1 : ◆SjWXMdM6SY[sag... - 2013/11/26 18:48:13.79 PAVyh3iJo 1/629まどマギに「ペルソナ3」「ペルソナ4」の要素と設定の一部を混ぜ込んだものです
新編ネタバレはありません
百合要素あり
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元スレ
ほむら「魔女使い」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1385459293/
――魔女
それは、絶望を撒き散らす存在
私たち魔法少女が己の為に倒すべき敵
そして…魔法少女の成れの果ての姿
ソウルジェムが濁りきったとき、私たちはその呪われた姿へと変貌する
全ての魔法少女はいずれ魔女になってしまう。……ソウルジェムを砕かぬ限り
だが、ソウルジェムを砕かれた者は…その場で命を落とす。魔女化か、死か……
私たちの運命は、その2つしかなかった
……なかったはずだった
ほむら「……」
ほむら「……今回もまた…しくじったわね……」
また、彼女を救えなかった。守れなかった
私がワルプルギスの夜に苦戦してるところを、アイツが見逃すはずがない
まどかを契約させて、ワルプルギスの夜を倒させ、彼女を魔女へと変貌させる
魔力を使い果たし、ソウルジェムはグリーフシードへ…まどかは魔女へと生まれ変わる
そして今、まどかの成れの果て…救済の魔女が、天高く聳え立っていた
魔女「……」
QB「まどかが魔女になってくれたおかげで、大きなエネルギーを得ることができたよ」
ほむら「……ごめんなさい、まどか」
QB「あの魔女をどうにかするのは君たちの仕事さ。ほむら、君は戦わないのかい?」
ほむら「えぇ。私のすることではないわ」
QB「でも君は魔法少女だろう?」
ほむら「私の戦場はここじゃない」
盾の砂時計を逆転させ、時間を巻き戻す
私の意識は、1ヶ月前のあの日へと遡って行った
ほむら「……これでもう、何度目かしらね」
ほむら「……何度目だろうが、関係ない。私はまどかを救う。ただ、それだけよ」
ほむら「……戻りましょう、あの日へ」
時間遡行魔法を行使し、1ヶ月前へと向かって歩き出す
その途中でふと、まどかとの話を思い返す
この時間のまどかとの、最後の会話を
――――――
まどか「ほむら…ちゃん……」
ほむら「まどか……!どうして…どうして契約なんて……!」
まどか「わたしだって戦えるのに…黙って見てるだけ、なんて…できないから……」
ほむら「まどか…私は……!」
まどか「約束…破っちゃって、ごめん…ね……」
ほむら「まどか…もう少しだけ頑張って、今グリーフシードを探して……」
まどか「……ううん、いいの…ほむらちゃん、次の…時間に行って…そして……」
まどか「わたしを…みんなを、助けてあげて……」
ほむら「みんな…を……?」
まどか「わたしだけで…いい、なんて…きっと嘘だと思ったから…だから……」
ほむら「……わかった。何とかしてみる」
まどか「……ありがとう、ほむらちゃん……」
まどか「……もう、ソウルジェムも…限界みたい」
ほむら「……あなたの手は汚させない。私が……」
まどか「ねぇ、ほむらちゃん…わたし、思うんだ……」
まどか「魔女っていうのは…もうひとりの自分なんじゃないか、って……」
ほむら「まどか……?」
まどか「ソウルジェムが…本体で、それがグリーフシードになるって、聞いたとき…そう、思ったの……」
まどか「自分自身が…ソウルジェムが耐えられなくなったとき…もうひとりの自分が、わたしを殺して…姿を現す……」
ほむら「もうひとりの…自分……」
まどか「その、もうひとりの自分が…力を、貸してくれたら…よかったのにな……」
ほむら「だけど、それは……」
まどか「うん…叶うわけないって、わかってる…でも……」
まどか「ほむらちゃんの中の…もうひとりのほむらちゃんが、力を貸してくれるようにって…わたし、祈ってるから……」
ほむら「まどか……!」
まどか「……そろそろ、お別れ、だね…ほむらちゃん、早く…行って……!」
ほむら「だけど、ソウルジェムは……!」
まどか「わたしのことは…いいから……!お願い、行って……!」
ほむら「そんな……」
まどか「……ほむら、ちゃん…また、1ヶ月前で…待ってるから……」
まどか「また、ね……」
――――――
ほむら「……」
その言葉の直後、まどかは魔女へと姿を変えていった
しかし、まどかの言っていた魔女はもうひとりの自分だという話
姿形はともかく、その性質を考えるとあながち間違ってもいないように思える
美樹さやかの魔女を例に挙げれば、想い人に自分を見てほしい、愛してほしい…そんな思いで溢れている
もし、本当に魔女がもうひとりの自分だとしても…それを意のままに操るなどということはできないだろう
もしかしたら、契約の願いによってはそういった能力もあるのかもしれないが…それは特殊な例だ
だけど、まどかが私を思って祈ってくれたのだ。その命が燃え尽きる瞬間に
私の中にも、もうひとりの自分がいるのなら
私に、力を……。まどかを守れるだけの力を貸して……
ほむら「……何をやっているのかしら。こんなこと、したところで……」
ほむら「それよりも、早く行きましょう……」
そう思い、いつの間にやら止まっていた足を動かす
だが、どこまで行っても一向に終わる気配がない
いつもならもう抜けていてもいい頃のはずだ
ほむら「どうなってるの……?何かの不具合かしら……」
ほむら「……?あれは…何……?」
私の視線の先に、誰かが立っていた。人ではない何かが
この空間に私以外の何かが存在するなどというのは初めてだった
私は警戒しながらその何かに近づく。そして……
ほむら「こいつ…魔女……?」
その何かの側まで近づいて、それが魔女であることに気が付く
魔女は黒い三角帽子のようなものを被り、黒いマントを羽織っていた
どうしてここに魔女が、と思っていると
その魔女は私に語りかけた
魔女「……よく来たわね」
ほむら「……!魔女が喋った……?」
魔女「確かに私は魔女。……だけど、あなたの知る魔女とは少し違う魔女」
ほむら「……何だかわからないけど、魔女というのなら……」
魔女「やめなさい…私に戦う気はないわ」
ほむら「……私も武器を持ってなかったわね。魔女を見逃すつもりじゃないけど…私は行かせてもらうわ」
その魔女を避けて通ろうとすると、魔女は私の前に立ち塞がる
私は魔女にその行動について問いただした
ほむら「……まだ私に何か用?」
魔女「……あなた、本当に彼女を…まどかを救うつもり?」
ほむら「……!どうしてまどかを……!」
魔女「あなた1人で彼女を救えるというの?」
ほむら「……確かに私1人では辛いものがあるのは事実。だけど、他の魔法少女の協力を取り付ければ……」
魔女「あなたにそれができるの?険悪にさせるだけのあなたが」
ほむら「それは……」
魔女「利用できるだけ利用してやった方が楽よ?まどかを救えるのならそれでいいじゃない」
ほむら「……まどかに頼まれたもの。みんなを助けてあげて、と」
ほむら「まどかがそう願ったのなら、私はその願いの為に戦う。それだけよ」
魔女「……とても辛い戦いになるわよ?まどか1人でさえ救えずにいるのだから」
ほむら「わかっているわ」
魔女「……あなたの覚悟、聞かせて頂戴」
魔女「まどかを守れるなら…その命、賭けられる?」
ほむら「まどかを救えるのなら…安いものよ」
魔女「まどかを救えるなら…自分はどうなろうとも構わない?」
ほむら「元より、人であることを捨てた身体よ。今更どうなろうと構わない」
魔女「……何が何でも、まどかを救うというの?」
ほむら「それが、私の存在理由よ。……覚悟なら、とうにできているわ」
魔女「……わかったわ」
そう言うと魔女は、懐…のような部分から何を取り出し、私に差し出した
何かの書類のようだが、見たこともない文字で読むことはできなかった
魔女「この先に進むのなら、ここに署名を」
ほむら「……これは?」
魔女「そうね…契約書とでも言うべきかしら。まどかを救うという覚悟の契約」
ほむら「覚悟の契約……?そんなもの、あなたと契約せずとも……」
魔女「……」
ほむら「……署名せずには進ませてくれないというわけね……。わかったわ、書けばいいんでしょう?」
愚痴をこぼしつつ、署名欄と思しき空欄に自分の名前を書き込む
そして、その書類を魔女へ手渡した
魔女「……あなたの覚悟、確かに受け取ったわ」
ほむら「なら、もういいでしょう?こんなところで立ち止まってる暇はないのよ」
魔女「……最後にひとつだけ」
魔女「時は全ての物事に結末を運んでくる。例え目と耳を塞いでいても、ね」
魔女「そして、その多くは確定された結末となる。運命とでも言うべきかしら」
ほむら「……それは、私ではまどかを救うことなどできないとでも?」
魔女「いいえ。あなたは時を操る魔法少女、暁美ほむら。あなたなら、その結末を変えることができるはずよ」
ほむら「私の名前まで……?私を知っているの?」
魔女「……それはどうでもいいことよ。それよりも、次の時間が始まるわ」
ほむら「……」
魔女「……大丈夫。あなたなら、必ずまどかを救えるわ」
ほむら「魔女にそう言われるのも変な気分ね…それじゃ、私は行くわ」
魔女「えぇ。……また会う日まで」
魔女の言葉と同時に、目の前が白く霞んでくる。漸く次の時間へ行けるようだ
意識がなくなる直前、魔女が何かを言っていたような気がした
魔女「……あなたのことなら、誰よりもよく知っているわ。だって……」
『私はあなた、あなたは私だもの……』
――――――
ほむら「……」
ほむら「また…戻って来てしまったわね……」
ほむら「何かしら…時間遡行中に誰かと話したような気がするんだけど……」
ほむら「……気のせい、よね。あの空間に私以外の何かが存在するとも思えないし」
ほむら「……」
ほむら「……さて、準備を始めましょう」
ほむら「まどか……」
もう何度、繰り返して来ただろうか
またしても、この病室に戻って来てしまった
特にここ何回かの時間は上手くいかない
まどかはおろか、美樹さやかたちさえまともに生存させることができないでいる
まどかの死と魔女化を連続して見てしまったせいか、私の心は酷く磨り減っていた
前回のループはそれが原因で余裕が無くなり、やることなすこと上手くいかなかった
それでも、立ち止まるわけには行かない。まどかを救うまでは
ほむら「……これでよし、と」
ほむら「前回は余裕が無かったせいで全て裏目に出てしまったから…今回は……」
ほむら「……私にできるのかしら。まどかを救うなんて……」
ほむら「……だいぶ参ってるみたいね…そんな風に考えてしまうなんて……」
ほむら「できるできないじゃない。……やるしかないのよ」
ほむら「……何にせよ、今度こそまどかを……」
――――――
ほむら「暁美ほむらです。よろしくお願いします」
何度目かわからない自己紹介
それを終え、まどかの方へ視線を向ける
まどかは少し驚いているようだったが、私の視線に気づくと優しい笑顔を返してくれた
休み時間になると、いつものように質問攻めに遭う
私はいつものようにまどかに声をかけ、保健室に案内してもらうことにした
まどか「暁美さん、大丈夫?」
ほむら「えぇ、大丈夫……」
まどか「でもなんだか疲れてるっていうか…顔色があんまりよくないみたいだから……」
ほむら「そう…かしら……」
まどか「無理しちゃダメだよ?辛くなったらいつでも言ってね」
ほむら「……ありがとう、鹿目さん」
この時点のまどかにも気遣われてしまうなんて…きっと今の私はよほど酷い顔をしているのだろう
転校生の私にも優しく接してくれる…やっぱりまどかはまどかだ
まどかの笑顔から、少しだけ元気を分けてもらえたような気がした
ほむら「鹿目……」
いつもここでまどかに警告をしているが…果たして通じているのだろうか
もしかして理解されてないのでは……。そんなことを考えていたら、まどかが話しかけてきた
まどか「暁美さん?」
ほむら「あ、いえ…鹿目さんのこと、まどか、って呼んでも……?」
まどか「うん!それじゃわたしも、ほむらちゃんって呼ぶね」
ほむら「よろしく、まどか」
まどか「よろしくね、ほむらちゃん。……えっと、その……」
ほむら「……?」
まどか「……ほ、ほむらちゃん…あ、あのね……」
まどか「わたしと…友達になってくれないかな……?」
ほむら「友達……」
まどか「だ、ダメかな……?」
ほむら「……そんなことないわ。ありがとう、まどか」
私に…魔法少女に関わってほしくない。頭ではそう考えているはずなのに、その言葉が出せなかった
酷く磨り減り、疲弊しきった私の心がまどかの側にいたいと…そう思っているのだろうか
とにかく、こうなった以上はまどかの友達としてまどかを守ることにしよう
あとは、インキュベーターと接触させないようにするだけだ
――――――
ほむら「おかしいわね……」
ほむら「いつもならこの付近にいるはずなのに……」
ほむら「ここにいないとすると…一体どこに……?」
まどかとインキュベーターを接触させないように、アイツを探しに来たが……
今回に限って、アイツを見つけられないでいた
時間をかければ、アイツがまどかを呼び出してしまう。早く…早く見つけなければ
『助けて……』
ほむら「……!」
『誰か…助けて……』
そうこうしているうちに、アイツのテレパシーが聞こえてきてしまった
ぐずぐずしてはいられない。まどかより先にアイツを見つけなくては
テレパシーの聞こえてきた方へ向かうと、そこには結界の入り口が口を開けていた
ほむら「結界……?どうしてこんなところに……」
ほむら「……何にせよ、この中からのようね。まどかが入ってきてしまう前に……!」
結界の中へ足を踏み入れ、テレパシーを送っているインキュベーターを探す
