないよ。さやか、あんたは?」

さやか「あたしも特にない……と思う」

まどか「……そう、なんだ」

57 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/26 20:52:48.59 qZPYiNBko 42/389

杏子「っていうか何? あんたほむらに何か変なこと言われたの? なんて?」

まどか「えっ、それは、その……ご、ごめんね」

杏子「は? 秘密ってわけ?」

まどか「う、うん……」

杏子「まぁ……言いたくないってんなら無理には訊かないけどさ。
   あんたはそれで嫌な思いをしたとか、そういうわけでもないんだろ?」

まどか「あ、うん。本当にただ不思議っていうだけで……」

杏子「そっか。なら良いんだが、もし嫌な思いさせられたってんならすぐに言いなよ?
   そんときゃあたしたちがなんとかしてやるからさ」

まどか「うん、ありがとう。大丈夫だけど、もし何かあったら相談するね!」

60 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/26 22:09:12.74 qZPYiNBko 43/389




まどか「――じゃあね、さやかちゃん、杏子ちゃん! また明日!」

行けるとこまで3人一緒に帰って、途中の角でまどかは曲がった。
あたしと杏子は、しばらくまどかに手を振って見送った。
そしてまどかと別れて少し歩いた頃……杏子がふいに話を切り出した。

杏子「……で、あんたはあんたでどうしちゃったわけさ?」

さやか「へ? な、何が?」

杏子「ほむらのことだよ。あいつの話題が出た途端、妙な反応しやがって。
   その後もやけに無口だったじゃないか」

さやか「あー……そうだっけ?」

61 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/26 22:18:18.91 qZPYiNBko 44/389

あたしがそう答えたのとほぼ同時。
並んで歩いてた杏子は、あたしの肩を掴んで立ち止まった。

杏子「……あんた、あいつに何かされたのか?」

さやか「えっ?」

杏子「あいつに何か嫌な思いさせられてるとか、そういうことがあったりすんのか?」

さやか「え……なに、杏子。もしかして心配してくれてるのー?
    あたしが暁美さんにイジめられてないかって?」

杏子「茶化すなよ、正直に答えてくれ」

あたしは軽い口調で返したけど、杏子の口調は変わらない。
その目も真っ直ぐにあたしを見つめてる。
杏子のこんな真剣な顔は珍しい。
そっか、杏子は本気で……

さやか「ふ……あははっ、大丈夫だって! ほんと、何もないから心配しないで!」

62 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/26 22:24:25.43 qZPYiNBko 45/389

杏子「……本当だな? 信じて良いんだな?」

さやか「これが強がりに見える?
    っていうか、あたしがそんな黙ってイジめられるような奴だと思ってるわけ?
    イジメっ子なんか返り討ちにしてやるって!」

杏子はそのまましばらくあたしの目をじっと見てから……
ふっと表情を和らげた。

杏子「ははっ……確かにそうだな。あんたはそんなタマじゃない。
   余計な心配だったね。今のは忘れてくれ」

さやか「えー? やだよ忘れちゃうのなんて」

杏子「は? あんた何言って……」

さやか「だってさ、杏子がさやかちゃんのこと大好きだって分かっちゃったもんね!
    そんな杏子をこのあたしの嫁にしてあげよう! 光栄に思いなさい!」

杏子「なっ……ひ、人がちょっと心配してやったら調子に乗りやがって……!」

63 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/26 22:30:35.04 qZPYiNBko 46/389

さやか「まぁまぁ、そう照れなさんな」

杏子「照れてねぇ! くそっ、二度とてめぇの心配なんかしてやるもんか!」

さやか「……ありがとね、杏子。まぁあんたの勘違いだったけどさ。
    嬉しかったよ、心配してくれて」

杏子「っ! ……ちぇっ。調子狂うよな、ったく……」

さやか「あたしもあんたのこと心配してあげるから、何かあったらすぐ言ってよ?」

杏子「はぁ? 何かってイジメとか? ふん……やなこった。ぜってぇ言うもんか」

さやか「だーめ、約束しなさい。じゃないとあたしも何かあっても杏子に言わないよ?」

杏子「……わかったよ。その代わりあんたも隠し事はナシだぞ」

さやか「うん!」



マミ(どうしよう……完全に声をかけるタイミングを失ってしまったわ。
  たまたま見かけただけなのに、これじゃ盗み聞きしてるみたいじゃない……)

64 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/26 22:36:36.70 qZPYiNBko 47/389

マミ(あぁ、指切りまでしちゃって……。
  そうだわ、あの指切りが終わったら自然に声を……)

なぎさ「何をしてるのですか?」

マミ「きゃあっ!?」

なぎさ「わっ! ご、ごめんなさい。驚かすつもりはなかったのです」

マミ「あ、あなた昨日の……なぎさちゃん、だったかしら。
  こっちこそごめんね、逆にびっくりさせちゃったみたいで……」

さやか「あれっ? なーんだ、誰かと思ったらマミさんじゃん!」

杏子「ん、何その子。マミの知り合いかい?」

マミ「! ま……まぁ美樹さん、佐倉さん! こんなところで偶然ね!」

65 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/26 22:42:24.91 qZPYiNBko 48/389

杏子「お、おぉ……。なんだよ、妙にテンション高いじゃん」

なぎさ「初めまして、百江なぎさって言います!」

さやか「へっ? あ、ど、どうも初めまして、美樹さやかです。
    えーっと、マミさんとはどういったご関係で?」

なぎさ「マミとは昨日知り合ったばかりなのです。
    チーズを取ったらチーズの山が崩れてきて、マミが助けてくれたのです!」

杏子「! もしかしてマミの言ってたクリームチーズを買う機会って、その時の?」

マミ「えぇ、そうなの。その後この子とチーズケーキの話でちょっと盛り上がっちゃって」

さやか「はぇ~、そういうことだったのか。
    ……っていうか言葉はやけに丁寧なのにマミさんのことは呼び捨てなんだね、あんた」

なぎさ「?」

66 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/26 22:47:18.06 qZPYiNBko 49/389

杏子「さやかとは逆だな。『さん』は付けるけど敬語は遣えない」

さやか「う、うるさいなぁ! これはあたしなりの愛情表現なの!
    大体それを言うならあんたなんて呼び捨てでタメ口じゃん!」

杏子「あたしは良いんだよ。マミとは先輩後輩って仲でもないしねー」

さやか「そういうもんかね……。まーでも、この子くらいの年齢じゃあ確かに
    あんまり『さん』付けとか敬語とか気にしないよね」

なぎさ「よく分からないのですけど……マミさんって呼んだほうが良いのですか?」

マミ「大丈夫、私は気にしないわ。好きなように呼んでもらって良いわよ」

なぎさ「じゃあこのままで行くのです!」

67 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/26 22:53:17.12 qZPYiNBko 50/389

なぎさ「あっ。そう言えばマミ、チーズケーキは上手に出来たのですか?」

マミ「えぇ、美味しくできたわ。みんなにも好評だったのよ?」

なぎさ「わぁ~、わたしも食べてみたいのです!」

マミ「まぁ。だったら、もし良かったら今度ご馳走するわ。
  今日はもう遅いしお家の人も心配するでしょうけど、また今度機会があったら……」

なぎさ「ぜひお願いしたいのです!」

マミ「チーズケーキはどういうのが好き? 注文があれば聞いておくわね」

なぎさ「チーズだったらなんでも好きなのです! できれば色んなのを食べてみたいのです!」

マミ「あらあら……ふふっ、わかったわ。
  それじゃあ何種類かチーズのお菓子を用意しておくわね」

なぎさ「わーいわーい! 楽しみなのです、楽しみなのです!」

68 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/26 22:58:52.03 qZPYiNBko 51/389




さやか「――いやー、なんていうか、やっぱ子どもって元気だなぁ。
    特にチーズの話題が出たらもう……どんだけ好きなのよって話」

杏子「妙なのに懐かれちまったな、マミ」

マミ「あら、妙だなんてそんなことないわ。なんだか妹ができたみたいで嬉しいもの」

杏子「ふーん……そりゃ良かったね」

さやか『ちぇっ……なんだよ、マミのやつ。
    あたしだってマミのことお姉ちゃんみたいだって思っ』

杏子「思ってねぇよ! わざわざテレパシーで人の考えを捏造すんな!」

マミ「まぁ……ごめんなさい、佐倉さん。これからは杏子ちゃんって呼んだ方が……」

杏子「思ってないって言ってんだろうが!」

69 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/26 23:03:34.28 qZPYiNBko 52/389

杏子「んなくだらないこと言ってないで、せっかく全員揃ってんだ。
   もうこのまま魔獣退治に行っちまおうぜ。そろそろ日も暮れるしさ」

マミ「それもそうね、このまま行っちゃいましょうか」

さやか「え、待ってよ2人とも。全員って……」

マミ「? どうかした?」

さやか「あれ? あ、そっか。ごめんごめん、なんでもない!」

杏子「おいおい、まだぼーっとしてんのかよ。しっかりしろよな」

マミ「これから戦いに行くんだから、気合を入れなきゃ駄目よ?」

さやか「大丈夫、大丈夫! よし、いっちょやってやりますか!」

……変だな、なんだろ。
今あたし、何が引っかかったんだろ?

75 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/27 18:39:36.42 rbE+MmUSo 53/389




数日後、朝

まどか「おはよう、さやかちゃん、杏子ちゃん!」

杏子「おっ、やっと来た」

さやか「遅いぞ、まどかー!」

まどか「ご、ごめんね。テスト勉強してたら夜更かししちゃって」

さやか「テスト勉強って、国語と数学の? 今日やるの小テストだよ?」

まどか「あ、うん、それは分かってるんだけど……」

杏子「うはぁー、真面目だねぇ。小テストくらいで夜更かしするまで勉強するかぁ?
   あたしもさやかに言われて一応ちょっとはやったけどさ」

76 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/27 18:46:38.48 rbE+MmUSo 54/389

まどか「本当だったらここまでしなくても良いとは思うんだけど、
    わたし国語が特に苦手だからみんなより頑張らなきゃ、って。
    いや、他の教科もそんなに得意ではないんだけど、国語が特に苦手っていうか……」

杏子「でも英語は得意だろ? 手本になるってんで音読させられたりしてるじゃんか」

さやか「そりゃあなんてったって帰国子女だからね。
    国語が苦手なのはその副作用みたいなもんでしょ?」

まどか「い、一応アメリカでもやってはいたんだけど……」

杏子「アメリカ帰りってのも大変だね。ま、でも今回は心配ないんじゃない?
   それだけ勉強したってんならさ」

さやか「寧ろ杏子、あんたの方がやばいんじゃないのー?」

杏子「それを言うならさやかもだろ。
   成績だってあたしと大差ないのに余裕かましてられんのかよ?」

さやか「ま……まぁ一応勉強したしなんとかなるでしょ。それに小テストだし!
    ちょっと悪くても本番で挽回すれば良いのよ!」

77 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/27 18:54:15.88 rbE+MmUSo 55/389




昼休み

マミ「――そ、それはなんというか……残念だったわね」

さやか「国語の勉強に必死過ぎたんだね……。
    まさか数学の範囲思いっきり勘違いしちゃってるなんてさ」

杏子「結構ドジなんだね、あんた。真面目なのにさ」

まどか「うぅ、あんなに勉強したのに……こんなのってないよぉ」

マミ「まぁでも、範囲は違っても全くの無駄というわけじゃないんだし、ね。
  そう気を落とさずに次頑張りましょう?」

さやか「そうそう。それに国語はちゃんと出来たんでしょ? ならオッケーオッケー!」

78 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/27 19:00:24.09 rbE+MmUSo 56/389

まどか「そ、そうかな……」

さやか「そうだよ! 物事はポジティブに考えなきゃね。
    勉強も大切だけどポジティブシンキングも大事だよ!」

杏子「もっと大事なのはドジを治すことじゃない? なんてね」

マミ「もう、佐倉さんってば……」

まどか「うぅ……が、頑張ります」

杏子「あんた昔からそうだったの? 小学校の頃から?」

まどか「う、うん……結構周りの人達に助けてもらうことが多かったかも」

杏子「へー、じゃあさやかもまどかのこと助けてやったりしてたわけ?
   あんた困ってる奴とか助けるの結構好きだろ?」

79 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/27 19:06:20.77 rbE+MmUSo 57/389

