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≪あらすじ≫
キュートでファンシー、ビビッドなお茶目さが魅力でお馴染みの女騎士ちゃんがめっちゃ活躍した。
女騎士ちゃんは果たして薄汚い魔物どもを一匹残らず根絶やしにする事ができるのか。
元スレ
女騎士「そうなったのは私のせいじゃないから謝らない」煮込み7杯目
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1379703594/
雷帝「デモ、デモ、デモ……たぁいへんですねー、帝国は……デモもストライキもねぇからさっさと賠償金くださいよ賠償金」
敵兵「……」
雷帝「そう思いません? どーでしょ」
ブラウニー「どうなんでしょ」
ピクシー「わかりません」
雷帝「ふふん、あなた方魔物……失礼、魔王軍も物好きですねー。こんな死に体のボロ雑巾にいちいち執成して」
ブラウニー「上の者の意向なんでー」
ピクシー「戻って来いって言われたら、すぐにでも北西帰りますー」
雷帝「あらー薄情、さすが魔物」
敵兵「(……怖い……怖い……もともとのオレの上司……ずっとずっと上の上司……!)」
雷帝「(メェンドクセー、心底メンドクセー……7年前の事ァ忘れちゃいねェぞ、クソどもが……魔物、魔物魔物……!)」
敵兵「(オレは善良な共和国出のいち兵士……ちょっと東方の血が混じった……)」
雷帝「(このゴミどもがしゃしゃり出て来なけりゃ……あの攻勢は西部へのヨスガとなったものをよぉー……死んでくれねェかなぁーっと)」
ブラウニー「顔が怖い」
ピクシー「眉間のしわが怖い」
敵兵「ええと……次の予定はっと」
ピクシー「旧帝側との日程調整会議ですかね。連合の視察との兼ね合いもあるんで、こら長丁場になりますわ」
敵兵「(長丁場と言っても、仕事してんのはあのティタニアさんだよなぁ……)」
ブラウニー「旧帝側って言うと……情報部がしゃしゃり出てくるのかなー」
敵兵「情報部……あの気が強そうな金髪と顔を合わせなきゃあいけないのか」
ブラウニー「あー」
ピクシー「あのアジ=ダハーカの姪だか言いましたっけ?」
敵兵「どうもあのテの顔つきを見ると拒否反応が出てしまって」
ブラウニー「金髪碧眼は大方ダメって事すか」
敵兵「……さっきの雷帝閣下も苦手だ」
ピクシー「あれはまぁ……ヒトの話聞きそうもないタイプですし。先の首脳会談でもあんな調子でしたんでね」
敵兵「あれは酷かった。おじいちゃ……エルフが茶化し、閣下が騒ぎ、北西諸島が睨みつけ……あのクズは寝てるだけマシだったが」
妹「ごきげんよう、魔王軍の皆々様。どうぞよしなにぃ」
おかっぱ「……ククク、ごきげんよう。おやおやおや、何やら見知った顔が……気のせいかなぁ? どうなのかなぁ?」
敵兵「」
将軍丙「……」
敵兵「なん……えっ……え? 何? 何がどうなってんの……?」
ブラウニー「さあ……」
敵兵「(ば、幕府が情報部に取り入った……? そ、それにあのクズにそっくりな彼女……?)」
敵兵「あ、あの……これって一体どういう……」
将軍丙「ご覧の通り。あなたなら、彼女と面識があるのではなくて?」
おかっぱ「元気そうで何より。尻軽男」
妹「仲がよろしいようで、羨ましい限りですわぁ」
敵兵「……オ、オレ、か、かかか、帰……」
おかっぱ「帰んなよォー、アタシが何かしたみてェじゃあねーか。黙って話聞いてけよ」
敵兵「あ、ああ、あんた、何でのこのこ魔王軍と……まさか、あのおじいちゃんの差し金……!?」
おかっぱ「ばかたれが。幕府の士がいつまでもあんなところで腐っていてたまるかよ」
敵兵「は……」
おかっぱ「頃合いだと思ってなぁー。前に言わなかったっけ? アタシらは別に、大陸に暴れに来たわけじゃあないんだぜ。
頭の悪いお前らのさ・い・きょ・う・い・くをしに来てやったんだよ。どぅーゆーあんだすたん?」
敵兵「……はあ」
妹「黙って聞いていりゃあ、好き勝手を抜かす鼻ペチャですこと。ピーチクパーチク鬱陶しい事この上ありませんわね、土人」
おかっぱ「クク……あの姉貴にしてこの妹ありだ、家系まるごと病んでやがるぜ」
敵兵「家系って……じゃ、じゃあ……やっぱり、その人……」
将軍丙「……アジ・ダハーカとの関連性はともかく……彼女は先任の情報部長の叔母にあたる一人。つまり……」
おかっぱ「あのクソ姉妹の末っ子って事だ。どぅーゆーあんだすたん?」
妹「理解しました? 頭、働いてます? カカカ……」
敵兵「か、彼女が今の情報部長って……あ、あのクズを追っかけてたあの人は!?」
将軍丙「先代部長……彼女、先のテロ事件から行方が分からないそうなの。ああしてあの騎士が堂々と公の場に姿を現した事を考えると……」
妹「どこかでお腹を空かせて困っているんでしょうね。お気の毒に……お可哀想に」
敵兵「(……うう、間違いねェ)」
将軍丙「戦闘が発生した区域周辺の病院にも確認を取ったけれど、随伴の人員ともども音沙汰なし……残念だけれど」
妹「任務の最中にいなくなっちゃうだなんて、少し若気の至りが過ぎますわ……姪とはいえ、毅然とした対応をしませんと」
おかっぱ「そうして無理くり席から蹴り落としたわけだ。クソ姉妹……クソの血筋だこいつは」
妹「人聞きの悪い! 周囲からの栄誉ある推薦で就任したんですのよ?」
おかっぱ「クソの血筋については反論なし。それでこそだな……」
敵兵「(間違いなく……あのクズに近い人間だ……姪の彼女とは全然違ぇ……)」
妹「だってクソ……下痢みたいなものですわよぉ? ああおぞましい、あのゴミ姉貴二匹と半分は同じ体液が流れているなんて。
怖気が走りますわ!! お父様もお父様です、この私をあんな売春宿に叩き込まなければあんな目にはならなかったのに……」
敵兵「(お、お父様……さすがにこいつらも、気の股から産まれたってわけじゃあ)」
妹「体中に水銀を溜めて、全身の軟骨を軋ませながらベッドで呻いているでしょうねぇ……ああ可哀想、でも私は悪くありませんわ。
悪いのは水銀を垂れ流した帝国そのものですもの、『私』はまったく悪くございませぇん。天罰ってやつですわぁ」
敵兵「」
敵兵「そ、それで……そもそも、この面子は何なんですか、旧帝側との会合じゃあ」
将軍丙「そう、ね。間違ってはいないわ。かつての帝国との提携に関する話し合い……」
おかっぱ「アタシがいるって時点で気づかないか? この面子でどんな事をするかはよぉ」
敵兵「……」
ブラウニー「こっち見んな」
ピクシー「私らに分かるわけないだろ」
おかっぱ「大まかな指標としては……連合を北東の奥に押し込む事。大昔の騎馬民族にまで分裂させてやりたいもんだがね。そして――――」
妹「アジ・ダハーカを叩き潰し……覇権を私たちが手に入れるのです」
敵兵「」
妹「このままあの女が祭り上げられれば、カネも、名声も……東西戦争を生き延びた英雄として、
西方諸国で持ち上げられるのは時間の問題です。それでは困るでしょう? ねえ、魔物のみなさん?」
将軍丙「……大方、わかるでしょう。利害の一致よ、それ以上でも以下でもない」
敵兵「ですよねぇ……」
妹「だぁってぇ、だいたいズルくありません? 私がおいしい汁をすすれてないとかおかしくありませぇん?」
敵兵「」
妹「この私が対して持ち合わせもない失業者相手に小遣い稼ぎしてる間、お姉様がたったら贅沢三昧! ズルいですわズルいですわ。
姉妹なら幸せをおすそわけするべきでしょう? そう思いましょう? だぁって、そもそも世界は私を中心に回ってるんですからぁ」
敵兵「(あー、『あの血』だわコレ。まごうことなき『あの血』流れてるわ)」
敵兵「というか……帝国情報部では、すでにアジ・ダハーカがあのクズだという物的証拠が掴めているのか?」
妹「ハァ? どうしてそんなのが必要なんです?」
敵兵「」
妹「先の会談で、既に小姉様の御尊顔をこの目で確認しておりましてよ。それで十分ですわ」
ピクシー「うっわくそ短絡的」
妹「あなた方魔物は、小姉様がお嫌いなのでしょ? アジ・ダハーカなのでしょ? だいだい大嫌いなのでしょ?
