簡単な設定説明
か麦野と浜面を幼馴染設定にしたらかわいいね
っていう電波を受信した。多分全部麦野主眼
1res
10年ちょっと前 幼稚園
浜面とは小学校に入る前から仲良しだった。いや、もしかしたら一方的にそう思っていただけかもしれないけれど。
私も浜面も他の子と比べて割と早い段階で学園都市に送り出された。不安だったし、よく泣く子だった。
それでも浜面とはいつも一緒にいたし、よくしてくれた。私のことを助けてくれた。私は浜面が大好きだった。
麦野「浜面はさぁ、どんな能力者になりたい?」
浜面「そうだなあ…想像つかねえや、手からビームが出たりしてな」
麦野「あはは、なにそれ。そういうの好きだっけ?浜面って」
浜面「そ、そんなんじゃねーよ。そもそも敵みたいじゃねーか」
麦野「そうだね、怖いね」
浜面「じゃあなんだろうなあ。麦野はどんなのがいいんだ?」
麦野「私は今みたいに楽しければいいなあ。なんて」
浜面「それじゃあせっかく学園都市に来たのに意味ないじゃねーか」
麦野「私ね、家じゃお荷物だったから、おじさんとおばさんに迷惑ばっかりかけてた」
浜面「そっか…いや、なんかごめん」
麦野「いいの、学園都市に来たいと思ったことはなかったけど、きてよかったとは思ってるよ」
浜面「俺も来てよかった。麦野にも会えたしな」
麦野「だから私は今のままがいいな。能力なんかよりも」
浜面「どんなことするんだろうなあ、能力開発って」
麦野「ちょっと、怖いね」
浜面「大丈夫だ。俺がいる。ずっといっしょだ」
麦野「うん…」
元スレ
▽ 【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-6冊目-【超電磁砲】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1276186522/
ある日、年上の子にいじめられたことがあった。
私はうつむきがちだったし、泣き虫だったから。格好の的だったのかもしれない。
悪ガキ1「やーい麦野!名前のとおり随分沈んでんじゃねーのはははっ」
悪ガキ2「おいこいつまた泣きそうな顔してるぜ、泣き虫しずりんだー」
麦野「えぐっ…ひっ…はま…づらぁ…」
そんなとき、浜面はいつも来てくれた。
浜面「おいお前ら…女の子泣かして楽しいかよ?」
悪ガキ1「ちっ、お前年下の癖に生意気なんだよ!」
悪ガキ2「ぶっとばしてやる!」
ギャーギャー
浜面は、喧嘩があまり強くなかった。
それなのにいつもいつも私のために飛び込んできて、ケガをした。
麦野「浜面…大丈夫?いたくない?」
浜面「大丈夫じゃねぇし痛ぇ…くそっ」
麦野「あ、あの浜面…ごめn」
浜面「あいつらに手出されたりしてないか?何された?」
麦野「え、えっと…泣き虫…とかかな。ごめんね、私、泣き虫だから」
浜面「女の子はそれでいいんだよ。麦野はそれでいいんだ。俺が守るからな」
私たちはまだ寮で生活するには早かった。だから私たちの年頃みんな施設のようなところに預けられていた。
もちろん私も浜面も同じ施設で暮らしていた。
浜面は、少しお寝坊さんだった。
浜面「やべえっ!寝坊したっ!」
麦野「あ、浜面おはよう。朝ごはん、もう下げられちゃったよ?」
浜面「マジかよ…腹減った…」キュルルル
麦野「はいこれ、朝ごはん。そんなにたくさん持ってこられなかったけど…ごめんね」
浜面「おお!麦野ありがとう!助かる!」ガツガツ
麦野「浜面は私のこと、いつも助けてくれてるよね」
浜面「ん?何か言ったか?」
麦野「な、なんでもないよ!なんでもない」
浜面「ふー、ご馳走様、遊びにいこうぜー」
麦野「うんっ、今日は何するの?」
浜面「そうだな…ブランコをどこまでこげば1回転するか!とか」
浜面は勉強が苦手だった。
能力開発はまだ始まっていなかったけれど、勉強する時間というのはちゃんと用意されていた。