さやか「えっ、あたし? いやー、お恥ずかしながらまどかに関しては
    そうでもないんだよね……。そもそも会話もほとんどしたことなかったしさ。
    名前と顔を知ってるくらいだったよ」

杏子「ん……?」

マミ「あら、そうだったの。それはちょっと意外ね」

さやか「そうだよね、まどか……って、まどかはあたしのこと覚えてないんだっけ」

まどか「うん、ごめんね……」

さやか「良いよ良いよ、本当にほとんど関わりなんてなかったんだし!」

杏子「……なぁさやか?
   あんた最初は、まどかとはそこそこ仲良かったみたいな言い方してなかったっけ」

80 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/27 19:11:55.68 rbE+MmUSo 58/389

さやか「へっ? 最初って……いつ?」

杏子「まどかが転校してきた日だよ。朝のHRの直後さ」

まどか「? さやかちゃん、そうなの?」

さやか「いや、そう……だっけ? そんなことないと思うけど……。
    だって本当に全然、話したこともなかったし。
    まさか中学になってこんなに仲良くなれるとは思わなかったくらい」

杏子「……ふーん……」

マミ「でも少しだけ残念ね。2人が昔から仲が良かったのなら、
  思い出話でも聞かせてもらえたら面白いかなーとも思ったんだけど」

さやか「あははっ、やだなぁマミさん。仲良かったとしてもそんなの恥ずかしいよ」

81 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/27 19:18:26.03 rbE+MmUSo 59/389

マミ「美樹さん達のが聞けないなら、私が佐倉さんとの思い出話でもしちゃおうかな」

まどか「あっ、それ聞きたいです!」

杏子「は!? お、おいやめろよ」

さやか「んん? 何よ杏子ー、恥ずかしい思い出でもあるわけー?」

杏子「そ、そういうわけじゃねぇけどなんか恥ずかしいんだよこういうの。
   あんたもさっき言ってたじゃないか」

マミ「私が佐倉さんと初めて会ったのは確か……」

杏子「バカ、やめろって言ってんだろ!」

82 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/27 19:23:59.46 rbE+MmUSo 60/389

さやか「あははっ、良いでしょ! 良いよマミさん話しちゃってー!」

話題が変わって、そんな風に面白おかしくはしゃぎながら……
あたしはさっきのことが少し気になってた。

さっきの、小学校時代のまどかの話題が出た時の杏子の言葉……。
あたし、まどかと仲良かったなんて杏子に言ったっけ?
言ったとしたらなんでそんなこと言ったんだろ。
小学校時代のまどかのことなんて、本当にほとんど知らないのに。

あたしとまどかはたまたま同じ小学校に入学しただけで、それ以降特に関わりもなくて、
まどかがアメリカに行くって聞いた時も、
へー、あの子アメリカに行くんだ、すごいなー……くらいにしか思わなかった。

だからまどかがこのクラスに転校してきた時も、特にこれといった感情は……。
あれ、そうだっけ?
あの瞬間は何か、結構いろんなことを思ったような気が……でもなんで?
別にまどかに深い思い入れがあったわけでもないはずなのに、なんで?

……ま、いっか。

91 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/28 20:26:51.04 8ENukFbio 61/389




『まどかおっそーい!』

『ごめんね、ちょっと準備に手間取っちゃって。寝癖がなかなか……』

『ほほーう、身だしなみチェックに時間がかかったと。まどかもお年頃だねー』

『そ、そんなんじゃないよぉ。本当に寝癖を直してただけだよ』

『そのうちアクセがどうとかお化粧のノリがどうとか下着の色がどうとか、
 男にモテるために色々気にしだして……いいや、許さんぞぉー!』

『きゃっ!? さやかちゃ、きゃははは! やめ、やめてぇ! きゃはははは!』

『どこの馬の骨とも分からん奴にまどかをやれるか! まどかはあたしの嫁になるのだー!』





さやか「っ! ……あ、あれ。夢……?」

92 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/28 20:32:44.27 8ENukFbio 62/389




杏子「――は? まどかの夢を見た? どんな?」

さやか「いや、別に特別変わった夢ってわけじゃないんだよね。
    なんか普通に仲良くて楽しかった」

杏子「? わざわざ話すもんだからどんな面白い夢かと思ったら、
   普通に仲良くて楽しいなんていつもと変わらないじゃん」

さやか「でもね、なーんか違うのよ。仲の良さがもうちょっと違う感じっていうか……」

杏子「なんだそりゃ。もっと仲良い感じとか?」

さやか「うーん……そんな感じかなぁ?」

93 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/28 20:37:47.28 8ENukFbio 63/389

杏子「おっ? 見なよホラ、噂をすれば」

さやか「あ……」

まどか「おはよう、さやかちゃん、杏子ちゃん!」

杏子「あぁ、おはよ」

さやか「…………」

まどか「? さやかちゃん?」

さやか「え、あぁ、ごめんごめん! おはよ、まどか!」

まどか「うん、おはよう!」

杏子「聞いてくれよまどか。なんかさやかの奴が、昨日あんたの夢を見たらしくてさ」

94 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/28 20:42:18.76 8ENukFbio 64/389

まどか「えっ、わたしの夢? へ、変な夢じゃないよね?」

さやか「あー、うん。変ではないんだけどね。あたしとまどかが仲良くしてる夢だよ」

まどか「……? 仲良くって……今とは違う、の?」

さやか「あ、今も十分仲良いよ! ただもうちょっとこう、スキンシップというか……」

まどか「スキンシップ?」

さやか「だからその……くすぐったり? 抱きついたり、とか?」

杏子「は……? な、何言ってんださやかお前……」

さやか「うぉおおおい!? 何よその顔!? ドン引きしてんじゃないわよ!」

95 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/28 20:48:20.35 8ENukFbio 65/389

杏子「いや、だって……夢って本人の欲求が現れるって言うだろ?
   つまりさやか、あんたはまどかとそういうことを……」

まどか「そ、そうなの? さやかちゃん、その……わたしに抱きついたり……?」

さやか「コラぁあ! やめなさい! それじゃあたしがそっち系みたいでしょうが!」

杏子「そうは言うけどな……」

さやか「そういうのじゃないから! ほんと!
    女の子同士のちょっとしたスキンシップだって! ホラ、こういう感じの!」

まどか「きゃっ!」

杏子「よ、よせさやか! 無理矢理はやめろ! しかもこんなところで!」

さやか「ちがぁああああう!」

96 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/28 20:54:13.70 8ENukFbio 66/389




さやか「――ということがありましてね……」

マミ「そ、それはまた大変だったわね」

さやか「本当にもう! あたしが恭介のこと好きだったのはあんただって知ってるでしょ!
    あたしはちゃんとノーマル! そっち系でも変態でもない!」

杏子「わ、悪かったってさやか。ホラ、あんたの好きなからあげだよ。食うかい?」

さやか「ふん! まぁもらっておくけど!」

まどか「わ、わたしもごめんね。突然だったから、ちょっと慌てちゃって……」

さやか「あぁいや……良いよ、変なこと言ったのはあたしの方なんだし」

杏子「どういうことだオイ……なんだよこの扱いの差は」

97 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/28 21:01:01.14 8ENukFbio 67/389

マミ「それにしてもそんな夢を見ちゃうなんて、
  きっと美樹さんは鹿目さんともっと仲良くなりたいと思ってるのね。
  そういう意味で、鹿目さんのことが大好きなんだと思うわ」

さやか「あはは……なんか恥ずかしいなぁ。
    新しい友達と仲良くなりたいと思うのは当たり前かも知れないけど、
    そういうのがはっきりしちゃうっていうのは……」

まどか「でも、その……う、嬉しいな。そんな風に思ってもらえて……。
    わたしも、さやかちゃんとこれからもっと仲良くなりたいな、って」

さやか「そ、そう? いやー、照れるなぁ……」

杏子「……マミ、お茶おかわり!」

マミ「あらあら……うふふ」

98 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/28 21:06:46.72 8ENukFbio 68/389

杏子「……なんだよマミ、その顔は」

マミ「いいえ、なんでも?」

杏子「はぁ……。オイまどか、あんたさやかとじゃれてる場合なわけ?
   マミに数学のこと訊かなくても良いのかよ?」

まどか「あっ、そ、そうだった! あはは……」

マミ「数学のこと?」

さやか「それが今日の午前中、数学の先生に課題渡されちゃったんだよね。
    小テストがあんまりだったから、って」

まどか「それで一応休み時間に見てみたら、1問目からいきなり分からなくて……。
    だからお昼休みにマミさんにちょっと教えてもらえたらな、
    と思ったんですけど……良いですか?」

マミ「えぇ、もちろん良いわよ。その問題を見せてくれる?」

まどか「わ、ありがとうございます! えっと、この問題なんですけど……」

99 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/28 21:12:58.02 8ENukFbio 69/389




放課後

さやか「ん~……今日もよく勉強したなぁーっと! 杏子、帰りにどこか寄ってく?」

杏子「そうだなー、今日はたい焼きな気分かな。オイまどか、あんたも行くだろ?」

まどか「あっ……ごめんね2人とも。わたしは今日は良いかな……。
    数学の課題、まだ残ってるから」

杏子「あー、そっか。結局昼休みじゃ時間足りなかったもんな」

さやか「やっぱりマミさんに昼休みの続きお願いした方が良かったんじゃない?」

まどか「ううん……やっぱりわたしの課題だし、出来るだけ自分の力でやった方が良いかなって」

100 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/28 21:17:54.41 8ENukFbio 70/389

さやか「は~、あんたって本当マジメよね」

まどか「だから、今日は寄り道せずに帰るね。2人で行って来て!」

さやか「本当に良いの? 手伝わなくて大丈夫?」

まどか「大丈夫だよ、気にしないで!」

杏子「まぁどっちにしろ、あたし達じゃ大して力になれないだろうしね」

さやか「た、確かに。えっと……じゃあごめん! 頑張ってね、まどか!」

まどか「うん、ありがとう! それじゃまた明日ね!」

杏子「あぁ、じゃあね。頑張りなよー」

101 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/28 21:24:49.08 8ENukFbio 71/389




まどか「…………」

今日はみんなに心配かけちゃったなぁ……。
寄り道できないのは残念だけど、でも我慢しなきゃ。
問題数は少なくないんだし、どれくらい時間かかるか分からないんだから!

