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≪あらすじ≫
「おまえたちの言う『丘の向こう』なんざ、とっくに私が焼いてやったわ!!」
元スレ
女騎士「おばあちゃんが言っていた。世界はこの私を中心に回ってる」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1385483711/
女騎士「私は最初っから最後までクライマックスだぜえ!!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1386173838/
12月4日現在 作成:魔王軍在東帝総務部広報課
12月1日
15:20 旧帝国西部領・旧首都シュティレンヒューゲル西部上空にて巨大隕石が爆発。4日現在、隕石の規模は直径約100メートルと推定
爆発の衝撃によって発生したと思われる地震も確認されている(在東帝魔王軍国境警備隊調べ)
15:52 東帝・東方連合臨時政府首相を本部長とする災害対策本部を設置。
被害規模、死傷者救助を被害予想地域全域へ指示。公共施設解放等の被災者支援プログラムを各地実施
16:15 東方連合情報庁、北方共同体および北西諸島連合王国政府へ正式支援を要請
17:32 東帝国境線中央市街地域内での死傷者数が三万人を突破、医療施設における備蓄の不足が各地で発生
18:14 魔王軍所属飛行部隊、ならびに共和国軍を中心とする調査隊による被害規模の推定記録調査書が発表。
窓ガラスの破損等軽微なものを除外した範囲は半径1400㎞、全壊建屋はシュティレンヒューゲル市内のみで900棟超
18:48 北西諸島連合王国外務省、高等竜種との共同派兵を決定。災害対策支援部隊を編成
19:32 死者、行方不明者が10万人を突破
20:02 共和国軍国境駐屯部隊、南部王国領内を拠点に救助活動を開始
20:52 連合・魔王軍による支援物資搬入が開始。国境沿いにおける収容体制は尚も苛烈をきわめる
21:49 西帝における主要インフラの被害額が今年度共和国予算歳出額の五倍強と推定される
23:21 北西諸島連合王国軍航空部隊、共和国沿岸へ到達
12月2日
05:30 魔王軍・拝火神族首相、72時間の壁を各支援部隊に向け強く提言。自らの被災地入りも仄めかす
10:15 北西諸島、被災区域西部へ到着。共和国各機関と合流し救援活動を開始
11:23 北部神族、レギンレイヴ魔王軍常任理事代理を通しラジオで被災地への全面的支援を発表
13:30 死者、行方不明者15万人を突破
16:45 南部王国国境線沿いにおいて、収容されていた被災者数人が下痢、嘔吐を訴え医療機関へ収容
当該施設での診断の結果、チフスへの感染を確認。隔離・消毒対策が取られる
17:30 帝国内河川の氾濫が確認。旧帝国の杜撰な護岸工事を元とする二次災害と思われ、水銀を含んだ汚染水が各地へ流入
19:12 共同体側国境線沿い市街において、破裂したガス管から引火、大規模な火災へと発展。死傷者は200人前後にのぼった
20:00 二次災害を含んだ死者、行方不明者18万人を突破(共和国災害対策本部調べ)
12月3日
02:15 東帝国境線地区内で女児のチフス感染者が発生。魔王軍医療機関によりただちに隔離
02:40 ティタニア常任理事を中心とする部隊による公衆衛生の改善を目的としたチームが編成
05:21 西帝北部国境線沿い地域において、暴徒と化した被災者による公共施設襲撃が相次ぐ
首謀者は被災者を煽り二次被害を拡大させようと画策するも、北西諸島ドラグーン部隊によって射殺される
本日、首謀者の男性が共同体右翼政党に傾倒する過激派である事が判明
07:30 教皇領、領内への被災者の受け入れを表明。南部王国内敷設鉄道を利用したピストン輸送により行われる予定
チビ将校「閣下……閣下、閣下! こちらですぞ、閣下……」
エルフ三男「……」
チビ将校「いや、冷え込んでまいりましたな。こんな時こそメリフェラや南部王国で冬を越したいものですが」
エルフ三男「ええ、まったく……」
姉「おなかすいたー」
チビ将校「おお、気が利かんで申し訳ありません。すぐに何かあたたかい物をお出しいたします」
エルフ三男「助かります。白湯のようなシチュー一杯の為に炊き出しに参加するなどごめんですから」
姉「……あー、閣下……ごめんなさい、お服よごしちゃった」
チビ将校「御召し物もご用意しますかな?」
エルフ三男「ちっ……さっきのコジキの血か。病気でも持ってたら事です、着替えさせてもらってください」
姉「はあい」
チビ将校「血……?」
エルフ三男「心配しないで。死体は雪で埋もれるでしょうし……この状況です、射殺など茶飯事でしょう」
チビ将校「三国の駐在兵が目を光らせていてもそんな有様ですか」
エルフ三男「少しは娘さん達を連れて散歩でもしてきたらいかがです? 寒さで目が覚めますよ」
チビ将校「いやいや……可愛い愛娘にもしもの事があってはかないませんので」
エルフ三男「(猿人の割に、性の嗜好がインセクトリアン……なかなか見る所があるな、パイプを作っておいて正解だった)」
エルフ三男「被災してから二、三日、ほとんど路上に放られていましたからね。いざこざのお蔭で肩を壊しまして……」
チビ将校「それで、その三角帯というわけですか。災難でしたな」
エルフ三男「応急処置を受けている最中にも、連れがフラフラどこかに行ってしまうもので。胃痛がおさまりませんでしたよ」
チビ将校「しばらくはここでお休みください、ひと月ぶんの備蓄はございますので」
エルフ三男「恩に着ます」
養女「とうさま、おしょくじはおさかなにいたしましょうか。それとも……」
チビ将校「お客人には体力を付けて頂きたい。塩で絞めた熟成肉が地下にあるから、それを使いなさい」
養女「はい、とうさま」
エルフ三男「……驚いた、てっきり性処理の為の便器扱いをしているかと思いましたが」
チビ将校「私が? とんでもない……立ちんぼのメスどもではあるまいし」
エルフ三男「ははは、下半身産業で外資を稼いでいる僕らエルフの目の前でそれを言いますか」
チビ将校「それは、その……いやはや、申し訳ありません。
しかし、エルフの皆さまがたと我々猿人の女どもは比べるまでもなく大きな差が……」
エルフ三男「別に怒っちゃあいません、すこしイジワルをしただけです。