私は人よりちょっとだけ算数が出来た。
麦野「先生、できました。」
先生「はい、しずりちゃんはなまるあげちゃう!」
麦野「…へへ」
浜面「2cm四方の正方形の面積の二倍の正方形?簡単じゃねーか、4cmの正方形だ!」
先生「浜面君、その正方形の面積求めてみなさい」
浜面「そりゃあ8にきまって…あれ?16?じゃあ一辺3cmだ!…え?違う?くそー…!」
麦野「浜面、大丈夫?教えてあげる、ここはね…」
浜面「だめだっ!これは俺が自分で解くんだ!」
麦野「ご、ごめんっ浜面…」
浜面「ああいや、大声出してごめん。ええっと…ヒントくれよ」
麦野「最初の2cm四方の正方形あるよね、これの角から角に線を引くの」
浜面「こ、こうか?三角2つになっちまったぞ」
麦野「この三角は2つ同じ大きさ。わかる?」
浜面「そりゃあ、半分だからな」
麦野「はい、ヒントおわり。頑張って浜面」
浜面「ええっ!もうちょっとヒントないのかよ!まってくれよー…」
麦野「自分で解くんでしょ?ふふっ」
よく給食のおかずをとりかえっこした。
浜面はお肉が好きだった。私はあんまり好きじゃなかったから、よく食べてもらっていた。
浜面「やった!肉だ!」
麦野「私、こんなに食べきれないから半分あげる」
浜面「えっ!いいのか?ありがとう」
麦野「浜面はお肉大好きだもんね」
浜面「男の子はみんな肉が大好きなんだよ、麦野は何が好きなんだ?」
麦野「私は鮭がいいな。お肉は硬くて…」
――翌日
浜面「お、今日は鮭だ。麦野、魚好きだったよな。やるよ」
麦野「えっ、いいよ浜面。食べきれないよ」
浜面「じゃあ代わりにこの冷奴くれよ。とりかえっこな!」
麦野「うん、わかった。とりかえっこ」
浜面「こんな魚のどこが好きなんだ?骨もあるし皮もあるし」
麦野「魚って頭、よくなるんだよ」
浜面「そ、そうだったのか…麦野が算数できるのは魚のおかげだったのか…」
麦野「そうかもしれないね。浜面、お魚あんまり好きじゃないもんね。あと野菜も」
浜面「ちくしょー!俺も明日から魚好きになってやる!野菜は…」
麦野「好き嫌いはダメなんだよ?」
浜面「ぐっ…う……はい…」
麦野「よろしいっ」
浜面(あれ…おかしくねえ?)
浜面は何でも興味を持っていた。
一度、施設の鍵に針金を詰めて壊したことがあった。
浜面「麦野、鍵ってどんな仕組みだと思う?」
麦野「そういえばどうなってるんだろうね?鍵はどれもぎざぎざしてたりするけど」
浜面「じゃーん。針金、これでうまくやれば開くらしい」
麦野「ダメだよ浜面。それ映画のお話でしょ?うまくいくかなあ」
浜面「こうやって2本の針金を交互につっこんで…」ガチャンッ
麦野「わっ、開いちゃった…」
浜面「ほらな!…ホントに開いたよ……スゲー!」
麦野「でも、これどうやって閉めるの?ばれちゃうよ?」
浜面「きっと同じようにつっこめば…」プチン
麦野「切れちゃった…」
浜面「は、はは。まぁ、扉は一応開かなくなったし結果オーライだな!」
麦野「私、知らないよう?」
――翌日
先生「浜面君、この鍵穴に針金詰めたでしょ」
浜面「ちげーよ先生!前はこれで鍵になったんだ!開けられたんだよ!」
先生「そんなことやっちゃダメでしょ!」ゴチン
浜面「いてぇいてぇ!」
麦野「浜面、大丈夫?」
浜面「ちくしょー…先生おもいっきりげん骨かましやがって…」
麦野「頭、たんこぶになってるよ」
浜面「よし!今度こそ…」ガチャガチャ
バキンッ
麦浜「「あっ!」」
その日から、施設の鍵は電子錠になった。
いつまでも浜面に守られていてはいけない。
私はそう考えることが多くなった。
麦野「浜面、浜面は喧嘩が怖くないの?」
浜面「そりゃあ殴られるのは痛いし怖いさ。でもいつまでもビビってたら舐められちまう」
麦野「私はびびってばかりいるから意地悪されるのかな…」
浜面「麦野は俺が守ってやるって言っただろ」