でもやっぱり数学って苦手だな。
1つ1つの問題にすごく時間かかちゃって……。
どうやったらスラスラ解けるようになるんだろ。
やっぱりたくさん勉強したらいつか……

ほむら「……まどか、今日も1人?」

まどか「わあっ!?」

102 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/28 21:30:04.70 8ENukFbio 72/389

ほむら「あ……ごめんなさい。今度は驚かさないようにしたつもりなんだけど」

まどか「う、ううん、ごめんね! 考え事してたから……」

ほむら「数学の課題のこと?」

まどか「う、うん。あはは……なんだか恥ずかしいな、丸分かりみたいで」

ほむら「どこか分からないところがあるの?」

まどか「あ、えっと……。時間をかければ多分わかるんだけど、
    その時間が結構長くかかちゃって……」

ほむら「課題のプリント、見せてもらっても良いかしら」

まどか「えっ? あ、うん……」

103 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/28 21:36:37.35 8ENukFbio 73/389

言われた通り、わたしはカバンから課題を出して渡した。
ほむらちゃんはしばらくそれをじっと見てから、
ふいに自分のカバンから教科書を出して……

ほむら「2問目は、教科書に載ってあるこの例題を少し変えたものよ。
    それから3問目は、この例題とこの例題を合わせたようなものになってるわ。
    4問目と……」

まどか「えっ、えっ!? ま、待って、ほむらちゃん! 今メモを……!」

ほむら「…………」

まどか「えっと、2問目が、これで、3問目が、これと、えっと……」

ほむら「これ」

まどか「あ、うん……!」

ほむら「4問目と5問目はこの公式を使えば大丈夫。
    6問目はこっちの――」

104 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/28 21:46:08.35 8ENukFbio 74/389




ほむら「――これでもう大丈夫だと思うわ。
    あとはあなたの力なら、大して時間をかけずに解けるはず」

まどか「あ、ありがとう、ほむらちゃん……!」

ほむら「お礼なんて。役に立てたみたいで良かったわ」

まどか「え、えっと……ほむらちゃんって、やっぱり頭良いんだね。
    なんとなくそうかなとは思ってたけど……憧れちゃうな」

ほむら「……そんなことはないわ。頭なんて、全然良くない」

まどか「えぇ、そんなことないよ。ほむらちゃんが頭良くなかったらわたしなんて……」

ほむら「学校で良い成績を取るからと言って頭が良いとは限らないわ。
    私は今まで、間違えてばかりだった」

まどか「……? そう、なの?」

105 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/28 21:52:39.66 8ENukFbio 75/389

ほむら「えぇ。どれだけ頑張っても上手くいかないことばかり……。
    何度も間違えて、そのたびに後悔ばかりしてきたわ。
    ……でもね、それも昔の話。今はもう違う。
    私はやっと、信じられる道を見つけたんだもの」

まどか「え、えっと……?」

ほむら「……ごめんなさい。また混乱させてしまったわね。
    気にしないで。変な子がまた変なことを言ってると、そう思ってくれれば良い」

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「あなたの役に立てて、とても嬉しいわ。もう何か手伝えることはない?」

まどか「う、うん……大丈夫。すごく助かったよ、ありがとうほむらちゃん」

ほむら「そう。それじゃ、頑張ってね。応援してるから」

106 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/28 21:58:07.99 8ENukFbio 76/389

まどか「あっ……! ま、待って、ほむらちゃん!」

ほむら「……何? どうしたの?」

まどか「その……ほ、ほむらちゃん、学校じゃあんまり話しかけて来ないよね?
    この前話しかけてくれた時も、わたしが1人で帰ってる時だったし……」

ほむら「…………」

まどか「わ、わたしは、その……学校でも仲良くなれたら、嬉しいな、って。
    ほむらちゃんも、きっとさやかちゃんや杏子ちゃんと……」

ほむら「ごめんなさい」

まどか「えっ……」

ほむら「あなたの気持ちはとても嬉しいわ。
    こんな私に、こんなに優しくしてくれて……ありがとう、まどか」

108 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/28 22:04:52.69 8ENukFbio 77/389

まどか「そんな……。違うよ、優しいのはわたしじゃなくて……」

ほむら「ううん、良いの。私は、その気持ちだけで十分。
    前にも言ったでしょう? あなたは私なんかより、あなたの友達を大切にしてあげて。
    それじゃあ……私はここで。さよなら、まどか。課題がんばってね」

そう言い残して、ほむらちゃんは行ってしまった。
もしかしてお節介だったかな……。
さやかちゃんと杏子ちゃんのことが嫌い……っていうわけじゃないとは思うんだけど。
ほむらちゃん、あんまり賑やかなのは好きじゃないのかな……。

まだまだ分からないことだらけだけど、でも1つだけ言えることがある。
ほむらちゃん、最初はちょっと怖かったけど……きっととっても優しい子なんだ。
だからみんなとも仲良くできたら良いなって思ったんだけど。
やっぱり難しそう、かな……。

109 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/28 22:10:55.52 8ENukFbio 78/389

翌朝

さやか「おはよ、まどか!」

まどか「うん、おはよう!」

杏子「その様子だと、課題は無事終わらせたみたいだね」

まどか「えへへ……ごめんね、心配かけちゃって」

さやか「まー良かったよ、無事終わったんならさ!
    あっ、そうそうまどか! 明日の昼って暇?」

まどか「? うん。夜は外食だって言ってたけど、昼間は大丈夫だと思うよ」

さやか「じゃあさ、子どもって好き? 小学生くらいの女の子とか!」

110 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/28 22:16:21.73 8ENukFbio 79/389

まどか「へ? うん、子どもは好きだけど……」

さやか「良かった! じゃあさ、明日マミさんの家でお茶会しようよ!
    せっかくの休日だし、みんなで楽しくたっぷりと!」

まどか「わぁ、行きたい行きたい! でも、子どもって……?」

杏子「最近知り合ったマミの知り合いでさ、百江なぎさって言うんだ。
   マミの奴が妙に懐かれちまってね。
   で、そいつがマミの菓子を食いたいって言うんで、予定合わせてお茶会することになったわけ」

まどか「そうなんだ……えへへっ、なんだか楽しそう。
    小学生の女の子とお茶会なんて、新鮮だなー」

さやか「よーし、それじゃ決定ね! 今日のお昼にマミさんにも報告してあげなきゃ!」

111 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/28 22:23:11.00 8ENukFbio 80/389




さやか「というわけで、まどかも来ることになりました!」

マミ「良かったぁ。突然決めちゃったから、みんなで揃ってやれるか不安だったの。
  それにお勉強の方も色々大変じゃないかなって」

杏子「直前に課題なんかでごたごたしてたもんねぇ。
   でももう済んだし気兼ねなく楽しめるよな!」

さやか「あっ、まさか課題の出来も悪くてやり直し……ってことにはならないよね?」

まどか「だ、大丈夫だよ! きっと……ううん、絶対大丈夫!」

杏子「へぇ、どうしたよ? やけに自信たっぷりじゃん」

まどか「あ、うん……実はね、昨日の帰りにほむらちゃんに会ってその時に色々教えてもらったの。
    教科書使って教えてくれて、すごく分かりやすかったんだよ!」

112 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/28 22:29:35.12 8ENukFbio 81/389

さやか「! 暁美さんが……?」

マミ「まぁ、そんな子がクラスに居るの。それなら今後もお勉強の方は安心ね」

まどか「あはは……あんまり頼り過ぎないようにはしないとですけど」

杏子「あいつそんなに勉強できたんだね。全然知らなかったよ。
   っていうかあんたら仲良くなれたんだ?
   学校じゃ転校初日のあの時以外、話してるの見たことないけどさ」

まどか「仲良くなれたのかな……? 実は、転校した日の帰り道も一緒だったんだけど……」

さやか「えっ……そうだったの?」

杏子「ふーん。あいつも結構世話焼きな奴なのかねぇ?
   転校生のことをほっとけないみたいな感じでさ」

113 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/28 22:37:06.49 8ENukFbio 82/389

マミ「でも次の日からはほとんど話してないのよね?」

まどか「それが不思議で……。
    あんまり大勢で話すのは好きじゃないのかな、って思ったりもするんだけど」

マミ「うーん……鹿目さんがクラスや学校に馴染めるようにしてあげるつもりだったけど、
  美樹さん達と仲良くなったからもう大丈夫と思ったのかもね」

杏子「あぁ、なるほどね。そりゃ確かにありそうだ。
   まぁあたしは今まであいつのことよく知らなかったけどさ、
   そういう話聞いてたらなんか普通に良い奴なんだね、ほむらって。
   少なくとも悪い奴じゃ……」

さやか「本当にそうなのかな?」

114 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/28 22:44:17.83 8ENukFbio 83/389

マミ「えっ?」

杏子「……さやか?」

さやか「あっ……」

一瞬誰が喋ったのか分からなかったくらい、あたしは反射的に声が出た。
みんなの少し驚いたような反応を見て、初めてそれが自分の声だと気付く。

まどか「……さやかちゃん、やっぱりほむらちゃんのことあんまり……」

さやか「えっ、あー、ち、違う違う! あ、あれ? 今なんであたし……や、やだなぁ!
    これじゃあたし、すっげー嫌な奴じゃん! 違うよ? ほんと、そうじゃないから!
    ただあたしも暁美さんのこと全然知らないから、ポロっと疑問が出たって言うか……。
    バカ! あたしのバカ! あはははは!」

115 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/28 22:50:09.00 8ENukFbio 84/389

まどか「だったら、良いんだけど……」

マミ「びっくりしたわ……。
  一瞬、美樹さんとその子はすごく仲が悪いのかと思っちゃった」

さやか「いやいや、全然そんなこと! ないよね、ねぇ杏子!」

杏子「ん、あぁ……。でもアレだろ? あんた、ほむらのこと苦手なんだろ?」

さやか「ま……まぁそりゃ確かにそう言ったけどさ。
    でも苦手って言ったってそんな……理由もよく分からない程度のもんだし……」

マミ「そうだったの……。
  確かに、なんとなく雰囲気が苦手な人っていうのは居てもおかしくないかもね。
  私には経験がないけれど、そういう話を聞くこともあるわ。
  でも美樹さんにもそういうことがあるなんてちょっと意外かな」

さやか「えっ、そう?」

116 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/28 22:57:17.51 8ENukFbio 85/389

マミ「えぇ。なんとなく、美樹さんはよっぽどのことがない限り
  誰とでも仲良くなれそうなイメージがあったから。
  鹿目さんの時もそうだし、佐倉さんとだって会ってすぐ仲良くなれたでしょう?」

さやか「え?」

杏子「まぁ、確かにね。最初はちょっと呆れたくらいだったよ。
   よくもまぁ初対面の奴にこうも馴れ馴れしくできるもんだな、ってさ。
   なぁまどか、あんたも最初は困ったんじゃない?」

まどか「そ、そんなことないよ! 明るく話しかけてくれて、すごく嬉しかったよ」

さやか「……あー、えっと、さ。あたしって、最初からそんなすぐ杏子と仲良くなったんだっけ?」

杏子「あん? どういうことだよ」

さやか「いや、最初は結構ケンカとかしてたような……気がするんだけど」

117 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/28 23:03:50.86 8ENukFbio 86/389

マミ「あら、そうだったかしら? 私にはちょっと覚えがないけど……」

杏子「っていうかケンカくらい今でもちょくちょくやってるだろ?
   こないだだって、あたしが宿題写させてくれって言ったらすっげー怒ってたじゃん」

さやか「あぁいや、ああいうのじゃなくてさ。もっとこう、マジなやつっていうか……」

まどか「そ、そうなの? あんまり想像できないけど……」

杏子「マジなやつ? それってどんな?」

さやか「どんな? えーっと……あれ? どんなだっけ……。
    言われてみれば確かに、最初から普通に仲良かったかも……」

杏子「……あんた夢でも見たんじゃないの? それか別の誰かと勘違いしてるとか。
   少なくともあたしは、あんたとそんなやばいケンカをした覚えなんてないよ」

さやか「うーん……あたしの勘違いかなぁ。あははっ、ごめんごめん!」

127 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/29 20:54:34.41 x/LiNyjlo 87/389




『誰が、あんたなんかに……。あんたみたいな奴が居るからマミさんは……!』

『うぜぇ……超うぜぇ!! つーか何? 
 そもそも口の利き方がなってないよねえ、先輩に向かってさあ!』

『黙れぇッ!!』

『チャラチャラ踊ってんじゃねーよウスノロ!!』

『あぐっ!』

『言って聞かせて分からねえ、殴っても分からねえ馬鹿となりゃ……。
 あとは殺しちゃうしかないよねえ!!』





さやか「ッは……! ハァ、ハァ、ハァ……!」

な……何、今の。
今のも夢、だよね?
な、なんであたし杏子と、あんな……。

128 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/29 21:01:27.33 x/LiNyjlo 88/389

杏子「ん~……すぅ……すぅ……」

さやか「…………」

布団で寝てる杏子に目を向ける。
いつもの杏子だ。
あたしが知ってる、ちょっとやんちゃだけど優しくて良いヤツの、杏子の寝顔だ。

さっきの夢……なんだったんだろ。
あんな杏子、見たことない。
あたしはあんな杏子知らない。
……そのはずだ。

でもなんでだろ。
あんなのあり得ないはずなのに、もしかしたらあり得るんじゃないかって……。
リアルで、実感がある……嫌な夢。

さやか「……違うよね、杏子? あんなの、あり得ないよね……?」

129 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/29 21:07:09.61 x/LiNyjlo 89/389




