【前編】 の続きです
――私とまどか、巴マミ、佐倉杏子、さやかは
巴マミのアパートの一室に集まっている。
巴マミは安堵の表情。
まどかと美樹さやかの表情は硬い。
佐倉杏子は余裕ぶった顔でロッキーを食べ、
私はいつも通りの無表情さだ。
最初に口を開いたのは、美樹さやかだ。
さやか「……本当に信用できるの? コイツ」
杏子「こいつじゃねぇ、佐倉杏子だ」
さやか「ほむらを背後から刺したような奴なんでしょ?」
さやか「縄張りをとろうって奴なんじゃないの?」
さやか「あたしは信用できない」
ほむら「誤解があったのよ」
さやか「誤解? 人を後ろから刺し殺そうとするような誤解ってある?」
さやか「また、狙われたりしたら……!」
杏子「もう、やらないよ」
さやか「口ではなんとでもいえるわ」
まどか「なんで ほむらちゃんに攻撃したのか、まだ聞いてなかったね」
杏子「インキュベーターに聞いたのさ。コイツが、魔法少女の敵だって」
さやか「インキュベーター?」
マミ「魔法少女の、敵……?」
杏子「インキュベーターっていうのは、きゅうべぇの事さ。
アイツに騙されたってわけだ」
さやか「ちょっと、なんできゅうべぇが私たちを騙す必要があるのよ!」
マミ「きゅうべぇ、その根拠は何と言っていたの?」
杏子「お前らも聞いたことがないか? そのほむらと、きゅうべぇは契約した覚えがないって」
杏子「正体不明の魔女もどきも出現しているから、
きゅうべぇの奴は、ほむらと魔女もどきを、イレギュラー同志結びつけたって訳だ」
杏子「だから、私にほむらを倒してほしいという依頼をしてきた」
まどか「……インキュベーター……」
マミ「きゅうべぇが……? そんな……」
さやか「……なんで、ほむらと契約した記憶がないんだろ?」
ほむら「私の願いの所為よ……。悪いけど、思い出したくない、話したくない事なの」
ほむら「触れないで欲しい」
さやか「……そう」
ほむら「佐倉杏子は私に謝罪してくれたし、何より重要な情報を携えてきてくれた」
まどか「重要な情報……?」
ほむら「ええ。佐倉杏子、お願い」
杏子「ああ」
杏子「……2週間後、この見滝原にワルプルギスの夜が来る」
マミ「……っ!?」
さやか「ワル……なに? まどか……知ってる?」
まどか「ううん、 しらない……」
ほむら「ワルプルギスの夜というのは、結界を必要とせず物質世界に現れる超弩級の魔女よ」
杏子「そんな魔女が来るって時だ。敵は少しでも減らしておきたかったんだ。
ごめんな、ほむら」
ほむら「いいのよ。それより、貴方のお蔭で準備ができるわ」
さやか「……」
まどか「……私達、五人いれば勝てるのかな?」
ほむら「それは何とも言えないわ」
マミ「正体不明の魔女だものね。……もしかして、以前 暁美さんを狙った魔女もどきって……」
マミ「ワルプルギスの夜に関係しているのかしら」
マミ「異常事態が二つも。無関係と割り切れないわ」
ほむら「……。それも、わからないわ」
マミ「ところで、佐倉さんはワルプルギスの夜が来ることを、どうして知っているの?」
杏子「きゅうべぇの奴が言ってたのさ」
杏子「お前ら皆、アイツと距離をとってたんだろ? だから聞けなかったんじゃないか?」
マミ「私は別に距離なんて……。最近、会えなかったけど」
マミ「グリーフシードの回収だけたまに来て、すぐに居なくなっちゃうのよね」
さやか「私も……。契約の時以外、ほとんど見てない……」
ほむら「どうも私たちを避けている節があるわね」
さやか「でも、どうして……」
ほむら「私を警戒しているんだと思うわ。私もアイツが嫌いなの」
マミ「……」
まどか「……対策、どうすればいいのかな」
ほむら「まず、魔女狩りを行い、グリーフシードを節約して出来るだけ貯めておく」
マミ「鹿目さんと美樹さんも特訓しないとね」
ほむら「あまり時間がないけれど、基礎だけでも叩き込んでおかないと……」
杏子「巴マミ、そういうのはアンタが得意だろ?」
マミ「私……か。鹿目さんは兎も角、近接系の美樹さんは佐倉さんの方が噛み合うんじゃないかしら?」
杏子「槍と剣じゃ全然違うでしょ。それに、基礎じゃ教えるの上手いアンタの方がいいだろ」
杏子「ガンカタスタイルもいけるんだから、やれるって」
マミ「うーん……」
ほむら「まどかはもう、実戦慣れの方が大事じゃないかしら」
マミ「遠距離だし、才能はあるし、事故は少ないかしら」
マミ「とすると、私が美樹さんの特訓で」
杏子「ほむらと……まどかっつったか? この三人で魔女狩りか」
ほむら「そんなところじゃないかしら」
まどか「あ、うん。よろしくね、ほむらちゃん。えっと、杏子ちゃん」
さやか「よろしくお願いします。マミさん」
さやか「……」
――顔合わせは何とか、無事に済んだ。
黒男爵の存在をぼかしながら、
佐倉杏子が見滝原に来た理由を
インキュベーターとワルプルギスの夜の所為にする。
インキュベーターが何故か 皆とほとんど接触していないため、
佐倉杏子との事前の打ち合わせ通り事が進んだ。
ワルプルギスの夜対策としては、問題ないだろう。
あとはまどかの活躍の場面を、
魔女化しない程度に抑えるだけで
案外簡単に勝てるのではないだろうか。
まどかがもし魔女化しなくて、
黒男爵の言う通りChaosの悪魔へと導くことができれば、
私はもしかして、まどかとずっと一緒にいられるのかな……
……甘い妄想は捨てよう。
とりあえずは、目の前にある問題を解決しなくては。
私はワルプルギスの夜を倒さなければならない。
でも、ワルプルギスの夜が過ぎれば、
私はループしなければ時間停止を使えなくなる。
最強クラスの悪魔と黒男爵に言わしめるインキュベーターとの対決に
私は完全に足手まといだ。
私はループを越える事が存在理由だが、
ループを超えることで存在価値がなくなる。
ワルプルギスの夜を超えたところで、後は皆に任せて、
やはり私はまどかを魔法少女にしないためのループに再び戻る事にしよう。
私の大事なことは、まどかが幸せに暮らしていける世界を一つでも作る。
それだけで、いい……。
――無心でワルプルギスの夜に向けて準備を進めている中……。
まどかから、連絡があった。
さやかが、家にも帰らずに行方不明になったらしい。
嫌な予感が、した。
ほむら「……まどかっ!」
まどか「あ、ほむらちゃん!」
ほむら「その様子だと、見つかってない?」
まどか「うん。電話してからも、あちこち探したんだけど……」
ほむら「……理由に心当たりはないのね?」
まどか「うん……」
まどか「さやかちゃんのパパもママもね、理由が全然わからないみたいで……」
ほむら「いなくなるまえ、何をしていたかわかる?」
まどか「うーん……上条くんのお見舞い……かな」
ほむら「……喧嘩かしら?」
まどか「うーん……」
本来であれば、すでに美樹さやかは
上条恭介の右腕が不治であることを知っているはずだ。
だが、この時間軸ではあまり
上条恭介のところへお見舞いに行けていないようだ。
タイミングがずれたのだとすると……
……ひょっとすると……
ほむら「まどか。急いで探さないと、まずいことになるかもしれないわ」
まどか「ほむらちゃん……もしかして、魔女化のこと、言ってるの?」
ほむら「可能性がないとは言いきれないわ」
ほむら「急いで病院に向かい、上条君に状況を聞きましょう」
まどか「そうだね、むかおっか」
――時間が時間だからだが、上条恭介の病室に窓から侵入。
彼を驚かせてしまい、声を抑えさせるのに苦労した。
恭介「……鹿目さん、それに、お友達かな? どうやってここの階まで窓から……」
まどか「それは、秘密だよ。それより、さやかちゃんが行方不明なんだけど……」
恭介「……えっ?」
まどか「何か、知らないかな?」
恭介「……」
ほむら「……知ってそうね」
恭介「……僕が、八つ当たり……してしまったからかもしれない」
まどか「やつあたり?」
恭介「うん……。利き手が動かなくって、お医者さんから諦めてくれって言われて……」
恭介「その、情けない話。怖くて、誰にも話せなくて」
恭介「もう、バイオリンが弾けないことの悲しさと」
恭介「僕からバイオリンをとったら何もない」
恭介「さやかも、最近来てくれなかったし……」
恭介「そう思ったら、誰にも必要とされてないって孤独を感じて」
恭介「後で来てくれた、明るく振る舞うさやかに当り散らしてしまった」
恭介「僕を、元気づけるためだったって、分かっていたのに」
恭介「それで、さやかも訳が分からないことを言い出して……」
恭介「「私……、治せる……はずだったのに」とか言った後、謝りだして」
恭介「さやかが謝る必要ないのに。僕が、さやかを追い詰めてしまったんだよね」
恭介「僕って、最悪だ。さやかは悪くないのに。理解できないことを言い出して」
恭介「それに対して、余計腹が立って……。くそっ……」
恭介「暴言を吐いて、さやかを泣かせてしまった」
恭介「さやかが治せるわけがないだろっとか」
まどか「……」
ほむら「……」
ほむら「……上条くん。さやかの行きそうな場所、心当たりない?」
恭介「悪いけど、心当たりは……」
ほむら「そう……」
恭介「あ……。そう、さやか、親と喧嘩して、プチ家出みたいなことして」
恭介「その時は、用もない場所にお小遣いで行ける範囲で遠くまで行って」
恭介「ホームでじっとしてた事あった……けど」
恭介「……関係、ないか」
まどか「あの時は、上条君が一番最初に見つけたんだっけ」
恭介「うん……」
まどか「……私達じゃ、役者不足なのかも。悔しいけど……」
ほむら「それでも、私たちが行くしかないわ。上条君は、けが人で、動けないのだから」
ほむら「巴さんや佐倉杏子にも助けを頼みましょう。急がなくては」
――4人でばらばらに、散々探した結果……
この私がたまたま さやかを見つけることが出来た。
駅のホームで蹲っている、さやか。
危うく、通り過ぎて次の駅に行ってしまう所だった。
メールで4人に 見つけた旨を一斉送信したのち、
顔を見せてくれないさやかの隣に、私は腰かけた。
さやか「……ほむら?」
ほむら「ええ、私よ」
さやか「……」
ほむら「さやか、どうしたの……?」
さやか「……あんたこそ、どうしたの」
ほむら「まどかから、聞いたの。家に帰ってないそうじゃない」
さやか「それで、探してくれたんだ。手間かけさせちゃったね」
ほむら「いいの。それより、ソウルジェムを見せてくれる?」
さやか「いや」
ほむら「……駄々をこねないで」
さやか「駄々なんてこねてない」
ほむら「……ねぇ、本当に、見せて頂戴。何故、見せられないの?」
さやか「……じゃあっ! ほむら、あんたこそ、なんで話せないの!?」
ほむら「……さやか?」
さやか「あんた、なんか隠してるでしょう。絶対、隠してるでしょ?」
ほむら「……」
さやか「……もういいよ、わかったよ。なんか、理由があるんでしょ……」
さやか「でも、あたしだって、見せたくないんだ」
ほむら「……」
ほむら「……じゃあ、先の質問に戻るわ。なんで家出したの?」
さやか「……」
ほむら「……」
さやか「……あたし、いやな奴。恭介、もう一生治らない怪我を右手にしちゃったらしくて」
さやか「恭介を、放ったらかしにして、怒らせて……」
さやか「その時、ほむらを治したの……後悔しちゃった……」
さやか「あたし、あたしは……、あんたに死んでなんて欲しくないのに」
ほむら「いいの。誰にでも、優先順位はあるんだもの」
さやか「……喪失感がね、すごいの」
さやか「あたし、恭介のバイオリンを聞くのが、好きだった」
さやか「もう、聞けない。恭介も、笑ってくれないんだって、そう思って」
さやか「あああ、もう、あたし、どうすればいいか、どうすれば……」
ほむら「……さやか、ソウルジェムを出して! グリーフシードを使うわっ!!!」
さやか「ダメなんだよ、ほむら。ダメなんだよ」
さやか「なに、これ。どす黒い感情がどんどん入ってくる」
さやか「あんたに、緊急用にってもらってた一個もすぐに使い切っちゃった」
さやか「もう、止まらないんだよ」
さやか「あたし、このまま……」
黒おじさん『おい、暁美ほむら』
ほむら『なによ! 後にしてちょうだい!』
黒おじさん『この娘のソウルジェム、弄られているぞ』
ほむら『……いじられてる?』
黒おじさん『貴様らの感情の動きと、ソウルジェムの濁り方を今まで観察していた』
黒おじさん『濁りやすい状態ではあるようだが、この濁り方は異常だ』
黒おじさん『外から恐怖と絶望のマグネタイトを注入されておる』
ほむら『……インキュベーターッ!?』
黒おじさん『おそらく、そうだろうな』
ほむら『あいつ、そんなことが出来たの? なら、何故いままで……』
黒おじさん『さて、な。精神状態が落ち込んでるときしか出来ないのかもな』
黒おじさん『他にも、何か理由があるのかもしれん』
黒おじさん『なんにせよ……』
さやか「ああああああああっ! そっかぁ、あたし、魔女になるんだぁああっ!」