しかし、結界の中で私が見たものは
今まで見たことのない光景だった
使い魔「……」
QB「誰か…誰か、助けて……」
アイツが、使い魔に襲われていた
いつもなら演技のはずなのに
ほむら「一体、どうなっているの……?」
QB「そこの君…お願いだ、助けて……」
ほむら「……」
これはアイツを始末する絶好の機会。そのはずなのに
何故だか私は、アイツを助けなければならない気がした
いつもと違う状況に戸惑いつつも、私は盾から引っ張り出した機関銃で使い魔を薙ぎ払った
ほむら「……これで、最後……!」
使い魔「!!」
ほむら「……追撃はないみたいね」
QB「ありがとう…助けてくれて……」
ほむら「……」
QB「それで…傷の手当てをしてもらえると…嬉しいんだけど……」
ほむら「私は回復魔法は……」
『キュゥべえ!!』
聞き慣れた声が聞こえてきた
振り返るとそこには、魔法少女姿の彼女がいた
マミ「キュゥべえ!大丈夫!?」
QB「うん…何とかね……」
マミ「とにかく、今治すわね」
QB「ありがとう、マミ……」
巴マミがインキュベーターの傷を治していく
私はそれをただじっと見ていた
マミ「……これでよし、っと」
QB「ありがとう、助かったよ」
マミ「いいのよ。……それよりも」
マミ「あなたは……?」
インキュベーターの治療が終わった巴マミが私に話しかける
彼女とは敵対してばかりだが…何も争いたいわけではない
インキュベーターを襲っていなかったことが幸いし、警戒はされているものの敵視されているわけではないようだ
私はできるだけ友好的に話すことにした
ほむら「私は暁美ほむら。あなたと同じ、魔法少女」
マミ「私は巴マミ。この街で活動している魔法少女よ」
QB「ほむらは、僕が使い魔に襲われているところを助けてくれたんだ」
マミ「そうなの?ありがとう、キュゥべえを助けてくれて」
ほむら「私は別に……」
マミ「でもキュゥべえのテレパシーを聞いて、助けに来てくれたんでしょう?」
ほむら「確かにテレパシーは聞いたけど……」
QB「ほむら、助けてくれてありがとう」
ほむら「……」
『あれ、ほむらちゃん?』
ほむら「……!」
声のした方へと振り向くと、テレパシーを聞いてしまったであろうまどかが美樹さやかと一緒に姿を見せる
巴マミとインキュベーターにばかり気を取られて、彼女たちがやって来るということをすっかり忘れてしまっていた
どうにか切り抜けられないかと考えたが、もう手遅れのようだ
まどか「ほら、やっぱりほむらちゃんだよ」
さやか「ほんとだ…こんなところで何してんの?」
ほむら「私は……」
マミ「あなたたち、暁美さんのお友達?」
まどか「あ、はい。鹿目まどかって言います」
さやか「あたしは美樹さやかです。転校生…ほむらとは直接話してないけど、まどかの友達です」
マミ「私は巴マミ。見滝原中学の3年生よ」
まどか「わ、先輩ですか…よろしくお願いします、巴先輩」
マミ「ふふ、名前で呼んでくれていいわよ?」
さやか「えっと、それじゃ…よろしくお願いします、マミさん」
マミ「よろしくね、2人とも」
まどか「それでマミさん、ひとつ聞きたいんですけど……」
マミ「何かしら?」
まどか「そこにいる白い動物、何ですか?」
QB「はじめまして、鹿目まどか、美樹さやか」
さやか「うおっ、喋った!」
まどか「び、びっくりした……」
QB「僕の名前はキュゥべえ」
QB「僕と契約して、魔法少女になってほしいんだ!」
まどか「魔法…少女?」
マミ「あなたたち、キュゥべえが見えているのよね。それなら、ちゃんと説明したほうがよさそうね……」
マミ「私の家で説明するわ。いいかしら?」
まどか「あ、はい!」
さやか「お、お願いします!」
ほむら「……」
まどか「ほら、ほむらちゃんも行こうよ」
ほむら「え、えぇ……」
結局、まどかとインキュベーターを接触させてしまった
あのときどうしてアイツを始末しなかったのか…私にもわからない
でも奴を助けたことによって、巴マミとは敵対せずに済んだ。それでよしとしよう
今はとりあえず、彼女たちについて行くことにした
――翌日――
マミ「それじゃ魔法少女体験ツアー、始めるわよ」
まどか「ほむらちゃん、マミさん、よろしくお願いします!」
さやか「よろしくお願いします!」
ほむら「はぁ……」
まどか「ほむらちゃん、どうしたの?また具合悪いの?」
ほむら「いえ…何でもないわ……」
昨日巴マミの家で聞いた魔法少女の話
基本的にはインキュベーターが言うような内容の話だった
その話の中で、例の魔法少女体験ツアーの話になったときに
私もそれに参加してほしい、と頼まれてしまった
正直あまり気は進まなかったが、まどかを守る為にも仕方なく参加することにした
そして今、私たちは薔薇園の魔女の結界の前にいる
マミ「それじゃみんな、行くわよ」
まどか「はい!」
さやか「よっしゃー!」
ほむら「はぁ……」
――結界内――
マミ「はっ!」
使い魔「!!」
マミ「やっ!」
使い魔「!!」
マミ「それっ!」
使い魔「!!」
さやか「うーん、マミさんの戦い方、優雅だなぁ……」
まどか「そうだねぇ」
さやか「それに比べて向こうは……」
私へと向かって来る使い魔へ機関銃の銃口を向け、引き金を引く
発砲炎が噴き上がり、撃ち出された弾丸の嵐が使い魔たちを一掃していく
そして、最後の使い魔を撃ち抜いて引き金から指を離したとき
美樹さやかの、私への感想が聞こえた
さやか「……どこが魔法なんだ、って話だよ……」
まどか「だ、ダメだよそんなこと言っちゃ……」
ほむら「聞こえてるわよ。悪かったわね……」
まどか「ご、ごめんね」
マミ「……どうやら、魔女はこの奥みたいね」
ほむら「私は2人の防御に付くわ。魔女との戦闘はあなたに任せていいかしら」
マミ「えぇ、わかったわ。2人をお願いするわね」
まどか「ほむらちゃん、よろしくね」
ほむら「えぇ、任せなさい」
マミ「それじゃ、行くわよ」
魔女「……」
マミ「あれが…魔女よ」
さやか「うわ、何かグロいなぁ……」
まどか「ほむらちゃんとマミさんは、いつもあんなのと戦ってるの?」
ほむら「えぇ、そうよ」
さやか「でも、あんな大きい相手にどうやって戦うの?」
ほむら「どうもこうも普通に……」
マミ「そこで使うのが、魔法少女のもうひとつの力よ」
さやか「もうひとつの力?」
マミ「そうよ。魔法少女には2つの力があるの。ひとつは願いに応じた魔法。私の場合ならリボンになるわね」
マミ「そして、魔法少女のもうひとつの力……」
もうひとつの力……?
少なくとも私は、願いに応じた固有魔法以外は聞いたことがない
そんな疑問を抱いていると巴マミが右手を翳す
その掌の中には、どういうわけかソウルジェムが浮かび上がっていた
浮かび上がったソウルジェムを握りつぶすと同時に、何かの名を叫んだ
マミ「キャンデロロ!!」
ロロ「……」
マミ「さぁ、行くわよ!」
ほむら「な……!」
それを見たとき、私は自分の目を疑った
巴マミの背後に現れたそれは
紛れもなく、彼女の魔女化したときの魔女だった
巴マミの魔女化した姿…おめかしの魔女はごく小さい姿だったはずだが、このおめかしの魔女は巴マミより少し大きい程度の大きさをしていた
それに、彼女が握りつぶしたあのソウルジェムは何だったのだろうか。ソウルジェムは私たちの魂のはずでは……
この時間軸…今までと何かが違うようだ
魔女「……!」
マミ「まずは…これでっ!」
巴マミは召喚したマスケット銃を構え、魔女へ向かって引き金を引く
発射された弾は魔女へ命中したようだが、威力が足りないのかあまりダメージを受けていないようだ
マミ「……私の攻撃じゃダメね」
魔女「……!」
魔女は巴マミへ向けて蔓を思いきり叩きつける
だが、その蔓の攻撃を巴マミの魔女がリボンのような腕で器用に受け止めた
マミ「それなら…ロロ、行くわよ!」
そう言うと、リボンのような両腕がマスケット銃へと形を変える
まさか彼女は、あの魔女を意のままに操っているとでも言うのだろうか
そんなことを考えていると、発砲音が聞こえた
どうやら巴マミが薔薇園の魔女へ攻撃を仕掛けたようだ
魔女「……!」
マミ「やっぱり魔女には魔女ね、これなら……!」
魔女「……」
マミ「無駄よ…拘束!」
魔女「……!」
マミ「ロロ、トドメよ!」
マスケット銃だった巴マミの魔女の両腕が再び形を変える
現れたのは、彼女の必殺の一撃の為の大砲。そして
マミ「ティロ……」
マミ「フィナーレ!!」
ロロ「……!」
彼女の号令と共に放たれた砲撃は真っ直ぐに飛んでいき、魔女を貫く
身体に風穴を開けられた魔女は、もうそこに存在していることができなくなったのかボロボロと崩れていった
さやか「すげー!マミさんカッコいい!」
まどか「ほんとに、あの大きいの…倒しちゃった」
ほむら「……」
この時間軸の魔法少女、私の知っている魔法少女とは違う
魔女化したときの魔女を使うだけでなく、彼女の必殺の砲撃もその魔女が大砲を作り、そこから発射している
本当に、あの魔女を自らの手足のように操っているのだろうか
とにかくわからないことが多すぎる。もっと詳しい話を巴マミから聞いたほうがよさそうだ
その巴マミは魔女が落としたグリーフシードを拾い上げ、私たちのところへと戻って来ていた
マミ「ふぅ、こんなところかしらね」
さやか「マミさん、何ですか今の!」
マミ「今の?……あぁ、私の魔女のこと?」
まどか「え?でも魔女って、今倒した……」
マミ「えぇ、そうよ。魔女を倒すために、こちらも魔女の力を借りているってわけ」
さやか「それってどういう……?」
マミ「昨日はその説明を省いちゃったから…私の家で詳しい話をすることにするわね」
――マミの家――
マミ「……さて。それじゃあ魔法少女のもうひとつの力、魔女の話をするわね」
QB「昨日まとめて説明すればよかったんじゃないのかい?」
マミ「難しい話を1度にしても覚えきれないでしょう?」
さやか「やっぱり、あれも魔女なんですか?」
マミ「えぇ。……でもどうしたものかしら、敵も私も魔女だとややこしいわね…別の呼び方を……」
ほむら「呼び方は何だっていいわ。それよりも説明を」
マミ「暁美さんだって魔法少女じゃ…まぁいいわ。見てくれたからわかると思うけど、あれは私が召喚した魔女よ」
まどか「召喚って……?」
マミ「キュゥべえが言うには、あの魔女は自分の中にいるもうひとりの自分ってことらしいの」
ほむら「もう1人の……」
まどか「ほむらちゃん……?」
ほむら「あ…何でもないわ。続けて」
マミ「私たち魔法少女は、キュゥべえと契約することによって始めて魔法少女となる。これは昨日言ったわよね」
まどか「はい、願いを何でもひとつ叶えてくれるって」
さやか「金銀財宝とか、不老不死とか、満漢全席とか考えたんだけど……」
まどか「さやかちゃん、最後のはちょっと……」
QB「叶えてあげられるのは契約時にひとつだけだから、よく考えた方がいいと思うよ」
マミ「話を戻すわね。キュゥべえと契約することによって、魔法少女となる。そのときの願いで、おおよその固有魔法が決まってくるの」
マミ「そして、それと同時にもうひとつの能力…魔女の召喚が行えるようになる」
マミ「さっきも言ったけど、召喚した魔女はもうひとりの自分。そのもう1人の自分の力を借りる…そう言った方がいいかしらね」
マミ「魔法少女になることでそのもうひとりの自分を呼び覚まし、自身の力にする。こんな感じでいいかしら」
まどか「何だか複雑だなぁ……」
マミ「魔法少女の力は固有魔法と魔女の召喚。それだけ覚えておいてくれたら大丈夫よ」
さやか「それにしてももうひとりの自分かぁ…なんだか漫画やゲームみたいな話ですねぇ……」
マミ「言いたいことはわかるわ。私も実際魔法少女なんてものが実在するとは思わなかったわけだし」
ほむら「……知らなければ知らなかったで、何の不都合も無いとは思うけど」
まどか「うーん…でも、わたしがキュゥべえの声に気づいたから、ほむらちゃんともこうしていられるんだと思うし……」
まどか「それに、もし気づかなかったらマミさんとも知り合えなかったと思うんだ」
QB「結果としてはほむらとマミに助けてもらえたけど…来てくれてありがとう、まどか」
ほむら「……」
マミ「……あ、そうそう。ここからはとても大事なこと。ちゃんと聞いてね」
まどか「……?わかりました」
マミ「この魔法少女というものだけど…とても危険なことなの」
マミ「魔女と戦うこともそうだけど、自分の魔女を使役することも…ね」
QB「姿形は違えど、あの魔女も君たち自身なんだ。自分の内にいるもうひとりの自分を引きずり出して戦う……」
QB「それだけで精神に大きな負担となる。自分で自分を操っているようなものだからね」
マミ「魔女は自分自身の精神や感情に影響されやすいの。不安や猜疑心、怒り、憎しみといった気持ちがあると、途端に不安定になる」
マミ「そして、自分で自分を制御できなくなったとき…魔女は暴走を引き起こす」
マミ「それだけに…魔法少女には自分で自分を律する覚悟が必要なの」
さやか「マジですか……」
まどか「……怖いんですね、魔法少女って」
ほむら「……」
巴マミの話を聞いて、この時間軸の魔法少女と魔女の関係はある程度理解できた
だが、やはり私の知る魔法少女とは大きくかけ離れていた
それに、さっきのもうひとりの自分が魔女という話…どうにも引っかかる
ひとつ前の時間のまどかともうひとりの自分が云々…という話をしたが、それとはまた違う
ここに来る以前にどこかで誰かと話をしたような気がする。自分の中の自分…私の心を見透かしたような誰かと
だが、いくら思い出そうとしても何も思い出すことはできなかった
まどか「ほむらちゃん?さっきから難しい顔してるけど、どうしたの?」
ほむら「……あ、いえ。何でもないわ」
さやか「そう言えばほむらも魔法少女だけど、どんな魔女を使うの?」
ほむら「私は……」