マミ宅

杏子「よっ! 2人とももう来てたんだね」

マミ「鹿目さんもなぎさちゃんも、30分前にはもう来てたのよ?」

さやか「えっ、そうなの? じゃあやっぱもうちょっと早めに来れば良かったなぁ」

まどか「ううん、気にしないで! ちょっと早めに来ちゃったけど、
    そのおかげでなぎさちゃんと色々お喋りできたから!」

なぎさ「マミもまどかも一緒で、全然退屈じゃなかったのです!」

さやか「そっか、なら良かった! でもこれからはもっと賑やかで楽しいぞー?」

そう……今日は楽しいお茶会なんだ。
あんな変な夢、いつまでも気にして居られないよ。
杏子もちゃんといつも通りだし……あんな夢忘れて、今日はめいっぱい楽しまなきゃ。

130 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/29 21:12:15.43 x/LiNyjlo 90/389

杏子「へぇ、あんた達もう仲良くなったんだ。まぁまどかは子供好きって言ってたしね」

なぎさ「むっ、なぎさは言うほど子供じゃないのです!」

まどか「そうだよねー。なぎさちゃん、しっかりしてるもんねー」

なぎさ「えへへ~、まどかはよく分かってるのです!」

杏子『なんか扱い慣れてるな、まどかの奴』

さやか『普段からたっくんの世話とかも結構してるしねぇ』

マミ「それじゃ、私はお茶とお菓子の準備をしてくるわね。
   みんなはくつろいで待ってて?」

なぎさ「あっ! わたしもお手伝いするのです!」

132 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/29 21:19:12.46 x/LiNyjlo 91/389

マミ「あら、良いのよなぎさちゃん。座ってて?」

なぎさ「なぎさはマミのお手伝いをしたいのです。駄目なのですか?」

マミ「まぁ……ふふっ、ありがとう。それじゃあ一緒に準備しましょうか」

なぎさ「はーいっ!」

杏子「残念。仕事取られちまったな、まどか」

まどか「と、取られただなんてそんな。
    でもなぎさちゃん、本当にマミさんのこと大好きなんだね」

さやか「本当、懐いちゃってるって感じだよね。まだ会って日にちも経ってないのにさ。
    マミさんの溢れる母性にノックアウトされちゃったのかな?」

杏子「まどかもマミには敵わなかったか。まぁあんたは寧ろ妹っぽいもんな」

まどか「えぇっ? そ、そうかなぁ……?」

133 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/29 21:25:17.48 x/LiNyjlo 92/389




マミ「――みんなお待たせ、準備できたわよ」

なぎさ「お待たせなのですー!」

まどか「わぁ……! すごい、これもしかして全部チーズのお菓子ですか?」

マミ「全部ではないけど大体はチーズを使ったものね。
  せっかくだし、色々作ってみようと思って」

さやか「なぎさぁ、あんたつまみ食いとかしてないでしょうねぇ?」

なぎさ「えッ!? し、してないのですよ? マミに止められたからしてないのです」

さやか「止められなかったらしてたのかよ!」

134 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/29 21:30:16.23 x/LiNyjlo 93/389

杏子「いいや、その気持ちはよーく分かるぞ。というわけでマミ! 早く食おうぜー!」

マミ「ふふっ、それじゃあ頂きましょうか。さ、どうぞ召し上がれ」

なぎさ「わぁーい! いただきまーす!」

杏子「ん~、うめぇ~!」

まどか「マミさん、すごく美味しいです!」

なぎさ「むしゃむしゃ、もぐ、んぐ、ハムッ ハフハフ、ハフッ!!」

さやか「あぁもうあんたはそんなに食べ散らかして。
    美味しいのは分かるけど、もうちょっと落ち着いて食べなさいよ」

なぎさ「んぐんぐ、ごくん……。さやかはいつも細かいことを気にしすぎなのです!
    もぐ、むしゃむしゃ……」

さやか「……ん?」

135 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/29 21:36:18.60 x/LiNyjlo 94/389

杏子「なんだ? あんた達、前から知り合いだったわけ?」

なぎさ「? どうしてなのですか?」

杏子「あんた今『さやかはいつも』……って言ってたろ」

なぎさ「へ? ……うーん……? だったら多分間違えちゃったのです。
    さやかとはついこの前会ったばかりなのですよ。むしゃむしゃ……」

さやか「だよねぇ? って、あんた本当に食べるの止まらないわねさっきから」

マミ「ふふっ、口の周りをこんなに汚しちゃって。ちょっとじっとしててねー」

なぎさ「んむっ……」

まどか「2人とも、なんだか本当の姉妹みたいだね!」

なぎさ「マミみたいなお姉ちゃんが居たらきっと楽しいのです。
    優しくて、毎日チーズケーキを食べさせてくれそうなのです!」

136 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/29 21:43:40.09 x/LiNyjlo 95/389

杏子「ははっ、まぁケーキが食べられるってのは良いね!
   でも毎日一緒だと案外大変だぞ? 生活習慣だとか身だしなみだとかでいちいち……」

マミ「佐倉さん? どうかした?」

杏子「えっ!? あ、あぁいやー……。
   マ、マミと一緒だと教育とかもしっかりしてくれて良いよなー、って言おうと思ってさ」

マミ「あらそう? ふふっ、ありがとう」

さやか「……まどか、気を付けなよ? マミさんってああ見えて怒ると結構……」

マミ「美樹さん、お茶のおかわりはどう?」

さやか「うぇっ!? は、はい、いただきます! ありがとうございます!」

まどか「……?」

137 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/29 21:49:20.82 x/LiNyjlo 96/389




なぎさ「――その魔女のお婆さんの魔法で、わたしがチーズになっちゃったのです!」

杏子「はぁ? チーズになった? どういう魔法だよそりゃ」

なぎさ「怖い怖い魔法なのです! わたしはチーズを食べるのは好きだけど、
    チーズになっちゃった自分を食べるのは嫌だったのです!」

マミ「それで、どうなったの?」

なぎさ「そしたら今度は魔法使いの女の子が……あっ! マミ、今何時なのですか?」

マミ「え? えーっと、4時半くらいね」

なぎさ「! 大変、そろそろ帰らないといけないのです!
    5時までに帰らないとたくさん叱られてしまうのです!」

さやか「なんと5時までとは。やっぱ小学生の門限は厳しいねぇ」

138 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/29 21:55:44.09 x/LiNyjlo 97/389

杏子「だったら送ってってやるか?
   まだ暗くないって言っても子供1人帰すのは気が引けるしね」

マミ「そうね、みんなで送ってあげましょうか」

なぎさ「じゃあお家までみんなと一緒なのですか? 嬉しいのです!」

さやか「あははっ、お茶会気に入ってもらえたみたいだね。良かった良かった」

まどか「また一緒にお茶会しようね、なぎさちゃん!」

なぎさ「えっ! もう1回できるのですか?」

マミ「もちろん、何回でも!
  次も色々とチーズのお菓子を用意しておくから、また来てもらえる?」

なぎさ「わぁーい! また来るのです! 次が楽しみなのです!」

139 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/29 22:01:53.02 x/LiNyjlo 98/389




さやか「いやー、賑やかだったねホント!」

まどか「なぎさちゃん、すごく元気で良い子だったね! また遊べるのが楽しみだなー」

杏子「しっかし子どもの相手は疲れるよ。延々喋り続けるんだもんな」

マミ「ふふっ、でもそう悪くない気分だったでしょ?」

杏子「……ま、たまにはね」

あたし達はなぎさを家の近くまで送って、元の道を引き返してた。
とは言ってもみんな家に帰るわけじゃなくて、まどか以外はマミさんの家に向かうつもりだ。
本当はまどかも一緒だったら良かったんだけど、まぁ家族と外食じゃ仕方ないよね。

140 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/29 22:10:03.31 x/LiNyjlo 99/389

杏子「なぁまどか、外食ってどこ行くの? 何て店?」

まどか「えっと、どうなんだろ? ごめんね、それはちょっと聞いてないや」

杏子「じゃあ美味かったらあたしに店の名前教えてくれよ! 今度あたしも行くからさ!」

さやか「そんなこと言って大丈夫なの? 結構良いお店のような気がするけどなぁ」

マミ「そうよね、わざわざ前日に伝えるくらいだものね。
  子供だけじゃ入るのは難しいかも知れないわよ?」

杏子「まぁまぁ、聞くだけならタダだろ? な、頼むよまどか!」

まどか「うん、良いよ! どんな料理とかも、色々教えるね」

杏子「さんきゅー!」

まどか「あははっ、どういたしまして……
    あっ、マミさんの家あっちですよね? わたしここで曲がりますね」

141 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/29 22:16:56.33 x/LiNyjlo 100/389

さやか「あれ、家まで一緒じゃなくて良いの? 怖い人に襲われても知らないよー?」

まどか「さ、さやかちゃんってば。わたしもう中二だよ! なぎさちゃんとは違うよぉ」

さやか「ははっ、冗談ジョーダン!」

マミ「まぁまだ日は暮れてないし大丈夫だとは思うけど。それじゃあ、気を付けてね?」

杏子「外食のこと、よろしく頼むね!」

まどか「うん、それじゃまたね! バイバイ、さようならー!」

そうしてまどかは元気よく去っていった。
あたし達はしばらくそれを見送って、それからまた歩き出した。

杏子「さて、と。まだ魔獣が頑張りだす時間にゃ早いよな?
   ちょっとマミの家でくつろいでこうぜ」

マミ「じゃあいつも通り、日が暮れてから魔獣退治に行きましょうか」

さやか「はーい、了解っ」

144 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/30 21:13:28.13 XofDjZmao 101/389




マミ宅

杏子「はー、さっきも言ったけどやっぱ今日は疲れたなぁ。
  子供の相手なんて慣れないことしたのが悪かったんだね」

さやか「あははっ、まぁ気持ちは分からなくもないかな。
    あたしもたっくんと遊んだあとはエネルギー吸い取られたみたいになっちゃうもん」

マミ「あら、美樹さんも? わたしはそんなことないけど……」

さやか「いやー、マミさんには敵わないねぇ。流石溢れる母性の持ち主!」

マミ「ぼ、母性……?」

杏子「ま、とにかくさ。あたしは魔獣退治まで一眠りさせてもらうよ。
   時間になったら起こしてねー」

145 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/30 21:19:00.26 XofDjZmao 102/389

さやか「一眠りってあんた、日が暮れるまでもう後1時間も……」

杏子「……くー……くー……」

さやか「って、はやッ! もう寝ちゃってるし!」

マミ「本当に疲れてたのね。さっきはあんな風に言ってたけど、
  なぎさちゃんにかなり構ってあげてたから」

さやか「あー、確かに。夢の話にちょくちょく質問してあげるもんだから
    なぎさもまた嬉しそうに説明してどんどん白熱しちゃって……。
    なんだかんだで子供好きっぽいよね、杏子」

マミ「えぇ……そうね。困ってる人や、小さい子のことは放っておけないんだと思うわ。
  ぶっきらぼうな態度を取ることが多いけど、昔からそこは変わらないのよね」

さやか「あははっ、本当にね」

と、ここであたしはふいに……昨日の夢のことを思い出した。

146 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/30 21:24:08.35 XofDjZmao 103/389

そう……あたしの知ってる杏子は、あんまり態度には出さないけどすごく優しい子のはずだ。
子供やお年寄り、弱い人や困ってる人を見ると助けずには居られない、そんな子のはずだ。

だから魔法少女のあいつは、魔獣に襲われる人を放ってはおけない。
自分が多少危ない目に遭っても必ず助けようとする。
……でも夢の中のあいつは……

さやか「……あのさ、マミさん。1つ訊いても良いかな」

マミ「? なぁに、どうしたの?」

さやか「えっと、杏子のことなんだけど……。
    杏子って本当に昔からずっと、こんな感じだったの?」

147 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/30 21:29:10.35 XofDjZmao 104/389

マミ「こんな感じ……? ごめんなさい、どういう意味?」

さやか「だから、その……困ってる人は放っておけないっていうか、魔女……」

……あれ?
今になって気付いた。
杏子の印象が強すぎて今まで気が付かなかったけど、
あの夢にはもう1つ、明らかにおかしいところがあった。
そうだ、夢の中で杏子やあたしが言ってたのって、魔獣じゃなくて……。