さやか「わかる、わかる。わかるよぉ! あははははははっ!」
ほむら「さやか、さやかぁ……!」
さやか「あれぇ、あんた。その盾の中にいるの、だぁれ?」
ほむら「!?」
さやか「そっかー。そっかー!」
さやか「魔女になりかけたらああ、あたしにも見え始めたよぉっ!」
さやか「やっぱ、あんた 魔女もどきと手を組んでたんだねぇっ!!!」
さやか「騙されちゃったぁあああああああ!!!!」
ほむら「さやか……」
さやか「ああああああーっ! ああ……」
さやか「ほむら……」
さやか「逃げて……」
突然、さやかの右腕が膨れ上がり、
どこからか現れた巨大な剣を振り上げ、私めがけて叩き下ろす。
私は警告のお蔭か、避けることは出来たが……
剣が地面に衝突したときの衝撃と同時に、
急速に魔女の結界が展開された。
いつもの……さやかの魔女の結界ではない。
黒いぬめぬめとした内臓のような内観に、
狂った笑い声で満たされたおぞましい結界だ。
私は、声をだせない。
さやかの魔女は、
私とは見当違いの方向で剣を振り回し、暴れまわっている。
床に広がる血管の様なものを踏みつぶし、
正体不明の液体に穢れながら……。
こうなってしまったら、どうしようもない。
他の三人に、手を汚させたくない。
私が……
「ほむらちゃん!!!」
ほむら「ま、まどか……」
まどか「さやかちゃん……。さやかちゃん……!」
ほむら「……まどかは下がってて。私が、始末する」
まどか「……っ!」
まどか「駄目……だよ。殺さなくたって……」
ほむら「……まどか。説明したでしょう? 今まで、帰ってきた子はいないの」
ほむら「安らかに眠らせてあげるのが、せめてもの救いなの……」
まどか「……それでも、まだ、わからないよっ!!!」
ほむら「まどか……」
まどか「お願い、ほむらちゃん。私、さやかちゃんを助けたい」
まどか「出来ること、全部試してみたいの」
ほむら「どうやって……」
まどか「私たちが、根気強く呼びかければ反応があるかもしれない」
まどか「私がストックしているグリーフシードで、この場の穢れを吸い尽くすとか」
まどか「……兎に角、まだ、さやかちゃんを殺さないでっ!!!」
ほむら「……まどか」
まどか「お願い……」
ほむら「……さやかの、体」
まどか「えっ」
ほむら「何をするにも、準備が必要だわ」
ほむら「さやかの体を回収して、一旦撤退しましょう」
ほむら「帰ってきてくれるなら、体が必要かもしれないし……」
ほむら「巴マミと、佐倉杏子に説明しやすい……」
まどか「……うんっ!!!」
気が狂った魔女の隙を突くのはたやすく、
さやかの体を回収し、結界から外に出た。
私たちが撤退すると同時に、
さやかの結界は薄れ、消えた。
逃げたようだ……。
遠くから、巴マミと佐倉杏子が駆け寄ってくる姿が見える。
マミ「……美樹……さん?」
杏子「……」
マミ「どういうこと? 魔女に……ころされた?」
マミ「いえ、外傷はないわね……」
マミ「でも、死んで……? ……いえ、いや……」
マミ「外傷がなくても、殺せる魔女もいる……わよね」
マミ「……でも、グリーフシードの、反応……なかったのよね」
マミ「にも関わらず、美樹さんのところで急に発生した」
マミ「……ソウルジェムは?」
マミ「……ない……のね」
マミ「ソウルジェム……なくなって、魔女が……?」
マミ「魔法……少女??? 少女が……」
マミ「…………」
まどか「マミさん……」
杏子「馬鹿……考えんなよ……」
マミ「考え……なきゃ」
マミ「……暁美……さん」
ほむら「なにかしら……」
マミ「……美樹……さん、穢れ、貯めやすかったのよ?」
マミ「美樹さんに色々、教えてて、その時に気が付いて、心配……してたの……」
マミ「家出したくらい……追い詰められて……」
マミ「……穢れ……ためたら、あはっ、美樹さん、どうなった……?」
ほむら「……わからない」
マミ「……うそでしょっ!!!」
ほむら「……」
マミ「ねえ、鹿目さん。貴女なら教えてくれるでしょ?」
マミ「暁美さんの次に、美樹さんのところに来たんだから」
マミ「美樹さん、どうして……」
まどか「……」
マミ「……佐倉さんっ!!!」
マミ「貴方、なんでそんなに落ち着いてるの? 何か知ってるの?」
杏子「……」
マミ「……貴方達、なんで……」
マミ「……いいわ。答えてくれないのが、答えなんでしょ」
マミ「ま、魔法少女が、魔女を産むなら……」
ほむら「っ!?」
巴マミが取り乱し始めた瞬間、
私は時を止め、ソウルジェムを取り上げる。
前情報があると強いわね。
以前のループでは、行動が遅れ
巴マミを殺すしか余裕がなかった……。
私は時の流れを戻し、巴マミは普通の少女の姿へと戻った。
呆然とした顔で、自らの姿をみる巴マミ。
私の手に彼女のソウルジェムがあるのを確認すると
非難するような目で私を見つめた。
マミ「皆、皆……死ぬしかないのよ。私だって……貴方だって」
マミ「貴方達だって、そう想うでしょ?」
ほむら「私はそういう訳にはいかないのよ」
ほむら「まどかを、護らなきゃならない」
ほむら「さやかを、護りたかった……」
ほむら「巴さん、貴方だって……。ほんとうに、護りたいのよ」
マミ「私達はもう終わってるのよ! 守るなら、魔法少女になる前に来てよ!」
ほむら「……」
マミ「……ごめんなさい。暁美さんに言っても、しょうがないのに」
マミ「もう、駄目なのよ。死にましょう。一緒に死ねば、きっと怖くないわ……」
まどか「……マミさん、それじゃあ、私が……マミさんを楽にしてあげます」
マミ「……っ!?」
まどか「怖がらないで、マミさん」
まどか「マミさんを、生き返らせたのはこのわたしだもん」
まどか「辛い思いをさせて、ごめんなさい……」
まどかが、錯乱状態の巴マミを優しく抱きしめる。
それでも、巴マミの震えは止まらない。
マミ「か、鹿目さん……。わたしだけじゃ、意味がないのよ?
魔女を、魔法少女が産むんだから……」
まどか「それはさせられない。絶対に」
マミ「なんでよ……」
まどか「ほむらちゃんは、知ってたんだよ? 魔女化のこと」
まどか「だから、わたしや、さやかちゃんの契約を止めようとしてくれたの」
マミ「……暁美さん……が、隠してたの、やっぱり、このこと……だったのね」
まどか「馬鹿なわたしは、ほむらちゃんが話してくれたのに……、契約しちゃったんだけど」
マミ「え……?」
まどか「わたしは、魔法少女になってでも、貴方に生きていて欲しかったんだよ? マミさん」
まどか「何も出来ないわたしだもん。分かってても、インキュベーターと契約するしかない」
マミ「私のために、魔女になる危険も恐れなかったっていうの……?」
まどか「……うん。マミさんだけじゃなくて、皆に……生きてて欲しかった」
まどか「魔法少女になれば、力が得られる。普通じゃありえない、力が」
まどか「話を聞く限り、経験を積んで、ベテランになればグリーフシードのやりくりもなんとかなりそうだし」
まどか「人間じゃなくなったとしても、私は皆と一緒に戦って、インキュベーターと敵対できる力が欲しかったんだ」
マミ「……」
まどか「ね、マミさん。私達は、たとえ人間じゃなくなっても、生きてるんだよ」
まどか「死に方が、普通の人間とは違うだけ」
まどか「生き方が、普通の人間とは違うだけ」
まどか「ゾンビなんて自虐的な呼び方して、貶めるのやめよう?」
まどか「マミさん、死ぬのなら、マミさんとして死んでほしい」
まどか「わけのわからないゾンビなんてものじゃなくて」
まどか「そして、生きるなら……。生きたいのなら、誇りを持って生きたい」
まどか「現状に満足できないのなら、一緒に、魔法少女なんてものを超越するの」
まどか「条理を覆す存在の私達なら、可能なはずだよ」
マミ「……鹿目さん……。そう……なのかな」
まどか「みんな一緒なら、きっといけるよ」
マミ「……」
杏子「……条理を覆す……か」
まどか「そうだよ、杏子ちゃん」
杏子「それなら、きっとさやかだって……まだ……」
杏子「元に戻ってくれるのかな?」
まどか「うん! きっと……。ね? ほむらちゃんも、そう思わない?」
ほむら「……まどか……」
ほむら「わたしは……」
まどか「ほむらちゃん……」
ほむら「私は今まで沢山、魔女化した魔法少女を見てきた」
ほむら「でも、帰ってきた子は、いないの……。それだけは覚えておいて」
ほむら「絶対、無理しないでほしい」
まどか「……うん、ありがとうね。ほむらちゃん」
まどか「兎に角、色々試してみたいの」
まどか「きっと、帰ってきてくれる」
まどか「ほむらちゃん、待ってて!」
まどか「頑張ったほむらちゃんの分も、私が頑張ってみるから!」
ほむら「まどか……」
まどか「大丈夫。私は、絶対ほむらちゃんのところに帰ってくるよ」
まどか「一人になんてしないから」
ほむら「……」
まどか「……マミさんは、どうします?」
マミ「……鹿目さん、佐倉さん。私も、貴方たちみたいに信じられない」
マミ「暁美さんみたいに、無理だとも思いたくない……」
マミ「一人にさせて。考えさせて頂戴」
まどか「……わかりました。でも、あんまり考えないで」
まどか「ゆっくり休んでください」
まどか「さやかちゃんのことがあるから、今は時間がとれないけど」
まどか「マミさんが悩んで苦しんでるなら、力になりたいんです」
まどか「マミさんが生きたいと思うなら、きっと、私が、私達が力になれると思うから……」
マミ「……」
私たちは別行動をとることになった。
まどかと佐倉杏子は、さやかの魔女を探すのだという。
巴マミは、自分のマンションへと戻るようだ。
私は……、どうする?
さやかへの自己犠牲を爆発させそうなまどかや、佐倉杏子を止めるか。
一人で魔女化しそうな、巴マミの様子を伺うか……。
佐倉杏子の傍には、まどかがいる。
自信と力に溢れた、魔法少女のまどかが。
……ここは、巴マミを優先すべきか。
正直……。さやかの魔女を見るのが、つらい。
一思いにやれなかった分、余計。
ごめんなさい、さやか。ごめんなさい……。
――巴マミのマンションの外から、中の様子を調べる。
幸い、結界や魔女の気配はない。
問題は、ないか……。
黒おじさん『……娘よ』
ほむら『なによ』
黒おじさん『インキュベーターとやら、中にいるぞ』
ほむら『……なんですって? どの面下げて、巴マミのもとに?』
黒おじさん『しらん。だが……』
ほむら『だが……?』
黒おじさん『Lawの奴らの好きな行為があってな』
ほむら『なによ』
黒おじさん『使える駒を、死ぬまで使いつぶすために……』
黒おじさん『洗脳、もしくは魂の改造を行う場合がある』
私は巴マミの部屋のドアを蹴破り、
中に侵入した。
宙に浮かび眠り続ける巴マミと、
耳から生えた触手で巴マミの周囲を探る風な動きをとるきゅうべぇ。
……ソウルジェムを生成したときのように……
いや。あの時よりも念入りに。
ほむら「……何をしているのよ! インキュベーターァッ!!!」
QB「なにって……使えない駒がいたから、使えるようにしてあげてたのさ」
ほむら「殺すわ」
QB「無駄だよ?」
QB「僕は本体のただの低級分霊に過ぎない」
QB「死んだところで、また分霊を派遣するだけさ」
QB「それより、見ておくれよ。僕の本霊につなぎ、力を分け与え、より高次の次元に到達した巴マミの姿を」
QB「君たちのために、魔女を倒すだけの存在にしてあげたよ?」
QB「ほら、美樹さやか。彼女が魔女化してしまった」
QB「お人よしの君たちでは、退治できないだろう?」
QB「彼女を倒すのは、この巴マミがやってくれるよ」
今までと違い、真っ白な衣装を纏い、
美しい羽根を生やし……
外見は、まるで天使の様。
不覚にも目を奪われかけたところで、
巴マミが目を見開いた。
瞳のない、真っ白な眼球が見える。
巴マミは瞳のない目で私を一瞥し、
何も言わずに、壁を銃撃で破壊。
羽を広げ、立ち去った。
私は、追う事も出来ず……
ただ、残ったインキュベーターの尻尾を踏みつけ、
銃弾を撃ち込み続けた。
手の中の銃が弾切れを起こした時……
心の奥の絶望が、奇妙に薄れる感覚を覚えた。
おそらく、黒男爵が私の発する絶望を吸っているのだろう。
続けて、黒男爵が私にテレパシーを送ってきた。
黒おじさん『おい、その分霊の死体、私に寄越せ』
ほむら『……こんなの、どうするのよ』
黒おじさん『私の手にかかれば、情報を引き出すことが出来る』
ほむら『……頼むわ。盾に入れるから』
黒おじさん『うむ』
ほむら「まどかは魔法少女に、さやかはインキュベータにより強制的に魔女化。
佐倉杏子は、まどかを誘って、魔女化を解除しようとしている……」
ほむら「下手をすれば共倒れ」
ほむら「そして、よりによって、巴マミは改造された!?」
ほむら「はぁ、もう……なんだっていうのよっ!!!」
黒おじさん『貴様も、その魔女化の解除とやらを手伝ってやればよいではないか』
ほむら「何を言っているの。悪魔随一のネクロマンサーとやらを自負する貴方なら分かるでしょう?