可愛がっていてくれているようでひと安心ですよ、メリフェラに対する僕の顔も立ちます」
チビ将校「便宜を図って頂き、感謝の言葉もございません。
国内ではケンタウリの人権屋が幅を利かせるばかりで、節足人種の進出は遅々として進まない……」
エルフ三男「さぞ、あのフカフカの尾腹の魅力に取りつかれたのでしょうな」
チビ将校「彼女の魅力を語らせれば、今夜一晩では終わりませんぞ」
エルフ三男「(変態相手の商売はこれだからやめられねえ)」
エルフ三男「巨大隕石が爆発……ねえ」
チビ将校「『大いなる試練の到来』『悪魔の矢が帝国を貫く』……東帝の新聞一面です。
一方、こちらは北西諸島の。いささか右翼に傾いたものですが……『神の鉄槌くだる』『後進国への神罰か』」
エルフ三男「器用な隕石ですな。まるで研磨したかのように、大地をきれいに削り取っていくなど」
チビ将校「十中八九、原因から事実に何らかの圧力がかかっている。閣下もそうお考えで?」
エルフ三男「字の読み書きができて且つ、最低限の頭があれば誰でもわかります」
チビ将校「……お察しの通り、大衆紙やサロンではそのような陰謀論がまことしやかに囁かれているようでして」
エルフ三男「何でもかんでも陰謀論で片づけるのは、あまり好きじゃあありません。思考停止は一番してはいけない事です」
チビ将校「失礼。おっぱじめる寸前に死んだあのハゲがよく口にしていたもので」
エルフ三男「(何だそれ面白すぎるだろ)」
チビ将校「しかし、それでは何でしょうか。連合の新兵器の実験か、それとも、北西のエルダーの乱心か。
もしかすると、本当に神々の逆鱗に触れた者たちへの天罰?」
エルフ三男「……それとも、薄汚い魔物どもの仕業か」
チビ将校「だとすればお笑いぐさです。絵に描いたようなマッチポンプではありませんか」
エルフ三男「バカですからね。何にせよ、どうにかしてアルヴライヒ……もしくは共和国に出たいところです」
チビ将校「例の検疫……ですかな」
エルフ三男「古めかしい感染症が今になって猛威を振るっていると聞きます。さっさとこんなところからはおさらばしたいのですが」
チビ将校「上下水道の処理機能劣化が祟ったのでしょう。躍起になって出入国に制限をかけていますな」
エルフ三男「電話線も寸断、郵便もアウト……ああ、僕らが何をしたって言うんでしょうかねぇ」
チビ将校「仰る通りです」
チビ将校「バルムンク……? 帝国に伝わる叙事詩に登場する聖剣ですか」
エルフ三男「そして、大陸の勇者信仰に関連する聖遺物でもある。あの彼女が提げていた剣がそれだったらしい」
チビ将校「俄かには信じ難い……」
エルフ三男「僕とて今でも信じられませんよ……婚約者が伝説の聖剣を嫁入り道具に持ってくるなど!」
チビ将校「しかし、それで閣下は窮地を脱する事が出来たのでしょう? その……勇者に追われていたとかの」
エルフ三男「目の前で鞘から飛び出すのを見れば、タダのなまくらでない事は信じざるを得ません。
あの状況でトリックなど仕掛ける余裕なんてない、ましてやあのおとぼけブロンドにそんな器用なマネはできないでしょうし」
チビ将校「……仮にあれが本物だとして、そもそも彼女はどこでバルムンクを手に入れたのでしょうな」
エルフ三男「どこで……」
チビ将校「御存知の通り、彼女はあのアジ=ダハーカの実の姉……公表されておらず、裏付けもされてないゴシップとはいえ、
6年前の東西分割以降は、皇族と同じような軟禁を強いられてきました。こうして閣下と外出ができるようになったのも、つい最近の事なのですよ」
エルフ三男「予想できる事柄としては……彼女の下いたポストのある情報部のバックには連合情報庁がいる。
教義を信仰する東方教会のシンパが、帝都占領時に偶然バルムンクを発見。回収し、彼女へは護身の為に……」
チビ将校「……」
エルフ三男「……持たせるわけがありませんね、寒さで頭がやられたみたいだ」
チビ将校「お忘れですかな、彼女……彼女の子どもは何人いるか覚えていますか?」
エルフ三男「17人」
チビ将校「なぜ、そんなにも彼女は出産を繰り返す必要があったのか。
単に体の頑強な色情狂という可能性も……まあ、無きにしも非ずでしょうが」
エルフ三男「……最初こそ共和国の軟派男であれ、以降のガキの父親は東方の富裕層……だとでも?」
チビ将校「そう考えれば、バルムンクが彼女の手に渡った理由や、過剰なまでの軟禁が行われたわけも説明できませんか?」
エルフ三男「……」
エルフ三男「それなら、連合は血眼になって彼女を探していそうなものですね。教会が勇者の一人であると崇め、
聖剣までアトリビュートと言わんばかりに持たせておいて、つまらん隕石の爆発で死にました、なんて言えませんでしょうに」
チビ将校「少なくとも、彼女はともかくバルムンクをそのまま放棄するとは考え辛いですな」
エルフ三男「(……あのレストランで護衛を買収して撒いた事はあながち間違いではなかったという事か)」
チビ将校「ですが、やはりこの惨事の説明がつきませんなぁ……結局のところ、何なのでしょうか。
連合の新型爆弾とでも言ってくれれば、まだ納得が行きますのに」
エルフ三男「わざわざ主要三国とも自然災害のように見せかけているところを見ると……
救援が開始されるはるか以前の段階で、いずれかの二か国の間で談合でも組み上がったのではないでしょうか。
最速で、事件の当日……特に、魔王軍による諸国への要請は異常なくらいスムーズでしたし、それに……」
チビ将校「ふむ……」
エルフ三男「ああ、どうも僕なんかは原因を人為的なものに持っていきたくてしょうがないようです。忘れてください」
チビ将校「左様で。夜も更けてきたようですし……夕食を召し上がったら、早めにお休みください、閣下」
エルフ三男「そうさせてもらいます。すみません、お世話になります」
エルフ三男「(間違いなく、ダキニや鬼どもが言っていたネキリ……だな。
魔術など今でもほとんど信じていないが……連中が指向性を持たせて運用できるとなると厄介だ。
やはり、あの幕府のチビガキ……もっと早い段階でくびり殺しておくべきだったか)」
エルフ三男「……」
姉「……」
エルフ三男「どういうつもりだ。僕にそんなつもりはないぞ」
姉「はぇ」
エルフ三男「自分のベッドに戻れ、早く寝てしまえ」
姉「……」
エルフ三男「だから、やめろって言ってるだろ」
姉「ええと、ええと、やめるんですかあ。お部屋暗いのに」