麦野「うん。でも、私もいつまでもびびっているわけにはいかないよ」
浜面「じゃあ俺が稽古をつけてやろう!相手を逆にビビらせてやろうぜ!」
麦野「うん!でも、具体的にはどうすればいいかなぁ?」
浜面「そりゃあ相手に凄まれた時に睨み返してやればいいんだよ」
麦野「こ、こうかな?」ジッ
浜面「んー…まぁ練習かな…あとは舐めんじゃねぇ!とかそういう言葉だ。俺を敵だと思って練習だ」
麦野「な、なめんじゃ…恥ずかしいよう」
浜面「練習あるのみだぜ!相手の強さなんて関係ない。大事なのは勢いだ!ぶっ飛ばすぞオラァ!」
麦野「強さは関係ない…関係ねぇ!関係ねぇよ!ナメてんのか浜面ァ!!」
浜面「…!!」ビクゥッ
麦野「あっ!えと…こんな感じかな…?」
浜面「お、おう…いいんじゃねーか(今のはおっかねぇ…)」
能力開発に重要なのは、パーソナルリアリティなのだそうだ。
自分だけの現実。それがいったいどういう意味なのかわからなかった。
浜面も、わからないようだった。
浜面「自分だけのもなにも、現実は現実だろ…だーわっかんねぇ…」
麦野「わかんないね」
浜面「例え話もよくわかんなかったけど、残酷すぎるだろ…猫だって生きてるのに」
麦野「あの猫、どうなっちゃたのかなやっぱり死んじゃったのかな。毒ガスじゃあトラにはならないよね?」
浜面「能力開発を受ければ見えてくるのかな、パーソナルリアリティ」
麦野「自分しかいない現実なんて寂しいな。私は浜面と一緒がいいよ」
浜面「別に離れ離れになるとかそういうわけじゃないさ、きっと」
麦野「そうだね、能力者はみんな持ってるんだもんね。パーソナルリアリティ」
浜面「よし!俺もいつか自分だけの現実ってのを見つけて能力者になってやるぜ」
麦野「頑張ろうね、浜面」
浜面「おう!」
麦野「でも、私は超能力なんかよりも、今のままがいいな」ボソ
小学生になる直前の春休みから、能力開発が始まった。
施設の子たちはそれぞれ小学校へ進学するにあたっての『合宿』という名目で研究所に送られ、そこで基礎的な開発を受けた。
その後小学校に割り振られることになっていた。
麦野「合宿、行き先別々になっちゃったね」
浜面「まあでも基本的にここの子供はみんな同じ小学校って言ってたじゃねえか」
麦野「でもこれから能力開発だね。緊張するな」
浜面「そうだな、でも超能力者になるのは夢だからがんばろうな」
麦野「うん。でも浜面と別れるのは寂しいよ」
浜面「だからそう心配するなって、すぐ会えるさ」
麦野「ほんとに?会える?」
浜面「違う学校になったって、違うクラスになったって、会うのは自由だろ」
麦野「そうだね、うん。そうだよね。」
浜面「そうさ、何も心配することはないんだよ」
麦野「もしそうなったら、浜面のところへ、会いに行ってもいい?」
浜面「あたりまえだろ!俺も行くよ」
結論から言って、私と浜面は別々の学校になった。
ちょっとした騒ぎになって、『合宿』関係者には緘口令が敷かれた。
後から知ったことだが、私が施設にいたことを記憶している人間はいなくなっていた。
原因は全て、私の能力。
研究員「じゃあこれから君の能力が発現するか簡単な実験をするからね」
麦野「は、はい…」
研究員「はは、そんな緊張しなくていいよ。ここで能力が発現する子はそう多くないんだ」
麦野「そうなんですか、じゃあなんで最初にこんな検査を?」
研究員「最初の投薬も脳への刺激も最初が肝心でね、珍しい能力はそれだけでも芽は見えたりするんだよ」
麦野「脳へ…なんだか、怖いです」
研究員「最初からなんでも危ないことをするわけじゃあないよ。安心なさい」
麦野「はい。あの、えっと、でも」
研究員「それはそうと、お名前を聞いてもいいかな?」
麦野「麦野沈利です。あの、危ないことって」
研究員「麦野さんね。はいじゃあこの薬を飲んでそこの装置の上に横になってね」
麦野「あ、はい」