マミ「美樹さん……?」

さやか「……ねぇマミさん。魔女や使い魔って現実に居るの?」

マミ「え?」

148 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/30 21:33:28.57 XofDjZmao 105/389

マミ「魔女や、使い魔? さぁ、どうかしら……魔法少女とはまた別なのよね?
  もしかしたら中世の魔女狩りなんかは、魔法少女が関係していたりするかも知れないけど……。
  ちょっと確かなことは言えないわよね」

さやか「だよね……うん、ごめんなんでもない!
    えっと、それで何の話だっけ? あ、そっか、杏子が昔は……。ん……」

マミ「……?」

さやか「……そう! 杏子との思い出話聞かせてよ! それを聞こうと思ってたんだ!
    この前は本人が邪魔しちゃって聞けなかったでしょ? だから寝てる今のうちに……」

と、その瞬間。
横で寝てたはずの杏子が飛び起きた。

さやか「うわあっ!? ま、まさか杏子起きて……」

149 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/30 21:34:23.27 XofDjZmao 106/389

杏子「……あんた達、気付いてないのか?」

寝起きにしては緊迫した様子の杏子を見て、あたしはようやく気付く。
マミさんは、あたしより一瞬早く気付いたみたいだ。

マミ「この反応……近くに魔獣が出たわね」

さやか「数もそこそこ……だね。まだ日も落ちてないって言うのに……」

杏子「しゃーない、さっさと行ってぶっ倒しちまおうぜ」

マミ「えぇ。そうと決まれば急ぐわよ!」

さやか「了解!」

150 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/30 21:35:00.53 XofDjZmao 107/389

あたし達はマミさんの家を飛び出し、
魔力を探りながら特に反応の強いところへと向かう。

そしてしばらく進んだところで、3人ほぼ同時に気が付いた。

杏子「……おい、この反応って……」

マミ「っ……ええ。魔獣が一箇所に固まってるわ」

さやか「そ、それってつまり、誰かが今魔獣に……!」

マミ「今は考えていても仕方ないわ……急ぎましょう!」

さやか「う、うん!」

151 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/30 21:35:55.00 XofDjZmao 108/389

更に進み、反応の距離がどんどん近くなる。
そして、ついに見えた。
何体かの魔獣が一箇所に集まってる。
まるで何かを囲むようにして……

杏子「間違いねぇ……! あいつら獲物に群がってやがる!」

さやか「だ、誰かがあの群れの中心に……!!
    マミさん、ここから遠距離攻撃できない!?」

マミ「っ……駄目、遠すぎるわ! ここから届く攻撃はすぐには出来ない!」

杏子「だからって近付いてる余裕もねぇぞ!!
   くそっ! どうすりゃ良い! このままじゃあそこに居る奴が魔獣共に……!」

これじゃ絶対に間に合わない……。
あたし達の誰もがそう思った、次の瞬間。

遠くに見える魔獣の群れが、突然消えた。

152 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/30 21:37:09.66 XofDjZmao 109/389

マミ「……え……?」

杏子「な、なんだ? 魔獣共が……」

さやか「消えた? なんで……?」

マミ「と……とにかく行ってみましょう!」

不可解な現象に困惑しつつも、あたし達はそのまま進む。
魔獣が居た辺りに着き、手分けして魔獣に襲われていたであろう人を探す。
そして……

杏子「! オイ、ここだ! 居たぞ!!」

その声に、マミさんとあたしは急いで杏子のもとへ向かう。
見ると確かに、薄暗い路地裏に倒れている人影が4つ。
魔獣に襲われていたのは……まどかと、家族の人達だった。

153 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/30 21:38:16.89 XofDjZmao 110/389

杏子「家族で出かけてるとこを運悪く襲われたってか……。
   チッ……ついてねぇよなホント」

マミ「でも……不幸中の幸いね。ただ気を失ってるだけで異常はないわ。
  深刻なことになる前に間に合ったみたい」

さやか「よ、良かった……でもなんであの魔獣たちは急に……」

まどか「……ん……」

杏子「! オイ、隠れるぞ!」

さやか「えっ!? う、うん……!」

まどか達が目を覚ましそうなのに気付いてあたし達は急いで建物の上に飛ぶ。
完全に目を開ける前に、ギリギリ間に合った。

154 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/30 21:41:22.10 XofDjZmao 111/389

そうして、あたし達は上からこっそりまどか達の様子を窺う。
今はもうみんな目を覚ましてて、
なんで倒れてたのか、何があったのかについて話してるみたいだ。

さやか『いやぁ、みんな本当に無事みたいで良かったよ。
   ……でもあたしたち隠れる必要あったの? ついあんたの言う通りにしちゃったけど』

杏子『だって説明が面倒じゃん。あたし達はマミの家に居ることになってんだぜ?
   まさか本当のことを話すわけにもいかないしさ』

マミ『そうね……。だけど一応、しばらく見守っておきましょう?
  何も心配はいらないと思うけど、また魔獣に襲われるなんてことになったら大変だもの』

さやか『そ、そうだね。安全なとこに行くまで付いていこう』

155 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/30 21:43:14.85 XofDjZmao 112/389

目を覚ましたまどか達に気付かれないようにこっそり付いて行く。
そしたらやっぱり気絶してたってことが気になるみたいで、みんな病院に行ってた。
でもしばらくしたら出てきて、そしてそのまま家に帰っていった。

マミ「良かった。ちゃんと無事家に着いたわね」

杏子「でもやっぱ、外食はナシになっちまったな」

さやか「まぁねぇ。みんな揃って気絶してたなんて、
    のんきに外食なんて行ってる場合じゃないもんね普通」

杏子「あたしらから言わせりゃ別に何も問題ないんだけどね」

マミ「そうとも限らないわ。確かに魔獣からのダメージは無かったけど、
  倒れた時に頭を打ってないとも限らないんだから」

杏子「あー……。でもそういうのもさっき病院で診てもらったんだよな?」

156 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/30 21:44:14.49 XofDjZmao 113/389

さやか「一応電話してみる? 外食どうだったーみたいな感じでさ」

マミ「そうね、それが良いかも知れないわね。美樹さんお願いできる?」

さやか「うん。えーっと、まどかまどか、っと……」

携帯を取り出し、まどかの番号に電話をかける。
と、あんまり待たずにコール音は途切れた。

まどか『もしもし、さやかちゃん?』

さやか「やっほー、まどか。もう外食終わったー?
    いやぁ、杏子が店の名前早く知りたいってうるさくてさー」

杏子「オイそこまでせっかちじゃねぇぞ」

マミ「まぁまぁ」

157 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/30 21:46:20.73 XofDjZmao 114/389

まどか『あ、えっと……実は色々あって、外食ナシになっちゃったんだ』

さやか「えっ、そうなの? 色々って、なんで?」

まどか『実はその……家族揃って倒れちゃって……』

さやか「えぇっ!? 倒れたって、大丈夫なのそれ! 原因とか分かんないの?」

まどか『うん……お医者さんは貧血だろうって』

さやか「そっか……。一応聞いとくけど、倒れる前後のことって覚えてたりはしないんだよね?」

まどか『うん、歩いてたら急に頭がぼーっとして、目の前が暗くなって……あっ』

さやか「……えっ。もしかして何か見たりしたの……? ひ、人影とか?」

まどか『あ、ううん……。えっと、倒れる直前に……黒い羽を見たような気がするの』

158 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/11/30 21:47:38.78 XofDjZmao 115/389

さやか「……黒い羽? カラスか何か?」

まどか『わかんない……そうなのかな。でも、なんだかすごく印象に残ってて……。
    ご、ごめんね変なこと言って』

さやか「あー、ううん。えっと、今はもう体調大丈夫なの? どこかおかしなとことかない?」

まどか『あ、うん。それは全然平気だよ』

さやか「そっか、だったら良かったよ。でも一応、今日くらいは安静にしておくんだよ?」

まどか『ありがとう、さやかちゃん。うん、今日はもう早めに寝ることにするよ』

さやか「それが良いよ。そんじゃ、あんまり長くなっても悪いからもう切るね。
    バイバイまどか、お大事に! また月曜日、学校でね!」

まどか『うん、またね!』


165 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/01 19:31:40.04 D8/w5RLHo 116/389

さやか「……2人とも今の、聞こえてたよね?」

杏子「あぁ。体の方は何も問題ないみたいで取り敢えず安心できたよ。
   ただ……黒い羽ってのはなんだ?」

マミ「…………」

さやか「マミさん? もしかして……何か覚えがあるの?」

マミ「あ、えっと……私も少し前に黒い羽を見たことがあったような気がして……。
  でもどこで見たのかがちょっと思い出せないの」

さやか「マミさんも黒い羽を……? まどかが言ってたのと何か関係あるのかな?」

杏子「それも気になるがあと1つ……。
   その黒い羽、魔獣が突然消えたのと関係あると思う?」

166 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/01 19:37:25.56 D8/w5RLHo 117/389

マミ「それは私も少し考えたわ。
   でも、関連付けるにはちょっと根拠が足りないわよね……」

さやか「だよねぇ。それにしても、黒い羽って……
    なんか怖いっていうか、不吉な感じがするなあ」

杏子「まぁ、確かにね。でもそんなイメージで何かを想像したって仕方ないよ。
   今あたし達にできるのは、その黒い羽ってのを頭に入れておくことくらいじゃないの?」

マミ「……そうね。これからの生活で何か黒い羽を見かけることがあったら、
  このことを思い出すようにしましょう。
  カラスを見るたびにいちいち注意しろ、とは言わないけどね」

さやか「うん、分かった。これからは黒い羽に注意ってことで!
    そんじゃ、一旦この話題はこのくらいにして……魔獣退治の続き行く?」

杏子「だな。今のところ特に気配はないが、見回りくらいはしとくか」

マミ「また突然現れて誰かが襲われたりしたら大変だものね」

167 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/01 19:42:05.73 D8/w5RLHo 118/389




休み明け

さやか「おはよー、まどか! あの後、特に変わりはない?」

まどか「うん、大丈夫。なんともなかったよ!」

杏子「外食ナシになって残念だったな。楽しみにしてたんじゃないの?」

まどか「あ、でもね。日曜日にはみんなでお出かけしたんだ!
    ショッピングに行ったり、公園で遊んだり!」

杏子「へー、良かったじゃん。あたしは昨日はずーっとさやかの家でゴロゴロしてたよ」

さやか「出かけようって言ってもあんたが嫌だって言ったんでしょ」

168 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/01 19:46:36.60 D8/w5RLHo 119/389

杏子「だって飯食いに行くとかならともかく、服の買い物だろー? しかも長い!
   あんたに何時間も付き合わされるこっちの身にもなれってーの」

さやか「むっ……何よせっかく杏子の服も選んであげようと思ってたのに!」

杏子「良いんだよ服なんか適当で。何の腹の足しにもなんないじゃん」

さやか「あんたはもうちょっとお洒落にも気を遣いなさい!」

杏子「身だしなみなんて最低限清潔にしときゃそれで良いんだって。
   大体お洒落なんかして見せる相手が居るわけでもないんだしさ」

さやか「うぐっ……た、確かにそうだけど!
    まどかぁ! あんたも何か言ってやりなさいよ!
    ママからそういうの色々聞いてんじゃないの!?」

169 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/01 19:50:58.03 D8/w5RLHo 120/389

まどか「へっ? え、えっと、『女は外見で舐められたら終わり』……みたいなことを……」

さやか「くーっ! さっすがまどかママ! ほら聞いたでしょ杏子!
    まどかママが言うんだからこれは間違いないよ!」

杏子「なんだよさっきからまどかママまどかママって!
   あんたまどかの母親とそんなに仲良かったわけ?」

さやか「いや別に仲良くはないけどさ! でもあれだけカッコイイ……ん?」

まどか「……さやかちゃん、ウチのママのこと知ってるの?」

さやか「あ、あれ? 知ってる……と思ったんだけどよく考えたら知らないな……。
    誰と勘違いしたんだろ? でもカッコイイってのは合ってたし……偶然かなぁ?」

杏子「はぁ? あんた……なんか最近そういうの多くない?
   勘違いっていうか、記憶違い? みたいなの」

170 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/01 19:55:10.00 D8/w5RLHo 121/389