マミ「とにかく、魔女についての話はおしまい。今の話を聞いて、それでも魔法少女になると覚悟できたのなら……」
マミ「その時は一緒に戦ってくれる仲間として、歓迎するわ」
まどか「うーん…今はまだ…かな」
さやか「あたしも。……今はまだ、先輩と後輩として仲良くしてください、マミさん」
マミ「えぇ、わかったわ。いつでも遊びに来てね」
さやか「ありがとうございます。……それじゃ、そろそろ帰ろっか、まどか」
まどか「うん、そうだね。ほむらちゃんは?」
ほむら「……少し聞きたいことがあるの。魔法少女のことで」
さやか「じゃあ、あたしたちは先に帰るね。マミさん、おじゃましました」
マミ「……それで、私とキュゥべえに聞きたいことって?」
この時間軸の魔法少女は私とは違う魔法少女
もう少し踏み込んだ話がしたいと思い、巴マミとインキュベーターに聞いてみることにした
ほむら「……これからおかしなことを聞くかもしれないけど…正直に答えてほしいの」
マミ「……?わかったわ」
ほむら「まず最初に…あの掌に浮かび上がったソウルジェムは一体何なの?どうしてソウルジェムを握りつぶして生きているの?」
マミ「え?だってあれが魔女の召喚方法だし……」
QB「あれ以外の方法で召喚すると、召喚した魔女が不安定になりやすいからね」
ほむら「……キュゥべえ、ソウルジェムの真実…話して頂戴」
QB「真実と言われても…君が何を訊きたいのか、さっぱりわからないよ」
ほむら「……私たち魔法少女の本体は、このソウルジェムじゃないの?」
QB「君は何を言っているんだい?ソウルジェムは僕との契約の証、そして魔女の召喚器でしかないよ」
ほむら「ソウルジェムが肉体操作をしていたり、魔法を使う度にソウルジェムが濁るということは?」
QB「肉体操作というのはわけがわからない質問だね。ソウルジェムが濁るというのは事実だけど……」
QB「濁りの程度と精神状態にもよるけど、一晩休めば大抵はよくなるはずだよ」
ほむら「それは…ソウルジェムが砕けたり、濁りきっても…死ぬことはないと……?」
QB「ソウルジェムが濁りきるのはあんまりよくないことだけど…それが直接の死因にはならないね」
インキュベーターの話が本当なら、今までの魔法少女の真実というものが全てなくなっている
むしろ、魔法を使い、魔女を召喚することのできる人間という印象さえある
それに、ソウルジェムが従来のように濁らないというのなら…もうひとつ、聞いてみることにした
ほむら「……グリーフシードというものは知ってるわね?」
マミ「グリーフシード…確か魔女の元となる、魔女の種だったわね」
QB「うん。魔女を倒したときに落とすものだね」
ほむら「それの使い道って……」
QB「僕がある目的の為に集めているものだよ。他に用途はないはずだけど……」
どうやらこの時間軸のグリーフシードにソウルジェムの穢れを浄化する力は無いようだ
なら、私はこれからどうしたらいいのだろうか。この時間軸の魔法少女でない私は……
QB「君が何を心配しているのかはわからないけど…ちょっとソウルジェムを見せてごらん」
ほむら「……わかったわ」
QB「それじゃ、ちょっと失礼するね。……うん、君もマミと同じ魔法少女じゃないか」
ほむら「え……?」
QB「でも変だね。僕には君と契約した記憶がないんだけど…どういうことなんだろう」
ほむら「私…あなたと同じ……?」
マミ「暁美さん、あなたも魔法少女でしょう?……記憶でも失っているのかしら」
QB「……うーん、やっぱり君と契約した記憶はないなぁ」
マミ「単純にキュゥべえがど忘れしてしまったってことは?」
QB「それはないと思うんだけどなぁ…まぁ何にせよ、魔法少女と言うのならマミに力を貸してあげてほしいんだ」
ほむら「巴マミと協力してくれと…そういうことかしら」
QB「うん、そういうことだね。それにマミと一緒なら、いつ魔女が召喚できるようになっても大丈夫だしね」
ソウルジェムを浄化する必要がないのなら、無理に魔女と戦うこともない
だが、それでは彼女の協力を取り付けることはできないだろう
インキュベーターの提案に乗るのも何だか複雑な気分だが、私は巴マミに手を貸すことにした
ほむら「……わかった。よろしくお願いするわ」
マミ「よろしくね。……さてと、それじゃそろそろ夕飯にしようかしらね。暁美さん、よかったらどうかしら」
ほむら「いえ…私もこれで失礼するわ」
マミ「そう?気をつけてね」
ほむら「えぇ。……それじゃ」
マミ「暁美さん、明日からよろしくね」
ほむら「……そうね、よろしく」
マミ「じゃあ、また明日ね」
ほむら「……また、明日」
QB「……今度は上手くやれるといいね」
マミ「……そうね」
ソウルジェムが砕けて死ぬことがない。濁りきって魔女になることもない
どうしてこんな時間軸に来てしまったのかはわからないが、これは大きなチャンスだ
いつもなら誰かしらが魔女になってしまうことを危惧していたが、その心配をする必要がなくなったのだ
なら、私が普段気を払うべきことはまどかの契約の阻止だけだ
いくら魔法少女が以前と違うものになっていたとしても、私はまどかに戦ってほしくない
まどかは、私が守る。その覚悟を取り交わしたはずだ
ほむら「……?覚悟を取り交わしたって…誰と……?」
ほむら「……とにかく、家に帰りましょう」
――数日後――
ほむら「……これで最後!」
使い魔「!!」
ほむら「……ふぅ。片付いたみたいね」
マミ「えぇ、お疲れさま。……それにしても」
マミ「まさかあなたの武器が実銃とは思わなかったわ」
ほむら「私には素質がないから…武器を生み出すことができない。だから……」
マミ「わかってるわ。魔女を召喚できるようになればいいのだけど、まだみたいね」
ほむら「えぇ、今のところは」
巴マミに手を貸して数日
今のところ魔女は現れず、使い魔の結界がいくつか現れた程度だ
そして、私の魔女の召喚も今のところそれができる様子もない
だが…魔女の召喚ということが、どうしても引っかかる。何かを忘れているような……
きっと、まだ魔女を召喚するということがしっくり来ないせいだろう
マミ「……それじゃ、今日のところは帰りましょうか」
ほむら「えぇ。それじゃマミ、また明日」
マミ「ふふ、最初は巴マミなんてフルネームで呼んでたのにね」
ほむら「……うるさいわね」
マミ「それじゃあ暁美さん、また明日」
――翌日 放課後――
まどか「ほむらちゃん、さやかちゃん、今日これからって空いてる?」
さやか「ん?あたしらに何か用事?」
まどか「うん。わたしの家でほむらちゃんの歓迎会をしようかなって」
さやか「お、いいじゃんそれ」
まどか「それで、今日空いてる?」
ほむら「私は構わないわ」
さやか「本当は恭介のお見舞いに行くつもりだったんだけど…ま、いいか」
まどか「さやかちゃん、いいの?」
さやか「いいの。あっちはいつでも行けるんだからさ」
まどか「ありがとう、さやかちゃん」
さやか「いいってことよ。……そう言えば、ほむらはまどかの家は初めてだっけ」
ほむら「……えぇ、そうね」
まどか「じゃあ案内するね」
ほむら「お願いするわ」
さやか「よーし、それじゃ行くかー」
――――――
まどか「……それじゃあ、ほむらちゃんの歓迎会を始めます」
さやか「いえーい!」
ほむら「え、えっと……」
さやか「ほむらはこういうのに慣れてないの?」
ほむら「えぇ……」
さやか「そっか…まぁ、少しずつ慣れていけばいいよ」
ほむら「そうね…まどか、私の為にありがとう」
まどか「気にしないで、わたしがやりたいって思ったことだから」
まどか「それに…わたし、もっとほむらちゃんと仲良くなりたいし」
ほむら「まどか……」
さやか「……思ってたんだけどさ、ほむらってまどかにだけ態度が違わない?」
まどか「え?」
さやか「いやさ、あたしとマミさんはついこの間までフルネームだったのに、まどかだけは初日から名前で呼んでたし」
ほむら「それは……」
さやか「……ほむら、あんたもしかして…まどかの嫁になりたい、とか?」
ほむら「は……?」
さやか「でも残念でした!まどかはこのさやかちゃんの嫁になるんだからね!」
まどか「もー、さやかちゃんまたそんなこと言って…ごめんねほむらちゃん。さやかちゃんの冗談だから」
ほむら「え、えぇ……」
さやか「……ごめん、ちょっとお手洗い行ってくるよ」
まどか「うん、わかった」
さやか「そんじゃ、しばらくはお2人だけでどうぞごゆっくりー」
そう言ってさやかは部屋を出て行ってしまった
部屋にいるのは、私とまどかの2人だけ
何を話したものかと考えていると、まどかの方から話しかけてきた
まどか「……ねぇ、ほむらちゃん。ちょっと相談があるんだけど」
ほむら「相談……?私に?」
まどか「うん…こんなこと、ほむらちゃんにしか話せないし」
私にしか話せない相談…となると、魔法少女についてのことだろう
この時間軸の魔法少女のことは話で聞いた以上のことはわからないが、とにかくまどかの話を聞いてみることにした
まどか「……わたしね、魔法少女になろうかなって…そう考えてるんだ」
ほむら「……」
まどか「わたし、得意なことも、自慢できることもなくて…ずっとそのことを悩んでたの」
まどか「でも、こんなわたしでも魔法少女になって、みんなを守れる…ほむらちゃんとマミさんの力になれるのなら……」
ほむら「やめておきなさい」
まどか「え……」
ほむら「魔法少女なんて…碌なものじゃないわ」
まどか「で、でも……」
ほむら「私たちの力になりたいと思ってくれているのは…嬉しいわ」
ほむら「……だけど、魔法少女になってしまったら…一生、その呪縛から逃れられなくなる」
ほむら「魔法少女が素敵なのは、漫画とアニメの中だけ。現実の魔法少女は…悲惨なだけよ」
まどか「……じゃあ、ほむらちゃんはどうして魔法少女になったの?」
ほむら「私は…そうしなければならなかったから。そうしなければ…何よりも大事なものを失ってしまうから」
まどか「何よりも…大事なもの……」
ほむら「魔法少女なんて、ならずに済めばそれに越したことはないの。……魔法少女にならずとも、まどかにはできることがあるはずよ」
まどか「……」
ほむら「だから、私はあなたには…魔法少女になってほしくない。それだけはわかってほしい」
まどか「……うん、わかった。わたし、魔法少女には…ならないよ」
ほむら「……ありがとう、まどか」
まどかを説得し、何とか考えを改めさせることができた
効果があるかわからないが、さやかにも念の為に話をしておいた方がよさそうだ
まどか「ほむらちゃん…ありがとう。話、聞いてくれて」
ほむら「……別に大したことはしてないわ」
まどか「わたし…探してみるよ。魔法少女にならなくても、自分にできることを」
ほむら「……そうね。必ず見つかるはずよ」
さやか「ただいまっと」
まどか「あ…おかえり、さやかちゃん」
さやか「それで、あたしがいない間2人は何の話で盛り上がってた?」
まどか「え?えっと……」
ほむら「まどかの部屋はこう…女の子らしくていいわねって話を」
さやか「……そんな話してたの?」
ほむら「……悪い?」
まどか「ほ、ほむらちゃんの家も見てみたいなぁ。今度、連れて行ってよ」
ほむら「……面白いものじゃないわよ。何もないし……」
まどか「うん、それでもいいよ」
さやか「あたしも気になるなぁ、ほむらの家」
ほむら「そこまで言うなら…今度招待するわ」
まどか「楽しみだなぁ…ありがとう、ほむらちゃん」
さやかが急に戻ってきたせいか、咄嗟に嘘の話題を言ってしまった。別に隠す必要もないと思うのだが
さっきの、魔法少女にならないでほしいという話をさやかにもしようと思い、口を開きかけたそのとき
私の携帯が鳴り響いた
ほむら「あら…マミから?どうしたのかしら……」
ほむら「……マミ?何か用かしら?」
マミ『あ、暁美さん!病院の入り口で結界の入り口を見つけたの!手を貸して!』
ほむら「……!わかった、すぐそっちへ向かうわ」
マミ『私は先行して中に入るわ!目印にキュゥべえを外に置いておくから、なるべく早く来てね!』
ほむら「えぇ。それじゃまた後で」
まどか「ほむらちゃん?どうしたの?」
ほむら「病院に魔女が現れたらしいの。……悪いけど、私はこれで失礼するわね」
さやか「病院って…恭介は大丈夫なの!?」
ほむら「病院の人たちに何もないように、私たちが行くのよ。2人は大人しく待っていて頂戴」
まどか「う、うん」
さやか「あたしも行くよ!恭介のことが心配だよ!」
ほむら「……結界の中には入らないで。いい?」
さやか「わかってる!ほむら、急ごう!」
ほむら「えぇ。……じゃあまどか、今日はこれで」
まどか「あ、うん。……気をつけてね」
ほむら「……ありがとう。行って来るわね」
――――――
QB「……あ、ほむら。こっちだよ」
病院前に到着すると、私を待っていたインキュベーターが声をかけてきた
インキュベーターの背後には結界の入り口が口を開けていた
ほむら「これね…それじゃ、私もすぐに行くわ」
さやか「あたし、恭介のところに行ってくる!」
ほむら「えぇ、そうしなさい。病院に影響が出る前に始末するわ」
さやか「うん…頼んだよ……!」
QB「気をつけてね」
さやか「……あたしは恭介のところに!」
さやか「恭介!」
恭介「わっ…何だ、さやかじゃないか。病院では静かにしないと駄目だよ」
さやか「あ…うん、そうだね。ごめん」
恭介「それで、今日はどうしたんだい?お見舞いにしては随分と遅かったけど……」
さやか「あー、えっと、それは……」
さやか(本当のことを言うわけにも…えぇい、こうなりゃ……)
さやか「きゅ、急に恭介に会いたくなっちゃってさ…それで、来てみたんだ」
恭介「え……」
さやか「……だ、ダメだったかな」
恭介「……そんなことないよ。ありがとう、さやか」
さやか「そ、そう?よかった、へへ……」
さやか(ほむら、マミさん…頑張って……!)
