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≪あらすじ≫
キュートでファンシー、ビビッドなお茶目さが魅力でお馴染みの女騎士ちゃんがめっちゃ活躍した。
女騎士ちゃんは果たして薄汚い魔物どもを一匹残らず根絶やしにする事ができるのか。
元スレ
女騎士「おばあちゃんが言っていた。世界はこの私を中心に回ってる」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1385483711/
朱天「茨木が帰ってこんのう」
大嶽「どこぞで男でも漁っておるのでしょうな、あの女の下のだらしなさは我ら随一……」
朱天「大陸人ごときとまぐわうとは、見境の無さ之、百鬼の淫乱第六天魔王よ」
「そういう事を並べるのは」「いじめととられて」「しかたございませんなあ!」「おやかたさま!」「おやかたさま!」
朱天「おや、遅かったの。そっちが口を利くようになるのを見ると……うはっ、これは惨めな!!」
大獄「あーら情けない!! ヘソで紅茶の適温沸かしてしまいそうですわこりゃあ!!」
「労組に」「うったえ」「ますわよ!」「おやめください!」「おやかたさま!」「このビッチ!!」
朱天「かつて武士に叩き斬られた『片腕』……貴様、保険を使ってしまうとはのう。ああ恥ずかしや、凱旋した時にどう言い訳をするのじゃ」
大嶽「保険として腕を持っていてやった我らに、礼のひとつもないので? 親しき仲にも何とやらでしてよ」
「ごめんちゃい!」「ありがと!」「しね!!」「ちゅー!!」
大嶽「まるで北西の妖精のようですわ、ちょこまかしてこざかしい!」
朱天「チビ茨木じゃのう。のうチバラキ」
チバラキ「あんまりでございます!!」「あんまりでございます!!」「でもでも!」「やりたい事は試せたから!!」「ゆるして!!」
大嶽「やりたい事?」
チバラキ「ヨモツメノ!」「トウガン!!」「あの子で!」「ためすの!!」
朱天「鬱陶しい声じゃの!! そのノド焼きつぶすぞ!!」
チバラキ「ごめんね!」「ごめんねー!!」
朱天「……で、どうするね。ぬしが殺生石をメリフェラで起動したのは、あの大将にも知らせてないんじゃろ?」
九尾狐「あ、忘れておった。これはうっかり」
朱天「わざわざあの小童に、我々松山が本気である事を錯誤させる為だけに……何も、ぬしが表に出る事はなかったのでは?」
九尾狐「んまあ、こうして魔王軍……『ゆうしゃさま』に戦の動機を与える事には成功したのだ。聊か疲れたがな」
朱天「エルフの大将の胃に、またえらい大穴が空くのう。楽しみだのう、白面九尾清明……いいや、ダキニよ」
ダキニ「案を出したのは妾ではなく、汝ではないか。さすがに鬼はえげつないな」
朱天「稲荷の元締めにそう言われるとは、京のあやかし冥利に尽きるでな。わざわざ幕府を謀る為だけに、稲荷の子孫を演ずるとは……
そちらの方がよほど悪辣に見えるでな。あいや天晴、秩序と中庸への憎悪は我らを遥かに凌いでおるのう」
ダキニ「仮初の秩序と中庸が何をもたらす? 幕府の成立なんぞ、皇国の人間の精神の遅滞を招いただけではないか。
今ではどうかな? 女が国産みの役から背を向け、国政に土足で踏み入り……男は惰眠の中で無為なる肉欲に溺れておる。
少なくとも、妾は秩序と中庸とやらの中で、意義ある繁栄とやらは目にしておらん。新たな怠惰を得る為のクビキを引いただけだな」
朱天「さすが、古参の老害はよくわかっておられる。それでこそじゃて……」
ダキニ「口の減らん鬼だ。汝はただ戦場を求めてうろついているだけだろうに」
朱天「御前はお国の輝かしき未来の為に、この辺鄙なくそ田舎までいらっしゃったと?」
ダキニ「言うようになったな、小娘。ああそうよ、その通り。妾ほど皇国を憂いておるものは帝をのぞいて他におるまい。
秩序と中庸は、ヒトの心の哲学足りえぬ。我ら百鬼が、原初の混沌でヒトを導かねばならぬのだよ」
朱天「排泄物が食物に転ずるほどの混沌……か。文字通りクソを食って生き長らえておる大陸人を見習えと?」
ダキニ「死んだ魚の目で渡来するものを受け入れ続ける幕府の蛆どもよりかは滾っておるわ。
そもそも、妾の出自を忘れたか? 妾はもともと、大陸で信仰を集めていたのだぞ」
チバラキ「過去の栄光ー!」「昔取ったキネヅカー!」「おれっち昔はワルかったんだよねー!!」
大嶽「殺されますわよチバラキ」
雷帝「よこせ」
勇者「……」
将軍丙「……」
雷帝「あーっ、言葉が汚かったかしらぁ。ちょーだい」
勇者「……」
雷帝「かーしーて。すぐ返すから。死ぬまで借りるだけだからさぁー。いいじゃんかよォー。
あんたらまも……魔族なんか、無駄に何年も何年も生き意地汚くのさばってんだからサァー」
将軍丙「し、しかし……現物は白の城塞で保管しているとはいえ、本国でのオフィシャルクラン首長の承認を取らねば如何ともし難く……」
ゴーストアーマー「(バカ将軍……)」
ティタニア「(東欧の目と鼻の先の白の城塞にある事をバラすアホタレがどこにいるのぉ……!?)」
雷帝「んー……何か出し渋ってるねー。雷帝さん気分悪いねー。帝国さんとしてはどう思うぅ? ねえどう思うぅ?」
妹「魔物の癖にケツの穴がミニマムですわねー!! さっさと出すもん出しゃあいいのに!!