エルフ三男「僕は夜這いを仕掛けてくるような安い女に童貞は捧げないぞ」
姉「でもお、みんなこうすると喜んでくれたよお」
エルフ三男「みんなとはどのみんなだ、自分の認識だけが全てだと錯覚するバカ女め。もっと視野を広げろ」
姉「それに、わたしは閣下のフィアンセだから!」
エルフ三男「(くそ……なまじ騎士様に顔は似ているから殴るに殴れん)」
姉「閣下、おいしいもの食べさせてくれるし、お洋服いっぱい着せてくれるから、好きだよお」
エルフ三男「(騎士様の血縁でなかったらそんな事するものか)」
姉「こんなにわたしと遊んでくれる人、閣下がはじめて! はじめて男の人の顔、覚えたよお」
エルフ三男「そいつはどうも」
姉「いつもはね、みんなお顔はフードとかマスクとかで見えないの……してる最中はぶつし、あついし、いたくてこわいの」
エルフ三男「その顔で次に下世話な事ほざいたら本当にぶん殴るぞ」
姉「ひやああああ」
エルフ三男「(これが目も当てられんブスだったらバルムンク奪って殺してるんだがな……)」
デュラハン「正気ですかッ、勇者様!?」
勇者「いたって正気だ。予定通りの日程でガリア=ベルギガ地方へ聖地探索に向かう」
ゴーストアーマー「まだ被災者は増えます、あなたがここを離れては……!!」
勇者「僕が離れて、何か問題でもあるか? 僕の細腕では、ガレキの一つも持ち上がらないのに?」
デュラハン「そういう問題ではありませんわ、あなたは……あなたは勇者なのですッ、それなのに……」
勇者「だから、僕がこの場で手をこまねいている事で何人の民が救われるんだと聞いている。
僕は合理的に動きたいだけだ、今アジ=ダハーカが行動を起こしたらどうする? 今以上に被害が出るぞ」
ケルベルス「……」
レギンレイヴ「い、言いたい事ァわからんでもないけどさァ……」
勇者「今だからこそ、任務を分割して多面的に行動しなくてはいけない。アジ=ダハーカの討伐は、
救助活動と並行して行うべきだ。代替案があるなら教えてもらいたい」
レギンレイヴ「だ、代替……」
勇者「アジ=ダハーカという狂犬を野放しにし続けて! 追跡を中断した結果、何かあったら!?
キミ達は、その対処ができるというのか!? 僕たちが流動的に動かなくてどうする!」
セベク「……」
勇者「(都合が悪くなればこうだ……替わりの案も出さず、ただ無計画に騒ぎ立てるのみのカスども……!!)」
勇者「それに……僕らは依然として有利な状況にはない。連合の側からあの悪魔の妹についての追及があれば、
僕たちの立場は一晩のうちに崩れる事もありうるんだぞ!? 中世期の混乱に逆戻りしたいというなら……」
レギンレイヴ「(誰か反論しろよ……特に理由はねえけど反対しとかねぇとカッコ悪いだろ)」
勇者「かの霊鳥ガルーダの眷属を一撃のもとに屠るほどの戦力を、あなた方は現状の戦力で相手にできるというのか?」
戦士「(げえッ!!)」
賢者「(そ、そこまでバラしちゃう!?)」
セベク「ガルーダ……!? どういう事だ……!!」
勇者「後に彼女から発表させる」
僧侶「」
敵兵「やっと俺達のぶんのメシにありつける……ありがたいもんだ、しっかり面倒みてくれるなんて」
ピクシー「昼ごはん食べられてなーいー!!」
ブラウニー「労組に訴えなきゃ……三食食べられないなんて人権侵害だ……」
敵兵「妖精さん贅沢すぎィ!!」
ブラウニー「社畜根性きっもーい!! 贅沢しなきゃエライとか思ってそうできっもーい!!」
ピクシー「あらあら立派でぶっとい鎖ですことー!!」
敵兵「こちとら朝も早よからオークさん達と混じって土嚢だとか石鹸だとか消毒用アルコール運んできたんですよァ!!」
ブラウニー「ご苦労さんでした」
ピクシー「じゃあそのままガリアで秘密兵器探してきてください。あるかどうかもわかりゃしませんが」
敵兵「は……」
ブラウニー「ティタニア理事からの指示です、勇者様のお手伝いをしてこーいって」
敵兵「ガリアって……こんな時にですか? すごい周りから文句言われそうなんですけど」
ピクシー「まあ、今回の件がアジ=ダハーカとは無関係とは誰も言いきれないですし……躍起になるのは納得いきますよ」
ブラウニー「そんな極悪人が大陸中を遊びまわってるのっておっそろしー状況よねー」
敵兵「……とりあえず、今は休ませてくださいよォ」
ピクシー「どうせ極東のセフレのところ行くだけじゃないですか」
ブラウニー「あらやだお盛ん」
敵兵「おれは童貞だ!!!1!!」
ティタニア「……」
敵兵「(なんかスッゲー疲れてる・・…隈だらけやん……)」
ティタニア「ああぁ。おはよぉぉぉ」
敵兵「御疲れ様です、かなり辛そうですが……」
ティタニア「こちとら当日から2時間しか寝てねーってのよぉ……つれーつれー……マジ寝てないからつれーわー……」
敵兵「(マジで寝てないんだろうなぁ……)」
ティタニア「でぇ……あぁ、あなたガリア遠足組だったわねぇ……明日の1100……共和国経由で向かう予定だからぁ……」
敵兵「は、はい。臨時異動の連絡はこちらの部署に届いていますので。ところで……」
ティタニア「なぁにぃ……」
敵兵「例の、幕府の彼女ですけれども……」
ティタニア「……あー……言ってなかったかしらぁ……言えてないわよねぇ……ふぁ……」
敵兵「はあ」
ティタニア「あなたとも3日くらい顔合わせてなかったもんねぇ……早めに教えてあげたかったんだけどぉ」
敵兵「……」
ティタニア「ベッド空ける為に、白の城塞から外部の公立病院に移ってもらったのぉ……だから、ここにはいないのよぉ……」
敵兵「……それで?」
ティタニア「……めでたく面会謝絶。特にぃ、異性が近寄る際には許可が必要だからぁ……どうすんのぉ、今だったら付き合ってあげるけどぉ……」
敵兵「」
ティタニア「あぁ、眠いぃ……」
敵兵「……」
ティタニア「この奥よぉ、入ってぇ……」
敵兵「(消毒液臭くない……患者に目立った外傷があるわけでもないみたいだし……)」
ティタニア「あふ……どっかでベッド借りちゃおうかしらぁ」
敵兵「あの……ここって……」
ティタニア「……お察しの通りぃ、心の病気を治すところよぉ」
敵兵「(遠くで聞こえる唸り声……動物とかじゃあねぇんだな……)」
ティタニア「もっとも、北西の真似っ子でしかないんだけどぉ……要は、とりあえずヘンな子をレッテル貼りして閉じ込めておく為のゴミ箱。