――結界内――
ほむら「マミ!」
マミ「来てくれてありがとう、暁美さん」
ほむら「それよりも、魔女は?」
マミ「幸い、まだ実体化してないみたいね」
ほむら「……そう言えば、あなたはどうしてこの結界を?」
マミ「いつものようにパトロールしてたら見つけたのよ。何となく、今日はこっちを探してみようと思って」
ほむら「……あなたの魔女で捜索をかけたら確実に見つけられるのでは?」
マミ「魔女は結界の中でしか使えないのよ。魔女だから仕方ないと思うけど」
ほむら「そう…だったかしら」
マミ「本当に何も知らないのね。……っと、そろそろ実体化するみたいね。やるわよ!」
ほむら「えぇ、わかってる……!」
部屋の中央からグリーフシードが浮かび上がり、そのまま宙に浮いていく
そして、グリーフシードを中心に魔女の身体が構築されていった
先ほどのマミの言葉…何のことかと思っていたが、確かにこれは孵化と呼べるものではない。実体化、召喚…そんな感じがした
だが、どうもおかしい。いつもなら魔女の外面のぬいぐるみのような奴がいるはずなのに
どういうわけか、そこに現れたのは中にいる本体の方だった
魔女「……」
マミ「暁美さんは後方支援を。まずは私が行くわ」
ほむら「えぇ、わかった」
マミ「……出なさい、キャンデロロ!!」
ロロ「……」
マミ「さぁ…私とロロの攻撃……!」
マミ「受けてみなさい!」
マミは手の中にマスケット銃を召喚すると、魔女へ向けて発砲する
それと同時に彼女の魔女…キャンデロロも腕部をマスケット銃に形を変え、魔女へと攻撃を開始した
魔女「……!」
マミ「これなら…一気に……!」
ほむら「次は私が行くわ」
マミ「え、ちょっと……!」
魔女「……」
ほむら「この時間の魔女相手に、どこまで戦えるか……」
ほむら「……これで!」
私は盾から機関銃を引っ張り出すと、魔女に狙いをつけ引き金を引く
倒せるとまでは行かないが、どうやら私の現代兵器による攻撃でも一定の効果はあるようだ
魔女「……!」
ほむら「ちゃんと効果はあるみたいね…なら、このまま……!」
マミ「ロロで援護するわ!」
ロロ「……!」
ほむら「助かるわ!……私たちの攻撃、いつまで耐えられるかしら!?」
そう言って、私とマミは魔女へ集中砲火を浴びせる
だが、敵もしぶとくこちらの攻撃をただじっと耐えていた
マミ「……埒が明かないわね、こうなったら一気に……!」
ほむら「待ちなさい、迂闊よ!」
一向に魔女を倒せないことに痺れを切らしたのか、マミが魔女へ向かって突っ走った
今のマミはあまりに無防備だ。敵もそれを見逃すほど甘くはない
蛇のような巨躯をマミへ向けて思い切り伸ばす。そして
マミの眼前で、その大口を開いた
魔女「……!」
マミ「あ…っ……」
ほむら「……っ!」
マミの目の前に魔女が迫った瞬間、私は考えるよりも先に時間停止を発動させる
その甲斐あって魔女に食らいつかれる寸前で、時間を止めることに成功した
ただ、当然マミの時間も止まってしまっている
ほむら「……ふぅ。さて、と」
指定者の時間は止めないなんて応用ができれば便利なのだが、できないことを言っても仕方がない
マミを退避させるついでと、魔女の口の中へ爆弾を放り込む
そして、安全な場所まで退避が完了したところで時間停止を解除する
解除したその瞬間、魔女の口に放り込んだ爆弾が炸裂し、轟音を響かせた
マミ「……あ、あら?私……」
ほむら「いくらなんでも迂闊すぎるわ。気をつけなさい」
マミ「暁美さん、あなたが私を……?」
ほむら「えぇ、私の魔法であなたを助けた。……それよりも、また来るわよ」
魔女「……!」
ほむら「……さすがに体内からの攻撃には弱いようね」
先ほど放り込んだ爆弾で、思った以上のダメージを与えることができたようだ
もう1度時間を止めて爆弾を放り込んでやろうかと、盾に手をかけたところで
後ろにいたはずのマミが、いつの間にか私の目の前に立っていた
マミ「……今のを見る限り、弱点は身体の中ということになるわね」
ほむら「……恐らくはね。あとは私に任せて……」
マミ「いえ、私がやるわ。今の借りも返さないといけないし」
ほむら「なら…任せたわ」
マミ「ありがとう。……それじゃ、行くわよ!」
そう言うと、マミは両手にマスケット銃を構え、魔女へ向けて発砲する
だがその弾は命中することなく、後ろの壁にめり込んだ
マミ「これで……!」
ほむら「マミ!命中してないわ、戻りなさい!」
外れたのが見えていないのか、再度魔女へ向かって走って行く
それと同時に、魔女もマミへ向けてその身体を延ばす
また同じことの繰り返しかと思ったそのとき
マミの放った弾からリボンが伸び、魔女の身体を締め上げた
ほむら「あなた、まさかこの為に……」
マミ「そう何度も同じ目に遭うわけないでしょう?こう見えてもベテランなのよ、私」
マミの目の前まで迫った魔女は、彼女に食らいつこうと大口を開けてもがいている
だが、リボンで雁字搦めにされた今は、もう成す術など何もなかった
マミ「私に食らいつこうなんて、10年早いのよ」
ほむら「……最初、私が助けてなかったら食らいつかれてたと思うけど」
マミ「そ、それは…とにかく、これでトドメ……!」
マミ「行くわよ、キャンデロロ!!」
マミがそう言うと、彼女の魔女…キャンデロロの両腕が大砲へと形を変える
魔女の口内へ狙いを定め、そして……
マミ「ティロ・フィナーレ!!」
魔女「!!」
放たれた砲撃は口から尻尾へと縦一直線に魔女の身体を貫く
マミの攻撃を受けた魔女はボロボロと崩れていき、やがてグリーフシードがカランと地面に落ちた
ほむら「……何とか倒したわね」
マミ「そうね。……今回はごめんなさい、私……」
ほむら「気にすることはないわ。ただ、次からは気をつけて」
マミ「えぇ。……それじゃ、グリーフシードを回収して外に出ましょうか」
――――――
QB「……あ、マミ、ほむら」
さやか「よかった…2人が無事で……」
マミ「あら、美樹さん?」
ほむら「彼女の好きな人がここに入院してて、魔女が出たと聞いて心配になって様子を見に来たのよ」
さやか「ちょっ!?何を言ってんのよあんたは!?」
マミ「あらあら、そうだったの。でももう大丈夫よ、魔女は倒したから」
さやか「あ…ありがとうございます、マミさん」
QB「それでマミ、グリーフシードは……」
マミ「ちゃんと回収してきたわ。はい」
QB「ありがとう。それじゃ早速……」
さやか「……背中が開いて、食べちゃった」
QB「……これはお菓子の魔女、性質は執着…か」
さやか「それ、今2人が戦った魔女のグリーフシード?」
QB「うん。グリーフシードにはこういう魔女の情報が入っているんだ」
さやか「ふーん…まぁ無事魔女を倒せたのなら、そろそろ帰ろうよ」
ほむら「そうね…さやかはもういいの?」
さやか「うん…2人が戦ってると思うと気が気じゃなくてね。そしたら……」
さやか「今日のさやかは何だか静かだね。でも、たまにはいいかもね…とか言われちゃって……」
さやか「何だか急に恥ずかしくなって、逃げるように出て来たところなんだよ……」
マミ「その子と上手くいくといいわねぇ……」
さやか「はい…じゃなくてですね、あたしはあいつとは別に……」
ほむら「私はこのまま帰るわ。それじゃ、また」
さやか「ほむら、まどかにちゃんと連絡してやりなよ。心配してるだろうからさ」
ほむら「そうね…家に着いたら連絡しておくわ」
マミ「じゃあ暁美さん、またね。今日はありがとう」
さやか「あ、マミさん。少し相談があるんですが……」
家へ帰る途中、この時間軸の魔法少女と魔女について考える
魔女を倒すために、もうひとりの自分…魔女の力を借り、自らの力とする
そしてそれが、魔法少女の契約によって可能になるということ
何度考えてもわけのわからない時間軸だ。まさか魔女を使役するだなんて……
別の時間からやってきた私にはできない芸当だ
だが、以前インキュベーターにソウルジェムを見せたとき、言われたはずだ。マミと同じ魔法少女だと
それはつまり、私にも可能だということなのだろうか
何にせよ、魔女がいるというのなら必ず奴も…ワルプルギスの夜も現れるということだろう
どんな時間軸だろうが、私のやることはひとつだけ
まどかを守り、まどかとの約束を果たす。ただ、それだけだ
――――――
???『……また会ったわね』
???『巴マミと協力し、彼女を守ることができた。……ここまでは順調ね』
???『だけど、まだこれからよ。美樹さやかの契約がそろそろ近づいている』
???『そして、近いうちに彼女もまた動き出すでしょうね』
???『何にせよ、あなたは私と覚悟の契約をした。その契約が成就するよう……』
???『あなたの内から祈ってるわ……』
――――――
『……ら…ほむら……』
ほむら「ん……」
さやか「ほーむーら!おーきーろ!」
ほむら「……あら、私……」
まどか「おはよう、ほむらちゃん」
ほむら「えぇ…おはよう、まどか……。もしかして、私…寝てた……?」
さやか「もしかしなくても寝てたよ。ホームルーム中ずっと船漕いでたけど、ものの数分で寝てるとは思わなかったよ」
まどか「ほむらちゃん、疲れてるの?」
ほむら「いえ、それは大丈夫だと思うけど…それよりも、何か夢を見ていたような気が……」
まどか「夢?」
ほむら「えぇ、でも…忘れてしまったみたい。思い出せないわ」
ほむら「……そう言えば、わざわざ起こしてくれたところを見ると、私に何か用かしら?」
まどか「あ、うん。この前のほむらちゃんの歓迎会したときに話したでしょ?ほむらちゃんの家、行ってみたいって」
まどか「それで、今日遊びに行きたいなって思って」
ほむら「今日?随分と急ね」
さやか「都合悪かった?別の日でもいいけど……」
ほむら「……いえ、構わないわ。以前も言ったけど、つまらないところよ」
まどか「いいんだよ、ほむらちゃんの家に遊びに行くってことが大事なんだから」
ほむら「……それじゃ、案内するわね」
まどか「楽しみだなぁ、ほむらちゃんの家」
――――――
ほむら「……ここが私の家よ」
まどか「ここかぁ…素敵な家だね」
ほむら「そうかしら……?」
さやか「ここに1人で住んでるんでしょ?寂しくない?」
ほむら「もう慣れたわ」
マミ「何だか悪いわね、私まで誘ってもらっちゃって」
さやか「気にしないでくださいよ。多い方が楽しいじゃないですか」
ほむら「それじゃ…中へどうぞ」
まどか「ほむらちゃん、おじゃまします」
先日の約束通り、私の家へみんなを招待することにした
まどかとさやか、そして途中で会ったマミを家へと上げる
だが、いつも使っているワルプルギスの夜の資料を纏めた部屋へ入れるわけにも行かない
この情報はまだ伝えるべきではない。なんとなく、そんな気がした
なので、何の変哲もない普通の部屋へとみんなを通した
まどか「面白くないって言ってたけど…そんなことないんじゃないかなぁ」
ほむら「まどかの部屋のように女の子らしくもないし、マミの部屋のように内装に凝ってるわけでもないし……」
まどか「でも、わたしは素敵だと思うよ。ほむらちゃんらしい、落ち着いた部屋で」
ほむら「……ありがとう、まどか」
マミ「そうね…私も素敵だと思うわ」
さやか「あたしはダメだなー。なーんか落ち着かない……」
ほむら「ならお茶飲んでさっさと帰りなさい」
さやか「ごめん、ウソだって」
ほむら「……それで、今日は何をするつもりなの?」
まどか「あ…ごめんね、ほむらちゃんの家に遊びに行くことしか考えてなくて、その先は……」
ほむら「考えてなかったってわけね…さて、どうしましょうか」
マミ「何をするでもなく、お喋りしてるだけでもいいんじゃないかしら?」
まどか「それじゃ、今日はみんなでのんびりお喋りでもしようよ。ね、ほむらちゃん」
ほむら「私は……」
まどか「……ほむらちゃん、魔女や使い魔と戦って、きっと疲れてるんだよ。だから放課後、眠っちゃったんだと思う」
まどか「だから今日くらい、ゆっくりしていようよ」
ほむら「……まどかがそこまで言うなら」
疲れて眠ってしまったわけではないと思うが、どうやらまどかはそう思ってしまっているようだ
まどかなりの私への気遣いを無碍にするわけにもいかず、私はその提案を受け入れることにした
さやか「……相変わらず、まどかが相手だと甘いねぇ、ほむらは。あたし相手じゃ絶対こうはいかないよね」
ほむら「いいことを教えてあげる。日頃の行いって、とても大事だと思うわ」
さやか「……何も言い返せない」
マミ「でも2人が仲良しでいいことじゃない。そうでしょう?」
さやか「そうなんですけど…やっぱり不思議なんですよ。どうしてこの短期間であんな仲良くなれるのかって」