研究員「ふむ、これは…珍しい能力かもしれないな…すごいよ」
麦野「あの…私、別に能力は…」
研究員「君はそう多くない子の1人かもしれないぞ…これは面白い!」
麦野「もういいですか?怖いです…」
研究員「いやあなるほど。よし、これはどうかな?ちょっと痛むかもしれないよ」
麦野「ああああぁぁぁぁぁァァあああっ!」
私は意識を失った。同時に能力が暴走した。
大惨事だった。建物は半壊、怪我人の数は50を越えた。
当然、その中には検査を受けていた私と同じ施設の子供もいた。
焦げた肉の匂いがした。そこの頃の私はそれが何の匂いかわからなかったけれど、すごく怖かったのは覚えている。
麦野「…なにがあったの?」
麦野「いったいどうしてこんな…いったい誰が…」
ここまで口にして気がついた。
私だけが無傷だった。
確かに服は焦げて穴だらけになってはいたが、怪我はどこにもなかった。
麦野「うそ…なにこれ…」
警備員「そこの子供!とまりなさい!」
麦野「ひっ!あ、あのこれってなにが…」ザッ
警備員「動くんじゃないな!そのまま!」チャッ
麦野「は、ひっ…撃たないで…私何もしてないよ…?」ポロポロ
警備員「『はい、たったいま保護…いえ、確保しました』」
警備員は電話で何か話しているようだった。
その後私は数人の警備員に連れられて、病院に送られた。
春には何事もないように私の進む学校とクラスが伝えられた。
クラスメイトは、いなかった。もちろん、浜面がどこにいるのかも、教えてくれなかった。
麦野「浜面ぁ…浜面どこにいるの…」
麦野「1人はいやだよ…はま…づらぁ…」
浜面仕上は何も知らされなかった。
それどころか、機密保持のために記憶を操作された。
これは、浜面のいた施設の子供全員に行われた処置だった。
浜面「俺も小学生かー、春休みじゃ能力はわからなかったけど、ここで俺は能力者になるんだ!」
浜面「これからも一緒にがんばろうぜ!……あれ?」
浜面「俺、誰に話しかけようとしたんだろ。ははっ、自分で自分がおかしいぜ」
その後行われた身体検査の結果はすぐに出た。大能力者『原子崩し』
麦野「どうして私は大能力者なのに特別学級なの?みんなと一緒がいいよ」
研究員「君は能力の制御がまだできていない。それどころか、自分がどんな能力かもわからないだろう?」
麦野「そ、そうだけど…」
研究員「それを君は理解するんだ。小学生のうちにね」
麦野「そうすれば、浜面にも会える?」
研究員「浜面?ああ、そのお友達にきっと会えるよ」
私はその言葉を信じて頑張った。それしか目標がなかったから。
研究所を転々とし、担当の研究員もどんどん入れ替わった。
単に危ない光を撒き散らすだけだったものが、粒機波形高速砲と呼ばれるようになった。
能力強度を調べるためにありとあらゆる実験が行われた。
いろんな角度から能力を試した。
いろんな距離から能力を試した。
いろんな物に対して能力を試した。
気づけば私はいろんな人に能力を試しても何も感じなくなっていた。
10歳を過ぎた頃だった。超能力者になった。
嬉しさは、なかった。
どうして自分が学園都市にいるのか、どうして自分は能力者になりたいと思ったのか、そんなことはもう覚えていなかった。
浜面に会える、ただそれだけが頭に残っていた。
研究員「すごい!すごいじゃないか『原子崩し』!やったぞ!ついに超能力者だ!」
麦野「で、浜面には会わせてもらえるのかしら?学校へは通わせてもらえるの?」
研究員「はまづら?誰だね?学校はここだよ。ここが君のクラス、僕が君の担任何か問題あるかね」
麦野「…そうね、なんでもないわ。問題ない」
研究員「さあ次の実験だ。この結果如何では私も統括理事会に顔が立つ。頼んだよ」
麦野「…ええ」
麦野「浜面…もう会えないのかも、しれないね」
実験は続いた。毎日朝早くから夜遅くまで。拒否する選択肢はなかった。そんなこと教わらなかった。