明確な治療法もないしねぇ、その手の子はぁ……あ、オフレコで頼むわよぉ……スキャンダルは男女関係以外ごめんだからぁ」
敵兵「わ、わかってます……」
ティタニア「そもそもぉ……理性……思考の発達にレッテル貼ってカテゴライズするなんて土台無理なのにぃ……
そんな複雑なもの、まだ治療するだけの技術なんてないわぁ……この先数百年、完璧な対処なんて無理よねぇ……」
敵兵「……」
敵兵「(三重の鉄の扉……こんなに厳重に収容、いや……監禁するような理由があったのか……?)」
ティタニア「まあ、あなた達はおんなじ釜飯食った仲だからねぇ……一応、どうなったか見ておくといいわぁ……」
敵兵「……あの、この……ドアの隙間から……ハミ出てるのは……」
ティタニア「……」
敵兵「か……髪の毛……?」
敵兵「(うげえッ……あ、青臭いって言えばいいのか……? こりゃあ……)」
ティタニア「妄言や徘徊が目立つようになったのは先週から。劇症が確認されたのは一昨日……
ああ、大丈夫よぉ……男に輪姦されてたってような事は無かったらしいし」
敵兵「(病室の壁や床を覆ってるの……ぜ、全部髪の毛かよ……)」
ティタニア「何せ誰も彼女の母国語なんかわかんないしねぇ……症状も症状だし」
敵兵「(髪の束の中心……あれが……)」
ティタニア「ここまで大人しくさせるのに、診察に当たった精神科医の片目と看護師の鼓膜、右手首が犠牲になったわぁ。
お気の毒だけど社交辞令……拘束衣に加えて轡と目隠し。それと、一応聴覚も制限させてもらったわぁ」
敵兵「……」
ティタニア「生きてるわよぉ、心配しないで。生に満ち溢れて困るくらいなんだから」
敵兵「生……?」
ティタニア「……」
敵兵「あの……も、もがいてる! 俺達が来てから……苦しいんじゃないんですか!?」
ティタニア「ちっ……『匂い』もダメか……」
敵兵「匂い……!?」
ティタニア「雄の匂い。あなたのを嗅ぎ付けて、発情してるのよぉ……この子」
敵兵「はあ!?」
ティタニア「タヌ子ちゃんが同席した時、この子が何を叫んでいるか教えてもらったの。
『私を使って』だとか、『子供をください』、『この子をを産ませてください』、だとか」
敵兵「何すか……それ……」
ティタニア「『ミズコ』だとか『ウブメ』、『ユキオンナ』……極東のそうした伝承が絡んでいるとは聞いたけどぉ……
アテクシらじゃあお手上げ。こうして他人を傷つけないようにしてあげる事だけなのよぉ」
敵兵「マジ……かよ……」
ティタニア「髪に隠れて見えないだろうけど……この子、あなたより体大きくなってるからね」
敵兵「確……かに……」
ティタニア「はじめの内は節々の痛みを訴えて……その内、臀部。お尻の骨が痛いって騒ぎ始めて。
今じゃ、日に二、三度ハーネスとベルトを緩めてやらないとって有様よ」
敵兵「……」
ティタニア「地母神の呪いだとかかしらねぇ……やだ、アテクシったら、柄にもない事を」
敵兵「な、治らないんですか……コレ……」
ティタニア「この機関に収容されてるって事を考えて頂戴。今までにないケースだから、アテクシもしばらくは通うつもりだけどぉ……」
敵兵「……うぶっ」
ティタニア「何かしらねぇ……フェロモンとでも言えばいいのかしらぁ。
あなた達異性は、彼女からの匂いを嗅ぐとアルコールに酔ったような酩酊感を覚えるって言うのよねぇ」
敵兵「まさに、今……頭酔っぱらってます、少し……」
ティタニア「……出直しましょう、吐いていらっしゃいな」
敵兵「何でだ……何があったってんだよ……」
女騎士「あー飽きた飽きた。もォ当分行かんでもいいな」
息子「でも、たまにはあそこ行きたい……かも」
娘「まだ探検したりないよね、お兄ちゃん」
女騎士「ヒマな御大将にでも連れて行ってもらいなさい、私はとりあえず田舎は向こう半年くらいいいや」
騎士ほ「……召集? 私にですか?」
エルフ近衛兵「はい、北西諸島から」
騎士ほ「モルドレッド卿ではないのですか?」
エルフ近衛兵「いえ……連合王国の竜騎兵団側からの要請のようです」
騎士ほ「私に何をしろというのかしら」
エルフ近衛兵「……先日の、西帝における災害対策支援の事かと。
確か、メリフェラ来訪からこちらまで国外視察の名目でお越しになられたのですよね」
騎士ほ「ええ。卿から話が通っている筈ですが……」
エルフ近衛兵「返事を遅らせるのは良くないのではないでしょうか……北西をあまり刺激しない方が……」
騎士ほ「……しょうがありませんわね。あの兵長姉弟……もう私は直下の部下ではないというのに。
分かりました、向かいましょう。救助活動へは、一度でも適当に参加しておけば文句も出ないでしょうし」
エルフ近衛兵「どうか、お気を付け下さい。お子様は我々が責任を持ってお預かりいたします」
騎士ほ「……共和国内で足止めを食らっているのも時間の無駄ですしね。確か、まだ鉄道も復旧していないのでしょう?」
エルフ近衛兵「30年かけて敷設した線路がオジャンらしいですからね……もうメチャクチャらしいですよ」
騎士ほ「了解。ならば、ペンドラゴンで直接帝国内へ向かいましょうか。私一人なら、本日中には着くはずですわね……」
エルフ近衛兵「(ワイルドだなぁ……)」
女騎士「帝国がブッ飛んだだあ!?」
騎士ほ「お、お姉様……初耳だったんですの?」
女騎士「知らねーよ!! 何だブッ飛んだって!! 文字通りブッ飛んだのか!?」
騎士ほ「ハンモックで新聞をお読みになっていたのは……」
女騎士「自慢じゃねぇが読み書きでガキどもに敵うとは思ってねぇぞ」
騎士ほ「」
女騎士「つーか何だよマジで何なんだよブッ飛んだって。布団か何かか帝国の国土は」
騎士ほ「い、隕石が上空で爆発したという発表が魔王軍と連合の側から……」
女騎士「バカじゃねぇの、どうせ連合のシミッタレと魔王軍のションベンタレが変な事やったもんでパチこいてるだけだろ」
エルフ近衛兵「いえ、しかし断定は未だできないのです……連絡手段も未だ途絶しており……」
女騎士「じゃあ断定『させろ』!! 連合のチンカスと魔王軍のゴキブリがやったって言いふらせ!!」
エルフ近衛兵「」
女騎士「西側の経済支援は主に北西と共和国が政策としてコツコツやってたんだ。
それをツミキ崩すみてえにブッ壊されたとなりゃ、政府側はともかく共和国民は堪忍袋の緒がメタメタだろ」
エルフ近衛兵「いや、さすがにそこまでは……」
女騎士「ふん!! 共和国民の中には6年前にコイツがやったテロを根に持ってるヤツもいるだろ!!