まどか「あの、そのことなんだけどね……」
ほむら「まどか?」
まどか「わたし、ほむらちゃんを…夢の中で見たんだ」
さやか「……まどか、大丈夫?帰って寝る?」
まどか「う、嘘じゃないよ。ほむらちゃんが転校してくる前の日、夢でほむらちゃんを見たんだよ」
まどか「だからその夢のおかげも…少しだけあるかも。もちろん、わたしが仲良くなりたいって思ってるから、仲良くなれたんだと思うけど」
さやか「出会う前に夢で見て、その子が転校してきたねぇ……。あんたらきっと前世か何かで恋人同士だったんじゃないの?」
まどか「こ、恋人!?」
さやか「そうなんじゃないの?愛してるからこそ、時を超えて夢の中で再び出会うって感じで」
マミ「もしそうだとしたらとてもロマンチックね」
まどか「そ、そんなわけないですって!大体、わたしもほむらちゃんも女の子ですよ!?」
マミ「あら、もしかしたら前世は男女だったかもしれないわよ?」
まどか「もー!」
まどかの夢に私が出て来た…もしかして、時間遡行による何らかの影響だろうか
だけど、そのおかげでまどかと仲良くなれたのなら…少しだけその夢に感謝することにした
まどか「……ねぇ、ほむらちゃんからも何か言ってよ!」
ほむら「……あ、えっと……?」
まどか「さやかちゃんとマミさんがからかってくるの…わたしとほむらちゃんが前世で恋人だーって」
さやか「あたしの嫁が実はほむらの嫁だったなんて…あたしゃ悲しいよ」
ほむら「……いい加減にしておきなさい。まどかが困ってるでしょう」
さやか「ごめんなさい…謝るから、そんな睨みつけないで……」
ほむら「全く…それにしてもまどかと恋人同士だった、ね……」
ほむら「……私が釣り合うわけ、ないわ」
まどか「……?ほむらちゃん、何か言った?」
ほむら「……いえ、何も。それよりも、何か違う話題に……」
――――――
ほむら「……あら、もうこんな時間…そろそろ帰った方がいいんじゃないかしら?」
さやか「え?……あー、全然気がつかなかったな」
マミ「ついお喋りに夢中になってしまってたわね…今日はこれでお開きにしましょうか」
何をするでもなく、みんなとの会話を楽しむ
今までならそんなこと、絶対にしなかったと思う。……だけど
今はきっと…心に余裕があるおかげだと思う
1人で戦っているわけではないこと、魔女になることがないというのも要因のひとつ
だけど、1番はやはりまどかの側にいることによるものが大きいと思う
失敗続きで疲れきっていたはずの私の心も、まどかの側にいるだけで不思議と気持ちが楽になった
気を抜くわけではないが、たまにはこんなことがあっても構わないだろう
さやか「それじゃ、そろそろ帰りますか」
まどか「うん、そうだね」
マミ「それじゃ暁美さん、またね」
ほむら「えぇ、気をつけて帰りなさい」
そう言って、まどかたちは帰って行った
たった今までみんなと話していたせいか、私1人になってしまい、酷く寂しいと感じてしまった
それだけあのひとときが楽しかったのだろう
ほむら「……またまどかと話、してみたいわね」
――――――
さやか「……それで、まどかはほむらをどう思ってるの?」
まどか「どう、って……」
さやか「最近随分と仲がいいから、気になるんだよね」
まどか「うーん…ほむらちゃんともっと仲良くなりたいとは思ってるんだけど……」
まどか「考えてみると…ほむらちゃんのこと、知らないことが多いんだよね」
マミ「そうね…私は魔法少女としてだけど、気になる点があるわ」
マミ「前に聞いたときに口ごもった契約の理由。……まぁこれは話したくないのなら無理に聞き出すつもりはないんだけど」
マミ「それに暁美さん、見たところ随分長く魔法少女をやってるみたいだけど、魔女の召喚を知らなかったみたいだし……」
さやか「うーん…そう考えると秘密が多いなぁ、ほむらは」
まどか「だけど…きっといつか話してくれるよ。わたしはそう思ってる」
さやか「まどか…うん、そうだね。ほむらを信じて待ってみるか」
マミ「えぇ、そうね。それに何があっても彼女はもう、友達で、仲間なんだから」
さやか「さて、それじゃあたしとまどかは向こうなんで」
マミ「もう暗いから気を付けてね」
さやか「はい、マミさんも……」
まどか「……あれ?ねぇ、さやかちゃん」
さやか「うん?どした?」
まどか「あそこ歩いてるの、仁美ちゃんじゃない?」
さやか「仁美?今日も習い事で先に帰ったはずじゃ…ありゃ、ほんとだ」
マミ「お友達?」
まどか「はい、同じクラスの志筑仁美ちゃんです。あ、わたし、ちょっと声かけてくるよ」
さやか「話し込んで遅くなるなよー」
まどか「仁美ちゃーん」
仁美「あらぁ…鹿目さん、ご機嫌よう……」
まどか「……?仁美ちゃん、今日習い事じゃなかったの?」
仁美「そんなこと、もうどうでもいいんですの……。これから素晴らしい世界へ旅立つんですもの……」
まどか「仁美…ちゃん……?」
仁美「鹿目さんとここで会ったのも何かの縁…素晴らしい世界へ、鹿目さんを招待しますわ……」
まどか「仁美ちゃん、何を言って……」
さやか「まどか、どうかした?」
まどか「あ、さやかちゃん…仁美ちゃんの様子が……」
マミ「様子がおかしかったから来てみたんだけど、これは……」
仁美「美樹さんと…あら、こちらの方はどなたでしょう……」
マミ「私は巴マミ。見滝原中学の3年生よ」
仁美「そうでしたか…それではお2人も、招待しますわ……」
さやか「……一体どこに連れて行こうってのよ」
仁美「ふふ…今よりももっと素晴らしいところですわ……」
まどか「ま、マミさん、仁美ちゃん、どうしちゃったんですか?」
マミ「……恐らく魔女に操られているわ」
まどか「そんな……!元に戻るんですよね!?」
マミ「大丈夫、操っている魔女を倒せば元通りになるはずよ」
QB(マミ、聞こえるかい?)
マミ「あら、キュゥべえから……?」
マミ(キュゥべえ?どうしたの?)
QB(どうやら工場地帯に魔女が現れたみたいなんだ。すぐに向かってくれるかい?)
マミ(工場地帯ね、わかったわ。暁美さんに連絡は?)
QB(多分テレパシーの圏外に出ちゃったんじゃないかな。通じないんだ)
マミ(彼女への連絡はこちらでするわね)
マミ(わかった。僕も工場地帯へ向かうよ。それじゃ、また後で)
マミ「……これではっきりしたわね。この子、魔女に支配されてしまってるわ」
さやか「それじゃマミさん、早く魔女を……」
マミ「それなんだけど…この子に案内してもらおうかしら。間違いなく魔女のところまで連れて行ってくれるわ」
まどか「それは…大丈夫なんですか?」
マミ「絶対、守ってみせるから。それに、操られた人があちこちにいるより1ヶ所に集めた方が対処もしやすいわ」
まどか「……わかりました。マミさん、仁美ちゃんを助けてあげてください」
マミ「えぇ、わかってるわ。あなたたちは暁美さんに連絡したら、そのまま家に……」
さやか「……あたしたちも連れて行って下さい。マミさんと仁美が…心配なんです」
マミ「……わかったわ。志筑さん、だったわね?その素敵なところへ連れて行ってくれないかしら」
仁美「えぇ、勿論です…さぁ、こちらですわ……」
マミ「それじゃ…行きましょうか」
さやか「はい……!」
――工場内――
マミ「これは……」
さやか「すごい人数…これみんな魔女に操られた人たちなんですか……?」
マミ「えぇ、そうよ。……鹿目さん、暁美さんへ連絡は?」
まどか「すぐにこっちへ来てくれるそうです」
マミ「そう…さて、これだけ集めて何を始めるつもりかしら……」
さやか「さぁ…でも、もしマミさんや仁美が危なくなるようなら、あたし……」
マミ「待って。この間も言ったけど、結論はちゃんと出たの?」
さやか「そ、それは……」
マミ「結論が出ないうちは契約をするべきじゃないと思うわ。ゆっくり考えなさい」
さやか「はい……」
まどか「さやかちゃん……?」
さやか(あたしは……)
まどか「あれ…マミさん、何か始めるみたいで……」
まどか「ま、マミさん!あれ、あのバケツ!あれ、なんとかしないと!」
さやか「ま、まどか?」
まどか「今バケツに入れたのと、あの人が持ってるの、混ぜたらダメな奴だよ!」
マミ「どうやらこの魔女、この人たちを集団自殺させるつもりだったのね……」
さやか「と、とにかくあのバケツを何とかしないと……」
仁美「美樹さん…邪魔はしないでいただけます……?」
さやか「仁美!?何してんの、このままじゃあたしら全員……!」
仁美「えぇ、だからこそですわ。肉体という器を捨て、今よりも素晴らしい世界へ旅立てるのですから……」
さやか「わけわかんない…マミさん、あたしは大丈夫ですからバケツを!」
マミ「早くあのバケツを……!」
工場長「てめぇ、何する気……」
マミ「邪魔…しないで!」
工場長「うぐ……」
マミ「あとで解きますから!……それよりも、バケツをどうしたら……」
マミ「あれは…窓……?それなら……!」
マミ「こんな危ないもの…飛んでいきなさい!ティロ……!」
マミ「フィナーレ!!」
さやか「バケツ、窓の外に……!」
まどか「や、やった……!」
さやか「……やったけど…やってないみたい」
まどか「へ?さやかちゃん、それってどういう……」
仁美「……あなたたちは大変なことをしてくれましたね」
まどか「さやかちゃん…何だか操られた人たちの様子がおかしいよ……」
さやか「これは…もしかして怒ってる?邪魔されたから……」
まどか「ど、どうするの!?何だかすごい目でこっち見てるよ……」
マミ「2人とも、一旦逃げましょう!こっちよ!」
さやか「わかりました!まどか、行くよ!」
まどか「う、うん!」
さやか「……ふぅ、何とかなったかな」
マミ「そうね…そう言えば、結界はどこかしら?ここに集められたってことは、この辺りのはずだけど……」
QB「あれ、マミ。2人を連れて来たのかい?」
マミ「あら、キュゥべえ。そうなの、2人の友達が操られて……」
QB「それはいいんだけど、この部屋に入れたのはマズいよ……。結界、ここなんだ」
マミ「え……」
まどか「あ…結界が……!」
さやか「そんな…あたしたちは逃げ……」
QB「もう無理みたいだね……」
魔女「……」
使い魔「……」
マミ「……探す手間が省けたわね。わざわざお出迎えなんて」
マミ「2人とも、私の防御結界から絶対に出ないで!キュゥべえ、あとは頼んだわ!」
QB「わかったよ。マミ、頑張って」
まどか「マミさん、大丈夫だよね……」
さやか(あたし…どうしたらいいんだろ。あたしは、あいつのバイオリンが聴きたいだけ。でも……)
さやか(マミさんが言ってた…夢を叶えてほしいのか、その夢を叶えた恩人になりたいのか……)
さやか(見返りなんてなくたっていい…あいつのバイオリンが聴けて、ほむらとマミさんの力になれるのなら……)
まどか「さやかちゃん……?どうしたの?」
さやか「……何でもないよ」
使い魔「……」
マミ「結構な数の使い魔ね…ならこっちも最初から全力で行かせてもらうわ……!」
マミ「出なさい、キャンデ……」
使い魔「……!」
マミ「っく…召喚させないつもり……?」
使い魔「……!」
マミ「まず数を減らさないと…魔女がいなくたって戦える……!」
マミ「全部…叩き落としてあげるわ!」
使い魔「!!」
マミ「隙ができた……!今のうちに……」
マミ「……あら?魔女はどこに……」
さやか「マミさん!後ろっ!」
魔女「……」
マミ「……え?」
魔女「……!」
マミ「あ…う……!」
まどか「マミさん!」
さやか「マミさん、大丈夫ですか!?」
マミ「あ…いや、私……!」
マミ「お願い…置いて行かないで……!」
さやか「マミさん!?どうしたんですか!」
マミ「ごめ…なさい……」
まどか「マミさん、どうしちゃったの……?」
QB「恐らくだけど、精神攻撃を受けてしまったんじゃないかな。今のマミには何か違うものが見えているんだろう」
QB「だから今の現状が見えてないし、僕たちの声も届いていないんだ」
さやか「現状?……まずいよ、使い魔と魔女がこっちに……!」
QB「マミが戦闘不能になってしまったからね…当然と言えば当然だよ」
まどか「ほむらちゃん…早く来て……!」
さやか(……ほむらはいつ来るかわからない。マミさんは魔女の攻撃で戦闘不能……)
さやか(……あたしの覚悟はあとですればいい。今ここで2人を失ったら…きっと後悔する。だから……)
さやか「……キュゥべえ!あたし、契約するよ!」
まどか「え…さやかちゃん、何言って……」
さやか「……いいんだよ。どの道きっかけがほしかっただけなんだから」
まどか「でも…もっとよく考えた方が……」