多分私は壊れたんだと思う。目の前の人間は誰でも的に見えたし、実際そうやって何人かは的にしてやった。
もちろん全て事故として処理された。
そのたびにああ、自分は超能力者なんだな、もう普通じゃないんだな。という感覚がいっそう深まるだけだった。
研究員『聞こえるかね?「原子崩し」』
麦野「ええ、聞こえてるわ。今回の担任のセンセイはそうやってスピーカーの向こうから出てこないつもりかしら?」
研究員『ああ無論だ。君の能力は恐ろしい。僕は君が恐ろしいからね。だが』
麦野「それ以上に魅力的だと?」
研究員『わかってるじゃあないか、自分の魅力に気づけるということは、出来る様でなかなかできない』
麦野「そうね、ありがとう。あなたとは長続きしそうだわ」
研究員『それじゃあ今日の実験はこれだ』
彼らは私のことを能力名で呼んだ。他の研究者にもいえることだが、そもそも彼らは能力にしか興味がない。
私が誰でなんという人間あるかなど考えたこともない、そんな様子だった。
気づけばあれだけ大きかった浜面の存在が、すっかり私の中から消えていた。
あれだけ通いたかった学校への興味も、なくなっていた。
研究員『ふむ…これも失敗か、いや存外大したことないのだな。超能力者「原子崩し」。「一方通行」や「未元物質」ほどの応用は効かんか』
麦野「ハァッ…ハァッ…無茶言うんじゃ…ないわよっ…」
研究員『もういい、今日は終わりだ。明日はまた別の実験があるからな。今度は期待を裏切らないでくれたまえよ。「原子崩し」』
麦野「ちっ、舐めるんじゃないわよ…臆病者のクセに…」ガンッ
研究員『おいおい、そうカッカしないでくれたまえ。せっかくの能力も精密な演算無しでは台無しだよ。機材もなかなかいい値段がするんだ』
麦野「もう、アンタ殺すわ」
私はまた、研究所を一つ潰した。今度は意図的に。徹底的に。破壊してぶっ壊して粉砕した。
1人ずつ、全員を丁寧に殺してやった。何かが切れる音がした。
さすがに今回は上も庇い切れなかったようだ。私は指名手配され、身を隠した。
不良1「おい姉ちゃん、見ねぇ顔だが…ここいらが俺らのシマだって…ぎゃあああ」
麦野「そう、で?」
不良2「ちぃっ!能力者かよ!おい逃げるぞ!!」
不良1「腕が…俺の腕がぁぁぁ!!」
麦野「ちょっとあんた達、携帯か現金、置いていきなさい。それとももう片方の腕を置いていってくれるのかしら?」
不良2「くそっ!これで全部だ!てめぇ背中にゃ気をつけろよ…」タッタッタッ
麦野「はっ。無能力者も苦労してるのね。つくづく腐ってるわ。この街」
麦野「まぁいいわ。しばらくは路地裏暮らしも悪くない」
追われる身ではさすがに自分のカードは使えない。
かといって現金をあまり持っていなかったので、こうして不良から頂いて、しばらくその日暮らしをしていた。
不良A「くそっよりにもよってうわさのビーム女かよ…これで勘弁してくれ」
麦野「あら、話がわかるじゃない」
???「ダメだダメだ。根性ってモンがまるで足りてねえ」
麦野「…どちらさんかしら?(気配を全く感じなかった…)」
削板「ほう?裏路地ですき放題やっておいて俺のことを知らねえとはよほど根性が足りねえと見える。俺は学園都市超能力者ナンバーセブンの削板軍覇だー!!」
麦野「第七位!?面倒ね」ズバァ
削板「はっ!当たらねえ!なぜならお前に根性が足りてねえからだ!!」
第七位は一足飛びに、いやほとんど眼では追えない速さで殴りかかってきた。
避けられない速さではない。私は能力とバネで一気に上体を反らして躱した。
麦野「ちぃっ!」
躱した第七位の拳はアスファルトに大穴を開けていた。
多分、アレは食らってはいけない一撃だ。
削板「ほぉう?俺の一撃を躱すか!いいねえ!意外と根性あるじゃねえか!!」
麦野(第七位は私が誰なのか理解していないの…?都合がいいわ)
削板「ボサっと突っ立ってるならこっちからいくぞ!!