ならそれで十分です、私にとっては十分なのです。あの女の四肢をもいで、私の目の前に届けてくれるなら何でもいいんですのよ」
おかっぱ「とまぁ、そもそもこの女は帝国の未来について執着がない。扱いやすいとは思わないか?」
敵兵「これはひどい」
将軍丙「……けど、こちらにとってはかなり好都合ではあるのよ。アジ・ダハーカの確保は我々にとっての急務。
加えて、先にも増して連合の牽制を情報部がしてくれるとなれば……」
おかっぱ「ゆくゆくは、そちらの勇者サマかその辺りが、帝国の頭になる。魔族のあんたらにはこちらの条件を呑んでもらうが……
まあ、悪いようにはしない。我々の信仰形態を受け入れてくれればな」
敵兵「……うちの頭がそれをすんなり呑むものですかねぇ」
おかっぱ「『うち』ときたか。どこまでも根無し草な男だ。そこの将軍さんが保証してくれたんだ、呑んでくれんと困る」
将軍丙「約束……するわ。恐らく、勇者君の方は……きっと、こっちに引き込める」
おかっぱ「昨日の狂犬が頼もしい番犬か。嬉しいものだなぁ、え?」
敵兵「はい……」
妹「あなた……魔物どもに信頼を置いているんですの?」
おかっぱ「私が? まさか!!」
妹「あらぁ?」
おかっぱ「この先の勝者が連合以外ならどっこでもいいんだよ、魔王軍が勝とうが北西諸島が勝とうが共和国が勝とうが知った事じゃあない」
妹「無責任ですのねぇ」
おかっぱ「我々の目的の一つである信仰改革……言っちまえばなあ、その勝者に便乗すりゃあいいのさ。
神はエライんだ、長いものにはみんな巻かれたがる。人魔断絶を理解させるのは、勝者と懇ろになってからよ。
まあ、もっともこのまま行けば、アタシらと組むのは予定通り魔王軍になりそうだけど」
妹「ならぁ、万一この私が勝ったら? 私にベットする気はあるぅ?」
おかっぱ「場合によるが……お気の毒、今の所選択の範疇にない。おたくら貴族が好き勝手した事による打撃の跡……
加えて、多民族帝国としての寿命がすぐそばに近づいている。先のデモの混乱、地域主義と民族主義の隆盛……ククク」
妹「ああ、見てられませんわねぇ」
おかっぱ「聞けば、かつての帝国もあんたらダッチェス……高位の貴族階級を元とする西部の原帝国、
東部領邦を元とする領邦帝国と、二重帝国の体を為してたって言うじゃあないか。それが連合から殴られて転々バラバラ、
今になってもお祭り騒ぎは止みゃしない……悲惨だねぇ、誰が頭になってもきっと変わりゃしない」
妹「どうしようもないですわねぇ……だれが責任取るんだか」
おかっぱ「他人事だな」
妹「もちろん。こんな国、さっさと滅べばいいんですのよ。貴族の家系にある人間を国土ごと駆除した上で……
そこで、私がのんびーり暮らせればそれでいいんですわ。魔物と東方の土人がいなければ、もうなんでもいいんですのよ」
真神「(うーんこのクズども)」
雷帝「お前らが困っていると聞いて、雷帝さんはご機嫌です! はははのはー!」
勇者「ええ、非常に困っています……」
雷帝「何だって何だって? 巨人殺しの下手人がまーだ見つかってないって? 御愁傷様wwwww
勇者「その件に着いても伺いたく、こうして参上いたしました」
雷帝「その件っつったってねー。これ雷帝さん気分良くないよー、普通は不愉快やろこれ。
おのれが殺ったんかいって言われてるようなもんやし。恫喝されてるようなもんやし」
僧侶「け、決してそのような事では……」
雷帝「巨人族の……グレンデル王とか言いましたっけ?」
勇者「はい。魔王軍がオフィシャルクランの有力者でもありました」
雷帝「情報……情報ねぇ。ふふん、確かにわが軍にもケンタウリ、魔族兵団は少なからず存在する。
巨人族への嫌悪も……私のような単なる猿人に比べ、若干濃い事もあろうよ。古代の巨人信仰に排斥された神性もいるからな。
手当たり次第に、魔族が中心として構築された集団、組織を有する勢力に顔出して回ってるって事ぉ?」
勇者「手当たり次第とは語弊がありますが……我々としても、組織内に殺しの疑惑など抱え続けておくわけにはいかないのです」
雷帝「でしょうねぇ。ただでさえ、あの旧帝国以上に多種多様の民族を背負って立っているわけだ。お上は気が気でないのでは?」
勇者「魔王本人も、非常に遺憾に想っております。一刻も早く、この状況を解決せねばなるまいと奔走しております」
雷帝「結構結構……しかぁーしー、お手伝いして差し上げたいのはヤマヤマなんですがね。私も人の子、わずかばかりの欲は心得ておりまして」
僧侶「……?」
雷帝「さすがに私のような純情可憐にして八面玲瓏たるこの雷帝さんの、イジらしぃいラブラブ交換日記の中身は見せられませんでぇ」
僧侶「」
雷帝「それにですねー、そもそもあんたらみたいな協商関係ってだけの連中に情報庁の大事な観音様、見せらんないんですわー」
勇者「はあ」
雷帝「ああもどかしい、知っていたとしても教える事かなわず……しかしですねー、この雷帝さんも悪魔じゃあありません」
勇者「と言うと?」
雷帝「あなた方の腹を捌いて、オナカの中身の病巣を確認してやる事はできましてよ? 誰かに刺されたか、それとも単なる食あたりか」
僧侶「(やっぱり疑ってるよ……怖いですよこの子……)」
勇者「……」
雷帝「それにちょっと色でも付けてくれたら、全力で犯人探しに協力してやりましょう。
ああ、なんて心が広いんだ雷帝さんは……ほんと雷帝さんの御心は三千世界に澄み渡る蒼穹のようやでぇ」
僧侶「(色を付けるって……既に散々ふんだくられてますよね、勇者様。連合の駐屯地の運営費だって魔王軍が……)」
雷帝「何か文句でもおありでぇ? こちとらマズメシ食らいの北西諸島とのご近所関係にピリピリしてる最中に、
帝国騎士団の栄えある英雄さんの粗探しまでしてやってるんですがねぇ? あぁ心が痛む、アジ・ダハーカなんて本当にいるんですかねぇ」
勇者「……」
雷帝「……私ら、もうちょっとメリット欲しいところなんですがねぇ」
僧侶「……」
勇者「……」
雷帝「聞ィとんのかこのクソガキどもが!! アァ!? 見返りはナンボじゃ言うとるんじゃボケェ!! ナンボ出すんじゃオラァ!?」
勇者「この大陸に生ける人々の為です。我々がより密接な関係を築いていくための一歩でもあると」
雷帝「知るかガキ!! おのれらの口先三寸手八丁には飽き飽きしとるんじゃボケ、貰うもん貰ろとかんアホがおるか!!」
僧侶「」
雷帝「おぅコラ? こんアタシがクソ忙しい中わざわざ顔貸してやっとんのに、
言うに事欠いてまーた余計な注文付ける気か? 人コケにすんのも大概にしとけよボケェ」
僧侶「(私は関係ないですから……こっちに矛先飛んでこないでください、お願いお願いお願い!)」
雷帝「大体、あの魔王ちゅーのはどこで何しとんじゃ、お? お前らみたいな毛ェも生えとらんようなクソガキ寄越してどういうつもりじゃ。
魔物風情が、少しその気にさせたったら調子ん乗りよって、挙句にこっちの痛くもない腹探らせぇ言うんか?」
僧侶「(……そんな事言ってないのに)」
勇者「先に指定した金額、それに一部の領地では満足いただけないと?」
雷帝「あんなミソッカスで何ができるんじゃコラ、北西相手にどうコビ売れるんじゃ?