それを匂わせつつ扇動させりゃあ無能な愚民どもはちょちょいのパーだぜ!!」
騎士ほ「では、さっそく上空からビラを撒いてまいります」
エルフ近衛兵「(行動速いなぁ)」
活動家「隕石の爆発は連合の狂言だー!!」
活動家「議会は汚職を認め辞職せよぉー!!」
活動家「伝統ある共和国家のツラ汚しめぇー!!」
女騎士「爆発の影響は既に国境線沿いの民衆に現れているぞー!! 」
活動家「共和国民の人権を守れー!!」
女騎士「連中は爆風のみならず毒を撒き散らしたのだァー!! 北部や東部、その他各地で見られる感染症はチフスなどではないぞォー!」
活動家「チフスなどではないぞォー!!」
女騎士「今に毒は脳にまで回り、血をムラサキ色に変容させ、血尿が止まらなくなり、全身の穴という穴から下痢を吹き出して死ぬ毒の死病だァー!!」
活動家「マジか」
女騎士「魔王軍の魔物どもが独自に開発した最低最悪の細菌兵器だァー!! 表に出るなァー、感染するぞォー!!」
活動家「感染するぞォー!!」
エルフ近衛兵「(6年前を思い出すなぁ……)」
勇者「」
敵兵「」
戦士「オイ、オイあれ……あれって……」
賢者「あのデモ隊に混じってるあの女、あれ……」
敵兵「(え……まさか……まさか、あの女が……こんな堂々と……いや、まさか……)」
勇者「……デュランダル限定A解放、使用時間無期予備申請開始」
敵兵「(な、何で……何であの女……共和国に……!? ま、まさか……あい、あいつ……ガリアも目指してるのか……!?)」
勇者「見つっ、見つけ……見つけた……ははは、ははははっ、見つけた……」
警察官「こ、こら! キミ達、予定と内容が違……」
活動家「やべ、めんどくせーぞ!」
女騎士「かてぇ事言うなよマッポがよぉwwwwww楽しく行こうじゃねェかwwwwww」パンッ パンッ
警察官「ぐわ……じ、実銃!?」
女騎士「当たんねーwwwwwwwww」
勇者「見ぢゅけたあああああああああああっ、うはっ、はははははははっ、ははははははぁ!!!!」
敵兵「」
勇者「ははははははっ、僕は!! 僕は!! 僕の選択は、僕の旅は、僕は間違っちゃあいなかった!!」
敵兵「あ、あの勇者さん」
勇者「そこぉぉぉ、動くんじゃあないぞおおおお、ブッ殺してやる、僕が、僕がこの手で殺してやる!!」
敵兵「ゆ……」
勇者「あああああっ、最高の気分だあ!! だぁめじゃないかぁ、アジ、アジ、アジ、アジ=ダハーカぁぁぁぁ、
おまっ、おまっ、お前がっ、お前が人の前に出てきちゃあああ、おと、おとなしく、してなきゃさあああああああ」
女騎士「うわ……うわ、何アイツ。屋根なんか上っちゃって薬やってんのかよ……」
女騎士「ハッスルしてんなぁ……人間ああなったらおしまいだね、あーやだやだ」
女騎士「あ、落ちた。死んだか」
女騎士「すげー、ガッツあるなぁ。頭おかしいわ」
女騎士「うへ、キモいあいつ。私の事見てんの? キモいなヨソ行け」
女騎士「……え、ちょ……ちょ、待……あいつ、あいつヤバくね? 刃物持ってね? マジ頭いかれてるって、マジ……」
勇者「やっぱり、やっぱりお前、お前だ……お前だ、殺っ、殺してやるよお、この僕が!!」
女騎士「……」
女騎士「キモ……誰だお前……」
女騎士「おまわりさぁーん、軍人さぁーん、ちょっと熱くなっちゃった人いるみたいなんですけどー」
おまわりさん「はーい君君、何してるのかなー。ちょっと大人しくしようわらば」
軍人さん「ヘンな事しないでねー、お薬抜けたらおうち帰してあげるかひでぶ」
女騎士「」
勇者「ずっと、ずっと、てめえを、わ、忘れた日は無かったんだぜ、よお……6年前から……」
女騎士「は、はあ!? 何言ってんだよテメェ……マジモンのキの字だぜ、おい誰か!! 誰かこのバカやめさせろ!」
勇者「やっと……み、み、きひっ、見つけたんだ……逃が、逃がしゃあしねェからな……」
女騎士「私ゃテメェなんか知らねえよ、人違いだバカたれ! ヨソ行って暴れろよ、こ、こっちくんな!!」
勇者「……」
女騎士「きめぇんだよ! 寄るんじゃねぇ!!」パンッ パンッ
勇者「……」
女騎士「(えっと……何かな今の。どうやって剣なんかで銃の弾を切り払うのかな? 踏み込みが足りなかったかな?)」
勇者「こんなもんじゃあ、ないだろ……違うだろお、もっと、もっと抵抗しろよぉ、アジ=ダハーカさぁぁん!!」
女騎士「だぁから!! テメェみてえな知り合いなんかいねーよ!! 消えやがれ!!」
敵兵「ゆ、勇者さん、ちょっと落ち着いて!!」
戦士「どうしちまったんだアイツ……!!」
賢者「勇者君、勇者君!!」
娘「……お兄ちゃん、あの面子」
息子「ああ……覚えてる」
娘「殺……殺してやらなきゃあ、勇者の連中だよ……!!」
エルフ騎兵「おふた方! 騎竜で騎士様を回収したら即時撤退! いいですか、即時撤退です!」
娘「なんで……ですか……」
エルフ騎兵「デュランダルには敵いません、お忘れですか! 勇者との直接戦闘は不利です!」
娘「やってみなきゃあわかんねェだろォがァ……次ァ負けねえ、負けられねえンだよ……母様を助けにゃあ……!!」
息子「だめだ、今は救出を最優先……いいね」
娘「よかねェ!! 母様の敵、敵を放っておくのか!!」
息子「お前は敵にかまけてお母様を放っておくのか!! 親不孝者のバカ娘が、そんな女はぼくの妹でも家族でもないぞ!!」
娘「……あ、う……」
エルフ騎兵「いいですね! 今回随行させているのはクロウクルアッハです!