さやか「うん、確かに……。まぁ多分アレだよ、デジャブってやつ」

杏子「まどかじゃなくてあんたの方が病院行った方が良かったんじゃないの?
   頭診てもらいなよ。ここが悪いんですーってね」

さやか「……あんたそれバカにしてない?」

杏子「あ、バレた?」

さやか「杏子ぉおおおおお!!」

杏子「おっと! あはははは! まぁそうカリカリすんなって! 小魚食えよ小魚!」

さやか「うるさぁい! 待ちなさいコラぁ!!」

まどか「ちょ、ちょっと2人とも落ち着いて……!」

171 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/01 19:58:48.02 D8/w5RLHo 122/389




昼休み

マミ「――そう、ご家族みんなで。ふふっ、元気になったみたいで安心したわ」

まどか「はい! 心配かけちゃってごめんなさい」

杏子「マミは昨日は何してたんだ?」

マミ「私? 昨日は、そうね……お茶の葉を見に行ったり、
  ティーカップを見に行ったり……。それから本屋さんでお菓子作りの本を見たり。
  結局、何も買わずに帰ってきちゃったんだけどね。
  まぁお散歩のついでみたいな感じだったからそれはそれで良かったんだけど」

まどか「わぁ……なんだかステキなお散歩ですね! マミさんらしいです」

さやか「散歩1つ取ってもここまでオシャレになるものなのか……」

172 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/01 20:05:14.27 D8/w5RLHo 123/389

マミ「そ、そう? やだ、なんだかちょっと照れちゃうわね……。
  あ、それから、なぎさちゃんと少し連絡を取ったりもしたのよ」

杏子「なぎさと? なんて?」

マミ「あの子、次のお茶会をすごく楽しみにしてるみたいで。
  次はいつやるのかとか、今度はどんなチーズが食べたいとか、今日はどんなチーズを食べたか、とか」

さやか「うはぁ~、本当にチーズ大好きなんだねあの子」

まどか「ちょ、ちょっと心配になっちゃうくらいだね」

杏子「ま、大丈夫っしょ。それに好きなだけ美味いもん食って体壊すなら本望だしね」

さやか「あははっ、あんたはそれで良いかもね」

173 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/01 20:11:41.76 D8/w5RLHo 124/389

杏子「他のとこでちゃーんと栄養取ってれば問題ないんだよ。
   というわけでこのソーセージもーらいっ!」

さやか「あぁ!? これ楽しみに取っておいたのにぃ!」

杏子「そんなの知らないね! 残す方が悪いんだよー」

さやか「も……もう許さん! あんたのパン全部食べてやる!」

杏子「うわっ!? オ、オイさやか! 待てって! 悪かった、悪かったから!
   だから全部は勘弁……あぁああ!? い、一気に口に入れやがった!?」

さやか「もがもごもご! ぐもももがも!」

まどか「ぷっ……あははははっ! さやかちゃんすごい顔!」

マミ「も、もう、美樹さんったら……ふふっ、あはははっ!」

174 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/01 20:15:36.14 D8/w5RLHo 125/389




放課後

さやか「――はー、やれやれ。今日も疲れたな~っと」

杏子「さやか、今日も寄り道するだろ? 今日はどこ寄ってく?」

さやか「ん、そうだね……じゃあ買い食い以外でよろしく!」

杏子「? 買い食い以外って、じゃあ喫茶店?」

さやか「いやいや……そうじゃなくて、飲み食い以外が良いってこと!」

まどか「も……もしかして、お昼のパンがまだ?」

さやか「その通りでございます」

175 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/01 20:20:28.57 D8/w5RLHo 126/389

さやか「そういうわけで、ちょっと今のあたしのお腹には何も入りそうにないのよねぇ」

まどか「だ、だよね。杏子ちゃんのパン全部食べちゃったんだし……」

杏子「えー? あんだけでそこまで腹膨れるかよ? 背ぇ高いのに小食だよな、あんた」

さやか「杏子がおかしいんだって。改めて身を以って知ったわ……ん?」

その時、あたし達の席に誰かが近付いて、立ち止まったことに気付いた。
視線をずらしてそれが誰かを確認する。
あたしの目の前に立っていたのは……

ほむら「ごめんなさい、ちょっと良い?」

176 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/01 20:25:11.39 D8/w5RLHo 127/389

まどか「! ほむらちゃん……」

杏子「なんだ、もしかしてまどかに用事かい?」

ほむら「いいえ。美樹さんに、ちょっと」

さやか「え……あたし? 何……?」

ほむら「これ渡しておくわね」

そう言って暁美さんに渡されたのは黒いノート……
ではなく、学級日誌だった。

ほむら「明日、日直でしょう?」

さやか「あ、そっか……。ごめん、ありがとねわざわざ」

177 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/01 20:29:04.35 D8/w5RLHo 128/389

ほむら「お礼なんて。それじゃ、よろしくね」

そう言い残し、暁美さんは背を向ける。
そしてそのまま行ってしまう……と思ったらふいにぴたりと足を止め、振り返った。

ほむら「美樹さん、体調は大丈夫? あまり優れないようだけど」

さやか「へっ? あ、あぁ……うん。ちょっとお昼食べ過ぎただけだから、平気平気」

ほむら「そう。無理はしないようにね。早く『普段通り』に戻ることを祈ってるわ」

さやか「う、うん、ありがとう」

ほむら「……また明日ね、さようなら」

そうして暁美さんは、今度こそ振り向くことなく教室から出て行った。

178 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/01 20:33:28.73 D8/w5RLHo 129/389

さやか「…………」

杏子「オイさやか、何ぼーっとしてんだよ。さっさと帰ろうぜ」

さやか「あぁ……うん。そうだね、帰ろう」

まどか「えっと、今日は寄り道は……?」

さやか「飲み食いじゃなかったら全然いけるよ! そうだ、本屋寄ってかない?
    確かもうすぐ欲しい漫画の発売日だったような気がするし」

杏子「本屋か。まぁ良いんじゃない?
   あたしは小遣いあんま残ってないから立ち読みでもしてるよ」

さやか「あんたの場合ぜーんぶ食べ物に使っちゃうもんね」

まどか「あはは、杏子ちゃんらしいね。それじゃ、行こっか!」

179 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/01 20:38:42.51 D8/w5RLHo 130/389




夜、さやか宅

さやか「はぁ~、さっぱりした。やっぱたくさん魔獣倒したあとのお風呂は……。
    あっ、杏子! それ今日あたしが買ったやつじゃん!
    まだ途中までしか読んでないのに!」

杏子「あぁー、悪い悪い。ははっ、やることなくてつい」

さやか「まったく……。はい、返してよ。続き読みたいから」

杏子「ん……もうちょっと待ってくれない? 今良いとこなんだよ」

さやか「はぁ? あんたねぇ……って、ストップストーップ!
    そこ、ちょうどあたしが読んでたとこじゃん! 駄目だよそこから先は!」

杏子「えぇ~? ケチケチすんなよ、良いだろー?」

180 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/01 20:41:56.99 D8/w5RLHo 131/389

さやか「駄目なもんは駄目!
    なんであたしが買ったのにあんたに先に読まれなくちゃいけないのよ!」

杏子「ちぇっ、なんだよ……。あ、そうだ! じゃあ一緒に読めば良いじゃねぇか!」

さやか「あ、あのねぇ……」

杏子「こっち来なよ。座った座った」

さやか「……ハァ。しょうがないわね……。
    ん、もうちょっと詰めなさいよ。狭いじゃない」

杏子「おう。へへっ……これなら文句ないっしょ?」

さやか「まったくもう……わかったわよ。ほら、ページめくって」

杏子「はいよー」

181 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/01 20:48:47.40 D8/w5RLHo 132/389




杏子「いやー、読み終わった読み終わった!」

さやか「うーむ、続きが気になる……新刊出るのっていつだっけ」

杏子「また2ヶ月後じゃないの?」

さやか「2ヶ月かー、遠いなぁ~……。ま、しょうがないわよね。
    そんじゃ、もう時間も時間だしそろそろ寝よっか」

杏子「ん、そうだね」

そうして杏子は布団に、あたしはベッドに入って電気を消す。
このまま目を閉じればもうあと数分もすれば眠りにつける……という、その時だった。

杏子「……あのさ、さやか」

182 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/01 20:54:08.48 D8/w5RLHo 133/389

真っ暗な部屋に、静かな杏子の声だけが聞こえる。
何か起きてやることがあるのかと電気を点けようとしたけど、それに気付いた杏子に止められた。

杏子「良いよ、そのままで。少し話すだけだからさ」

さやか「ん……何、どうしたの?」

杏子「えっと、さ……。あんたこないだマミの家で、マミに何を聞こうとしてたんだ?」

さやか「えっ?」

『こないだマミの家で』……心当たりは1つしかない。
あのお茶会のあと、なぎさを送ってまどかも帰ったあと……。
杏子が寝ちゃった、あの時のことだ。

杏子「昔のあたしがどうとかって、確かそう言ってたよな?」

183 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/01 21:00:06.78 D8/w5RLHo 134/389

さやか「えっと……お、起きてたんだ?」

杏子「半分は本当に寝てたよ。でもあんまり妙な会話だったんで目が覚めちまった。
   なぁ、さやか。ありゃ一体どういうつもりだったんだよ?」

さやか「ん、まぁ……夢、でね。変な夢見ちゃってさ」

杏子「それって、昔のあたしの夢?」

さやか「いや、そういうわけでもないんだけど……。
    その夢の杏子が、あまりにもあたしの知ってる杏子と違ったもんだから……
    いや、自分でもそんなことを気にするなんて変だとは思ってたんだけどね。
    でもなんか、気になっちゃってさ……」

杏子「……前あんたに、あたしの過去……。
   あたしの祈りと、家族の話はもうしたよな? 覚えてるか?」

さやか「あ……うん。覚えてるよ」

184 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/01 21:05:41.96 D8/w5RLHo 135/389

杏子「……どんな話だったか、覚えてる?」

さやか「え……? えっと、杏子の祈りでお父さんが、って……」

杏子「……そっか、覚えてんのか……」

さやか「杏子……?」

杏子「わかった。悪いね、こんな問いただすようなことしちまってさ。
   まぁちょっと気になっただけだからさ。もうこの話は終わりにしようぜ」

さやか「あ……うん。ごめんねなんか、マミさんとコソコソしてたみたいで」

杏子「そりゃお互い様だろ? あたしだって盗み聞きしてたようなもんだ」

さやか「……あはは、そっか。うん、それじゃあおやすみ、杏子」

杏子「あぁ、おやすみ」

185 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/01 21:16:33.77 D8/w5RLHo 136/389




さやかは言った。
あたしの祈りと家族の話を覚えてるって。
あたしの祈りで親父が……って。
確かにそう言った。

あたしから聞いたってのも否定しなかった。
嘘をついてるようには聞こえなかったし、あれは本当に知ってるって言い方だった。

なぁ……さやか。
なんであんた覚えてるんだよ。
いや、なんで知ってるんだよ。

あたしの祈りと家族と、親父のこと……。
詳しいことはあんたには、一度だって話したことないのにさ。

194 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/05 20:02:56.77 BjdH8anOo 137/389




翌朝

さやか「あ、やっと起きてきた。おはよ、杏子」

杏子「ん? なんだよ、今日はやけに早いじゃんか」

さやか「忘れたの? 日直だよ日直。だから今日はお先に行かせてもらうわ」

杏子「あぁ、そっか……。起こしてくれりゃあたしも一緒に行ってやったのに」

さやか「一応起こしたけどめちゃくちゃ熟睡してて起きなかったのよ……」

杏子「そうだった? 悪いね、まぁ今日はたまたま眠りが深かったんだな」

さやか「なーにがたまたまよ、寝坊常習犯の癖に。
    ……っと、そろそろ行く時間かな。それじゃ杏子、お先に! また学校でね!」

杏子「おう、またね」

195 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/05 20:11:34.91 BjdH8anOo 138/389