さっきと同様馬鹿げたスピードでナナメ上から蹴りが飛んでくる。
麦野(これなら奴は避けられない…!)
私は蹴りに対し真正面から能力を見舞う。すると相手はどういう理屈か思い切り体を捻ってそれを避けた。
削板「今のはヤバかったぞ!防御より攻撃を選ぶとはやっぱり随分根性のある奴だ!!」
麦野「そりゃどーも」
削板「だがまだ俺の方が根性は上だぁぁ!!すごいパーンチ」
第七位が拳を宙で振りかぶった。何も起こらない。
ただ勘だけが跳べと叫ぶ。こういう時は勘が一番正しいことを私は知っていた。
横っ飛びに避けてそのまま第七位のいた場所に狙いを定めようとした。
削板「根性が足りてねえな、おせぇぞ」
バキィッ
完全に回避する方向を読まれていたようだ。
避けた先には既に第七位の右足が待っていた。
路地の角まで蹴り跳ばされた。避ける方向まで読まれて先回りされていた。
麦野「がァッ…ハッ…」
ドラム缶がクッションに感じるほどの衝撃に肺の空気が全部吐き出された。
麦野「クソ…ッ!(私が…圧されてる…?)」
削板「根性あったりなかったりわからん奴だな。この程度で終わりか?」
麦野「舐めてんじゃねぇぞ削板ァ!!」ズバァ
立て続けに能力を2条3条と打ち込む。
当たるとは思っていないが少なくとも第七位もこれには回避に移らざるを得ないはずだ。
削板「数撃てば当たるって考えじゃ根性は足りてねぇ!!指先見りゃ避けるに難くねえ!!」
削板が一足飛びに懐へ入ってきた。いや、飛び込ませた。
麦野「誰が指先からしか打てないってぇ…?」
スバンッ!!!
ほぼ密着状態の相手に膝先から光線を顔面めがけて見舞った。これは避けられまい。
削板「ぐっおおおおお!!!」
しかし奴はまたしても首をありえない方向へ捻って躱した。
削板「ちっ!!やるじゃねえか…!!悪かった!お前やっぱ大した根性だわ!!」
麦野「なんで今のも避けられるわけ…?」
削板「楽しかったぜ、また会おう!!とうっ!」
第七位はそのままビルとビルの間へ姿を消した。
麦野「なんだったのよあれ…いたた」
削板「くそっ…肩口こんがりやられちまったぜ…修行が足りねえ」
削板「でも路地裏にはまだあんな強い根性ある奴がいるんだな。燃えてきたぜ…へへへ!!」
―――
身を隠しての生活はなかなか辛かった。
口座には腐るほどの金がはいっているが降ろすわけにはいかない。
クレジットカードも足がつく。こうなってみると超能力者といえども脆いもんだということを思い知らされた。
追手が来ても捕まるとはさらさら思っていなかったけれど、それでも毎日毎日追けられてたら気が滅入るわけで。
麦野「こうやって不良相手にカツアゲまがいのことを続けるのも、なんだかね…」
麦野「はぁ、いっそ警備員のところへ私から出向いてやろうかしら。どうせ研究所送りにされるだけだし」
麦野「路地裏(今)と研究所(昔)と、どっちが底なのかしらね」
唯一つ言えたとしたら
どちらも底ではなかったのは確かだ。
そうして暗部に堕ちていくまで時間はさほどかからなかった。
暗部から声がかかってすぐ私はその話に乗った。
電話の女『私たちの依頼する仕事をあなたは引き受け、こなす。簡単でしょう?』
麦野『それは、私に頼んでいるの?』
電話の女『そうよ、超能力者第四位"原子崩し"』
麦野『いいわ。引き受ける。ただ私は手加減できないからそのつもりでいてね』
電話の女『そういってもらえると助かるわ。これであなたは太陽の下を歩ける』
麦野『しばらく見ないうちに随分と暗くなったものね、太陽も』
それから私はしばらく使い走りのような仕事をさせられた。
麦野「今回のお仕事はー…学園都市にHALO降下する目標の迎撃?なにこれ」