土地だきゃこちとらいくらでもあんねん、お前らからいくら毟るんはアタシらが決めるんじゃいボケェ!!」
勇者「ガリア=ベルギガの剣を出すと言っても、聞き入れてはくれませんか」
僧侶「……?」
雷帝「……」
勇者「6年前、あなた達連合が帝国に宣戦布告した真の目的でしょう。現共和国領ガリア=ベルギガに眠る聖遺物」
雷帝「……どこから嗅ぎ付けたんでしょうねー、雷帝さん不思議」
勇者「信仰改革という名目の下で、教皇領や国教会とのコネを構築した上で捜索を開始する腹積もりだった……違います?」
雷帝「あなたがそれを、今ここでホイッと引き渡せるんですかねぇ……」
勇者「性質上、それは不可能です。何分、僕を始めとした『勇者』の家系の人間でなければ、その……」
雷帝「……」
勇者「その『剣』は抜けません、そして行使する事すら叶いません、そして……」
僧侶「(……今度実家帰ったら、教会で戸籍調べてみよう)」
勇者「勇者がいなければ、『幽世への門』についても調べる事すらできません……」
雷帝「……くっく、数代にもわたる口伝で伝承そのものの存在が危ぶまれていたと聞きましたが」
勇者「おかげさまで、かの『勇者』の血筋にほど近い僕の家には残っていました。泉の剣についての伝承が……」
雷帝「神学者どもが無い知恵絞って伝承を紐解いたところによれば、ガリア=ベルギガに残る聖遺物それこそが『叡智の教義』との事ですが」
勇者「東方の学説については存じませんが……その泉の剣が叡智の教義と同一であるかどうかは、さすがに定かではありません。しかし……」
雷帝「6年前の上層部が求めていたものには、限りなく近いものであると……そうあなたは言いたいわけだ」
勇者「少なくとも、我々の魔王軍の土地よりかは魅力的でしょう」
雷帝「……勇者の剣に幽世の門……マユツバ甚だしい、しかし北西との交渉の材料になる……」
勇者「はい。連合が6年前の戦争についての再調査と、我々魔王軍との健全な関係を築いてくれるのなら、
僕は喜んで……そうですね、連合がちょっぴり有利になるよう、勇者のチカラを使いましょう」
雷帝「……」
僧侶「……」
雷帝「糞外道ども……そんなにアジ・ダハーカにお熱ってか。いいでしょう、考えておいてあげましょう」
勇者「ありがとうございます、閣下……!」
雷帝「……」
雷帝「ぶわぁーーーーーかwwwwwwwwwwwwwwwwww」
雷帝「あのブロンドバカ女がアジ・ダハーカ。ンな事ァとっくのとうにわかりきってんだよwwwwwwwwwww」
雷帝「この雷帝さんが6年間ボッケーとしてるわけなかろうにwwwwwwwwwwwwwwwなめとったらあかんでwwwwwwww」
雷帝「キモチのワリィバケモノの集団が、人間サマに対当になろうなんざ数兆年遅ェんだよwwwwwwwww」
雷帝「叡智wwwwwwwwwのwww教義wwwwwwwwwだっておwwwwww頭湧いてるwwwwwwww勇者wwwwwwwwwwwwww」
雷帝「あのガキいくつだよwwwwwwwwwwww15過ぎてあんな事言ってんだったら相当やべぇですぅwwwwwwwwwwwww」
雷帝「でもwwwwwでもまぁねwwwwww載せられてやりますよwwwwwあいつらバカなんでねwwww膿んでるくらいバカなんでねwwww」
雷帝「ここからがwwwwwアタシらの『宗教改革』の始まりって事ですわwwwwwwwwwwwwwwwねぇwwwケイ卿さぁんwwwww」
ケイ「……」
雷帝「カカカカ、安心しなさいなー。魔王軍がガサ入れに来たって事は……あんたが持ってきた書類は本物だったって証明されたんですわよー」
ケイ「……そうか」
雷帝「しかし……そんなにおカネが大切ですかねー。これが円卓でバレたらどうなりますかねー」
ケイ「……」
雷帝「ヤリチンのラーンスロットもギンギンになってカチ切れますかねぇwwwww山羊とでもヤってろぶわぁーーーーーかwwwwwww」
ケイ「所望とあらば、6年前の空戦の当事者も用意するが」
雷帝「慌てなさんな……確か、停戦の宣言が出された直後の非公式な空戦だった、あれかな……?」
ケイ「そうだ。交戦勢力や団員名簿すら、公の記録には残っていない……『謎のブロンドの民間人』、
そして『北西諸島にはいないはずのブルネット』を回収した部隊……当ては既についているぞ」
雷帝「(カカカカ……アジ・ダハーカさんたら、6年前から色々やってるんですねぇ……
オモチロイ、実にオモチロイんで……引き続き引っ掻き回してくれたら……雷帝、ちょっぴり嬉しいですねぇ……wwwwwww)」
姉「ご趣味はなんですかぁ」
エルフ三男「マスカキです」
姉「わたしもぉ。ところで、マスカキって何ですかぁ」
エルフ三男「はぁ……」
姉「楽しいですねぇ」
エルフ三男「そっすか」
侍女「……」
姉「えっとぉ……大将さんは、知りたい事ありますかぁ?」
エルフ三男「今までいくつタマゴ産んだんスか」
姉「?」
女騎士「あいつやべぇwwwwwwwwwwwwwww」
騎士は「ふてくされてるwwwwwwwwwwwwww」
騎士ち「侍女のwwwww顔wwwww引き攣ってますわwwwwwwww」
女騎士「あの顔wwwwwww超イヤそうwwwwwwwwwww」
エルフ騎兵「今まで見合いは何回かあったのにwwwwwwwww何だあの顔wwwww」
エルフ近衛兵「閣下wwwwwwwwドングリ閣下wwwwwwwwエルフ三男グリドンwwwwwwww」
姉「これおいしー。おいしいですわ、おいしいですわ」
エルフ三男「そっすか」
姉「これは何のお肉? 牛さん? 豚さん?」
エルフ三男「(どう見ても鶏肉だろ……)」
女騎士「バッカ姉wwwwwwwwwwwww」
エルフ騎兵「ニワトリ観た事ないんすかwwwwwwwwww」
女騎士「きっとあいつスズメとカエルの区別つかねぇよwwwwwwwww」
姉「ご家族はぁ? 御兄弟はいらっしゃいますのぉ?」
エルフ三男「兄が二人と……妹が一人……」
姉「まぁ……そんなに少ないんですのぉ?」
エルフ三男「(更に二人死んでるからな……)」
姉「えっと……わたしはぁ、おとうさまとぉ、おかあさまとぉ」
エルフ三男「(帰りてぇ……騎士様ァ……500年でいちばん不毛な時間ですぅ……)」
姉「それでねぇ、妹がねぇ、ひい、ふう、みい、よお……全員には会った事ないの」
エルフ三男「……そっすか」
姉「それでね、わたしの子どもはねぇ……何人だっけ?」
侍女「一昨年で17人目です、お嬢様」
エルフ三男「」
騎士ち「クソビッチですわwwwwwwwwwwwwwwwww」
女騎士「初潮から数えてほぼ子宮が満員御礼かよぱねぇwwwwwwメス牛wwwwwwwwww」
エルフ三男「」
女騎士「お疲れちゃーんwwwwwwwwwwww」
エルフ三男「騎士様……」
エルフ騎兵「かわいい女性じゃないですかwwwwwwwwwww」
エルフ近衛兵「お胸もお尻もふくよかでいいじゃないですかwwwwwwww」
エルフ三男「お前らはマジでブッ殺すぞ」
女騎士「どうだよwwwww私の姉貴はwwwwwwwww」
エルフ三男「……」
女騎士「言ーえーよーwwwwwww何とか言ーえーよーwwwwwwwwwwwww」
エルフ三男「騎士様ッ、お願いです!! どうか、どうか僕に御慈悲をくださいまし!!