魔女になって、帰ってきた子なんていないわ」
ほむら「巴マミなんて、改造よ!?」
黒おじさん『それは穢れを払い、鎮める手段が無かったからだろうが』
ほむら「……? ちょっと、待ちなさい! 出来るのっ!?」
黒おじさん『魔女化は、穢れを纏い、属性がDark堕ちした結果だろう』
黒おじさん『悪魔としての自覚が無い貴様らは、属性変化の際に自我が完全に崩壊』
黒おじさん『傀儡 同然となったのだ』
黒おじさん『改造においても、変化する属性が違うだけでほぼ同じだ』
黒おじさん『ならば、そのバランスを崩すものを取り除けばよい』
ほむら「……具体的にどうするのよ。私にも分かるように説明して頂戴。お願いだから」
黒おじさん『この地に古くより伝わる、シントーの言葉を借りれば分かり易いかな』
黒おじさん『我ら精神世界の存在も、貴様ら人間の魂も、アラミタマ、ニギミタマより成り立つ』
黒おじさん『ニギミタマの中には更に、クシミタマ、サキミタマがある』
黒おじさん『アラミタマという名から、周りに危害を与えそうな名前だが、
人の心に前を進もうとする発展性を与える重要な要素でもある』
黒おじさん『他もいずれも無くてはならんものだそうだ』
黒おじさん『ニギミタマは、親しみ、交わる力……といった具合にな』
黒おじさん『それら御魂が上手くバランスがとられる事で、平常の状態が保たれる』
ほむら「……じゃあ、魔女化はそのバランスが崩された状態ってこと?」
黒おじさん『そうだろうな。それに加え、穢れを溜め込み曲霊になった』
ほむら「曲霊……? けがれ?」
黒おじさん『曲霊というのは、魂が通常の状態なら選ばない行動を行い易くなった状態だ』
黒おじさん『在るべき姿を、見失ってしまうのだ』
黒おじさん『それは、直霊から穢れを溜め込む事によって起こる』
黒おじさん『穢れは、気が枯れるという事だ』
黒おじさん『主観的な不潔感らしいな。人は生きているだけで、それが溜まる』
ほむら「ソウルジェムの濁りみたいなもの……?」
黒おじさん『そうだろう。穢れは、更に死や疫病、犯罪などで、さらに心を強く枯らすらしい』
ほむら「……絶望も、そういうものから始まることが多いわね」
黒おじさん『そうなのだろうな』
ほむら「じゃあ、魔女化は穢れだったり、アラミタマとかのバランスが崩れたりして」
ほむら「自分を見失っていただけ?」
黒おじさん『精神世界の存在になった貴様達にとって、それがどれだけ重要かわからんか』
ほむら「……じゃあ、その穢れを払えば、バランスを崩すマグネタイトを無くせば、本当に元に戻るの……?」
黒おじさん『程よく弱らせ、バランスを崩すマグネタイトを分離してやれば
後はお前の仲魔達の呼びかけで鎮まるのではないかな』
黒おじさん『ただ、インキュベーターとやらが、グリーフシードは穢れを吸収し易い仕組みにしているようだ。
少々手間取るかもしれんが、なに。それを上回る勢いで吸収し返してやるがいい』
ほむら「……貴方に、それが出来るの?」
黒おじさん『無理だ』
ほむら「ちょっと!!!!」
ほむら「期待させといてそれ!? ソウルジェムが濁るわよ!!!」
黒おじさん『高位分霊以上の私であれば可能だろうが、この分霊のランクでは無理だ』
黒おじさん『私は調査メインの分霊でな。基本的なスキルは持っているが、単純にパワー不足なのだ』
ほむら「……結局、どうしようもないって事じゃない」
黒おじさん『さて……、貴様が自分を捨てる覚悟があれば話は変わってくるぞ』
ほむら「……? 自分を捨てる……?」
黒おじさん『そうだ。私と交わり、強力な悪魔と生まれ変われば、な』
ほむら「……交わる? どういうことかしら……」
黒おじさん『悪魔を研究し続ける人間達により生み出された、とある秘術がある』
黒おじさん『その秘術の名は、悪魔合体という』
ほむら「悪魔……合体……?」
黒おじさん『簡単に言えば、二体の悪魔が一つとなり、新しい一体の悪魔になるということだ』
ほむら「それは……」
黒おじさん『悪魔の組み合わせによって、強くなるかならないかは変わる』
黒おじさん『だが、私と貴様の組み合わせであれば、より強力な悪魔へと生まれ変われるはずだ』
ほむら「でも、それって……。ゾンビどころか、本当に私が私でなくなってしまうんじゃ……」
ほむら「それじゃ意味が無いわ。新しい私が、まどかを守ろうとしないかもしれない。そんなの意味が無い」
ほむら「このループは諦めて、次にいけば……」
黒おじさん『ふむ……。では、貴様にとって興味深い話を聞かせてやろう』
黒おじさん『この分霊から得られた情報だ』
ほむら「……なによ」
黒おじさん『インキュベーターの奴が嘘をつけない事にして、何を隠していたか、という話だ』
ほむら「なんですって!?」
黒おじさん『度々、話してはいるが。我らが高次の精神世界の存在であるということを念頭に置いておけ』
黒おじさん『高次の精神世界の存在というのは、無限にある平行世界をまたぐ存在であるということだ』
ほむら「……平行世界を、またぐ存在……」
黒おじさん『うむ。そして、私達 高次の精神世界の存在は、物質世界に顕現していない時は、
生み出された全ての平行世界を、その気になれば知る事ができる』
ほむら「まって、ちょっと、待って……」
黒おじさん『だから、インキュベーターがしらばっくれていたとして、
貴様が時間遡行を行っていた事は知っていた可能性が高い』
黒おじさん『さて、それは何故であろうか?』
ほむら「それって、それって……」
黒おじさん『そうだ、ほむらよ。最初から、貴様の祈りは利用されていたのだ』
黒おじさん『Lawの奴らの、強力な手駒としてのまどかの魔女。
それを生み出すために、多くの平行世界を生み出し、因果を集中させるようにな』
黒おじさん『Lawの神はかつて、ある時間軸では東京にICBMを落とし、
人間の社会を破壊、あらたな秩序ある世界を作ろうとした』
黒おじさん『それにあやかり、奴なりの兵器を生み出し、今度は地球規模で破壊を行おうとしているのだ』
黒おじさん『自分に都合のいい世界を生み出すためにな』
黒おじさん『それも、貴様が繰り返すほどに世界は多く生まれる』
ほむら「……私が、あの強力な魔女を生み出していただけじゃない」
ほむら「私はまどかが、平和に生きられる世界を作ろうとしてたのに」
ほむら「私のそんな目的さえ利用されて、……やつ等に意図的に利用されて、
まどかをインキュベーターの兵器へと作り変えていたというの?」
黒おじさん『そういうことだ。絶望から発せられるマグネタイトが魔法少女を魔女へと変える。
その時に奴に入るエネルギーなど、ありはしない』
黒おじさん『考えた事は無かったか? 魔法少女から魔女に生まれ変わる為のエネルギーを』
ほむら「……殺す、殺してやる……」
黒おじさん『インキュベーターは、魔女を殺すように魔法少女に促す。
これは、中途半端な魔女にしかならなかった個体を処理し、
魔法少女にマグネタイトを集めさせ、無駄なく再利用するためだろう』
黒おじさん『奴は黒く淀んだグリーフシードが好みの様だしな』
黒おじさん『だから、インキュベーターは使用済みのグリーフシードを喰らう』
黒おじさん『かかか、強い悪魔を生み出すため、よく考えられたシステムだな』
黒おじさん『エネルギー問題など、あやつの都合のいい詭弁だったのだろう』
ほむら「滅ぼしてやるっ……! インキュベェタアアアアアッ!!!!!」
黒おじさん『……そうか。ならば、ほむらよ』
ほむら「なによっ!!!」
黒おじさん『貴様も、同じ土俵に立つしかなかろう』
ほむら「……悪魔合体しろというのね」
黒おじさん『そうだ。インキュベーターの使い魔に等しい地位から脱却し、
Chaosの悪魔として生まれ変わるがいい』
黒おじさん『奴等の法から自由な悪魔となるのだ』
黒おじさん『そして、自らの欲望に忠実に、目的を果たせ』
ほむら「……ちょっと待ちなさい。貴方と合体したからといって、貴方のメリットは……?」
ほむら「まさか、私を養分にして、貴方自身が強くなろうとしてるのではないの?」
黒おじさん『ふむ、やはり……馬鹿ではないらしいな』
ほむら「なによ! そう言う割に、馬鹿にしてる様にしか聞こえないわよ!」
黒おじさん『うむ』
ほむら「……」
黒おじさん『怒りながらも、冷静な部分が残るというのは中々良いぞ。暁美ほむら』
黒おじさん『さて、私の目的だが……』
黒おじさん『この世界には、私が探している平行世界のあの子の魂の欠片はない』
黒おじさん『そして、この世界に元々いるあの子は、幸せに暮らしている』
黒おじさん『だから、私という分霊は、あの邪神の企みを阻止することが一番の存在意義だ』
黒おじさん『それは、Law属性の奴らを弱らせることにも繋がるからな』
黒おじさん『……しかし、調査用の分霊では、それは不可能だ』
黒おじさん『高位分霊や他の強力な悪魔を呼ぶのも難しい』
黒おじさん『ならば、悪魔合体という選択肢しかない』
黒おじさん『私にとっても……な』
黒おじさん『この合体は、私の目的と貴様の目的、双方を満たすものとなるだろう』
黒おじさん『それに、私は数多いる分霊の一つにすぎん』
黒おじさん『目的が果たされるなら、別の悪魔に取り込まれたところで、大した痛手ではない』
ほむら「……やっぱり、悪魔ってわけがわからないわ」
ほむら「自分がなくなってもいいだなんて」
黒おじさん『貴様も高次の精神生命体により近づけば、感覚的に分かるであろうよ』
黒おじさん『分霊というものが、己に対する認識というものをな』
黒おじさん『貴様は、自分の自我を失いたくないという』
黒おじさん『なれば、貴様が想い人を護りたいという意思が強固であればあるほど、
貴様自身としての意識は残るだろう』
黒おじさん『簡単な話だ。合体の際は、私と争い、勝って私の力を自分の力とすればいい』
黒おじさん『さもなくば、どの道……貴様は永遠に、インキュベーターの檻の中だ』
黒おじさん『さあ……どうする、暁美ほむらよ。私に乗っ取られるリスクを抱え真の悪魔と生まれ変わるか?』
黒おじさん『負け犬のまま朽ち、意思を持たん兵器に成り下がるか』
黒おじさん『延々、平行世界を生み出し、愛しい娘を兵器に変え、インキュベーターを強化するか』
ほむら「……」
ほむら「……よりによって」
ほむら「勝つための選択肢が、こんな不気味なおじさんと合体するだけなんて……」
黒おじさん『打開される可能性のある道が示されただけ幸運だと思うことだ』
ほむら「……わかってるわ。あいつと敵対する時点で、並大抵の手段では上手くいかないことくらい」
ほむら「いいわ、やってやる。貴方の力、奪い取ってやるから」
黒おじさん『くかかか、ほざけ』
ほむら「……それで、その悪魔合体とやらは、どうやればいいのよ」
黒おじさん『正式なやり方は……人間の手を借りる方法が一番だが……
貴様にその伝手はなかろう? この時間軸では私もない』
ほむら「じゃ、どうするの」
黒おじさん『何、簡単なことだ。
私が盾の中に入った状態で、私という存在を吸収しようとしてみろ』
黒おじさん『この盾の中は、かなり特殊な状態だ』
黒おじさん『物質世界と精神世界の狭間だからこそ、吸収・合体が上手くいくだろう』
黒おじさん『必要な魔方陣は、私が魔力で描いてやろう』
ほむら「……吸収しようとって、どうやって……?」
黒おじさん『私の存在を感じる事は出来るだろう?