杏子に手を振って、あたしは1人家を出た。
時間には結構余裕を持って出たから、
学校に着いたのはいつもよりずっと早い時間だった。

どの教室にもまだほとんど人は居ない。
居るとすればあたしと同じような日直か、
誰も居ない時間に来て本を読むのが習慣になってるような生徒か、そのくらい。

教室への廊下を歩きながらそんなことを考えるうちに……ふと思い出した。
そう言えばウチのクラスにも、早く来て本を読んでる子が居たんだ。
日直で朝早く学校に行くたびにその子と2人きりになってたっけ。

そして、やっぱり……今日もその子は居た。

ほむら「……おはよう、美樹さん」

さやか「あ、うん……おはよう」

196 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/05 20:22:14.21 BjdH8anOo 139/389

さやか「…………」

ほむら「…………」

最初の挨拶だけ交わして、あたしは黙って自分の席に向かう。
暁美さんもすぐに視線を本に落としたみたいだ。
そしてあたしがカバンを置いて、早速日直の仕事をしようと思ったその時。

ほむら「体調、もう大丈夫?」

さやか「えっ?」

ほむら「お腹の調子。もう治った?」

さやか「あ、あぁ……うん。平気だよ。ありがとう、心配してくれて」

ほむら「そう、良かった。最近あまり体調が良いようには見えなかったから心配してたの」

197 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/05 20:35:28.41 BjdH8anOo 140/389

さやか「あー……そう? そんなことないと思うけど……」

座ったまま、柔らかい笑顔であたしの顔を見上げる暁美さん。
でも何故かあたしはほとんど無意識に、その笑顔から目を背けてしまった。

さやか「えっと、それじゃあたし日直の仕事あるから……」

ほむら「ねぇ、美樹さん」

あたしはほとんど背を向けてたけど、不意に名前を呼ばれてつい振り返った。
その瞬間……あたしの後頭部と額に何か、柔らかいものが触れた。

さやか「っ……!? あ、え……?」

それは、暁美さんの手だった。
暁美さんの左手があたしの後頭部を支え、右手が額に添えられている。
さっきまで席に座ってたはずの暁美さんはいつの間にか、
あたしに触れられるほどすぐ近くに立っていた。

198 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/05 20:40:11.24 BjdH8anOo 141/389

突然目の前に立たれて、突然触れられて、あたしは心臓が飛び上がるほど驚いた。
なのに……体は何故かぴくりとも動かなかった。
動かせなかった。

暁美さんは黙ったまま、至近距離からあたしの目をじっと見上げる。
さっきとは違い、今度はあたしも目を離せない。
そしてそのまま、何秒か、何十秒か、何分かが経って……ふっと暁美さんの両手は離れた。

ほむら「美樹さん、少し熱っぽいわ」

さやか「え……ね、熱っぽい……?」

ほむら「まだ体調が完全には治ってないんじゃないかしら」

さやか「そ、そうかな。大丈夫だと思うけど」

ほむら「日直、何か手伝うことはある?」

さやか「あぁいや……良いよ。そんな手伝ってもらうようなもんでもないし……。
    暁美さんは座って、読書の続きでもしてて」

199 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/05 20:45:57.59 BjdH8anOo 142/389

ほむら「そう。何かあったら声をかけてね」

さやか「うん、ありがと。それじゃ、とりあえず職員室行ってくるね」

そうしてあたしは教室の出口へ向かう。
しかし廊下へ出るその前に、また暁美さんの声があたしの足を止めた。

ほむら「そう言えば、1つ訊いても良い?」

さやか「え? うん、何?」

ほむら「佐倉さんがこの学校に来たのって、いつ頃だったかしら」

さやか「? ちょうど半年前くらいでしょ……? なんで?」

ほむら「……いいえ、少し思い出せなくてもやもやしていたの。
    ありがとう。美樹さんがそのこと……覚えていてくれて良かったわ」

そう言って、暁美さんはにっこりと笑った。

200 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/05 20:53:23.29 BjdH8anOo 143/389




昼休み

杏子「――あん? なんで急にあたしが見滝原中に来た時の話が出てくんだよ」

さやか「いやぁ、ちょっと思い出しちゃってね。懐かしいなーと思ってさ」

まどか「そう言えば杏子ちゃんが転入してきた時の話って聞いたことないなぁ。
    ちょっと聞きたいかも!」

マミ「初めは佐倉さん、制服が嫌だって言って大変だったのよ?
  せっかく可愛かったのにすぐ脱ごうとしちゃって」

まどか「えっ、そうなんですか?」

さやか「本当にね。可愛いって何回も言ってんのにさ」

杏子「それが嫌だったんだよ! まるで人を着せ替え人形みたいにしやがって」

201 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/05 20:58:13.23 BjdH8anOo 144/389

さやか「あ、そっか! そうだそうだ!
    あの時はほんとちょっとしたファッションショーだったよね!」

マミ「そうそう。私の服と美樹さんが持ってきてくれた服を代わる代わる着てもらって」

杏子「オ、オイやめろよ。ここ最近で一番忘れたい記憶なんだぞ……」

さやか「えー? 最近って、半年以上前のことでしょ? もう時効だよ時効」

杏子「そういう問題じゃねぇよ!」

マミ「どんな服が似合ってたかしら? 本当に色々試したわよね」

さやか「あれ良かったよね! フリフリのワンピース!
    もー杏子の顔も真っ赤になっちゃって!」

まどか「フ、フリフリのワンピース……」

202 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/05 21:03:40.12 BjdH8anOo 145/389

マミ「普段はスカートもほとんど履かないものね。ふふっ、新鮮ですごく良かったわ」

杏子「も、もう良いだろこの話は! 大体なんでこんな話になってんだ!」

さやか「あー、でもさ、マミさんの服がなかなか合わなくて困ったよね。
    特に胸がぶかぶかで、あんたそれあとちょっとで見え」

杏子「うるせぇええ! それ以上思い出すんじゃねぇ! やめろ!」

さやか「えー? せっかく盛り上がってきたのに」

杏子「知るかそんなもん! 大体、まどかはあたしの転入した時の話を聞きたいって……」

まどか「あの……しゃ、写真とかないのかな?」

杏子「!? ま、まどかあんたまで何言って……」

さやか「あー、あるある! いっぱい撮ったよ。見る?」

杏子「あるのかよ!? やめろバカ! 消せ! 今すぐ消せぇええ!」

203 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/05 21:07:09.64 BjdH8anOo 146/389




さやか「――いや、申し訳ない! つい楽しくなっちゃって」

マミ「ご、ごめんね佐倉さん。私も懐かしくなっちゃって……」

まどか「わ、わたしもはしゃいじゃって……」

杏子「…………」

マミ『ど……どうしよう。佐倉さん、やっぱり怒ってるわよね?』

さやか『からかい過ぎちゃったか……。こうなると食べ物を献上しないと機嫌直らないかも』

マミ『それも普通の物じゃなくて、ちょっと良い物じゃないと……』

杏子「はぁ……良いよもう。別にそんなに怒ってないからさ」

3人「!」

204 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/05 21:10:30.09 BjdH8anOo 147/389

さやか「あ、あれ、そうなの?」

まどか「ほ、ほんと? そんなに怒ってないの?」

杏子「あん? なんだよ、怒ってて欲しかったのか?」

マミ「う、ううん、そんなことはないわ!」

まどか「良かったぁ……ありがとう、杏子ちゃん!」

杏子「ま、あたしの機嫌が良かったことに感謝するんだね」

さやか「いやー、助かった! 機嫌良くてサンキュ、杏子!」

杏子「……へっ、あんたはあんたで調子の良いヤツだよな本当」

205 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/05 21:16:44.52 BjdH8anOo 148/389




夜、さやか宅

さやか「――ふう、良いお湯だったなー……ん?」

杏子「ぷっ、あはは! あははははっ!」

さやか「杏子ー、悪いけどテレビの音量もうちょっと下げてくれる?」

杏子「ん、なんで? 電話でもすんの?」

さやか「ううん、宿題。あたしまだ終わってないからさ」

杏子「あぁ、なるほど。あたしはこれ見終わってからするわー」

さやか「……えっ? 何あんた、まだ宿題してなかったの?」

206 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/05 21:21:31.15 BjdH8anOo 149/389

杏子「? そうだけど、それがどうかしたか?」

さやか「だってあんた、あたしがお風呂入る間に済ませちゃうって……」

杏子「いやー、ほんとはそのつもりだったんだけどさ。
   BGM代わりにテレビつけたらちょうど面白いやつやってて、ついね」

さやか「つい、ってあのねぇ……。まだやってないんなら一緒にやろうよ」

杏子「えー? 良いよ、あとでやるから。この番組めちゃくちゃ面白いんだって」

さやか「……本当にあとでやるんでしょうね?」

杏子「おう、ちゃーんとやるよ」

さやか「はぁ……それじゃ、あたし先にやっちゃうからね。
    あんたもちゃんと自分でやりなさいよ」

杏子「はいはい」

207 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/05 21:25:06.06 BjdH8anOo 150/389




翌朝

まどか「――そ、それでやらなかったんだね……」

さやか「そうなのよ! ほんっと信じらんない!」

杏子「いやー、やべーわマジで! どうしよー! あははははっ!」

さやか「どうしようもないわよ。大人しく先生に怒られるんだね、自業自得!」

杏子「あっ、そうだ! なぁまどか、あんたの写させてくんない?」

208 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/05 21:30:48.14 BjdH8anOo 151/389

まどか「えっ? えっと……」

さやか「コラぁ! そういうズルにまどかを巻き込むんじゃない!」

杏子「さやかが写させてくれないからだろー?
   大体、抜け駆けして先にやっちゃうなんて、ずるいのはさやかじゃねーか」

さやか「あたしはちゃんと一緒にやろうって言ったでしょうが!
    なのにテレビなんか見てるあんたが悪いの!」

杏子「良いじゃんかさやかのケチー!」

さやか「あのねぇ、そもそも……。ん……?」

まどか「……? さやかちゃん?」

杏子「あん? なんだよ急に固まっちまって……」

209 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/05 21:34:40.94 BjdH8anOo 152/389

さやか「あ……あのさ、まどか。昨日の宿題って英語だけ、だったよね?」

まどか「へっ? う、ううん。英語と理科だけど……」

さやか「…………」

杏子「……さやか、あんたまさか……」

さやか「わ……忘れてたぁあああ!! 英語しかやってないよどうしよぉ!!」

杏子「あははははは!! なんださやかもすっぽかしちまってるじゃねぇか!
   あたしと同類だ同類! やーいやーい! 宿題サボリのさやかー!」

さやか「ぅうううるさい! あたしはやろうとしてたけど忘れてたの!
    最初からやる気がないあんたとは違う!!」

杏子「そんな言い訳したって教師から見りゃどっちもどっちだぜー?」

さやか「うぐっ……あ、あたしってほんとバカ……」

213 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/06 20:10:52.78 2KxJDTNyo 153/389




昼休み

さやか「――というわけなんですよ」

マミ「そ、それはまた気の毒に……」

杏子「まぁ良いじゃんか。明日持って来れば良いって言われたんだしさ」

さやか「あんたはもっと反省しなさい!
    あーもうなんか頭痛くなってきた……」

まどか「さ、さやかちゃん、元気出して!」

さやか「うぅー、本当まどかとマミさんはあたしの癒しだわー。
    と、いうわけでマミさん!
    今日の放課後、久しぶりにマミさんの家に寄っても良いかな?」

214 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/06 20:23:05.82 2KxJDTNyo 154/389

マミ「私はもちろん構わないけど、2人とも宿題は良いの?」

さやか「宿題も大事ですけど、まずは癒しをということで……」

杏子「ちぇっ。癒し癒しって、あたしと居るのがそんなに疲れるのかよ」

さやか「少なくとも、今の疲れの半分はあんたのせいだねー。
    朝からツッコむわ怒鳴るわでもうヘトヘトよ」

マミ「あら。だったらいつもと変わらないんじゃないかしら?」

さやか「えっ、ちょっとマミさん? あたし達を普段どういう目で見てんの」

まどか「あははっ、でも2人ともいつも元気ですごいと思うな。
    家でもなんだか、すごく賑やかそう!」

215 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/06 20:31:19.51 2KxJDTNyo 155/389