貴女の仰ることならば、例えあの腐れ爛れた女とでも一晩を共にしましょう……ただ、ただ……!!」
女騎士「ただ?」
エルフ三男「ぼっ、僕の500年を、騎士様の暖かな柔肌に」
女騎士「ヤダよバーカ、そう簡単に私のバージンやれるか」
エルフ三男「えっ」
女騎士「ん?」
女騎士「ん?」
エルフ三男「……」
女騎士「何かな?」
エルフ三男「申し訳ございません」
女騎士「何かな?」
エルフ三男「本当に、重ね重ね、申し訳ございません」
女騎士「私は?」
エルフ三男「麗しの騎士様でございます」
女騎士「は?」
エルフ三男「処女神に愛されし騎士様にございます」
女騎士「でしょ? でもだめだわ……大将の童貞は帝国の新たな礎にならなきゃいけないしなー……」
エルフ三男「そんなっ……殺生なっ……」
女騎士「……それじゃあ、あの子とやる?」
エルフ三男「は?」
女騎士「ほーらほら。おいでー、ほらおいでー」
娘「はい、お母様。今日もご機嫌麗しゅう」
エルフ三男「」
女騎士「いいよ、アンタならヤっちゃってもオッケー。顔は良いしカネ持ってるし、どうぞ」
エルフ三男「」
娘「はい、大将閣下。何かご用でしょうか?」
エルフ三男「そんな……馬鹿な」
娘「閣下……?」
エルフ三男「(ゆ、揺らいでしまいそうだ……彼女の配慮とはいえ……こんな倫理に背いた妥協案にッ……!!)」
女騎士「あなたは閣下をどう想う?」
娘「どうって……な、何ですか、お母様」
女騎士「簡単でいいの、あなたは彼をどう感じるかよ」
娘「どう……す、素敵な方だと思います」
エルフ三男「(や、やめろっ……やめてくれ……)」
女騎士「へぇ……どのあたりが?」
娘「やさしいし……頭もよくて……それに、お母様と同じきらきらのブロンドですもの」
エルフ三男「(やめてください……僕は……ロリコンじゃない、ロリコンじゃ……)」
エルフ騎兵「(閣下が繁殖欲と闘っておられる……)」
エルフ近衛兵「(両刀ぶってたけど、やっぱりファッションだったか……)」
妹「あらぁ、あらあら……お久しぶりでございます、小姉様。いつぶりだったかしら」
秘書「……小……姉様……?」
女騎士「……」
妹「大姉様のお見合いと聞いて、お相手の方のお顔でもと思ったのですが。まさか、小姉様までいらっしゃるなんて……」
女騎士「フフ……会えて嬉しいわ、元気そうで良かった」
妹「小姉様こそ、息災で何よりですわ。6年もの間、一体どこにおられたんですの?」
女騎士「共和国で……帝国の人々の暮らしが少しでも善くなるようにと、為政の勉強をね」
妹「まあ、小姉様は政治家になられるの? 素晴らしいですわ、きっとお父様もお喜びになりますわ」
秘書「(すげぇ……すげぇネコかぶってる……)」
妹「道理で……二人のお子さんも利発そうなわけですわね。旦那様はどんな方なんでしょう?」
女騎士「……」
秘書「!!」
女騎士「何を言ってるの? 私、まだ独り身なのだけれど」
妹「あら? おかしいですわね……私の聞き間違いかしら。小姉様が御子息をお産みになったと、風のうわさで」
女騎士「てめぇケンカ売ってんのか殺すぞ(まあ、誰がそんな根も葉もないうわさを。困ったものね)」
妹「やってみなクソビッチ、ドラゴンマダムさァん?(でも、すこし残念ですわ。小姉様のお子さんなら、きっと玉のように愛らしいでしょうに)」
秘書「」
妹「共和国のゴシップ誌に……そんな事が書いてありましたっけねぇ」
女騎士「いやだわ……ドラゴンマダム? 一体何の事?」
妹「何でも、竜に子供を孕まされた哀れな女性がいるとかいないとか……
根も葉もないオカルトですわ、気にしないでくださいまし……そう、小姉様のお子さんとおんなじオカルトですので」
女騎士「そうよねぇ。修道院に預けられて売春三昧、便器生活を謳歌してる最中にオークの襲撃に遭ってズタボロなんかより
ずっとずっとずっとずーっとマシよね、彼女」
妹「テメェーが豚どもおびき寄せたんじゃねェーーーのかクソ女が!!(小姉様ちょっと口が過ぎますわ。ここ、食事処でしてよ)」
女騎士「やぁーーーーい、入れ食いバージン食べ残しーーーー!!(あら、ごめんあそばせ……)」
妹「ドラゴンさんのごんぶとはどんなお味だったんでしょうねぇ? もう人間のじゃサイズ合わないんじゃないっすかねぇーーー!!」
女騎士「便所風アイスバイン~くっさいくっさい浮浪者のこくまろソース和え~の分際で何言ってやがんだぁーーー!?」
妹「経産婦が処女ぶったところで滑稽なだけですわよぉ? 色素沈着クロズンダーwwwwwwwwww」
女騎士「青春の9割を売春に捧げた豚のツガイは肥料でも食ってその辺に転がってな、テメェに喰わせるのは馬糞だがなあ!!」
秘書「汚いっ!! 汚すぎるっ!!」
おかっぱ「何やってんだてめぇ!!」
敵兵「情報を引き出すんじゃなかったのか!!」
妹「うるっさいですわね!! 何か……何か勝手に出ちゃったんですのよ!!」
おかっぱ「もう一回行け、今んとこお前、アホ晒しただけだぞ!?」
妹「土人が……!! 私に指図する気ですの!?」
娘「だ、誰ですか、あの人……」
息子「お母様のお知り合いですか」
女騎士「取るに足らないゲス女だから、早く忘れた方がいいわ」
娘「はぁい……」
秘書「(この人んちの血、濃すぎィ!!)」
おかっぱ「というか……お前、アタシらの身が危うくなるような事は言わなかったろうな」
妹「はぁ? 言う訳ありませんわ、私を誰だと思っていまして?」
敵兵「(ヤベッ……なんか……クズっちゃクズなんだが……ちょっと違うかもしれん)」
妹「そ、そもそもあの自分の事しか考えてない重度自己愛のバカ姉貴に、難しい事なんて考えられっこありませんわ」
敵兵「そういう逃避はよくないぞ……」
妹「きっとドラゴンに妙な病気でも貰って脳が委縮してますわ」
女騎士「(あのビチグソの言及から察するに、私が共和国に戻ったいきさつはともかく……