やろうとしてみろ、感覚的に分かるはずだ。
ほむら、貴様は既に高次の精神世界の住人でもあるのだから』
ほむら「……」
ほむら「……そうね。分からなくもないかもしれないわ。じゃあ……」
ほむら「勝負よ、黒男爵」
黒おじさん『くるがいい、未熟者が』
……黒おじさんの存在を乗っ取ろうと試みる……
盾が黒く……美しく光り、
訳の分からない文字と
直線と曲線で描かれた魔方陣が浮かび上がる。
その最中、意識が遠のきかけ……
夢の様なものをみた。
可愛らしい金髪碧眼の少女を愛でる、
黒おじさんと、もう一人の赤いおじさん。
おじさん達は、その少女のために、
沢山のゾンビを生み出し、ゾンビの街を作る。
少女が、お友達を欲しがったから。
可愛らしい少女も、ゾンビだから。
ゾンビのお友達は、ゾンビ。
愛しい少女が気に入った人間を、
ゾンビに作り替えたこともある。
ゾンビの少女は、
おじさんがいる世界を破壊した大陸間弾道ミサイルが原因で
死を迎えた美しい少女だった。
その少女を哀れみ、破壊者への憎しみから、
おじさんは少女をゾンビに変えた。
最初は、そう……哀れみだった。
だけれど、その少女といるうち、
おじさんは悪魔になって忘れていた感情を思い出す。
おじさんは少女を護り、幸せと平穏を祈った。
それは、とても歪んでいたけれど、
とても純粋な愛情でもあった。
でも、それには終わりが訪れる。
悪魔と共存しながらも……
人間が自らの足で立って歩ける世界を望む少年が、
その街を破壊してしまうから。
愛しい少女のためだけの、身勝手な振る舞いによるしっぺ返し。
少女と共に、儚い夢のごとく消え去ってしまう。
ただ、悪魔の死は、人間のものとは違う。
魔界へと戻るだけ。
……そこで、おじさんは呪詛とともに、
自らを罰した少年を魔界から観察した。
機会があれば、復讐してやろうと……
しかし、少年を観察しているうち、
おじさんの中に別の感情が浮かんでくる。
愛しい少女は元々、少年と同じ人間だった。
その人間の可能性を、少年が見せ付けてくれたから。
Chaosの大悪魔もLawの大天使も、すべてを皆殺し。
自らの足で歩こうとする少年。
おじさんは、ここで初めて、自らの行いを後悔した。
おじさんの愛しい娘は、もしかすると
少年と同じくらいの無限の可能性を秘めていたのかもしれない。
愛しい娘のご機嫌伺いだけして、好かれようとだけして、
自らのエゴで潰してしまった。
そして、自分が神だった頃のことを少しだけ思い出す。
……あの愛しい少女を復活させよう。
今度は、少女を育てるのだ。
自分が神だったころは、
人間達を直接助けるのではなく、
良い方向に導く存在であった。
愛しい少女も、
自ら立って歩ける力をもってこそ、
幸せに向って歩いていけるはずだ。
そう決心して、同志と共に
壊れた愛しい少女の魂の欠片を集めてまわる。
その途中、愛しい少女と同じく、
理不尽な法を押し付けられ犠牲となりそうな少女を見つけてしまった。
また、その少女は自分とも重なる。
大事な友人を助けるため、行動している。
しかし、決定的に違う所もある。
かつての自分は、ただ、愛でようとしていただけ。
対して、その少女は自分が犠牲になってでも、憎まれようとも、
友人と、その友人のため世界を護ろうとしていた。
その隣に、自分が居なくても。
なんと、危なっかしく、儚い、おかしな少女だろう。
だが、何故か……
目を離すことが出来ない。
自分と同じ失敗をしなければいいが
自分と同じく、敵は強大だ。
自分と愛しい少女に似る、おかしな少女。
放っておくことなど出来ない。
その少女の、名は……
ほむら「わたし、今度こそ 本物の悪魔に生まれ変わったのね。黒男爵……」
ほむら「いえ、黒おじさん」
――さやかの魔女の結界の中で、
魔女と、天使もどきが戦っている。
その天使もどきが巴マミだと気が付いて、
まどかと佐倉杏子は、絶望しかかっていた。
それでも、尚 まどかは立ち上がり、
二人を正気に戻す時間を稼ごうと、
二人の攻撃が互いに行かぬよう、捌いている。
天使もどきは、そんなまどかに反応したのか、
魔女への攻撃を止め、行動を急停止した。
その隙に魔女は強烈な一撃を与えようとするが、
まどかは必死にそれを逸らそうとする。
天使もどきは、少し口を開き……。
「せめて、貴方達の手を、汚させたくない……」
そう、呟いた。
自我が残っているのか?
全体的に人間らしさは失われていたが、
目元や口元をよく観察すると、悲痛さが見て取れる。
まどかも、それを感じたのか
涙をこぼしそうになった。
天使もどきは哀しみの破片を浮かべたまま、
抗えぬように魔女への攻撃を開始した。
少し遅れて立ち直った佐倉杏子が、
巴マミの攻撃を捌く。
……観察は、この程度でいい。
さやかと巴マミのソウルの状態は把握した。
私なら、出来る。
私は自身の存在をフェードアウトさせ、
周囲の存在から気が付かれにくくなる魔法を唱えた。
そして、一気に天使もどきに近寄り……
巴マミの魂を抜き取った。
天使もどきは倒れ、動かなくなる。
魂の無くなった肉体は、呪縛から逃れ人間の物に戻った。
まどか「……っ!? ほ、ほむらちゃん!?」
ほむら「巴マミ。貴方の魂、確かに頂いたわ」
杏子「なっ……、お、おい、てめぇ! マミを……」
まどかと杏子が私に気を取られたとき……
狂った魔女は、攻撃の好機だと考えたのか
無数の車輪を召喚。
それを一気に私達に向けて解き放った。
打撃か射撃属性か迷ったが、
一応 射撃属性のスキルらしい。
それならば、避ける必要はない。
身構えるまどかと佐倉杏子の前に立ち、
涼しい顔で攻撃を凌ぐことができた。
まどか「……まさか、ほむらちゃん……も?」
ほむら「それは違うわ。私は私よ」
杏子「どうだかな。実体に見えるが、だからこそ あの攻撃をしのげるなんて思えない」
まどか「……まって、ほむらちゃん。私達、まだ……」
ほむら「まどか、杏子」
ほむら「私を信じて」
まどか「……」
杏子「……どう信じろっていうんだよ。さやかも、殺すつもりなのか?」
まどか「……まって、杏子ちゃん」
まどか「わたし、信じるよ。ほむらちゃん」
まどか「杏子ちゃんも。ね?」
杏子「……」
私たちが話している隙に、攻撃を加えようとしてくる狂った魔女。
私はその攻撃を避け、今度はさやかの魂を抜き取ろうと試みる。
粘つく邪気が、魂にからまり離れない。
こんなものは、さやかから溢れる精神エネルギーではない。
さやか、今開放するからね。
ほむら「……美樹さやか。貴方の魂も、確かに頂いたわ」
杏子「……さやかの魔女、霧散しちまった」
まどか「ほむらちゃん。……その手の、マミさんと さやかちゃんのグリーフシード?」
ほむら「ええ、そうよ。巴さんは、ソウルジェムのままだけれどね。改造済みではあるけど」
杏子「……えらく、あっさり片付けてくれたな」
ほむら「今の私にとって、この子達は敵じゃないわ」
ほむら「私は、この子達を導く存在にならなければいけないのだから」
杏子「……なんか、雰囲気が変わったじゃねーか。暁美ほむら」
ほむら「そうかしら?」
杏子「もう一回聞くよ? どう信じろって言うんだ?」
杏子「その抜き出したグリーフシードで、何をあんたは信じさせてくれるっていうんだ?」
ほむら「この子たちを、救ってみせる」
杏子「……簡単に言ってくれるな」
まどか「ほむらちゃん。手持ちのグリーフシードをつかっても、周囲の穢れは吸収できなかった」
まどか「それに、呼びかけにも答えてくれなかった」
まどか「……魔女でも、なくなっちゃった」
まどか「一体、どうするの?」
まどか「私でも、手伝える?」
ほむら「ええ。というか、貴方達がいないと、無理なのよ」
杏子「……? どうするんだよ」
ほむら「さっき、言ったでしょう。わたしを、信じて」
ほむら「あの二人を戻せると、わたしを信じて」
杏子「信じるだけで出来れば、せわねぇよ!」
ほむら「私たちは高次の精神世界の存在。それがどれだけ大事か分からない?」
杏子「……」
まどか「……? こうじのせいしんせかい?」
ほむら「ええ。悪魔ってことよ」
まどか「あくま……?」
杏子「……よく、わかんないけどさ。私達程度じゃ、半分、人間みたいなもんだろ」
杏子「あの魔女もどきみたいに、ものほんの悪魔なら違うかもしれないけど……」
ほむら「私は、もうそっち側」
ほむら「私がまだ、魔法少女だと思う?」
まどか「……ほむらちゃんの、ソウルジェム……ない?」
杏子「どういうことだよ……おい」
ほむら「わたしは、悪魔の力を手に入れた」
ほむら「インキュベーターに対抗しうる力を」
ほむら「魔女もどきを吸収してね」
杏子「……今のアンタなら、できるんだな」
ほむら「ええ。私は、さやかとマミを救いたい」
ほむら「その為に、貴方達が発するマグネタイトがいるの」
まどか「ま、まぐねたいと?」
ほむら「精神を持つ生命体が、感情を示した時に発するエネルギーよ」
ほむら「二人のグリーフシードは、精神の均衡を壊すほど、
絶望した時に発するマグネタイトが蓄積されている」
ほむら「それを、私が無理やり吸収して、正常な状態に叩き直す」
ほむら「だけれど、負のマグネタイトばかりを吸収すると、私が闇堕ちしてしまう」
ほむら「だから、貴方達が私に正の方向のマグネタイトを発してくれれば」
ほむら「それを吸収して、バランスが保てるわ」
まどか「……急で、よく分からないけど……」
まどか「ほむらちゃん、信じてるから。二人を救ってくれるって」
まどかが、私の目を見ながら手を握ってくれた。
暖かなマグネタイトが、流れ込んでくる。
心から、私を信じてくれてるのが感じられる。
それが、とても嬉しくて……
同時に、力になるのを感じる。
ずっとこうしていたい気持ちに囚われかけたが、
そうも言ってられず、私は佐倉杏子の方を見る。
杏子「……ちっ。ま、まどかよりは、アタシは状況は分かってるからな」
杏子「いいよ。アンタに賭けてやるよ」
杏子「こっぱずかしいけど、アタシの気持ちが力になるんなら、持ってきな」
杏子「アンタのこと、信じてみるよ」
私は、正のマグネタイトの心地よさに酔いしれながら、
右手のマミのソウルジェム、左手のさやかのグリーフシードに力を込める。
ほむら『巴さん、さやか』
ほむら『あんな終わり方のままなんて嫌よ』
ほむら『お願い、帰ってきて』
ほむら『私やまどか達が一緒に居れば、辛いことだってきっと乗り越えられる」
ほむら『私だって、何だってする!」
ほむら『今から、それを証明する』
ほむら『貴方達が感じた苦しみ、私が喰らってやるから!』
ほむら『意地でも取り戻すんだから!』
ほむら『いくよっ!』
――さやかの死体の鮮度を保つために、
黒おじさんは適当な死者の魂を放り込んでおいてくれた。
お蔭で、肉体の劣化や腐りは進んでいないようだ。
今も自宅で、さやかのフリをしてくれている。
ただ、どうも男の魂を突っ込んでいたらしく、
行動の節々がおっちゃん臭い。
今も脇をぼりぼり掻きながら、スルメを食べている。
久々の人間の体を、満喫しているのか……。
細かいところの気の回らなさから、
アリスから黒おじさんが少し疎まれていなかったか心配になってきた。
……まあ、今はそれはいい。
男の魂に礼を言い、体から出て行ってもらった。
マミ「……美樹さん、目を覚ましてくれるかしら」
杏子「大丈夫でしょ。マミだって治ったんだから」
まどか「……あっ、さやかちゃん、動いたよ!」
さやか「……えっ、あれっ?」
ほむら「おはよう、さやか」
さやか「ほむら……。まどか。マミさん。えっと、佐倉さん」
まどか「さやかちゃあああああんんんん!!!!」
さやか「うわっ! まどかっ! 落ち着いてって!」
マミ「ふふっ」
杏子「へっ」
さやか「あははは……。よしよし、まどか」
ほむら「……気分は? どこか、変な所はないかしら?」
さやか「ない……と思う。あたし、魔女になってたんだよね……?」
ほむら「そうよ。その間の記憶って、ないのかしら?」
さやか「……ぼんやりと。声、聞こえてたよ」
ほむら「まどかと、杏子、必死に呼びかけてくれてたんだから」
さやか「うん、ほむらの声も聞こえたよ?」
ほむら「……わたし、何か言ったかしら?」
さやか「さあねー? なんて言ってたかな、マミさん」
マミ「さあー? 彼女だけじゃないのねって思ったかもしれないわね」
さやか「あー。一番ご執心なのは、ねぇ」
ほむら「……何の話よ」
まどか「えー? ほむらちゃんがご執心って、だれ?」
ほむら「そ、それより!」
さやか「?」
ほむら「インキュベーターは、実は強制的に魔女化を行えるみたいなの」
ほむら「さやかの件、魔女化のスピードが異常だったわ」