さやか「あたしには…叶えたい願いがあるの。それに、今契約しないと多分、ずっと後悔すると思うから」
まどか「さやかちゃん……」
QB「……本当にいいんだね?」
さやか「時間ないんだから、急いで!」
QB「……わかったよ。美樹さやか、君の願いはなんだい?」
さやか「……上条恭介の指の怪我、治して!」
QB「……その願いは、魂を差し出すに値するかい?」
さやか「そんなもんいいから!早く!」
QB「君の願い、確かに受け取ったよ。……さぁ、受け取るといい。契約の証、ソウルジェムを」
さやか「っ……!」
まどか「さ、さやかちゃん……」
さやか「……これが、あたしの力……?」
QB「武器は剣のようだね。癒しの願いで契約したから治癒魔法も使えるはずだよ」
QB「あとは…魔法少女になったわけだから、魔女の召喚も……」
さやか「それはあとでいい!あの魔女を…倒さないと!」
魔女「……」
さやか「よくもマミさんを……!絶対、許さない!」
使い魔「……!」
さやか「遅いっ!」
魔女「……!」
まどか「速い……!」
さやか「食らえ!」
魔女「!」
さやか「せいっ!」
魔女「!」
さやか「まだまだ!」
魔女「!」
使い魔「……!」
さやか「使い魔…なら、これで……!」
さやか「最後…だっ!!」
魔女「!!」
QB「魔女が真っ二つに……」
まどか「すごい…魔女、やっつけちゃったよ」
QB「契約したてでここまで戦えるなんて…すごいじゃないか」
さやか「そ、そうかな?……それよりも、マミさんは……」
魔女「……!」
まどか「さ、さやかちゃん!後ろ!」
さやか「へ……?」
ズドォォォォォン
さやか「うおっ!?な、何事?」
ほむら「……グリーフシードを確認するまでは気を抜かないことね」
まどか「あ…ほむらちゃん!」
ほむら「ごめんなさい、遅くなってしまったみたいね」
まどかから連絡をもらい、すぐにここに向かったが…どうやら少し遅かったようだ
さやかが魔法少女に…インキュベーターと契約してしまっていた
ほむら「さやか…あなた……」
さやか「……うん。見ての通り、魔法少女になったよ」
ほむら「……それは、しっかりと考えた上での契約かしら?」
さやか「……はっきりとそうだとは言えないよ、あんな状況だったし。でも……」
さやか「あたし、後悔だけはしてないよ。まどかとマミさんを守れて…よかったって思ってるから」
ほむら「そう……」
まどか「ほむらちゃん!」
ほむら「まどか……?」
さやかと話をしていると、不意に誰かが私に抱きついてきた
それがまどかであることはすぐにわかったが、何やら様子がおかしかった
まどか「ほむらちゃん…ごめんね、わたしたちがついて来たばっかりに……!」
まどか「それに…マミさんがやられちゃって…わたし、すごく怖かった……」
私に抱きついてきたまどかの体は、恐怖で震えていた
目の前でマミがやられ、何もできない自分たちへと使い魔と魔女が迫る。計り知れない恐怖を感じてしまったのだろう
私はまどかをそっと抱きしめてから、まどかに優しく語りかけた
ほむら「……ごめんなさい、まどか。私が遅くなったせいで、あなたに怖い思いをさせてしまって……」
ほむら「もう2度と…あなたに怖い思いはさせないから」
まどか「ほむらちゃん……」
さやか「まどかー?あたしたちがいるの、忘れてない?」
まどか「へ?……あ、その、ごめんねほむらちゃん、抱きついちゃったりして……」
ほむら「気にしないで、別に嫌というわけじゃないから」
さやか「つまりほむらはまどかに抱きつかれて嬉しかった、と?」
ほむら「……悪い気はしないわ」
まどか「も、もう…やめてよ、2人とも……」
さやか「ごめんごめん。……それよりも、マミさんは……」
マミ「ごめんなさい…不覚を取ったわ……」
ほむら「マミ、大丈夫?酷い顔してるけど……」
マミ「えぇ…見たくもないもの、見せられたせいでね……」
ほむら「そう…私が遅くなったせいね。ごめんなさい」
マミ「暁美さんのせいじゃないわ、油断した自分の責任よ。……さて、美樹さん」
さやか「……はい」
マミ「私を助けてくれたことは感謝してるわ。ありがとう。……でも、私が言ったこと…覚えてるわよね?」
さやか「……はい。でも、まだ答えは出てないんです。だけど…契約した以上、きちんと答えを出します」
マミ「状況が状況だったから仕方ないわね…だけど、その返事を聞いて安心したわ」
マミ「これからよろしくね、美樹さん」
さやか「はい、よろしくお願いします」
ほむら「……さて、魔女も倒したことだし、帰りましょうか」
まどか「そうだね。パパとママも心配してるだろうし…怒られないといいけど」
ほむら「まどかは私が送って行くわ」
さやか「わかったよ。……それじゃ、あたしは帰るね」
QB「僕は魔法少女の基本についてさやかに説明してあげないとだから、さやかと一緒に行くね」
マミ「今日は早く帰って休みましょう…それじゃまた……」
まどか「……マミさん、大丈夫かな」
ほむら「きっと大丈夫よ。ほら、私たちも行くわよ」
――――――
まどか「……ねぇ、ほむらちゃん」
ほむら「何?」
まどか「多分なんだけど…ほむらちゃん、わたしたちに秘密にしてることって…ない?」
ほむら「それ…は……」
まどか「ほむらちゃんと友達になってしばらく経つけど…ほむらちゃん、自分のことってあんまり話してくれないから……」
まどか「わたし、ほむらちゃんのこと…全然知らなくて…だから、もうちょっとほむらちゃんのこと、知りたいなって思って」
ほむら「まどか……」
まどか「ほむらちゃんが何を秘密にしてるのかはわからないけど…いつか、話してくれたら嬉しいな」
ほむら「……いつか、必ず話すわ」
まどか「ありがとう。……じゃあほむらちゃん、また明日」
ほむら「えぇ。また明日」
私がもたもたしてたせいで、さやかが契約してしまった
この時間の魔法少女のルールなら魔女になることはないと思うが……
インキュベーターの本質が変わっていないのだとしたら、きっと何か裏があるに違いない
だが、契約してしまったものは仕方がない。今後は彼女のフォローもしてやらなければ
それにしても、私が隠し事をしているとまどかはどうしてそう思ったのだろう
今までより親密になれたせい…なのだろうか
何にせよ、今はまだ話すことはできない。もう1人…最後の仲間の協力を取り付けてから、明らかにしようと思う
私の、戦う理由を……
――翌日 放課後――
さやか「……それじゃ、あたしは恭介の様子を見に行くね」
ほむら「えぇ。今日はどうしようかしら、爆弾作成でも…でもまだストックは……」
さやか「……事情知ってるからいいけど、知らない人から見ると物騒な奴にしか見えないから気を付けた方がいいよ」
ほむら「わ、わかってるわよ。……じゃあ私は帰るわ。まどか、またね」
まどか「うん。またね、ほむらちゃん」
さやか「あんたたちも最近妙に仲良いよね、このさやかちゃんを差し置いてさ」
まどか「そんなこと……」
さやか「もしかすると…もしかしちゃうんじゃないの?」
まどか「べ、別に何もないってば。ほむらちゃんは友達だよ」
さやか「友達、ねぇ。……よし、そんじゃあたしもそろそろ行くね」
まどか「あ、うん。さやかちゃん、またね」
――病院――
さやか「……」
さやか(う…何だか入りづらいな……)
さやか(……あたしはあいつのバイオリンが聴きたいから、怪我を治した。それだけ……)
さやか(だから…絶対、あたしが治したんだって知られちゃいけない。もし恭介が知ったら……)
さやか(あいつ、きっとあたしを恩人みたいに扱うと思うから…あたしはそんな関係、望んでない)
さやか(それに…ううん、これはいいや……)
さやか「……さて、と」
さやか「し、失礼します……」
恭介「あれ、さやか。どうしたんだい?失礼します、だなんて」
さやか「悪かったわね、そういうセリフが似合わなくて」
恭介「ごめんごめん。そんなつもりじゃないんだ」
さやか「もう。……それで、怪我が治ったって……?」
恭介「うん…先生も驚いてたよ。急に動くようになるなんて、まるで奇跡だ、って」
さやか「奇跡…か……」
恭介「……実はね、先生に…もう2度と動かないだろうって、言われてたんだ……」
さやか「え…そうだったの……?」
恭介「うん。だけど…現に今、こうしてまた動くようになったんだ」
恭介「……僕はね、さやかが起こしてくれた奇跡なんじゃないかって思うんだ」
さやか「あたしが……?」
恭介「僕が事故に遭ってから、さやかはずっとお見舞いに来てくれたよね」
恭介「僕の勘違いだったら恥ずかしいけど…きっと僕の怪我が治るようにって祈ってくれてたんだと思う」
恭介「だからその祈りが通じて…奇跡が起こったんじゃないかなって……」
さやか「恭介……」
恭介「さやか…ずっと僕を支えてきてくれて、ありがとう」
恭介「それと…ごめん。イライラしてさやかに八つ当たりしたこともあったし……」
さやか「……気にしないでよ。あたしが好きでやってたことだからさ」
さやか「あたしは…また恭介のバイオリンが聴ければ、それで十分だよ」
恭介「それなら…さやかの為に心を込めて弾かせてもらうよ」
さやか「……ありがと。あたし、そろそろ行くね」
恭介「うん。きっと近いうちに退院できると思うから、また学校にも行けるようになるよ」
さやか「……それじゃ、またね」
――――――
さやか「……」
QB「どうしたんだい、ソウルジェムを眺めたりして……」
さやか「……ううん、何でも。願い、ちゃんと叶ってたよ。ありがと、キュゥべえ」
QB「お礼を言うのは僕の方さ。魔法少女になってくれてありがとう、さやか」
さやか「これであたしも…魔女と戦うことができるようになったんだよね」
QB「そうだね。マミとほむらもいるんだ。大丈夫さ」
さやか「ん、そうだね…それじゃあたし、そろそろ寝るよ」
QB「じゃあ、僕も帰るよ。おやすみ、さやか」
――――――
さやか「……ん、あれ?ここは……」
『やー、よく来たね』
さやか「え?だ、誰?」
魔女「誰って、あたしよ、あたし」
さやか「ま、魔女?何で魔女が……」
魔女「あんた、魔法少女になったんでしょ?説明受けてないの?」
さやか「あ…それじゃ、あんたがあたしの……?」
魔女「そ。美樹さやかの中の、もうひとりのあたし」
さやか「あんたが……」
魔女「契約して魔法少女となった以上、あたしはあんたの力になる。だけど……」
魔女「本当によかったの?自分以外の為に願いを使っちゃって。それも、好意を寄せている人にさ」
さやか「べ、別に好意なかじゃ……」
魔女「隠したってムダだって、あたしはあんたなんだから。……あんた、ケガを治してどうしたいの?」
さやか「どうって…あたしはあいつのバイオリンが聴きたいだけで……」
魔女「本当にそうだって言い切れる?それを口実に何か見返りを求めたりしないって…覚悟できる?」
さやか「覚悟……?」
魔女「そう、覚悟。あんたにそれができる?」
さやか「……あたしはあいつのバイオリンが聴ければ、それでいい。それは別に見返りじゃないよね」
魔女「まぁ、それを願って契約したわけだからね」
さやか「なら、それだけであたしは十分。ケガを治してやったからどうこうしてほしいなんて、思ってないよ」
魔女「そっか…それじゃ、覚悟はできてるんだね?」
さやか「……当然でしょ」
魔女「……わかった。それならいいんだよ。これからはあたしがあんたの剣になる。よろしくね」
さやか「あ、うん。よろしく」
魔女「さっきも言ったけど、あたしはあんた、あんたはあたし。……忘れないで」
さやか「わかってるよ。……えーと」
さやか「あんた、なんて名前なの?」
魔女「あぁ、そうだね。名前がないと召喚できないからねぇ…うっかりしてたよ」
さやか「うっかりって……」
魔女「それじゃ、よく聞きなさいよ。あたしの名前は……」
――翌日――
さやか「……という夢を見たんです」
マミ「もしかすると…美樹さんはもう魔女を召喚できるようになったんじゃないかしら」
マミ「まさか魔法少女になってからこんなにすぐできるようになるなんて思わなかったわ……」
さやか「あたしもですよ。まさかほむらよりも先になるなんてね……」
ほむら「悪かったわね」
さやか「別に悪いなんて言ってないのに…でもこれでマミさんとほむらの力になれるのなら……」
マミ「それはそうだけど…本当によかったの?見返りを求めないなんて覚悟、してしまって……」
さやか「いいんです。マミさんやほむら、まどか…それに恭介や仁美、この街の人たち」
さやか「みんなを守りたいんです。それが魔女と戦えるあたしの使命ですから」