ある程度継続的に私やアルヴライヒ外務省を調査できる手段を有する勢力がバックにいることは間違いなかろう。
候補としては連合か魔王軍……もしくは共同体だろうが、あのバカ姉の今日の行先を知っていた事を踏まえると、
旧帝国のポストに就いているだろうな……とすると連合にほど近い位置か。小癪なクソガキが……!)」
息子「お母様……?」
女騎士「……はい、はいはい?」
息子「今日はこの後……その、共和国に戻るんだよね? 明日、行く場所があるって」
女騎士「……」
敵兵「終わった! 終わったぞ!!」
ブラウニー「何がー? 借金返済?」
敵兵「違うァ!! 仕事ですよ、お仕事!」
ピクシー「何やってんですか、もう5時過ぎたのに。非国民ですか」
敵兵「30分も過ぎてないじゃないですァ!!」
ブラウニー「仕事とプライベートのけじめもつけられないような男の人って引くわ……」
敵兵「残業のうちにもはいらないですよ、こんなん……」
ピクシー「でもさー、私らが残業申請するとさー、若い士官なんかすっげぇ嫌な顔するよね」
ブラウニー「労組がくそ強いからねー。帝国内の人権活動家が暴れてくれたおかげなんだけど」
敵兵「なんてすばらしい労働環境なんだ」
ピクシー「最底辺から昇ってきた人はそう思うでしょうねぇ……」
ブラウニー「でもでもぉ、ちょおっとやりすぎなトコも無きにしも非ず、なんですよねー」
敵兵「……やりすぎとは?」
ピクシー「だからー、大陸における猿人優遇社会体系への批判。北西の女性参画気風が流れ込んで、ここ二十年で一気に広まりましたよね」
ブラウニー「旧教やブルジョワジー、帝国貴族なんかにとっては目の上のタンコブ。えらい勢いで火種まきまくってましたよねー」
敵兵「」
ピクシー「……状況、わかってる?」
敵兵「な、なんとなく……5年は共和国にいたしな」
敵兵「でも、共和国ではそこまで感じなかったな……帝国じゃ基本的な人権すら貴族の間ではアヤフヤだったみたいだが」
ブラウニー「そりゃ、共和国や……それに北西は別格ですよ、叡智の教義以前の時代から続いてますもの。
国民の権利請願や幾多の革命で、初めて国権から『人権』の概念をつくりあげた大元ですから」
ピクシー「それでも、法整備って面じゃあ猿人の肩を持つ権利偏重が目立つもんだから共同体がぶちぶち文句を言いーの……」
敵兵「……帝国のゲットーを見ると、まさしくそんな感じだったな」
ブラウニー「そこで帝国を出すのも極端なんですけど……まあ、わかりやすくはありますね。
民族まるごと括って差別をするのは、議席を欲しがる右翼政党にとって非常に有効な手段なんでしょうね」
敵兵「政党ぐるみでゲットー周囲にアコギなパネル設置してたしな……
都市部なんか、これ見よがしに『景観整備にご協力ください』だの、『正統なる帝国の復古を!』だの……」
ブラウニー「それを逆手にとって票稼ぎをする共同体寄りの議員もいるみたいなんですよねぇ。
帝国が東西に分かれた現在では、特に西側で顕著ですね。連合を快く思わない共同体のテコ入れがあるんでしょうが」
敵兵「うへぇ……政治家ってどこ行ってもおっかねぇもんだ」
ピクシー「帝国の田舎なんてとばっちり凄かったみたいですよぉ、一夜にして農作業もろもろができなくなっちゃったりして。
馬人たちと共同で生活してた集落なんて、『諸形態に関する権利憲章』なんてもんのせいで完全に分裂です」
敵兵「なんか、ろくでもなさそうな感じがぷんぷんするな……」
ブラウニー「もちろん、共同体シンパの左翼政党からの発案だったみたいです。
要するに……『猿人が馬人に騎乗したりするのは中世以前の野蛮な侵害行為を連想させるからやめろ』みたいな条文が作用してるってわけです」
敵兵「時代錯誤も甚だしいだろ……」
ピクシー「他にも『馬人その他四足人種ならびに魚人種の職場には然るべき施工をしろ、経費はスズメの涙』とか、
『四足人種ならびに魚人種が傷病を負った場合、領主および雇用主に対し任意で事情聴取、調査団の経費は国庫から出します』とか」
敵兵「カネ食いすぎだろ……」
ピクシー「そして……そのおカネの行きつく先は……」
敵兵「待ってくれ……皆まで言わなくても、何となくわかるぞ……」
ブラウニー「もちろん国教騎士団みたいですね……
公にはなっていないし、仮に今さら難癖付けたとしても無駄でしょう」
敵兵「レイシストならレイシストらしくそれを貫けよ……」
ピクシー「とにかくお金が手に入ればそれでいいみたいですよね……」
敵兵「ポリシーもくそもねぇな、それでいて教皇領ゆすろうとしてやがったのか」
ブラウニー「そういう歪な政策もあってか……ちょっと、声のボリューム落としますね。
……魔王軍からも、巨人族を筆頭に旧帝左翼に鞍替えしようって連中が少なからずいるんですよ」
敵兵「げっ……き、巨人……族……」
ブラウニー「そうです、あの殺されたグレンデル王も……もしかすると……」
ピクシー「近いうちに、大規模なクーデターでも起こす気だったとか……?」
敵兵「こ、こっちに来てまでそういうのはマジで勘弁してください……」
ピクシー「まあ、あくまで噂です、噂。根も葉もない流言です」
ブラウニー「そもそも、言っちゃ悪いけど既に帝国なんか死に体もいいとこですよ?
政党を通して共同体に媚びを売るにしても、メリットが薄すぎますよ。魔王軍から連合に擦り寄った方が断然お得です」
敵兵「(ずいぶん達観した妖精さん達だなぁ……)」
ピクシー「さあさ、続きは一杯やりながらにしましょう。これ以上一分たりとも職場に居たくありません」
ブラウニー「どうせ裏切り者なんかに大した仕事回ってきてないでしょう、さっさとアルコール補充に行きましょう!」
敵兵「もっと歯に衣を着せろァ!!」
ブラウニー「かてえ事言わんでくださいよ!! オフになったら妖精なんかこれもんでさぁ!!