杏子「ははっ、流石に家ではしゃぎまわったりはしないよ。まぁ静かなもんさ」

さやか「どの口がそれを言うか。昨日なんかテレビ見て笑い転げてたくせに!」

杏子「オイオイ、疲れてるんじゃなかったのかよ。めちゃくちゃ大声出してるけど?」

さやか「あんたが出させてるんでしょうが……」

マミ「ふふっ、じゃあみんな、今日はうちでお茶をするってことで良い?」

まどか「わぁ、ありがとうございます!」

杏子「さやかの言い分は引っかかるけど、お茶会には賛成だね」

さやか「ありがとうマミさん! それじゃ放課後、よろしくお願いしまーす!」

216 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/06 20:40:09.19 2KxJDTNyo 156/389




放課後

さやか「――ん~、美味し~! 甘みが全身に染み渡る~!
    やっぱ疲れてる時の甘いものはサイコーだね!」

マミ「ふふっ、美樹さんったら。でもその気持ち、ちょっと分かるかも」

杏子「そうか? 甘いものはいつ食ったって最高だろ……ん!
   へぇ、このケーキ、チーズ入ってんのか。ははっ、こないだのチーズづくしを思い出すね」

まどか「そう言えばマミさん、なぎさちゃんとはよく連絡を取ってるんですか?」

マミ「えぇ。ほとんど毎日むこうから連絡が来るの。
  今日はどんなことがあったかをとても楽しそうに教えてくれて。
  1人暮らしだけど、そのおかげで夜も寂しくなくて最近楽しいわ」

217 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/06 20:51:19.30 2KxJDTNyo 157/389

さやか「マミさん……もしかして、夜は寂しかったりするの?」

マミ「あ、ううん、違うの。普段寂しいっていうわけじゃないんだけど、
  ただ、今まで1人だった時間に誰かとお話できるっていうのが嬉しいな、って」

杏子「ふーん……ま、その気持ちは分からなくもないかな。
   あたしもさやかと一緒に居るようになって退屈しなくなったしね」

さやか「!」

マミ「ふふっ。それになぎさちゃん、やっぱりいつもすごく元気だから。
  なんだか私まで元気を分けてもらってるような気がするの」

まどか「小さい子に元気を分けてもらうのって、なんとなく分かるかも知れないです。
    あ、でもまだタツヤは小さいからまだ大変なことも多いかな?」

杏子「あぁ、あんたの弟ってまだ3歳くらいなんだっけ?」

マミ「そうだわ。もし良かったら、鹿目さんのお話を聞かせてもらえる?
  小さい子のお世話ってどんな風にするのかとか、ちょっと興味があるから」

まどか「わ、わたしはそんなに大したことはしてないんですけど。
    えっと、まだタツヤが生まれてすぐの頃なんかは……」

218 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/06 21:00:43.52 2KxJDTNyo 158/389




夜、さやか宅

杏子「――いよーっし、宿題終わり! 案外早く終わったね」

さやか「まったく、やれば出来るんだからこれからは……ふわぁ~……」

杏子「うわ、すっげぇあくび。もう眠いの?」

さやか「まぁね~……。やることやったし、もう寝ちゃおっかな。杏子はまだ起きてる?」

杏子「んー……良いや、あたしも寝るよ。特にやることもないしね」

さやか「そっか。それじゃ……あ、ごめん待って。
    そう言えば杏子に訊きたいことがあったんだった」

杏子「? 訊きたいこと?」

219 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/06 21:08:15.07 2KxJDTNyo 159/389

さやか「今日の、家族がどうこうって話で思い出したんだけど……この前のこと」

杏子「……『この前』?」

さやか「この前の、アレ……あんたの、家族の話」

杏子「!」

さやか「寝る前にさ、杏子が訊いてきたでしょ?
    祈りと家族のことを話したの覚えてるか、って」

杏子「……あぁ」

あたしは正直、驚いた。
まさかさやかの方からこの話題を切り出されるとは思ってなかったから。

220 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/06 21:15:33.29 2KxJDTNyo 160/389

知っているはずのないことを覚えていたさやか。
一体どういうことなのか、あたしはそれを知りたいと思っていた。

さやかに直接訊くべきかも知れないと思っていた。
そのことだけじゃない、最近のおかしな様子についても……。
記憶違いだとか、そういうのと何か関係あるのかって、訊くべきだと思ってた。

でも訊けなかった。
だって……次の日のさやかは、いつも通りだったから。
最近のおかしさなんて全然ない、あたしの知ってるさやかだったから。
だからそれがつい嬉しくなって。
もうさやかはおかしくなくなったんだって思って、思いたくて……訊けなかった。

でも、そうなんだ。
昨日と今日のさやかにおかしい所はなくても、事実は変わらない。
知るはずのないことを知っていたって事実は、変わらないんだ。

221 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/06 21:20:22.62 2KxJDTNyo 161/389

杏子「そうだ……それであんたは、『覚えてる』って答えたんだ」

……さやかの方から、この話題を出してくれた。
わざわざこの話題を出すってことはつまり……そういうことだ。
さやかの方から説明してくれるってことだ。

なんであたしが話したことのないことを知ってたのか。
それを今から、自分の口から説明してくれるってことだ。

柄にも無く少し緊張する。
一体なんで、あんたはあたしの過去を……

さやか「そう、そうなんだけど……ごめん。あれ、勘違いだった」

杏子「……は?」

222 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/06 21:29:18.15 2KxJDTNyo 162/389

さやか「じっくり思い返してみたらさ、
    あたし、杏子にそういう話聞かされたことってなかったんだよ……。
    多分どこかで聞いた話を勘違いしちゃったんだと思うんだけど……」

杏子「待てよ、オイ……なんだよそりゃ」

さやか「いや、だからあたし、知らないの。杏子の祈りと家族の話。
    なのに勘違いで知ってるって、覚えてるって言っちゃって……」

杏子「……」

さやか「でもそのままじゃ良くないって思ってさ……。
    だってあの時のあんたの声、すごく真剣だったから。
    何か……大切な話をしようとしてたんだよね? だから……」

杏子「そのどこかで聞いた話っての、言ってみろよ」

223 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/06 21:31:34.30 2KxJDTNyo 163/389

さやか「え?」

杏子「あんたがあたしに聞かされたんだと勘違いした話があるんだよな?」

さやか「あ、うん、多分……」

杏子「その話、どんな内容だったか言ってみろ」

さやか「えっと……あれ? どんな話だっけ……」

杏子「覚えてるはずだろ? 勘違いだったとしても、その話の内容はさ。
   じゃなきゃ、あんなにはっきり『覚えてる』なんて言うはずないもんな。
   なぁ、早く話してくれよさやか。覚えてるよな? なぁ?」

さやか「き、杏子? まって、落ち着いて……!」

杏子「あたしの祈りで親父が……って。あんたはそこまで言ったんだぞ。
   その続きは何だよ? あたしの祈りで親父がどうなっちまったんだよ?」

224 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/06 21:35:41.13 2KxJDTNyo 164/389

さやか「え……? き、杏子のお父さん?
    ご、ごめん、あたしそんなこと言ったっけ……?」

杏子「……忘れちまったってのか、それも」

さやか「あ、待って……確かに、言ったかも。
    そうだ、確かにあたし、そう言った」

杏子「でも……何を言おうとしてたのかは覚えてないのか」

さやか「う、うん……ごめん」

杏子「…………」

どう、なってんだ……。
さやかは、今のさやかは……『どこもおかしくない』。

225 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/06 21:38:33.31 2KxJDTNyo 165/389

昨日からだ。
さやかが『おかしくなくなった』のは。

最近のさやかはずっとおかしかった。
記憶違いだかデジャブだか知らないが、特に昔の話が出ると何かおかしかった。
でも昨日と今日はそれがまったくなかった。

あたしが見滝原に来た時のことをついこないだのことみたいに面白おかしく話すさやか。
あたしが話したことのないことを『知らない』と言うさやか。

覚えてるはずのことは覚えてるし、知らないはずのことは知らない。
それが今のさやかだ。

何もおかしくない。
だけど……

杏子「やっぱり、おかしいぞ……あんた」

226 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/06 21:42:31.24 2KxJDTNyo 166/389

さやか「え? おかしいって……?」

杏子「あんた、知らないんだよな? あたしの過去」

さやか「あ、うん……。え、も、もしかして、知ってなきゃおかしいの?」

杏子「いや、何もおかしくない。知らないのが当然だ。話したことないからね」

さやか「じゃあ何が……あ、うろ覚えの話を勘違いしちゃってたのは悪いとは思うよ。でも……」

杏子「あぁ、確かに今のあんたはどこもおかしくない。でもそれがおかしいんだよ……!」

さやか「は……? ちょ、ちょっと待ってよ。それもしかしてバカにしてる……?
    あたしの頭はおかしくないといけないって言ってるわけ?」

杏子「そうじゃない! でも……あんた最近ずっとおかしかっただろ!」

227 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/06 21:49:25.81 2KxJDTNyo 167/389

さやか「おかしいって何が……!」

杏子「記憶がごちゃごちゃになってたじゃないか!
   まどかと昔仲良かったとか言ったり、あたしとは最初は仲が悪かったとか言ったり、
   まどかの母親のこと知ってるとか言ったり、
   あたしが家族のこと話したの覚えてるとか言ったり!」

さやか「い、いやだからそれ、勘違いだったって言ってるじゃん!
    記憶違いなんか珍しいことでもないし、
    まどかのことも杏子のことも今はちゃんと全部思い出してるって!
    大体、家族のこと話したの覚えてるかって訊いてきたのは杏子でしょ!?」

杏子「それはっ……さやかが、ずっとおかしかったから……」

さやか「え……な、何。どういうこと……?」

228 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/06 21:57:52.23 2KxJDTNyo 168/389

杏子「っ……」

さやか「……カマをかけたってこと? あたしの頭が変だって決め付けて……?」

呟くようにそう言ったさやかの表情は、さっきまでとはまるで違っていた。
あたしが何を言ってるか分からないことへの困惑と苛立ち。
それがさっきまで浮かんでいた表情だ。
でも今は……。
あたしはこんなさやかの表情は、見たことがない。

杏子「あ、あんたのことが心配だったんだよ!
   確かに騙すみたいなことして悪いと思ってる! でも……」

さやか「だったら! ……っ」

何か言おうとしたみたいだったが、開きかけた口からは空気が漏れただけだった。
その空気すら閉じ込めるように唇を噛んで、目を逸らすさやか。
そしてそのままあたしに背を向けてベッドに潜り込み、黙り込んでしまった。

229 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/06 22:03:33.32 2KxJDTNyo 169/389

杏子「電気……消すぞ」

さやか「…………」

さやかは答えず、掛け布団から僅かに覗く頭も動かない。
仕方なくあたしも黙ったまま、電気を消して布団に潜り込んだ。

真っ暗な部屋に沈黙が続く。
が、唯一聞こえる音があった。
さやかのベッドの方からの、鼻をすする音。
あたしはしばらく黙ってその音を聞いてたが、ついに我慢できなくなった。

杏子「……悪かった」

さやか「…………」

230 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/12/06 22:07:20.90 2KxJDTNyo 170/389

杏子「訳分かんないよな。おかしくないのがおかしい、なんて。
   自分でも変なこと言ってるとは思ってるんだ……」

さやか「…………」

杏子「ただ上手く言えないけど……本当に、あんたが心配だったんだよ。
   騙すとか、引っ掛けるとか、そういうつもりはなくて……」

さやか「……頭」

杏子「え……」

さやか「頭、痛いから……寝させて」

杏子「……悪い」

そのままあたしは何も言えず、さやかも何も言わない。
そうしてその沈黙は、朝まで続いた。

【後編】に続きます。

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