えっとぉー? なんて言いましたっけ、ネキリの杭だか楔だか言いましたっけぇ?」
ティタニア「(クズ女……!!)」
ゴーストアーマー「(こいつがばらしやがったのか……!!)」
クシャスラー「はぁ……そうでございますか、連合がね……」
勇者「ちょっとした不備で情報のリークがあったらしい。今朝も早くからよこせって言い寄ってきたよ」
ジャヒー「生き意地が汚いのはどちらかしらねえ。北に引っ込んで凍土でも耕しておればいいのに」
戦士「しかしよ、どうする気だ? これ以上連合の言いなりになるのも癪だぜ」
僧侶「でも、その……ネキリの杭? あっちに目を通させないと、またこっちに因縁ふっかけてきますよぉ」
賢者「めんどくさいわね……ゲットー査察の代金って事?」
勇者「もちろん魔王……彼女からも指示は仰ぐつもりだ。ただ……」
クシャスラー「勇者たるあなた本人の意思は定まっているのですね」
僧侶「……ど、どうするんですか」
勇者「ああ。当面は、あちらの意向通り……人員を付けて引き渡そうと思う」
戦士「正気かよ!?」
勇者「いたって正気だ。多様な状況下でのテストをすべてこなせていないとはいえ、あのリスキーな術を既に……
既に2回も実行できている。実物がなくとも、僕や魔王の兵装の改修には……まあ、差し支えはないと思う」
賢者「あなたがそう言うなら……」
戦士「あークソ……ちゃんとクランを通してるんならいいんだけどよォ……頼むぜ勇者よぉ」
勇者「すまない、僕だってあれを一時的にとはいえ手放すのは惜しい。しかし……」
戦士「あー、わかってるよ。文句はいくらでも出るがモメる気はねぇ、大多数に刃向ってもしょうがねぇよ」
勇者「……ありがとう。魔王……拝火神族の意向を実現する為には、こうした妥協も必要なんだと思う。
天上から全てを見通す秩序を成立させる為の第一歩だ。ここで連合と諍いを起こすべきじゃない」
賢者「……」
勇者「混沌から起こる戦なんて、あってはならないんだ。パワーゲームからなる中庸さを孕む平和も、それは仮初に過ぎない」
クシャスラー「心得ております……」
賢者「(……ヴォーパル鋼を用いた陣術のテストを『2回』? 聞き間違いかしら、それとも……?)」
息子「お母様、夕餉のお時間です。食堂へ参りましょう」
娘「お母様……何をなさってるの? お絵描き?」
女騎士「……そこにペンと紙があるから、あなた達ちょっと静かにしてなさいな」
息子「はあい」
娘「あ……あなた、いい万年筆持ってるのね。うらやましい」
ほ子「卿が……買ってくださいました……」
女騎士「……うーむ」
ポニテ「騎士様、お夕食の時間です……騎士様?」
騎士ほ「お姉様、どうかなさいまして?」
女騎士「おお、お前らか。ガキどもに見せてもしょうがねえや、見てくれよ」
ポニテ「はあ」
騎士ほ「まあ、お姉様にクロッキーのご趣味がおありだったんですの?」
女騎士「バカが!! 次代の戦場を席巻する新兵器を考案していたのだ」
ポニテ「ほう……興味がありますね」
女騎士「そうだろう、実際に戦火を交える人間はこぞって私の名が冠された兵器を求める事だろうよ」
騎士ほ「拝見させていただいてもよろしくて?」
女騎士「そんなに見たいかー、しょうがないなー……これなんかカッコいいだろ、84㎝大砲塔だ!」
ポニテ「」
ポニテ「……何が84㎝なのでしょう」
女騎士「口径だ、直径84㎝の砲弾を用いた超スゴイ兵器だ。砲塔ごと共和国の連中が敷設したレールで移動できるのだ。
共和国規格の車輪が備え付けてあり、砲身長ざっと40m! ガタンゴトン移動!! キキーッ到着!! これドーン撃つやろ? バゴーン!! 相手は死ぬ」
ポニテ「(8.4㎝……じゃないんだよね。84㎝……?)」
騎士ほ「お姉様、それですと砲弾一発あたり撃ちだすのにどれだけのコストがかかるのでしょう」
女騎士「知らね。そういうの私が考える事じゃないじゃん」
騎士ほ「」
ポニテ「れ、列車砲という着眼点は悪くないと思います、はい……」
女騎士「だろ? ほの字よ、あんたはそういうわけわからんところで現実主義者になるからダメなんだ。このゴミ!! クズ!!」
ポニテ「……おや、こちらは何でしょう……」
女騎士「おー、それか。何だろうなあ、当ててみなよ」
騎士ほ「……」
ポニテ「……」
騎士ほ「(何だ……?)」
ポニテ「(裁縫の……糸を巻くアレ?)」
女騎士「はい時間切れー。ほんとお前らダメだなー、頭カチンコチンなんだからなー。
正解はだな、各所にアルコール由来の固形燃料を満載させ、超スピードで回転、走行させるのよ」
ポニテ「(これが……走る……)」
女騎士「ブシュシュシュウウウウ!! ドガッシャアアア。逃げ惑うアホ連合兵にクソ魔物!! ウギョオオオー!! 相手は死ぬ」
騎士ほ「」
騎士ほ「素晴らしい発想ではあるのですが……コストの面はどうなっているのか……」
女騎士「知らねって言ってるやろ。んー、あれだ。基礎は木造だから……んーと、そうだな。こいつらの小遣いでも何とかなる。
しかしだ、こいつの真価は塹壕にこびりつくカスどもをこそげ落とす事。12.7㎜機関銃の搭載が必須なのだ。それを含めると……」
騎士ほ「(機銃!?)」
ポニテ「(これは……これはどう動くものなのだ!?)」
女騎士「いや、だがリーズナブルさを追求した兵器である事は間違いないぞ! この中に捕虜の死体でもねじ込んでおけば効果倍増だ」
ポニテ「(確かにこれが目の前まで転がってきたら怖い)」
女騎士「大型化が進めば、水上運用も可能になるのだ。シュシュシュウィィィィ!! 北西のバカどもが超焦る!! バキュンバキュン!!
残念でした!! 改修の進んだこの子に銃なんか効きません!! オババーン!! 280㎜砲がドラゴンのどてっぱらをぶちぬく!! 相手は死ぬ」
ポニテ「で、ではコレは……」
女騎士「ククク……貴様ら騎乗兵が泣いて喜びそうなシロモノだ。古来から銃剣……バヨネットというものは存在する、しかしだ。
拳銃でありながらこれはサーベルとしても使えるのだ。白兵戦では非常に便利な兵器だぞこれは。相手はどっちを使うかわかんないのだ」
騎士ほ「これは……ホルスターに収めるのですか? それとも鞘に収めるのですか?」
女騎士「知らね。最強だからそんなんいらねーの。これを装備した兵士と相対した魔物は例外なく死ぬから」
ポニテ「(あったらいいなぁそんな兵器)」
騎士ほ「……では、こちらは。カンオケに……車輪がついているので?」
女騎士「愚か者め! それは史上最大の超兵器だぞ! 厚さ3mのコンクリート製装甲壁に現行の8.8㎝を八座搭載した、
私の考えた最強のモビルトーチカのファランクス・ツヴァイだ!! 先行試作型のファランクス・アインの課題をクリアし実戦投入される予定なのだ!」
ポニテ「……この右下のちっちゃいのが人との比較でしょうか」
女騎士「超デカくて強いんだよ。ドラグーンなんかハエだハエ、魔王だろうが勇者だろうが尿漏れを禁じ得ぬだろうよ!
こいつの通った跡には教皇領のカビ生えた秩序だろうが、異臭を放つ薄汚い魔物どもの産む混沌だろうがチリひとつ残らん!!」
騎士ほ「(お姉様の設定はどうも外連味はありますが……いささか緻密さに欠けるのが難点ですわ)」
ポニテ「(良かった……設定か……本当に良かった)」
女騎士「あの童貞大将のヤロー、こうして私が早くもツヴァイの企画を出してやってるのに、未だアインすら完成せんとは。怠慢だな怠慢」
ポニテ「」
ポニテ「あ、あなた達はどんな絵を描いているのかなあ?」
娘「わ、わたしは……」
ポニテ「……えっと……銃かなあ?」
娘「は、はい……し、試作のものはお兄ちゃんが触った事があるみたいで……単独携行できる最大の火力っていうので。
最低でも……壁越しに歩兵を壁ごと抜けるような銃なんです。銃身の先端にはこうしたマズルブレーキを施して……
当面はシングルローダー方式でも、ゆくゆくはセミオートマに機構を改良していけないかなって……」
ポニテ「」
息子「北西の戦車開発を念頭に置くより、やっぱり対ドラグーンに特化した取り回しの良い武装の方がいいって僕は思うんですけど……
ワイバーンのウロコの持つ靱性は確かに小銃じゃあ抜けないけど、それで携行性を損なっちゃ元も子もないよ」