小うるせえ将軍閣下もティタニア様も、表情のわからん極東のおのぼりさんもいない!」
ピクシー「そういえば、あのおチビさんは今日は見ませんでしたね」
敵兵「正午には、共和国からこっちへ戻ってくると聞いたんですが。列車が遅れてるのか」
ピクシー「……まだ、あのイカレたエルフどもと袂を分けてないんですか?」
敵兵「極東の戦力も、一部はエルフ預かりらしいしな……」
ブラウニー「ダブルスパイもほどほどにしないとマジ危なくないですかね、あの人」
敵兵「(魔王軍にも、完全な味方とは思ってもらえてないわけなんだなこりゃ。
将軍の墨付きって事で、とりあえずは安心できるんだろうが)」
敵兵「そうだ、ちょっといいですかね」
ブラウニー「はいはい?」
敵兵「さっきの書類業務の折に、こんなものが混じっていたんですが」
ピクシー「……軍務には関係なさそうですね、私的な手紙?」
ブラウニー「うげぇ、中身なんじゃこりゃ。どこの国の言葉ぁ? ミミズがのたくってますよ」
敵兵「翻訳しようにも、大学教授や言語学者の伝手なんてないですし。
極東の彼女の受け持ちに混ざってたから、きっと重要なものなんだと思って」
ブラウニー「なんだ、そんなら簡単だ。ワン公に頼めばいい。おうい、マカミのワン公!! どっかにいるんだろ、出てこい!!」
敵兵「(所帯染みちゃったなぁ、わんわんお……)」
ブラウニー「よーしよしよしよしよしワン公、読めたかわんわん」
真神「……」
敵兵「(一応、神性なんだよな……極東のカミって……)」
真神「……確かにあやつの……あの士官の私物……ではあるが……」
ピクシー「あー、やっぱり向こうの国の文字でしたか。読めないわけだ」
敵兵「極東側からの指令だったりしたら、君の方で秘匿しておいて構わないが」
真神「……そういった類のモノでは……ない……これは……しかるに……」
ブラウニー「ああもう、そういうのいいからさっさと翻訳してくださいよ。私達すっげー口硬いんで。
将軍閣下の財布のヒモより硬いんで。あの肌の青い女の方ですよ? 野郎の方は財布もシモもユッルユルですんで」
真神「……」
ピクシー「極東の妖精はシャイなのよ!! 引いてるじゃない!!」
ブラウニー「なによ!!!1!!!」
敵兵「……ぶっちゃけ、オレも気になってきた」
真神「そうか……」
真神「『だーりんに会いたいようっ! このお手紙が届くのはきっと何か月も先なんだろうけどね、でもでもだーりんならきっと』」
敵兵「」
ブラウニー「」
ピクシー「」
真神「『あたしの愛に気づいてくれるって信じてる! だって、あたしとだぁりんはいっぱいいっぱいぎゅーした仲だもん!』」
敵兵「どれぐらい続くんだ」
真神「まだ……この四行目しか……訳せておらんが……」
ピクシー「二枚に渡ってこんなクソ文が綴られているのですか!?」
ブラウニー「おぞましき邪教の文言だわ……!!」
真神「……続ける……か……?」
ブラウニー「こいつはいい酒の肴ができたな……」
敵兵「」
ピクシー「横隔膜がビクビクきますわね……これは久々に大物です……」
ブラウニー「何て恥ずかしいんだ……こんなの暴露されたら自殺するわ……」
真神「……」
敵兵「……」
真神「……」
敵兵「おいっ、止めるな!! 気になるだろ、早く続きを読んでくれ!!」
ピクシー「早くしてっ!! 舌がカレの指の隙間を艶めかしく這って、それからどうしたの!?」
ブラウニー「肴だ、もっと肴をくれ!!」
おかっぱ「貴様らをまとめて肴に加工してやってもいいのだが」
敵兵「」
ブラウニー「」
ピクシー「」
真神「」
おかっぱ「残業してまで検閲作業とは精が出るな、なあヒモ男よぉ」
敵兵「(こわい)」
ブラウニー「ご苦労様であります」
ピクシー「現在、異常を発見したため状況を見定めているのであります」
おかっぱ「ハエ風情がアタシに向かって……! おい、早くそれを返せ」
真神「……」
おかっぱ「……」
真神「これを……返したら……もっと我を……崇めてくれるか……?」
おかっぱ「ああ、約束する。今ある神棚に加えてお前の神体も用意してやろう」
真神「だが断る」
おかっぱ「」
真神「この真神の……最も好ましき事のひとつは……己を強者であると思っている者に『否』と断ってやることだ……」
おかっぱ「クソ犬が……!!」
ブラウニー「ヘーイ、ヘルメット頭びびってるー?」
ピクシー「どういう事か説明しないと、暴露大会終わりませんわよぉー?」
おかっぱ「オイッ、クソニート!! やめさせろ、このアホどもを……!!」
敵兵「……」
おかっぱ「聞いているのか、オイッ!!」
敵兵「いや、その……今の所、『4対1』なんで……」
おかっぱ「この裏切り者がァ!!」
ピクシー「……」
ブラウニー「まあその……なんですか、先人のイタイ詩集に毒された貴族さん達とそう変わんないじゃないですか」
ピクシー「どんな王侯貴族も、書き手に回ったら恋文なんて『好きです!! ハメたいです!』『愛してる!! ハメさせて!!』
ってーのをこねくりまわしてるだけですから……気にしない方がいいですよ」
おかっぱ「お前らが言うなァ!!」
敵兵「……ちなみに、マジにああやって頭のネジ緩んだ感じで書いてあったの?」
おかっぱ「このバカ犬の意訳に決まってるだろ!! 私の文はもっと高尚で瀟洒で……!!」
真神「『好きです!! ハメたいです!!』」
おかっぱ「おまっ……おまえ……おまえ!!!!」
敵兵「す、すいません……調子に乗りました……」
ブラウニー「泣かんでください……」
おかっぱ「うっせーーーバーカ!! お前らなんかに列島に続く恋文の文化なぞわかってたまるか!! しね!!」
真神「……やはり……あの馬人との関係は……続いているのだな……」
ピクシー「馬人のカレシかぁ……」
おかっぱ「口閉じろ!! 縫い合わせて吠えられなくしてやる!!」
真神「『愛してる!! ハメさせてぇ!!』」
敵兵「やめたげてよぉ!!」
ピクシー「ちょっとこれは根掘り葉掘り聞かないとだめですねー……」
ブラウニー「カレとはいつ、どこで会ったんですかねぇ……初体験はいつですか? キスはどんな味ですか? 馬糞?」
おかっぱ「ビチグソどもめ……!!」
ピクシー「こんなお下品な言動が目立つ彼女ですが、きっとカレシさんの前では『キャーステキ! 抱いて!』と大股広げておっぱじめ」
おかっぱ「会ったのは数えで十一! 接吻も本番もまだだ!」
ブラウニー「いやん、オボコじゃないの」
敵兵「……そもそもおいくつでしたっけ、あなた」
おかっぱ「……」
真神「『チガウ……今までの男とは何かが決定的に違う。スピリチュアルな感覚がアタシのカラダを』」
おかっぱ「数えで二〇! 世が世なら年増もいいところだろ!」
敵兵「ウソだろ!? てっきり一三、四かと……」
おかっぱ「その頃はもうすでに奉公先飛び出してたわ!」