ただでさえ勇者相手には不利な上、機動力ではメリジェーヌに劣ります、極力逃げる事をお考えください!」
娘「りょう、かい……」
息子「了解。出るぞ!!」
レギンレイヴ「うげ、マジできやがった……」
ラーズグリーズ「んもう、せっかくラジオで宣伝したのにこんなお仕事なわけぇ?」
ブリュンヒルデ「しかも依頼主は身内、おまけに疑う先も身内……」
レギンレイヴ「ターゲットの勇者サマも大ヘマやりやがるし……あー、最近やってらんねぇや」
ラーズグリーズ「とりあえずぅ、あの2騎のドラグーンやっつけたら、勇者サマ捕まえて撤収。おーらい?」
ブリュンヒルデ「異議なーし」
レギンレイヴ「はぁーあ。いっきまーすよっと」
ブリュンヒルデ「ひでぶ」
ラーズグリーズ「ぷげら」
レギンレイヴ「」
娘「お兄ちゃん……お母様を助けて、おねがい」
息子「了解。そちらは任せる」
レギンレイヴ「……」
娘「3対2とか、こっちはハンデ認めちゃいねェんだけどなぁー……きたねえクソ女だよ、まったくなあ」
レギンレイヴ「は、はははは……おい、おい、お前らァ! ね、ね、寝てんじゃねーよ、お前ら!!」
ブリュンヒルデ「」
ラーズグリーズ「」
レギンレイヴ「し、死神だろ……ア、アタシらワルキューレだろ……お迎えに来て頂く側だぜ、おいィ……」
娘「ようし、サシでやるかァ? 勇者の取り巻きにしちゃあ殊勝なこった、こいよ」
レギンレイヴ「(ド、ドジこいたァ~~~ッ!!)」
娘「……おい、命乞いはどォした? 聞こえねェぞォ?」
レギンレイヴ「(て……手柄を立てて褒美をもらうつもりが、こいつはいかーん!!
ユングヴィ閣下はお怒りになる、こいつらを始末するのは無理だ!! チクショー!!)」
娘「……」
レギンレイヴ「きょ、今日はこれぐらいにしておいてやるわ、蛮族がァ……
その腕っ節があれば、来るべきラグナロクでも相応の褒美が与えられようものだが……どうだ、私と共にヴァルハラへ」
娘「行かねーよブッ殺すから」
レギンレイヴ「ヴァルハラはいいぞォ、ささ、酒はの、飲み放題……く、首は狩り、狩り……」
娘「テメェの首を今すぐ狩れれば満足だから行かねェよ、ナメてんのか? あ?」
レギンレイヴ「すいませんでしたァーッ!! 何でもするんで命だけは助けてくださァーい!! おねがい!!」
息子「お母様ァァァッ、今っ、今そこに向かいますッ!!」
女騎士「タイム」
勇者「……」
女騎士「タイム!! タイムタイムタァーイムッ! タイムだっつってんだろ!! き、聞けボケェ!!」
勇者「お前は……そうやって適当な呪詛を吐き散らして……まずは、ノドをカキ散らしてやる……二度と……」
ケルベルス「タイム。タイムだ、勇者」
女騎士「なっ……!」
勇者「……」
女騎士「(モフモフのわんわんだ……)」
ケルベルス「……自分が何をしてるか、わか」
勇者「そこの!! クソ女をブッ殺すんだよ!! どかねぇとテメェもたたっ殺すぞクソ犬が」
ケルベルス「やめろと言ってる!! いいか、既に二人が犠牲になっている。オレの言っている事が」
勇者「やっぱテメェらはダメだな……老害が。散々犠牲の上で私腹を肥やし……
いざこうして僕が犠牲を乗り越え目標を達成する直前になったら……そうやって目の前で邪魔しくさる……」
ケルベルス「何だ……何を言ってぶべら」
女騎士「」
勇者「口を利くのもめんどくせえ……ほんと邪魔だ、そこのクソブロンド殺せねえだろうがァ……」
女騎士「ひ、ひい、ヤメロ、くんな!! くんじゃねーボケ!! やだ、やだやだ!! きもちわりー!! やーだ!!」
勇者「殺してやる、ころっ、殺すぅ」
女騎士「か、カネ! い、いっくらでもカネでも、薬! 何でも薬やる!! やるから!! な、何でもやるから!!
い、いや、いやだ!! し、死にたくない、何でも、何でもやるからどっか行けぇ!!」
息子「かあさまから、離れろおおおおッ!!」
勇者「ぐっ……!! ドラグーンがあ!!」
息子「勇者の……聖地の剣なら、僕を、母様を救ってみせろ……ジョワユーズッ!!」
勇者「ジョワ……ユーズ……!? デタラメをッ!!」
息子「消えろッ、母様の敵!! 死ねッ!!」
勇者「邪魔すんなら殺すって言ったろォがッ!!」
息子「があっ!!」
女騎士「」
息子「母っ、かあさま……」
勇者「ザッケんじゃあねぇ……何で……何で、僕ばっかり……こんな目に……ふざけんなよ……」
女騎士「いやーちょっと待って!! 待った! き、きっと今日は運がねぇ日なんだよ、出直せ! な!? そうしよう!!」
勇者「いつもいつも……みんなで邪魔しやがって……クソが……」
女騎士「お願い! 死にたくありません!! 死ぬのはやだ!! ぜったいやだ!! やーだ!!」
勇者「その命乞いを踏みにじったのはお前だろ……しっかり殺してやるよぉ、うく、くくくく、くく」
パンッ
息子「ぎゃっ!!」
勇者「!?」
息子「あっ……痛……ああうっ……!! お母……様……な、んでぇ……」
女騎士「あ、あのガキは敵だ!! お友達の私達の敵だ、早く逃げよう……ほら、な!!」
息子「おかあさま……おかあさまぁ……」
勇者「……」
女騎士「(やべえ、もう弾がねぇ……クソが……!! ぜ、絶対に生き延びてやる……しし、死んでたまるかよ……くだらねー!!)」
女騎士「(しめたぜ……騎竜は無事だ、あれに乗って……)」
勇者「お前……はっは、やっぱ生きてちゃダメだわ……もう、ダメだ……」
女騎士「(うわ、うわうわうわうわっ!!)」
勇者「死ぃぃぃ、ねぇぇぇぇぇっ!!」
女騎士「うおああああっ、やめ、やめろ、やだ、やめ、あぶねえ!!」
勇者「死ねッ、死ね!! 死んでしまえ!! 動くんじゃあねえッ!!」
女騎士「あぶっ、あぶねっ、あ、当たったらどーすんだよォ、し、死んじゃうじゃねェかよォー!!」
勇者「デュラン……ダル……どこが聖剣だよォ……この、このゲス女一人殺せねえで……何が……」