電話の女『もしもし、もう仕事は伝達されているわね、頼んだわよ』
麦野『はいはーい、迎撃ってことは生死は問わないわけね。私にピッタリだわ』
電話の女『あ、ついでにマストじゃないけど航空機も墜として頂戴。30000~35000フィートにいるはずだわ』
麦野『直接照準でそれを迎撃しろっての?頭おかしいんじゃないの?』
電話の女『さすがにこちらから座標と時間は指示するわ。便利よね、線で攻撃できる高射砲さん?』
麦野「ちっ、私はflakかっつーの」
ズバァッ
青空にまぎれた閃光が二条、小さな花火が二つ、学園都市に上がった。
お金には困っていなかったし、単に隠れ蓑として過ごすには暗部という立場は全く問題はなかった。
それから、一応高校には通っていた。
念願の普通学級での授業だったがどれもつまらなかった。夢描いたクラスなんて存在しなかった。
あったのは有象無象の無能共、彼らの目に私はさぞ化け物に映っただろう。
授業も全て小学校のうちに私が終わらせた内容だった。
結局、1年も通わないうちに卒業証書が郵送されてきた。
麦野『で?私に単独行動じゃなくてチームで動けと?』
電話の女『そういうこと、だってあなた人の下じゃ動きたくないでしょう?あなたがリーダーよ』
麦野『わかってるじゃない。むしろこれまでは研修だったってわけね』
電話の女『さっすが超能力者、話がわかる。あなたが使えるようになったから、これからは使う。それだけ』
麦野『使えるとか使うとか、いちいち癪に触るわね、殺すわよ』
電話の女『あら怖い怖い。あなたたちは「アイテム」として動いてもらうわ。構成員は4名。じきそこに集まるはずよ』
麦野『こんなファミレスに?』
絹旗「超目立ついかにもな女性ですね。こんにちは、あなたがリーダーですね。超能力者第四位"原子崩し"私はきn」
麦野『ちょっと、こんなガキが構成員?舐めてるの?』
電話の女『あら、もう合流したの?暗部にいる期間はあなたとそう変わらないはずよ、仲良くやってねー』
麦野『なによそれ、めんどくさいわ』
絹旗「な、…いいでしょう、ここまで私を超無視するというのでしたら…私の『オフェンシb」
滝壺「滝壺理后、大能力者『能力追跡』こっちから信号がきた。待ち合わせは多分、この人たち」
絹旗「っっ!!」
絹旗「ふー…超ご丁寧にどうも。私は絹旗最愛といいます。超よろしくです」
フレンダ「なんか変わった人だかり、結局、待ち合わせ場所はここであってたわけね」
電話の女『じゃあ今日のところは仕事もないし、好きにしt』
麦野『ああなんか4人集まったわ。切るわね』
麦野「というわけで私たちがこれからは『アイテム』として動いていくわけだけれど」
フレンダ「結局さ、自己紹介から始めるべきだと思うのよ。私はフレンダ」
絹旗「ところで今日は超仕事だと聞いてきたのですが」
滝壺「…北北西の方角から信号がきてる…」
やいのやいの
麦野「疲れるわ…」
いいながら私は笑っていた。
たとえ苦笑いだとしても、笑ったのは何年ぶりだろう。思い出せなかった。
年齢も能力も違う、プロフィールもほとんど知らない連中と行動する自分が滑稽だった。
こんな格下相手になぜこうもすんなり行動を共にすることを良しとしたのかわからなかった。
仕事はまず私のところへ連絡が来た。
1人だった頃との大きな違いは荒事が増えたことだ。
絹旗「で、麦野。今日の仕事は超何なんです?」
麦野「よからぬことをしそうな組織があるので消せ、だそうよ」
フレンダ「結局さ、そうやって学園都市に不利益な存在を消すのが私たちの仕事なのよ」
絹旗「超よからぬこと…っていったい何です?」