ブラウニー「で、カレシとの出会いは……」
おかっぱ「ぐ……」
真神「……」
おかっぱ「……丁稚奉公に出された先で……せ、先生が算術の巡業してる時に……だ」
敵兵「巡業?」
おかっぱ「算術士のな、こっちじゃ算術が農民の娯楽の一つなんだ。天元術に幾何学は、中世の検地から広まった分野だからな」
敵兵「幾何学……?」
おかっぱ「田畑の面積を求める際に……また、年貢等々の計算にも用いるだろ。アタシなんかは相当に恵まれてる方だったが……」
敵兵「(士官学校に入って……弾道計算だとかにうざったい公式の暗記をイヤイヤやった事くらいなんですがそれは)」
おかっぱ「それからこんにちに至るまで、先生とは何もなし!! 残念だったな!!」
ブラウニー「センセイだって……」
ピクシー「ヒッポケンタウリのセンセイ……」
ブラウニー「馬センセイの(夜の)教鞭、すっごく厳しいナリィ……」
おかっぱ「どこまでも人をコケにしたハエどもだ……!!」
敵兵「……」
おかっぱ「何だ、まだ笑い足りないか」
敵兵「いや……安心しただけです、あのクズと違ってすっげぇ人間味が」
おかっぱ「あれと比べるな、けがらわしい! 怖気が走るわ」
ピクシー「サンジュツの巡業って事は……なんか、サーカスみたいな?」
おかっぱ「そんな仰々しいものでもない。各地の寺子屋を渡り歩いて、簡単な講義と引き換えに寝食を提供してもらう、それだけだ」
ブラウニー「ヒッポケンタウリと年端も行かぬ童女の二人旅……」
ピクシー「帝国じゃ誘拐があってもケンタウリだからって理由で即時釈放、女の子側は泣き寝入りの事案ですねー」
おかっぱ「よほど貴様らは先生を性犯罪者にしたいようだが」
ブラウニー「なんだインポか」
おかっぱ「ブッ殺すぞ」
秘書「あー! やっと来た、遅いですよお」
おかっぱ「私用に手間取ってな。二日も三日も席を空けるとは思わなかったのだ」
秘書「発車の時刻ギリギリですよお。もう騎士さん達、食堂車でおいしい思いしてるんですよお」
おかっぱ「犬猫は連れて入ってもいいのか?」
真神「……」
金長狸「キカンシャはじめてー!」
秘書「……」
おかっぱ「粗相はどうすればいい?」
秘書「さあ……」
おかっぱ「共和国までの旅路、そこまで時間はかからんだろうが」
秘書「いや、でも……今から行くメリフェラ領って、ほんとに共和国の辺境にあるみたいなんですね。ですから」
おかっぱ「窓からしろとのお達しだ、腰抜かして落ちるなよ」
金長狸「」
おかっぱ「この蒸気機関車とかいうの、軍馬の三倍の速度を叩き出すそうだ。もし落ちたらミンチだから覚悟しておけ」
真神「」
真神「……」
おかっぱ「……」
真神「あ……あまり……気に病むでないぞ……」
おかっぱ「案ずるな。私は最初から帝、ひいては皇国の臣民の為を想って行動しているだけだ。そこには何の憂いもない」
真神「現地語では……ニュアンスの表現が……少々歪になってしまうのも……致し方ないではないか……」
おかっぱ「それをひっぱるんだったら窓から私が直々に叩き落すぞ」
真神「わん! わん! わんわんお!」
金長狸「にゃんにゃんお!」
おかっぱ「刀の錆になりたいのかっ、妖怪変化ども!」
金長狸「そんなイライラしないでよう、生理?」
おかっぱ「イライラもするわ!」
真神「……しかし……あの女狐は……大丈夫か……?」
金長狸「さあ……名目上は、松山の祭司や術士への報告と現地における活動方針の見直し……って事だけど」
真神「あのエルフの将軍、そして鬼どもの監視……あの小娘に……そこまでできるものか」
金長狸「早めに手を打たないとぉ……幕府側の発言力も枯れちゃうかもしれないんだよねぇ……鬼さん、こわいこわい」
おかっぱ「何の為に、出がけギリギリまでアタシが松山の重役に老中ともども頭を下げに、下野国くんだりまで足を運んだのだと思うね」
真神「……」
おかっぱ「これ以上、将軍の膝元で薄汚い下衆な百鬼どもにでかい顔をさせるわけにはいかねェんだよ。違うか?」
金長狸「(ん? 私らえっらいディスられてない?)」
おかっぱ「言うに事欠いて、奉行のアタシに向かって帝の勅命を放棄した謀反者だあ? 何様のつもりだ、鬼ども……!!」
真神「そう……いきり立つな……」
おかっぱ「そっちがそのつもりならいいだろう、肉も骨も髪も焼いてやる、駆逐してやるよ……
ヴォーパル鋼とドワーフ……魔王軍の連中、言ってる事こそどうしようもないが……なかなか使えそうなものを取り揃えている」
真神「……楔に杭……それに……呪式正当性の目途が……ついたのか……?」
おかっぱ「魔王軍の魔術研究スタッフの支援が得られたとはいえ、起動実験もなしに……しかも未知のこの大陸でそんな大それたことはまずできん。
それに、せっかくドワーフを連合の支配下からあのクズ、そして魔王軍の側に選り分ける事が出来たんだ。どうせなら正確なリターンが欲しい」
金長狸「すっごいなぁ、魔王軍って……」
おかっぱ「……そうだ、今では見る影もないがな。魔王軍のポテンシャルは、こんなものではない。だからこそ、隠遁してもらわねばならない」
外交官「ようこそ、メリフェラへ。長旅でお疲れでしょう、すぐにホテルへご案内いたします」
秘書「」
女騎士「おういデブ、つったってんなよぉ。何時間も揺られて吐きそうなんか?」
秘書「だだだだだ、だってだってだって……」
ポニテ「彼女には私がつきます、騎士様はお先にお休みになってください」
女騎士「あら、そう? じゃあお願いするわー」
外交官「どうぞ、こちらへ……ところで、試作の品はどちらに?」
女騎士「後で研究スタッフに卸させるよ、それよかお風呂! ごはん! 早急に!」
秘書「あああ、ああれあれあれ、あの……ヒト」
ポニテ「彼らはメリフェラ領の固有種……節足人種とでも言いましょうか」
秘書「せせせせ、節足……だってあの、あの人……虫、虫ですよお。厚ぼったい服でしたけど……は、蜂……蜂さんです……!」
おかっぱ「確かに……蜂を基にした種は初めてだな」
秘書「い、いやに落ち着いてますが……」
おかっぱ「同僚にクモそのものがいた職場だったからな」
真神「しかも……ケンタウリに恋い焦がれて……」
おかっぱ「しばくぞ」
ポニテ「……帝国や共同体領で、彼らの事を虫だのと言ってごらんなさい。彼らではない彼らの権利を守りたがる連中がタカりにきますよ」
秘書「ひぃ」
ポニテ「あの外交の彼でも、かなり猿人に近しい形質の持ち主です。いや、彼女……かな?」
秘書「た、確かに……髪の毛だとか、口元は私とおんなじような感じだったけど……」
ポニテ「私もそこまで詳しくはないのですが……節足人種(インセクトリアン)もまた、
かつての勇者による革命で理性を得た種族だと聞いています。現在では、魔族という大きな括りとは異なる事を自他ともに認めていますが」