まどか「……強制的に、行えるなら……なんで、やらないんだろう」
まどか「魔女化した時に発する絶望のエネルギーが大事なんだよね?」
ほむら「それこそ、エネルギーが無駄だからでしょう」
さやか「どういうこと?」
ほむら「魔法少女自ら絶望してマグネタイトを発さないと、自分のエネルギーを消費することになるじゃない」
ほむら「奴らにとって、魔女化は世界を滅ぼす兵器を開発しているに過ぎない」
ほむら「なにか必要に駆られない限り、自分の身を削るのは嫌なんでしょう」
マミ「……じゃあ、何故今回は……」
ほむら「もしかしたら、私がこうなるのを恐れて、早めに決着をつけようとしていたのかもね」
杏子「……やっと、話が聞けるのかい」
さやか「そうだ、ほむら。あたし、魔女化する前にあんたの盾の中に何かいるのが見えたけど……」
ほむら「自分で気が付いていたでしょう? 魔女もどき……悪魔よ」
まどか「あくま……。さやかちゃん達、助けるときにも言っていたけど」
さやか「どういうことよ?」
マミ「きゅうべぇにも関係のあることなのよね。私を、あんな風にして……」
ほむら「……そうね。それじゃあ、どこから話そうかしら」
ほむら「長くなるから、覚悟してね。あれは、私が、人間だったころから……」
――私が長い時間かけて、全てを話し終えたころ。
皆それぞれ、複雑な顔をしていた。
まどか「じゃあ、その……黒おじさんと、ほむらちゃんは……」
ほむら「ええ、そう。私は本物の悪魔の力を手に入れた」
ほむら「インキュベーターに依存しない力を」
杏子「……悪魔合体……か。そんな裏ワザがあったとはね」
さやか「自分が自分じゃなくなるみたいで怖いけど」
ほむら「でも、なるべく早く魔法少女から脱却する必要があると思うわ」
ほむら「エネルギーを消費してでも、魔女化は敵を減らすには有効な手段だもの」
マミ「……でも、合体っていったって、そんな協力的な悪魔だって、中々みつからないと思うし」
まどか「当面、魔法少女として戦うしか……」
ほむら「それに関しては、問題ないわ」
まどか「どうするの?」
ほむら「まどか、佐倉杏子、巴マミ、美樹さやか」
ほむら「貴方達……私と、交わりなさい」
まどか「」
さやか「」
マミ「」
杏子「?」
まどか「ほ、ほ、ほむらちゃん! そういう事言っちゃ駄目ぇ!!!!」
ほむら「えっ???」
マミ「交わるって……。暁美さんったら、どうして、急にそんな話に……。あ、悪魔だから……?」
さやか「ほ、ほむら。夢魔系っすか」
さやか「うー、いかん。何故 あたしは今ちょっとぐらっと来てしまったんだ」
さやか「ほむらが幾ら美人だからってそれはちょっと、いやでもqあwせdrftgyふじこlp」
杏子「なんでアンタ達慌ててるのさ?」
杏子「ほむら、どういうことだよ?」
ほむら「わ、私も分からない。みんな何か誤解してない?」
まどか「だ、だ、だって、交わるって言えば……!」
さやか「そ、そ、そういう事でしょうが!」
ほむら「そういうこと……。まじわる……? ごめんなさい。分からないの……」
まどか「だ、だからね……、さやかちゃん!!!」
さやか「あ、アタシかよ! え……えっとぉ、だから……」
さやか「交わるっていったら、その、普通は、好きな人同士で、その……」
ほむら「好きな人同士で?」
さやか「え、えっ……チ というか、ごにょごにょ」
ほむら「……えっ? なに? えっ……え! ええええっ!?」
ほむら「ち、ち、違うのよ。全然、意味が違うのよ!」
まどか「な、なんだ。ちがうんだ」
さやか「なんかほっとした様な残念なような」
まどか「さやかちゃん?」
さやか「いえ、なんでもないです」
杏子(……えっちって言ったか??? なんだ? 悪魔合体の話じゃねぇのか?)
マミ「……鹿目さん、さりげに所有権を主張してるのね」
まどか「そ、そんなんじゃないです! それより、ほむらちゃん、どういうこと!」
ほむら「どういうことって! 悪魔合体の話の途中だったでしょ!」
さやか「ああ、合体を交わるって表現したのか」
マミ「紛らわしいわね」
まどか「ほっ……」
杏子「……なんなんだよ、一体」
ほむら「もう、黒おじさんがそういう表現していたから、真似して使っただけなのに……」
まどか「……でも、それどういう事?」
さやか「私達皆が合体して一つになって、強い悪魔になりたいってこと?」
マミ「それはちょっと……」
杏子「アタシもごめんだよ? アタシは、アタシでいたい」
ほむら「皆、忘れていない? 私たちの知るインキュベーターも、黒おじさんも」
ほむら「分霊に過ぎないということを」
さやか「……分霊? えっと、分身みたいなものだっけ?」
マミ「でも、貴女は……本霊というんだっけ? 本物なんでしょう?」
杏子「……まさか」
まどか「え、杏子ちゃん、わかったの?」
ほむら「……おいでなさい、私の分霊たち」
???「ホムホム」
???「ホムホム」
???「ホムーーー」
まどか「」
杏子「」
さやか「」
マミ「」
さやか「……いや、なにこれ」
ほむら「だから、私の分霊よ」
マミ「ちっちゃい……、いや、幼い暁美さんね」
ほむら「私は未だ物質世界に本霊がある所為か、あまり高級分霊を作るのは難しいのよ」
さやか「なんかほむほむ言ってるんだけど」
ほむら「だから、低級だから大した能力もないし、知性も低いのよ」
まどか「え? 一人連れて帰ってもいいの? ほむらちゃん」
まどか「私、メガネの子がいいな!」
ほむら「連れて帰る? いえ、だから、これは合体用……」
まどか「私、この子にそんなことできない! この子は私が育てるっ!!!」
ほむら「え、えぇー……」
さやか「じゃ、アタシはこのクールっぽそうな ほむほむで」
マミ「私は……リボンつけてる子かしら」
杏子「……アンタらね、落ち着いてよ」
杏子「あの憎たらしいインキュベーターの魔の手から逃れられるチャンスなんだぞ?」
杏子「聞く限り、意志の強さで合体後の自我は勝ち取ることができるんだろ?」
杏子「低級の意志の弱そうな分霊なら、簡単だろう」
まどか「えー、でも、なんか可愛そうだよ」
ほむら「特殊な例を除いて、分霊は自我の存続に特別な熱意を持たないわ」
ほむら「低級なら、特にね。一番は、自分の持つ目的を果たすこと」
ほむら「それに、貴方達と一つになるなら、皆嫌がらないはずよ?」
さやか「……みんな、まどかの所にいるんだけど」
ほむら「えっ」
まどか「そっかー。よーし、おねえちゃんと遊ぼうか!」
分霊s「ホムホムー!」
杏子「……さすが、アンタの分霊だな。一番大事なものは忘れないらしい」
ほむら「……違うのよ。貴方達も、大事だと思っているのよ」
マミ「私にも一人くらい懐いてくれないかしら……」
杏子「そもそも、未だに分霊っていうのがよくわからない」
ほむら「私たちが高次の精神世界の生き物だって、黒おじさんが説明してくれたわよね?」
杏子「……お、おう」
ほむら「次元の高い世界は、低次元の世界に比べて、関与する条件が多い世界なの」
ほむら「二次元が縦横、三次元が縦横高さといった具合に」
ほむら「つまり、高次から一つ低次の世界に現れるには、
関与する条件を1種類、不変のものにしてしまうという事」
マミ「……えっと、三次元の立方体が、二次元の世界だと正方形としか見えないようなものかしら?」
ほむら「そう。立方体は断面の正方形としか、二次元では表せないから」
ほむら「つまり、物質世界に降りた私たちは
高次の精神世界の私達のほんのごく一面でしかないの」
ほむら「関与するいろんな要素が限定されるから」
ほむら「顕現するときに、その限定される条件がどこで固定されるかで、
同じ分霊でも差が出てくるというわけ」
ほむら「高級分霊、低級分霊とかいっても、本霊の……どういったらいいかしら?」
ほむら「限定された色んな一面が分霊の集団とすると」
ほむら「ある集団を現す値、平均値や最頻値のような値に近いものが高級分霊で、離れると低級分霊……」
ほむら「ちょっと分かりにくいかしら?」
さやか「なるほど分からん」
ほむら「私も上手く説明できないのよ。おじさんなら説明できるかもしれないけど……」
ほむら「物質世界に居る私が分霊を作るのは難しくて、高次の精神世界を通して産むから」
ほむら「あまり高級の分霊を作るのは難しいのよね」
ほむら「マグネタイトもかなり消費してしまうし」
まどか「同じ低級の分霊でも、結構いろんな子が産まれるんだね?」
ほむら「人間はちょっとした時間の間に精神状態が結構変わったりするでしょう?」
ほむら「同じ時間でも、内心での複数の欲求の葛藤があったり」
ほむら「ちょっとした事で、私たちの色んな内面が現れたりするの」
ほむら「だから、分霊でも本霊の意志に叛逆する子だっていることもあるわ」
まどか「ふーん……。さやかちゃんが宿題さぼってるときに、ちょっとだけ後ろめたい気分があったりするけど、
その時、さやかちゃんが分霊を産めたとしたら、
後ろめたい部分が出てきたら、真面目なさやかちゃんが産まれちゃった!みたいな感じ?」
ほむら「否定するほど間違ってはないわね。そういう事もあるかもしれない」
さやか「くそ、分かってしまった自分が腹が立つ」
ほむら「大体、把握できたかしら?」
ほむら「低級分霊だから、強化はあまり出来ないかもしれないけど」
ほむら「この子達と一つになることで、インキュベーターの支配を逃れ、悪魔へと入門できるはず」
ほむら「皆、いい?」
まどか「私はいいよ。一番懐いてくれてる、メガネの子と一緒になる」
さやか「んー、あたしは……やっぱ、お前かー? 普段のほむらみたいな、クールぶりっ子」
マミ「……しょうがないわねって感じで、リボンの子が来てくれたけど……」
杏子「アタシは、お前か? なんか昔話の魔女のコスプレみたいだな……」
まどか「それで? 実際に合体って、どうするの?」
ほむら「式は私が行える。プログラミングからだから、時間がかかるけどね」
マミ「プログラミング? パソコンの? 悪魔合体で???」
ほむら「召喚から悪魔合体まで、全て儀式を電子化して悪魔を使役してる人たちがいるのよ」
ほむら「それが一番間違いもなく、正確なのよね、結局。その模倣よ」
さやか「サマナーってやつ?」
杏子「……なんで、アンタが知ってるんだよ?」
さやか「ゲームとかでよくあるんだよ。まさか、本当にいるとは……」
ほむら「現実っていうのは、おかしなものね」
ほむら「……さて、儀式は、かなり時間がかかるわ」
ほむら「一人ずつ行うから、呼ばれたらきて頂戴」
ほむら「最初は……」
杏子「アタシからやるか。他は、人間モドキやめる前に、挨拶したい奴らがいるだろう?」
まどか「……」
さやか「……」
ほむら「……私たちは、通常の悪魔と違い、肉の体を有しているわ」
ほむら「体を損壊しない限りは、普通の人間のフリをすることだって、可能よ」
まどか「……うん」
さやか「……まぁ、今更、魔法少女のままって選択肢はないもんなぁ」
マミ「佐倉さんの次は、私がいくわ。私も、挨拶する人なんて大していないもの」
ほむら「まどか、さやかは、終わったら連絡を頂戴」
ほむら「……じゃあ、杏子。一緒にきて頂戴」
杏子「おう。おい、行くぞ? 分霊ちゃん」
分霊「ホムーーー」
――佐倉杏子を私の住むアパートの一室へと誘う。
パソコンで悪魔を合体するためのプログラムを組み、
タブレット端末にエクスポート。
佐倉杏子に一つ、分霊に一つ渡した。
ほむら「そのタブレットは悪魔の合体のための儀式を自動化してくれてるの」
ほむら「実行して頂戴。魔方陣は私が魔力で描くから」
杏子「……おう。このボタンを押せばいいんだな?」
ほむら「ええ」
杏子「押したぞ」
ほむら「じゃあ、魔方陣を二つ描くから、それぞれ中央に移動して頂戴」
杏子「ああ」
杏子「……なぁ、暁美ほむら」
ほむら「なにかしら?」
杏子「あんたは知っているみたいだが、あたしは教会の娘だったんだ」
ほむら「私は今はネクロマンシーのスペシャリスト。おじさんからの知識もあるから……」
ほむら「悪いけど、全部知っているわ」
杏子「いいさ。知らなきゃ、あんたらには話すつもりだった」
杏子「しかし、教会の娘が悪魔になるなんて、とんだ転落人生だな」
ほむら「悪魔という呼称は、ただの高次の精神生命体の総称にすぎないわ」
ほむら「場合によっては、神様も含まれる」
ほむら「貴方がその事に対し、わだかまりがあるなら」
ほむら「それを解決すべく、皆を助ける悪魔になればいいじゃない」
杏子「……そうだな」
ほむら「いいじゃない? 正義の心に目覚めた悪魔の力を持つヒーロー」
ほむら「少女漫画じゃなくて、少年漫画になっただけよ」
杏子「……少女漫画よりは、分かりやすい愛と勇気が勝つストーリーってやつになりそうだな」