麦野「さあね、消せって言われたんだから消すまでよ」
滝壺「私、今回は役に立ちそうにない。かえっていい?」
麦野「ダメよ滝壺。相手に能力者がいたらアンタの出番なんだから、ちゃんとついて来ること。いい?」
滝壺「うん。わかった」
現地
麦野「じゃあフレンダが表から派手に始めたら、私と絹旗は裏からそれぞれ別々に行くわよ」
フレンダ「結局私は囮ってわけね。失敗したようなら私1人逃げていい?」
滝壺「大丈夫、むぎのもきぬはたもうまくやる」
絹旗「分かれてからは超完全に無線封鎖ですからね。30分後まで携帯電源も切ってください」
麦野「じゃあ時計合わせいくわよ、14分、3…2……今」
―――
そうしていつも4人で仕事をこなした。
足手まといになるものとばかり思っていた彼女たちは皆うまくやった。
後始末は今までと同様に連絡一つで下部の人間が来たので問題はなかった。
しかしさすがに4人で仕事となると足の必要性が出てきた。
電話の女『今日もお疲れ様。報酬についてはいつもどおりの手はずになっているから』
麦野『そんなことより、そろそろ私たちも足がほしいんだけど』
電話の女『あら、それもそうね。最近のあなたたちの行動範囲も広くなってるようだし…』
麦野『運転手もつけて頂戴。正直面倒なのよ、集まってもパシリになるようなやつがほしいわ』
電話の女『そうね…ちょうどいいのが1人いるわ。便利に使うなら、男の子の方がいいでしょう?』
麦野『なんでもいいわよ、丈夫で死なないのなら』
電話の女『ああ、条件にピッタリよお客様。次の仕事の時にいつものファミレスに迎えに行かせるわね』
麦野『使えないのよこしたら、アンタも一緒に灰にしてあげるわよ』
電話の女『あら怖いわ。ま、楽しみにしていて』ガチャッ
麦野「明日、新しい玩具が来るわよ。足と一緒に」
滝壺「おもちゃの足?なんだかこわい」
絹旗「超パシリ兼運転手ってことですよ滝壺さん。麦野、よくそんな要望が通りましたね」
フレンダ「結局、任せられる仕事の量や範囲が増えて広がるってことなんじゃないの?」
麦野「まあそうなるわね。今までの仕事も退屈してたし、別に異論はなくって?」
絹旗「そういうことならまあ、超無問題です。年功序列を盾にドリンクバー係をやらされるのは超うんざりですから」
麦野(いろいろ…あったわ。ホントに…)
麦野(浜面…元気かなぁ)
なんだかんだで今まで上手く立ち回れてこれたと思う。
楽しかったかというと嘘になる。どう考えても辛いことのほうが多かった。またやり直したいなんて絶対思わない。
でも超能力者で終わる気はなかったし、当然第四位に甘んじるつもりもない。
多分今後も今までみたいにこうやって自分の能力を高めながら仕事を続けていくのだろう。
要するに順調だったんだ。
私は人生で多分2度目の安定を手に入れた。私は2箇所目の居場所を手に入れたんだ。
滝壺「…ぎの?むぎの?目を開けてねてるのかな」
麦野「あ、え、ごめん何の話してたんだっけ?」
滝壺「むぎの?むぎのがぼうっとするなんて珍しい。明日は雷雨」
麦野「え?ああなんでもないわ。昔を思い出していただけよ」
絹旗「おや、麦野にたまには取り出して悦に入るようなお宝があったとは超意外です」
フレンダ「結局、暗部の鬼麦野も乙女だった頃があったってわけね」
麦野「べつにそんなんじゃないけどさ。ちょっとね」
滝壺「鬼っていったのに怒らないむぎのがとてもこわい」
絹旗「しっ!触らぬ神に超祟りなしですよ滝壺さん!」
麦野「誰が祟りだってぇ…?」
浜面「ちわー、えーっと。『アイテム』さんってのはあんたらのことでいいのか?」
おしまい