ポニテ「(右肩と左肩それぞれぶっ壊れて二発しか撃てなさそう)」
女騎士「いやだめだわ、そのライフルでも私のこれには敵わないわ。最強だから」
娘「そ、装弾する際のインターバルを見極めて応戦します」
女騎士「インターバルなんてないし。これフルオートで撃ちまくれるから皆殺しにできるし」
娘「ぐぬぬ」
息子「ぐぬぬ」
ポニテ「えっと、君は……何かなこれは」
ほ子「み、みないで……はずかしい」
ポニテ「(……トリュフ? 黒いキノコみたいなものが)」
ほ子「ばくだんが……いちばんつよいかとおもいましたから……」
女騎士「いや、爆弾でも傷つかないし。最強だからこのコンクリートは破れないし」
ポニテ「(物騒なお子様が揃ってるなあ……)」
ブラウニー「……」
ピクシー「仕事こないですねー」
敵兵「……そっすねえ」
ブラウニー「結局ネキリ……でしたっけ。あれも連合に取られちゃったんでしょ?」
ピクシー「あーつまんない、せっかく遠出したのに連合へのお土産探しに行っただけみたいじゃない!」
ブラウニー「射殺してやればよかったのに! それなりに銃は上手いでしょ!?」
敵兵「お、俺!?」
ピクシー「そうですよ! 腰に提げてるのは飾りですか!?」
敵兵「ほとんど飾りです……そういや、皆さん銃は……持ってないですヨネ、すいません」
ブラウニー「そりゃあねえ……」
ピクシー「持ってるだけで、私達はハダがかぶれちゃいますから。硝煙もけっこうきついんですよ」
ブラウニー「そもそも、私達に合わせたサイズの銃器が開発されてないんですよ。市場流通なんて、本国でも夢のまた夢です」
ピクシー「六分の一サイズの拳銃なんて。西欧の技術じゃ、あっという間に金属疲労で壊れちゃいますよ」
ブラウニー「それでも銃器を持った部隊戦うときには……あの気持ち悪いガスマスク被って全身防護。
もちろん翅……羽も守らなきゃいけません、地べたをえっちらおっちらです。ぶっちゃけ、私らは前線にいない方がマシなんですよ」
敵兵「なるほど……確かに、妖精族と実際に戦った事はないな」
ブラウニー「ポピュラーな武装としては……そうですね、よく使われているのはクロスボウでしょうか。
あくまで主戦場で戦う訳じゃありません、護身その他用途に扱うくらいですけどね」
敵兵「(妖精ってなんか魔法とか使わないの? クロスボウ撃つの?)」
老婆「それこそ大惨事だものね、妖精さん達がかりだされる事になるなんて。よっぽどだわ」
ピクシー「」
ブラウニー「」
敵兵「うひゃあ」
老婆「ごめんなさいねえ、立ち聞きしてしまったわねえ。悪気はなくってよ、ごめんあそばせ」
ピクシー「はあ」
ブラウニー「そいつはどうも……」
敵兵「……あ、あ、あの……どちら様、でしょうか?」
老婆「ご覧の通り、余生をそれなりに謳歌しているおばあちゃん。今日は、入院してる子のお見舞いに来たの」
敵兵「お見舞い……?」
老婆「かわいそうに、左腕をなくしてしまったらしいのよ。ご存じない? 城塞の陸軍病院で療養してるらしいのだけれど」
ブラウニー「左腕って……例の、極東の彼女でなくて?」
敵兵「(身なりといい、顔つきといい訛りといい……大陸人、それも北西諸島の人だよなあ……幕府の人間じゃないだろうし)」
老婆「病室を知っていたら、教えて下さらないかしら」
敵兵「は、はいはい。お連れしますよ」
敵兵「(のらりくらりとこの詰め所まで入ってくる辺り、カタギの人じゃないんだろうなぁ……怖い……)」
敵兵「ごきげんよう、こんにちは……」
おかっぱ「……あんたか」
敵兵「お、お加減はどうかな」
おかっぱ「猛烈にダルい。背中が痒い。術後の熱は下がったが……猛烈になんにもしたくない。帰れ」
敵兵「お客さんがいらしてるんだが……無理そうかな」
おかっぱ「片腕犠牲にしてるんだ、勘弁してくれ。ヒマでヒマでやたらめったら眠いし……」
敵兵「そ、それじゃあ出直して頂こうか……」
老婆「あら……あら? あらまあ、久しぶりねえ……大変だったわね、大丈夫なの? お熱は?」
おかっぱ「な……!?」
老婆「お腹は空いてない? ニシンのパイでも食べる? 今は持ってないけど。うふふ」
おかっぱ「め、滅相もございません……わざわざご足労頂く事でも……」
敵兵「(あ……あの傲岸不遜の鼻ペチャチビが……畏まっている……!?)」
老婆「いいのよ、暇だから。とはいえ、後発に任せるにしても……ちょっと心配だけれどもねえ」
おかっぱ「お前……か、彼女が誰だか知ってここに通したのか? これだから東方の土人は……!!」
敵兵「(やべ……これどっち答えても怒られるパターンだ)」
おかっぱ「……」
敵兵「し、失礼ですが……お名前をお伺いしてもよろしいですか……? 許可証があるのに……ほんとすいませんね」
おかっぱ「北西諸島連合王国……円卓の座、そしてエクスキャリバーを保有する一人……ディナダン卿ご本人だぞ……!」
敵兵「」
おかっぱ「こ、このような姿で……真に申し訳ありません」
ディナダン「いいのよお、大変だったんだから。力を抜いてー」
敵兵「(あっちでは超ヤバいおじいちゃん……こっちでは超エライおばあちゃんかよァ!?)」
ディナダン「……少しだけ込み入ったお話しもしたいのだけれど、本当に大丈夫?」
おかっぱ「わ、わたくしめの事などお気になさらずに……」
ディナダン「そう……では、こちらの彼は?」
敵兵「ひぃ」
おかっぱ「その男も、一応は我々の仲間です。アジ=ダハーカの正体を知る者の一人で……」
ディナダン「男性……それじゃあもしかして、アジ=ダハーカの捕虜になっていたっていう?」
敵兵「捕虜……」
ディナダン「あなたがそうだったの? すごいわねー、えらいわー。あなたって忍耐強いのね」
敵兵「……アジ=ダハーカ……あなたもあの女の事、知っているんですね」
ディナダン「それはもう……6年前の戦争で暗躍していたと聞いた数年前から。今の今まで、手を出そうとは思わなかったわあ。
若い後続の子達がどうにかしてくれると思って、このおばあちゃんはほとんど隠居同然だったものでねえ」
おかっぱ「とんでもございません。卿の口添えがあってこそ、我々幕府が動けているのです」
敵兵「(まじですごいおばーちゃんなんだなぁ……)」
おかっぱ「卿が6年前のテロの調査に乗り出さなければ、あんたは今頃共和国のあの町で女に裏切られ……ロクな目に遭っていないだろうな」
敵兵「何それ怖い」
おかっぱ「アタシがあんたに目星を付けられたのは……卿の調査書類あってこそだったんだよ」
敵兵「……?」
おかっぱ「裏付けなりはアタシ達幕府陸軍が……6年前の連合先遣隊の洗い出しは、卿が行っていた。
前に言っただろ? アタシ達は、北西諸島外務省の書類提供を基に調査をしていたってな」
ディナダン「ケイ卿をさしおいてこんな事するなんてって、若い子には少し煙たがられたかもしれないけどねえ。
けれども、あまり長い事……東西戦争の尾が引くのは良くないしねえ」
敵兵「それじゃあ……お、おばあちゃ……こちらのお方が……俺を見つけてくださった……」
おかっぱ「さっきから言ってるだろ……」
敵兵「ありがとうございます!! ありがとうございます!! ありがとうございます!!!!」
ディナダン「あらあら、うふふ」
敵兵「紆余曲折ありましたが、おいしいごはんとあったかいおふとんが毎日味わえてます!! 本当にありがとうございます!!」
敵兵「(とは言ったがダマされんぞ。こういう甘いマスクを被った人間にはロクな奴がいないのだ)」
ディナダン「幕府の子達の言う事もわかるしねえ、隠居をするのは早いと思って」
おかっぱ「まさか。卿はまだまだ現役でいらっしゃる……」
ディナダン「お世辞を言っても、お菓子しかでませんよう」
敵兵「……」
おかっぱ「しかし、1人でエルダーを相手に立ち回りを演じた挙句……斬り伏せてしまうのが卿でありましょう?」
ディナダン「ああ、エルダー……エルダーねえ……」
敵兵「……」
ディナダン「……私が言えた義理ではないのだけれど。いつまでこの世にしがみついているのかしらねぇ」
敵兵「(きましたよ)」
ディナダン「我らや議会が何かをする度に、その都度口を挟んで場を停滞させる。古竜? 高等竜種?