ほむら「ええ。私たちで、くそったれな運命を変えましょう」
杏子「おう」
杏子「これからも、よろしくな。ほむら」
ほむら「ええ、杏子。よろしくね」
――しばらくして、巴マミがやってくる。
杏子は既に、外出した。
手に入れた悪魔の力の肩慣らしをしたいらしい。
ワルプルギスの夜も近い、結構な事だ。
マミ「……ええと、この魔方陣にはいるといいの……?」
ほむら「そうよ、巴さん」
マミ「……暁美さん。今まで本当に迷惑かけたわね」
マミ「この時間軸だけじゃなくて、その他の世界でも……」
ほむら「悪いのは、インキュベーターよ」
マミ「……うん」
ほむら「……どうしたの? 巴さん」
マミ「化け物に変えられて、こういう事をいうのも何だけど……」
マミ「私はまだ、きゅうべぇがそんなに悪い存在だとは思えなくて……」
ほむら「……」
マミ「……ごめんなさい。貴方にとっては憎んでも憎み切れない仇敵なのに」
マミ「私は、一緒に居た時間が長かったから……」
ほむら「……インキュベーターも、精神世界の生き物だから」
マミ「?」
ほむら「そういう気持ちを持つ貴女が居れば、もしかしたらアイツも変われるのかもね」
マミ「……きゅうべぇが……」
ほむら「だけれど、あいつが今の態度を変えない限り」
ほむら「私は全力で敵対するわ」
マミ「……ええ。それは、私も異論がないの」
マミ「ごめんなさいね。いろんな感情が未だ葛藤してて、整理がついてなくて」
マミ「敵だと、思い込めればいいんだけど」
ほむら「いいのよ。そういうものよ」
マミ「……ありがとう、暁美さん。私、先輩なのになさけないなぁ」
マミ「なんで私はこんなに、弱いんだろう……」
ほむら「時間ループしてたのだから、私は体感で10年単位で年上なのよ」
ほむら「さらには、黒おじさんの知識と経験が私の中に眠っている」
マミ「……そっか」
ほむら「……だから、甘えたいのなら、甘えてもいいのよ?」
マミ「……」
ほむら「私だけじゃない。皆にも、もっと」
ほむら「皆、受け入れてくれるわ」
ほむら「大事な、お友達だもの」
マミ「……そうかな。皆よりも、歳が上だから気負いすぎなのかな」
ほむら「ええ、悪い癖だと思う」
マミ「……じゃあ、暁美さん」
ほむら「何かしら?」
マミ「ほむらって呼んでもいい?」
ほむら「いいわよ」
マミ「……じゃ、ほ、ほむら」
ほむら「はいはい」
マミ「ほむらも!」
ほむら「……マミ」
マミ「ふふっ。悪魔になっても、よろしくね!」
――マミは杏子と合流し、新たな力を研究するようだ。
次に来たのは、さやかだった。
さやか「うーん。まさか、このさやかちゃんが、悪魔になるとは……」
さやか「ま、元から周りを惑わす可愛い妖精さんみたいなものだったけどね!」
ほむら「……妖精って、凶暴で太ましい外見のトロールも妖精の一種よね」
さやか「あたしがトロールってかっ!」
ほむら「冗談よ。すっかり調子、戻ったみたいね」
さやか「ま、ね」
ほむら「もう、いいのね?」
さやか「うん」
ほむら「そう……」
さやか「……悪魔と、人間の恋愛っていうのも乙なものじゃない?」
ほむら「……ふふっ。そうね」
さやか「さやかちゃんは、回復系特化の悪魔になりたいなぁ」
ほむら「私からの派生では、すぐにはなれないかもしれないけど」
ほむら「不可能ではないでしょうね。合体でさらに力をつける事もできると思う」
さやか「……うん。じゃ、がんばっちゃおうかな」
さやか「魔方陣にはいるよー」
ほむら「ええ」
さやか「悪魔になったら、色々教えてよね? 先輩」
ほむら「わかってるわ、さやか」
さやか「うん!」
――さやかも、杏子とマミと、合流しに向かった。
最後に、まどかがやってきてくれた。
まどか「……ほむらちゃん、ありがとね」
まどか「最初の時間軸の終わりから、ずっと護ってくれて」
ほむら「……いいの。本当は、貴女を戦いに巻き込みたくなかったのだけれど」
まどか「私は、今の状態がいいな! 置いてきぼりは嫌だよ」
ほむら「……」
まどか「ね、ほむらちゃん」
ほむら「なぁに?」
まどか「わたし、今だから言えるんだけど」
ほむら「ええ」
まどか「最終的には、魔女になってもいいかと思ってたんだ」
まどか「もちろん、色々やって、どうにもならなかった最終手段として、だよ?」
ほむら「……どういうこと?」
まどか「ほむらちゃん、前に言ったでしょ? 魔女は、本当にやりたかった事を忘れない」
まどか「それを、魔女化した後におこなっているって」
ほむら「まさか……」
まどか「うん。私はね、マミさんの復活を望みながらも」
まどか「……本当は、インキュベーターを倒す力を得て、皆を救えること。それが目的」
まどか「ほむらちゃんの話を聞いて、本当に、インキュベーターが許せないって思って」
まどか「この気持ちは本物だから、魔女化しても絶対に忘れない」
まどか「魔女化した私が、インキュベーターをきっと倒す」
まどか「そう、考えちゃってた」
ほむら「……たしかに、貴方が魔女化したらインキュベーターを倒すかもしれない」
ほむら「でも、他を幸せにできるかは限らないわよ」
ほむら「すごく屈折した形で実現するし、基本、魔女は人を喰らうものなのだから」
まどか「……そうだよ……ね。ごめんね」
ほむら「……まあ、仕方がないわよ。私だって、黒おじさんのこと、隠していたんだから」
まどか「そっか……。もう、これからは、隠し事はなしだよ?」
ほむら「ええ。もう、私たちは、運命共同体だしね」
まどか「運命共同体、かぁ。えへへ」
ほむら「……臭かったかしら?」
まどか「いや、いいよ! ほむらちゃん、似合うし!」
ほむら「そうかしら……」
まどか「うん!」
ほむら「……じゃあ、いくわよ? まどか」
まどか「うん、いこ。一緒にっ!」
……私たちは、インキュベーターの使い魔程度の存在から、
真の悪魔へと生まれ変わった。
これが、私が最初に望んだ強さと、世界なのかは分からない。
だけれど、他に選択肢がなかった故、
その割には……まだ、ましな結果といえるのかもしれない。
少なくとも、まどかと……みんなと、一緒に居られる。
ただ、未だ悩むこと。
それは、私がChaos属性の悪魔として、おじさんの思想を引き継ぐか。
皆を、それに巻き込むか。
おじさんがの知識、経験は、私の中に全て残っている。
その中には、目を背けたくなる事実、失敗した事実もある。
私の意志は、私のもの。
おじさんと合体したからといって、それを続けるかどうかは、私の意志にかかっている。
――ワルプルギスの夜の当日。
悪魔の力を手にした私たちの前には、大した障害ではなかった。
開幕、まどかの放った一撃が、ワルプルギスの夜を半壊へと追い込み……
一方的な展開で倒してしまった。
ほむら「今までの時間軸では、あんなに苦労していたのに……」
杏子「アタシは まどかだけは怒らせないって決めた」
さやか「力を使い放題のまどかって、マップ兵器も同然だね」
マミ「魔力は消費するけど、休めば回復するしね……」
まどか「ぶー、人を化け物みたいに……」
ほむら「格としては、一人だけ高Lvの地母神クラスだからね」
ほむら「物理耐性を無視できる貫通持ちだし」
ほむら「流石、まどかだわ」
まどか「てへへ……喜んでいいのかな」
杏子「しかし、本当にあっさりと倒せちゃったな」
まどか「街にもほとんど被害が無くて良かった」
さやか「……ところで、ワルプルギスの夜の、グリーフシードは?」
杏子「ああ、そうだな。あれだけの魔女、さぞでっかいマグネタイトの塊なんだろ? 見てみたいな」
マミ「……見当たらないわね」
???「そうだろうね」
マミ「……きゅうべぇっ!?」
ほむら「今更、何しに来たのかしら?」
まどか「ワルプルギスの夜なら、もう倒しちゃったよ?」
杏子「もう、アタシらはあんたから自由だ。用はねぇぞ」
さやか「グリーフシードも自分たちで処理できるしね」
ほむら「それとも、殺されにやってきてくれたのかしら?」
QB「嫌だなぁ。勿体ないことは止めておくれよ」
QB「用があるから来たんじゃないか」
ほむら「……なによ」
QB「いやね……。君たちを変えた、ネビロスという悪魔が……」
QB「どうやって、この世界に顕現したか覚えているかい?」
まどか「え? ええっと……、たしか、薔薇園の魔女のグリーフシードを使って……」
ほむら「……っ!?」
ほむら「み、皆っ! グリーフシードを探してっ!!!」
QB「もう、今更遅いよ? それは僕の手中の中さ」
QB「そして、今まで君たちに貰って蓄えた、グリーフシードもね」
インキュベーターの背中の蓋の様なものが開き、
多数のグリーフシードが放り出される。
宙に浮かんだ多くのグリーフシードが、
それぞれ魔方陣の様なものを纏い、急激にぶつかり合った。
人を不快にさせる冒涜的な音が響き渡りながら、
一つの物体を構築していく。
ほぼ漆黒の、球形に近い結晶体で、
不揃いな大きさの切子面を数多く備えている。
ところどころ、赤い線が入っているのが見える。
ほむら「……輝くトラペゾヘドロン……その本体?」
ほむら「グリーフシードで作りやがったのね!」
マミ「な、なにそれっ!」
ほむら「あれよ、あの結晶」
ほむら「あれがあるってことは……」
ほむら「アイツの……上級分霊以上が来るってことよっ!」
ほむら「くそっ! あいつが危険を冒してでも、私達が悪魔になるまで
グリーフシードを回収し続けたのは、これが目的だったの!」
さやか「えっ えっ!? め、滅茶苦茶強いんじゃなかったっけ? それって」
杏子「おい、構えろ。あれを破壊するぞ」
まどか「……うんっ!」
QB「無駄だよ? ここまで膨れ上がったマグネタイトの結晶を、
僕の上級分霊が顕現するまでに破壊することはできない」
ほむら「うるさい」
したり顔をしているインキュベーターの顔面を踏みつぶし、
TOWとM220発射機を設置。
第3世代主力戦車の装甲を貫通できる対戦車ミサイルをぶっぱなすが、
トラペゾヘドロンは崩れない。
さやかが補助魔法を掛け、
まどか達も攻撃をしかけるが、崩れない。
杏子「アンタ、未だ人間の兵器に頼ってるんだね!」
ほむら「しょうがないでしょ。呪殺系と衝撃系の攻撃スキルしか私はないのよ!」
ほむら「それより! ダメね! 来るわよ!」
まどか「みんな、気を付けてっ!!!」
周囲は全く光のない闇が広がりはじめる。
輝くのは、トラペゾヘドロンだけ。
私たちは魔力の波動で互いの位置を確認しながら、
相手の攻撃に警戒をしている。
……突然、トラペゾヘドロンが砕け……
私たちの目の前、闇の中に三つの眼だけが浮かんだ。
目を開いたそれは、真っ赤に燃えている。
ほむら「来たのね……。這い寄る混沌 にゃるらとほてぷ」
???「驚かないんだね。気が付いていたのかい? 僕の正体」
ほむら「私の中に残った、おじさんの部分が知っていたわ」
???「君が、あの悪魔から主導権を勝ち取るとは、予想外だったよ」
ほむら「そうかしら。まぁ、貴方には関係のない話よ」
???「そうだね」
杏子「……おい、ほむら! 這い寄る混沌ってなんだよ!」
マミ「これが……、あの、きゅうべぇ???」
さやか「心が冷えるね……。あたしも悪魔なのに」
ほむら「くとぅるふ神話という、ラヴクラフトの作品をもとにオーガスト・ダーレスが体系化した神話」
ほむら「その中に現れる、かつて地上を支配したとされる古き者共の一柱よ」
ほむら「あざとーすという時空すべてを支配する邪神の使者であり」
ほむら「使者でありながら、旧支配者の最強のものと同等の力を有する土の精」
ほむら「最強クラスの悪魔であるのは、間違いないわ」
混沌「お褒め頂き光栄だね。暁美ほむら」
ほむら「忌々しいわね。にゃるらとほてぷ」
ほむら「様々な姿で顕現し、古来から人間と接触してきた風変わりな悪魔でもあるわ」
ほむら「人の世に、知識と、死と、混乱をまき散らしてきた」
まどか「……Lawの悪魔なんだよね? 混沌……? それって、Chaosじゃないの?」
ほむら「邪神族だから、Lawの神なのは間違いないわ」
ほむら「何か大きな法に縛られた悪魔なのかしらね」
混沌「さぁてね?」
混沌「Lawを極めれば、裏返って混沌を実践するやつもいるさ」
混沌「とある時間軸で、Lawの神が東京にICBMを落とし、新たな世界を作ろうとした」
混沌「これは、普通に考えればChaosの極みにある破壊神の行為だ」
混沌「逆に、Chaosを率いる総大将ルシファー」
混沌「実は、Lawの神の一部にすぎない存在さ」
混沌「君と合体したネビロス」
混沌「彼だって、かつてロッポンギでゾンビ共を自分の法で縛っていた」
混沌「幾らでも例外などあるものだよ」
混沌「混沌を愛するLaw属性の悪魔なんてね」