これからのことを話し合おうとマミの家に集まったとき、さやかから魔女との夢を見たという話を聞かされた
マミの話では、さやかが魔女の召喚ができるようになったということらしい
まさかさやかに先を越されるとは…別に悔しいというわけではないが
この時間に来てしばらく経つが…やはり魔女の召喚が未だに頭のどこかに引っかかる
だが、いくら考えても答えは出ない。私の魔女のことはひとまず後回しにして、今日これからのことを話すことにした
ほむら「……それじゃ、マミはさやかの指導にあたってもらえるかしら」
マミ「えぇ、任せておいて。とりあえず使い魔の結界あたりで、美樹さんの魔女を確認しておきたいわね」
ほむら「頼んだわ。私は…会いたい人がいるの。その人に会って来るわ」
さやか「会いたい人?」
ほむら「……魔法少女の佐倉杏子という人物よ」
マミ「佐倉さんに……?」
さやか「マミさん、知ってるんですか?」
マミ「えぇ。佐倉さんに何の用なの?」
ほむら「……協力をお願いしたいの。これからの為に……」
マミ「それは…難しいわ。今の彼女は……」
ほむら「……?」
マミ「……とにかく、佐倉さんには近いうちに私が話をしてみるわ。それでいいかしら」
ほむら「……なら、任せるわ」
マミ「……それじゃ美樹さん、そろそろ出ましょうか」
さやか「そうですね」
ほむら「私は…どうしようかしら」
さやか「今日はゆっくりしてればいいんじゃない?何ならまどかのとこに行っててもいいし」
ほむら「そう…ね。そうさせてもらおうかしら……」
マミ「今日の結果は明日話すわね」
ほむら「……さやかのこと、頼んだわ」
佐倉杏子に会いに行くつもりが、急に1日空いてしまった
マミの家の前で2人と別れ、家路に就いたがどうにも真っ直ぐ家に帰る気にはならない
私はさやかに言われたように、まどかの家へと向かって歩き出した
さやか「……使い魔の結界とは言ったものの、そう都合よく見つかりますかね?」
マミ「どうかしら、こればっかりは……」
さやか「ですよねー…あれ、こんなとこにゲーセンなんてあったんだ……」
マミ「……あら、ソウルジェムに反応が…これ、使い魔のものかしら」
さやか「今度来てみようかな…え、使い魔、見つかったんです?」
マミ「恐らくだけど。とにかく行ってみましょう。こっちよ」
さやか「あ、ちょ、ちょっと待……」
???「おっと……」
さやか「……っと、ごめん、大丈夫?」
???「あぁ、気にすんな。よそ見してたアタシも悪いんだからね」
マミ「美樹さん、どうし…佐倉さん……」
杏子「ん?……あぁ、マミか…久しぶりだな……」
マミ「……えぇ。佐倉さんも元気そうでよかったわ」
杏子「元気そう…ね。ま、死なない程度に生きてるよ」
さやか「佐倉さんって…じゃあ、この子がほむらの言ってた……」
マミ「そう…この子が、佐倉杏子……」
杏子「……何だ?アタシに何か用か?」
マミ「えぇ…佐倉さん、もう1度戻って来てもらえないかしら」
杏子「……わかってんだろ。アタシはもう…戦えねぇって」
マミ「今回ばかりは…私ひとりの意見じゃないの。暁美ほむらさんからの依頼でもあるの」
杏子「暁美ほむら……?誰だそりゃ」
マミ「え?佐倉さん、知らないの?」
杏子「魔法少女の知り合いは…少なくともマミ以外にはいねぇよ」
マミ「じゃあ暁美さんはどこで佐倉さんを知ったのかしら……」
杏子「何だかわかんねぇが…アタシにはもう、一緒に戦う力はねぇんだよ……」
さやか「あの、これ聞いていいのかわかんないけど…一体何があったんです……?」
杏子「……昔、ちょっとあってな…己以外の為に願いを使ったのが間違いだっただけさ」
さやか「自分以外の為に……?あたしと……」
杏子「……オイ、お前まさか、自分以外の奴に……」
さやか「え?う、うん……」
杏子「マミ…何で止めなかった?何でそんなバカげたことさせた?」
さやか「……バカなこと、だって?」
杏子「あぁ、そうさ。自分以外の為に願いを…魔法を使ったってロクなことになりゃしない」
さやか「あんた…何勝手なこと……!」
杏子「それが事実さ。他人の為に魔法を使ったところで…結局、何も残らないんだよ」
さやか「……もういい。マミさん、結界に行きましょう」
マミ「え、えぇ……」
杏子「……やめとけって。別にアンタの友人家族がヤベェってわけでもねぇんだろ」
杏子「自分以外…完全な赤の他人の為に魔女や使い魔を倒したところで…何になるってんだ」
さやか「……あんたにはわからないだろうけど、あたしはマミさんに…憧れてるんだ」
さやか「だからあたしは…マミさんの力になりたいって、そう思ってる」
さやか「ほむらにも何か目的があるみたいだけど…そっちも、よほど変なことじゃなければ、協力したい」
杏子「他人の為、他人の為って…それがアンタの望んだことか?」
さやか「……そうだ。仲間に…友達に力を貸すのが、そんなにおかしいこと?」
杏子「……いや。もう何も言う気はねぇよ」
さやか「……なら、あたしたちはもう行くよ。マミさん、急ぎましょう」
マミ「えぇ…佐倉さん、最後にひとつだけ」
杏子「何だ…アタシはもう、戦えねぇって……」
マミ「……さっき言った暁美さん。彼女、魔女を使わずに戦ってる子なの」
マミ「だから…佐倉さんが戦えないわけじゃいわ。あとは佐倉さんの覚悟次第よ」
杏子「……」
マミ「それだけよ。……また、いつでも遊びに来てくれて構わないから。……待ってるわ」
杏子「……チッ」
――結界内――
使い魔「……」
マミ「よかった、使い魔の結界だったみたいね」
さやか「遅くなったから、ちゃっちゃと片付けましょうか」
マミ「美樹さん、忘れてない?今回は美樹さんの魔女の確認をしたいのだけど」
さやか「……あ、そうでした」
マミ「もう…人の話はちゃんと聞くこと。戦闘中に話やテレパシーの聞き漏らしがあると大変よ」
さやか「そうですよね…すいません」
マミ「……さて、それじゃ美樹さんの魔女、確認させてちょうだい」
さやか「はい!……行くよ、もうひとりのあたし……!」
さやか「オクタヴィア!!」
オクタヴィア「……」
さやか「これがあたしの魔女…オクタヴィアです」
マミ「これは…騎士、かしら。鎧に剣……」
さやか「だと思いますけど……」
マミ「でも…何で人魚?」
さやか「それはあたしにも……」
マミ「……まぁ、それはいいわ。せっかくだから、あの使い魔、魔女で倒してもらおうかしら」
さやか「わかりました!……行くよ、オクタヴィア!」
オクタヴィア「……」
使い魔「……!」
さやか「よし……!食らえっ!」
オクタヴィア「……!」
使い魔「!!」
マミ「一撃…見た目通り、強いわね」
さやか「へへ、どんなもんです?」
マミ「気を抜かないで、もう1体いるわよ」
使い魔「!」
さやか「ありゃ、ほんとだ。まぁ、すぐに倒しますよ!」
使い魔「!」
さやか「待てー!逃げるなー!」
オクタヴィア「……!」
使い魔「!」
さやか「くそ…全然当たらない……」
マミ「美樹さん、小さい使い魔相手に大振りしたって駄目よ」
さやか「わかってるんですけど、まだ上手く制御できなくて…あぁもう!オクタヴィア、突撃!」
マミ「ちょっ、美樹さん!?」
ズドォン
さやか「え?あれ、使い魔が……?」
マミ「あの槍…もしかして……」
杏子「……動きにムダが多すぎだ。使い魔相手に全力出してどうすんだ、バカ野郎」
杏子「……相手をよく見ろ。どう動くか予測して、そこを狙え」
マミ「佐倉さん……」
さやか「あんた…何で……?」
杏子「……少し気になったんだよ。マミに憧れてる新米がどんな奴か」
杏子「それに…アタシを知ってるらしい暁美ほむらって奴のこともな」
マミ「それじゃあ…また、一緒に……?」
杏子「……とりあえずはな。だけど、ここしばらくは魔女と戦ってないんだ」
杏子「だから…当分は戦力としては期待するなよ」
マミ「えぇ、それでも構わないわ。……また、よろしくね。佐倉さん」
杏子「……あぁ」
さやか「えっと……?」
杏子「さっきは変にイチャモン付けて悪かったな。……えーと」
さやか「さやか。美樹さやかだよ。……あんたの…杏子の考え方は、やっぱりまだ納得できない。でも」
さやか「マミさんとの話から…きっと何かあったんだと思う。……だから、これ以上は何も言わないよ」
杏子「そうか…そうしてもらえると助かるよ」
さやか「うん。……だけど、いつかまた…ほかの人の…仲間のためにって思える日が来るからさ」
杏子「……何でそう思うんだ?」
さやか「何でって…何でだろ?でも、何となくそう思うんだよね」
杏子「そう、か…よろしくな、さやか」
さやか「よろしく、杏子」
マミ「……それじゃ、せっかく佐倉さんも戻って来てくれることだし、私の家で歓迎会でもどう?」
さやか「いいですねそれ。……あ、まどかとほむらはどうしましょうか」
マミ「うーん…あの2人は2人で楽しくやってるでしょうから、いいんじゃないかしら」
さやか「あいつら最近妙に仲良くてあたし、ちょっと疎外感感じてるんですよね」
マミ「そうなの?それじゃ、それ以上に私と佐倉さんと仲良くなればいいのよ」
さやか「そうですよね!特に杏子とはすぐ仲良くなれる気がするんですよ!」
杏子「ウゼェ……」
マミ「ふふ…じゃあ、行きましょうか」
さやか「はい!ほら杏子、行くよ!」
杏子「だーっ!引っ張るなっての!」
――翌日――
さやか「そういうわけで、佐倉杏子、連れて来たよ」
ほむら「は……?」
まどか「えっと……」
話があるから家に来てほしいとマミに言われ、まどかと一緒にマミの家へやって来た
部屋へと通されると、そこにはなぜか佐倉杏子の姿があった
ほむら「……一体、昨日何があったのかしら」
マミ「順を追って説明するわ。昨日は……」
マミ「……ということなの」
ほむら「そう…昨日のことはわかったわ」
杏子「なぁ…アンタが暁美ほむら…なのか?」
ほむら「えぇ、そうよ」
杏子「アンタ…一体どこでアタシの名前を……?ここ最近はまともに魔法少女、やってなかったはずなんだが……」
ほむら「……それは、近いうちにきちんと話すわ。それよりも、私たちに協力してくれるということでいいのかしら?」
杏子「一応はな……。だけど、マミにも言ったが…今は魔女とはロクに戦えねぇ。それだけ…覚えといてくれ」
ほむら「……?」
今までの彼女と比べると…闘争心というか、覇気というか…何か弱気な感じがした
碌に魔女と戦えないとはどういう意味なのだろうか…杏子に聞いてみることにした
ほむら「魔女と戦えないって…どういう意味?」
杏子「アタシは…もう、魔女を…召喚できねぇから……」
ほむら「魔女を……?」
杏子「昔、色々あってな…悪い、今はこれ以上は……」
ほむら「……構わないわ。話したくないことくらい、誰にだってあるでしょうし」
杏子「それより…アンタ、魔女を召喚しないで戦ってるって…本当なのか……?」
ほむら「えぇ。私は魔女を召喚することはできないわ」
杏子「そうか……。アンタは…強いんだな」
ほむら「杏子……?」
マミ「それよりも…暁美さん?」
ほむら「何かしら?」
マミ「そろそろ、話してもらえないかしら。あなたの目的を」
まどか「ほむらちゃんの…目的……?」
マミ「私たちだけじゃなく、佐倉さんにまで協力を求めるなんて…あなたは一体、何をしようとしてるの?」
ほむら「あなた…気づいて……?」
さやか「気づいたのはあたし。……まぁ、気づいたっていうか、ただそんな気がしただけなんだけどね」
ほむら「……」
ここで私の目的…ワルプルギスの夜のことを話してもいいのだろうか
だが、当日が近くなってから言っても余裕がないだけで何もいいことはない
意を決し、私は目的…の一部を話すことにした
ほむら「……まず最初に断っておくわ。私のしようとしてることは…命懸けよ」
さやか「命懸けって…一体何をしようってのさ」
ほむら「私の目的は…ワルプルギスの夜を、この世から始末すること」
マミ「ワルプルギスの夜…ですって……?」
杏子「……まさかここでその名を耳にするとは思わなかったよ」
さやか「マミさん?杏子?その、ワルプル…何とかって、何?」
まどか「ワルプルギスの夜だよ、さやかちゃん……」
マミ「ワルプルギスの夜…結界を持つことなく、直接この世界に現れる巨大な魔女……」
杏子「その姿は…人であるとか、空飛ぶ要塞のようだとか…あやふやなんだ」
さやか「どういうこと……?」
マミ「そのワルプルギスの夜と戦って…生きて帰った者がいない、ということね」
まどか「そんな……」
ほむら「……実はあと2週間ほどで、この街に…ワルプルギスの夜が現れるの」
マミ「え…この見滝原に……?」
ほむら「えぇ。奴を倒す為に…あなたたちの力を貸してほしい……」