おこがましい。おこがましいにも程がある。他の生物と関わって何かを育むわけでもない……何様なのかしらねえ」
おかっぱ「……」
ディナダン「……あら、愚痴っぽくなってしまって。ごめんねえ」
敵兵「……」
ディナダン「ああいう凝り固まった存在が後ろにいるから……円卓は今や託児所も同然。嘆かわしい……非常に遺憾な事……
栄光ある孤立も、あの身の程知らずのお蔭で思想から崩れてきていると言うのに。家畜は家畜、そう教育してやらないとねえ」
敵兵「」
ディナダン「新しい時代を作るのは、古竜でも私のような老人でもない……あなた達のような若い子なのよ。ね?」
おかっぱ「わ、我らにはもったいなきお言葉にございます」
ディナダン「そんな事言って。お国に残してきた殿方に恋慕しているのは存じていてよ」
おかっぱ「……」
敵兵「(うっひょうwwwwwwww)」
ディナダン「きっと素敵な男性なのね、あなたみたいに強かな女性が惚れ込む、包容力のある方なのでしょう」
敵兵「(あのマナイタがwwwwwナマイキマナイタwwwwwwナマイタがwwwwwふわふわになっておるwwwwww)」
おかっぱ「……」
敵兵「(愛に浮かされておるwwwwwwうひょーwwwwwwうひょー……)」
おかっぱ「か、彼の……」
ディナダン「はい」
おかっぱ「彼の蹄の音が……彼のぴょこぴょこ動く耳が……先生の艶やかな尾が、今でも頭から離れぬのです」
ディナダン「はい……はい?」
敵兵「(これはフォローできねえ)」
おかっぱ「……」
敵兵「いやはや……すごい人だったんだなあ」
おかっぱ「そうだな……」
敵兵「俺にとっては本当に救いの神だよ、マジで。ははは……」
おかっぱ「……」
敵兵「(気まずい)」
おかっぱ「……」
敵兵「(か、考えてみれば……俺より十以上年下で……片腕飛ばされて、もう片腕を鬼に踏み砕かれて……)」
おかっぱ「……何だよ、メランコリーに毒されてるとでも言いたげだな」
敵兵「あ、いいや、その」
おかっぱ「ふん。東方人なんぞに心配されるほど落ちぶれておらんわ。幸い、利き腕は元ほどでないにしろ動くようにはなるとの事だ」
敵兵「そいつは良かった……てっきり陰々鬱々としてるかと」
おかっぱ「アンタみたいに、女を寝取られ借金背負わされしてたらそうなっただろうな」
敵兵「忘れろ!! 忘れろビーム!!」
おかっぱ「……当面はだ、夢ができた。だから鬱々となどしていられるか」
敵兵「ゆ、夢?」
おかっぱ「……」
敵兵「(らしくねぇな……怖い……)」
おかっぱ「お、お嫁さんになって……赤ちゃんを産むのが夢だ」
敵兵「」
おかっぱ「……む、無論これは最終目標だ!! 今はその、カスどもの宗教改革が第一……忘れろ!! 忘れろビーム!!」
敵兵「ごちそうさまっすwwwwwwwwwwwwww」
将軍丙「あなた……一体どういうつもり!?」
妹「うっさいですわね、くっさい唾を飛ばさないでくださいまし! どういうって……」
敵兵「あんたが連合にネキリをバラしたんだろ!? 何でそんな事を……」
妹「あーあーあーハイハイハイ、わかったわかりましたわよ、私にも色々事情があるんですのよ?」
敵兵「事情……?」
妹「そうですわよぉ。あなたみたいな下っ端の三下貧乏兵士や、頭の回転も学歴も足りない青肌バカ女なんかよりずっと忙しいんですのよ?」
敵兵「(このクソガキ……!!)」
妹「そんなピーピー喚かないでくださいな……因縁つけられて困るのは情報部だけじゃなくてよ?
本当に困るのは帝国民なんですから……違いますか? そもそもぉ、そんなに連合を疑ってどうする気です? 疑心暗鬼は見苦しいですわね」
将軍丙「(裏ではさんざん連合をこき下ろしておいてよく言う……!)」
妹「それで? ネキリを遠くから持ってきた張本人はどこです? まさか、アジ=ダハーカに寝返ったとか。いやですわぁ……」
ティタニア「そうやって周囲を煽るのは辞めてくださらないかしら。戯れが過ぎるのではなくて?」
妹「は? 煽る。煽るですって。北西のお人形さんは、見た目は良くても頭の出来はトンチンカンプンですのねえ。
誰にケンカ売ってるのかわかってましてェ? 無駄口叩いて私の機嫌を損ねるのは、何人たりとも許されない事ですのよ?」
デュラハン「おやめください、ティタニア陛下も。我らクランの常任理事がこの場に出席した意味を、もう一度お考えください」
ティタニア「……」
ケルベルス「まあ、ガキの口の利き方には我らもイラついていたところだ。よく言った」
妹「ちっ……」
レギンレイヴ「魔王軍総出でガリアを取る。だが土台無理な話、さらに目下連合が絶賛横槍を入れてくる……
アジ=ダハーカとやらを恐れる勇者様が必死こいて集めたなけなしの勢力……だったかァ?」
敵兵「(どこ行っても性格悪そうな奴っているもんだなあ……)」
ケルベルス「……本国やクランでの正式な総会を通さずに派兵するのだ、そうこちらから数は出せんぞ」
将軍丙「それでも助かるわ。東帝領や一部連合領……警察活動や治安維持で、常備軍の人材はカツカツなのよ」
レギンレイヴ「おーおー、幻獣どもはケツの穴が小さいもんだなあ。こういう時こそ力を合わせてがんばんべってもんだろーが」
ケルベルス「思慮が足りずにヤンチャした挙句、国教会に排斥され続けて縮こまった北部神族が言えた義理かね」
レギンレイヴ「だまらっしゃい!! 我らが世界樹の恩恵に預かるだけ預かってからに……感謝の意が足りないんじゃないんですかねェ?
誰がクソオーガどもを駆逐して北部の治安を守ってると思ってんだァ、ケンタウリの成り損ないが調子こきゃあがって」
ケルベルス「将軍どの。この下品で不躾なワルキューレはどうにかならんのか。そちらからアース神族側に訴えて頂きたい」
レギンレイヴ「どなたかの威を借らにゃ何もできんのかよ、クソ犬が……」
敵兵「……世界樹なんてもんがあるのか」
レギンレイヴ「お、興味を持つとは連合人にしては天晴な奴だ。少しは見どころがあるな、苦しゅうないぞ。
大地を支えし神樹イグドラシル、この大陸に住まう全ての生命は畏敬を向けねばならんものを……」
ケルベルス「こういう口先三寸で他人を丸め込むのがこいつら北部神族の癌ことワルキューレだ。
このクソアマどもに魂をいじくられたくなければ、よその地で死ぬ事だな」
敵兵「き、肝に銘じま……」
レギンレイヴ「そんな風評被害に躍らされるバカじゃないよなあ? ヴァルハラはいいぞお?
女とはやり放題、酒は飲み放題首は狩り放題だ。アース神族はエインヘリアルを絶賛募集しておるぞ!」
敵兵「(まだ死にたくない)」
ケルベルス「勇者の故郷……その深部。大陸人の価値観を変え得る切り札が眠っているとするなら……」
レギンレイヴ「ふん。普通に考えて教皇領だか北西、共和国が先に家探しして掻っ攫ってそうなもんだがね」
ティタニア「探りを入れるのはそっちにした方がいいんじゃあないかしらぁ、と。当初はそう思ったもんだけどねぇ」
レギンレイヴ「だが、何かがある。お前らが大好きな勇者様がそう言ったんだろ?」
ケルベルス「博打。拝火神族の推す策にしては、分が悪い賭けだな。あるかもわからん宝探しに我らを付きあわせるとは」
敵兵「」
将軍丙「連合や共同体……それに共和国側には、西帝での岩盤補修支援という名目で発表してあるわ」
レギンレイヴ「……それ、どこのバカがそうしろっつった? 勇者様? そのオマケの金魚のフン?」
将軍丙「えと……わ、私が」
ケルベルス「バカか。魔王軍、それも小規模とはいえ混成兵団が足並みそろえて、北西と共和国の庇護の下にある西帝に支援?