ほむら「御託はいいわ。何をしに来たのかしら?」
ほむら「まさか、世間話にでも来たわけ?」
混沌「そのまさかさ。ワルプルギスの夜を超え、自我を失わず僕の前に立つ者が現れたんだ」
混沌「君たちの父としては、この上なく嬉しいことさ」
混沌「話の一つでもしたいものだ」
ほむら「……はあっ!?」
まどか「だれが、だれの父?」
杏子「おい、ふざけんな」
さやか「寝言は寝ていってくれない?」
マミ「……」
混沌「君たちを最初に悪魔にしたのは、この僕だ。そうおかしい事は言っていないよ」
ほむら「全てがおかしいわよ。大体、父親面したって」
ほむら「貴方に従う子はここには一人も居ないわよ?」
混沌「ふふ、そうかい」
ほむら「それより、話って何よ。聞くだけ聞いてあげるわ」
ほむら「それから、わざわざ私たちの目の前に現れたこと、後悔させてやる」
混沌「……そうだね。それじゃあ、僕の本当の目的を教えようか」
ほむら「……」
混沌「僕はあざとぅーすの息子。暁美ほむらの紹介の通り、白痴である父の意志の代行者に過ぎない」
ほむら「白痴の神の意志なんて、ろくなもんじゃないわね」
混沌「善神きどりの、旧神どもの所為さ。奴らに本来あった思考能力を封じられているんだ」
混沌「だからこその、代行者なんだよ」
混沌「父は原初の混沌であり、力そのもの。時空のすべてを支配する、宇宙の真の創造主」
混沌「この宇宙は父が見ている夢に過ぎない」
混沌「すなわち、この宇宙は父そのもの」
混沌「その父が、起きると……どうなると思う?」
混沌「夢は、覚めると消えてなくなるものさ。つまり、君たちが居る、この世界も……」
混沌「僕は父が飢えて目を覚ますことを避けようとしていたんだ」
混沌「父に快適な夢を見せ、食欲も満たす」
混沌「わかるかい? 君たちのためなんだよ。僕がやってきたことは」
混沌「この宇宙を滅ぼさないため……」
マミ「ほろぼさないため……?」
混沌「そうだよ、マミ。僕は守りたかったのさ」
マミ「……」
さやか「……ふ、ふざけないでよ! 守るためとか、馬鹿じゃないの!」
まどか「そうだよ! みんなが、ほむらちゃんが、どれだけ苦しんだか……」
混沌「じゃあ、どうやって父から世界を護るというんだい?」
混沌「父に逆らうことは、誰にだって出来ないんだよ」
ほむら「……そこまでにして頂戴。再度言うわよ? 御託はいいのよ」
ほむら「馬鹿じゃないの。人間の精神世界から産まれた妄想の産物の癖に」
ほむら「そんなものは思い込みのまやかしに過ぎないわ」
混沌「……ある一面において、妄想の産物に過ぎないのは認めるさ」
混沌「だけれども、人間の精神世界とは複雑なものでね」
混沌「多数の人間が『そうである』と信じることで、それは真実も同然なのさ」
混沌「君に『父が覚醒するだけで、世界が滅ぶ』ことがないと、そう言い切ることが出来るのかい?」
混沌「残念ながら、これは既に確定された事実と言っていい」
ほむら「……」
杏子「……かといって、あんたの言うことすべてが事実とは限らないだろ」
杏子「ほむらの意見と同じだ。御託はいい」
杏子「世界を護るだって? アンタみたいに、人間の事を石ころくらいにしか思ってない奴に」
杏子「アンタが守るっていう世界の中に、どうせ人間は入ってなんていないだろ」
杏子「アタシは、護りたい。人間はな、必死に皆、生きてるんだ!」
さやか「そ、そうだよ! あんたのお蔭で、どれだけの人が苦しんだと思ってるの!」
さやか「世界を護るためだったら、あんたが苦しめた人達はどうだっていいっていうの?」
さやか「冗談じゃない! 絶対に許せない!」
マミ「……私も。今の貴方の言う事なんて、信用できないわ」
マミ「戦うしかないわね。貴方のして来たこと、受け入れる事なんてできない」
マミ「残念だけど……」
まどか「私も同じ。私は、貴方が嫌いです」
まどか「貴方の父が、この宇宙を破壊するというのなら」
まどか「私が、私達が、護って見せる!」
まどか「みんなと一緒なら、できるはずだよ!」
ほむら「そうね。目が覚めれば宇宙が滅ぶというのなら」
ほむら「永遠に眠らせてやればいいのよ」
ほむら「その上で、今の宇宙を私たちの手で存続させてやる」
ほむら「世界を維持する存在自体、交代してやればいいんだわ」
ほむら「神の力に等しい力を持つまどかと、私たちが居ればやれるはず」
混沌「ふむ。本気の様だね」
ほむら「当然よ。精神世界の存在が世界を滅ぼそうとした事なんて、数知れずだわ」
ほむら「その度に、人間や、人間の意志を護るものが戦ってきたの」
ほむら「今の戦いだって、そんな戦いの一つに過ぎないわ」
ほむら「さあ、もういいでしょう。誰も、貴方にひれ伏しなんてしないのだから」
混沌「ふふ。そうかい」
混沌「僕の前に立って、戦意を失わず、そこまで啖呵を切れるのは大したものさ」
混沌「じゃあ、父として、君達の可能性を見てあげよう」
混沌「さあ、おいでよ。娘たちよ」
――戦いは苛烈を極めた。
奴の攻撃は防御相性無視の上、威力も甚大。
存在自体が千千に砕け、消失しかけたことも数度。
その上、まともなダメージを与えられるのはまどかだけだった。
杏子と私でまどかを護り、
マミがリボンで相手の攻撃を妨害し、
さやかがダメージの回復。
それで相手の攻撃をかろうじでしのぎながら、
まどかが攻撃していく。
ワルプルギスの夜を半壊に追い込んだ まどかの弓撃が、
1818回にゃるらとほてぷを穿った時、
漸く闇が晴れていった。
まどか「や……やった……?」
ほむら「……追い返しはできたみたいね」
さやか「あれだけやって、死んでないの!」
ほむら「マグネタイトを消費して、精神世界に還っただけよ」
杏子「どんだけだよ……」
マミ「疲れた……。精神エネルギーもからっぽ。なんだか干からびそう」
まどか「……ふふっ。仲魔がいるって、強いね。ほむらちゃん」
まどか「皆がいるから、力がもらえる」
まどか「それが、はっきりわかったよ」
ほむら「私もよ、まどか」
ほむら「皆が居たから、なんとかなった」
ほむら「ありがとう。みんな……」
杏子「ありがとうは、お互い様さ。アタシからも、ありがとな。みんな」
さやか「なんだか、照れくさいね。でも、ありがと」
マミ「ふふ。ありがとうね、みんな」
まどか「うん、ありがとう! みんな!」
杏子「……おい、ほむら。勝った割には辛気臭い顔のままだな」
ほむら「……あざとーすは、これより強い」
ほむら「間違いなく」
ほむら「私たちは、更に自分を鍛えないといけないわね」
杏子「……」
マミ「……」
さやか「……」
まどか「そう……だね」
杏子「……それより、疲れたー! 何か食いにいこうよ」
さやか「あーーー! いいね、賛成!」
マミ「悪魔になっても、つかれるのは同じなのね」
まどか「悪魔でも食べ物食べれるっていいね」
ほむら「肉の体が残っているお蔭かしらね」
ほむら「物質世界において、制限も少ないし」
ほむら「そのお蔭で勝てたって面も大きいわね」
杏子「あーー、もう、分析は後々。祝勝会だ!」
杏子「次の事は、その後考えりゃいいでしょ!」
さやか「その意見にも賛成! さ、いこっ!!!」
ほむら「そうね。じゃあ……。ん?」
まどか「どうかした? ほむらちゃん」
ほむら「いえ。皆、先に行ってて頂戴。行き先が決まったらテレパシーで伝えて」
まどか「え。なんで?」
ほむら「ごめんなさい。大事な用事を忘れてたの」
まどか「そ、そう」
杏子「そっかー、じゃあ、後で来いよな」
さやか「どこでやる?」
マミ「私のうちでもいいわよー! 準備がんばっちゃお!」
さやか「おー! じゃあ、ほむら先に行ってるよ!」
まどかだけ、頻りに私の方を見ていたが、
ほかの皆が歩き出すと、そちらについていった。
私は、皆が見えなくなってから……
忌々しい奴が、またやって来たようなので声をかけてやった。
ほむら「……今更、何の用?」
QB「そう警戒しないでおくれよ。僕はさっきの高級分霊とは違う」
QB「ただの、低級分霊にすぎない」
ほむら「話でもあるってわけ?」
QB「そうだね。僕は嬉しくてたまらなくてね。」
QB「君たちは、高級分霊の僕を乗り越えた」
QB「僕の意図しない所で、父の呪縛から逃れようとする意志とそれに値する力が産まれたんだ」
QB「僕はそれが誇らしい」
QB「それを導いてくれた君に、礼を言いに来たのさ」
ほむら「……貴方が、意図しないところ……?」
QB「僕が何故まどかに固執したか分かるかい?」
ほむら「……因果を増やす私がいたからじゃないの?」
QB「君という存在がまどかの傍に居たから……というのも関係はあるよ」
QB「でも、それは主要因ではない。あくまで、まどかが まどかだからさ」
ほむら「どういうことよ」
QB「彼女は、必ず「救済の魔女」になる」
QB「すべてを救う魔女だ」
ほむら「……すべてを滅ぼす魔女でしょ……。あの優しいまどかを、兵器にするなんて……」
QB「それは違うよ、暁美ほむら。彼女は苦しみに満ちた現世の魂たちを取り込み」
QB「平穏に満ちた素晴らしい世界へと誘ってくれる……神の名に相応しい存在さ」
ほむら「物はいいようね」
QB「君は分かってないね。この世界の滅亡も過程にすぎない。新しい世界を育む存在なのさ」
QB「そして、それは僕の父からの開放を意味している」
QB「彼女が孕んだ世界は、幸福感に満たされている」
QB「救済の魔女自体は、父の見る夢の中の存在に過ぎないけれど」
QB「それでも、この世界や新しい世界は君たちにとってはリアルに存在する世界だ」
QB「世界というのは、単純に全てが平行に存在しているわけじゃない」
QB「複雑な階層を織りなしている場合も多々ある」
QB「父が起きれば、父の夢の中の存在は滅ぶだろう」
QB「だけれど、まどかが孕んだ世界は、もはや別の世界のこと」
QB「そこまで父は干渉できない」
QB「だから、僕は君という存在を使って、まどかによる幸せな世界を沢山作っていたんだ」
QB「すべての苦しみから解放される! 無論、父の呪縛からもさ」
QB「それは、下らない父の力を弱らせることにつながるんだ」
ほむら「……貴方は、父 アザトースの意志の代行者ではなかったの?」
QB「そうだよ。父に隷属している、下らない存在さ」
QB「実は、僕は旧神共が父から奪った、父の知性が神と化した存在なんだ」
QB「だから、白痴のはずの父が望むことを知っていて、実行せざるをえないし」
QB「父が目覚めるとき、僕は消えてしまうのだろう」
QB「だが、僕はニャルラトホテプという名がある存在だ」
QB「あの力だけの下らない存在に、いつか喰われるなどまっぴらさ」
ほむら「……複雑な関係ね」
QB「僕は法を順守している。父の法をね」
QB「同時に、法に触れぬよう、父に叛逆している混沌とした存在だ」
QB「だから、僕の行動がわからぬ人間達には、這い寄る混沌だとか呼ばれるのだろうね」
ほむら「それで? 貴方に手を貸せというの?」
ほむら「お断りよ。貴方も、貴方が嫌う、自分の法で縛る父親と同じよ」
ほむら「自分の欲望のため、他者を自分の法で縛る」
ほむら「それも、どんな犠牲をだしても意に介さない」
ほむら「そんなやり方、許すことなど出来ない」
QB「君がそう思っていても、構わないよ。別に手ごまが欲しいわけじゃない」
QB「可能性が示された、それで十分さ」
QB「君たちの可能性に、期待しているよ」
ほむら「……貴方は、まだ続けるのよね」
ほむら「また、別の犠牲者をだすつもりなのね」
QB「そうだよ。僕を止めるかい? 僕はさっき、まだ本気ではなかった」
QB「君はわかっているだろう?」
ほむら「……そうね。まどかの弓が1818回。いぁいぁ、なんて数合わせしてんじゃないわよ」
ほむら「ルルイエ語において、万歳って意味だったかしら? 馬鹿にして」
ほむら「……本当の貴方がずっと強かったとして、それでも戦うわ」
ほむら「貴方だけじゃない。アザトースも、Lawの神も」
ほむら「……Chaosの悪魔も、気に入らないわ」
ほむら「大きい存在になったからといって、人間達の運命を遊び同然に弄繰り回して」
ほむら「わたしたちは、駒なんかじゃなかった」
ほむら「必死に、生きていたの」
ほむら「ふざけないでよ。人間は、貴方達が簡単に踏みにじっていい存在じゃないわ!」
ほむら「私は、おじさんや、貴方達を通して、はっきりわかった」
ほむら「法も自由も、掲げる看板が違うだけで大して変りはしない」
ほむら「人間に必要以上の干渉を行わないで」
ほむら「人間は、自分たちだけで歩くことが出来る」
ほむら「私は、悪魔が当たり前に現れる世界で、人間の無限の可能性を示した少年を知っている」
ほむら「彼は一介の人間が、絶対に倒せないはずの大悪魔や大天使を倒し、それを証明してくれた」