杏子「力を貸すって言ってもな…奴は結界を持ってないんだ。だから……」
さやか「あ…あたしたち、魔女を召喚できない…ってこと?」
ほむら「……」
結界の中でなければ魔女を召喚することはできない。それは、私もマミから聞かされている
つまり、ワルプルギスの夜と戦いに魔女の力を借りることができないということだ
元々使うことのできない私はいいとして、それが当然としているマミ、新米のさやか、召喚不能の杏子……
果たして、協力してくれるのだろうか
マミ「……疑うわけではないけど、その情報はどこから?」
ほむら「……杏子を知っている件と同じ。近いうちにちゃんと話させてもらうわ」
マミ「……わかった、私は協力させてもらうわ」
さやか「マミさん……?」
マミ「どうして理由を隠しているのかはわからないし、正直半信半疑ってところね。でも……」
マミ「もしそれが本当なら、この街の危機だもの」
さやか「うーん…マミさんが協力するって言ってるし、あたしも力を貸すよ」
杏子「アタシは…力にはなれそうにないよ」
マミ「佐倉さん……?」
杏子「魔女も魔法も使えねぇ…槍ブン回すしかできないアタシが戦力になるとも思えないからな……」
さやか「そんな…あたしの修行はどうなんのさ」
杏子「約束した以上、それはきっちり面倒見てやるよ。……だけど、戦うことはできねぇ」
ほむら「……わかったわ。さやかの面倒、よろしく頼むわね」
杏子「……あぁ」
杏子が頑なに戦うことを拒む理由…この時間の彼女に一体何があったのだろうか
彼女の魔法…幻覚魔法が使えなくなったこと、魔女の召喚が行えないこと…きっとその辺りと関係しているはずだ
だが、今の彼女は戦う以外のことだが、協力はしてくれると言っている
お願いする立場の私はこれ以上は何も言えなかった
杏子「……そろそろ訓練、始めるか。さやか、行くぞ」
さやか「わかった。とりあず、使い魔の結界を探さないと……」
杏子「見つからなかったら、お前本人の訓練だな。……んじゃ、行って来る」
マミ「えぇ、行ってらっしゃい」
そう言って2人は部屋から出て行った。さやかのことは杏子に頼んでおけば大丈夫だろう
私としては杏子自身のことが気にかかるが…これは本人が話してくれるまで待つことにした
考え事もそこそこに、魔女が出ない限りこれ以上はすることもない
そろそろ家に帰ろうか、そう思っていたときだった
まどか「……ねぇ、ほむらちゃん」
ほむら「まどか?どうしたの?」
まどか「やっぱり、わたしも魔法少女に……」
ほむら「……どうしてそう思ったの?」
まどか「だって…今まで誰も生きて帰っていない魔女なんでしょ……?」
まどか「それを聞いて…不安なの。もしかして…ほむらちゃんたちも、帰って来ないんじゃないかって」
まどか「だから、わたしもほむらちゃんの力になりたくて……」
まどかが私のことを心配してくれている…そう思っていてくれているのはとても嬉しい
だが、私はまどかを契約させるつもりはない。絶対に
ほむら「……まどか、あなたがそう思ってくれていることは嬉しいわ。……でも」
ほむら「あなたが契約する必要はないわ」
まどか「え……」
ほむら「あんな話を聞いたのだから、不安になるのも無理はないと思うけど……」
ほむら「さやかとマミが一緒に戦ってくれる。杏子だって、力を貸してくれる。……だから、大丈夫よ」
まどか「ほむらちゃん…うん、わたし、信じてるからね」
マミ「……あなたたちって、本当仲が良いわよね。案外、あの前世が恋人だって話も本当なんじゃない?」
まどか「ま、マミさん…またその話……」
ほむら「……それじゃ、私はこれで失礼するわ」
マミ「そう?わかったわ」
まどか「わたしも一緒に帰るよ」
マミ「暁美さん、鹿目さんのこと、よろしくね」
ほむら「えぇ、わかってるわ。……じゃあ、帰りましょうか」
まどか「マミさん、おじゃましました」
――――――
まどか「……あ、ここまででいいよ」
ほむら「そう…わかったわ」
まどか「送ってくれてありがとう。じゃあ、またね」
ほむら「えぇ、また」
まどかと別れ、1人家路に就く
歩きながら、今日聞いた話を整理する
1番気になることというと、やはり杏子のことだ。彼女を戦力外とすると、だいぶ厳しいことになるだろう
それとワルプルギスの夜のこと。人だったり要塞だったりあやふやとの話だが…一体どういうことなのだろうか
その辺りのことについては、今はまだ情報が足りない。早々に別のことを考えることにした
ほむら「……やっぱり、まどかのこと、かしら」
この時間のまどかとはだいぶ…かなり仲良くなったと思う。前世で恋人だったと言われてしまうほどに
正直私もここまで仲良くなれるとは思ってなかった。だけど、仲良くなれたことは素直に嬉しく思う
今まではまどかを守る為だと言って、彼女を遠ざけ、必要以上に関わろうとしなかった
だが、今回は違う。まどかが私の側にいても、ここまで順調に進めることができた
ほむら「……いえ、まどかがいてくれたからこそね」
そんなことを考えながら歩いていると、不意にどこかから声が聞こえてきた
『……ここまでは上手くやれているみたいね』
ほむら「な、何……?誰なの?」
『言わずとも分かるはず……。それよりも……』
『佐倉杏子が戦力にならない…このままだと、ワルプルギスの夜には勝てない』
ほむら「何を…言ってるの……」
『そして…直に美樹さやか最大の問題にも直面するでしょう。佐倉杏子、美樹さやか…2人の仲間……』
『どちらを欠いてもあなたは失敗してしまうでしょうね……』
頭に響く声は私の問いかけにも応じず、一方的に話を続ける
しかしこの声、どこかで……
『あなたの目的は…まどかと、魔法少女の仲間を救うこと。そのはずでしょう?』
ほむら「誰だか知らないけど…言われるまでもないわ……!」
『そう…忘れていないのなら十分よ。その目的が果たされるよう……』
『あなたの内から祈っているわ……』
ほむら「……」
それっきり、謎の声は聞こえなくなってしまった
冷静になって考えると、今の声は…恐らく私の魔女の声なのだろう
だが、特に何も召喚のことには触れられなかった。今はまだその時ではないということなのだろうか
ほむら「だけど…今の声、どこかで聞いたような…どこだったかしら……」
ほむら「何か…何かを忘れているような……」
何か大事なことを忘れている。何故かそんな気がした
ともかく、魔女からの声が聞こえたということは、近々私にも何か変化があるのだろう
そんなことを思いながら、再び家へと歩き出した
――数日後――
マミ「……じゃあ、今のところは……」
ほむら「えぇ、特に何もないわね」
マミ「声が聞こえたのなら何かあってもいいと思うのだけど……」
あれから数日が経ったが、未だに何か起こる様子はない
あれは本当に自分の魔女の声だったのだろうか…そんな気さえしてきた
この時間で契約したわけではない私には、やはり使えないのだろうか
しかし、ソウルジェムはこの世界の規格のものに変わっている。一体どういうことなのだろうか
答えの出るはずのないことに頭を悩ませていると、杏子が姿を見せた
杏子「……何だ、さやかの奴はまだ来てないのか」
マミ「いらっしゃい、佐倉さん。……そう言われると、確かに。鹿目さん、美樹さんは?」
まどか「さやかちゃんは友達…仁美ちゃんから話があるって言われて……」
マミ「この間助けたあの子ね。その後変わったことはない?」
まどか「はい。あのときは本当にありがとうございました」
マミ「気にしないで、って言いたいけど…あれは美樹さんの活躍よ。鹿目さんにも怖い思いをさせてしまったし……」
まどか「いえ、そんな……」
杏子「仕方ねぇ…少し待たせてもらうよ」
さやかが志筑仁美に呼び出される…上条恭介のことについての話だろう
あの声の言った通り、さやかにとって最大の問題がやって来てしまった
それからしばらくしてさやかが姿を見せる。だが、その様子はどこかおかしかった
さやか「ごめんごめん、遅くなっちゃった。さ、杏子、今日もよろしく頼むよ!」
まどか「さやかちゃん…仁美ちゃんと何かあったの……?」
さやか「な、何かって何かな?べ、別に何も……」
ほむら「バレバレよ。そんな態度じゃ」
さやか「で、でもこれはあたしの問題……」
ほむら「嘘や隠し事をしても得はないわよ。話しなさい」
さやか「ほむらに言われたくは…まぁバレちゃってるみたいだし…ちょっと聞いてもらおうかな」
そう言うとさやかは志筑仁美との間に起こったことを話し始める
私の思った通り、上条恭介のことについての話だった
彼と長く一緒にいるさやかが先に告白するべきということらしいが、彼女はどうしたらいいか迷っているようだ
さやか「あたしは…どうしたらいいんだろう……?」
まどか「告白…したらいいんじゃないかな」
さやか「だけどさ…あたしは見返りはいらないって…そう、覚悟したはずだし……」
マミ「美樹さんが…その上条君に、自分が怪我を治してあげた。だから付き合ってほしい…なんて言わなければ、それは見返りじゃないと思うわ」
ほむら「そうね。それを黙っていれば、彼のあなたへの好意次第というわけよね」
さやか「で、でも……」
杏子「……いつまでもウジウジしてねぇで、スパっと言っちまえばいいんだよ」
さやか「杏子……?」
杏子「せっかく相手がお先にどうぞって言ってくれてるんだ。……告白、するしかないだろ」
さやか「そ、それにあたし…魔法少女だし……」
杏子「……それはさやかの個性ってことでいいんじゃないか」
さやか「個性……?」
杏子「あぁ。魔女と魔法が使える…そんな変わった中学生がいたっていいじゃねぇか」
まどか「そうだよ。さやかちゃんなら絶対、上手く行くよ」
さやか「……わかった。あたし、恭介に…想いを伝えてみるよ」
杏子「その意気だ。……さっさと伝えに行って来い」
さやか「え、でも特訓は……」
杏子「んなもん今の調子で身が入るワケねぇだろ。……だから早く行けって」
さやか「……ありがと、杏子。マミさん、まどか、ほむらも」
マミ「上手く行くといいわね」
まどか「さやかちゃん、がんばって!」
ほむら「……頑張りなさい」
さやか「うん……!あたし、ちょっと行って来る!」
そう言うとさやかは勢いよく飛び出して行った
これが吉と出るか凶と出るか、今の私にはわからない。でも
いつもと違うこの行動がきっといい結果になると、私は信じている
まどか「それにしても好きな人かぁ…仁美ちゃんもラブレターいっぱい貰ってるしなぁ」
マミ「鹿目さんはそういう人、いないの?」
まどか「うーん、今は何とも……。マミさんはいないんですか?」
マミ「魔法少女やってるとねぇ…恋してる暇もないっていうか……」
まどかとマミが恋話を始め、杏子はそれを頬杖をついて眺めている
そういった会話をしたことがない私がその会話に入れずにいると
まどかが、私に話を振って来た
まどか「ねぇ、ほむらちゃんは好きな人っている?」
ほむら「え?わ、私?」
まどか「うん。ほむらちゃん、結構人気あるみたいだから気になって」
私の好きな人…そう言われて出てくる人物はひとりだけ
そういう意味で好きというわけではないのだろうが……
ほむら「……私はまどかが好きよ」
まどか「ちょ、ちょっとほむらちゃん?何言って……」
ほむら「私、今まで恋なんてしたことなくて……」
まどか「そ、そうだったんだ…あ、もちろんわたしもほむらちゃんのこと、好きだよ」
まどかも私が好きだと返してくれた。友達として当然の返事
さやかやマミ、杏子への好きと何ら変わりのない気持ちだろう。だけど……
そう思ったら、少しだけ…胸に棘が刺さったような違和感を覚えた
一体何だろうと思う間もなく、マミがちょっかいをかけてくる
マミ「あらよかったわね。鹿目さんの好きな人、こんな素敵な人だなんて」
まどか「だ、だからそういう意味じゃないんですってば!」
マミ「大丈夫、あなたたちならお似合いのカップルになれると思うわ」
まどか「もー…そもそもわたしたち、女の子同士なわけで……」
マミ「愛があればそれは大した問題じゃないと思うわ」
まどか「マミさん、お願いだから話聞いてください……」
もし、仮に…まどかが私をそういう意味で好きだとしたら、それは凄く嬉しい。だけど……
私にはまどかの隣は似合わない。私のような人間は……
杏子「……さやか、上手く行くといいな」
ほむら「杏子…えぇ、そうね……」
まどかとマミが変な言い合いをしている隣で、杏子がそう呟く
杏子は杏子なりにさやかのことを気にかけているのだろう
私も改めてさやかの成功を祈る。だが
その日、さやかが戻って来ることはなかった
【中編】に続きます。