女騎士「(た、弾もねえし予備の銃もねえ……く、くそくそくそくそ……か、かくなる上は……)」
勇者「チョコマカ……動くんじゃあねえよ……てめえ!!」
女騎士「(かくなる上は……あの子の持ってきた、あのスゲエ剣しか……ねえ!!)」
勇者「ナマクラがああっ!!」
女騎士「うおおおおおっ!! やだ!! やだやだ死にたくない!! お前が死ね!! 死ね!! 死ねばぁーか!!」
勇者「がっ……ぐ……!!」
女騎士「うひゃあああああああああ」
勇者「てん……めぇ……」
女騎士「さ、刺さった!? 刺さっちった……?」
ズボァー
女騎士「おわァー、ぬ、抜けちった」
勇者「がっは!!」
女騎士「うわ……うわ、キッタネ!! おわ、くんな!! きもちわり、くんじゃねーよ!!」
勇者「おかっ……おかし……勝てねぇじゃねぇか……!! デュランダル……ふざけんじゃあ……ねぇぞぉ……!!」
女騎士「うおおおきめぇ、真冬も近ぇのに頭あったけぇのはほんと困るぜ……」
息子「かあ……さま……」
女騎士「世話の焼ける!! とっととずらかるぞ!!」
息子「……はいぃ」
女騎士「あんな刃物振り回すバカの相手なんかこれ以上してられっか!! 糞が!」
女騎士「……」
勇者「が……ぐ……くそ……が……血、血が……倒れてなんか……いられねえ……」
女騎士「ちょりっすwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
勇者「ごろ……す……ぶっごろす……ころ……」
女騎士「お前のその剣も高そうだよなーwwwwwwwwwwwwいいなーwwwwwwwww憧れちゃうなwwwwwwww」
勇者「……」
ドズッ
勇者「ごあっ……!!」
女騎士「キレ味もいいみてえだし……デュランダルっつったか? わりーなー、お土産貰っちゃってwwwwwwwwwww」
勇者「」
勇者「返っ……がえ、がえぜぇ、やめ……ろぉ……」
女騎士「おいーwwwwwwwwwやーめーろーよーwwwwwwwwww」
勇者「やべろお、がえぜ……おまえなんがが……デュランダル……かのじょがくれた……剣……」
女騎士「あんだってぇー!? さっきテメェ、さんざんこの子ディスってたじゃねーかよォー!! かわいそーになぁーデュラ公なぁー!!」
勇者「がえ……せ……」
女騎士「ンだよ、オメェが取り落としたんだろォ? 取得物横領は私にゃ適応されねぇんだよ、諦めなチンカス」
勇者「お前……なんがに、まげるはず……ないんだ、この……ぼぐが……勇者は、負けちゃ……」
女騎士「デュラ……んとかに……勇者……あ、あー!! 勇者!! お前勇者か!!」
勇者「」
女騎士「ハッハー、無様なもんだな勇者サマよぉー!! 人魔共存は実現しましたかぁー?
まあ、オメーらの足りねえ脳ミソじゃ無理だろーがなァー!! すぐ魔王も地獄に叩き込んでやっから安心して死にな!!」
勇者「ぢ……ぐ……しょう……」
女騎士「ひゃっひゃっひゃっひゃっひゃwwwwwwwwwwwかっかっか、えひゃひゃひゃひゃwwwwwwwwwwwwwww
テメェのような刃物を昼間っから振り回すバカガキが勇者なら私ゃ創世の女神だなぁwwwwwwwwwwwwww」
勇者「……」
女騎士「さんざんコケにしてくれやがってよぉ、ガリアなんつー名前も知らねード田舎からやっと帰ってきたってのに。
都会派のこの私がどんだけ辛かったか想像できるかぁ? ようやく文明に浸れると思ったらテメェなんぞにカラまれてよぉ……」
勇者「……ガリ……ア?」
女騎士「おーおー、随分血ィ出てんなー。御愁傷様、女神サマの私に刃向った酬いだ、苦しんで死ねwwwwwwwww
はははは、ひゃっひゃっひゃっひゃwwwwwwぁぼ」
敵兵「何が女神だ、この邪神がっ!! 彼から、離れ……ろ……?」
女騎士「うおおお、ビビった!! な、何だよォ!! だ、誰が撃ちやがったんだァ!? どこだァ!?」
敵兵「(えっと……何かな今の。どうやって剣なんかで銃の弾を切り払うのかな? 踏み込みが足りなかったかな?)」
敵兵「負傷者回収急げ!! 撤収する!!」
女騎士「オゥコラァー!! 今撃ったの誰だボケェー!! 今名乗り出たら私直々に苦しめて殺してやるから出てこい!!」
敵兵「勇者から離れろ!! 言う事を……!」
女騎士「テメェかぁ、身の程知らずはァ!! おゥ、テメェどこのバカだ? 共和国のお役人かぁ? ご苦労なこって」
敵兵「いう事を聞けッ、アジ=ダハーカ!! このクズ女が!!」
女騎士「て、てめ……!!」
敵兵「(勇者さんの剣……クソ、コイツが妙なチカラを持ってるってわけか……!)」
女騎士「テメェは……クック、そうか……テメェ、のたれ死にもしねェで勇者にケツを売り渡しやがったのかァ」
敵兵「(オレの事は覚えてるんだ……)」
女騎士「裏切り者のクソ童貞野郎が、こんな所にシャシャり出てきやがってよォ。わざわざ私に殺されに来たのかァ?」
敵兵「(要求……クソ、コイツ相手にどう交渉すればいい!? 何かで弱みを握るか……いや、無理か!?
コイツは勇者さんの言う通り、自分の命以外はすべて捨て去れる女……交渉なんぞ……!!)」
女騎士「おーお、そうかァ……ケツを掘ってくださる勇者サマが恋しいワケかぁ? とんだカマホモだぜ!!」
敵兵「挑発は無駄だ、彼を返せ」
女騎士「じゃあテメェはそこで死ね。簡単だろ、コメカミの真横でトリガーを引くだけだぜ」
敵兵「な……に……」
女騎士「できるかなぁ? 魔物に魂を売るほど生き意地のキタネぇテメェにできるかなぁ?
なぁ? ほーら、がーんばれwwwwwwwがーんばれwwwwwwこわいぞこわいぞがーんばれwwwwwwww」
女騎士「そもそもよぉー、こんな衆人環視の中でケンカ売ってきたのはこのガキの方なんだぜえ? イカレてんじゃねーのか?」
敵兵「そ……れは……!」
女騎士「いわば私は被害者なんだよ……おたくんトコのガキはどういう教育してやがるんだ?