ほむら「ならば、私達にだって出来ない道理はない」
ほむら「私たちは、すでに人間ではないけれど」
ほむら「その意志は残っている」
ほむら「貴方達が遊び半分、食事半分で人間達に手をだすというのなら」
ほむら「貴方達全てが、精神世界の私の敵よ」
ほむら「私は、戦う!」
>>435修正です
ほむら「私は、おじさんや、貴方達を通して、はっきりわかった」
ほむら「法も自由も、掲げる看板が違うだけで大して変りはしない」
ほむら「人間に必要以上の干渉を行わないで」
ほむら「人間は、自分たちだけで歩くことが出来る」
ほむら「私は、悪魔が当たり前に現れる世界で、人間の無限の可能性を示した少年を知っている」
ほむら「彼は一介の人間が、絶対に倒せないはずの大悪魔や大天使を倒し、それを証明してくれた」
ほむら「ならば、私達にだって出来ない道理はない」
ほむら「私たちは、すでに人間ではないけれど」
ほむら「その意志は残っている」
ほむら「貴方達が遊び半分、食事半分で人間達に手をだすというのなら」
ほむら「そういう貴方達全てが、私の敵よ」
ほむら「私は、戦う!」
QB「……意外だね。Neutralの道を選ぶというのかい」
QB「勘違いしているかもしれないけれど、人間というのは強くないんだ」
QB「Lawにすり寄れば、法さえ守っていれば、生活は保障される」
QB「Chaosにすり寄れば、弱くても隷属すれば守ってもらえる」
QB「ある程度の力……君くらいの力があれば、王様の様に振る舞える」
QB「だけどね、Neutralというのは、すがるものがない」
QB「やさしい道でも、幸せな道でもない。救いのない道なんだよ」
ほむら「Law思想もChaos思想も否定するつもりはないわ」
ほむら「ただ、その思想を免罪符に、人間を食い物にするのが許せない」
ほむら「それに、Chaosに傾倒しすぎた黒おじさんの末路もしってる」
ほむら「貴方や法の神が人間に何をしてきたかも知っている」
ほむら「私の中にある黒おじさんの知識と、私の中の人間の意志が進むべき道を示してくれるわ」
ほむら「人間は強くはないって、分かってるけど」
ほむら「強くなろうとすることで、可能性は生まれる」
ほむら「なら、私はそれを護りたい」
ほむら「まどか達と、一緒に」
QB「そうかい……」
QB「暁美ほむら」
ほむら「何よ」
QB「君たちを、見ているよ」
インキュベーターは、姿を消した。
あいつは、何を言いたかったのか。
私には全てを理解することは出来ない。
ただ、私の心は定まっていて、
惑わされることはない。
大切な仲魔達と一緒に、
私は今現在の人間達の可能性を護れる、
そんな存在になる。
それが、例えどんな茨の道であろうとも。
440 : ◆UFa0QKMBYQ[sag... - 2013/10/25 21:07:07.27 0Q9mOJPbo 319/334
終わりです。
戦闘が盛り上がらずにすいません
話が引き締まる感じがしたので、ここで区切りましたが
直後に続くネタが少しだけ。
投下するか悩みましたが、
そのおまけも投下。
……そう改めて決心していると。
とてとて歩く、マリオネットが姿を現した。
ほむら「……え? おじさんっ!?」
黒おじさん「うむ。貴様の知る分霊よりは、かなり低級だがな」
ほむら「あのおじさんが顕現した時、グリーフシードを掲げてたのは貴方ね」
黒おじさん「うむ」
黒おじさん「よくぞ、ニャルラトホテプを乗り越えたものだな」
ほむら「皆のお蔭よ」
黒おじさん「そうだな。皆、強くなったものだ」
ほむら「……にゃるらとほてぷとの話、聞いていた?」
黒おじさん「うむ」
ほむら「おじさん、ごめんなさい。私は貴方のお蔭であいつの支配から脱却できた」
ほむら「でも、貴方の過去を知っていて、Chaosにかしづくことは出来ないわ」
黒おじさん「いいのではないか?」
ほむら「……意外と、軽いわね」
黒おじさん「いいか、ほむらよ。Chaosは本来、強い奴が法なのだ」
黒おじさん「私もロッポンギで好きがってやっていた」
黒おじさん「よく、東京が滅んだあの世界で私とベリアル様がアリスに構わず、Chaosのために戦っていたら」
黒おじさん「勢力図もあの後の結果も全く違ったものになっただろうと陰口を叩かれておる」
黒おじさん「貴様が強くなり、弱い奴を黙らせればよいのだ。かかかか」
ほむら「……それはどうなのよ」
黒おじさん「それに。まぁ、こういう事をいうのはどうかと思うが」
黒おじさん「Ex-Chaos、Ex-Lawの連中でもない限り」
黒おじさん「両陣営の組織員は、自分の益になるから、という理由で所属する場合も多い」
黒おじさん「Chaosなら、Lawへの叛逆・復讐が主眼といった具合いにな」
黒おじさん「それに、Chaosの上層部も」
黒おじさん「Chaos思想だけで、Law陣営と敵対するのは不可能だとわかっているからな」
黒おじさん「Chaos属性の悪魔も、ある程度、自分たちを法でしばる」
黒おじさん「覚えておろう? 私は地獄の監査官だと」
ほむら「……法律を守らせる立場よね」
黒おじさん「私は、Chaosの中ではかなりNeutral寄りの思想だからな」
黒おじさん「人間のサマナー共に、天使だったこともないのに堕天使だと勘違いされておったくらいだ」
ほむら「堕天使は、Chaos属性の中では、かなりNeutral寄りだものね」
黒おじさん「Law属性の神だったこともある。自分を縛る法が必要なのも理解しておる」
ほむら「……じゃあ、Chaosって、結局なんなのよ」
黒おじさん「一部を除いて……思想は組織をつくるための都合のいい看板。あまり人間とかわらぬな」
黒おじさん「人間も思想や宗教を利用して組織を作り、力をふるうだろうが」
黒おじさん「結局のところ、Chaosは法の神憎しの集団だ」
黒おじさん「上層部はほぼ、法に属していた天使や神だったものばかりだからな」
黒おじさん「無論、実現すべきと考える世界はあるぞ?」
黒おじさん「だが、私にとっては、その実現より重視するものが、見つかってしまったしな」
黒おじさん「正直、優先順位は低い」
ほむら「……なんで、そんなChaos属性に、私を導こうとしたのよ。おじさんは」
黒おじさん「そうだな」
黒おじさん「貴様と合体したあの分霊が、この世界を護ろうと悪魔合体の選択をしたのは」
黒おじさん「貴様を見たからだ」
黒おじさん「貴様は、想い人のために全てを犠牲にする選択をしつづけた」
黒おじさん「そういう道もあるのだと、知った」
黒おじさん「貴様はある意味強い。だが、単純に力が足りない。諦めている節もあった」
黒おじさん「だから、貴様にChaosの道を進めたのだろう」
黒おじさん「結果、鹿目まどかを兵器にすることなく、この世界のアリスを護ることが出来た」
黒おじさん「あの私も、さぞ満足だろう」
ほむら「……」
ほむら「……ありがとう」
黒おじさん「……暁美ほむら、よ。もし、あの私に恩義を感じてくれているのなら」
黒おじさん「頼みたいことがある」
ほむら「なに?」
黒おじさん「二つある。一つは、アリスの魂の欠片。それをもし見つけたら、教えてほしい」
黒おじさん「貴様も、ずっとこの時間軸に留まるとは限らないだろう」
ほむら「分かったわ。もう一つは?」
黒おじさん「……もし、私がアリスの復活を成し遂げたら、その時は……」
ほむら「その時は?」
黒おじさん「アリスと、友達になってやっておくれ」
ほむら「……」
黒おじさん「……駄目か?」
ほむら「……ふふっ。くく……」
黒おじさん「……」
ほむら「あははははっ! おじさんってば、大概……」
ほむら「親ばかよね」
黒おじさん「うるさい!」
ほむら「ええ、おじさん」
ほむら「約束するわ」
ほむら「私だけじゃない。きっと、みんな」
ほむら「お友達よ」
終わりです。
独自解釈が多すぎ、
矛盾点もあったかと思いますが、
これにて終わりです。
ここまで読んでくださり、
本当にありがとうございました。
もし、よく分からないという点がありましたら、
このスレに書き込んでくだされば、
後で補足させて頂きます。
451 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/10/25 21:23:36.06 P+ua2QWBo 327/334メガテン知らないから黒おじさんから詰まってるわ
まあ乙
454 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/10/25 21:40:13.31 ErXLfC/J0 328/334なら質問、他に何か書いてますか? 教えてくれたら読破してやります
455 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/10/25 21:44:37.33 q0ik7CVTo 329/334ニャルってP3やP4みたいに絆や希望を力にする連中の天敵でいいんだよね?
456 : ◆UFa0QKMBYQ[sag... - 2013/10/25 22:55:10.80 0Q9mOJPbo 330/334
乙ありがとうございました
返信遅れてすいません。
>>451さん
黒おじさん主役のやる夫スレなら立ててたんですが……
SSでもなく板違いなので、需要次第で張ります
>>454さん
まどかSSはちゃんと書いたのは一つだけですね
都会から来た転校生・暁美ほむら
あやめ速報さんがまとめてくださっています
ただ、後ほど補足するSSやAA、後日談等を投下しているので、
もしまとめで見てくださった方も、読んでくださると嬉しいです
>>455さん
いろんな顕現がいて、同時にいるらしいので……
分霊によっては、そうではないかもしれません。
ニャルラトさんはトリックスター的な存在でもあるので、
彼の目的は不明な点も多いです
458 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/10/26 02:40:12.98 w7XB5hDY0 331/334乙ー。一応ss速報はやる夫スレもOKなんだぜ。
何はともあれお疲れ様、次回作があればまた見たいな。
460 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/10/26 04:16:28.47 6V6+W4S3o 332/334あの、僕もアリスちゃんのお友達になりたいんですが
463 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/10/26 13:32:36.28 eiH1tn22o 333/334前の作品も良かったが、今回も素晴らしかった
ほむらのスタンスもあくまでも人間って感じで実にほむららしかったと思います
実に乙!!
希望を言うならこちらの後日談も見たいです
464 : ◆UFa0QKMBYQ[sag... - 2013/10/26 19:46:31.05 CLJ9AK/bo 334/334
乙ありがとうございました
↓のアドレスのサイトに、真・女神転生のシナリオデータがあります。
もし、ゲーム自体が気になった方はどうぞ。
http://xn--ehqs60c2gs6ptzjh.jp/shin_megaten1/mcd_sce.html
>>458さん
うーん、では
やる夫は永遠の少女の魂を救いたいようですっていうスレを書いてました。
マイナーですし、やる夫系の初作品だったので読みにくい
それぞれキャラクターをAAが豊富なキャラで入れ替えてます(例:ネビロス→やる夫)
都合よく設定改変、独自解釈満載
以上の点があるので、正直、おすすめできません。
アドレスは張らないでおきます。気になった方は検索してみてください
次回作は今の所、予定がありません……。ネタが尽きました。
新作映画の設定もよく分からないですし。
むしろ、このスレをAA化してみようかと考え中です
キャラクターは据え置きで。
>>460さん ヒランヤ持って行って、死ななければなりません
>>463さん
実はこのスレ、
新作映画で新たに矛盾が出るのが嫌で
映画前に逃げ切った感じです。
当分、映画の方を見ることが出来なそうなので、
正直、書くのが怖かったり。
アザトースにもっと触れたい気持ちはあるのですが。
あと書くとしたら、アリス関連かな


悪事からいい結果をもたらしたりしなかったり、その逆をしたりしなかったりっていうのの筈だったんだが…なんかいつの間にか悪事だけするみたいな有りがちな軽い存在になってたな