まだ鉄道使って南部から未発表のまま移動した方がよかろうに、誰がそんなホラを信じるのだ。発表しちまったなら仕方ないがな」
将軍丙「……」
敵兵「(この人ウソつけなさそうだもんなぁ……)」
ケルベルス「……構わん、在共和国の連中に声をかける。適当に仕事を見繕っておく」
レギンレイヴ「まあ、いんじゃない? どこもいちいちそんな公式発表にケチつけないっしょ。こんなん強引のうちに入んないっての」
敵兵「(仕事ができる人に囲まれてると幸せだなあ……)」
ケルベルス「ところで、アンタはどう思うんだ?」
敵兵「えっ……お、俺……俺ですか?」
ケルベルス「そうだ、アンタを見て言っている。どう思うんだい、ガリア=ベルギガ」
敵兵「……」
レギンレイヴ「人食い獅子が、アジ=ダハーカのいかれた価値観に触れたいかれた東方人の意見を聞きたいってさあ」
敵兵「し、正直……マユツバだと思いましたね、何でも思い通りになり得る、影響力を持ったイツモノ……」
ケルベルス「では、今は?」
敵兵「そうですね……勇者に魔王に、それにネキリなんて見てからじゃあ……確かめる価値がないとは言えないと考えます」
レギンレイヴ「おお、浪漫がある事で」
ティタニア「魔族の使う魔術『もどき』でなく、真に神の奇跡を模倣したと言える秘法……」
ケルベルス「血筋とは違うか? 帝国か、教皇の縁者か……そんな魔術がどうのといったシロモノがあるとは、どうにも信じ難い」
敵兵「(しゃべるライオンが魔術を否定してる……)」
チバラキ「たいしょー!」「どうていー!」「くそちぇりー!」
エルフ三男「……メリフェラへの贈り物を、少しばかり汚されたらしいが」
朱天「すまんのう。怪しそうなのをマークさせておったんじゃが、このザマよ」
チバラキ「どうも」「こうも」「このざまよ!」
エルフ三男「ああ、何て事だ……素性はわからないが、大事な被検体だというのに……困ったなあ」
朱天「困ったのう、困ったのう……」
ダキニ「まるで、汝が蟲ども相手に粉をかけて謀ろうとしているようにも見えてしまうな」
エルフ三男「謀る? お得意先にそんな事する筈ないでしょう、そんな事をするメリットが僕にありますか?」
ダキニ「フフ……確かに、そうだな。そうする事でメリフェラへ憎悪を向ける事になる存在がなければなあ」
エルフ三男「例えば……人権大好き魔王軍だとか?」
朱天「メリフェラの代理母出産を見たらどう思うかのう? あやつら、人の話を聞かない事に関しては一流じゃ」
ダキニ「『叡智の教義』以後の魔王軍の後退によって、西欧に取り残されたかたちになったのが蟲どもらしいな。
さて、あの泥船に命を託す莫迦どもは、それを容認できるほど寛容かな? 連中には、蟲どもに劣等を抱く氏族もおるのだろ」
エルフ三男「元々何も詰まってないところに、勇者の革命でいきなり倫理や道徳を叩き込まれたのです。
蟲……いえ、メリフェラの民衆は、そもそも魔王軍の魔物どもとは一線を画すほどに優れていますよ。
言っていませんでしたか? 僕は血族や外見では差別しません、同じ目標を見据える人間は正当に評価しますよ」
ダキニ「ははは! それで全身脂肪で覆われてしまっては仕方がないな!」
エルフ三男「僕は彼女が不幸とは思いませんがねえ……少なくとも、僕の財布をちょっぴり埋めてくれる事はしてくれましたので」
ダキニ「肝が据わっているな、そこのクソ鬼は汝の指示に戯言で応えたのだぞ?」
エルフ三男「戯言とは?」
朱天「クク……」
ダキニ「幕府のガキに苗床の存在を告発させ、勇者とやらの憎悪をメリフェラへ集約させる。
汝はそこまで命じたわけではあるまい? ただ、あのガキに張り付いておけとだけ……」
エルフ三男「一を聞けば百を知る、ではありませんが……
そうやって人間にとって最悪な方向に物事を差し向けるのが、『鬼』というものなのでしょう?」
朱天「人の不幸はエクスタシーじゃ!」
エルフ三男「以前、幕府の彼女から聞きましてね……どうひねくれた解釈をしてくれるか、楽しみでしたよ」
ダキニ「不確定性をそのまま飲み込むのか。いつか汝の首が取られるのかもしれんぞ?」
エルフ三男「痛くないようにしてくださいね。僕は差別と区別と痛いのと魔物が大嫌いなんです」
大嶽「(……食えん男だな。元からそうした魂胆が無かったわけではなかろうに)」
エルフ三男「ま、鬼と一緒に覇権を取るのも乙なものだと思っていますよ。
このまま行けば……不本意ですが、近いうちに僕は帝国の長として君臨する事が出来る筈です」
朱天「長……摂政としてか」
エルフ三男「僕があんな入れ食い女との間に産まれたガキに、そのまま権能を譲り渡すとお思いですか?
産まれて3年……周りに探られない内に……いえいえ、情が湧かぬうちに処分しますよ」
ダキニ「汝、なかなか類を見ないクソ野郎だのう……気に入ったわ」
エルフ三男「いえいえ、極東のクソ災厄のあなた達に比べれば……」
ダキニ「では、そのクソ野郎に質問。なぜこいつはこんな目に遭ったと思う?」
チバラキ「しぬほど!」「いたかった!」「しななかったけど!!」
エルフ三男「……はて。本当に見当もつきませんね」
ダキニ「汝らがドラグーン用の鎧に用いているヴォーパル鋼、そして極東に伝わるネキリの大太刀。
この二つが合わさったものと我々は推測する。」
エルフ三男「あなた方とは極力知識を共有していたつもりですが……ネキリの大太刀とは?」
大嶽「下野国に安置されていた、退魔の太刀にございます。我らの眷属を滅したという逸話の『強度』は、皇国内指折り……」
エルフ三男「なるほど。ちょうど、あの勇者が所持するデュランダルのようなものと考えればよろしいですか」
ダキニ「そうだ。だが、あれの価値のわからん幕府は……何を思ったか、曰く付の刀身をへし折り、分割してしまった」
チバラキ「あんねー」「そしたらねー」「なんかわかんないけどー」「かけらをばらまいたのー」
エルフ三男「……?」
ダキニ「この茨木が受けた術……清浄なる魔法円を、対象の捕縛と隔離に用いる魔術と聞く。
幕府のガキは、陣術の媒介にネキリを使った。試験段階では、範囲限定とやらが安定しないだとかで凍結されていた筈なのだがな」
チバラキ「インチキだよねー」「いかれてるよねー」「まじきちだよねー」
エルフ三男「……『術効という異変』を、ヴォーパル鋼という手綱で無理やり限定させた……だとか?」
チバラキ「さてねー」「くわしー事はよくわかんなーい」「でもでもー」「ぼーぱるはがねを持ってたのはたしかだよー」
エルフ三男「ヴォーパル鋼そのものは、北西からでもアルヴライヒ側からでも入手は容易……
しかし、そんなギャンブル性の高い魔術とやらを……あの小賢しいマナイタ女が行き当たりばったりで用いるとも思えない。