秘書「……でで、でも……あのアゴって言うんですかあれ……すっげー怖い……頭からかじられて肉団子にされちゃう……」
ポニテ「カタギならまずその心配はないでしょうね。節足人種による犯罪、共同体や帝国で聞いた事がありますか?」
秘書「……ない、かも」
ポニテ「敬虔な教徒である彼らは、その倫理や哲学の中心に教義に基づく道徳のほか、所属する家系の女王が存在しています」
秘書「女王……? 北西みたいな?」
ポニテ「それより、更に神格化されているでしょうね。ナショナリズムそのものと言っても過言ではありません。
現在の女王が猿人絶滅政策でも出さない限り、彼らは友好的この上ない隣人でいてくれることでしょう」
秘書「……」
おかっぱ「叡智の教義、ねえ……」
女騎士「……こぉんな田舎くんだりまで来させて。また何か悪巧みしてんのかぁ?」
騎士ほ「フククク……久しぶりの再会ですのに、つれないお姉様……」
女騎士「体面としては、アルヴライヒとメリフェラによる高熱量食品の臨床実験への立会……」
騎士ほ「ええ……先の二回のアタックで……かなりおカネを使ってしまいましたでしょ?」
女騎士「使うのもそうだが、入る量もなかなかなもんでなぁ。エルフどものカネに関する汚さは筋金入りだ」
騎士ほ「ドワーフ筋の成金やボンクラ貴族に預金させて……のちに不思議な非業の死を遂げさせる……フククク……」
女騎士「……それで? 私をさしおいて莫大なカネを北西から吸い上げてるお前が何の用なの?」
騎士ほ「はぁん……嫉妬……? お姉様、私に嫉妬なさってるの……? そんな……いけません、お姉様は下賤な私などとは一線を画す崇高な」
女騎士「(そうだ……思い出してきた、こいつメンドくせぇんだよな……)」
騎士ほ「フクク……きわめてシンプルな事ですわ……」
女騎士「……」
騎士ほ「……お姉様は、ゆくゆくは大陸はおろか……北西の高等竜種(エルダー)までもを統べるべきお方……その足掛かりとして……
フッククク……ガリア=ベルギガの主となって頂きたく思いまして……」
女騎士「やだ」
騎士ほ「」
騎士ほ「ゆ、勇者伝説の聖地をその足で」
女騎士「やだ」
騎士ほ「あ、あらゆる信徒をひざまずかせる事ができましてよ……!」
女騎士「ヤダよォー、アンタがやりゃいいじゃんかよォー、メンドクセーじゃんそんなの。
大体なんだよガリア=ベルギガってよォー。テメーらの内だけで話進めてんじゃねーぞボケェー」
騎士ほ「……」
女騎士「あー不愉快、すっげ不愉快だわー。お前の傀儡みたいに言われて不愉快だわー」
騎士ほ「お、お姉様……」
女騎士「私ゃ別に神様に縋るアホ神官タコ教徒スチャラカ牧師にゃあ興味ねぇんだよ、新教と旧教の区別もつきゃしねぇからな。
そんなバカどもに崇められてもぜんっぜんキモチよくねーの。だってそうだろ? いかれたそいつらの頭の根底にあるのは、
どこの誰だかわからん『神様』なわけだろ? うっへーきもちわる、そういう奴はみんな死ぬべきだ。弾圧しろ」
騎士ほ「」
女騎士「……お前さぁ、なぁんか勘違いしてない? 私の今したい事さぁ」
騎士ほ「それは……」
女騎士「私さぁ、別にエラくなりたいわけじゃねーのよ。そもそも私って誰よりもエライ訳だし、それは私がこの世に生れ落ちたその瞬間から決まってるわけだし。
エライエラくないって概念は、私以外の凡人達の間で適用されるもんだろ? そんなもんを私に適用するなんてナンセンスやん?」
騎士ほ「は、はひぃ」
女騎士「私の今したい事はなぁ……」
騎士ほ「……」
女騎士「まず勇者をブッ殺す!! 勇者だとか名乗ってるくせに、魔物に肩入れしてやがるあのクサレガキを八つ裂きにしてやる事だ!!
三日三晩……いや、十日はぶっ続けでコチョコチョの刑に処す!! 楽には死なせん!!」
女騎士「次にあの魔王とかいうメスガキだ!! 何から何まで目障りだ、人間を惑わす邪悪な魔物野郎め!!
あのトンチキ勇者の目の前で丸太でも叩き込んでぶち壊しにしてやらあ!! こっちは二十日は煮込み通しにしてやんよ!!」
女騎士「そしてあの甲斐性ナシのクソ男だ!! 6年前に私を捕らえた事、そして私の人生をムチャクチャにしてくれたあの野郎だ!!
あのビチグソだけは念を入れて苦しめてやる、業火で熱した鉄板でつま先からじわじわと輪切りにしていってやる……!!」
騎士ほ「んはぁぁん……お姉様っ、素敵ぃ……!!」
騎士ほ「……しかしお姉様、そうなるとやはり……ガリア=ベルギガを押さえるのが近道なのではないでしょうか」
女騎士「しつけえな、大体勇者様の故郷なんかになんの価値があるってんだよ」
騎士ほ「……」
女騎士「私とてスッカラカンなわけじゃあないぞ? 東帝においては、連合の差し金だか何だか知らんが……
終末思想に並んで反貴族思想、そして救世主である勇者を待望する声が目立ち始めている。
この状況で西欧会議に臨めば……一方的に負ける事こそないにしても、苦戦は強いられる事だろうよ」
騎士ほ「仰る通りで」
女騎士「わざわざ重役にのし上がったお前が共和国のこんな田舎くんだりまで来るって事は……
そのガリア=ベルギガ……よほどのモンが隠れてると見える。実際んとこはどうなんだよ、おい」
騎士ほ「……そう、よほどのモン……エルダードラゴンをも統べる事ができるほどの宝具が眠っているとの……」
女騎士「そういうオカルトは信じてねえんだよ、おとといきやがれ」
騎士ほ「情報元が円卓だとしても?」
女騎士「……円卓?」
騎士ほ「北西の為政に直接口を挟む事の出来る、カビの生えくさった組織……円卓の騎士が一人からの情報です」
女騎士「……」
騎士ほ「幽世の門を拓き、真実へと探求者を導く鍵……そう、彼は夢想していましたわ」
女騎士「夢遊病かよきめぇな」
女騎士「……一つ聞きたいんだけどさぁー」
騎士ほ「はい」
女騎士「そこをどうにかしたらさぁ、勇者怒るかなぁ」
騎士ほ「……」
女騎士「いやさぁ、ゴルフ場にしたり、焼き払ったりしたら」
騎士ほ「はい?」
女騎士「くっそ恥ずかしい上に柄じゃねーけど、迷いの森みてぇな場所に入り込んじまったって言ったじゃん?」
騎士ほ「はい。あの古竜から聞いております」
女騎士「じゃあ最後まで聞いてねえのか。ククク、あんたにも見せてやりたかったぜ。
ふわふわお脳どもの土地が焦土と化していく様をよお! ガリア=ベルギガとやらもあそこみてぇにしてやったら……」
騎士ほ「」
女騎士「……?」
騎士ほ「……焦……土……?」
女騎士「ああ、ソレイとかいうレイプ奨励集団もまとめて焼き殺してやった」
騎士ほ「ガ……リア……の……祖霊を……焼き……焼……き……」
女騎士「で、その土地はどこにあるんだ? 共和国内だったらラクなんだが」
騎士ほ「勇者の聖地を……や、や、焼いてしまわれたんですの……?」
女騎士「は?」
第8部 ガリア=ベルギガ編 壱
第8部 ガリア=ベルギガ編 弐へ
相変わらずクズいな女騎士様