刃物ブンブン鼻水ダラダラ、オラは勇者だじょーwwwwwwとか、一般の皆さんに迷惑だからカギ付のお部屋にぶち込んどけ、な?」
賢者「中尉、こちらで援護を……!!」
敵兵「ダメだッ!! ただでさえ先の事件があったのに、ここで魔術なんか使う訳にはいかないッ!!」
賢者「しかし……!」
女騎士「どうすんだよ童貞、死ぬのか死なねーのか……おうい、インチキ勇者の金魚のフンども」
戦士「お、俺達の事かよ……!」
女騎士「テメェらがこの童貞を殺すんでもいいんだぜぇー? その斧でも杖でも使って頭カチ割れや」
賢者「クズ女……地獄に落ちろ!」
女騎士「早くしろやグズども……こっちゃ叩き売れそうな古くせえ剣とクサレ東方人一匹の命で手打ちにしてやるっつってんだぞ?
どんだけ強欲なんだよ魔王軍ってのは。善良な人間から搾れるだけ富を搾り取る、まさに悪魔の集まりだなァ……」
敵兵「てめ……てめえッ……!! この人たちは、そんな……」
女騎士「そぉだよなぁー、テメェを大事にしてくれる聖人揃いだから、命も惜しくないよなぁー。
って事ァ、このクソ勇者も正義の為に殉職する覚悟はできてるよなぁー。あ、なんだ。じゃあ別に殺してもいいのか、ハッハー!!」
レギンレイヴ「……あのう、ほ、本当に行けば殺さないんですね? ね?」
娘「さっきからそう言ってんじゃねェか……やれ」
レギンレイヴ「は、はひっ……あのッ、私の事は北部神族のレギ……」
娘「知らねえよ、さっさと行け。泥沼になって困るのはお互い様だろ……ミスったら殺すぞ」
レギンレイヴ「了解であります……うへへへ……」
レギンレイヴ「おゥらァァァァァッ!!」
敵兵「なっ……!? ぐあッ……!!」
レギンレイヴ「その首もらった連合人んんんんッ、はははははっ!!」
戦士「な、何だあいつッ!?」
賢者「北部神族!? ワルキューレがどうして共和国にまで……!」
女騎士「何だ、今の……え?」
娘「お母様、やりましたわ!! あの男、もう生きてはいますまい!! 撤退いたしましょう!!」
女騎士「お……お? おう……おう?」
娘「魔物どもの仲間割れにございます! あの死神、少し脅したらころりと寝返りました!
今のうちに撤収しましょ……そんな血で汚れた男なんて放って、さあ!」
女騎士「……ふん、あんたが言うなら、まあ良かろ。今日はこれっくらいにしといてやらあ、次はもっと面白いもん持って来いよなぁー」
敵兵「がはっ……げっほ……あ、あんた……」
レギンレイヴ「へ、へへへ……い、いやァ……ア、アタシャただ脅されただけなんですよォ……しょ、しょうがないっしょ」
戦士「……今はお前なんかに構ってるヒマはねぇんだ、この場を納める事の方が先決だ」
賢者「救護班編成急げ!!」
レギンレイヴ「ふ、ふへへへ……」
敵兵「……」
レギンレイヴ「(アタシの立場的に、この東方人をマジにブッ殺すのもマジィんだよねぇ~……何事も臨機応変にってねぇ。
かと言って、あの場はドラグーンのガキに従っとかないと命がヤバかったし……いやぁ、生きてるって素晴らしいですオーディン様)」
息子「お母……様ぁ……」
女騎士「ん、何さ」
息子「……」
女騎士「あー、さっきの事? わりーなwwww痛かった? めんごめんご」
息子「……」
娘「お兄ちゃん、まだ痛む……? もうすぐアルヴライヒだから、頑張って……」
息子「ううん、大丈夫……ありがとう」
息子「北西諸島……お母様の後輩の方の言った通りだ……お母様の意思を、あそこまで歪な形に捻じ曲げる魔王軍……」
息子「お母様に……あんな事をさせるなんて……」
息子「皆殺しだ、魔王軍も、勇者に与する存在すべて……!! バラバラにしてやってもまだ足りない、焼き尽くして滅菌してやる……」
息子「お母様が、もう誰も傷つけず……誰にも傷つけない世の中に、あいつらは必要ない……!!」
息子「勇者……そして、連合にいたとかいうあのクソ男ッ……!! 楽には殺さないからな……!!」
騎士ほ「……はじめまして、ディナダン卿」
ディナダン「あら、まあまあ……ごきげんよう、はじめまして。今朝まで共和国にいたんですって? 大変ねえ……」
騎士ほ「いえ……円卓の皆々様方に比べれば。どうか、卿も私どもを存分にお使いくださいまし」
ディナダン「おばあちゃんには孫の手が一本あれば十分よ、若い子は私なんかに構う事ないわぁ」
騎士ほ「ご謙遜を……」
ディナダン「おばあちゃんは、裏方でコソコソいじわるでもさせてもらうから、ねえ」
騎士ほ「……して、本日は私めに何用でございましょうか」
ディナダン「何用……そうねぇ、それじゃあ単刀直入に、あなたに聞かせてもらおうかしらぁ」
騎士ほ「(クソババア……やはり、何か腹に一物忍ばせているか。わざわざ竜騎兵長の名を使って、小賢しいマネを……)」
ディナダン「私が、極東皇国の幕府と繋がりがある事は知っているわよね?」
騎士ほ「……ええ、もちろん存じております。夫を失い、竜騎兵を志願する上での目標である卿の事は、それはもう」
ディナダン「あらぁ、お世辞かしら?」
騎士ほ「拙い世辞ですが、ぜひお受け取りくださいまし。
両国との間に結ばれた修好通商条約、幕府側の不平等改善に尽力なさっている卿のお志、まさしく騎士の鑑にございます」
ディナダン「悪い気分ではないわねぇ……それじゃあ……」
騎士ほ「……」
ディナダン「幕府のおチビさんを通して、アジ=ダハーカの腹の内を探っていた事も御存知かしらぁ?」
騎士ほ「!?」
ディナダン「共和国の演説……さぞご立派だったみたいねぇ……6年も前だから忘れちゃったかしら? 実行犯さん?」
騎士ほ「(この……ババアッ……!! わ、私を……探っていやがったのかッ……!? まさかッ……!?)」
第8部 ガリア=ベルギガ編 誤
第9部 パンとか止めるやつ
結構楽しみにしてる