例え命の危険に遭っても……そう仮定すると、どこぞで有用な試験結果を得る事ができたのかもしれない」
ダキニ「プラス、わざわざ肉玉の髪を切って逃げた事をすり合わせると、ガキが魔王軍と内通していたという予想に肉付けができる」
エルフ三男「そのネキリを使った陣術、魔王軍の連中が手に入れたとすると……少々厄介かもしれませんねえ」
ダキニ「脅しをかけられる前に、こちらから王手をかけるべきだな」
朱天「ハシラの勇者……かの?」
ダキニ「アニマ。アニムス。ワイズマン。グレートマザー。シャドウ……国教会の勇者信仰の根底を形作る、まさに大黒柱だな」
エルフ三男「聖遺物でも何でもいい。教皇領の首さえ縦に振らせればいいのです。
現物がもし手に入らなくても……国際世論を味方させる材料なんか、いくらでも用意できますから。
例えば……オークと人間の間に産まれた、悲劇のウルク=ハイですとかね……」
おかっぱ「……あのクズの動きはどうだ、何かあったのか?」
敵兵「いや、まだ目立った暴れ方はしてない。エルフもメリフェラも、今の所円滑な経済交流のただなかにあるしな」
おかっぱ「そうか……まあ、アタシの予想なんかは杞憂であってくれた方がいいんだがな」
敵兵「……」
おかっぱ「あんたらは……近々共和国に出向くんだろ。勇者様の故郷だって?」
敵兵「とは言っても、ごく少数で遠足に行くみたいな任務なんだけどな」
おかっぱ「給料ドロボーが」
敵兵「ははは……」
おかっぱ「……」
敵兵「(少し見ない間に、すごく髪が伸びたんだな。それに……)」
おかっぱ「どうした、こんな所で油売ってるヒマがあるのか」
敵兵「(……前は顔の区別つかなかったけど……ちょ、ちょっと可愛い……かもしれん)」
おかっぱ「ふん……ヒマがあるんなら、何かうまいものでも買ってこい」
敵兵「お、おう……」
おかっぱ「……」
敵兵「(なんか雰囲気変わったよなあ……)」
ティタニア「またお見舞いぃ? 手ぶらでぇ? ひっじょうしきぃ」
敵兵「連日の見舞いで今月の昼食代を全部貢ぐ羽目になったんですよァ!?」
ティタニア「お熱ねぇ……」
敵兵「いや……行くたびに食べる量増えてるし! 経過が良好なのはいい事ですけど!」
ブラウニー「うっわ、サイフにされてるぅー」
ピクシー「そういえばこの人、前に女に釣られて騙されたとか……」
敵兵「やめろァ!!」
ティタニア「上官として命令するわぁ、節度は最低限守りなさぁい。別に娼婦でヌキに行っちゃダメとは言ってないんだからぁ」
敵兵「そんな下心ないですからァ!!」
ティタニア「それでなくとも……彼女の側に異性を近づけるかどうか問題視されてるってのにぃ」
敵兵「……は?」
ピクシー「東洋人って見た目に寄らないんですねぇ」
ブラウニー「子供みたいなのに、過激って言うか……南部王国の女じゃあるまいしサカりすぎだっつーの」
敵兵「……彼女、何かしたんですか?」
ティタニア「大した事でもないんだけどねぇ。異性の看護師や医師に色目使ったりコナかけようとしたり……
どっちが言いだしたんだかわからないけど、幕府との間がこじれても困るでしょう? 面会制限をかけろって声もあるのよぉ」
敵兵「そんな好色家には……全然見えなかったんですけど」
ティタニア「奇遇ねぇ、アテクシもよぉ」
敵兵「はあ……」
ティタニア「不自然だって言ってるのよぉ、だから面会制限についてはアテクシも賛成。あなたはぁ?」
敵兵「……俺も、配慮するに越したことはないと思います」
ティタニア「幕府にお返しする時、異国の子どもを孕んでましただなんて、シャレにならないしねぇ。
メンタルの面でもカウンセリングを怠らないよう、女性の担当者にも伝えておくわぁ。心的なものなのかもしれないしねぇ」
敵兵「……」
雷帝「これが……ネキリ……」
妹「ふふ……極東の田舎者、手先は器用なんですのね。この刃の輝き、嫌いじゃありませんわ」
雷帝「刃は潰されていない……本当に妖怪退治に使われたかのようですねぇ」
妹「どう扱うか、どれくらいで判明しそうなんです?」
雷帝「ひと月……いや、半分に削ってみせましょう。魔王軍の出し渋りにも、本当に困ったもので」
妹「それ、更に半分になりません?」
雷帝「10日以内に、ですと?」
妹「なりません?」
雷帝「……見返りは?」
妹「大姉様」
雷帝「……」
妹「そうですわね……今日から12……いえ、11日後に連れて参りましょう。名目は……そうですわね、東方の貴族との見合いという事で」
雷帝「……」
妹「好きに抱かせてさしあげましょう、それが望みなのでしょ? あなたの肉欲、それで満たされるのでしょ?」
雷帝「ええ……」
妹「大姉様は愛を振りまく女神……きっとまた、貴女もシルクのような肌に包まれ、恍惚に至りましょう……」
雷帝「ああ、羨ましい……あのお方と血の繋がりがあるだなんて。妬ましささえ感じてしまいます……」
妹「以前の情報部のネズミは、そんな事させてくれませんでしたものねぇ……」
雷帝「それはもう……実のお子様だけある、一度あの方に抱かれているところを見られてから、会わせてすらもらえなくなりまして」
妹「それはもう溜まっていたでしょうねぇ……私の大姉様で気持ち良くなるその為にも……」
雷帝「10日……やってみせましょう、ネキリを必ず実用化させます……」
ハイエルフ少女「お母さーん、ちょっと来てぇー」
ハイエルフ女性「どうかした? 何かあったの?」
ハイエルフ少女「おんなのひと、たおれてるの! あっちのユリのお花畑の方!」
ハイエルフ女性「まあ……! いけないわ、すぐに案内して!」
ハイエルフ少女「うん、わかったー。あっちだよ、あっち!」
ハイエルフ女性「あなたはお医者様を呼んできてちょうだい。今は大樹のふもとの小屋にいらっしゃるはずよ」
女騎士「お腹が……お腹が痛い……」
ハイエルフ女性「大丈夫ですか、私の声……聞こえますか!?」
女騎士「うううっ、うああああ」
ハイエルフ女性「すぐにお医者様が参ります、少しだけ我慢してくださいね!」
女騎士「ありがとうございます……本当にありがとう……ああうっ!!」
ハイエルフ女性「ああ、なんて事……なんて事!」
女騎士「うう……と、ところで……お、お聞きしたい事があるのですが……ううっ……!!」
ハイエルフ女性「はい……何でしょうか!?」
女騎士「端的に問う。おい耳長、テメェはこのまま生きたいか? それとも死にたいか?」
ハイエルフ女性「え……?」
女騎士「死にてえならできるだけ苦しませて殺してやる、生きたかったら楽しくなるお薬を処方してやるよ」
ハイエルフ女性「」
ハイエルフ女性「な、何を……」
