わたしはパソコンです。
製造元は伏せさせて頂きます。
6年前にご主人様にお買い上げいただいた、なんの変哲もないパソコンです。
元スレ
PC「もう…限界です…」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1385727068/
電気屋さんで並んでいたときは、毎日ドキドキしていました。
となりのパソコンと、右からいくつめかのパソコンは性能がいいからはやく売れるんじゃないかとか
売れ残ったパソコンはどうなってしまうんだろうとか
そんなことを話す毎日でした。
そして、忘れもしないあの日、あなたがやってきたんです。
店員さんに案内されながら、わたしの前に立ったとき、
わたしはなんとなく、
「この人に買われていくんじゃないか」という気持ちになりました。
そしてあなたは、店員さんと少しお話ししたあとで、わたしを家に連れて帰りました。
その日のあなたの笑顔といったら、
まるで、わくわくしていると顔にかいてあるような表情でした。
たくさんのソフトを積んで、わたしにインストールする作業をするあなたの顔をみて、
わたしは誇らしいような気持ちになりました。
それからの生活は、とても楽しいものでした。
帰ると同時にわたしを起こして、ゲームをしたり、動画をみてはしゃぐあなたのとなりで
わたしも同じように、笑って、ときには泣いたりして、たくさんの日々を、あなたと過ごしました。
一緒に暮らしはじめてから、四年くらい経ったある日、
あなたが嬉しそうに、あるソフトを持ってきました。
そのソフトは最新のもので、容量は、古くなったわたしには、すこし無理のあるものでした。
一気に身体が重くなるのを感じました。
辛くて、苦しかった。
「大丈夫かな、やっぱり無理させてるかな…」
いいえ、大丈夫ですご主人様。
わたし、あなたのために頑張ってみせますから。
それから、あなたはあまり笑わなくなりました。
その代わり、真剣な表情で、食い入る様にわたしを見つめることが多くなりました。
わたしは、ちょっとさみしくなりましたが、
あなたが、真剣に、目標に向かって努力をしているのを、
そして、そのお手伝いができることを、誇らしく思っていました。
それから、数年が経ちました。
わたしは、自分の異変に、気付いていました。
動作が、遅くなった。
以前ならできたことが、できなくなった。
急に眠たくなり、気づいたら途中で寝てしまっていた。
「あー!いいところだったのに!」
そんなあなたの声で起きることもありました。
ごめんなさいご主人様、あなたのお役にたちたいのに、
ほんとうにごめんなさい。
わたしは、気付いていました。
あなたが、ほんとうはしたいことを、していないこと。
わたしを気遣って、負担の少ない作業ばかりをしていること。
ある日、あなたがわたしを起こして、
ちょっとした作業を始めました。
一番楽しかった、一番お役にたてていたときのような作業。
笑っているあなたの側で、
わたしも笑い、そして決意しました。
あなたが作業を終え、保存をしたのを確認し、
わたしは自主的に、全ての活動を停止させました。
あなたは慌てていましたね。
何度も電源スイッチを押したり
コンセントを確認したり。
でも、わたしはそれらを全て無視しました。
ほんとうは、目覚めたかった。
またあなたと、最後まであなたと、いっしょに笑っていたかった。
だけどだめなんです。
わたしじゃ、だめなんです。
それから数日は、あなたはわたしが目覚めないかを確認していましたが、
それが二日に一回、三日に一回になり
ついには、あなたに触れられることもなくなりました。
ある朝、あなたの話し声が聞こえました。
電気屋さんに行く、お金は準備できた、
ときれ途切れにその声を聞き、ああ、その日が来たんだなぁと、ぼんやり思いました。
ほんとうは覚悟なんてできていません。
もう一度、電源スイッチに触れてほしい。
もう一度はじめからやり直したい。
今度くる最新型であろうパソコンが憎い。
だけど、わたしじゃ、だめなんです。
どうかお元気で。
どうか目標を諦めないで。
いままで、ありがとうございました。
わたしは、しあわせでした。
聞こえるわけはないけれど、
わたしは、あなたの、いいパートナーに、なれたでしょうか?
37 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/11/29(金) 21:27:55.90 u7sSjVrxi 18/18おわりです。
6年使ってたPCが壊れて、すごく愛着があったから、涙ながらに書きました。
読んでくださってありがとうございました。