女騎士「おい野郎ども!! ひっ捕らえろ、くれぐれも殺すなよ!!」
エルフ騎兵「死にたくなかったら大人しくしろ!!」
エルフ近衛兵「動くな!! 武器を捨てろ!!」
ハイエルフ女性「い、嫌ァっ、やめてえ! は、離し……」
女騎士「ヘェーイヘイヘイヘイ、今日の私は良心的だぞぉ? てめえらとおんなじように、生き死にを選ばせてやってんだからなぁー」
ハイエルフ女性「あ、あなた……どうしてこんな……」
女騎士「るせェーぞボケッ!! 死にてえか死にたくねえか私は聞いてんだ、よっ!!」
ハイエルフ女性「げふぅっ!!」
女騎士「このクズ民族が……まぁーだ滅亡してなかったのかよ、もっと念入りに焼いておくんだったぜ」
ハイエルフ女性「や、めて……ら、乱暴しないで……お願……」
女騎士「ゴミめ……おいクソアマ、てめえらどこでコソコソのさばってやがる? 言え」
ハイエルフ女性「……」
女騎士「ヘイヘイヘイヘェーイ、ダンマリかぁ? そっちがその気ならいいんだぜ? こっちは勝手に探すからよぉ」
ハイエルフ女性「な、何を……!」
女騎士「言葉通りの意味だってばよ。今度こそ勝手にさせてもらうぜえ、伝達能力に難ありのクソエルフども!!」
ハイエルフ騎士「戦える者は武器を持て!! 女子供を守るんだ!」
ハイエルフ男性「い、一体なんだって言うんだッ!!」
ウンディーネ「みんなぁー、一体どうしたのぉ?」
スクーグスロー「ずいぶん騒がしいな……」
サイレーン「奥の偏屈エルフがまたはしゃいでるんじゃないのぉ?」
ハイエルフ少年「お医者様が……?」
ホビット「お、おいッ……林の奥、何か……蠢いているぞッ!!」
ハイエルフ少年「あれって人……? 猿人だよね? あんなにたくさんの人、初めて見た……」
ウンディーネ「何しに来たのかしら……」
娘「うわぁ……空気がおいしい」
息子「ここが……ここが、僕たちの産まれた土地なんだなぁ」
エルフ騎兵「騎士様、ここからさほど離れていない位置に大規模な火災の跡を発見いたしました。
恐らくは、ここが騎士様が拉致された土地に住まう民族の集落だと思われます」
女騎士「けっ、ゴキブリみてぇな連中だな。まだ生きてやがるとは所詮は魔族よ。けがらわしい」
エルフ近衛兵「案外、楽に辿り着きましたね。あの古竜リンドヴルムは伊達ではないという事ですか」
騎士ほ「フクク……フククク……」
女騎士「なぁー、ほの字。カタルシスってあるよなぁー。わかるか?」
騎士ほ「……ええ、存じておりますわ。理性ある者はみな、抑圧や圧迫からの解放、昇華を目指して生きております故」
女騎士「そんならよぉ、最大の屈辱の跡の復讐ってのは、最高のカタルシスって言えるよなぁー……
さあ、みんなで気持ち良くスッキリしようじゃあないか……くされた田舎者をまとめて炙りだして、勇者の聖地をブン取ってやろうじゃあねえか!!」
息子「死ねえ!!」
ハイエルフ男性「あべし」
娘「化石どもめ、アタシが解体してやっからそこ直りな!!」
ハイエルフ老婆「ひでぶ」
ハイエルフ騎士「や、やめろォ!! やめろォーッ!!」
女騎士「はははははwwwww見ろよwwwwwwwあいつバカだぜ、中世の騎士ごっこでもやってんのかよwwwww」
ハイエルフ騎士「貴様ら……貴様ら一体何なんだ!? 何者だァーッ!!」
エルフ騎兵「騎士様! 集落診療所群は?」
女騎士「爆破しろ!! 当然だ。不愉快極まる、欠片も残すな」
エルフ近衛兵「教会前広場はいかがしますか、騎士様!」
女騎士「燃やせ、勇者戦像は倒せ。櫓、時計台、図書館、その他生活インフラ全て破壊しろ、不愉快だ」
息子「お母様、中州に繋がるあちらの橋は」
女騎士「落とせ、川向うを孤立させろ」
娘「あちらに見える大樹はどうしましょうか」
女騎士「叩き斬れ。構うものか、目についたものは片っ端から壊し、片っ端から食え!!」
エルフ騎兵「乾盃!!」
エルフ近衛兵「乾盃!!」
女騎士「はっはっは!! ゆかいだぜ!!11!!」
ハイエルフ少女「おかあさぁーんっ、おかあさぁーんっ!!」
ハイエルフ女性「……お願いします……やめ……やめて……もう……殴……」
女騎士「うるせーぞボケ母娘」パンッ パンッ
騎士ほ「フックククwwwwwこうなりたくなかったらwwwwそうですわねwwww全員服を脱いで投降なさいなwwwwwww
全員wwwwあまりなくですわよwwwwwwそしたら川の中に飛び込みなさいwwwwフククwwwwフカカカカカwwwwwww」
女騎士「土手の草に油まいて燃やしてやろうぜwwwwwwww
こいつらまとめてローストビーフだwwwwwwwwひゃっwwwwひゃっwwwwwひゃwwwww」
ウンディーネ「やめてええええ!!」
コボルド「やめてください、こ、こ、殺さないでえ!!」
女騎士「おっほぉwwwwwぎもぢぃぃぃwwwww排卵wwww排卵する゛ぅぅぅwwwwwwwwwww」
騎士ほ「お姉様久々にノリノリですわwwwwwwww素敵wwwwwwwwwwwww」
女騎士「おおういクズどもwwwwwwよく聞けやwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
ここに医者がいたら全員残らず連れてこいやwwwwwwwwwこの私の目の前に引っ張ってきやがれwwwwwww」
ウンディーネ「お、お医者様!?」
ホビット「どういう事だ……?」
女騎士「医者だよ医者!! 連れて来たヤツだけは無傷で見逃してやらあ!! それにィ……
これ以上ヘンな事しねぇって約束してやるよぉ、何もしないで帰ってやる……わかったな、医者だぞ医者!!」
ウンディーネ「お、お医者様よ!! お医者様をみんな引き渡すのよ!!」
ハイエルフ男性「い、急げ!! 医者を探せ!!」
ハイエルフ女性「早くしないと殺されるわ!!」
ハイエルフ騎士「なんと……汚い……!!」
女騎士「きたねえのはテメェらの民族性そのものだバーカ。なんだ? ヤブ医者が見つかるまでテメェが暇つぶしに付き合ってくれるのか?」
ハイエルフ騎士「……」
女騎士「なんとか言いやがれ!! なめてんじゃねェぞクソッタレ野郎ォが!!」
ハイエルフ騎士「がはっ!!」
女騎士「よーし、望み通りテメェでしばらく遊んでやるよ……ちゃっちぃ鎧なんか剥いじまえ、おらぁ!!」
ハイエルフ騎士「や、やめろ!! やめろぉ!!」
女騎士「おーおー、貧相な体つきだこと。この耳長モヤシ女め、雑草食って生き長らえてるようなてめえが私らに敵うと思ってんのか? あ?」
ハイエルフ騎士「……くっ……こ、殺せ!!」
女騎士「はいぃ?」
ハイエルフ騎士「アルビノと産まれたとて、私は女である事、エルフである事を捨てた身だ!!
今の私は誇り高きガリアの森の騎士である! 死など恐れぬ、私は矜持を守る!!」
女騎士「はぁー? バッカじゃねぇの、矜持なんか守ったってしょうがねーだろチンカスが! 脳に蛆でもわいてんじゃねーのか? あ?」
ハイエルフ騎士「貴様のような下賤の者にはわかるまい、この私の守るべき真の宝を!」
女騎士「おーそうかいそうかい、女である事もエルフである事も捨てたのかぁ、そいつは難儀なこった。
そんじゃあよぉー、捕虜として扱わなくてもいいんだな? そいつは好都合だ、明日のテメェの配属先はワイバーンの胃袋だ」
ハイエルフ騎士「」
女騎士「私ってヒューマニズムに傾倒する慈愛ある活動家やん? だからそういう命を大事にしない発言好きじゃないんだわ」
ハイエルフ騎士「な……はぁ?」
女騎士「命を軽視する気風がはびこるから、大陸じゃ戦争がなくならないんだ……
宗教が発端にあるにしろ、それは良くない。非常によろしくない、そうだな? 命はみんな一つずつしかないんだから……」
ハイエルフ騎士「何が……言いたい!! 殺せ、貴様らなんぞに命乞いなぞ……」
女騎士「だからさぁ、大事な命なんだから死ぬときくらいこっちを気持ちよくさせろや。役に立たねえな」
ハイエルフ騎士「え……」
女騎士「いちいちテメェみてえなカスがあっちで『くっ殺せ!』こっちで『くっ殺せ!』って言われたらウザくてしょうがねぇだろ。
『どうか私の命でよろしければ奪ってくださいましお願いいたします』だろ? 矜持が大切な不謹慎なヤツはそれくらい徹底しろや」
ハイエルフ騎士「い、意味がわからない……」
女騎士「はぁ……じゃあいいよ」パンッ
ハイエルフ騎士「ぎゃうっ!!」
女騎士「あーうぜぇうぜぇ、これだから話も聞かねえ命も粗末にするって輩は嫌いだわー」
ハイエルフ騎士「いだいいっ、痛っ、うああああああ!!」
女騎士「死ぬ事が大好きなタナトフォビアの変態クソエルフのオナニーのお手伝いしちゃったなー、不愉快だなぁー、あーくせぇくせぇ」
ハイエルフ騎士「あついい、痛い痛い、痛いぃ、やだあ、死にたくないです、ごめんなさい、ごめんなさい」
女騎士「何だってー? さん、はいっ、『くっ……殺せ……矜持の方が大事です……』ぷりーず!」
ハイエルフ騎士「許っ、許してぇ、おねがいします、しにたくない、わたっ、わたし、鎧をきき、きたのも初めてでえっ、
へ、へんなことしません、言う事ききます、許して……助けてえ、やだやだやだ、死にたくないです、いのちだいじにしますう!!」
女騎士「急にうるさくなったなあ、私なんかそうやって片腿に穴空いた状態でドラグーンから落っこちたんだぞ? 我慢しろよチンカス」
ハイエルフ騎士「いっ、いっ、痛い、血がこんなに出てっ、血があ!!」
女騎士「さん、はいっ、『くっ、殺せ』。ぷりーずあふたーみー、『くっ、殺せ』」
ハイエルフ騎士「ひぇ……?」
女騎士「あーもう、殺せっつったり死にたくねぇっつったり何様だよてめえ。チンカスのくせに私に指図する気か?」
ハイエルフ騎士「あ、あ、ああ、『くっ、ころせ!』『くっ、ころせ!!』」
女騎士「よぉし、この女はおまえたちにくれてやる。好きにしろッ!!」
エルフ騎兵「さっすが~、騎士様は話がわかるッ!」
ハイエルフ騎士「」
ハイエルフ男性「こんなところに隠れていやがったぜ!!」
ハイエルフ女性「屋根の上から引きずりおろすのよ!!」
ウンディーネ「早く降りてきなさい!! 早く!!」
ハイエルフ医師「い、イヤだあ!! お願いだ、やめてくれ!! 頼むう!!」
ハイエルフ男性「ふざけるんじゃねぇ!! オレは妻を目の前でワイバーンにひき肉にされたんだぞ!!」
ハイエルフ女性「アンタが何かあの悪魔たちにケンカ売ったんじゃないの!?」
ホビット「そうだ、医者のくせにガリアを滅ぼす気か!!」
ハイエルフ医師「し、知らない……私は知らないんだ、本当だ!!」
ハイエルフ男性「オイッ、あっちの方で姿が見えなかった助産師が見つかったみてえだぜ!!」
ハイエルフ女性「あっちに先越されちゃたまんないわ……!! このヤブ医者!! いい加減にしなさいよ!!」
ハイエルフ男性「ハシゴを持ってこい!! 疫病神のヤブ医者め、ただじゃおかねぇぞ!!」
ハイエルフ医師「ああああっ……何故だ……何故、何故こんな……こんな事にィ……」
ハイエルフ医師「……あ、あれは……大樹に……ドラゴン……」
ハイエルフ医師「あいつ……あの毛の長いのは……リンドヴルムッ、という事はやはりあの…・…あの金髪の女が……!?」
ハイエルフ医師「」
ハイエルフ助産師「う……う……ゆ、許して……許……」
騎士ほ「騎士様、北西で『私に続いてもう一度』は『りぴーとあふたーみー』でしてよ? あの雌豚、きょとんとしてましたわ」
女騎士「まじかよ。いいじゃん、もうみんな帝国の言語で統一しちゃえよめんどくせえ」
騎士ほ「世界一高い塔の逸話を思い出しますわね、フクク……」
女騎士「何だそれ、折れろ」
騎士ほ「神の逆鱗に触れて、とっくに崩れてしまったそうですわ……」
女騎士「まじかよー、クソだな神様って。なあ?」
ハイエルフ医師「はっ、わ、私……か?」
女騎士「話聞いてなかったのかよ。どう思うぅ?」
騎士ほ「不愉快極まりないですわね……ペナルティ一本ですわ」
ボギッ
ハイエルフ医師「ぎゃあっ!!」
女騎士「おーい、涙目になってんじゃねーよ。まだあと19本も指はあるんだぞー?」
ハイエルフ医師「う、う、恨んでいるのか!? あ、謝る、謝る!! この通りだ、すまん、申し訳なかった!!」
バキッ
ハイエルフ助産師「あぐうっ!!」
騎士ほ「誠意が見えなーい、ですわ……あとその顔不愉快です。ペナ1」
女騎士「わりーわりー、計算ミスってたわ。あと38本だなー、ごめんちwwwwwwwwww」
エルフ騎兵「(大将閣下がいないとリミッターが外れっぱなしだなぁ……)」
女騎士「どうもテメェら……ハイエルフっつったか? 私ら猿人を見下してる感じするよなぁ?」
騎士ほ「ええ……森の奥でしみったれた暮らしを送る大便製造機の癖に」
ハイエルフ医師「そんな……そんな事はないっ、ないぞ……見下してなんて……」
ハイエルフ助産師「見下してないです!! はい……てっ、帝国ばんざい!! 皇女殿下ばんざーいっ!!」
女騎士「おー、こっちは殊勝だな。話し相手を変えてやるか」
ハイエルフ助産師「(や、やったッ!)」
ハイエルフ医師「(てめえ!! ふざけんな替われ!!)」
女騎士「テメェがその股倉いじくったくっせぇ手で取り上げたガキどもだ、仲良くしてやってくれな」
ハイエルフ助産師「」
息子「……」
娘「……ちっ」
ハイエルフ助産師「て、帝国……ばんざい……」
息子「誰が喋っていいと言ったッ!! 汚い手でお母様のお身体をまさぐった罪、指の一本や二本で消えたと思ったら大間違いだぞ!!」
娘「テメェみてぇなクソエルフに取り上げられたなんて知れたら、こっ恥ずかしくて街中歩けねぇだろォがよォ……
どう落とし前付けてくれンだぁ、ああ!? 聞ぃてンのかビチグソがよォー!!」
ハイエルフ助産師「」
女騎士「ははは、すっかり5年前の焼け跡と繋がっちまったなぁ。すっきりしたもんだ」
騎士ほ「共和国の開拓済地域から地続きで焼いてまいりました、これで森林に囲まれる事はないでしょう」
女騎士「焼いた傍から失業者どもに開墾させてるからな、さすがのクソ祖霊も畑の肥やしじゃねぇのか?」
ハイエルフ医師「……」
女騎士「笑え」
ハイエルフ医師「は、はは……」
女騎士「17本目でようやく従順になってきたなぁ、えらいえらい。そんじゃあそろそろ本題に入ろっか」
ハイエルフ医師「……」
女騎士「テメェの知ってる事を洗いざらい綺麗に話せ。変な修飾なり比喩なり使いやがったら、
表現の単語の文字の数だけグーパンだ。クチャクチャしたもったいぶりは嫌いなんだよ、わかるか?」
ハイエルフ医師「わ、わかった……」
女騎士「わーかーりーまーしーただろうがッ、このタコキムチがよォー!!」 バキイッ
ハイエルフ医師「がぼおッ!!」
女騎士「あんまイライラさせるとよおー、私だって我慢の限界があるんだよぉー? 人権派の私だってさぁー……」
ハイエルフ医師「わか……わかりました……」
女騎士「ふん。そんじゃあ……勇者の野郎を黙らせられるすんげー秘宝っての、教えてもらおうかなぁ?」
第8部 ガリア=ベルギガ編 惨
第8部 ガリア=ベルギガ編 死へ
まだ続いてたのかこのシリーズw
言ってることは間違ってないと思うけど何かが根本から間違ってるww